明治商法(明治32年)

法典調査会 商法委員会議事要録 第111回

参考原資料

備考

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第百十一回商法委員會議事要錄
出席員
淸浦奎吾君
土方寧君
田部芳君
高木豐三君
穗積八束君
菊池武夫君
富谷鉎太郞君
河村讓三郞君
奧田義人君
井上正一君
梅謙次郞君
長谷川喬君
南部甕男君
金子堅太郞君
三浦安君
中村元嘉君
岡野敬次郞君
內田嘉吉君
第四百八十九條 期間ヲ以テ運送賃ヲ定メタルトキハ其額ハ船舶發航ノ日ヨリ運送品ノ陸揚終了ノ日マテノ期間ニ依リテ之ヲ定ム但不可抗力ニ因リテ船舶カ發航港又ハ避難港ニ碇泊スヘキトキ又ハ航海中船舶ヲ修繕スヘキトキハ其期間ハ之ヲ算入セス
(參照)舊八九〇、八九三、九一〇、佛二七五、蘭四六三、獨六二二、六三七、六三八、同舊六二三、六三九、六四〇、伊五五〇、西六五八、羅五六〇、葡五四六、白千八百七十九年八月二十一日法六九
岡野君ノ說明ニ曰ク前條ハ運送品ノ重量又ハ容積ヲ以テ運送賃ヲ定メタル場合ニ付キ規定シ本條ハ期間ヲ以テ運送品ヲ定メタル場合ニ關シテ規定セリ而シテ其規定ノ主要トスルトコロハ期間ノ始期ト終期トヲ定ムルニ在リ今之ニ關スル外國ノ立法例ヲ見ルニ佛國其他ノ國ハ發航ノ日ヲ以テ運賃支拂ノ始期ト定メ獨逸及ヒ葡國ノ如キハ發航ノ準備ヲ終ハリタルカ又ハ船積ノ準備終ハリタルコトヲ通知シタル翌日ヨリ支拂期間ノ始マルモノトセリ而シテ舊商法ハ佛國主義ニ倣ヘルモノノ如シ本案ハ始期ニ付テハ佛國主義及ヒ舊商法ノ主義ト同シク船舶發航ノ日ヨリトシ終期ニ付テハ運送品ノ陸揚終了ノ日マテトセリ蓋シ終期ニ關シテハ舊商法ニ規定ナキノミナラス佛、西、其他ノ國ニ於テモ規定ナシト雖モ佛國ニ於テハ右ノ明文ナキニ抅ハラス解釋上ハ運送品ノ陸揚終ルマテトセリ殊ニ終期ニ關シ規定ヲ設ケタル獨逸及ヒ葡國ノ如キハ運送品ノ陸揚終了マテトセルヲ以テ本按ニ於ケル終期ニ關スル規定ノ主義ハ歐州多數ノ立法例ニ同一ナリト云フヘキナリ之ヲ要スルニ本按ニ於テハ運送賃ノ支拂ニ付キ其始期ト終期トノ本則ヲ以上述ヘタルカ如ク定メタリト雖モ若シ例外ノ場合ヲ規定セサランカ傭船者ニ對シ酷ナル場合ナキニ非ラス故ニ本條ニ於テハ但書ヲ設ケ「不可抗力ニ因リテ船舶力發航港又ハ避難港ニ碇泊スヘキトキ又ハ航海中船舶ヲ修繕スヘキトキハ其期間ハ之ヲ算入セス」トシ以テ傭船者ヲ保護シタリ蓋シ第四百九十二條ニ於テハ當然運送契約ノ終了スル場合ヲ規定シ又第四百九十三條ニ於テハ運送契約ヲ解除スヘキ場合ヲ規定シタリ從テ右兩條ニ揭クル場合ノ生セサル場合ニ於テハ運送契約ハ繼續スルヲ以テ此場合ニ於テハ因ヨリ本條但書ノ事實生センカ相當ノ期間內ハ傭船者ニ於テモ猶豫セサル可ラスト雖モ其間ハ運送賃ヲ支拂ハサルモ可ナリトノ結果ニ至ルモノナリト
岡野君ハ本日加藤君缺席ノ故ヲ以テ本條ノ運送賃支拂ノ始期ヲ獨逸法ノ如ク船積ノ準備終ハリタル通知ヲ發シタル日ノ翌日ト修正スル方可ナリトノ意見ヲ裏面ニテ申來レリ然レトモ斯ノ如クスルトキハ或場合ハニ重ノ運送賃ヲ拂フ如キ恐レアルト又一ツハ歐州多數ノ立法例ニ反スルトヲ以テ贊同スル能ハストノ旨ヲ報吿シタリ
