明治商法(明治32年)

法典調査会 商法整理会議事要録 第2回

参考原資料

第貳回商法整理議事筆記
出席員
曾根荒助君
寺尾亨君
田部芳君
土方寧君
鶴原定吉君
小宮三保松君
男爵 南部甕男君
三浦安君
加藤正義君
岡野敬次郞君
中村元嘉君
富谷鉎太郞君
井上正一君
梅謙次郞君
第五條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第六條 會社ノ無限責任社員ト爲ルコトヲ許サレタル未成年者又ハ妻ハ其會社ノ業務ニ關シテハ之ヲ能力者ト看做ス
梅君曰ク民法ニ於テハ商業ヲ營ムコトヲ許サレタル者ノ能力ヲ定メタリト雖モ商事會社ノ無限責任社員ト爲ルコトヲ許サレタル未成年者及ヒ妻ニ付テハ未タ其能力ヲ定メス之ニ付キ今更民法ヲ改ムルコトヲ得サルハ勿論且此事タルヤ商事會社ノミニ關スルコトナルヲ以テ寧ロ商法ニ規定スルヲ妥當トス若シ此規定ナキトキハ如何卽チ商事會社ハ法人ナルカ故ニ其營業ハ法人其モノカ之ヲ爲スモノニシテ社員自ラ之ヲ爲スニアラス故ニ社員ト爲ルノ許可ニアラサルナリ勿論株式會社又ハ株式合資會社ノ有限責任社員ト爲ルニハ別ニ規定ヲ要セス之ハ營業ヲ爲スト言フニアラス全ク其性質ヲ異ニス故ニ或ハ金額ノ多少ニ因リ或ハ事ノ重大ナルト否トニ因リ妻ハ夫ノ許可ヲ得ルコトヲ要スルナリ固ヨリ未成年者ハ絕對的ニ許可ヲ得サルヘカラサルヤ勿論トス之ニ反シテ合名又ハ合資會社ノ無限責任社員ハ法律上ハ會社ノ營業ヲ爲スモノナリト雖モ其財產上ノ結果ハ恰モ社員自ラ營業ヲ爲スニ異ナラス故ニ無限責任社員ト爲ルニハ許可ヲ要スルヤ勿論ナリ(國又ハ後見人カ許可ヲ與フル場合ニハ親族會ノ許可ヲ得ヘキコト固ヨリナリ)而シテ未成年者又ハ妻カ此許可ニ因リ果シテ如何ナル能力ヲ得ルヤヲ定メサルヘカラス本條ハ則チ之ニ付テ規定シタルモノニシテ一旦無限責任社員ト爲ル以上ハ其未成年者タルト否トヲ問ハス他ノ無限責任社員ト同一ノ地位ヲ與ヘサルヘカラサルモノナリ以テ未成年者ニ付テハ民法第六條妻ニ付テハ同法第十五條ト權衡ヲ得セシメタリト
本條異議ナク次條ニ移ル
第十八條(舊第十七條)第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ニ違反シタル者ハ五圓以上五十圓以下ノ過料ニ處セラル
梅君曰ク本條ハ敢テ說明ヲ要セス舊條ノ儘ニテハ制裁ヲ附セス制裁ナケレハ實際ニ用無シ是本條第二項ヲ加ヘタル所以トスト
異議ナク次ニ移ル
第十八條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第十九條 他人カ登記シタル商號ハ同市町村內ニ於テ同一ノ營業ノ爲メニ之ヲ登記スルコトヲ得ス
梅君曰ク本條ハ之レ無クモ實際斯クノ如ク爲ルヘシト思考シタリシモ第一回ノ整理ニ當リテモ注意ヲ受ケ明文無キトキハ疑ヲ生セントテ之ニ加ヘリト
異議ナシ
第五十一條(舊第四十九條)ヲ左ノ如ク改ム
會社ハ定款ヲ作リタル日ヨリ二週間內ニ其本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス
 一 前條第一號乃至第三號ニ揭ケタル事項
 二 本店及ヒ支店
 三 設立ノ年月日
 四 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其時期又ハ事由
 五 社員ノ出資ノ種類及ヒ財產ヲ目的トスル出資ノ價格
 六 會社ヲ代表スヘキ社員ヲ定メタルトキハ其氏名
會社設立ノ後支店ヲ設ケタルトキハ其支店ノ所在地ニ於テハ二週間內ニ前項ニ定メタル登記ヲ爲シ本店及ヒ他ノ支店ノ所在地ニ於テハ同期間內ニ其支店ヲ設ケタルコトヲ登記スルコトヲ要ス
本店又ハ支店ノ所在地ヲ管轄スル登記所ノ管轄區域內ニ於テ新ニ支店ヲ設ケタルトキハ其支店ヲ設ケタルコトヲ登記スルヲ以テ足ル
