ドイツ民法第二草案

参考原資料

  • 翻訳 独逸民法草案(独乙民法草案) , 仁保亀松 , 法学協会雑誌11巻9号~14巻3号 , 明治二十六年九月~明治二十九年三月
  • 翻訳 独逸民法草案(独乙民法草案) , 仁保亀松 , 法曹記事38号~57号 , 明治二十六年九月~明治二十九年三月 第2編(205~586条)

備考

上記資料を結合の上、条文番号順に並べ替えをおこなっています。

他言語・別版など

民法 第一編 総則 第一章 人 第一節 自然人 第一条 人ノ権利能力ハ出生ノ完了ヲ以テ始マリ死亡ヲ以テ終ル 第二条 失踪者ハ十年以来其生存ニ付キ音信到来セザルトキハ死亡者ト宣告セラルコトヲ得、失踪者ノ出生後七十年ヲ経過シタルトキハ五年ノ期間ヲ以テ足ル 十年又ハ五年ノ期間ハ既ニ得タル音信ニ依レハ失踪者カ尚ホ生存シタリシ年ノ満了ヲ以テ始マル、此時ニ失踪者カ出生後尚ホ満二十一歳ヲ経過セザリシトキハ十年ノ期間ハ二十一歳ノ満了ヲ以テ始マル 第三条 軍隊ノ隷属者トシテ出軍シ戦争中亡失シタリト見做サレ其後失踪セシ者ハ媾和後三年ヲ経過スルトキハ死亡者ト宣告セラルヽコトヲ得 媾和ヲ為サヽリシトキハ三年ノ期間ハ戦争ノ終局シタル年ノ満了ヲ以テ始マル 此規定ニ付テハ職務ニ因リ又ハ雇役ニ因リ又ハ任意補助ノ目的ヲ以テ軍隊ニ在リタル者モ其隷属者ト見做サル 第四条 航海中ニ於テ其乗込ミタル船舶ノ沈没後失踪シタル者ハ沈没後一年ヲ経過スルトキハ死亡者ト宣告セラルヽコトヲ得 船舶カ其目的地ニ於テ見当ラズ又ハ確定シタル目的ナクシテ航海シ帰着セザル場合ニ於テ航海ヲ始メタル後左ニ掲グル期間ヲ経過スルトキハ沈没シタリトノ推定ヲ受ク 一 東海内ニ於ケル航海ニ付キテハ一年 一 東海外ノ欧羅巴ノ海面内ニ於ケル航海ニ付キテハ二年、但地中海、黒海及ヒ「アツヲヴ」海ノ欧羅巴ニ属セサル部分ヲモ包含ス 一 欧羅巴外ノ海面ニ於ケル航海ニ付キテハ三年 航海中船舶ニ付キ音信ノ到来シタルトキハ其船舶カ此音信ニ依レハ最後ニ存在シタリシ場所ヨリ発航シタランニハ経過スヘカリシ期間ニ依ル 第五条 第三条、第四条以外ノ事情ニ因リテ生命ノ危険ニ遭遇シ其後失踪シタル者ハ其危険発生後三年ヲ経過スルトキハ死亡者ト宣告セラルルコトヲ得 第六条 死亡ノ宣告ハ公示催告手続ニ依ル 第七条 死亡ノ宣告ニ因リテ失踪者ハ其判決ニ於テ確定シタル時ニ死亡シタリトノ推定ヲ生ズ 左ニ掲クル時ヲ以テ死亡ノ時トスヘシ但捜査ノ結果之ト異ナルトキハ此限リニ在ラズ 第二条ノ場合ニ於テハ同条ニ掲ゲタル期間ノ終リタル時 第三条ノ場合ニ於テハ媾和ノ時又ハ戦争ノ終局シタル年ノ終リタル時 第四条ノ場合ニ於テハ船舶ノ没沈シタル時又ハ没沈シタリト推定セラレタル時 第五条ノ場合ニ於テハ生命ノ危険ヲ生ゼシメタル事変ノ起リタル時 死亡ノ時カ日ヲ以テ確定セラルルトキハ此日ノ終リタル時ヲ以テ死亡ノ時ト見做ス 第八条 死亡ノ宣告カ上訴ニ由リテ廃棄セラレ又ハ異ナリタル死亡ノ時カ証明セラレタルトキハ其判決ハ何人ノ為メニモ又何人ニ対シテモ効力ヲ有ス 第九条 死亡ノ宣告ナキ間ハ失踪者ハ第七条第二項ニ従ヒ死亡ノ時ト認ムヘキ時迄ハ生存シタリトノ推定ヲ受ク、但捜査ノ結果カ之ト異ナルトキハ此限リニ在ラズ 第十条 多クノ人カ共同ノ遭難ニ於テ死亡シタルトキハ凡テ同時ニ死亡シタリトノ推定ヲ受ク 第十一条 成年ハ満廿一歳ヲ以テ始マル 第十二条 未成年者ハ所属官庁ノ処分ニ依リテ成年ノ宣告ヲ受クルコトヲ得ベシ 成年ノ宣告ニ依リテ未成年者ハ法律上成年者ノ地位ヲ得ベシ 第十三条 成年ノ宣告ハ未成年者カ満十八歳ニ達シ且其承諾ヲ与ヘタルトキニノミ之ヲ為スコトヲ得其他親権ノ下ニ立ツ未成年者ニ在リテハ親権ヲ有スル者ノ権力カ父母ノ収益権ノミニ限ラレザルトキハ此者ノ同意ヲ要ス但未成年ノ寡婦ハ同意ヲ得ルコトヲ要セズ 成年ノ宣告ハ未成年者ノ幸福ヲ増進スルトキニノミ之ヲ為スベシ 第十四条 禁治産ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為ス 一、 精神病ノ為メ自己ノ事務ヲ所弁シ得ザルトキ 二、 浪費ノ為メ自己又ハ其家族ヲ困迫ナル状況ニ陥ラシメントスルトキ 三、 暴飲ノ為メ自己ノ業務ヲ処弁シ得ザルトキ或ハ自己又ハ其家族ヲ困迫ナル状況ニ陥ラシメントスルトキ又ハ他人ノ安寧ヲ害スルトキ 禁治産ハ其原因ノ去リタルトキハ之ヲ解止スベシ 第十五条 一人カ他ノ一人ヨリ出ツルトキハ互ニ直系ノ親族タリ又直系ノ親族ニ非ズシテ共ニ同一ノ第三者ヨリ出ツル者ハ傍系ノ親族タリ親等ハ其関係ヲ生セシメタル出産ノ数ニ従ヒ之ヲ定ム 婚姻外ノ子ト其父トノ間ニハ親属ノ関係ヲ生セズ 第十六条 配偶者ノ一方ハ他ノ配偶者ノ親族ト姻族タリ姻属ノ親系及ビ親等ハ其関係ヲ生ゼシメタル親属ノ親系及ビ親等ニ従ヒ之ヲ定ム 姻属ハ之ヲ生ゼシメタル婚姻解消スルモ尚ホ存続ス 第十七条 一地ニ定住スル者ハ此地ニ住所ヲ設定ス 一人ニシテ同時ニ数个所ニ住所ヲ有スルコトヲ得 住所ハ居住ヲ放棄スル意思ニテ之ヲ去ルトキハ廃止セラル 第十八条 行為ノ能力ナキ者又ハ之ヲ制限セラレタル者ハ法律上代理人ノ意思ナクシテ住所ヲ設定シ又ハ之ヲ廃止スルコトヲ得ズ 第十九条 軍人ハ屯営地ニ其住所ヲ有ス内地ニ屯営ヲ有セザル軍隊ニ属スル軍人ノ住所ハ其軍隊ノ内地ニ於ケル最後ノ屯営地トス 右ノ規定ハ兵役義務履行ノ為メニノミ服役シ又ハ独立シテ住所ヲ設定スルコト能ハサル軍人ニハ之ヲ適用セス 第二十条 婦ハ其夫ト住所ヲ共ニス但夫カ外国ニ於テ其婦ノ之ニ随従セス又随従スベキ義務ナキ地ニ住所ヲ設定スルトキハ此限ニ在ラス 婦ハ其夫カ住所ヲ有セズ又ハ其住所ヲ婦ト共ニセザル間ハ独立シテ住所ヲ有スルコトヲ得 第廿一条 嫡出子ハ父ト住所ヲ共ニシ婚姻外ノ子ハ母ト住所ヲ共ニシ養子ハ養父ト住所ヲ共ニス此住所ハ法律上有効ニ廃止セラルヽ迄存続ス 子カ成年ニ達シタル後ニ為シタル公認及ビ養子縁組ハ其子ノ住所ニ影響ヲ及ホサズ 第廿二条 自己ノ名ヲ使用スル権ヲ妨ゲラルヽ者又ハ他人カ自己ト同一ノ名ヲ不当ニ使用スルニ因リテ其利益ヲ害セラルヽ者ハ此妨害ヲ除去シ且以後ノ妨害ヲ止ムル判決ヲ請求スルコトヲ得 第二節 法人 第一款 社団 第一則 総則 第廿三条 公益、慈善、社交、学術、技芸上ノ目的其他経済上ノ事業ニ非ザル目的ヲ有スル社団ハ其所属区裁判所ノ社団登記簿ニ登記スルニ依リ又ハ政府ノ授与ニ依リテ権利能力ヲ得 其他ノ社団ハ帝国ノ法律ニ特別ノ規定ナキトキハ独リ政府ノ授与ニ依リテ権利能力ヲ得 権利能力ヲ授与スル権ハ社団所在地ノ聯邦ニ属ス 社団所在地ハ特別ノ事情ナキトキハ其事務所所在地トス 第廿四条 権利能力ヲ有スル社団ノ組織ハ法律ノ規定ニ拠ルベキモノヽ外ハ社団ノ定款ヲ以テ之ヲ定ム 第廿五条 社団ニハ頭取ヲ置クコトヲ要ス頭取ハ数人ヨリ成立スルコトヲ得裁判上ニモ亦裁判外ニモ社団ヲ代理ス 頭取ノ代理権ハ定款ニ依リテ第三者ニ対シ有効ニ之ヲ制限スルコトヲ得 第廿六条 頭取ノ選任ハ総会ノ決議ニ依ル 選任ハ何時タリトモ取消スコトヲ得然レトモ既ニ成立シタル契約ニ本ヅク頭取ノ補償請求権ヲ妨ゲズ又選任ノ取消ハ定款ヲ以テ取消ヲ正当ナラシムル重要ナル原因ノ存スル場合ニ限ルコトヲ得斯ル原因ハ特ニ重大ナル業務ヲ欠キ又ハ正整タル業務施行ノ不能トス 社団ニ対スル頭取ノ権利及ビ義務ニ付テハ第五百八十五条及ビ第五百八十八条乃至第五百九十六条ニ掲グル委任ニ関スル規定ヲ准用ス 第廿七条 数人ノ頭取アル場合ニ於テハ其決議ハ総会ノ決議ニ頭用セラルヽ規定ニ従ヒ之ヲ定ム 社囲ニ対シテ意思ヲ表示スルニハ頭取ノ一人ニ対シテ之ヲ表示スルニテ足ル 第廿八条 頭取ニ必要ナル員数ヲ欠キ且危急ナル場合ニ於テハ当事者一方ノ申立ニ因リテ社団所在地ノ区裁判所ハ缺員ノ補足セラルヽ迄一時頭取ヲ任定スベシ 第廿九条 定款ヲ以テ頭取ノ外或業務ニ付キ特別ノ代理人ヲ置クコトヲ定メ得ベシ此代理人ノ権限ニ付キ疑アルトキハ通常代理人ニ指示サレタル業務ノ範囲ニ属スル総テノ権利行為ヲ為シ得ルモノト見做ス 第三十条 社団ハ頭取又ハ其中ノ一人若クハ定款ニ本ヅキ選任シタル代理人カ業務施行上第三者ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ 第三十一条 頭取又ハ其他ノ役員カ処理セザル社団ノ業務ハ総会ノ決議ニ依リテ之ヲ行フ決議ノ有効ナルニハ決議スベキ事項ハ総会招集ノ時ニ示サレタルコトヲ要ス此決議ハ出席社員ノ多数決ニ依ル 書面ニテ表示セラレタル総社員ノ同意ニ本ヅク決議ハ総会ノ決議ヲ経ズシテ有効ナリ 決定スベキ事項ハ社団ト社員ノ間ニ為サルヽ法律行為ニ関スルカ又ハ権利ノ争ヲ開始シ若クハ之ハ終結スルコトニ関スルトキハ此社員ハ議決権ヲ有セズ 第三十二条 定款ヲ変更スル決議ノ有効ナルニハ出席社員ノ四分ノ三以上ノ同意ヲ要ス社団ノ目的ヲ変更スルニハ総社員ノ同意ヲ要ス此場合ニ於テ出席セザル社員ノ同意ハ書面ヲ以テ表示スベシ 社団ノ権利能力ハ政府ノ授与ニ本ヅク場合ニハ定款ノ変更ハ亦政府ノ許可ヲ要ス 第三十三条 社員ノ有スル特権ハ其同意ヲ経ズシテ総会ノ決議ニ依リ之ヲ制限スルコトヲ得ズ 第三十四条 総会ハ定款ニ定ムル場合ノ外社団ノ利害ニ関スル場合ニハ之ヲ招集スベシ 第三十五条 総会ハ総社員ノ十分ノ一以上又ハ定款ニ特別ノ定アル場合ニハ十分ノ一以下ノ社員カ目的及ビ原因ヲ指定シタル書面ヲ以テ請求スルトキハ之ヲ招集スベシ 此請求ニ応ゼザルトキハ社団所在地ノ区裁判所ハ請求書ヲ提出シタル社員ニ総会ヲ招集スル権ヲ授与シ且総会ニ於テ議長ノ職務ヲ行フコトニ付キ規則ヲ定ムルコトヲ得此権利ノ授与ハ総会招集ノ時之ヲ記載スルヲ要ス 第三十六条 社員ノ資格ハ譲渡又ハ相続スルコトヲ得ズ又其権利ハ他人ニ之ヲ行使セシムルコトヲ得ズ 社員ハ退社スル権ヲ有ス然レトモ定款ヲ以テ事業年度ノ末ニ於テノミ退社シ得ベキコト又二个年以内ノ予告斯間ヲ定ムルコトヲ得 第三十七条 第二十六条第一項第三項第二十七条第一項第三十一条第三十二条及ビ第三十六条第一項ノ規定ハ定款ニ特別ノ定ナキトキニ限リ之ヲ適用ス 第三十八条 社団ハ総会ノ決議ニ因リテ解散セラル解散ノ決議ハ定款ニ特別ノ定ナキトキハ出席社員ノ四分ノ三以上ノ同意ヲ要ス 第三十九条 社団ハ破産手続ノ開始ニ因リテ解散セラル 頭取ハ社団ノ負債超過ノ場合ニ於テ破産ノ申立ヲ為スベシ申立遅延スルトキハ遅延ニ付キ過失アル頭取ハ債権者ニ対シ連帯債務者トシテ遅延ノ為メニ生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ 第四十条 総会ノ決議又ハ頭取ノ行為カ法律ニ反スルニ因リ公益ヲ害スルトキハ其社団ヲ解散スルコトヲ得 社団ノ定款ハ経済上ノ事業ニ非ザルコトヲ目的トスルニ拘ラズ経済上ノ事業ニ従フトキハ之ヲ解散スルコトヲ得 又社団ハ其定款ニ依レバ政治上社会上又ハ宗教上ノ目的ヲ有セザルニ拘ラズ此目的ヲ取ルトキハ之ヲ解散スルコトヲ得 解散ノ手続及ビ官庁ノ管轄ハ行政上ノ係争事件ニ関シ各聯邦ニ適用セラルヽ規定ニ従フ行政訴訟手続ノ存セザル聯邦ニ於テハ営業条例第二十条及ビ第二十一条ノ規定ヲ適用ス此場合ニ於テ第一審ノ判決ハ社団所在地ノ上級行政官庁ニ於テス 第四十一条 社団カ解散セラルヽトキハ其財産ハ定款又ハ定款ニ於テ予定シタル総会若クハ其他ノ役員ノ決議ニ依リテ移属権利者ト定メラレタル者ニ帰ス 第一項ニ示ス如キ定ナキ場合ニ於テ定款ニ依レハ社団ハ全ク社員ノ利益ノ為メニ設立セラレタルモノナルトキハ其財産ハ解散ノ時ニ現在セル社員ニ等分ス否ラザル場合ニ於テハ社団所在地ノ聯邦ノ国庫ニ移属ス 第二十三条ニ示ス如キ社団ニ付テハ其総会ハ財産ヲ寄附財団又ハ公設所ニ寄贈スルコトヲ決議シタルトキハ其財産ハ社員又ハ国庫ニ帰セズ此決議ノ有効ナルニハ単ニ多数決ニテ足ル 第四十二条 社団ノ財産ハ国庫ニ移属スル場合ニ於テハ相続人曠缺ノトキ国庫ニ移属スベキ遺産ニ関スル規定ヲ准用ス国庫ハ此財産ヲ社団ノ目的ニ適スル方法ヲ以テ之ヲ使用スルコトヲ務ムベシ 社団ノ財産ハ国庫ニ移属セザル場合ニ於テハ清算ノ手続ニ依ルベシ 第四十三条 清算ハ他ニ清算人ヲ任定セザトキハ頭取之ヲ行フ清算人ノ任定ハ頭取ノ選任ニ適用スル規定及ビ第二十八条ノ規定ニ従フ 清算人ハ清算ノ目的上特別ノ事情ヲ生ゼザル限リハ頭取ノ法律上ノ位置ヲ有ス 清算人数人アル場合ニ於テ其決議ハ特別ノ定ナキトキハ総清算人ノ同意ヲ要ス 第四十四条 清算人ハ解散セラレタル社団ノ現務ヲ結了シ債務ヲ弁済シ債権ヲ行用シ其他ノ財産ヲ換価シ残額ヲ移属権利者ニ引渡スベシ又未決ノ取引ヲ結了スル為メ清算人ハ新ニ取引ヲ為スコトヲ得 債権ノ行用及ビ其他ノ財産ノ換価ハ社団ノ債務ヲ弁済シ又ハ残額ヲ移属権利者ニ分配スルニ必要ナキ場合ニハ之ヲ為スヲ要セズ 社団ハ清算ノ終結ニ至ル迄存続スルモノト見做ス但清算ノ目的上之ヲ必要トスル時ニ限ル 第四十五条 社団ノ解散ハ清算人之ヲ公告スベシ其公告ニハ債権者ニ対シ請求ノ申出ヲ為スベキ旨ヲ催告スルヲ要ス又公告ハ定款ニ定メタル新聞紙又ハ之ナキトキハ社団所在地ノ区裁判所ノ公示ニ定メラレタル新聞紙ニ掲載スベシ此公告ハ掲載ノ後第二日ヲ経過シタルトキハ其効力ヲ有ス 債権者ノ明カナルトキハ特別ノ通知ニ依リテ請求申出ヲ催告スベシ 第四十六条 移属権利者ニ財産ヲ引渡スニハ第四十五条ニ指定シタル公告ヲ為シタル後一个年ヲ経過スルコトヲ要ス 第四十七条 債権者ハ明カナルニ債権ノ申出ヲ為サヾル場合ニ於テ公ノ供托ヲ為ス権利ノ存スルトキハ債務ノ金額ヲ供托スルコトヲ要ス 弁済期限ニ達セザル債務アル場合ニ於テハ社団ノ財産ハ此債権者ニ担保ヲ供シタルトキニノミ移属権利者ニ之ヲ引渡スコトヲ得此規定ハ特ニ未定又ハ係争ノ債務ニ適用ス 第四十八条 清算人ハ第三十九条第二項及ビ第四十五条乃至第四十七条ニ規定スル所ノ義務ニ背キ又ハ社団ノ総債権者ニ完済スル前ニ過失ニ因リテ移属権利者ニ財産ヲ引渡シタル時ハ債権者ニ対シ連帯債務者トシテ之ニ因リテ生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ 第二則 登記済社団 第四十九条 第廿三条第一頃ニ掲ゲタル社団ノ登記ハ社団所在地ノ区裁判所ニ於テ之ヲ為スベシ 第五十条 登記ハ社員ノ員数七人ニ達セザレハ之ヲ為スコトヲ得ズ 第五十一条 定款ニハ社団ノ目的社名及ビ其営業所ヲ掲ゲ且登記ヲ受クベキ旨ヲ示スコトヲ要ス 社団ノ社名ハ同一ノ土地又ハ組合体ニ在リテ既ニ登記ヲ受ケタル他ノ社団ノ社名ト明カニ区別セラルヽコトヲ要ス 第五十二条 定款ニハ左ノ事項ヲ掲グルヲ要ス 一、 社員ノ入社及ビ退社ニ関スルコト 二、 社員ノ出資ニ関スルコト 三、 頭取ノ選任ニ関スルコト 四、 総会ヲ招集スルニ必要ナル条件方式及ビ総会ノ決議ノ記録ニ関スルコト 第五十三条 頭取ハ区裁判所ニ社団ノ登記ヲ申請スベシ 此申請ニハ左ノ書類ヲ添ユルコトヲ要ス 一、 七人以上ノ社員カ署名捺印シタル定款及ヒ其謄本 二、 社員ノ名簿 三、 頭取選任ニ関スル書類ノ謄本 第五十四条 登記ノ申請カ第五十条乃至第五十二条ノ要件ヲ欠クトキハ区裁判所ハ原因ヲ指示シテ之ヲ却下スベシ否ラザレハ各聯邦ノ法律ニ従ヒ管轄権ヲ有スル行政官庁ニ登記ノ申請ヲ通知スヘシ 第五十五条 行政官庁ハ社団カ会社法ニ依リテ禁シ得ヘキモノナルカ又ハ許サレザルモノナルカ若クハ政治上社会上又ハ宗教上ノ目的ヲ取ルトキハ其登記ニ対シテ故障ヲ申立ツルコトヲ得 故障ノ申立アルトキハ区裁判所ハ登記ヲ為サズシテ之ヲ頭取ニ通知スベシ故障ノ申立ハ行政訴訟ノ手続ニ従フ此手続ナキ聯邦ニ於テハ営業条例第二十条及ビ第二十一条ノ規定ニ従ヒ異議申立ノ方法ニ依リテ之ヲ争フコトヲ得 第五十六条 登記ノ申請ヲ行政官庁ニ通知シタル後六週日ヲ経ルモ故障ノ申立ナキカ又ハ既ニ申立ラレタル故障カ除去セラレ確定シタルトキハ社団ノ登記ヲ為スベシ 登記ニハ社団ノ社名其営業所定款ノ月日及ビ頭取ヲ記載スベシ頭取ノ代理権ヲ制限シ又ハ第二十七条第一項ノ規定ニ反スル頭取ノ決議ニ関スル規定モ同時ニ登記スルコトヲ要ス 第五十七条 定款ハ登記シタル後登記ノ証明ヲ附シテ之ヲ返附スベシ定款ノ謄本ハ之ヲ確認セシメ他ノ書類ト共ニ裁判所ニ之ヲ保存ス 第五十八条 社団カ登記ヲ受ケタルトキハ登記済社団ノ社名ヲ得 区裁判所ハ公示ノ為メニ定メタル新聞紙ヲ以テ登記ヲ公示スベシ 第五十九条 頭取ノ変更及ビ再任ハ頭取之ヲ区裁判所ニ申請シテ登記ヲ受クベシ此申請ニハ頭取ノ変更又ハ再任ニ関スル原本ノ謄本ノ添ユベシ 裁判所ニテ任定シタル頭取ノ登記ハ裁判所職権ヲ以テ之ヲ為ス 第六十条 頭取変更ノ登記ヲ受ケサル間ハ第三者カ法律行為ヲ為ス時此変更ヲ知ルニ非サレハ社団ハ之ヲ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス既ニ登記ヲ受ケタルトキハ第三者カ法律行為ヲ為ス時之ヲ知ラサルカ又ハ知ルヲ要スルニ非サレハ登記ノ効力ヲ受ケサルベカラズ 頭取カ登記セラレタル人ヨリ成ルコトノ証明ハ官庁ニ対シテハ区裁判所ノ登記ノ証明ニ依ル 第一項ノ規定ハ第五十六条第二項第二段ニ従ヒ登記スベキ事項ニ准用ス 第六十一条 定款変更ノ有効ナルニハ之ヲ登記スルコトヲ要ス頭取ハ定款変更ノ決議及ビ其謄本ヲ添ヘテ之ヲ申請スベシ 第五十四条乃至第五十七条ノ規定ヲ此ニ淮用ス 第六十二条 頭取ハ区裁判所ノ請求アルトキハ何時タリトモ社員ノ名簿ヲ差出スコトヲ要ス 第六十三条 社員ノ員数三人以下トナリタルトキハ区裁判所ハ頭取ノ申立ニ因リ又ハ三个月内ニ此申立ナキトキハ職権ヲ以テ頭取ノ意見ヲ聞キタル後社団ノ解散ヲ言渡スベシ此決定ハ之ヲ社団ニ送達スルヲ要ス前項ノ決定ニ対シテハ民事訴訟法ノ規定ニ従ヒ即時抗告ヲ為スコトヲ得若シ此決定カ確定スルトキハ社団ハ之ト同時ニ消滅ス 第六十四条 社団ノ解散ハ登記スルコトヲ要ス但破産開始ノ結果ニ因リテ解散スルトキハ此限ニ在ラズ 社団カ総会ノ決議又ハ社団ノ存続期間ノ経過ニ因リテ解散セラルヽ場合ニハ頭取之ヲ申出ツベシ総会ノ決議ニ因リテ解散セラルヽトキハ其決議ノ謄本ヲ添ヘテ申出ヅベシ 社団カ第四十条ノ規定ニ因リ又ハ会社法ノ規定ニ因リテ解散セラルヽトキハ管轄官庁ノ掲示ニ依リテ之ヲ登記ス 第六十五条 社団ノ破産ノ開始ハ職権ヲ以テ之ヲ登記ス開始ノ決定ノ廃止、破産ノ中止又ハ廃止ニ付テモ亦同ジ 第六十六条 清算人ハ其登記ヲ受クルコトヲ要ス算清人ノ決議ニ関シ第四十三条第三項ノ規定ニ反スル事項ニ付テモ亦同ジ 登記ハ頭取之ヲ申請スベシ其後ノ変更ニ関シテハ清算人之ヲ申請スベシ裁判所ノ任定シタル清算人ノ登記ハ裁判所職権ヲ以テ之ヲ為ス 総会ノ決議ヲ以テ任定シタル清算人ノ登記ヲ受クルニハ決議ノ謄本ヲ添ヘテ之ヲ申請スベシ又清算人ノ決議ニ関スル事項ノ登記ヲ受クルニハ此事項ヲ載セタル原本ノ謄本ヲ添ユベシ 第六十七条 登記ノ申請ハ頭取又ハ清算人自ラ之ヲ為スカ又ハ公証ヲ受ケタル表示ニ依リテ之ヲ為スベシ 第六十八条 区裁判所ハ頭取ヲシテ第五十九条第一項第六十一条第一項第六十二条第六十四条第二項及ビ第六十六条ノ規定ヲ遵守セシムル為メ三百マルク以下ノ罰金ヲ科スルコトヲ得清算人ヲシテ第六十六条ノ規定ヲ遵守セシムル為メニモ亦同ジ 第六十九条 社団登記簿ハ公衆ノ閲覧ヲ許ス登記簿並ニ社団ヨリ区裁判所ニ差出シタル書類ハ通常ノ執務時間内ハ之ヲ閲覧スルコトヲ得又登記ノ謄本ハ費用ヲ弁償シテ之ヲ求ムルコトヲ得此謄本ハ請求アルトキハ之ヲ証明スルコトヲ要ス 第二款 寄附財団 第七十条 権利能力ヲ有スル寄附財団ノ成立ニハ創立行為ノ外寄附財団ヲ設定セントスル地ノ聯邦政府ノ許可ヲ要ス寄附財団ノ所在地ハ特別ノ定ナキトキハ其事務所々在地トス 第七十一条 生存者間ノ創立行為ハ裁判上又ハ公証上ノ方式ヲ要ス 政府ノ許可ナキ間ハ創立者カ何時タリトモ脱退スルコトヲ得管轄官庁ニ対シテ許可ヲ求メタルトキハ官庁ニ対シテノミ脱退スル旨ヲ表示スルコトヲ得又創立者ハ許可ヲ求メタル後死亡スルトキハ其相続人ハ脱退スルコトヲ得ズ 政府ノ許可アリタルトキハ創立者ハ創立行為ニ因リテ約束シタル財産ヲ寄附財団ニ譲渡スベキ義務ヲ負フ譲渡ノ契約ニ因リテ移転スベキ権利ハ政府ノ許可アルト同時ニ寄附財団ニ移転ス但之ニ異ナリタル創立者ノ意思カ創立行為ニ依リテ明カナルトキハ此限ニ在ラス 第七十二条 創立行為カ遺言ニ因ル場合ニ於テ相続人又ハ遺嘱執行者カ政府ノ許可ヲ求メザルトキハ遺産裁判所ハ之ヲ求ムベシ 政府ノ許可アリタルトキハ財産移属ニ関シ寄附財団カ既ニ相続ノ前ニ成立シタリト見做ス 第七十三条 寄附財団ノ組織ハ帝国又ハ聯邦ノ法律ニ本ヅカザル限リハ創立行為ニ因リテ之ヲ定ム 第七十四条 第二十五条第二十六条第三項第二十七条乃至第三十条及ビ第三十九条第二項ノ規定ハ寄附財団ニ准用ス第二十六条第三項及ビ第二十七条第一項ノ規定ハ寄附財団ノ組織又ハ財団カ官庁ニ依リテ管理セラルヽニ因リテ之ト異ナリタル事情ヲ生セザル限リハ之ヲ准用ス第二十七条第二項及ビ第二十八条ノ規定ハ官庁ノ管理ヲ受クル寄附財団ニ適用セズ 第七十五条 寄附財団ノ消滅スルトキハ其財産ハ定款ニ於テ移属権利者ト定マレル者ニ帰ス第四十二条乃至第四十八条ノ規定ヲ此ニ准用ス 第七十六条 寄附財団ノ消滅又ハ変更ニ関スル各聯邦ノ法律規定ハ本法ノ影響ヲ受ケズ 第三款 公法上ノ法人 第七十七条 第三十条ノ規定ハ国庫其他公法上ノ団体寄附財団又ハ公設所ニ准用ス第三十九条第二項ノ規定ハ公法上ノ団体寄附財団又ハ公設所カ破産ヲ為シ得ル限リハ之ヲ准用ス 第二章 法律行為 第一節 行為ノ能力 第七十八条 左ニ掲グル者ハ行為ノ能力ヲ有セズ 一、七歳未満ノ者 一、精神病ノ為メニ意思ノ決定ヲ自由ニ為シ得ザル状況ニ在ル者 一、精神病ノ為メニ成年ヲ剥奪セラレタル者 第七十九条 行為ノ能力ヲ有セザル者ノ意思ノ表示ハ無効トス 知覚ヲ失ヒタル者カ意思ノ決定ヲ自由ニ為シ得ザル状況ニ於テ為シタル意思ノ表示ハ無効トス 第八十条 満七才以上ノ未成年者ハ第八十一条乃至第八十七条ノ規定ニ従ヒ行為ノ能力ヲ制限セラレタルモノトス 第八十一条 未成年者カ意思ノ表示ニ因リテ単ニ法律上ノ利益ヲ得ルニ非ザレハ其意思ノ表示ハ律法上ノ代人ノ同意ヲ要ス 第八十二条 未成年者カ法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ズシテ取結ビタル契約ハ法律上ノ代理人ノ追認ニ因リテ効力ヲ生ズ追認又ハ拒絶ハ相手方ニ対シテノミ之ヲ表示スルコトヲ得 法律上ノ代理人カ相手方ヨリ催告ヲ受ケタル後二週日内ニ追認セザルトキハ拒絶シタリト見做ス 未成年者カ行為ノ能力ヲ得タルトキハ其追認ハ法律上ノ代理人ノ追認ニ同ジ 第八十三条 法律上ノ代理人カ追認セザル間ハ相手方ハ契約ヨリ脱退スルコトヲ得但相手方カ契約取結ノ時未成年者ナルコト又ハ未成年者ノ主張スル法律上ノ代理人ノ同意ニ瑕疵アルコトヲ知リシトキハ此限ニ在ラズ 契約ヨリ脱退スル場合ニハ未成年者ニ対シテモ之ヲ表示スルコトヲ得 第八十四条 未成年者カ法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ズシテ取結ビタル契約ニ因リテ負担シタル債務ヲ履行シタル場合ニ於テ履行ノ為メニ費シタル財産ハ法律上ノ代理人ヨリ許サレタル目的ニ用井タルトキ又ハ随意ニ処分スルコトヲ許サレタルモノナルトキ若クハ法律上ノ代理人ノ同意ヲ得テ第三者ヨリ未成年者ノ随意ノ処分ニ委子ラレタルモノナルトキハ此契約ハ有効トス 第八十五条 未成年者カ法律上ノ代理人ノ同意ヲ得ズシテ為シタル単意行為ハ効力ヲ生セズ此場合ニ於テ法律上ノ代理人カ同意ヲ表示スルニ書面ヲ以テセザリシカ為メ相手方ヨリ遅滞ナク法律行為ヲ退ケタルトキ亦同ジ但法律上ノ代理人カ同意シタルコトヲ相手方ニ知ラシメタルトキハ相手方ハ法律行為ヲ退クルコトヲ得ズ 第八十六条 法律上ノ代理人カ後見裁判所ノ許可ヲ得テ未成年者ニ独立シテ或職業ヲ営ムコトヲ許シタルトキハ此職業ニ関スル法律行為ニ付キ未成年者ハ行為ノ能力ノ制限ヲ受ケズ但法律上ノ代理人カ後見裁判所ノ許可ヲ要スル法律行為ハ此限ニ在ラズ 未成年者カ独立シテ職業ヲ営ムベキ為メ法律上ノ代理人カ与ヘタル許諾ハ後見裁判所ノ許可ヲ得ザレハ之ヲ取消スコトヲ得ズ 第八十七条 法律上ノ代理人カ未成年者ニ或役務ニ従フベキコトヲ許シタルトキハ未成年者カ此役務ノ関係ヲ取結ビ又ハ之ヲ廃止シ若クハ之ニ因リテ負担シタルノ債務ノ履行ニ関スル法律行為ニ付キ法律上ノ代理人ノ許諾ヲ要セズ但未成年者カ之ニ因リテ法律行為ニ関スル訴訟ノ能力ヲ得ズ 法律上ノ代理人ハ未成年者ニ与ヘタル許諾ヲ取消シ又ハ之ヲ制限スルコトヲ得 特別ノ場合ニ与ヘタル許諾ハ之ト同種類ノ関係ヲ取結ブコトヲ得ベキ一般ノ許諾ト見做ス 第八十八条 浪費又ハ暴飲ノ為メニ成年ヲ剥奪セラレタル者又ハ第千七百二十七条ノ規定ニ依リテ後見ヲ必要ナリト宣言セラレ若クハ第千七百三十七条ノ規定ニ依リテ仮後見ヲ付スルコトヲ命ゼラレタル者ノ行為ノ能力ハ満七歳以上ノ未成年者ニ同ジ 第八十九条 成年剥奪ヲ宣言シタル判定カ取消ノ訴ニ因リテ廃棄セラレタル場合ニ於テ成年剥奪ノ宣言ヲ受ケタル者ト取結ビタル法律行為ハ此決定ノ為メニ効力ヲ失ハズ又法律上ノ代理人ト取結ビタル法律行為ノ効力ハ決定ノ廃棄ニ因リテ影響ヲ受ケズ 仮後見ヲ付スル場合ニ於テ成年剥奪ノ申立カ却下セラレテ確定シ又ハ成年剥奪ヲ宣言シタル決定カ取消ノ訴ニ因リテ廃棄セラレタルトキモ前項ノ規定ヲ准用ス 第二節 意思及ビ其表示 第九十条 意思ノ表示ヲ解釈スルニハ真誠ノ意思ヲ探求シテ用語ノ辞義ニ抱泥スベカラズ 第九十一条 意思ノ表示ハ表示者カ内心ニ其表示シタル事ヲ欲セザリシノミナルトキハ有効トス但或人ニ対スル意思ノ表示ニシテ相手方カ表示者ノ内心ニ之ヲ欲セザルコトヲ知レルトキハ此限ニ在ラズ 第九十二条 或人ニ対スル意思ノ表示ハ相手方ト共諾ノ上虚偽ニ表示セラル丶トキハ無効トス 虚偽行為ニ依リテ他ノ法律行為カ隠蔽セラル丶トキハ其効力ハ隠蔽セラレタル法律行為ニ関スル規定ニ依リテ之ヲ定ム 第九十三条 真誠ニ非ザル意思カ此欠欠ヲ誤認セラル丶コトナカルベシトノ予望ヲ以テ表示セラル丶トキハ無効トス 第九十四条 意思表示ノ内容ニ錯誤アルカ又ハ此内容ヲ表示スルコトヲ欲セザリシ場合ニ於テ表示者カ能ク事情ヲ知リ且之ヲ適当ニ忖度セハ意思ヲ表示セザリシト認メラルトキハ其取消ヲ為スコトヲ得 取引上重要ト認メラル丶人又ハ物ノ性質ニ関スル錯誤ハ意思表示ノ内容ノ錯誤ト見做ス 第九十五条 意思ノ表示ハ之ヲ伝フル為メニ用井ラル丶人又ハ公設所ニ依リ真誠ニ伝ヘラレザリシトキハ第九十四条ノ規定ニ従ヒ錯誤ニテ表示シタル意思表示ト同一ノ条件ニ依リテ之ヲ取消スコトヲ得 第九十六条 第九十四条及ビ第九十五条ノ場合ニ於テ意思表示ノ取消ヲ為ス権アル者ハ其原因ヲ知リタルトキ遅滞ナク之ヲ取消スコトヲ要ス離隔シタル地ニ在ル者ニ対スル取消ハ遅滞ナク之ヲ発送シタルトキハ正当ノ時ニ取消シタルモノト見做ス 第九十七条 意思ノ表示カ第九十三条ノ規定ニ依リテ無効トナリ又ハ第九十四条及ビ第九十五条ノ規定ニ依リテ取消サレタルトキハ表示者カ思意表示ヲ有効ト信ジタルカ為メニ損害ヲ蒙リタル者ニ対シ賠償ノ責ニ任ス或人ニ対スル意思ノ表示ニ付キテハ此者ニ損害ヲ賠償スベシ但賠償額ハ意思ノ表示カ有効ナルトキニ得ベカリシ利益ヲ超ユルコトヲ得ズ 被害者カ意思表示ノ無効ナルコト又ハ取消シ得ベキコトヲ知リ若クハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ損害賠償ノ責任ナシ第九十五条ノ場合ニ於テ不可抗力ノ為メニ意思ノ表示ヲ真誠ニ伝フルコトヲ得ザリシトキ亦同ジ 第九十八条 詐欺又ハ強暴ニ因リテ不法ニ意思ヲ決定セシメラレタル者ハ其意思ノ表示ヲ取消スコトヲ得 第三者カ詐欺シタル場合ニ於テ或人ニ対スル意思ノ表示ハ相手方カ詐欺ヲ知リ又ハ知ラザルベカラザリシトキニノミ取消スコトヲ得 第九十九条 第九十八条ノ場合ニ於テ取消ノ権アル者ハ脅迫カ止ミ又ハ詐欺ヲ知リタル後一ケ年内ニ取消スコトヲ要ス此期間ノ経過ニ付キテハ第百六十九条第二項及ビ第百七十一条ノ時効ニ関スル規定ヲ准用ス 意思ヲ表示シタル後三十年ヲ経過スルトキハ之ヲ取消スコトヲ得ズ 第百条 法律ノ禁止ニ反スル法律行為ハ無効トス但特別ノ規定アルトキハ此限ニ在ラズ 第百一条 法律カ特定セル人ノ利益ヲ保護スル為メニ規定シタル譲渡ノ禁止ニ反シ目的物ヲ処分シタルトキハ此者ニ対シテ効力ヲ生セズ判決又ハ強制執行若クハ差押ニ因ル処分ハ法律行為ニ因ル処分ニ同ジ 権利者ニ非ザル者ヨリ権利ヲ得タル者ノ為メニ設ケタル規定ハ此ニ准用ス 第百二条 裁判所又ハ其他ノ官㕔カ管轄権内ニ於テ発シタル譲渡ノ禁止ハ第百一条ノ法律ニ依ル譲渡ノ禁止ニ同ジ 第百三条 善良ナル風俗ニ反スル法律行為ハ無効トス 第百四条 法律行為ニ特別ナル方式ハ法律又ハ法律行為ニ依リテ之ヲ定メタル時ニノミ必要トス 法律ニ依リテ定メタル方式ヲ缺ク法律行為ハ無効トス法律行為ニ依リテ定メタル方式ヲ缺クトキ亦同ジ 第百五条 法律ニ依リテ書式ヲ定メタルトキハ証書ノ発行人ハ自ラ之ニ署名シ又ハ裁判所若クハ公証人カ認証シタル拇印ヲ捺スコトヲ要ス 契約ニ於テハ当事者ハ同一ノ証書ニ署名スルコトヲ要ス一ノ契約ニ付キ数通ノ証書アルトキハ相手方ニ与フル証書ニ署名スルニテ足ル 裁判上又ハ公証上ノ方式ヲ以テ書式ニ代ユルコトヲ得 第百六条 第百五条ノ規定ハ疑ハシキ場合ニ於テ法律行為ニ依リテ定メタル書式ニ適用ス 電信ニ依ル意思ノ表示ハ方式ヲ履ミタルモノトス但之ニ異ナル意思カ明カナルトキハ此限ニ在ラズ 前項ノ場合ニ於テ相手方ハ其後ニ至リ第百五条ノ規定ニ適スル証書ヲ請求スルコトヲ得 第百七条 離隔シタル地ニ在ル人ニ対スル意思ノ表示ハ相手方ニ到達セシ時ニ其効力ヲ生ズ 意思ノ表示カ相手方ニ到達スル前又ハ之ト同時ニ其取消カ相手方ニ到達スルトキハ意思ノ表示ハ効力ヲ生セズ 意思ノ表示者カ表示シタル後ニ死亡シ又ハ行為ノ能力ヲ失フモ意思表示ハ其効力ヲ生ズ 意思ノ表示カ到達セシトキ相手方ハ行為ノ能力ヲ失ヒタル場合ニ於テハ意思ノ表示ハ効力ヲ生セズ相手方カ行為ノ能力ヲ制限セラレタルトキ亦同ジ但意思ノ表示カ単ニ相手方ニ法律上ノ利益ヲ与フルトキ又ハ法律上ノ代理人カ同意シタルトキハ此限ニ在ラズ 第百八条 意思ノ表示カ執達吏ニ依リテ送達セラレタルトキハ相手方ニ到達シタリト見做ス此送達ハ民事訴訟法ノ規定ニ依ル 意思ノ表示者カ表示ヲ与フベキ者ヲ知ラザルコトニ付キ自己ノ懈怠ナキトキ又ハ此者ノ居所カ不分明ナルトキハ民事訴訟法ノ召喚ノ公示送達ニ適用スル規定ニ従ヒ意思ノ表示ヲ送達スルコトヲ得此許可ニ関シ第一ノ場合ニ於テハ表示者カ住所又ハ之ナキトキハ居所ヲ有スル地ノ区裁判所ノ管轄ニ属シ第二ノ場合ニ於テハ送達ヲ受クベキ者カ最後ノ住所又ハ之ナキトキハ最後ノ居所ヲ有スル地ノ区裁判所ノ管轄ニ属ス 第百九条 意思カ法律ノ規定ニ依リテ官庁ニ対シテ表示セラル丶トキハ第百七条第一項及ビ第二項ノ規定ヲ准用ス 第三節 無効及ビ取消ノ効果 第百十条 無効ノ法律行為ヲ為セシ者カ之ヲ確認スルトキハ此確認ハ新ニ法律行為ヲ為セシモノト判定ス 当事者カ無効ノ契約ヲ確認スルトキハ疑ハシキ場合ニ於テ契約ハ初ヨリ有効ナリトスル義務ヲ負フ 第百十一条 無効ノ法律行為カ他ノ法律行為ノ要件ヲ有シ且当事者カ其無効ヲ知ルトキハ他ノ法律行為ヲ為ス意ナリシコトヲ認メラル丶場合ニ於テハ他ノ法律行為ハ有効トス 第百十二条 法律行為ノ一部カ無効ナルトキハ其全部ヲ無効トス但無効ノ部分ナキモ法律行為ヲ為ス意ナリシコトヲ認メラル丶トキハ此限ニ在ラズ 第百十三条 取消シ得ベキ法律行為カ取消サル丶トキハ法律行為ハ初ヨリ無効ト見做ス 第百十四条 取消ヲ為スニハ取消ヲ受クベキ者ニ対シ之ヲ表示スベシ 左ニ掲グル者ハ取消ヲ受クベキ者トス 一、 契約ニ於テハ其相手方 一、 或人ニ対シテ為スベキ単意行為ニ於テハ此者 一、 其他ノ単意行為ニ於テハ此法律行為ニ因リテ直接ニ法律上ノ利益ヲ受ケタル者 官庁ニ於テ又ハ官庁ニ対シテ為シタル意思ノ表示ヲ取消スニハ官庁ニ対シ之ヲ表示スルコトヲ要ス 第百十五条 取消シ得ベキ法律行為カ取消ノ権アル者ノ確認ニ因リテ取消シ得ベカラザルモノトナルベシ 第四節 契約 第百十六条 単ニ当事者ノ一方ノミガ合致ヲ要スト表示シタル点ニ付キ合致セザルトキモ疑ハシキ場合ニ於テ契約ハ取結バレザルモノトス当事者カ既ニ契約ノ或事項ニ付テ合致シ之ヲ記載スルモ此合致ハ拘束力ヲ有セズ 契約ニ付キ証書ヲ作ルコトヲ約シタル場合ニ於テ之ヲ作ラザル間ハ契約カ取結バレザルモノトス 第百十七条 当事者カ取結バレタリト認ムル契約ニ於テ合致ヲ要スベキ点ニ付キ未タ合致ナキトキハ契約ハ其合致シタル点ノミニ付キ効力ヲ生ズ但合致セザリシ事項ノ取極メナキモ契約カ取結バレタルコト明カナルトキニ限ル 第百十八条 契約ノ申込ヲ為シタル者ハ之ニ拘束セラル但申込者ハ予メ此拘束ヲ除去シタルトキハ此限ニ在ラズ 第百十九条 申込ハ申込ノ拒絶又ハ第百二十条乃至第百廿二条ノ規定ニ従ヒ適当ノ時間内ニ受諾セザルコトニ因リテ消滅ス 第百二十条 現在者ニ為ス契約ノ申込ハ直チニ之ヲ受諾スルコトヲ要ス電話ニ依リテ直接ニ契約ノ申込ヲ為ストキ亦同ジ 不在者ニ為シタル契約ノ申込ハ通常ノ状況ニ於テ申込者カ受諾ノ到達ヲ待ツベキ適当ノ時間内ニ之ヲ受諾スルコトヲ要ス 第百二十一条 申込者ハ受諾ノ期間ヲ定メタルトキハ此期間内ニ受諾スルコトヲ要ス 第百二十二条 受諾ノ到達カ遅延スルモ通常ノ輸送アリシトキハ適当ノ時ニ申込者ニ到達スベキ時ニ発送セラレ且申込人モ之ヲ認メザルベカラザル場合ニ於テハ申込者ハ受諾ノ表示ヲ受取リタル後其延着ヲ受諾者ニ通知スベシ但既ニ遅延ノ通知アリタルトキハ此限ニ在ラズ 申込者カ過失ニ因リ右通知ヲ遅延スルトキハ受諾ハ延着セザリシモノト見做ス 第百二十三条 遅延シタル受諾ハ新ナル申込ト見做ス 申込ヲ拡張、制限又ハ変更シタル受諾ハ申込ヲ拒絶スルト同時ニ新ニ申込ヲ為スモノト見做ス 第百二十四条 申込者カ受諾ノ表示ヲ要セズ又ハ取引上ノ慣習カ之ヲ要セザル場合ニ於テハ申込者ニ対シ受諾ヲ表示セザルモ単ニ受諾スルトキハ契約成立ス 此場合ニ於テ申込ノ消滅スル時ハ申込又ハ其他ノ状況ニ依リテ生ズル申込者ノ意思ニ従フテ之ヲ定ム 第百二十五条 申込者カ受諾前ニ死亡シ又ハ行為ノ能力ヲ失フモ契約ノ成立ヲ妨ゲズ但申込者ノ意思カ申込又ハ其他ノ状況ニ依リテ之ニ異ナルコト明カナルトキハ此限ニ在ラズ 第百二十六条 競売ノ場合ニ於テハ競落ニ因リテ契約成立ス申出ハ一層高キ申出ニ因リ又ハ競落ナクシテ競売カ終結セラル丶ニ因リテ消滅ス 第百二十七条 契約ハ信義及ビ取引上ノ慣習ニ従フテ解釈スルコトヲ要ス 第五節 条件及ビ期限 第百二十八条 法律行為ガ停止条件附帯ニテ為サレタルトキハ其効力ハ条件成就ノ時ニ発生ス 解除条件附帯ニテ為サレタル法律行為ノ効力ハ条件成就ノ時ニ終絶シ以前ノ法律上ノ状体ハ同時二回復ス 第百二十九条 法律行為ノ内容ヨリ条件ノ成就ニ附随セシメタル結果ヲ既往ニ遡ラシムベキ場合ニ於テ条件成就スルトキハ当事者ハ此結果カ既往ニ発生シタリトスル義務ヲ負フ 第百三十条 停止条件附権利者ハ条件成就スルトキハ相手方カ条件未定ノ間ニ於テ過失ニ因リテ条件ニ係レル権利ヲ毀損シ又ハ制限シタルコトニ付キ損害賠償ヲ要求スルコトヲ得 解除条件附帯ノ法律行為ニ付キ自己ノ利益ノ為メ以前ノ法律上ノ状体ヲ回復セシムルコトヲ得ル者ハ前項ト同一ノ要件ヲ以テ同一ノ要求ヲ為スコトヲ得 第百三十一条 停止条件附帯ニテ目的物ヲ処分シタル者カ条件未定ノ間ニ於テ此物ニ加ヘタル其他ノ処分ハ条件成就ノ時条件ニ係レル効力ヲ毀損シ又ハ制限スル限度ニ於テ効力ヲ失フ此場合ニ於テ判決ニ依リ又ハ強制執行若クハ差押ノ方法ニ依リテ生ズル処分ハ法律行為ニ因ル処分ニ同ジ 前項ノ規定ハ解除条件成就ノ場合ニ於テ自己ノ権利カ終絶スベキ者ノ処分ニモ適用ス 権利者ニ非ザル者ヨリ権利ヲ得タル者ノ利益ノ為メニ設ケタル規定ハ此ニ准用ス 第百三十二条 条件ノ成就カ自己ノ不利益トナルベキ者ヨリ信義ニ反シテ妨ゲラル丶トキハ条件ハ成就シタリト見做ス 第百三十三条 法律行為ヲ為ストキ其効力ニ付キ起発期日ヲ定メタルトキハ第百二十八条第百三十条及ビ第百三十一条ノ停止条件ニ関スル規定ヲ准用シ終止期日ヲ定メタルトキハ解除条件ニ関スル規定ヲ准用ス 第六節 代理代理権 第百三十四条 代理人カ代理ノ権限内ニ於テ本人ノ名ヲ以テ為シタル意思ノ表示ハ本人ノ為メ又ハ之ニ対シテ直接ニ効力ヲ生ズ此場合ニ於テハ意思ノ表示カ明カニ本人ノ名ヲ以テ為サレタルト又ハ本人ノ名ヲ以テ表示スベキコカ事情ニ依リテ顕ハル丶トキトヲ区別セズ 他人ノ名ヲ以テ行為ヲ為スベキ意思カ明カニ顕ハレザルトキハ自己ノ名ヲ以テ行為ヲ為ス意思アルモノト見做ス 他人ニ対シテ為スベキ意思ノ表示カ其代理人ニ対シテ為サレタルトキハ第一項ノ現定ヲ准用ス 第百三十五条 代理人ニ於テ又ハ代理人ニ対シテ為シタル意思ノ表示ハ代理人ノ行為能力ノ制限ニ因リテ其効力ヲ妨ゲラル丶コトナシ 第百三十六条 意思表示ノ法律上ノ効果カ意思ノ欠缺又ハ或事情ヲ識リ若クハ識ラザルベカラザルコトニ因リテ影響ヲ受クベキ場合ニハ本人ニ依ラズシテ代理人其人ニ依リテ之ヲ定ム 代理権カ法律行為ニ因リテ与ヘラレタル場合ニ於テハ代理人カ本人ノ指定ニ従ヒ行為ヲ為シタルトキハ本人カ自ラ知リシ所ノ事情ニ関シ代理人ノ不知ヲ以テ対抗スルコトヲ得ズ知ラザルベカラサルコトカ知リタルコトト同一ニ認メラルル場合ニ於テハ本人カ知ラザルベカラザリシトキ亦同ジ 第百三十七条 代理権ハ代理人トナルベキ者又ハ第三者ニシテ代理人ト或行為ヲ為スベキ者ニ対シテ其意思ヲ表示スルコトニ依リテ之ヲ与フルモノトス 第百三十八条 代理権ノ消滅ハ之ヲ与ヘタル法律関係ニ依リテ之ヲ定ム又此法律関係ヨリ反対ノ生セザル限リハ代理権ハ其関係ノ継続スルトキト雖モ之ヲ取消スコトヲ得取消ノ表示ニ付テハ第百三十七条ノ規定ヲ准用ス 委任及ビ会社ニ関スル規定ニ依リテ消滅シタル代理権カ存続スルモノト見做サル丶場合ニ於テハ存続ノ効果ハ法律行為ヲ為ス時ニ代理権ノ消滅ヲ知リ又ハ知ラサルベカラザリシ者ニ及バズ 第百三十九条 代埋権カ第三者ニ対スル表示ニ依リテ与ヘラレタルトキハ第三者ニ其消滅ヲ通知スル迄ハ効力ヲ有ス 第百四十条 本人カ特別ノ通知又ハ公告ニ依リテ或人ニ代理権ヲ与ヘタルコトヲ通知シタルトキハ此者ハ通知ニ本ヅキテ第一ノ場合ニ於テハ特別ノ通知ヲ受ケタル第三者ニ対シ又第二ノ場合ニ於テハ凡テノ第三者ニ対シ代理権ヲ行フコトヲ得 代理権ハ通知ト同一ノ方法ヲ以テ取消サルル迄ハ存続スルモノトス 第百四十一条 本人カ代理人ニ委任状ヲ渡シ代理人カ之ヲ第三者ニ提示シタルトキハ本人カ代理権附与ノ特別ノ通知ヲ為シタルニ同シ 代理権ハ委任状カ本人ニ返還セラレ又ハ無効ノ宣言ヲ受クル迄ハ存続スルモノトス 第百四十二条 第三者カ法律行為ヲ為ス時ニ代理権ノ消滅ヲ知リ又ハ知ラザルベカラザルトキハ第百三十九条第百四十条第二項及ビ第百四十一条第二項ノ規定ヲ適用セズ 第百四十三条 代理人カ他人ニ対シテ為ス単意ノ法律行為ハ委任状ノ提示ナキガ為メ他人ヨリ遅滞ナク拒絶セラルルトキハ其効力ヲ生ゼズ 此場合ニ於テ本人カ代理権ヲ与ヘタルコトヲ他人ニ知ラシメタルトキハ此者ハ法律行為ヲ拒絶スルコトヲ得ズ 第百四十四条 代理人ハ代理権消滅スルトキハ委任状ヲ本人ニ返還スルコトヲ要ス代理人ハ委任状ヲ留置スル権ヲ有セズ 裁判所ハ本人ノ申立ニ依リ代理権ノ消滅カ疏明セラル丶トキハ決定ヲ以テ委任状ノ無効ヲ宣言スベシ裁判ヲ為ス前ニ代理人ヲ審訊スルコトヲ得又此決定ハ呼出状ノ公示送達ニ関スル民事訴訟法ノ規定ニ依リテ公示スルコトヲ要ス此場合ニ於テ無効ノ宣言ハ決定ヲ公報ニ掲載シタル最終ノ日ヨリ一ケ月ヲ経過スルトキハ効力ヲ生ズ 無効ノ宣言ニ関シテハ本人カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ区裁判所並ニ係争事物ノ価格ニ拘ラズ証書取戻ノ訴訟ニ付キ管轄権ヲ有スベキ区裁判所之ヲ管轄ス 第百四十五条 代理権ヲ有セズシテ他人ノ名ヲ以テ取結ビタル契約カ本人ノ為メニ又ハ之ニ対シテ効力ヲ生ズルニハ此者ノ追認ヲ要ス追認並ニ其拒絶ハ相手方ニ対シテノミ之ヲ表示スルコトヲ得 