第二十四回商法委員會議事要錄
明治廿九年九月十八日午後三時五十五分開議
出席員
箕作麟祥君
山田喜之助君
田部芳君
高木豐三君
穗積八束君
奧田義人君
橫田國臣君
井上正一君
都筑馨六君
富井政章君
三浦安君
梅謙次郞君
重岡薰五郞君
南部甕男君
西源四郞君
岡野敬次郞君
第三章 合資會社
(參照)舊一三六乃至一五三、佛二三乃至二八、蘭一九乃至二一、獨一五〇乃至一七二、匈一二五乃至一四六、瑞五九〇乃至六一一、伊七六、二號、一一四乃至一一八、二〇八、二〇九、西一二二、二號、一四五乃至一五〇、羅七七、二號、一一四乃至一一八、二一〇、二一一、葡二〇五、四項、一九九乃至二〇四、白千八百七十三年五月十八日法一八乃至二五
田部君ノ說明ニ曰ク本章ノ標題ニ付テハ別ニ說明スルノ必要ナシト雖モ玆ニ舊商法合資會社ノ規定中ヨリ削除セシ各條ニ付キ略說スヘシ元來舊商法ニ於テハ合資會社ヲ以テ幾分力株式會社ノ如ク見タルモノノ如シ現ニ「ロエスレル」氏ノ商法注釋書ニ依リ考フルモ亦同一ニ解セラル然ルニ右ノ主義タルヤ歐洲大陸ニ行ハルル普通ノ合資會社ト異ナリ恰モ右ニ於ケル株式會社ト相似タルモノナリト信スルヲ以テ本案ハ舊商法ノ主義ヲ改メ右歐洲大陸ニ於ケル合資會社ノ主義ニ倣ヒ次ノ第八十九條ニ於テ合資會社ハ有限責任社員ト無限責任社員トノニ種ヨリ組織スヘキモノトセリ從テ其結果舊商法第百四十八條、第百四十九條、第百五十一條及ヒ第百五十二條ノ規定ヲ削除シタリ蓋シ是等數個條ヲ削除シタル理由ハ彼我ノ規定ヲ對照スルトキハ自ラ明ラカナルヘシ又舊商法第百五十三條ノ規定ヲ本章中ニ採用セサリシ所以ハ他ナシ右第五十三條ニ類スル規定ハ既ニ前章卽チ合名會社ノ規定中ニ於テ之ヲ設ケタレハ其規定ヲ本章中ニ準用スヘキヲ以テナリト
本章ノ標題ハ原按ニ可決シ次條ニ移レリ
第八十九條 合資會社ハ有限責任社員ト無限責任社員トヲ以テ之ヲ組織ス
(參照)舊一三六、佛二三、蘭一九、獨一五〇、匈一二五、瑞五九〇、伊七六、二號、西一二二、二號、羅七七、二號、葡一〇五、四項、二〇〇、白千八百七十三年五月十八日法一八
田部君ノ說明ニ曰ク本條ハ舊商法第百三十六條ノ規定ニ改正ヲ加ヘタルモノナリ然リ而シテ本條ハ本章中ニ於テ最モ重要ナル個條ニシテ實ニ本條有ツテ初テ合資會社ノ性質ヲ知リ得ヘキモノナリ既ニ本條ノ法文ニ示シタル如ク合資會社ニハ必ス有限責任社員ト無限責任トノニ種ヲ必要トスルモノニシテ此㸃ニ於テ大ニ舊商法ノ主義ヲ改正シタリ元來合資會社ナルモノハ各會社ノ長短ヲ選擇シタルモノニシテ畢竟合名會社ノミニテハ不便ナルヲ以テ無限責任社員ト共ニ有限責任社員ヲ認メタルモノナリ而シテ又此有限責任社員タル者ハ最モニ金錢ヲ以テ出資ト爲スヲ目的トスル者ナリ要スルニ本按ノ主義ハ既ニ述ヘタル如ク歐洲大陸ノ諸國ニ於ケル合資會社ト同一ノ主義トナリ