梅君曰ク本條ハ先ツ第一項第四號ニ變更ヲ與ヘタリ蓋シ舊文ニ在リテハ「存立時期」トテ之ハ何月何日若クハ何年間存立スト云フニ在リ然ルニ斯ク時日ヲ定メスシテ恰モ條件ヲ附スルカ如キコトアリ例ヘハ新條約實施迄此會社ヲ存立スト云フカ如キハ舊文ノ「存立時期」ト云フニ該當セス故ニ之ヲ改メテ「解散ノ事由」トセリ次ニ第三項ヲ加ヘタリ之ハ無論斯ノ如ク爲ルヘシト雖モ明文無キトキハ疑ヲ招クノ恐アリ例ヘハ東京ニ本店及ヒ支店アリテ更ニ東京ニ支店ヲ設クルコトアリ此場合ニモ第二項ノ手續ヲ要スルモノトセハ極メテ重複ノ業ト謂ハサルコトヲ得ス况ンヤ同登記所ノ同帳簿ニ登記ヲ爲スニ於テオヤ次ニ第二項ノ「一週間」ニ「二週間」トセルハ蓋シ理由アルコトニシテ本店ト支店ト相接近スル場合ハ可ナリト雖モ或ハ本店ト支店ト隔絕スル場合ニアリテハ僅々一週間內ニ登記ヲ終ルヲ得サルコトアリ是二週間ト改正セル所以ナリ尙ホ本條第一項第四號ノ「解散ノ事由」及ヒ第二項ノ「二週間內」ノ改正ハ以下續出スルモ總テ同一ノ理由ニ基ケルヲ以テ逐一說明ノ勞ヲ省クヘシト
異議ナシ
第五十二條(舊第五十條)第一項中「一週間內」ヲ「二週間內」ト改ム
第五十三條(舊第五十一條)ヲ左ノ如ク改ム
第五十一條第一項ニ揭ケタル事項中ニ變更ヲ生シタルトキハ二週間內ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ其登記ヲ爲スコトヲ要ス
梅君曰ク此二個條ハ前說明中旣ニ明瞭ナルヲ以テ說明セスト
異議ナシ
第七十一條(舊第六十九條)ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第七十二條 會社ノ商號中ニ退社員ノ氏又ハ氏名ヲ用ヰタルトキハ退社員ハ其氏又ハ氏名ノ使用ヲ止ムヘキコトヲ請求スルコトヲ得
梅君曰ク始メ本條ヲ置カサリシ理由ハ元來日本ニ在リテハ歐西ノ如ク商號ハ氏名ヲ以テスヘシトハ慣習ニ反スルノ恐レアリタルヲ以テナリ故ニ合名、合資會社ニ在リテモ必ス社員ノ氏名ヲ以テスヘシト言ハス玆ヲ以テ或社員一朝退社スルニ當リテモ將來其社員ノ氏名依然トシテ商號中ニ存スルノ憂ナカリキ然ルニ熟ラ之ヲ考フルニ實際或ハ社員ノ氏名ヲ用ユル事絕無ナリト謂フ事能ハス若シ其氏名ヲ用ヰタルコトアリタル場合ニ於テハ其社員退社スルモ會社ハ尙ホ其氏名ヲ商號ニ續用スルノ權利アリトセハ社員ノ迷惑實ニ思フヘシ是レ本條ヲ以テ社員ニ其氏名使用ノ停止ヲ請求スルコトヲ得セシメタル所以ナリト
異議ナシ
第七十三條(舊第七十條)第一項ヲ左ノ如ク改ム
退社員ハ本店ノ所在地ニ於テ退社ノ登記ヲ爲ス前ニ生シタル會社ノ債務ニ付キ責任ヲ負フ此責任ハ其登記後二年ヲ經過シタルトキハ消滅ス
梅君曰ク舊文ニ依レハ退社ノ登記ハ本店及ヒ支店ニ之ヲ爲スヘキヤ將タ其一方ヲ以テ足ルヤ不明ナリ然ルニ本條ノ場合ニハ實際其本店ノ所在地ニ於テ登記シタル前ニ生シタル會社ノ債務ナラサルヘカラス故ニ之ヲ改メタリ尙ホ此種ノ修正ハ後チニ生スヘシト雖モ總テ同一ノ理由ニ出テタルヲ以テ逐一說明ノ勞ヲ採ラス次ニ舊文ノ「時効ニ因リテ」ヲ削除セシ理由ハ時効ニ因リテ消滅スルト時効ニ因ラスシテ消滅スルトハ實質上大ナル差異アルコト旣ニ諸君ノ了知セラルル所ナリ時効ニ因ル場合ニ在リテハ民法ニ從ヒ中斷停止等ヲ以テ之ヲ延長スルコトヲ得ヘシト雖モ時効ニ因ラサル場合ハ中斷停止等ノ方法之レ無シ然ルニ本條ノ場合ハ時効ニ因リテ消滅セシムヘキモノニアラス蓋シ社員ハ其會社ニ關係ヲ有スル間ハ自ラ其責ニ當ルノ意思ヲ有スルモノナリト雖モ一旦會社ヲ去リタル時ハ最早是等ニ付テ責ヲ負フノ意思ナキモノトス然ルニ中斷、停止等ニ因リテ退社後ト雖モ尙ホ責任ヲ免カルコトヲ得サルモノトスルハ頗ル酷ニ失スルノ恐アリ故ニ之ニ付テハ時効ニ因ラス二年ヲ經過セハ全然消滅スルモノト爲スノ必要アルナリ尙ホ此「時効ニ因リテ」ヲ削除セシ个條之レアリト雖モ皆同一理由ニ出ツルヲ以テ逐一說明セスト
異議ナシ
第七十六條(舊第七十三條)ヲ左ノ如ク改ム
會社カ解散シタルトキハ合併及ヒ破產ノ場合ヲ除ク外二週間內ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ其登記ヲ爲スコトヲ要ス
梅君曰ク合併ニ付テハ本案第八十一條(舊第七十八條)ニ於テ登記ノ方法ヲ定メタリ然レトモ之ニ因リテ始メテ之ヲ知ルハ極メテ迂遠ナルヲ以テ玆ニ之ヲ加ヘテ其意義ヲ明カニセリ而シテ一方ニハ舊第七十八條中ニ「二週間內ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ」ヲ加ヘテ一層之ヲ明瞭ニシタリ則チ合併ノ場合ハ解散ノ登記ノミナラス設立ノ登記モ之レ有ルヲ以テ舊第七十八條中ニ解散ノ登記ヲモ含ムハ不可ナレハナリ
異議ナシ
第七十八條(舊第七十五條)ヲ左ノ如ク改ム
