明治商法(明治32年)

法典調査会 商法委員会議事要録 第123回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
第百二十三回商法委員會議事要錄
出席員
淸浦奎吾君
土方寧君
田部芳君
高木豐三君
穗積八束君
橫田國臣君
富谷鉎太郞君
梅謙次郞君
河村讓三郞君
奧田義人君
井上正一君
寺尾亨君
都筑馨六君
穗積陳重君
長谷川喬君
磯部四郞君
尾崎三良君
三浦安君
岡野敬次郞君
中村元嘉君
內田嘉吉君
商修正原案
起草委員堤出
第五百二條中「航海ニ堪ヘサル」ヲ「修繕スルコト能ハサル」ト改ム
第五百二條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第五百二條甲 左ノ場合ニ於テハ船舶ハ修繕スルコト能ハサルニ至リタルモノト看做ス
一 船舶カ其現在地ニ於テ修繕ヲ受クルコトヲ得ス且其修繕ヲ爲スヘキ地ニ至ルコト能ハサルトキ
二 修繕費カ船舶ノ價額ノ四分ノ三ヲ超ユルトキ
前項第二號ノ價額ハ船舶カ航海中毀損シタル場合ニ於テハ其發航ノ時ニ於ケル價額トシ其他ノ場合ニ於テハ其毀損前ニ有セシ價額トス
岡野君ノ說明ニ曰ク此第五百二條中ノ修正ト第五百二條甲ナル一個條ヲ新ニ加フルトノ修正トハニ者相牽聯スルヲ以テ之カ說明ニ關シテモ亦便宜上併合シテ陳述スヘシ第}、第五百二條中「航海ニ堪ヘサル」ノ文字ヲ「修繕スルコト能ハサル」ト修正スル理由ハ既ニ此海商編ニ於テハ第五百十六條第二號ニ於テ海員ノ雇入契約ノ終了ニ關シ「船舶カ海難ニ因リテ修繕スルコト能ハサルニ至リタルトキ」トシ又第五百三十九條第二號ニ於テ船舶ノ全部ヲ以テ邇送契約ノ目的ト爲シタル場合ニ其契約ノ終了ニ關シ「船舶カ海難ニ因リテ修繕スルコト能ハサルニ至リタルトキ」トシ而シテ又第五百九十八條甲第二號ニ於テ被保險者カ保險ノ目的ヲ保險者ニ委付シテ保險金額叭ノ全部ノ支拂ヲ請求スルコトヲ得ヘキ場合ニ關シ「船舶カ海難ニ因リテ修繕スルコト能ハサルニ至リタルトキ」トシタリシヲ以テ此第五百二條ニ於テモ同一ノ文字ヲ使用スルヲ穩當ナリト考ヘタレハナリ尤モ此「修繕スルコト能ハサル」トハ果シテ如何ナル程度ニ達シタル場合ナルヤハ稍不分明ノ嫌ナキ能ハス故ヲ以テ獨逸ノ如キハ此場合ニ關スル規定ヲ特ニ設ケタリ然ルニ本會ニ於テモ亦曾テ內田君ヨリ此場合ニ關スル規定ヲ特ニ設ケテハ如何トノ注意アリタリキ是固ヨリ穩骨田ノコトナルヲ以テ余斐卑モ右ノ注意ヲ緜休用シ之ニ關スル規定ヲ設クヘキコトニ決定セリ斯ク決定スル以上ハ其位置ノ如キハ第五百二條ノ文章ヲ改ムルト同時ニ同條ノ次ヲ以テ穩當ナリトシ玆ニ第五百二條甲ナル一個條ヲ加フルノ修正案ヲ提出シタル所以ナリ就テハ此第五百二條甲第一項ニ付テハ別ニ說明スルノ必要ナシト雖モ第二項ノ規定ニ付テハ一言スヘキ必要アリ其ハ右第二項ニ於テ船舶カ航海中毀損シタル場合ニ限リ其發航ノ時ニ於ケル價額ヲ以テ第一項第二號ノ價額ト爲セシコト是ナリ是蓋シ理論上ヨリ觀察スルトキハ敢テ批難スヘキ餘地ナキニアラスト雖モ實際航海中ニ毀損セシ場合ノ如キハ便宜上斯カル標準ヲ取ルノ外ナキモノト信シタレハナリト右ハ原案ニ可決シ次ノ商修原案ニ移リタリ
商修正原案
起草委員提出
第五百三十八條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第五百三十八條甲 船舶ノ全部又ハ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト爲シタル場合ニ於テ傭船者カ更ニ第三者ト運送契約ヲ爲シタルトキハ其契約ノ履行カ船長ノ職務ニ屬スル範團内ニ於テハ船舶所有者ノミ其履行ノ責ニ任ス但第四百八十條ニ定メタル權利ヲ行使スルコトヲ妨ケス
岡野君ノ說明ニ曰ク此修正原案ハ殆ント讀テ字ノ如キヲ以テ特ニ說明ヲ要セサルヘシ、要スルニ船舶ノ全部又ハ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト爲シタル場合ニ於テハ傭船者必スシモ自己ノ運送品ヲ積込ムモノト謂フ可ラス何トナレハ其傭船シタル目的タルヤ更ニ第三者ト運送契約ヲ爲サント欲スル場合アレハナリ是等ノ場合ニ於テハ其第三者ト傭船者ト爲シタル運送契約ノ履行カ船長ノ職務ニ屬スルトキハ其職務ノ簫四圍[內ニ於テハ縱令船舶所有者ハ不知ノ場合タリトモ其履行ノ責ニ任スヘキモノトス是蓋シ契約ノ當事者ハ傭船者ナリト雖モ船長ノ職務ニ屬スル範圍內ハ船舶所有者其責ニ任スヘキコト當然ナレハナリ次ニ本條但書ヲ設ケタルハ本條ト第四百八十條トハ隔絕スルヲ以テ注出忌ニ便ナラシメンカ爲メナリト
右ハ原案ニ可決シ法例ノ議事ニ移リタリ