第二次法律取調委員会 商法中改正法律案 議事速記録 第27回
参考原資料
- 第二次法律取調委員会 商法中改正法律案 議事速記録 , 第拾壹卷 [国立国会図書館デジタルコレクシヨン]
備考
- 未校正のテキストデータです.
○法律取調委員會(非訟事件手續法中改正案)總會第二十七回議事速記錄
明治四十三年十二月二十一日午後三時二十八分開議
出席缺席
○議長(岡部長職君)
是ヨリ開會致シマス非訟事件手續法中改正法律案ニ付テ開キマス起草委員ヨリ大體ニ付テ何カ說明ガアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
起草委員ト致シマシテ會長ニ御願ヒガ一㸃ゴザイマスノデ此只今問題トナツテ居リマスル非訟事件手續法中改正法律案ニ付キマシテハ主査會ノ議ヲ經テ居リマセヌノデゴザイマスルガソレニ抅ラズ直チニ總會ノ議題ニ相成ツタコトニ付キマシテハドウゾ會長ヨリ一應事情ヲ一般ニ御示シ置キヲ願ヒタイノデスソレカラ非訟事件手續法中改正法律案ノ大體ニ付テ申上ゲマスガ修正ノ箇條ハ其大部分ハ商法中改正法律ニ定メマシタ條項ニ俘フトコロノ修正デゴザイマス而カモ其大多數ハ商業登記手續ニ關シマスル修正デアルノデアリマス只ダ特ニ申上ゲテ置キタイ㸃ハ三四箇條。バカリ商法改正案ニ關係ノナイ箇條ガアル又數箇條商法修正ト緣ノ遠イ修正モアルノデアリマス前ノ方ハ商法修正ノ建議ノゴザイマシタ際ニ其建議ノ中デ最モ適切ナモノデアルト主査會ニ於テ認メマシテサウシテ商法修正ノ結果非訟事件手續法ヲ修正スル際ニ併セテ修正スベキモノデアルト議決致シマシタ其箇條デアリマスソレハ其箇條箇條ニ付テ申上ゲマスソレカラモウ一ツノ申サバ現行法ノ補充規定デアリマスガ是ハ修正條項ト直接關係ハゴザイマセヌケレドモ修正條文ヲ成立タシムルニ付キマシテハ權衡上其方ラノ方モ直サネパナラヌ必要ノアルモノト認メマシテ同時ニ修正致シマシタ條項デゴザイマス其㸃モ箇條々々ニ參リマシテ申上ゲヤウト思ヒマス大體ノ說明ト致シテハ只ダ此㸃ダケヲ申上ゲテ置キマス
○一番(富井政章君)
只今起草委員カラ述ベラレマシタ主査委員會ヲ開カナカツタト云フコトニ付テチヨツト一言私ガ申上ゲタイコトガアリマス私モソレニ同意致シタノデアリマスガ其理由ハ別ニ是ガ急グトカ云フコトデハナカツタ既ニ此前附則ヲ議題トセラル丶トキニ主査委員會ヲ開キマシタ所ガ是ハ商法改正ノ當然ノ結果デアル格別意見ハナイ唯ニ一述ベテ見タイコトハアルケレドモソレハ總會ニ於テ述ベレバ十分デアル主査會ニ於テハ今日委員モ大分減ツテ居ルデアリマスカラ十分ニ效果ヲ見ルコトモ出來ナイデアラウ言フコトカラシテ直チニ總會ニ掛ケルコトニ一致シタノデアリマスソレト今回ノ案トノ區別スベキ理由ハ少シモナイノデアリマス同一ノ理由ニ依ツテ之モ同一ノ取扱ヒニナツタ方ガ穩當デアラウト考ヘテ同意致シタノデ最モ其主査委員諸君ニ全ク出シ拔ケニシテ總會ニ掛ケルコトニナツタト云フ譯デハナイノデアリマス書面デ其御斷リヲシテサウシテ異議ガアレバ申出テ貰ウコトニ運ビバ附ケタノデアリマス別ニ反對モナカッタノデアリマスサウ云フ趣意デ今起草委員ノ述ベラレタヤウナコトニナツタノデアリマス
○議長(岡部長職君)
唯今起草委員ノ四番並ニ主査委員長ノ一番カラノ爰ニ此案ヲ議ニ掛ケルコトニ付テノ主査會ヲ省イタト云フコトノ事情モ辯明モアリマシタガ別ニ之ニ對シテ諸君ニ於テモ御異議ガナイト考ヘマスガ如何デ
(「異議ナシ」又ハ「異議ハアリマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
御異議ガナイト認メマス、此案ヲ逐條ニ議スルニ當ッテ此儘順ヲ逐フテ致スト審議上却テ不便ダラウト云フ所ガアル審議ノ便宜ニナルヤウナ順ヲ追ヒタイト考ヘマス其考ヘヲ以テ各條問題ニ供シマス初メノ目錄中トアル所ハ是ハ跡ノ三節ノ――第三章第三節ノ所ノ議事ヲ終ツタ跡デ議ス方ガ順序デアルト考ヘマスカラ是ハ跡ヘ廻ハシマス此次ノ第百二十五條中ト云フノモ之モ百五十一條ノ五ノ議了後ニシタ方ガ便宜ト認メマス之モ跡ヘ廻ハシマス第百二十九條ノ二第二項ヲ削ルト云フ所カラ始メマス是ト其次ノ二ツ卽チ百二十九條ノ四マデヲ一括シテ問題ニ供シマス
書記朗讀
○四番(齋藤十一郞君)
