商法整理會第五回議事筆記
明治三十一年十二月五日開會
出席員
穗積陳重君
加藤正義君
鶴原定吉君
江木衷君
尾崎三良君
富井政章君
村田保君
土方寧君
梅謙次郞君
岡野敬次郞君
田部芳君
古賀廉造君
長谷川喬君
富谷鉎太郞君
菊池武夫君
河村讓三郞君
倉富勇次郞君
石渡敏一君
第五十八條中「範圍ニ屬セサル」ヲ「範圍內ニ在ラサル」ト改ム
第六十八條第一項中「事業年度」ヲ「營業年度」ト改ム
第九十七條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
第八十七條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百二條ヲ左ノ如ク改ム
會社ノ帳簿其營業ニ關スル信書及ヒ精算ニ關スル一切ノ書類ハ第八十五條ノ場合ニ在リテハ本店ノ所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ爲シタル後其他ノ場合ニ在リテハ精算結了ノ登記ヲ爲シタル後十年間之ヲ保存スルコトヲ要ス其保存者ハ社員ノ過半數ヲ以テ之ヲ定ム
第百八條中「以テ」ノ下「其」ヲ加フ
第百十一條第一項中「事業年度」ヲ「營業年度」ト改ム
第百二十六條第二項第四號ヲ削リ同項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
額面以上ノ價額ヲ以テ株式ヲ發行スル場合ニ於テハ株式申込人ハ株式申込證ニ引受價額ヲ記載スルコトヲ要ス
第百三十一條第三項中「第百六十四條」ノ下「第一項、第二項ヲ加フ
梅君說明シテ曰ク文字ノ修正ハ逐一之ヲ說明セス第五十八條ノ如キハ民法ノ用語ト一致セシメンカ爲メニ過キス次ニ第六十八條第一項ノ修正モ之ヲ「營業年度」ト爲ス方穩當ナルヲ以テ之ヲ改メタリ又第九十七條ニ一項ヲ加ヘタルハ元來第八十七條第三項ナルモノハ後ニ加ヘタルモノナルヲ以テ之ヲモ第九十七條中ニ準用セサレハ其當ヲ得サルヲ以テナリ次ニ第百二條ヲ改メタル理由ハ元來會社ノ帳簿其營業ニ關スル信書及ヒ淸算ニ關スル一切ノ書類ハ商法ノ規定ニ因リテ淸算ヲ爲ス場合其他商法ノ規定ニ因ラサル場合ニモ亦保存スヘキモノナリ而シテ本條ハ此二個ノ場合ヲ包含セシメタルモノナリ然ルニ商法ノ規定ニ因リテ精算ヲ爲ス場合ニハ保存ノ期間中ニ精算ノ期間ヲモ加フルハ不可ナリ而シテ本條ハ商法ノ規定ニ因ラサル場合ヲモ包含セルモノナルヲ以テ巳ムコトヲ得ス一方ハ「解散ノ登記ヲ爲シタル後トセリ此事ハ株式會社ニ付テモ同樣ノ規定アリ乃チ第二百三十三條是ナリ然ルニ株式會社ノ精算ハ合名會社ヨリモ長期ヲ要スルモノナルカ故ニ以下ニ於テ第二百三十三條ハ之ヲ改メテ「精算結了ノ後」トセリ次ニ第百二十六條ノ四號ヲ削リ同項ノ次ニ一項ヲ加ヘタルハ大阪商業會議場代表者ノ意見ヲ聞キ最モト信シテ之ヲ採用セシモノナリ原按ニハ株式申込證ニ株式發行ノ價額ヲ記載スヘシ(第四號)トアリ然ルトモ發起人ノ引受クル場合ニハ定マリタル額面ニテ引受クルカ如シ故ニ第四號ハ不用ニ屬スルヲ以テ之ヲ削除セリ然レトモ各自其望ミニ任セテ額面以上ノ高價ヲ以テ引受クル者アルトキハ其價額ヲ定ムルノ要アリ故ニ末項ヲ加ヘタリ次ニ第百三十一條第三項ノ修正ハ第百六十四條第三項ノ規定ハ實際上適用之レナキヲ以テ「第一項第二項ヲ加ヘタリト
