987条(甲62)
家督相続人ノ指定及ヒ其取消ハ戸籍吏ニ之ヲ届出ツルニ因リテ其効力ヲ生ス
第三百条 条文沿革
家督相続人ノ指定ハ遺言書ヲ以テ之ヲ為ス可シ
300条 テキスト未作成
300. The nomination of an heir to katoku shall be made by a testament.
●
法典調査会原案
参照
- 全國民事慣例類集
- 2編2章1款
- 太政官達 (明治12年 2月13日第8号)
- （士族家督相續養子貫籍替出願ニ及ハス戸長ニ屆出）
- 司法省指令 (明治12年 2月20日)
- 司法省指令 (明治13年 9月20日)
- 司法省指令 (明治13年10月 4日)
- 神奈川縣伺ニ對スル内務省指令 (明治14年 1月24日)
議事録
法典調査会 第179回 議事速記録 *未校正59巻112丁裏 画像 資料全体表示
（書記朗讀）
第九百八十七條 家督相續人ノ指定及ヒ其取消ハ戶籍吏ニ之ヲ屆出ツルニ因リテ其效力ヲ生ス
（參照）取三〇〇、全國民事慣例類集二編二章、一款、十二年二月十三日八號逹、同年二月二十日司法省指、十三年九月二十日同省指、同年十月四日同省指、十四年一月二十四日神奈川縣伺ニ對スル内務省指
梅謙次郎君
本條ハ旣ニ前條ニ付テ說明ヲ致シマシタル理由ニ依テヽヽ舊法典ヲ改メルコトニ相成リマシタノデアリマス卽チ舊法典デアリマスルト云フト同時モ遺言ト云フコトニナツテ居リマシタノヲ今度ハ遺言デナクテモ指定ガ出來ルト云フコトニナツテ居リマス而シテ其指定又ハ其指定ノ取消ト云フモノハドウスルカト云フコトノ規定ガ必要ニナツテ來マシタガ先刻モ御論ノアツタ通リ元來大切ノ事柄デアリマスカラドンナ方法デモ意思ヲ表示スレバ宜イト云フコトニシテハ手輕ニナツテイケマセヌカラ戸籍吏ニ屆出ル此事タルヤ從來ノ慣習ガ旣ニサウデアリマス且又旣ニ議決ニナツタ所ノ隱居、庶子等ノ手續ト同ジ手續デアリマシテ穩當デアラウト思ヒマシタカラ斯樣ニ定メマシタ
土方寧君
是ハ前條デ伺ツタ方ガ宜カツタカモ知レマセヌガ此指定ト云フモノニ付テノ方式ハナイノデアリマスカラ被相續人ノ如何ナル人ヲ相續人ニスルト云フ意思ガはつきり分リサヘスレバ直グニ屆出レバ宜イト云フ趣意デアラウト思フサウスルト次ノ條ノ遺言デアリマスガ遺言ノ方ハドウナルカ分リマセヌガ孰レ方式ヲ要スルコトニナルデアラウト思フ、ケレドモ生前ニ在ツテ指定シタ場合ニハ別ニ方式ヲ定メナケレバ意思表示サヘアレバ宜イト云フヤウニナルヤウニ思ハレルガ其意思表示ガアツタトキカラ效力ヲ生ズルノデナクシテ「戸籍吏ニ之ヲ屆ケ出ツルニ因リテ其效力ヲ生ス」トアリマスト意思ハ表示シタガ屆ケ出ヅル前ニ死ンデ仕舞ツタト云フヤウナトキハ妙ナコトニナリマスガ死ンデカラ後ニ屆出テモ宜イノデアリマスカ其點ヲ聞キタイソレカラ生前ノ指定ハ固ヨリ被相續人ガ意思表示ヲシテ指定ノ效力ガ其時ニ生ズルソレデ其指定セラレタ者ガ假リニ先ヅ承諾シタト見ル是レハ約束ノ出來ル性質ノモノデアルトスルト指定セラレタ者ガ承知シテ其指定シタ本人ガ死ネバ指定セラレタ者ガ相續ヲスル相違ナイソレヲ理由ナクシテ指定シタ一方ノ意思丈ケデ取消セルヤウニ文章ノ上デ見エマスルガソレデモ宜シイカ其二ツノ點ヲ伺ヒタイ
梅謙次郎君
第一ノ點ハ御說ノ通リラシイデス卽チ此家督相續人ノ指定ト云フモノハ被相續人ニ於テ唯意思ヲ表示シテ未ダ屆出ヲ爲スニ至ラズシテ死亡シタ場合ニ於テハ若シ其意思表示ノ方法ガ遺言ト見ルコトガ出來ヌ方法デアツタナラバソレハ致シ方ガナイ
土方寧君
無效ニナルノデアリマスカ
梅謙次郎君