土方君ハ始期ヲ船舶發航ノ日トスル以上ハ終期ハ船舶碇泊ノ日ト定ムル方可ナリト主張シ又長谷川君ハ終期ヲ運送品ノ陸揚終了ノ日マテトスル以上ハ始期ノ船積ノ準備カ終ラシタル日ト修正セサレハ不可ナリト難シ內田君ハ始期ヲ船積ヲ始メタル日トスル方優レリト主張シタリト雖モ何レモ贊成者ナキヲ以テ成立スルニ至ラス故ニ本條ハ原按ニ可決シテ次條ニ移レリ
第四百九十條 船舶所有者ハ第四百八十六條第一項ニ定メタル金額ノ支拂ヲ受クル爲メ裁判所ノ許可ヲ得テ運送品ヲ競賣スルコトヲ得
船長カ荷受人ニ運送品ヲ引渡シタル後ト雖モ船舶所有者ハ其運送品ノ上ニ權利ヲ行使スルコトヲ得但引渡ノ日ヨリ二週間ヲ經過シタルトキ又ハ第三者カ其占有ヲ取得シタルトキハ此限ニ在ラス
(參照)舊九一四、九一五、佛三〇五、三〇七、三〇八、蘭四八七、四八九、四九〇、獨六二三、同舊六二四、六二六、伊五七九、六七二、西六六六乃至六六八、羅五八九、六八四、葡五五九、五八一、白千八百七十九年八月二十一日法七八、八〇、八一、英千八百九十四年八月二十五日法四九四乃至四九八、那千八百九十三年七月二十日法一五七
岡野君ノ說明ニ曰ク本條第一項ハ舊商法第九百十四條ニ於テ暗ニ認メタル主義ト同一ナリ唯舊商法ハ裏面ヨリ規定シタルニ反シ本法ニ於テハ表面ヨリ規定シタルノ差アルノミ蓋シ外國ニ於テモ略ホ本案ト同一ナル書方多數ナルヲ以テ其當ヲ得タルモノト信ス次ニ本條第二項ノ規定ハ外國ニ於ケル各立法例之ニ類似スルモノ多シ舊商法ハ其第九百十四條ニ於テ船長ハ運送品ヲ引渡シタル後ト雖モ十四日間ハ運送賃其他ノ債權ノ爲メ運送品ノ上ニ優先權ヲ有スルモノトシ右ノ期間ヲ十四日間トセリ然ルニ此期間ニ付テハ獨逸ノ如キハ三十日間トシ伊國及ヒ佛國ノ如キハ十五日間トシ葡國ノ如キハ十日間トセリ斯ク其期間ノ區々タルハ畢竟何レカ其當ヲ得タルヤハ一ニ斷定スル能ハスト雖モ本按ニ於テハ舊商法ト同シク二週間ヲ以テ適當ナリトシタリ之ニ付キ加藤君ヨリ三週間トスヘシトノ修正意見ヲ送付セラレタレトモ要スルニ假令三週間ト爲スモ爲メニ船舶所有者ヲ保護シタルノ甲斐アラサルヘキヲ以テ寧ロ法文ニ明示スルカ如ク二週間トスルヲ可ナリト信ス殊ニ但書末段ノ規定ヨリ考フルモ此期間ヲ少シク延長シタレハトテ其甲斐アラサレハナリト
本條ハ異議ナク可決シ次條ニ移リタリ
第四百九十一條 船舶所有者カ前條ニ定メタル權利ヲ行ハサルトキハ傭船者又ハ荷送人ニ對スル請求權ヲ失フ但傭船者又ハ荷送人ハ其受ケタル利益ノ限度ニ於テ償還ヲ爲スコトヲ要ス
(參照)舊九一四、佛三〇五、蘭四八八、獨六二五、同舊六二七、伊五七九、西六六六、羅五八九、葡五五九、白千八百七十九年八月二十一日法七八、那千八百九十三年七月二十日法一五八
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ハ舊商法第九百十四條ニ相當スル規定ナリ舊商法ハ同條ニ於テ暗ニ本按ノ規定ト同一ノ主義ヲ認メ居レリト信ス何トナレハ其規定ノ精神ヲ考フルニ普通ノ場合ハ積荷受取人ヨリ運送賃ヲ支拂フヘキモ此者カ拒絕スルトキハ船舶所有者ハ運送品ヲ賣却シ其代金ヲ以テ運送賃ニ充當シ若シ不定アルトキハ賃借人ヨリ請求スヘキモノナリト解スレハナリ要スルニ普通ノ場合ニ於テハ荷受人カ運送賃ヲ支拂フヘキコトニ付テハ外國ノ立法例槪ネ同一ナリ而シテ又本條ノ規定ハ前條ノ規定ト相待テ活動スルモノナリト
