明治商法(明治32年)

法典調査会 商法委員会議事要録 第122回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
第百二十二回商法議事要錄
出席員
淸浦奎吾君
土方寧君
阿部泰藏君
田部芳君
高木豐三君
富谷鉎太郞君
河村讓三郞君
寺尾亨君
都筑馨六君
梅謙次郞君
重岡薰五郞君
長谷川喬君
南部甕男君
三浦安君
中村元嘉君
岡野敬次郞君
加藤正義君
商修正原案
第三百五十六條ヲ左ノ如ク改ム
保險金額支拂ノ義務ハ二年ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス保險料支拂ノ義務ニ付キ一年ヲ經過シタルトキ亦同シ
第五百十九條(舊第四百七十三條)ヲ左ノ如ク改ム
船舶所有者ハ傭船者又ハ荷送人ニ對シ發航ノ當時船舶カ安全ニ航海ヲ爲スニ堪フルコトヲ擔保ス
岡野君曰ク既ニ保險ノ總則中ニ設ケタル規定中第三百九十六條ニ保險金額支拂ノ義務ハ二年ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅スト爲シ保險者ノ義務ニ付キテ其規定ヲ設ケタリ反之保險料支拂ノ義務ニ付テハ特別ノ事故ニ係ルコトニ付キ規定ナキトキハ普通ノ時效ヲ適用セラレ五年トナルニ至ルヘシ其故ニ保險料支拂ノ義務ハ特ニ本條ニ規定スルノ必要ヲ生セシナリ然レトモ權衡上一方ハ一年ニシテ一方ハ二年ト爲スノ必要ハナキカ如シト雖モ保險料ハ實際上或特種ノ保險契約ニシテ之ニ對シテ保險契約者ハ保險料ヲ支拂フモノニシテ隨テ之ヲ怠リシトキハ被保險者ハ嗔補ノ責任ヲ負擔ストノ保險料ノ支拂ニ付テハ嚴格ナル規定アルカ故ニ之ヲ補フカ爲メ二年ノ短期トセリ次ニ第五百十九條ヲ改メタルハ原案ニ於テハ船舶所有者ハ傭船者又ハ荷送人ニ對シ發航ノ當時船舶カ航海ニ堪フルコトヲ擔保ストアリ如斯航海ニ堪フルトアルトキハ船體カ航海ニ堪フルトノ狹義ニ解スルノ虞アリ本條ハ航海ヲ爲スニ總テノ艤裝ヲ整頓セシヲ以テ航海ニ堪エシムル爲メナルカ故ニ原案ノ儘ニテハ狹義ニ失シ誤解ヲ生スルニ至ルヘシ故ニ修正案ハ船舶カ安全ニ航海ヲ爲スト改メタリ
商修正案
第五百二十條(舊第四百七十四條)ヲ左ノ如ク改ム
法令ニ違反シ又ハ契約ニ依ラスシテ船積シタル運送品ハ船長ニ於テ何時ニテモ之ヲ陸揚シ、若シ船舶又ハ積荷ニ危害ヲ及ホス虞アルトキハ之ヲ放棄スルコトヲ得但船長カ之ヲ運送スルトキハ其船積ノ地及ヒ時ニ於ケル同種ノ運送品ノ最高ノ運送賃ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ規定ハ船舶所有者其他ノ利害關係人カ損害賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ妨ケス
第五百二十二條(舊第四百七十六條)中「契約ヲ以テ定メタル期間」ヲ「船積期間」ト改ム
第五百二十四條(舊第四百七十八條)ヲ左ノ如ク改ム
船積期間經過ノ後ハ傭船者カ運送品ノ全部ヲ船積セサルトキト雖モ船長ハ直チニ發航ヲ爲スコトヲ得此場合ニ於テ傭船者ハ前條第二項ニ定メタル責任ヲ負フ
岡野君曰ク第五百二十條ヲ改メシハ要スルニニ個アリ第一㸃ハ運送品ヲ船積シタル者ハ船舶所有者其他ノ利害關係人ニ對シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ストアリシカ損害賠償ノ責任ハ當然ノ規定ニシテ寧ロ第二項トシテ之ヲ定メ本條ノ主眼タル規定ト前後スルカ目取モ穩普田ナルモノナリトノ穗積君ノ詫醜求ニ從ヒ原案ヲ亠剛後シ第一項ヲ第二項トシ前項ノ規定ハ般舶所有者其他ノ利害關係人カ損害賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ妨ケストセリ