長谷川喬君ハ第九十七條ニ第二項ヲ加ヘタルヲ適當ナリト雖モ其他ノ場合卽チ第八十五條及ヒ第百二條ニモ加フルノ必要アリト論シ穗積陳重君ハ本條新ニ一項ヲ加ヘタルカ爲メ第二項第二號中(第百二十二條第二號第三號乃至第五號)ハ寧ロ之ヲ第百二十二條ト改ムヘシト論シ梅君ハ之ヲ容レ尙ホ一考スヘキ旨ヲ述ヘ其他異議ナク直チニ次條ニ移ル
第百四十六條ヲ削ル
第百四十七條(舊第百四十八條)第二項中「之ヲ」ヲ削ル
第百五十三條(舊第百五十四條)第三項中「株主ハ其不足額ヲ辨濟スル責ニ任ス但」ヲ「株主ヲシテ其不足額ヲ辨濟セシムルコトヲ得此場合ニ於テト改ム
第百七十二條(舊第百七十三條)第一號中「各」ヲ削ル
同條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第百七十三條 社債原簿ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 社債權者ノ氏名、住所
二 債券ノ番號
三 社債ノ總額
四 各社債ノ金額
五 社債ノ利率
六 社債償還ノ方法及ヒ期限
七 債券發行ノ年月日
八 各社債ノ取得ノ年月日
九 無記名式ノ債券ヲ發行シタルトキハ其數、番號及ヒ發行ノ年月日
第百七十六條ヲ左ノ如ク改ム
取締役ハ監査役ノ承認ヲ得タルトキニ限リ自己又ハ第三者ノ爲メニ會社ト取引ヲ爲スコトヲ得
梅君說明ヲ爲シテ曰ク第百四十六條ヲ削除シタルハ以前ニモ多少、論議アリタル點ニシテ今回大阪商業會議場ノ意見ニ依ルモ株式ヲ分割スルコトヲ得サルモノトセハ
次ニ玆ニ再修正ヲ爲スヘキコトアリ卽チ第百九十三條(舊第百五十四條)第二項中(拂込ヲ爲スヘキ旨ヲ催吿スルコトヲ要ス)ヲ(拂込ヲ爲スヘキ旨ノ催吿ヲ發スルコトヲ要ス)トシ第三項中(若シ)ヲ(此場合ニ於テ)トシ尙本修正原案ニ(此場合ニ於テ)ヲ(若シ)ト修正スヘシ而シテ(催吿ヲ發スルコトヲ要ス)トセシ理由ハ原文ニヨルトキハ其催吿ハ受信主義ニ依ルモノト爲ルヘシ然ルニ古キ會社ノ如キニ至リテハ其株券轉輾セハ幾十人ノ手ニ移轉スルヤ知ルヘカラス今日ハ白紙ヲ以テ轉輾スルヲ以テ會社ノ帳簿上ハ恰モ轉輾セサルカ如キモ漸々之ヲ會社ノ帳簿ニ登錄スルニ至ルヘシ斯ノ如ク幾十人ノ間ニ轉輾スルモ會社ノ帳簿上其現在、住所不明ナルヲ以テ受信主義ヲ採ルモ催吿ノ屆カサルコトアルヘシ然ルニ之ニモ拘ラス一方ニ於テ忽然公賣ニ附セラルヽカ如キコトアルハ不可ナリ故ニ(催吿ヲ發スルコトヲ要ス)トシ發信主義ヲ採レルナリ又第三項中(拂込)ハ其不定額ヲ辨濟スル責ニ任ス)ト云フトキハ株主ハ請求ナクトモ其不足額ヲ辨濟スヘキモノナルヤノ疑ヲ生スルヲ以テ(株主ヲシテ辨濟セシムルコトヲ得)ト修正セリ次ニ第百七十三條ヲ新ニ加ヘタルハ大阪商業會議場ノ意見ヲ容レタルモノニシテ此事ハ旣ニ本會ニ於テモ議論アリ且起草員間ニ於テモ屢々之ヲ加ヘンコトヲ主張セシモノナリ蓋シ此規定之レ無クトモ社債原簿ニ記入スヘキモノナシトモ規定ヲ置ク方親切ナリトテ之ヲ設ケタリ次ニ第百七十六條ハ全ク文字ノ修正ニ過キス蓋シ取締役ハ自己又ハ第三者ノ爲メニ會社ト取引ヲ爲スコト能ハサルハ民法ノ定ムル所ナリ然ルヲ商法ニ於テ其例外ヲ規定スルモノナルカ故ニ(監査役ノ承認ヲ得タルトキニ限リ)トセリト
異議ナク次ニ移ル
第二百三條ヲ左ノ如ク改ム
社債ヲ募集セントスルトキハ取締役ハ左ノ事項ヲ公吿スルコトヲ要ス
一 第百七十三條第三號乃至第六號ニ揭ケタル事項
二 會社ノ商號
三 前ニ社債ヲ募集シタルトキハ其償還ヲ了ヘサル總額
四 社債發行ノ價額又ハ其最低價額
五 會社ノ資本及ヒ拂込ミタル株金ノ總額
六 最低ノ貸借對照表ニ依リ會社ニ現存スル財產ノ額
第二百四條第二項中「前條第二號乃至第五號」ヲ「第百七十三條第三號乃至第六號」ト改ム
第二百五條中「第一號乃至第五號」ヲ「第一號及ヒ第二號」ト改ム
第二百三十三條中「解散」ヲ「淸算結了」ト改ム
第二百三十四條中第百七十七條、第百七十八條、第百八十一條乃至第百八十五條」ヲ「第百七十六條乃至第百七十八條第百八十一條第百八十三條乃至第百八十五條」ト改ム
第二百三十八條第二項第一號中「第五號」ヲ削ル
第二百五十條中「計算ニ付キ」ノ下「株主總會ノ承認ノ外」ヲ加フ
梅君說明シテ曰ク第二百三條ハ第百七十三條ヲ以テ社債原簿ヲ規定セシヲ以テ之ヲ重複セサル樣修正シタリ第二百四條及ヒ第二百五條モ右ト同一ノ理由ニ出ツ次ニ第二百三十三條ハ旣ニ說明シタルヲ以テ之ヲ略ス又第二百三十四條ノ修正ハ別ニ條キ理由アルニアラス(第百七十六條乃至第百七十八條)トセシハ此第百七十六條ハ今回修正シタル個條ニシテ原案ニハ準用ナカリシト雖モ必用アリト信シテ之ヲ加ヘタリ蓋シ第二百三十四條ノ精神ハ取締役ニ關スル規定ヲ精算人ニ準用セルモノニシテ第百七十六條ノ如キモ精算人ニ準用スヘキ必要アレハナリ尙ホ(第百八十一條、第百八十三條乃至第百八十五條)ト改メタルハ原文ニハ第百八十二條ヲモ包含セシメタリト雖モ之ハ之ト第百八十條ノ二項タリシモノヲ削條トセルモノナルカ故ニ準用セストモ當然適用アルヲ以テ之ヲ除キタルナリ又第百八十一條及ヒ第百八十三條ハ(取締役)ノ文字ノミナルヲ以テ精算人ニハ之ヲ準用スルノ外途ナケレハナリ次ニ第二百三十八條ハ旣ニ第百二十六條ヲ修正シ其第四號ヲ削除シタル結果本條第五號ヲモ削除セサルヲ得サルヲ以テ之ヲ修正ス次ニ第二百五十條ハ之ヨリ此修正ノ如キ意味ナリシト雖モ一層之ヲ明瞭ナラシメタルニ過キス玆ニ尙ホ修正ノ脫漏セルモノアリ卽チ第二百五十條中(第二百二十七條)及ヒ(第二百三十條)ノ下各(第一項)ヲ加フヘシ又本修正案第二百三條第六號中(最低)ハ(最終)ノ誤ナリ