重岡君ハ本條ノ規定ヲ批難シテ曰ク本條ノ規定ニ因レハ合資會社ハ有限責任社員ト無限責任社員トヲ以テ組織スルノ主義ナリト雖モ我國從來商業社會ノ狀體ヲ觀察スルトキハ合資會社ノ設立ニハ槪子無限責任社員ノ加入スルコト之レナクシテ單ニ有限責任社員ノミナルカ如シ果シテ然レハ本按ノ主義ハ現時ノ狀體ト相反スルヲ以テ不都合ナリト
右ニ對シ田部君辯シテ曰ク今日既ニ有限責任社員ノミヲ以テ設立シタル合資會社ニ付テハ本法施行後如何ニスヘキヤハ他日施行條例ニ因リ確定スヘキヲ以テ別問題ナリト雖モ只今重岡君ハ今日實際合資會社ハ有限責任社員ノミヲ以テ組織シタルモノ多數ナルヲ以テ本按ノ如ク規定セハ却テ實際ト相反スル爲メ不都合ナリト批難セラレタルカ一體舊商法合資會社ノ規定ハ變體ニシテ不可ナルノミナラス想フニ實際今日株式會社設立ノ面倒ナルヨリ從テ合資會社ノ設立者增加セシモノナリト信スルヲ以テ必スシモ有限責任社員ノミヲ以テ設立スルノ理由ヲ發見セサルナリ且ツ本案ノ如クスルトキハ實際今日合資會社ニシテ其社員ノ數多ク殆ト株式會社ニ類スルモノノ如キハ本法施行後ハ株式合資會社ト爲スコトヲ得ルヲ以テ頗ル便利ナルヘシ元來極テ小ナル會社ヲ組織スルニ有限責任社員ノミヲ以テスルハ變則ニシテ其當ヲ得タルモノニ非ラサレハ本按施行後ハ其數ヲ減センコトヲ希望スルモノナリトロ岡野君亦辯シテ曰ク舊商法合資會社ニ關スル全體ノ規定ヲ通觀スルトキハ重岡君ノ解釋果シテ其當ヲ得タルモノナルヤ余ハ反對ニ之ヲ重岡君ニ質サント欲スルモノナリ何トナレハ商法實施前ニ於テハ其第百三十八條第五號ニ「業務擔當社員アルトキハ其氏名」トアリタリ然ルニ右實施ノ際「業務擔當社員ノ氏名」ト改マレリ今此規定ニ付キ考フルニ右ノ業務擔當社員ハ必ス存在スヘキモノナルコト疑ナカルヘシ果シテ每ニ存在スヘキモノナランカ抑此業務擔當社員ナル者ハ無限責任社員タルヘキ者ナレハ重岡君ノ說ハ合資會社ノ規定中單ニ第百三十八條第四號ノ規定ノミニ重キヲ置キ全體ヲ通觀セサルモノト云ハサル可ラスト
右ノ答辯ニ對シ重岡君亦論シテ曰ク余ハ固ヨリ舊商法第百三十八條第四號ニ「無限責任社員アルトキハ其氏名」トアルヲ以テ此規定ニ重ヲ置キ舊商法ノ精神ヲ觀察スルヲ以テ舊商法ニ於テハ有限責任社員ヲ以テ主ト爲スコトヲ疑ハサルモノナリ殊ニ況ンヤ實際商業社會ニ於テ有限責任社員ヲ以テ合資會社ヲ組織スルモノ多キニ於テヲヤト
田部君亦辯シテ曰ク重岡君ハ今日實際合資會社ハ有限責任社員ヲ以テ組織セルモノノ如ク論セラルルト雖モ余カ司法省ニ於テ取調ヘタル所ニヨレハ必スシモ然ラスシテ却テ有限責任社員ト無限責任社員トノニ種ヲ以テ組織スルモノ多キカ如シ何レニシテモ本按ノ如クスル方可ナリト
