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第一条 吾人ノ宣布セントスル一般ノ法律ハ或ハ之ヲ印刷シ或ハ之ヲ説教ニ於テ朗読シ或ハ常例ノ場所ニ貼付スルニ依テ公ケト為ス可シ第二条各法律ニ於テ之ヲ循守スヘキ日ヲ定ム可シ
第四条 我民法ハ我権柄ニ属スル人及ヒ物ニ之ヲ適施ス可シ然レ供外国ニ居住スル辺留奴ノ国士及ヒ辺留奴邦内ニ居住スル外国人ハ凡テノ所為ノ為メ其身ノ能力ニ付テハ各自其本国ノ法法律ニ従フ可キモノトス所為ノ法式ハ彼等ノ所為ヲ行フタル国ノ法律ニ従テ裁判ス可キモノトス
第五条 我法律ノ允許スル場合ニ於テ外国ノ法律ヲ引証セント欲スルモノハ其正文ヲ指示シ及ヒ充分ニ其法律ノ現ニ行ハルル事ヲ証明ス可シ
第七条 適法ニ宣令シタル法律ハ之ヲ知ラサル旨ヲ裁判所ニ申述スルモ無効ノ者トス
第九条 人ハ生活シ及ヒ生長ス可キ景情ニテ生レシ時ヨリ其死亡ニ至ルマテ一人ナリトス
第十条 然レトモ未タ生レサル者モ亦在胎ノ時ヨリ其人権ヲ有ス可シ但シ彼等ノ生活シ及ヒ生長ス可キ景情ニテ生ルル時二限ル者トス
第十九条 数人血統ヲ共ニスル時其相亘ノ干係ヲ称シテ血属親ト云フ
第二十条 若シ血属親ノ父若クハ母ノミヲ同フスル時ハ是レ乃チ異婚ノ血属親即チ唯一方ノミノ血属親ナリトス同第二十二条一方ノミノ血属親ハ両方ノ血属親ヨリ一級下ルモノトス
第二十一条 血統必級ハ或人其宗系ノ他人ト血統ヲ同シ父ハ某系ノ二人其所出ノ同シキニ因リ血統ヲ同フスル代ノ数ニ従テ算計ス可シ而シテ其一代ヲ以テ一級ト為ス故ニ父ト子トハ第一級トシ兄弟ハ第二級トシ伯叔父ト甥ドハ第三級トス
第二十三条 夫婦ノ一方ノ血属親ハ其配偶者ノ姻属親ニシテ同系及ヒ同級ノ者トス
第二十七条 目的ノ有益ニシテ吾人ノ保護スル所ノ邑及ヒ会社ハ政府ノ監督ヲ受クル無形人ニシテ権ヲ得及ヒ義務ヲ負フ事ヲ得可シ同第二十八条政府ノ法律ニ服従スル人ヲ指シテ臣ト云ヒ邦境内ニ於テ国士ト認メラレタル者ヲ指シテ国士ト云ヒ民事会社ノ一ニモ属セサル者ヲ指シテ外国人ト云フ
第二十九条 婚姻ヲ為スニハ男ハ満十八歳及ヒ女ハ満十六歳ニ至リタルヲ要ス
第三十条 夫婦ノ承諾ハ婚姻ノ効アル為メニ必要ノ者トス
第三十三条 父母ノ許諾ヲ受クレハ祖父母ノ許諾ヲ受クルニ及ハス父方ノ祖父母ノ許諾ヲ受クレハ母方ノ祖父母ノ許諾ヲ受クルニ及ハス而シテ父又ハ祖父ノ許諾ヲ受クレハ母又ハ祖母ノ許諾ヲ受クルニ及ハス、第三十四条許嫁ノ為メ与ヘタル許諾ハ之ヲ与ヘタル人ノ死去シ又ハ其身分ヲ変更シタル時ト雖供婚姻ヲ施行スルニ充分ナリトス
第三十五条 第三十二条ニ記シタル人ノ一人父母無ク又ハ祖父母無キ時或ハ彼等カ無能力者ナル時ハ後見人ノ許諾ヲ得可シ但シ後見人ハ後見管理人ヲシテ許諾ヲ与フル事ヲ允許セシム可キ者トス英第百〇二条父及ヒ後見人ナク又母ナキ二十一歳以下ノ者ハ其婚姻ニ許諾ヲ与フ可キ者ナキノ誓ヲ為スニ於テハ人ノ許諾ヲ要セス婚姻ヲ為ス事ヲ得可シ
第三十六条 未丁年ナル私生子及ヒ邑ノ救助ヲ受クル者及ヒ未タ自己ノ受ケシ施済ヲ返還セサル者又ハ其子ノ適出タルト私生タルトヲ問ハス邑ノ救助ヲ受クル者ハ邑ノ允許ヲ得スシテ婚姻ヲ為スヲ得ス
第三十七条 父母祖父母後見人又ハ邑ノ故障ヲ述ヘサルトキハ其許諾ヲ為シタル者ト思量ス可シ
第四十二条 奸淫ヲ為シタル双方ハ決シテ相結婚スルヲ得ス
第四十三条 夫婦ノ一方ヨリ其配偶者ト疑ハシキ交接ヲ為シタルカ為メ告訴セラレタル人ハ婚姻裁判所ニ於テ其配偶者ト交接スル事ヲ禁止セラレタル時ハ決シテ其配偶者ト婚姻ヲ為スヲ得ス
第四十四条 婚姻ハ血統ノ適法タルト不適法タルトヲ問ハス尊属親ト卑属親トノ間伯叔父ト姪トノ問伯叔母ト甥トノ間ニ行フ事ヲ禁ス
