3 組合の財産関係(民法第668条ほか関係)
(1) 組合の財産関係について,民法第668条,第674条,第676条及び第677条の規律を維持した上で,次のような規律を付け加えるものとする。ア 組合員の債権者は,組合財産に属する財産に対し,その権利を行使する
ことができないものとする。
イ 組合員は,組合財産に属する債権について,自己の持分に応じて分割して行使することができないものとする。
ウ 組合の債権者は,組合財産に属する財産に対し,その権利を行使することができるものとする。
(2) 民法第675条の規律を改め,組合の債権者は,各組合員に対しても,等しい割合でその権利を行使することができるものとする。ただし,組合の債権者がその債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知っていたときは, その割合によってのみその権利を行使することができるものとする。
(注)上記(1)アについては,このような規定を設けるべきではない(解釈に委ねる)という考え方がある。
(概要)
本文(1)アは,組合員の債権者は,組合財産に属する財産に対して権利行使をすることができないとするものである。組合員が組合財産上の持分を処分することを禁じている民法第676条第1項の趣旨から,一般に,組合員の債権者が当該組合員の組合財産上の持分を差し押さえることはできないと理解されていることを踏まえたものである。もっとも, 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律や有限責任事業組合契約に関する法律などの団体法理に関する制度の整備が進んだ現在において,公示機能なしに組合財産の独立性を強調する規律を明文化することには慎重であるべきであるとする考え方があり,これを
(注)で取り上げている。
本文(1)イは,組合員は,組合財産に属する債権を,自己の持分に応じて分割して行使することができないとするものである。組合財産に属する債権の債務者がその債務と組合員に対する債権とを相殺することを禁じている民法第677条は,一般に,組合財産に属する債権には分割主義の原則(同法第427条)が適用されないことを前提とするものであると理解されていることを踏まえたものである。
本文(1)ウは,組合の債務については,各組合員に分割されて帰属するのではなく,1個の債務として総組合員に帰属し,組合財産がその引当てとなるという一般的な理解を明文化するものである。
本文(2)は,民法第675条の規律を改めるものである。同条は,組合の債権者がその債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知らなかったときは各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができると規定しているところ,これに対して,債権者に組合員相互の損失分担の割合を知らなかったことの証明を求めるよりも,均等割合を原則とした上で,これと異なる分担割合の定めがある場合には,各組合員において,これを債権者が知っていたことを証明するものとした方が適当であるという指摘があることを踏まえたものである。