明治商法(明治32年)

法典調査会 商法委員会議事要録 第84回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
第八十四回商法委員會議事要錄
出席員
鶴原定吉君
土方寧君
村田保君
岸本辰雄君
田部芳君
穗積八束君
菊池武夫君
橫田國臣君
富谷鉎太郞君
奧田義人君
井上正一君
都筑馨六君
穗積陳重君
富井政章君
梅謙次郞君
重岡薰五郞君
長谷川喬君
三浦安君
岡野敬次郞君
商修正原案起草委員提出
第三百二十九條 保險者カ負擔シタル危險ハ特約ナキトキハ運送人カ運送品ヲ受取リタル時ヨリ之ヲ荷受人ニ引渡ス時マテニ生スルコトアルヘキ運送品ノ滅失又ハ毀損ノ一切ノ場合ヲ包含ス
第三百三十條 運送品ノ保險ニ付テハ發送ノ時ニ於ケル其地ノ價額及ヒ到逹地マテノ運送賃其他ノ費用ヲ以テ其保險價額トス
運送品カ正當ノ時期ニ於テ無事ニ到逹スレハ荷受人カ受クヘカリシ利益ハ特約アルトキニ限リ之ヲ保險價額中ニ算入ス
梅君ノ說明ニ曰ク此ニ個條ノ修正原案ヲ提出シタル所以ハ曾テ第三百二十九條ヲ議スルニ當リ本案ニ於テハ舊商法ノ如ク運送保險ニ關スル危險ノ明示無キ爲メ不完全ナリトテ保險者カ負擔スヘキ危險ニ關スルコトヲ法文ニ明示スルノ主義ニ修正スルコトニ決定シ而シテ其文章ハ余輩一ニ任セラレタリ然レトモ其當時場處ニ至テハ未定ナリキ右ニ付キ余輩其後此事ニ關シ頗ル考按ヲ盡シタリシト雖モ右決定ノ精神ヲ第三百二十九條中ニ明示スルコトハ難事タルト又一ツハ穩當ナラサルモノト考タルヲ以テ寧ロ第三百二十九條ト第三百三十條トノ位置ヲ顯倒シ而シテ右ノ第三百三十條卽チ修正第三百二十九條中ニ明示スルノ主義ヲ採用シタリ付テハ修正法文ニ明示スル如ク「運送品ノ滅失又ハ毀損ノ一切ノ場合ヲ包含ス」トセシモ蓋シ歸スルトコロハ舊商法第六百七十二條ノ精神ト同一ナルヘキ考ヘナリ次ニ又其當時穗積陳重君ヨリ運迭品ノ延着ニ關スルコト原文ニ於テハ不備ナリトノ批難アリタリシヲ以テ卽舊第三百二十九條卽チ修正第三百三十條第二項中ニ「運送品力正當ノ時期ニ於テ無事到着スルハ」云々トノ文字ヲ加ヘタリ之ヲ以テ普通ニ到達スレハ受クヘキ利益ヲ包含スルコト明カナレハナリ之ヲ要スルニ以上述ヘタルニ㸃ノ修正ヲ加ヘタルニ外ナラスト
富谷君ハ修正按第三百二十九條ト第三百三十條トハ之ヲ同時ニ議事ニ付スルカヲ議長ニ確メ議長ハ然リト答ヘタリ玆ニ於テ第三百三十條第二項ニ付キ修正ノ意見ヲ陳ヘテ曰ク舊按ニハ「到達地ニ於テ運送品ニ因リ得ヘキ利益」トアリ然ルニ本修正按ニ於テハ何レノ地ニ於テ得ヘキ利益ナルヤ不分明ナリ故ニ此事ヲ明示スル爲メ法文ヲ改メラレタシト
梅君辯シテ曰ク本按ト雖モ到達地ニ於テ得ヘキ利益ナルコトハ疑ナカルヘシ何トナレハ荷受人カ受クヘカリシ利益ナレハナリ然レトモ尙ホ文章ハ整理マテニ再考セント
右ノ外修正原案ニ可決シ次ノ修正原案ニ移リタリ
商修正原按起草委員提出
第三百三十四條ヲ左ノ如ク改ム