只今問題ニナリマシタ條文ハ先程申上ゲマシタ商法修正ニ關係ノアリマセヌ條文デゴザイマシテ各方面カラノ希望ニ基キマシタ事柄ノ一ツデゴザイマス此商法ノ規定ノ中ニ裁判所ガ檢査役ヲ選任シタ場合ニ其檢査役ニ報酬ヲ與ヘルコトヲ定ムル規定ガ缺ケテ居ルノデアリマス之ガ爲メニ檢査役ハ無報酬デ働クト云フ解釋デハゴザイマセヌケレドモ兎ニ角其手續ガ缺ケテ居リマスル爲メニ檢査役ノ報酬問題ガ常ニ此裁判所ノ側ト檢査役トナリマシタ側トヲ困ラセル關係ニナツテ居リマスノデソレ故ニ今回ノ修正ヲ折ト致シマシテ此追加ヲ致ス趣意デアリマス百二十九條ノ二第二項ヲ削リマシタノハ百二十九條ノ四ノ方ニ纏メマシテ規定致シマシタ結果デアリマス
(「異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
別ニ御發議ハアリマセヌカ
(「ゴザイマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
別ニ發議モナイヤウデスカラ是ハ異議ナイト認メマシテ第百三十五條ノ四
書記朗讀
○四番(齋藤十一郞君)
商法改正案ノ第九十九條ノ五ニ於キマシテ「設立ヲ無效トスル判決カ確定シタルトキハ本店及支店ノ所在地ニ於テ其登記ヲ爲スコトヲ要ス」ト申ス箇條ガ可決ニナツテ居ルノデアリマス此議事ノ際ニモ御約束ヲ致シテ置キマシタ通リ此登記ハ裁判所ノ職權デナシデ登記ニ致スト云フコトデアリマシテ其規定ヲ此問題トナツテ居リマスル箇條ニ設ケマシタ次第デアリマス其場所ニ付キマシテハ種々硏究モ致シテ見マシタガ恰度此百三十五條ノ二ト云フ規定ガ總則ノ中ニゴザイマシテ此次ニ入レマスルコトガ相當デアラウト云フコトヲ認メマシテ爰ニ入レマシタ次第デアリマス
○議長(岡部長職君)
之モ別ニ御異議ハナイノデスカ
(「異議ハアリマセヌ」ト言フ者アリ)
○十番(鵜澤總明君)
チヨツト伺ヒマスガ此受訴裁判所ト云フノハ一塞{裁判所ノコトデアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
御尤モノ御尋デ此受訴裁判所ト云フ言葉ハ非訟事件手續法第百五十二條等ニモ用ヰテ居リマシテ非訟事件手續法ノ中ニハ第一審ノ受訴裁判所トカ云フ文字ガ附加ツテ居ルノデアリマスケレドモ此案ノ趣意ハ第一審ノ受訴裁判所ヲ見テ居ル積リデアリマス此是デ若シ意味ガ不明デゴザイマスレバ此修正ニハ異議ハアリマセヌ、、、、
○議長(岡部長職君)
別ニ御異議ガナイノデスカ
(「異議ハアリマセヌ」ト言フ者アリ)
○十八番(長谷川喬君)
今鵜澤君カラ言ハレタノハ先刻齋藤君ニモ御相談シタノデアリマスガ此受訴裁判所ト云フノハ不明瞭デアリマスカラ第一主義ヲ定メ第二文章ヲ定メタナラバ宜カラウカト思ヒマス此第一審裁判所トスルト先刻第一審裁判所ニシタナラバドウカト云フ齋藤委員カラノ御話モアリマシタガ第一審裁判所トスルト上級裁判所カラ記錄等ヲ戾シテ來テサウシテソレ等ノ通知ヲ受ケテ初メテ知ルト云フコトニナリマスカラ餘程手數デ又其間ニ時間モ掛リマスカラ此主義ハヤハリ確定判決ヲシタ所ノ裁判所トシ其文句ハ此法文ニ現ハシテ置イタ方ガ宜カラウト思ヒマスガ如何デ
○二十一番(磯部四郞君)
チヨツト長谷川サンニ伺ヒマスガ確定判決ヲシタ裁判所トナルトドウナルカ大審院ガ多クヤルコトニナリマスガ上吿棄却ト云フコトノ確定シタ判決ヲ言渡シタ所ガト云フコトデアリマスケレドモ確定判決ヲ言渡ス所ト云フノハ實際ナイノデスナ大審院ニ來テ本件上吿ハ之ヲ棄却スルトナルト控訴院ノ判決ガ確定スルノデスガサウスルト大審院カラ控訴院ニ其手續ヲ送リ返ヘス要ガ起ルノデスナ受訴裁判所デ初メノ裁判所ト分ツテ居ル{槓リデ、ダカラ確定細刋決ヲ言渡シタル所ト云フコトハチト穩冖カデナイカラ最初ニ訴ヲ受ケタル裁判所ト言ヘバ疑ヒハナイ受訴裁判所デモ吾々共サウ云フ考ヘヲ持ツテ居リマスガソレハ大抵第一審ダラウト思フ、デ確定判決ヲ言渡シタルト云フコトニナルト確定判決ヲ言渡ス所ハ何處ニモナイノデスカラ、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