本人カ相手方ノ催告ヲ受取リタル時ヨリ二週日内ニ追認ヲ表示セザルトキハ之ヲ拒絶シタルニ同ジ 契約カ迫認セラレザル間ハ相手方ハ脱退スルコトヲ得但相手方カ契約取結ノ時ニ代理権ノ欠欠ヲ知ルトキハ此限ニ在ラズ又脱退ハ代理人ニ対シテモ之ヲ表示スルコトヲ得 第百四十六条 代理人トシテ契約ヲ取結ビタル者カ其代理権ヲ証明シ得ズ且本人カ契約ノ追認ヲ拒絶スルトキハ相手方ニ対シ其選択ニ依リ履行又ハ損害賠償ノ責ニ任ズ 本人カ代理権ノ欠缺ヲ知ラザリシトキハ相手方カ代理権ニ信用シタルカ為メニ受ケタル損害ノミヲ賠償スル責ニ任ズ然レドモ相手方カ契約ノ有効ナル時ニ有スル利益ノ限度ヲ超ヘズ 相手方カ代理権ノ欠欠ヲ知リ又ハ知ラザルベカラザルトキハ代理人ノ責任ヲ生セズ代理人カ行為ノ能力ノ制限セラレタル者ナルトキ亦同ジ但此場合ニ於テ代理人カ其法律上代理人ノ同意ヲ得テ行為ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラズ 第百四十七条 代理権ノ取消シ得ベキコトヲ知レルコトハ第百四十五条及ビ第百四十六条ノ場合ニ於テ取消カ行ハレタルトキハ無効ヲ知レルコトニ同ジ 第百四十六条ノ場合ニ於テ代理権ノ取消シ得ベキコトヲ知ラザルベカラザルコトニ付テモ前項ニ同ジ 第百四十八条 単意ノ法律行為ニ付テハ代理権ナキ代理ヲ許サズ然レトモ単意ノ法律行為ノ相手方カ此行為ヲ為ス時代理人カ主張スル代理権ノ欠欠ヲ争ハズ又ハ代理人カ代理権ヲ有セズシテ行為ヲ為スコトニ同意シタルトキハ契約ニ関スル規定ヲ准用ス又代理権ヲ有セザル代理人ニ対シ其同意ヲ得テ単意ノ法律行為ヲ為ストキ亦同ジ 第百四十九条 代理人ハ別段ノ許ナキトキハ本人ノ名ヲ以テ自己ト法律行為ヲ為シ又ハ第三者ノ代理人トシテ法律行為ヲ為スコトヲ得ズ但法律行為ハ単ニ義務ノ履行ニ存スルトキハ此限ニ在ラズ 第七節 承諾追認 第百五十条 契約又ハ他人ニ対シテ為スコトヲ要スル法律行為ノ効力カ第三者ノ同意ニ因リテ生ズル場合ニ於テハ同意又ハ其拒絶ハ当事者ノ一方又ハ他ノ一方ニ対シテ之ヲ表示スルコトヲ得 同意ニハ法律行為ニ付テ定メタル方式ヲ要セズ 第百五十一条 先ニ与フル同意(承諾)ハ之ヲ与ヘタル法律関係ニ於テ反対ノ生ゼザルトキハ法律行為ヲ為ス迄ハ之ヲ取消スコトヲ得取消ノ表示ニ付テハ第百五十条第一項ノ規定ヲ准用ス 第百五十二条 後ニ与フル同意(追認)ノ効力ハ反対ノ定ナキトキハ法律行為ヲ為シタル時ニ遡ルモノトス 追認前ニ追認者ガ法律行為ノ目的物ニ加ヘタル処分又ハ此者ニ対スル判決、強制執行若クハ差押ニ依リテ加ヘラレタル処分ハ追認ガ既往ニ遡ルコトニ因リテ其効力ヲ失ハズ 第百五十三条 権利者ニ非ザル者ガ権利者ノ承諾ヲ得テ目的物ニ加ヘタル処分ハ効力ヲ有ス 権利者ニ非ザル者ガ加ヘタル処分ハ権利者ガ之ヲ追認シ又ハ処分ヲ加ヘタル者ガ目的物ヲ得若クハ権利者ヨリ之ヲ相続シ 権ノ消滅スルトキハ其効力ヲ生ズ此終リノ両場合ニ於テハ互ニ一致セザル数多ノ処分カ目的物ニ加ヘラレタルトキハ最初ノ処分ノミ効力ヲ有ス 第三章 期間期限 第百五十四条 法律、裁判所ノ処分又ハ法律行為ニ依リテ定メタル期間又ハ期限ノ指定ニ関シテハ第百五十五条乃至第百六十条ノ解釈法ヲ適用ス 第百五十五条 期間ガ或事件又ハ或時刻ヨリ起算セラルルトキハ其事件ノ起リタル日又ハ其時刻ヲ含ム日ハ期間ニ算入セズ 日ノ始時ヲ以テ期間ノ起算点トスルトキハ此日ハ期間ニ算入ス年齢ノ計算上出生ノ日ニ関シテモ亦同ジ 第百五十六条 日ヲ以テ定メタル期間ハ其末日ノ経過ニ依リテ満了ス 週、月又ハ数月(一年、半年、四分一年)ヲ以テ定メタル期間ハ名称又ハ指数ニ依リ第百五十五条ノ規定ニ従ヒ期間ヲ起算スベキ日ニ相当スル末週又ハ末月ノ日ノ始時ヲ以テ満了ス月ヲ以テ定メタル期間ニ於テ起算日ガ末月ニ欠クルトキハ此月ノ末日ノ経過ニ依リテ満了ス 第百五十七条 半年ハ六个月、四分一年ハ三个月、半月ハ十五日ノ期間トス 期間ガ全一月ト半月又ハ全数月ト半月トヲ以テ定メラレタルトキハ十五日ハ最終ニ之ヲ計算ス 第百五十八条 期間伸長ノ場合ニ於テハ新期間ハ前期間ノ満了ヨリ起算ス 第百五十九条 月又ハ年ヲ以テ定メタル期間カ連続シテ経過スルコトヲ要セザル場合ニ於テハ一月ハ三十日、一年ハ三百六十五日トス 第百六十条 月ノ初ハ第一日、月ノ央ハ第十五日、月ノ終ハ其末日トス 第四章 時効 第百六十一条 作為又ハ不作為ヲ請求スル権(請求)ハ時効ニ係ルモノトス 家族上ノ関係ニ本ヅク請求ハ将来此関係ニ相当スル状体ノ回復ヲ目的トスルトキハ時効ニ係ルコトナシ 第百六十二条 時効ノ期間ハ三十年ヲ通則トス 第百六十三条 左ニ掲グル請求ハ二年ノ期間ノ満了ヲ以テ時効ニ係ルモノトス 一、 商人製造人職工及ビ技術営業人カ物品労力ノ供給又ハ委任ノ執行並ニ其立替金ニ付テ有スル請求但物品労力ノ供給又ハ委任ノ執行カ債務者ノ営業ノ為ニ為サレタルトキハ此限ニ在ラズ 二、 農業又ハ林業ヲ営ム者カ農産物又ハ林産物ヲ家事用ニ供給シタル場合ニ於テ有スル請求 三、 鉄道営業人、運送人、船長、傭馭者又ハ使丁カ運賃使賃並ニ其立替金ニ付テ有スル請求 四、 旅店又ハ飲食物営業人カ住居又ハ飲食物ノ供給其他客ノ需要ニ供シタル給付並ニ其立替金ニ付テ有スル請求 五、 富籤営業人カ其営業上有スル請求但富籤カ転売ノ為ニ売ラレタルトキハ此限ニ在ラズ 六、 動産ノ賃貸営業人カ貸賃ニ付テ有スル請求 七、 第一号ニ掲グル種類ニ属セザル者カ委任ノ執行又ハ労力ノ供給ヲ営業トスル場合ニ於テ其営業上有スル請求 八、 私役ニ従事セシ者カ俸給報酬又ハ役務上ノ収入並ニ其立替金ニ付テ有スル請求 九、 営業使用人(職人、助手、徒弟、製造所職工)日傭人又ハ手細工人カ賃銭其他資銭ニ代ヘ又ハ賃銭ノ一分トシテ約束シタル給付並ニ其立替金ニ付テ有スル請求 十、 主人カ営業使用人ニ賃銭又ハ立替金トシテ与ヘタル前貸金ニ付テ有スル請求 十一、 授業者カ授業料其他授業契約ヲ以テ定メタル給付又ハ徒弟ノ為ニ支払ヒタル立替金ニ付テ有スル請求 十二、 公私ノ教育所、養育所又ハ施療所カ教育養育施療並ニ之ニ附帯セル諸般ノ費用ニ付テ有スル請求其他施療又ハ養育ノ為メ或人ヲ引受ケタル者カ本号ニ掲グル種類ノ給付又ハ費用ニ付テ有スル請求 十三、 公私ノ教師カ報酬ニ付テ有スル請求但公立学校ニ関シ現行ノ特別制規ニ依リ払渡猶予ノ定アルトキハ此限ニ在ラズ 十四、 医師殊ニ外科医、産科医、歯科医、獣医、産科助手又ハ免許ヲ受ケズシテ医師又ハ産料医ノ業務ヲ為シタル者カ其業務執行並ニ其立替金ニ付テ有スル請求 十五、 弁護士、公証人、執達吏其他或職務執行ノ為メ公ニ任命セラレ若クハ認許セラレタル者カ国庫ニ入ルコトヲ要セザル手数料並ニ其立替金ニ付テ有スル請求及ビ証人鑑定人カ手数料並ニ其立替金ニ付テ有スル請求 十六、 当事者カ弁護士ニ渡シタル前貸金ニ付テ有スル請求 第百六十四条 利子ノ延滞セルモノ元金ノ漸次償却ノ為メ利子ト共ニ支払フベキ金額ノ延滞セルモノ第百六十三条第六号ノ規定ニ入ラザル小作料若クハ賃貸料ノ延滞セルモノ又ハ年金、留保金、給料、待命料、退隠料、養育料其他定時復帰スル期間ニ支払フベキ給付ノ延滞セルモノノ時効ハ其期間ヲ四年トス 第百六十五条 時効ハ請求ノ成立セシ時ニ始マル請求カ不作為ニ関スル場合ニ於テハ之ニ反キシ時ニ始マル 権利者カ予告ヲ為シタル後給付ヲ請求シ得ル場合ニ於テハ時効ハ告知ヲ為シ得ル時ニ始マル給付ノ為メ告知後更ニ期間ヲ定メタル場合ニ於テハ時効ハ此期間ノ継続スル間始マルコトナシ 第百六十六条 第百六十三条及ビ第百六十四条ニ掲ゲタル請求ノ時効ハ第百六十五条ニ定ムル時期ノ到来シタル年ノ満了ヲ以テ始マル債務者ノ為メ此時期後更ニ期間ヲ与ヘタル場合ニ於テハ時効ハ其期間ノ存スル年ノ満了ヲ以テ始マル 第百六十七条 時効カ停止セラルルトキハ停止ノ継続スル時日ハ時効ノ期間ニ算入セズ 第百六十八条 給付カ猶予セラレ又ハ債務者カ他ノ理由ニ因リテ一時給付ヲ拒絶スル権アルトキハ時効ハ停止ス 前項ノ規定ハ留置権、契約不履行又ハ予訴ノ抗弁カ提出セラレタル場合ニ適用セズ 第百六十九条 権利者カ時効期間ノ最終ノ六个月内ニ裁判休止ニ因リテ訴追ヲ妨ゲラルルトキハ時効ハ停止ス 前項ノ訴追カ不可抗力ニ因リ他ノ方法ニ於テ妨ゲラルルトキ亦同ジ 第百七十条 後見人ト被後見人トノ間ニ於ケル請求ニ付テハ後見ノ関係カ存続スル間時効ハ停止ス親子ノ間ニ於ケル請求ニ付テハ子ノ未成年ナル間、又夫婦ノ間ニ於ケル請求ニ付テハ夫婦ノ関係存続スル間亦同ジ 第百七十一条 法律上ノ代理人ヲ有セザル行為ノ能力ナキ者又ハ之ヲ制限セラレタル者ニ対シテ進行スル時効ハ代理ノ原因カ消滅シ又ハ代理ノ補缺アリタル時ヨリ六个月ヲ経過スル迄満了スルコトナシ時効ノ期間ハ六个月ヨリ短キトキハ時効ニ定メタル期間ヲ以テ六个月ノ期間ニ代フ 前項ノ規定ハ行為ノ能力ヲ制限セラレタル者カ訴訟能力アル場合ニ之ヲ適用セズ 第百七十二条 遺産ニ属スル請求又ハ之ニ対スル請求ノ時効ハ遺産カ相続人ニ受取ラレタル時又ハ請求ヲ受ケ若クハ之ヲ行フ代理人カ選定セラレ又ハ遺産ニ付テ破産手続カ開始セラレタル時ヨリ六个月ヲ経過スル迄満了スルコトナシ時効期間ハ六个月ヨリ短キトキハ時効期間ヲ以テ六个月ノ期間ニ代フ 第百七十三条 時効カ中断シタルトキハ既ニ経過シタル時日ハ之ヲ問ハス中断シタル時効ハ其原因ノ止ミシ時ヨリ新ニ進行ス 第百七十四条 時効ハ義務者カ権利者ニ対シテ請求ヲ確認スルコトニ因リ特ニ一部支払、利子支払又ハ担保ノ提供ヲ為スコトニ因リテ中断ス 第百七十五条 時効ハ権利者カ請求ノ履行、其確定、執行文ノ附与又ハ執行判決ノ下附ヲ求ムル為メ起訴スルコトニ因リテ中断ス 左ニ掲グル事項ハ起訴ト同一トス 一 催告手続ニ於テ支払命令ノ送達 二 破産手続ニ於テ債権ノ申出 三 訴訟ニ於テ請求ノ相殺ノ申立 四 請求カ訴訟ノ結果ニ因リテ定マルベキ場合ニ於テ訴訟中ニ為ス訴訟告知 五 執行行為ノ着手又ハ強制執行カ裁判所若クハ他ノ官庁ニ命ゼラルル場合ニ於テ強制執行ノ申立 第百七十六条 起訴ヲ許スト否トハ官庁ノ予決ニ係リ又ハ管轄裁判所カ上級裁判所ニ依リテ指定セラルベキ場合ニ於テハ時効ハ予決又ハ指定ノ請求ヲ官庁又ハ上級裁判所ニ提出スルコトニ因リテ起訴アリシト同一ノ方法ニ於テ中断ス此場合ニ於テハ訴訟ハ予決又ハ指定ノ請求ノ決定後三个月内ニ起訴スルコトヲ要ス又此期間ニ付テハ第百六十九条及ヒ第百七十一条ノ規定ヲ准用ス 第百七十七条 起訴ニ因ル中断ハ訴訟カ確定判決又ハ其他ノ方法ニ依リテ終結ニ至ル迄継続ス 訴訟カ当事者ノ合意又ハ訴訟行為ヲ為サヾルコトニ因リテ休止スルトキハ時効ノ中断ハ当事者又ハ裁判所ノ最終ノ訴訟行為ヲ以テ終ル 中断ノ終リタル後新ニ開始スル時効ハ当事者ノ一方又ハ他ノ一方カ訴訟ヲ続行スルコトニ因リテ起訴ト同一ノ方法ニ於テ中断ス 第百七十八条 訴訟カ取下ゲラレ又ハ訴訟事件ヲ決定セザル判決ニ依リテ却下セラルルトキハ起訴ニ因ル中断ハ生ゼザリシモノト見做ス 権利者カ六个月内ニ新ニ起訴スルトキハ時効ハ最初ノ起訴ニ因リテ中断シタリト見做ス此期間ニ付テハ第百六十九条及ヒ第百七十一条ノ規定ヲ准用ス 第百七十九条 民事訴訟法ノ規定ニ依リ権利拘束ノ効力ガ消滅スルトキハ催告手続ニ於テ支払命令ノ送達ニ因ル中断ハ生ゼザリシモノト見做ス 第百八十条 破産手続ニ於テ債権ノ申出ニ因ル中断ハ破産手続ノ終結スル迄継続ス 前項ノ申出カ取戻サル丶トキハ中断カ生ゼザリシモノト見做ス 債権調査ノ時申立ラレタル異議ニ因リテ訴訟ニ係レル債権ニ付テ破産手続終結ノ時或金額ガ残サレタルトキハ中断ハ破産手続終結ノ後尚ホ存続ス此場合ニ於テハ中断ハ第百七十七条ノ規定ニ従フテ終ル 第百八十一条 訴訟ニ於テ相殺ヲ申立テ又ハ訴訟告知ヲ為スコトニ因ル中断ニ付テハ第百七十七条ノ規定ヲ准用ス権利者カ訴訟終結後六个月内ニ請求ノ履行又ハ其確定ヲ求ムル為メ起訴セザルトキハ中断ハ生セザリシモノト見做ス此期間ニ付テハ第百六十九条及ビ第百七十一条ノ規定ヲ准用ス 第百八十二条 権利者ノ申立又ハ法律上ノ要件ノ欠欠ニ因リテ執行処分カ廃棄セラルルトキハ執行行為ノ着手ニ因ル中断ハ生ゼザリシモノト見做ス 強制執行ノ申立カ許サレズ又ハ執行行為ノ着手前ニ取下ゲラレ若クハ既ニ実施セラレタル執行処分カ第一項ノ規定ニ依リ廃棄セラルルトキハ此申立ニ因ル中断ハ生セザリシモノト見做ス 第百八十三条 裁判上確定シタル請求ニ付キ特ニ短期ノ時効ヲ定メタルトキト雖モ総テ三十年ヲ以テ時効ニ係ルモノトス執行シ得ヘキ和解又ハ証書ヨリ生ズル請求並ニ破産手続ニ於テ確定シタルコトニ因リテ執行シ得ベキ請求ニ付テモ亦同ジ 請求ノ確定カ定期ニ復帰シ且将来ニ満期トナルベキ給付ニ及ブ限ハ特ニ定メタル短期ノ時効ニ従フ 第百八十四条 条件附確定判決ハ第百七十七条第一項及ヒ第百八十三条第一項ノ意義ニ於ケル確定判決ト見做ス 第百八十五条 請求カ仲裁判所、特別裁判所、行政裁判所又ハ行政官庁ニ於テ主張スベキ場合ニ於テハ第百七十五条乃至第百七十九条及ビ第百八十一条乃至第百八十四条ノ規定ヲ准用ス 仲裁契約ニ於テ仲裁裁判官ノ指定ナク又ハ他ノ理由ニ因リ仲裁裁判所ノ開延ヲ請求シ得ル前或仲裁裁判官ノ指定若クハ其他ノ条件ノ履行ヲ要スル場合ニ於テハ時効ハ権利者カ事件ヲ完結スルコトニ付テ自已ノ為スベキ要件ヲ為スコトニ因リテ中断ス 第百八十六条 物上請求ヲ生ゼシメタル物件カ権利承継ニ因リテ第三者ノ占有ニ帰シタルトキハ被承継人ノ占有ノ間ニ経過シタル時効時日ハ承継人之ヲ継受ス 第百八十七条 時効満了後ハ請求ニ対シテ其主張ヲ永久ニ除却スル抗弁成立ス 時効ニ係リタル請求ヲ履行スル為メニ為シタル給付ハ時効ノ不知ニ因ルトキト雖モ其返還ヲ請求スルコトヲ得ズ義務者カ契約ニ相当スル確認又ハ履行ノ約束ヲ為シ若クハ担保ヲ供シタルトキ亦同ジ 第百八十八条 質権ニ依リテ担保セラレタル請求ノ時効ハ権利者カ質物ニ付テ履行ヲ求ムルコトヲ妨ゲス 請求ノ担保ノ為メ権利カ譲渡サレタルトキハ請求カ時効ニ係リタルコトニ因リテ其返還ヲ請求スルコトヲ得ズ 本条ノ規定ハ利子ノ淹滞又ハ其他定期復帰スル給付ニ対スル請求ノ時効ニ之ヲ適用セズ 第百八十九条 主タル請求ト共ニ之ニ属スル従タル給付ニ対スル請求ハ之ニ適用スベキ特別ノ時効カ満了セザルニ拘ラズ時効ニ係ルモノトス 第百九十条 時効ハ法律行為ニ依リテ之ヲ除却シ又ハ加重スルコトヲ得ス然レトモ時効ノ減軽殊ニ時効期間ノ短縮ニ因ル減軽ハ之ヲ為スコトヲ得 第五章 自衛、自助 第百九十一条 正当防衛ニ本ヅク行為ハ不法ニアラス 自己又ハ他人ヲシテ現ニ不法ノ攻撃ヲ免レシムル為メ必要ナル防衛ハ正当防衛トス 第百九十二条 自己又ハ他人カ将ニ受ケントスル危険カ或他ノ人ノ物件ニ本ヅク場合ニ於テ此危険ヲ免レシムル為メ其物ヲ毀損スルモ此毀損カ危険ヲ免ル為メ必要ニシテ且危険ノ程度ニ応スルトキハ不法ノ行為ヲ生セス毀損ノ行為ヲ為シタル者カ危険ノ発生ニ付キ其責ニ任スベキ場合ニ於テハ損害賠償ノ責任ヲ生ス 第百九十三条 正当ノ時期ニ官庁ノ救助ヲ求ムルコトヲ得ス且即時ノ侵犯ヲ為スニ非ザレハ請求権ノ実行ヲ無効ニ帰セシメ又ハ甚シク困難ナラシムル危険ヲ生スベキ場合ニ於テ自助ノ目的ヲ以テ物件ヲ押収シ又ハ之ヲ毀損シ若クハ義務者ヲ検束シ又ハ義務者カ其義務ニ因リテ自己ノ上ニ加ヘラルベキ行為ニ対シテ為ス抵抗ヲ除却スル者ノ行為ハ不法ニアラス 第百九十四条 第百九十三条ノ規定ニ依リテ許サレタル自助ハ危険ヲ免ル為メ必要ナル程度ヲ越ユルコト得ス 物件ヲ押収シタル場合ニ於テ強制執行ノ行ハレザル限ハ財産仮差押ヲ申請スベシ 義務者ヲ検束シタル場合ニ於テ再ビ之ヲ釈放セザル限ハ権利者ハ遅滞ナク義務者ヲ検束シタル地ノ管轄区裁判所ニ之ヲ引致シ又此区裁判所ニ於テ身体ノ保全仮差押ヲ申請スベシ此申請ヲ為スコトヲ遅延シ又ハ申請カ却下セラルルトキハ遅滞ナク押収シタル物件ヲ返還シ検束シタル者ヲ釈放スルコトヲ要ス 第百九十五条 第百九十三条ニ掲ゲタル行為ノ不法ヲ除却スルニ必要ナル要件ノ存在ヲ誤認シテ此行為ヲ為シタル者ハ宥恕スベキ錯誤ノ場合ニ於テモ他ノ一方ニ対シテ損害賠償ノ責ニ任ス 第六章 担保ノ提供 第百九十六条 担保ヲ供スベキ者ハ自己ノ撰択ニ従ヒ左ニ掲グル方法ニ依リテ之ヲ提供スルコトヲ得 一 金銭又ハ有価証券ノ供托 一 帝国又ハ聯邦ノ公債記入簿ニ登記シタル記入債権ノ質入 一 動産ノ質入 一 内国ノ地所ニ付キ抵当ノ設定 一 内国ノ地所ニ付テノ低当又ハ土地債務ノ質入但保全抵当ハ之ヲ除ク 右ノ方法ニ依リテ担保ヲ供スルコト能ハザルトキハ適当ナル保証人ヲ立ツルコトヲ得 第百九十七条 権利者ハ供托ト同時ニ供托セラレタル金銭又ハ有価証券ニ付キ質権ヲ取得ス金銭又ハ有価証券カ聯邦ノ法律ニ依リテ国庫又ハ公設所ノ所有ニ帰スルトキハ償還請求権ニ付キ質権ヲ取得ス 第百九十八条 有価証券ハ持参人払トシテ又ハ白地裏書ニ依リテ流通スベキ記名証券トシテ相場価格ヲ有シ且之ニ後見保障料ヲ附シ得ル種類ニ属スル時ニ限リ担保ニ供スルコトヲ得有価証券ト共ニ之ニ属スル利子受取利益配当及ビ証券更新ノ証書ヲ供托スルコトヲ要ス但第千二百十四条(第一草案)ノ規定ヲ妨ゲス 有価証券ハ其相場価格ノ四分三ノ価額ヲ越ヘテ担保ニ供スルコトヲ得ス 第百九十九条 金銭又ハ有価証券ノ供托ニ依リテ担保ヲ供シタル者ハ相当ノ有価証券ヲ以テ供托シタル金銭ニ代ヘ又ハ相当ノ他ノ有価証券又ハ金銭ヲ以テ供托シタル有価証券ニ代ユルコトヲ得 第二百条 帝国又ハ聯邦ノ公債記入簿ニ登記シタル記入債権ハ之ヲ取消ス場合ニ於テ其権利者ニ渡スベキ有価証券ノ相場価格ノ四分三ノ価額ヲ越ヘテ担保ニ供スルコトヲ得ス 第二百一条 動産ハ其評定価格ノ三分二ノ価額ヲ越ヘテ担保ニ供スルコトヲ得ス腐敗ノ虞アル物又ハ保存ノ特ニ困難ナル物ハ之ヲ退クルコトヲ得 第二百二条 抵当又ハ土地債務ハ之ニ後見保障料ヲ附シ得ベキ要件ニ適スル時ニ限リ担保ニ供スルコトヲ得 第二百三条 保証人ハ提供スベキ担保ニ相当スル財産ヲ有シ且内国ニ於テ普通裁判籍アルトキハ保証適当ナリトス 保証ハ先訴抗弁ヲ放棄シ書面ヲ以テ之ヲ表示スルコトヲ要ス 第二百四条 提供シタル担保カ権利者ノ過失ニ因ラスシテ不足ヲ生スルニ至リタルトキハ之ヲ補足シ又ハ他ノ担保ヲ供スルコトヲ要ス 第二編 債務関係法 第一章 債務関係ノ内容 第一節 給付ノ義務 第二百〇五条 債務関係ニ本ツキ債権者ハ債務者ニ対シ給付ヲ請求スル権ヲ有ス給付ハ作為又ハ不作為ニ存スルコトヲ得 第二百〇六条 債務者ハ誠実ニ且取引上ノ慣習ニ従ヒ給付ヲ履行スヘキ義務ヲ負フ 第二百〇七条 債務ノ目的物カ種類ニ依リテ定メラレタルトキハ中等ノ種類及ヒ品質ノ物ヲ給付スルコトヲ要ス 債務者カ前項ノ規定ニ従ヒ目的物ノ給付ニ必要ナル事項ヲ為シタルトキハ債務関係ハ此物ニ付テノミ存ス 第二百〇八条 外国ノ通貨ニ依リテ明示セラレタル金銭ノ債務カ内国ニ於テ支払ハルヘキトキハ内国ノ通貨ニ依リテ之ヲ支払フコトヲ得但外国ノ通貨ニ依ルヘキコトヲ明約シタルトキハ此限ニ在ラス 前項ノ場合ニ於テ通貨ノ換価ハ支払ノ当時ニ其地ニ於ケル市場価格ニ従フ 第二百〇九条 金銭ノ債務カ特種ノ貨幣ヲ以テ支払ハルヘキ場合ニ於テ支払ノ当時ニ此貨幣カ既ニ通用セサルトキハ貨幣ノ種類ヲ定メサリシ如ク之ヲ支払フコトヲ要ス 第二百十条 債務カ法律ノ規定又ハ法律行為ニ因リテ利息ヲ附セラルヘキ場合ニ於テ別段ノ定ナキトキハ年五分ノ利率トス 第二百十一条 利率ハ高利貸ニ関スル帝国法律ノ規定ニ反セサル限ハ随意ニ之ヲ定ムルコトヲ得 年六分以上ノ利率ニ付テハ債務者ハ半年ヲ経過シタルトキハ半ケ年ノ告知期間ヲ保チテ元金ノ弁済ヲ告知スル権ヲ有ス此権利ハ契約ニ依リテ除却又ハ制限スルコトヲ得ス 第二項ノ規定ハ債務ヲ無記名証券ニ書換ヘタル場合ニ之ヲ適用セス 第二百十二条 満期トナリタル利息ニ重利ヲ附スヘキ予約ハ無効トス 貯蓄所、信用貸附所及ヒ銀行ハ領収セラレサル元金ノ利息ヲ新ニ利息ヲ生スヘキ元金ト為スヘキコトヲ約定スルコトヲ得信用貸附所カ其貸借契約ノ代リニ利息ヲ生スヘキ無記名証券ヲ発行スル権アルトキハ此貸借ニ付キ淹滞セル利息ニ対シ年六分以下ノ利息ヲ附スヘキコトヲ予約セシムルコトヲ得 第二百十三条 損害賠償ノ義務ヲ負フ者ハ此義務ヲ負ハシムヘキ事情カ生セサリシ場合ニ存立スヘキ状況ヲ回復セシムルコトヲ要ス身体ノ傷害又ハ物ノ損害ニ因リテ賠償ノ義務ヲ生シタルトキハ債権者ハ元状回復ノ代リニ之ニ必要ナル金額ヲ請求スルコトヲ得 元状回復カ不能ナルトキ又ハ賠償ニ不充分ナルトキハ賠償者ハ債権者ニ対シ金銭ヲ以テ之ヲ賠償スルコトヲ要ス元状回復ニ付キ不相当ノ費用ヲ要スル場合ニ於テハ賠償者ハ金銭ヲ以テ賠償スル権ヲ有ス 元状回復ニ付テハ債権者ハ賠償者ニ対シ相当ノ期間ヲ定メ且此期間ノ経過後ハ元状回復ヲ拒絶スル旨ヲ表示スルコトヲ得此期間内ニ元状回復ナキトキハ債権者ハ金銭ニ依ル賠償ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ元状回復ノ請求権ハ除却セラル 第二百十四条 賠償スヘキ損害ハ債権者カ失ヒタル利得ヲモ包含ス 事物ノ通常ノ成行ニ従ヒ又ハ特別ノ事情殊ニ既ニ為シタル設計及ヒ准備ニ依リテ予期スルコトヲ得ヘカリシ利得ハ之ヲ失ヒタル利得ト見做ス 第二百十五条 義務ノ不履行ニ本ツク賠償ノ義務ハ債務者カ知リ若クハ知ラサルヘカラサリシ事情ニ依リテ予期シ得ヘカラサリシ損害ニ及ハス 第二百十六条 財産ノ損害以外ノ損害ニ本ツク金銭ニ依ル賠償ハ法律ノ指定スル場合ニ於テノミ之ヲ請求スルコトヲ得 第二百十七条 損害ノ成立ニ付キ被害者ノ過失カ之ニ加ハリタル場合ニ於テハ賠償ノ義務及ヒ賠償ノ範囲ハ其時ノ事情殊ニ損害ノ原因カ重ニ当事者ノ何レニ存スルカヲ斟酌シテ之ヲ定ム被害者カ損害ヲ避クルコト又ハ之ヲ減スルコトヲ怠リタルトキ亦同シ 第二百十八条 物又ハ権利ノ喪失ニ付キ損害賠償ノ責ニ任スル者ハ賠償権利者カ其物ノ所有権ニ本ツキ又ハ其他ノ権利ニ本ツキ第三者ニ対シテ有スル請求権ヲ自己ニ譲渡シタルトキニノミ賠償ノ義務ヲ負フ 第二百十九条 数個ノ給付中ノ一ヲ履行スヘキ債務ニ付キ疑ハシキ場合ニ於テハ債務者カ撰択権ヲ有ス 第二百二十条 撰択ハ撰択権者カ相手方ニ対シ其表示ヲ為スコトニ依リテ之ヲ行フ 前項ノ表示ハ之ヲ取消スコトヲ得ス 給付カ撰ハレタルトキハ債務者カ初ヨリ此給付ノミヲ負担シタルモノト見做ス 第二百二十一条 撰択権ヲ有スル債務者カ強制執行ノ著手前ニ撰択ヲ実行セサルトキハ債権者ハ自己ノ撰択ニ従ヒ数個ノ給付中ノ一ニ付テ強制執行ヲ為スコトヲ得但債権者カ其撰ヒタル給付ノ全部若クハ一部ヲ受取ラサル間ハ債務者ハ他ノ給付ノ一ヲ履行シテ其義務ヲ免ルコトヲ得 撰択権ヲ有スル債権者カ遅滞ニ在ルトキハ債務者ハ債権者ニ対シ相当ノ期間ヲ指定シテ撰択ヲ実行スヘキ催告ヲ為スコトヲ得債権者カ此期間内ニ撰択ヲ実行セサルトキハ撰択権ハ債務者ニ移転ス 第二百二十二条 数個ノ給付中ノ一カ初ヨリ履行不能ナルトキ又ハ後ニ至リテ履行不能トナリタルトキハ債務関係ハ其他ノ給付ニ限定セラル 給付カ撰択権ヲ有セサル当事者ノ責ニ帰スヘキ事情ニ因リテ履行不能トナリタルトキハ前項ノ限定ヲ生セス 第二百二十三条 債務者ハ一部履行ノ権ヲ有セス 第二百二十四条 債務者自ラ給付ヲ履行スルコトヲ要セサル場合ニ於テハ債務者ノ許諾ナキモ第三者之ヲ履行スルコトヲ得債務者カ之ヲ受取ルコトニ反対スルトキハ債権者ハ此給付ヲ拒絶スルコトヲ得 第二百二十五条 給付ヲ履行スヘキ場所ノ定ナキカ又ハ其時ノ事情殊ニ債務関係ノ性質ニ因リテ之ヲ定ムルコトヲ得サルトキハ債務者ハ債務関係カ発生セシ時ノ居住地ニ於テ之ヲ履行スルコトヲ要ス 債務者カ送達費用ヲ負担シタル事情ノミニ因リテ送達地ヲ以テ履行スヘキ場所ト認ムルコトヲ得ス 第二百二十六条 金銭ノ支払ハ疑ハシキ場合ニ於テハ債務者カ債権者ノ危険及ヒ費用ヲ以テ其住所ニ之ヲ送達スルコトヲ要ス債務関係ノ発生後ニ債権者カ住所ヲ変更セシニ因リテ送達ノ費用又ハ危険ヲ増シタルトキハ債権者ハ第一ノ場合ニ於テハ費用ノ増加額ヲ負担シ第二ノ場合ニ於テハ危険ヲ負担スルコトヲ要ス但履行スヘキ場合ニ関スル規定ハ之ニ因リテ影響ヲ受クルコトナシ 第二百二十七条 給付ノ履行ニ付キ時期ノ定ナキカ又ハ事情ニ因リテ之ヲ定ムルコトヲ得サルトキハ直ニ給付ヲ請求シ又ハ之ヲ履行スルコトヲ得 履行スヘキ時期ノ定アルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ債権者ハ其時期マテ給付ヲ請求スルコトヲ得サルニ反シ債務者ハ其時期以前ニ之ヲ履行スルコトヲ得ルモノト見做ス 第二百二十八条 給付ヲ履行スヘキ日又ハ之ニ付テ定メタル期間ノ末日カ日曜日又ハ履行地ニ於テ政府ヨリ認メラレタル一般ノ祭日ニ当ルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ日曜日又ハ祭日ニ次ク業日ヲ以テ履行スヘキ日トス 第二百二十九条 無利息ノ債務カ満期前ニ支払ハルルトキハ債務者ハ中間利息ニ本ツク控除ノ権ヲ有セス 第二百三十条 債務者カ其義務ノ原因タル同一ノ法律上ノ関係ニ本ツキ債権者ニ対シテ既ニ満期トナリタル請求権ヲ有スル場合ニ於テ債務関係ニ因リテ別段ノ定ナキトキハ自己ニ属スヘキ給付カ履行セラルヽマテ其負担スル給付ヲ拒絶スルコトヲ得(留置権)物ヲ引渡スヘキ義務ヲ負フ者カ其物ニ加ヘタル費用又ハ此物ニ因リテ加ヘラレタル損害ニ本ツキ既ニ満期トナリタル請求権ヲ有スルトキ亦同シ但債務者カ故意ニ本ツク不法行為ニ因リテ其物ヲ得タルトキハ此限ニ在ラス 債権者ハ担保ヲ提供シテ留置権ノ実行ヲ除斥スルコトヲ得但保証人ニ依ル担保ハ之ヲ許サス 第二百三十一条 債権者ノ訴ニ対スル留置権ノ主張ハ債務者カ自己ニ属スル給付ヲ受取リテ其給付ヲ履行スヘキ(相対履行)判決ヲ下サシムル効力ノミヲ有ス 前項ノ判決ニ本ツキ原告ハ被告カ給付ノ受取ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ自己ノ負担スル給付ヲ履行セスシテ強制執行ノ方法ニ依リ其請求権ヲ行フコトヲ得 第二百三十二条 債務者カ債務関係ノ発生後ニ生シ且自己ノ責ニ帰セサル事情ニ因リテ給付ノ履行カ不能トナリタルトキハ其義務ヲ免カル 第二百三十三条 債務者ハ別段ノ定ナキトキハ故意及ヒ一般取引ニ必要ナル注意ヲ怠リシコト(過失)ニ付キ其責ニ任ス第七百〇八条及ヒ第七百〇九条(第一草案)ノ規定ハ之ヲ准用ス自己ノ事業ニ付キ通常用フヘキ注意ヲ引受クヘキ者ハ重過失ニ本ツク責任ヲ免レス 故意ニ本ツク責任ハ予メ債務者ニ之レヲ免レシムルコトヲ得ス 第二百三十四条 債務者ハ其法律上ノ代理人及ヒ給付ヲ履行スル為メニ使用シタル者ノ過失ニ付キ自己ノ過失ト同一ノ範囲ニ於テ其責ニ任ス但第二百三十三条第三項ノ規定ハ之ヲ適用セス 第二百三十五条 未タ不能ニ帰セサル給付ノ履行ニ付キ債務者ノ不能ハ履行不能ニ同シ負担シタル物カ種類ヲ以テ定メラレタル場合ニ於テ給付カ此種類ニ依リテ尚ホ可能ナル間ハ過失カ債務者ノ責ニ帰セサルトキト雖トモ債務者ハ其不能ノ責ニ任ス 第二百三十六条 給付カ債務者ノ責ニ帰スヘキ事情ニ因リテ履行不能トナリタルトキハ債務者ハ債権者ニ対シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス 一部ノ履行不能ノ場合ニ於テ他ノ一部履行カ債権者ニ利益ナキトキハ債権者ハ尚ホ履行スルコトヲ得ヘキ給付ノ部分ヲ拒絶シテ義務全体ノ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求スルコトヲ得契約ニ本ツク脱退権ニ関スル第二百九十八条乃至第三百〇五条ノ規定ハ之ヲ准用ス 第二百三十七条 債務者カ履行不能ヲ生セシメタル事情ニ本ツキ其負担スル物ニ対シ賠償又ハ賠償ノ請求権ヲ得タルトキハ債権者ハ賠償トシテ受取リタル物ノ引渡又ハ賠償請求権ノ譲渡ヲ請求スルコトヲ得 不履行ニ本ツク債権者ノ損害賠償ノ請求権ハ此者カ第一項ニ掲クル権利ヲ行使スルコトニ因リテ得タル賠償又ハ賠償請求権ノ価格ニ付キ減少ス 第二百三十八条 履行不能カ債務者ノ責ニ帰セサル事情ニ因リテ発生シタルヤ否ヤニ付キ争アルトキハ債務者ハ証明ノ責ニ任ス 第二百三十九条 債務者カ確定判決ヲ受ケタルトキハ債権者ハ之ニ対シ給付ノ履行ニ相当ナル期間ヲ定メ且此期間ノ経過後ハ給付ノ受取ヲ拒絶スル旨ヲ表示スルコトヲ得此期間ハ債権者ノ申立ニ依リ之ヲ判決中ニ指定スルコトヲ要ス又期間ノ経過前ニ給付ノ履行ナキトキハ其不能カ債務者ノ責ニ帰セサル事情ニ因リテ生シタル場合ノ外債権者ハ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ履行ノ請求権ハ除却セラル 期間ノ経過前ニ給付ノ一部ノミノ履行ナキトキト雖モ債権者ハ第二百三十六条第二項ニ掲クル権ヲ有ス 第二百四十条 債務者ハ満期日ノ到来後ニ為サレタル債権者ノ督促ニ拘ラス給付ヲ履行セサルトキハ督促ト同時ニ遅滞ニ在ルモノトス給付ノ履行ヲ求ムル訴ノ提起及ヒ督促手続ニ於ケル支払命令ノ送達ハ亦督促ニ同シ 履行スヘキ時期カ旧ニ依リテ定メラレ又ハ告知ヲ要スル場合ニ於テ此時期カ告知後ハ旧ニ依リテ計算スヘキ方法ヲ以テ定メラレタルトキハ債務者カ此定マリタル時期ニ履行セサルニ依リ督促ヲ要セスシテ遅滞ニ在リトス 第二百四十一条 給付カ債務者ノ責ニ帰セサル事情ニ因リテ履行ナキ間ハ債務者ハ遅滞ニ附セラルルコトナシ 第二百四十二条 債務者ハ債権者ニ対シ遅滞ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス 給付カ債務者ノ遅滞ニ因リテ債権者ニ対シ利益ナキトキハ債権者ハ給付ヲ拒絶シテ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求スルコトヲ得契約ニ本ツク脱退権ニ関スル第二百九十八条乃至第三百〇五条ノ規定ハ之ヲ准用ス 第二百四十三条 債務者ハ遅滞ニ在ル間ハ総テノ過失ニ付キ其責ニ任ス又其間ハ事変ニ本ツク履行不能ノ責ニ任ス但損害カ正当ノ時期ニ給付ヲ履行シタル場合ニ於テモ発生セシモノナルトキハ此限ニ在ラス 第二百四十四条 金銭ノ債務ハ遅滞ニ在ル間ハ之ニ年五分ノ利息ヲ附スルコトヲ要ス但他ノ法律上ノ原因ニ本ツキ之ヨリ高キ利息ヲ定メタルトキハ引続キ之ヲ支払フコトヲ要ス 前項ノ規定ニ依リテ其他ノ損害ヲ主張スルコトヲ妨ケス 第二百四十五条 利息ニ対シテハ遅滞利息ヲ支払フコトヲ要セス遅滞ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ニ対スル債権者ノ請求権ハ之ニ因リテ影響ヲ受クルコトナシ 第二百四十六条 債務者カ遅滞ニ在ル間ニ滅失又ハ毀損シタル物ノ価格又ハ価格ノ差額ヲ賠償スヘキ義務ヲ負フ場合ニ於テハ債権者ハ此賠償額ニ対シ債務者カ目的物ノ履行ニ付キ遅滞ニ附セラレタル時ヨリ利息ヲ請求スルコトヲ得債権者カ此利息ヲ請求スル期間内ニ於テ収取シタル利得ニ付テハ債務者之ヲ賠償スルコトヲ要セス 第二百四十七条 金銭ノ債務ハ債務者カ遅滞ニ在ラサルトキト雖モ権利拘束ノ発生ト共ニ之ニ利息ヲ附スルコトヲ要ス債務カ後ニ至リテ満期トナルヘキトキハ其満期ヨリ利息ヲ附ス又第二百四十四条第一項及ヒ第二百四十五条第一段ノ規定ハ之ヲ准用ス 第二百四十八条 債務者カ定マリタル物ヲ引渡スヘキ場合ニ於テ権利拘束ノ発生後ハ利得ノ引渡又ハ其賠償及ヒ滅失毀損ニ本ツク損害賠償ニ対スル債権者ノ請求権及ヒ費用ノ賠償ニ対スル債務者ノ請求権ハ債務関係又ハ債務者ノ遅滞ニ本ツキテ債権者ノ為メニ別段ノ定ナキ限リハ所有権ニ本ツク請求権ノ権利拘束ノ発生後ニ於ケル所有者及ヒ占有者ノ関係ヲ定ムル規定ニ依リテ之ヲ定ム 第二節 債権者ノ遅滞 第二百四十九条 債権者ハ提供セラレタル給付ヲ受取ラサルトキハ遅滞ニ在リトス 第二百五十条 提供ノ有効ナルニハ給付カ其本旨ニ従ヒ事実上提供セラルルコトヲ要ス 第二百五十一条 債権者カ債務者ニ対シ給付ヲ受取ラサルコトヲ表示シ又ハ給付ノ履行ニ付キ債権者ノ行為殊ニ債権者カ物ヲ引取ルコトヲ要スル場合ニ於テハ債務者ノ言辞上ノ提供ノミニテ足ル 債務者ニ対シ其為スヘキ行為ヲ催告スルトキハ給付ノ提供ヲ為シタルニ同シ 債権者カ為スヘキ行為ニ付キ旧ニ依リテ其時期ヲ定メ又ハ告知ヲ要スル場合ニ於テ此時期カ告知後旧ニ依リテ計算スヘキ方法ヲ以テ定メラレタルトキハ債権者カ正当ノ時期ニ行為ヲ為サヽルコトニ依リテ別ニ給付ノ提供ヲ要セス 債務者カ提供ノ時又ハ第二項ノ場合ニ於テ債権者ノ行為ニ付キ定メラレタル時ニ給付ヲ履行スルコトヲ得サルトキハ債権者ハ遅滞ニ附セラルヽコトナシ 第二百五十二条 債務者カ債権者ノ給付ニ対シテノミ給付ヲ履行スヘキ義務ヲ負フ場合ニ於テハ債権者ハ提供セラレタル給付ヲ受取ルヘキ準備ヲ為スモ自己ニ対シテ請求セラレタル相対給付ヲ提供セサルトキハ遅滞ニ在リトス 第二百五十三条 履行スヘキ時期ヲ定メス又ハ債務者カ定マリタル時期以前ニ履行スヘキ権ヲ有スル場合ニ於テハ債権者ハ提供セラレタル給付ノ受取ニ付キ一時妨ケラルルモ之ニ因リテ遅滞ニ附セラルルコトナシ但債務者カ債権者ニ対シ相当ノ期間前ニ履行ノ通知ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス 第二百五十四条 債務者ハ債権者カ遅滞ニ在ル間ハ故意又ハ重過失ニ付テノミ其責ニ任ス 債務者カ種類ニ依リテ定メラレタル物ヲ負担シタル場合ニ於テハ危険ハ債権者カ提供セラレタル物ヲ受取ラサルコトニ因リテ遅滞ニ附セラレタル時ヨリ此者ニ移転ス 第二百五十五条 利息附ノ金銭ノ債務ニ付テハ債務者ハ債権者カ遅滞ニ在ル間ハ利息支払ノ義務ヲ負ハス 第二百五十六条 物ノ利得ヲ引渡シ又ハ之ヲ賠償スルコトヲ要スル債務者ハ債権者カ遅滞ニ在ル間ハ自己ノ収取シタル利得ニ付テノミ其義務ヲ負フ 第二百五十七条 債務者カ土地ヲ引渡スヘキ義務ヲ負フトキハ債権者ノ遅滞後ハ其占有ヲ放棄スルコトヲ得此場合ニ於テ先以テ其通知ヲ為スコトヲ得ル限ハ之ヲ為スニアラサレハ放棄スルコトヲ得ス 第二百五十八条 債務者ハ債権者ノ遅滞ノ場合ニ於テハ無効ニ帰シタル提供並ニ其負担シタル物ノ保存及ヒ保管ニ付テ要シタル費用ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得 第二章 契約ニ本ツク債務関係 第一節 契約ノ内容 第二百五十九条 不能ノ給付ヲ目的トスル契約ハ無効トス 契約ヲ取結フトキニ当事者ノ一方カ給付ノ不能ヲ知リ又ハ知ラサルヘカラサリシ場合ニ於テハ相手方カ契約ノ有効ナルコトヲ信シタルカ為メニ被リタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但賠償額ハ相手方カ契約ノ有効ナルコトニ因リテ有スル利益ノ金額ヲ越ユルコトヲ得ス又相手方カ給付ノ不能ヲ知リ又ハ知ラサルヘカラサリシ場合ニ於テハ賠償ノ責任ヲ生セス 給付ノ一部カ不能ナルニ拘ハラス契約ハ其可能ノ部分ニ付テ有効ナルトキ又ハ撰択ニ依リテ定マルヘキ数個ノ給付ノ一カ不能ナルトキハ第二項ノ規定ヲ准用ス 第二百六十条 給付ノ不能カ除去スルコトヲ得ヘク且其可能トナリタル場合ニ対シテ契約ヲ取結ヒタルトキハ給付ノ不能ハ契約ノ効力ヲ妨ケス 不能ノ給付ニ付キ停止条件付又ハ始期付ニテ取結ハレタル契約ハ条件又ハ期限ノ到来前ニ給付ノ不能カ除去セラレタルニアラサレハ無効トス 第二百六十一条 契約カ法律ノ禁止ニ反スルトキハ第二百五十九条第二項第三項及ヒ第二百六十条ノ規定ヲ准用ス 第二百六十二条 将来ノ財産若クハ其一部ヲ譲渡シ又ハ之ニ付テ用益権ヲ設定スヘキ契約ハ無効トス 第二百六十三条 現在ノ財産若クハ其一部ヲ他人ニ譲渡シ又ハ之ニ付テ用益権ヲ設定スヘキ契約ハ裁判上若クハ公証上ノ方式ヲ要ス 第二百六十四条 生存セル第三者ノ遺産ニ関スル契約ハ無効トス生存セル第三者ノ遺産ノ義務部分又ハ其遺贈ニ関スル契約ニ付キ亦同シ 前項ノ規定ハ将来ノ法定相続人間ニ於テ法定ノ相続部分又ハ相続人中ノ一人ノ遺産ノ義務部分ニ付テ取結ヒタル契約ニ付キ之ヲ適用セス但此契約ハ裁判上若クハ公証上ノ方式ヲ要ス 第二百六十五条 土地ノ所有権ヲ譲渡スヘキ契約ハ裁判上若クハ公証上ノ方式ヲ要ス此方式ヲ履マサル契約ハ土地ノ明渡及ヒ土地台帳ニ登記了リタルトキハ其全部ニ付キ効力ヲ生ス 第二百六十六条 給付カ当事者ノ一人ニ依リテ定メラルヘキトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ公平ノ見込ニ従フテ之ヲ定ムヘキモノト見做ス 前項ノ指定ハ相手方ニ対シ其意思ヲ表示スルコトニ依リテ之ヲ行フ此意思表示ハ取消スコトヲ得ス 公平ノ見込ニ従フテ指定ヲ行フヘキ場合ニ於テハ指定カ公平ニ適シタルトキニノミ相手方ヲ拘束ス公平ニ適セサルトキハ判決ニ依リテ之ヲ行フ指定カ遅延セラルルトキ亦同シ 第二百六十七条 給付ニ対スル相対給付ノ範囲ニ付キ定ナキトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ其指定ハ相対給付ヲ請求スヘキ者ニ属ス 第二百六十八条 給付ノ指定ヲ第三者ニ委子タルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ第三者ハ公平ノ見込ニ従フテ之ヲ指定スヘキモノト見做ス 数人ノ第三者カ指定スヘキトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ其一致ヲ要ス然レトモ数額カ数人ノ第三者ニ依リテ指定セラルヘキトキハ種々ノ指定ニ付キ其平均ノ数額ニ依ル 第二百六十九条 給付ノ指定ヲ委子ラレタル第三者ハ当事者ノ一方ニ対シ其意思ヲ表示スルコトニ依リテ指定ヲ為ス此指定ハ取消スコトヲ得ス 前項ノ指定ハ錯誤強暴又ハ詐欺ニ本ツキテ当事者ノミ之ヲ取消スコトヲ得其相手方ハ当事者ノ他ノ一方トス又取消権者ハ取消ノ原因ヲ知リタルトキハ遅滞ナク之ヲ行フコトヲ要ス 第二百七十条 第三者カ公平ノ見込ニ従フテ給付ヲ指定スヘキ場合ニ於テ其指定カ明ニ不公平ナルトキハ当事者ヲ拘束セス此場合ニ於テハ給付ノ指定ハ判決ニ依ル又第三者カ指定スルコト能ハス又ハ之ヲ欲セサルカ若クハ遅延スルトキ亦同シ 第三者カ随意ニ給付ヲ指定スヘキ場合ニ於テ指定スルコト能ハス又ハ之ヲ欲セサルカ若クハ遅延スルトキハ契約ハ其効力ヲ生セス 第二節 双務契約 第二百七十一条 双務契約ノ各当事者ハ相手方ニ先チテ履行スヘキ義務ナキ限ハ相対給付ノ履行アルマテ自己ノ負担スル給付ヲ拒絶スルコトヲ得数人ニ対シテ給付ヲ為スヘキ場合ニ於テハ相対給付ノ全部ノ履行アルマテ各人ニ対シ其受クヘキ部分ヲ拒絶スルコトヲ得又第二百三十条第二項ノ規定ハ之ヲ適用セス 相手方カ一部ノ履行ヲ為シタル場合ニ於テ相対給付ノ拒絶カ事情ニ因リ殊ニ割合ニ淹滞部分ノ些少ナルニ因リテ信義ニ反スルトキハ之ヲ拒絶スルコトヲ得ス 第二百七十二条 双務契約ニ本ツキ相手方ニ先チテ履行スヘキ義務アル者ハ契約ヲ取結ヒタル後相手方ノ財産ノ関係ニ付キ相対給付ノ請求権ヲ著シク危険ナラシムヘキ状況ノ生シタルトキハ相対給付カ履行セラルルカ又ハ之ニ対シテ担保カ提供セラルルマテハ自己ノ負担スル給付ヲ拒絶スルコトヲ得 第二百七十三条 双務契約ニ本ツキ当事者ノ一方カ其受クヘキ給付ニ付キ訴訟ヲ提起シタル場合ニ於テ相手方カ相対給付ノ履行スル迄其負担スル給付ヲ拒絶スルコトヲ得ル権利ノ主ハ被告カ引換ニテ履行スヘキ判決ヲ下サシムル効力ノミヲ有ス 当事者ノ一方カ相手方ニ先チテ履行スヘキ場合ニ於テ相手方カ給付ノ受取ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ此者ニ対シ相対給付ヲ受取リタル後其負担スル給付ヲ履行スヘキ判決ヲ請求スルコトヲ得 強制執行ニ関シテハ第二百三十一条第二項ノ規定ヲ適用ス 第二百七十四条 双務契約ニ於テ当事者ノ一方ハ其負担スル給付カ当事者双方ノ責ニ帰セサル事情ニ因リテ履行不能トナリタルトキハ相対給付ノ請求権ヲ失フ一部ノ履行不能ノ場合ニ於テハ相対給付ノ請求権ハ第三百九十二条(第一草案)ノ規定ニ従ヒ割合ヲ以テ減少ス 