無效ニナル其譯ハ先刻モ申シタ通リ戸籍吏ニ屆出ルト云フコトニ依テ始メテ相續人ノ指定ト云フモノハ效ヲ持ツト云フコトニシタ其理由ハ則チ其位ニ大切ニシテ置カナケレバ或ハ曖昧ナル意思ヲ以テ眞ノ意思表示ナリトシテ爭ウヤウナコトガアツテイケマイ此位大切ナモノハ唯意思ヲ誰カニ向ツテ發表シタト云フ位ノ漠然トシタコトデハイカヌはつきり戸籍吏ニ屆出ルト云フコトニシテ置カネバナラヌト考ヘマスカラサウ云フ結果ニナリマスソレカラ第二ノ御問ヒハ本人ノ承諾ト云フモノガ法律上效力ヲ生ズルト云フコトニナリマスレバ本人ノ承諾ガナケレバイカヌノガ本則デアル其代ハリ其場合ニハどちらモ括ラレル、ケレドモ指定ト云フモノデアリマスルト是ハどちらモ括ラレナイ指定シタル方デモ別段ノ理由ヲ證明スルコトヲ要セズシテ何時デモ取消セルシ又承諾シタモノデモ法律上ニ於テ何等ノ理由ヲ證明スルコトヲ要セズ死亡前デアラウトモ死亡後デアラウトモソレヲ拒ムコトガ出來ル
土方寧君
第二ノ點ハ能ク分リマシタガソレデ差支アリマスマイ第一ニ伺ツタ點デアリマス指定ヲシテ未ダ屆出ナイ中ニ死ンダ其指定ト云フモノガ遺言ノ方式ニ適ツテ居ナイ場合其時ニハ無效ニナルト云フコトデアリマスガソレデモ九百八十九條ガアリマスカラ實際ニ差支ナイカモ分リマセヌガ九百八十九條ノアルニ拘ハラズ前條卽チ九百八十六條ノ如キ規定ヲ置イタノハ現在ノ戸主、被相續人ノ意思ニ大變重キヲ置イタモノデアラウト思フ先刻九百八十六條デ起草委員カラ御說明ニナツタヤウニ養子ヲスルニハ其手續ヲ存ス暇ガナイト云フヤウナ場合モ隨分アラウト思フ矢張リ遺言書ヲ書クニ付テモ或ハ其方式ノ定メヤウ次第デハ暇ガナイト云フコトガアルカモ分ラヌ極端ノ話デアルケレドモ、遺言ニ付テハ何時デモ本人ガ死ンダ跡デ問題ガ生ズルモノデアリマスカラ諸國ノ立法例ニ於テモ方式ヲ要スルコトニナツテ居ルソレデ此九百八十七條ノ法文ノ上ニ於テハ梅君ノ御答辯ニナツタヤウニ無效トナルカハ分リマセヌケレドモソレデハ折角前條ニ於テ慮ツテ置イタ場合モ漏レハシナイカ前條ニ於テ想像シタ場合ハ多クハ死際ノ場合デアラウト思フ其場合ニハ本人ガ證明シテ取消スト云フヤウナコトハ行ハレナイソレデ意思ハ明カニ現ハレテ居ルガ屆出ノ暇ガナイ遺言書モ作ラナカツタサウスルト意思ハ明カデアツテ證明セラレテモ無效デアツテ九百八十九條ノ方ニ往カナケレバナラヌト云フコトニナルト現在ノ戸主ノ意思ヲ重ンジタ精神ヲ貫カヌヤウナ結果ガ生ジハシナイカ其點ガ疑ハシイ法文デハ無效ト云フコトニナリマセウガソレヲ有效トスル途ハアリマスマイカ本人ノ意思ガ明ラカニ現ハレテ居ルヤウナ場合ニハ其意思ノ行ハレルヤウニシテヤルコトハ出來ナイカト云フコトデアリマス
梅謙次郎君
其御趣意カラ言フト總テ遺言ト云フモノハ方式ニ依ラヌデモ宜イト云フコトニナラヌトドウモイクマイト思ヒマス遺言ニ方式ヲ要スルト云フノハ詰リ死ンデカラ後ニ種々ノ爭ヒヲ起サナイ爲メデアル恰モ臨終ニ意思ノ分ラヌヤウナコトヲ言ツタ場合ニやれ斯ウ云フコトヲ言ツタ遺言ガアツタ遺言ガアツタト言ツテ取消サレテハ困ルカラソレデ遺言ノ方式ヲ必要トスルノデアラウト考ヘマス若シ只今ノヤウニ遺言ノ方式ガ缺ケテ居ル、ケレドモ意思ハ明カニ發表シタト誰レカゞ言フトソレヲ土臺ニシテ問題ヲ決スルト云フコトニナルト遺言ノ方式ハ止メル方ガ宜イト云フコトニナラウト思フ
磯部四郎君
一寸質問ヲシマスガ詰リ屆出ヲ廢罷スル事由デアリマス家督相續人ヲ指定シタ後ニ全ク反對ノ事實ガ發生シタ一旦指定シタニ拘ハラズ今度自分ニ本統ノ養子ヲスルト云フヤウナコトガ出テ來ル其時ニハ指定ガ當然效力ヲ失フモノデアルト云フコトガ何處カデ見ラレマセウカ
梅謙次郎君
或ハ明文ヲ要スルカモ知レマセヌガ其積リデアリマス跡カラ養子ガ出來ルトカ或ハ實子ガ出來ルトカ云フヤウナ場合デアレバ指定家督相續人ハ相續ヲシナイコトニナル積リデアリマス
磯部四郎君
ソレハ明文ヲ要シヤウト思ヒマスカラ御考ヘヲ煩ハシテ置キタイト云フ考ヘデアリマス
梅謙次郎君
宜シウゴザイマス
議長（箕作麟祥君）
ソレデハ起草者デ其事ハ考ヘテ置カウト云フコトデアリマスカラ本條ハ原案ニ決シテ次條ニ往キマス
●
帝国議会
