明治商法(明治32年)

法典調査会 商法委員会議事要録 第43回

参考原資料

備考

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第四十三回商法委員會議事要錄
出席員
淸浦奎吾君
土方寧君
岸本辰雄君
田部芳君
穗積八束君
橫田國臣君
井上正一君
都筑馨六君
梅謙次郞君
穗積陳重君
富井政章君
長谷川喬君
南部甕男君
尾崎三良君
三浦安君
中村元嘉君
西源四郞君
岡野敬次郞君
前回ニ於ケル第百七十三條ノ未決ノ議事ヲ繼續ス
穗積八束君ハ前回ニテ井上君ヨリ提出セル債權發行ノ價額ハ豫メ發行ノ時言ハスシテ爲スノ趣旨ヲ改メ「債劵發行ノ最小額」ヲ追加ストノ案ニ余ハ贊成ノ意ヲ表スヘシト述ヘ
引續キ穗積陳重君ハ起草者ニ協議シテ曰ク既ニ岡野君ノ說明ニ於テモ公吿スルヲ要ストアリテ社債成立ノ必要全體トシテ一事項ニテモ漏ラストキハ無效トナルカ故ニ可成各事項ニ付キ必要ナキモノハ減少セラレテハ如何起草者ニ於テモ極メテ重要ナル事項ノミヲ存シ他ハ割愛スルモ可ナリトノ意見ニアラン此㸃ニ付キ豫メ協議シ置カント述ヘラレタリ岡野君ノ答辯ニ曰ク百七十三條ニ定メタル事項ハ極メテ多キ故絕對的ニ必要ナリトノ考ニモアラス或ハ本案中ヨリ削除らスヘキ事項アルヤモ知レス而シテ第一、商號ハ前回ニ於テ既ニ岸本君ノ質問モアリテ本會社ハ何某會社ト號スト云ヘルカ如キ嫌アリト云ハレシモ其㸃ニ付テハ必シモ公吿事項ニ必シモ法文ノ順序ニ從ヒ役クヘキモノニアラス會社カ其名義ヲ以テ社債募集ノ公吿ヲ爲ス故別段法文ニ規定ナキモ可ナリ然レトモ公式トシテ其事項ヲ揭クル以上ハ會社ノ商號ヲ省クハ穩當ナラス第二號第三號ハ削除スヘシトノ長谷川君井上君ノ覩アルモ是第百二十一條ニ於ケル株劵ニ記載スヘキ事項中第三株金ノ總額第四株劵ノ總數ヲ記載スルコトヲ要ストノコトニ付キ既ニ其際井上君ヨリ資本ノ總額株劵ノ總數ヲ削除スヘシトノコトナリシカ然レトモ原案ノ如ク通過シタルヲ以テ第百二十條ハ株式ニ記載スヘキ事項ナルカ故ニ少シク差異ハアラン第四號乃至第六號ハ必要ナルコトハ勿論ナリ其故ニ前回ニ於テモ別段批難ハアラサリシナリ第七號ハ前回ニ於テ債劵發行ノ價額ハ必シモ均一ヲ要セサル故其最低額ヲ揭ケ其額ヲ超ユル範圍內ト改ムルモ可ナリ第八號第九號ハ或ハ削除スルモ可ナリ强ヒテ主張ハナササルヘシ第十號ハ主トシテ拂込濟ノ株金ノ總額ニ重キヲ置キシ故第百七十一條ニ於ケル社債ノ總額ハ最終ノ貸借野照表ヨリ會社カ現ニ有スル財產ノ額ヲ超ユルコトヲ得ストアリテ其減少シタル金額ヲ超ユルコトヲ得ストノ㸃ヨリ或ハ其趣旨ニテ修正ヲ加フルヤモ計ラレスト述ヘラレタリ
井上君ハ起草者ニ協議シテ曰ク第六號ノ規定ハ債劵ノ總額又ハ其殘額ト改メテハ如何ト