第四十六条 婦ハ忌服ノ終リシヨリ一年ヲ経ルニ非サレハ再婚ヲ為スヲ得ス而シテ離婚シタル配偶者ハ裁判言渡ニ因テ定メタル期限ノ終リタル後ニ非サレハ再婚ヲ為スヲ得ス
第四十七条 婚姻ノ予約ハ貞節及ヒ名誉ノ法ニ循ヒ之ヲ為ス可シ然レ供更ニ権利ヲ生セサル者トス
第四十八条 若シ許婚者双方カ公証人及証人ノ面前ニ於テ許婚女ノ父又ハ後見人ノ立会ヲ受ケタル婚姻ノ契約書ニ姓名ヲ手署シタルトキ又ハ法律上ニ於テ故障ヲ述フル事ヲ許サレタル人ノ許諾ヲ以テ許婚シタル双方ノ承諾アリテヨリ既ニ一回又ハ数回婚姻ヲ公告シタルトキハ婚姻裁判所ハ許婚者中一方ノ願ニ因リ充分ノ理由ナクシテ結婚ニ故障ヲ述フル所ノ許婚男ヲ損害ノ賠償ニ処断セサル可カラス且又許婚男ニ悪意ノアル事分明ナルカ若クハ其拒絶ノ道義ヲ害スルニ於テハ其許婚男ヲ四日以上二十日以下ノ禁錮ニ処スル事ヲ得可シ
第五十一条 何レノ婚姻タリト雖供許婚者双方ノ住スル地ノ寺院ニ於テ拝神ノ後引続キ三度ノ日曜日ニ三度ノ公告ヲ為シタル後ニ非サレハ契約スル事ヲ得ス
若シ夫婦中ノ一方現今ノ住所ニ八十日間定居セサル時ハ従前ノ住所ニ於テモ亦婚姻ノ公告ヲ為ス可シ
第五十五条 前二条ノ場合ニ於テ法教師ハ此等ノ告知ヲ婚姻裁判所ニ通知セサル可カラス而シテ公告ヲ継続スル前若クハ公告ヲ為シタル証券ヲ交付スル前ニ其裁判所ノ決議ヲ待タサル可カラス
第五十七条 神前ニ於テノ婚儀ハ最終ノ公告ヨリ八十日内ニ之ヲ行フ可カラス若シ之ヲ行フニ於テハ新ニ公告ヲ為ササル可カラス
第五十八条 婚姻ハ神前ニ於テ婚儀ヲ行フニ因リ成就ス可シ但シ其婚儀ハ寺院ニ於テ少ク供証人二人ノ面前ニ於テ我国ノ信官公ケニ之ヲ為ササル可カラス
第六十条 神前ニ於テ婚儀ヲ行フタル地ノ法教師ハ直ニ身分証君ノ簿冊ニ其旨ヲ記載シ且婚姻シタル双方ニ婚姻ノ証書ヲ交付セサル可カラス
若シ其夫ノ我国ノ他邑ニ居住スルトキハ婚儀ヲ行フタル法教師ハ其邑ノ法教師ニ報知ヲ為ササル可カラス
第六十四条 左ノ各人ハ婚姻ノ執行ニ故障ヲ述フルノ権利アリ第一第三十一条三記載シタル人ニ関スル時ハ此等ノ人ノ血属親及ヒ此等ノ人ニ属スル邑第二官庁及ヒ第三十二条乃至第四十条ニ因リ承諾ヲ必要トスル所ノ人但シ第三十二条ニ記載シタル各人ノ中ニテ其承諾アレハ他ノ承諾ヲ無益ト為サシムル所ノ者而已故障ヲ述フル事ヲ得可シ
第六十五条 故障ハ婚姻公告ヲ停止シ公告ノ証券ヲ渡サシメサル為メ及ヒ神前ニ於テ婚儀ヲ行ハシメサル為メ夫婦中一方ノ住スル地ノ法教師ニ渡ス所ノ願書ヲ以テ之ヲ為ス可シ
第六十六条 初段此願書ニハ故障ノ理由ヲ記セサル可カラス
第六十七条 法教師ハ右ノ願書ヲ受取リ婚姻公告ヲ停止スルカ為メ婚姻公告ヲ為ス可キ他ノ法教師ニ其願書ノ報知ヲ為シ且其一通ハ婚姻裁判所ニ送付シ他ノ一通ハ夫婦双方ノ要スル時之ヲ送付セサル可カラス
第六十八条 婚姻裁判所ハ夫婦及ヒ故障者ヲ呼出シ故障ノ効アリヤ否ニ付キ簡短ナル訴訟手続ヲ為シタル後直ニ宣告ヲ為ス可シ
第七十二条 故障ノ費用ハ故障者ノ担任ナリトス但シ第三十八条第三十九条及ヒ第四十条ノ場合ニ於テ故障ニ正当ノ理由有リタルトキ故障ヲ受ケタル者カ其費用ヲ償フハ格別ナリトス
第七十三条 婚姻裁判所ニ於テ公ケノ安寧ノ障碍タルコトヲ知ルトキハ之ヲ調査シ且職権ヲ以テ之ヲ審判セサル可カラス
第七十四条 婚姻裁判所ハ既ニ決定スル婚姻ニ無効タル原由アル事ヲ知ルトキハ亦職権ヲ以テ前条ノ如キ手続ヲ為ササル可カラス而シテ調査ノ後婚姻ニ効アリヤ否ヤヲ宣告ス可シ
第七十六条 若シ婚姻ノトキ無効ノ原由ノ夫婦ニ知レサルトキハ無効ノ宣告ハ夫婦及ヒ婚姻ヨリ生レタル子ニ対シ離婚ノ効ヲ生シ而シテ夫婦ハ再ヒ婚姻スル事ヲ得ス
第七十七条 若シ夫婦ノ一方無効ノ原由アル事ヲ知ラサルトキハ無効ノ宣告ハ唯其一方及ヒ婚姻ヨリ生シタルトキニ対シ離婚ノ効ヲ生ス可シ