相手方カ第二百三十七条ノ規定ニ従ヒ債務ノ目的物ニ対スル賠償ノ引渡又ハ賠償請求権ノ譲渡ヲ請求スルトキハ尚ホ相対給付ノ義務ヲ負担ス然レトモ賠償額又ハ賠償請求権ノ価格カ債務ノ目的物ノ価格ヨリ少キトキハ第三百九十二条(第一草案)ノ規定ニ従ヒ相対給付ノ請求権ハ割合ヲ以テ減少ス 前項ノ規定ニ従ヒ負担外ノ相対給付ヲ履行シタルトキハ不当利得ノ引渡ニ関スル規定ニ従ヒ給付シタルモノヲ取戻スコトヲ得 第二百七十五条 双務契約ニ於テ当事者ノ一方ハ其負担スル給付カ相手方ノ責ニ帰スヘキ事情ニ因リテ履行不能トナリタルトキハ相対給付ノ請求権ヲ有ス然レトモ履行ヲ免レタルニ因リテ費スコトヲ要セサリシモノ又ハ其労力ヲ他ニ使用スルコトニ因リテ得タルモノ若クハ故意ニ怠ルニアラサレハ得ヘカリシモノノ価格ヲ差引カシムルコトヲ要ス 当事者ノ一方ノ負担スル給付カ此者ノ責ニ帰セサル事情ニ因リテ相手方カ受取ニ付キ遅滞ニ在ル時ニ履行不能トナリタルトキ亦同シ 第二百七十六条 双務契約ニ於テ当事者ノ一方ノ負担スル給付カ此者ノ責ニ帰スヘキ事情ニ因リテ履行不能トナリタルトキハ相手方ハ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求シ又ハ契約ヨリ脱退スルコトヲ得一部ノ履行不能ノ場合ニ於テ契約ノ一部履行カ自己ニ利益ヲ有セサルトキハ第二百三十六条第二項ノ規定ニ従ヒ全部ノ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求シ又ハ契約ノ全部ヨリ脱退スルコトヲ得又損害賠償ノ請求権及ヒ脱退権ノ代ハリニ第二百七十四条ノ場合ニ付キ規定シタル権利ヲ主張スルコトヲ得 第二百三十九条ノ場合ニ於テ期間ノ経過前ニ給付ノ履行ナク又ハ其一部ノミ履行セラレタルトキ亦同シ 第二百七十七条 双務契約ニ於テ当事者ノ一方カ其負担スル給付ノ履行ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ相手方ハ相当ノ期間ヲ指定シ且ツ此期間ノ経過後ハ給付ノ受取ヲ拒絶スル旨ヲ表示スルコトヲ得此期間内ニ給付ノ履行ナキトキハ相手方ハ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求シ又ハ契約ヨリ脱退スルコトヲ得此場合ニ於テハ履行ノ請求権ハ除却セラル又期間ノ経過前ニ一部ノミノ履行アリタルトキハ第二百七十六条第一項第二段ノ規定ヲ准用ス 契約ノ履行カ遅滞ノ為メニ相手方ニ利益ヲ有セサルトキハ相手方ハ期間ヲ指定スルコトヲ要セスシテ第一項ノ権利ヲ有ス 第二百七十八条 当事者ノ一方ノ給付カ確定シタル時期又ハ期間内ニ履行セラルヘキコトカ双務契約ニ本ツキテ生スル場合ニ於テ此時期又ハ期間内ニ其履行ナキトキハ相手方ハ契約ヨリ脱退スルコトヲ得此場合ニ於テ債務者ハ債権者ニ対シ相当ノ期間ヲ指定シテ尚ホ履行ヲ求ムルヤ否ヤノ表示ヲ為スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ得債権者カ此期間内ニ其意思ヲ表示セサルトキハ履行ノ請求権ハ除却セラル 債務者カ遅滞ニ在ル場合ニ於テ債権者カ契約ヨリ脱退セサル限ハ履行ヲ請求スル代ハリニ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求スルコトヲ得 第二百七十九条 第二百七十六条乃至第二百七十八条ニ規定スル脱退権ニ関シテハ契約ニ本ツク脱退権ニ関スル第二百九十八条乃至第三百〇五条ノ規定ヲ准用ス相手方ノ責ニ帰セサル事情ニ因リテ脱退シタル他ノ当事者ハ不当利得ノ引渡ニ関スル原則ニ従フテ其責ニ任ス 第三節 第三者ニ給付ヲ為スヘキ約束 第二百八十条 第三者ニ為スヘキ給付ハ契約ニ依リテ第三者カ直接ニ給付ヲ請求スル権利ヲ取得スヘキ効力ヲ以テ之ヲ諾約スルコトヲ得 第三者カ権利ヲ取得シタルカ又ハ其権利カ即時若クハ条件付ニテ成立シタルカ又ハ当事者カ第三者ノ同意ナクシテ其権利ヲ変更シ又ハ消滅セシムル権限ヲ留保シタルカハ別段ノ定ナキトキハ事情ニ依リ殊ニ契約ノ目的ニ従フテ之ヲ定ム 第二百八十一条 他人ニ対シ其債務ヲ引受ケスシテ債権者ニ弁済スヘキ義務ヲ負担シタル者アルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ債権者ハ此者ニ対シ右ノ契約ニ因リテ直接ニ債務ノ弁済ヲ請求スヘキ権利ヲ取得シタルモノト見做サス 第二百八十二条 生命保険又ハ年金ノ契約ニ於テ保険額又ハ年金ヲ第三者ニ支払フベキコトヲ約束シ或ハ無償ノ授与ニ付キ第三者ニ給付ヲ為スベキコトヲ受与者ニ負担セシメ若クハ財産又ハ貨物ノ引受ニ付キ其報酬トシテ引受人カ第三者ニ給付ヲ為スベキコトヲ約束シタルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ第三者ハ此契約ニ因リテ直接ニ給付ヲ請求スヘキ権利ヲ取得シタルモノト見做ス 第二百八十三条 受約者ノ死後第三者ニ給付ヲ為スヘキトキハ疑ハシキ場合ニ於テ第三者ハ受約者カ死亡セシ時ニ給付ニ付キ其権利ヲ取得ス 受約者カ第三者ノ出生前ニ死亡シタルトキハ第三者ニ給付ヲ為スヘキ契約ハ之ヲ変更シ又ハ消滅セシムルコトヲ得ス但此権限ヲ留保シタルトキハ此限ニ在ラス 第二百八十四条 受約者カ諾約者ノ同意ナクシテ契約ニ指定セル第三者ノ代ハリニ他人ヲ置クベキ権限ヲ留保シタルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ死亡処分ニ依リテモ亦之ヲ行フコトヲ得 第二百八十五条 第三者カ諾約者ニ対シ契約ニ因リテ取得シタル権利ヲ除却スルトキハ之ヲ取得セサリシモノト見做ス 第二百八十六条 契約ヨリ生スル抗弁ハ諾約者モ亦第三者ニ対シテ之ヲ有ス 第二百八十七条 受約者ハ給付ニ対スル権利カ第三者ニ属スルトキト雖モ之ヲ請求スルコトヲ得但之ニ異ナル当事者ノ意思カ明ナルトキハ此限ニ在ラス 第四節 手附、違約金 第二百八十八条 契約ヲ結フニ当リ手附トシテ或物ヲ与フルトキハ之ヲ以テ契約取結ノ徴ト見做ス 手附ハ疑ハシキ場合ニ於テハ之ヲ解約金ト見做サス 第二百八十九条 手附ハ疑ハシキ場合ニ於テハ之ヲ与ヘタル者ノ負担スル給付ニ算入スルコトヲ要ス又此算入ヲ為スコト能ハサルトキハ契約履行ノトキニ之ヲ返還スルコトヲ要ス 契約カ取消サレタルトキハ手附ハ之ヲ返還スルコトヲ要ス 第二百九十条 手附ヲ与ヘタル者ノ負担スル給付ハ此者ノ責ニ帰スヘキ事情ニ因リテ履行不能トナリ又ハ契約ノ取消ニ付テ此者カ其責ニ任スヘキトキハ手附ノ受領者ハ之ヲ保持スルコトヲ得受領者カ不履行ニ本ツキ損害賠償ヲ請求スルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ手附ハ之ヲ賠償額ニ対シテ計算スルコトヲ要ス又此計算ヲ為スコト能ハサルトキハ賠償履行ノトキニ之ヲ返還スルコトヲ要ス 第二百九十一条 債務者カ債務ヲ履行セス又ハ適当ニ履行セサルトキハ債権者ニ対シ其罰トシテ或金額ヲ支払フベキコトヲ約束シタル場合ニ於テ履行ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ違約罰ハ其効力ヲ生ス又負担シタル給付カ不作為ヲ目的トスル場合ニ於テハ之ニ反対ノ行為ヲ為シタルトキニ其効力ヲ生ス 第二百九十二条 債務者カ債務ヲ履行セサルトキニ対シ違約罰ヲ約束シタル場合ニ於テハ債権者ハ有効トナリタル違約罰ヲ債務ノ履行ニ代ヘテ請求スルコトヲ得債権者カ違約罰ヲ撰ブ旨ヲ債務者ニ表示スルトキハ債務履行ノ請求権ハ除却セラル 債権者カ不履行ニ本ツク損害賠償ノ請求権ヲ有スルトキハ其最下額トシテ有効トナリタル違約罰ヲ請求スルコトヲ得違約罰ノ撰択ニ因リテ其他ノ損害ノ主張ハ妨ケラルルコトナシ 第二百九十三条 違約罰ハ債務者カ其債務ヲ適当ノ方法殊ニ定マリタル時ニ履行セサル場合ニ対シテ之ヲ約束シタルトキハ債権者ハ債務ノ履行ト共ニ有効トナリタル違約罰ヲ請求スルコトヲ得債権者カ不適当ナル履行ニ本ツク損害賠償ノ請求権ヲ有スルトキハ第二百九十二条第二項ノ規定ヲ適用ス又債権者カ債務履行ヲ受取リタルトキハ其受取ノ時ニ違約罰ニ対スル権利ヲ留保シタルニアラサレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス 第二百九十四条 違約罰トシテ金銭支払以外ノ或給付ヲ約束シタルトキハ第二百九十一条乃至第二百九十三条ノ規定ヲ適用ス此場合ニ於テ違約罰ヲ撰ヒタルトキハ損害賠償ノ請求権ハ除却セラル 第二百九十五条 有効トナリタル違約罰カ過分ニ多額ナルトキハ債務者ノ申請ニ因リ判決ヲ以テ相当ノ金額マテ之ヲ低減スルコトヲ得此場合ニ於テハ債権者ノ財産上ノ利益ノミナラス総テ正当ノ利益ハ之ヲ斟酌スルコトヲ要ス又既ニ支払ヒタル違約罰ハ之ヲ低減スルコトヲ得ス 第二百九十一条及ヒ第二百九十四条ノ場合ノ外或行為ヲ為シ又ハ為サヽルコトニ対シテ違約罰ヲ約束シタルトキ亦同シ 第二百九十六条 給付ノ約束カ法律ノ規定ニ因リテ無効ト認メラルルトキハ其不履行ニ対スル違約罰ノ合意ハ当事者カ給付ノ約束ノ無効ナルコトヲ知リタルトキト雖モ無効トス 第二百九十七条 債務者カ債務ヲ履行シタルヲ以テ違約罰ノ履行ヲ争フトキハ債務ノ履行ヲ証明スル責ニ任ス但負担シタル給付カ不作為ヲ目的トスルトキハ此限ニ在ラス 第五節 解除 第二百九十八条 契約ニ付キ当事者ノ一方カ留保シタル解除権ヲ行フトキハ当事者双方ハ契約ヲ取結ハサリシ如ク為スコトヲ要ス 各当事者ハ契約ニ因リテ負担スル給付ヲ拒絶スルコトヲ得又其受取リタル給付ヲ返還スルコトヲ要ス既ニ為シタル労役及ヒ物ノ使用、収益ヲ許シタルコトニ付テハ其価格ヲ計算スルコトヲ要ス 利得ノ引渡又ハ其換価ニ対スル請求権、滅失毀損ニ本ツク損害賠償ノ請求権及ヒ費用賠償ノ請求権ハ所有権ニ本ツク請求権ニ付テ権利拘束ヲ生シタル時ヨリ所有者ト占有者トノ関係ニ対シテ適用セラルル規定ニ従フテ之ヲ定ム又金銭ハ其受領ノ時ヨリ之ニ利息ヲ附スルコトヲ要ス 第二百九十九条 解除ニ因リテ生スル双方ノ義務ハ相互引換ニテ之ヲ履行スルコトヲ要ス又第二百七十一条及ヒ第二百七十二条ノ規定ハ之ヲ准用ス 第三百条 解除ハ其権利者カ相手方ニ対シ解除ノ意思ヲ表示スルコトニ依リテ之ヲ行フ此意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得ス 第三百〇一条 解除ハ権利者ノ受取リタル物カ偶事ニ因リテ滅失スルモ除却セラルヽコトナシ 第三百〇二条 左ノ場合ニ於テハ解除ハ除却セラル 一、 権利者カ受取リタル物ノ滅失又ハ重大ノ毀損ニ付テ其責ニ任スヘキトキ此場合ニ於テ著シキ部分ノ滅失ハ重大ナル毀損ニ同シ 二、 権利者カ受取リタル物ヲ加ヘ又ハ改造ニ因リテ他ノ種類ノ物ニ変シタルトキ 第三百〇三条 権利者カ受取リタル物ヲ譲渡シタルカ為ニ之ヲ返還スルコトヲ得ス又ハ第三者ノ権利ヲ以テ之ニ負担ヲ加ヘ且此権利ヲ除去スルコト能ハサルトキハ解除ハ除却セラル此場合ニ於テ判決又ハ強制執行若クハ差押ノ方法ニ依ル処分ハ法律行為ニ本ツク処分ニ同シ 第三百〇四条 解除権ノ行使ニ付キ期間ノ定ナキトキハ権利者ニ対シ相手方ハ其行使ニ付キ相当ノ期間ヲ指定スルコトヲ得此期間内ニ解除ノ意思ヲ表示セサルトキハ解除権ハ消滅ス 第三百〇五条 当事者ノ一方カ数人ナルトキハ解除権ハ此総テノ者ヨリ又総テノ者ニ対シテノミ之ヲ行フコトヲ得解除権カ権利者ノ一人ニ付テ消滅スルトキハ他ノ権利者ニ付テモ消滅ス 第三百〇六条 解除ハ相手方ノ債務不履行ニ対シテ留保セラレタル場合ニ於テ解除ノ意思表示ハ相手方カ相殺ニ因リテ其債務ヲ免ルルコトヲ得且解除後遅滞ナク相殺ノ意思ヲ表示スルトキハ無効トス 第三百〇七条 解除ハ相手方ノ債務不履行ニ対シテ留保セラレタル場合ニ於テ相手方カ債務ヲ履行シタルニ因リテ解除ノ意思表示ヲ争フトキハ其履行ヲ証明スル責ニ任ス但負担シタル給付カ不作為ヲ目的トスルトキハ此限ニ在ラス 第三百〇八条 解除カ解約金ノ支払ニ対シテ留保セラレタル場合ニ於テハ解除ノ意思表示ハ之ヲ為ス時又ハ其前ニ解約金ノ支払ナク且相手方カ此理由ニ本ツキ遅滞ナク解除ノ意思表示ヲ拒絶スルトキハ無効トス但拒絶後遅滞ナク解約金ヲ支払ヒタルトキハ此限ニ在ラス 第三百〇九条 債務者カ債務ヲ履行セサルトキハ契約ニ本ツク自己ノ権利ヲ失フヘキ旨ノ留保ヲ以テ契約ヲ取結ヒタル場合ニ於テ債務者カ債務ヲ履行セサルトキハ債権者ハ契約ヲ解除スルコトヲ得 第六節 片務約束 第三百十条 受諾セラレサル片務約束ハ債務ヲ生セス 第三章 債務関係ノ消滅 第一節 弁済 第三百十一条 債務者カ負担シタル給付ヲ債権者ニ履行スルトキハ債務関係ハ消滅ス 給付カ弁済ノ目的ヲ以テ第三者ニ為サレタルトキハ第百五十三条ノ規定ヲ適用ス 第三百十二条 債権者カ弁済トシテ自己ニ提供セラレタル給付ヲ弁済トシテ受取リタル場合ニ於テ給付カ債務者ニ負担シタルモノト異ナルカ又ハ不完全ナルカ為メニ之ヲ以テ弁済ト認ムルコトヲ欲セサルトキハ証明ノ責任ハ債権者ニ帰ス 第三百十三条 債権者カ債務者ノ負担シタル給付ニ代ヘ他ノ給付ヲ弁済トシテ受取リタルトキハ債務関係ハ消滅ス 債務者カ弁済ノ目的ヲ以テ債権者ニ対シ新義務ヲ負ヒタルトキ疑ハシキ場合ニ於テハ新義務ハ弁済ニ代ヘテ之ヲ負担シタルモノト見做サス 第三百十四条 物又ハ第三者ニ対スル債権若クハ其他ノ権利カ弁済ニ代ヘテ与ヘラレタルトキハ債務者ハ権利又ハ物ノ瑕疵ニ付キ売主ト同一ノ方法ニ依リテ担保ノ責ニ任ス 第三百十五条 債務者カ債権者ニ対シ数個ノ債務関係ニ本ツキ一様ノ性質ヲ有スル数個ノ給付ヲ為スヘキ場合ニ於テ其為シタル給付カ総債務ヲ消滅セシムルニ足ラサルトキハ債務者カ弁済ノ時ニ給付ヲ充当セシメタル債務ハ消滅スルモノトス 前項ノ指定ナキトキハ給付ハ先ツ満期トナリタル債務ヲ弁済ス満期トナリタル数個ノ債務アルトキハ債権者ニ取リテ担保ノ少キモノヲ先ニシ担保ノ一様ナル数個ノ債務アルトキハ債務者ニ取リテ負担ノ重キモノヲ先ニシ負担ノ一様ナル数個ノ債務アルトキハ其旧キモノヲ先ニシ同一ノ日附ヲ有スル数個ノ債務アルトキハ各債務ニ対シ其額ニ応シテ之ヲ弁済ス 第三百十六条 債務者カ元本ノ外利息及ヒ費用ヲ支払フヘキ場合ニ於テ全債務ヲ消滅セシムルニ足ラサル給付ヲ為シタルトキハ順次ニ費用利息及ヒ元本ニ充当ス債務者カ之ト異ナリタル充当ヲ定ムルトキハ債権者ハ給付ヲ受取ルコトヲ拒絶スルコトヲ得 第三百十七条 債権者カ給付ヲ受取ルニ当リ請求ニ因リ受取証書ヲ交附スルコトヲ要ス 通常ノ書式ニ異ナル書式ノ受取証書ヲ交附セシムルコトニ付キ債務者カ法律上ノ利益ヲ有スルトキハ債権者ハ此書式ニ従フコトヲ要ス 第三百十八条 受取証書ノ費用ハ債務者ト債権者トノ関係ニ因リテ別段ノ定ナキ限ハ債務者之ヲ負担シ且先払スルコトヲ要ス債権ノ譲渡又ハ相続ニ依リテ数人ノ債権者カ最初ノ債権者ニ代ハリタルカ為メニ増加シタル費用ハ債権者ノ負担ニ帰ス 第三百十九条 受取証書ノ持参人ハ給付ヲ受取ルヘキ権限アルモノト見做ス但給付ヲ為ス者ニ知レタル事情カ右権限ヲ認ムルコトニ反スルトキハ此限ニ在ラス 第三百二十条 債権ニ対シ負債証書カ交附セラレタル場合ニ於テハ債務者ハ受取証書ト共ニ負債証書ノ返還ヲ請求スルコトヲ得債権者ニ負債証書ヲ返還スルコト能ハサル旨ヲ主張スルトキハ債務者ハ債務消滅ノ公認ノ承認証書ヲ請求スルコトヲ得 第二節 供託 第三百二十一条 金銭、高価物、有価証券及ヒ其他ノ証書ハ債権者其受取ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ債務者ハ債権者ノ為メニ公設供託所ニ之ヲ供託スルコトヲ得 債権者其人ニ存スル原因ニ因リ又ハ宥恕スヘキ事情ニテ債権者ヲ確知セサルカ為メニ債務者カ其債務ヲ履行スルコトヲ得ス又ハ安全ニ履行スルコトヲ得サル場合ニ於テハ前項ノ規定ヲ適用ス 第三百二十二条 債務者カ債権者ノ給付ニ対シテ自己ノ給付ヲ為スヘキ義務ヲ負担シタル場合ニ於テハ供託物ヲ受取ルヘキ債権者ノ権利ヲ其相対給付ノ履行ニ係ラシムルコトヲ得 第三百二十三条 供託ハ債務履行地ノ供託所ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス債務者カ他ノ場所ニ供託スルトキハ債権者ニ対シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス 債務者ハ其及フ限ハ遅滞ナク債権者ニ供託ノ通知ヲ為スコトヲ要ス之ヲ怠リタルトキハ損害賠償ノ責ニ任ス 第三百二十四条 郵便ニ依リテ供託物ヲ供託所ニ送致シタルトキハ供託ノ効力ハ其物ヲ郵便ニ交附シタル時ニ遡ル 第三百二十五条 債務者ハ供託物ヲ取戻スヘキ権ヲ有ス 左ノ場合ニ於テハ供託物ノ取戻ヲ許サス 一、 債務者カ供託所ニ対シ取戻権ヲ放棄セシ旨ヲ表示シタルトキ 二、 債権者カ供託所ニ対シ受取ノ意思ヲ表示シタルトキ 三、 供託所ニ対シ債権者ト債務者ノ間ニ下サレタル確定判決ニシテ供託ヲ以テ適法ト宣言スルモノカ提示セラレタルトキ 第三百二十六条 供託物ノ取戻権ハ質権ノ目的タルコトヲ得ス 債務者ノ財産ニ付キ破産カ開始セラレタルトキハ其手続中ハ債務者ハ前項ノ取戻権ヲ行使スルコトヲ得ス 第三百二十七条 供託物ノ取戻カ除却セラレタルトキハ債務者ハ供託ニ因リテ債権者ニ対シ供託ヲ為シタル時ニ給付ヲ履行シタルト同シク其義務ヲ免カル 前項ノ取戻カ除却セラレサル間ハ債務者ハ債権者ヲ拒絶シテ供託物ニ係ラシムルコトヲ得又物カ供託セラルル間ハ債権者ハ其危険ヲ負担シ債務者ハ利息ヲ支払ヒ又ハ収取セサル利得ヲ賠償スヘキ義務ヲ免カル 債務者カ供託物ヲ取戻シタルトキハ供託ヲ為サヽリシモノト見做ス 第三百二十八条 供託所ノ規則ニ従ヒ債権者カ供託物ヲ受取ルヘキ権利ヲ有スルコトヲ証明スル為メ此権利ヲ承認スル債務者ノ意思表示ヲ要シ又ハ之ニ依リテ証明スルニ足ルトキハ債権者ハ債務者ニ対シ其意思表示ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ供託セラレサリシトキニ給付ヲ請求スルニ付キ定メラレタルト同一ノ要件ニ従フコトヲ要ス 第三百二十九条 供託ノ費用ハ債務者カ供託物ヲ取戻サヾル限ハ債権者ノ負担ニ帰ス 第三百三十条 債務者カ供託ニ通セサル動産ヲ給付スヘキ場合ニ於テ債権者カ受取ニ付キ遅滞ニ在ルトキ又ハ第三百二十一条第二段ノ場合ニ於テ右ノ目的物カ腐敗スル虞アルトキ若クハ其保存ニ付キ過分ノ費用ヲ要スルトキハ債務者ハ之ヲ競売セシメ其代価ヲ債権者ノ為メニ供託スルコトヲ得競売ハ履行地ノ執達吏又ハ競売ノ権限ヲ有スル其他ノ官吏若クハ公任競売者ニ依リテ之レヲ為サシムルコトヲ要ス 競売ハ其予告ヲ為シ得ル限ハ之ヲ為スニアラサレハ売却スルコトヲ得ス然レトモ物カ腐敗又ハ危険ニ瀕スルトキハ右ノ予告ヲ要セス又債務者ハ其及フ限ハ遅滞ナク競売ノ実行ヲ通知スルコトヲ要ス之ヲ怠リタルトキハ損害賠償ノ責ニ任ス 競売ノ費用ハ債務者カ供託シタル代価ヲ取戻サヽル限ハ債権者ノ負担ニ帰ス 第三節 相殺 第三百三十一条 二人互ニ同種類ノ目的ヲ有スル給付ヲ負担スル場合ニ於テハ各当事者ハ其受クヘキ給付ヲ請求スルコトヲ得又其負担スル給付ヲ履行スルコトヲ得ルトキハ自己ノ債権ト相手方ノ債権ヲ相殺スルコトヲ得 第三百三十二条 相殺ハ相手方ニ対スル意思表示ニ依リテ之ヲ行フ但条伴又ハ期限付ノ意思表示ハ無効トス 第三百三十三条 相殺ニ因リテ双方ノ債権カ相殺ニ適シテ対立シタル時ニ相互均一ノ額ニ付テ消滅ス 第三百三十四条 抗弁ヲ対抗セラルル債権ハ相殺スルコトヲ得ス但時効ニ係リタル債権ハ之ヲ以テ他ノ債権ト相殺スルコトヲ得シ時ニ未タ時効ニ係ラサリシ場合ニ於テハ時効ハ相殺ヲ除却セス 第三百三十五条 双方ノ債権ニ付キ履行又ハ引渡ノ場所カ相異ナルモ之ニ因リテ相殺ヲ除却セス然レトモ相殺ヲ為ス当事者ハ相手方カ相殺ノ為メニ定マリタル場所ニ於テ給付ヲ受クルコトヲ得ス又ハ之ヲ履行スルコトヲ得サルカ為メニ受ケタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス 合意ニ依リテ定マリタル時ニ定マリタル場所ニ於テ給付ヲ請求スルコトヲ得ルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ之ニ異ナリタル履行ノ場所ノ定メアル債権ニ対スル相殺ハ除却セラレタルモノト見做ス 第三百三十六条 債権ノ差押ニ因リテ債権者ニ対シ債務者カ有スル債権トノ相殺ヲ除却セス但債務者カ其債権ヲ差押後ニ取得シタルトキ又ハ此債権カ差押後ニ於テ其差押ヘラレタル債権ヨリ後ニ満期トナリタルトキハ此限ニ在ラス 第三百三十七条 相殺ハ故意ニ本ツク不法行為ニ因リテ生シタル債権ニ対シテ之ヲ許サス 第三百三十八条 債権カ質権ノ目的トナリ得サル限ハ之ニ対シテ相殺ヲ為スコトヲ得ス然レトモ病者、救済、死者殊ニ労役者ニ関スル金庫ヨリ受クヘキ取得ニ対シテハ自己ノ負担スル醵出ヲ以テ相殺ヲ為スコトヲ得 第三百三十九条 相殺者カ其債権ノ弁済ヲ受クヘキ帝国、聯邦、市町村又ハ其他ノ地方団体ノ金庫ニ対シテ給付ヲ為スコトヲ要スル場合ニ於テノミ帝国、聯邦、市町村又ハ其他ノ地方団体ノ債権ト相殺ヲ為スコトヲ得 第三百四十条 債権者ノ一方カ相殺ニ適スル数個ノ債権ヲ有スルトキハ相殺ヲ為ス当事者ハ相殺スヘキ債権ヲ指定スルコトヲ得此指定ヲ為サスシテ相殺ノ意思ヲ表示シタルトキハ第三百十五条第二項ノ規定ヲ准用ス 相殺ヲ為ス当事者カ相手方ニ対シ主タル債務ノ外利息及ヒ費用ヲ負担スルトキハ第三百十六条ノ規定ヲ准用ス 第四節 免除 第三百四十一条 債権者カ契約ニ因リテ債務者ニ債務ヲ免除シタルトキハ債務関係ハ消滅ス 債権者カ債務者トノ契約ニ因リテ債務関係ノ存立セサルコトヲ認諾シタルトキ亦同シ 第四章 債権ノ転附 第三百四十二条 債権者ハ他人トノ契約ニ因リ自己ノ債権ヲ此者ニ転附スルコトヲ得(譲渡)此場合ニ於テ新債権者ハ契約ノ取結ト同時ニ旧債権者ニ代ハルモノトス 第三百四十三条 債権ハ其内容ヲ変スルニアラサレハ元債権者以外ノ者ニ給付ヲ為スコトヲ得ス又ハ債務者トノ合意ニ因リテ譲渡ヲ除却シタルトキハ之ヲ他ニ譲渡スコトヲ得ス 第三百四十四条 債権ハ質権ノ目的ト為シ得サル限ハ之ヲ譲渡スコトヲ得ス 第三百四十五条 譲渡サレタル債権ト共ニ質権及ヒ保証人ニ対スル権利ハ新債権者ニ移転ス 強制執行又ハ破産ノ場合ニ於テ債権ニ附着セル優先権ハ新債権者之ヲ主張スルコトヲ得 第三百四十六条 旧債権者ハ債権ノ証明ニ供スヘキ証書ニシテ自己ノ手ニ存スル限ハ之ヲ新債権者ニ引渡シ且債権ノ主張ニ必要ナル説明ヲ与フル義務ヲ負担ス又新債権者ノ請求ニ因リ譲渡ニ付キ公認証書ヲ交附スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ新債権者ハ証書ノ費用ヲ負担シ且之ヲ先払スルコトヲ要ス 第三百四十七条 債務者ハ新債権者ニ対シ債権譲渡ノ当時旧債権者ニ対シテ存シタル抗弁ヲ対抗スルコトヲ得 第三百四十八条 債権カ債務者ノ交附シタル債務証書ヲ提示シテ譲渡サレタルトキハ債務者ハ新債権者ニ対シ債務関係カ虚偽ニ取結ハレ又ハ認諾セラレタル旨ヲ主張スルコトヲ得ス但新債権者カ譲渡ノトキニ虚偽行為ノ存スルコトヲ知リ又ハ知ラサルヘカラサリシトキハ此限ニ在ラス 第三百四十九条 債権者ハ旧債権者ニ対シテ有スル債権ヲ以テ新債権者ニ対シ相殺ニ供スルコトヲ得但債務者カ債権ノ譲渡ヲ知リタル後自己ノ債権ヲ履行シ又ハ自己ノ債権カ旧債権者ノ債権譲渡ヲ知リタル後ニ於テ且譲渡サレタル債権ヨリ以後ニ満期ト為リタルトキハ此限ニ在ラス 第三百五十条 新債権者ハ譲渡後ニ債務者カ旧債権者ニ為シタル給付及ヒ譲渡後債権ニ関シ債務者ト旧債権者カ為シタル法律行為ヲ自己ニ対抗セシムルコトヲ要ス但債務者カ給付ヲ履行シ又ハ法律行為ヲ為ストキ債権ノ譲渡ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス 譲渡後ニ債務者ト旧債権者ノ間ニ繋属シタル争訟ニ於テ債権ニ関シ確定判決カ下サレタルトキハ新債権者ハ此判決ヲ自己ニ対抗セシムルコトヲ要ス但債務者カ権利拘束ノ生スル時債権ノ譲渡ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス 第三百五十一条 旧債権者カ既ニ譲渡シタル債権ヲ再ヒ第三者ニ譲渡シタル場合ニ於テ債務者カ第三者ニ給付ヲ履行シ又ハ債務者ト第三者ノ間ニ法律行為ヲ為シ若クハ争訟カ繋属スルトキハ債務者ノ為メ前履行者ニ対シ第三百五十条ノ規定ヲ准用ス 既ニ譲渡サレタル債権カ裁判上ノ決定ニ因リテ第三者ニ授附セラレ又ハ旧債権者カ既ニ譲渡サレタル債権ハ法律ノ規定ニ因リテ第三者ニ移転シタル旨ヲ此者ニ対シテ承認シタルトキ亦同シ 第三百五十二条 債権者カ債務者ニ対シ債権ヲ譲渡シタル旨ヲ通知シタルトキハ譲渡カ行ハレス又ハ無効ナル場合ニ於テモ通知シタル譲渡ヲ自己ニ対抗セシムルコトヲ要ス債権者カ譲渡ニ関スル証書ヲ証書中ニ掲ケタル新債権者ニ交附シ且此者カ債務者ニ之ヲ提示シタルトキハ譲渡ノ通知ニ同シ 通知ノ取消ハ新債権者トシテ掲ケラレタル者ノ同意ヲ得テ行ハレタルトキニノミ有効トス 第三百五十三条 債務者ハ新債権者ニ対シ譲渡ニ付キ旧債権者ヨリ交附セラレタル証書ヲ引渡シタルトキニノミ給付ヲ履行スル義務ヲ負担ス新債権者カ右ノ証書ヲ提示セスシテ為サレタル告知又ハ催告ハ此提示ナキコトニ本ツキ遅滞ナク債務者ヨリ退ケラルルトキハ無効トス 旧債権者カ書面ヲ以テ債務者ニ譲渡ヲ通知シタルトキハ本条ノ規定ヲ適用セス 第三百五十四条 軍人、官吏、僧侶又ハ公立学校ノ教師カ其俸給、猶予金又ハ休職料ノ転附スルコトヲ得ヘキ一部ヲ譲渡シタルトキハ其支払ヲ為スヘキ金庫ハ旧債権者ヨリ交附スル公認証書ノ引渡ニ依リ債権譲渡ノ通知ヲ受クルコトヲ要ス此通知ヲ為サヽル間ハ譲渡ハ金庫ニ知レサルモノト見做ス 第三百五十五条 法律規定ニ因ル債権ノ転附ニ関シテハ第三百四十三条乃至第三百四十七条第三百四十九条乃至第三百五十三条ノ規定ヲ准用ス 第三百五十六条 債権ノ転附ニ関スル規定ハ特別ノ規定ナキ場合ニ於テ他ノ権利ノ転附ニ付キ之ヲ准用ス 第五章 債務ノ引受 第三百五十七条 債務ハ債権者ト第三者トノ契約ニ因リ此者カ旧債務者ニ代ハル方法ニ於テ之ヲ引受クルコトヲ得 第三百五十八条 第三者カ債務者ト約束シタル債務引受ノ効力ハ債権者ノ認諾ニ係ルモノトス認諾ハ債務者又ハ第三者カ債権者ニ債務ノ引受ヲ通知シタル後有効ニ之ヲ為スコトヲ得又認諾スルマテハ当事者ハ契約ヲ変更シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得 認諾カ拒絶セラルルトキハ債務引受ハ生セサリシモノト見做ス又債権者カ認諾ノ通知ヲ受クヘキ者ニ依リテ指定セラレタル期間内ニ此者ニ対シ認諾ノ意思ヲ表示セサルトキハ認諾ヲ拒絶シタルニ同シ 債権者カ認諾ヲ与ヘサル間ハ疑ハシキ場合ニ於テハ引受人ハ債務者ニ対シ正当ノ時ニ債権者ニ弁済スヘキ義務ヲ負担ス認諾カ拒絶セラルルトキ亦同シ 第三百五十九条 土地ノ取得者カ譲渡人トノ約束ニ因リ此者ノ債務ニシテ之レカ為メニ土地ニ付キ抵当カ設定セラレタルモノヲ引受ケタル場合ニ於テハ債権者ハ譲渡人ヨリ債権ノ引受ヲ通知セラレタルトキニノミ有効ニ之ヲ認諾スルコトヲ得此場合ニ於テ債権者カ通知ヲ受ケタル後六ケ月内ニ譲渡人ニ対シ認諾ヲ拒絶セサルトキハ認諾ヲ与ヘタルモノト見做ス又第三百五十八条第二項第二段ノ規定ハ之ヲ適用セス 譲渡人ノ通知ハ取得者カ所有者トシテ土地台帳ニ登記セラレタル後有効ニ之ヲ為スコトヲ得又此通知ハ書面ニ依リ且六ケ月内ニ拒絶ノ意思カ表示セラレサルトキハ引受人ハ旧債務者ニ代ハルヘキ旨ヲ含ムコトヲ要ス 譲渡人ハ取得者ノ請求ニ因リ債権者ニ債務引受ノ通知ヲ為スコトヲ要ス債権者ノ認諾又ハ其拒絶カ確定スルトキハ譲渡人ハ直ニ之ヲ取得者ニ通知スルコトヲ要ス 第三百六十条 引受人ハ債権者ニ対シ此者ト旧債務者トノ関係ニ本ツク抗弁ヲ対抗スルコトヲ得然レトモ旧債務者ニ属スル債権ヲ以テ相殺ニ供スルコトヲ得ス 引受人ハ自己ト旧債務者ノ間ニ於テ債務引受ノ原因トナリタル関係ヨリ抗弁ヲ援引スルコトヲ得ス 第三百六十一条 債務ノ引受ニ因リテ債権ノ為メニ設定セラレタル保証及ヒ質権ハ消滅ス但保証人又ハ債務引受ノ時ニ質権ノ目的物ヲ有スル者カ債務ノ引受ニ同意スルトキハ此限ニ在ラス 破産ノ場合ニ於テ債権ニ附着スル優先権ハ引受人ノ財産ノ破産ニ付テハ之ヲ主張スルコトヲ得ス 第三百六十二条 契約ニ因リ他人ノ財産ヲ引受ケタル者ニ対シ此他人ノ債権者ハ旧債務者ノ責任ノ継続期間ヲ妨ケスシテ契約取結ノ時ヨリ当時既ニ存立セル請求権ヲ主張スルコトヲ得此場合ニ於テ引受人ノ責任ハ引受ケタル財産ノ組成部分ニ限リ又此財産カ引受人ニ引取ラルル前ニ此者ノ過失ニ因ラスシテ減少シタルトキハ引受人ノ責任ハ残存セル財産ノ組成部分ニ限ルモノトス 引受人ノ責任ハ此者ト旧債務者トノ合意ニ因リテ之ヲ除却シ又ハ制限スルコトヲ得ス 第六章 債務者及ヒ債権者ノ多数 第三百六十三条 数分分割スルコトヲ得ヘキ一ノ給付ヲ負担シ又ハ数人カ分割スルコトヲ得ヘキ一ノ給付ヲ請求スル権利ヲ有スルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ各債務者ハ平等ノ部分ニ付テノミ義務ヲ負担シ各債権者ハ平等ノ部分ニ付テノミ権利ヲ有ス 第三百六十四条 給付カ一度ニ之ヲ為サヽルヘカラサル場合ニ於テ多数債務者ノ各債務者カ給付ノ全部ヲ履行スヘキ義務ヲ負担スルトキハ(共同債務者)債権者ハ随意ニ各債務者ニ対シ給付ノ全部又ハ其一部ノ履行ヲ請求スルコトヲ得又給付ノ全部カ履行セラルルマテハ総債務者ハ尚ホ其義務ヲ負担ス 第三百六十五条 共同債務者ノ一人カ為シタル弁済ハ其他ノ債務者ノ為メニモ有効トス 代物弁済、供托及ヒ相殺ニ付キ亦同シ 共同債務者ノ一人ニ属スル債権ハ其他ノ債務者ヨリ相殺ニ供スルコトヲ得ス 第三百六十六条 債権者ト共同債務者ノ一人トノ間ニ生シタル免除ハ債務関係ノ全部ノ消滅ヲ欲シタルトキハ其他ノ債務者ノ為メニモ有効トス 第三百六十七条 共同債務者ノ一人ニ対スル債権者ノ遅滞ハ其他ノ債務者ニ対シテモ有効トス 第三百六十八条 第三百六十五条乃至第三百六十七条ニ掲ケタル事実以外ノ事実ハ自己ノ一身ニ之ヲ生セシメタル共同債務者ノ為メニ又ハ此者ニ対シテノミ有効トス但債務関係ニ因リ之ニ反対ヲ生スルトキハ此限ニ在ラス 前項ノ規定ハ殊ニ告知、遅滞、過失、共同債務者ノ一人ノ履行不能、時効、時効ノ中断、時効ノ停止、共同債務者ノ一人ニ生シタル債権及ヒ債務ノ混同及ヒ確定判決ニ付キ之ヲ適用ス 第三百六十九条 共同債務者ハ其相互ノ関係ニ於テ別段ノ定ナキ限リハ平等ノ割合ヲ以テ義務ヲ負担ス共同債務者ノ一人ヨリ此者カ負担スヘキ部分ヲ取立ツルコト能ハサルトキハ其不足額ハ補償義務ヲ負担スル其他ノ債務者ニ於テ之ヲ分担スルコトヲ要ス 共同債務者ノ一人カ債権者ニ弁済シ且其他ノ債務者ヨリ補償ヲ請求スルコトヲ得ル限ハ此者ニ対スル債権者ノ権利ハ弁済ヲ為シタル共同債務者ノ一人ニ移転ス然レトモ債権者ニ損害ヲ加ヘテ権利ノ移転ヲ主張スルコトヲ得ス 第三百七十条 数人カ契約ニ因リ共同ニテ分割スルコトヲ得ヘキ給付ノ義務ヲ負担シタルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ共同債務者トシテ其責ニ任ス 第三百七十一条 給付カ一度ニ之ヲ為サヽルヘカラサル場合ニ於テ多数債権者ノ各債権者カ給付ノ全部ヲ請求スル権利ヲ有スルトキハ(共同債権者)債務者ハ其撰択ニ従ヒ債権者ノ何人ニ対シテモ給付ヲ履行スルコトヲ得債権者ノ一人カ既ニ給付ノ履行ニ付キ起訴シタルトキト雖モ亦同シ 共同債権者ノ一人ノ遅滞ハ其他ノ債権者ニ対シテモ効力ヲ有ス 債権及ヒ債務カ共同債権者ノ一人ニ混同スルトキハ債務者ニ対スル其他ノ債権者ノ権利ハ消滅ス 其他第三百六十五条第三百六十六条及ヒ第三百六十八条ノ規定ハ本条ノ場合ニ之ヲ准用ス殊ニ共同債権者ノ一人カ自己ノ権利ヲ他人ニ転附スルコトニ因リテ其他ノ債権者ノ権利ハ影響ヲ受クルコトナシ 第三百七十二条 共同債権者ハ其相互ノ関係ニ於テ別段ノ定ナキ限ハ平等ノ割合ヲ以テ権利ヲ有ス 第三百七十三条 数人カ分割スルコトヲ得サル給付ノ義務ヲ負担スルトキハ共同債務者トシテ其責ニ任ス 第三百七十四条 数人カ分割スルコトヲ得サル給付ヲ請求スル場合ニ於テ此者カ共同債権者ニアラサル限ハ債務者ハ単ニ総債権者ニ対シ共同ニテ給付ヲ履行シ各債権者ハ単ニ総債権者ニ対スル給付ヲ請求スルコトヲ得又各債権者ハ債務者カ其負担スル物ヲ総債権者ノ為メニ供託シ又ハ此物カ供託ニ適セサルトキハ裁判上任定セラレタル保管者ニ之ヲ引渡スコトヲ請求スルコトヲ得 其他債権者ノ一人ニ付テノミ生シタル事実ハ其他ノ債権者ノ為メ又ハ之ニ対シテ効力ヲ有セス 第七章 各別ノ債務関係 第一節 売買 第一款 総則 第三百七十五条 売買契約ニ因リテ物ノ売主ハ買主ニ此物ヲ引渡シ且其所有権ヲ供与スル義務ヲ負担シ権利ノ売主ハ買主ニ此権利ヲ供与シ且之ニ依リテ物ヲ占有シ得ヘキトキハ此物ヲ引渡スコトヲ要ス 売買契約ニ因リテ買主ハ売主ニ対シ約定ノ代価ヲ支払ヒ且買受物ヲ引取ル義務ヲ負担ス 第三百七十六条 売主ハ第三者カ買主ニ対シテ主張スルコトヲ得ル権利ヲ除去シテ売買ノ目的物ヲ供与スルコトヲ要ス 第三百七十七条 土地又ハ之ニ関スル権利ノ売主ハ土地台帳ニ登記セラレタル権利ニシテ未タ成立スルニ至ラサルモノ又ハ既ニ存立セサルモノト雖モ其存立スル場合ニ於テハ買主ニ供与スヘキ権利ヲ制限スルモノナルトキハ自己ノ費用ヲ以テ之ヲ取消スコトヲ要ス 船舶又ハ之ニ関スル権利ノ売買ニ於テ般舶登記簿ニ登記シタル権利ニ付キ第一項ノ規定ヲ適用ス 第三百七十八条 土地ノ売主ハ土地ヲシテ公ノ諸税及ヒ其他土地台帳ノ登記ニ適セサル公ノ負担ヲ免カレシムル責ニ任セス 第三百七十九条 債権又ハ其他ノ権利ノ売主ハ買主ニ対シ債権又ハ其他ノ権利ノ法律上ノ成立ニ付テ其責ニ任ス 有価証券ノ売主ハ証券カ無効宣告ノ為メニ提供セラレサルコトニ付テモ亦其責ニ任ス 第三百八十条 債権ノ売主カ償務者ノ支払能力ニ付キ其責ニ任シタルトキハ此責任ハ疑ハシキ場合ニ於テハ譲渡ノ当時ニ於ケル支払能力ノミニ関スルモノトス 第三百八十一条 買主カ売買取結ノ当時ニ権利ニ瑕疵アルコトヲ知リタルトキハ売主ハ此瑕疵ニ付キ其責ニ任セス然レトモ質権又ハ土地債務ヲ除去スルコトニ付テハ買主カ此負担ヲ知リタルトキト雖トモ売主ハ其責ニ任ス 第三百八十二条 売主カ第三百七十五条乃至第三百七十九条及ヒ第三百八十一条ノ規定ニ依リテ負担スル義務ヲ履行セサルトキハ買主ノ権利ハ第二百七十一条乃至第二百七十九条ノ通則ニ依リテ之ヲ定ム 動産カ売払ハレ且所有権移転ノ為メニ引渡サレタル場合ニ於テ買主カ此物ヲ占有スル権利ヲ有スル第三者ノ権利ヲ顧慮シテ之ヲ第三者ニ引渡シ又ハ売主ニ返還シタルトキニノミ右ノ権利ノ存セシコトニ本ツキ不履行ニ因ル損害賠償ヲ請求スルコトヲ得 第三者カ買主ヲ相続シ又ハ買主カ第三者ヲ相続シタルトキ若クハ買主カ第三者ノ権利ヲ他ノ方法ヲ以テ取得シ又ハ第三者ニ之ヲ贖ヒ得タルトキハ第三者ニ物ヲ引渡シタルニ同シ 第二項ノ規定ハ動産ニ関スル権利ニシテ之ニ依リテ其物ヲ占有スルコトヲ得ルモノカ売却セラレタルトキニ之ヲ適用ス 第三百八十三条 売主カ買主ノ主張スル権利ノ瑕疵ヲ争フトキハ買主ハ其瑕疵ヲ証明スルコトヲ要ス 第三百八十四条 第三百七十五条乃至第三百七十九条、第三百八十一条乃至第三百八十三条ノ規定ニ従ヒ権利ノ瑕疵ニ本ツキ売主ノ負担スル担保ノ義務ヲ免除シ又ハ之ヲ制限スル合意ハ売主カ故意ニ右ノ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ無効トス 第三百八十五条 売主ハ買主ニ対シ売買ノ目的物ニ関スル法律上ノ関係ニ付キ殊ニ土地売買ノ場合ニ於テハ其経界、特有権及ヒ負担ニ付キ必要ナル説明書ヲ交付シ且権利証明ノ用ニ供スル証書ニシテ自己ノ手ニ存スル限ハ之ヲ買主ニ引渡スコトヲ要ス然レトモ右ノ証書ノ内容カ他ノ事項ニモ及フトキハ売主ハ公ニ認メラレタル抄本ノミヲ交附スルコトヲ要ス 第三百八十六条 第三百七十五条乃至第三百八十五条ノ規定ハ有償ニテ目的物ヲ譲渡シ又ハ之ニ負担ヲ加フル他ノ契約ニ付キ之ヲ准用ス 第三百八十七条 売却物ノ引渡ニ因リテ物ノ偶然ノ減失又ハ毀損ノ危険カ買主ニ移転ス又引渡ノ時ヨリ物ノ用益ハ買主ニ属シ買主ハ又物ノ負担ヲ担当ス 土地ノ買主カ其引渡前ニ所有者トシテ土地台帳ニ登記セラルヽトキハ前項ニ掲クル効力ハ登記ヲ為シタル時ニ発生ス 第三百八十八条 売主カ買主ノ請求ニ因リ履行地以外ノ場所ニ売却物ヲ送附スルトキハ売主カ運送取扱人、運送人若クハ其他運送ヲ行フ為メニ定メラレタル人又ハ公設所ニ右ノ売却物ヲ渡シタル時ヨリ危険ハ買主ニ移転ス 買主カ送附ノ方法ニ付キ特別ノ指図ヲ為シ且売主カ切迫ナル原因ナクシテ此指図ニ違ヒタルトキハ売主ハ買主ニ対シ之ニ因リテ生シタル損害ニ付キ其責ニ任ス 第三百八十九条 売却物ノ引渡前ニ危険カ買主ニ移転シ且売主カ物ノ引渡前ニシテ危険ノ移転後ニ必要トナリタル費用ヲ物ニ加ヘタルトキハ買主ハ之ヲ賠償スルコトヲ要ス其他ノ費用ヲ賠償スヘキ買主ノ義務ハ事務管理ニ関スル規定ニ依リテ之ヲ定ム 第三百九十条 売却物ノ引渡ノ費用殊ニ度量衡ノ費用ハ売主ノ負担ニ帰シ物ノ引取ノ費用及ヒ履行地以外ノ場所ニ物ヲ運送スル費用ハ買主ノ負担ニ帰ス又権利カ売却セラレタルトキハ売主ハ其権利ノ成立又ハ転附ノ費用ヲ負担スルコトヲ要ス 土地ノ買主ハ引渡及ヒ登記ノ費用ヲ負担シ土地ニ関スル権利ノ買主ハ其権利ノ分立又ハ転附ニ付キ必要ナル土地台帳ヘノ登記ノ費用ト共ニ此登記ニ要スル意思表示ノ費用ヲ負担スルコトヲ要ス右何レノ場合ニ於テモ買受証書ノ費用ハ買主ノ負担ニ帰ス 第三百九十一条 物ニ関スル権利ニシテ之ニ依リテ其物ヲ占有スルコトヲ得ヘキモノカ売却セラレタルトキハ第三百八十七条乃至第三百九十条ノ規定ヲ准用ス 第三百九十二条 市場価格カ代価トシテ定メラレタルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ履行ノ時ニ履行地ニ対シテ標準ヲ与フル市場価格ヲ約束シタルモノト見做ス 第三百九十三条 売主カ契約ヲ履行シ且代価ヲ猶予シタルトキハ第二百七十六条第二項及ヒ第二百七十七条ニ定ムル解除権ヲ有セス 第三百九十四条 動産ノ売主カ代価ノ支払アルマテ所有権ヲ留保シタルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ所有権ノ転附ハ代価ノ全部支払ヲ停止条件トシ且買主カ支払ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ売主ハ契約ヲ解除スル権利ヲ有スルモノト見做ス 第三百九十五条 強制執行ノ手続ニ依ル売却ニ付テハ売却又ハ其指図ヲ委任セラレタル人及ヒ此者カ引入レタル輔助其他口述筆記者モ売却ニ定メラレタル者ヲ自ラ又ハ他人ニ依リ若クハ他人ノ代理人トシテ買入ルルコトヲ得ス 強制執行以外ノ売却ニ於テ売却ノ委任カ他人ノ計算ニ於テ物ヲ売却セシムヘキ権利ヲ委任者ニ与フル法律ノ規定ニ本ツキ与ヘラレタルトキ殊ニ質物ノ売却又ハ第三百三十条ニ於テ予見シタル売却ノ場合ニ於テハ第一項ノ規定ヲ適用ス 第三百九十六条 第三百九十五条ノ規定ニ反シテ為シタル売買及ヒ物ノ引渡ノ効力ハ売却ノ時ニ債務者、所有者又ハ債権者ヲシテ関与シタル者ノ同意ニ係ルモノトス又此者ノ認諾ハ買主ノ催告ヲ受取リタル時ヨリ二週日内ニ之ヲ告示セサルトキハ拒絶セラレタルモノト見做ス 認諾ノ拒絶ニ因リテ新ニ売却カ行ハレタルトキハ前買主ハ其費用及ヒ減少額ヲ補償スルコトヲ要ス 第二款 物ノ瑕疵担保 第三百九十七条 