異議ナク次ニ移ル
第二百六十四條第七號ヲ左ノ如ク改ム
客ノ來集ヲ目的トスル場屋ノ取引
第二百七十六條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第二百七十七條 民法第三百四十九條ノ規定ハ商行爲ニ因リテ生シタル債權ヲ擔保スル爲メニ設定シタル質權ニハ之ヲ適用セス
第二百八十一條(舊第二百八十條)中「指圖證券」ノ下「又ハ無記名證券」ヲ加フ
第三百二十條(舊第三百十九條)中「前六條」ヲ「本章」ト改ム
第三百二十五條(舊第三百二十四條)第一項中「於テハ」ノ下「其」ヲ削ル
第三百三十六條(舊第三百三十五條)第一項中「旣ニ」ノ下「其」ヲ加フ
梅君ノ說明ニ曰ク第二百六十四條ハ(ニ於テスル)ヲ削除セリ何トナレハ斯クテハ恰モ其場所ニ於テスル取引タルコトヲ要スルカノ如キ觀アルヲ以テ之ヲ修正セリ次ニ第二百七十七條ヲ新ニ加ヘタルハ實業家及ヒ銀行集會所等ノ意見ヲ容レタルモノニシテ民法第三百四十九條ノ規定ハ吾々カ極カ反對ヲ試ミタルニモ拘ラス第十二議會ニ於テ加ヘラレタルモノニシテ卽チ流質相對賣買等ヲ禁スルノ規定ナリ然ルニ今日ニ於テ實業家ハ夫レカ爲メ頗ル不便ヲ感シテ頻リニ訴フル所アリ而シテ此際民法ノ規定ヲ削除スヘシトノ說アリト雖モ一旦議會ニ於テ可決シ實施後未タ幾許モナラスシテ是カ削除ノ議ヲ提出スルハ國家ノ威信ヲ保ツ上ニ於テ尠ナカラサル影響ヲ來スノ恐アリ故ニ寧ロ商法ニ於テハ之ヲ適用セサルモノト爲スノ妥當ナルニ若カスト信シタルヲ以テナリ次ニ第二百八十一條ノ修正ハ苟モ公示催吿ナルモノカ無記名證券ニモ存スル以上ハ玆ニ之ヲ規定スルノ必要アルヲ以テ之ヲ差加ヘタルモノナリ尙ホ第三百二十條ノ修正ハ元來本條ハ問屋ノ規定ヲ自己ノ名ヲ以テ他人ノ爲メニ販賣又ハ質入ニ非サル行爲ヲ爲ス業トスルモノニ準用セルモノナリト雖モ原文ニ(前六條)ト云ヘル中ニハ性質上準用シ能ハサルモノモアリ例トヘハ第三百十七條(舊第三百十六條)ノ如キ是ナリ故ニ寧ロ(本章)ト改メ以テ其疑ヲ防止セリト次ニ岡野君ハ第二百七十七條ニ付キ意見ヲ述ヘテ曰ク元來同條ハ起草員間ニ於テモ意見ヲ異ニシタル所ニシテ銀行集會場等ノ希望ハ寧ロ民法ノ規定ヲ削除スルニアリタリ然レトモ斯クテハ商法ノ問題ト爲ラスシテ民法ノ問題ト爲ルヲ以テ商法中ニ反對ノ規定ヲ設クルノ希望ナリシナリ起草委員間ニ在リテハ或ハ之ヲ商法ニ規定スヘシトシ或ハ競賣法ヲ以テ簡便法ヲ設クヘシトノ意見アリタリト雖モ競賣法モ亦旣ニ法律ト爲レルモノナルカ故ニ今之ヲ修正スルハ穩當ヲ缺クノ恐アリ梅、穗積、富井、三君ハ之ヲ商法中ニ規定スヘシトシ田部君ハ之ニ反對シタリ余ハ其中間ニ立テ之ヲ商法中ニ規定スヘキヤ將タ競賣法ヲ以テスヘキヤヲ豫決問題トスヘシト主張シタリシモ其方法ハ商法起草員ニ託スルコトトナリ遂ニ之ヲ商法中ニ規定スルコトトセリ蓋シ民法ヲ改メストモ最モ適用多キ商法中ニ反對ノ規定ヲ設クルハ則チ裏面ヨリ民法ノ規定ヲ覆スニ異ナラス寧ロ直接ニ民法ノ規定ヲ削除スルニ若カスト