梅君亦重岡君ニ對シ辯シテ曰ク舊商法實施前ノ規定ニ因レハ有限責任社員ノミヲ以テ合資會社ヲ組織スルコトヲ得ヘカリシヲ以テ頗ル議論アリタリ何トナレハ實際株式會社ノ設立ヲ嫌忌スル者ハ何レモ合資會社ヲ設立スルニ至ルノ傾向ヲ來シ頗ル不都合ナレハナリ故ニ實際東京商業會議所ノ如キモ合資會社ハ有限責任社員ト無限責任社員トノニ種ヨリ組織スヘキモノナリトノ意見ヲ提出セシ位ナリ余モ亦商法實施ノ際右商業會議所ノ意見ヲ贊成シタリト雖モ如何セン帝國議會ニ於テ所謂無限責任社員ヲ以テ不必要トセラレタリ然レトモ右ニ抅ハラス又一方ニ於テハ業務擔當社員ヲ以テ必要ナリトシ是等ノ主義ヲ以テ舊商法ヲ改メタリト雖モ畢竟右ノ業務擔當社員タルヤ無限ノ責任ヲ負ヘル者ナルヲ以テ唯單ニ人ヲ異ニスルノミニテ何人カ實際無限ノ責任ヲ負フノ㸃ニ至テハ同一ナリ然ラハ則チ現行商法ニ於テハ無限責任社員ノ必要ナルコトヲ表面上ニ現ハササルニ止リ其精神ニ至テハ本按ト同一ナリト言ハサル可ラスト
本條ハ重岡君ノ批難說アリタルノミニテ原按ニ可決シ次條ニ移レリ
第九十條 合資會社ニハ本章ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外合名會社ニ關スル規定ヲ準用ス
(參照)舊一三七、獨一五七、一六一、一項、一六九、一七〇、二項、一七一、三項、一七二、匈一三二、一三六、一項、一四三、一四四、二項、一四五、三項、一四六、瑞五九四、六〇七、一項、六一一、一項、伊一一六、西一四八、二項、羅一一六、葡二〇一
田部君ノ說明ニ曰ク本條ハ舊商法第百三十七條ノ規定ト同一ナリ要スルニ本按ニ所謂合資會社ハ前條ニ規定セシ如ク有限責任社員ノ外ニ無限責任社員ヲ必要ナリトスルヲ以テ其無限責任社員ニ付テハ合名會社ノ規定ヲ準用シテ可ナレハ本章ニ於テハ單ニ有限責任社員ニ必要ナル事項ノミヲ規定スルヲ以テ足レリトセリト
本條ハ原案ニ可決シ次條ニ移レリ
第九十一條 合資會社ノ定款ニハ第四十四條ニ揭ケタル事項ノ外各社員ノ責任ノ有限又ハ無限ナルコトヲ記載スルコトヲ要ス
(參照)伊八八、羅八九、葡一一四
田部君ノ說明ニ曰ク本案第四十四條ニ於テ合名會社ノ定款ニ記載スヘキ事項ヲ定メタリ然ルニ合資會社ト雖モ目的、稱號等ノ如キ定款ニ記載スルノ必要アルヤ固ヨリ言ヲ待タス故ニ右第四十四條ノ規定ヲ玆ニ準用シ唯補足スルニ各社員ノ有限又ハ無限ナルコトヲ記載スルノ一事ヲ以テセリト
本條ハ原按ニ可決シテ次條ニ移レリ
第九十二條 合資會社ハ定款ヲ作リタル日ヨリ二週間內ニ其本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ第四十五條第一項ニ揭ケタル事項ノ外各社員ノ責任ノ有限又ハ無限ナルコトヲ登記スルコトヲ要ス