物ノ売主ハ買主ニ対シ危険カ此者ニ移転スル時ニ於テ目的物カ其価格又ハ通常ノ使用若クハ契約ニ予定シタル使用ニ適スルコトヲ減失又ハ減少セシムル瑕疵ヲ有セサルコトニ付キ其責ニ任ス然レトモ価格又ハ使用ニ適スルコトノ着シカラサル減少ハ之ヲ問ハス 売主ハ又危険移転ノ時ニ目的物カ其確保セラレタル性質ヲ有スルコトニ付キ其責ニ任ス 第三百九十八条 買主カ売買取結ノ時ニ売却物ノ瑕疵ヲ知リタルトキハ売主ハ其責ニ任セス買主カ重過失ニ因リ第三百九十七条第一項ニ掲クル種類ノ瑕疵ヲ知ラサリシ場合ニ於テ売主ハ瑕疵ノ存セサルコトヲ確保セサリシ限ハ故意ニ瑕疵ヲ告ケサリシトキニノミ其責ニ任ス 第三百九十九条 第三百九十七条及ヒ第三百九十八条ノ規定ニ依リ売主カ責ニ任スヘキ瑕疵ニ本ツキ買主ハ売買ノ廃却(変更)又ハ代価ノ引下(減少)ヲ請求スルコトヲ得 第四百条 売買ノ時ニ確保セラレタル性質カ売却物ニ欠クルトキハ買主ハ売買ノ廃却又ハ代価ノ減少ニ代ヘテ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求スルコトヲ得売主カ故意ニ瑕疵ヲ告ケサリシトキ亦同シ 第四百〇一条 買主カ物ニ瑕疵アルコトヲ知リテ之ヲ受取リタル場合ニ於テハ第三百九十九条及ヒ第四百条ニ定ムル請求権ハ買主カ物ヲ受取ル時ニ其瑕疵ニ本ツキ右ノ権利ヲ留保シタルトキニノミ之ヲ有ス 第四百〇二条 売買ノ廃却又ハ代価ノ減少ハ売主カ買主ヨリ請求セラレタル廃却又ハ減少ヲ承諾スル旨ヲ表示シ又ハ之ニ付テ確定ニ判決セラレタルトキハ実行セラレタルモノトス 買主カ売主ニ対シ物ノ瑕疵ヲ主張スルトキハ売主ハ買主ニ対シ相当ノ期限ヲ指定シテ売買ノ廃却又ハ代価ノ減少ヲ請求スルヤ否ヤヲ催告スルコトヲ得右ノ期間内ニ買主カ其意思ヲ表示セサルトキハ廃却又ハ減少ノ請求権ハ消滅ス 売買ノ廃却又ハ代価ノ減少カ実行セラルルマテハ買主ハ既ニ為シタル撰択ヲ変更シ又ハ契約ヲ保持スルコトヲ得 第四百〇三条 売買廃却ノ実行ニ因リテ契約ニ本ツク双方ノ義務ハ消滅シ当事者ハ互ニ其受領シタル給付ヲ返還スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ契約ニ本ツク解除権ニ関スル第二百九十八条第一項第三段、第二項、第二百九十九条乃至第三百〇三条及ヒ第三百〇五条ノ規定ヲ淮用ス然レトモ第三百〇二条第二号ノ場合ニ於テ物ヲ変形スルトキニ至リテ瑕疵カ顕ハレタルトキハ売買ノ廃却ハ除却セラルルコトナシ其他本条ノ場合ニ於テハ売主ハ買主ニ対シ契約ノ費用ヲ賠償スルコトヲ要ス 第四百〇四条 土地ノ売主カ買主ニ対シ一定ノ面積ヲ確保シタルトキハ物ノ性質ヲ確保シタル如ク土地ノ面積ニ付キ其責ニ任ス然レトモ買主ハ確保セラレタル面積ノ瑕疵ニシテ之ニ因リテ契約ノ履行カ自己ニ利益ヲ与ヘサル程着シキモノナルトキニノミ売買ノ廃却ヲ請求スルコトヲ得 第四百〇五条 多クノ売却物中ニ於テ一二ノ物カ瑕疵アル場合ニ於テハ総テノ物ニ対シ合同ノ代価ヲ定メタルトキト雖モ瑕疵アル物ニ付テノミ売買ノ廃却ヲ請求スルコトヲ得多クノ物カ相互繋属セルモノトシテ売却セラレタル場合ニ於テハ各当事者ハ自己ニ損害ヲ受クルニアラサレハ瑕疵アル物ヲ其他ノ物ヨリ分離スルコト能ハサルトキハ売買ノ廃却ハ総テノ物ニ及フヘキコトヲ請求スルコトヲ得 第四百〇六条 主物ノ瑕疵ニ本ツク売買ノ廃却ハ従物ニ及フ然レトモ従物ニ瑕疵アル場合ニ於テハ此物ニ付テノミ売買ノ廃却ヲ請求スルコトヲ得 第四百〇七条 数個ノ物ヲ総代価ニ対シテ売却シタル場合ニ於テ個々ノ物ニ付キ売買カ廃却セラルルトキハ売却ノ当時物カ瑕疵ナキ状況ニ於テ有セシ総価格ト売買ノ廃却ヲ受ケサル物ノ価格トヲ比較シ割合ニ依リテ総代価ヲ減少スルコトヲ要ス 第四百〇八条 代価減少ノ場合ニ於テハ瑕疵アル状況ニ於ケル物ノ価格ト其真ノ価格トカ売却ノ当時ニ有セシ割合ニ依リテ代価ヲ減少スルコトヲ要ス 数個ノ物ヲ総代価ニ対シテ売却シタル場合ニ於テ個々ノ物ニ付テノミ代価カ減少セラルルトキハ総テノ物ノ総価格ヲ標準トシテ代価ヲ減少スルコトヲ要ス 第四百〇九条 金銭ニテ定マリタル代価ノ外代替物ヲ目的トセサル他ノ給付ヲ為スコトヲ約シタルトキハ此給付ハ第四百〇七条及ヒ第四百〇八条ノ場合ニ於テハ売却ノ当時ノ価格ニ依リ之ヲ金銭ニ見積ルコトヲ要ス買主ノ相対給付ノ減少ハ金銭ニテ定マリタル代価ニ付テ之ヲ為ス然レトモ此代価ハ相対給付ヲ減少スヘキ額ヨリ少キトキハ売主ハ買主ニ対シ右超過額ヲ賠償スルコトヲ要ス 第四百十条 当事者ノ一方又ハ他ノ一方カ数人ナルキトハ代価ノ減少ハ各人ヨリ又ハ各人ニ対シテ之ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テ一人カ請求シタル代価減少ノ実行後ハ売買ノ廃却ヲ為スコトヲ得ス 第四百十一条 瑕疵ニ本ツキ代価ノ減少ヲ為シタルモ之ニ因リテ買主ハ他ノ瑕疵ニ本ツキ売買ヲ廃却シ又ハ更ニ代価ノ減少ヲ請求スル権利ヲ除却セラルヽコトナシ 第四百十二条 売主ノ瑕疵担保ノ義務ヲ免除シ又ハ之ヲ制限スル合意ハ売主カ故意ニ物ノ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ無効トス 第四百十三条 売買廃却又ハ代価減少ノ請求権及ヒ確保セラレタル物ノ性質ノ瑕疵ニ本ツク損害賠償ノ請求権ハ動産ニ付テハ引渡ノ時ヨリ六ケ月、不動産ニ付テハ転附ノ時ヨリ一年ノ期間ニテ時効ニ係ル但売主カ故意ニ物ノ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ此限ニ在ラス又時効期間ハ契約ニ因リテ之ヲ延長スルコトヲ得 買主カ証拠保全ノ為メ裁判上ノ証拠調ヲ申請スルトキハ時効ハ中断セラル此中断ハ右ノ手続ヲ終了スルマテ継続ス又此場合ニ於テハ第百七十七条第二項及ヒ第百七十八条ノ規定ヲ準用ス 第一項ニ掲クル請求権ノ時効ノ停止又ハ中断ハ他ノ請求権ノ時効ノ停止又ハ中断ヲ生ス 第四百十四条 買主ハ売買廃却又ハ代価減少ノ請求権カ時効ニ係ル前ニ物ノ瑕疵ニ付テ売主ニ通知ヲ発シ又ハ証拠保全ノ為メニ裁判上ノ証拠調ヲ申請シ若クハ自己ト其後ノ取得者トノ間ニ物ノ瑕疵ニ付キ権利拘束ト為リタル訴訟ニ於テ売主ニ訴訟告知ヲ為シタルトキハ時効ノ完成後ト雖モ買主ハ売買廃却又ハ代価減少ノ権利ノ及フ限度ニ於テ代価ノ支払ヲ拒絶スルコトヲ得損害賠償ノ請求権ハ時効ノ完成後ハ買主カ其完成前ニ右ニ掲クル行為ノ一ヲ為シタルトキニノミ之ヲ以テ相殺ニ充ツルコトヲ得 売主カ故意ニ物ノ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ瑕疵ノ通知又ハ第一項ノ規定ニ依リテ通知ニ等シキ行為ヲ為スコトヲ要セス 第四百十五条 種類ニ依リテ定マリタル物ノ買主ハ売買廃却又ハ代価減少ニ代ヘテ瑕疵アル物ノ代ハリニ瑕疵ナキ物ヲ引渡スコトヲ請求スルコトヲ得此請求権ニ関シテハ売買廃却ニ付キ適用スヘキ第四百〇一条乃至第四百〇三条、第四百〇五条、第四百〇六条、第四百十条、乃至第四百十四条ノ規定ヲ準用ス 売主カ確保シタル物ノ性質ハ危険カ買主ニ移転セシ時ニ存セス又ハ売主カ故意ニ物ノ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ買主ハ売買廃却又ハ代価減少若クハ瑕疵ナキ物ノ引渡ニ代ヘテ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求スルコトヲ得 第四百十六条 第三百九十七条乃至第四百〇三条第四百〇五条乃至第四百十五条ノ規定馬、驢、騾、雑種馬、牛、羊及ヒ豚ノ売却ニ付キ第四百十七条乃至第四百二十八条ノ規定ニ限リテ別段ノ定ナキ限リハ之ヲ適用ス 第四百十七条 売主ハ定マリタル瑕疵(主タル瑕疵)ノミニ付キ且此瑕疵カ定マリタル期間内(担保期間)ニ現ハレタルトキニノミ其責ニ任ス 主タル瑕疵及ヒ担保期間ハ聯邦議会ノ同意ヲ経テ発布スヘキ勅令ニ依リテ之ヲ定ム此規定ハ右ノ手続ニ依リテ之ヲ補足シ又ハ変更スルコトヲ得 第四百十八条 担保期間ハ危険カ買主ニ移転シタル日ノ満了ヲ以テ其進行ヲ始ム 第四百十九条 主タル瑕疵カ担保期間内ニ現ハルルトキハ此瑕疵ハ危険カ買主ニ移転セシ時既ニ存シタルモノト推定ス 第四百二十条 買主カ担保期間ノ満了後遅クトモ二日内ニ又ハ動物カ期間ノ満了前ニ死シタルトキハ其死後遅クトモ二日内ニ売主ニ対シテ瑕疵ノ通知ヲ発セス又ハ此瑕疵ニ本ツキ売主ニ対シテ起訴若クハ訴訟ノ告知ヲ為サス又ハ証拠保全ノ為メ裁判上ノ証拠調ヲ申請セサルトキハ買主ハ瑕疵ニ本ツキテ自己ニ属スル権利ヲ失フ然レトモ売主カ故意ニ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ買主ハ右ノ権利ヲ失フコトナシ 第四百二十一条 担保期間ハ契約ニ因リテ之ヲ伸縮スルコトヲ得此場合ニ於テハ合意上ノ期間ハ法定ノ期間ニ代ハルモノトス 第四百二十二条 置主ハ売買ノ廃却ノミヲ請求スルコトヲ得代価ノ減少ヲ請求スルコトヲ得ス 売買ノ廃却ハ第三百〇二条及ヒ第三百〇三条ノ場合ニ於テモ之ヲ請求スルコトヲ得殊ニ動物カ屠ラレタルトキ亦同シ右ノ場合ニ於テハ買主ハ動物ノ価格ヲ売主ニ賠償スルコトヲ要ス 買主ノ責ニ帰スヘキ事情ニ因リ売買廃却ノ実行前ニ動物ニ重大ナラサル毀損ヲ生シタルトキハ買主ハ代価ノ減少ヲ賠償スルコトヲ要ス又用益ニ付テハ買主カ之ヲ収取シタル限度ニ於テ賠償スルコトヲ要ス 第四百二十三条 売買廃却ノ場合ニ於テハ売主ハ買主ニ対シ動物ノ飼養料、世話料、獣医ノ診断及ヒ治療ノ費用其他必要ト為リタル屠殺及ヒ運搬ノ費用ヲ賠償スルコトヲ要ス 第四百二十四条 売買廃却ノ請求権ニ関スル争カ権利拘束ヲ生シタル場合ニ於テ動物ノ監査カ既ニ不必要トナリタルトキハ当事者一方ノ申請ニ因リテ直ニ動物ヲ競売シ且一時ノ処分ニ依リ代価ノ供託ヲ命スルコトヲ要ス 第四百二十五条 売買廃却ノ請求権及ヒ主タル瑕疵ニシテ其存在セサルコトカ確保セラレタルモノニ本ツク損害賠償ノ請求権ハ担保期間ノ満了ヨリ六週日ノ期間ニテ時効ニ係ル其他第四百十三条ノ規定ハ本条ノ規定ニ因リ影響ヲ受クルコトナシ 六週日ノ期間ハ第百七十六条第百七十八条及ヒ第百八十一条ニ掲クル期間ニ代ハルモノトス 買主ハ売買廃却ノ請求権カ時効ニ係リタル後ト雖モ代価ノ支払ヲ拒絶スルコトヲ得損害賠償ノ請求権モ亦右ノ時効後ニ相殺ニ供スルコトヲ得 第四百二十六条 種類ニ依リテ定マリタル動物ノ買主ハ売買廃却ノ代ハリニ瑕疵アル動物ニ代ヘテ瑕疵ナキ動物ヲ引渡スコトヲ請求スルコトヲ得此請求権ニ付テハ第四百二十三条乃至第四百二十五条ノ規定ヲ準用ス 第四百二十七条 売主カ主タル瑕疵ニ属セサル瑕疵ニ付キ担保ノ責任ヲ引受ケ又ハ動物ノ性質ヲ確保シタルトキハ第四百二十二条乃至第四百二十六条ノ規定ヲ準用シ且担保期間ヲ約シタルトキハ第四百十八条乃至第四百二十条ノ規定ヲモ準用ス又担保期間ヲ約セサリシトキハ第四百二十五条ニ掲クル時効期間ハ動物ヲ引渡シタル時ヨリ其進行ヲ始ム 第四百二十八条 売主カ総テノ瑕疵ニ付キ担保ノ責任ヲ引受クヘキ漠然タル約束ハ疑ハシキ場合ニ於テハ主タル瑕疵ノミニ関スルモノトス 第四百二十九条 物ノ瑕疵ニ本ツク売主ノ担保義務ニ関スル規定ハ有償ニテ物ヲ譲渡シ又ハ之ニ負担ヲ加フルコトヲ目的トスル他ノ契約ニ付キ之ヲ準用ス 第三款 特権ノ売買 一、 試品売買、試験売買 第四百三十条 試品又ハ見本売買ニ於テハ試品又ハ見本ノ性質カ確保セラレタルモノト見做ス 第四百三十一条 試験又ハ検視売買ニ於テハ買主ハ随意ニ売買ノ目的物ヲ認諾スルコトヲ得右ノ売買ハ疑ハシキ場合ニ於テハ認諾ノ停止条件附ニテ取結ハレタルモノトス 売主ハ買主ニ目的物ヲ検査スルコトヲ評ス義務ヲ負担ス 第四百三十二条 試験又ハ検視売買ニ於テ買主カ売主ヨリ受ケタル督促ニ対シ約定ノ期間内ニ又ハ此期間ナキトキハ相当ノ期間ノ経過後遅滞ナク目的物ヲ認諾スル意思ヲ表示セサルトキハ之ヲ拒絶シタルモノト見做ス物カ試験又ハ検視ノ為メニ買主ニ引渡サレタルトキハ買主ノ緘黙ハ目的物ヲ認諾シタルモノト見做ス 二、 買戻 第四百三十三条 売却ノ時ニ買戻権ヲ留保シタルトキハ売主カ買主ニ対シ此権利ヲ行使スル意思ヲ表示スルト同時ニ買戻ハ完結ス此意思表示ハ売買契約ニ付キ或方式カ規定セラレタルモノト雖モ之ヲ要セス 売却代価ハ疑ハシキ場合ニ於テハ買戻代価ト見做ス 第四百三十四条 売戻人ハ買戻人ニ対シ売買ノ目的物ヲ其附属物ト共ニ返還スル義務ヲ負担ス 売戻人カ買戻権ノ行使前ニ生シタル目的物ノ滅失又ハ毀損ニ付キ過失アルトキ又ハ目的物ヲ甚シク変更シタルトキハ之ニ因リテ生シタル損害ニ付キ其責ニ任ス 目的物カ売戻人ノ過失ニ因ラスシテ毀損シ又ハ其変更カ甚シカラサルトキハ買戻人ハ代価ノ減少ヲ請求スルコトヲ得ス 売戻人カ買戻権ノ行使前ニ売買ノ目的物ヲ処分シタルトキハ之ニ因リテ生シタル第三者ノ権利ヲ除去スル義務ヲ負担ス判決、強制執行又ハ差押ノ方法ニ依ル処分ハ法律行為ニ因ル処分ニ同シ 第四百三十五条 売戻人ハ買戻前ニ売買ノ目的物ニ加ヘタル費用ニ付キ之ニ因リテ目的物ノ価格カ増加シタル限度ニ於テ賠償ヲ請求スルコトヲ得 売戻人カ返還スヘキ物ト他ノ物トヲ混同シタル場合ニ於テ少クトモ此物カ分離後ニ有スヘキ価格ヲ賠償セラレサルトキハ之ヲ取去ル権利ヲ有ス此場合ニ於テハ売戻人ハ其費用ヲ以テ返還スヘキ物ヲ原状ニ回復スルコトヲ要ス又売戻人カ既ニ目的物ヲ占有セサルトキハ第四百九十一条第二項第三段ノ規定ヲ準用ス 第四百三十六条 売買ノ目的物カ買戻ノ時ニ有スル評価ヲ以テ買戻代価ト約定シタルトキハ売戻人ハ目的物ノ滅失又ハ毀損ニ付キ其責ニ任セス買戻人ハ費用ヲ賠償スル義務ヲ負担セス 第四百三十七条 数人カ買戻権ヲ共有スルトキハ全体ニ於テノミ之ヲ行使スルコトヲ得 第四百三十八条 買戻権ノ行使ニ付キ期間ノ定ナキトキハ此権利ヲ留保スルコトヲ約定シタル時ヨリ土地ニ付テハ三十年、其他ノ目的物ニ付テハ三年ノ経過ニ因リテ買戻権ハ消滅ス 三、 先買 第四百三十九条 或目的物ニ関シ先買権ヲ有スル者ハ義務者カ第三者ト此目的物ニ付キ売買契約ヲ取結ヒタルトキハ直ニ先買権ヲ行使スルコトヲ得 先買権者カ義務者ニ対シ先買権ヲ行使スル意思ヲ表示スルト同時ニ売買ハ双方ノ間ニ於テ義務者ト第三者カ約定シタル事項ニ従フテ完結ス 右ノ意思表示ハ売買契約ニ付キ或方式カ規定セラレタルトキト雖モ之ヲ要セス 第四百四十条 義務者ト第三者トノ合意ニ因リテ売買ヲ先買権不行使ノ条件ニ係ラシメ又ハ先買権行使ノ場合ニ対シテ義務者ニ解除権ヲ留保スルコトハ先買権者ニ対シテ無効トス 第四百四十一条 第三者カ売買契約ニ因リテ先買権者カ履行スルコト能ハサル従タル給付ノ義務ヲ負担シタルトキハ先買権者此給付ニ代ヘテ其価格ヲ支払フコトヲ要ス従タル給付ハ金銭ニ見積ルコト能ハサルトキハ先買権ノ行使ハ除却セラル然レトモ契約カ右ノ従タル給付ナキモ第三者ト取結ヒ得ヘカリシモノナルトキハ従タル給付ノ合意ハ之ヲ問ハス 第四百四十二条 第三者カ先買権ノ目的物ヲ他ノ目的物ト共ニ総代価ニテ受取リタルトキハ先買権者ハ総代価ノ割合部分ヲ支払フコトヲ要ス又義務者ハ自己ニ損害ヲ受クルニアラサレハ分離スルコトヲ得サル総テノ物ニ先買ノ及フコトヲ請求スルコトヲ得 第四百四十三条 契約ニ因リテ第三者ニ代価ノ支払ヲ猶予シタル場合ニ於テハ先買権者ハ右ノ猶予金額ニ対シ担保ヲ供シタルトキニノミ猶予ヲ請求スルコトヲ得 土地カ売買ノ目的物タルトキハ支払ヲ猶予セラレタル代価ニ対シ其土地ニ付キ抵当ノ設定ヲ約定シ又ハ代価ノ計算ニ於テ右ノ土地ニ付キ抵当ヲ有スル債務ヲ引受ケタル限度ニ於テ担保ヲ供スルコトヲ要セス 第四百四十四条 義務者ハ第三者ト取結ヒタル契約ノ内容ヲ遅滞ナク先買権者ニ通知スルコトヲ要ス 先買権ハ権利者カ前項ノ通知ヲ受ケタル後権利ノ行使ニ付キ定メラレタル期間内ニ又ハ此期間ナキトキハ土地ニ付テハ二ケ月内ニ其他ノ目的物ニ付テハ一週日内ニ之ヲ行使セサルトキハ消滅ス 第四百四十五条 先買権ハ目的物ノ売却カ強制執行ノ方法ニ依リ又ハ破産管財人ニ依リテ行ハレタルトキハ除却セラル 第四百四十六条 数人カ先買権ヲ共有スルトキハ全体ニ於テノミ之ヲ行使スルコトヲ得先買権カ権利者ノ一人ニ付テ消滅シ又ハ一人カ其権利ヲ行使セサルトキハ他ノ権利者ハ全体ニ於テ先買権ヲ行使スル権利ヲ有ス 第四百四十七条 先買権ハ別段ノ定ナキ限ハ之ヲ譲渡スコトヲ得ス又権利者ノ相続人ニ移転セス先買権カ一定ノ時期内ニ制限セラレタルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ之ヲ相続スルコトヲ得 四、 遺産売買 第四百四十八条 自己ニ帰属スル遺産ヲ売却(遺産売買)スル契約ハ裁判上又ハ公証上ノ方式ヲ要ス 第四百四十九条 遺産売買ニ因リテ当事者相互ニ買主ハ売主ニ代ハリテ相続人タリシ如クスル義務ヲ負担ス 第四百五十条 売買契約ノ取結後ニ事後相続ニ因リ又ハ共同相続人ノ缺亡ニ因リテ売主ニ帰属セシ遺産部分遂ニ売主ニ附与セラレタル予定遺贈ハ共ニ売却セラレタルモノト見做サス 遺贈又ハ負担ノ消滅ニ因リテ生スル利益及ヒ共同相続人ノ等分義務ニ本ツキテ売主ノ有スル請求権ハ買主ニ属ス 家族ニ関スル書類及ヒ写像ハ疑ハシキ場合ニ於テハ共ニ売却セラレタルモノト見做サス 第四百五十一条 売主ハ売却前ニ遺産ニ属スル権利ニ本キ又ハ遺産ノ目的物ヲ処分スルコトニ因リ若ハ此物ノ破壊、毀損又ハ奪取ノ賠償トシテ取得シタル者ト共ニ売却ノ当時ニ存スル遺産ノ目的物ヲ買主ニ引渡ス義務ヲ負担ス 売主カ売却前ニ遺産ノ目的物ヲ消費シ又ハ無償ニテ之ヲ譲渡シ若クハ無償ニテ之ニ負担ヲ加ヘタルトキハ買主ニ対シ消費又ハ譲渡シタル目的物ノ価格ヲ賠償シ又負担ヲ加ヘタル場合ニ於テハ価格ノ減少ヲ賠償スル義務ヲ負担ス但買主カ売買契約ヲ取結フ時ニ右ノ消費又ハ無償ノ処分ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス其他買主ハ遺産ノ目的物ノ滅失又ハ毀損ニ本ツキ賠償ヲ請求スルコトヲ得ス 第四百五十二条 権利ノ瑕疵ニ本ツク売主ノ担保義務ハ遺産ニ対スル権利カ自己ニ属スルコト、此権利ハ事後相続人ノ権利ニ因リ若クハ義務部分ノ請求権、等分義務ノ請求権、遺贈若クハ負担ニ因リテ義務ヲ加ヘラレサルコト及ヒ限定承認権カ消滅セス又ハ遺産債権者ニ対シテ除却セラレサルコトニ関スル責任ニ限ルモノトス 遺産ニ属スル物ノ瑕疵ニ付キ売主ハ其責ニ任セス 第四百五十三条 相続ニ本ツク権利ト義務ノ混同ニ因リ又ハ権利ト或負担ノ混同ニ因リテ消滅シタル法律関係ハ買主ト売主トノ関係ニ於テ之ヲ消滅セサリシモノト見做ス又必要ノ場合ニ於テハ右法律関係ヲ原状ニ回復セシムルコトヲ要ス 第四百五十四条 買主ハ売主ニ対シ遺産義務ヲ履行スルコトヲ要ス但売主カ第四百五十二条ノ規定ニ従ヒ遺産義務ノ存立セサルコトニ付キ其責ニ任スヘキトキハ此限ニ在ラス 売主カ売渡前ニ遺産義務ヲ履行シタルトキハ買主ニ対シ賠償ヲ請求スルコトヲ得 第四百五十五条 売渡前ニ生シタル収益ハ売主ニ属シ此時期ニ於ケル負担及ヒ遺産義務ノ利息ハ売主之ヲ負担ス然レトモ遺産ヨリ支払フヘキ租税及ヒ其他臨時ノ負担ニシテ遺産ノ本価ニ対シ附加セラレタリト認ムヘキモノハ買主之ヲ負担ス 第四百五十六条 買主ハ結約ノ時ヨリ遺産目的物ニ生スル偶然ノ滅失又ハ毀損ノ危険ヲ負担ス又此時ヨリ目的物ノ収益ヲ取得シ且其物ニ加ヘラレタル負担ノ責ニ任ス 第四百五十七条 買主ハ売主ニ対シ売渡前ニ遺産ニ加ヘラレタル必要及ヒ有益ノ費用ヲ賠償スルコトヲ要ス但此費用カ売主ニ存スヘキ収益ヲ得ル為メニ加ヘラレタルトキハ此限ニ在ラス 第四百五十八条 買主ハ結約ノ時ヨリ売主カ負担スル責任ノ存続ヲ妨クルコトナクシテ遺産債権者ニ対シ其責ニ任ス買主カ売主ニ対シ第四百五十四条及ヒ第四百五十五条ノ規定ニ従ヒ履行ノ責ニ任セサル義務ニ付キ亦同シ其他債権者ニ対シテ買主カ負担スル責任ハ買主ト売主トノ契約ニ因リテ之ヲ除却シ又ハ制限スルコトヲ得ス 第四百五十九条 買主ハ売主カ結約ノ時ニ限定承認権ヲ有セシ限度ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得又買主ハ限定承認権ノ喪失ニ関スル規定ニ従ヒ此権利ヲ失フ其他売主又ハ買主ノ一方カ為シタル限定承認ハ相手方ノ利益ト成ル 売買契約取結後ハ買主ノミ売主ニ代ハリテ遺産ノ破産ヲ申請スルコトヲ得又此破産ハ買主ニ対シテノミ之ヲ申請スルコトヲ得売主ハ第四百五十四条及ヒ第四百五十五条第三段ノ規定ニ因リテ自己ニ属スル請求権ニ関シ遺産債権者ノ如ク破産ノ申請ヲ為スコトヲ得遺産及ヒ其譲渡ニ付キ買主カ売主ニ対シテ有スル請求権ハ破産財団ニ属ス 遺産債権者ニ対スル公示催告ハ売主及ヒ買主ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得其一方カ為シタル申請及ヒ此者ニ依リテ求メラレタル除却ノ判決ハ又是相手方ノ利益ト成ル 第四百六十条 売主ハ遺産ノ売却及ヒ買主ノ名ヲ遅滞ナク遺産裁判所ニ表示スルコトヲ要ス之ヲ怠ルトキハ遺産債権者ニ対シ損害賠償ノ責ニ任ス 遺産裁判所ハ法律上ノ利益ヲ有スルコトヲ疏明スル者ニ前項ノ表示ヲ閲覧セシムルコトヲ要ス 第四百六十一条 遺産ノ売買ニ関スル規定ハ契約ニ因リテ売主カ取得シタル遺産ノ売却ニ付キ其他譲渡人ニ帰属シ若クハ他ノ方法ニ依リテ此者カ取得シタル遺産ノ譲渡ヲ目的トスル契約ニ付キ之ヲ準用ス然レトモ贈与ノ場合ニ於テハ贈与者カ故意ニ権利ノ瑕疵ヲ告ケサリシトキニノミ第四百五十二条ニ掲クル瑕疵担保ノ義務ヲ負担ス又贈与者ハ贈与前ニ消費シ又ハ無償ニテ譲渡シタル遺産ノ目的物ニ付キ若クハ贈与前ニ無償ニテ此物ニ加ヘタル負担ニ付キ賠償ノ義務ナシ 第二節 交換 第四百六十二条 交換ニ付テハ売買ニ関スル規定ヲ準用ス 第三節 贈与 第四百六十三条 寄贈ニ因リ自己ノ財産ヲ以テ他人ニ利得ヲ与フル場合ニ於テ当事者カ無償ニテ寄贈ヲ為スコトニ付キ合意スルトキハ此寄贈ヲ贈与トス 寄贈ハ贈与ヲ受クヘキ者ノ意思カ加ハルコトナクシテ行ハレタル場合ニ於テ此者カ受諾ノ意思ヲ表示スルニ付キ寄贈者ノ指定シタル相当ノ期間内ニ贈与ヲ拒絶セサルトキハ之ヲ受諾シタルモノト見做ス又贈与ヲ拒絶スルトキハ不当利得ノ引渡ニ関スル規定ニ従ヒ寄贈セラレタル物ヲ償還スルコトヲ要ス 第四百六十四条 他人ノ利益ノ為メニ財産ノ取得ヲ怠リ又ハ自己ニ帰属スルモ未タ取得セサル権利ヲ放棄シ若クハ遺産又ハ遺贈ヲ辞退スルモ之ニ因リテ贈与アリタリトセス 第四百六十五条 贈与ノ方法ニ依リテ或給付ヲ約束スル契約ノ有効ナルニハ裁判上又ハ公証上ノ方式ニ従ヒ其約束ヲ為スコトヲ要ス第七百十九条及ヒ第七百二十条ニ掲クル種類ノ債務ノ約束又ハ認諾カ贈与ノ方法ニ依リテ為サルヽ場合ニ於テ此約束又ハ認諾ヲ為スコトニ付キ亦同シ 前項ノ方式ノ欠缺ハ約束シタル給付ヲ履行スルトキハ之ヲ問ハス 第四百六十六条 贈与者カ其他ノ義務及ヒ法律上ノ養料ノ義務ニ注意スルトキハ自己ノ身分ニ相当ナル生計ヲ制限スルニアラサレハ贈与ノ約束ヲ履行スルコト能ハサル限ハ贈与ノ方法ニ依リテ為シタル約束ノ履行ヲ拒絶スルコトヲ得数人ノ受贈者ノ請求権カ競合スルトキハ其順位ハ権利成立ノ先後ニ依ル 第四百六十七条 贈与者ハ受贈者ニ対シ定期復帰スル給付ニ依ル扶助ヲ約束シタルトキハ贈与者ノ死亡ト共ニ此義務ハ消滅ス但約束ニ本ツク別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス 第四百六十八条 贈与者ハ故意又ハ重懈怠ニ付テノミ其責ニ任ス 第四百六十九条 贈与者ハ遅滞利息支払ノ義務ヲ負担セス 第四百七十条 贈与者カ故意ニ権利ノ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ受贈者ニ賠償スルコトヲ要ス 贈与者カ後ニ至リテ取得スヘキ物ノ給付ヲ約束シタル場合ニ於テ其取得ノ時ニ権利ノ瑕疵ヲ知リ又ハ重懈怠ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ受贈者ハ権利ノ瑕疵ニ本ツキ不履行ニ因ル損害賠償ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ売主ノ担保ノ義務ニ関スル第三百八十二条第二項第三項第三百八十三条及ヒ第三百八十四条ノ規定ヲ準用ス 第四百七十一条 贈与者カ故意ニ贈与物ノ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ受贈者ニ対シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス 贈与者カ後ニ至リテ取得スヘク且種類ニ依リテ定ムヘキ物ノ給付ヲ約束シタル場合ニ於テ其取得ノ時ニ物ノ瑕疵ヲ知リ又ハ重懈怠ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ受贈者ハ給付セラレタル物ノ瑕疵ニ本ツキ不履行ニ因ル損害賠償ヲ請求スルコトヲ得又此損害賠償ニ代ヘ瑕疵アル物ノ代ハリニ瑕疵ナキ物ノ給付ヲ請求スルコトヲ得右ノ請求権ニ付テハ売渡サレタル物ノ瑕疵担保ニ関スル規定ヲ准用ス 第四百七十二条 負担付ニテ贈与ヲ約束シタルトキハ贈与者カ自己ノ給付ヲ為シタル後ニ於テ負担ノ実行ヲ請求スルコトヲ得 負担ノ実行カ公益ニ存スルトキハ各聯邦ノ法律ニ従ヒ管轄官庁モ亦贈与者ノ死後負担ノ実行ヲ請求スルコトヲ得 第四百七十三条 権利又ハ受贈物ノ瑕疵ニ因リテ寄贈ノ価格カ負担ノ実行ニ必要ナル費用額ニ達セサル限ハ受贈者ハ瑕疵ニ本ツク不足額カ補償セラルルマテ負担ノ実行ヲ拒絶スルコトヲ得又受贈者カ此瑕疵ヲ知ラスシテ負担ヲ実行シタルトキハ贈与者ニ対シ実行ニ因リテ生シタル費用カ右瑕疵ノ為メニ寄贈ノ価格ヲ越ユル限度ニ於テ其賠償ヲ請求スルコトヲ得 第四百七十四条 受贈者カ負担ノ実行ヲ怠ルトキハ贈与者ハ双務契約ニ於ケル解除権ニ付テ定メタル要件ニ依リ不当利得ノ引渡ニ関スル規定ニ従ヒ負担ノ実行ニ必要ナリシ限度ニ於テ贈物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得然レトモ第三者カ負担ノ実行ヲ請求スヘキトキハ右返還ノ請求ヲ為スコトヲ得ス 第四百七十五条 贈与ハ受贈者カ重大ナル過誤ニ因リ贈与者又ハ其近親ニ対シテ重ク背恩ノ責ニ任スヘキトキハ之ヲ取消スコトヲ得 贈与者ノ相続人ハ受贈者カ故意ニ贈与者ヲ殺害シ又ハ不法行為ニ因リテ贈与ノ取消ヲ妨ケタルトキニノミ其取消権ヲ有ス 第四百七十六条 贈与ハ之ニ因リテ徳義上ノ義務又ハ風儀上ノ注意ニ適セシメラルルトキハ之ヲ取消スコトヲ得ス 第四百七十七条 贈与ノ取消ハ受贈者ニ対スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス 前項ノ取消ニ本ツキ不当利得ノ引渡ニ関スル規定ニ従ヒ贈物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 第四百七十八条 贈与ノ取消ハ贈与者カ受贈者ヲ宥恕シタルトキ又ハ取消権者カ其権利ノ要件ノ到来ヲ知リタル時ヨリ一年ヲ経過スルトキハ除却セラル又受贈者ノ死亡後ハ贈与ノ取消ヲ生セス 第四百七十九条 贈与ノ取消権ハ取消権者カ受贈者ノ背恩ヲ知リタル後ニアラサレハ之ヲ放棄スルコトヲ得ス 第四節 賃貸借、用応賃貸借 第一款 賃貸借 第四百八十条 賃貸契約ニ因リテ賃貸人ハ貸借期間賃借人ニ賃借物ヲ使用セシメ賃借人ハ賃貸人ニ合意上ノ借賃ヲ支払フヘキ義務ヲ負担ス 土地ノ賃貸借ニ関スル規定ハ家屋其他ノ場所ノ賃貸借ニ付キ之ヲ適用ス 第四百八十一条 賃貸人ハ賃貸人ニ対シ契約面ノ使用ニ適スル状体ニ於テ賃借物ヲ委付シ且賃貸借ノ全期間右ノ状体ニ於テ之ヲ保存スルコトヲ要ス 第四百八十二条 賃借物ヲ賃借人ニ委付スル時此物ニ契約面ノ使用ニ適スルコトヲ減却又ハ減少セシムル瑕疵アルトキ又ハ貸借期間中ニ此瑕疵カ生シタルトキハ賃借人ハ右使用ニ適スルコトカ減却セラルル期間ニ対シ借賃ノ支払ヲ免カレ又其減少セラルル期間ニ対シ第四百〇八条及ヒ第四百〇九条ノ規定ニ依リテ定ムヘキ借賃ノ割合部分ノミヲ支払フヘキ義務ヲ負担ス 物ニ確保セラレタル性質カ欠クルトキ又ハ後ニ至リテ欠ケタルトキ亦同シ土地ノ賃貸借ニ付テハ一定ノ面積ヲ確保スルコトハ性質ヲ確保スルニ同シ 第四百八十三条 第四百八十二条ニ掲クル種類ノ瑕疵カ契約取結ノ時ニ存在シ又ハ其後賃貸人ノ責ニ帰スヘキ事情ニ因リテ発生シ若クハ賃貸人カ瑕疵ノ除去ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ賃借人ハ第四百八十二条ニ定ムル権利ヲ主張セスシテ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求スルコトヲ得 賃貸人カ遅滞ニ在ル場合ニ於テハ賃借人ハ自ラ瑕疵ヲ除去シ之レカ為メニ要シタル費用ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得 第四百八十四条 賃借人カ契約取結ノ時ニ賃借物ノ瑕疵ヲ知リタルトキハ第四百八十二条及ヒ第四百八十三条ニ定ムル権利ヲ有セス又賃借人カ重懈怠ニ因リ第四百八十二条第一項ニ掲クル種類ノ瑕疵ヲ知ラサリシトキ又ハ瑕疵ヲ知ルモ其物ヲ受取リタルトキハ第三百九十八条及ヒ第四百〇一条ノ規定ニ因リテ瑕疵アル物ノ買主ニ対シ担保ノ責ニ任スヘキ場合ニ於ケル要件ノ存スルトキニノミ右ノ権利ヲ主張スルコトヲ得 第四百八十五条 賃借物ノ瑕疵ノ責ニ任スヘキ賃貸人ノ義務ヲ免除シ又ハ之ヲ制限スル合意ハ賃貸人カ故意ニ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ無効トス 第四百八十六条 賃借人カ第三者ノ権利ニ因リテ契約ニ定メタル賃借物ノ使用ノ全部又ハ一部ヲ取去ラルルトキハ第四百八十二条、第四百八十三条、第四百八十四条第一段及ヒ第四百八十五条ノ規定ヲ準用ス 第四百八十七条 契約ニ定メタル賃借物ノ使用ノ全部又ハ一部カ正当ノ時期ニ供与セラレス又ハ取去ラルルトキハ賃借人ハ告知期間ヲ保タスシテ賃貸借関係ノ解除ヲ告知スルコトヲ得此告知ハ賃貸人カ右ノ事情ニ対スル救済ヲ行フコトナクシテ賃借人ヨリ指定セラレタル相当ノ期間ヲ経過セシメタルトキニ至リ之ヲ為スコトヲ得又此期間ハ契約ノ履行カ告知ヲ正当ナラシムル事情ニ因リテ賃借人ニ利益ヲ与ヘサルトキハ之ヲ指定スルコトヲ要セス 使用ノ妨害又ハ之ヲ供与セサルコトカ著シカラサル場合ニ於テ之ニ因リテ前項ノ告知ヲ為スニハ賃借人ノ特別ノ利益カ告知ヲ正当ナラシムルトキニノミ之ヲ許ス 告知権ニ付テハ第四百八十四条乃至第四百八十六条ノ規定及ヒ売買廃却ニ関スル第四百〇五条乃至第四百〇七条ノ規定ヲ準用ス借賃ノ先払アルトキハ賃貸人ハ第二百九十八条及ヒ第二百七十九条第二段ノ規定ニ従ヒ之ヲ返還スルコトヲ要ス 第四百八十八条 借家カ其構造ニ因リ之ヲ使用スルニ付キ著シク健康ヲ害スル虞アルトキハ賃借人ハ告知期間ヲ保タスシテ賃貸借関係ノ解除ヲ告知スルコトヲ得賃借人カ契約取結ノ時ニ右危害ヲ生セシムル性質ヲ知リ又ハ之ニ本ツク自己ノ権利ヲ主張スルコトヲ放棄シタルトキト雖モ亦同シ 第四百八十九条 賃貸借中ニ賃借物ノ瑕疵カ発現シ又ハ第三者カ此物ニ付キ権利ヲ主張スルトキハ賃借人ハ賃貸人ニ対シ遅滞ナク之ヲ通知スルコトヲ要ス 賃借人カ前項ノ通知ヲ怠ルトキハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス又此通知ヲ怠リタルカ為メ賃貸人カ救助ヲ与フルコト能ハサリシ時期ニ対シ賃借人ハ第四百八十二条ニ掲クル権利ヲ主張シ又ハ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求スルコトヲ得ス 第四百九十条 賃貸人ハ賃借物ニ加ヘラレタル負担ヲ支払フコトヲ要ス 第四百九十一条 賃貸人ハ賃借人ニ対シ此者カ賃借物ニ加ヘタル必要費ヲ賠償スルコトヲ要ス但動物ノ賃借人ハ其飼養料ヲ負担スルコトヲ要ス 其他ノ費用賠償ニ関スル賃貸人ノ義務ハ事務管理ニ関スル規定ニ依リテ之ヲ定ム賃借人ハ又自己ノ為シタル造作ヲ取去ルコトヲ得此場合ニ於テハ自費ヲ以テ賃借物ヲ元状ニ回復スルコトヲ要ス賃借人カ賃借物ヲ占有セサルトキハ賃貸人ハ造作ノ取去ヲ許スヘキ義務ヲ負担ス然レトモ造作ノ取去ニ因リテ生スル損害ニ対シ賃借人ヨリ担保ヲ供スルマテ右ノ許諾ヲ拒絶スルコトヲ得 第四百九十二条 賃借人ハ契約上ノ使用ニ因リテ生シタル賃借物ノ変更又ハ毀損ニ付キ其責ニ任セス 第四百九十三条 賃借人ハ賃貸人ノ許諾ヲ受ケスシテ賃借物ノ使用ヲ第三者ニ委付スル権利ヲ有セス殊ニ賃借物ヲ転貸(下賃貸)スルコトヲ得ス賃貸人カ第三者ノ身上ニ付キ重要ナル理由ナクシテ右ノ許諾ヲ拒ムトキハ賃借人ハ法定ノ告知期間ニ従ヒ賃貸借ノ解除ヲ告知スルコトヲ得 賃借人カ賃借物ノ使用ヲ第三者ニ委付スルトキハ其使用ニ付キ第三者ノ責ニ帰スヘキ過失ノ責ニ任ス賃貸人カ使用ヲ委付スルコトヲ許シタルトキ亦同シ 第四百九十四条 賃借人カ契約ニ反シテ賃借物ヲ使用スル場合ニ於テ賃貸人ノ制止ニ拘ハラス尚ホ之ヲ続行スルトキハ賃貸人ハ右使用停止ノ判決ヲ請求スルコトヲ得 第四百九十五条 借賃ハ賃貸借期間ノ終ニ之ヲ支払フコトヲ要ス借賃カ一定ノ期間ニ依リテ定メラレタル場合ニ於テハ各期間カ経過シタルトキニ之ヲ支払フコトヲ要ス 土地ノ借賃カ四分ノ一暦年ヨリ短キ期間ニ依リテ定メラレサル限ハ四分ノ一暦年ノ経過毎ニ次月ノ第一業日ニ之ヲ支払フコトヲ要ス 第四百九十六条 賃借人ハ自己ノ身上ニ存スル原因ニテ賃借物ノ使用権ヲ行使スルコトヲ妨ケラルヽモ之ニ因リテ借賃ノ支払ヲ免ルヽコトヲ得ス然レトモ賃貸人ハ右ノ不使用ニ因リテ出捐スルコトヲ要セリシ費用ノ金額及ヒ他ノ方法ニテ賃借物ノ使用ヲ換価スルコトニ因リテ取得シタル利得ノ金額ヲ借賃ト計算セシムルコトヲ要ス又賃貸人カ賃借物ノ使用ヲ第三者ニ委付セシニ因リ賃借人ニ之ヲ使用スルコトヲ得セシメサリシ時日ニ対シ賃借人ハ借賃ヲ支払フコトヲ要セス 第四百九十七条 左ノ場合ニ於テハ賃貸人ハ告知期間ヲ保タスシテ賃貸借ヲ解除スルコトヲ得 一、 賃借人又ハ此者カ賃借物ノ使用ヲ委付シタル者カ賃貸人ノ制止ニ拘ハラス契約ニ反シタル使用ヲ続行シ殊ニ権限ヲ有セサル使用ヲ第三者ニ委付シ又ハ賃借人ノ負担スル注意ヲ怠ルコトニ因リテ賃借物ヲ着シク危険ナラシムルトキ 二、 賃借人カ継続セル二期間ニ対シ借賃ノ全部又ハ一部ノ支払ニ付キ遅滞ニ在ルトキ此場合ニ於テ解約ノ告知アル前ニ賃借人カ賃貸人ニ弁済スルトキハ解約ノ告如ハ除却セラル又賃借人カ相殺ニ因リテ自己ノ義務ヲ免カレ得ルトキ又ハ解約ノ告知後遅滞ナク相殺ノ意思ヲ表示スルトキハ解約ノ告知ハ無効トス 賃貸人カ告知権ヲ行使スルトキハ其後ノ時期ニ対シ先払アリタル借賃ヲ第二百九十八条ノ規定ニ依リテ返還スルコトヲ要ス 第四百九十八条 賃貸借関係カ終了スルトキハ賃借人ハ賃借物ヲ返還スル義務ヲ負担ス 土地ノ賃借人ハ賃貸人ニ対スル自己ノ請求権ニ本ツキ留置権ヲ有セス 賃借人カ賃借物ノ使用ヲ第三者ニ委付シタル場合ニ於テ賃貸借関係カ終了スルトキハ賃貸人ハ第三者ニ対シテモ賃借物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 第四百九十九条 賃借人カ賃貸借関係ノ終了後賃借物ヲ返還セサルトキハ賃貸人ハ此留置ノ継続スル期間ニ対シ賠償トシテ合意上ノ借賃ヲ請求スルコトヲ得但其他ノ損害ニ対スル賠償請求権ハ之ニ因リテ除却セラルルコトナシ 第五百条 賃借物ノ変更又ハ毀損ニ本ツク賃貸人ノ賠償請求権及ヒ費用ノ賠償又ハ造作取去ノ許諾ニ関スル賃借人ノ請求権ハ六ケ月ヲ以テ其時効期間トス賃貸人ノ賠償請求権ノ時効ハ賃貸人カ物ノ返還ヲ受ケタル時ヨリ又賃借人ノ賠償請求権ノ時効ハ賃貸借関係カ終了セシ時ヨリ其進行ヲ始ム 第五百〇一条 土地ノ賃貸人ハ賃貸借関係ニ本ツク自己ノ債権ニ対シ土地ニ持込マレタル賃借人ノ物ニ付キ質権ヲ有ス然レトモ将来ノ賠償請求権ニ対シ又ハ当期及ヒ次期以後ノ賃貸借期間ノ借賃ニ対シ質権ヲ主張スルコトヲ得ス又此質権ハ質権ノ目的ト為シ得サル物ニ及ハス 第五百〇二条 賃貸人ノ質権ハ物ヲ土地ヨリ持チ去ルトキハ消滅ス但賃貸人ノ不知ニテ又ハ其異議アルニ拘ハラス持チ去ラレタルトキハ此限ニ在ラス然レトモ物ヲ持チ去ルコトカ賃借人ノ営業ヲ適当ニ行フニ当リ又ハ通常ノ生活関係ニ適シテ行ハルトキ若クハ残存物カ賃貸人ノ担保ニ充分ナルコトノ明ナルトキハ賃貸人ハ右持チ去ルコトニ反対スルコトヲ得ス 第五百〇三条 賃貸人ハ自己ノ質権ニ服スル物ヲ持チ去ルコトニ反対スル権利ヲ有スル限ハ裁判所ニ訴フルコトナクシテ之ヲ妨クルコトヲ得又貸借人カ出去ルトキハ賃貸人ハ物ヲ自己ノ占有ニ帰セシムルコトヲ得其他賃借人カ賃貸人ノ不知ニテ又ハ其異議ニ拘ハラス物ヲ持チ去ルトキハ賃貸人ハ之ヲ土地ニ引戻ス為メ其引渡ヲ請求シ又賃借人カ出去ルトキハ其共有ノ委付ヲ請求スルコトヲ得賃貸人カ物ヲ持チ去リタルコトヲ知リタル後一ケ月内ニ右ノ請求権ヲ裁判上ニ主張セサルトキハ質権ハ消滅ス 第五百〇四条 賃借人ハ担保ヲ供スルコトニ因リテ賃貸人ノ質権ノ行使ヲ免ルルコトヲ得又各物ノ価格マテ担保ヲ供スルコトニ因リテ此物ヲ質権ヨリ免カレシムルコトヲ得 第五百〇五条 賃貸人ノ質権ニ服スル物カ他ノ債権者ニ質入セラレタルトキハ此者ニ対シ質入前ニ於ケル最終年ヨリ以前ノ時日ニ対スル借賃ニ本ツキ質権ヲ主張スルコトヲ得ス 第五百〇六条 賃貸借関係ハ其取結ニ付キ定メタル期間ノ経過ニ因リテ終了ス 賃貸借ノ期間ヲ定メサリシトキハ各当事者ハ賃貸借関係ノ解除ヲ告知スルコトヲ得 前項ノ告知ハ土地ニ付テハ四分ノ一暦年ノ終末ニ対シテノミ之ヲ為スコトヲ得此告知ハ遅クトモ四分ノ一暦年ノ第一業日ニ之ヲ為スコトヲ要ス又借賃カ月ニ依リテ定メラレタルトキハ一暦月ノ終末ニ対シテノミ解約ノ告知ヲ為スコトヲ得此告知ハ遅クトモ其月ノ第十五日ニ之ヲ為スコトヲ要ス借賃カ週ニ依リテ定メラレタルトキハ一暦週ノ終末ニ対シテノミ解約ノ告知ヲ為スコトヲ得此告知ハ遅クトモ其週ノ第一業日ニ之ヲ為スコトヲ要ス 動産ニ付テハ解約ノ告知ハ遅クトモ賃貸借関係カ終了スヘキ日ノ前第三日ニ之ヲ為スコトヲ要ス 土地又ハ動産ニ対スル借賃カ日ニ依リテ定メラレタルトキハ解約ノ告知ハ次日ニ対シ毎日之ヲ為スコトヲ得 第三項第一段及ヒ第四項ノ規定ハ法定ノ期間ヲ保チテ期日ニ先チ賃貸借関係ノ解除ヲ告知スルコトヲ得ル場合ニモ之ヲ適用ス 第五百〇七条 土地ノ賃貸借ハ一年以上ノ期間ニテ取結ハルルトキハ書面契約ニ依ルコトヲ要ス此方式ニ従ハサルトキハ期限ヲ定メスシテ契約ヲ取結ヒタルモノト見做ス然レトモ解約ノ告知ハ第一年ノ終末前ノ時期ニ対シテ之ヲ為スコトヲ得ス 第五百〇八条 賃貸借契約カ三十年以上ノ期限ニテ取結ハレタル場合ニ於テ三十年ヲ経過シタルトキハ各当事者ハ法定ノ告知期間ヲ保チテ解約ノ告知ヲ為スコトヲ得然レトモ右ノ契約カ賃貸人又ハ賃借人ノ終身ヲ期シテ取結ハレタルトキハ解約ノ告知ハ之ヲ許サス 第五百〇九条 賃借人カ賃貸借期間ノ経過後賃借物ノ使用ヲ続行スル場合ニ於テ別段ノ合意ナキトキハ期間ヲ定メスシテ賃貸借関係ヲ延期シタルモノト見做ス但賃貸人又ハ賃借人カ二週日ノ期間内ニ相手方ニ対シ反対ノ意思ヲ表示スルトキハ此限ニ在ラス右期間ハ賃借人ニ対シテハ使用ヲ続行スル時ヨリ又賃貸人ニ対シテハ使用ノ続行ヲ知リタル時ヨリ其進行ヲ始ム 第五百十条 賃借人カ死亡スルトキハ其相続人又ハ賃貸人ハ法定ノ告知期間ヲ保チテ賃貸借関係ノ解除ヲ告知スルコトヲ得然レトモ此告知ヲ為スコトヲ許サレタル第一ノ期限ニ対シテ之ヲ為サヽルトキハ解約ノ告知ハ除却セラル 第五百十一条 軍人、官吏、僧侶及ヒ右ノ教育所教師カ他ノ地ヘ転任スル場合ニ於テハ従来ノ屯営地又ハ住所地ニ於テ自己又ハ家族ノ為メニ賃借シタル場所ニ関シ仮定ノ告知期間ヲ保チテ賃貸借関係ノ解除ヲ告知スルコトヲ得然レトモ此告知ヲ為スコトヲ許サレタル第一ノ期限ニ対シ之ヲ為サヽルトキハ解約ノ告知ハ除却セラル 第五百十二条 