第八十五回商法委員會議事要錄
明治三十年五月二十八日午後三時四十五分開議
出席員
議長淸浦奎吾君
鶴原定吉君
土方寧君
村田保君
岸本辰雄君
田部芳君
穗積八束君
菊池武夫君
富谷鉎太郞君
都筑馨六君
穗積陳重君
梅謙次郞君
元田肇君
長谷川喬君
南部甕男君
金子堅太郞君
尾崎三良君
三浦安君
中村元嘉君
岡野敬次郞君
第三百四十一條前回ニ引續ク
岸本君曰ク時效ニ付テハ舊法ニハ其起算㸃ヲニ樣ニ區別シタリト雖モ本案ハ之ヲ同一トセリ是レ固ヨリ便利ナリト雖モ又不條理ナリト信ス何トナレハ爲替手形ヨリ生スル債權ハ種々アリテ其普通ノ場合ハ敢テ不可ナシト雖モ償還請求ノ場合ハ振出人ニ迄順次遡ルヘキモノナリ然ルニ今其起算㸃ヲ同一ト爲シ期間滿了ノ日ヨリ起算スルトキハ一方ニハ償還請求權ヲ與ヘナカラ一面ニ於テハ時效ヲ以テ終ニ之ヲ奪フカ如キ奇觀ヲ呈スヘシ惡意ニアラサルモ所持人カ償還請求ヲ忘却シ或ハ充分ノ裏書アルニ安ンシテ期日ニ至ル迄請求ヲ爲サスへ差迫リテ之ヲ請求スルトキハ請求者ノ爲メニハ既ニ時效ニヨリテ請求シ得サルコトト爲ルヘシ固ヨリ自個ノ過失ハ止ムヲ得スト雖モ其他ノ懈怠ノ爲メ法律上自個ノ有スル權利ヲ行使シ得サルコトト爲ルヘシ舊法ノ規定ハ實際今日少シモ不都合ナシ之ヲ廢スルハ不可ナリト
次ニ長谷川君ハ岸本君ニ贊成シ償還請求ヲ爲セル者カ更ニ請求ヲ爲ス迄ノ期間ヲ與フヘク而シテ償還請求ノ期間ハ成ルヘク之ヲ短縮スヘシト云ヒ土方君モ之ニ贊成シ鶴原君ハ時效ハ三ケ年トシ其他ハ岸本君ニ贊成スヘシト云ヒ終ニ議長ハ採決セルニ岸本君ノ意見ニ贊成セル者多數ヲ占メ期間ノ長短ニ付テハ起草者ニ於テ再考スヘキコトト爲リテ次條ニ移レリ
第三百四十二條 爲替手形ヨリ生シタル債權カ時效又ハ手續ノ懈怠ニ因リテ消滅シタルトキト雖モ所持人ハ振出人又ハ引受人ニ對シ其受ケタル利益ノ限度ニ於テ償還ノ請求ヲ爲スコトヲ得
(參照)舊七一四、佛一七〇、蘭一〇九、一一〇、獨手形法八三、匈手形法九〇、瑞八一三、伊三二六、西四六〇、羅三五一、白千八百七十二年五月二十日法六一、千八百八十五年アンヴェール万國商法會議決議法案五〇、二項
田部君說明ヲ爲シテ曰ク本條ハ現行法第七百十四條ニ修正ヲ加ヘタルモノナリ抑モ爲替手形ハ普通ヨリモ時效期間短カク且其手績ニ至リテハ種々ナリト雖モ之ヲ嚴格ニスルトキハ或ハ不公平ヲ生シ或ハ權利ニ誤謬ヲ來スノ恐アルカ故ニ本條ハ手形上ニアラスシテ他ニ權利ノ請求權ヲ認メリ此㸃ニ付テハ外國ニ於テモ認ムル所ナリ尙ホ舊法ノ「支拂人」ヲ「引受人」ト爲シタルハ支拂人ハ支拂トシテハ爲替上ノ義務ヲ負擔スル者ニシテ必ス支拂ハサルヘカラサルモノナルカ故ニ寧ロ之ヲ「引受人」トセリ又コ畏書讓渡人」ヲ削リタルハ卽チ裏書人ハ既ニ手形面ノ金額ヲ支拂ヒ置クモノナルヲ以テ假令償還請求ヲ受ケサルトモ利益ヲ受クルコトナキヲ常トス故ニ之ニ對スル償還請求權ヲ認ムルノ必要ナキヲ以テ之ヲ削レリト
富谷君ハ本條ノ「懈怠」ノ外ニ尙ホ不可抗力ヲモ入ルヘク又振出ヲ委任セル場合ノ如キハ裏書讓渡人ニモ尙ホ本條ノ適用ヲ見ルヘシ故ニ是等ヲモ規定スルノ必要アリト云ヒ田部君ハ不可抗力ニ付テハ尙ホ一考スヘク又本條ノ如キ書方ニテハ裏書人ヲモ入ルルコト難シト云ヒ本條ハ玆ニ可決シ次條ニ移レリ
第二節 振出
第三百四十三條 爲替手形ニハ左ノ事項ヲ記載シ振出人
署名スルコトヲ要ス
一 一定ノ金額
二 支拂人ノ氏名又ハ商號
三 受取人ノ氏名又ハ商號
四 一定ノ滿期日
五 單純ナル支拂ノ委託
六 振出ノ年月日及ヒ振出地
七 支拂地
(參照)舊七一六、佛一一〇、蘭一〇〇、獨手形法四、匈手形法三、四、瑞七二二、伊二五一、西四四四、羅二七〇、葡二七八、二八一、白千八百七十二年五月二十日法一、英千八百八十二年八月十八日法三、五乃至一三、千八百八十五年アンヴェール萬國商法會議決議法案三、六
岡野君說明シテ曰ク表題ニ付テハ現行法ト全ク同一ニシテ敢テ說明スルノ要ナシ而シテ本條ハ現行法第七百十六條ニ該當スルモノニシテ之ニ幾分ノ修正ヲ加ヘタルモノナリ其第一㸃ハ舊法ニ在リテハ第七百十六條第五號ニ於テ「振出人ノ署名、捺印」トシ第一項ニ「記載スルコトヲ要ス」ノ文字ヲ用イタルカ故ニ「振出人ハ署名、捺印ヲ記載スルコトヲ要ス」トノ語ハ頗ル奇怪ナリ且從來總テノ證劵ニ付テハ「署名スルコトヲ要ス」トシ「捺印」ニ重キヲ置カサルノ主義ヲ採リ來リシヲ以テ其結果トシテ本條ニモ「捺印」ヲ記載セス尙ホ本條第一號ハ舊法第七百十六條第二號ノ「爲替金額」ト異ナラサルモ多ク生スヘキ問題ハ利息ナリ之ハ外國ニ於テモ幾分其主義ヲ異ニシ或ハ利息ノ約束ヲ記載スヘキモノトスルアリ或ハ之ヲ記載セサルモノト爲スアリ、或ハ之ヲ記載セサルカ爲メ手形ノ效力ヲ失フモノトスルアリ而シテ本條ハ必ス一定ノ金額ヲ記載スヘク若シ記載セサルトキハ爲替手形ニアラストセリ又現行法ニハ「文辭ヲ以テ記スヘシ」トアルモ之ハ獨リ外國ニ於テ然ルノミ日本ニ於テハ文辭ノ他ニ數字ナルモノ無ク文辭カ數字ノ意味ヲ有スルカ故ニ之ヲニ樣ニ區別スルコトヲ得ス又「部號」ヲ加ヘタルハ通常ハ商號ヲ以テスルモ敢テ差支ヲ生セサルヘキヲ以テナリ次ニ舊法第七百十六條第四號中「又ハ差圖セラレタル人若クハ所持人」ヲ削除シタリ其理由ハ假令是等ノ者ノ氏名ヲ記載セサルモ爲