明治商法(明治32年)

法典調査会 商法委員会議事要録 第91回

参考原資料

備考

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第九十一回商法委員會議事要錄
出席員
淸浦奎吾君
鶴原定吉君
岸本辰雄君
田部芳君
高木豐三君
河村讓三郞君
阿部泰藏君
井上正一君
都筑馨六君
梅謙次郞君
重岡薰五郞君
長谷川喬君
三浦安君
岡野敬次郞君
第三百七十七條 支拂ハ爲替手形ト引換ニ非サレハ之ヲ求ムルコトヲ得ス
(參照)舊七六一、四八七、獨手形法三九、匈手形法三九、瑞七五八、伊二九五、羅三一八、葡三二〇、英千八百八十二年八月十八日法五二
訂正參照中四八七ハ民四八七ノ誤
岡野君曰ク本條ハ現行商法七百六十一條一項ノ規定ト同一ナリ右條項中ニハニ種ノ事項ヲ含メリ而シテ本條ハ其一項ヲ採リ第二項ハ少シク修正ヲ加ヘ次條ニ讓レリ本條ハ讀ンテ字ノ如クナルヲ以テ別段說明ヲ要セス乍併其一ニノ要㸃ニ付キ玆ニ一言シ置カン抑モ手形上ノ債權ナルモノハ其手形ト共ニ生存スルモノニシテ手形ナキ以上ハ其ノ者ハ債權アリトノコトヲ證明シ得ヘキモ之ヲ手形上ノ債權トスルコトヲ得ス要スルニ本條ハ以上ノ原則ニ對スル效力ヲ認メタリ次ニ現行商法中「受取證ヲ記シタル」八字ヲ削レリ他ナシ手形ノ所持人カ仕拂ヲ受ケシトキハ手形上ノ金額ヲ受ケ署名スルニ過キス故ニ手形上ノ廣權ヲ行フニ付テハ其必要ヲ認メス而シテ所持人ハ支拂ヲナシタルモノニ付キ手形面ニ線ヲ引クトキハ其手形タルノ效力ヲ失フヘシ外國ニテハ實際ハ知ラサルモ唯手形面ニ署名スルノミニシテ而シテ手形ノ支拂ヲ爲スハ所持人ニ於テ署名スルヲ拒ムヲ得サルヘシ我邦ハ手形用紙中其金額ヲ受取リシトキ記入スヘキ文例モ存スルカ故ニ必要ヲ認メサルヲ以テ削リタリ
長谷川君曰ク現行法ハ大陸諸國ノ立法例ニ倣ヒ受取證書ヲ記スルコトトナレリ起草者ハ民法四百八十六條ノ規定アルヲ以テ受取證ヲ請求スルノ權利アリト主張セラルルヤモ計ラレスト雖モ右四百八十六條ハ歷史上其解釋ヲ探ルコトヲ得ス何ントナレハ第四百八十七條ニ於テ債權ノ證書アル場合ニ於テ辨濟者カ全部ノ辨濟ヲ爲シタルトキハ其證書ノ返還ヲ請求スルコトヲ得トアリテ證書ノ存スル場合ニハ其證書ヲ返還シ證書ノナキ場合ニ不都合ヲ生スルヲ以テ受取證云々ノ文字ヲ存スルノ必要アリ以テノ規定アルヲ以テ學說ノ善惡ニ抅ハラス外國ノ立法例ニ倣ヒ受取證ヲ記スルトノ趣旨ヲ存スルノ修正案ヲ提出スヘシ
岡野君曰ク長谷川君ノ如ク支拂ノ時、一ノ方式ヲ要スルモノトセハ若シ此受取證ヲ記スル方式ヲ缺クトキハ其結果如何外國ノ立法例ニテ受取證ヲ要スルモノトセシハ伊太利ト獨逸ナリ英國ハ所持人ハ支拂人ニ手形ヲ呈示セサルヘカラス而シテ其支拂ヲ爲シタル人ニ手形ヲ交付スルヲ要ストノミアリテ受取證ヲ記セシムル立法ノミニハ限ラス