(參照)舊一三八、佛千八百六十七年七月二十四日法五五乃至六二、蘭二三、二四、二六乃至二八、獨一五一乃至一五五、匈一二六乃至一三〇、瑞五九一、五九二、伊九〇、九二、九三、九六、西一一九、羅九一、九三、九四、九六、葡四九、一項五號、一四五、白千八百七十三年五月十八日法六乃至八、一〇
田部君ノ說明ニ曰ク本條モ亦前條ト相似タルモノニシテ登記スヘキ事項ハ合名會社ニ關シ本按第四十五條第一項ニ於テ既ニ規定シタルヲ以テ其規定ヲ玆ニ準用シ唯合資會社ニ限リ特ニ必要ナル事項卽チ各社員ノ責任ノ有限又ハ無限ナルコトヲ登記スヘキ旨ヲ補足セリ又舊商法第百三十八條ニ於テハ其第二號ニ於テ會社資本ノ總額ヲ登記スヘキモノトセリ然レトモ本按ニ於テハ既ニ述ヘタル如ク第四十五條ヲ玆ニ準用スルヲ以テ同條第一項第五號ニ於テ第三者ニ知ラシムルノ必要アル金錢其他ノ財產ヲ目的トスル出資ノ價格ヲ登記スヘキモノト爲シタル以上ハ特ニ其必要ヲ見サレハナリ又舊商法ニ於テハ業務擔當社員ノ氏名ヲ登記スヘキ旨ヲ揭ケタリト雖モ本按ニ於テハ無限責任社員ニ付テハ後ノ第九十九條ニ明文アルヲ以テ自ラ明カナルヘク又特ニ會社ヲ代表スヘキ社員ヲ定メタルトキハ前ノ第四十五條第六號ノ規定ニ依リ明カナルヲ以テ特ニ規定スルノ必要ヲ見スト本條ハ原按ニ可決シテ次條ニ移レリ
第九十三條 有限責任社員ハ金錢其他ノ財產ノミヲ以テ出資ノ目的ト爲スコトヲ得
(參照)舊一三六、佛二六、蘭一九、二〇、獨一六五、匈一三九、瑞六〇二、伊一一七、西一四八、三項、羅一一七、葡二〇四、白千八百七十三年五月十八日法二一
田部君ノ說明ニ曰ク有限責任社員ノ出資ニ付テハ外國ノ立法例ニ因レハ金錢ト財產トニ限ラサルモノ之レアリト雖モ合資會社ノ性質上ヨリ觀察スルトキハ却テ金錢ト財產トニ限ルヲ以テ至當ナリト信ス何トナレハ有限責任社員タル者カ合資會社ニ入社スルヤ畢竟金錢ヲ以テ出資ト爲スヲ主眼トスルモノナレハナリ殊ニ況ンヤ無限責任社員ト雖モ實際亦斯クノ如ク思意スルニ於テヲヤ是本按ニ於テ本條ノ如ク規定シタル所以ナリト
本條ハ異議ナク原按ニ可決シ次條ニ移レリ
第九十四條 各無限責任社員ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ會社ノ業務ヲ執行スル權利ヲ有シ義務ヲ負フ
*無限責任社員數人アルトキハ會社ノ業務執行ハ其過半數ヲ以テ之ヲ決ス
(參照)舊一四二、佛二七、蘭二〇、二項、獨一五八、匈一三三、瑞五九五、伊一一四、一項、一一八、西一四八、一項、四項、羅一一四、一項、一一八、葡二〇三、白千八百七十三年五月十八日法二二