次ニ田部君モ民法ノ規定ヲ削除シ或ハ商法ニ之カ反對ノ規定ヲ置クノ不可ナルヲ述ヘ競賣法ヲ以テ規定スルノ穩當ナルコトヲ主張セリ次ニ土方君曰ク若シ實際家ノ意見ニ從ヒテ立案セルモノナレハ是質取主ノミヲ保護スルニ偏シ質置主ヲ保護セサルモノナリ何トナレハ元來質物ハ之ヨリモ高價ナルヘキモノナルヲ以テ質取主ハ常ニ之ヲ流質トシテ處分スルノ弊アリ故ニ寧ロ他ノ方法ヲ以テスヘシト次ニ鶴原君ハ高價ナル物ヲ質入セントスル者ハ常ニ曖昧ナル質取主ヲ選フコトナキヲ以テ土方君ノ患フル所ハ憂ニ過キス故ニ本條ハ最モ必要ナリト述ヘ江木君モ亦本條ノ必要ヲ述ヘ土方君ノ說ニハ贊成者アリタルヲ以テ議長ハ之ヲ採決シ問ヒタルモ少數ニテ消滅シ直チニ次條ニ移ル
第三百五十一條(舊第三百五十條)第二項中「場合ニ於テ」ヲ「トキ」ト改ム
舊第三百六十七條ヲ第三百八十條トシテ第三百七十九條ノ次ニ移ス
第三百九十六條(舊第三百九十五條)中「保險契約者、被保險者若クハ保險、金額ヲ受取ルヘキ者」ヲ「保險契約者若クハ被保險者」ト改ム
第四百五條(舊第四百四條)第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加ヘ第三項(舊第二項)中「前項」ヲ「前二項」ト改ム
前項ノ場合ニ於テ保險契約者カ契約ノ解除ヲ爲シタルトキハ其解除ハ將來ニ向テノミ其効力ヲ生ス
第四百二十二條(舊第四百二十一條)ヲ左ノ如ク改ム
火災保險證券ニハ第四百三條第二項ニ揭ケタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 保險ニ附シタル建物ノ位置、構造及ヒ用法
二 動產ヲ保險ニ付シタルトキハ之ヲ貯藏セル建物ノ位置、構造及ヒ用法
第四百二十八條(舊第四百二十七條)ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第四百二十九條 保險契約ノ當時保險契約者又ハ被保險者カ惡意又ハ重大ナル過失ニ因リ重要ナル事實ヲ吿ケス又ハ重要ナル事項ニ付キ不實ノ事ヲ吿ケタルトキハ其契約ハ無効トス但保險者カ其事實ヲ知リ又ハ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシトキハ此限リニ在ラス
梅君說明ヲ爲シテ曰ク舊第三百六十七條ヲ置キ換ヘタルハ場所ニヨリテ規定ノ主意一層明瞭ト爲ルニ過キス蓋シ第三百六十七條ハ第三百七十九條ノ例外トモ謂フヘキモノナルヲ以テ之ヲ第三百七十九條ヲ次ニ移シ以テ其意義ヲ明瞭ナラシメタルナリ次ニ第三百九十六條ヲ修正シタルハ元來損害保險ニ付テハ保險金受取人ノ要ナシ何トナレハ損害保險ニ在リテハ保險金受取人ハ契約者ニモアラス又被保險者ニモアラス果シテ然ラハ是レ被保險者ノ權利ヲ讓受ケタル者ニ過キス故ニ被保險者ハ同一ノ權利ヲ有スヘシ然ラサレハ生命保險ト相對シテ不都合アリ次ニ第四百五條ヲ修正シタルハ元來保險契約ノ解除ハ特別ノ規定ナキトキハ民法ノ契約解除ノ規定ニ依ラサルヘカラス然ルニ民法ニ依ルトキハ恰モ旣徃ニ遡ルカ如キ結果ヲ生シ旣ニ拂ヒタルモノハ再ヒ之ヲ拂戾スナリ然ルニ保險ニ於テハ保險料ヲ返還セハ從來負擔セル危險ノ報酬ナキモノナリ故ニ此場合ニハ將來ニ向テノミ効力ヲ有スヘキ規定アリ例ヘハ舊第四百九條ノ如キ是ナリ而シテ第四百五條ノ場合ト雖モ亦破產宣吿テ受ケタルカ爲メ契約ヲ解除スルモノナルカ故ニ亦之ヲ明言スルノ必要アリ次ニ第四百二十二條ハ文字ノ修正ニ過キス尙ホ本條ノ(貯藏)ハ文字穩カナラサルヲ以テ之ヲ(納ムル)ト改ムヘシ次ニ第四百二十八條ノ次ニ一條ヲ追加シタルハ保險會社等ヨリノ意見ヲ容レタルモノニシテ初メ保險會社ノ請求ハ第三百九十八條ヲ改メ玆ニ被保險者ヲ加フヘシト云フニアリタリ然レトモ損害保險ノ被保險者ハ玆ニ入ルヽコトヲ得ス生命保險者ハ契約ノ時ニ參與スルモノナルヲ以テ差支ナシ故ニ玆ニハ損害保險ノ被保險者ニ付キ別ニ規定ヲ設ケタルモノナリト
穗積陳重君ハ第四百二十九條ト第三百九十七條トハ文章相應セスト注意シ梅君ハ一考スヘシト述ヘ其他異議ナク次條ニ移ル
第四百三十一條(舊第四百二十九條)ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第四百三十二條 保險契約者又ハ保險金額ヲ受取ルヘキ者カ被保險者ノ死亡シタルコトヲ知リタルトキハ遲滯ナク保險者ニ對シテ其通知ヲ發スルコトヲ要ス
第四百三十三條(舊第四百三十條)第一項ヲ左ノ如ク改ム
第三百九十五條、第三百九十七條、第三百九十九條乃至第四百一條、第四百三條第一項第四百九條乃至第四百七條、第四百十條、第四百十一條、第四百十七條及第四百十八條ノ規定ハ生命保險ニ之ヲ準用ス
第四百四十二條(舊第四百三十九條)第二項中「役場」ノ下「又ハ官署若クハ公署」ヲ加フ
第五百六條(舊第五百三條)中「及ヒ」ヲ「其他」ト改ム
第五百三十七條(舊第五百三十四條)ヲ左ノ如ク改ム
第四百四十六條、第四百五十二條、第四百五十五條、第四百五十七條、第四百五十九條乃至第四百六十二條、第四百六十四條、第四百八十三條、第四百八十四條、第四百八十六條乃至第四百八十九條第四百九十一條、第四百九十二條、第四百九十五條、第四百九十六條、第五百十四條、第五百十五條及ヒ第五百十七條ノ規定ハ小切手ニ之ヲ準用ス
梅君ノ說明ニ曰ク第四百三十二條ニ新ニ加ヘタルハ第四百二十九條ト同一ノ理由ニリ保險會社ヨリノ請求アリタルモノニシテ卽チ第四百十一條ヲ改ムヘシト云フニアリタリト雖モ之ハ損害保險ニハ適用ナク而シテ第四百三十二條ハ損害保險ニ關スルモノナルヲ以テ「保險金額ヲ受取ルヘキ者」トセリ而シテ被保險者ハ旣ニ死亡セシモノナルヲ以テ玆ニ加フル謂レナシ次ニ第四百三十三條第一項ノ修正ハ自然ノ結果モアリ又舊第三百九十七條(新第三百九十八條)ヲ除キタルハ之ト同樣ノ規定ヲ生命保險ニ付テ設ケタルヲ以テ重ネテ之ヲ準用スヘキ必要