第三百三十四條 保險契約者カ保險金額ヲ受取ルヘキ者ヲ定メタルトキハ其者ハ被保險者、其相續人又ハ親族ナルコトヲ要ス
保險契約ニ因リテ生シタル權利ハ被保險人ノ親族ニ限リ之ヲ讓受クルコトヲ得
商修正原案起草委員提出
第三百三十四條第三項トシテ左ノ一項ヲ加フ
被保險者ト保險金額ヲ受取ルヘキ者トノ親族關係カ止ミタルトキハ保險者ハ被保險者ノ爲メニ積立テタル金額ヲ拂戻スコトヲ要ス
右第一及ヒ第二ノ修正原案ハ同時ニ議事ニ付スル旨議長ヨリ宣吿セラレタリ
梅君ハ說明ニ先チ第二項「被保險人」ヲ「被保險者」ト訂正スル旨ヲ述ヘ之ヨリ說明シテ曰ク本日提出セシ第三百三十四條第一項及ヒ第二項ノ修正ニ付イテハ既ニ其大體ハ本回ニ於テ決議セシモノニシテ唯文章ヲ改メタルニ過キス尤モ其結果或ハ尠シク決議ノ精神ト異ナルコト無キヲ保セス先ツ第一項ニ「相續人」ナル文字ヲ加ヘタルハ高木君ノ注意ニ從ヒタルモノナリ又第二項ノ修正ハ當然ノ結果ニシテ而シテ第三項ヲ新ニ加ヘタルハ其當時以來ニ關シ再考ヲ約シタレハナリ卽チ舊案ニ於テハ親族關係ノ止ミタルトキハ其者ハ保險金ヲ受取ルコト能ハサルノ精神不分明ナルヲ以テ其㸃ヲ明ラカニセシモノニ過キサルナリト
穗積陳重君ハ本條第一項ノ「相續人」ナル文字ヲ不必要ナリト難シテ曰ク他ニ保險金ヲ受取ルヘキ者親族ナルコトヲ要ストノ文字アル以上ハ不必要ナレハナリト此批難ニ對シ梅君辯シテ曰ク此文字ハ曾テ舊原案中ニ之レナキ爲メ批難ヲ受ケ新ニ加ヘタルモノナリト是ヨリ相互ノ說ヲ主張シ論難セラレタリト雖モ要スルニ「相續人」ナル文字ヲ創不削ノニ㸃三過キス
長谷川君ハ第一項ノ「受取ルヘキ者ヲ定メタルトキ」トアルヲ難シシテ曰ク若シ受取ルヘキ者ヲ定メサルトキハ如何此㸃ニ至ツテハ原文不完全ナリト
右ニ付キ梅君辯シテ曰ク固ヨリ受取ルヘキ者ハ何レノ場合ト雖モ必ス定メアルモノニ非ラス而シテ此等ノ場合ニ關シテハ保險證劵ノ書方ニ因リ自ラ疑ナキニ至ルヘシト
土方君モ亦第一項ニ付キ難シテ曰ク他ニ保險契約者ハ被保險者タルコトヲ要スト云ヘルカ如キ規定アランカ卽チ「定メタルトキ」云々トノ原文其當ヲ得ルナルヘシト雖モ右ノ如キ規定ナキ以上ハ穩當ナラスト
右ニ付キ梅君答ヘテ曰ク其讀ハ尤モナルヲ以テ卽チ原按ヲ改メテ保險金額ヲ受取ルヘキ者ハ「被保險者」云々ト訂正スト
本條第三項ニ付テハ或ハ保險金ヲ受取ルヘキ者ト被保險者トノ親族關係止ミタル場合ニ於テハ保險金ヲ受取ルヘキ者不分明ナリトノ批難出テ或ハ又斯カル場合ハ保險契約者ヲシテ更ニ保險金額ヲ受取ルヘキ者ヲ定メシムルノ主義ニ改ムル方可ナリトカ又或ハ保險金額ヲ受取ルヘキ者カ被保險者ニ先チ死亡セシトキハ果シテ如何トカノ如キ種々ノ難問及ヒ希望等出テ要スルニ確定セルモノ無ク爲メニ起草者ノ再考ヲ煩ハスニ至リ次ノ修正原按ニ移リタリ
商修正原案起草委員提出
第三百三十七條ヲ左ノ如ク改ム
