明治商法(明治32年)

法典調査会 商法委員会議事要録 第27回

参考原資料

備考

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第二十七回商法委員會議事要錄
出席員
箕作麟祥君
田部芳君
高木豐三君
穗積八束君
橫田國臣君
奧田義人君
井上正一君
梅謙次郞君
菊池武夫君
南部甕男君
尾崎三良君
岡野敬次郞君
第百十條 株式總數ノ引受アリタルトキハ發起人ハ各株二付キ第一囘ノ拂込ヲ爲サシムルコトヲ要ス
額面以上ノ價額ヲ以テ株式ヲ發行シタルトキハ其額面ヲ超ユル金額ハ第一囘ノ拂込ト同時ニ之ヲ拂込マシムルコトヲ要ス
(參照)舊一六七、獨二一〇、三項、匈一五一、二項、瑞六一七、二項、伊一三一、一項、一三二、一三三、羅一三二、一項、一三三、一三四、葡一六二、一項三號、白千八百七十三年五月十八日法三一、八項、同千八百八十六年五月二十二日法
岡野君ハ本條ヲ說明シテ曰ク本條ハ既成法典第百六十七條ニ項ニ當ル規定ナリ而シテ百六十七條ト異ル㸃ハ現行法ハ百六十三條並ニ百六十四條ニ於テ先ツ創業總會ヲ開キ定款ヲ定メ設立ノ免許ヲ得テ後ニ各株ノ四分ノ一ヲ拂込マシムトアリ本案ハ反之創立總會召集前ニ各株ノ四分ノ一ヲ拂込シム且亦第百十四條第二項ニ規定アルカ如ク株式中ニ引受人ノナキトキ又ハ拂込ノナキトキハ發起人ヲシテ之ヲ引受又ハ拂込ノ義務ヲ負ハシメタリ此主義タル大體ニ於テ獨逸商法ト其趣旨ヲ同フシ佛蘭西商法トハ其主義ヲ異ラシメタリ佛國ニ於テハ四分ノ一ノ拂込ヲ以テ成立條件トナシ總會ニ於テノ申込ナク或ハ四分ノ一ノ拂込ナキトキハ其會社ハ成立セサルモノトセリ本案ハ此主義ヲ以テ不便ナルモノト認メ株式ノ申込者ニシテ會社ニ損害ヲ與ヘ或ハ拂込ヲ爲ササルトキハ會社ハ不確實ノ地位ニ立ツヲ以テ發起人ヲシテ擔保ノ責ヲ負ハシメ其損害ヲ償ハシメ又ハ株式ノ拂込ヲ爲サシメ以テ會社ヲシテ强固ノ地位ニ置カシムル獨逸主義ヲ探用シタリ既ニ前回ニ於テ說明シタル如ク株式申込ニ付テハ株式申込證ニ自已ノ引受タル株數ヲ記載シテ之ヲ提出シタルトキハ普通ノ契約トシテ觀察スルトキハ申込ナリ哉或ハ承諾ナリ哉ハ一ノ問題ニ屬スヘシ然レトモ本案ハ此場合ニ付キ決定ヲ爲サス余一己ノ考ヲ以テセハ承諾ニ非ストノ考ヲ有セリ本案中「株式總數ノ引受アリタルトキ」トアルハ何人カ株式ヲ引受タルカヲ明カニスル爲ナリ然ルニ若シ百萬圓ノ額ニ付キ五百萬圓ノ申込アリタルトキハ時ノ順序ニ隨ヒテ割當ルカ若クハ抽籤ヲ以テ定ムルカ其方法ハ如何ニスルモ株式總數ハ其前ヨリ確定シ置カサルヘカラス故ニ此㸃ヨリ觀察シテ本案ハ株式總數ノ引受ケトセリ若又之ヲ申込ト爲サンカ縱令其人ニ株式ノ分配ハ爲ササルモ第一回ノ拂込ヲ爲スノ結果ヲ生スルニ至ルヘシ故ニ本案ハ外國ノ例ニ倣ヒ之ヲ引受トシ申込ト爲ササリシナリ而シテ拂込ニ付テハ第百九條第二項ニ規定セルカ如ク必ス株金ノ四分ノ一ハ拂込サルヘカラス