第百四回商法委員會議事要錄
明治三十年九月二十四日午後三時三十五分開會
出席員
淸浦奎吾君
土方寧君
田部芳君
高木豐三君
橫田國臣君
富谷鉎太郞君
河村讓三郞君
井上正一君
穗積陳重君
梅謙次郞君
長谷川喬君
南部甕男君
尾崎三良君
三浦安君
中村元嘉君
岡野敬次郞君
加藤正義君
內田嘉吉君
第四百三十五條 船舶共有者ノ間ニ在リテハ船舶ノ利用ニ關スル事項ハ各共有者ノ持分ノ價格ニ從ヒ其過半數ヲ以テ之ヲ決ス
(參照)舊八四五、民二五二、佛二二〇、獨四八九乃至四九一、同舊四五六乃至四五八、伊四九五、西五八九、羅五〇五、葡四九四、四九五、白千八百七十九年八月二十一日法一一
岡野君說明シテ曰ク本條以下ハ所謂船舶ノ共有者數人アル場合ニシテ此場合ニ於テ其間ノ關係如何ハ船舶ノ利用スルニ付テノ契約如何ニ因リテ異ナリ蓋シ本條ノ如キハ命令的ノモノニアラスシテ其契約ニ因リテ如何ントモ定ムルコトヲ得ルモノナリ然レトモ特約ナキトキハ勿論本條以下ノ規定ニ從フヘキモノトス本條ハ舊商法第八百四十五條第一項ト全ク同一ナリ英法ニ在リテハ船舶ノ股分ハ法律上分割ノ數ヲ制限セリト雖モ是等ヲ法律ニ定ムルハ不必要ナルノミナラス船舶ノ利用ノ如キハ或ハ危險ヲ多人數ニ分割スルノ理由ヨリ見ルモ大ナル船舶ニ付キ其共有者ト爲ルニハ必ス其幾何分以上ヲ有セサルヘカラスト限定スルハ危險分擔ノ主意ニ反ス故ニ人數及ヒ股分ノ數ヲ定ムルノ必要ナシトシ舊法ト同一ノ主義ヲ採レリ舊法第八百四十五條ニハ「船舶ノ總テノ事件ハ」トアリテ「總テノ事件」トハ頗ル廣義ニ失ス佛法ニ於テハ「共同ノ利益ニ關スル」ノ文字ヲ用ヰテ過半數ヲ以テ決スヘキ制限ヲ加ヘタリ獨逸法ニ在リテモ一般ノ事ハ過半數ナリト雖モ場合ヲ限リテ共有者ノ同意ヲ必要トセリ然レトモ本條ノ如ク「利用ニ關スル」ト云フ方明瞭ナルヲ以テ斯ノ如クセリ又舊法第八百四十一條ニ「船舶ノ所有權力ニ人以上ノ股分所有者ニ屬スルトキハ航海ニ關スル一切ノ業務ニ付キ其代理トシテ船舶管理人ヲ置クコトヲ要ス」ト規定セリト雖モ斯ノ如キコトハ外國ニモ例ナキノミナラス船舶共有者カニ人若クハ三人ニテ共同シテ或事業ヲ營ム場合ニ於テ必ス管理人ヲ置クヘシトスルハ不可ナリ又共有者カ數人アリテ其內ノ一人ヲ主任者ト定ムルノ要アラハ契約ヲ以テ自由ニ選任スヘク敢テ法律ノ規定ヲ要セス尙ホ本條ノ文章ハ舊商法第八百四十五條ト第一項ト異ナリト雖モ主意ニ於テ毫モ變更ヲ來スコトナク唯タ民法共有第二百五十二條ノ文例ニ依レルノミ又舊商法第八百四十三條船長ノ選任ニハ固ヨリ船舶ノ利用ニ關スル事項タルヲ以テ本條ニ依リ過半數ヲ以テ決スヘキモノナリ尙ホ船舶管理人ノ選定ニ付テモ若シ船舶管理人ヲ選任スヘキ細事ニ付キ特ニ契約ナキトキハ亦本條ニ依ルヘキモノナリ勿論過半數ヲ以テ決スヘキ管理人ハ船舶共有者タルヘキ條件アリ若シ共有者タラサル者ヲ以テ管理人ト爲ストキハ本案第四百四十一條ニ依リ共有者全體ノ同意ヲ得ルコトヲ必要トセリト