梅君ノ答辯ニ曰ク井上君ノ如クセハ株式ノ總額トナルヲ以テ此場合ハ總額又ハ殘額トナストキハ孰レカ其一方ニ見ユルノ嫌アリト述ヘ長谷川君ハ公吿事項ニ付キ削除讀ヲ提出シテ曰ク本條中其一事項ヲ缺クトキハ無效トナルヲ以テ可成其事項ヲ減セラレンコトヲ望ム穗積君ハ一號ヲ削除セント云ハルルモ是必要ナキカ故ナリ而シテ第二號ノ如キモ不用ナルコトハ既ニ起草者ノ認ムル所ナリ然ルニ第百二十一條ト同意義ナリトテ故ラニ公吿スルニモ及ハサルヘシ故ニニ號ノ必要ナシ畢竟=號、ニ號、八號及ヒ九號ハ削除スヘシトノ說ヲ提出セント述ヘラレタリ
議長ハ以上ノ提出案ニ付キ宣吿シテ曰ク第八號及ヒ九號ハ既ニ起草者ハ同意シタルヲ以テ當然削除スヘシ次ニ穗積八束君ノ第一號削除說ニ贊成者ハ起立アレ
起立者多數
長谷川君ノ第二號削除設ニ贊成者ハ起立セヨ
起立者少數
井上君ノ第六號ニ於ケル「償還ヲ了ヘサル」トノコトヲ加フルコトニ起草者ハ同意セシヲ以テ此㸃ニ付キ採決セス次ニ井上君ノ債劵發行ノ價額又ハ其最低額ト第六號ヲ改ムルトノ修正詭ニ贊成者ハ起立セヨ
起立者多數
次ニ土方君ハ六號ト七號トノ位置ヲ巓倒セントノ說ヲ提出セシモ贊成者ナシ他ハ原案ニ決セリ
第百七十四條 社債ノ募集カ完了シタルトキハ取締役ハ各債券ニ付キ其全額ヲ拂込マシムルコトヲ要ス
取締役ハ前項ノ規定ニ從ヒ全額ノ拂込ヲ受ケタル日ヨリ一週間內ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ前條第二號乃至第五號ニ揭ケタル事項ヲ登記スルコトヲ要ス
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ニ付キ第一ニ說明スヘキ㸃ハ社債ノ募集カ完了シタルコトナリ株式ノ場合ニ於テハ卽チ株式總數ノ申込ニ付總數ヲ集ムルハ極メテ必要ナリ而シテ此社債ニ於ケルモ亦株劵ト等シキ精神ヲ採用シタリ他ナシ社債ヲ募集シタル場合ハ應募者ニ於テモ全額ヲ募集スルモノト思惟セハ全額ノ拂込カ完了セサレハ會社ト應募者トノ相互ノ最初ノ意思ニ背クコトトナラン畢竟會社ノ方ヨリハ必要トナルヘシ又應募者ヨリ云フモ其條件ヲ以テ募集ニ應スルヲ至當トス第二ノ㸃ハ全部ヲ拂込マシムル㸃ナリ此場合ハ諸君モ熟考アランコトヲ請フ此規定ヲ採用セシハ全額ヲ拂込シムルモ亦之ヲ一時ニ拂込マシメサルモ可ナル場合アリ帥株式ニ於ケルカ如ク第一回第二回トシテ拂込マシムルモノトセハ會社ニテハ以上ノ如クナスヲ便宜ト認ムルコトアリ而シテ此場合ハ寧ロ會社ニ於テ必要ト認ムル場合每ニ拂込マシメ以テ第一回壹萬圓第二回三萬圓ト云フカ如ク會社ノ必要上ヨリナスハ經濟上極メテ必要ナリト信ス反之一時ニ拂込マシムルト爲ス以上ハ全部ヲ拂込マシムルヲ至當トス現行商法第二百六條ハ社債ハ記名ヲ要ストアリ而シテ其趣旨ハ無記名ノ社債ハ禁セサルモ乍併其始メニ當リテハ無記名ノ社債ハ禁スルモ可ナリト云ヘルカ如シ本案ハ反之如何ナル場合ニテモ全額ノ拂込アルトキハ無記名ヲ要スルコトトセリト述ヘ本條ハ原案ニ可決セリ