決シテ其ヨリ以下ノ額ニ下ルコトヲ得サルナリ次ニ第二項ハ前條第二項四號及ヒ百五條ニ號ニ付キ說明セシ如ク百圓ノ株ヲ百五圓ニテ募集シタルトキハ第一回ノ拂込ハ普通百圓ノ四分ノ一ノ割合卽ニ十五圓トナルモ額面以上ノ發行高五圓ヲモ之ニ併セ第一回ニハ三十圓ノ拂込ヲ爲ササルヘカラス而シテニ十五圓ハ會社ノ資本額ニ充テ殘金五圓ハ資本ヨリモ多キ故之ヲ會社ノ準備金ニ充ツルモノトス他ハ殆ント百五條ト同一ナリ
尾崎君ハ本條ノ修正詭ヲ提出シテ曰ク本案ハ現行法ニ於ケルカ如ク創業總會ヲ開キ之カ責任アルモノヲ選ミ定款ヲ定メタル上ニテ第一回ノ拂込ヲ爲サシムル趣旨ニ改メラレンコトヲ望ムト云フニ在リ然レトモ贊成者ナクシテ消滅セリ
第百十一條 各株ニ付キ第一囘ノ拂込アリタルトキハ發起人ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スルコトヲ要ス
創立總會ニハ株式引受人ノ半數以上ニシテ資本ノ半額以上ヲ引受ケタル者出席シ其議決權ノ過半數ヲ以テ一切ノ決議ヲ爲ス
(參照)舊一六三、一六四、二項、佛千八百六十七年七月二十四日法四、三〇、獨二一〇a、匈一五四、一項、一五五、瑞六一八、六一九、三項、四項、伊一三四、一項、羅一三五、一項、葡一六四、五項乃至七項、白千八百七十三年五月十八日法三一、九項、三二、二項
岡野君ハ本條ヲ說明シテ曰ク創立總會ヲ開ク趣旨ハ第百十三條並ニ第百十四條ニ規定シタル場合ノ伏線トモ謂フヘキモノナリ而シテ前條ニ於テ既ニ說明セル如ク會社ハ創立總會ヲ開ク前ニ株式總數ノ引受アリシコト並ニ各株ニ付キ株金ノ四分ノ一ノ拂込ノ濟ミシコトヲ要ス創立總會ハ此等ノ㸃ヲ調査セサルヘカラス、大體上會社ノ發起並ニ設立ノ手續ハ如何ニセシヤトノコトヲ調査スルハ總會ノ目的ナリ右創立總會ノ議決ヲ經サレハ會社ハ設立セサル故現行法ト同一ノ精神ヲ採リ株主ヲ募集シタルトキハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スルコトヲ要ストノ規定ヲ設ケタリ次ニ現行法ニ於テハ創業總會ノ名稱アルモ本案ハ之ヲ改メテ創立總會トセリ他ナシ現行法第百七十條ニ設立ノ免許ヲ得タル後遲クトモ一ケ年內ニ登記ヲ受ケサルトキハ其免許ハ效力ヲ失フト在リテ次ニ第八十一條及ヒ第八十二條ノ規定ハ株式會社ニモ亦之ヲ適用スト在リ次ニ第八十一條前段ニハ會社ハ登記前ニ事業ニ着手スルコトヲ得ストアリ故ニ登記ヲセサル以上ハ會社ハ事業ヲ始ムルコトヲ得サルヘシ本案第四十條ニ於テモ現行法第八十一條ト同一ノ趣旨ヲ採リ會社ハ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ爲スニ非サレハ事業ニ着手スルコトヲ得ストノ規定ヲ設ケ登記ヲセサル以上ハ事業ニ着手セシメス其故ニ創業總會ナルモノハ事業ヲ創ムルカ如キ感ヲ生シ穩カナラス以之創業ナル文字ヲ改メ創立トセリ此創立總會ナルモノハ株主ヲ募集シタルトキ會社ヲ成立セシムル故本案ノ百十三條及ヒ百十四條ノ兩條ニ規定セル事項ノ結了セル後會社カ成立スル故創立總會ナルモノハ會社成立ノ一要件ナルヲ以テ本條ヲ設ケタルナリ外國ニ於テモ會社成立ノ必要條件トセリ卽チ會社ノ乙ルナ烏烏ー這上ルニ必要ナルカ故ニ其文字ヲ用ヒタリ第二項ハ現行