先程申上ゲマシタ通リニ此百五十二條第二項ノ規定デアリマスガ此規定ノ中ニハ「破產者カ有罪破產ノ宣吿ヲ受ケ又ハ其協諧契約カ取消サレタル場合ニ於テハ受訴裁判所ハ前項ノ登記所ニ其旨ヲ通知スルコトヲ要ス」トアルデ受訴裁判所ハ崩弟=番ノ裁判所デアラウト思フノデアリマスノデ難叩リマア原案ヲ修正ヲ加ヘマスレバ勢ヒ此方ラノ方ニモ修正ヲ加ヘナケレバナラヌヤウナコトニナリマシテ餘程其外ニモゴザイマシタカドウデスカ調査ヲ致サナケレバナラヌノデアリマスルガ現行百五十二條ノ解釋ガ疑ヒナイ㸃カラシテ原案モ斯樣致シマシテ第一審ノ裁判所デアルト云フコトニハ疑アルマイト思ヒマスノデ御修正ニハ强イテ異議ハアリマセヌケレドモ解釋上第一審ノ受訴裁判所ト取リ得ルト思フノデアリマスカラ其㸃ヲ特ニ申シテ置キマス
○十九番(田部芳君)
私ハ此本法ニ受訴裁判所トアリマスルト云フトヤハリ第一審ノ裁判所ト解釋スルノガ正シイカト考ヘマス併シ此非訟事件手續法ノ第百三十五條ノ二ノ規定ヲ見マスルト云フト之ニハ裁判所ハ云々ト云フコトニナツテ居ツテ其裁判所ガ第一ノ裁判所デアルカ或ハ上訴ヲ受ケタ裁判所デアルカト云フコトヲ書イテナイガ併シ第一項ノ終リヲ見ルト「抗吿裁判所カ裁判ヲ爲シタルトキ亦同シ」ト斯ウ云フコトガアリマスカラヤハリ此規定カラ見ルト云フト上訴ノアツタ場合ニハ其上訴ヲ受ケタル裁判所デ裁判ヲシテ其裁判ガ確定ヲシタナラバ其上訴裁判所ガ通知ヲスルト云フ意味ニ解釋ガ出來ルヂヤナイカト思フ此規定ノ權衡カラ言フト云フトヤハリ事柄ガ違ウカラ違ツタヤウニ規定シテ差支ナイト言ヘバ言ヒルデアリマセウガ併シ權衡カラ云フト百三十五條ノ二ノヤウニヤハリ倣ッタ方ガ宜クハナイカト云フコトノ一ツ考ヘガアリマスガ是ハドウ云フモノデアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
只今御援用ニナリマシタ百三十五條ノ二ノ第一項ノ規定デアリマスガ此規定ノ裁判所ヘ申スノハ御說ノ通リニ初メノ管轄裁判所デアリマシテ抗吿裁判所ハ申スマデモナク其上級裁判所デアリマスガ抗吿裁判所ガ裁判ヲ爲シタトキニ其裁判ガ確定シタトキハドノ裁判所ガ登記ノ囑託ヲスルカト云フコトハ實際問題トシテ議論ノアッタ㸃デアリマス此百三十五條ノ二ノ規定ハ三十二年ニ新タニ追加ニナツタ規定デアリマシテ實ハ甚ダ其解釋ニ困難ナ困ツテ居ル規定ナンデソレデ原案ヲ作リマス際ニモ之ヲ改メヤウカト云フ議論ガ大分アリマシタノデアリマスガ是ハマア此儘デ置カウト云フノデ此儘手ヲ着ケナイコトニシタノデアリマス實際其抗吿裁判所ガ裁判ヲ爲セバ記錄ハ直グ還ヘシマスカラ確定カ確定デナイカト云フコトハチヨツト困ルソレデ第百三十五條ノ二ニ付キマシテ實際問題ニ於テ非常ニ困ツタ事實ガアツタト云フコトヲ申上ゲテ置キマス
○十九番(田部芳君)
百三十五條ノ二ノ解釋ニ付キマシテ解釋ガニ途ニ出デ丶居ルヤウナ例ハ私モ知ツテ居ルケレドモ此解釋ハ一ツノ問題デアリマセウガソレハソレトシテモ此百五十;條ナドヲ見マスルト是ハ破產ノ規定デアリマスガ此規定ヲ見ルトヤハリ「受訴裁判所カ」ト云フコトガ第二項ニアルノデドウモ百五十二條カラ見ルト云フト「破產裁判所」ト第一項ニ書イテアルソレカラ末項ニハ「受訴裁判所云々」ト云フコトガアリマスカラドウモ其非訟事件手續法ノ解釋トシテ孰レノ解釋ガ正シイカト云フコトハ隨分疑問カト思ヒマスソレマデノコトヲ申シテ置キマス
(「此儘ナラ差支ナイダラウ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
他ニ發議ガアリマスカ
(「議論バカリデ發議ガナイ」ト言フ者アリ)
○二十一番(磯部四郞君)
是デ分カルヤウニ思ヒマスガ
○四番(齋藤十一郞君)
分リマス
○二十一番(磯部四郞君)
原案ノ通リ
○議長(岡部長職君)
十八番何カ發議ニナラヌデスカ
○十八番(長谷川喬君)
ドウモ止メテ置キマセウ
○議長(岡部長職君)
ソレヂヤ發議ハナイ然ラバ他ニ異議ノナイモノト認メマス此次ハ跡ヘ回ハスト云フコトニ第百三十八條ノ二ヲ議題ニ供シマス
書記朗讀
○四番(齋藤十一郞君)
裁判所ガ檢査役ヲ選任シマシタ場合ニ檢査役ニ報酬ヲ與ヘル規定ガ缺ケテ居リマスルコトハ先刻申上ゲマシタガ裁判所ノ選ミマシタ淸算人ニ付テモ同樣デアリマシテ之モ淸算人トナツタ者又裁判所側ノ方ニ於キマシテ非常ニ困ツテ居ル實際問題デアリマシテヤハリ此場合ニハ裁判所ガ淸算人ノ報酬ヲ定ムル規定ヲ準用スル方ガ相當デアラウト云フコトニナリマシタ
○二十一番(磯部四郞君)
異議ハアリマセヌ
○議長(岡部長職君)
之モ別ニ異議ハアリマセヌカ然ラバ第百三十八條ノ三ト四ト此二ツヲ束ネテ問題ト致シマス
書記朗讀
○四番(齋藤十一郞君)
