3 履行の強制(民法第414条関係)
民法第414条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 債権者が債務の履行を請求することができる場合において,債務者が任意に債務の履行をしないときは,債権者は,民事執行法の規定に従い,直接強制,代替執行,間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができるものとする。ただし,債務の性質がこれを許さないときは,この限りでないものとする。
(2) 上記(1)は,損害賠償の請求を妨げないものとする。
(3) 民法第414条第2項及び第3項を削除するものとする。
(注)上記(3)については,民法第414条第2項及び第3項の削除に伴って, その規定内容を民事執行法において定めることと併せて,引き続き検討する必要がある。
(概要)
本文(1)は,債権の基本的効力の一つとして,国家の助力を得て強制的にその内容の実現を図ることができること(履行の強制)を定めるものである。民法第414条第1項の規定内容を基本的に維持しつつ,実体法と手続法を架橋する趣旨で,履行の強制の方法が民事執行法により定められる旨の文言を付加している。また,同項ただし書は維持するものとしているが,これは,直接強制が許されない場合(同条第2項参照)という意味ではなく,債務の性質上,強制的な債務内容の実現になじまない場合(例として,画家の絵を描く債務等が挙げられる。)を意味するものである。
本文(2)は,民法第414条第4項の規定内容を維持するものである。
本文(3)は,民法第414条第2項及び第3項を削除する(その規定内容を民事執行法で規定する)ものである。同条第2項及び第3項は,強制執行の方法に関わる規定であるため,これを実体法と手続法のいずれに置くべきかという議論があるが,この点について, 実体法(民法)においては,同条第2項及び第3項を削除する一方で,本文(1)で示すように,同条第1項に実体法と手続法を架橋する趣旨の文言を挿入するという考え方を提示している。もっとも,同条第2項及び第3項を削除する場合には,これに伴って,代替執行の方法を規定する民事執行法第171条第1項の文言を始めとする規定の整備が必要となり,その点と併せて引き続き検討する必要がある。この点につき,(注)で取り上げている。