法第百六十三條ト大體ニ於テ同一ナリ而シテ右創立總會アリテ始メテ會社カ設立セラルル重大ノモノナル故會社ノ設立前ニ在リテハ隨分發起人ハ會社ノ內部ニ勢力アリテ創立總會ヲ發起人カ開クニ當リテハ自己ノ利益ヲ計ルノ虞アルヲ以テ會社ハ重キ決議ヲ採ラサルヘカラス現行法ノ精神モ之ト同シク株主ノ頭數ノミニテハ爲メニ大株主ハ壓倒セラルルヲ以テ株式引受人ノ半數以上ニシテ且資本ノ半額以上ヲ引受ケタルモノトセリ唯現行法第百六十三條ト異ル㸃ハ「定款ヲ確定ス」トアルモ定款ノ議定ハ創立總會ノ權限外ノ行爲ナリ第百四條ニ於テ定款ヲ作リシ後本定款ニ爲スハ第百四條並ニ第百五條ノ精神ト異ル故本案ニ於テハ之ヲ採用セサリシナリ、ト述ヘ本條ハ原案ニ決セリ
第百十二條 創立總會ニ於テハ取締役及ヒ監査役ヲ選任スルコトヲ要ス
(參照)舊一六五、佛千八百六十七年七月二十四日法二五、蘭四四、獨二〇九f、匈一五四、瑞六一六、伊一三四、二項四號、五號、羅一三五、二項四號、五號、葡一一四、一六四、三項、白千八百七十三年五月十八日法四五、五四
岡野君ハ本條ヲ說明シテ曰ク此第百十二條ハ現行法ノ百六十五條ト其精神ヲ同ウス此創立總會ニ於テ取締役及ヒ監査役ヲ選任スト定メシハ次條ニ於テ定メタル事項ヲ調査シテ創立總會ニ報吿スル爲メ其必要ヲ生スヘシ是他ナシ既ニ述ヘタルカ如ク此場合ハ各發起人間ニ設立セシ會社トハ其性質ヲ異ニシ發起人ト會社トハ之ヲ別チタルハ素ヨリ會社ノ物ハ發起人ノ物ニ非サレハナリ故ニ會社ノ役員ハ自己ノ物ニ非サルモノニ付キ代表スルコトトナルヘシ而シテ以上ノ取締役並ニ監査役ニハ之ニ付キ何等ノ制限ナキハ妥當ヲ鴃クノ虞アリ加之普通ノ場合ハ發起人カ監査役トナルコト多シ發起人カ取締役トナリ會社ノ事務ヲ採リシトキハ此場合ハ發起人ノ責任トナリテ宜シキモ取締役並ニ監査役ハ報吿書ヲ作ルヲ以テ舊發起人カ取締役若クハ監査役トナリシトキハ報吿書ノ正シカラサルコト厦々アルヲ以テ第百十三條ニ項ニ於テ取締役又ハ監査役カ發起人中ヨリ選任セラレタルトキハ創立總會ニ於テ特ニ檢査役ヲ選任シ之ニ代ハリテ前項ノ調査及ヒ報吿ヲ爲サシムルコトヲ得トノ規定ヲ設ケ以テ之カ弊害ナカラシメタリト述ヘ原案ニ決セリ
第百十三條 取締役及ヒ監査役ハ左ニ揭ケタル事項ヲ調査シ之ヲ創立總會ニ報吿スルコトヲ要ス
一 株式總數ノ引受アリタルヤ否ヤ
二 各株ニ付キ第一囘ノ拂込アリタルヤ否ヤ
三 第百五條第三號乃至第五號ニ揭ケタル事項ノ正當ナルヤ否ヤ
取締役又ハ監査役カ發起人中ヨリ選任セラレタルトキハ創立總會ハ特ニ檢査役ヲ選任シ之ニ代ハリテ前項ノ調査及ヒ報吿ヲ爲サシムルコトヲ得