會社カ合併ノ決議ヲ爲シタルトキハ決議ノ日ヨリ一週間內ニ財產目錄及ヒ貸借對照表ヲ作ルコトヲ要ス
會社ハ前項ノ期間內ニ其債權者ニ對シ異議アラハ一定ノ期間內ニ之ヲ述フヘキ旨ヲ公吿シ且知レタル債權者ニハ各別ニ之ヲ催吿スルコトヲ要ス但其期間ハ二个月ヲ下ルコトヲ得ス
梅君曰ク舊第七十六條ニ於テハ債權者カ合併ニ付キ異議ヲ述ヘタルトキハ會社ハ之ニ辨濟ヲ爲シ又ハ相當ノ擔保ヲ供スヘシトアリ其結果トシテ若シ債權者カ異議ヲ述ヘタルトキハ會社ハ合併スルコト能ハス故ニ假令甲會社ト乙會社ト合併ヲ爲ストモ其實合併セサルモノト見ルヘシ故ニ甲會社ハ乙會社ト合併ノ決議アリタルニ當リ若シ甲會社ノ財產僅少ニシテ乙會社ノ財產多キ場合ニ於テハ甲會社ノ債權者ハ合併ニ依リテ利益スル所アリト雖モ乙會社ノ債權者ハ爲メニ損害ヲ被ムルヘシ玆ヲ以テ合併ノ決議アリタルトキハ先ツ財產目錄及ヒ貸借對照表ヲ作リ當時甲會社ト乙會社ノ財產ノ狀况ヲ明カニスルノ必要アリ之ニ依リテ債權者ハ合併ノ決議アリタル旨ノ通知アリタルトキハ先ツ其財產目錄、貸借對照表ヲ一覽シ若シ自己ニ不利益ト信スルトキハ異議ヲ申立ツヘク或ハ毫モ損害ヲ受クルノ虞ナシト信スレハ之ヲ承諾スルコトアルヘシ是本條ニ於テ財產目錄貸借照對照表ヲ作ラシメ以テ一方ハ債權者ヲ保護シ一方ハ會社ノ安全ヲ期スル所以ナリト
異議ナシ
第八十一條(舊第七十八條)ヲ左ノ如ク改ム
會社カ合併ヲ爲シタルトキハ二週間內ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ合併後存續スル會社ニ付テハ變更ノ登記ヲ爲シ、合併ニ因リテ消滅シタル會社ニ付テハ解散ノ登記ヲ爲シ、合併ニ因リテ設立シタル會社ニ付テハ第五十一條第一項ニ定メタル登記ヲ爲スコトヲ要ス
梅君曰ク本條ノ修正ハ旣ニ前述シタルト同一ナルヲ以テ敢テ說明ヲ要セスト
異議ナシ
第八十五條(舊第八十二條)ヲ左ノ如ク改ム
解散ノ場合ニ於ケル會社財產ノ處分方法ハ定款又ハ總社員ノ同意ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得此場合ニ於テハ解散ノ日ヨリ一週間內ニ財產目錄及ヒ貸借對照表ヲ作ルコトヲ要ス
梅君曰ク解散ノ場合ニ於テ會社財產ノ處分方法ハ必スシモ社員ノ多數決及ヒ法定ノ淸算ニ依ルコトヲ要セス定款又ハ社員ノ合意アラハ自由ニ之ヲ定ムルモ可ナリ甲會社解散シ乙會社其財產ヲ引受ケテ營業ヲ爲スコトモアリ此場合ニハ權利義務共ニ之ヲ引受ケ之ヲ社員間ニ配分スルナリ或ハ合名會社ノ如キニ在リテハ先祖傳來ノ家屋、土地ノ如キモノヲ出資トスルコトアルヲ以テ解散ニ當リテ之ヲ賣却シテ金錢ニ代ヘンヨリハ寧ロ不動產ハ其儘之レヲ引受ケント欲スル事アリ故ニ是等ハ許スヘキモノナリ然レトモ之ニ因リテ債權者カ損害ヲ受クルコトアルヲ慮リ舊第八十二條第二項ニ於テ「會社財產ハ債權者ニ辨濟ヲ爲シ又ハ相當ノ擔保ニ供シタル後ニ非サレハ之ヲ處分スルコトヲ得ス但債權者ノ承諾ヲ得タルトキハ此限ニ在ラス」ト規定シタル所以ナリ然レトモ尙ホ之ニテハ不充分ノ點アリ則チ債權者ニ辨濟シ又ハ擔保ヲ供セサルトキハ處分ハ無效ナリト解釋セサルヲ得サルカ故ニ動產ノ如キハ卽時時効ニ依ルヲ以テ敢テ不可ナシト雖モ彼ノ不動產、債權、株式記名證券ノ如キモノニアリテハ處分ノ無效ナルカ爲メ現在ノ持主ハ再ヒ之ヲ返却セサルヘカラス是頗ル不便ナルヲ以テ本條ハ之ヲ改メ先ツ合併ノ場合ト同一ニシ一通間內ニ財產目錄及ヒ貸借對照表ヲ作成スルモノトシ以テ此不便ヲ防止シタルナリト
異議ナシ
同條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第八十六條 前條ノ規定ニ依リテ會社財產ノ處分方法ヲ定メサリシトキハ合併及ヒ破產ノ場合ヲ除ク外後十四條ノ規定ニ從ヒテ淸算ヲ爲スコトヲ要ス
梅君曰ク本條ハ別段說明ヲ要セス唯タ元來十五个條ナルニ之ヲ「十四條」トセルハ一个條削除シタル結果ナリト
異議ナシ
第九十條(舊第八十七條)中「一週間內」ヲ「二週間內」ト改ム梅君曰ク右二个條ハ何ツレモ旣ニ說明シタル所ト異ナルナキヲ以テ更ニ說明ヲ要セスト
異議ナシ
第百二條(舊第九十七條)ヲ左ノ如ク改ム
會社ノ帳簿、其營業ニ關スル信書及ヒ淸算ニ關スル一切ノ書類ハ本店ノ所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ爲シタル後十年間之ヲ保存スルコトヲ要ス其保存者ハ社員ノ過半數ヲ以テ之ヲ定ム