980条
家督相続人ノ指定及ヒ其取消ハ之ヲ戸籍吏ニ届出ツルニ因リテ其効力ヲ生ス
関連資料
第九百八十條
（理由）本條ハ家督相續人ノ指定及ヒ取消ノ效力發生ノ時期ヲ規定スルモノニシテ既成法典ニ其例ナシト雖モ此事タルヤ一身一家ニ重要ナル關係ヲ有スルモノナレハ右ノ效力發生ノ時期ハ務メテ判然タラシムルコトヲ要ス之レ本案ハ隱居、婚姻等ノ效力發生ノ時期ニ關スル例ニ從ヒ本條ノ規定ヲ設ケタル所以ナリ
原田真義『民法対照』
第三百三条 条文沿革
第三百一条ノ規定ニ従ヒ選定ス可キ家督相続人アラサルトキ又ハ皆抛棄シタルトキハ其家ニ在ル尊属親中親等ノ最モ近キ者任意ニ家督相続ヲ為スコトヲ得
303条 テキスト未作成
303. Where there is no heir to katoku to be selected in conformity with the provisions of Article 301 or all the persons have renounced the succession, any one of the ascendants in the house who is the most proximate in the degree of consanguinity can voluntarily succeed to katoku.
- 戸令義解
- 法曹至要抄
- 貞永式目
- 新編追加
- 太政官指令 (明治6年8月4日)
- 太政官指令 (明治6年8月14日)
- 太政官指令 (明治7年4月14日)
- 太政官指令 (明治7年11月4日)
- 太政官指令 (明治9年5月15日)
- 太政官指令 (明治9年9月22日)
- 太政官指令 (明治9年11月1日)
- 内務省指令 (明治16年8月4日)
- 内務省指令 (明治17年3月7日)
- 司法省指令 (明治22年5月8日)
- 司法省指令 (明治22年6月5日)
- 司法省指令 (明治22年9月26日)
- 司法省指令 (明治24年10月)
大審院判例 明治20年11月10日（裁判粹誌民事2巻285頁）
大審院判例 明治29年3月7日
▲ 閉じる大審院判例 明治29年3月7日
●
公布
980条
家督相続人ノ指定及ヒ其取消ハ之ヲ戸籍吏ニ届出ツルニ因リテ其効力ヲ生ス
関連資料
第九百八十條 家督相續人ノ指定及ヒ其取消ハ之ヲ戶籍吏ニ屆出ツルニ因リテ其效力ヲ生ス（取三〇〇、六年一月二十二日吿二八號、十二年二月十三日太政官達八號）
本條ハ相續人ノ指定及ヒ其取消ノ方法ヲ定メ、併セテ其成立ノ時期ヲ定メタルモノナリ既ニ言ヘルカ如ク、相續人ノ指定ハ遺言ヲ以テ之ヲ爲スコト多カルヘク、從テ其取消モ亦遺言ノ取消ヲ以テスルコト多カルヘシト雖モ、シカシモ隱居ノ場合ノ如キハ此方法ヲ取ルコト能ハス殊ニ、相續人ノ指定及ヒ其取消ハ戶籍ニ重大ナル關係ヲ及ホスヘキモノニシテ、利害關係人ノ權利義務ニ關スル所又大ナルカ故ニ、特ニ之ヲ戶籍吏ニ屆出テシムルコトトセリ而シテ、之ヲ以テ法律上ノ條件ト爲スカ故ニ相續人ノ指定及ヒ其取消ハ屆出ノ時ニ成立スルモノトス是レ隱居（七五七）婚姻（七七五）離婚（八一〇）養子緣組（七四七）離緣（八六四）等ニ關シ新民法カ採用セル所ノ主義ニ合エルモノナリ
Code civil de l'Empire du Japon 資料全体表示
980. La nomination de l'héritier de la famille ou le rappel de cette nomination produit ses effets à partir du moment où notification en a été faite à l'officier de l'état civil.
参照（梅謙次郎『民法要義』）
12年2月13日太政官達8号