第二ニ修正ヲ加ヘタル㸃ハ原案第四百七十四條二項ノ終ニ於テ同種ノ運送品ニ付キ約シタル最高ノ運送賃ヲ請求スルコトヲ得トアリ然レトモ如斯規定ナルトキハ必ス同種ノ運送品ニ付キ運送賃ヲ約シタルカ如キ感アリテ穩當ナラス加之加藤君ヨリモ以上ノ趣旨ト同一ナル請求アリシカ故ニ船積ノ地及ヒ時ニ於ケル同種ノ運送品ノ最高ノ運送賃云々ト之ヲ修正セリ第三ハ船長カ其運迭ヲ繼續スルトキハ云云ト爲ストキハ一ト度運送ヲ始メタルト看ユルノ感アリテ穩當ナラス其故ニ船長カ之ヲ運送スルトキハト改メ船舶ニ積込タルトキテモ顯ハスコトトセリ第四ハ原案ニハ船積ノ時及ヒ場所ニ於テトアルモ本案ノ關係上商法ノ全體ト文例ヲ同フセンカ爲メ船積ノ地及ヒ時ニ於ケルト改ムルコトトセリ次二五百二十二條中此場合ニ於テハ契約ヲ以テ定メタル期間內ニ限リ云々トアレトモ他ノ文例ニ倣ヒ此場合ニ於テハ船積期間內ニ限リ傭船者ニ於テ云々ト改ムルコトトセリ次二五百二十四條中運送品ヲ船積スヘキ期間ヲ經過シタルトキハ云々トアレトモ船積期間ノ文字ヲ作リシ爲メ前條ト同一ノ理由ニ依リ本條ヲ改ムルコトトセリ
商修正原案
第五百二十五條(舊第四百七十九條)ヲ左ノ如ク改ム
發航前ニ於テハ傭船者ハ運送賃ノ半額ヲ支拂ヒテ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得
往復航海ヲ爲スヘキ場合ニ於テ傭船者カ其歸航ノ發航前ニ契約ノ解除ヲ爲シタルトキハ運送賃ノ三分ノ二ヲ支拂フコトヲ要ス他港ヨリ船積港ニ航行スヘキ場合ニ於テ傭船者カ其船積港ヲ發スル前ニ契約ノ解除ヲ爲シタルトキ亦同シ
運送品ノ全部又ハ一部ヲ船積シタル後前二項ノ規定ニ從ヒテ契約ノ解除ヲ爲シタルトキハ其船積及ヒ陸揚ノ費用ハ傭船者之ヲ負擔ス
傭船者カ船積期間內ニ運送品ノ船積ヲ爲ササリシトキハ契約ノ解除ヲ爲シタルモノト看做ス
第五百二十六條(舊第四百七十九條甲)第二項中「海損」ヲ「海損、救援」ト改ム
第五百三十條(舊第四百八十三條)ヲ左ノ如ク改ム
第五百二十八條ノ規定ハ荷送人カ契約ノ解除ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
岡野君曰ク第五百二十五條ヲ改メシハ原按第一項但書ヲ三項トセシカ重モナル修正ナリ船舶ノ發航前ニ在リテ運送品ノ全部又ハ一部カ撫酬積シアルトキ契約ノ解除ヲ爲シタルトキハ傭船者カ船{槓ノ費用及ヒ陸揚ノ費用ヲ負擔スルコトハ原案第一項及ヒ第二項ニ適用スル必要アルカ故ニ其適用ヲ明瞭ニ爲スコトトシ之ヲ第三項ニ轉置スルコトトセリ次ニ原案第三項中運送品ヲ船積スヘキ期間ヲ船積期間トセルハ厦々說明セルカ如キ理由ヲ以テ改ムルコトトセリ次ニ第五百五十六條第二項中運送品ノ價格ニ應シ海損又ハ救助トアリテ救援及ヒ救助ヲ右ニ個ノ中ニ包含セシムル趣旨アリシモ此場合ニ其文字ヲ顯ハシ海損救援又ハ救助ト修正セリ次ニ第五百三十條ハ原案ニハ第四百五十八條第一項及ヒ第二項ノ規定ハ荷送人カ契約ノ解除ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ストアリテ其趣旨ヲ狹義ニ爲セシモ乍併第五百二十六條及ヒ第五百二十七條モ荷送人カ契約ヲ解除スル場合ニ之ヲ適用スルノ必要アルヲ以テ第一項及ヒ第二項ノ八字ヲ削除シ前七條ノ規定ヲ適用スルコトトセリ
商修正原案
第五百三十一條(舊第四百八十四條)ヲ左ノ如ク改ム
傭船者又ハ荷送人ハ船積期間內ニ運送ニ必要ナル書類ヲ船長ニ交付スルコトヲ要ス