梅君曰ク帳簿等保存ノ必要アルコトハ今更喋々ヲ要セスシテ明ナリ然レトモ果シテ是等ハ何時ヨリ十年間保存スヘキヤヲ明カニセサルヘカラス本條ハ一方ニ於テハ其解散後十年ナルコトヲ明カニシ又一方ニ於テハ本店ノ所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ爲シタル後十年ナルコトヲ明カニセルナリト
異議ナシ
岡野君注意ヲ爲シテ曰ク本條第二百四十八條(舊第二百三十四條)ノ追加規定中「第八十七條第三項」トハ舊第八十三條第三項トシテ加ヘタルモノニシテ本案中特ニ記載スヘキモノナリシモ脫漏セシモノナリト
第百三條(舊第九十八條)ヲ左ノ如ク改ム
第六十三條ニ定メタル社員ノ責任ハ本店ノ所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ爲シタル後五年ヲ經過シタルトキハ消滅ス
前項ノ期間經過ノ後ト雖モ分配セサル殘餘財產尙ホ存スルトキハ會社ノ債權者ハ之ニ對シテ辨濟ヲ請求スルコトヲ得
梅君曰ク淸算結了ノ後ハ社員ハ其義務ヲ免ルヘキモノナルニモ拘ハラス其後二年間尙ホ訴ヲ受クル事アルカ如キハ頗ル酷ニ失スヘシ故ニ本案ニ於テハ之ヲ改メテ單ニ本店所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ爲シタル後五年間ヲ經過シタルトキハ消滅スヘシトシ且旣ニ說明セシカ如ク「時効ニ因リテ」ヲ削除シ社員ノ義務ヲシテ可及的速カニ免カレシメントシタリト
異議ナシ
第百十一條(舊第百六條)ヲ左ノ如ク改ム
有限責任社員ハ事業年度ノ終ニ於テ營業時間內ニ限リ會社ノ財產目錄及ヒ貸借對照表ノ閱覽ヲ求メ且會社ノ業務及ヒ會社財產ノ狀况ヲ檢査スルコトヲ得
重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ有限責任社員ノ請求ニ因リ何時ニテモ會社ノ業務及ヒ會社財產ノ狀况ノ檢査ヲ許スコトヲ得
梅君曰ク舊條ニ依ルトキハ有限責任社員ハ常ニ財產目錄及ヒ貸借對照表ノ閱覽ヲ求メ又財產ノ狀况ヲ檢査スルコトヲ得ヘシ然ルニ其第二項ニ於テ「重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ」云々トアリテ第一項ハ第二項トハ大ニ其趣ヲ異ニス卽チ第一項ニ依レハ財產目錄及ヒ貸借對照表ヲ閱覽シ又財產ノ狀况ヲ檢査スルハ自由ナルニモ拘ハラス第二項ニ於テ更ニ「重要ナル事由アルトキハ裁判所カ帳簿ヲ閱覽シ又財產ノ狀况ヲ檢査ス」トハ殆ント解セサル所ナリ故ニ本案ノ如ク之ヲ改メタリト
異議ナシ
第百十八條(舊第百十三條)第二項中「一週間內」ヲ「二週間內」ト改ム
梅君曰ク別ニ說明シタルヲ以テ再ヒ之カ說明ヲ要セスト
異議ナシ
第百二十二條(舊第百十七條)ヲ左ノ如ク改ム
左ニ揭ケタル事項ヲ定メタルトキハ之ヲ定款ニ記載スルニ非サレハ其效ナシ
 一 存立時期又ハ解散ノ事由
 二 株式ノ額面以上ノ發行
 三 發起人カ受クヘキ特別ノ利益及ヒ之ヲ受クヘキ者ノ氏名
 四 金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的ト爲ス者ノ氏名、其財產ノ種類、價格及ヒ之ニ對シテ與フル株式ノ數
 五 會社ノ負擔ニ歸スヘキ設立費用及ヒ發起人カ受クヘキ報酬ノ額
梅君曰ク舊第百十五條ノ場合ノ如キハ其記載ヲ爲サヾルトキハ定款全部カ無效ト爲ルモノナリト雖モ本條ノ場合ハ全ク之ト異ナルヲ以テ第一項末文ニ「其效ナシ」トシ以テ其異義ヲ明カニセリト
異議ナシ
第百二十三條(舊第百十八條)中「發起人ノ」ノ下「議決權ノ」ノ四字ヲ加フ
梅君曰ク舊文中「議決權」ノ文字無シ故ニ其頭數ヲ以テ決セサルヘカラス則チ發起人トシテ連帶責任ヲ負フモノニシテ株ノ多少ニヨリ發起人トシテノ責任ニ多少ナシ然ルニ本條ノ選任ハ發起人トシテニアラス株ノ多少ニ因ルヘキモノナルヲ以テ「議決權」ノ文字ヲ加ヘタリト
異議ナシ
第百二十六條(舊第百二十一條)ヲ左ノ如ク改ム
株式ノ申込ヲ爲サントスル者ハ株式申込證二通ニ其引受クヘキ株式ノ數ヲ記載シ之ニ署名スルコトヲ要ス
株式申込證ハ發起人之ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
 一 定款作成ノ年月日
 二 第百二十條及ヒ第百二十二條第一號、第三號乃至第五號ニ揭ケタル事項
 三 各發起人カ引受ケタル株式ノ數
 四 株式發行ノ價額
 五 第一回拂込ノ金額
梅君曰ク株式申込證二通ヲ要ストセルハ手續法上必要ヲ生シタルナリ蓋シ會社ノ設立ニ當リテ登記ヲ爲スニハ株式ノ總數カ旣ニ申込マレタルコトヲ證明セサルヘカラス然ルニ登記ナルモノハ專ラ迅速ナルヲ貴フカ故ニ一目瞭然ノ方法ヲ採ラサルヘカラス故ニ株式申込證ヲ裁判所ニ提出セハ之ニ因リ速カニ登記ヲ完結スルノ便アリ而シテ此證書ハ裁判所ヨリ返却スルコトナク會社ニ於テモ一通ヲ保存スルノ必要アルカ故ニ二通ヲ要スルモノトセリト
異議ナシ
第百二十九條(舊第百二十三條)ヲ左ノ如ク改ム
株式總數ノ引受アリタルトキハ發起人ハ遲滯ナク各株ニ付キ第一回ノ拂込ヲ爲サシムルコトヲ要ス
額面以上ノ價額ヲ以テ株式ヲ發行シタルトキハ其額面ヲ超ユル金額ハ第一回ノ拂込ト同時ニ之ヲ拂込マシムルコトヲ要ス
拂込ハ日本ノ貨幣、兌換券又ハ日本銀行ニ對スル債權證書ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
梅君曰ク第一項ニ「遲滯ナク」ヲ加ヘタル理由ハ固ヨリ之レ無クトモ第一回ノ拂込ナキトキハ登記モ爲スコト能ハサルヲ以テ必ス遲滯ナク拂込ヲ爲サシムヘシト雖モ他ノ文例上之ヲ加ヘタリ又第三項ヲ加ヘタル理由ハ「拂込」ト云フニ付キ外國ニ於テモ疑問ヲ生シ例ヘハ手形ヲ發行シ或ハ他人カ支拂人タルヘキ手形ヲ以テ拂込ヲ爲スカ如キハ固ヨリ出來得サルコトナリト雖モ或ハ疑ヲ生スルノ恐アルヲ以テ明カニ拂込ト見ルヘキ目的物ヲ定メタリ第一、貨幣、兌換券、日本銀行ニ對スル債權ノ如キハ先ツ以テ確實ナリト認メテ之ヲ規定シタリト
鶴原君曰ク斯ノ如キトキハ商業會ノ不便實ニ思フヘシ是等ハ須ラク發起人ニ於テ定ムレハ可ナリト
次ニ加藤君モ喋々甚不可ナルヲ述ヘ且本案ニ認メタルモノヲ確實トセハ政府ノ郵便替爲替ノ如キモ之ヲ認ムルノ要アリ寧ロ之ヲ削除スヘシト主張シ贊成者アリタルヲ以テ議長ハ採決セシニ多數ヲ以テ本條第三項ハ削除セラレタリ
舊第百二十九條ヲ改メテ左ノ三條トス
第百三十五條 創立總會ニ於テ第百二十二條第三號乃至第五號ニ揭ケタル事項ヲ不當ト認メタルトキハ之ヲ變更スルコトヲ得但金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的ト爲ス者アル場合ニ於テ之ニ對シテ與フル株式ノ數ヲ減シタルトキハ其者ハ金錢ヲ以テ拂込ヲ爲スコトヲ得
第百三十六條 引受ナキ株式又ハ第百二十九條ノ拂込ノ未濟ナル株式アルトキハ發起人ハ連帶シテ其株式ヲ引受ケ又ハ其拂込ヲ爲ス義務ヲ負フ株式ノ申込カ取消サレタルトキ亦同シ
第百三十七條 前二條ノ規定ハ發起人ニ對スル損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
梅君曰ク舊條ハ三項ヨリ成リタルヲ三个條ニ分割セリ先ツ第百三十五條乃チ舊條第一項ニ但書ヲ加ヘタリ之ハ加藤君等ノ意見ヲ容レ金錢以外ノモノヲ出資トスルコトヲ認メ之ニ對シテ與フル株式ノ數ヲ余リ多ク見積リタルトキハ之ヲ減却スルコトヲ得ルナリ然ルニ金錢外ノ物ヲ評價スルニ當リテハ或ハ人ニヨリテ價格ヲ異ニス故ニ或者カ金錢外ノ物ヲ出資トセルニ會社ニ於テ之ヲ代價ニ見積ルニ當リ無制限ニ其價ヲ減スルカ如キハ出資者ニ對シ頗ル酷ナリト謂ハサルヲ得ス故ニ斯ノ如キ場合ニハ金錢ヲ以テ拂込ヲ爲スコトヲ得ルモノトセリ次ニ第百三十六條ハ舊文ニ所謂「發見」ノ文字ヲ除ケリ若シ此文字ヲ存スルトキハ旣ニ事實ハ發生セルニモ拘ハラス之ヲ發見セサレハ其義務無キカ如クナレハナリ此修正ノ結果トシテ之ハ創立總會ノ規定ノミナラス頗ル廣キ規定ト爲リ總會ノ後ト雖モ連帶シテ之ヲ引受クルノ義務ヲ生スヘキモノナリ又本條ノ末文ハ株式ノ申込ハ一ツノ法律行爲ナルカ故ニ種々ノ原因乃チ詐欺、強迫等ニ依リテ取消スコトヲ得ルモノナリ而シテ取消サレタルトキハ始メヨリ無効ト爲ルヘシ果シテ然ルトキハ株ノ不足ヲ生スヘシ此時ニ當リテ新タニ之ヲ募集スルハ極メテ不都合ニシテ此ノ如キハ發起人ノ過失ト謂ハサルコトヲ得ス蓋シ發起人ナルモノハ取消ノ原因タル詐欺強迫ノ如キハ之ヲ爲スコトヲ得ス注意深キ者ナラハ先ツ申込書ニ其年齡ヲ記載セシメ妻ニ付テハ其夫ノ許可ヲ得タルヤ否ヤヲ記セシメ又禁治產者若クハ準禁治產者ニハ其旨ヲ記載セシムヘキナリ若シ是等ニシテ欺ハリヲ記載セハ是レ純然タル詐欺ナリ詐欺ハ法律ノ保護セサル所ナルヲ以テ是等ハ自ラ義務ヲ負フヘキモノニシテ是レ自ラ爲セル禍ナリト謂フヘシト