第七十九条 辺留奴人ノ外国ニ於テ為シタル婚姻ハ正当婚姻ノ効ヲ生スル為メ我国ニ於テ婚姻裁判所之ヲ確定セサル可カラス但シ此確定ハ之ヲ既往ニ及ボス可シ
第八十条 若シ外国ニ於テ為シタル婚姻ノ場合ニ於テ第五十一条ニ循ヒ三回ノ公告ヲ為ササルトキハ婚姻確定ノ前一回ノ公告ヲ為ス可シ
第八十三条 夫ハ一家ノ長ト成リ己レノ傍ニ婦ヲ置キ之ヲ保護シ其地位ト財産トニ応シ之ヲ養ヒ且裁判所ニ於テ其代理ヲ為ササル可カラス
第八十四条 婦ハ其夫ノ姓ヲ名乗リ其夫ノ位殿ト財産トヲ有シ夫ヲ補助シ夫ノ命令ヲ施行シ又他ヲシテ之ヲ施行セシメサル可カラス
第八十五条 婦ハ凡テノ譲与及ヒ獲得ヲ為スニ付其夫ノ許可ヲ得サル可カラス
第八十六条 夫ハ第八十二条乃至第八十五条ニ於テ保証スル処ノ権利ヲ放棄スルヲ得ス
第百三条 父又後見人母及ヒ此他ノ者才能ナキニ因リ又ハ英国内ニ在ラサルニ因リ幼者ノ婚姻ニ許諾ノ意ヲ表スル事ヲ得サルカ若クハ当然ノ理由ナク其婚姻ニ許諾ヲ与フル事ヲ肯ンセサル時ハ衡平裁判所ニ於テ此婚姻ヲ允許スルヲ得可シ
第百八条 婚姻ハ左ノ条々ニ因リ終ル可シ第一夫婦中ノ一方死去スル事第二夫婦中一方ノ発言ニテ裁判所ノ宣告アル事然レ供婚姻裁判所ハ天主教ヲ奉スル夫婦ノ間ニ離婚ヲ宣告ス可カラス唯畢生間民法上婚姻ノ効験ヲ生セシメサル事ヲ得可シ但シ婚姻裁判所ハ離婚ノ何レノ場合ニ於テモ務メテ夫婦ヲ和合セシメサル可カラス
第百十条 確定ノ原由ハ左ノ条々ニ列記ス
第百十一条 第一奸淫原告人ハ全ク事実ヲ証明シ又ハ重重ノ推測ヲ以テ之ヲ証セサル可カラス
第百十二条 然レ供其配偶者ノ奸淫ヲ許シ若クハ殊更ニ封助シタル配偶者ノ訴訟ハ受理セラレサルモノトス
第百十三条 第二重罪又ハ重キ軽罪
夫婦中ノ一方カ重罪ノ為メ民権剥奪ノ刑ニ処セラルル時又ハ重罪若クハ重キ軽罪ニ付キ禁錮若クハ四年間追放ノ刑ニ上処セラレタルトキハ他ノ一方ハ離婚ヲ要求スルヲ得可シ但シ毫モ重罪軽罪ニ干渉セサルヲ要ス
第百十四条 第三遺伝病伝染病又ハ同室スルヲ得サル身体ノ残缺
夫婦中一方ノ瘋癲白痴モ亦他ノ一方ヲシテ離婚ヲ要求セシムルヲ許ス
第百十五条 夫婦中一方他ノ疾病又ハ残缺ニ因リ離婚ヲ要求スルトキハ婚姻裁判所ハ免許医ヲシテ十八ケ月間治療ヲ施サシムルノ命ヲ下シ其期限ヲ経過スレハ疾病又ハ残缺ノ性質及ヒ治療シ得ラルルヤ否ヤノ問題ニ付医師二名ノ報告ヲ其要求書ニ附加セシム可シ但シ其報告ニ由リ毫モ治療ノ目的ナキトキハ離婚ヲ宣告ス可シ
第百十六条 第四夫婦中一方ノ改宗ハ他ノ一方ヲシテ離婚ヲ要求セシムルノ原因ト成ル可シ
第百十七条 第五夫其婦ノ明諾セサルニ都府ノ権ヲ放棄スルトキハ婦ハ離婚ヲ要求スルヲ得可シ但シ政府ノ此放棄ヲ許可スル前ニ其願書ヲ差出ササル可カラス
第百十八条 第六置去
夫婦中一方他ノ一方ヲ遺棄シ承諾ヲ得スシテ一年間不在ナルトキハ場合ニ従ヒ遺棄セラレタル配偶者ハ通常呼戻書又ハ掲示呼戻書ヲ以テ失踪者ヲ呼戻シ而シテ其義務ヲ履行セシムル事ヲ得可シ
第百十九条 若シ夫カ要用ノ為メ不在ニシテ其家族ヲ養ハサルヲ得サルトキハ其婦ハ三年ノ後ニ非サレハ夫ヲ呼戻ス事ヲ得可カラス
第百二十条 若シ不在ナル配偶者カ其呼庚ヲ受ケシ後ニ帰リ来ラサル時ハ遺棄セラレタル配偶者ハ呼戻書ニ定メタル期限ヨリ一ケ年ヲ経過スルノ後再ヒ不在ノ配偶者ヲ呼戻ス為メ法廷ニ出頭スルヲ得可シ
第百二十一条 若シ右ノ不在者カ此第二ノ期日後ニ猶ホ不在ナルトキハ其不在ハ悪意アル遺棄ト看做ス可シ但シ此不在者ハ何レノ場合ト雖トモ其理由ヲ証明スルヲ得可シ而シテ遺棄セラレタル配偶者ハ離婚ヲ求ムルヲ得可シ
第百二十二条 夫婦ノ一方其配偶者ノ生命健康名誉ヲ害シ或ハ悪シキ待遇粗暴ノ挙動及ヒ始終ノ怠慢ヲ為シ其他此類ノ理由ノ為メニ其一方カ離婚又ハ分居ヲ求ムルトキハ婚姻裁判所ハ糾問ヲ逐ケ場合ニ従ヒ告戒ヲ為シ或ハ有罪ノ配偶者ヲ八日以上二ケ月以下ノ禁錮ニ処シ或ハ分居又ハ離婚ヲ宣告セサル可カラス
