2 期限
期限に関する民法第135条から第137条までの規律は,基本的に維持した上で,次のように改めるものとする。
(1) 民法第135条に期限という用語の定義を付け加え,期限とは,法律行為の効力の発生・消滅又は債務の履行を将来発生することが確実な事実の発生に係らしめる特約をいうものとする。
(2) 民法第135条第1項の規律を次のように改めるものとする。
ア 法律行為に始期を付したときは,その法律行為の効力は,期限が到来した時に発生するものとする。
イ 債務の履行に始期を付したときは,期限が到来するまで,その履行を請求することができないものとする。
(3) 民法第137条第2号の規律を改め,債務者が,その義務に反して,担保を滅失させ,損傷させ,又は減少させたときは,債務者は,期限の利益を主張することができないものとする。
(概要)
本文(1)は,期限という用語の意義を,その一般的な理解に従って明文化するものである。条件という用語の定義(前記1(1))と同様の問題意識による。
本文(2)は,民法第135条第1項が債務の履行期限を定めたものか,法律行為の効力発生に関する期限を定めたものか判然としないことから,その規定内容の明確化を図るものである。本文(2)アでは法律行為の効力発生に関する期限について定め,同イでは債務の履行期限について定めている。このほか,同項の「始期」という用語も多義的であるため, これを同アでは「効力発生期限」か「停止期限」などと改め,同イでは「履行期限」などと改めることも検討課題となり得る。その際には,同条第2項の「終期」という用語についても「効力消滅期限」か「解除期限」などと改めることが考えられる。
本文(3)は,民法第137条第2号の期限の利益喪失事由(債務者が担保を滅失させ,損傷させ,又は減少させたとき)には,形式的には,動産売買先取特権の目的動産を買主が費消した場合なども該当してしまい,適当ではないという指摘があることから,その要件を適切に画するため,同号の適用場面を,債務者が担保を滅失,損傷又は減少させない義務を負う場合において,これを滅失,損傷又は減少させたときに限定するものとしている。