改正案ノ第九十一條ノ二ニ於キマシテ會社ノ淸算ノ場合ニ債權ヲ鑑定セシメマスル爲メニ鑑定人ヲ選任スル制度ヲ採用致シマシタ結果此鑑定人ノ選任等ニ付テノ規定ヲ設ル必要ガアルノデアリマスソレデ此百三十八條ノ三ノ規定ハ丁度之ト同ジヤウナ文例ガ第八十四條ニゴザイマスカラ其文例ニ倣ヘマシテ規定致シマシタノデアリマスソレカラ第百三十八條ノ四ハ民事其他ノ鑑定人ノ選任ニ付キマシテハ檢事ノ干與ト云フコトガナイノトソレカラ其選任等ニ付テノ裁判所ノ裁判ニ付テハ不服ノ申立テヲ許サナイト此ニ㸃ガ規定サレテアリマスルノデヤハリ爰ニ規定シマスル鑑定人ニ付テモ其主義ヲ認メタ規定デアリマス
○十八番(長谷川喬君)
百二條ノ二項ノ費用ニ付テノ規定デアリマスガ是ハ成程必要ダラウト思ヒマスガサウシテ見ルト前條ノ百三十八條ノ二ノ淸算人ノ費用ハ何處カニアルノデスカチョット急イデ見當リマセヌカラドウゾ、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
淸算人ノ選任ハソレハ現行非訟事件手續法ニモ規定ガアルノデアリマス之ニ付テ費用ノ規定ガナイノデアリマスルガ結局是ハ會社ノ負擔ニナルダラウト思ヒマス
○十八番(長谷川喬君)
鑑定人ニハ費用ノコトヲ書ク必要ガアル淸算人ニハ書カナイデモ宜イト云フコトニナルノデアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
成程嚴格ニ細密ノ規定デアリマスレバ其費用ノコトモ書ク必要ガゴザイマセウガ既ニ此現行法ニ於テ會社ノ淸算人ノ選任ニ關スル規定中ニハ費用ノ㸃ガ書イテナイノデアリマス此鑑定人ノ方ハ書イテアルノデアリマスデ孰レ是ハ裁判所ガ淸算人ヲ選任シマス場合ニハ職權デ會社ノ解散ヲ命ジマシタヤウナゴザイマスカラ其中ニ同時ニ淸算人ノ選任ヲ書イテヤルノデアリマシテサウエライ費用ノ問題ハ起ラナイヂヤナイカト思ヒマス、デ鑑定人ノ方デアリマスト隨分裁判所ニ出頭サセテモ手續ガ面倒デアリマスカラマアサウ云フ次第デアツテ現行法ニハ何モ書イテナイダラウト思ヒマス
○三十四番(松波仁一郞君)
未熟ノ質問ノヤウデアリマスガ鑑定料ノコトモ非訟事件手續法ノ中ニ這入ツテ居リマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
ソレモ現行法ノ八十四條ニ會社ノ基礎トゴザイマスガ解釋トシテハ之ニ入レマセヌケレバ外ニ入レル所ガナイノデアリマス之ニ這入ルモノト存ジマス
(「訊問ノ費用ノ中ニ這入リハシナイカ」ト言フ者アリ)
○十番(鵜澤總明君)
訊問ノ方ノ費用ノ中ニ這入ル
○十八番(長谷川喬君)
現行法ガソレデ宜イト云フナラバ止メテ置キマセウ
○議長(岡部長職君)
此ニ條ハ御異議ナイモノト認メテ宜シウゴザイマスカ
(「異議ハアリマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
チョット今此第三編第二章ノ表題ト云フ所ヲ
書記朗讀
○四番(齋藤十一郞君)
是ハモウ申上ゲルマデモゴザイマセヌガ表題ノ改正デ第二章ニハ「會社ノ淸算人ノ選任及解任」トアリマシテ今度ハ鑑定人ガ這入リマシタ爲メニドウモ是デハ不適當ニナツテ參リマシタカラソレデ會社ノ淸算ニ關スル事件ト斯ウ改メマシタ
○議長(岡部長職君)
別ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ハアリマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
次ニ第百四十八條ノ二、百五十條ノ二、百五十條ノ三ヲ束ネテ議題ニ供シマス――第百四十條第四號ト云フ所ハ議了シタト認メマス
書記朗讀
○四番(齋藤十一郞君)
只今議題トナリマシタ此中デ百四十八條ノ二ト百五十條ノ三是ハ商法修正ニハ關係ノナイ規定デアリマス第百四十八條ノ二ノ方ハ現行法ノ第百四十八條ノ規定ダケデハ其足リナイガ爲メニ補ツタ規定デアリマス第百四十八條ニハ「當事者ハ登記ヲ受ケタル後其登記ニ錯誤又ハ遣漏アリタルコトヲ發見シタルトキハ其更正ヲ申請スルコトヲ得」ト云フ規定ガアリマスルガ此登記ニ錯誤又ハ遺漏ナクシテ登記自體ガ許スベカラザルコトデアルカラ斯ウ云フ場合ニハ本條ノ規定ニハ據レナイノデアリマシテ是ハ實際上洵ニ其困ツテ居リマスソレデ已ムヲ得ナイ場合ニ限ツテ無理ニ此百四十八條ノ規定ヲ適用シマシテ手綬ハヤラシタ例モ一ニゴザイリ、スケレドモ甚ダソレデハ實際上困ルノデアリマス登記官吏ノ責任ニモ關スル問題トナリマスルカラ此修正ノ際ニ特ニ一箇條設ル必要ガアルト云フノデ之ヲ加ヘマシタソレカラ百五十條ノ三ノ方ハ是ハ御承知ノ通リ本店及支店兩方ノ登記ヲ致シマシタ場合ニハ添付書類トシテ種々ノ書類ヲ申請書ニ添付スル手績ニナツテ居リマス左樣致シマシテハ多クノ支店ヲ持ツテ居リマスル會社ナドハ別ニシテデアリマスガ非常ニ手數デ此添付書類ヲ幾通カ作ラナケレバナラヌト云フ洵ニ其困ル結果ニナルソレデ謄本ヲ作ルコトノ出來ル場合ハソレデモ宜イノデアリマスガ謄本ヲ作レナイ原本一ツシカナイト云フ場合ニハ先ヅ本店ヨリソレカラ其次ニ第一ノ支店ニ行クソレカラ第二ノ支店ノ支店ト云フヤウニ非常ニ手數ヲ要スルノデアリマス此㸃ハ登記ノ一ツノ缺㸃トシテ各方面カラ修正ノ希望ガ出テ居リマス之モ全ク適切ナ要求デアリマシテ現行法ノ趣意ヲ改正致シマシテ先ヅ本店ノ登記スレバ其登記簿ノ謄本カ又ハ其正本ヲ持ツテ參ツテサウシテ其支店ノ登記ヲ受ケルコトガ出來ルト斯ウ云フ趣意ニ改メマシタ便宜的ノ規定デアリマスソレカラ此百五十條ノ二ハ是ハ其現行商法ニハ官廳ノ許可ヲ要スル事項ニ付テノ登記ノ期間ノ計算㸃ガ規定シテゴザイマセヌ民法ニハ規定シテゴザイマスル爲メニ――此民法上ノ法人ノ登記ニハ斯樣ナ規定ガ其ニ箇所バカリアルノデアリマス商法ノ今回ノ改正案中ニ第四十八條ノ二ノ規定ヲ置キマシテ其登記期間ノ計算黠ヲ規定シマシタ以上ハヤハリ民法ノ法人ノ手續ト釣合ヲ取ルノモ一ツデアリマスガ又實際ノ必要上斯樣ナ規定ガ必要トナツテ參ルノデアリマス
○十番(鵜澤總明君)
此抹消ト云フノハヤハリ消滅ノ登記ト云フコトニナルノ意味デアリマスカ抹消ノ登記ト云フ意味ニナルノデアリマスカソレダケヲチヨツト承ツテ置キタイ
○四番(齋藤十一郞君)
左樣デアリマス登記ヲナキモノニ致ス登記デアリマス
○十番(鵜澤總明君)
サウスルト此百四十七條ノ登記スベキ事項ノ登記變更又ハ消滅ノ登記ト此中ノ消滅ノ登記ノ中ニ這入ツテソレカラ到斷ヲシテ登記所ガ本法ノ規定一一適セナイト云フヤウナコトヲ認ムル場合ニハ百五十一條ニ據ツテヤハリ抗吿ノ出來ルヤウナ場合ニナツテ來ル斯ウ云フ譯デアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
此百四十七條ノ消滅ノ登記ト申スノハ登記スベキ事項ノ既ニ消滅ノ登記デ登記其モノヽ抹消デハナイ無論消滅ノ登記ヲシマシタトキニハ登記簿ノ抹消デアリマスケレドモ内容ハ全ク別デアルト御承知ヲ願ヒタイ是ハ百五十一條ノ規定ハ是ハマダ登記ヲ致サザル前ノ手續デアリマシテ今百四十八條ノ二トナツテ居ル規定ハ登記ヲシテシマツタ後ノ手續デアリマスカラ左樣ニ御承知ヲ願ヒマス
○十番(鵜澤總明君)
サウ致シマスルトチヨツト疑ヒガ起ルノデアリマスガ此抹淌ノ登記ヲ申請スル場合ニ登記所ガ其申請ヲ受理スベキモノデナイト云フヤウナ場合ノ起リマシタトキニハ決定ヲ以テ却下スルト云フヤウナコトニナルノデゴザイマセウカソレカラサウ云フ決定デモアリマシタ場合ニ抗吿其他ノ方法ガ出來ルヤウナ手續ニナツテ居ルノデアリマスカ其㸃ヲチヨツト、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
御問ヒノ趣意ヲ誤解致シテ居リマシタ無論此百四十八條ノ二ニ依リマスル登記ニ付テモ百五十一條ノ適用ハアルノデアリマス
○十番(鵜澤總明君)
アルノデスカ、ソレガアレバ宜イ
○十八番(長谷川喬君)
此百五十條ノ三ノ登記ニ付テハ本店ニ付テノ期間モ支店ニ付テノ期間モ二週間トナツテ來マスガ今此條ノ爲メニ本店デ登記シタモノヽ謄本ヲバ備ヘナイト云フト支店デ登記ヲ受ケルコトハ出來ナイコトニナリマスカラ支店ニ付テハ二週間ノ期間卽チ本店ト同一ノ期間ヲ受クルコトガ出來ナイヤウニナリマスルガソレデハ支店ニ對シテハ期間ガ不十分デハアリマスマイカソレハ少クトモ問題ニシテ貰ヒタイト云フコトヲバ今隣リノ人ノ話デアツタ所ガヤハリ同意見デアリマスガ先刻チヨツト御話ハ致シマシタガ如何ナモノデアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