第百二十三条 分居ハ唯ニケ年間之ヲ宣告シ而シテ同一ノ婚姻ニ付二回之ヲ宣告ス可シ
第百二十四条 婦ハ分居若クハ離婚ノ訴訟中其後見管理人ニ補佐人ヲ要求シ或ハ補佐人ト為ル可キ人ヲ自カラ指名スルヲ得可シ但シ後見管理人カ之ヲ拒ムノ理由ナク又婦カ其配偶者ヲ毫モ宥恕スルノ原由無キ時ニ限ル可シ
第百十三条 我第百三十一条参看
第百二十七条 分居又ハ離婚ノ事件ニ付テハ民事上通常ノ訴訟手続ニ依ル可シ但シ此場合ニ特別ナル次ノ規則ハ出格ノ者トス第一被告人ハ自ラ原告ト成リ反訴ヲ為シ且其権利ヲ陳述シタル後分居又ハ離婚ヲ決言スルヲ得可シ第二原被両告ハ誓ヲ為スヲ得ス第三婚姻裁判所ハ共宣告ヲ為スニ付両告ノ決言ヲ採用スルニ及ハス場合ニ従ヒ要求セラレタル刑ヨリ軽キ刑ヲ宣告スルコトヲ得可シ
第百二十二条 私権ヲ享有セサル未丁年者及ヒ後見又ハ治産禁ヲ受クル丁年者ハ其父母若クハ其祖父母ノ許諾ヲ得スシテ婚姻ヲ為スヲ得ス
第百二十五条 分居及ヒ離婚ノ訴訟ハ若シ夫婦ノ同意スルニ於テハ夫ノ住スル地ノ裁判所又ハ婚姻裁判所ニ之ヲ為ササル可カラス
第百三十一条 離婚ノ訴訟ノ始メ若クハ其訴訟中婦ハ婚姻裁判所ニ訴訟ノ結局ニ至ルマテ己レヲ夫ノ住所ヨリ去ラシムル事ヲ請求シ並ニ夫ヨリ己レノ保養及ヒ訴訟費用ノ為メニ払フ可キ金額ヲ定ムル事ヲ要求スル権利アリ
第百三十二条 婚姻裁判所ハ此要求ニ付キ夫ヲ糾問シ又官府ニ夫ヨリ其婦ノ仮住所ヲ定ムル事ヲ求ムル願書ヲ熟察セサル可カラス但シ裁判所ヨリ此住所ヲ定メタル場合ニ於テ夫ハ婦カ此命令ニ従フ時ニ非サレハ其婦ヲ保養スルノ義務ナシ
第百三十四条 離婚ノ訴訟中夫ハ其子ノ世話ヲ為ササル可カラス但シ婚姻裁判所カ母ノ願ニ因リ若クハ職権上ヨリ別段規定スル時ハ格別ナリトス
第百三十五条 第百十一条第百十三条及ヒ第百二十二条ニ記スル離婚ノ原由ハ熟和ニ因リテ消滅ス可シ若シ此等ノケ条ノ一ノ場合ニ於テ被害ニ配偶者カ離婚ノ原由ヲ知リ得タル日ヨリ三ケ月間告訴ヲ怠リタルトキハ熟和シタル者ト推測ス可シ
第百三十六条 然レトモ若シ有罪ノ配偶者カ熟和ノ後新ニ告訴ヲ為シタルトキハ復其宥恕シタル事実ヲ引出スルヲ得可シ
第百三十九条 若シ婚姻ヨリ生レタル子アル場合ニ於テ婦子亘ニ財産ヲ分派スルトキハ婦ハ熟談ノ上ニテ其夫ヨリ返還シタル者又ハ裁判所ノ判決ノ後返還シタル者ヲ其分派ス可キ財産中ニ包含セシメサル可カラス
第百四十条 夫婦中一方ノ疾病又ハ残缺ニ因リ婚姻ノ解ケタルトキ疾病若クハ残缺ナル配偶者カ生活スルニ充分ノ財産ヲ有セサルトキハ婚姻裁判所ハ壮健ナル配偶者ヲシテ其病気ノ保養ヲ助ケシムルコトヲ決定セサル可カラス若シ夫婦カ其金額ニ付協議セサルトキハ民事裁判所ハ簡短ナル訴訟手続ヲ行フタル後之ヲ定ム可シ但シ病情ノ変化シタルトキハ夫婦中一方ノ願ニ因テ其金額ヲ増減セラルル者トス
第百四十六条 告訴セラレタル婦ノ産ミシ子ヲ除キ夫ノ其他ノ相続人ハ夫ト同シク子ノ適出ニ非サルコトヲ訴出スルコトヲ得可シ
第百四十七条 私生子ハ其父母ノ婚姻スルトキ嫡出ノ子タル事ヲ得可シ但シ私生子死去スル時其遺留シタル適出ノ子ハ祖父ノ適出ノ卑属親ト看做ス
第百四十八条 父母ハ其子ヲ養育セサル可カラス即チ宗旨上ノ教育ヲ為シ必要ナル智識技芸ヲ教訓シ将来ノ幸福ヲ予備セサル可カラス又其子ノ名誉ニ健康ニ注意シ之ヲ相当ニ保養セサル可カラス
第百四十九条 後見管理人ハ父母ノ其子ニ対シ義務ヲ行フカヲ注意シ義務ヲ怠ル有レハ之ヲ戒メ猶ホ聴カサルトキハ大法官ニ之ヲ告知セサル可カラス而シテ大法官ハ其事件ヲ調査シタルノ後必要ノ処分ヲ為ス可シ
第百五十条 大法官カ子ノ後見ヲ受ク可キ期限間子ニ後見人ヲ附シタルトキハ其父母ハ父権及ヒ其他父タル諸権利ヲ失フ可シ
第百五十三条 親権ハ父母ヲシテ其子ニ対シ義務ヲ行ハシムル為メ法律上父母ニ許与スル所ノ権利ヲ云フ其権利ハ一家長トシテ父之ヲ行フ
若シ父治産ノ禁ヲ受ケタル時ハ婦其夫ノ後見人ノ補助ヲ得テ親権ヲ行ヒ又父死去シタル時ハ婦寡婦タル間ハ自己ノ補佐人ノ助ケヲ得テ之ヲ行フ可シ
但シ離婚ノ後ハ子ヲ依托セラレタル父母中一人親権ヲ行フ可シ
第百五十四条 父母ハ其子ヲ教訓シ家事及ヒ職業ヲ行ハシメ且逃亡シ若クハ誘拐セラレタル時其職権下ニ之ヲ取戻スノ権利アリ
第百五十五条 若シ父母告戒又ハ健康ヲ害セサル正当ノ刑罰ヲ用ヒ其子ヲ従順ナラシムルヲ得サルトキハ小議会ノ許可ヲ得自己ノ費用ヲ以テ其子ヲ拘留所ニ入ルルコトヲ得可シ而シテ其期限ハ確定スルコトアリ又確定セサルコトアリ但シニ年以上継続スルヲ得ス亦丁年ヲ越ユルヲ得ス
第百五十八条 若シ親権ニ従フ子カ法律上利用ノ権利ヲ定メタル遺物ヲ如何ナル方法ニテモ相続スルトキハ父母ハ後見管理人ノ許可ヲ経テ其子ヲ保養シ若クハ一家ヲ維持スル為メニ入額ノ全部又ハ一部ヲ用フル事ヲ得可シ但シ子カ親権ニ従フコトト父母ノ過失無ク貧究スル事ヲ要ス
第百六十二条 父母ト子ト為シタル契約ノ効アルカ為メニハ子ハ非常補佐人ノ立会ヲ受ケ且ツ大法官カ其契約ヲ確認スル事ヲ要ス
第百六十三条 親権ニ従フ子ハ他人ノ保証人ト為リ自己ノ財産ヲ書入質ト為スヲ得ス又自己ノ受ク可キ遺物ニシテ未タ開始セサル者ヲ譲渡スコトヲ得ス
第百六十五条 親権ハ左ノ条々ニ因テ終ル可シ第一父母ノ死去治産禁及ヒ子ノ後見第二子カ丁年ニ至リ其財産利用ノ権ヲ有シタルトキ
例之ハ満二十四歳ト成リ財産ヲ有シ父母ト別居シ其人権ヲ有スルトキノ如キ是ナリ然レトモ若シ二十四歳ノ後猶ホ父母ノ養育ヲ受クルトキハ親権ハ其養育中継続ス可シ第三子ノ婚姻
此場合ニ於テハ男子ハ其人権ヲ得而シテ女子ト夫ノ権下ニ従フ可シ第四親権ヲ行フ人ノ願ニ因リ我小会議ニ於テ満二十歳ノ男子ニ許与スル後見免除
二十歳ノ幼者ノ為メ後見免除ヲ請求スル人ノ願書ハ必ス後見管理人ノ許諾ト父ノ最親近ニシテ自カラ請願ヲ為ササル血属親二名ノ許諾トヲ添ヘサル可カラス第五母ノ再婚
此場合ニ於テハ幼者ハ後見ヲ受ク可シ
第百六十六条 私生子ハ母ノ養育ヲ受ケサル可カラス而シテ母ト同邑ニ属ス可シ
第百六十七条 私生子ノ父ハ其住スル邑ノ許可ヲ以テ婚姻裁判所ニ其子ヲ認知スル事ヲ要求スルヲ得可シ但此場合ニ於テハ子ハ父ノ姓ヲ名乗リ父ノ養育ヲ受ケ父ト同一ノ邑ニ属ス可シ
第二百八条 人口多キ邑ニ於テハ小議会ハ後見人ノ監督ヲ行フ任アル委員ヲ命スル事ヲ得可シ
第二百九条 非常ノ場合ニ於テハ我小議会ハ求メニ因リ後見ヲ受クル人ノ父母ニ後見官ノ権利ヲ与ヘ且父母ヲシテ其怠慢ニ因リ後見ヲ受クル者ニ生ス可キ損害ヲ償ハシメンカ為メニ充分ナル保証金ヲ出サシメ以テ後見官ノ職分ヲ命スル事ヲ得可シ
此場合ニ於テハ父母ハ大法官ニ対シ通常後見官ト同一ノ関係ヲ有ス可シ
第二百十一条 我第二百六十六条参看
第二百十一条 親権ノ下ニ在ラサル幼者未婚若クハ後見ヲ免カレサル幼者及ヒ正当ニ財産処置ノ権ヲ停止セラレ若クハ管轄庁ヨリ後見ヲ命セランタル丁年者ハ後見人ヲ附セラレタル可カラス
孤又ハ貧人ノ財産大管理人アル邑ニ於テハ其管理人ハ此等ノ人ノ位置如何ニ因リ後見人又ハ裁判所ヨリ任スル通常補佐人ノ権利職分ヲ行フ可シ仏、荷、画、魯、英成文ナシ
第二百十三条 男女ノ如何ヲ問ハス財産管理ヲ丁年者ニ禁スルノ理由ハ自カラ財産ヲ管理スルヲ得サルニ至ラシメタル無智不具浪費ト家産ヲ失ハシムル不理ノ所為ニ在リ
第二百十四条 後見官ハ前条ニ記スル理由ニ依リ治産禁ヲ命ス可キ人アルトキ大法官ニ其禁止ヲ為スコトヲ権メサル可カラス但シ父母モ亦此権利ヲ有ス可シ
第二百十八条 若シ後見官カ父母ノ願ヲ免許セス或ハ父母カ後見官ノ願ヲ允許セサルトキハ願ノ理由ヲ調査セサル可カラス但シ大法官本人ヲシテ損害アル所為ヲ行ハシメサルカ為メ直ニ仮ノ処置ヲ為ササル可カラス
第二百二十三条 丁年者ノ治産禁ヲ求ムル者ハ何レノ場合ト雖供此事実ノ為メ訴ヘラルルヲ得ス然レトモ扣訴院ニ於テハ悪意アリト認知シタル場合ニ於テハ訴訟ノ費用ヲ払ハシムルコトヲ得可シ
第二百二十六条 後見人ノ監督ヲ受クル丁年者ハ政権ノ執行ヲ停止セラル可シ
第二百二十八条 治産禁ノ免除若クハ廃棄ハ後見官及ヒ父母ノ申立ニヨリ言渡サル可シ然レトモ若シ後見官父母又ハ治産禁ヲ受ケタル者而已独リ之ヲ要求スルトキハ地方裁判所ハ其要求ノ理アルヤ否ヤヲ審査シテ判決ヲ為ス可シ
第二百三十一条 後見ノ廃棄ハ治産禁ト同一ノ方法ニテ之ヲ公布スヘシ
第二百三十五条 父母ハ其権下ニ生活シテ己レノ財産ヲ有スル子ノ自然ノ後見人タリ而シテ親権ヲ行フ人ハ後見ノ職ヲ行フニ付特別ノ命令ヲ受クルニ及ハス
第二百三十六条 父母ハ方法ノ如何ヲ問ハス其子ニ或ル財産ノ来ルトキハ其住スル地ノ後見官カ目録ヲ作リ得ル為メニ其旨ヲ後見官ニ通知ス可シ但シ洗礼ノ時子ニ与ヘラレタル贈物及ヒ子ノ受クル処ノ年玉ハ本則ノ例外ナリトス
第二百三十九条 後見官ハ其管轄内ノ者カ後見人ノ監督ヲ受ク可キ場合ニ在ルノ報知ヲ得タルヨリ大法官ニ報告ヲ為シ同時ニ後見ノ職ニ適当ナル一人又ハ数人ヲ申立テサル可カラス
第二百四十条 地方警察官其他ノ住民ノ後見人ノ監督ヲ受ク可キ場合ニアルノ報知ヲ得タルトキハ前条ト同一ノ義務ヲ為ササル可カラス而シテ大法官其報知ヲ受ケタルトキハ後見ニ関スル法律ノ施行セラルル為メ必要ナル処置ヲ為ササル可カラス
第二百四十二条 大法官ハ申立テラレタル者ノ一人ニ後見ヲ命ス可シ但シ無能力タルノ原由ヲ知ル場合ハ此限ニ非ス而シテ大法官ハ後見人ニ其授職ノ旨ヲ報知シ誓詞ヲ述フルノ期限ヲ定メサル可カラス
第二百四十三条 後見ヲ受ク可キ人ト財産ヲ共通スル人又ハ其後見ヲ受ク可キ人ト訴訟ヲ為ス人幼者ノ母ヲ除キ凡テ補佐人ナク政権ヲ行フヲ得サル人政権ヲ失フタル人又ハ政権ヲ行フ事ヲ停止セラレタル人ハ後見人ト為ルヲ得サル者タリ
第二百四十五条 何人タリト雖トモ大法官ヨリ命セラレタル後見ノ職ハ之ヲ承諾セサル可ラス但シ正当ノ原由アリテ之ヲ辞スル場合ハ此限ニ非ス而シテ邑中若シ後見人タル可キ人ノ在ラサル時ハ単純ノ住民ヲ以テ後見人ト為スヲ得可シ
第二百四十六条 管轄庁ヨリ命セラレタル後見ノ職ヲ免カルル適法ノ原由ハ左ノ如シ
第一 小議会ノ役員政府ノ書記官及ヒ僧侶
第二 三個ノ後見職裁判所ヨリ任スル三個ノ補佐職或ハ此等ノ職務ノ困難ナルトキハ其職務ノ二個
第三 六十歳ノ齢又ハ他人ノ事務ヲ管理スルヲ得サル重劇ナル身体ノ残缺
第四 孤又ハ貧人ノ大管財人ノ職務
第二百四十七条 大法官ヨリ後見職ヲ命セラレタル者ハ定日ニ法廷ニ出頭ス可シ若シ其者大法官ノ任スル場所外ニ住スルトキハ其住所ノ大法官ニ予メ通知ヲ為シテ法廷ニ出頭セサル可ラス而シテ後見職ニ係ル法律ノ一部ヲ其法庭ニ差出シ此法律ノ命スル如ク其職ヲ行フ誓詞ヲ述フ可シ
第二百四十八条 後見人誓詞ヲ述ヘタル以上ハ授職書ヲ渡シ其姓名ヲ後見簿冊ニ登記ス可シ但シ後見人ハ此時以来法律ノ命スル職分ヲ行フニ付怠慢タルニ因リ幼者ノ受タル損害ノ責ニ任ス可シ
第二百四十九条 若シ後見職ヲ命セラレタル者カ正当ノ理由ヲ以テ其後見職ノ免除ヲ求ントスル時ハ誓詞ヲ述フル為メ定リタル会席ニ於テ其理由ヲ弁明セサル可カラス但シ右ノ期限後ニ理由ノ生シタル場合ニ於テハ後見職ヲ免レンカ為メ後日ニ之ヲ弁明スルヲ得可シ
第二百五十条 若シ大法官カ充分ノ理由アリト認メサル時ハ後見職ヲ命セラレタル者ハ小議会ニ上訴スルヲ得可シ然レトモ該後見人ハ訴訟中仮リニ後見職ヲ行ハサル可カラス