內田君ヨリ舊法ノ如ク股分ヲ自由ニ讓渡シ得ルノ規定ヲ要セサルヤ將タ之ハ民法ノ共有ノ規定ニ依ルヘキヤノ質問アリテ岡野君之ニ答ヘラク默スレハ當然共有ノ規則ニ從ヒ常ニ分割ヲ請求シ得ヘキモ一旦之カ利用ニ着手スルトキハ組合ノ關係ヲ生シ契約ニ覊束セラルルヲ以テ自由ニ股分ヲ讓渡スコトヲ得スト玆ニ於テ內田君ハ更ニ舊法第八百四十七條ノ如ク自由ニ股分ヲ讓渡シ得ヘキ規定ヲ置クヘシト主張シ梅君ハ仲間ニテ船舶ヲ買ヒ航海ヲ爲シテ利益ヲ得ントスルハ組合ニシテ相續等ニ因リテ共有者ト爲リタルトキハ純然タル共有ニシテ從テ之ヲ利用セントスルニ當リテモ依然共有タルコトヲ妨ケス然リト雖モ組合ノ場合ハ之ニ反シテ自由ニ賣買ヲ爲スコトヲ得スト辯シ長谷川君ハ遂ニ內田君ニ贊成シ議長ハ採決シタルモ少數ニテ消滅シ惰入條ニ移レリ
第四百三十六條 船舶共有者ハ其持分ノ價格ニ應シ船舶ノ利用ニ關スル費用ヲ支拂フコトヲ要ス
(參照)民二五三、蘭三二三、獨五〇〇、同舊四六七、西五九一、葡四九五
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ハ別段說明ノ要ナク唯タ共有者間ニハ恰モ株式會社ニ於ケル株主ノ如ク其持分ノ割合ニ應シテ職務ヲ負擔スヘキコトヲ規定シタルニ過キスト
本條ハ異議ナク直チニ次條ニ移ル
第四百三十七條 船舶共有者カ新ニ航海ヲ爲シ又ハ航海ノ終ハリタル後船舶ノ修繕ヲ爲スヘキコトヲ決議シタルトキハ其決議ニ對シ異議アル者ハ他ノ共有者ニ對シ相當代價ヲ以テ自己ノ持分ヲ買取ルヘキコトヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求ヲ爲サント欲スル者ハ決議ノ日ヨリ三日內ニ他ノ共有者又ハ船舶管理人ニ其旨ヲ通知スルコトヲ要ス但此期間ハ決議ニ加ハラサリシ者ニ付テハ其決議ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ之ヲ起算ス
(參照)舊八四五、佛二二〇、蘭三二三、獨五〇一、同舊四六八、伊四九五、西五九二、羅五〇五、葡四九五、白千八百七十九年八月二十一日法一一
岡野君說明シテ曰ク本條ノ主意ハ舊法第八百四十五條第三項ニ該當ス而シテ新ニ航海ヲ爲シ又ハ修繕ヲ爲スハ共有者間ニ利害ノ關係ニ及ホスコト大ナルノミナラス是等ハ船舶ノ利用ニ關スル事項ナルヲ以テ當然本案第四百三十五條ニ依ルヘキモノナリト雖モ新ニ航海ヲ爲シ又ハ修繕ヲ爲スト雖モ利益ヲ得サル場合無キニアラサルヲ以テ此場合ニ少數者ニ一種ノ特權ヲ附與シ之ヲ保護スルノ必要アリ決議ノ事モ第四百三十五條ニ依リ持分ノ價格ニ從ヒ其過半數ヲ以テスヘキモノナリト雖モ斯クテハ若シ一人カ共有ノ過半ヲ占ムル場合ニ在リテ常ニ此者ニ從フヘキノ不公平ヲ來ス恐アルヲ以テ本條ヲ以テ之カ例外ヲ規定シタリ外國法ノ主義モ種々ニシテ或ハ船舶ノ半以上ヲ有スルモノハ裁判所ニ請求シテ之ヲ分割シ得トスルアリ又獨逸ニテハテツクンクスレヒトトテ舊法第八百四十五條第三項ノ如キ主意ノ規定アリト雖モ之ハ其所有權ヲ抛棄スルモノニシテ抛棄セラレタル捺分ハ各共有者/持分ニ應シテ分配セラルルモノナリ蓋シ此主義ハ頗ル便利ナルニ似タリト雖モ之ハ獨逸國固有ノ法律ニシテ他ニ之カ例ヲ見ス本案ハ舊法第八百四十五條第三項ト同一ナリト雖モ唯タ之ヲ委付スルト買取ヲ請求スルトノ差アリ而シテ本案ハ其手績頗ル煩ナルカ如シト雖モ最モ公平ヲ得タルモノナルヘシ衣ニ第二項ハ第一項ノ主意ヲ一層明晰ニセルニ過キスシテ此事タル無論多數ノ日子ヲ要スルハ不可ナリ且株式會社ノ如ク方式的ノモノニアラスシテ頗ル簡便ノモノナルヲ以テ斯ノ如ク單ニセリト
土方君本條ヲ批難シテ曰ク本條ニ依リ少數者ヨリ買取ヲ請求シタルニモ抅ハラス多數決ヲ以テ途ニ航海ヲ爲シ果シテ危險ニ迺遇シ船舶ヲ失ヒタル場合ニ於テ多數者ハ無資力ニテ少數者ノ持分ヲ買取ルコト能ハサルトキハ之ニモ關ラス少數者ハ次條ニ因リ尙ホ債務辨濟ノ義務ヲ負擔スルハ多數者ヲ保護スルニ厚ク少數者ニ對シ極メテ冷淡ナル規定ト謂ハサルコトヲ得ス故ニ英法ニ在リテハ恐クハ少數者ニ損失ヲ生セサルニ至ラシムルニアラサルヨリハ航海ヲ爲スコトヲ許ササルカ如シ故ニ本條モ少數者ノ持分ヲ買取リタル後ニアラサレハ航海ヲ許ササルコトト爲ルヘシ
右ニ對シ岡野君ハ多數無資力ノ爲メ買取ルコトヲ得サル場合ハ止ムヲ得サルコトニシテ少數者ノ損失タリ又次條ニ依リ少數者ニ辨濟ノ義務アリト雖モ之ハ持分ヲ有スル者ニ限リテ義務アルモノニシテ何ン持分ヲ有セサル者ニ之カ義務アルヘケンヤ苟モ第四百三十一條ニ依リ登記ノ手續ナキ以上ハ從來ノ登記面ニ記入アル者ハ其持分者タルヲ以テ義務者タリト辯シ次ニ富谷君ハ少數者ヨリ買取ヲ請求スルニ當リテ若シ多數者ニ於テ之ヲ買取ラサルトキハ如何トモスルコトヲ得ス强制執行上頗ル困難ナリ假令「買取ルヘシ」トノ規定アルトモ裁判所ニテ實際之ヲ執行スルニ當リテハ如何ニスヘ毛ヤ疑ハシ故ニ「請求スルコトヲ得」トシ若シ買取ヲ拒ムトキハ非訟事件トシテ裁判所ニ公賣ヲ請求シ得ルモノトセサルトキハ本條ハ殆ント從法ニ屬シ到底何等ノ效果ヲモ奏セサルヘシト云ヒ梅君ハ民法債務履行ノ場合ニ於テ債務者ニ法律行爲ノ義務アルトキハ裁判所ノ判決ヲ以テ債務者ノ意思表示ニ代フルコトヲ得ルヲ以テ其患ナシ又航海ヲ始メタルトキハ假處分ヲ以テ船舶ヲ途中ニ止ムルコトヲモ得ヘシト辯シ次ニ加藤君ハ本條ノ修繕ハ敢テ航海ノ前後ヲ區別スルノ必要ナシ又修繕ニモ大小ノ區別アリ而シテ本條ハ主トシテ大修繕ヲ指スカ如シ第百四十二條ト對照スルモ本條ニ「大」ノ字ヲ加ヘサルヘカラス小修繕ニ付テ迄モ少數者ニ拒絕權アリトハ不可ナリト云ヒ岡野君之ヲ辯シテ曰ク船長ノ部ニ於テ船長ノ權限ハ船籍港外ニ在リテハ一切ノ裁判上及ヒ裁判外ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有スルモノトセリ故ニ途中ニ於テ修繕ヲ爲スニ當リ一々之ヲ本國ニ通知シテ其決議ヲ煩ハス獨リ船長ノ權限ヲ短縮スルノミナラス大ニ船舶ノ安全ヲ宝ロスルモノナリ
從テ本條ニ所謂「航海ニ終リタル後」トハ實際上ハ重大ナル修繕ハ先ツ一航海ヲ終リタル後船籍港ニ於テ爲スヲ常トスルヲ以テナリ又小修繕ニ付キ小數者ヨリ異議ヲ唱フル場合ハ極メテ稀ナルノミナラス之ハ自ラ損失ヲ招クモノナルヲ以テ寧ロ絕無ト云フモ過ナシ故ニ「大」ノ文字ヲ加フルノ要ナシト