ナキヲ以テナリ尙ホ舊ノ(第四百九條乃至第四百十一條)ヲ(第四百十條、第百四十一條)ト改メタルモ右ト同一ノ理由ニテ舊第四百十一條ト同樣ノ規定ヲ更ニ設ケタルヲ以テ是又準用ノ必要ナキヲ以テナリ又(第四百十五條乃至第四百十七條)ヲ(第四百十七條及ヒ第四百十八條)トセシハ舊第四百十五條ハ若シ之ヲ生命保險ニ適用セハ被保險者ヲ殺害シタル者アリシ爲メ保險者ハ保險金ヲ支拂ハサルヘカラス而シテ加害者ニ對シテハ損害賠償ノ請求權アルナリ然ルニ新民法ノ規定ニ依レハ不法行爲ニ因ツテ他人ニ損害ヲ加ヘタル者ハ賠償ノ責任ナク生命ヲ絕ツハ財產上ノ損害ヲ生シ又一方ニハ恩愛トノ損害ヲ生ス故ニ父母妻子等ニ賠償ノ請求權ヲ與ヘリ而シテ此者カ若シ保險ニ在ルトキハ財產上ノ損害ヲ生スルヲ以テ此場合ニハ殺人者ヲ自己ノ故意又ハ過失ニ因リテ保險會社ノ財產權ヲ侵害セシモノニシテ民法上當然賠償ノ責任アルヘク敢テ第四百十五條ノ規定ニ適用スルヲ要セス故ニ之ヲ除ケリ若シ之ヲ適用セハ頗ル奇怪ノ結果ヲ見ルニ至ルヘシ次ニ第四百四十二條(舊第四百三十九條)第二項ノ修正ハ元來拒絕證書作成ノ場所ハ 則上支拂人ノ住所若クハ居所ナリトス若シ住所不明ナル場合ニ於テ 執達吏又ハ公證人ハ其役場ニ於テ之ヲ作成ス此場合ニ於テハ其他ノ官公署ニ問合ヲ爲スモノナリ官公署ニ問合スモ尙ホ不明ナル場合ニ於テハ原案ハ役場ニ於テノミ之ヲ作成スルモノトセリト雖モ官公署ニ於テ作成スルノ寧ロ便利ナル場合アルヲ以テ「官公署」ヲ加ヘタリ尙玆ニ聊カ以前ニ遡リ修正スヘキハ舊第四百三十條第二項中「保險者ハ」ヲ削除ス次ニ第五百三十七條ヲ改メタルハ小切手ニ關スルモノニシテ原案ノ第四百六十二條、第四百六十五條及ヒ第四百六十八條ヲ削レリ卽チ是等ハ引受ニ關スル規定ニシテ外國ニハ其例ナク又我國ニ於テモ之レナシト雖モ彼ノ保證ナルモノアリテ殆ント引受ト同樣ナルヲ以テ寧ロ之ヲ引受トナシタル者ナリ然リト雖モ其事實相異ナルヲ以テ引受ケヲ爲サシメテ迄モ流通ヲ容易ナラシムルノ要モナシ若シ小切手ノ保證ヲ要セハ之ヲ手形上ノ法律關係トセスシテ一般ノ効力トセハ可ナリ就中其性質相異ナルヲ以テ從テ準用スヘキ箇條ニ困難ヲ生スヘシ要スルニ引受ニ關スル規定ヲ削除シタルニ過キサルナリト
異議ナク次條ニ移ル
第五百三十八條(舊第五百三十五條)中「營利ノ」ヲ「商行爲ヲ爲ス」ト改ム
第五百四十七條(舊第五百四十四條)中「支拂フ」ヲ「負擔スル」ト改ム
第五百六十三條(舊第五百六十條)ヲ左ノ如ク改ム
船長ハ巳ムコトヲ得サル場合ヲ除ク外自巳ニ代ハリテ船舶ヲ指揮スヘキ者ニ其職務ヲ委認シタル後ニ非サルハ荷物ノ船積及ヒ旅客ノ乘込ノ時ヨリ荷物ノ陸揭及ヒ旅客ノ上陸ノ明マテ其指揮スル船舶ヲ去ルコトヲ得ス
第六百二十八條(舊第六百二十五條)中「所持スル者」ノ下「ハ」及ヒ「行フ」ノ下「コトヲ得」ヲ削ル