第五百三十三條(舊第四百八十六條)ヲ左ノ如ク改ム
荷受人カ運送品ヲ受取リタルトキハ運送契約又ハ船荷證券ノ趣旨ニ從ヒテ運送賃、附隨ノ費用、立替金及ヒ運送品ノ價格ニ應シ海損、救援又ハ救助ノ爲メ負擔スヘキ金額ヲ支拂フ義務ヲ負フ
船長ハ前項ニ定メタル金額ノ支拂ト引換ニ非サレハ運送品ヲ引渡スコトヲ要セス
第五百三十六條(舊第四百八十九條)ヲ左ノ如ク改ム
期間ヲ以テ運送賃ヲ定メタルトキハ其額ハ運送品ノ船積著手ノ日ヨリ其陸揚終了ノ日マテノ期間ニ依リテ之ヲ定ム但船舶カ不可抗力ニ因リ發航港若クハ航海ノ途中ニ於テ碇泊スヘキトキ又ハ航海ノ途中ニ於テ船舶ヲ修繕スヘキトキハ其期間ハ之ヲ算入セス第五百二十一條第二項又ハ第五百三十二條第二項ノ場合ニ於テ船積期間又ハ陸揚期間經過ノ後船積又ハ陸揚ヲ爲シタル日數亦同シ
岡野君曰ク第五百三十一條ハ前三條ニ於ケルト均シク船積期間ナル文字ヲ用ヒタルカ爲メ修正ヲ加ヘタルニ過キス第五百三十三條ハ海損又ハ救助トアリシ文字ニ既二五百二十六條甲ニ於テ說明セル如ク救援ナル文字ヲ加ヘタルニ過キス又第二項ハ原案ニハ船舶所有者トアリシモ之ヲ船長トセリ他ナシ運送ニ付テハ主トシテ船長ヲ基礎トセシカ爲メ本條ニ限リ船舶所有者ト爲スハ相當ナラス故ニ職務其他ノ行爲ヲ爲ス責任ヲ有スル所ノ船長ト改ムルコトトセリ第五百三十六條ハ期間ヲ以テ運送賃ヲ定メタルトキハ船舶發航ノ日ヨリ運送賃ヲ支拂シ又ハ運送賃陸揚終了ノ時マテ之ヲ支拂フトナレリ而シテ第五百三十二條第二項ニ於テハ期間經過ノ後運送品ヲ陸揚シタルトキハ船舶所有者ハ特約ナキトキト雖モ相當ノ報酬ヲ請求スルコトヲ得トアリテ陸揚ノ期間ニ付キ其規定ヲ設ケ又船積期間ニ付テハ第五百二十一條第二項ニ於テ運送品ヲ船積シタルトキハ船舶所有者ハ特約ナキトキト雖モ相當ノ報酬ヲ請求スルコトヲ得トアリ要スルニ本條ハ以上ノ規定ニ牽聯シテ修正ヲ加フルコトトセリ原案ニハ船舶發航ノ日ヨリ運送賃ヲ支拂ヒ且其目ヨリ始メテ期間ニ算入スト爲シ其船積期間ニ付キ報酬ヲ支拂ヒ又又運送賃モ發航ノ日ヨリ支拂フコトトナルヘシ要スルニ船積及ヒ陸揚ニ付キ相當ノ報酬及ヒ費用ヲ負擔スルコトトナルヘシ乍併船積及ヒ陸揚ニ付テハ船積及ヒ陸揚ノ負擔カ重複セサルカ穩當ナリトノ加藤君ノ讀ニ依リ議場ノ決議ヲ採用スルコト小セリ而シテ第五百二十一條第二項又ハ第五百三十二條第二項ノ場合ニ於テ船積期間又ハ陸揚期間經過ノ後船積又ハ陸揚ヲ爲シタル日數又同シトノ規定ヲ追加シタルハ既ニ述ヘタルカ如ク期間ノ有無ニ算入セサルカ故ニ其日數ニ加ヘテ拂ハサレハ雙方ニ衝突ヲ生スルヲ以テ以上ノ主義ヲ採用セリ避難港ヲ航海ノ途中ト改メタルハ不可抗力ニ因リテ避難港ニノミ入ルトノ嫌アレハナリ又航海中壹航海ノ途中ト改メタルハ海ノ中央トモ讀ミ得ルヲ以テナリ
商修正原案
第五百三十九條(舊第四百九十二條)ヲ左ノ如ク改ム
船舶ノ全部ヲ以テ運送契約ノ目的ト爲シタル場合ニ於テ其契約ハ左ノ事由ニ因リテ終了ス
一 第五百十六條第一項ニ揭ケタル事由
二 運送品カ不可抗力ニ因リテ滅失シタルコト
第五百十六條第一項ニ揭ケタル事由カ航海中ニ生シタルトキハ傭船者ハ運送ノ割合ニ應シ運送品ノ價格ヲ超エサル限度ニ於テ運送賃ヲ支拂フコトヲ要ス
第五百四十條(舊第四百九十三條)第二項中「航海中」ヲ「發航後」ト改ム
第五百四十一條(舊第四百九十四條)第一項ヲ左ノ如ク改ム
第五百三十九條第一項第二號及ヒ前條ニ定メタル事由カ運送品ノ一部ニ付キ生シタルトキハ傭船者ハ船舶所有者ノ負擔ヲ重カラシメサル範圍內ニ於テ他ノ運送品ヲ船積スルコトヲ得
岡野君曰ク原案ニ於テハ第五百三十九條ニ於テ運送契約終了ノ事由ヲ四個ニ區別セリ而シテ此所ニ揭ケタル第一號乃至第三號ハ第五百十六條第一項ニ揭ケタル事由ト同一ナルカ故ニ其文字ヲ改ムルコトトセリ第五百四十條中航海中ヲ發航後トセシハ他ナシ航海ヲ爲ス間ハ發航ノ前後ヲ見ルモ第五百四十一條ニ於テ發航ノ前後ヲ包含スルヲ以テ主トシテ發航ノ前後ニ區別ヲ設ケタル結果トシテ改ムルコトトセリ第五百四十一條ニ修正ヲ加ヘタルハ第一項中傭船者ハ其選擇ニ從ヒ船舶所有者ノ負擔ヲ重カラシメサル範圍內ニ於テ他ノ運送品ヲ船積シ又ハ第四百七十九條第一項ノ規定ニ從ヒ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得トアリシカ又ハ以下ノコトハ念ノ爲メ本條ニ定メシマテノコトニシテ契約ノ解除ヲ爲シ得ヘキハ當然謂フヲ俟タサルヲ以テ之ヲ削除セリ
商修正原案
第五百四十二條(舊第四百九十五條)ヲ左ノ如ク改ム
第五百三十九條及ヒ第五百四十條ノ規定ハ船舶ノ一部又ハ個個ノ運送品ヲ以テ運送契約ノ目的ト爲シタル場合ニ之ヲ準用ス
第五百三十九條第一項第二號及ヒ第五百四十條ニ定メタル事由カ運送品ノ一部ニ付キ生シタルトキハ傭船者又ハ荷送人ハ運送賃ノ全額ヲ支拂ヒテ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得
第五百四十四條(舊第四百九十七條)ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第五百四十四條甲 船舶所有者ノ傭船者、荷送人又ハ荷受人ニ對スル債權ハ一年ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
第五百四十五條(舊第四百九十八條)ヲ左ノ如ク改ム
第二百七十八條、第二百十四條乃至第二百八十九條及ヒ第二百九十五條ノ規定ハ船舶所有者ニ之ヲ準用ス
第五百四十八條第七號ヲ左ノ如ク改ム
七 陸揚港但發航後傭船者又ハ荷送人カ陸揚港ヲ指定スヘキトキハ其之ヲ指定スヘキ港
岡野君曰ク第五百四十二條ニ修正ヲ加ヘタルハ第二項ノミニシテ原案ニ於テハ第五百三十九條第一項第四號トアリシカ第五百三十九條ニ於テ前述ノ理由ニ依リ第五百十六條第一項ト改メシ爲メ五百三十九條一項四號ヲ二號ト改ムルコトニ歸セリ而シテ別段本條ノ趣旨ニ變更ヲ加ヘタルモノニアラス第五百四十四條甲ヲ新タニ加ヘタルハ海商編ニ關スル時效ニ付キ其終刷二章ヲ設ケル豫定ナリシモ海上ノ運送賃ニ付キ保險ノ總則ヲ適用シ運送ニ付テハ陸上運送カ準用セラルルヲ以テ僅少ナル事項ニ付キ故ラ二一章ヲ設クルノ必要ナキヲ以テ第五百四十四條甲トシテ一條ヲ設クルコトトセリ第五百四十五條ニ修正ヲ加ヘタルハ準用スヘキ規定タルニ過キス(第二百七十八條ヲ改メタルモノナリ)第二百七十八條ハ運送品ニ付テノ規定ナリ然レトモ該條ハ運迭人ニ付キ直接ニ設ケタル規定ナラス二百七十八條ハ運迭人ニ付テノ規定ヲ準用スルモノニシテ第二百九十六條ノ準用ヨリ生セシ結果ナリ而シテ其中ニ準用セル二百七十八條ハ運送取扱人ニ關スル規定ナリ而シテ運送人ニ對スル規定カ準用セラルレハ宜シキモ其原因ニ遡リ運迭取扱人ノ規定ヲ準用スルノ必要ヲ生スヘシ且ツ陸上運送人ノ起草㸃ノ主義ヲ異ニセルモノニアラスシテ陸上海上共ニ同一ナリ第五百四十八條第七號ヲ改メシハ他ノ條項ト同一ノ理由ニシテ第一ニ到達港ノ文字ハ船舶ノ到達港ニシテ積荷ノ到着スひごヘキモノヲ云ヒニ荷ノ陸揚港トナルヘシ從テ五百四十八條ノ規定ハ積荷ニ關スル規定ナルヲ以テ陸揚港トセリ
商修正原案
第五百四十九條ヲ左ノ如ク改ム
傭船者又ハ荷送人ハ船長又ハ之ニ代ハル者ノ請求ニ因リ船荷證券ノ謄本ニ署名シテ之ヲ交付スルコトヲ要ス