河村君曰ク引換ニ非サレハ之ヲ求ムルコトヲ得スト爲ストキハ爲替手形ヲ渡ササルニ支拂ヲ爲ストキハ違法トナルニ至ルヘシ果シテ然ラハ本案ニ修正ヲ加ヘ爲替手形ノ引換ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ要セスト爲スヲ穩當ナリト信ス
岡野君曰ク本條ハ全部ノ支拂ナリ第三百七十八條第一項ニ項ハ一部ノ支拂トナリ之ヲ民法上ヨリ云フトキハ受取證ヲ交付スルコトトナリ受取リシ旨ヲ記載ストナルヘシ然ルニ此場合ニ謄本存セサルカ爲メ手形ノ謄本トナシ之ヲ爲スコトヲ要セストナルモ或ハ本文ニ比スレハ宜シキ哉モ知レス
鶴原君曰ク四百八十六條ノ趣旨ニ但書ヲ加ヘ支拂人ハ受取證ヲ請求スルコトヲ要ストノ案ヲ提出スヘシ
以上ノ修正案ヲ採決セシニ
長谷川君ノ說少數
河村君ノ設多數
鶴原君ノ說多數
第三百七十八條 手形金額全部ニ付キ引受アリタルトキト雖モ所持人ハ其一部ノ支拂ヲ拒ムコトヲ得ス
一部ノ支拂アリタルトキハ所持人ハ其旨ヲ手形ニ記入シ且一部受取ノ旨ヲ記載シタル謄本ヲ交付スルコトヲ要ス
(參照)舊七六一、佛一五六、蘭一六八、獨手形法三八、三九、匈手形法三八、三九、瑞七五七、七五八、伊二九二、二九五、西四九四、羅三一四、三一八、葡三二一、白千八百七十二年五月二十日法四六、英千八百八十二年八月十八日法一九、四四、千八百八十五年アンヴェール萬國商法會議決議法案三〇
岡野君曰ク本條ハ現行商法七百六十一條ニ項ト同一ナリ唯其意義ヲ明カニ爲シタルモノニシテ手形金額ノ全部ニ付キ單純ノ引受ヲ爲シタル者ハ全部ヲ支拂ハサルヘカラスト雖モ場合ニ依リ一部ノ支拂ヲ爲スコトアルヘシ此場合ニハ所持人ハ一部ノ支拂ト雖モ之ヲ受ケサルヲ得ス本案ハ此ニ㸃ヲ明カニセリ第一項ハ所持人カ全部ニ付キ請求權ヲ有スルモ尙ホ一部ノ支拂ヲ拒ムコトヲ得サルコトヲ明瞭ニセリ第二項ハ第七百六十一條但書ニ修正ヲ加ヘシモノナリ唯「爲替手形ニ支拂ヲ記入シ」トアルヲ「且一部受取ノ旨ヲ記載シ」ト改メ又「其支拂ニ付テノ別段ノ受取證ヲ債務者ニ交付スヘシ」トアリ一部ノ支拂アルトキ爲替手形ニ其支拂ヲ記シ別段ノ受取證ヲ債務者ニ交付スルモ引受人ハ後日既ニ支拂ヒタル金額ノ支拂ヲ爲スノ危險ナキニアラス抑モ此受取證ハ手形ニ附屬スヘキ必要アルモノナレハ本案ニ於テハ第二項ヲ以テ一部支拂ノ旨ヲ記シタル謄本ヲ交付スヘキコトトセリ
第三百七十九條 爲替手形ノ滿期日ニ支拂ノ請求ナキトキハ引受人ハ支拂拒絕證書作成ノ期間ヲ經過シタル後手形金額ヲ供託シテ其債務ヲ免ルルコトヲ得
(參照)舊七五八、民四九四、獨手形法四〇、匈手形法四〇、瑞七五九、伊二九七、羅三二〇