異議ナシ
第百四十一條(舊第百三十三條)ヲ左ノ如ク改ム
會社ハ發起人カ株式ノ總數ヲ引受ケタルトキハ第百二十四條ニ定メタル調査終了ノ日ヨリ又發起人カ株式ノ總數ヲ引受ケサリシトキハ創立總會終結ノ日ヨリ二週間內ニ其本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス
 一 第百二十條第一號乃至第四號及ヒ第七號ニ揭ケタル事項
 二 本店及ヒ支店
 三 設立ノ年月日
 四 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其時期又ハ事由
 五 各株ニ付キ拂込ミタル株金額
 六 開業前ニ利息ヲ配當スヘキコトヲ定メタルトキハ其利率
 七 取締役及ヒ監査役ノ氏名、住所
第五十一條第二項、第三項、第五十二條及ヒ第五十三條ノ規定ハ株式會社ニ之ヲ準用ス
梅君曰ク本條ハ單ニ第四號ニ修正ヲ加ヘタルニ過キス而シテ修正ノ點ハ旣ニ屢々說明セシ所ナルヲ以テ更ニ贅セスト
異議ナシ
同條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第百四十二條 會社カ前條第一項ノ規定ニ從ヒ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ爲シタル後ハ株式引受人ハ詐欺又ハ強迫ニ因リテ其申込ヲ取消スコトヲ得ス
梅君曰ク本條ヲ設ケタル理由他ナシ元來申込ハ一ノ法律行爲ニシテ詐欺強迫無能力ニ因リテ之ヲ取消スコトヲ得ルモノナリ而シテ無能力ニ付テハ常ニ保護ヲ與ヘテ取消ヲ認メサルヘカラスト雖モ彼ノ強迫ノ如キハ永續スルモノニアラス詐欺モ亦速カニ發見セラレ得ヘキモノトス然ルニ會社カ登記ヲ終リシ後ニ於テモ尙ホ詐欺、強迫ヲ理由トシテ取消スカ如キコトアラハ會社ハ遂ニ成立セサルニ至ルヘキカ故ナリト
異議ナシ
次ニ岡野君曰ク會社ニ付テハ行政上ノ監督ヲ廢シタルニ大藏省ヨリ意見ヲ申來リ之カ必要ヲ說ケリ(書面朗讀アリ)然レトモ結局會社設立ノ免許ヲ必要ト信セサリシカ故ニ此點ニ付テハ敢テ修正ヲ施サスト雖モ余一個ノ考トシテハ或ハ行政上ノ干涉ヲ要スル場合モ之レアランカト疑フ乍去是ハ本案ニ入レスシテ後日施行法ニ包含セシメハ可ナラント信スルヲ以テ尙ホ評議ヲ凝ラスヘシト
舊第百三十四條ヲ改メテ左ノ二條トス
第百四十三條 株式會社ノ資本ハ之ヲ株式ニ分ツコトヲ要ス
梅君曰ク舊條ヲ二个條ニ分割シタルハ體裁ヲ慮リテナリ而シテ第百四十四條ニ末項ヲ加ヘタルハ曩キニ削除セラレタル第百二十九條(舊第百二十三條)第三項ト同一ノ精神ニ出テタルモノナリ蓋シ株主ト雖モ會社ニ對シ債權ヲ有スル場合アリ得ヘシ而シテ會社設立ノ際ト設立ノ後ナルトヲ問ハサルヘシ其設立ノ際ノモノハ則チ第百二十九條第三項ニシテ右ハ旣ニ削除セラレタルヲ以テ巳ムヲ得スト雖モ本條ノ場合卽チ會社設立ノ後ニ於ケル場合ハ寧ロ頻繁ノ場合ナリ今此債權ヲ以テ拂込ニ代フルトキハ實際上會社ニ納付セシ金錢ニ不足ヲ生シ其事業爲メニ不正確トナルヘキ恐アルヲ以テ本項ヲ加ヘテ之ヲ救濟セリト
第百四十九條(舊第百三十九條)ヲ左ノ如ク改ム
株券ニハ左ノ事項及ヒ番號ヲ記載シ取締役之ニ署名スルコトヲ要ス
 一 會社ノ番號
 二 第百四十一條第一項ノ規定ニ從ヒ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ爲シタル年月日
 三 資本ノ總額
 四 一株ノ金額
一時ニ株金ノ金額ヲ拂込マシメサル場合ニ於テハ拂込アル每ニ其金額ヲ株券ニ記載スルコトヲ要ス
梅君曰ク舊條第五號ハ消シ落チナルヲ以テ之ヲ報吿ス次ニ本條第二號ニ加ヘタル修正ハ旣ニ說明セルト同一ナリ第二項ハ單ニ「一時ニ」ヲ加ヘテ其意味ヲ明カニセリト
異議ナシ
第百五十一條(舊第百四十一條)中「本店又ハ支店ノ」ノ七字ヲ削ル