第五百五十條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第五百五十條甲 第二百八十二條甲ノ規定ハ船荷證券ニ之ヲ準用ス
第五百五十三條中「到達港」ヲ「陸揚港」ト改ム
第五百五十七條ヲ第五百五十三條甲トシ「到達港」ヲ「陸揚港」ト改ム
第五百五十四條中「其旨ヲ」ノ下「請求ヲ爲シタル」ノ七字ヲ加フ
第五百五十六條中「前所持人」ヲ「原所持人」ト改ム
第五百五十八條ハ之ヲ削除ス
田部君日フ原安木ニハ「傭船者又ハ船長ノ請求ニ因リ」云々十アリ然ルニ船長ノミナラス船長ニ代ハリテ爲ス場合アリ然ラハ原案ノ如クニテハ極メテ不完全ナルカ故ニ「又ハ之ニ代ハル者」ノ八字ヲ加フルコトトセリ第五百條ヲ新タニ加ヘタルハ既ニ第二百八十二條甲トシ陸上運送ニ付キ荷物引換ニ付キ規定ヲ設ケ荷物引換證ヲ渡ストキハ其物ヲ引渡セシト同一ノ效力ヲ有スルコトトセリ而シテ船荷證劵ニ付テハ右ノ原則ニ從ヒ之ヲ準用スルコトトセリ第五百五十三條ニ於テ到達港トアリシヲ陸揚港ト七ルハ前述ト同一ノ理由ニテ荷物ニ付テハ陸揚港トセル文例ナレハナリ第五百五十七條ヲ第五百五十三條甲トセシハ其場所ノ相當ナラストノ穗積君ノ意見ニ隨ヒ第五百五十三條ノ次ニ置クコトトセリ到達港ヲ陸揚港トセルハ前述ノ理由ト同一ナリ第五百五十四條ニ修正ヲ加ヘタルハ原案ニハ其旨ヲ所持人ニ通知スルコトヲ要ストアリ然レトモ如斯ナルトキハ總テノ所持人ニナルカ故ニ其旨ヲ請求ヲ爲シタル前所持人云々トシ其趣旨ヲ明瞭ニ顯ハスコトトセリ第五百五十六條ニ於テ原案ニハ前所持人トアリ然レトモ如斯ニテハ不明瞭ナルカ故ニ之ヲ原所持人ト改メ其趣旨ヲ明ラカニセリ第五百五十八條ヲ削除セルハ第二百三十二條乙ヲ第三編ノ總則中ニ加ヘタルヲ以テ其結果トシテ右總則中ニ其規定ヲ讓リシナリ
商修正原案
第五百六十四條ヲ左ノ如ク改ム
旅客カ死亡、疾病其他一身ニ關スル不可抗力ニ因リテ航海ヲ爲スコト能ハサルニ至リタルトキハ船舶所有者ハ運送賃ノ四分ノ一ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ事由カ發航後ニ生シタルトキハ船舶所有者ハ運送ノ割合ニ應シテ運送賃ヲ請求スルコトヲ得
第五百六十五條ハ之ヲ削除ス
第五百六十七條中「第五百十六條」ノ下「第一項」ヲ加フ
第五百六十九條第一項ヲ左ノ如ク改ム
第二百九十七條、第二百九十八條第一項、第二百九十九條、第五百十九條、第五百十九條甲、第五百四十條及ヒ第五百四十四條甲ノ規定ハ海上ノ旅客運送ニ之ヲ準用ス
田部君曰ク第五百六十四條ヲ修正セルハ議場ノ決議ニ基ケリ卽原案ノ蠱ニテハ權衡ヲ失シ運送品ニ付テハ四分ノ一ヲ請求スルコトヲ得發航前ニハ運送賃ノ半額ヲ請求スルコトヲ得テ四分ノ一ヲ下ラサル請求ヲ爲スコトヲ得ヘシ要スルニ此場合ニ權衡ヲ得セシムル修正ハ頗ル困難ヲ感シタリ故ニ原則上第一項ハ發航ノ前後ヲ區別セス此等ノ不可抗力ニ依リ航海ヲ爲スコト能ハサルトキハ運送賃ノ四分ノ一ヲ遞南求スルコトヲ得ルコトトセリ亠剛項ノ事由カ發航後ニ生シタルトキ運送賃カ四分ノ一ヨリ多キトキハ第二項ノ規定ニ依ルコトナリ若シ又運送賃ノ割合カ少ナキトキハ第一項ノ運迭賃ノ割合ニ依ラシムルコトトセリ要スルニ以上ノ修正ハ議場ノ決議ニ基キシモノナリ第五百六十五條ヲ削除セルハ第五百四十條ト同一ニシテ之ヲ準用シテ妨ケサルカ故ニ後ノ第五百四十一條ノ準用ノ條ニ加スルコトトセリ第五百六十七條ニハ旅客運送契約ハ第五百十六條ニ揭ケタル云々トアリシカ此意義ハ第五百十六條第一項ニ該當スルカ故ニ之ニ第一項ノ文字ヲ加フルコトトセリ第五百六十九條第一項ハ此前第五百十九條第一項甲ナル規定カ加ハリシ爲メ其條項ヲ補ヘリ又第五百四十條ヲ準用セシハ既ニ述ヘタルカ如ク第五百六十五條ヲ削除セル結果ナリ又第五百四十四條甲ハ物品運送ニ新タニ加ヘタル規定ニシテ旅客運送ニ右ノ規定ナキ結果タルニ過キス