右ハ異議ナク原按ニ可決シ次條ニ移リタリ
第四百九十二條 船舶ノ全部ヲ以テ運送契約ノ目的ト爲シタル場合ニ於テ其契約ハ左ノ事由ニ因リテ終了ス
一 船舶カ難破シタルコト
二 船舶カ海難ニ因リテ修繕スルコト能ハサルニ至リタルコト
三 船舶カ捕獲セラレタルコト
四 運送品カ不可抗力ニ因リテ滅失シタルコト
前項第一號乃至第三號ニ揭ケタル事由カ航海中ニ生シタルトキハ傭船者ハ運送ノ割合ニ應シ運送品ノ價格ヲ超エサル限度ニ於テ運送賃ヲ支拂フコトヲ要ス
(參照)舊八九一乃至八九三、佛二七六乃至二七九、蘭四九九、五〇〇、五〇四、五〇五、獨六二八、六三〇、六三二、六三三、同舊六三〇、六三三、六三四、六三五、伊五五一乃至五五三、五七〇、五七二乃至五七四、西六八八乃至六九二、羅五六一乃至五六三、五八〇、五八二乃至五八四、葡五四七乃至五四九、五五六、白千八百七十九年八月二十一日法八四乃至八六、九〇乃至九二、九四、那千八百九十三年七月二十日法一五九、一項、一六〇
岡野君ノ說明ニ曰ク本條第一項第一號「難破」ナル文字ハ第四百七十條第一項第一號ヲ修正シタルト同意ノ精神ニテ「沈沒」ト訂正ス次ニ本條ハ船舶ノ全部ヲ以テ運送契約ノ目的ト爲シタル場合ニ其契約ノ當然終了スヘキ場合ノ事項ヲ定メタルモノナリ就テハ第一項ノ規定ハ別ニ說明ノ要ナク第二項ニ於テ「前項第一號乃至第三號」云々トシ「第四號」ヲ除外シタルハ理由ハ右第四號ノ場合ハ第四百九十六條ノ規定ニ因リ傭船者ハ全ク運送賃支拂ノ義務ヲ免カルモノナレハナリ又「航海中」トセシハ船舶發航後ノ主意ナルヲ以テ發航前ニ於テ沈沒シタル場合ノ如キハ一錢タモ運送賃ヲ支拂ハスシテ可ナリ終リニ「運送ノ割合」トセシ理由ハ聊力傭船者ヲ保護スヘキ理由アリト信シタレハナリト
富谷君ハ船舶所有者ヲモ保護セサル可ラストテ第二項ノ「航海中」トアルヲ「船舶ノ準備ヲ終ハリシトキ」ト修正スヘシト主張シ岡野君ハ期間ニ關スル事故强ヒテ反對セサルモ右ノ如クセハ運送ノ割合ヲ定ムルコト能ハサルヘシト答ヘタリ
本條ハ原案ニ可決シ次條ニ移リタリ
第四百九十三條 航海又ハ運送カ法令ニ反スルニ至リタルトキ其他不可抗力ニ因リテ契約ヲ爲シタル目的ヲ達スルコト能ハサルニ至リタルトキハ各當事者ハ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得
前項ノ事由カ航海中ニ生シタル場合ニ於テ契約ノ解除ヲ爲シタルトキハ傭船者ハ運送ノ割合ニ應シテ運送賃ヲ支拂フコトヲ要ス
(參照)舊八九一乃至八九三、九〇八、九〇九、佛二七六乃至二七九、二九六、蘭五〇〇、五〇四、五〇五、獨六二九、六三四、同舊六三一、六三五、伊五五一乃至五五三、五七〇、五七二乃至五七四、西六八八乃至六九二、羅五六一乃至五六三、五八〇、五八二乃至五八四、葡五四七乃至五四九、五五六、白千八百七十九年八月二十一日法八四乃至八六、九〇、九二、九四、那千八百九十三年七月二十日法一五九、一項、一六一