梅君ノ說明ニ曰ク第五百三十八條ハ(營利)ノ範圍如何ノ問題アリタリ然ルニ熟々之ヲ考フルニ(營利)ト謂フトキハ彼ノ漁業ノ如キモ包含スヘシ然レトモ商法ニ於テハ商行爲ノミニ關スルモノナルヲ以テ苟モ(營利)カ必要ナル以上ハ之ヲ(商行爲)ト爲サヽルヲ得ス蓋シ特別法ヲ以テ其主要ナルモノ殊ニ漁業等ニモ之ヲ準用セサル可ラス而シテ其規定ハ之ヲ船舶法中ニ於テスヘシ次ニ五百六十三條ノ修正ハ實業家ノ意見ヲ容レタルモノニシテ卽チ船長ハ巳ムコトヲ得サル場合ニ非サレハ客ノ上陸、荷物ノ陸揭迄上陸スルヲ得サルモノトスルハ頗ル不便ナリト云フニ在リ蓋シ船舶ノ指揮ナルモノハ敢テ船長自身之カ認ニ當ルノ必要ナシ自己ニ代リテ之ヲ指揮スル者アラハ之ニ託シテ上陸スルコト敢テ不都合ナキヲ以テ之ヲ修正セリト
異議ナク次ニ移ル
第六百五十八條(舊第六百五十五條)中「利益」ノ下「又ハ報酬」ヲ加フ
第六百六十一條(舊第六百五十八條)ヲ左ノ如ク改ム
海上保險證券ニハ第四百二條第二項ニ揭ケタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 船舶ヲ(保險ニ付シタル場合ニ於テハ其船舶ノ名稱、國籍並ニ種類、船長ノ氏名及ヒ發航港、到達港又ハ寄航港ノ定アルトキハ其港名
二 積荷ヲ保險ニ付シ又ハ積荷ノ到達ニ因リテ得ヘキ利益若クハ報酬ヲ保險ニ付シタル場合ニ於テハ船舶ノ名稱、國籍並ニ種類、船積港及ヒ陸揭港
第六百六十五條(舊第六百六十二條)中「保險ニ付シ」ノ下「又ハ積荷ノ到達ニ因リテ得ヘキ利益若シクハ報酬ヲ保險ニ付シ」ヲ加フ
第六百六十七條(舊第六百六十四條)第三號中「利益」ノ下「若クハ報酬ヲ加フ
第六百八十二條(舊第六百七十九條)ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第六百八十三條 船舶債權者ノ先取特權ト他ノ先取特權ト競合スル場合ニ於テハ船舶債權者ノ先取特權ハ他ノ先取特權ニ先ツ
梅君ノ說明ニ曰ク第六百五十八條ノ修正ハ大阪商業會議所ノ意見ヲ容レタルモノナリ卽海上保險ニ在リテハ或ハ積荷船舶或ハ利益ヲ保險ニ付スルコトアルハ勿論ナリト雖モ尙ホ報酬ヲモ之ヲ保險ニ付スルコトアルヲ以テナリ次ニ第六百五十一條ノ修正ハ彼ノ積荷ヲ保險ニ付シタル場合之ヲ運送スヘキ船舶ノ噸數等ハ通常明カナラサルモノニシテ又船長ノ交代アルモ保險者ノ責任變更セス然ルニ船長ノ氏名ヲ記載スルハ殆ント其用ヲ爲サス又港名モ通常不明ナリトノ攻擊アリタルヲ以テ今回是等ヲ悉皆除去シタリ次ニ第六百六十五條ノ修正ハ元來船舶ノ變更ハ危險ニ重大ナル變更ヲ來スモノナルヲ以テ獨リ積荷ノミナラス利益又ハ報酬等ニモ變更ヲ來スヘキモノナルヲ以テ毫モ此場合ニ「利益及ヒ報酬」ヲ除ク理由ヲ發見セス故ニ之ヲ加ヘタリ第六百六十七條モ右ト同一ノ理由ニヨリテ修正セリ次ニ第六百八十三條ヲ新ニ加ヘタルハ商法ニ規定シタル船舶債權者ト民法上ノ債權者トノ關係ヲ明カナラシメンカ爲メナリ佛國ニ於テモ之ト類似ノ規定アリテ船舶ノ債權者ノ先取特權ハ民法ノ先取特權ニヨリテ妨ケラルルコトナシト
異議ナク可決シ散會セリ
于時午後第七時