第百五十條ノ三ガ成立チマシテ實行セラレマシタ曉ト雖モ現在ノ取扱ヒト其時ノ長短ニ付キマシテハ是ハ變リハナイト思フノデアリマス現行法ノ規定ハヤハリ添付書面ヲ本店ニモ支店ニモ提出スルト云フコトニナルノデアリマシテ先ヅ本店ニ持ツテ參ツテ而シテ其次ニ支店ノ方ニ行クノデアリマスカラ只其若シ時間ガ少シ違ウト云フコトニナリマスレバ本店ノ所在地ノ登記所ガ謄本ヲ作ルダケノ時間デアリマシテ、デ跡ハ其皆一ツデアラウト思フノデアリマスソレデ只今ノ御心配ハ要スルニ二週問内ニ支店所在地ニ於テ登記ノ出來ナカツタ場合ニハ或ハ制裁モ受ケハセヌカト云フ御心配カラ出テ居ル御尋ト思ヒマスガソレハ差支ナイ積リデアリマス自己ノ此緩怠デナクシテ登記所ガ謄本ノ下附ヲ手遲レ致シタガ爲メニ二週間内ニ支店ノ登記ガ出來ナカツタト云フテモ制裁ハナイ積リデアリマス左樣御承知ヲ願ヒマス
○十八番(長谷川喬君)
サウスルト謄本ヲ受ケテカラ二週間内ナラバ宜イト云フ御意見デアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
左樣ヂヤアリマセヌ、ヤハリ二週間内ニ本店ト支店トノ登記ヲ完了セシムル方ノ趣意デハアルノデ成ルベク其急グ必要ハアルノデアリマスガ併シナガラ其先ヅ本店ノ登記ヲシテサウシテ其謄本ヲ以テ支店ノ方ニ行クト手續ガ簡便ニナリマスカラ而シテ其時モ現在ノ手續ヲ用ヰテ居リマスルトキト大變ナ違ヒハナイ積リデアリマス添付書面ガ一ツシカナイモノヲ謄本ニ融通スルノガ或ハ二週間後ニ支店ニ行ク場合ガ現在ノ規定デアルダラウト思ヒマス是ハ現行法ノ規定ニモ罰シテアリマセヌカラソレハ御安心アツテ然ルベキト思ヒマス
○三十四番(松波仁一郞君)
私ノハ議論ノヤウナ形ニナリマスガ純粹ノ質問デスガ百四十八條ノ二ト百五十一條ノ二ノ此登記ガ商法又ハ本法ノ規定ニ依リテ許ス可ラザル、卽チ許スベカラザルモノナルコトノ理由ト言ヒマスカ原因ト言ヒマスカ商法又ハ本法ノ規定ニ依リテト斯ウ云フ風ニアルノデ少シ疑ヒヲ抱イタノデスガ外ノ法律ニ依ツテ許ルスベカラザルモノガアツタトキニハドウスルカ若シソレガ決シテナイ必ズ本法カ又ハ商法ノ規定ニ依テアルニ違ヒナイ其外ノモノデハ決シテサウ云フ疑ヒガ起ラヌト云フコトニナレバ無益ヂヤナイカデ若シ未ダ調ベラセヌカラシテ何トモ言ヒマセヌガ外ノ法律ニ許スベカラザルモノ丶アル場合ニハヤハリ本法ニ依ツテ許スベカラザルコトニナルンダカラ是デ宜イヂヤナイカト云フコトナレバ商法ト云フコトモ拔イテ置イテ本法ノ規定ニ據リト云フテ置ク方ガ簡單ヂヤナカラウカ商法ト此二ツノ法ニ依ツテ許ルスベカラザルモノ云々ト云フト却テ外ノ方ノ規定ニ依ツテ許ルスベカラザルモノヲ發見シタトキニハ此規定ニ依ツテ抹消ノ申請ハ出來ナイト云フコトニナルノデ趣意ガ未ダ分リマセヌガ卽チ商法又ハ本法ノ規定ニ依リテト云フ必要ガ如何ナ㸃ニアラウカ却ツテ他ノ疑ヒヲ起シハシナイカト云フ御尋デアリマス
○四番(齋藤十一郞君)
確カ如何ナル條件ガアレバ登記ヲスルカト云フコトニ付キマシテハ商法トソレカラ非訟事件手續法ニ規定ガアルダケデアリマシテ商業登記取扱ヒ手續ト云フ省令ガゴザイマスルガ其中ニハ登記其モノニ付テ許ルスベキモノカ許ルスベカラザルモノカト云フ標準ニナルベキ規定ハナイノデアリマス此㸃ハ私ハ斷言ガ出來ヤウト思ヒマス只許ルスベカラザルモノト書キマシテハ如何デゴザイマセウカヤハリ其商法ノ規定ニ反スルカ本法ノ規定ニ反シテ許ルスベカラザルト書イテアリマシタ方ガ第一此現行法ノ百五十一條ノ規定ニモ適ヒマスルシソレカラ是ハ其登記ノ手續ハ成ルベク其登記所ノ役人適用ヲ致サセマスル規定デアリマスカラ成ルベク其詳細ニ規定ノアル方ガ宜イノデアリマスドウゾ左樣ニ御承知ヲ願ヒマス
(「モウ別ニ議論モアリマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
他ニ御發議モナケレバ是ハ異議ナイト認メマス
○二十二番(奧田義人君)
チヨツト私ハ敢テ動議ト云フ程ノコトデモアリマセヌケレドモ御相談旁々申上ゲテ見タイト思ヒマスルノハ本案ハ先刻主査委員長ヨリノ御話並ニ起草委員ヨリノ御話ニ依ツテ見マシテモ非常ニ御急ギニナツテ居ルヤウデモアリ多分今日ノ會議デ全部ヲ御議定ニナル豫定デアラウカト存ジマス而シテ會員諸君ハ皆是ハ十分ニ讀ソデモ居ラル丶コトデアラウカ知ラヌト思ヒマスカラ此以後朗讀ヲ御省キニナツテ幾分カデモ時間ヲ御省キニナリソレカラ手續法ノコトデアリマスカラ一々御說明ニナラナクテモ大抵皆諸君ガ御硏究ノ結果分ツテ居リハシナイカ知ラソト私ハ察シマスル若シモ異議ガアレバ異議ノアル人ガ質問ヲセラル丶ト云フダケニ止メテ御進行ニナツタラバ如何デアラウカ知ラント氣付キマシタノデチョット動議ト云フ程ノコトデモナイケレドモ會長ニ意見ヲ述ベマシテ若シ諸君ニ御異議ガナケレバサウ云フ御取計ラヘニナサツテハドウデアリマスカ