賃貸人カ賃借人ニ賃貸地ヲ委付シタル後之ヲ第三者ニ譲渡シタルトキハ取得者ハ自己ノ所有権ノ存続スル間賃貸借関係ニ因リテ生スル権利及ヒ義務ニ関シ賃貸人ニ代ハルモノトス 取得者カ前項ノ義務カ履行セサル場合ニ於テ損害賠償ノ義務ヲ負担スル限ハ賃貸人ハ此損害賠償ニ対シ先訴抗弁ヲ放棄シタル証人ノ如ク其責ニ任ス然レトモ賃借人カ賃貸人ノ通知ニ因リテ所有権ノ移転ヲ知リタル後解約ノ告知ヲ為スコトヲ許サレタル第一期限ニ対シ賃貸借関係ノ解除ヲ告知セサルトキハ賃貸人ハ本項ノ義務ヲ免カル 第五百十三条 譲渡サレタル土地ノ賃借人カ義務ノ履行ニ対シ賃貸人ニ担保ヲ供シタルトキハ土地ノ取得者ハ之ニ因リテ生シタル権利ヲ取得ス取得者ハ担保ヲ自己ニ引渡サレタルトキ又ハ賃貸人ニ対シ担保返還ノ義務ヲ引受ケタルトキニノミ此義務ヲ負担ス 第五百十四条 取得者ノ権利ノ及フヘキ時期ニ属スル借賃部分ニ付キ所有権ノ移転前ニ為シタル賃借人ノ度分ハ所有権移転ノ時ノ四分ノ一暦年及ヒ其次ノ四分ノ暦年ニ対スル借賃ニ関スル限度ニ於テ有効トス其後ノ時期ニ対スル借賃ノ処分ハ取得者カ所有権移転ノ時ニ之ヲ知リタル場合ニ於テノミ自己ニ対抗セシムルコトヲ要ス 第五百十五条 所有権ノ移転後ニ賃借人及ヒ賃貸人カ借賃ノ債権ニ関シテ為シタル法律行為殊ニ借賃ノ支払ハ賃借人カ所有権ノ移転ヲ知リタル時ノ四分ノ一暦年及ヒ其次ノ四分ノ一暦年ヨリ以後ノ時期ニ対スル借賃ニ関セサル限ハ取得者ニ対シテ其効力ヲ有ス但賃借人カ法律行為ヲ為ストキ所有権ノ移転ヲ知リタルトキハ右ノ効力ハ除却セラル 第五百十六条 賃貸人ニ為シタル借賃ノ支払カ第五百十五条第一段ノ規定ニ因リ取得者ニ対シテ有効ナル限ハ賃借人ハ賃貸人ニ対シテ有スル債権ヲ以テ取得者ノ借賃ノ債権ト相殺スルコトヲ得但賃借人カ所有権ノ移転ヲ知リタル後ニ相対債権ヲ取得シ又ハ相対債権ハ賃借人カ所有権ノ移転ヲ知リタル後ニ於テ且ツ借賃ヨリ後ニ満期トナリタルトキハ右ノ相殺ハ除却セラル 第五百十七条 賃借地ノ所有権ハ第三者ニ移転シタルコトヲ賃借人ニ通知シタル賃貸人ハ借賃ノ債権ニ関シ此債権カ未タ移転セス又ハ其移転カ無効ノトキト雖モ自己ニ対シ賃借人ヲシテ移転ノ通知ヲ主張セシムルコトヲ要ス 通知ノ取消ハ新所有者トシテ表示セラレタル者ノ同意ヲ得テ之ヲ為シタルトキニノミ有効トス 第五百十八条 賃貸人カ賃借人ニ土地ヲ委付シタル後第三者ノ権利ヲ以テ之ニ負担ヲ加ヘタル場合ニ於テ此権利ノ行使ニ因リ賃借人ノ契約上ノ使用ヲ奪取スルトキハ第五百十二条乃至第五百十七条ノ規定ヲ準用ス 権利ノ行使カ賃借人ノ契約上ノ使用ヲ制限スルノミナルトキハ第三者ハ賃借人ニ対シ之ヲ制限スル限度ニ於テ権利ノ行使ヲ止ムル義務ヲ負担ス 第五百十九条 賃貸人カ土地ヲ賃借人ニ委付スル前ニ之ヲ第三者ニ譲渡シ又ハ賃借人ノ契約上ノ使用ヲ奪取又ハ制限スル権利ヲ以テ土地ニ負担ヲ加ヘタル場合ニ於テ取得者カ賃貸人ニ対シ賃貸借関係ニ本ツク義務ノ履行ヲ引受ケタルトキハ第五百十二条第一項及ヒ第五百十八条ノ場合ニ於ケルト同一ノ規定ヲ適用ス 第五百二十条 賃借地カ取得者ニ依リテ更ニ譲渡サレ又ハ負担ヲ加ヘラレタルトキハ第五百十二条第一項第五百十三条乃至第五百十九条ノ規定ヲ準用ス新取得者カ賃貸借関係ニ本ツク義務ヲ履行セサルトキハ賃貸人ハ賃借人ニ対シ第五百十二条第二項ノ規定ニ従ヒ其責ニ任ス 第二款 用益賃貸借 第五百二十一条 用益賃貸借契約ニ因リテ賃貸人ハ賃借人ニ対シ賃貸借ノ期限内ハ賃貸借ニ付セラレタルモノノ使用及ヒ収益ヲ為サシメ賃借人ハ賃貸人ニ対シ約定ノ用益賃借料ヲ支払フ義務ヲ負担ス 第五百二十二条乃至第五百三十七条ニ別段ノ定ナキ限ハ賃貸借ニ関スル規定ヲ用益賃貸借ニ準用ス 第五百二十二条 農業地ノ用益賃借人ハ通常ノ修繕殊ニ居住用又ハ農業用ノ建物、道路、溝渠及ヒ囲障ノ修繕ヲ自費ニテ造作スルコトヲ要ス 第五百二十三条 農業地ノ用益賃借人ハ土地ノ耕作法ヲ変更スルコトカ賃貸借ノ期限ヲ越ヘテ土地ノ耕作法ニ影響ヲ及ホス限ハ賃貸人ノ許諾ヲ受ケスシテ之ヲ行フコトヲ得ス 第五百二十四条 農業地ノ用益賃貸借ニ付キ賃借料カ年ニ依リテ定メラレタルトキハ賃貸借期年ノ経過毎ニ次年ノ第一業日ニ之ヲ支払フコトヲ要ス 第五百二十五条 農業地ノ用益賃貸人ニ属スル質権ハ総テノ賃借料ニ対シテ之ヲ主張スルコトヲ得且ツ第五百〇五条ノ規定ニ因リテ制限セラルヽコトナシ又此質権ハ土地ノ果実並ニ民事訴訟法第七百十五条第五号ノ規定ニ因リテ質権ニ服セサル物ニ及ブ 第五百二十六条 土地カ其附属物ト共ニ用益賃貸借ニ付セラレタルトキハ賃借人ハ各附属物ノ保存及ヒ修繕ヲ負担ス 用益賃貸人ハ賃借人ノ責ニ帰セサル事情ニ因リテ減失シタル附属物ヲ補充スル義務ヲ負担ス然レトモ賃借人ハ附属物ニ属スル畜類ノ通常ノ減失ハ相当ノ経済ニ適セシムル限度ニ於テ其子ヲ以テ之ヲ補充スルコトヲ要ス 第五百二十七条 土地ノ用益賃借人カ評価ニ依リテ附属物ヲ受取リ且ツ用益賃貸借カ終了スルトキハ評価ニ依リテ之ヲ返還スル義務ヲ負担シタル場合ニ於テハ第五百二十八条及ヒ第五百二十九条ノ規定ヲ適用ス 第五百二十八条 用益賃借人ハ附属物ニ生スル偶然ノ減失又ハ毀損ノ危険ヲ負担ス又整正タル経済ノ範囲内ニ於テハ各附属物ニ付キ処分ヲ為スコトヲ得 用益賃借人ハ附属物ヲ引渡サレタル現状ニ於テ整正タル経済法ニ従ヒ之ヲ保持スルコトヲ要ス又用益賃借人カ新ニ仕入レタル物ハ之ヲ附属物ニ混入セシムルニ因リテ用益賃貸人ノ所有ニ為ス 第五百二十九条 用益賃借人ハ用益賃貸借カ終了スルトキハ現存セル附属物ヲ用益賃貸人ニ返還スルコトヲ要ス 用益賃貸人ハ賃借人カ新ニ仕入レタル附属物ニシテ整正タル経済法ニ従フトキハ土地ニ対シテ余分ニ失シ又ハ高価ニ過クルモノノ受取ヲ拒絶スルコトヲ得此拒絶ニ因リテ拒絶セラレタル物ノ所有権ハ用益賃借人ニ移転ス 受取リタル附属物ノ評価総額カ返還スヘキ附属物ノ評価総額ヲ越ユルトキハ用益賃貸借人ハ賃貸人ニ対シテ超過額ヲ支払フコトヲ要シ之ニ反対ノ場合ニ於テハ用益賃貸人ハ賃借人ニ対シテ超過額ヲ支払フコトヲ要ス 第五百三十条 土地ノ用益賃借人ハ土地ト共ニ用益賃貸借ニ付セラレタル附属物ニ関スル債権ニ対シ自己ノ占有ニ存スル附属物ニ付キ質権ヲ有ス此質権ニ付テハ第五百四条ノ規定ヲ適用ス 第五百三十一条 耕作地ノ賃借人ハ賃貸借カ終了シタルトキハ土地返還ニ至ルマテノ全期間整正タル耕作法ヲ継続シテ行フコトニ因リテ生スル状況ニ於テ之ヲ返還スル義務ヲ負担ス此規定ハ特ニ土地ノ植付ニ付キ之ヲ適用ス 第五百三十二条 耕作地ノ賃貸借カ年ヲ以テ一期ト為シタル賃貸借期間ノ経過中ニ終了スルトキハ賃貸人ハ賃借人ニ対シ未タ分離セサルモ整正タル耕作法ニ依ルトキハ賃貸借期年ノ終了前ニ分離スヘキ果実ニ加ヘタル費用ヲ賠償スルコトヲ要ス但此費用ハ整正タル耕作法ニ適シ且果実ノ価格ヲ超過セサル限度ニ於テノミ之ヲ賠償スルコトヲ要ス 第五百三十三条 荘園ノ賃借人ハ賃貸借終了ノ時ニ存在スル農産物中ヨリ其後同一又ハ類似ノ産出物カ見積上ニ収取セラル時期ニ至ルマテ農業ヲ継続スルニ必要ナル分量及ヒ賃貸借終了ノ際ニ存在シテ土地ノ為メニ求メラレタル肥料ヲ残留スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ賃貸借ヲ始ムル時ニ右ノ物件ヲ受取リタルト否トハ之ヲ問ハス 賃借人カ賃貸借ヲ始ムル時ニ受取リタル農産物ヨリ多量又ハ良質ノ農産物ヲ残留スルコトヲ要スル限ハ賃貸人ニ対シ価格ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得但肥料ニ付テハ賠償セシムルコトヲ得ス 第五百三十四条 荘園ノ賃借人カ耕作上ノ状況ヲ評価シテ目的物ヲ受取リ且賃貸借カ終了スルトキハ同様ニ目的物ヲ評価シテ之ヲ返還スルコトヲ定メタルトキハ其返還ニ関シ第五百二十九条第二項及ヒ第三項ノ規定ヲ準用ス 賃借人カ前項ト同一ノ定ヲ以テ儲蔵物ヲ評価シテ之ヲ受取リタル場合ニ於テ其残留スルコトヲ要スル儲蔵物ノ返還ニ付キ亦同シ 第五百三十五条 土地又ハ権利ノ賃貸借ニ付キ期間ノ定ナキトキハ解約ノ告知ハ賃貸借期年ノ終了シタルトキニノミ之ヲ為スコトヲ得又此告知ハ遅クトモ賃貸借カ終了スヘキ年ノ後半年ノ第一業日ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス 前項ノ規定ハ土地又ハ権利ノ賃貸借ニ付キ法定ノ期間ヲ保チテ期限ニ先チ賃貸借ノ解約ヲ告知スルコトヲ得ル場合ニモ之ヲ適用ス 第五百三十六条 賃借人ハ第四百九十三条第一項ニ規定シタル解約ノ告知権ヲ有セス 賃貸人ハ第五百十条ノ規定ニ従ヒ賃貸借関係ノ解除ヲ告知スルコトヲ得ス 賃貸借関係ノ解除ハ第五百十一条ノ規定ニ従ヒ之ヲ告知スルコトヲ得ス 第五百三十七条 賃借人カ賃貸借ノ終了後其目的物ヲ返還セサルトキハ賃貸人ハ此留保ノ継続スル間ノ補償トシテ賃借人カ此間ニ収取シ又ハ収取シ得ヘカリシ用益ト賃貸借全期年ノ用益トノ割合ニ従ヒ契約上ノ貸賃ヲ請求スルコトヲ得但其他ノ損害ヲ主張スルコトハ之ニ因リテ除却セラルヽコトナシ 第五節 使用貸借 第五百三十八条 使用貸借ニ因リテ貸付人ハ借受人ニ対シ無償ニテ物ノ使用ヲ為サシムル義務ヲ負担ス 第五百三十九条 貸付人ハ故意又ハ重過失ニ付テノミ其責ニ任ス 第五百四十条 貸付人カ権利又ハ物ノ瑕疵ヲ故意ニ告ケサリシトキハ借受人ニ対シ之レニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス 第五百四十一条 借受人ハ借受ケタル物ノ通常ノ保存費ヲ負担シ又動物ノ使用貸借ニ付テハ其飼養料ヲ負担スルコトヲ要ス其他ノ必要ハ貸付人ハ借受人ニ対シテ之ヲ賠償スルコトヲ要ス 其他ノ費用賠償ニ関スル貸付人ノ義務ハ事務管理ノ規定ニ依リテ之ヲ定ム右ノ外借受人ハ第四百九十一条第二項ノ規定ニ依リテ賃借人ニ与ヘラレタル造作取去ノ権利ヲ有ス 第五百四十二条 借受人ハ契約上ノ使用ニ因リ借受ケタル物ニ生シタル変更又ハ毀損ニ付キ其責ニ任セス 第五百四十三条 借受人ハ契約上ノ使用以外ニ借受物ヲ使用スルコトヲ得ス又貸付人ノ許諾ナクシテ第三節ニ物ノ使用ヲ委付スル権利ヲ有セス 第五百四十四条 借受人ハ使用貸借ニ付キ定メラレタル期間カ経過シタルトキハ借受物ヲ返還スル義務ヲ負担ス 前項ノ期間ノ定ナキトキハ借受人ハ使用貸借ノ目的ヨリ生スル使用ヲ為シタル後借受物ヲ返還スルコトヲ要ス然レトモ借受人カ右ノ使用ヲ為スコトヲ得ベカリシ時日ヲ経過セシメタルトキハ其使用ノ終ラサル前ト雖モ貸付人ハ物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 使用貸借ニ付キ期間ノ定ナク又使用ノ目的ヨリ之ヲ知ルコト能ハサルトキハ貸付人ハ何時ニテモ物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 借受人カ第三者ニ物ノ使用ヲ委付シタル場合ニ於テハ貸付人ハ使用貸借ノ終了後第三者ニ対シテモ物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 第五百四十五条 左ノ場合ニ於テハ貸付人ハ使用貸借ノ解除ヲ告知スルコトヲ得 一、 貸付人カ予見スルコト能ハサリシ事情ニ因リ物ノ必要ヲ生シタルトキ 二、 借受人カ契約ニ反シテ物ノ使用ヲ為シタルトキ殊ニ権限ナクシテ第三者ニ使用ヲ委付シ又ハ自己ノ負担スル注意ヲ怠ルコトニ因リテ著シク物ヲ害シタルトキ 三、 借受人カ死亡シタルトキ 第五百四十六条 (欠落) 第六節 <note>(欠落)</note> 第五百四十七条 (欠落) 消費貸借以外ノ原因ニ本ツキ金銭其他ノ代替物ヲ負債シタル者ハ爾後消費貸借トシテ之ヲ負債スヘキコトヲ債権者ト約束スルコトヲ得 借主ハ第二百四十四条及ヒ第二百四十七条ノ場合ヲ除ク外利息ヲ約定シタルトキニノミ之ヲ支払フ義務ヲ負担ス 約定シタル利息ハ別段ノ定ナキ限ハ各一年ノ経過シタルトキ之ヲ支払フベク又一年ノ経過前ニ借受物ヲ返還スベキトキハ之ト同時ニ利息ヲ支払フコトヲ要ス 第五百四十九条 消費貸借ニ付キ返済ノ時期ヲ定メサリシトキハ予メ告知ヲ為シタル後之ヲ返済スルコトヲ要ス告知権ハ債権者及ヒ債務者共ニ之ヲ有ス然レトモ利息ノ約定ナキトキハ債務者ハ予メ告知ヲ為サスシテ返済スルコ得 前項ノ告知期間ハ三百マルク以上ノ消費貸借ニ付テハ三ケ月トシ三百マルク以下ノ消費貸借ニ付テハ一ケ月トス 第五百五十条 消費貸借ノ供与ヲ諾約シタル者ハ疑ハシキ場合ニ於テハ相手方ノ財産担保ニ付キ自己ノ返還請求権ヲ危険ナラシムルニ足ル著シキ毀損ヲ生シタルトキハ約束ヲ取消スコトヲ得 第七節 雇傭契約 第五百五十一条 雇傭契約ニ因リテ労務ヲ約束シタル者ハ其労務ヲ履行シ相手方ハ其約束シタル報酬ヲ与フル義務ヲ負担ス 雇傭契約ハ各種ノ労務ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得 第五百五十二条 労務ノ給付カ報酬ニ対シテノミ望マルベキコトカ事情ニ依リテ明ナルトキハ報酬ハ黙示ニテ約束セラレタルモノト見做ス 報酬額ノ定ナキ場合ニ於テ評価カ存スルトキハ之ニ相当スル報酬ヲ約束シタルモノト見做シ評価ナキトキハ慣習上ノ報酬ヲ約束シタルモノト見做ス 第五百五十三条 或労務ノ給付ヲ為スコトニ公任セラレ又ハ公ニ其申出ヲ為シタル者カ此労務ヲ目的トスル申込ヲ受諾セサルトキハ申込者ニ対シ遅滞ナク其拒絶ヲ通知スルコトヲ要ス申込者ニ対シ或労務ノ給付ヲ申出タルトキ亦同シ 第五百五十四条 労務ノ義務ヲ負担シタル者ハ疑ハシキ場合ニ於テハ自ラ労務ヲ為スコトヲ要ス又労務ノ請求権ハ疑ハシキ場合ニ於テ之ヲ譲渡スコトヲ得ス 第五百五十五条 報酬ハ労務ノ履行アリタル後之ヲ支払フコトヲ要ス然レトモ時期ニ依リテ定メラレタル報酬ハ各時期ノ経過後ニ之ヲ支払フコトヲ要ス 第五百五十六条 雇傭権利者カ労務ノ受取ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ義務者ハ後ニ労務ヲ給付スルコトヲ要セスシテ遅滞ノ為メニ給付スルコトヲ得サリシ労務ニ対シ合意上ノ報酬ヲ請求スルコトヲ得然レトモ労務ヲ給付セサリシ為メニ費スコトヲ要セサリシモノ又ハ労務ヲ他ニ使用スルコトニ因リテ取得シタルモノ若クハ故意ニ労務ヲ他ニ使用スルコトヲ怠ラサリシトキハ取得スルコトヲ得ヘカラサリシモノヽ価額ヲ差引カシムルコトヲ要ス 第五百五十七条 報酬カ時期ニ依リテ定メラレタル場合ニ於テハ雇傭義務者ハ自己ノ過失ニ因ラスシテ自身ニ存スル原因ニ由リ割合ニ著シカラサル時日間労務ノ給付ヲ妨ケラルモ之ニ因リテ報酬ノ請求権ヲ失フコトナシ然レトモ給付ヲ妨ケラレタル時期ニ対シ法律上ノ義務ニ本ツク病災保険又ハ災害保険ニ因リテ義務者ニ属スヘキ金額ヲ差引カシムルコトヲ要ス 第五百五十八条 雇傭権利者ハ労務ノ給付ノ性質カ許ス限リハ生命及ヒ健康ノ危害ニ対シ雇傭義務者ヲ保護スル為メ労務ヲ為サシムルニ付テ備フベキ場所、装置又ハ器具ヲ適当ニ構造シ且之ヲ保持シ又自己ノ指定若クハ指揮ニ従フテ為スベキ労務ヲ適当ニ計画スルコトヲ要ス雇傭権利者カ右ノ義務ヲ尽サヾル場合ニ於テ過失ノ責ニ任スベキトキハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ不法行為ニ本ツク損害賠償ニ関スル第七百六十五条乃至第七百六十九条ノ規定ヲ準用ス 雇傭権利者ノ義務ハ契約ニ依リテ予メ之ヲ廃棄シ又ハ制限スルコトヲ得ス 第五百五十九条 雇傭関係ハ之ニ付テ定メタル期間ノ経過ニ依リテ終了ス 雇傭関係ニ付キ期間ノ定ナク且其継続スヘキ期間カ労務ノ目的ニ因リテ生セサルトキハ各当事者ハ第五百六十条乃至第五百六十二条ノ規定ニ従ヒ雇傭関係ノ終了ヲ告知スルコトヲ得 第五百六十条 報酬カ日ニ依テ定メラレタルトキハ何レノ日ニ於テモ次日ニ対シ雇傭関係ノ終了ヲ告知スルコトヲ得 報酬カ週ニ依リテ定メラレタルトキハ告知ハ暦ニ従フ一週日ノ末日ニ対シテノミ之ヲ為スコトヲ得又此告知ノ遅クトモ一週日ノ最初ノ業日ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス 報酬カ月ニ依リテ定メラレタルトキハ告知ハ暦ニ従フ一月ノ末日ニ対シテノミ之ヲ為スコトヲ得又此告如ハ遅クトモ第十五日ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス 報酬カ四分一年又ハ之レヨリ長キ時期ニ依リテ定メラレタルトキハ告知ハ暦ニ従フ四分一年ノ末日ニ対シ且六週日ノ告知期間ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得 第五百六十一条 定マリタル給料ヲ以テ高等ノ労務ヲ給付スルコトニ任定セラレタル者殊ニ教師、養育人、私吏及ヒ社婦ノ雇傭関係ニシテ此者ノ生業力ノ全部又ハ其重要ナル部分ヲ要求スルモノハ暦ニ従フ四分一年ノ末日ニ対シ且六週日ノ告知期間ヲ以テ告知ヲ為スコトヲ得報酬カ四分一年ヨリ短キ時期ニ依リテ定メラレタルトキ亦同シ 第五百六十二条 報酬カ時期ニ依リテ定メラレサルトキハ何時ニテモ雇傭関係ノ終了ヲ告知スルコトヲ得然レトモ義務者ノ生業力ノ全部又ハ其重要ナル部分ヲ要求スル雇傭関係ニ付テハ二週日ノ告知期間ヲ保ツコトヲ要ス 第五百六十三条 雇傭関係カ或人ノ終身ヲ期シ又ハ五年以上ノ時期ヲ以テ取結ハレタルトキハ義務者ハ五年ノ経過後ニ於テ雇傭関係ノ終了ヲ告知スルコトヲ得此場合ニ於テ告知期間ハ六ケ月トス又義務者カ他人ヲシテ其労務ヲ為サシムルコトヲ得ルトキハ右ノ告知ヲ為スコトヲ得ス 第五百六十四条 雇傭関係カ其終了後義務者ニ依リテ続行セラレ且相手方カ之ヲ知リテ反対セサルトキハ雇傭関係ハ時期ヲ定メスシテ延長セラレタルモノト見做ス 第五百六十五条 各当事者ハ重要ナル原因カ存スルトキハ告知期間ヲ保タスシテ雇傭関係終了ヲ告知スルコトヲ得 定マリタル給料ヲ以テ継続スル雇傭関係ニアラスシテ義務者カ特別ノ信用ニ本ツキテ委任セラルベキ高等ノ労務ヲ給付スヘキトキハ第一項ニ掲クル要件カ存セサルモ雇傭関係ノ終了ヲ告知スルコトヲ得 第五百六十六条 労務ノ給付ヲ始メタル後ニ第五百六十五条ニ掲クル原因ニ由リテ雇傭関係ノ終了ヲ告知スルトキハ義務者ハ既ニ為シタル給付ニ相当スル報酬ノ一部ヲ請求スルコトヲ得義務者カ契約ニ反スル相手方ノ処置ニ因ラスシテ雇傭関係ノ終了ヲ告知シ又ハ契約ニ反スル自己ノ処置ニ因リテ相手方ヲシテ雇傭関係ノ終了ヲ告知セシメタルトキハ既ニ為シタル給付カ告知ニ因リテ相手方ニ対シ利益ヲ与ヘサル限度ニ於テ報酬ノ請求権ヲ有セス又報酬ノ先払アルトキハ義務者ハ第二百九十八条及ヒ第二百七十九条第二段ノ規定ニ従ヒ之ヲ償還スルコトヲ要ス 雇傭関係終了ノ告知カ相手方ノ契約ニ反スル処置ニ本ツクトキハ相手方ハ雇傭関係ノ消滅ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス 第五百六十七条 雇傭義務者カ雇傭権利者ノ為メニ或事務ヲ監督スヘキ場合ニ於テ告知期間ヲ保タスシテ雇傭関係ノ終了ヲ告知スル権利ヲ有スルトキハ此権利ハ雇傭権利ナルカ業務監督ノ為メ他ニ用意ヲ為シ得ル方法ニ於テノミ之ヲ行使スルコトヲ得義務者カ不当ノ時期ニ告知ヲ為シタルトキハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス但不当ノ時期ニ告知ヲ為スニ付キ重要ナル原因カ存スルトキハ此限ニ在ラス 特別ノ信用ニ基ツキテ委任セラルヘキ高等ノ労務ヲ給付スヘキ場合ニ於テハ労務ノ給付カ業務ノ監督ニ存セサルトキト雖モ前項ノ規定ヲ適用ス 第五百六十八条 継続スル雇傭関係ノ終了ニ付テハ雇傭義務者ハ相手方ニ対シ雇傭関係及ヒ其継続期間ノ証書ヲ請求スルコトヲ得ス此書証ハ請求ニ因リテ労務ノ給付及ヒ実行ニ及ホスコトヲ要ス 第八節 請負契約 第五百六十九条 請負契約ニ因リテ請負人ハ約束シタル仕事ヲ完成シ注文者ハ約定ノ報酬ヲ支払フ義務ヲ負担ス 請負契約ハ物ノ製作又ハ変更其他労力又ハ役務ノ給付ニ因リテ為シ得ヘキ結果ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得 第五百七十条 仕事カ事情ニ因リ報酬ニ対シテノミ之ヲ求メ得ヘキコトカ明ナルトキハ報酬ハ黙示ニテ約束セラレタルモノト見做ス 報酬額ノ定ナキ場合ニ於テ評価カ存スルトキハ之ニ相当スル報酬ヲ約束シタルモノト見做シ評価カ存セサルトキハ慣習上ノ報酬ヲ約束シタルモノト見做ス 第五百七十一条 請負人ハ其請負フタル性質ヲ備ヒ且価格ヲ滅失又ハ減少セシメ若クハ通常ノ使用又ハ契約ニ依リテ予定シタル使用ニ適スルコトヲ滅失又ハ減少セシムヘキ瑕疵ヲ有スルコトナクシテ仕事ヲ完成スルコトヲ要ス 仕事カ前項ノ性質ヲ備ヘサルトキハ注文者ハ瑕疵ノ除去ヲ請求スルコトヲ得 瑕疵ノ除去カ過分ノ費用ヲ要スルトキハ請負人ハ其除去ヲ拒絶スルコトヲ得 請負人カ瑕疵ノ除去ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ注文者ハ自ラ之ヲ除去シ且之ニ要セシ費用ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得 第五百七十二条 第五百七十一条ニ掲クル種類ノ瑕疵ノ除去ニ付テハ注文者ハ請負人ニ対シ相当ノ期間ヲ指定シ且此期間ノ経過後ハ瑕疵ノ除去ヲ拒絶スル旨ヲ表示スルコトヲ得仕事ノ引渡前ニ瑕疵カ現ハルルトキハ注文者ハ直ニ右ノ期間ヲ指定スルコトヲ得此場合ニ於テ期間ハ引渡ニ付テ定メタル時期ノ到達前ニ経過セサル様之ヲ指定スルコトヲ要ス又此期間内ニ瑕疵カ除去セラレサルトキハ注文者ノ契約ノ廃却(変更)又ハ報酬ノ引下(減少)ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ瑕疵除去ノ請求権ハ除却セラル 瑕疵ノ除去カ不能ナルカ又ハ請負人カ之ヲ拒絶スルカ若クハ廃却又ハ減少ノ請求権ヲ即時ニ主張スルコトカ注文者ノ特別ノ利益ニ本ツキテ正当ト認メラルルトキハ前項ノ期間ヲ指定スルコトヲ要セス 瑕疵カ仕事ノ価格又ハ使用ニ適スルコトヲ僅ニ減殺スルニ止マルトキハ契約ノ廃却ハ除却セラル 契約ノ廃却及ヒ代価ノ減少ニ付テハ売買ニ関スル第四百〇二条第四百〇三条第四百〇五条乃至第四百十一条ノ規定ヲ準用ス 第五百七十三条 瑕疵カ請負人ノ責ニ帰スヘキ事由ニ本ツクトキハ注文者ハ契約ノ廃却又ハ代価ノ減少ニ代ヘテ不履行ニ本ツク損害賠償ヲ請求スルコトヲ得 第五百七十四条 仕事ノ全部又ハ其一部カ正当ノ時ニ完成セラレサルトキハ契約ノ廃却ニ関スル第五百七十二条第一項乃至第三項ノ規定ヲ準用ス此場合ニ於テハ第二百七十九条ノ規定ニ従ヒ注文者カ契約ヲ解除スル権利ハ契約廃却ノ請求権ニ代ハルモノトス又請負人カ遅滞ニ在ル場合ニ於テ並ニ第二百七十八条ノ場合ニ於テ注文者ニ属スル権利ハ之ニ因リテ影響ヲ受クルコトナシ 第五百七十五条 仕事ノ瑕疵ニ付キ其責ニ任スヘキ請負人ノ義務ヲ制限シ又ハ之ヲ免除スル合意ハ請負人カ故意ニ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ無効トス 第五百七十六条 仕事ノ瑕疵ヲ除却スル注文者ノ請求権及ヒ瑕疵ニ本ツキ契約ノ廃却、代価ノ減少又ハ損害賠償ニ付テ注文者ニ属スル請求権ノ時効期間ハ六ケ月トシ土地ノ労役ニ関シテハ一年トシ建築物ニ関シテハ五年トス但請負人カ故意ニ瑕疵ヲ告ケサリシトキハ此限ニ在ラス 時効ハ注文者カ仕事ヲ引取リタル時ヨリ其進行ヲ始ム 時効ノ期間ハ契約ニ依リテ之ヲ延長スルコトヲ得又買主ノ請求権ノ時効ニ関スル第四百十三条第二項第三項及ヒ第四百十四条ノ規定ハ之ヲ準用ス又請負人カ注文者ノ同意ノ上瑕疵ノ存在ヲ験査シ又ハ除去ニ従フトキハ時効ノ進行ハ請負人カ験査ノ結果ヲ注文者ニ報告シ又ハ此者ニ対シテ瑕疵カ除去セラレタル旨ヲ表示シ若クハ除去ヲ続行スルコトヲ拒絶スルマテ停止ス 第五百七十七条 契約ニ適シテ完成セラレタル仕事ハ注文者之ヲ引取ルコトヲ要ス但仕事ノ性質ニ依リテ之ヲ引取ルコトカ除却セラルルトキハ此限ニ在ラス 注文者カ仕事ノ瑕疵アルコトヲ知リテ之ヲ引取リタル場合ニ於テハ第五百七十一条及ヒ第五百七十二条ニ定ムル請求権ハ注文者カ仕事ヲ引取ルトキニ瑕疵ニ本ツキテ自己ノ権利ヲ留保シタルトキニノミ之ヲ有ス 第五百七十八条 報酬ハ仕事ヲ引取ルトキニ之ヲ支払フコトヲ要ス又仕事ハ部分ニ従フテ之ヲ引取ルヘク且報酬ハ仕事ノ各部ニ対シテ定メラレタルトキハ報酬ハ仕事ノ各部ニ対シ之ヲ引取ルトキニ支払フコトヲ要ス 第五百七十九条 仕事ヲ始ムル時又ハ之ヲ為ス間ニ於テ注文者ノ行為ヲ要スル場合ニ於テ注文者カ此行為ヲ為サヽルコトニ因リテ受諾ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ請負人ハ相当ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得賠償額ハ一方ニ於テハ遅滞ノ継続スル時日及ヒ約束シタル報酬額ニ依リ他ノ一方ニ於テハ請負人カ遅滞ニ因リテ費用ヲ節シ又ハ其労力ヲ他ニ使用スルコトニ因リテ取得シ若クハ故意ニ此使用ヲ怠ラサリシトキハ取得スルコトヲ得ヘカリシモノニ依リ斟酌シテ之ヲ定ム 請負人ハ注文者ニ対シ此者カ為スヘキ行為ヲ追行スルコトニ付キ相当ノ期間ヲ指定シ且此期間内ニ右ノ行為ヲ為サヽルトキハ契約ノ解除ヲ告知スル旨ヲ表示スルコトヲ得右ノ期間内ニ於テ行為ノ追行ナキトキハ契約ハ取消サレタルモノト見做ス 第五百八十条 請負人ハ仕事カ引取ラルルマテハ危険ヲ負担ス注文者カ受取ニ付キ遅滞ニ在ルトキハ危険ハ注文者ニ移転ス又注文者カ供与シタル材料ノ偶然ノ減失又ハ毀損ニ付テハ請負人ハ其責ニ任セス 仕事カ注文者ノ請求ニ因リテ履行ノ場所ヨリ異ナル所ニ送附セラル場合ニ於テハ売買ニ関スル第三百八十八条ノ規定ヲ准用ス 第五百八十一条 仕事カ引取ラルル前ニ注文者カ供与シタル材料ノ瑕疵ニ因リ又ハ仕事ノ実行ニ付テ注文者カ与ヘタル指図ニ因リ且請負人ノ責ニ帰スヘキ事由カ加ハルコトナクシテ仕事カ減失又ハ毀損シ若クハ実行スルコトヲ得サルニ至リタルトキハ請負人ハ其給付シタル労力ニ相当スル報酬部分及ヒ報酬中ニ含マレサル出費ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得契約カ第五百七十九条第二項ノ規定ニ従ヒ廃却セラレタルトキ亦同シ 注文者ノ過失アル場合ニ於テ請負人ニ属スル其他ノ請求権ハ本条ノ規定ニ依リテ影響ヲ受クルコトナシ 第五百八十二条 仕事ノ性質ニ因リテ其引取カ不能ナルトキハ第五百七十六条第五百七十八条第五百八十条及ヒ第五百八十一条ノ場合ニ於テ仕事ノ完成ハ其引取ニ代ハルモノトス 第五百八十三条 請負人ハ契約ニ基ツク自己ノ債権ニ対シ其仕上ケタル又ハ修繕シタル注文者ノ動産カ自己ノ占有ニ存スル限ハ此物ニ付キ質権ヲ有ス 建築物又ハ其一部ノ請負人ハ契約ニ基ツク自己ノ債権ニ対シ注文者ノ建築地ニ付キ保全抵当ノ認許ヲ請求スルコトヲ得仕事カ完成セサルトキハ請負人ハ其給付シタル労力ニ相当スル報酬部分及ヒ報酬中ニ含マレサル出費ニ対シテ保全抵当ノ認許ヲ請求スルコトヲ得 第五百八十四条 注文者ハ仕事カ完成スル前ハ何時ニテモ契約ノ解除ヲ告知スルコトヲ得此場合ニ於テハ請負人ハ契約ノ取消ニ因リテ費スコトヲ要セサリシ費用又ハ其労力ヲ他ニ使用スルコトニ因リテ取得シタルモノ若クハ故意ニ此使用ヲ怠ラサリシトキハ取得スルコトヲ得ヘカリシモノヲ計算シテ約束シタル報酬ヲ請求スルコトヲ得 第五百八十五条 請負人カ費用ノ見積ノ正当ナルコトヲ確保スルコトナクシテ此見積カ契約ノ基本ト為リ且仕事カ著シク此見積ヲ超過スルニ非サレハ実行スルコトヲ得サルニ至リタル場合ニ於テ注文者カ此理由ニ基ツキ契約ヲ解除スルトキハ請負人ハ第五百八十一条第一項ニ定ムル請求権ノミヲ有ス請負人カ予想スルコトヲ得ヘキ超過ヲ知リ又ハ之ヲ知ラサルヘカラサリシ後遅滞ナク注文者ニ対シ此超過ニ付キ通知ヲ為サヾリシトキハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス 第五百八十六条 請負人カ自ラ供与スヘキ材料ヲ以テ仕事ヲ仕上クヘキ義務ヲ負担スルトキハ契約ニ適シテ完成シタル物ヲ注文者ニ引渡シ且其所有権ヲ附与スルコトヲ要ス此契約ニ付テハ売買ニ関スル規定ヲ適用ス又不代替物ヲ完成スル場合ニ於テハ第三百七十五条第三百八十七条第一項第一段、第三百八十八条第三百九十七条乃至第四百〇一条第四百十三条及ヒ第四百十四条ノ規定ニ代ヘテ請負契約ニ関スル規定ヲ適用ス但第五百八十三条ノ規定ハ之ヲ除外ス 請負人カ附随ノ材料又ハ其他従タル物ヲ供与スヘキ義務ノミヲ負担スル場合ニ於テハ請負契約ニ関スル規定ヲ適用ス 第三編 第一章 占有 第七百七十七条 物ノ占有ハ実力ヲ其物ニ加ヘ得ルコトニ因リテ之ヲ取得ス 取得者カ実力ヲ目的物ニ加ヘ得ル状況ニ在ルトキハ前占有者ト取得者ノ合意ニ因リテ占有ヲ取得スルコトヲ得 第七百七十八条 或人カ他人ノ為メニ其家計又ハ営業上ニ於テ若クハ目的物ニ関シ此者ノ指図ニ従フベキ関係ニ於テ実力ヲ其物ニ加フル場合ニ於テハ此他人ヲ以テ占有者トス 第七百七十九条 占有ハ占有者カ目的物ニ加フル実力ヲ放棄シ又ハ他ノ方法ニ依リテ之ヲ失フコトニ因リテ消滅ス 目的物ニ実力ヲ加フルコトニ付キ性質上一時ノ妨害アルモ之ニ因リテ占有ハ消滅セズ 第七百八十条 占有者ノ意思ニ因ラズシテ其占有ヲ奪ヒ又ハ之ヲ妨グル行為ハ不法トス但法律カ之ヲ許シタルトキハ此限ニ在ラズ(禁止セラレタル私力) 禁止セラレタル私力ニ因リテ得タル占有ハ瑕疵アルモノトス此瑕疵ハ占有承継人ニ対シ此者カ前主ノ相続人タルトキ又ハ占有取得ノ際前主ノ占有ノ瑕疵ヲ知リタルトキハ之ヲ対抗スルコトヲ得 第七百八十一条 占有者ハ自力ヲ以テ禁止セラレタル私力ヲ防禦スルコトヲ得 占有者カ禁止セラレタル私力ニ因リテ動産ヲ奪取セラレタルトキハ其行為後即時ニ又ハ行為者ヲ追跡シテ自力ヲ以テ之ヲ取戻スコトヲ得 土地ノ占有者カ禁止セラレタル私力ニ因リテ占有ヲ奪ハレタルトキハ奪取後直ニ行為者ヲ排除シテ之ヲ取戻スコトヲ得 本条ノ権利ハ占有者カ第七百八十条第二項ノ規定ニ依リテ占有瑕疵ノ対抗ヲ受クヘキ者ニ対シ亦之ヲ有ス 第七百八十二条 第七百七十八条ノ規定ニ依リテ占有者ノ為ニ実力ヲ加フル者ハ第七百八十一条ノ規定ニ依リテ占有者ニ属スル権利ヲ行使スル権ヲ有ス 第七百八十三条 占有者カ禁止セラレタル私力ニ因リテ占有ヲ奪ハレタルトキハ瑕疵アル占有者ニ対シ占有ノ明渡ヲ請求スルコトヲ得 奪取セラレタル占有カ現在ノ占有者ニ対シテ瑕疵ヲ有シ且其取得カ奪取前一年以内ニ在ルトキハ第一項ノ請求権ハ除却セラル 第七百八十四条 占有者カ禁止セラレタル私力ニ因リテ占有ヲ妨ケラルルトキハ加害者ニ対シ妨害ノ除去ヲ請求スルコトヲ得又妨害継続ノ虞アルトキハ其停止ヲ請求スルコトヲ得 占有者カ加害者ニ対シテ瑕疵ヲ有シ且其占有取得ハ加害前一年以内ニ在ルトキハ第一項ノ請求権ハ除却セラル 第七百八十五条 第七百八十三条及ヒ第七百八十四条ニ掲クル請求権ニ対シテハ占有ノ奪取又ハ妨害カ禁止セラレタル私力ニ因ラサリシトノ主張ヲ本ヅクル為メニノミ目的物ヲ占有シ又ハ加害行為ヲ為ス権ヲ主張スルコトヲ得 第七百八十六条 第七百八十三条及ヒ第七百八十四条ニ掲クル請求権ハ禁止セラレタル私力ヲ加ヘタル後一年以内ニ訴訟方法ニ依リテ之ヲ対抗セサルトキハ消滅ス 禁止セラレタル私力ヲ加ヘタル後確定判決ニ依リテ行為者ハ目的物ニ付テ其行為ニ相当スル占有ノ回復ヲ請求シ得ヘキ権利ヲ有スルコトカ確定シタルトキハ第一項ノ規定ヲ適用ス 第七百八十七条 第七百八十条乃至第七百八十六条ノ規定ハ物ノ一部殊ニ各別ノ居室其他ノ場所ヲ占有スル者ノ為メニ之ヲ適用ス 第七百八十八条 数人カ一物ヲ共同ニ占有スル場合ニ於テ自己ニ属スル使用ノ範囲ヲ越ヘサル限ハ其相互ノ関係ニ於テ占有保護ヲ求ムルコトヲ得ス 第七百八十九条 物カ占有者ノ実力ヲ離レテ他人ノ占有スル土地ニ移リタル場合ニ於テ土地占有者カ之ヲ自己ノ占有ニ移サザル間ハ其物ノ捜索及ビ引取ヲ認許スルコトヲ要ス但之ニ因リテ生スル損害ノ賠償ヲ求ムルコトヲ得又損害ヲ受クベキ虞アル場合ニ於テハ其補償ノ為メ予メ担保ノ提供アル迄捜索及ヒ引取ヲ拒絶スルコトヲ得 第七百九十条 用益者質債権者賃借人又ハ保管者トシテ物ヲ占有シ若クハ之ニ等シキ関係ニ因リテ他人ニ対シ一時占有ノ権ヲ有シ又ハ其義務ヲ負フ場合ニ於テハ此他人ヲ以テ占有者トス(間接占有) 占有者ニ対シ禁止セラレタル私力ヲ加ヘラルルトキハ第七百八十三条及ビ第七百八十四条ニ掲グル請求権ハ又間接占有者ニ属ス占有奪取ノ場合ニ於テ前主カ占有ノ還附ヲ受取ラズ又ハ之ヲ受取ルコト能ハザルトキハ間接占有者ハ自己ニ之ヲ引渡スコトヲ請求スル権ヲ有ス又之ト同一ノ要件ヲ以テ第七百八十九条ノ場合ニ於テ物ノ捜索及ビ引取ヲ請求スルコトヲ得 第七百九十一条 間接占有者ハ第三者ト第七百九十条第一項ニ掲グル関係ヲ有スルトキハ又此第三者ヲ以テ間接占有者トス 第七百九十二条 間接占有ハ他人ニ目的物ノ返還請求権ヲ譲渡スコトニ因リテ之ヲ引渡スコトヲ得 第七百九十三条 所有ノ意思ヲ以テスル物ノ占有者ヲ自主占有者ト云フ 第二章 土地ニ関スル権利ノ総則 第七百九十四条 土地所有権ヲ譲渡又ハ或権利ヲ以テ土地ニ負担ヲ加ヘ若クハ此権利ヲ譲渡又ハ之ニ負担ヲ加フルニハ権利者ト相手方ノ間ニ於テ権利ノ変更及ヒ之ヲ土地台帳ニ登記スルコトニ付テ合致スルコトヲ要ス但法律ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス 当事者カ登記官吏、裁判所若クハ公証人ノ前ニ於テ其意思ヲ表示シ又ハ之ヲ登記役場ニ差出シ若クハ権利者カ登記法ノ規定ニ従ヒ登記ノ許諾状ヲ相手方ニ渡シタルトキニノミ其意思表示ハ登記前ニ拘束力ヲ生ス 第七百九十五条 土地ニ負担ヲ加フル権利ヲ登記スル場合ニ於テ権利ノ内容ヲ査定スルニハ登記ノ許諾ニ拠ルコトヲ得但法律ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス 第七百九十六条 土地ニ関スル権利ノ消滅ニ付テハ法律ニ別段ノ定ナキトキハ権利者カ権利ヲ放棄スル旨ヲ表示シ土地台帳ニ於テ権利ノ取消ヲ為スコトヲ要ス此場合ニ於テハ登記役場ニ対シ又ハ権利ノ取消ニ因リテ利益ヲ受クヘキ者ニ対シテ意思表示ヲ為スコトヲ要ス 権利者カ登記官吏ニ対シテ其意思ヲ表示シ又ハ之ニ因リテ利益ヲ受クベキ者ニ対シテ登記法ノ規定ニ従ヒ権利取消ノ許諾状ヲ渡シタルトキニノミ其意思表示ハ取消前ニ拘束力ヲ生ス 第七百九十七条 第三者ノ権利ヲ以テ負担ヲ加ヘラレタル土地ニ関スル権利ヲ消滅セシムルニハ第三者ノ同意ヲ要ス消滅セシムヘキ権利カ他ノ土地ノ所有者ニ属シ且此土地カ第三者ノ権利ヲ以テ負担ヲ加ヘラレタル場合ニ於テモ亦同シ但土地ニ関スル権利ノ消滅カ第三者ノ権利ニ影響ヲ及ホサザルトキハ此限ニ在ラス又第三者ノ同意ハ権利者若クハ登記官吏ニ対シテ之ヲ表示スルコトヲ得且此表示ハ取消スコトヲ得ス 第七百九十八条 第七百九十四条及ヒ第七百九十七条ノ規定ハ土地ニ関スル権利ノ内容ノ変更ニ付キ之ヲ適用ス 第七百九十九条 第七百九十四条第七百九十六条及ヒ第七百九十八条ノ規定ニ従ヒ権利者ノ為シタル意思表示カ既ニ拘束力ヲ生シ且登記ノ申請カ登記役場ニ差出サレタル後権利者カ権利ヲ処分スルコトニ付テ制限セラルルモ意思表示ハ其効力ヲ失ハス 第八百条 土地ニ負担ヲ加フル数多ノ権利カ土地台帳ノ同一区劃ニ登記セラレタル場合ニ於テ其順位ハ登記ノ列ニ依リテ之ヲ定ム各別ノ区劃ニ登記セラレタル権利ノ順位ハ登記ノ日附ニ従フ同一日附ヲ以テ登記セラレタル権利ハ同一ノ順位ヲ有ス但権利ノ順位ニ付キ別段ノ登記アルトキハ此限ニ在ラス 第七百九十四条ノ規定ニ従ヒ権利取得ニ必要ナル意思ノ合致カ登記後ニ生シタル場合ニ於テモ権利ノ順位ハ此登記ニ依リテ之ヲ定ム 第八百〇一条 権利ノ順位ハ後ニ至リ之ヲ変更スルコトヲ得 権利ノ順位変更ニ付テハ順位ヲ変セラルル権利者カ之ニ同意シ且土地台帳ニ其変更ヲ登記スルコトヲ要ス此場合ニ於テ第七百九十四条第二項及ヒ第七百九十九条ノ規定ヲ適用ス其他抵当権、土地債務又ハ定期ノ土地負担カ其順位ヲ下ケラルルトキハ所有者ノ同意ヲ要ス此同意ハ相手方又ハ登記役場ニ対シテ之ヲ表示スルコトヲ得且此表示ハ取消スコトヲ得ス 順位ヲ下ケラルル権利カ第三者ノ権利ヲ以テ負担ヲ加ヘラレタル場合ニ於テハ第七百九十七条ノ規定ヲ準用ス 順位ヲ下ケラルル権利カ法律行為又ハ判決ニ因リテ消滅スルモ順位ヲ進メラル権利ノ為メニ設ケタル位置ニ影響ヲ及ホサス 順位ノ変更ハ之ヲ受クヘキ権利ノ間ニ位スル権利ニ影響ヲ及ホサス 第八百〇二条 土地所有者カ或権利ヲ以テ土地ニ負担ヲ加フルニ当リ此権利ニ優先ノ順位ヲ以テ一定ノ範囲ヲ有スル他ノ権利ヲ登記セシムヘキ権利ヲ留保スルコトヲ得 前項ノ留保ハ之ヲ土地台帳ニ登記シ且此登記ハ順位ヲ下ケラルヘキ権利ニ付テ之ヲ為スコトヲ要ス 土地カ譲渡サルルトキハ所有者ノ留保シタル権利ハ取得者ニ移転ス優先ノ順位ヲ附加セラレタル権利ヲ登記スル前ニ之ニ相当ノ留保ヲ有セサル権利ヲ以テ土地ニ負担ヲ加ヘタルトキハ留保附帯ニテ登記セラレタル権利カ其登記前ニ土地ニ加フル負担ニ因リテ留保ノ上ニ出ツル制限ヲ受クル限度ニ於テ優先ノ順位ハ其効力ヲ失フ 第八百〇三条 土地ニ関スル権利又ハ土地ニ負担ヲ加フル権利ニ関スル他ノ権利ヲ除去シ又ハ消滅セシムル請求権ノ担保ノ為メ土地台帳ニ予告ヲ登記スルコトヲ得予告ノ登記ハ将来又ハ条件附請求権ノ担保ノ為メ之ヲ為スコトヲ得 予告ノ登記後ニ土地又ハ権利ニ加ヘタル処分ハ前項ノ請求権ヲ毀損シ又ハ制限スル限度ニ於テ其効力ヲ生セス判決、強制執行又ハ仮差押ニ本ツク処分ハ法律行為ニ本ツク処分ニ同シ除去ヲ請求セラルル権利ノ順位ハ予告ノ登記ニ従フテ之ヲ定ム 第八百〇四条 予告ノ登記ハ仮処分ニ本ツキ又ハ予告ヲ附セラルル土地若クハ権利ヲ有スル者ノ許諾ニ本ツキ之ヲ為ス仮処分ノ命令ヲ申請スルニハ担保セラルヘキ請求権ノ危険ヲ疏明スルコトヲ要セス 登記ヲ為スニ当リ担保スヘキ請求権ヲ査定スルニハ仮処分ノ命令又ハ登記ノ許諾ニ拠ルコトヲ得 第八百〇五条 予告ヲ附セラルル土地又ハ権利ヲ有スル者カ此予告ニ依リテ担保セラルル請求権ノ主張ヲ永久ニ除却スル抗弁ヲ有スルトキハ債権者ニ対シ予告ノ除去ヲ請求スルコトヲ得 債権者カ知レサル場合ニ於テ抵当権利者ノ除斥ニ関シ第千〇七十七条ニ掲クル要件ノ存スルトキハ公示催告手続ニ依リテ其権利ト共ニ之ヲ除斥スルコトヲ得除斥ノ判決アリタルトキハ予告ハ消滅ス 第八百〇六条 登記済ノ権利又ハ此権利ニ関スル他ノ権利ノ取得カ予告ノ利益ヲ受クヘキ者ニ対シテ其効力ヲ有セサル限ハ予告ニ依リテ担保セラレタル請求権ノ実行ニ必要ナル登記又ハ取消ニ付キ取得者ノ同意ヲ求ムルコトヲ得 請求権カ譲渡禁止ノ命令ニ依リテ担保セラレタルトキ亦同シ 第八百〇七条 他人ノ土地ニ関スル権利ハ土地所有者カ之ヲ取得シ又ハ権利者カ土地所有権ヲ取得スルコトニ因リテ消滅セス 第八百〇八条 数口ノ土地ハ其所有者カ之ヲ一筆ノ土地トシテ土地台帳ニ登記スルコトニ因リテ同一土地ニ併合スルコトヲ得 或土地ハ其所有者カ土地台帳ニ於テ之ヲ他ノ土地ニ属セシムルコトニ因リテ此土地ノ成分ト為スコトヲ得 第八百〇九条 土地台帳ニ於テ或者ノ為メニ登記セラレタル権利ハ此者ニ属スルモノト見做ス 土地台帳ニ於テ取消サレタル登記済ノ権利ハ成立セサルモノト見做ス 第八百十条 法律行為又ハ判決ニ因リテ土地ニ関スル権利又ハ此権利ニ関スル他ノ権利ヲ取得スル者ノ為メニ土地台帳ノ記入ヲ以テ正当ト見做ス但記入ノ正当ナルコトニ什テ其反対カ登記セラレ又ハ取得者カ記入ノ不正ナルコト若クハ此不正ヲ生セシムル事実ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス然レトモ第百〇一条及ヒ第百〇二条ニ掲クル種類ノ譲渡禁止カ土地台帳ニ依リテ明ナルトキ又ハ取得者カ之ヲ知リタルトキニノミ此者ニ対シテ有効トス 