(參照)舊一六四、一項、佛千八百六十七年七月二十四日法四、二四、獨二〇九g、二〇九h、匈一五四、一項、一五六、瑞六一八、六一九、二項、伊一三四、二項、一三五、羅一三五、二項、一三六、葡一六四、五項、白千八百七十三年五月十八日法三二、一項
岡野君ノ說明ニ目ク株式會社ノ成立ニ付テハ株式總數ノ引受ケ並ニ各株ノ四分ノ一拂込カ極メテ必要ナリ此事柄ナキトキハ會社ハ成立セサルニ至ルヘシ乍併發起人カ株主ヲ募集シタルトキハ時トシテハ總株ニ付キ引受ナキコトアリ又發起人ナルモノカ各株ニ付キ四分ノ一ノ拂込ヲセサルコトモアリ元來發起人ハ會社ヲ設立セントスル人故事實上株式ノ引受ナキニ引受アリトシ或ハ四分ノ一ノ拂込カ事實濟マサルニ濟シト云フヤモ計ラレス以上ニ個ノ場合ハ株式會社設立ニ影響ヲ及ホス最モ重大ノ事項ナリ故ニ右等ノコトニ付テハ專ラ發起人ヲ信認シテ之一ニ任スルヲ得ス亦會社ノ設立ハ法律上ノ要件ノミナラス株式會社カ十分ノ働ヲ爲スニ付キ此ニ個ノ要件ハ必要ナリ次ニ百五條三號乃至五號ノ場合ヲ揭ケシハ發起人カ此事項ヲ名義トシテ不正ノ利益ヲ得ルコト屢アリ加之此事項ハ會社ノ設立ニ付キ重大ナル關係ヲ有スルカ故ニ本條第一項中ニ加ヘタリ而シテ以上ノ理由ニ因リ右ニ揭ケシ三個ノ事項ハ取締役及ヒ監査役ヲシテ調査ヲ爲シ創立總會ニ報吿セシムルコトトセリ而シテ本條第一項ハ次ノ第百十四條ト相俟チテ其效果ヲ顯ハスモノニシテ第一號ニ付キ取締役並ニ監査役カ調査ヲ爲シ株式總數ノ引受カ未タアラサルトキハ取締役ヲシテ之ヲ引受ケシメ又第二號ニ於ケル各株ノ四分ノ一ヲ拂込サルトキハ是亦取締役ヲシテ之カ引受ヲ爲サシム次ニ第三號ニ於ケル第百五條ニ號乃至五號ニ付テハ第百十四條第一項ニ定メタル如ク之ヲ削除又ハ變更セシムルコトヲ得ヘシ此場合ニ付テハ發起人ハ最モ多ク不當ノ利得ヲ行フ故嚴重ノ規定ヲ設ケタルナリ第二項ハ創立總會カ發起人ニ信用ヲ措キ其中ヨリ取締役又ハ監査役ヲ選任シタルトキハ總會ハ特ニ檢査役ヲ選任シ之ニ代リテ前項ニ揭ケタル事項ヲ調査セシム而シテ此場合罰ニニ人ノ監査役アリシトキ其中發起人ハ一人ナリシトキハ三人ノ檢査役ヲ選フノ必要ナシ唯一人檢査役カ發起人ニ代レハ足レリ取締役並ニ監査役ニ就テハ法律上幾何ノ商行爲ヲ爲シ得ルヤ又其資格ハ如何トノコトハ詳細ニ取締役監査役ノ章ニ於テ說明スヘシ
井上君ハ本條第二項ニ付キ協議シテ曰クニ項ノ取締役並ニ監査役カ發起人中ヨリ選任セラレシトキ若シ其中ノ一人ノミ發起人ナルトキハ檢査役一人ノミヲ選任スルモ數人カ發起人ナルトキモ尙ホ一人ノ檢査役ニテ足ルヤ本文ノ儘ニテハ判然セサルカ如シ少シク改ムルノへ必要ハナキヤト述ヘ梅君ハ之ニ答ヘテ曰ク畢竟檢査役ハ取締役監査役ノ數ニ相比例スルモノナリ發起人カ一人若クハニ人取締役若クハ監査役ニ選マレシトキハ檢査役モ亦之ニ比例シテ一人若クハニ人選任スルモノトス孰レニセヨ此㸃ハ整理迄ニ考ヘ置カントノコトヲ述ヘ起草者モ考フトノコトニテ其他ハ原案ニ決セリ