替手形ナルニ於テ毫モ間然スル所ナキヲ以テナリ又本條第四號ハ單ニ「滿期日」トセハ可ナルカ如キモ或ハ記載セル金額ニ付キ或部分ト他ノ部分ト日附ヲ異ニスルコトアルヘシトテコ定」ナル文字ヲ加ヘタリ第五號ハ爲替手形ニハ必ス支拂ノ委託ヲ記載セサレハ爲替手形ト云フコトヲ得ス故ニ「御支拂可被下候」ト記載スヘキナリ「單純ナル」ヲ加ヘタルハ舊法第六百九十九條第二項ニ「手形ニハ條件ヲ付スルコトヲ得ス」ト云ヘルコトヲ含マシメタリト
鶴原君ハ本條ニ「捺印」ヲ入ルヘシト主張シテ曰ク署名ハ必ス自書スヘシトノ主義ニテ捺印ヲ發シタリト雖モ實際ノ取引上又慣習上自然捺印ヲ重スルナルヘシ故ニ是等ハ法文ヲ以テ規定シ置クノ必要アリ捺印ハ外國人ニ適用スルコトヲ得スト云フモ外國人ニ適用ノ場合ハ極メテ稀ナリ稀ナル場合ヲ以テ一般ヲ推スハ頗ル公平ヲ失スルモノナリト
岡野君之ヲ辯シテ曰ク捺印ノ要不要ニ付テハ屢々ニ議論アリテ途ニ之ヲ廢スルコトト爲レリ既ニ保險證劵運送營業ノ預證劵、質入證劵、貸物引換證等ニモ署名ノミニシテ捺印ヲ要セサルモノトセリ又手形ハ振出地ノ法律ニ依ルモノトセハ若シ捺印ヲ要ストスルトキハ外國人ニ適用ナキコトト爲リテ不可ナリト
富谷君ハ本條ノ規定ニ列擧セル要件ハ必ス之ヲ記載スルコトヲ要スヘキモノナルカ故ニ此列擧外ノモノヲ記載スルトモ本條ニ違反セサル限リハ有效ナリ故ニ任意ニ捺印セルトモ決シテ不可ナシト云ヒ穗積八束君、長谷川君及ヒ尾崎君ハ何レモ鶴原君ニ贊成シ梅君ハ手形ハ其文吿ニ依リ輾轉スルモノナルカ故ニ署名ハ必ス自書ナラサルヘカラス代書ヲ以テ足レリト云フコトヲ得サルナリ捺印ハ反テ必要ヲ見ス又捺印セルトテ富谷君ノ說ノ如ク本條ニ違反セサル限ハ決シテ不可ナシ若シ玆ニ捺印ヲ要スル旨ヲ規定スルトキハ無理ニモ外國人ニ捺印セシメサルヘカラサルコトト爲リ是レ不能ヲ人ニ强ユルノ法律ト謂ハサルコトヲ得スト辯シ次ニ村田君岸本君等モ我國ニ署名ハ反テ重セサルモ捺印ハ慣習上其人ヲ代表スヘキモノナルヲ以テ急激ニ之ヲ廢スルハ不可ナリトテ鶴原君ニ贊成シ議長ハ之ヲ起立ニ間セタルニ多數ヲ以テ可決シ次條ニ移レリ
第三百四十四條 爲替手形ノ本文ニ記載シタル金額カ他ノ部分ニ記載シタル金額ト異ナリタルトキハ本文ニ記載シタル金額ヲ以テ手形ノ金額トス
(參照)獨手形法五、匈手形法四、瑞七二三、伊二九一、羅三一三、葡二七九、英千八百八十二年八月十八日法九、千八百八十五年アンヴェール萬國商法會議決議法案七
