3 外国通貨債権(民法第403条関係)
民法第403条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 外国の通貨で債権額を指定した場合において,別段の意思表示がないときは,債務者は,その外国の通貨で履行をしなければならないものとする。
(2) 外国の通貨で債権額を指定した場合において,別段の意思表示がないときは,債権者は,その外国の通貨でのみ履行を請求することができるものとする。
(概要)
本文(1)は,民法第403条の規定内容を改め,外国の通貨で債権額を指定した場合には, 債務者は,別段の意思表示がない限り,その外国の通貨で弁済をしなければならないものとしている。この場合について,同条は,履行地の為替相場により日本の通貨で弁済をすることができるとしているが,この規律については,外国の通貨で債権額を指定したときは,特約がない限りその通貨でのみ弁済をするというのが当事者の合理的意思であって, 同条の規定内容は合理性に乏しいとの指摘がある。これを踏まえ,同条の規定内容を改めるものとしている。
本文(2)は,外国の通貨で債権額を指定した場合には,債権者は,別段の意思表示がない限り,指定に係る外国の通貨でのみ履行を請求することができるとするものである。判例
(最判昭和50年7月15日民集29巻6号1029頁)は,外国の通貨で債権額を指定した場合であっても,債権者が債務者に対し,履行地の為替相場により日本の通貨での支払を請求することができるとするが,外国の通貨で債権額を指定した場合は,特約がない限りその通貨のみで決済されるとするのが当事者の合理的意思であるとの前記指摘を踏まえ,この判例法理とは異なる内容の規定を設けるものである。
なお,本文(1)(2)については,金銭債権に基づく強制執行の解釈運用に与える影響の有無等につき慎重な検討が必要であるとの指摘がある。