第百十四條 創立總會ニ於テ第百五條第三號乃至第五號二揭タル事項ヲ不當ト認メタルトキハ之ヲ削除又ハ變更スルコトヲ得
創立總會ニ於テ引受ナキ株式又ハ第一囘ノ拂込ノ未濟ナル株式アルコトヲ發見シタルトキハ發起人ハ其株式ヲ引受ケ又ハ其拂込ミヲ爲スコトヲ要ス
前二項ノ規定ハ發起人ニ對スル損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
(參照)舊一六四、一項、一七一、一七二、佛千八百六十七年七月二十四日法四、二四、四二、同千八百九十三年八月一日法五、獨二一三a、匈一五二、一五六、瑞六一九、二項、六七一、二號、伊一二六、一三四、二項一號、三號、一三八、羅一二七、一三五、二項一號、三號、一四〇、白千八百七十三年五月十八日法三四、同千八百八十六年五月二十二日法
本條第一項ノ「揭タル」ハ「揭ケタル」ノ訥訣第二項ハ「其拂込ミ」ノ「ミ」ハ衍字ナリ
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ノ精神ハ殆ント株式會社設立ノ骨子トモ云フヘキモノナリ而シテ百五條三號乃至五號ニ揭ケタル事項ハ既ニ前條ニテ說明セルカ如ク發起人カ不正ノ行爲ヲ爲スコト多クアリ乍併創立總會ニ於テ發起人ニ信用ヲ置キ之ヲ役員ニ選任シタルトキハ本條ノ制裁ナキニ於テハ前條ノ規定タルヤ單ン一ノ形式タルニ止マルヘシ若シ發起人ニシテ不當ノ利得アルコト明白ナレハ之ヲ豫防スルノ方法ヲ要スヘシ歐洲各國ニ於テモ此場合ハ多クアリテ隨テ亦我國ニモ此場合多クアリテ有價其他金錢ニ在ラサルモノヲ出資ト爲シ之ヲ金錢一ニ咼ク見積リテ株式ニ割當ルコトハ通常アリ得ヘキコトナリ其故ニ本條第一項ニ於テ創立總會ニ全權ヲ附與シ不當ト認メタルトキハ削除或ハ變更スルコトヲ得セシメタリ第二項ハ前條第一號並ニ第二號ト對照シテ發起人カ株式總數ノ引受ナキトキ又ハ各株ニ付キ發起人カ第一回ノ拂込アリタリト云フモ其實拂込ナキトキハ發起人ヲシテ拂込サルモノヲ拂込シムルコトトシ其責任ヲ重クセリ如斯ナルトキ投機ノ材料ヲ斷ツニ至ルヘシ若シ第百十三條第一號乃至第三號ノ事項ヨリ發起人カ株式會社ニ損害ヲ與ヘタルトキハ本條第一項及ヒ第二項ノ責任ヲ負ハシムルノミナラス併セテ損害賠償ヲモ爲サシムルコトトセリト述ヘ其後ニ一ニノ質問アリシカ本案ハ異議ナクシテ確定セリ
第百十五條 株式引受人カ第一囘ノ拂込ヲ爲シタル後六个月內ニ發起人カ創立總會ヲ招集セサルトキハ其株式引受人ハ其引受ヲ取消シ拂込ミタル金額ノ返還ヲ請求スルコトヲ得
(參照)獨二〇九e、二項四號、匈一五四、二項、伊九九、四項