岡野君說明ヲ爲シテ曰ク本條ノ規定ハ現行法ニ之レ無シ外國多數ノ立法例ハ數字ト文辭トヲ區別シ慣習上手形面ニハニ樣ニ記載スルコトトセリ而シテ其金額カ相牴觸スルトキハ文辭ノ方ヲ以テ手形面ノ金額トシ又數字ノモノカ互ニ牴觸スルトキハ其最小ナルモノヲ以テ手形面ノ金額トセリ去リ乍ラ我日本國ニ於テハ數字ト文辭ノ區別アルコトナシ然レトモ近來ハ外國ニ摸シ文辭ノ下數字ヲ以テ金額ヲ記載スルノ慣習行ハレ來リタルカ如キモ此場合ニハ文辭ヲ以テ正當ノモノトスヘキナリト
尾崎君ハ本條ヲ削除スヘシト主張シテ曰ク元來手形面ニニ重ニ記載スルハ主トシテ額ヲ確ムルカ爲メノ手段ニ外ナラス然ルニ本條アルカ爲メ折角ノニ重書ハ效ヲ失フナリ故ニニ重ニ記載セル場合ニ於テ雙方額ヲ異ニセル場合ハ手形全體ヲ無效トナシ本條ハ寧ロ之ヲ削除スヘシト
次ニ富谷君ハ數字ヲ以テ記載セストモ文辭ヲ以テ記載シアラハ前條ニ依リテ手形ノ要件ヲ缺キタルモノニアラス從テ數字ノ方ハ無效ナリ數字ノ記載ハ手形面ノ金額ト謂フヲ得ス故ニ本條ノ場合ハ何ツレ欄外ノ如キ同所ニ記載ヲ爲シタル場合ナルヘシ果シテ然ラハ殆ント適用ナキヲ以テ寧ロ削除スヘシ又本條ニ「本文」トアリト雖モ如何ナル場所カ手形ノ本文ナルヤ余輩ハ手形全躰是皆本文ナリト信ス故ニ「本文」ノ文字頗ル不朋ナリト云ヒ土方君ハ數字ヲ以テニ重ニ附記スルハ主トシテ額面ノ見易キコトヲ希フカ故ナリ故ニ尾崎君ノ說一理ナキニアラス而シテ若シ文辭ト數字ト相異ナルトキハ前條ノ「一定ノ金額」ト云フニ依リ無效ト爲ルヘシ故ニ本條ハ寧ロ之ヲ削除スヘシト云ヒ長谷川君モ本條ハ之ヲ削除スルカ若クハ文書ヲ增加セサルトキハ到底完全ナル規定ト謂フヲ得ス前回ニ於テ舊法第七百六條及ヒ第七百七條ノ如キ規定ヲ置クコトヲ留保セラレタリ若シ之ヲ加フルトセハ本條ハ不用ナリ又本條ヲ存ストセハ須ラク數字ト文辭ト牴觸セル場合ヲモ規定スヘシ舊法ニハ之ニ付キ明カニ規定ヲ爲セリ本條ハ單ニ本文ト本文ト牴觸セル場合ヲ規定シタルヲ以テ此場合ハ前條ノコ定ノ金額」ト云フコトヲ得サルナリト云ヒ岡野君ハ舊法第七百七條ノ「手形上ノ重要ナラサル附記」トハ如何ナルモノヲ謂フヤ極メテ不明ナリ故ニ斯ノ如キ規定ヲ置クノ要ナシ例ヘハ手形上ノ保證ノ如キハ重要ナラサルモノナリ而シテ之ハ手形上ノ效力ナキヤト云フニ然ラス是本案ニ採用セサル所以ナリト述ヘ尾崎君ハ再ヒ削除ヲ主張シ金子君ハ之ニ贊成シ元田君ハ本條ノ書方不明ナルカ爲メ種々ノ疑問ヲ生シ途ニ削除說ヲ提出スルニ至レリ故ニ文辭ト數字ト牴觸セル場合ヲ明記スヘシト云ヒ本條ハ逐ニ起草者ノ再考ニ付スルコトト爲リ次條ニ移レリ
第三百四十五條 振出人ハ自己ヲ受取人又ハ支拂人ト定ムルコトヲ得
