4 解除権の消滅(民法第547条及び第548条関係)
(1) 民法第547条の規定は,解除権を有する者の履行請求権につき履行請求権の限界事由があり,かつ,履行に代わる損害賠償につき前記第 10,1(2) の免責事由があるときは,適用しないものとする。
(2) 民法第548条を削除するものとする。
(注)上記(1)については,規定を設けないという考え方がある。
(概要)
本文(1)は,民法第547条につき,解除権者の履行請求権に限界事由があり,かつ,債務不履行による損害賠償につき免責事由がある場合には,適用しないものとする規定を設けるものとしている。解除の相手方からの催告により解除権が消滅するものとする同条については,同法第543条が適用される場面において債務者の帰責事由がないときも解除を認めるものとすることにより,次のような問題が新たに生じる。すなわち,履行請求権の限界事由(履行不能)により履行請求権を行使できない場合において,債務不履行による損害賠償につき免責事由(前記第10,1)がある場合には,債権者は,履行に代わる損害賠償を請求することができない。この場合に,同法第547条の催告により債権者が解除権を失うとすると,債権者は自らの債務については履行義務を負いながら債権の履行を受けることができず,かつ履行に代わる損害賠償の請求もできないこととなる。これは, もともと同条が想定していない事態であり,債権者に酷であると考えられる。本文(1)は, この問題に対応するものである。これについては,解除の要件として帰責事由を不要とする考え方に反対する立場から規定を設けるべきでないとする考え方があるほか,解除の要件として帰責事由を不要とする考え方からも,解除を受けるべき当事者の法的地位の安定を図る同条の趣旨を重視して,本文(1)のような規定を設けるべきでないとの考え方がある。これを(注)で取り上げている。
本文(2)は,民法第548条を削除するものである。同条の規律については,例えば,売買契約の目的物に瑕疵があった場合に,買主がそれを知らないまま加工等したときにも解除権が消滅するなど,その帰結が妥当でない場合があると指摘されている。そして,解除権者が同条第1項の要件を満たす加工等をした場合であっても,目的物の価額返還による原状回復(前記3)で処理をすれば足りるから,解除権を否定するまでの必要はないとの指摘がある。本文(2)は,これらの指摘を踏まえたものである。