商修正原案
第五百七十二條ヲ左ノ如ク改ム
前條ニ定メタル海損ノ分擔額ニ付テハ船舶ノ價格ハ到達ノ地及ヒ時ニ於ケル價格トシ積荷ノ價格ハ陸揚ノ地及ヒ時ニ於ケル價格トス但積荷ニ付テハ其價格中ヨリ喪失ノ場合ニ於テ支出スルコトヲ要セサル費用及ヒ支拂フコトヲ要セサル運送賃ヲ控除スルコトヲ要ス
第五百七十四條ヲ第五百七十三條トシ左ノ如ク之ヲ改ム
前二條ノ規定ニ依リ海損ヲ分擔スヘキ者ハ船舶ノ到達又ハ積荷ノ引渡ノ時ニ於テ現存スル價額ノ限度ニ於テノミ其責ニ任ス
第五百七十三條ヲ第五百七十四條トシ左ノ如ク之ヲ改ム
第五百七十一條ニ揭ケタル損害ヲ受ケタル者ハ其損害ノ割合ニ應シテ海損ヲ分擔ス
梅君曰ク第五百七十二條ニ於テ船舶及ヒ稽{荷ノ價格ハ積荷陸揚ノ地及ヒ時ニ於ケル價格トストアリシモ加藤君ヨリ積荷陸揚ノ地及ヒ時ハ船舶ニ付テハ不穩當ナリトノコトニテ余輩モ此㸃ニ付テハ心付キシ所アルヲ以テ併セテ不完全ノ㸃ヲ補フコトトセリ要スルニ原案ノイリ儘ニテハ到達前ニ積荷ノ地及ヒ時カ到達ノ時ニアラサルコトトナルヲ以テ船冖舶ノ價格舊ハ到達ノ地及ヒ時ニ於ケル價格トストシ其音室我ノ煩ハシキニ拘ハラス改ムルコトトセリ次ニ第五百七十三條ト第五百七十四條トヲ前後セルハ長谷川君ヨリノ注意ニテ此監ニナストキハ現存セル價格ノ限度カ少ナキニ失スル故前後スヘシトノ說ヲ採用セリ原案ノ如クニテハ第五百七十三條ン場合ニテモ第五百七十四條ノ規定カ適用セラルルモ修正ノ結果第五百七十三條ト改ムルコトトセリ第五百七十四條ヲ改メシハ嘗テ諸君ノ注意モアリシ故ニ熟考セシひごカ獨逸主義ト爲スコトトセリ佛蘭西主義ハ海損ニ付キ船舶カ事ニ陸揚港ニ全部到着セシコトヲ豫想シテ他ノ荷物カ海中ニ投棄セラレシ物ヲ換算スル主義ナルモ決シテ公平ナルモノト云フコ干ヲ得サルヘシ現ニ到達港其他陸揚港ニ屆キシ荷物ニ付キ負擔額ヲ計算スルコトトナルヘシ然ルトキハ投棄セラレタル他ノ荷物カ到着セント豫想スルモ陸揚港ニ屆クトノコトハ豫想スルコトヲ得サルヘ一シ以上ノ理由アルヲ以テ獨逸主義ニ倣ヒ荷主ノ爲メ幾何ノ利益アリシトノコトヲ計算シテ到達港ニ船舶ノ達セシトキ投棄セラレシ者ニ支拂フ金額カ投棄セラレシ者ノ利益トナルモノトス第五百七十七條ニ定メタル損害ノ額ハ投棄ニ因リテ救助セラレシモノトナリ實際上ニ適合スルコトトナルヘシ而シテ原案第五百七十四條ニ於ケル現存セル價格カ同一ナルモ詳細ノ㸃ニ至リテ差異ヲ生スルヲ以テ實際上ノ計算ニ適合セシムル爲メ其主義ヲ改メタリ(趣意ハ大ニ異レリ)
商修正原案
第五百八十條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第五百八十條甲 共同海損又ハ船舶ノ衝突ニ因リテ生シタル債權ハ一年ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
前項ノ期間ハ共同海損ニ付テハ其計算修了ノ時ヨリ之ヲ起算ス
第五百八十二條第一項中「船舶又ハ荷物ニ付キ」ノ九字ヲ削ル
第五百八十三條中「船舶又ハ荷物」ヲ「保險ノ目的」ト改ム
第五百八十四條中「保險期間ノ始ニ於ケル」ヲ「保險者ノ責任カ始マル時ニ於ケル」ト改ム
第五百八十五條中「其價額、船積費用及ヒ保險ニ關スル費用」ヲ「其價額及ヒ船荷竝ニ保險ニ關スル費用」ト改ム