第百七十五條 債券ニハ第百七十三條第一號乃至第六號ニ揭ケタル事項及ヒ取締役ノ氏名ヲ記載シ之ニ番號ヲ附記スルコトヲ要ス
(參照)二十三年八月八日法六〇號四
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ハ參照トシテ揭ケタル明治ニ十三年八月八日法律第六十號第四條ト大體ハ同一ナリ而シテ右法律中削除セシ條項ハ必シモ削除ヲ要ストノ理由ナラサルモ他ノ條項ニ依リテ自ラ解釋シ得ヘケレハナリ公吿ノ如キモ其他ノコトニ付キ爲シ得ヘシ登記ノ如キモ故ラニ債劵ニ付キ揭ケルノ必要ナシ次ニ商號ノコトナルカ此場合ハ第百七十三條第一號ニ於テ削除セラレタルヲ以テ若シ債劵ニ關シ商號ノ記入ヲ必要トセハ本條ニ加フルモ可ナリ而シテ其必要ナルハ法文上前後ノ關係ニ於テ權衡上設ケサル可ラス次ニ公吿ノ參照トシテ引用セシ第百二十一條ノ規定ハ株劵ニ於テハ是カ規定ヲ要スルモ債劵ノ場合ニ於テハ必要ナカルヘシ余輩ノ考ヲ以テセハ百七十五條ニ揭ケタル商號ハ復活スルヲ極メテ穩當ナリト信スト述ヘ次ニ穗積君ハ起草者ニ協議シテ曰ク公債ニハ之ニ氏名ヲ記載シ番號ヲ附記ストアルモ普通附記ナルモノハ主記アリシ後ニ附加スルモノ故各記載事項ト讀ミ得ラルルノ嫌アリ故ニ此場合ハ番號ヲ附スル云々ト改ムルヲ穩當ト信ス起草者ニ於テモ再考セラレテハ如何ト述ヘ
岡野君ハ直チニ答辯シテ曰ク此場合ハ附記トセサレハ番號ヲ記載スル場合ハ穩當ナラス既ニ百ニ十一條ニ於テモ附記ストノ用例アリ故ニ此儘ニセラレンコトヲ請フト答ヘ穗積君ハ兎モ角考ヘラレンコトヲ請フト希望ヲ述ヘラレタリ
尾崎君ハ修正案ヲ提出シテ曰ク取締役ニ印形ノ規定ナキモ會社ニ印ヲ要スルハ勿論ナリ是ヲ西洋流ニ爲ストキハ不用ナルモ今日現ニ總テノ場合ニ必要生シ居レハ實際上割印ヲ實行シ居ルモ此㸃ヲ廢止スルモ別段異論ナカルヘシ然レトモ何等ノ條件モナク廢止スルハ極メテ不完全ナリ若シ本法ニシテ行ハレンカ自記スルカ或ハ自署スルカ孰レカ實行シ能ハサルトキハ捺印ノ必要アラン故ニ本案ニ於テ捺印ヲ要ストノ案ヲ提出スヘシ若シ幸ニシテ本修正案ノ通過スルコトアランカ株劵ニ關スル規定ニテ之ト同一ニ修正スルコトヲ整理マテニ改メラレンコトヲ請フト述ヘラレタリ
梅君ハ右修正案ヲ駁シテ曰ク論者ハ本案ニ於テ捺印ヲ禁止スルカ如ク主張セラルルモ社債ニ捺印スルハ別段差支ナシ然リト雖モ之ニ捺印スルモ何等ノ效力ヲ生セサルヘシ而シテ本案ニ於テハ表面上法文ニ規定セサルニ過キス既ニ遺言ノ規定ニ於テ論議百出ノ上證書面ニ捺印ヲ要ストシ又登記ノ如キモ捺印ヲ要ストセシモ是等ハ單ニ手續法ナルヲ以テ設ケタルニ過キス反之民法商法ノ如キ願クハ國家不磨ノ法典ナルヲ以テ捺印ノ規定ヲ設ケサルコトトセリ而シテ債劵若クハ株劵ノ如キ縱令捺印ヲ爲スニモセヨ恐クハ將來要セサルコトニ歸スヘシ故ニ本案ニ於テハ捺印ノ規定ヲ設ケサルコトヲ望ムト答ヘラレタリ
