10 賠償額の予定(民法第420条関係)
(1) 民法第420条第1項後段を削除するものとする。
(2) 賠償額の予定をした場合において,予定した賠償額が,債権者に現に生じた損害の額,当事者が賠償額の予定をした目的その他の事情に照らして著しく過大であるときは,債権者は,相当な部分を超える部分につき,債務者にその履行を請求することができないものとする。
(注1)上記(1)については,民法第420条第1項後段を維持するという考え方がある。
(注2)上記(2)については,規定を設けないという考え方がある。
(概要)
本文(1)は,民法第420条第1項後段を削除するものである。同項後段は,賠償額の予定がされた場合に,裁判所がこれを増減することができないと明文で規定するが,このような規定は比較法的にも異例であると言われており,その文言にもかかわらず,実際には, 公序良俗(同法第90条)等による制約があることについては異論なく承認されていることを踏まえてのものである。この点につき,賠償額に関する当事者の合意を尊重する観点から,同法第420条第1項後段を維持するとの考え方があり,これを(注1)で取り上げている。
本文(2)は,賠償額の予定をした場合において,予定賠償額が著しく過大であったときには,債権者は,相当な部分を越える部分につき,債務者に請求することができないとするものである。下級審裁判例では,実際に生じた損害額あるいは予想される損害額と比して過大な賠償額が予定されていた場合に,公序良俗違反(民法第90条)とし,一部無効の手法により認容賠償額を減額したものが多い。このような裁判実務や,諸外国の立法の動向等をも踏まえ,賠償額の予定についても,債権者に著しく過大な利得を与えるなど不当な帰結に至るような場合には,一定の要件の下で制約が及ぶこととその効果を条文に明記して,当事者の予測可能性を確保することを意図したものである。
本文(2)については,実務上合理性のある賠償額の予定の効力まで否定されるおそれがあるとして,規定を設けないとの考え方があり,これを(注2)で取り上げている。