明治商法(明治32年)

法典調査会 商法委員会議事要録 第20回

参考原資料

備考

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第二十回商法委員會議事要錄
出席員
箕作麟祥君
土方寧君
田部芳君
高木豐三君
橫田國臣君
奧田義人君
富井政章君
梅謙次郞君
重岡薰五郞君
長谷川喬君
三浦安君
岡野敬次郞君
第五節 解散
田部君ハ表題ヲ說明シテ曰ク既成商法ニ於ケル「會社ノ」三字ヲ本節ニ於テ削除セリ他ナシ此三字ヲ省クモ其趣意ハ通スルコトト信シタレハナリ次ニ既成商法第六款中削除シタル第百二十九條以下ノ多クノ條文ハ淸算ノコトナルヲ以テ本案ハ別ニ淸算ナル別ノ節ヲ設ケ之ニ讓リシナリ第百二十八條ヲ削リシハ此規定ナキモ之ト同一ノ結果ヲ來スヲ以テナリ卽會社ノ解散前ニ當リ或社員互ニ一致シテ其事業ヲ繼續シ他ノ一部ノ人ハ退社ヲ爲スコトヲ得ヘシ縱令其會社ノ解散後ナルモ一部ノモノカ會社ノ營業ヲ引受ルモ法律上別段妨ケサレハナリ
第六十五條 會社ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス
一 存立時期ノ滿了其他定款ニ定メタル解散事由ノ發生
二 會社ノ目的タル事業ノ成功又ハ其成功ノ不能
三 總社員ノ同意
四 會社ノ合併
五 社員ノ一人ト爲リタルコト
六 會社ノ破產
七 裁判所ノ命令
(參照)舊一二六、一二七、民六八、六八二、六八三、佛民一八六五、獨一二三、匈九八、瑞五四五、伊一八九乃至一九一、西二二一、二二二、葡一二〇
田部君ハ本條ヲ說明シテ曰ク「本條ノ始ニ會社ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス」ト爲シ既成商法ノ左ノ諸件ナル文字ヲ改メシハ民法ノ用例ニ倣ヒタレハナリ、第一號ハ既成商法第一號第二號ヲ併セテ設ケタリ而シテ會社契約ナル文字ヲ改メテ定款トセシハ是亦民法ノ用例ニ倣ヒタルモノナルコトハ諸君ノ承知セラルル如クナリ次ニ三號中既成法典ノ「承諾」ヲ「同意」ト改メタリ何トナレハ民法ノ用例ハ申込ニ對スル場合ニ承諾ノ文字ヲ多ク用ヒタリ師一方ノ申込ニ對スルトキ用フルカ普通ノ文例ナリニ號ハ民法ノ六百八十ニ條ノ規定ト同一ナリ是舊商法第百二十七條ノ一部ニモ此規定アリ本條ニ號ハ此ニ个ノ場合ヲ併セテ規定セリ第四號ハ新ニ之ヲ規定セリ此場合ハ外國ニモ立法例極メテ少ナシ唯葡萄牙、伊太利ノニ國アルノミ乍併我國ニモ之ト類似ノ規定アリ印法律第八十五號ヲ以テ發布セラレタル銀行合併法是ナリ合併ヲ要スル場合ハ銀行ノミナラス他ノ場合ニ必要極メテ多キ故玆ニ置クコトトセリ、若シ此場合ニ合併ヲ爲ササルモノトセンカ以前ノ會社ノ財產ヲ集メ新ニ設立スルモノト手續上同一ノ繁ヲ採ラサルヘカラス故ニ本案ハ玆ニ便宜ナル方法ヲ置クコトトセリ而シテ合併ニ付テノ詳細ナル規定ハ六十六條以下ニ規定ヲ設ケタリ此場合ハ單ニ解散ノ一事由トセシニ外ナラス第五號ハ舊商法ニモ又民法ニモ規定ナシ唯會社ノ性質トシテハニ人以上ニテ當然解散スヘキモノニ在ラス故ニ玆ニハ解散ノ事由トシテハ揭クルノ必要アリ第六號ハ舊商法ト同一ナリ第七號ハ裁判所ノ命令ハ實際上異リテ舊商法第八十二條ニ依ルトキハ登記ノ日ヨリ六月內ニ着手セサルトキハ會社ノ解散ヲ命スト民法第六百七十八條ニ解散ヲ命スルコトアリ大體ハ如斯クナリ
土方君ハ修正案ヲ提出シテ曰ク合併ハ合名會社ノ規定中ヨリ除キ株式會社ノ規定中ニ置クコトト爲サントノ案ヲ出シタルニ贊成者アリ之ヲ起立ニ間ヒシニ少數ナリ
橫田君モ亦修正案ヲ提出シテ合併ニ付テハ別ニ款ヲ設ケ此規定ヨリ除クコトト爲サント述ヘ、贊成者アリ之ヲ起立ニ間ヒシニ少數ナリ
第六十六條 會社ノ合併ハ總社員ノ一致ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
(參照)伊一九三、葡一二四
田部君ハ本條ヲ說明シテ曰ク會社ノ合併ハ畢竟會社カ獨立スルコト能ハス合併ニ因リテ始メテ存立スルコトアリ此場合ニ付キ云フトキハ其會社ノ資本カ減少スルカ如キ其結果トシテ定款ヲ變ユルコトトナリ隨分重大ノ關係ヲ有スヘシ之ヲ以テ總社員ノ一致ヲ要スルトセシハ至當ノコトナリト信ス最モ本條ハ合名會社ノ規定故他ノ會社ト合併スルコト能ハサルヤノ疑アリ乍併他ノ會社ト合併スルコトハ他ノ會社ノ規定ニ於テ知ルコトヲ得ヘシ
富井君ハ本條ノ修正案ヲ提出シテ曰クコ致ヲ以テスルニ非サレハ爲スコトヲ得ス」ト改ムル案ヲ提出セント述ヘ田部君ハ之ニ答ヘテ爲スコトヲ得ストアルハ禁止的ノ如クニテ穩ナラス部一致ニアラサレハ出來サルカ如ク見ユト之ヲ駁シ協議ノ上「一致ノミヲ以テ」ト改ムルヤ否ヤハ考ヘ置クコトトナレリ