岡野君ノ說明ニ曰ク本條第一項ニ於テ「航海又ハ運送力法令ニ反スルニ至リタルトキ」云々トセシハ航海ヲ始ムル前ニ到達地トノ貿易及ヒ交通ノ禁止、到達地ノ封港又ハ閉鎖、發航港ヲ發航スルノ禁止、輸出ノ禁止、或ハ船舶所有者ノ債權者カ船舶ヲ差押ヘタルカ如キ場合ノ謂ナリ蓋シ本條ニ所謂契約ノ目的ヲ達スルコト能ハサルト否トハ因ヨリ事箕問題ト爲スノ外ナシト雖モ槪シテ事實ノ長ク繼續スルトキハ目的ヲ達スルコト能ハサルモノト見ルヘキナリ外國ニ於テハ此㸃ニ付キ規定ヲ設ケタルノ例アリト雖モ本按ハ是カ必要ヲ見ストテ省略セリト雖モ精神ハ右ニ述ヘタルカ如シ次ニ本條第二項ノ規定ニ付テハ特ニ說明ノ必要ヲ見サルヲ以テ玆ニ之ヲ省略スト
穗積八束君ハ本條第一項ノ「法令」云々ノ文字ヲ削除スヘキ旨ヲ主張シテ曰ク右ノ文字ハ「不可抗力」ナル文字ノ中ニ包含セシメテ可ナルヲ以テナリト
岡野君辯シテ曰ク本條ノ「法令」云々ト「不可抗力」云々トノ意義ハ其結果ニ至リニ者ノ間ニ差異アルヲ以テ特ニ區別スルノ必要アリ何トナレハ例ヘハ右ノ前者ハ「法令ニ反スルニ至リタルトキハ各當事者ハ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得」トノ意義ニシテ後者ハ「不可抗力ニ因リテ契約ヲ爲シタル目的ヲ達スルコト能ハサルニ至リタルトキハ各當事者ハ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得」トノ意義ナレハナリト本條ハ原按ニ可決シテ次條ニ移レリ
第四百九十四條 第四百九十二條第一項第四號及ヒ前條ニ定メタル事由カ運送品ノ一部ニ付キ生シタルトキハ傭船者ハ其選擇ニ從ヒ船舶所有者ノ負擔ヲ重カラシメサル範圍內ニ於テ他ノ運送品ヲ船積シ又ハ第四百七十九條第一項ノ規定ニ從ヒ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得
傭船者カ前項ノ權利ヲ行ハント欲スルトキハ遲滯ナク運送品ヲ船積又ハ陸揚スルコトヲ要ス若シ其船積又ハ陸揚ヲ爲ササルトキハ運送賃ノ全額ヲ支拂フコトヲ要ス
(參照)獨六三六、同舊六三八、那千八百九十三年七月二十日法一五九、二項
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ハ法文讃ンテ字ノ如キモノ以テ別ニ詳細ノ說明ヲ要セス唯簡單ニ一言スレハ前條及ヒ前々條ト同ク船舶ノ全部ヲ以テ契約ノ目的ト爲セシ場合ノ規定ニシテ此場合ニ於テハ第四百九十二條第一項第四號及ヒ前條ニ定メタル事由カ運送品ノ一部ニ付キ生シタルトキハ傭船者ニ對シ船舶所有者ノ利害ヲ害セサル範圍內ニ於テ自由ヲ與ヘタリ又第二項ハ要スルニ傭船者ヲ保護スル爲メノ規定ナリト
本條ハ原按ニ可決シ次條ニ移リタリ
第四百九十五條 第四百九十二條及ヒ第四百九十三條ノ規定ハ船舶ノ一部又ハ個個ノ運送品ヲ以テ運送契約ノ目的ト爲シタル場合ニ之ヲ準用ス
第四百九十二條第一項第一號及ヒ第四百九十三條ニ定メタル事由カ運送品ノ一部ニ付キ生シタルトキハ傭船者又ハ荷送人ハ運送賃ノ全額ヲ支拂ヒテ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得
(參照)蘭五〇六、獨六四一、同舊六四三、那千八百九十三年七月二十日法一五九、三項