次ニ高木君ハ文章不明ナリ「新ニ航海」カ「終リタル」ニ係ルカ如シ故ニ航海スルコトヲ決議シタルノ意ヲ明カニスヘシト云ヒ加藤君ハ更ニ前讀ヲ修正說トシテ提出シ贊成者アリタルヲ以テ議長ハ之ヲ起立ニ間ヒシニ多數ヲ以テ可決シ本條ハ「航海ヲ終リタル後」ヲ削リ尙ホ「修繕」ヲ「大修繕」ト爲スニ決セリ
次ニ土方君ハ修繕ハ其大小ヲ論セス其結果幾分船舶ノ價格ヲ增加スヘシト雖モ新ニ航海スルニ至リテハ然ラス故ニ少數者ヲ保護スヘキ必要アリ故ニ本條ハ單ニ大修繕ニ關スル規定トシ尙ホ別條トシテ新ニ航海ヲ爲ス場合ハ危險ノ恐アル場合ニ限リ少數者ヨリ拒ミ得ルモノトシ之ヲ拒ミタルニモ抅ハラス航海ヲ爲サント欲スルトキハ之ヲ買取ルカ又ハ擔保ヲ供スルコトヲ要スヘキモノトスヘシト主張シ贊成者アリタルヲ以テ議長ハ起立ニ間ヒシモ少數ニテ消滅シ直チニ次條ニ移レリ
第四百三十八條 船舶共有者ハ其持分ノ價格ニ應シ船舶ノ利用ニ付テ生シタル債務ヲ辨濟スル責ニ任ス
(參照)舊八四二、二項、佛二一六、三項、蘭三二一、三二二、三三五、獨五〇七、同舊四七四、伊四九一、羅五〇一、葡四九五、白千八百七十九年八月二十一日法七、三項
岡野君說明シテ曰ク本條ノ規定ハ舊法ニ之レ無シト云フモ不可ナシ而シテ本條ハ共有者カ第三者ニ對スル責任ヲ定メタルモノニシテ商法ノ通則トシテハ一般ノ商行爲ニ付キ數人カ義務ヲ負擔シタルトキハ各自連帶債務者タリト雖モ船舶共有ノ場合ニ在リテハ之ヲ認メス其理由トスル所ハ蓋シ危險ヲ分擔スルコト及ヒ航海ヲ奬勵スル等ノ手段ニ出テタルモノニシテ舊法第八百四十二條第二段ニ「船長力股分所有者ナルトキハ過失ノ爲メ自己ニ不分ノ責任ノ歸セサルトキニ限リ其股分ノ割合ニ應シテ責任ヲ負ヒ」云々トアルハ船長カ同時ニ所有者タル場合ニ無限責任ヲ負擔スルト云フニ對スル特例ナリ佛法ニ在リテハ連帶トスルノ議論多シト雖モ解釋上ハ偖措キ危險分擔則チ一人ノ危險ヲシテ可及的輕減セントスルノ主義ヨリ分擔法ヲ採用セリト
本條ニ付テハ異議ナク次條ニ移レリ
第四百三十九條 損益ノ分配ハ每航海ノ終ニ於テ船舶共有者ノ持分ノ價格ニ應シテ之ヲ爲ス
(參照)舊八四六、蘭三三八、獨五〇二、同舊四六九、西六〇〇、六〇一、葡四九五
岡野君曰ク本條ハ特ニ說明ヲ要セス共有者間ニ於テハ權利ノ大小ハ持分ノ大小ニ應スルコト明カニシタルモノナリト
加藤君ハ本條ニ「每航海」トアルヲ以テ一日ニニ三回ノ航海ヲ爲ス場合ノ如キハ頗ル煩雜ナリ故ニ之ヲ除クヘシト云ヒ贊成者アリ次ニ岡野君之ヲ辯シテ曰ク多クノ場合ハ會社ナルヲ以テ會社法ニ從フヘシ本條ハ然ラサル場合ノ規定ニシテ主トシテ大航海ニ關スルモノナリ又損益ハ航海後ニ非サレハ之ヲ知ルニ由ナシ蓋シ本條アリト雖モ契約ヲ以テ一定ノ時期ヲ限リテ之ヲ爲スハ隨意タリト