議長ハ以上ノ提出案ニ付キ採決シテ曰ク
第百七十三條六號ノ事項ヲ削除スルコトニ同意者ハ起立セヨ
起立者多數
次ニ會社ノ商號ノ規定ヲ本案ニ包含セシムルトノコトハ起草者ノ請求モアリ旁以テ整理マテニ再考スルコトト爲サン
尾崎君ノ印章ヲ押捺スルトノ趣旨(但取締役ト社員ニ限ル)ニ贊成者ハ起立セヨ
起立者多數
他ハ原案ニ可決セリ
第百七十六條 記名社債ノ讓渡ハ讓受人ノ氏名、住所ヲ社債原簿ニ記入スルニ非サレハ之ヲ以テ會社其他ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
(參照)二十三年八月八日法六〇號五、六
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ハ別段說明ヲ要セス既ニ第百七十四條ノ說明ノ際述ヘタルカ如ク債劵ハ實際上無記名ノモノ多シ且又無記名ト爲スカ極メテ便宜ナリ乍併會社ニ於テ記名ト爲スモ法律上禁セサルヘシ故ニ其無記名債劵ノ規定ヲ本條ニ定メタリ、以上述フルカ如ク無記名債劵ヲ實際上重スルハ往々ニシテ社債應募中、記名債劵ヲ希望スルモノアリ故ニ讓受人ノ氏名住所ヲ社債原簿ニ記入スルニ非サレハ會社其他ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得スト定メタリ而シテ此用例ニ付テ第百二十三條ノ規定ト大差ナシ唯異ル㸃ハ株主名簿ヲ社債原簿ト改メタリ他ナシ此場合ハ株主ニ非サレハナリト述ヘ原案ニ可決セリ
第七節 解散
第百七十七條 會社ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス
一 第六十四條第一號、第二號、第四號、第六號及ヒ第七號ニ揭ケタル事由
二 株主總會ノ決議
三 株主カ七人以下ニ減シタルコト
(參照)舊二三〇、佛千八百六十七年七月二十四日法三七、三八、蘭四七、二項、獨二四二、二四七、同草二六五、二七六乃至二七九、匈二〇一、瑞六六四、六六九、伊一八九、羅一九一、葡一二〇、白千八百七十三年五月十八日法七一乃至七三、英千八百六十二年八月七日法四九、七九、一二九乃至一三二、一六一、一六二