岡野君曰ク本條ハ現行商法第七百五十八條ニ少シク修正ヲ加ヘタリ現行法ハ「債權者力爲替金額ヲ滿期日ニ受取ラサルトキハ」トアルモ手形上ノ債權ヲ所持人自ラ債務者ノ居所ヲ搜索シテ請求スルハ極メテ便宜ナリ故ニ支拂ハ債務者ノ居所ニ於テ爲サシメ所持人ヨリ債務者ノ住所ニ至リ之ヲ請求スルコトトセリ現行法モ亦其趣旨ナルモ本案ハ此㸃ヲ明ラカニセリ又滿期日ニ支拂ノ請求ナキトキハ手形上ノ金額ヲ供託所ニ供託シテ其債務ヲ免レシムルコトトセリ又引受人ハ如何ナル場合ニ供託ヲ爲シ得ヘキ歟本案ハ支拂拒絕證書作成ノ期間經過後ノ日ト爲ス何トナレハ引受ヲ爲ストキハ手形上ノ金額ハ法律上支拂ノ義務ヲ負フカ故ニ所持人ニ於テ引受人ニ信用ヲ置キ或ハ場合ニ依リ償還請求權ヲ失ハサルコトヲ知リ故ラニ請求ヲ爲ササルコトアレハナリ加之所持人ニ於テ支拂拒絕證書作成ノ期間內ナルトキハ請求セサル哉モ計ラレス之ヲ以テ引受人ハ其期間內ニ所持人ノ請求ヲ待タサルヲ得ス次ニ拒絕證書作成ノ期間ハ第三百八十條ハ滿期日又ハ其後ニ日內トセリ之反現行法ハ滿期日ト爲セルカ故ニ實用上滿期日ニ拒絕證書ヲ作成スルコト能ハサルニ至ルヘシ其故ニ本案ハ拒絕證書作成期間經過後ト爲シ滿期日又ハ其後ニ日內ノ猶豫ヲ與フルコトトセリ
第七節 償還ノ請求
第三百八十條 爲替手形ノ所持人カ振出人其他ノ前者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲サント欲スルトキハ支拂ヲ求ムル爲メ滿期日ニ手形ヲ支拂人ニ呈示シ、若シ手形金額ノ支拂ナキトキハ滿期日又ハ其後二日內ニ支拂拒絕證書ヲ作成セシメ且償還ヲ爲サシメント欲スル者ニ對シ拒絕證書作成ノ翌日マテニ其通知ヲ發スルコトヲ要ス
所持人カ前項ニ定メタル手續ヲ爲スコトヲ怠リタルトキハ振出人其他ノ前者ニ對スル手形上ノ權利ヲ失フ
(參照)舊七六七、七七六、七八一、佛一五六、一六〇乃至一六二、一六五乃至一六八、一七〇、一七一、蘭一七九、一八四、一八六、二〇一、獨手形法四一、四五、瑞七六二、伊二九六、三一七、三一八、三二〇乃至三二二、三二五、西五〇二、五一六、五一七、羅三一九、三四二、三四三、三四五乃至三四八、三五〇、葡三一四、三三七、白千八百七十二年五月二十日法四三、四六、五一乃至五三、五七乃至五九、英千八百八十二年八月十八日法四五、四七、四八、五二、九三、千八百八十五年アンヴェール萬國商法會議決議法案三五、四七乃至四九
岡野君曰ク本案ハ現行商法第七百六十七條、七百七十六條及ヒ七百八十一條ニ修正ヲ加ヘ之ヲ一條ニ纏括セリ而シテ之ニ修正ヲ加ヘタルハ拒絕證書作成ノ期間ナリ現行商法ハ七百七十六條ニ於テ拒絕證書ハ支拂人ニ於テ支拂ヲ爲ササルトキハ滿期日ノ衣ノ業日ニ作ルヘシト實ニ窮屈ニ規定セリ爲替手形ノ支拂ハ所持人ヨリ支拂人ニ支拂ノ請求ヲ爲シ滿期日マテニ支拂ヲ受ケ若シ拒ミタルトキハ直チニ拒絕證書ヲ作成スルモ可ナリ又翌日ニテモ翌々日ニテモ可ナリ然ルニ翌日トナスハ短期ニ失スルノ虞アリ故ニ本條ハ滿期日又ハ其後ニ日內ニ作成ヲ爲サシメテ差支ナキコトトセリ次ニ償還請求ノ通知ニ付テハ現行法ハ其請求ノ通知及ヒ支拂拒絕證書作成ノ通知ヲ要ストセシモ支拂ナキ爲メ拒絕證書ヲ作ルコトトナリ拒絕證書ハ何ノ爲メニ作ルヤ償還請求ヲ爲サンカ爲ナリ然ラハ償還請求ノ通知ハ拒絕證書ノ作成ヲ爲ストキハ此中ニ含ムヲ以テ本案ハ償還ヲ爲サントスル者ニ拒絕證書作成ノ翌日マテニ其通知ヲ發スルコトヲ要ストセリ又七百八十一條但書ハ後ニ準用セル條項ヲ以テ其效果ヲ生セシムルヲ以テ本條ヨリ省クコトトセリ