権利取得ニ付キ登記ヲ要スル場合ニ於テ取得者カ前項ノ事実ヲ知リタルコトニ付テハ登記ノ申請ヲ差出シタル時又ハ第七百九十四条ノ規定ニ従ヒ必要ナル意思ノ合致カ後ニ至リテ生シタルトキハ合致ノ時ヲ以テ標準トス 第八百十一条 土地台帳ニ於テ或者ノ為メニ登記セラレタル権利ニ本ツキ此者ニ対シテ給付ヲ為シ又ハ此者ト他人トノ間ニ於テ第八百十条ノ規定ニ入ラサル法律行為ニシテ登記済権利ニ処分ヲ加フル行為ヲ為シタルトキハ第八百十条ノ規定ヲ準用ス 第八百十二条 第八百十条及ヒ第八百十一条ノ規定ニ因リテ権利ヲ毀損セラレタル者ハ不当ニ処分ヲ加ヘ又ハ給付ヲ受取リタル者ニ対シ不当利得ノ引渡ニ関スル規定ニ従ヒ其取得シタルモノノ引渡ヲ要求スルコトヲ得権利者ニ非サル者ノ処分ニ因リ補償ナクシテ権利ヲ得タル者ニ対シテモ同一ノ請求権ヲ有ス 第八百十三条 法律上ノ実況ト一致セサル土地台帳ノ登記又ハ取消ニ因リテ土地ニ関スル権利又ハ土地ニ負担ヲ加フル権利ニ関スル他ノ権利ヲ制限セラレタル者ハ自己ノ利益ノ為メ登記又ハ取消ヲ受ケタル者ニ対シ土地台帳ノ正誤ニ必要ナル意思表示ヲ請求スルコトヲ得取得ニ付キ所有者ノ同意ヲ要スル場合ニ於テハ所有者ハ請求ニ因リテ同意ヲ与フルコトヲ要ス 正誤及ヒ正誤ニ必要ナル意思表示ノ費用ハ之ヲ請求スル者ノ負担ニ帰ス但此者ト義務者トノ法律関係ヨリ反対ノ生スルトキハ此限ニ在ラス 正誤請求権ハ時効ニ係ルコトナシ 第八百十四条 土地台帳ノ登記又ハ取消カ法律上ノ実況ニ反スル場合ニ於テハ土地台帳ノ正当ナルコトニ対シテ抗拒ノ登記ヲ為スコトヲ得 前項ノ登記ハ仮処分ニ本ツキ又ハ正誤ノ請求ヲ受ケタル者ノ承諾ニ本ツキ之ヲ為ス仮処分ノ命令ヲ発スルニハ抗拒ヲ為ス者カ権利ノ危害ヲ疏明スルコトヲ要セス 第八百十五条 土地所有権ヲ取得スルコトナクシテ土地台帳ニ所有者トシテ登記セラレタル者ハ此登記カ三十年間継続シ且其間所有ノ意思ヲ以テ占有シタルトキハ土地所有権ヲ取得ス三十年ノ期間ノ計算ハ動産ノ取得時効ニ関スル期間ノ計算法ニ従フ又ハ登記ノ正当ナルコトヲ対スル抗拒カ土地台帳ニ登記セラレタル間ハ期間ノ進行ヲ停止ス 或者ニ属セサル権利カ此者ノ為メニ土地台帳ニ登記セラレ且権利カ土地占有ノ権ヲ得セシメ又ハ其実行カ占有ニ関スル規定ニ依リテ保護セラルル場合ニ於テハ前項ノ規定ヲ準用ス権利ノ順位ニ付テハ登記ヲ以テ其標準トス 第八百十六条 土地台帳ニ於テ不正ニ取消サレタル他人ノ土地ニ関スル権利ハ所有者ニ対シテ権利者ノ有スル請求権カ時効ニ係リタルトキハ消滅ス他人ノ士地ニ関シ法律ノ規定ニ因リテ成立シタル権利カ土地台帳ニ登記セラレサリシトキ亦同シ 第八百十七条 登記済権利ニ本ツク請求権ハ時効ニ係ルコトナシ但此請求権カ定期復帰スヘキ給付ノ淹滞又ハ損害賠償ニ本ツクトキハ此限ニ在ラス又或権利ノ為メ土地台帳ノ正当ナルコトニ対スル抗拒力登記セラレタルトキハ此権利ハ登記済ノ権利ニ同シ 第三章 所有権 第一節 所有権ノ内容 第八百十八条 物ノ所有者ハ法律ノ規定又ハ第三者ノ権利ニ反セサル限ハ随意ニ其物ヲ取扱ヒ他人ノ関与ヲ除斥スルコトヲ得 第八百十九条 土地所有者ノ権利ハ其土地ノ上下ニ及ブ然レトモ他人ノ侵入カ之ヲ除斥スルコトニ付キ利益ヲ有セサル程度ノ高所又ハ地底ニ於テ土地ノ上下ニ加ヘラルヽトキハ所有者ハ此侵入ヲ妨グルコトヲ得ズ 第八百二十条 土地所有者ハ瓦斯、蒸気、臭気、煙煤、熱気、音響、振動ノ伝達其他之ニ類似ノモノニシテ他ノ土地ヨリ侵入シ来ルコトニ因リテ土地ノ使用ヲ妨ケス又妨害カ極メテ些少ナルトキ若クハ其侵入カ地所ノ関係ニ由リ其位置ニ取リテ通常ノ使用方法ニ本ヅクトキハ之ヲ妨グルコトヲ得ズ但侵入カ特別ニ導カレタルトキハ此限ニ在ラス 第八百二十一条 土地所有者ハ隣地ノ建設物ノ存在又ハ使用カ自己ノ土地ニ許スヘカラサル侵害ヲ加フルコトヲ明確ニ予知スルトキハ建設物ノ設置又ハ其保持ノ禁止ヲ請求スルコトヲ得土地ノ境界ヨリ一定ノ距離ヲ定メ又ハ其他ノ保護規則ヲ定ムル地方ノ法律ニ従フテ設置シタル建設物ノ除去ハ許スヘカラサル侵害カ実際ニ生ジタルトキ始メテ之ヲ請求スルコトヲ得 樹木又ハ潅木ハ本条ノ規定ニ従フ建設物ニ属セス 第八百二十二条 土地所有者カ隣地ニ属スル建設物其他工作物ノ存在ニ因リ又ハ其一部ノ壊頽ニ因リ土地ヲ害セラルヽ虞アルトキハ第七百五十九条第一項第七百六十条及ヒ第七百六十一条ノ規定ニ依リ損害賠償ノ責ニ任スヘキ者ニ対シ危険ノ除去ニ必要ナル予防方法ヲ為スコトヲ請求スルコトヲ得 第八百二十三条 土地ノ発堀ハ隣地ニ必要ナル支持ヲ失ハシムル方法ニ於テ之ヲ為スコトヲ得ス但隣地ノ支持ニ付キ他ニ十分ノ注意ヲ加フルトキハ此限ニ在ラス 第八百二十四条 土地ノ所有者ハ隣地ヨリ侵入セル樹木又ハ潅木ノ根ヲ伐採シ且之ヲ所持スルコトヲ得又侵入セル枝ニ関シ土地所有者カ其剪除ニ付キ隣地ノ占有者ニ与ヘタル相当ノ期間内ニ剪除ナキトキ亦同シ 土地所有者ハ侵入セル枝根カ土地ノ使用ヲ妨ケサルトキハ前項ノ権ヲ有セス 第八百二十五条 樹木又ハ潅木ヲ離レテ隣地ニ落チタル果実ハ此地ノ果実ト見做ス隣地カ公共ノ使用ニ供セラルルモノナルトキハ此規定ヲ適用セス 第八百二十六条 土地所有者カ故意又ハ懈怠ニ因ラスシテ土地ノ境界ヲ越ヘテ建物ヲ築造シタルトキハ隣地ノ所有者ハ之ヲ差置クコトヲ要ス但界線踰越前若クハ踰越後直ニ故障ヲ申述ベタルトキハ此限ニ在ラス 前項ノ場合ニ於テ隣地ノ所有者ニ対シ賃借料ヲ以テ補償ヲ為スコトヲ要ス賃借料ノ額ニ付テハ界線踰越ノ時ヲ以テ其標準トス 第八百二十七条 界線ヲ越ユル建物ニ付テノ賃借料ハ隣地ノ各所有者ニ本地ノ各所有者ハ之ヲ支払フコトヲ要ス 賃借料ハ毎年先払ヲ以テ之ヲ支払フコトヲ要ス又賃借料ハ建物ノ除去ニ因リテ消滅ス但其放棄ハ之ヲ許サス 賃借料ハ土地台帳ニ登記スルコトヲ要ス又賃借料ノ権利ハ之ニ先チテ本地カ負担スル総テノ権利ニ優先ノモノトス其他定期土地負担ニ関スル規定ハ之ヲ賃借料ニ適用ス 第八百二十八条 賃借料権利者ハ其義務者ニ対シ何時ニテモ建物ノ侵入セル土地ノ部分ヲ譲渡シ且此部分カ界線踰越ノ時ニ有セル価格ノ補償ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テ双方ノ権利義務ハ売買ニ関スル規定ニ従ヒ之ヲ定ム 所有権譲渡ノ時ニ至ル迄ノ賃借料ハ引続キ之ヲ支払フコトヲ要ス 第八百二十九条 界線ヲ踰越スル建物ノ築造ニ因リテ隣地ノ上ニ有スル役権又ハ地上権カ制限セラルトキハ権利者ノ為ニ第八百二十六条及ヒ第八百二十七条ノ規定ヲ准用ス 第八百三十条 或土地ト公路トノ間ニ其土地ノ通常ノ使用ニ必要ナル通路ノ欠クル場合ニ於テ土地所有者ハ隣地ノ所有者ニ対シ此欠缺ノ除去ニ至ル迄必要ナル通路ヲ設クルコトニ付テ其土地ヲ使用スル認許ヲ請求スルコトヲ得通路ノ方向及ビ使用権ノ範囲ハ必要ナル場合ニ於テハ判決ニ依リテ之ヲ定ム 必要ナル通路ヲ設ケラレタル隣地ノ所有者ニ対シテハ賃借料ヲ以テ補償ヲ為スコトヲ要ス又第八百二十六条第二項第二段第八百二十七条及ヒ第八百二十九条ノ規定ハ之ヲ准用ス 第八百三十一条 或土地ト公路トノ間ニ於ケル従来ノ通路カ土地所有者ノ随意ノ所為ニ因リテ廃セラレタル場合ニ於テハ隣地ノ所有者カ負フ所ノ必要ナル通路ヲ償フヘキ義務ヲ生セス 土地ノ一部ノ譲渡ニ因リテ譲渡サレタル部分若クハ留存セル部分ト公路トノ間ノ通路カ断タレタルトキハ従来ノ通路ノ存スル部分ノ土地所有者ハ他ノ部分ノ所有者ニ対シ必要ナル通路ヲ供スルコトヲ要ス又一部ノ譲渡ハ同一所有者ニ属スル多クノ土地ノ一ヲ譲渡シタルニ同シ 第八百三十二条 土地所有者ハ隣地ノ所有者ニ対シ確固タル界標ヲ設ケ又ハ界標カ其位置ヲ変シ若クハ不明トナリタルトキハ協力シテ其修覆ヲ為スヲ請求スルコトヲ得 界標設置ノ方法及ヒ手続ハ聯邦ノ法律ニ従フテ之ヲ定ム又此法律ナキトキト地方ノ慣習ニ従フ 界標設置ノ費用ハ当事者平分シテ之ヲ負担ス但双方ノ法律関係ニ因リ之ニ反対ヲ生スルトキハ此限ニ在ラス 第八百三十三条 境界争ノ場合ニ於テ正当ノ界線ヲ見出スコト能ハサルトキハ当事者双方ノ占有ノ状体ヲ以テ界線ノ標準トス又此状体ヲ確定シ得サルトキハ双方ノ土地ニ係争地面ノ等分ノ部分ヲ割附スルコトヲ要ス 前項ノ規定ニ従フテ定メタル境界カ本来ノ状況殊ニ土地ノ確定面積ト一致セサルトキハ此状況ヲ斟酌シテ正当ト認ムヘキ方法ニ依リ界線ヲ定ムルコトヲ要ス 第八百三十四条 相隣地カ空地、畔、地角、溝渠、土壁、生籬、板壁其他両地ノ利益ニ供スヘキ設置物ニ依リテ分タルルトキハ所有者双方カ此等ノ物ノ共同使用権ヲ有スト見做ス但相隣者一方ニノミ属スル外見上ノ形跡アルトキハ此限ニ在ラス 第八百三十五条 相隣者カ第八百三十四条ニ掲クル設置物ニ付キ共同使用権ヲ有スルトキハ其一方カ他ノ一方ノ使用ヲ妨ケサル限度ニ於テ設置物ノ性質ヨリ生スル目的ニ之ヲ使用スルコトヲ得設置物保存ノ費用ハ相隣者平分シテ之ヲ負担ス又其一方カ設置物ノ存在ニ付キ利益ヲ有スルトキハ此者ノ同意ナクシテ設置物ヲ除去シ又ハ之ヲ変更スルコトヲ得ス其他相隣者間ノ法律関係ニ付テハ共有ノ規定ニ従ヒ之ヲ定ム 第八百三十六条 境界線上ノ樹木ノ果実及ヒ其樹木ハ平等ノ分割部分ヲ以テ相隣者ニ属ス 各相隣者ハ樹木除去ノ請求ヲ為スコトヲ得除去ノ費用ハ相隣者平分シテ之ヲ負担ス然レトモ一方カ樹木ノ上ニ有スル権利ヲ放棄スルトキハ其除去ヲ請求スル他ノ一方ノミ除去ノ費用ヲ負担ス此場合ニ於テ樹木ノ所有権ハ樹木カ土地ヲ離レタル時ヨリ除去ノ請求ヲ為シタル者ニ属ス又樹木カ界線ニ供セラレ且事情ニ因リテ他ニ相当ノ界線ヲ以テ之ニ代ユルコトヲ得サルトキハ樹木除去ノ請求権ハ除却セラル 前項ノ規定ハ境界線上ニ在ル潅木ニ付キ之ヲ適用ス 第八百三十七条 第八百二十一条第八百二十二条第八百二十八条第八百二十九条第八百三十条第一項第八百三十一条第二項第八百三十二条第八百三十三条及ヒ第八百三十六条第二項ノ規定ニ本ツク請求権ハ時効ニ係ルコトナシ 第二節 土地所有権ノ取得及ヒ喪失 第八百三十八条 第七百九十四条ノ規定ニ従ヒ土地所有権ノ譲渡ニ必要ナル譲渡人及ヒ取得者ノ意思ノ合致(明渡)ハ土地台帳取扱吏、裁判所若クハ公証人ノ前ニ於テ之ヲ表示スルコトヲ要ス 条件又ハ期限附帯ノ明渡ハ無効トス 第八百三十九条 譲渡人及ヒ取得者カ土地ノ譲渡ハ其附属物ニ及フヘキコトニ合致シタルトキハ取得者ハ土地所有権ト共ニ譲渡人ニ属スル附属物ニシテ取得ノ時ニ存在スル物ノ所有権ヲモ取得ス疑ハシキ場合ニ於テハ土地所有権ノ譲渡ハ其附属物ニ及ブモノト見做ス 取得者カ譲渡ニ本ツキテ譲渡人ニ属セス又ハ第三者ノ権利ヲ以テ負担ヲ加ヘラレタル附属物ノ占有ヲ取得シタル場合ニ於テハ第八百四十六条乃至第八百五十条ノ規定ヲ適用ス取得者ノ善意ニ付テハ占有取得ノ時ヲ以テ其標準トス 第八百四十条 土地カ三十年以上他人ノ自主占有ニ係ルトキハ公示催告ノ手続ニ依リテ土地所有者ハ其権利ト共ニ除斥セラル此場合ニ於テ占有期間ノ計算ハ動産ノ取得時効ニ関スル期間ノ計算ニ従フ然レトモ所有者カ土地台帳ニ登記セラレタルトキハ此者カ死亡シ且其死亡後三十年ヲ経過シタルトキニノミ公示催告ノ手続ヲ為スコトヲ得 所有者除斥ノ判決ヲ得タル者ハ土地台帳ニ所有者トシテ登記スルコトニ因リテ所有権ヲ取得ス 所有者除斥ノ判決言渡前ニ第三者カ所有者トシテ又ハ其所有権ニ本ツキ土地台帳ノ正当ナルコトニ付キ反対ヲ登記シタルトキハ判決ハ第三者ニ対シテ効力ヲ生セス 第八百四十一条 土地所有者ハ土地台帳取扱吏ノ前ニ於テ所有権ヲ放棄スル旨ヲ表示シ且此表示ヲ土地台帳ニ登記スルコトニ因リテ所有権消滅ス 放棄セラレタル土地ノ先占権ハ土地所在地ノ聯邦ノ国庫ニ属ス国庫カ所有者トシテ土地台帳ニ登記スルコトニ因リテ所有権ヲ取得ス 第三節 動産所有権ノ取得及ヒ喪失 第一款 譲渡 第八百四十二条 動産所有権ノ譲渡ニ付テハ所有者カ其物ヲ取得者ニ引渡シ且双方カ所有権移転ニ付キ合致スルコトヲ要ス取得者既ニ其物ヲ占有セルトキハ所有権移転ニ付キ双方カ合致スルノミニテ足ル 第八百四十三条 所有者カ物ヲ占有スル場合ニ於テ其物ノ引渡ハ所有者ト取得者トノ間ニ於テ取得者カ間接占有ヲ取得スヘキ法律関係ヲ取結フコトニ因リテ之ニ代フ 第八百四十四条 第三者カ物ヲ占有スル場合ニ於テ其物ノ引渡ハ所有者カ第三者ニ対シテ有スル引渡請求権ヲ取得者ニ譲渡スコトニ因リテ之ニ代フ 第八百四十五条 物ノ引渡カ強制執行ノ方法ニ依リテ為サルルトキハ執達吏カ取得者ニ其物ヲ引渡ス目的ヲ以テ之ヲ取上ケタルトキニ引渡アリタルモノトス 第八百四十六条 第八百四十二条及ヒ第八百四十五条ノ規定ニ従ヒ為シタル譲渡ニ因リテ物カ譲渡人ニ属セサルトキト雖モ取得者ハ所有権ヲ取得ス但取得者カ此規定ニ依リテ所有権ヲ取得スヘキ時ニ善意ナラサリシトキハ此限ニ在ラス然レトモ第八百四十二条第二段ノ場合ニ於テハ取得者カ物ノ占有ヲ譲渡人ヨリ取得シタルトキニノミ之ヲ適用ス 取得者ハ物カ譲渡人ニ属セサルコトヲ知リ又ハ重懈怠ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ善意ナラストス 第八百四十七条 第八百四十三条ノ規定ニ従ヒ譲渡サレタル物カ譲渡人ニ属セサル場合ニ於テ譲渡人カ此物ヲ取得者ニ引渡シタルトキハ取得者ヲ以テ其所有者トス但取得者カ取得ノ時ニ善意ナラサリシトキハ此限ニ在ラス 第八百四十四条ノ規定ニ従ヒ譲渡サレタル物カ譲渡人ニ属セサル場合ニ於テ譲渡人カ其物ノ間接占有者ナルトキハ取得者ハ第三者ニ対スル引渡請求権ヲ譲受クルコトニ因リテ所有権ヲ取得ス其他ノ場合ニ於テハ物ノ占有ヲ第三者ヨリ取得シタルトキニ其所有者ト為ル但取得者カ請求権譲受又ハ占有取得ノ時ニ善意ナラサリシトキハ此限ニ在ラス 第八百四十八条 所有者カ窃取セラレ又ハ遺失シタル物ノ所有権ハ第八百四十六条及ヒ第八百四十七条ノ規定ニ本ツキ之ヲ取得スルコトヲ得ス所有者カ間接占有者タル場合ニ於テ占有者カ其物ヲ窃取セラレ若クハ之ヲ遺失シタルトキ亦同シ 前項ノ規定ハ金銭無記名証券又ハ競売ニ依リテ譲渡サレタル物ニ付テ之ヲ適用セス 第八百四十九条 譲渡サレタル物ニ負担ヲ加フル第三者ノ権利ハ所有権ノ取得ニ因リテ消滅ス譲渡カ第八百四十三条ノ規定ニ従フテ為サレ又ハ第八百四十四条ノ規定ニ依リテ譲渡サレタル物カ譲渡人ノ間接占有ニ係ル場合ニ於テハ第三者ノ権利ハ取得者カ譲渡ニ本ツキ物ノ占有ヲ取得シタルトキニ消滅ス 第三者ノ権利ニ関シ取得者カ第一項ノ規定ニ依リテ指定スル時ニ善意ナラサリシトキハ此権利ハ消滅セス 第八百四十四条ノ場合ニ於テ所有権カ第三占有者ニ属スルトキハ善意ノ取得者ニ対シテモ此権利ハ消滅セス 第八百五十条 第八百四十六条乃至第八百四十九条ノ規定ニ従ヒ譲渡ニ因リテ権利ヲ喪失シタル者ハ譲渡人ニ対シ不当利得ノ引渡ニ関スル規定ニ従ヒ譲渡ニ因リテ取得シタルモノノ引渡ヲ要求スルコトヲ得譲渡カ無償ニテ為サレタルトキハ其取得者ニ対シ同一ノ請求権ヲ有ス 第二款 取得時効 第八百五十一条 十年間動産ノ自主占有ヲ保チタル者ハ其所有権ヲ取得ス(取得時効)然レトモ取得者カ自主占有取得ノ時ニ善意ナラズ又ハ後ニ至リテ所有権カ自己ニ属セサルコトヲ知リタルトキハ取得時効ヲ生セス 第八百五十二条 或期間ノ始終ニ於テ物ノ自主占有ヲ保チタル者ノ占有ハ其中間ニ於テモ継続シタリト推定ス 第八百五十三条 所有権請求ノ時効カ停止セラレ又ハ其成就ニ付キ第百七十一条及ヒ第百七十二条ノ規定カ之ニ反対スルトキハ取得時効ハ進行スルコトヲ得ス又既ニ進行ヲ始メタル時効ハ停止ス 第八百五十四条 取得時効ハ自主占有ノ喪失ニ因リテ中断ス 自主占有者カ自己ノ意思ニ因ラスシテ占有ヲ失フモ一年ノ期間内ニ於テ又ハ此期間内ニ提起セル訴訟ニ因リテ占有ヲ回復スルトキハ取得時効ハ中断セスト見做ス 第八百五十五条 或者カ自主占有者ニ対シ又ハ間接自主占有ノ場合ニ於テハ占有ノ権利ヲ此自主占有ニ本ツカシムル占有者ニ対シ所有権請求ヲ裁判上ニ主張スルトキハ取得時効ハ中断ス此場合ニ於テ中断ノ効力ハ中断ヲ生セシメタル者ノ為メニノミ発生ス又時効ニ関スル第百七十五条乃至第百七十八条第百八十二条第百八十四条及ヒ第百八十五条ノ規定ハ之ヲ准用ス 第八百五十六条 取得時効カ中断セラルルトキハ中断ニ至ル迄経過シタル時間ハ之ヲ時効期間ニ算入セス此場合ニ於テ取得時効ハ中断ノ終リタル後新ニ其進行ヲ始ム 第八百五十七条 第三者カ権利承継ニ因リテ物ノ自主占有ヲ取得スルトキハ被承継人ノ占有ノ間ニ経過シタル時間ハ第三者之ヲ引用スルコトヲ得 第八百五十八条 自主占有者カ取得時効ノ成就前ニ死亡シタル時ヨリ其相続人カ自主占有ヲ取得スルニ至ル迄ノ時間ハ之ヲ時効ノ期間ニ算入ス他人カ相続人トシテ遺産ノ自主占有ヲ取得スルトキハ取得時効ハ中断ス又相続人カ一年ノ期間内ニ於テ又ハ此期間内ニ提起セル訴訟ニ因リテ自主占有ヲ回復スルトキハ取得時効ハ中断セスト見做ス 遺産占有者ノ為メニ経過シタル取得時効ハ相続人之ヲ引用スルコトヲ得 第八百五十九条 遺産占有者カ自己ニ対スル遺産請求権カ時効ニ因リテ消滅セサル限ハ相続人ニ対シ取得時効ニ因リ遺産トシテ占有シタル物ヲ取得スルコトヲ得ス 第八百六十条 取得時効ニ本ツク所有権ノ取得ト共ニ自主占有取得前ニ其物ニ関シテ成立セル第三者ノ権利ハ総テ消滅ス但自主占有者カ占有取得ノ時ニ第三者ノ権利ニ関シ善意ナラス又ハ後ニ至リテ其成立ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス又第八百五十三条乃至第八百五十八条ノ規定ハ之ヲ准用ス 第三款 添附、混同、製作 第八百六十一条 動産カ土地ニ附合シテ其主要部分ト為ルトキハ土地ノ所有権ハ此物ニ及フ 第八百六十二条 動産カ相互附合シテ之ニ因リテ生シタル物ノ主要部分ト為リタルトキハ所有者ハ此物ノ共有者ト為ル共有ノ部分ハ附合ノ時ニ各動産カ有セシ価格ノ割合ニ従フ 前項ノ場合ニ於テ一方ノ動産カ主物ト認ムヘキトキハ主物ノ所有者カ独リ所有権ヲ取得ス 第八百六十三条 動産カ相互混同シテ分ツコトヲ得サルトキハ第八百六十二条ノ規定ヲ准用ス 混同シタル物ヲ分ツコトカ過分ノ費用ヲ要スルトキハ此物カ分ツコトヲ得サルニ同シ 第八百六十四条 第八百六十一条乃至第八百六十三条ノ規定ニ従ヒ一方ノ動産ノ所有権カ消滅スルトキハ此物ニ関シテ既ニ成立セシ総テノ権利モ共ニ消滅ス負担ヲ有スル物ノ所有者カ共有権ヲ取得スルトキハ負担ヲ加フル権利ハ此物ニ代リテ生シタル共有部分ニ関シテ存立ス又負担ヲ有スル物ノ所有者カ独リ所有権ヲ取得スルトキハ負担ヲ加フル権利ハ混同シタル物ニ及フ 第八百六十五条 一個又ハ数個ノ物ノ製作又ハ変形ニ因リテ新ニ動産ヲ作リタル者ハ此物ノ所有権ヲ取得ス但原料ノ価格カ製作又ハ変形ノ価格ニ著シク超過スルトキハ此限ニ在ラス又書画、彩色、印刷、渡金其他之ニ類似スル表面上ノ加工モ亦物ノ製作ト見做ス 新ニ作ラレタル物ノ所有権取得ト共ニ原料ニ関シテ既ニ成立セル権利ハ消滅ス 第八百六十六条 第八百六十一条乃至第八百六十五条ノ規定ニ従ヒ権利ヲ喪失シタル者ハ権利ノ変更ニ因リテ利得ヲ得タル者ニ対シ不当利得ノ引渡ニ関スル規定ニ従ヒ見積価額ヲ請求スルコトヲ得之ニ反シテ原状回復ハ之ヲ請求スルコトヲ得ス 不法行為ニ本ツク損害賠償ノ義務ニ関スル規定ハ本条ニ依リテ影響ヲ受クルコトナシ 第八百六十七条 或債権ニ付テ発行シタル証券ノ所有権ハ債権者ニ属ス此請求権ニ関スル第三者ノ権利ハ証券ノ上ニ及フ 或給付ヲ請求シ得ヘキ権利ニ関スル証書殊ニ抵当、土地債務及ヒ定期土地債務ノ証書ニ付テモ亦同シ 第四款 物ノ産出物及ビ其他ノ成分ノ取得 第八百六十八条 物ノ産出物及ビ其他ノ成分ハ分離ノ後ト雖モ其物ノ所有者ニ属ス但第八百六十九条乃至第八百七十二条ノ規定ニ依リ之ニ反対ヲ生スルトキハ此限ニ在ラス 第八百六十九条 他人ノ物ノ上ニ有スル権利ニ本ツキ其物ノ産出物又ハ其他ノ成分ヲ所有スヘキ権アル者ハ第八百七十条乃至第八百七十二条ノ規定ニ拘ハラス産出物又ハ成分カ分離シタル時ニ其所有権ヲ取得ス 第八百七十条 自主占有者ハ第八百七十一条及ヒ第八百七十二条ノ規定ニ拘ハラス物ノ産出物又ハ其他果実ニ属スル成分カ分離シタル時ニ其所有権ヲ取得ス但自主占有者カ占有ノ権ヲ有セス又ハ他人カ其物ノ上ニ有スル権利ニ本ツキ果実ヲ取得スル権ヲ有シ且自主占有者カ占有取得ノ時善意ナラス又ハ分離ノ時権利ノ欠欠ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス 物ノ用益権ヲ行使スル為メ其物ヲ占右スル者ハ自主占有者ニ同シ 自主占有及ヒ之ニ等シキ占有ニ関シテハ第八百五十四条第二項及ヒ第八百五十八条第一項ノ規定ヲ准用ス 第八百七十一条 所有者カ物ノ産出物又ハ其他ノ成分ヲ取得スヘキコトヲ他人ニ許シタル場合ニ於テ此者カ其物ノ占有ヲ取得セルトキハ産出物又ハ其他ノ成分カ分離シタル時又ハ其他ノ場合ニ於テハ之ヲ握取シタル時ニ其所有権ヲ取得ス他人カ占有ヲ継続スル限ハ所有者ハ産出物又ハ其他ノ成分ノ取得ヲ許スヘキ義務ヲ負フ間ハ其取消ヲ為スコトヲ得ス 前項ノ場合ニ於テ取得ノ許可カ所有者ニ依ラスシテ産出物又ハ其他ノ成分カ分離シタル時其所有権ヲ取得スヘキ者ニ依リテ為サレタルトキ亦同シ 第八百七十二条 物ノ産出物又ハ其他ノ成分ヲ取得スヘキコトヲ他人ニ許シタル者カ其権利ヲ有セサル場合ニ於テモ第八百七十一条ノ規定ヲ適用ス但物ノ占有ノ引渡アリタル場合ニ於テハ其引渡ノ時其他ノ場合ニ於テハ産出物又ハ其他ノ成分ヲ握取シタル時ニ此者カ善意ナラス又ハ分離ノ前ニ権利ノ欠欠ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス 第五款 先占 第八百七十三条 無主ノ動産ノ自主占有ヲ得タル者ハ其物ノ所有権ヲ取得ス但先占カ法律上禁止セラレ又ハ他人ノ先占権カ握取ニ因リテ害セラレタルトキハ此限ニ在ラス 第八百七十四条 所有者カ所有権ヲ放棄スル目的ヲ以テ動産ノ占有ヲ放棄シタルトキハ此物ヲ無主物トス 第八百七十五条 野獣ハ野棲スル間ハ無主物トス然レトモ飼畜場ニ於ケル野獣及ヒ池其他取囲マレタル私有ノ水中ニ於ケル魚類ハ無主物ニアラス 捕獲セテレタル野獣カ逃出シ且其所有者カ直ニ之ヲ追求セス又ハ其追求ラ止メタルトキハ無主物トス 飼馴サレタル動物カ自己ノ為メニ定メラレタル場所ニ帰リ来ルヘキ慣習ヲ失ヒタルトキハ無主物トス 第八百七十六条 群ヲ為シテ他ニ移転シタル蜜蜂ノ所有者カ直ニ之レヲ追求セス又ハ其追求ヲ止メ若クハ其所在ヲ失ヒタルトキハ無主物トス 第八百七十七条 蜂群ノ所有者ハ之ヲ追求スル為メ他人ノ土地ニ立入ルコトヲ得又蜂群カ未タ他ノ蜜蜂ニ依リテ占有セラレサル他人ノ蜂室ニ入リタルトキハ之ヲ捕獲スル為メ蜂室ヲ開キ且窩房ヲ引出又ハ之ヲ毀出スコトヲ得此場合ニ於テ第七百八十九条ノ規定ヲ適用ス 第八百七十八条 所有者ヲ異ニスル蜂群カ他ニ移転シテ互ニ混合スルトキハ蜂群ヲ追求シタル所有者ハ捕獲シタル総テノ蜜蜂ニ付テ共有権ヲ取得ス共有部分ハ追求セラレタル蜂群ノ数ニ依リテ之ヲ定ム 第八百七十九条 蜂群カ既ニ他ノ蜜蜂ニ依リテ占有セラレタル他人ノ蜂室ニ入リタルトキハ蜂室ヲ占有セシ蜜蜂ニ関スル所有権其他ノ権利ハ入リ来リタル蜜蜂ノ上ニ及フ又此蜜蜂ニ関スル所有権其他ノ権利ハ消滅ス 第六款 発見 第八百八十条 遺失物ヲ発見シ之ヲ所持スル者ハ遅滞ナク遺失者、所有者又ハ此物ヲ受取ルヘキ其他ノ権利者ニ此旨ヲ通知スルコトヲ要ス 発見者カ発見物ヲ受取ルヘキ権利者ヲ知ラス又ハ此者ノ居所カ不明ナルトキハ遅滞ナク発見セシコト並ニ発見物ヲ受取ルヘキ権利者ヲ求ムルニ必要ナル事情ヲ警察署ニ提示スルコトヲ要ス発見物ノ価格カ三マルク以下ノトキハ警察署ニ届出ツルコトヲ要セス 第八百八十一条 発見者ハ発見物ヲ保管スル義務ヲ負フ 発見物カ腐敗スル虞アルトキ又ハ其保存カ過分ノ費用ヲ要スルトキハ発見者ハ警察署ニ届出タル後此物ヲ公売セシムルコトヲ要ス此場合ニ於テ代価ハ其元物ニ代ハルモノトス 第八百八十二条 発見者ハ発見物又ハ其公売代価ヲ警察署ニ差出ス権利ヲ有シ又警察署ノ命令ニ依リテ此義務ヲ負フ 第八百八十三条 発見者ハ故意又ハ重懈怠ノ責ノミニ任ス 第八百八十四条 発見者ハ発見物ノ引渡ニ依リ遺失者又ハ発見物ヲ受取ルヘキ其他ノ権利者ニ対シテ其義務ヲ免ル 第八百八十五条 発見者カ発見物ノ保管ノ為メ又ハ之ヲ受取ルヘキ権利者ヲ求ムル為メニ要シタル費用ニシテ其時ノ事情ニ依リ必要ト認ヘキモノハ受取人ニ対シ其賠償ヲ請求スルコトヲ得 第八百八十六条 発見者ハ発見物ヲ受取ルヘキ権利者ニ対シ報酬ヲ請求スルコトヲ得報酬ハ発見物ノ価格カ三百マルク以下ノトキハ其百分ノ五トシ三百マルク以上ノトキ及ヒ動物ニ付テハ其百分ノ一トス又発見物ハ之ヲ受取ルヘキ権利者ニ対シテノミ価格ヲ有スルトキハ相当ノ計算ニ依リテ其報酬ヲ定ム 発見者ハ届出ノ義務ヲ怠リ又ハ発見物ノ捜索ニ対シ之ヲ隠秘シタルトキハ報酬請求ノ権ヲ失フ 第八百八十七条 第八百八十五条及ビ第八百八十六条ニ掲ケタル請求権ニ付テハ占有者カ所有者ニ対シテ有スル費用ノ請求権ニ関スル第九百十三条ノ規定ヲ准用ス 第八百八十八条 発見ヲ警察署ニ届出タル後一年ヲ経過シタルトキハ発見者ハ其物ノ所有権ヲ取得ス但発見者カ発見物ヲ受取ルヘキ権利者ヲ知リ又ハ此者ノ権利カ既ニ警察署ニ届出ラレタルトキハ此限ニ在テス又所有権ノ取得ニ因リテ発見物ニ関スル総テノ権利ハ消滅ス発見物ノ価格カ三マルク以下ノトキハ一年ノ期間ハ発見ノ時ニ始マル発見者カ発見物ノ捜索ニ対シ之ヲ穏秘シタルトキハ所有権ヲ取得スルコトヲ得ス然レトモ警察署ニ届出ラレタル或権利ハ所有権ノ取得ヲ妨クルコトナシ 第八百八十九条 発見者カ一年ノ期間内ニ発見物ヲ受取ルヘキ権利者ヲ知リ又ハ三マルク以上ノ価格ヲ有スル発見物ニ付キ此物ヲ受取ルヘキ権利者カ正当ノ時ニ其権利ヲ警察署ニ届出タル場合ニ於テ此者カ第八百八十五条乃至第八百八十七条ノ規定ニ依リテ発見者ニ属スル請求弁済ノ要求ニ応セサルトキハ発見者ハ発見物ノ所有権ヲ取得シ此物ニ関スル其他ノ権利ハ消滅ス此場合ニ於テ発見者ノ要求ハ第九百十四条第一項及ヒ第三項ノ規定ニ従フコトヲ要ス 第八百九十条 発見物又ハ其公売代価ヲ警察署ニ差出スコトニ因リテ発見者ノ権利ハ影響ヲ受クルコトナシ警察署カ発見物ヲ公売セシムルトキハ其代価ハ元物ニ代ハルモノトス又警察署ハ発見者ノ同意アリタルトキニノミ発見物又ハ其代価ヲ受取ルヘキ権利者ニ之ヲ引渡スコトヲ得 第八百九十一条 発見者カ警察署ニ対シ発見物ノ所有権ヲ取得スル権利ヲ放棄スルトキハ此権利ハ発見地ノ団体ニ移転ス 発見者カ発見物又ハ其公売代価ヲ警察署ニ差出シタル後第八百八十八条及ヒ第八百八十九条ノ規定ニ依リテ所有権ヲ取得シタル場合ニ於テ発見者カ警察署ノ指定シタル期間内ニ物ノ引渡ヲ請求セサルトキハ其所有権ハ発見地ノ団体ニ移転ス 第八百九十二条 第八百八十八条第八百八十九条及ヒ第八百九十一条ノ規定ニ依リテ権利ヲ喪失シタル者ハ第八百八十八条及ヒ第八百八十九条ノ場合ニ於テハ発見者ニ対シ又第八百九十一条ノ場合ニ於テハ発見地ノ団体ニ対シ不当利得ノ引渡ニ関スル規定ニ従ヒ権利ノ変更ニ因リテ取得シタルモノノ引渡ヲ請求スルコトヲ得此請求権ハ所有権カ発見者又ハ団体ニ移転シタル後三年内ニ裁判上主張セサルトキハ消滅ス 第八百九十三条 営業場ニ於テ又ハ官庁若クハ公設交通局ノ運送具ニ於テ物ヲ発見シ且之ヲ拾得シタル者ハ遅滞ナク其物ヲ官庁又ハ交通局若クハ其役員ニ差出スコトヲ要ス第八百八十条乃至第八百九十二条ノ規定ハ此ニ適用セス 第八百九十四条 官庁又ハ交通局ハ差出サレタル発見物ヲ公売セシムルコトヲ得帝国、聯邦及ヒ各団体ノ官庁又ハ交通局ハ其役員ノ一人ヲシテ公売ヲ為サシムルコトヲ得 前項ノ公売ハ発見物ヲ公告シ其公告ニ於テ発見物ヲ受取ルヘキ権利者ニ対シ指定シタル期間内ニ自己ノ権利テ届出ツヘキ旨ノ催告ヲ為シ且此期間カ権利ノ届出ナクシテ経過シタルトキニ於テ之ヲ為スコトヲ得発見物カ腐敗スル虞アルトキ又ハ其保存カ過分ノ費用ヲ要スルトキハ公告スルコトヲ要セス 発見物公売ノ代価ハ其元物ニ代ハルモノトス 第八百九十五条 発見物ヲ受取ルヘキ権利者カ公告ニ於テ指定セラレタル期間ノ経過後三年内ニ届出サルトキハ公売代価ハ官庁若クハ交通局カ帝国ノ官庁若クハ交通局ナルトキハ国庫ニ帰属シ聯邦ノ官庁若クハ交通局ナルトキハ聯邦ノ国庫ニ帰属シ団体ノ官庁若クハ交通局ナルトキハ団体ニ帰属シ又交通所ガ私人ノ営業ニ係ルトキハ此者ニ帰属ス 公告ナクシテ公売セラレタルトキハ三年ノ期間ハ発見カ公告セラレ且其公告ニ於テ代価ヲ受取ルヘキ権利者ニ対シ自己ノ権利ヲ届出ツヘキ旨ヲ催告シタル後ニ始マル発見シタル金銭カ差出サレタルトキ亦同シ 前項ノ場合ニ要シタル総テノ費用ハ物ノ価額ヨリ之ヲ控除ス 第八百九十六条 第八百九十四条及ヒ第八百九十五条ニ掲ケタル公告ヲ為スニハ官庁若クハ交通局カ帝国ノ官庁若クハ交通局ナルトキハ聯邦議会ヨリ発布スル規定ニ従ヒ其他ノ場合ニ於テハ聯邦政府ヨリ発布スル規定ニ従フ 第八百九十七条 官庁カ契約ニ本ツカスシテ引渡ノ義務ヲ負フ物ヲ占有スル場合ニ於テ此物ヲ受取ルヘキ権利者又ハ其居所カ知レサルトキハ第八百九十四条乃至第八百九十六条ノ規定ヲ准用ス 第八百九十八条 永久ノ埋没ニ因リテ所有者ヲ求ムルコトヲ得サル物(埋蔵物)ヲ発見シ且之ヲ占有シタルトキハ其物ノ所有権ノ一半ハ発見者之ヲ取得シ他ノ一半ハ埋蔵物ノ存在セシ物ノ所有者之ヲ取得ス 第四節 所有権ニ本ツク請求権 第八百九十九条 所有者ハ占有者ニ対シ物ノ引渡ヲ請求スルコトヲ得 所有者ハ間接占有者ニ対シ間接占有ノ引渡ヲ請求スル権ヲ有セス 第九百条 占有者又ハ此者ノ権利ヲ援引スル間接占有者ガ所有者ニ対シテ目的物ヲ占有スル権ヲ有スルトキハ占有者ハ物ノ引渡ヲ拒ムコトヲ得間接占有者カ所有者ニ対シ其占有ヲ占有者ニ引渡ス権ヲ有セサルトキハ所有者ハ占有者ニ対シ間接占有者ニ目的物ヲ引渡シ又ハ此者カ占有ヲ回取スルコトヲ欲セサルトキハ自己ニ之ヲ引渡スコトヲ請求スルコトヲ得 第八百四十四条ノ規定ニ従ヒ引渡請求権ノ譲渡ニ因リテ譲渡サレタル物ノ占有者ハ此引渡請求権ニ対シテ自己ニ属スル抗弁ヲ新所有者ニ対抗スルコトヲ得 第九百〇一条 占有者ハ権利拘束ノ生シタル後ニ収入シタル利得ヲ所有者ニ引渡スコトヲ要ス利得ヲ収入スル為メニ要シタル費用ハ整正タル経済ノ方法ニ適シ且利得ノ価格ヲ越ヘサル限度ニ於テ所有者之ヲ賠償スルコトヲ要ス 占有者カ権利拘束ノ生シタル後整正タル経済ノ方法ニ依リテ収入スルコトヲ得ヘカリシ利得ヲ収入セサリシトキハ所有者ニ対シ自巳ノ過失ノ限度ニ於テ賠償ノ義務ヲ負フ 第九百〇二条 物カ自巳ニ属スト認メ又ハ実際自巳ニ属セサル用益権ヲ此物ニ付テ行フ為メ之ヲ占有スル者カ無償ニテ占有ヲ取得シタルトキハ不当利得ノ引渡ニ関スル規定ニ従ヒ権利拘束ノ生スル前ニ収入シタル利得ヲ所有者ニ引渡ス義務ヲ負フ 第九百〇三条 占有者ハ権利拘束ノ生シタル時ヨリ所有者ニ対シ自己ノ過失ニ因リテ生シタル物ノ滅失毀損又ハ其他ノ原因ニ由リテ物ヲ引渡スコトヲ得サル損害ヲ賠償スル義務ヲ負フ 第九百〇四条 占有者カ占有取得ノ時ニ善意ナラサリシトキハ爾後所有者ニ対シ第九百〇一条及ヒ第九百〇三条ニ規定スル義務ヲ負フ占有者カ占有スル権ナキコトヲ知リタルトキ亦同シ遅滞ニ本ツク其他ノ責任ハ本条ノ規定ニ依リテ影響ヲ受クルコトナシ 第九百〇五条 占有者カ其権利ヲ間接占有者ヨリ得タル場合ニ於テハ物ノ利得ニ関スル第九百〇四条ノ規定ハ間接占有者カ占有取得ノ時ニ善意ナラス又ハ後ニ至リテ占有スル権利ノ欠缺ヲ知リタルトキニノミ之ヲ適用ス 占有者ハ占有取得ノ時ニ善意ナラサリシトキハ所有者ニ対シ占有取得ノ時ヨリ第九百〇三条ニ掲ケタル損害ニ付キ間接占有者ニ対シテ負担スル限度ニ於テ賠償ノ義務ヲ負フ 第九百〇六条 占有者ハ禁止セラレタル私力又ハ所罰ヲ受クヘキ行為ニ依リテ占有ヲ取得シタルトキハ所有者ニ対シ不法行為ニ本ツク損害賠償ニ関スル規定ニ従ヒ賠償ノ義務ヲ負フ 第九百〇七条 第九百〇一条乃至第九百〇六条ニ掲クル要件ノ存セサルトキハ占有者ハ利得ヲ引渡シ又ハ損害ヲ賠償スル義務ヲ負フコトナシ 物ノ利得カ占有者ノ手ニ存スル場合ニ於テハ第七十七条m号ノ規定ヲ適用ス 第九百〇八条 占有者ハ所有者ニ対シ占有物ニ加ヘタル必要ノ費用ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得然レトモ通常ノ保存費用ハ占有者ハ其物ヲ利用スル間ハ之ヲ賠償スルコトヲ要セス 其他ノ費用ニ付テハ占有者カ権利拘束ノ生スル前ニ目的物ニ加ヘ且之ニ因リテ生シタル増価額ハ所有者カ其物ヲ回復セシ時ニ存スル限度ニ於テ賠償ヲ請求スルコトヲ得但占有者ハ第九百〇四条ノ規定ニ依リテ義務ヲ負フトキハ此請求権ヲ有セス 第九百〇九条 占有者カ占有物ノ負担ヲ弁済スル為メニ要シタル費用ハ第九百〇八条ノ意義ニ於ケル必要ナル費用ニ属ス占有者カ物ヲ利用スル間ハ此物ノ元価ニ加ヘラレタリト認ムヘキ特別ノ負担ニ関スル費用ノミヲ賠償スルコトヲ要ス 第九百十条 占有者ハ占有物ノ重要ナル成分トシテ他ノ物ヲ占有物ト附合シタルトキハ之ヲ分離シテ取得スルコトヲ得此場合ニ於テハ賃借人ノ分離権ニ関スル第四百九十一条第二項ノ規定ヲ準用ス 前項ノ分離権ハ占有者カ第九百〇八条第一項第二段ノ規定ニ依リテ費用ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ズ且分離カ自己ノ為メニ利益ヲ有セス又ハ少クモ附合シタル成分カ分離後ニ自己ノ為メニ有スヘキ価格ノ賠償ヲ得タルトキハ除却セラル 第九百十一条 耕作地ヲ引渡スヘキ場合ニ於テハ土地所有者ハ整正タル耕作ノ方法ニ従ヘハ耕作年度ノ終ル前ニ分離スヘキ果実ニシテ未タ分離セサルモノニ付テ占有者カ加ヘタル費用ヲ賠償スルコトヲ要ス但此費用ハ整正タル耕作ニ適シ且其果実ノ価格ヲ越ヘサルコトヲ要ス 第九百十二条 占有者ノ権利承継人ト為リタル占有者ハ前主カ目的物ヲ引渡サヽルヘカラサルトキニ其加ヘタル費用ノ賠償ヲ請求シ得ルト同一ノ範囲ニ於テ賠償ヲ請求スルコトヲ得 所有者ノ費用賠償ノ義務ハ所有権ノ取得前ニ加ヘラレタル費用ニ及ブモノトス 第九百十三条 占有者ハ所有者カ目的物ヲ回復シ又ハ費用ヲ認諾シタルトキニノミ費用賠償ノ請求権ヲ対抗スルコトヲ得所有者ハ費用ヲ認諾セサル間ハ回復シタル物ヲ返還シテ費用賠償ノ義務ヲ免カルコトヲ得又所有者カ占有者ヨリ費用賠償ノ請求権ヲ留保シテ差出シタル物ヲ受取リタルトキハ費用ノ認諾ヲ与ヘタルモノト見做ス 費用賠償ノ請求権ハ占有者カ目的物ヲ所有者ニ引渡シタル場合ニ於テ引渡後一ヶ月ヲ経過スル前ニ又土地ニ付テハ六ヶ月ヲ経過スル前ニ裁判上ニ之ヲ対抗セサルトキハ消滅ス但所有者カ費用ヲ認諾シタルトキハ此限ニ在ラス 占有者ハ費用賠償ノ請求権ノ弁済ニ対シテノミ物ノ引渡ヲ為ス義務ヲ負フ又占有者カ故意ニ為シタル不法行為ニ依リテ目的物ヲ得タル場合ニ於テハ其物ニ付テ留置権ヲ有セス 第九百十四条 占有者ハ所有者ニ対シ請求スヘキ賠償額ヲ指定シテ自己ノ定ムル相当ノ期間内ニ費用ノ認諾ヲ表示スヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ認諾カ期間経過前ニ与ヘラレサルトキハ占有者ハ質物売却ニ関スル規定ニ従ヒ又土地ニ付テハ不動産ノ強制執行ニ関スル規定ニ従ヒ目的物ニ付テ請求権ノ弁済ヲ求ムル権ヲ有ス 所有者カ期間経過前ニ請求権ニ付テ争フトキハ占有者ハ所有者ニ対シ相当ノ期間ヲ定メ確定判決ニ依リテ定マリタル費用額ノ認諾ヲ表示スル旨ヲ請求シ且此期間内ニ認諾ナキトキニノミ目的物ニ付テ請求権ノ弁済ヲ求ムルコトヲ得 第九百十五条 所有者ト間接占有者トノ法律関係ニ付テハ第九百〇一条乃至第九百〇四条ノ規定ヲ淮用ス 第九百十六条 所有権カ占有ノ奪取若クハ留保以外ノ方法ニ依リテ制限セラルルトキハ所有者ハ妨害者ニ対シ制限ノ除去ヲ請求スルコトヲ得又其他ノ制限ヲ受クヘキ虞アルトキハ所有者ハ其廃止ヲ訴求スルコトヲ得 前項ノ請求権ハ所有者カ制限ヲ堪ユヘキ義務アルトキハ除却セラル 第九百十七条 物カ所有者以外ノ者ノ占有スル土地ノ上ニ在ルトキハ所有者ハ土地ノ占有者ニ対シ第七百八十九条ニ掲クル請求権ヲ有ス 第九百十八条 動産ノ占有者ヲ以テ其所有者ト推定ス然レトモ物カ窃取紛失其他之ニ類似ノ事由ニテ占有者ノ手ヲ離レタルトキハ此者ニ対シテ本条ノ推定ヲ生セス但金銭又ハ持参人払ノ証券ニ付テハ此限ニ在ラス 前占有者ノ占有カ継続セシ間ハ此者ヲ以テ目的物ノ所有者ト推定ス 間接占有ノ場合ニ於テハ前項ノ推定ハ間接占有者ニ付テ之ヲ適用ス 第九百十九条 動産ヲ占有セシ者ハ善意ニアラスシテ其占有ヲ取得セシ現占有者ニ対シ物ノ引渡ヲ請求スルコトヲ得 窃取紛失其他之ニ類似ノ事由ニテ占有ヲ失ヒタル者ハ善意ノ現占有者ヨリモ物ノ引渡ヲ請求スルコトヲ得但現占有者ハ其物ノ所有者ナルトキ又ハ前占有者カ占有スル前ニ現占有者カ占有ヲ失ヒタル物ナルトキハ此限ニ在ラス又金銭及ヒ持参人払ノ証券ニ付テハ本条ノ規定ヲ適用セス 前占有者カ占有取得ノ時ニ善意ナラス又ハ占有ヲ放棄シタル場合ニ於テハ前項ノ請求権ヲ有セス其他ノ場合ニ於テハ第九百条乃至第九百十五条ノ規定ヲ准用ス 第五節 共有 第九百二十条 物ノ所有権カ持分ニ従フテ数人ニ属スルトキハ第九百二十一条乃至第九百二十三条ノ規定ヲ適用ス 第九百二十一条 共有者ノ一人ノ為メニ共有物ニ負担ヲ加フルコトヲ得 或土地ノ時々ノ所有者ノ為メニ共有地ニ負担ヲ加ヘ又ハ共有地ノ時々ノ所有者ノ為メニ他ノ土地ニ負担ヲ加フルコトハ此土地カ共有地ノ所有者ニ属スルコトニ因リテ除却セラルルコトナシ 第九百二十二条 土地ノ共有者カ合意ニ依リテ管理及ヒ利用ノ方法ヲ定メ又ハ共有関係ノ廃止ヲ請求スル権利ヲ一時若クハ永久ニ除却シ或ハ之ニ関シテ通知期間ヲ定メタル場合ニ於テ此合意ハ各持分ノ負担トシテ土地台帳ニ登記ヲ受ケタルトキニノミ特別承継人ニ対シテ其効ヲ有ス 第六百九十一条及ヒ第六百九十二条ニ掲クル請求権ハ土地台帳ニ登記ヲ受ケタルトキニノミ共有者ノ特別承継人ニ対シテ其効ヲ有ス 第九百二十三条 各共有者ハ第三者ニ対シ所有権ニ本ツク請求権ヲ共有物ノ全体ニ付テ行フコトヲ得然レトモ物ノ引渡ノ請求権ニ付テハ第三百七十四条ノ規定ニ従フコトヲ要ス 第四章 地上権 第九百二十四条 土地ハ或人ニ地上又ハ地下ニ工作物ヲ所有シテ之ヲ譲渡シ又ハ相続シ得ル権利ヲ与フルコトニ依リテ之ニ負担ヲ加フルコトヲ得(地上権) 地上権ハ工作物ノ使用ニ利益ヲ与フル場合ニ於テハ工作物ニ取リテ必要ナラサル土地ノ部分ニモ及ホスコトヲ得 地上権ハ建物ノ一部殊ニ其一階ニ之ヲ限ルコトヲ得ス 第九百二十五条 地上権ノ設定ニ付キ第七百九十四条ノ規定ニ依リテ必要ナル所有者及ヒ取得者ノ合意ハ土地台帳取扱吏、裁判所若クハ公証人ノ前ニ於テ之ヲ表示スルコトヲ要ス 第九百二十六条 地上権ノ消滅ニ付キ第七百九十六条ノ規定ニ依リテ必要ナル権利者ノ意思表示ハ土地台帳取扱吏ノ前ニ之ヲ為スコトヲ要ス 第九百二十七条 地上権ハ工作物ノ滅失ニ因リテ消滅セス 第九百二十八条 土地ニ関スル規定ハ地上権ニモ之ヲ適用ス 所有権ノ取得及ヒ所有権ニ本ツク請求権ニ関スル規定ハ地上権ニ付キ之ヲ准用ス 第五章 役権 第一節 地役権 第九百二十九条 土地ハ他ノ土地ノ時々ノ所有者カ特定セル関係ニ於テ之ヲ使用シ又ハ其上ニ或行為ヲ為スコトカ禁セラレ若クハ承役地ノ所有権ニ本ツキ他ノ土地ニ対シテ生スル権利ノ行使カ除却セラルルコトニ依リテ之ニ負担ヲ加フルコトヲ得(地役権) 第九百三十条 地役権ハ其負担カ権利者ノ土地ノ使用ニ付テ利益ヲ与フルコトニ依リテ成立ス又地役権ノ内容ハ此範囲ヲ越ユルコトヲ得ス 第九百三十一条 地役権ヲ行使スルニハ承役地ノ所有者ノ利益ヲ庇保スルコトヲ要ス又地役権者カ権利行使ノ為メ承役地ノ上ニ有スル設置物ハ土地所有者ノ利益ニ必要ナル限ハ整正タル状体ニ於テ之ヲ保存スルコトヲ要ス 第九百三十二条 承役地ノ上ニ在ル設置物カ地役権ノ行使ニ必要ナル場合ニ於テハ土地ノ所有者ガ地役権者ノ利益ニ必要ナル限ハ設置物ヲ保存スヘキコトヲ定ムルコトヲ得設置物ノ共同使用権カ土地所有者ニ属スルトキハ地役権者カ所有者ノ使用ニ必要ナル限ハ設置物ヲ保存スヘキコトヲ定ムルコトヲ得 前項ノ保存義務ヲ定メタル場合ニ於テ此義務ニ付テハ土地ノ定期負担ニ関スル規定ヲ准用ス 