田部君ノ說明ニ曰ク本條ハ現行商法第二百三十條ニ該當セリ此一號ニ於テ第六十四條第一號、第二號、第六號乃ヒ第七號云々トシ以テ其規定ヲ準用セシハ其規定ト殆ント同一ナレハナリ而シテ第一號ハ定款ニ定メタル場合ハ第六十四條第一號ニ於ケル存立時期ノ滿了竝ニ第二號ニ於ケル會社ノ目的タル事業ノ成功又ハ其成功ノ不能ヲ加ヘタリ其事由ハ勿論合名會社ニ限ラス株式會社ニモ亦必要ナリ第四號ニ於ケル合併ヲ加ヘタルハ是他ノ會社ニモ之ヲ採用シタルカ故ニ株式會社ニモ尙ホ其必要アラン第六號ニ於ケル會社ノ破產ハ第二號ト其理由ヲ同一ニ爲スヲ以テ加フルコトトセリ第七號ノ裁判所ノ命令ハ現行法ト同一ナリ卽現行商法ハ株主ノ任意ノ解散ヲ加ヘシモ是本條第二號ニ於ケル株主總會ノ決議ニ包含スヘシ而シテ實際上其結果ヲ同一ニナスヲ以テ株式總會ノ決議トセリ本條第三號ハ現行商法第二百三十條第三號ニ當レリ唯異ル㸃ハ株主カ七人以下ニ減シタルトキトアリ現行法ハ資本ノ四分ノ一未滿ニ減シタルトキヲ以テ解散理由トセリ而シテ斯カル場合ハ寧ロ破產開始ノ原因トナルヘシ若シ如斯確然ト幾分ノ一ト云ヘルカ如ク其範圍ヲ定メサルヲ可トスルヲ以テ寧ロ破產ノ場合ニ讓リテ第四號ハ之ヲ削除セリ外國ノ立法例ハ會社ノ資本四分ノ一ニ減スルトキハ會社ハ解散ストノ例ハ極メテ稀ナリ單ニ和蘭ノミニ過キス故ニ此規定ヲ削除セリ次ニ現行商法ハ第百三十二條ニ於テ總テノ解散ノ場合ヲ會社ノ決議ニヨルトセルモ極メテ穩ナラス故ニ採用セス或場合ハ當然云フヲ俟タス存立時期ノ滿了ノ如キ其時期ノ到來スルトキハ其事項ニテモ採ラス會社カ當然解散スルヲ以テ會社ノ決議ヲ要セサルヘシ又本案第二號ニ於ケル合併ノ場合ハ決議ノ規定ニ入ルヘシ然レトモ此場合ハ次條ニ於テ詳說セン又舊商法第二百三十一條ハ淸算ニ屬スル破產ノ開始ナリ故ニ此場合ハ淸算ノ規定ニ讓レリ第二百三十四條第二百三十五條モ是亦淸算ノ規定ニ讓レリ第二百三十七條ハ不用ナリ既ニ登記後ニテモ株式讓渡ヲナスヲ得ヘキハ明文ヲ要セサルヘシ後段ハ無效ナルハ勿論ナリ第二百三十八條モ亦之ヲ削除セリ第二百三十九條ハ民法ニ規定セシ故重復スルノ虞アリ故ニ削除セリト述ヘ本案ハ異議ナク確定セリ
第百七十八條 前條第二號及ヒ合併ノ決議ハ第百五十四條ノ規定ニ從フニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
(參照)舊二〇三、二三二、佛千八百六十七年七月二十四日法三一、三七、獨二一五、四項、二四二、一項二號、同草二六五、一項二號、二七八、匈一七九、一項三號、六號、七號、一八〇、瑞六二六、伊一五八、一項一號、三號、羅一六〇、一項一號、三號、葡一一六、白千八百七十三年五月十八日法五九
田部君ノ說明ニ曰ク百五十四條ノ規定ハ定款變更ノ規定ナリ而シテ會社解散ノ一種類ナル合併ハ定款變更ト同シク重大ノ決議方法ニ依ルモノト認メ本條ノ如ク規定セリ他ハ別段說明ヲ要セスト述ヘ本條ハ原案ニ決セリ
第百七十九條 會社カ解散シタルトキハ破產ノ場合ヲ除ク外遲滯ナク之ヲ各株主ニ通知シ且會社カ無記名株ヲ發行シタル場合ニ於テハ之ヲ公吿スルコトヲ要ス
(參照)蘭三一、獨二四三、同草二七〇、匈二〇二、二項、葡一九三
