5 選択債権(民法第406条ほか関係)
選択債権に関する民法第406条から第411条までの規律を基本的に維持した上で,次のように改めるものとする。
(1) 民法第409条の規律に付け加えて,第三者が選択をすべき場合には,その選択の意思表示は,債権者及び債務者の承諾がなければ撤回することができないものとする。
(2) 民法第410条を削除するものとする。
(3) 選択の対象である給付の中に履行請求権の限界事由(後記第9,2に掲げる事由をいう。)があるものがある場合(第三者が選択をすべき場合を除く。) において,その事由が選択権を有する当事者による選択権付与の趣旨に反する行為によって生じたときは,その選択権は,相手方に移転するものとする。
(概要)
本文(1)は,選択債権につき第三者が選択をすべき場合(民法第409条)に関して,当該選択の意思表示を撤回するための要件につき,異論のない解釈を条文上明記するものである。
本文(2)は,民法第410条を削除するものである。選択の対象である給付に履行請求権の限界事由(その意義につき,後記第9,2)に該当するものがあっても,それによって選択の対象は当然には限定されないものとして,不能となった対象を選択して契約の解除をするなど選択権付与の趣旨に即したより柔軟な解決を可能とするためである。
本文(3)は,選択(第三者が選択権を有する場合を除く。)の対象である給付につき,履行請求権の限界事由が選択権者による選択権付与の趣旨に反する行為により生じたときは, 選択権が相手方に移転する旨の新たな規定を設けるものである。このような場合には,もはや選択権者に選択権を保持させることは相当でなく,選択権を相手方に移転することが利害調整として適切であると考えられることによる。