田部君曰ク第五百八十條甲ハ岡野君ヨリ說明アリシ如ク舊法ニハ時效ノ規定ヲ置キシカ本條ハ其場合ニ付キ規定ヲ設クルコトトセリ一年ナル文字ハ舊法ト同一ナリ共同海損ハ手續法上綿密ナル規定ヲ設クルハ困難ナルヲ以テ計算ヲ終ハリシ時ヨリ爲スヲ最モ簡便ナリトス是計算終了ノ時ヨリ之ヲ起算ス下改メタル所以ナリ第五百八十二條中船舶又ハ荷物ニ付キノ九字ヲ削リシハ本條ノ議事ノ際此文字カ不完全ナリトノ批難アリテ長谷川君ヨリ船火事ノ場合カ包含セサルトノコトニテ單ニ航海ニ關スル事故云々ト爲シ之ヲ廣義ニ改メタリ第五百八十三條中船舶又ハ荷物ヲ保險ノ目的ト改メシハ前條ト同一ノ理由ニ基キシナリ第五百八十四條中「保險期間ノ始ニ於ケル」ヲ「保險者ノ責任カ始マル時ニ於ケル」ト改メシハ趣旨ハ同一ナルモ保險期間ノ始ニ於ケルトアルトキハ保險價額ノ期間ノ極マリシ後ニ期間ハ如何ナル時ニ始マルトノコトカ判然スル故ニ改ムルコトトセリ第五百八十三條ノ規定ヲ改メシハ重岡君ノ注意ニテ韓出稅カ含マヌトノコトニテ其ヲ包含セシムル爲メ船積並ニ保險ニ關スル費用小改ムルコトトセリ
商修正原案
第五百八十七條ヲ左ノ如ク改ム
一航海ニ付キ船舶ヲ保險ニ付シタル場合ニ於テハ保險者ノ責任ハ荷物又ハ底荷ノ船積ニ著手シタル時ヲ以テ始マル
荷物又ハ底荷ノ船積ヲ爲シタル後船舶ヲ保險ニ付シタルトキハ保險者ノ責任ハ契約成立ノ時ヲ以テ始マル
前二項ノ場合ニ於テ保險者ノ責任ハ到達港ニ於テ荷物又ハ底荷ノ陸揚カ終了シタル時ヲ以テ終ハル但其陸揚カ不可抗力ニ因ラスシテ遲延シタルトキハ其終了スヘカリシ時ヲ以テ終ハル
第五百八十八條ヲ左ノ如ク改ム
荷物ヲ保險ニ付シ又ハ荷物ノ到達ニ因リテ得ヘキ利益若クハ報酬ヲ保險ニ付シタル場合ニ於テハ保險者ノ責任ハ其荷物カ陸地ヲ離レタル時ヲ以テ始マリ陸揚港ニ於テ其陸揚カ終了シタル時ヲ以テ終ハル
前條第三項但書ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第五百八十九條第一項第三號及ヒ第四號ヲ併セテ左ノ一號トス
三 發航港、到達港又ハ寄航港ノ定マルトキハ其港
田部君曰ク第五百八十七條ノ修正ハ議論ノ末改ムルコトトナレリ加藤君ヨリ荷物又ハ底荷テ積ミシ後船舶ヲ保險ニ付スルコトアリ又荷物ヲ積マサル場合アリ就中移民ヲ{槓載シテ航海スルカ如キ毫モ荷物ナシト然レトモ此場合ハ手荷物ノ如キ若クハ其他如何ナルモノカ存スルヲ以テ此場合ハ規定セサルコトトセリ次ニ土方君ヨリ責任終了ノ時期ニ付キ其陸揚カ終了シ又ハ終了スヘカリシ時云々トアリテ天災ニ依リ終了スヘカリシ時ハ其テ保險者ノ責任カ消滅スルハ趣旨カ適セサルカ故ニ之ニ修正ヲ加フ本條全體上ヨリ責任ノ終ヲ定メ而シテ第一項第二項ニ於テ其始期ヲ定メ第三項ニ於テ終期ヲ定ムルコトトセリ次ニ第五百八十九條ノ修正ハ加藤君ノ注意ヲ以テ改ムルコトトセリ
商修正原案
第五百九十八條ヲ左ノ如ク改ム
航海ノ途中ニ於テ不可抗力ニ因リ保險ノ目的タル荷物ヲ賣却シタルトキハ其賣却ニ依リテ得タル代價ノ中ヨリ運送賃其他ノ費用ヲ控除シ其殘額ト保險價額トノ差ヲ以テ保險者ノ負擔トス
前項ノ場合ニ於テ買主カ代價ヲ支拂ハサルトキハ保險者ハ其支拂ヲ爲スコトヲ要ス但其支拂ヲ爲シタルトキハ被保險者ノ買主ニ對スル權利ヲ取得ス
第五百九十八條甲第三號及ヒ第四號ヲ左ノ如ク改ム
三 船舶カ修繕スルコト能ハサルニ至リタルトキ
四 船舶又ハ荷物カ捕獲セラレタルトキ
同案ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第五百九十八條甲一 前條第三號ノ場合ニ於テ船長カ遲滯ナク他ノ船舶ヲ以テ荷物ノ運送ヲ繼續シタルトキハ被保險者ハ其荷物ヲ委付スルコトヲ得ス