第三百三十七條 第三百十二條、第三百十四條乃至第三百十八條、第三百十九條第一項、第三百二十一條乃至第三百二十二條甲、第三百二十三條第一項、第三百二十四條乃至第三百二十五條ノ規定ハ生命保險ニ之ヲ準用ス
第三百十二條及ヒ第三百二十一條乃至第三百二十二條甲ノ場合ニ於テ保險者カ保險金額ヲ支拂フコトヲ要セサルトキハ保險者ハ被保險者ノ爲メニ積立テタル金額ヲ拂戻スコトヲ要ス
梅君說明ニ先チ文章ヲ訂正シテ目ク前條ヲ改メタル結果本條ノ「第三百ニ十二條甲」ヲ「第三百二十三條」ト改メ而シテ「第三百二十三條第一項」ノ數字ヲ削除スト次ニ本條ヲ說明シテ曰ク本條ハ一旦議決セン個條ニシテ又玆ニ修正シタルモノ決シテ他意アルニアラス要スルニ唯文字ヲ改メントカ又ハ條ヲ前後セントカ若クハ後ニ加入セシ個條ヲ追加セシトカニ過キスト右ハ修正原按ニ可決シ次ノ修正原案ニ移レリ
商修正原案起草委員提出
第三百十三條ヲ左ノ如ク改ム
保險契約ノ目的ノ性質若クハ瑕疵其自然ノ消耗、保險契約者、被保險者又ハ保險金額ヲ受取ルヘキ者ノ故意若クハ重大ナル過失ニ因リテ生シタル損害ハ保險者之ヲ填補スル責ニ任セス
梅君ノ說明ニ曰ク本條ノ修正ハ單ニ「被保險者」ノ文字ヲ加ヘタルニ過キス而シテ其追加セシ理由ハ元田君ノ說ニ從ヒタルモノナリト右ハ異議ナク可決シ第四編手形ノ議事ニ移リタリ
第四編 手形
第一章 爲替手形
第一節 總則
田部君ノ說明ニ曰ク曾テ目錄ヲ議スルニ當リ本編ハ第一章總則、第二章爲替手形、第三章約束手形、第四章小切手ノ四章ニ分類スルコトニ決定シタリ就テハ今本編ヲ起草スルニ當テモ其決定ニ從ヒ爲替手形、約束手形及ヒ小切手ハ各獨立ノ一章ト爲スト雖モ總則ヲ獨立ノ一章ト爲シ而シテ爲替手形、約束手形及ヒ小切手ニ共通セシムルニ付テハ一ノ改正ヲ加フルノ止ムヲ得サルニ至レリ是他ナシ現行法ニ於テモ總則ノ規定ヲ設ケ之ヲ共通セシムト雖モ實際ノ適用上ニ於テハ頗ル困難ヲ感シタルト又一ツハ總則以外ノ規定ニシテ小切手ニ必要ナルモノ有ルニ至レルヲ以テ敢テ其方法ニ倣フノ拙ナルヲ看破シタレハナリ故ヲ以テ爲替手形ニ付キ總則ヲ設ケ而シテ約束手形及ヒ小切手ニ仕テハ其總則ノ規定ヲ準用シ且ツ其章ニ於テ特ニ必要ナル事項ヲ規定スルノ主義ヲ採リタリト
右/標題ハ原按ニ可決シ次條ニ移リタリ
第三百三十八條 爲替手形ニ署名シタル者ハ爲替手形ヨリ生シタル債務ニ付キ連帶シテ其履行ノ責ニ任ス
(參照)舊七一五、佛一四〇、一四二、蘭一四六獨手形法八一、匈手形法九一、瑞八〇八、伊三一四、三一八、西四八一、五一六、羅三三九、三四三、葡三三五、白千八百七十二年五月二十日法三〇、英千八百八十二年八月十八日法三八、五五、五六、千八百八十五年アンヴェール万國商法會議決議法案四五