梅君曰ク之ヲ削除シタル理由ハ加藤君等ヨリノ意見ニ從ヒタルモノニシテ讓渡人ノ氏名、住所ハ之ヲ本店又ハ支店其何ツレノ名簿ニ記載スルモ自由ナルハ不可ナリ今日ノ實際ハ獨リ本店ニノミ純然タル株主名簿アルニ過キス且又株主ノ變更ノトキハ本店支店共ニ直チニ書換ヲ爲スコトハ到底能ハサルコトニシテ本店ト支店ト相隔絕スル場合ニ在リテハ幾分ノ日數ヲ要スヘシ是本條ノ修正アル所以ナリト
異議ナシ
第百五十五條(舊第百四十五條)ヲ左ノ如ク改ム
前條ニ定メタル讓渡人ノ責任ハ讓渡ヲ株主名簿ニ記載シタル後二年ヲ經過シタルトキハ消滅ス
梅君曰ク「時効ニ因リテ」ヲ削リシハ旣ニ說明セル所ナリ「五年」ヲ「二年」トセルハ五年ニテハ酷ニ失ストノ意見ニ從ヒシモノナリト
土方君曰ク正確ナル會社ニシテ直ニ其株主タル者ニハ五年敢テ酷ナラス故ニ舊ニ復スヘシト
次ニ富谷君モ之ニ贊成シ議長ハ採決セルモ少數ニテ消滅シ本條ハ整理案ニ確定シ次ニ移ル
第百五十八條(舊第百四十八條)及ヒ第百五十九條(舊第百四十九條)中「通常總會」ヲ「定期總會」ト改ム
第百六十二條(舊第百五十二條)第一項及ヒ第二項ヲ左ノ如ク改ム
總會ノ決議ハ本法又ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外出席シタル株主ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ爲ス
無記名ノ株券ヲ有スル者ハ會日ヨリ一週間前ニ其株券ヲ會社ニ供託スルニ非サレハ其議決權ヲ行フコトヲ得ス
梅君曰ク第百五十八條及ヒ第百五十九條ニ於テ「定時總會」ト改メタルハ實業家ヨリ若シ通常總會ニ於テハ右二个條ノモノノ外決議スルコトヲ得ストセハ頗ル不便ナリ故ニ「通常總會」ノ文字ヲ改ムヘシトノ意見ニ從ヒ之ヲ「定時總會」ト改メ以テ臨時總會ニ對セシメタリ次ニ第百六十二條ニ「又ハ定款」ヲ加ヘタル理由ハ或ハ疑ヲ生スルノ恐アルヲ以テナリ尙ホ第二項ノ「五日前」ヲ「一週間前」トセルハ大藏省ヨリノ意見出テ斯クテハ實際ノ株主ト云フヲ得サル者ヲ出サントテ之ニ從ヘリト
異議ナシ
第百六十四條(舊第百五十四條)第一項ヲ左ノ如ク改ム
總會招集ノ手續又ハ其決議ノ方法カ法令又ハ定款ニ反スルトキハ裁判所ハ株主ノ請求ニ因リ其決議ノ無効ヲ宣吿スルコトヲ得
梅君曰ク元文ニハ「總會ノ決議」トアルヲ以テ或ハ其決議シタル事項カ法令等ニ反スル場合ニモ適用アルカ如キヲ以テ單ニ其形式ノミカ法令等ニ反シタル場合ナルコトヲ明カニセンカ爲メ之ヲ修正セリ又「取締役、監査役」ヲ削除セシ理由ハ取締役ト雖モ株主ナリ又監査役ハ株主ナラサルモ可ナルヘキ人ナルカ故ニ敢テ此場合ニ關係ナキヲ以テ是等ヲ削除セリト
異議ナシ
第百七十二條(舊第百六十二條)ヲ左ノ如ク改ム
取締役ハ定款及ヒ創立總會並ニ株主總會ノ決議錄ヲ本店及ヒ支店ニ備ヘ置キ且株主名簿及ヒ社債原簿ヲ本店ニ備ヘ置クコトヲ要ス
株主及ヒ會社ノ債權者ハ營業時間內何時ニテモ前項ニ揭ケタル書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
梅君曰ク第一項ニ於テ株主名簿ヲ本店ノミニ備ヘ置クコトトセシハ旣ニ說明シタル所ニヨリテ明カナリ乃チ之ハ本店ノミニ備ヘ置クヘキモノトスルノ主義ヲ採リタルニ依ルナリ又「社債原簿」ヲ入レタルハ先キノ規定上必ス之ヲ置クヘキコトト爲ルカ故ナリ次ニ第二項ニ於テ「及ヒ會社ノ債權者」ヲ加ヘタルハ該條ニ揭ケタルモノハ債權者ヲモ認ムルノ必要アレハナリ現行法モ斯ク爲リ居ルナリ次ニ「營業時間內」トハ或ハ夜中ニ閱覽ヲ求ムルカ如キ弊アルヲ防クカ爲メナリト
異議ナシ
第百七十三條(舊第百六十三條)ヲ左ノ如ク改ム
株主名簿ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
 一 各株主ノ氏名、住所
 二 各株主ノ株式ノ數及ヒ株券ノ番號
 三 各株ニ付キ拂込ミタル株金額及ヒ拂込ノ年月日
 四 各株式ノ取得ノ年月日
 五 無記名式ノ株券ヲ發行シタルトキハ其數、番號及ヒ發行ノ年月日
株主名簿ニ記載シタル事項ニ變更ヲ生シタルトキハ遲滯ナク之ヲ記載スルコトヲ要ス
梅君曰ク第二項ニ於テ「本店及ヒ支店」ヲ削除セシノミニテ此理ハ旣ニ述ヘタルト同一ナリト
異議ナシ
第百七十八條(舊第百六十八條)第一項及ヒ第二項ヲ左ノ如ク改ム