第九百三十三条 地役権カ承役地ノ工作物ノ上ニ或工作物ヲ保持スル権利ニ存スル場合ニ於テ別段ノ定ナキトキハ承役地ノ所有者ハ地役権者ノ利益ニ必要ナル限ハ自己ノ工作物ヲ保存スルコトヲ要ス又第九百三十二条第二項ノ規定ハ本条ノ保存義務ニ付テ之ヲ適用ス 第九百三十四条 地役権ノ時々ノ行使カ承役地ノ一部ニ限ラレタル場合ニ於テ従来ノ場所ニ於ケル権利ノ行使ハ特ニ土地ノ所有者ニ困難ヲ与フルトキハ所有者ハ地役権者ニ取リテ適当ナル他ノ場所ニ其行使ヲ移転スルコトヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テ移転ノ費用ハ所有者之ヲ負担シ且前払ヲ為スコトヲ要ス地役権ヲ行使スヘキ土地ノ部分カ法律行為ニ依リテ定メラレタルトキ亦同シ 前項ノ移転請求ノ権利ハ法律行為ニ依リテ之ヲ除却シ又ハ制限スルコトヲ得ス 第九百三十五条 地役権カ同一ノ土地ニ於ケル他ノ地役権又ハ其他ノ収益権ト競合スルコトニ因リテ互ニ行使スルコトヲ得ス又ハ完全ニ行使スルコトヲ得サル場合ニ於テ総テノ権利カ同等ノ順位ヲ有スルトキハ各権利者ハ相当ノ見積ニ従ヒ総権利者ノ利益ニ適スル権利行使ノ規則ヲ定ムルコトヲ請求スルコトヲ得 第九百三十六条 要役地カ分割セラルルトキハ地役権ハ其各部ノ為メニ存続ス然レトモ疑ハシキ場合ニ於テハ承役地ノ所有者ニ困難ヲ加フルコトナキ方法ニ於テノミ権利ヲ行使スルコトヲ得又地役権ハ分割セラレタル土地ノ一部ニノミ利益ヲ与フルニ足ルトキハ他ノ部分ニ関スル地役権ハ消滅ス 第九百三十七条 地役権ノ行使カ承役地ノ一定ノ部分ニ限ラレタル場合ニ於テ承役地カ分割セラルルトキハ権利行使ノ範囲外ニ在ル部分ハ地役ヲ免カル 第九百三十八条 地役権カ制限セラルルトキハ第九百十条ニ掲クル権利ハ地役権者ニ属ス 第九百三十九条 土地ノ占有者カ其所有者ノ為メニ土地台帳ニ登記済トナリタル地役権ノ行使ヲ妨ケラルル場合ニ於テ妨害ヲ加フル前ノ一年内ニ一度タリトモ地役権ヲ行使シタルトキハ占有保護ニ関スル規定ヲ准用ス 第二節 用益権 第一款 物ノ用益権 第九百四十条 物ハ自己ノ為メニ之ニ負担ヲ加ヘラレタル者カ此物ノ用益ヲ収取スル権ヲ有スヘキ方法ニ依リテ之ニ負担ヲ加フルコトヲ得(用益権) 用益権ハ特別ノ収益ヲ除却スルコトニ依リテ之ヲ制限スルコトヲ得ス 第九百四十二条 動産上ニ用益権ヲ設定スルニ付テハ所有者カ其物ヲ取得者ニ引渡シ且此者ニ用益権カ属スヘキコトヲ双方ニ於テ合意スルコトヲ要ス第八百四十二条第二段及ヒ第八百四十三条乃至第八百五十条ノ規定ハ之ヲ准用ス又第八百四十九条ノ場合ニ於テハ用益権カ第三者ノ権利ニ先ツ効力ノミヲ生ス 第九百四十三条 動産ノ用益権ハ時効ニ因リテ之ヲ取得スルコトヲ得此場合ニ於テハ時効ニ因ル所有権取得ニ関スル規定ヲ准用ス 第九百四十四条 用益権者ハ自費ヲ以テ鑑定人ヲシテ物ノ状体ヲ確定セシムルコトヲ得所有者モ亦此権ヲ有ス 第九百四十五条 包括財産ノ用益権ニ付テハ用益権者及ビ所有者ハ共同シテ財産目録ヲ調製スル義務ヲ負フ此目録ハ之ヲ調製シタル日附ヲ具ヘ双方之ニ署名スルコトヲ要ス又双方共ニ其署名カ公ニ証明セラルルコトヲ請求シ若クハ目録カ管轄官庁又ハ当該官吏ニ依リテ調製セラルルコトヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テ調製又ハ証明ノ費用ハ之ヲ請求シタル者ノ負担ニ帰シ且之ヲ前払スルコトヲ要ス 第九百四十六条 用益権者ハ目的物ヲ占有スル権ヲ有ス 収益権ノ行使ニ付テハ物ノ従来ノ経済上ノ状体ヲ保存シ適当ナル経済法ニ従フテ処置スルコトヲ要ス 第九百四十七条 用益権者ハ物ヲ変形シ又ハ甚シク之ヲ変更スル権ヲ有セス 土地ノ用益権者ハ石、砂、粘土、肥土、泥炭其他ノ土地ノ成分ヲ収取スルニ当リ甚シク土地ノ経済上ノ状体ヲ変更セサル限ハ新ニ設置物ヲ作ルコトヲ得 第九百四十八条 森林カ用益権ノ目的物ナルトキハ所有者及ヒ用益権者ハ経済計画ニ依リテ用益ノ範囲及ヒ其経済上ノ取扱法ヲ確定スベキ請求ヲ為スコトヲ得又著シク事情ノ変更ヲ生ジタルトキハ各当事者ハ経済計画ノ適当ナル変更ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ場合ニ於テ生スル費用ハ当事者平分シテ之ヲ負担ス 第九百四十九条 用益権者ハ特別ノ事情ノ発生ニ因リテ已ムヲ得ズ適当ナル経済法ニ反シ又ハ之ニ因リテ過度ニ収取シタル果実ノ所有権ヲ取得ス此場合ニ於テ用益権者ハ過失ニ付テノ責任ノ外用益権消滅ノ時ニ果実カ分離ノ時ニ有シタル価格ヲ所有者ニ賠償スル義務及ヒ其履行ニ付キ担保ヲ供スル義務ヲ負フ又所有者並ニ用益権者ハ適当ナル経済ニ相当スル限ハ賠償額ヲ物ノ元状回復ニ用ユベキ請求ヲ為スコトヲ得 賠償額ヲ物ノ元状回復ニ用ユベキコトカ請求セラレサルトキハ賠償ノ義務ハ前項ノ場合ニ於テ不適当又ハ過度ニ果実ヲ収取スルコトニ因リテ用益権者ニ属スル収益カ制限セラレタル限度ニ於テ消滅ス 第九百五十条 用益権者ノ権利ハ物ノ中ニ発見セラレタル埋蔵物ニ付テノ所有者ノ部分ニ其効力ヲ及ホサス 第九百五十一条 用益権者ハ物ノ経済上ノ成分ニ従フテ其保存ニ注意スルコトヲ要ス又修繕及ヒ改作ハ物ノ通常ノ保持ニ属スル限度ニ於テノミ之ヲ加フルコトヲ得 第九百五十二条 物カ非常ノ修繕又ハ改作ヲ要シ或ハ減失毀損セラレ若クハ第三者カ其物ニ付テ権利ヲ主張スルトキハ用益権者ハ遅滞ナク之ヲ所有者ニ通知スルコトヲ要ス 第九百五十三条 土地ノ用益権者ハ非常ノ修繕又ハ改作ヲ要スル場合ニ於テ自ラ之ヲ為ストキハ之レカ為メニ適当ナル経済ノ範囲内ニ於テ自巳ニ属スベキ果実以外ノ土地ノ成分ヲ使用スルコトヲ得 第九百五十四条 用益権者カ必要ナル修繕又ハ改作ヲ自ラ為サヾルトキハ所有者ニ之ヲ許スコトヲ要ス又土地ノ用益権者ニ対シ所有者ハ第九百五十二条ニ掲クル土地ノ成分ヲ修繕又ハ改作ニ使用スルコトヲ許スベキ請求ヲ為スコトヲ得 第九百五十五条 用益権者ハ用益権ノ存続スル間ハ適当ナル経済ニ相当スル場合ニ於テ火災其他ノ危険ニ対シ自費ヲ以テ物ヲ保険ニ附スルコトヲ得此場合ニ於テ保険ハ所有者ナキトキハ之レヨリ生ズル請求権ハ主張スルコトヲ得ザルモノト見做ス 物カ保険ニ附セラレタルトキハ之ニ対スル支払ハ用益権者カ保険ニ附スヘキ義務ヲ負フ限ハ用益権ノ存続スル間其負担ニ帰スルモノトス 第九百五十六条 保険者支払ノ義務ヲ生セシムル危険カ発生スルトキハ被保険額請求権ノ用益権ハ利息ニ本ツク債権ノ用益権ニ関スル規定ニ従ヒ用益権権者ニ属ス 所有者並ニ用益権者ハ適当ナル経済ニ相当スル限ハ被保険額ヲ物ノ元状回復又ハ其補充ニ使用スヘキ請求ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テ所有者ハ自ラ使用ヲ注意シ又ハ之ヲ用益権者ニ委スルコトヲ得 第九百五十七条 用益権者ハ所有者ニ対シ用益権ノ存続スル間ハ物ノ元価ニ附加セラレタリト認ムヘキ非常ノ負担ヲ除ク外総テ此物ニ関スル公ノ負担並ニ用益権設立ノ時既ニ附加セラレタル私法上ノ負担特ニ抵当債権又ハ土地債務ノ利息ヲ支払フヘキ義務ヲ負フ 第九百五十八条 土地ト共ニ其附属ノ器具目録カ用益権ノ目的物タルトキハ用益権者ハ適当ナル経済ノ範囲内ニ於テ各器具ニ付テ処分スルコトヲ得又通常ノ損廃並ニ適当ナル経済法ニ従フテ取除カレタル器具ニ対シテ補充ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テ用益権者カ備ヘタル器具ハ器具目録ニ合セラルルコトニ因リテ目録所有者ニ帰ス 用益権者ハ器具目録ヲ評価シテ用益権消滅ノ時ニ此評価ニ本ツク之ヲ返還スヘキ義務ヲ負ヒタルトキハ第五百二十八条及ヒ第五百二十九条ノ規定ヲ准用ス 第九百五十九条 用益権者カ物ニ費用ヲ加ヘタル場合ニ於テ所有者ノ賠償ノ義務ハ事務管理ニ関スル規定ニ従フテ之ヲ定ム費シタル金額ノ利息ハ用益権ノ存続スル間之ヲ請求スルコトヲ得ス又設置物ノ取払権ハ第四百九十一条第二項ノ規定ニ依リテ賃借人カ有スルト同一ノ範囲ニ於テ用益権者ニ属ス 第九百六十条 用益権者ハ用益権ノ適当ナル行使ニ因リテ生シタル物ノ変更又ハ毀損ニ付キ其責ヲ任セス 第九百六十一条 用益権者ノ処置カ所有者ノ権利ヲ害スル虞アルトキハ所有者ハ担保ノ提供ヲ請求スルコトヲ得又其申請ニ因リ裁判所ハ担保ノ提供ニ付キ期間ヲ定ムルコトヲ得 用益権者カ指定セラレタル期間内ニ担保ヲ供セサルトキハ所有者ハ担保ニ代フルニ用益権者ノ計算ヲ以テ裁判所カ撰定スベキ管理人ニ用益権ノ行使ヲ引渡スヘキ請求ヲ為スコトヲ得管理人ハ土地ノ強制管理ノ為メニ撰定セラレタル管理人ノ如ク裁判所ノ監督ニ属ス又所有者ハ此管理人タルコトヲ得 前項ノ管理ハ担保カ後ニ至リテ提供セラルヽトキハ之ヲ止ムルコトヲ要ス 第九百六十二条 用益権者カ権限以外ニ物ヲ使用スル場合ニ於テ所有者ノ制止ニモ拘ラス尚ホ之ヲ続行スルトキハ所有者ハ其停止ヲ訴求スルコトヲ得 第九百六十三条 用益権者カ著シク所有者ノ権利ヲ害シ且所有者カ之ヲ止ムルニモ拘ラス加害ノ処置ヲ続行スルトキハ所有者ハ第九百六十一条第二項ノ規定ニ従ヒ管理ノ命令ヲ請求スルコトヲ得 第九百六十四条 用益権者ハ用益権カ消滅スルトハ物ヲ所有者ニ返還スル義務ヲ負フ 田畑ノ用益権ニ付テハ第五百三十一条及ビ第五百三十二条ノ規定ヲ准用シ荘園ノ用益権ニ付テハ第五百三十三条ノ規定ヲ准用ス 第九百六十五条 土地ノ用益権者カ用益権ノ存続期間ヲ越ヘテ土地ヲ賃貸シ又ハ小作ニ附シタル場合ニ於テ用益権カ消滅スルトキハ譲渡ノ場合ニ適用スル第五百十二条第五百十三条第五百十四条第一段第五百十五条乃至第五百十七条及ヒ第五百二十条ノ規定ヲ準用ス 所有者ハ法律ニ定ムル告知期間ニ従フテ賃貸又ハ小作ノ関係ヲ解除スルコトヲ告知スルコトヲ有ス賃借人又ハ小作人ハ相当ノ期間ヲ定メテ所有者ニ対シ告知権ヲ行フヤ否ヤヲ表示スヘキ催告ヲ為スコトヲ得此期間内ニ所有者ノ告知ナキトキハ告知権ハ除却セラレ又用益権カ用益権者ノ放棄ニ因リテ消滅シタルトキハ所有者ハ放棄ニ因ラスシテ用益権カ消滅スヘキ時ニ至リ告知ヲ為スコトヲ得 第九百六十六条 物ノ変更又ハ毀損ニ本ツク所有者ノ賠償請求権並ニ費用賠償又ハ設置物取払ノ許諾ニ関スル用益権者ノ請求権ハ六ケ月ノ時効ニ因リテ消滅ス此場合ニ於テ時効ハ第五百条第二段ノ規定ニ従フテ進行ヲ始ム 第九百六十七条 用益権者ト所有者トノ関係ニ於テハ用益権者ノ為メニ設定者ヲ以テ所有者ト見做ス但用益権者カ所有者ニアラサルコトヲ知ルトキハ此限ニ在ラス 第九百六十八条 用益権ハ之ヲ譲渡スコトヲ得ス然レトモ行使ハ之ヲ他人ニ委スルコトヲ得 第九百六十九条 用益権カ他ノ用益権又ハ其他ノ収益権ト競合シテ互ニ行使ヲ妨ケ又ハ完全ニ行使スルコトヲ得サル場合ニ於テ総テノ権利カ同等ノ順位ヲ有スルトキハ第九百三十五条ノ規定ヲ適用ス 第九百七十条 用益権ハ用益権者ノ死亡ニ因リテ消滅ス又用益権カ法人ニ属スルトキハ之ト共ニ消滅ス 第九百七十一条 土地ノ用益権ノ消滅カ法律行為ニ本ツクトキハ其消滅ハ疑ハシキ場合ニ於テハ従物ノ用益権ニ及ブモノトス 第九百七十二条 動産ノ用益権ト所有権ハ同一ノ人ニ帰スルトキハ用益権ハ消滅ス 第九百七十三条 法律行為ニ本ツク動産ノ用益権ハ用益権者カ所有者又ハ設定者ニ対シ用益権ヲ放棄スル旨ヲ表示スルコトニ因リテ消滅ス 第九百七十四条 用益権者ノ権利カ制限セラルル場合ニ於テ用益権者ノ請求権ニ付テハ所有権ニ本ツク請求権ニ関スル規定ヲ准用ス 第九百七十五条 用益権カ共有者ノ持分ニ存スルトキハ用益権者ハ物ノ管理又ハ使用ノ方法ニ付キ共有ノ関係ヨリ生スル共有者ノ権利ヲ行使ス共有ノ関係ヲ解除スルニハ用益権者及ヒ共有者カ共同ニ之ヲ請求スルコトヲ要ス又此関係カ消滅スルトキハ用益権者ハ共有者ノ持分ニ代ヘラレタル物ノ用益権ヲ有ス 第九百七十六条 消費物カ用益権ノ目的物タルトキハ用益権者ハ其物ノ所有権ヲ取得ス此場合ニ於テ用益権カ消滅スルトキハ設定者ニ対シ物カ設立ノ時ニ有シタル価格ヲ賠償スルコトヲ要ス設定者並ニ用益権者ハ自費ヲ以テ物ノ価格ヲ鑑定人ニ評定セシムルコトヲ得 設定者ハ価格賠償ノ請求権ヲ害セラルル虞アルトキハ担保ノ提供ヲ請求スルコトヲ得 第二款 権利ノ用益権 第九百七十七条 用益権ハ又権利ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得 権利ノ用益権ニ付テハ第九百七十八条乃至第九百九十三条ノ規定ニ因リテ反対ヲ生セサル限ハ物ノ用益権ニ関スル規定ヲ准用ス 第九百七十八条 権利ノ用益権ハ権利譲渡ニ関スル規定ニ従フテ之ヲ設定ス 譲渡スコトヲ得サル権利ニ付テハ用益権ヲ設定スルコトヲ得ス 第九百七十九条 給付ヲ請求スルコトヲ得ル権利カ用益権ノ目的タルトキハ用益権者ト義務者トノ法律関係ニ付テハ権利譲渡ノ場合ニ於テ取得者ト義務者トノ法律関係ニ関スル規定ヲ准用ス 第九百八十条 用益権ヲ設定セラレタル権利ハ用益権者ノ許諾ヲ得タル法律行為ニ因リテノミ之ヲ消滅セシムルコトヲ得此場合ニ於テ許諾ハ第七百九十七条第三段ノ規定ヲ適用スルコトヲ得サル限ハ権利者ニ対シテ之ヲ表示スルコトヲ要ス又此表示ハ取消スコトヲ得ス 権利変更ノ場合ニ於テ之ニ因リテ用益権カ制限セラルルトキハ前項ノ規定ヲ適用ス 第九百八十一条 権利ノ用益権ノ消滅ニ付テハ用益権ヲ設定セラレタル権利カ動産上ノ権利ニアラサルトキト雖モ第九百七十二条及ヒ第九百七十三条ノ規定ヲ准用ス 第九百八十二条 年金、割賦又ハ之ニ類似セル権利ニ本ツキ請求スルコトヲ得ル各別ノ給付ハ此権利ノ用益権者ニ属ス 第九百八十三条 債権ノ用益権者ハ債権ヲ取立テ且満期カ債権者ノ告知ニ因リテ生スヘキトキハ其告知ヲ為ス権ヲ有ス此場合ニ於テ用益権者ハ適当ナル取立ヲ為スコトニ注意スルコトヲ要ス又債権ニ関シテ其他ノ処分ヲ為スコトヲ得ス 第九百八十四条 債務者カ用益権者ニ給付ヲ為シタルトキハ債権者ハ其物ヲ取得シ用益権者ハ之ニ付テ用益権ヲ取得ス 消費物カ給付セラルヽトキハ用益権者ハ所有権ヲ取得ス此場合ニ於テハ第九百七十六条ノ規定ヲ准用ス 第九百八十五条 利息ニ本ツク債権カ用益権ノ目的タルトキハ第九百八十六条乃至第九百八八十条ノ規定ヲ適用ス 第九百八十六条 債務者ハ用益権者及ヒ債権者ニ対シ共同ニ元金ノ支払ヲ為スコトヲ要ス用益権者又ハ債権者ハ双方ヘ共同ニ支払ハレ又ハ支払ノ代ハリニ双方ノ為メニ供托スヘキコトヲ請求スルコトヲ得 用益権者及ヒ債権者ハ共同ニ告知ヲ為スコトヲ要ス又債務者ノ告知ハ用益権者及ヒ債権者ニ対シ之ヲ表示シタルトキニノミ有効トス 第九百八十七条 債権カ満期トナリタルトキハ用益権者及ヒ債権者ハ共同シテ其取立ヲ為ス義務ヲ負フ満期ニ付キ告知ヲ要スル場合ニ於テ担保ヲ害スル虞アルカ為メニ適当ナル財産管理ノ規則ニ従ヒ権利ノ取立ヲ命セラレタルトキハ用益権者及ヒ債権者ハ双方ヨリ共同シテ告知ヲ為スヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得 第九百八十八条 用益権者及ヒ債権者ハ取立タル元金ヲ後見保証金ノ預方ニ関スル規定ニ従ヒ共同シテ利息付ニテ預ケ置キ同時ニ用益権者ノ為メニ用益権ヲ設定スル義務ヲ負フ預方ノ方法ハ用益権者之ヲ定ム 第九百八十九条 債権ノ用益権ニ関スル規定ハ土地債務及ビ定期土地債務ノ用益権ニ付キ之ヲ適用ス 第九百九十条 無記名証券又ハ無記名株式カ用益権ノ目的タルトキハ証券及ヒ之ニ属スル更新証書ノ占有ハ用益権者及ヒ所有者ニ共同ニ属スルモノトス又証券ニ属スル利息、定期貸賃及ヒ利益配当ノ証書ノ占有ハ用益権者ニ属ス 前項ノ場合ニ於テ用益権ハ証券譲渡ノ代ハリニ共同占有テ引渡スコトニ依リテ之ヲ設定スルコトヲ得 第九百九十一条 証券ノ保管ノ方法ニ付キ用益権者ト所有者ト一致セサルトキハ更新証書ト共ニ証券ヲ供托所ニ供托シ又ハ用益権者ノ請求ニ因リテ帝国銀行ニ供托スルコトヲ要ス此場合ニ於テ証劵引出ノ請求権ハ用益権者ト所有者ハ共同ニ主張スルニアラサレハ之ヲ行フコトヲ得ス 第九百九十二条 証券ノ用益権者及ヒ所有者ハ共同シテ満期トナリタル元金ヲ取立テ利息、定期賃貸又ハ利益配当ノ新証券ニ依リ其他適当ナル財産管理ニ本ツク処置ヲ行フコトヲ要ス 証券払渡ノ場合ニ於テハ第九百八十八条ノ規定ヲ適用ス又払渡ノ時ニ支払ハレタル利益ハ元金ノ一部ト見做ス 第九百九十三条 無記名証券又ハ無記名株式カ消費物トシテ用益権ノ目的タルトキハ第九百七十六条ノ規定ニ従フ 第三款 財産ノ用益権 第九百九十四条 財産全体ノ用益権ハ用益権者カ目的物ノ各個ニ付キ用益権ヲ取得スヘキ方法ニ依リテノミ之ヲ設定スルコトヲ得此場合ニ於テハ第九百九十五条乃至第九百九十七条ノ規定ヲ適用ス 第九百九十五条 用益権設定者ノ債権者ハ其債権カ用益権設定前ニ成立シタルトキハ用益権ノ存在ニ関セズ其目的物ニ付キ自己ノ弁済ヲ請求スルコトヲ得用益権者カ消費物ノ所有権ヲ取得シタル場合ニ於テハ価格賠償ニ対スル設定者ノ請求権ハ目的物ニ代ハリ用益権者ハ債権者ニ対シ直ニ価格ヲ賠償スル義務ヲ負フ 第九百九十六条 用益権設定者ハ第九百九十五条ニ掲グル種類ノ債権カ満期トナリタルトキハ用益権者ニ対シ債務ノ弁済ニ必要ナル物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テ物ノ撰択権ハ設定者ニ属ス但設定者ハ弁済ニ最モ適当ナル物ヲ撰フコトヲ要ス又用益権者ニ対シ返還セラレタル物ノ及フ限ハ之ヲ以テ債務ヲ弁済スル義務ヲ負フ 用益権者ハ債務ノ目的物ヲ給付スルコトニ因リテ前項ノ義務ヲ履行スルコトヲ得此物カ用益権ノ目的タル財産中ニ存セサル場合ニ於テ用益権設定者カ其債務ヲ弁済セサル虞アルトキハ用益権者ハ之ヲ弁済スル為メ財産ニ属スル物ヲ譲渡スコトヲ得但弁済ニ最モ適当ナル物ヲ撰ブコトヲ要ス又消費物ノ価格ヲ賠償スヘキ義務ヲ負フトキハ用益権者ハ右ノ譲渡ヲ為スコトヲ得ス 第九百九十七条 用益権設定者ノ債権者ハ用益権者ニ対シ用益権ノ存続スル間ハ用益権設定ノ時既ニ利息附ナリシ債務ノ利息並ニ適当ナル財産管理ニ依リテ其収入ヲ支払フコトヲ得ベキ他ノ定期復帰スル給付ニ対スル請求権ヲ主張スルコトヲ得此場合ニ於ケル用益権者ノ責任ハ設定者及ビ用益権者間ノ合意ニ因リテ之ヲ除却シ又ハ制限スルコトヲ得ス 用益権者ハ設定者ニ対シ其債権者ノ請求ヲ弁済スル義務ヲ負フ用益権者カ此義務ノ履行ニ付キ遅滞ニ附セラレタルトキニ限リ設定者ハ債務弁済ノ為メ物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 第九百九十八条 第九百九十四条乃至第九百九十七条ノ規定ハ遺産ノ用益権ニ付キ之ヲ准用ス 第三節 限定役権 第九百九十九条 土地ハ自己ノ利益ノ為メニ之ニ負担ヲ加ヘラレタル者カ一定ノ関係ニ於テ使用シ又ハ其他地役権ノ内容トシテ許サレタル権利ヲ行使スルコトヲ得ヘキ方法ニ依リテ之ニ負担ヲ加フルコトヲ得(限定対人役権) 前項ノ場合ニ於テハ第九百三十一条乃至第九百三十五条第九百三十七条乃至第九百三十九条及ヒ第九百七十条ノ規定ヲ准用ス 第千条 限定役権ノ範囲ハ疑ハシキ場合ニ於テハ権利者一身ノ需要ニ依リテ之ヲ定ム 第千〇〇一条 限定役権ハ之ヲ譲渡スコトヲ得ス又別段ノ定ナキトキハ其行使ヲ他人ニ委スルコトヲ許サス 第千〇〇二条 所有者ヲ除却シテ其建物又ハ建物ノ一部ヲ住所ニ使用スヘキ権利ハ限定役権トシテ之ヲ設定スルコトヲ得 此権利ニ付テハ用益権ニ関スル第九百四十一条、第九百四十四条、第九百四十六条、第九百四十七条第一項第九百五十一条、第九百五十二条、第九百五十四条第一段、第九百五十九条、第九百六十条、第九百六十六条及ヒ第九百七十一条ノ規定ヲ准用ス 前項ノ場合ニ於テ権利者ハ其家族、身分相当ノ僕婢及ヒ看護ニ必要ナル者ヲ同居セシムルコトヲ得 本条ノ権利カ建物ノ一部ニ限定セラレタルトキハ権利者ハ居住者ノ共同使用ニ定メラレタル設置物ヲ共用スルコトヲ得 第六章 先買権 第千〇〇三条 土地ハ其所有者ニ対シ或人ニ其先買権ヲ附与スルコトニ依リテ之ニ負担ヲ加フルコトヲ得 前項ノ先買権ハ他ノ土地ノ時々ノ所有者ノ為メニ之ヲ設定スルコトヲ得 第千〇〇四条 土地ノ一部ニ付テハ此部分カ共有者ノ持分タルトキニノミ先買権ヲ設定スルコトヲ得 第千〇〇五条 先買権ハ土地ト共ニ売却セラレタル従物ニ及ホスコトヲ得疑ハシキ場合ニ於テハ先買権ハ此従物ニ及フモノト見做ス 第千〇〇六条 先買権ノ行使ハ設定当時ノ所有者又ハ其相続人カ土地ヲ売却スル場合ニ限ルコトヲ得又其他総テノ売却ノ場合ニ対シテモ之ヲ設定スルコトヲ得 第千〇〇七条 先買権者ト其義務者ノ法律関係ハ第四百三十九条乃至第四百四十七条ノ規定ニ依リテ之ヲ定ム先買権ハ破産管財人カ競売ノ方法ニ依ラスシテ土地ヲ売却シタル場合ニ於テモ之ヲ行フコトヲ得 先買権ハ第三者ニ対シ権利ノ行使ニ本ツク所有権引渡ノ請求権ヲ確保スヘキ予告ノ効力ヲ有ス 第千〇〇八条 土地カ第三者ノ所有ニ帰スルトキハ第三者ハ義務者ト同一ノ方法ニ依リ先買権者ニ対シ第四百四十四条ニ定ムル効力ヲ以テ売買契約ノ内容ヲ通知スルコトヲ得 義務者ハ先買権カ行使セラレ又ハ除却セラレタルトキハ直チニ之ヲ新所有者ニ通知スルコトヲ要ス 第千〇〇九条 新所有者カ買主又ハ其承継人ナルトキハ義務者ト買主ノ間ニ取極メタル正当ノ代価ノ補償ヲ受クル迄ハ先買権者カ所有者トシテ其登記ヲ為スコトノ同意及ヒ土地ノ引渡ヲ拒絶スルコトヲ得又先買権者カ所有者トシテ其登記ヲ得タルトキハ前所有者ハ此者ニ対シ土地ノ引渡ニ付キ正当ノ代価ノ補償ヲ請求スルコトヲ得 第千〇十条 先買権者ハ第千〇〇九条ノ規定ニ因リテ買主又ハ其承継人ニ代価ヲ補償スルコトヲ要スル限ハ先買ニ付キ負担スル代価支払ノ義務ヲ免ル 第千〇十一条 買主又ハ其承継人カ先買権ノ対抗ニ因リテ所有権ヲ失ヒタル場合ニ於テハ買主ハ自己ノ負担シタル代価カ未タ支払ハレサル限度ニ於テ其義務ヲ免カレ既ニ支払フタル代価ハ其返還ヲ請求スルコトヲ得ス 第千〇十二条 或土地ノ時々ノ所有者ノ為メニ存スル先買権ハ此土地ノ所有権ト分離スルコトヲ得ス 定マリタル人ノ為メニ存スル先買権ハ或土地ノ所有権ニ結合セシムルコトヲ得ス 第千〇十三条 先買権者カ知レサル場合ニ於テ抵当権者ヲ除却スル為メ第千〇七十七条ニ定ムル要件カ存スルトキハ公示催告ノ手続ニ依リテ先買権者ヲ除却スルコトヲ得此場合ニ於テ除却ノ判決アリタルトキハ先買権ハ消滅ス 或土地ノ時々ノ所有者ノ為メニ存スル先買権ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セス 第七章 定期負担 第千〇十四条 或人ノ為メニ土地ヨリ定期復帰スル給付ヲ此者ニ与フベキ方法ニ依リテ土地ニ負担ヲ加フルコトヲ得(定期負担) 定期負担ハ他ノ土地ノ時々ノ所有者ノ為メニ之ヲ設定スルコトヲ得 第千〇十五条 土地ノ一部ハ共有者ノ持分タル場合ニ於テノミ之ニ定期負担ヲ加フルコトヲ得 第千〇十六条 各給付ニ関シテハ抵当利息ニ付キテ適用スヘキ規定ヲ准用ス 第千〇十七条 所有者ハ其所有権ノ存続スル間ニ満期トナリタル給付ニ付キ対人ノ義務ヲ負フ但別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス 土地カ分タレタルトキハ各部ノ所有者ハ共同債務者トシテ其義務ヲ負フ 第千〇十八条 或土地ノ時々ノ所有者ノ為メニ存スル定期負担ハ此土地ノ所有権ト分離スルコトヲ得ス 第千〇十九条 権利者ノ土地カ分タルルトキハ定期負担ハ其各部ニ対シテ存続ス給付カ分割シ得ヘキトキハ各所有者ノ割前ハ土地ノ持分ノ大サニ従フテ之ヲ定メ給付カ分割シ得サルトキハ第三百七十四条ノ規定ヲ適用ス又権利ノ行使ハ疑ハシキ場合ニ於テハ負担ヲ加ヘラレタル土地ノ所有者ヲ苦シメサル方法ニ依リテノミ之ヲ為スコトヲ得 権利者ハ権利カ土地ノ一部ニ対シテノミ存スヘキコトヲ定ムルコトヲ得此場合ニ於テハ権利者ハ登記所ニ対シテ其意思ヲ表示シ且之ヲ土地台帳ニ登記スルコトヲ要ス第七百九十七条及ヒ第七百九十九条ノ規定ハ之ヲ准用ス又権利者カ右ノ定ヲ為サスシテ土地ノ一部ヲ譲渡シタルトキハ定期負担ハ尚ホ自己ノ有スル部分ニ対シテ存ス 定期負担カ土地ノ一部ニ利益ヲ与フルニ過キサルトキハ此部分ニ対シテノミ存在ス 第千〇二十条 定マリタル人ノ為メニ存スル定期負担ハ土地ノ所有権ト之ヲ結合セシムルコトヲ得ス 各給付ニ対スル請求権カ譲渡スコトヲ得サルトキハ定期負担ニ対スル権利ハ之ヲ譲渡シ又ハ之ニ負担ヲ加フルコトヲ得ス 第千〇二十一条 権利者カ知レサル場合ニ於テ其権利ト共ニ之ヲ除却スルコトニ関シテハ第千〇十三条ノ規定ヲ准用ス 第八章 抵当、土地債務、定期土地債務 第一節 抵当 第千〇二十二条 土地ハ或人ノ為メニ此者ニ属スル債権ヲ弁済スルニ付キ一定ノ金額ヲ此土地ヨリ支払フヘキ方法ニ依リテ之ニ負担ヲ加フルコトヲ得(抵当) 抵当ハ将来又ハ条件附ノ債権ニ対シテ之ヲ設定スルコトヲ得 第千〇二十三条 土地ノ一部カ共有者ノ持分ヲ為ストキニノミ之ニ付キ抵当ヲ設定スルコトヲ得 第千〇二十四条 抵当ヲ登記スルトキハ債権者及ヒ債権ノ金額並ニ利息付債権ニ付テハ其利率及ヒ附従ノ給付ヲ支払フベキトキハ其金額ヲ土地台帳ニ指定スルコトヲ要ス其他債権ノ詳記ハ登記ノ許諾ニ依リテ之ヲ為スコトヲ得 信用貸借所ノ貸金ニ対スル抵当ヲ登記スル場合ニ於テ貸附所ノ規則カ管轄官庁ニ依リテ公示セラレタルトキハ此規則ニ従ヒ利息外ニ支払フベキ附従ノ給付ヲ詳記スルニハ右ノ規則ヲ指示スルノミニテ足ル 第千〇二十五条 抵当ニ付キ抵当証書カ調製セラルルモノトス 抵当証書ノ調製ハ之ヲ除却スルコトヲ得又此除却ハ後ニ至リテモ之ヲ為スコトヲ得右ノ除却ニ付テハ債権者及ヒ所有者ノ合意並ニ土地台帳ニ登記スルコトヲ要ス又第七百九十四条第二項第七百五十七条及ヒ第七百九十九条ノ規定ハ之ヲ准用ス 抵当証書調製ノ除却ハ之ヲ取消スコトヲ得此取消ハ除却ト同一ノ方法ニ依リテ之ヲ為ス 第千〇二十六条 債権者ハ抵当証書ノ調製カ除却セラレサル限ハ土地所有者ヨリ此証書ヲ引渡サレタル時ニ抵当ヲ取得ス証書ノ引渡ニ付テハ第八百四十二条第二段及ヒ第八百四十三条乃至第八百四十五条ノ規定ヲ適用ス 債権者カ登記所ヨリ抵当証書ヲ自己ニ渡サシムル権ヲ有スベキ合意ヲ為スコトニ依リテ証書ノ引渡ニ代ユルコトヲ得 債権者カ抵当証書ヲ占有スルトキハ証書ノ引渡アリタルモノト推定ス 第千〇二十七条 土地ハ抵当ノ設定ニ因リテ又債権ノ法定利息、告知費用及ヒ土地ニ付テ弁済ヲ求ムル為ノ訴追ノ費用ニ対シテ之ヲ担保ス 第千〇二十八条 債権カ無利息ナルトキ又ハ利率カ百分ノ五以下ナルトキハ抵当ハ同順位又ハ其以下ノ権利者ノ同意ナキモ百分ノ五迄ノ利息ヲ担保スル為メ其効力ヲ土地ニ及ホスコトヲ得 支払ノ時期及ヒ場所ノ変更ニ付テモ前項ノ権利者ノ同意ヲ要セス 第千〇二十九条 土地ヨリ分離シタル産出物及ヒ其他ノ成分カ第八百六十九条乃至第八百七十二条ノ規定ニ依リテ分離ノ時ニ土地ノ所有者又ハ自主占有者以外ノ者ノ所有ニ帰セサル限ハ抵当ハ之ニ及ブモノトス土地ノ従物ニ付キ亦同シ但土地所有者ノ所有ニ帰セサリシ従物ハ此限ニ在ラス 第千〇三十条 産出物カ債権者ノ為メニ差押ヘラルル前ニ土地ヨリ持去ラルルトキハ之ニ附着スル担保ノ義務ハ消滅ス但一時ノ目的ノ為メニ持去ラレタルトキハ此限ニ在ラス又其他ノ土地ノ成分及ビ従物ハ差押前ニ譲渡サレ又ハ之ニ負担ヲ加ヘラレ且之ニ因リテ土地ヨリ持去ラレタルトキハ担保ノ義務ヲ免ル 第一項ニ掲グル物カ土地ヨリ持去フルル前ニ譲渡サレ又ハ之ニ負担ヲ加ヘラレタル場合ニ於テハ取得者ハ債権者ニ対シ抵当ニ関シテ善意ナリシコトヲ主張スルコトヲ得ス取得者カ物ヲ土地ヨリ持去リタル場合ニ於テハ其以前ニ為シタル差押ハ取得者カ物ヲ持去ル時ニ差押ニ関シテ善意ナラザリシトキニノミ此者ニ対シテ効力ヲ有ス 第千〇三十一条 土地カ賃貸又ハ小作ニ付セラルルトキハ抵当ハ貸賃又ハ小作料ニ及フ 債権カ満期後一年内ニ抵当債権者ノ為メニ差押ヘラレサルトキハ之ニ附着スル担保ノ義務ヲ免ル貸賃又ハ小作料ヲ支払フヘキ場合ニ於テハ担保義務ノ免除ハ差押ノ時ニ経過スル三ケ月及ヒ其後ノ三ケ月ヨリ以後ノ貸賃又ハ小作ニ及ハス 第千〇三十二条 貸賃又ハ小作料カ抵当債権者ノ為メニ差押ヘラルル前ニ取立ラレ又ハ之ニ付テ差押前ニ其他ノ処分ヲ為シタルトキハ此処分ハ抵当債権者ニ対シテ効力ヲ有ス此場合ニ於テ処分カ債権ヲ第三者ニ譲渡スコトニ存スルトキハ債権ニ附着セル担保ノ義務ハ消滅ス又第三者カ債権ニ付キ権利ヲ得タルトキハ此権利ノ順位ハ抵当ニ先タツモノトス 前項ノ処分ハ差押ノ時ニ経過スル三ケ月及ヒ其後ノ三ケ月ヨリ以後ノ貸賃又ハ小作料ニ関スル限ハ抵当債権者ニ対シテ無効トス 債権ヲ譲渡サスシテ土地ヲ譲渡シタルトキハ第三者ニ債権ヲ譲渡シタルニ同シ 第千〇三十三条 貸賃又ハ小作料ノ取立カ抵当債権者ニ対シ無効ナル限ハ賃借人又ハ小作人ハ賃貸人又ハ地主ニ対シテ有スル債権ヲ以テ抵当債権者ニ対シ相殺ヲ為スコトヲ得ス 第千〇三十四条 土地所有権ト定期復帰スル給付ニ付テノ権利カ結合セルトキハ抵当ハ此給付ニ対スル請求権ニ及フ此場合ニ於テハ第千〇三十一条第二項第一段第千〇三十二条第一項第三項及ヒ第千〇三十三条ノ規定ハ之ヲ准用ス又差押後三ケ月ニテ満期トナルヘキ給付ニ対スル請求権ニ付キ差押前ニ加ヘタル処分ハ抵当債権者ニ対シテ無効トス 第千〇三十五条 土地ノ所有者又ハ自主占有者カ抵当ノ目的物ヲ保険ニ付シタルトキハ抵当ハ之ニ因リテ生シタル債権ニ及フ用益権者カ第九百五十五条第一項ノ規定ニ従ヒ保険ニ付シタルトキ亦同シ 保険ニ本ツク債権ニ附着スル担保ノ義務ハ保険ニ付セラレタル物カ回復セラレ又ハ之ニ対シテ賠償ヲ与ヘラレタルトキハ消滅ス 第千〇三十六条 建物カ保険ニ付セラレタル場合ニ於テ保険者又ハ被保険者カ被保険額支払ノ義務ヲ生セシメタル災害ヲ抵当債権者ニ通知シ且此者カ通知ノ受領後一ケ月内ニ保険者ニ対シ被保険額ノ支払ニ反対セサルトキハ保険者ハ抵当債権者ニ対シ有効ニ之ヲ被保険者ニ支払フコトヲ得其他債権ノ質入ニ関スル規定ヲ適用ス然レトモ保険者ハ土地台帳ニ依リテ明ナル抵当ヲ知ラサリシコトヲ主張スルコトヲ得ス 第千〇三十七条 建物以外ノ物カ保険ニ付セラレタル場合ニ於テ保険ニ本ツク債権ニ附着スル担保ノ義務ハ第千〇三十一条第二項第一段第千〇三十二条第一項及ヒ第三項ノ規定ニ依リテ之ヲ定ム 第千〇三十八条 保険者カ保険契約ニ従ヒ被保険額ヲ保険ニ付セラレタル物ノ回復ノ為メニ支払フヘキ義務ヲ負ヒタル場合ニ於テハ此契約ニ従ヒ被保険者ニ為シタル支払ハ抵当債権者ニ対シテ有効トス 第千〇三十九条 土地カ土地台帳ニ於テ他ノ土地ニ記入セラレタルトキハ第二ノ土地ニ付テ存スル抵当ハ第一ノ土地ニ及フ 第千〇四十条 債権ニ対シ数個ノ土地ニ付テ抵当ヲ設定シタルトキハ(総抵当)各土地ハ債権ノ全部ニ対シテ担保ス債権者ハ随意ニ各土地ニ付キ債権ノ全部又ハ一部ノ弁済ヲ求ムルコトヲ得 債権者ハ債権額ヲ各土地ニ割付ケ其割付額ニ対シテノミ各土地カ担保スヘキコトヲ定ムルコトヲ得此割付ニ付テハ第七百九十六条第七百九十七条及ヒ第七百九十九条ノ規定ヲ准用ス 第千〇四十一条 土地ノ毀損ニ因リテ抵当ノ確固カ害セラルルトキハ債権者ハ所有者ニ対シ危害ノ除去ニ付キ相当ノ期間ヲ指定スルコトヲ得又此期間内ニ土地ノ修繕又ハ他ノ抵当ノ設定ニ依リテ危害カ除去セラレサルトキハ債権者ハ土地ニ付キ直ニ弁済ヲ求ムルコトヲ得然レトモ債権カ無利息ニシテ且満期ニ至ラサルトキハ債権者ハ支払ノ時ヨリ満期ニ至ルマテノ法定利息ヲ算入シテ債権額ニ達スヘキ金額ノミヲ得ルモノトス 第千〇四十二条 土地所有者又ハ第三者カ抵当ノ確固ヲ害スル土地ノ毀損ヲ生スベキ方法ヲ以テ土地ヲ取扱フトキハ債権者ハ其廃止ヲ訴フルコトヲ得 前項ノ取扱カ所有者ニ依リテ行ハルルトキハ裁判所ハ債権者ノ申請ニ依リ危害ノ除去ニ付キ必要ナル処置ヲ命スルコトヲ要ス第三者カ為シタル右同一ノ取扱又ハ其他ノ損害ニ対シ所有者ハ之ヲ除去スルニ付キ必要ナル準備ヲ怠ルニ因リテ毀損ノ虞アルトキ亦同シ 第千〇四十三条 抵当ニ属スル土地ノ従物カ毀損セラレ又ハ土地ヨリ取去ラルルトキハ第千〇四十一条及ビ第千〇四十二条ニ掲クル土地ノ毀損ニ同シ 第千〇四十四条 所有者ニ対シ他ニ土地ヲ譲渡サス又ハ他ノ負担ヲ之ニ加ヘサル義務ヲ定ムル合意ハ無効トス 第千〇四十五条 所有者ハ対人債務者カ債権ニ対シテ有スル抗弁及ヒ第七百十条ノ規定ニ依リテ保証人カ有スル抗弁ヲ抵当ニ対シテ主張スルコトヲ得然レトモ限定承認権ニ本ツキテ対人債務者ノ相続人ニ属スル抗弁ハ之ヲ主張スルコトヲ得ス 所有者カ対人債務者ニアラサルトキハ対人債務者カ抗弁ヲ放棄スルコトニ因リテ所有者ハ之ヲ失フコトナシ 第千〇四十六条 第八百〇九条乃至第八百十四条ノ規定ハ抵当ノ場合ニ於テ債権ニ関シ又第千〇四十五条ノ規定ニ依リテ所有者ニ属スル抗弁ニ関シ之ヲ准用ス 第千〇四十七条 消費貸借ニ付キ抵当ヲ設定スル場合ニ於テ抵当証書ノ調製カ除却セラレタルトキハ貸借カ存セサリシコトニ本ツク反対ノ登記ヲ為スニハ所有者カ抵当ノ登記後一ケ月ヲ経過スル前ニ登記役場ニ其申請ヲ為スコトヲ以テ足ル又右一ケ月以内ニ登記シタル反対ハ抵当ト同時ニ之ヲ登記シタルト同一ノ効力ヲ有ス 第千〇四十八条 土地台帳ノ不正又ハ之ヲ生セシメタル事実カ抵当証書ニ本ツキ又ハ証書面ノ記入ニ因リテ明ナル限ハ第八百十条乃至第八百十二条ノ規定ヲ援用スルコトヲ得ス土地台帳ノ正当ヲ争フ反対カ抵当証書ニ本ツキ又ハ証書面ノ記入ニ因リテ明ナルトキハ土地台帳ニ登記シタル反対ニ同シ 第千〇四十九条 債権ノ満期カ通知ヲ為スコトニ係ル場合ニ於テ抵当ニ付テノ通知ハ債権者カ所有者ニ対シ又ハ所有者カ債権者ニ対シテ之ヲ表示シタルトキニノミ有効トス此場合ニ於テ土地台帳ニ所有者トシテ登記セラレタル者ハ債権者ノ為メニ所有者ト見做ス 第千〇五十条 所有者ハ債権カ自己ニ対シテ満期トナリタルトキ又ハ対人債務者カ履行スル権利ヲ有スルトキハ債権者ニ弁済ヲ為スコトヲ得 前項ノ弁済ハ供託又ハ相殺ニ因リテ之ヲ為スコトヲ得 第千〇五十一条 対人債務者ニアラサル所有者カ債権者ニ弁済ヲ為シタル限度ニ於テ債権ハ所有者ニ移転ス此場合ニ於テ保証人ニ関スル第七百十三条第一項ノ規定ヲ准用ス 債権ニ付キ総抵当ノ存スル場合ニ於テハ総抵当ニ付キ第千〇八十条ノ規定ヲ適用ス 第千〇五十二条 所有者カ債権者ニ弁済ヲ為シタルトキハ土地台帳ノ訂正又ハ抵当ノ取消ニ付キ必要ナル抵当証書及ヒ其他ノ証書ノ交附ヲ請求スルコトヲ得 所有者カ債権者ニ一部ノ弁済ヲ為シタルトキハ抵当証書ノ交附ヲ請求スルコトヲ得ス然レトモ債権者ハ証書面ニ一部弁済ノ記入ヲ為シ且土地台帳ノ訂正又ハ登記取消ノ為メ抵当証書ヲ登記役場ニ提示シ又ハ所有者ノ為メ一部抵当証書ヲ調製スルニ付キ抵当証書ヲ管轄官庁又ハ管轄公証人ニ提示スルコトヲ要ス 第千〇五十三条 所有者ニ対シ債務者カ遅滞ニ附セラルヽト同一ノ要件カ存スルトキハ債権者ハ土地ニ付キ遅滞利息ヲ求ムルコトヲ得 第千〇五十四条 土地ニ付キ其他抵当ノ及ブ物ニ付テ債権者カ求ムル弁済ハ強到執行ノ方法ニ依ル 第千〇五十五条 抵当ニ本ツク権利ヲ行使スルニ付テハ土地台帳ニ所有者トシテ登記セラレタル者ヲ以テ債権者ノ為メニ所有者ト見做ス然レトモ登記セラレサル所有者カ抵当ニ対シテ有スル抗弁ヲ主張スル権利ハ影響ヲ受クルコトナシ 第千〇五十六条 所有者ハ債権カ自己ニ対シテ満期トナラサル限ハ弁済ノ為メニ土地所有権ノ移転ヲ請求シ又ハ強制執行以外ノ方法ニ依リテ土地ノ譲渡ヲ為スヘキ権利ヲ債権者ニ附与スルコトヲ得ス 第千〇五十七条 債権者カ土地ニ付テ弁済ヲ求ムルトキハ強制競売ノ場合ニ於テ土地ニ付テ有スル権利又ハ土地ノ占有ヲ失フ危険アル者ハ債権者ニ弁済ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テ第千〇五十条第二項第千〇五十一条及ヒ第千〇五十二条ノ規定ハ之ヲ准用ス 第千〇五十八条 債権カ分割セラルルトキハ一部抵当ノ相互ノ順位ヲ変更スルニ付キ所有者ノ同意ヲ要セス 第千〇五十九条 債権分割ノ場合ニ於テ抵当証書ノ調製カ除却セラレサル限ハ各部ニ付テ一部抵当証書ノ調製ヲ求ムルコトヲ得此場合ニ於テ土地所有者ノ同意ハ之ヲ要セス又一部抵当証書ハ之ニ対スル債権ノ部分ニ付キ前証書ニ代ルモノトス 第千〇六十条 抵当ハ債権ノ譲渡ト共ニ新債権者ニ移転ス 債権ト抵当トハ互ニ相伴フニアラサレハ之ヲ譲渡スコトヲ得ス 第千〇六十一条 債権ノ譲渡ニ付テハ書面ヲ以テ譲渡ノ意思表示ヲ与フルコト及ヒ抵当証書ノ交附ヲ必要トス此場合ニ於テ第千〇二十六条ノ規定ハ之ヲ適用ス又前債権者ハ新債権者ノ請求ニ因リ其費用ヲ以テ譲渡ノ意思表示ヲ公認セシムルコトヲ要ス 譲渡ノ意思表示ニ付テ要スル書面上ノ方式ハ譲渡ヲ土地台帳ニ登記スルコトニ依リテ之ニ代ユルコトヲ得 抵当証書ノ調製カ除却セラレタルトキハ債権ノ譲渡ニ付キ第七百九十四条及ヒ第七百九十九条ノ規定ヲ准用ス 第千〇六十二条 抵当証書ノ占有者ノ債権者タル権利カ公認セラレタル譲渡ノ意思表示ノ相関連シテ登記済債権者ニ帰着スヘキ連絡ニ因リテ生スルトキハ第八百〇九条乃至第八百十四条ノ規定ハ証書ノ占有者カ債権者トシテ土地台帳ニ登記セラレタルト同一ノ方法ニ於テ之ヲ適用ス此場合ニ於テ譲渡ニ付キ裁判上ノ授附決定及ヒ法律ノ規定ニ本ツク債権譲渡ノ公認ハ公認セラレタル譲渡ノ意思表示ニ同シ 第千〇六十三条 債権譲渡ニ関スル第三百四十九条乃至第三百五十一条ノ規定ハ所有者ト新債権者ノ間ニ於テ抵当ニ関スル法律関係ニ付キ之ヲ適用セス然レトモ新債権者ハ所有者カ前債権者ニ対シテ為シタル通知ヲ自己ニ対抗セシムルコトヲ要ス但所有者カ右通知ヲ為ストキニ譲渡ヲ知リタルトキ又ハ譲渡カ土地台帳ニ登記セラレタルトキハ此限ニ在ラス 第千〇六十四条 所有者カ自己ト前債権者トノ法律関係ニ本ツキ抵当ニ対シテ有スル抗弁ハ新債権者ニ対シテ之ヲ主張スルコトヲ得第八百十二条乃至第八百十四条ノ規定ハ之ニ依リテ影響ヲ受クルコトナシ 第千〇六十五条 抵当証書ノ調製カ除却セラレサリシ場合ニ於テ債権者カ抵当証書ヲ提示セサルトキハ抵当ノ主張ニ反対スルコトヲ得又土地台帳ニ債権者ノ登記ナキトキハ第千〇六十二条ニ掲クル証書ヲ提示スルコトヲ要ス 所有者ニ対シテ為シタル通知又ハ催告ハ債権者カ第一項ノ規定ニ従ヒ必要ナル証書ヲ提示セス且所有者カ之ニ本ツキ遅滞ナク通知又ハ催告ヲ退クルトキハ無効トス 第千〇六十六条 所有者カ対人債務者タルトキハ第千〇六十五条ノ規定ハ債権ノ主張ニ付キ又之ヲ適用ス 第千〇六十七条 抵当証書ヲ紛失又ハ破毀シタルトキハ公示催告ノ手続ニ依リ其無効ヲ宣言スルコトヲ得 無効ノ宣言ヲ受ケタル証書ニ代ヘ債権者ノ申請ニ因リテ新ニ証書ヲ調製スルコトヲ要ス 第千〇六十八条 債権カ利息又ハ其他ノ従タル給付ニ関スルトキハ譲渡ノ場合ニ於テ所有者及ヒ新債権者ノ法律関係ニ付キ第三百四十九条乃至第三百五十一条ノ規定ヲ適用ス所有者カ譲渡ヲ知リタル日時ヲ含ム四分一年又ハ其次ノ四分一年ヨリ以後ニ満期トナル利息又ハ其他ノ従タル給付ニ付キ亦同シ但此場合ニ於テ第八百十条ノ規定ハ影響ヲ受クルコトナシ 第千〇六十九条 債権カ利息ノ淹滞部分又ハ其他ノ従タル給付若クハ費用ノ補償ニ関スルトキハ其譲渡ハ債権ノ譲渡ニ関スル通則ニ従フテ之ヲ定ム 第八百十条第千〇六十五条及ヒ第千〇六十六条ノ規定ハ第一項ニ掲クル種類ノ債権ニ付キ之ヲ適用セス 第千〇七十条 抵当ノ設定ヲ受ケタル債権カ成立セサルトキハ抵当ハ所有者ニ属ス又債権カ消滅スルトキハ所有者ハ抵当ヲ取得ス 抵当証書ノ調製カ除却セラレサル抵当ハ債権者ニ証書ヲ引渡ス迄ハ所有者ニ属ス 第千〇七十一条 対人債務者カ債権者ニ弁済スルトキハ抵当ハ弁済者カ所有者又ハ其先主ニ対シテ賠償ヲ請求スルコトヲ得ル限度ニ於テ此者ニ移転ス又債務者ニ対シ一部ノ賠償ヲ為スヘキ場合ニ於テハ所有者ハ抵当カ債務者ニ移転シタル限ハ此者ニ不利益ヲ加ヘテ抵当ヲ主張スルコトヲ得ス 債権及ヒ債務カ一人ニ混同スルトキハ債権者カ弁済ヲ受ケタルニ同シ 第千〇七十二条 