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ハ既成法典ニナシ株式引受人カ第一回ノ拂込卽四分ノ一ノ拂込ヲ爲シテ其後何時迄モ經過シテ創立總會ヲ開カス其他設立ノ手續ハ何時迄經過スルモ爲ササルハ經濟上株式引受人ニ採リテ不利益ナリ故ニ斯カル場合ハ六个月間內ニ拂込タル金圓ヲ取戾サシムルコトトセリ換言セハ會社ハ成立セサルモノトナルヘシ以上ノ趣旨ニテ本條ハ設クルコトトセリト述ヘ別段修正詭ノ提出者モナク原案ノ儘確定セリ
第百十六條 會社ハ發起人カ株式ノ總數ヲ引受ケタルトキハ第百七條ニ定メタル調査終了ノ日ヨリ又發起人カ株式ノ總數ヲ引受ケサリシトキハ創立總會終結ノ日ヨリ二週間內ニ其本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス
一 第百四條第一號乃至第四號ニ揭ケタル事項
二 本店及ヒ支店
三 設立ノ年月日
四 存立時期ヲ定メタルトキハ其時期
五 各株ニ付キ拂込ミタル金額
六 取締役及ヒ監査役ノ氏名、住所
第四十五條第二項及ヒ第四十六條ノ規定ハ株式會社ニ之ヲ準用ス
(參照)舊一六八、一六九、佛千八百六十七年七月二十四日法五五、六〇、蘭三八、獨二一〇、二一〇c、二一二、匈一五八、一五九、瑞六二一、六二二、六二四、伊九〇乃至九二、九四乃至九七、西二〇、二一、羅九一乃至九三、九五乃至九七、葡四九、一六四、九項、白千八百七十三年五月十八日法九、英千八百六十二年八月七日法一七乃至一九
岡野君ノ說明ニ曰ク本條ハ別段說明ヲ要セス是ニ付キ唯其要㸃ノミヲ述ン本條ハ會社ノ設立ヲ分チテニ個トシ第百六條ニ於ケル發起人カ株式ノ總數ヲ引受ケタルトキハ會社ハ其場合ニ成立スルモノトシ又發起人カ株式ヲ引受サレハ廣ク株式ヲ募集シ創立總會ヲ開キ其總會ノ終了セシトキ成立スルモノトス而シテ以上ニ種ノ場合ニ於テ會社ノ成立セシトキヨリ二週間內ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ本條一號乃至六號ノ事項ヲ登記セサルヘカラス而シテ其登記ハ株式會社ノ規定ニ付テハ極メテ必要ニシテ現ニ本案百ニ十條ニ於テモ株劵ハ第百十六條第一項ニ定メタル登記ヲ爲シタル後ニ非サレハ之ヲ發行スルコトヲ得ストノ規定アル程ニテ其他會社ノ總則ノ所ニ於テモ前述セシ第四十五條ノ會社ノ本店又ハ支店ノ所在地ニテ登記セサルヘカラス又會社カ四十五條第一項ニ揭ケタル事項ニ變更ヲ生シタルトキハ本店並ニ支店ノ所在地ニ於テ登記セサルヘカラストアリテ既ニ總則ニテ株式會社ノ總則ニ重キヲ置ケリ期間ノコトハ合名會社ノ設立ノ第四十五條第一項ト同シク之ヲ二週間トセリ而シテ本店並ニ支店ニテ登記スルコトトセリ登記スヘキ事項ハ現行法第百六十八條ニ揭ケルモノト異ラス唯政府ノ免許ヲ廢セシ故其場合カ登記事項ニ入ルノミナリ第二項ハ合名會社ノ所ニ設ケシ第四十五條ニ項及ヒ第四十六條ヲ本條ニ準用スル場合ナリ卽會社カ設立ノ後支店ヲ設ケタルトキハ本店ト均シク一週間內ニ登記スヘキコトトセリ是合名會社ト等シク本條ヲ設ケタル所以ナリト述ヘ終ニ原案ニ決セリ