田部君ノ說明ニ曰ク有限責任社員ハ前條ニ於テ說明シタル如ク全ク金錢ヲ以テ出資ト爲スヲ主眼トスル者ナレハ其目的ヲ以テ入社スルモノト看做スモ亦至當ナリト言ハサル可ラス然ラハ則チ合資會社ノ業務ヲ執行スル權利ヲ有シ義務ヲ負フ者ハ有限責任社員ニ非ラスシテ無限責任社員タルヘキコト當然ナリ是レ本條第一項ノ如キ規定ヲ設ケタル所以ナリ次ニ第二項ノ規定ハ果シテ無限責任社員カ業務ヲ執行スヘキモノト爲ス以上ハ其社員數人アル場合ニ當リ實際業務執行上可否ヲ決スルノ標準必要ナルヲ以テ卽チ其過半數ヲ以テ決スヘキモノト定メタルニ過キスト
本條ハ「有限責任社員ハ業務ノ執行ヲ爲スコトヲ得ス」トノ意味ヲ明白ニスル爲メ起草委員ニ於テ再考スルコトニ議決シ次條ニ移レリ
第九十五條 支配人ノ選任及ヒ解任ハ無限責任社員ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
(參照)舊九一、一三七、獨一〇四、一五七、匈八二、一三二、瑞五六二、五九八、二項
田部君ノ說明ニ曰ク支配人ヲ選任又ハ解任スルハ廣ク言フトキハ業務執行ノ一部ナルヲ以テ無限責任社員ノ爲スヘキ事柄ナリ故ニ本案ニ於テハ本條ノ如ク規定セリ然レトモ其無限責任社員數人アルトキハ其決定ノ方法如何ニシテ可ナルヤノ問題起ルヲ以テ卽チ法文ニ示スカ如ク其過半數ヲ以テ決定スヘキモノトシ其問題ヲ決尸シタルニ過キスト
本條ハ原按ニ可決シ次條ニ移レリ
第九十六條 有限責任社員ハ會社ノ財產目錄及ヒ貸借對照表ノ閲覽ヲ求メ且其當否ヲ調査スル爲メ會社ノ業務及ヒ會社財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ有限責任社員ノ請求ニ因リ何時ニテモ會社ノ業務及ヒ會社財產ノ狀況ノ檢査ヲ許スコトヲ得
(參照)舊一五〇、佛二八、二項、獨一六〇、匈一三五、瑞五四一、伊一一八、三項、西一五〇、羅一一八、三項、白千八百七十三年五月十八日法二二、二項
田部君ノ說明ニ曰ク本條ハ舊商法第百五十條ヲ削除シ之ニ代フル爲メニ設ケタルモノナリ要スルニ有限責任社員ト雖モ苟モ社員タル以上ハ幾分ノ監督權ヲ與ヘサル可ラスト信スルヲ以テ特ニ本條ノ必要ヲ感シタリ然レトモ元來無限責任社員ハ重大ナル責任ヲ負擔スルモノナレハ從テ祕密ニ屬スルコトアルヘシ然ルニ猥リニ有限責任社員ニ與フルニ廣キ監督權ヲ以テセンカ爲メニ無限責任社員ハ其祕密ニ屬スル事柄タリトモ示ササル可ラサルニ至リ穩カナラサルヲ以テ本案ニ於テハ此㸃ニ付キ特ニ注意ヲ加ヘ卽チ本條ノ法文ニ示スカ如ク原則トシテハ有限責任社員ニ與フルニ財產目錄ト貸借對照表ノ閱覽ヲ請求スルコトヲ得ルノ權利ヲ以テシ而シテ右ノ閱覽ヲ爲スニ當リ財產目錄又ハ貸借對照表ノ當否ヲ發見シタルトキハ其疑㸃ヲ調査スル爲メ會社ノ業務及ヒ會社財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得ルノ權利ヲ與ヘタリ尤モ右ノ外有限責任社員ニハ毫モ監督權ナキヤト云フニ第二項ニ於テ規定シタル如ク重要ナル事由アルトキハ裁判所ニ訴ヘ其許可ヲ得テ會社ノ業務及ヒ財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得ヘシト雖モ原則トシテハ第一項ノ權利ヲ有スルニ過キサルナリト