第三百八十一條 爲替手形ノ所持人ハ支拂拒絕證書ヲ作成セシメサリシトキト雖モ其作成ヲ免除セシ者ニ對シテハ手形上ノ權利ヲ失フコトナシ
所持人カ支拂拒絕證書ヲ作成セシメタルトキハ其作成ヲ免除セシ者ト雖モ其費用ヲ償還スル義務ヲ免ルルコトヲ得ス
(參照)舊七八三、獨手形法四二、匈手形法四二、瑞七六三、伊三〇九、羅三四一、葡三三一、白千八百七十二年五月二十日法五九、英千八百八十二年八月十八日法五一、千八百八十五年アンヴェール萬國商法會議決議法案三七
田部君曰ク本條ハ現行商法第七百八十三篠ヲ修正セリ振出人其他ノ裏書人カ拒絕證書ヲ作成セサルニ償還請求ヲ甘ンシテ受クルコトヲ望ミシトキハ所持人ハ拒絕證書ヲ作成セス且通知ヲモ爲スヲ要セスシテ其作成ヲ免除セシ者ニ對シ手形上ノ權利ヲ主張スルコトヲ得ヘシ要スルニ拒絕證書作成ノ免除ハ證書ヲ作ルヲ免スルニ止マリ爲替手形ノ償還請求權ヲ失ハシメサルノ趣旨ナリ乍併拒絕證書ヲ作成セシムル權利ハ假令ヒ免除ノ記載アルトキト雖モ場合ニ依リテ之ヲ作ルノ必要ナキニアラサレハ若シ所持人ニ於テ之ヲ作リタルトキハ其費用ハ之ヲ償ハサルヘカラス蓋シ拒絕證書作成ノ權利ハ之ヲ奪フコトヲ得サルモノナルニ因ル
第三百八十二條 支拂地カ支拂人ノ住所地ト異ナル場合ニ於テ所持人カ償還ノ請求ヲ爲サント欲スルトキハ爲替手形ニ記載シタル支拂擔當者ニ對シテ支拂ヲ求ムルコトヲ要ス若シ手形ニ支拂擔當者ノ記載ナキトキハ支拂地ニ於テ支拂人ニ對シテ支拂ヲ求ムルコトヲ要ス此場合ニ於テ支拂擔當者又ハ支拂人カ支拂ヲ爲ササリシトキハ所持人ハ支拂地ニ於テ第三百八十條ノ規定ニ從ヒ支拂拒絕證書ヲ作成セシメ且其通知ヲ發スルコトヲ要ス
爲替手形ニ支拂擔當者ノ記載アル場合ニ於テ所持人カ前項ニ定メタル手續ヲ爲ササリシトキハ引受人ニ對シテモ手形上ノ權利ヲ失フ
(參照)舊七七八、蘭一八〇、獨手形法四三、匈手形法四三、瑞七六四、伊三一六、羅三四一、英千八百八十二年八月十八日法五一
田部君曰ク本條ハ現行商法七百七十八條ト大體ハ同一ナリ支拂擔當者ナキ他所拂爲替手形ノ規定ハ現行商法ニハナカリシモ第三百八十條ハ支拂擔當者ノ付カサル場合並ニ他所拂支拂人ノ爲替手形ノ住所地ト異ル場合ノ規定ヲ設ケタリ此場合ニ付テ若シ爲替手形ノ仕拂擔當者ノ記載ナキトキハ如何ニ之ヲ爲スヘキ歟支拂地ニ於テ仕拂人ニ對シ支拂ヲ求ムヘキコトトセリ此場合ニ付テハ本案第三百八十條ハ拒絕證書作成ノ翌日マテニ其通知ヲ發スヘキコトヲ定メタルヲ以テ從テ此手續ヲモ併セテ爲ササルヘカラス