梅君曰ク第五百九十八條ノ修正ハ第三百三十三條三號ノ處ト文字ヲ合セルカ爲ナリ又加藤君ヨリ注意アリテ買主カ無資力ナルトキハ保險者ハ云々要ストアルトキハ無資力者ナルトキハ保險者ハ買主ノ財產ヲ總テ差押ヘ取リ得ル丈ケハ取ルコトヲ得ルトナルヘシ然ルトキハ保險ニ付シタル效力ナキカ故ニ實際拂ハサリシコトトセハ如何第三百三十八條第三項ニ於テモ同一ノ事項アルカ故ニ何カセサルトキト云フ意義ニセリ第五百九十八條甲三號ハ船舶カ海難ニ因リテ修繕スルコト能ハサルニ至リタルトキトアリシモ海難ニ因リテノ六字ハ安當ナラサルヘシ何トナレハ海難ニアラスシテ其他ニ船火事ノ如キ場合モアルカ故ニ此六字ハ削ルコトトセリ又第四號ノ又ハ荷物ナル文字ヲ加ヘタルハ議決ニ基キテ改メタリ第五百九十八條甲一ヲ加ヘタルハ他ナシ既ニ此案ヲ作リシトキ心付キシモノニシテ船舶ヲ修繕スルコトヲ得サルトキハ荷物ヲ委付スルト云フハ穩當ヲ缺クヘシ何トナレハ其荷物ハ往々ニシテ甲ノ船ニテ運送セシニ其甲船ノ運迭ヲ止メ他ノ乙船ヲ以テ陸揚港ニ屆クルコトアリ斯カルトキハ損害ヲ被ラサル乙船ヲ保險者ニ委付スルカ如キ結果ヲ生スルコトアルカ故ニ此場合ニ委付ヲ爲スコト能ハサルヘシ以上ノ理由アルヲ以テ本條ハ被保險者ハ其荷物ヲ委付スルコトヲ得サルコトトセリ
商修正原案
第五百九十八條乙第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ
保險期間ノ定アル場合ニ於テ前項ノ期間カ經過シタルトキハ船舶ハ保險期間內ニ滅失シタルモノト推定ス
第五百九十八條丙第一項中「六个月」ヲ「三个月」ト改ム
梅君曰ク第五百九十八條乙第二項ヲ加ヘタルハ此事項カ洩レタルカ爲メナリ若シ此規定ナカランカ船舶ノ行方ノ知レサルトキハ委付ヲ爲スコトヲ得ルニ至ルヘシ而シテ船舶カ六个月間分明ナラサルトキハ其船舶ハ行方ノ知レサルモノトストアリテ委付ハ其時ニ爲シ其行方ノ知レサル時ハ何時ヨリナス歟之ヲ失踪ノ規定ヨリ見ルモ六ケ月ノ期間經過後無キモノト看做サルヘシ然ルトキハ保險期間內ニ知レサルモノハ保險者ハ責任ナキモノトナルヘシ行方ノ知レサルトキハ髓保險期間ハ五年三ケ月ト云ヘルカ如キ長キ期間トナルモ船舶ノ存否ノ判然セサル間ニモ滅失セルモノト一應ハ推定スルコトトセリ第五百九十八條丙ニ於テ六ケ月ヲ三ケ月トセシハ加藤君ノ發議ニ基キシモノナリ
商修正原案
第六百一條中「保險金額ノ二百分ノ一ニ當タル金額」ヲ「保險料ノ半額」ト改ム
第六百二條第一號中「競賣ノ」ヲ「競賣ニ關スル」ト改メ第十號ヲ削ル
梅君曰ク保險金額ノ二百分ノ一ヲ保險料ノ半額トセシハ議場ノ決議ニ基キシナリ次二六百二條第一號中競賣ノヲ競頁ニ關スルトセシハ河村君ノ注意ニテ競賣ノ費用ト爲ストキハ賣却ノ費用ノミトナルヘシ然レトモ差押假差押モ包含スルカ故ニ競賣ニ關スル費用ト改メタリ第十號ヲ削リシハ岸本君ノ注意ニテ先取特權ノ範圍カ廣義ニ失スルトノコトニテ終ニ削ルコトトセリ
商修正原案
第五百五條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第五百五條甲 船長ノ船舶所有者ニ對スル債權ハ一年ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
第五百十七條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第五百十七條甲 第五百五條甲ノ規定ハ海員ニ之ヲ準用ス
梅君曰ク此兩條ハ屢々設ケタル時效ノ規定ナリ船舶所有者ニ對スル債權ハ給料ナルモ其債權ノ性質上永ク糂續スルハ穩カナラサルカ故ニ之ヲ一年トセリ又第五百十七條ハ右ノ規定ヲ他ノ海員ニ準用セルナリ