(參照)舊七一七、佛一一〇、蘭一〇一、獨手形法六、匈手形法五、瑞七二四、伊二五五、西四四六、羅二七四、葡二八五、白千八百七十二年五月二十日法一、英千八百八十二年八月十八日法五、千八百八十五年アンヴェール萬國商法會議決議法案四
岡野君說明シテ曰ク本條ハ現行法第七百十七條ト全ク同一ノ精神ニシテ其文字ヲ改メタルノ理由ハ舊法ニハ「自己ノ指圖」トアリテ必ス指圖式ナルコトヲ要スルカ如シ然ルニ第七百ニ十二條ニ依ルニ必スシモ指圖式タルヲ要セサルカ如シ故ニ第七百ニ十二條ヲ正シトシテ本條ノ如クセリト
本條ハ異議ナク直チニ次條ニ移ル
第三百四十六條 爲替手形ハ其金額二十圓以上ノモノニ限リ之ヲ無記名式ト爲スコトヲ得
(參照)舊七一六、四號、七一八、英千八百八十二年八月十八日法三、一項、七、三項、八、二項、三項
岡野君說明シテ曰ク本條モ現行法第七百十八條ト同一ナリ而シテ本條ニ「ニ十圓」トセシハ明カナル標準アルニアラス唯タ本案株式會社ノ規定ニ於テニ十圓弘拂フモノハ無記名式ト爲ルコトヲ得トアリタルヲ以テ之ト權衡ヲ得セシメタルニ過キスト
鶴原君曰ク世ノ進化スルニ從ヒ此金額ヲ增加スヘシニ十圓敢テ大金トスルニ足ラス寧ロ三十圓トスヘシト
長谷川君、岸本君ハ右ニ贊成シ議長ハ之ヲ起立ニ間ヒシニ多數ニテ可決シ次條ニ移レリ
第三百四十七條 滿期日ハ左ニ揭ケタル種類ノ一タルコトヲ要ス
一 確定セル日
二 日附後確定セル時期ヲ經過シタル日
三 一覽ノ日
四 一覽後確定セル時期ヲ經過シタル日
(參照)舊七一九、佛一二九、蘭一四九乃至一五一、一五三獨手形法四、匈手形法三、瑞七二二、伊二五一、西四五一、羅二七一、葡二八二、三〇九、三一〇、白千八百七十二年五月二十日法二〇、英千八百八十二年八月十八日法一〇、一一、千八百八十五年アンヴェール萬國商法會議決議法案二八
岡野君曰ク本條ハ舊法第七百十九條ト全ク同一ニシテ唯タ文字ニ少シク修正ヲ加ヘタルノミト
本條ハ異議ナク次條ニ移ル
第三百四十八條 振出人カ爲替手形ニ滿期日ヲ記載セサリシトキハ一覽ノ日ヲ以テ其手形ノ滿期日トス
(參照)舊七二〇、葡二八二、白千八百七十二年五月二十日法二、英千八百八十二年八月十八日法一〇、一二、千八百八十五年アンヴェール萬國商法會議決議法案六
岡野君曰ク本條モ舊法第七百二十條ト同一ノ主義ニシテ觀明ノ要ナシト
本條モ異議ナク直チニ次條ニ移レリ
第三百四十九條 振出人カ爲替手形ニ特別ノ支拂地ヲ記載セサリシトキハ其手形ニ記載シタル支拂人ノ住所地ヲ以テ其支拂地トス
(參照)舊七二一、獨手形法四、匈手形法四、瑞七二二、伊二五三、羅二七二、葡二八二、白千八百七十二年五月二十日法二、千八百八十五年アンヴェール萬國商法會議決議法案六