高木君ハ本條第一項末段ノ規定ト第二項ノ規定トハ殆ト同一ノ場合ヲ規定シタルモノナレハ特ニ第一項ノ末段ヲ設クルノ必要ナシトノ理由ヲ以テ右第一項ヲ「有限責任社員ハ會社ノ財產目錄及ヒ貸借對照表ノ閱覽ヲ求メ且其當否ヲ調査スルコトヲ得」トシ其末段ノ規定ヲ削除スルノ修正按ヲ提出セラレタリ
山田君ハ本條第一項ヲ削除スルノ說ヲ提出シテ曰ク財產目錄及ヒ貸借對照表ノ閱覽ヲ其作成シタル當時卽チ一年一度ノミニ限リ許スハ穩當ナラサルヲ以テ寧ロ第一項ヲ削除スルニ若カスト
右ニ對シ岡野君辯シテ曰ク余ハ本條第一項ノ規定ニ付テハ最モニ檢査ニ重キヲ置ケリ然ルニ山田君ハ閱覽ニ重キヲ置カレタリト雖モ畢竟閱覽ハ厦之ヲ許ストモ無限責任社員ニ於テ實際迷惑ヲ感スルコト少ナカルヘシ然レトモ檢査ニ至テハ之ニ反シ若シ猥リニ之ヲ許サンカ爲メニ無限責任社員ノ困難ヲ感スルコト大ナルヘシ是第一項ノ必要ナル所以ナリト
田部君亦辯シテ曰ク元來有限責任社員ハ其性質トシテ每ニ會社ノ內部ニ關涉スヘキモノニ非ラス何トナレハ唯金錢ノ配當ヲ受クルヲ以テ主眼ト爲ス者ナレハナリ然ルニ其社員ニ向テ猥リニ大ナル權利ヲ與ヘンカ抑モ其性質上ヨリ論スルモ不可ナルコト言ヲ待タスト
梅君モ亦辯シテ曰ク本條第一項ト第二項トハ其目的ヲ異ニスル爲メ何レモ相待ツテ必要ナリ何トナレハ第一項ハ例ヘハ財產目錄ニ或事項ヲ記載スヘキ筈ナルニ抅ハラス其事項ヲ記載セサルカ如キ場合ニ適用スヘキモノナリト雖モ第二項ハ之ニ反シ例ヘハ價ノ高キ物品ヲ極テ亷價ニ賣却セシカ如キ重要ナル場合ニ適用スヘキモノナレハナリト
山田君ノ第二項削除說ニ付キ贊成者アリテ採決
起立者少數
高木君ノ修正說ニハ贊成者ナキヲ以テ採決ニ至ラス而シテ本條ハ主意ノミ原按ニ可決シ文章ハ起草委員整理會迄ニ再考スルコトニ確定シ次條ニ移レリ
第九十七條 有限責任社員ハ無限責任社員ノ承諾アルトキハ其持分ノ全部又ハ一部ヲ他人ニ讓渡スコトヲ得
(參照)舊一四五、獨九八、一五七、匈七六、一三二、葡一六一、二〇一、白千八百七十三年五月十八日法二四
田部君ノ說明ニ曰ク本條ハ舊商法第百四十五條ノ規定ト同一ニシテ唯文章ヲ改メタルニ過キス要スルニ有限責任社員ハ其資本ヲ會社ニ出シタルモノナレハ從テ其持分ヲ他人ニ讓渡スコトヲ得ヘキハ當然ナリ然レトモ無限責任社員ノ承諾ヲ要スル亦言ヲ待タス何トナレハ無限責任社員ハ會社ニ對シ重大ノ責任ヲ有スル者ナレハ猥リニ他人ノ入社スルハ最モ不利益ナル場合アレハナリト