田部君ノ說明ニ曰ク本案ニ付テハ訂正ヲ要スル㸃アリ卽「會社ノ無記名株ヲ」トアルヲ「會社ノ無記名式ノ株劵ヲ」ト改ム、偖本條前段ノ事項ハ現行商法第二百三十條ニ其規定アリ是本案ニ於ケルカ如ク當然解散ノ中ニ入ルヘキ必要事項ナリ本條ニ於ケル且以下ノ後段ノ規定ハ會社カ無記名式ノ株劵ヲ發行シタル場合ニ於テハ之ヲ公吿スルコトヲ要ストシタルハ此方法ヲ必要ト認メタレハナリト述ヘ引續キ長谷川君ハ修正案ヲ提出シテ曰ク既ニ本案ニ於テハ罰則ノ設アルヲ以テ取締役ヲ加ヘ以テ「取締役ハ遲滯ナク」云々ト改メテハ如何ト述ヘ起草者ノ同意ヲ得テ本條ニ加フルコトトセリ他ハ原案ノ儘可決セリ
第百八十條 第六十五條及ヒ第六十七條乃至第七十一條ノ規定ハ株式會社ニ之ヲ準用ス
(參照)舊二三四、佛千八百六十七年七月二十四日法六一、獨二四三、二四七、同草二六六、二七〇、二七九、匈二〇二、二〇八、瑞六六五、六六九、伊一〇〇、一〇三、一九三乃至一九六、羅一〇〇、一〇三、一九五乃至一九八、葡一二三乃至一二七、一九三
田部君ノ說明ニ曰ク本條ニ於テ第六十五條トアルハ會社解散ノ始メニ設ケタル登記ニ關スル規定ナリ第六十七條乃至七十一條ハ合名會社解散ノ合併ノ場合ニ於ケル債權保護ノ規定ナリ而シテ本條ハ單ニ其規定ヲ準用セルニ過キスト述ヘ原案ノ儘可決セリ
第八節 淸算
岡野君ノ說明ニ曰ク淸算ノ表題ヲ設ケタルハ其理由現行法ト異ナラス乍併現行法ニ於ケル會社解散ト題セル規定中ニ淸算ノ事項ヲ併セテ設ケタルハ是純然タル會凱社ノ解散ノミナラス他ノ淸算ニ關スル規定ヲモ設ケタレハナリ反之本案ニ於テ特ニ淸算ナル表題ヲ設ケシハ前節ニ於テ解散ノ規定ハ決定セシ故解散及ヒ淸算ヲ特ニ區別セリ此㸃ニ付テハ合名會社ノ規定ニ於テ確定セルヲ以テ再ヒ本節ニ於テ說明ノ要ナシ唯此第八節ノ下ニ規定セル事項ヲ認メ以テ會社ノ解散ノ下ニ規定セル事項ヲ採用セシ故其規定中ヨリ數多ノ條文ヲ削除シ以テ僅少ノ條項トセリ左ニ之カ說明ヲ爲サン第一ニ現行法第二百三十一條ヲ削除セリ該條ハ淸算行爲ノ事ヲ規定セリ是本案ノ終ノ第七十三條ニ會社ハ解散ノ後ト雖モ淸算ノ目的ノ範圍內ニ於テハ同ホ存續スルモノト看做ストアリテ其規定ニテ十分ナリト信ス又現行商法第二百三十二條ノ規定ハ解散ノ決議ニ關スル規定ナリ此規定ハ會社解散ノ規定ニテ既ニ削除セル故此場合ニ於テモ亦削除スルコ小トセリ次ニ第七節ニ於テ解散ノ決議方法ハ削ラレシ故淸算ニ於テ說明セシ第二百三十二條第二項ハ本條ニ於ケル第百八十一條ニテ現行法ト其趣旨ヲ異ニセシハ修正民法法人ノ規定ニ倣ヒタレハナリ次ニ現行商法第二百三十三條ハ本案第百八十二條ニ該當ス此㸃ニ付テハ別段說明ヲ要セス又現行商法第二百三十四條ノ規定ハ第百八十條ニ準用セル紫字ノ六十五條、卽本案ノ百八十九條ニ準用セル紫字ノ七十九條ノ規定ナリ淸算人ヲ選任シタルトキハ其淸算人ハ一