株主總會ニ於テ取締役ニ對シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルトキ又ハ之ヲ否決シタル場合ニ於テ資本ノ十分ノ一以上ニ當タル株主カ之ヲ監査役ニ請求シタルトキハ會社ハ決議又ハ請求ノ日ヨリ一个月內ニ訴ヲ提起スルコトヲ要ス
前項ノ請求ヲ爲シタル株主ハ監査役ノ請求ニ因リ其株券ヲ供託シ又ハ相當ノ擔保ヲ供スルコトヲ要ス
梅君曰ク第一項ニ「又ハ否決シタル場合ニ於テ」ヲ加ヘタルハ若シ元文ノ儘ナルトキハ總會ニ於テ訴ヲ提起スルコトヲ決議セサル場合ニモ連署ヲ以テ訴ノ提起ヲ請求シ得ルコトト爲ルヘキカ故ナリ果シテ然ラハ恰モ總會ノ決議ヲ無視スルニ異ナラス依テ如何ナル場合ト雖モ一旦總會ニ提出スルコトヲ要スヘキモノトシ總會ニ於テ決議アリタルトキハ當然訴ヲ提起シ得ヘキモノトシ又總會ニ案ヲ提出シタルモ否決セラレタルニ至リテ始メテ資本ノ十分ノ一以上ニ當タル株主ノ請求ニ因リテ訴ヲ提起シ得ヘキモノト修正シタリ次ニ第二項ハ舊文ニハ單ニ擔保ニ付テノミ規定シ供託ニ付テハ若シ株券ヲ悉ク供託セハ株主ノ迷惑一方ナラストテ削除セラレタリ然ルニ實業家ニ於テ斯クテハ濫訴ノ弊ヲ生スヘシトノ意見アリ本會ハ之ヲ容レ則チ「供託」ヲ加ヘタリト
土方君ハ臨時總會ニ付テハ株主ノ五分ノ一ナルニ株主總會ニ限リ其十分一以上ナルハ彼是權衡ヲ失スルノミナラス一旦豫決ヲ請ヒシ後更ニ又請求ヲ爲スカ如キハ極メテ煩雜ナルカ故ニ寧ロ元案ニ復スルヲ可トス先ツ本條ノ十分ノ一ヲ五分ノ一ト改ムルカ若クハ臨時總會ノ場合ヲ十分ノ一ニ改ムルカ要スル所兩々權衡ヲ得セシムヘシト主張シ他ニ贊成者アリ起草委員ハ再考スヘシト吿ケ直チニ次條ニ移ル
第百八十條(舊第百七十條)ヲ左ノ如ク改ム
監査役ノ任期ハ之ヲ一年トス但其任期滿了ノ後之ヲ再選スルコトヲ妨ケス
梅君曰ク元文ニハ任期無ク黑字第百五十七條取締役ニ關スル任期ヲ之ニ準用シ乃チ三年以內ハ定款ヲ以テ自由ニ定ムルコトヲ得ルモノトセリ然ルニ監査役ト取締役トカ共ニ改選セラルルトキハ多少同臭味ノ者ヲ出タスノ弊アルカ故ニ寧ロ之ヲ別個ニ規定スルノ要アリ而シテ監査役ノ職務ハ敢テ任期ノ長キコトヲ要セサルヲ以テ之ヲ一年トセリト
異議ナシ
第百八十七條(舊第百七十六條)第一項及ヒ第二項ヲ左ノ如ク改ム
株主總會ニ於テ監査役ニ對シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルトキ又ハ之ヲ否決シタル場合ニ於テ資本ノ十分ノ一以上ニ當タル株主カ之ヲ取締役ニ請求シタルトキハ會社ハ決議又ハ請求ノ日ヨリ一个月內ニ訴ヲ提起スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ第百八十五條第一項但書及ヒ第二項ノ規定ヲ準用ス
前項ノ請求ヲ爲シタル株主ハ取締役ノ請求ニ因リ其株券ヲ供託シ又ハ相當ノ擔保ヲ供スルコトヲ要ス
梅君曰ク本條ハ第百七十八條ノ「十分ノ一」ト共ニ再考ニ付スヘシト
第百八十九條(舊第百七十八條)ヲ左ノ如ク改ム
第百六十五條、第百六十八條及ヒ第百七十九條ノ規定ハ監査役ニ之ヲ準用ス
第百九十條(舊第百七十九條)本文ヲ左ノ如ク改ム
取締役ハ定時總會ノ會日ヨリ一週間前ニ左ノ書類ヲ監査役ニ提出スルコトヲ要ス
梅君曰ク第百八十九條ハ條數ニ變更ヲ來シタル結果ニシテ說明ヲ要セス又第百九十條ノ「二週間」ヲ「一週間」ト改メタル理由及ヒ「定時總會」トセル理由ハ旣ニ述ヘタルト同一ノ理由ナレハ說明ヲ要セスト
異議ナシ
第百九十一條(舊第百八十條)ヲ左ノ如ク改ム
取締役ハ定時總會ノ會日前ニ前條ニ揭ケタル書類及ヒ監査役ノ報吿書ヲ本店ニ備フルコトヲ要ス
株主及ヒ會社ノ債權者ハ營業時間內何時ニテモ前項ニ揭ケタル書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
梅君曰ク本條ニ「報吿スルコトヲ要ス」ト修正シタルハ次條ノ修正ト比較セハ明瞭ナル儀ニシテ監査役ノ職務トシテハ舊第百七十二條ニ「報吿スルコトヲ要ス」トアリ乍ラ本條ニ於テ元文ノ如ク「意見書」ヲ備フヘシトハ頗ル奇ナリ依テ之ヲ改メタリ尙ホ又「支店」ヲ削リ本店ノミトセルハ實業家ノ意見ヲ容レタルモノニシテ是等ノ書面ハ會日前ニ各支店ニ備フルコトハ到底能ハサルコトアリ現行法ニモ「本店及ヒ支店」トアルモ實際ニ行ハレサル由故ニ本店ノミト修正セリト
異議ナク散會セリ
于時午后第七時