橫田君本條修正ノ意見トシテ述ヘテ曰ク本條ノ規定ハ有限責任社員カ例ヘハ百圓ノ出資ニ對シ五十圓丈ヲ拂込タル場合ノ如キハ至當タルヘシト雖モ百圓ノ出資ニ對シ既ニ全額ヲ拂込タル場合ノ如キハ稍嚴酷ニ失スルノ嫌アルヲ以テ既ニ全額拂込タルトキハ容易ニ讓渡ヲ許スノ主義ニ修正セラレタシト皿
右ニ對シ田部君辯シテ曰ク合資會社ノ場合ハ株式會社ノ場合ト異ナルヲ以テ株式會社ノ如ク容易ニ讓渡ヲ許スヘキモノニ非ラスト
山田君亦橫田君ト同一ノ意見ヲ陳述シテ曰ク只今田部君ヨリ辯セラレタルカ如ク縱令ヒ此場合ハ株式會社ノ場合ト同樣ニ看做スヘカラサルモノナリトスルモ既ニ有限責任社員カ自己ノ出資ヲ悉皆出シタル場合ニ於テハ無限責任社員ノ承諾ヲ要セスシテ容易ニ他人ニ讓渡スヘキモノト爲ス方穩當ナリト
右山田君ノ說ニ對シ田部君亦辯シテ曰ク此場合ニ於ケル外國ノ立法例ヲ取調ヘタルニ却テ總社員ノ承諾ヲ必要トスルモノ多シ故ニ本條ノ如ク規定スルハ最モ當ヲ得タルモノナルヘシト
岡野君亦辯シテ曰ク本條ニ於テ當然讓渡ヲ許ササルハ要スルニ固ト契約關係ヨリ成レルモノナレハナリト
本條ハ橫田君及ヒ山田君ノ修正意見アリタリト雖モ他ニ贊成者ナキヲ以テ採決ニ至ラス原案ニ可決シテ次條ニ移レリ
第九十八條 有限責任社員ハ自己又ハ第三者ノ爲メニ會社ノ營業ノ部類ニ屬スル商行爲ヲ爲シ又ハ同種ノ營業ヲ目的トスル他ノ會社ノ無限責任社員ト爲ルコトヲ得
(參照)舊一四〇、獨一五九、匈一三四、瑞五五八、伊一一六、羅一一六
田部君ノ說明ニ曰ク本條ハ舊商法第百四十條ノ規定ト同一ノ精神ニシテ唯其文章ヲ改メタルニ過キス而シテ其文章タルヤ全ク本案第五十三條ニ倣ヘルモノナリト
本條ハ異議ナク原按ニ可決シ次條ニ移レリ
第九十九條 定款又ハ總社員ノ一致ヲ以テ特ニ會社ヲ代表スヘキ無限責任社員ヲ定メサルトキハ各無限責任社員會社ヲ代表ス
(參照)舊一四二乃至一四四、佛二四、蘭二〇、二項、獨一六七、匈一四一、瑞五九八、伊一一四、一項、一一五、西一四八、一項、羅一一四、一項、一一五、葡二〇三
田部君ノ說明ニ曰ク有限責任社員ハ固ト金錢ヲ以テ出資トシ而シテ配當ヲ受クルヲ以テ主眼ト爲ス者ナレハ會社ノ業務執行ノ權ナキノミナラス亦會社ヲ代表スルコトヲモ得サルモノナリ故ニ會社ノ代表者ハ無限責任社員タラサル可ラサルナリ然ルニ其無限責任社員中特ニ定款又ハ總社員ノ一致ヲ以テ會社ヲ代表スヘキ者アルトキハ其社員ニ於テ會社ヲ代表スヘキハ當然ナリト雖モ若シ右等ノ定メナキトキハ固ヨリ總テノ無限責任社員ニ於テ代表セサル可ラス此場合ニ於テハ各一人ヲ以テ代表スヘキモノナルヲ以テ特ニ本條ヲ設ケタリト議長(箕作君)曰ク本條前後ノ各條ハ有限責任社員ニ關スル規定タルニ抅ハラス本條ノミ無限責任社員ニ關スル一個條ヲ玆ニ排置スルハ體裁上宜敷ヲ得サルヲ以テ他ニ移ス方可ナルヘシト