週間內ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ自己ノ氏名、住所ヲ登記スルコトヲ要ストアル故本條ニ於テハ之ヲ削レリ又現行商法第二百三十五條ヲ削レリ是民法ニ於ケル法人ノ規定ト異ナリテ株式會社ハ政府ニ於テ干涉セサル趣旨ヲ以テ立案シ且淸算ニ付キ正確ナル規定アルヲ以テ素ヨリ千涉ノ要ナシ又第二百三十六條モ亦削除セリ其理由ハ取締役ノ淸算ハ實質上不穩當ノ規定ニシテ取締役ハ會社ヲ代表シ業務ヲ執行スルノ責任アリ乍併代理權ハ精神上淸算行爲ニ付キ淸算ノ範圍內ニ於テハ取締役ト同シク會社ヲ代表スルコトニ歸スヘシ之字ハ穩カナラサルモ代理權トセハ民法ノ用語上ヨリ代表トナルヘシ卽チ淸算人カ會社外ニ對シ代表スルノミナラス內部ニ對シテモ亦其行爲ハ必要ナルヘシ淸算人ノ職分ハ本案第百八十九條中ニ準用セシ紫字ノ八十條ヲ準用セリ印淸算人ノ職務ヲ流用シタルナリ次ニ第二百三十七條ノ規定ハ其條文中「及ヒ以下淸算ノ目的ノ爲メニセル財產ノ處分ハ總テ無效タリ」トアリ卻是等ハ當然明瞭ノモノニシテ處分ハ淸算ノ目的ノ範圍外ニシテ淸算ノ目的ノ爲メニ消滅スヘシ淸算人ノ職分ハ云々ノ規定ヨリ當然爲スコトヲ得サル故揭クルノ必要ナシ「及ヒ」以上ノ株式ノ讓渡ハ何ヲ以テ禁セシカ實ニ其理由ヲ知ルニ苦シムヘシ會社カ解散シタルトキハ、トノ理由ヨリ無論解散シタルモノニアラス民法ノ規定上ヨリ淸算ノ目的ノ範圍內ニ於テ會社ハ成立セサルコトトナルヘシ右會社ノ成立スト云ヘルハ淸算ニ對シテ淸算ノ消滅ニ至ルマテ會社ハ尙ホ存立スルモノト看做スモノナリ淸算ノ消滅シタルトキハ會社ハ新事業ヲ爲スコトヲ得ス隨テ會社ニ於テ株式ヲ讓渡スコトヲ得サルハ此㸃ニ付キ現行商法ノ總則ニ於ケル理由書ヲ見ルモ會社ハ解散ストナリ且株式ノ讓渡ハ自ラ爲シ能ハサルコトトナルヘシ如何ニモ不明瞭ノ規定トナルヘシ余輩ハ信ス會社ノ淸算ノ消滅スルトキハ株式ノ讓渡ハ爲スコトヲ得サルハ自ラ明瞭ナリト隨テ之ヲ禁スルノ必要ナシ故ニ第二百三十一條ノ規定ハ不用ナルヘシ又現行商法第二百三十八條ヲ削除セリ是解散ノ決議ヲ採ル爲メ召集スル場合ト牽聯スルコトトナルヘシ次ニ舊商法第二百三十九條ハ民法ノ第三百六條並一ニニ百七條ノ規定ニ依リ現行商法第二百三十九條ト同一ノ趣旨ヲ探用セリ故ニ削除セリ又第二百四十條ノ淸算人ノ職務ニ付キ準用セル規定ハ前述セシ本案第百八十九條ニ準用セル紫字ノ第八十條ヲ以テ明ラカナル故削除セリ又現行商法第百三十一條ノ淸算人ノ解任ノ場合ハ本案百八十九條ニ準用セル紫字ノ第八十九條ニアルヲ以テ削除セリ次ニ第二百四十一條及ヒニ百四十ニ條ハ削除セリ是淸算人ノ職務踐行ノ權原ニ付キ總會ヨリ與ヘタルコトハ當然明瞭ナリ畢竟株主ハ株主總會ノ決議ヲ經又ハ株主タルノ權利ヲ行フコトヲ得サルノ趣旨トナルヘシ株主總會ニ於