(「贊成」又ハ「異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
今二十二番ノ注意ノ如ク御異義ガナケレバ其方針デ議事ヲ進行シマス百五十一條ノ二カラ百五十一條ノ五マデヲ束ネテ問題ニ供シマス
(「異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
別ニ發言モナイカラ御異議モナイト認メマス爰デ百二十五條中ノ修正――初メノ所ヲ問題ニ致シマス
(「異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
別ニ御異議ハナイト認メマス、第百六十四條ト第百六十五條
(「異議ナシ異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
次ニ移リマス、第三編第三章云々ト云フ所カラ第百七十一條、目錄ハ別ニ議ニ掛ケル程ノコトハアリマセヌ――
○二十一番(磯部四郞君)
此「法定代理人カ無能力者ノ爲メニ商業ヲ營ム場合ニ於テ登記ヲ申請スルニハ申請書ニ法定代理人タル資格ヲ記載シ親族會ノ同意ヲ得タルコトヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス」(「朗讀ハ省略ヲ願ヒタイ」ト言フ者アリ)トソコデ私ノ考ヘマスニハ法定代理人ガ後見人カ何カデアリマストイッデモ親族會ト云フモノガアリマスガ親權者ガ法定代理人トナルト親族會ハ要ラヌソコデ爰デハドノヤウニヤルノデスカ
○四番(齋藤十一郞君)
實父ノ場合ニハ要ラヌケレドモ繼父繼母叔母デスナサウ云フ者ハ要ルノデスナ其場合ヲ見テ居ル
○二十一番(磯部四郞君)
爰ニハ唯法定代理人タル資格ヲ記載シ親族會ノ同意ヲ得タルコトヲ證スル書面ト云フノハ絕對ニイツデモ要ルヤウニ見エマスカラ
○四番(齋藤十一郞君)
是ハイッデモ要ル、要ル場合ダケニ限ツテ此規定ガアル
○二十一番(磯部四郞君)
ア丶サウカソレヂヤ父ノトキデモ要ルノデスナ
○四番(齋藤十一郞君)
父ノトキニハ要リマセヌカラ
○二十一番(磯部四郞君)
ハー判ジモノ見タヤウデスナ
(「異議ナシ異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
次ニ移リマス第百七十二條第二項ト云フ所カラ第百七十七條マデ
○三十四番(松波仁一郞君)
百七十二條ハ文字ノ整理ダケデスカ
○四番(齋藤十一郞君)
現行法ノ百七十二條ノ第二項ノ第二號ヲ御覽下サリマスト株式會社ニ於テハ取締役トナツテ居ル現行法ニ於キマシテハ申スマデモナク取締役ガ皆代表者デアリマスカラ代表スベキト云フ文字ハ要ラヌノデアリマスケレドモ今度ノ改正案ニ於テ取締役ノ中ニ代表者ト非代表者ト兩方認メマシタ結果此申請ハ會社ヲ代表スベキ取締役カラ爲セル趣意デアリマス
○三十四番(松波仁一郞君)
サウスルトチヨツト百七十四條現行法ト比較シテ――此代表スベキト云フコトガ兩方ニ掛カルノデスケレドモ文字ノ用法ハ、、、、シテ居ルヤウニ幾分カ取締役ト、、、、シテ下サル方ガ其誤解ダケハ防ゲルヤウデアリマスガ
○四番(齋藤十一郞君)
ソレハ現行法ニ御慣レテ居ルカラサウデアラウト思ヒマスガ今度代表取締役ト云フ會社ガアルト直グ代表スベキ取締役ト斯ウ御解釋ガ附クダラウト思ヒマス
○議長(岡部長職君)
次ニ移ツテ宜ウゴザイマスカ
(「異議ハアリマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
第百八十二條ノ二ト三、、、、
(「異議ナシ異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
御異論ナイデスカ――次ニ第百八十四條第三項ヲ削ルト云フ所カラ第百八十四條ノ四マデ
(「異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
宜シウゴザイマスカ――第百八十五條カラ第百八十六條マデ