田部君辯シテ曰ク體裁上ヨリハ宜シキヲ得スト云ヘトモ本條ヨリ以上ハ會社ノ內部ニ關スル規定ニシテ以下ハ外部ニ關スル規定ナレハ實際止ムヲ得サルニ出ツト
本條ハ原按ニ可決シ衣條ニ移レリ
第百條 有限責任社員ト雖モ之ヲ無限責任社員ナリト信スヘキ正當ノ理由アルトキハ善意ノ第三者ニ對シテハ無限責任社員ト同一ノ責任ヲ負フ
(參照)舊一三九、佛二八、蘭二一、獨一六七、三項、一六八、匈一四一、三項、一四二、瑞五九八、三項、六〇〇、伊一一四、三項、一一八、二項、西一四七、二項、羅一一四、三項、一一八、二項、葡二〇二、白千八百七十三年五月十八日法二三
田部君ノ說明ニ曰ク本條ハ舊商法第百三十九條ノ規定ヲ包含ス然レトモ同條以外ニ於テモ既ニ說明シタル如ク有限責任社員カ會社ノ事業ニ加入シテ第三者ニ有限責任社員ノ如ク信セシメタル場合ノ如キハ尙ホ無限責任社員ト同一ノ責ヲ負フヘキモノトシ以テ第三者ヲ保護シタルモノナリ然レトモ第三者ハ善意ナル場合ニ限レルモノナリ尤モ合名會社ノ規定中第五十八條ニ於テハ單ニ第三者トシ善意ト惡意トノ區別ヲ設ケサリシト雖モ本條ノ決定如何ニヨリ右第五十八條ノ規定ニ改正ヲ加フル積ナリト
本條ハ原案ニ可決シ次條ニ移レリ
第百一條 有限責任社員カ死亡シタルトキハ其相續人之二代ハリテ社員ト爲ル
*有限責任社員ハ禁治產ノ宣吿ヲ受クルモ之ニ因リテ退社セス
(參照)獨一七〇、一項、匈一四四、一項、瑞六一一、二項
田部君ノ說明ニ曰ク若シ本條ノ規定ヲ設ケサルトキハ本案第六十一條ノ規定ニ因リ有限責任社員死亡スルトキハ直ニ退社トナリ其相續人ハ死者ニ代ハリ社員ト爲ルコトヲ得ス又禁治產ノ宣吿ヲ受ケタルトキト雖モ右ノ規定ニ因リ退社トナルヲ以テナリ然ラハ則チ何故ニ有限責任社員ニ限リ本條ノ如キ規定ノ必要アリヤト云フニ畢竟有限責任社員ハ會社ニ關係スルコト少ナリ且ツ其人ニ重キヲ置カサルモノナレハ却テ本條ノ如キ規定ヲ以テ適當ナリト信スレハナリト
本條ハ原案ニ可決シテ次條ニ移レリ
第百二條 合資會社ハ無限責任社員又ハ有限責任社員ノ全員カ退社シタルトキハ解散ス但有限責任社員ノ全員カ退社シタル場合ニ於テ無限責任社員ノ一致ヲ以テ合名會社トシテ會社ヲ繼續スルコトヲ妨ケス
(參照)葡二〇〇
田部君ノ說明ニ曰ク本條ノ規定ハ全ク新タニ設ケタルモノナリ是蓋シ合資會社ハ本章ノ初メニ於テ規定シタル如ク全クニ種ノ社員ヨリ組織スルモノナレハ其一種ノ社員全ク退社スルトキハ爲メニ其會社解散スヘキハ當然ナリ何トナレハ右ニ種ノ社員ハ合資會社ヲ組織スル要素ナレハナリ又但書ヲ設ケタル所以ハ有限責任社員カ全ク退社シタル場合ニ當リ若シ無限責任社員ノ一致ヲ以テ合名會社トシテ繼續セント欲スルトキハ其意思ヲ達セシムルノ自由ヲ與ヘタルニ過キスト
本條ハ原案ニ可決シ散會セリ
午後六時ニ十分散會