田部君ノ說明ニ曰ク現行商法第六百九十九條乃至第七百十五條ノ各個條ニ於テ現ニ本按中ニ採用セル以外ノ個條ニ付テハ或ハ不必要ナリトシテ削除セルモノアリ或ハ他ノ場處ニ讓レルモノアリ或ハ又法例中ニ讓レルモノアルナリ然リ而シテ本按ノ規定ト雖モ後ニ不足ナリト考フルトキハ一三ノ個條ヲ補追スルコトヲ豫期セリ次ニ本條ハ舊商法第七百十五條ニ修正ヲ加ヘタルモノニシテ同條第二項ノ規定ハ連帶債務ノ中ニ規定スヘキモノナルヲ以テ之ヲ削除シタリ而シテ本條ニ所謂連帶ナルモノハ普通ノ連幣ト異ナルモノニシテ此爲替ノ債務ハ爲替手形面ニ現ハレ居ラサル可ラス從テ其現ハレタルモノニ限リ效力ヲ及ホスヘキモノナルヲ以テ署名ノ必要アルモノニシテ此署名ノ資格ニ付テハ種々アリ而シテ請求ノ順序ニ付テハ他ノ規定ニ因リ分明ナルヘシト雖モ要スルニ其資格ニ應シテ連帶ノ義務ヲ負フヘキコトヲ玆ニ規定シタルモノナリト
富谷君ハ質問的攻擊ヲ爲シテ曰ク本條ニハ單ニ連帶トアリ故ニ此連帶ハ他ノ普通連帶ト異ナルコト不分明ナリ果シテ他ニ之ニ關スル規定ヲ設クヘキ豫定ナルヤ又本條ノ爲替手形ナル文字ノ中ニハ爲替手形ノ謄本及ヒ補箋ヲモ包含スルモノナルヘシ然レハ單ニ爲替手形ノ文字ノミニテハ不足ナラスヤ次ニ又本條ニハ單ニ署名トアリ付テハ舊商法第七百二條ノ規定ハ其精神ヲ採用セサルモノナルカ若シ然ラハ意見ヲ有セリト
右ニ付キ田部君答辯シテ曰ク玆ニ連帶ヲ漠然ト規定シタルハ原則ヲ示セルモノニシテ之ニ關スル規定ハ後ニ設クル考ヘナリ又爲替手形ノ文字ニ付テハ解釋上ハ富谷君カ述ヘラレタルカ如クナルヘシ然レトモ其事ヲ規定スルニ付テハ尙ホ一考ヲ請フ次ニ又舊商法第七百二條ニ關スルコトハ後ニ右ニ關スル規定ヲ設クヘキ考ヘナリト
本條ニ付テハ右ノ外ニ一ニノ質問アリタルニ止リ原案ニ可決シ次條ニ移リタリ
第三百三十九條 爲替手形ニ無能力者ノ署名又ハ僞造若クハ變造ノ署名アルモ他ノ署名ノ效力ニ影響ヲ及ホサス
(參照)舊七〇一、七〇八、佛一一三、一一四、蘭一四五、獨手形法三、八一、匈手形法二、八一乃至八三、瑞七二一、八〇一、八〇二、伊三二七、三二八、羅三五二、三五三、葡三三六、白千八百七十二年五月二十日法三、英千八百八十二年八月十八日法五、二二、三八、五四、五五、千八百八十五年アンヴェール万國商法會議決議法案四六
田部君ノ說明ニ曰ク本條ハ現行商法第七百一條及ヒ第七百八條ヲ併合シタルモノナリ而シテ爲替手形ハ其手形カ方式ヲ備ヘタルモノナレハ縱令他ニ無效ノ原因アルモ爲メニ爲替手形トシテハ其影響ヲ受クヘキモノニ非ラスシテ卽チ有效ト見ルヘキモノナリ是蓋シ爲替手形上ノ原則ナリ故ニ方式ヲ缺カサル以上ハ債務ヲ負ハサル可ラサルコトヲ示スカ爲メ本條ノ必要アリト
本條モ亦ニ三ノ質問アリタルニ止リ原按ニ可決シ次條ニ移リタリ
第三百四十條 變造シタル爲替手形ニ署名シタル者ハ其變造手形ノ文言ニ從ヒテ責任ヲ負フ
署名者ハ變造前ニ署名シタルモノト推定ス
(參照)舊七〇八、匈手形法八二、八三、瑞八〇二、伊三二八、葡三三六
田部君ノ說明ニ曰ク本條ハ現行商法第七百八條ニ該當スルモノニシテ本按ニ於テハ變造手形ノ文言ニ從ヒ責任ヲ負フヘキモノトシ而シテ署名者ハ變造前ニ署名シタルモノト推定スルモノトセリ蓋シ裏面ヨリ云ヘハ變造以後ニ署名シタル者ノミ責任ヲ負フモノニシテ此精神ハ本條ノ文章上ヨリ自ラ分明ナル考ヘナリト
