5 代物弁済(民法第482条関係)
民法第482条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 債務者が,債権者との間で,その負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において,債務者が当該他の給付をしたときは,その債権は,消滅するものとする。
(2) 上記(1)の契約がされた場合であっても,債務者が当初負担した給付をすること及び債権者が当初の給付を請求することは,妨げられないものとする。
(概要)
本文(1)は,代物弁済契約が諾成契約であることと,代物の給付によって債権が消滅することを条文上明らかにするものである。代物弁済契約が要物契約であるという解釈が有力に主張されているが,これに対しては,合意の効力発生時期と債権の消滅時期とが一致することによって,代物の給付前に不動産の所有権が移転するとした判例法理との関係などをめぐって法律関係が分かりにくいという問題が指摘されていた。このことを踏まえ,合意のみで代物弁済契約が成立することを確認することによって,代物弁済をめぐる法律関係の明確化を図るものである。
本文(2)は,代物弁済契約が締結された場合であっても,債務者は当初負担した債務を履行することができるとともに,債権者も当初の給付を請求することができることを明らかにするものである。代物弁済契約の成立によって,当初の給付をする債務と代物の給付をする債務とが併存することになるため,当事者間の合意がない場合における両者の関係についてルールを明確化することを意図するものである。