第二項ハ爲替手形ノ支拂擔當者ノ記載アラサリシトキハ支拂人ノ關係ト同シク支拂擔當者ハ支拂人ノ爲メニ滿期日ニ支拂ハサルトキハ支拂人ハ爲替金額ヲ取戾スヘキモノナリトセリ而シテ所持人ハ之カ爲メ手形上ノ權利ヲ失フヘシ加之支拂擔當者ノ記載ナキトキハ所持人ハ引受人ニ對シテモ償還請求權ヲ失フヘシ故ニ引受人ニ對シテモ本條ハ其權利ヲ失フヘキコトヲ設ケタリ現行商法七百七十八條モ又之ト同趣旨ナリ卽前段ニハ別ニ明文ヲ俟タス引受人ニ對シテ亦如斯ナルヘシ又現行商法ノ然レトモ以下ハ大體上以上ノ如クナルモ若シ失フトキハ手形上ノ權利ヲ失フトノ趣旨ニ類推解釋ヲ下スコトヲ得ヘキモ極メテ曖昧ナルカ故ニ此規定ヲ明ラカニセン爲メ手形上ノ權利ヲ失フハ支拂擔當者カ明ラカニ存スル場合ニ限ルコトトセリ
第三百八十三條 爲替手形ノ所持人ハ左ノ金額ニ付キ償還ノ請求ヲ爲スコトヲ得
一 支拂アラサリシ手形金額及ヒ滿期日ノ翌日以後ノ法定利息
二 拒絕證書作成ノ手數料其他ノ費用
償還ノ請求ヲ受クル者ノ住所地カ支拂地ト異ナル場合ニ於テ支拂地ヨリ償還ノ請求ヲ受クル者ノ住所地ニ宛テ振出シタル一覽拂ノ爲替手形ノ相場カ其額面ヨリ廉ナルトキハ其差額ヲ前項ノ金額ニ加フルコトヲ得若シ支拂地ニ於テ其相場ナキトキハ償還ノ請求ヲ受クル者ノ住所地ニ最モ近キ土地ニ宛テ振出シタル一覽拂ノ爲替手形ノ相場ニ依ル
(參照)舊七七五、七八六、佛一八一、一八四、一八五、蘭一八六、一九五、一九六、獨手形法五〇、匈手形法五〇、瑞七六八、伊三一九、西五一六、五二七、羅三四四、葡三三三、三三八、白千八百七十二年五月二十日法七三、七四、七九、八〇、英千八百八十二年八月十八日法五七
田部君曰ク本條第一項ハ現行商法七百七十五條及ヒ七百八十六條ノ規定ヲ併セテ修正シタルモノニ當ルヘシ現行商法七百八十六條第一號ハ爲替金額及ヒ滿期ノ翌日ヨリ起算シタルトアリテ爲替金額ノ全部ヲ取ルコトヲ得ヘキカ如ク法文上見ルモ一部支拂ヲ爲シタルトキハ如斯解シ得ルハ不可ナリ故ニ本條ハ支拂アラサリシ手形金額及ヒ滿期日ノ翌日以後ノ法定利息トセリ又現行商法ハ百分メ十ノ利息ヲ以テ一般ノ利息ト爲セトモ本條ハ改メテ法定利息トセリ又七百八十六條三號ハ戾爲替ヲ振出シタルトキハ其費用トアルモ本條ハ第二號ニ於テ拒絕證書作成ノ手數料其他ノ費用ト爲セシメカ故ニ此中ニ包含スヘシ次ニ本條第二項ハ滿期日ニ支拂ヲ受クルコトヲ得サル場合ニ手形金額ヲ支拂地ニ於テ得ル方法ハ其手形ヲ賣却シ其金額ヲ得テ目的ヲ達スヘキモノトス現行商法ハ償還請求ニ付キ爲替金額其利息並ニ不拂ニ因リテ生シタル一切ノ費用ニ付キ爲スコトヲ得セシメタリ乍併戾爲替ノナキトキハ之ヲ例外ト見タルカ如シ然ルトキハ支拂地ニ於テ其金額ヲ得セシムルカ如ク爲ササルヘカラス是本條ニ項ノ規定ヲ設ケタル所以ナリ卽チ償還ヲ受クル者ノ住所地カ支拂地ト異ナル場合ニ於テ償還ノ請求ヲ受クル者ノ住所地ニ宛テ振出シタル一覽拂ノ爲替手形ノ相場カ百圓ノモノナルニ九十五圓トナルトキハ其差額ヲ前項ノ金額ニ加ヘテ請求スルコトヲ得ヘシ若シ支拂地ニ於テ償還請求ヲ爲ス相場ナキトキハ償還ノ請求ヲ受クル者ノ住所地ニ最モ近キ所ノ土地ニ宛テ振出シタル一覽後ノ爲替相場ニ依ルコトトセリ
本條第二項ニ付キ論議紛出シ爲メニ確定ニ至ラスシテ午後七時閉會セリ