次ニ土方君ハ全條削除說ヲ提出シテ曰ク若シ「每航海」ヲ削除スルモ差支ナシトセハ其價格ニ應スルコトハ民法第六百七十四條ニ讓ルヘシト之ニモ贊成者アリタルヲ以テ議長ハ先ツ加藤君ノ「每航海」削除ノ說ニ付キ採決セルニ起立者少數ニシテ消滅シ次ニ土方君ノ全條削除ニ付キ起立ニ間ヒシモ是又少數ニテ消滅シ直チニ次條ニ移レリ
第四百四十條 船舶共有者ノ持分ノ移轉ニ因リテ船舶カ日本ノ國籍ヲ喪失スヘキトキハ他ノ共有者ハ相當代價ヲ以テ其持分ヲ買取リ又ハ其公賣ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
前項ノ規定ハ社員ノ持分又ハ株式ノ移轉ニ因リテ船舶カ日本ノ國籍ヲ喪失スヘキ場合ニ之ヲ準用ス
(參照)舊八二四、八四七、八四八、獨五〇三、同舊四七〇、英千八百九十四年八月二十五日法二四乃至三〇
岡野君說明シテ曰ク本條ハ舊法第八百四十八條ニ該當スルモノニシテ其主意同一ナリ抑モ船舶共有者ノ持分ハ讓渡相續、結婚等ニ因リ日本船舶タル資格ニ喪失スルトキハ營業上大ナル害ヲ及ホスヤ喋々ヲ要セスシテ明白ナリ本條第二項ハ舊法第二項ト少シク異ニシテ舊法ハ其出所ヲ繹ヌルニ日本船トハ果シテ如何ナル船舶ヲ謂フヤノ條件ヨリ出ツ則チ舊法第八百四十七條及ヒ第八百四十八條ノ如キハ同第八百二十四條ノ結果ナラン蓋シ本案ハ如何ナル船舶ヲ日本船舶トスルヤハ特別法ニ讓ルヘキモノト爲シタルヲ以テ本條第二項ハ遞信省ニ於テセル規定如何ニヨリテ自ラ變更ヲ受クルコトアルヘキヲ以テ不明ナリト
富谷君ハ日本人ノ共有者カ其國籍ヲ喪失シタル場合ハ本條ニ包含セサルヲ以テ須ラク之ヲ入ルヘシト注意シ起草者之ヲ容レリ
次ニ長谷川君ハ本條ハ宜シク特別法ノ制定ヲ俟テ議スヘシト云ヒ穗積陳重君モ今日丈ケハ之ヲ延期シ尙ホ遞信省ト協議シテ相當ノ明文ヲ提出スヘシト云ヒ贊成者アリ起草者モ之ヲ容レ途ニ本條ハ未決ニテ次條ニ移レリ
第四百四十一條 船舶共有者ニ非サル者ヲ船舶管理人ト爲スニハ共有者ノ一致アルコトヲ要ス
船舶管理人ノ選任及ヒ其代理權ノ消滅ハ船籍港ヲ管轄スル船舶登記所ニ於テ之ヲ登記スルコトヲ要ス
(參照)舊八四一、佛二二〇、蘭三二六、獨四九二、同舊四五九、伊四九五、西五九四、五九五、羅五〇五、葡四九五、白千八百七十九年八月二十一日法一一、英千八百九十四年八月二十五日法五九
岡野君說明ヲ爲シテ曰ク本條ハ既ニ前述セシカ如ク管理人ヲ選定スルニ付キ共有者中ヨリ之ヲ選定スルニ第四百三十七條ニ依ルヘシト雖モ共有者ニ非サルモノヲ選フニハ全員一致ヲ要ス而シテ此管理人ハ廣大ナル權限ヲ有シ且場合ニ由リ一人ニテ過半ヲ有スルコトアルヲ以テ之ヲ管理人ト爲スハ頗ル不穩當ナルヲ以テ共有者ノ一致ヲ要ストセリ第二項ノ登記ハ管理人ナルモノハ一個人ニ付テ云ヘハ恰モ支配人ト同一ニシテ第三者ニ封スルモノハ此管理人ニシテ共有者ニ非スト
內田君曰ク本條ニ在リテハ管理人ヲ置クハ其隨意ナルカ如シト雖モ英法ノ如キハ必ス船舶ニ關スル事務ヲ處理スル者ヲ要ストセリ故ニ
本案モ之ヲ改メテ舊法ニ於ケルカ如ク必ス之ヲ置クコトヲ要スヘキモノトスヘシト土方君之ニ贊成シ議長ハ之ヲ起立ニ間ヒシモ少數ニテ消滅シ本條ハ玆ニ可決シ散會ヲ吿ケタリ
于時午後第七時