岡野君曰ク本條モ亦別段說明ノ必要ヲ見ス唯第二項ニ付シ=言スヘシ同項ニ於テ傭船者又ハ荷送人ハ運送賃ノ全額ヲ支拂ヒ契約ノ解除ヲ爲スヘキモノトセシハ他ナシ此場合ハ船舶ノ全部ヲ運送契約ノ目的トセシ場合ト異ナリテ他ニ荷送人モ之レアル故區別ヲ設クヘキモノト信シタレハナリト
本條ノ原按ニ可決シ次條ニ移リタリ
第四百九十六條 運送品カ不可抗力ニ因リテ滅失シタルトキハ船舶所有者ハ運送賃ヲ請求スルコトヲ得ス若シ船舶所有者カ既ニ運送賃ノ全部又ハ一部ヲ受取リタルトキハ之ヲ返還スルコトヲ要ス
(參照)舊九一二、九一三、佛三〇二、蘭四八二、獨六一七、六三三、同舊六一八、六三五、伊五七七、西六六一、羅五八七、白千八百七十九年八月二十一日法九七、那千八百九十三年七月二十日法一五一
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ハ舊商法第九百十三條ニ修正ヲ加ヘタルモノニシテ大體ノ主意ニ至テハ略ホ同一ナリ蓋シ本按ハ既ニ陸上運送ニ關シ本條ノ如キ規定ヲ設ケタルヲ以テ玆ニ本條ヲ設クルノ至當タルト又一ツハ本條ニ參照シタル各國ニ於テモ同一ノ規定アレハナリト
岡野君ハ加藤君ヨリ本條末段ノ「返還スルコトヲ要ス」トアルハ今日ノ條例ニ反ストノコトヲ注意來リタリ然レトモ別ニ修正意見ニモアラサルヲ以テ之カ辯駁ヲ爲サスト雖モ一言シ置クト述ヘラレタリ長谷川君ハ本條ノ「滅失シタルトキハ」トアルハ全部ナルカ一部ナルカ將又何レモ包含スルカ然ラスンハ割合ニ應スルカ此㸃不分明ナリト難シ岡野君ハ整理迄ニ再考スト答ヘ本條ハ原按ニ可決シ次條ニ移リタリ
第四百九十七條 運送品カ其性質若クハ暇疵又ハ傭船者若クハ荷送人ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ船舶所有者ハ運送賃ノ全額ヲ請求スルコトヲ得
(參照)舊九一二、佛三一〇、蘭四九七、獨六一八、六三三、同舊六一九、六三五、伊五八一、西六六三、羅五九一、葡五五五、白千八百七十九年八月二十一日法七七、那千八百九十三年七月二十日法一五一
岡野君曰ク本條ハ別ニ說明ヲ要セサルヲ以テ之ヲ省略スト
本條ハ原案ニ可決シ次條ニ移リタリ
第四百九十八條 第二百七十八條乃至第二百八十條及ヒ第二百八十六條ノ規定ハ船舶所有者ニ之ヲ準用ス
(參照)二七八乃至二八〇、二八六、佛二九五、蘭四七五、四七六、四九一乃至四九五、獨六〇六乃至六一三、同舊六〇七乃至六一四、伊五六九、西六七三、羅五七九、葡五〇八、白千八百七十九年八月二十一日法八三、英千八百九十四年八月二十五日法五〇二乃至五〇九、那千八百九十三年七月二十日法一四二、一四三、一四七乃至一四九
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ニ所謂第二百七十八條乃至第二百八十條トアルハ決議案ノ第二百八十四條乃至第二百八十九條ト同一ナルヲ以テ右ノ如ク訂正スヘク又第二百八十六條トアルハ同一ノ理由ヲ以テ第二百九十五條ト訂正セラレタシ次ニ本條ニ於テ準用セシ各箇條ハ陸上運送ニ關スル規定ヲ此海上運送ニ準用シタルモノニ外ナラスシテ別ニ說明ヲ要セサルヘシト
本條ハ原案ニ可決シ散會ヲ吿ケタリ