債権者カ抵当ヲ放棄シ又ハ第千〇九十条ノ規定ニ従フテ之ヲ取消シ若クハ他ノ権利ニ順位ヲ譲ルトキハ対人債務者ハ此処分ナキトキハ第千〇七十一条ノ規定ニ従ヒ抵当ニ依リテ賠償ヲ得ベカリシ限度ニ於テ其義務ヲ免カル 第千〇七十三条 対人債務者カ債権者ニ弁済スルトキハ所有者ニ対シ賠償ヲ請求スルコトヲ得ル場合ニ於テ債権者カ遅滞ナク対人債務者ニ通知スルコトナクシテ土地ノ強制競売ヲ行フトキハ対人債務者ハ強制競売ニ於テ権利ヲ行使セサルコトニ本ツキ通知ナカリシ為メニ損害ヲ受ケタル限度ニ於テ債権者ノ弁済ヲ拒ムコトヲ得但右ノ通知ハ之ヲ為シ得ベカラサルトキハ之ヲ要セス 第千〇七十四条 対人債務者カ債権者ニ弁済スルトキハ抵当ヲ取得シ又ハ土地台帳ノ訂正ニ付キ其他ノ法律上ノ利益ヲ有スル場合ニ於テハ第千〇五十二条ニ定ムル権利ハ対人債務者ニ属ス 第千〇七十五条 債権者カ抵当ヲ放棄スルトキハ所有者之ヲ取得ス 抵当ヲ放棄スルニハ債権者カ登記役場又ハ所有者ニ対シテ其意思ヲ表示シ且之ヲ土地台帳ニ登記スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ第七百九十六条第二項第七百九十七条及ビ第七百九十九条ノ規定ヲ準用ス 債権者カ債権ノ一部ニ付キ抵当ヲ放棄スルトキハ第千〇五十二条第二項ニ掲クル権利ハ所有者ニ属ス 第千〇七十六条 所有者カ抵当ノ主張ヲ引続キ除却スヘキ抗弁ヲ有スルトキハ債権者ニ対シ抵当ヲ放棄スヘキ請求ヲ為スコトヲ得 第千〇七十七条 債権者カ知レサル場合ニ於テ抵当ニ関スル最終ノ登記ヨリ三十年ヲ経過シ且債権者ノ権利カ此期間内ニ第百七十四条ノ規定ニ従ヒ時効ノ中断ニ適スル方法ニ於テ所有者ニ依リテ承認セラレサルトキハ公示催告ノ手続ニ依リ債権者ヲ其権利ト共ニ除却スルコトヲ得此場合ニ於テ債権ニ対シ暦ニ従フテ定メタル支払期日アルトキハ右ノ期間ハ支払日ヲ経過スルマテ其進行ヲ始ムルコトナシ 除却ノ判決アルトキハ所有者ハ抵当ヲ取得ス又債権者ニ与ヘタル抵当証書ハ其効力ヲ失フ 第千〇七十八条 所有者カ債権者ニ弁済シ又ハ告知ヲ為ス権利ヲ有シ且取戻権ヲ放棄シテ債権者ノ為メニ債権額ヲ供託スルトキハ公示催告ノ手続ニ依リ未タ知レサル債権者ヲ其権利ト共ニ除却スルコトヲ得此場合ニ於テ利息ノ供託ハ土地台帳ニ利率ノ登記アリタルトキニノミ之ヲ為スコトヲ要ス又除却ノ判決ヨリ三ケ月以前ノ時日ニ対スル利息ハ供託スルコトヲ要セス 除却ノ判決アルトキハ債権者ハ此時ニ弁済セラレタルモノト見做ス但供託ニ関スル規定ニ従ヒ之レヨリ前ニ弁済アリタルトキハ此限ニ在ラス又債権者ニ与ヘタル抵当証書ハ其効力ヲ失フ 債権者カ除却ノ判決アリタル時ヨリ三十年内ニ供託所ニ申出サルトキハ供託金ニ対スル債権者ノ権利ハ消滅シ供託者ハ之ヲ取戻スコトヲ得 第千〇七十九条 共同抵当ハ第千〇七十条ノ場合ニ於テハ負担付土地ノ所有者ノ共有ニ属ス 各所有者ハ別段ノ合意ナキ限ハ第千〇四十条第二項ノ規定ニ従ヒ自已ノ土地ニ存スル抵当ヲ自已ノ土地ノ価格ト総土地ノ価格トノ割合ニ相当スル分割額ニ制限シ且此制限ヲ以テ自已ニ分附スヘキ請求ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テ右ノ価格ハ共同抵当ニ優先ノ順位ヲ有スル負担ヲ扣除シテ之ヲ計算ス 第千〇八十条 共同抵当ニ依リテ負担ヲ加ヘラレタル土地ノ所有者カ債権者ニ弁済スルトキハ自己ノ土地ニ存スル抵当ヲ取得シ他ノ土地ニ存スル抵当ハ消滅ス債権者ノ権利カ所有者ニ移転シ又ハ債権及ヒ債務カ所有者ノ一身ニ混同スルトキハ債権者カ所有者ヨリ弁済セラレタルニ同シ 債権者ニ弁済シタル所有者カ他ノ所有者又ハ其前所有者ニ対シ賠償ヲ請求シ得ルトキハ他ノ所有者ノ土地ニ存スル抵当ハ賠償請求権ノ額ヲ限度トシテ右ノ弁済ヲ為シタル所有者ニ移転ス又此抵当ハ右ノ所有者ノ土地ニ存スル抵当ト共ニ共同抵当トシテ存立ス 第千〇八十一条 共同抵当ニ付キ対人債務者カ債権者ニ弁済シ又ハ債権及ヒ債務カ一人ニ混同スル場合ニ於テ債務者カ一ノ土地ノ所有者又ハ其前所有者ニ対シテノミ賠償ヲ請求シ得ルトキハ此土地ニ存スル抵当ハ右ノ債務者ニ移転シ他ノ土地ニ存スル抵当ハ消滅ス 債務者ニ対シ一部ノ賠償ヲ為スコトヲ要シ且之ニ因リテ抵当カ分割額ニ対シテノミ債務者ニ移転スルトキハ所有者ハ共同抵当ノ残額ニシテ第千〇七十条ノ規定ニ従ヒ自已ニ属スル部分ニ対シ右ノ分割額ヲ算当セシムルコトヲ要ス 第千〇八十二条 債権者ニ依リテ放棄セラレタル共同抵当ハ負担付土地ノ所有者ノ共有ニ属ス此場合ニ於テハ第千〇七十九条第二項ノ規定ヲ適用ス又債権者カ一ノ土地ニ存スル抵当ヲ放棄スルトキハ此土地ニ存スル抵当ハ消滅ス 債権者カ第千〇七十七条ノ規定ニ従ヒ自巳ノ権利ト共ニ除却セラルルトキ亦同シ 第千〇八十三条 第千〇七十条、第千〇七十一条、第千〇七十五条、第千〇七十九条乃至第千〇八十二条ニ掲クル要件カ抵当ノ一部ニ関シテノミ存スルトキハ右ノ規定ニ本ツキ所有者又ハ其一人若クハ対人債務者ニ帰属スル抵当ハ債権者ニ留存スル抵当ヲ害シテ之ヲ主張スルコトヲ得ス 第千〇八十四条 抵当及ヒ所有権カ債権ヲ有セサル一人ニ混同スルトキハ抵当ハ土地債務ニ変ス此場合ニ於テ利息、利率、支払ノ時日、告知及ヒ支払ノ場所ニ関スル事項ハ債権ニ対スル規定ニ依リテ之ヲ定ム 債権カ所有者ニ属スル場合ニ於テ混同ノ存スル間ハ抵当ニ本ツク所有者ノ権利ハ所有者ノ土地債務ニ関スル規定ニ依リテ之ヲ定ム 第千〇八十五条 淹滞セル利息其他従タル給付及ヒ債権者ニ補償スヘキ費用ニ対スル抵当ハ所有権ト共ニ一人ニ混同スルトキハ消滅ス然レトモ右ノ給付ニ対スル債権カ第三者ノ権利ヲ以テ負担ヲ加ヘラルル間ハ抵当ノ消滅ヲ生セス 第一項ニ掲クル種類ノ給付ニ対スル抵当ヲ放棄スルニハ債権者カ所有者ニ対シ其意思ヲ表示スルノミニテ足ル然レトモ第三者カ右ノ給付ニ対スル債権ニ付テ権利ヲ有スル間ハ第三者ノ同意ヲ要ス此同意ハ債権者ニ対シテ表示スルコトヲ要シ又此意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得ス 第千〇八十六条 抵当カ所有権ト共ニ一人ニ混同スル場合ニ於テ所有者カ他人ニ対シ抵当ヲ取消サシムベキ義務ヲ負担スルトキハ取消請求権ノ担保ノ為メ土地台帳ニ予告ノ登記ヲ為スコトヲ得 第千〇八十七条 抵当カ設定セラレタル債権ニ代フルニ他ノ債権ヲ以テスルコトヲ得此変更ヲ為スニハ債権者ト所有者ノ合意及ビ土地台帳ニ登記スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ第七百九十四条第二項第七百九十七条及ヒ第七百九十九条ノ規定ヲ準用ス 前債権ニ代ハルヘキ債権カ前ノ抵当債権者ニ属セサルトキハ此者ノ同意ヲ要ス又此同意ハ登記役場ニ対シ又ハ自已ノ為メニ同意ヲ表示セラルル者ニ対シテ之ヲ表示スルコトヲ得此場合ニ於テハ第七百九十六条第二項及ヒ第七百九十七条ノ規定ヲ准用ス 第千〇八十八条 債権者カ土地ニ付テ弁済ヲ得ルトキハ抵当ハ消滅ス 債権者カ共同抵当ニ依リ負担ヲ加ヘラレタル土地ノ一ヨリ弁済ヲ得タルトキハ他ノ土地ハ其負担ヲ免カル 抵当カ其効力ヲ及ホス物ヨリ弁済ヲ得タルコトハ土地ニ付テ弁済ヲ得タルニ同シ 第千〇八十九条 共同抵当ノ場合ニ於テ債権者ノ弁済ニ供シタル土地ノ所有者カ其他ノ一ノ土地ノ所有者又ハ其前所有者ニ対シ賠償ヲ請求スルコトヲ得ル限ハ此土地ニ存スル抵当ハ弁済ニ供シタル土地ノ所有者ニ移転ス然レトモ債権者カ債権ノ一部ニ付テノミ弁済セラレタルトキハ右ノ抵当ハ債権者ニ留存スル抵当ヲ害シテ之ヲ主張スルコトヲ得ス又土地カ右ノ抵当ト同等又ハ劣等ノ順位ヲ有スル権利ニ依リテ負担ヲ加ヘラレタルトキハ此権利ヲ害シテ抵当ヲ主張スルコトヲ得ス 第千〇九十条 法律行為ニ因リテ抵当ヲ消滅セシムルニハ所有者ノ同意ヲ要ス此同意ハ債権者又ハ登記役場ニ対シテ之ヲ表示スルコトヲ得又此意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得ス 第千〇九十一条 抵当カ消滅スルトキハ土地所有者ハ抵当証書ノ占有者ニ対シ土地台帳ヲ訂正スル為メ右ノ証書ヲ登記役場ニ提示スルコトヲ請求スルコトヲ得 第千〇九十二条 抵当ハ之ニ本ツク債権者ノ権利カ単ニ債権ニ依リテ定マリ且債権者カ債権ヲ証明スル為メ登記ヲ援用スルコトヲ得サル方法ニ於テ之ヲ設定スルコトヲ得(保全抵当)前項ノ場合ニ於テ抵当ハ保全抵当トシテ土地台帳ニ之ヲ表示スルコトヲ要ス 第千〇九十三条 保全抵当ニ付テハ抵当証書ノ調製ハ除却セラル 第千〇四十六条、第千〇四十七条、第千〇四十九条、第千〇六十一条第三項及ヒ第千〇六十三条ノ規定ハ之ヲ保全抵当ニ適用セス 第千〇九十四条 債権譲渡ノ場合ニ於テハ保全抵当ノ移転ヲ除却スルコトヲ得右ノ除却ハ抵当放棄ノ効力ヲ有ス 第千〇九十五条 保全抵当ハ通常ノ抵当ニ又通常ノ抵当ハ保全抵当ニ変更スルコトヲ得此場合ニ於テハ同等又ハ劣等ノ順位ヲ有スル権利者ノ同意ヲ要セス 第千〇九十六条 抵当ハ土地カ負担スヘキ最高額ノミヲ定メ其他債権ノ確定ヲ留保スル方法ニ於テ之ヲ設定スルコトヲ得右ノ最高額ハ之ヲ土地台帳ニ登記スルコトヲ要ス 債権カ利息附ナルトキハ利息ハ前項ノ最高額ニ算入セラル 抵当ハ保全抵当トシテ土地台帳ニ表示セラレサルトキト雖モ保全抵当トシテ其効力ヲ有ス 第千〇九十七条 無記名証券、為替手形又ハ裏書ニ依リテ譲渡スコトヲ得ル証券ニ本ツク債権ニ対スル抵当ハ保全抵当トシテ土地台帳ニ表示セラレサルトキト雖モ保全抵当トシテ其効力ヲ有ス 第千〇九十八条 無記名証券ニ本ツク債権ニ対スル抵当ヲ設定スルニハ所有者カ登記役場ニ対シ抵当ヲ設定スル旨ヲ表示シ且之ヲ土地台帳ニ登記スルコトヲ以テ足ル此場合ニ於テハ第七百九十九条ノ規定ヲ適用ス 第千〇七十七条ノ規定ニ従ヒ債権者ヲ其権利ト共ニ除却スルコトハ第七百二十九条ニ掲クル提示期間カ経過シタルトキニノミ之ヲ許ス右期間内ニ無記名証券カ提示セラレ又ハ証券ニ本ツク請求権カ裁判上主張セラレタルトキハ時効ハ既ニ発生セルコトヲ要ス 第千〇九十九条 第千〇九十七条ニ掲クル種類ノ抵当ニ付テハ現時ノ債権者ノ為メニ其後ノ各債権者ニ対シテ効力ヲ有スル処分ヲ抵当ニ加ヘ且抵当ノ主張ニ付キ債権者ヲ代表スヘキ権限ヲ有スル代理人ヲ任定スルコトヲ得此場合ニ於テ代理人ノ任定ハ之ヲ土台地帳ニ登記スルコトヲ要ス 所有者カ債権者ニ対シ代理人ノ権限ニ属スル処分ヲ請求スル権利ヲ有スルトキハ代理人ニ依リテ此処分カ為サルヽコトヲ請求スルコトヲ得 第二節 土地債務定期土地債務 第一款 土地債務 第千百条 土地ハ自已ノ利益ノ為メ之ニ負担ヲ加ヘラレタル者ニ一定ノ金額ヲ此土地ヨリ支払フヘキ方法ニ於テ之ニ負担ヲ加フルコトヲ得(土地債務) 前項ノ負担ハ利息其他ノ従タル給付ヲ土地ヨリ支払フヘキ方法ニ於テ之ヲ加フルコトヲ得 第千百〇一条 土地債務ニ付テハ抵当ニ関スル規定ヲ準用ス但土地債務カ債権ヲ要件ト為ササルコトニ因リテ之ニ反対ヲ生スルトキハ此限ニ在ラス 土地債務ノ利息ニ付テハ抵当ノ利息ニ関スル規定ヲ適用ス 第千百〇二条 土地債務ノ元本ハ告知ヲ為シタル後ニアラサレハ満期トナラス告知ノ権利ハ所有者並ニ債権者ニ属ス又此告知期間ハ六ケ月トス 前項ノ規定ニ異ナル定ハ之ヲ為スコトヲ得 第千百〇三条 元本、利息及ヒ其他ノ従タル給付ハ別段ノ定ナキ限ハ登記役場ノ所在地ニ於テ之ヲ支払フコトヲ要ス 第千百〇四条 土地債務ハ其証書ヲ持参人払トシテ発行スル方法ニ於テ之ヲ設定スルコトヲ得此証書ニ付テハ無記名証券ニ関スル規定ヲ準用ス 第千百〇五条 土地債務ハ所有者ノ為メニモ之ヲ設定スルコトヲ得 前項ノ設定ニ付テハ所有者ハ登記役場ニ対シ自已ノ為メニ土地債務カ土地台帳ニ登記セラルヘキ旨ヲ表示シ且其登記ヲ受クルコトヲ要ス又此場合ニ於テハ第七百九十九条ノ規定ヲ適用ス 第千百〇六条 所有者カ債権者タルトキハ其債権ヲ弁済スル為メ自ラ強制執行ヲ行フコトヲ得ス 所有者ハ土地カ他人ノ申請ニ因リ強制管理ノ為メニ差押ヘラレタル場合ニ於テハ其強制管理ノ継続スル間利息ヲ受クルコトヲ得 第千百〇七条 抵当ハ土地債務ニ又土地債務ハ抵当ニ変更スルコトヲ得此場合ニ於テハ同等又ハ劣等ノ順位ヲ有スル権利者ノ同意ヲ要セス 第二款 定期土地債務 第千百〇八条 土地債務ハ定期ニ復帰スル期限ニ一定ノ金額ヲ土地ヨリ支払フヘキ方法ニ於テ之ヲ設定スルコトヲ得(定期土地債務) 定期土地債務ノ設定ニ付テハ或金額ノ支払ニ因リテ定期土地債務ヲ免除セシムル金額ヲ定ムルコトヲ要ス又此免除金額ハ土地台帳ニ之ヲ指定スルコトヲ要ス 第千百〇九条 各個ノ給付ニ付テハ抵当利息ニ関スル規定ヲ準用シ免除金額ニ付テハ土地債務ノ元本ニ関スル規定ヲ準用ス 免除金額ヲ債権者ニ支払フコトハ土地債務ノ元本ヲ支払ヒタルト同一ノ効力ヲ有ス 第千百十条 免除権ハ所有者之ヲ有ス 免除ヲ請求スル権利ハ債権者ニ之ヲ与フルコトヲ得ス債権者ハ第千〇四十一条第二段ノ場合ニ於テハ土地ヨリ免除金額ヲ支払フコトヲ請求スル権利ヲ有ス 第千百十一条 所有者ハ告知後始メテ免除権ヲ行使スルコトヲ得此場合ニ於テ告知期間ハ別段ノ定ナキトキハ六ケ月トス 告知権ハ所有者カ三十年後ハ六ケ月ノ期間ヲ保チテ告知スルコトヲ得ル限度ニ於テ之ヲ制限スルコトヲ得 所有者カ告知シタルトキハ債権者ハ告知期間ノ経過後土地ヨリ免除金額ヲ支払フコトヲ請求スルコトヲ得 第千百十二条 定期土地債務ハ通常ノ土地債務ニ又通常ノ土地債務ハ定期土地債務ニ変更スルコトヲ得此場合ニ於テハ同等又ハ劣等ノ順位ヲ有スル権利者ノ同意ヲ要セス 第九章 動産質及ヒ権利質 第一節 動産質 第千百十三条 動産ハ或債権ノ担保ノ為メ債権者カ此物ヨリ弁済ヲ求ムヘキ権利ヲ有スル方法ニ於テ之ニ負担ヲ加フルコトヲ得(質権) 質権ハ未来又ハ条件附債権ニ対シテモ之ヲ設定スルコトヲ得 第千百十四条 質権ヲ設定スルニハ所有者カ債権者ニ物ヲ引渡シ且双方カ債権者ハ質権ヲ有スルコトニ一致スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ第八百四十二条第二段及ヒ第八百四十五条ノ規定ヲ准用ス 所有者ノ間接所持ニ係ル物ノ引渡ハ所有者カ間接占有ヲ質取債権者ニ移転シ且占有者ニ質入ヲ通知スルコトニ依リテ之ヲ行フコトヲ得 第千百十五条 質権ノ成立ハ質取債権者ニ引渡サレタル物カ所有者トノ共同所持ニ存スルコト又ハ物カ第三者ノ占有ニ係ル場合ニ於テ間接占有カ質取債権者及ヒ所有者ニ共同ニ属スルコトニ因リテ除却セラルルコトナシ然レトモ物カ所有者ノ占有ニ存スルトキハ質権ハ成立セス 第千百十六条 物カ質入主ニ属セサルトキハ質入ニ付キ所有権取得ニ関スル第八百四十六条第八百四十七条第二項、第八百四十八条及ヒ第八百五十条ノ規定ヲ准用ス 第千百十七条 物カ第三者ノ権利ニ依リテ負担ヲ加ヘラレタルトキハ質権カ右ノ権利ニ優先ノ効力ヲ有ス但質取債権者カ質権取得ノ時ニ右ノ権利ニ関シ善意ナラサリシトキハ此限ニ在ラス又第八百四十六条第一項第二段、第八百四十八条、第八百四十九条第三項及ヒ第八百五十条ノ規定ハ本条ノ場合ニ之ヲ准用ス 第千百十八条 質権ノ順位ハ設定ノ時ニ従フテ之ヲ定ム質権カ未来又ハ条件附ノ債権トシテ設定セラレタルトキ亦同シ 第千百十九条 質入主ハ質取債権者ニ対シ対人債務者カ債権者ニ対シテ有スル抗弁及ヒ第七百十条ノ規定ニ従ヒ保証人カ有スル抗弁ヲ主張スルコトヲ得然レトモ限定承認権ニ本ツキ対人債権者ノ相続人カ有スル抗弁ヲ主張スルコトヲ得ス 質入主カ対人債務者ニアラサルトキハ此者カ抗弁を放棄スルコトニ因リテ質入主ハ抗弁ヲ失フコトナシ 第千百二十条 質物ハ現時ノ成立ニ於ケル債権ニ対シ殊ニ其利息及ヒ違約金ニ対シテモ担保ノ義務ヲ負担ス対人債務者カ質物ノ所有者ニアラサルトキハ右ノ義務ハ質入後ニ債務者カ為シタル法律行為ニ因リテ拡張セラルルコトナシ 質物ハ費用ノ賠償ニ関スル債権者ノ請求権ニ対シ債権者ニ賠償スヘキ告知又ハ訴追ノ費用ニ対シ並ニ質物売却ノ費用ニ対シ担保ノ義務ヲ負担ス 第千百二十一条 質権ハ質物ヨリ分離セラレタル産出物ニモ及フ 第千百二十二条 質権ハ質取債権者カ質物ノ用益ヲ収取スルコトヲ得ル方法ニ於テ之ヲ設定スルコトヲ得 天然果実ヲ生スル物カ質取債権者ノ独占ニ引渡サレタルトキハ疑ハシキ場合ニ於テハ質取債権者ハ果実収取ノ権アルモノト見做ス 第千百二十三条 質取債権者カ質物ノ用益ヲ収取スル権利ヲ有スルトキハ其取得ニ付キ注意ヲ加ヘ且其計算ヲ為スコトヲ要ス 用益ノ純収入ハ之ヲ債権ト差引シ且費用又ハ利息ヲ支払フヘキトキハ先ツ之ト差引スルコトヲ要ス 当事者ハ本条ノ規定ニ異ナリタル定ヲ為スコトヲ得 第千百二十四条 質取債権者ハ質物ヲ保管スル義務ヲ負担ス 第千百二十五条 質取債権者カ質物ニ費用ヲ加ヘタルトキハ質入人ノ賠償義務ハ事務管理ニ関スル規定ニ依リテ之ヲ定ム又質取債権者ハ第四百九十一条第二項ノ場合ニ於テ賃借人カ有スルト同一ノ範囲ニ於テ建設物引取ノ権利ヲ有ス 第千百二十六条 質取債権者カ質入人ノ権利ヲ著シク毀損シ且質入人ノ催告アリタルニ拘ハラス毀損ノ挙止ヲ続行スルトキハ質入人ハ質取債権者ノ費用ヲ以テ質物ヲ供託シ又ハ供託ニ適セサルトキハ裁判上任定セラルル保管人ニ之ヲ引渡スコトヲ請求スルコトヲ得 質物ヲ供託シ又ハ之ヲ保管人ニ引渡ス代ハリニ質入人ハ債権者ニ弁済シテ質物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得債権カ無利息ニシテ未タ満期トナラサルトキハ質取債権者ハ支払ノ時ヨリ満期ノ時ニ至ルマテノ法定利息ヲ加算シテ債権額ニ等シキ金額ノミヲ得 第千百二十七条 質物ノ腐敗又ハ著シク価格減少ノ虞アルトキハ質入人ハ他ノ担保ヲ供シテ質物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得但証人ニ依ル担保ハ之ヲ許サス 質取債権者ハ質物ニ生スル腐敗ニ付キ遅滞ナク質入人ニ通知ヲ為スコトヲ要ス但通知ヲ為シ得ヘカラサルトキハ此限ニ在ラス 第千百二十八条 質取債権者ハ質物ニ生スル腐敗ニ因リ又ハ著シキ価格ノ減少ニ因リ担保ヲ害セラルルトキハ質物ヲ競売セシムルコトヲ得 競売ハ質入人ニ予告ヲ為シタル後ニアラサレハ之ヲ許サス然レトモ質物カ現ニ腐敗ニ委セラレ又ハ競売ノ遅延ニ因リ危険ヲ生スヘキトキハ予告ヲ為スコトヲ要セス又価格減少ノ場合ニ於テハ質取債権者ハ其予告ヲ為スノ外質入人ニ他ノ担保ヲ供スルニ付キ相当ノ期間ヲ指定シ且此ノ期間カ経過シタルコトヲ要ス其他質取債権者ハ競売ニ付キ遅滞ナク質入人ニ通知スルコトヲ要シ之ヲ怠ルトキハ損害賠償ノ責ニ任ス但予告期間ノ指定及ヒ通知ハ為シ得ヘカラサルトキハ之ヲ要セス 質物ノ代価ハ質物ニ代ハルモノトス又代価ヲ質入人ノ請求ニ因リ之ヲ供託スルコトヲ要ス 第千百二十九条 質権カ数個ノ物ニ付キ存スルトキハ各目的物ハ債権全部ニ対シテ其義務ヲ負担ス 第千百三十条 質取債権者ハ質権カ消滅シタルトキハ質入人ニ質物ヲ返還スルコトヲ要ス 債務者カ給付ヲ為ス権利ヲ有スルトキハ質入人ハ質取債権者カ弁済ヲ受クルコトニ対シ直ニ質物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 第千百三十一条 質入人カ質取債権者ニ弁済スル場合ニ於テハ供託又ハ相殺ノ方法ニ依ルコトヲ得 第千百三十二条 対人債務者ニアラサル質入人カ質取債権者ニ弁済シタルトキハ其限度ニ於テ債権ハ質入人ニ移転ス此場合ニ於テハ保証人ニ付キ適用セラルル第七百十三条ノ規定ヲ準用ス 第千百三十三条 質物ノ変更又ハ毀損ニ本ツク質入人ノ賠償請求権及ヒ費用ノ賠償又ハ建設物引取ノ許諾ニ対スル質取債権者ノ請求権ハ六ケ月ニテ時効ニ係ル此場合ニ於テ時効ハ第五百条第二段ノ規定ニ従ヒ其進行ヲ始厶 第千百三十四条 質取債権者ノ権利カ制限セラルル場合ニ於テ此者ノ請求権ニ付テハ所有権ニ本ツク請求権ニ関スル規定ヲ準用ス 第千百三十五条 質物ニ依リテ質取債権者ニ弁済スルニハ質物ヲ売却シテ之ヲ為ス 質取債権者ハ債権ノ全部又ハ一部カ満期トナリタルトキハ直ニ質物ヲ売却スル権利ヲ有ス然レトモ債権ノ目的物ハ金銭ニ存セサル場合ニ於テハ其債権カ金銭ノ債権ニ変シタルトキニ至リ質物ヲ売却スルコトヲ得 第千百三十六条 売却権ノ発生前ニ為シタル合意ニシテ質取債権者カ弁済セラレサルカ又ハ正当ノ時ニ弁済セラレサルトキハ質物ノ所有権ハ此者ニ帰スヘキコト又ハ譲渡サルヘキコトヲ為スルモノハ無効トス 第千百三十七条 数個ノ質物アル場合ニ於テ別段ノ定ナキ限ハ質取債権者ハ売却スヘキ物ヲ撰択スルコトヲ得然レトモ弁済ニ必要ナル限度ヲ越ヘテ多クノ質物ヲ売却スルコトヲ得ス 第千百三十八条 質取債権者カ質物ヲ独占セサル場合ニ於テ売却権カ発生シタルトキハ売却ノ為メニ質物ノ引渡ヲ請求スルコトヲ得然レトモ質入人ノ請求アルトキハ質物ヲ質取債権者ニ引渡ス代ハリニ共同保管人ニ引渡スコトヲ要ス此場合ニ於テ保管人ハ質物ノ引渡アリタルトキハ之ヲ売却スル準備ヲ為ス義務ヲ負担ス 第千百三十九条 質取債権者ハ自己ニ劣リタル順位ノ質取債権者ニ対シ質物売却ノ為メニ之ヲ引渡スコトヲ要セス然レトモ質取債権者カ質物ヲ占有セサル場合ニ於テ自ラ質物ノ売却ヲ為サヾル限ハ自己ニ劣リタル順位ノ質取債権者ニ依ル売却ニ反対スルコトヲ得ス 第千百四十条 質物ノ売却ハ第千百四十一条乃至第千百四十七条ノ規定ニ従フテ之ヲ為スコトヲ要ス 質取債権者カ質物ノ売却権ニ付キ所有者ニ対シテ執行名義ヲ行ヒタルトキハ質入セラレタル物ノ売却ニ関スル規定ニ従ヒ質物ヲ売却セシムルコトヲ得 第千百四十一条 質取債権者ハ所有者ニ質物ノ売却ヲ予告シ且売却ノ必要ヲ生セシメタル金額ヲ指定スルコトヲ要ス予告ハ売却権ノ発生後ニアラサレハ有効ニ之ヲ為スコトヲ得ス又此予告ハ為シ得ヘカラサルトキハ之ヲ要セス 質物ノ売却ハ予告後一ケ月ヲ経過スルニアラサレハ之ヲ為スコトヲ得ス予告ヲ為シ得サルトキハ右ノ一ケ月ハ売却権発生ノ時ヨリ之ヲ起算ス 第千百四十二条 質物ノ売却ハ競売ノ方法ニ依ルコトヲ要ス 質物カ取引場又ハ市場ノ価格ヲ有スルトキハ仲買人又ハ競売権ヲ有スル者ニ依リ取引価格ヲ以テ自由ニ売却セシムルコトヲ得 第千百四十三条 競売ハ質物カ貯蔵セラレタル土地ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス然レトモ貯蔵地ニ於ケル競売ニ付キ相当ノ結果ヲ望ムコト能ハサルトキハ他ノ適当ナル土地ニ於テ競売スルコトヲ要ス 第千百四十四条 競売ノ時日及ヒ場所ハ質物ノ一般ノ表示中ニ之ヲ公示スルコトヲ要ス質物ニ付キ権利ヲ有スル所有者及ヒ第三者ニ対シテ特ニ通知ヲ為スコトヲ要ス但此通知ハ為シ得ヘカラサルトキハ之ヲ要セス 第千百四十五条 質取債権者及ヒ所有者ハ質物ノ競売ニ加ハリテ申込ヲ為スコトヲ得 所有者ノ申込ハ其金額カ現金ニテ支払ハレサルトキハ之ヲ拒絶スルコトヲ得質物カ他人ノ債務ノ為メニ義務ヲ負担スル場合ニ於テ債務者ノ申込ニ付キ亦同シ 第千百四十六条 質物ハ買主カ現金ニテ直ニ代価ヲ支払フヘク且之ニ従ハサルトキハ其権利ヲ失フヘキ定ニ依リテノミ之ヲ売却スルコトヲ得 質物カ質取債権者ニ競落シタルトキハ代価ハ既ニ此者ヨリ受取リタルモノト見做ス売却カ第一項ニ掲クル定ナクシテ行ハレ又ハ競売期日ノ終了前ニ権利実行ノ留保ニ付キ行使スル所ナキトキ亦同シ但質取債権者カ競買者ニ対シテ有スル権利ハ之ニ因リテ影響ヲ受クルコトナシ 第千百四十七条 金銀物ハ金又ハ銀ノ価格以下ニ競落スルコトヲ得ス 前項ノ場合ニ於テ充分ナル競売申込ナキトキハ競売権ヲ有スル者ニ依リ金又ハ銀ノ価格ニ達スル代価ヲ以テ自由ニ売却スルコトヲ得 第千百四十八条 質取債権者ハ所有者ニ対シ質物ノ売却及ヒ其結果ニ付キ遅滞ノ通知ヲ為スコトヲ要ス但通知ヲ為シ得ヘカラサルトキハ此限ニ在ラス 第千百四十九条 質物ノ適法ノ譲渡ニ因リテ取得者ハ其物ヲ所有者ヨリ取得シタルト同一ノ権利ヲ取得ス競落カ質取債権者ニ帰シタルトキ亦同シ 取得者カ質物ニ存スル質権ヲ知リタルトキト雖モ此権利ハ消滅ス用益権ニ付テモ亦同シ但用益権カ総テノ質権ニ優先ノ順位ヲ有スルトキハ此限ニ在ラス 第千百五十条 質物ノ譲渡ハ第千百三十五条第二項、第千百三十七条第二段、第千百四十二条、第千百四十四条第一段又ハ第千百四十七条ノ規定ニ反スルトキハ不適法トス 質取債権者カ質物ノ売却ニ関スル他ノ規定ニ反スル場合ニ於テ過失ノ責ニ任スヘキトキハ損害賠償ノ義務ヲ負担ス 第千百五十一条 譲渡人カ質権ヲ有セス又ハ質物ノ譲渡ハ正当ナル譲渡ニ非スシテ或物ヲ質物トシテ譲渡シタル場合ニ於テ此譲渡カ第千百四十条第二項ノ規定ニ従フテ行ハレ又ハ第千百四十二条若クハ第千百四十七条第二項ノ規定ニ従フタルトキハ第八百四十六条、第八百四十九条及ヒ第八百五十条ノ規定ヲ準用ス 第千百五十二条 所有者及ヒ質取債権者ハ第千百四十一条乃至第千百四十七条ノ規定ニ異ナル質物売却ノ方法ヲ合意スルコトヲ得此場合ニ於テ第三者カ質物ニ付キ譲渡ニ因リテ消滅スル権利ヲ有スルトキハ右第三者ノ同意ヲ要ス 売却権ノ発生前ニ於テハ第千百四十二条、第千百四十四条第一段及ヒ第千百四十七条ノ規定ニ従フヘキコトヲ放棄スルコトヲ得ス 第千百五十三条 第千百四十二条乃至第千百四十七条ノ規定ニ異ナル質物売却ノ方法カ公平ナル斟酌ニ依レハ当事者ノ利益ニ適セルトキハ各当事者ハ此方法ニ依リテ売却スヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ場合ニ於テ当事者ノ一致ヲ得サルトキハ裁判所之ヲ決定ス 第千百五十四条 質物売却ノ代価カ質取債権者ニ弁済スル為メ此者ニ属スル限ハ其債権ハ所有者ニ依リテ弁済セラレタルモノト見做ス其他質物売却ノ代価ハ質物ニ代ハルモノトス 第千百五十五条 質物ノ売却ニ付テハ質取債権者ノ利益ノ為メ質入人ヲ所有権ト見做ス但質取債権者ハ質入人カ所有者ニ非サルコトヲ知ルトキハ此限ニ在ラス 第千百五十六条 質物ニ付キ其譲渡ニ因リテ権利ヲ失ハントスル者ハ債務者カ給付ヲ履行スル権利ヲ得ルトキハ直ニ質取債権者ニ弁済ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ第千百三十一条及ヒ第千百三十二条ノ規定ヲ準用ス 第千百五十七条 債権ノ譲渡ニ因リテ質権ハ新債権者ニ移転ス又質権ハ債権ト分離シテ之ヲ譲渡スコトヲ得ス 債権ヲ譲渡ストキニ質権ノ移転カ除却セラルヽトキハ質権ハ消滅ス 第千百五十八条 新質取債権者ハ前ノ質取債権者ニ対シ質物ノ引渡ヲ請求スルコトヲ得 質物ノ占有ヲ取得スルコトニ因リテ新質取債権者ハ質入人ニ対シ質権ニ附着セル義務ニ付キ前ノ質取債権者ニ代ハルモノトス又新質取債権者カ右ノ義務ヲ履行セサルトキハ此者カ賠償スヘキ損害ニ付キ前ノ質取債権者ハ先訴抗弁ヲ放棄シタル保証人ト同一ノ責ニ任ス然レトモ債権カ法律ノ規定ニ因リテ新質取債権者ニ移転シ又ハ法律上ノ義務ニ因リテ此者ニ譲渡サレタルトキハ右ノ責任ヲ生セス 第千百五十九条 質物ハ其担保スル債権ト共ニ消滅ス 第千百六十条 質取債権者カ質入人又ハ所有者ニ質物ヲ返還スルトキハ質権ハ消滅ス此場合ニ於テ質権存続ノ留保ハ無効トス 質物カ質入人又ハ所有者ノ占有ニ存スルトキハ質取債権者ハ此者ニ質物ヲ返還シタルモノト推定ス質物カ質権ノ設定後ニ質入人又ハ所有者ヨリ質物ノ占有ヲ取得シタル第三者ノ占有ニ存スルトキ亦同シ 第千百六十一条 質権ニ対シ之ヲ主張スルコトヲ引続キ除却スル抗弁カ存立スルトキハ質入人ハ質物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得所有者モ亦之ト同一ノ権利ヲ有ス 第千百六十二条 法律行為ニ因リテ質権ヲ消滅セシムルニハ質取債権者カ質入人又ハ所有者ニ対シ質権ヲ消滅セシムル旨ヲ表示スルニテ足ル 質権カ第三者ノ権利ヲ以テ負担ヲ加ヘラレタル場合ニ於テ質権ヲ消滅セシムルニハ第三者ノ同意ヲ要ス此同意ハ質取債権者ニ対シ之ヲ表示スルコトヲ要ス又此表示ハ之ヲ取消スコトヲ得ス 第千百六十三条 質権ハ質物ノ所有権ト同一人帰スルトキハ消滅ス然レトモ質権ニ依リテ担保セラレタル債権カ第三者ノ権利ヲ以テ負担ヲ加ヘラレタル間ハ質権ハ消滅セス 所有者カ質権ノ存続スルコトニ付キ法律上ノ利益ヲ有スル限ハ質権ハ消滅セサルモノト見做ス 第千百六十四条 法律行為ニ因リテ設定セラレタル質権ニ関スル規定ハ之ヲ法律ノ規定ニ本ツク質権ニ準用ス 第千百六十五条 質権カ共有者ノ持分ニ付キ存立スルトキハ物ノ管理及ヒ使用方法ニ関シ共有ノ関係ニ本ツク共有者ノ権利ハ質取債権者之ヲ行フ 共有ノ関係ヲ廃止スルコトハ質取債権者ノ質物売却権カ発生スルマテハ共有者ト質取債権者共同ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス質物売却権ノ発生後ハ質取債権者ハ共有者ノ同意ヲ要セスシテ共有関係ノ廃止ヲ請求スルコトヲ得又質取債権者ハ共有者カ共有関係ノ廃止ヲ請求スル権利ヲ永久ニ除却シ又ハ一時之ヲ除却シ若クハ告知期間ヲ定メタル合意ニ因リテ拘束セラルヽコトナシ 共有ノ関係カ廃止セラルヽトキハ質取債権者ハ共有部分ニ代ハリタル目的物ニ付キ質権ヲ有ス 質取債権者カ共有部分ヲ売却スル権利ハ前項ノ規定ニ因リテ影響ヲ受クルコトナシ 第千百六十六条 船舶登記簿ニ登記セラレタル船舶ニ付キ存立スル質権ニ付テハ第千百六十七条乃至第千百七十八条ノ特別ノ規定ヲ適用ス 第千百六十七条 質権ノ設定ニ付テハ船舶所有者及ヒ債権者カ質権ハ此者ニ属スヘキ旨ヲ合意シ且船舶登記簿ニ質権ヲ登記スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ第七百九十四条第二項及ヒ第七百九十九条ノ規定ヲ準用ス 登記ハ債権者及ヒ債権額ヲ明示シ且債権カ利息付ナルトキハ利率ヲ明示スルコトヲ要ス 第千百六十八条 船舶ニ付キ設定セラレタル質権ノ順位ハ第八百条乃至第八百〇二条及ヒ第千〇五十八条ノ規定ニ依リテ之ヲ定ム 第千百六十九条 質権カ船舶登記簿ニ登記セラレタル間ハ船舶ヲ譲渡シ又ハ之ニ負担ヲ加ヘタル場合ニ於テ取得者カ善意ナルトキト雖モ質権ハ其効力ヲ有ス 質権カ不法ニ取消サレタルトキハ船舶譲渡ノ場合ニ於テ取得者カ船舶ノ引渡ナクシテ其所有権ヲ取得シタルトキト雖モ第八百四十九条第一項第一段及ヒ第二項ノ規定ヲ適用ス然レトモ第八百四十九条第三項ノ規定ハ之ヲ適用セス又不法ニ取消サレタル質権ニ劣リタル順位ヲ有スル質権カ第三者ニ譲渡サレタルトキハ第千百十七条ノ規定ヲ適用ス 第千百七十条 質権ニ関シ船舶登記簿ノ記入カ実際ノ法律上ノ状況ト合致セサルトキハ土地台張ノ訂正ニ関スル第八百十三条ノ規定ニ依リ登記簿ノ訂正ヲ請求スルコトヲ得 質権カ不法ニ取消サレタルトキハ第八百十四条第二項ノ規定ニ依リテ船舶登記簿ノ正当ナルコトニ反対スル旨ヲ登記スルコトヲ得此反対カ登記セラレタル間ハ船舶ヲ譲渡シ又ハ之ニ負担ヲ加ヘタル場合ニ於テ取得者ニ対シテハ質権カ登記セラレタルト同一ノ効力ヲ有ス 第千百七十一条 船舶ハ登記セラレタル債権額及ヒ登記セラレタル利率ニ従フ利息ニ対シテノミ担保ス法定利息及ヒ費用ニ対スル責任ハ抵当ニ関スル第千〇二十七条ノ規定ニ依リテ之ヲ定ム 債権カ無利息ナルカ又ハ利率カ百分ノ五以下ナルトキハ質権ヲ伸張シテ同順位又ハ劣等順位ノ権利者ノ同意ナク船舶ヲシテ百分ノ五マテノ利息ニ対シ其責ニ任セシムルコトヲ得 第千百七十二条 質権ノ効力ハ船舶ノ附属物ニ及ブ但船舶所有者ノ所有権ニ属セサル附属物ニ付テハ此限ニ在ラス 附属物ノ責任ニ付テハ抵当ニ関スル第千〇三十条ノ規定ヲ準用ス 第千百七十三条 第千百十四条乃至第千百六十四条ノ規定ハ質取債権者カ船舶ノ占有ヲ得サルコトニ因リテ別段ノ事情ヲ生スル限ハ之ヲ適用セス又第千百六十一条ノ場合ニ於テハ質権ノ消滅ヲ請求スル権利ハ質物返還ノ請求権ニ代ハルモノトス 第千百七十四条 質入人ハ質取債権者ニ弁済シテ質権ノ取消ニ必要ナル証書ノ引渡ヲ請求スルコトヲ得対人債務者カ船舶登記簿ヲ訂正スルニ付キ法律上ノ利益ヲ有スルトキハ右ト同一ノ権利ヲ有ス 第千百七十五条 質取債権者ハ執行名義ニ依リテノミ強制執行ニ関スル規定ニ従ヒ船舶及ヒ其附属物ニ付キ弁済ヲ求ムルコトヲ得 第千百七十六条 債権者カ知レサル場合ニ於テ抵当債権者ヲ除却スルニ付キ第千〇七十七条又ハ第千〇七十八条ニ掲クル要件カ存スルトキハ公示催告ノ手続ニ依リ質権ト共ニ債権者ヲ除却スルコトヲ得此場合ニ於テ除却ノ判決アルトキハ質権ハ消滅ス 第千百七十七条 質権ハ船舶カ担保スヘキ債権ノ最高額ノミヲ指定シ債権ノ確定ヲ留保シテ之ヲ設定スルコトヲ得此場合ニ於テ右最高額ハ之ヲ船舶登記簿ニ登記スルコトヲ要ス 債権カ利息付ナルトキハ前項ノ最高額ヲ定ムルニ付キ利息ヲ算入ス 第千百七十八条 持参人払証券、為替証券又ハ裏書ニ依リテ譲渡スコトヲ得ル其他ノ証券ニ本ツク債権ヲ担保スル質権ニ関シテハ第千〇九十九条ノ規定ヲ準用シ又持参人払証券ニ本ツク債権ヲ担保スル質権ニ関シテハ第千〇九十八条ヲモ準用ス 第千百七十九条 第千百六十七条乃至第千百七十八条ノ規定ハ船舶ノ持分ニ付テ存スル質権ニ之ヲ適用ス 第二節 権利質 第千百八十条 権利ハ又質権ノ目的タルコトヲ得 権利質ニ付テハ第千百八十一条乃至第千二百〇二条ノ規定ニ依リテ別段ノ定ナキ限ハ動産質ニ関スル規定ヲ準用ス但第千百十七条及ヒ第千百十二条第二項ノ規定ハ之ヲ適用セス 第千百八十一条 権利質ハ権利ノ譲渡ニ関スル規定ニ依リテ之ヲ設定ス権利ノ譲渡ニ付キ物ノ引渡ヲ要スルトキハ第千百十四条及ヒ第千百十五条ノ規定ヲ適用ス 権利カ譲渡スコトヲ得サルモノナルトキハ此権利ニ付キ質権ヲ設定スルコトヲ得ス 第千百八十二条 或給付ヲ請求スルコトヲ得ヘキ権利カ質権ノ目的タルトキハ質取債権者ト給付ノ義務ヲ負担スル者トノ法律関係ニ付キ権利譲渡ノ場合ニ於テ取得者ト義務者トノ法律関係ニ適用セラルヽ規定ヲ準用ス 第千百八十三条 質入セラレタル権利ハ質取債権者ノ承諾アリタルトキニノミ法律行為ニ因リテ之ヲ消滅セシムルコトヲ得此承諾ハ第七百九十七条第三段ノ規定ノ適用ナキ限ハ権利者ニ対シテノミ之ヲ表示スルコトヲ要ス又此表示ハ之ヲ取消スコトヲ得ス 権利ヲ変更スル場合ニ於テ此変更カ質権ヲ制限スルトキ亦同シ 第千百八十四条 質取債権者ハ執行名義ニ依リテノミ強制執行ニ関スル規定ニ従ヒ質権ノ目的タル権利ニ付キ自己ノ弁済ヲ求ムルコトヲ得但別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス又第千百三十六条及ヒ第千百五十二条第二項ノ規定ハ本条ノ規定ニ因リテ影響ヲ受クルコトナシ 第千百八十五条 質入スルニ付キ物ノ引渡ヲ要スル権利カ質権ノ目的タルトキハ物ノ返還ニ本ツク質権ノ消滅ニ付キ第千百六十条ノ規定ヲ準用ス 第千百八十六条 債権ヲ目的トスル質権ニ付テハ第千百八十七条乃至第千百九十七条ノ特別規定ヲ適用ス 第千百八十七条 譲渡契約ノミニ依リテ譲渡スコトヲ得ヘキ債権ノ質入ハ債権者カ債務者ニ対シ之ヲ通知シタルトキニノミ其効力ヲ有ス 第千百八十八条 債務者ハ其債権者及ヒ質取債権者ニ共同ニ非サレハ給付ヲ為スコトヲ得ス債権者又ハ質取債権者ハ債務者ニ対シ此者カ双方ニ対シ共同ニ其給付ヲ履行スルコトヲ請求シ又ハ履行ノ代ハリニ債務ノ目的物ヲ双方ノ為メニ供託シ若クハ此物カ供託ニ適セサルトキハ之ヲ裁判上任定セラレタル保管人ニ引渡スコトヲ請求スルコトヲ得 第千百八十九条 第千百三十五条第二項ニ掲クル要件カ発生シタルトキハ質取債権者ハ質権ノ目的タル債権ヲ取立ツルコトヲ得此債務者ハ質取債権者ニ対シテノミ給付ヲ為スコトヲ得金銭ニ対スル債権ニ付テハ質取債権者ハ自己ノ弁済ヲ求ムルニ必要ナル限度ニ於テ之ヲ取立ツルコトヲ得此場合ニ於テ質取債権者ハ債権ヲ取立ツル権利ヲ有スル限ハ金銭ノ支払ニ代ヘテ其債権ヲ自己ニ譲渡スヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得 質権ノ目的タル債権ニ関スル其他ノ処分ハ質取債権者之ヲ為スコトヲ得ス然レトモ第千百八十四条ノ規定ニ従ヒ右ノ債権ニ付キ自己ノ弁済ヲ求ムル権利ハ影響ヲ受クルコトナシ 第千百九十条 質権ノ目的タル債権カ満期トナルニ付キ告知ヲ要スル場合ニ於テ債権者カ其告知ヲ為スニハ質取債権者カ債権ノ利得ヲ取収スル権利ヲ有スルトキニノミ此者ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス 債務者カ為シタル告知ハ其債権者及ヒ質取債権者ニ対シ共同ニ之ヲ表示シタルニ非サレハ其効力ヲ生セス 第千百三十五条第二項ニ掲クル要件カ発生シタルトキハ質取債権者モ亦告知ヲ為スコトヲ得債務者ノ告知モ亦質取債権者ニ対シ之ヲ表示スルニテ足ル 第千百九十一条 第千百八十八条乃至第千百九十条ノ規定ハ質取債権者及ヒ債権者カ別段ノ合意ヲ為シタルトキハ之ヲ適用セス 第千百九十二条 質取債権者及ヒ債権者ニ対シ共同ニ給付ヲ為スコトヲ要スル場合ニ於テ債権カ満期トナリタルトキハ質取債権者及ヒ債権者ハ互ニ債権ノ取立ニ加ハルヘキ義務ヲ負担ス 質取債権者カ債権者ノ加ハルコトナクシテ債権ヲ取立ツルコトヲ得ル限ハ整正タル取立ヲ為スコトニ付キ注意ヲ加フルコトヲ要ス又債権者ニ対シ遅滞ナク右取立ノ通知ヲ為スコトヲ要ス但通知ヲ為シ得サル事情アルトキハ此限ニ在ラス 第千百九十三条 質権ノ目的タル債権カ満期トナルニ付キ告知ヲ為スコトヲ要スル場合ニ於テ債権ノ確固ヲ害セラレタルカ為メ整正タル財産管理法ニ従ヒ其取立ヲ必要トスルトキハ告知ヲ為ス権利ヲ有セサル質取債権者モ債権者ニ対シ告知ヲ為スヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得又右ト同一ノ要件ニ依リテ債権者ハ質取債権者ニ対シ告知ニ付キ其同意ヲ要スル限ハ之ヲ請求スルコトヲ得 第千百九十四条 第千百八十八条及ヒ第千百八十九条ノ規定ニ依リテ為シタル債務者ノ給付ニ因リテ債権者ハ其目的物ヲ取得シ質取債権者ハ此物ニ付キ質権ヲ取得ス給付カ土地所有権ノ譲渡ニ存スルトキハ質取債権者ハ保全抵当ヲ取得ス 第千百九十五条 第千百八十八条ノ規定ニ依リテ金銭ニ対スル債権ヲ取立タル場合ニ於テ質取債権者ノ利益ヲ制限スルコトナクシテ為シ得ヘキ限ハ質取債権者及ヒ債権者ハ相互ニ後見保証金ノ備付ニ関スル規定ニ従ヒ右取立タル金額ヲ利息付ニテ備付ケ且同時ニ質取債権者ノ為メニ質権カ設定セラルコトニ加ハルヘキ義務ヲ負担ス此場合ニ於テ金額備付ノ方法ハ債権者之ヲ定ム 第千百八十九条ノ規定ニ依リテ金銭ヲ取立タル場合ニ於テ其金額カ質取債権者ニ弁済スル為メ此者ニ属スル限ハ質取債権者ノ債権ハ債権者ニ依リテ弁済セラレタルモノト見做ス 第千百九十六条 債権ヲ目的トスル質権ノ効力ハ債権ノ利息ニ及ブ此場合ニ於テハ第千〇三十一条第二項、第千〇三十二条及ヒ第千〇三十三条ノ規定ヲ準用ス又質取債権者カ質権ノ目的タル債権ノ債務者ニ対シ債権取立ノ権利ヲ行使スル旨ヲ通知スルトキハ此通知ハ差押ニ代ハルモノトス 第千百九十七条 多数ノ質権カ同一ノ債権ニ付キ存立スルトキハ右質権中優先ノ質権ヲ有スル質取債権者ノミ債権ヲ取立ツルコトヲ得 第千百九十八条 債権ヲ目的トスル質権ニ関スル規定ハ土地債務又ハ定期土地債務ヲ目的トスル質権ニ付キ之ヲ適用ス 第千百九十九条 為替証券其他裏書ニ依リテ譲渡スコトヲ得ル証券ヲ質入スルニハ債権者及ヒ質取債権者カ合意シ且ツ裏書シタル証券ヲ引渡スヲ以テ足ル 第千二百条 持参人払証券ヲ目的トスル債権ニ付テハ動産質ニ関スル規定ヲ適用ス 第千二百〇一条 為替証券其他裏書ニ依リテ譲渡スコトヲ得ル証券又ハ持参人払証券カ質権ノ目的タルトキハ第千百三十五条第二項ニ掲クル要件カ発生セサルトキト雖モ質取債権者ハ告知ヲ為シ又ハ債権ヲ取立ツルコトヲ得債務者ハ質取債権者ニ対シテノミ給付ヲ為スコトヲ得 第千二百〇二条 有価証券ヲ目的トスル質権ノ効力ハ右証券ニ属スル利息、定期金又ハ利益配当ノ証券カ質取債権者ニ引渡サレタルトキニノミ此等ノ証券ニ及フ然レトモ質入人ハ此等ノ証券カ第千百三十五条第二項ニ掲クル要件ノ発生前ニ満期ト為リタルトキハ其引渡ヲ請求スルコトヲ得但別段ノ定マルトキハ此限ニ在ラス