第二百五十一条 後見職ヲ免除セラレサル者カ之ヲ拒絶スル時ハ其拒絶中政権及ヒ凡テノ便益ヲ失フ可シ
且大法官ハ拒絶者ヨリ費用ヲ出サシメ二年間後見職ヲ行フ代理後見人ヲ命セサル可カラス
第二百五十三条 後見人ハ凡テノ関係ニ於テ後見ヲ受クル者ニ注意セサル可カラス又後見ヲ受クル者ノ父ニ代リ後見官ノ監督ヲ受ケテ其教訓ヲ為ス可シ
第二百五十六条 後見人ハ後見ヲ受クル者ノ財産管理ニ於テ善良ナル家長カ自己ノ財産ヲ管理スルト同一ノ注意ヲ為ササル可カラス且後見人ハ其詐偽又ハ怠慢ヨリ生シタル損害ヲ賠償セサル可カラス
第二百五十四条 後見ヲ受ケル者ハ後見人ニ対シ尊敬従順ナラサル可カラス若シ後順ナラサル時ハ後見人其旨ヲ後見官ニ報知シ後見官ハ後見人ニ温和ナル強迫方ヲ用ユル事ヲ許ス可シ而シテ若シ此強迫方ノ毫モ効験アラサル時ハ後見官ハ其旨ヲ大法官ニ報知シ大法官ハ其処分ノ方法ヲ定ム可シ
第二百五十九条 後見人ハ其職ヲ受クルヤ否ヤ後見官ヲシテ其管理ス可キ財産ヲ己レニ引渡サシム可シ
此迄後見ヲ設ケサリシ時及ヒ管轄庁其職務ヲ以テ財産ノ目録ヲ作ラサリシ時ハ後見人後見官代理人ノ面前ニ於テ目録ヲ作ル可シ此目録ハ大法官ノ書記官若クハ公証人大法官ニ対シ誓詞ヲ述ヘ以テ之ヲ記ス可シ
若シ之ニ反シテ既ニ後見人ヲ設ケテ後見職ヲ行ヒシ時ハ新後見人ハ後見官代理人ノ面前ニ於テ旧後見人ノ最終ノ目録ヲ調査ス可シ
第二百六十三条 後見官ヨリ設ケラレタル後見人ニハ唯後見ヲ受クル者ノ使用ニ必要ナル財産ノ一部ヲ渡シ其余ハ後見官ノ指揮ニ従ヒ公売スルカ若クハ安全ノ場所ニ保存ス可シ
第二百六十四条 後見ヲ受クル者ニ属スル債主権文書若クハ証書及ヒ其他重要ナル書類並ニ自己ノ使用ノ為メ渡ス可カラサル銀食器宝飾及ヒ其他価アル物品ハ後見官之ヲ保存シ而シテ其責ニ任ス可シ
第二百六十七条 後見ヲ受クル者ニ属スル金銭ハ概シテ之ヲ負債ノ消却ニ使用ス可シ但シ其余ハ期限ヲ定メス最モ利益アル約定ニテ利息ヲ取リ之ヲ貸与ス可シ
第二百六十八条 後見人ハ後見官ノ充分ナリト査定シタル担保ヲ得ルニ非サレハ決シテ後見ヲ受クル者ノ金銭ヲ貸与ス可カラス若シ後見人後見官ノ許可無ク金銭ヲ貸与シタルニ於テハ自カラ其責ニ任ス可シ
第二百七十一条 後見人ハ後見官ノ許可無ク後見ヲ受クル者ノ名義ニ於テ為シタル借用ノ責ニ任ス可シ但シ債主カ此借用金ハ後見ヲ受クル者ノ真ノ利益ニ使用セン事及ヒ後見官カ此使用ヲ許シタルノ証ヲ呈出スル時ハ此限ニ非ス
第二百七十四条 後見ヲ受クル者ニ属スル不動産ハ決シテ著シキ理由無ク之ヲ譲与ス可カラス而シテ一般ノ規則ニ於テハ公売ニ非サレハ之ヲ売却ス可カラス
第二百七十二条 如何ナル後見人タリ供予メ後見官ノ許可無ク後見ヲ受クル者ノ或ル権利ニ関スル訴訟ヲ裁判所ニ為シ及ヒ其権利ニ関スル訴訟ニ答弁スルヲ得ス
後見ヲ受クル者ノ名義ニテ和解又ハ仲裁ヲ為スニハ後見人右ノ許可ヲ要ス可シ
第二百七十三条 許可ヲ得サル後見人ト訴訟和解又ハ仲裁ヲ為シ始ムル者ハ此等ノ所為ハ廃棄スルヨリ生スル凡テノ損害ヲ償フ可シ
第二百七十五条 後見人ハ後見ヲ受クル者ノ為メ明瞭ナル利益アルニ非サレハ不動産ヲ買得ス可カラス
第二百七十六条 後見ヲ受クル者ノ名義ヲ以テ有償ノ名義ニ於テ不動産ヲ獲得スル為メ
後見ヲ受クル者ニ属スル不動産ヲ譲与シ書入質ト為シ
第二百七十九条 後見ヲ受クル者ノ遺物相続ヲ為ス時ハ後見人ハ目録相続ヲ求メサル可カラス且後見官ニ其結果ヲ示ス可シ而シテ後見官ハ遺物相続ヲ承諾シ若クハ辞却ス可キ許可ヲ後見人ニ与ヘサル可カラス
第二百八十一条 凡ソ後見人ハ少ナク供二年毎ニ其管理ノ計算ヲ筆記シテ之ヲ差出ササル可カラス