鶴原君ハ本條ノ文章ヲ批難シテ曰ク變造後ニ署名シタル者責任ヲ負フコトハ起草者ノ說明ニ因リ了知セリト雖モ本條ノ文章上ヨリハ斯ク解釋スルコト困難ナリ故ニ其精神ヲ文章上ニ明示セラレタシト右ニ付キ梅君辯シテ曰ク本條第一項ニ於テハ「變造シタル爲替手形」云々トアリテ第二項一一ハ「變造前」ナル文字アルヲ以テ文章上ヨリ容易ニ推知シ得ルヲ以テ原文ノ儘ニテ可ナルヘシト
長谷川君曰ク起草者ノ說明ニ因レハ本條ノ精神ハ變造シタル手形ニ其變造後署名セシ者ノミ責任ヲ負フ云々然レハ僞造ノ場合ハ如何例ヘハ振出人カ僞造セシ場合ハ如何ト
田部君答ヘテ曰ク本條ハ固ヨリ振出人ニ適用スヘキモノニアラス變造後ノ署名者ニ適用スヘキモノナリ付テハ振出人カ僞造センカ白紙濫用トシテ前條ノ適用ヲ受クヘシト
土方君ハ本條中ニ僞造ノ場合ヲモ規定スヘシト述ヘ次ニ第二項ノ「推定」ナル文字ヲ批難セラレタリト雖モ何レモ贊成者ナク本條ハ原案ニ可決シ次條ニ移リタリ
第三百四十一條 爲替手形ヨリ生シタル債權ハ三年ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
前項ノ期間ハ滿期日又ハ第  條ニ定メタル期間滿了ノ日ヨリ之ヲ起算ス
(參照)舊七一二、七一三、佛一八九、蘭二〇六、二〇七、獨手形法七七乃至七九、匈手形法八四乃至八六、瑞八〇三乃至八〇五、伊九一九、西九五〇、羅九四一、葡三三九、白千八百七十二年五月二十日法八二、千八百八十五年アンヴェール万國商法會議決議法案五四
田部君ノ說明ニ曰ク本條ノ三年ナル時效期間ハ現行法ト同一ナリト雖モ現行法ハ支拂請求權ト償還請求權トニ付キ區別ヲ設ケ起草㸃ヲ異ニセリ然レトモ斯ノ如クスルトキハ自ラ長キニ失スルノ嫌アルヲ以テ總テ爲替上ノ債權ニ付テハ三年ヲ以テ時效ニ罹ルモノトシタリ マこ次ニ本條第二項ニ「第條」トアルハ現行法第七百十三條ノ如キ規定ヲ後ニ設クルヲ以テ之ヲ指稱セルモノナリ要スルニ此現行法第七百十三條ノ規定ハ時效ニ關スル規定ニシテ民法時效ノ規定アルカ爲メ必要ヲ感スルニ至レリ凡ソ一覽拂又ハ一覽定期拂ノ手形ハ滿期日ヨリハ短クナルヘシト考ヘ居レリ然レトモ玆ハ唯提出期間來レルトキハ提出スルモノト見テ可ナリト
土方君ハ修正說ヲ提出シテ曰ク爲替手形ノ時效期間ヲ長クスルハ宜シキヲ得サルヲ以テ寧ロ三ケ月ヲ以テ時效ニ罹ルモノトシ而シテ第二項ノ規定ハ之ヲ削除スヘシト次ニ岸本君及ヒ長谷川君ヨリ原按攻擊及ヒ修正ノ意見ヲ陳述セラレタリト雖モ要スルニ本按ニ於テ爲替手形ノ債權ヲ三年トシ而シテ支拂請求權ト償還請求權トニ付キ區別ヲ說カサルハ不可ナリト云フニ在リ而シテ最後ニ長谷川君ハ支拂請求權ト償還請求權トニ付キ時效ノ起算㸃ヲ區別シ而シテ償還請求權ハ通知ヲ以テ起算㸃ト爲ストノ主義ニ修正スルコ漆ヲ起算者ニ囑望シ議論一定セサル爲メ次回迄延期スルコトニ決定シ定刻ヲ以テ散會ヲ吿ケタリ