テ會社ノ債權者ヲ保護スル規定ハ淸算ヲ爲シ確實ナラシムルニ過キス其㸃ハ本案ニ於ケル會社ノ決議方法ヲ適用スルコトヲ得ヘシ卽本案ニ於ケルカ如ク合名會社及ヒ株式會社ニ付キ亙細ノ規定ヲ設ケサルモ不確實ナル淸算ハ爲シ得サルコトト信シ削除セリ換言セハ債權者ニ損害ヲ蒙ラシムル淸算方法ハ採ルコトヲ得サルヘシ素ヨリ法律ニ認ムルノ必要ナキヲ以テナリ又第二百四十三條ノ規定ノ一部分ハ本案第百八十三條第一項ノ規定ニシテ一部ハ本案第百八十九條中ニ準用セル民法七十九條ニ代ハル法文トナルヘシ又第二百四十九條ノ規定ハ削除セシモ其趣旨ハ拒絕セルニ非ラス素ヨリ本案モ趣旨ハ採用セリ然レトモ既ニ淸算人ノ順序ニ付キ規定アルトキハ是等ノ問題ハ生セス故ニ削除セリ又第二百四十五條ハ本案第百八十九條ニ準用セル民法第八十條ノ規定ノ儘ナルカ故ニ削除セリ次ニ第二百四十六條ハ本案第百八十四條ノ規定ト同一ノ趣旨ヲ定メタリ故ニ之ヲ削レリ又第二百四十七條ノ規定ハ本案第百八十九條ニ準用セル第百三十條及ヒ第百三十一條ノ規定ヲ以テ代用スルコトヲ得ヘシ第二百四十八條ハ本案第百四十七條及ヒ第百八十七條ヲ以テ代用スルコトヲ得ヘシ又第二百四十九條ノ規定ハ一部ハ本案百八十六條ニテ可ナリ現行商法第二百四十九條中此分配ハ總債權者ニ辨償シタル時ヨリ三ケ月滿了ノ後ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ストノ規定アリ此㸃ハ削除セリ何トナレハ既ニニ百四十三條ノ債權ハ期間內ニ應セサルトキハ除斥ストアリ其儘ニナスモ當然存在スヘシ財產ヨリ配當スル期間ハ外國ノ立法例ハ獨逸ハ一年トアルモ何等ノ爲メニセシカ除斥ハ三ケ月滿了ノ後ト牴觸シタル規定故民法ニ第七十九條ノ規定ヲ準用スルコトヽナレリ而シテ民法第七十九條ノ規定ト株式會社ノ規定ト別段區別スルノ必要ナカルヘシ又第二百五十條ハ本案第百八十七條ノ儘ナリ故ニ削レリ又第二百五十一條ハ本案ノ第百八十九條ニ規定セル百四十四條(新)ニテ可ナリ其中現行商法第二百五十二條ノ規定ハ前回ニ於テ議決セル合名會社ノ規定ニ加フルカ故ニ淸算ノ結了シタルトキハ遲滯ナク其登記ヲ爲スヲ要ストアリテ夫ヨリ三ケ月ノ期間ニ主張スヘキ旨ノ催吿ヲ付ス其請求アリタルトキハ淸算人ニ於テ之ヲ辯了ストアリテ請求アリタルトキハ淸算人カ自己ノ淸算ヲナスノミナラス會社ノ財產ヨリ出スコトトナル故現行商法ノ趣旨ハ不明ナリト云フヘシ又第二百五十三條ハ本案第百八十九條ニ準用セル民法第八十一條カ其儘適用アル故削除セリ又現行商法第二百五十四條ノ規定ハ本案第百八十八條ニ揭クルコトトナレリ現行商法第二百五十五條ハ極メテ細密ノ規定ナリト雖モ淸算手績ニ關スルコトニテ淸算ノ結了スルトキハ當然斯ノ如クナルヘシ以上ノ行爲ニテ結了スルコトトナルヘシト述ヘ本節ノ表題ハ原案ノ儘可決セリ