前ノ計算ノ時決定シタル財産目録又ハ景状書ハ後ノ計算ノ基礎ト成ル可シ景第三百五十条後見人ハ其職ノ終ル時及ヒ裁判官ヨリ命ヲ受クル毎ニ己レノ管理セシ財産ノ計算ヲ為ス可シ
第二百八十二条 後見ノ計算書ハ後見人カ一年内ニ為シタル出納ノ条目ヲ記セサル可カラス又凡テ後見官ノ許可ヲ得テ為シタル出納ハ其許可ノ日附ヲ記セサル可カラス而シテ凡テ計算書ノ目録ハ必要ナル証拠書類ニ依拠セサル可カラス
計算書ハ後見ヲ受クル者ノ財産ニ関スル権利及ヒ義務ノ位置ヲ示ス所ノ表ヲ以テ之ヲ終結ス可シ而シテ後見人ハ計算書ニ其姓名ヲ手署ス可キ者トス
第二百八十三条 若シ後見ヲ受クル者十八歳ノ齢ニ達シ年齢相当ノ才智アリテ不在ナラサルトキハ後見人ハ其計算書ヲ後見官ニ呈出スルニ先チ後見ヲ受クル者ヲシテ審査ヲ為サシムルカ為メ其計算書ヲ後見ヲ受クル者ニ示シ而シテ計算書ノ下ニ検印ヲ為サシメ計算書ヲ審査シタルノ証ヲ取ル可シ且又後見官ハ計算審査ノ定日ニ後見ヲ受クル者ト其最親近ノ血属親二名ノ立会ヲ得ンカ為メ此等ノ者ニ通知ヲ為ササル可カラス
第二百八十五条 見官カ右ノ如ク審査シタル計箕ハ猶ホ之ヲ大法官ノ精算ニ付セサル可カラス精算ヲ為スノ日ハ慣用ノ法式ニ従ヒ後見ヲ受クル者並ニ其最親近ノ血属親ニ之ヲ報知シテ其場ニ立会ハシム可シ又大法官ハ前条ニ従ヒ後見官代理人ノ面前ニ於テ計箕ヲ審査シ後見官ノ審査ヲ確定ス可シ
而シテ大法官ハ後見人ニ其管理ノ労ト後見ヲ受クル者ノ財産トニ準シテ謝金ヲ付与シ且計算ノ結果ニ従ヒ権利ノ剰余ト後見人若クハ後見ヲ受クル者ノ負担ス可キ義務ノ剰余ト定ム可シ
第二百八十六条 大法官ノ作リタル精算ノ証書ハ允許セラレタル所為ニ付テハ後見官並ニ後見人ヲシテ其義務ヲ免カレシムルヲ得而シテ後見人ノ後見ヲ受クル者トノ間ニ互ニ為ス可キ払戻ノ認メハ終身裁判ノ効力ヲ有ス但シ精算ノ証書ハ之ヲ法庭ノ簿冊ニ登記ス可シ
第二百八十八条 後見人後見ヲ受クル者又ハ其血属親ハ後見人カ其職ヲ免レタル日ヨリ十年間計算ニ錯誤アルヲ原由ト為シ後見ノ計算ヲ審査スルノ訟求ヲ為スコトヲ得可シ
此再審ニ於テ計算ニ対シテ出訴シタル理由ニ付テハ凡テ後見ノ計算審査及ヒ精算ニ係ル第二百八十四条乃至第二百八十七条ヲ遵守セサル可カラス
第二百九十八条 後見官ハ左ノ条々ニ於テ終ル可シ
第一 幼者ノ二十四歳ニ至リタル時
然レトモ其年齢ニ拘ハラス後見ヲ免カレシメサル正当ノ理由アル時ハ第二百十四条以下ニ従ヒ其財産管理ヲ停止スヘシ
第二 幼者ノ婚姻ヲ為ス時
第三 幼者ノ我小議会ヨリ後見免除ヲ得タル時
第三百二条 後見ノ終リニ於テハ人皆其凡テノ権利ノ所有ヲ為シ始ム可シ然レトモ婚姻ヲ為ス婦ハ其夫ノ権下ニ在ル可シ若シ其婦婚姻セサルカ若クハ夫ノ死去又ハ離婚ニ因リ婚姻ノ解ケタルトキハ再ヒ裁判所ヨリ補佐人ノ補助ヲ受ク可シ
第三百二十五条 若シ後見人ノ監督ヲ受クル人若クハ親権ノ下ニ生活スル人カ其無能力ヲ知ラサル者ヲ誘惑シテ或ル契約ヲ為シタルトキハ此契約ハ当然無効タル可シ凡テ契約者ノ一方カ此ノ如キ契約ヲ執行シタルトキハ成丈物品ヲ返還ス可ク而シテ大法官ハ其後見人ノ監督ヲ受ケタル人若クハ親権ノ下ニ生活スル人ヲ十「フラン」以上五十「フラン」以下ノ罰金二日以上十四日以下ノ禁錮ニ処ス可シ
第三百五十六条 凡テ現占有ハ有効ニシテ善良ナリト推測ス可シ而シテ占有者ハ強テ其減原由ヲ与フル二及ハス(第三百五十三条参看)亦善意ノ占有者タル其身分ヲ証明スル二及ハス但シ此推測ハ占有ノ権利二根拠スル者トス
第三百六十五条 後段後見人ハ其報告書ニ金銭付託ノ安全ト其利益トヲ記セサル可カラス但シ後見官ハ此事ニ付キ後見人ニ其行フヘキ事柄ニ付差図ヲ為シ利息ノ額ヨリモ付託ノ安全ナル事ヲ撰フ可シ
第五百五十八条 将二死セントスル人ハ拒辞ス可カラサル証人二名ノ面前二於テ出格ヲ以テ口演ノ財産処分ヲ為スコトヲ得可シ