岡野君說明シテ曰ク本條ハ現行法ニ之レ有ルヤ否ヤト不明ナリト雖モ必要アリト信シテ規定セリト
長谷川君ハ「特別ノ支拂地」トハ意味不明ナリト云ヒ起草者モ之ヲ理由アリトシ「特別」ノ文字ヲ削レリ其他異論ナク直チニ次條ニ移レリ
第三百五十條 支拂地カ支拂人ノ住所地ト異ナルトキハ他人ヲ以テ支拂擔當者トシテ手形ニ記載スルコトヲ得
(參照)舊七二一、佛一一一、一項、蘭一〇一b、伊二五五、一項、西四四六、一項二號、羅二七四、一項、葡二八五、一項二號
岡野君說明シテ曰ク支拂人ノ住所地ニ非サル他ノ地ヲ支拂地ト定ムル場合ニニ個アリ現行法第七百二十一條ハ此場合ヲ規定シタルモノナリ而シテ本條ハ該條ノ一部ヲ規定シタルモノニシテ他ノ一部分ハ引受ノ所ニ規定スヘキモノナルヲ以テ乃チ本案第三百六十五條ニ讓リ本條ハ唯タ振出人カ初ヨリ支拂地ヲ記載シ其支拂地カ支拂人ノ住所地ト異ナリタル場合ニハ支拂擔當者現行法ノ他所拂人トシテ他人ヲ記載スルコトヲ得ヘキコトヲ規定シタリ而シテ他ノ部分卽チ振出人カ支拂地ノミヲ記載シ支拂擔當者ヲ記載セサル場合ハ支拂人カ引受ヲ爲スニ當リテ擔當者ヲ記載スルナリ實際ハ此場合多シ乃チ自己ノ爲メニ支拂ヲ爲ス者ヲ記載スル場合ニシテ之ハ明文ナクシテハ爲スコトヲ得ス且宜シク引受ノ規定ニ讓ルヘキモノト信シテ之ハ本條ニ規定セスト
本條ニ付テモ別ニ異議ナク次ニ移レリ
商修正原案
第三百三十四條第三項ヲ左ノ如ク改ム
保險金額ヲ受取ルヘキ者カ死亡シタルトキ又ハ被保險者ト保險金額ヲ受取ルヘキ者トノ親族關係カ止ミタルトキハ保險契約者ハ更ニ保險金額ヲ受取ルヘキ者ヲ定メ又ハ被保險者ノ爲メニ積立テタル金額ノ拂戻ヲ請求スルコトヲ得
梅君說明シテ曰ク此事柄ハ前回ニ略ホ定マレリ第三百三十四條ハ頗ル議論アリテ第一項第二項ハ確定シタルモ第三項ハ不明ナリトテ斯クハ修正ヲ爲シタルナリ卽チ最初ハ保險金額ヲ受取ルヘキ者カ死亡シ又被保險者ト保險金額ヲ受取ルヘキ者トノ親族關係停止シタルトキニ保險者ハ常ニ被保險者ノ爲メ積立テタル金額ヲ返還スヘシト云フニ在リシモ之ヲ明示シ置カサリシカ爲メ疑問ト爲リ終ニ明言スルコトトセリ而シテ保險契約者ノ方ニ於テ更ニ保險金額ヲ受取ルヘキ者ヲ定ムルコトヲ得ヘク爲スヘシトテ之ヲモ採用シテ修正ヲ加ヘタリ然レトモ常ニ之ヲ定メシムルハ如何ニヤ元來之ハ或一人ノ爲メニ保險契約ヲ爲シタル者ナルカ故ニ其者カ死亡スレハ其目的物ノ消滅シタルモノナルカ故ニ此場合ニハ保險者ヨリ保險金額ヲ受取ルヘキ者ヲ選フコトヲ得ス故ニ保險契約者ニ於テ之ヲ定ムルコトト爲シタリト
本條ニ付テモ異論ナク玆ニ散會ヲ吿ケタリ
于時午後第六時五十分