○十八番(長谷川喬君)
何ダカ餘リ急イデ居リマスカラ能ク分リマセヌガ此百八十五條ノ三ト云フノハ「前條ノ規定ハ商法第百八十八條ノ規定ニ依リ合名會社ニ付キ爲スヘキ登記ニ之ヲ準用ス」ト斯ウ書イテアリマシテ卽チ前條ノコトヲ全部準用スルノデアリマスカラ前條百八十五條ノ二ノ商法第百十八條第二項トアル下ニ「及ヒ商法第百十八條ノ二ノ規定ニ依リ」ト云フ是ダケヲ加ヘレバ簡單デ濟ムコトデハナイカト思ヒマスガ
○四番(齋藤十一郞君)
ソレハ御尤モノナソデゴザイマスガ如何デゴザイマセウカ是ハ其商法ノ百十八條ノ規定ガ百十八條ノ二ニ準用ニナツテ居ルノデスガ實體法ノ本法ノ方ガ準用――是ハ無論斯ウナラナケレバナラヌノデアリマセウガ何方ラデモ宜シウゴザイマスケレドモ準用ト云フ方ガ宜クハナイカト思フノデス
○十八番(長谷川喬君)
是ダケノ文字ヲ加ヘレバ簡單デ濟ムノデスネ二項ノ下ヘ「及ヒ商法第百十八條ノ二」ト云フ文字サヘ加ヘレバ一條ナクテ濟ムヤウデアリマスナ
○四番(齋藤十一郞君)
チヨツト御待ヲ下サイ少シ問題ガ、、、、
○二番(岡野敬次郞君)
是ハ長谷川サンノ御意見ノ通リ第百八十五條ノ二ノ中二百八十五條ノ三ヲ入レテ無論其コトハ濟ム譯デアリマスガ實質ニ於テハ何等ノ變リハナイノデアリマスガ、所ガ申スマデモナク商法ノ百十八條ノ方ハ合資會社ノ無限責任社員ノ全員又ハ無限責任社員ノ退社シタ場合ソレハ二百十八條ノ二ニ於テハ組織變更ノ場合デ事柄ハ違ウ事柄ハ違ウガ申請ノ手續等モ併セテ規定スルコトモ理由ノアルコトデアリマスカラ場△ロガ違ツタカラ手續ノ方モ別ニシナケレバナラヌト云フ理由ハ餘リ重キヲ置カヌノデアリマスケレドモ實ハ御承知ノ通非訟事件手續法ノ拵ヘ方ガ一々場合ヲ揭ゲテ準用シテ居ルモノデスカラソレデ現行ノ非訟事件手續法其モノニ恰度今長谷川サンノ御意見ノヤウナ場合ハ幾ラモアルソレヲ一々各條ニ揭ゲテ居ルモノデスカラ實ハ體裁ニ倣ツテ玆ニヤハリ別條ニシタノデアリマスケレドモ事柄ハ孰レニシテモ同ジコトデ私ハ異議ハアリマセヌガ唯現行ノ非訟事件手續法ノ體裁ニ倣ツタト云フヨリ外ニハ申シヤウハナイノデアリマス
○議長(岡部長職君)
別ニ發議ハナイノデスカ
(「ゴザイマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
然ラバ次ニ移リマス第百八十七條第二項ト云フ所カラ第百九十二條マデ
○十七番(志村源太郞君)
チヨツト伺ヒマスガ株式ノ引受ヲ證スル書面ト株式ノ申込ノ書面トノ違ヒバ忘レマシタガ
○四番(齋藤十一郞君)
發起人ガ株式ノ全部ヲ引受マスルトキニハ申込證ト申サヌノハ現行法ノ規定カラモ明カデアラウト思ヒマス其外ニ株式ヲ募集致シマシタトキニ於キマシテモ發起人ノ持株ハ何程ト云フコトヲ前以テ引去ツテ置キマシテソレハ餘リノ株ニ於テ發起人ガ引受ルノデアリマシテ申込證ハ別ニ作ラナイ實況デハアリマスマイカト思ヒマスソレカラ又其金錢出資デナク物品出資ノ場合ニモ或ハ其申込證ヲ作ラズシテ引受ケルコトニナルノデアラウト思ヒマスソレ等ノ區別ガゴザイマスカラ
○十八番(長谷川喬君)
序デダカラ――現行法デハ訴訟事務ノアル場合ハ云々スベシト云フ若シアツタ場合ニハ云々ノ場合ト斯ウ童目イテアリマスガ株式ノ引受ヲスル場合トシナイ場合トアツテ詰リ玆ニ言フノハ引受ノアリタル場合ニ當ルノデアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
左樣デアリマス現行法デモ必ズシモサウハツキリ言ハ父原則ト云フヤウナモノガ極ツテ居ルヤウニモ見エナイノデスナマアソレデ此改正案ノ書方ハ添付書面トシテ書イテアリマスル中デ性質上ゴザイマセヌモノハ無論添付スル必要ハナイモノト自ラサウナルト云フノデアリマス
(「異議ハアリマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
別ニ御發議ハナイノデスカ――次ニ第百九十三條ノ二カラ第百九十四條削除ノ所マデ
○十九番(田部芳君)
此百九十三條ノ三トソレカラ百八十二條ノ三トヲ比較シテ見マスルト云フト合名會社ニ付テノ規定トソレカラ株式會社ニ付テノ規定トノ違ヒハアルケレドモ其他大體同ジヤウデアルヤウニ見エルノデスナ若シ其通リデアルトシタナラバ此百三十九條ノ三ト云フ規定ヲソレノ代リニ第八十二條ノ三ヲ準用シテ濟ミハシナイカト云フ疑ヒヲ持ッテ居ルノデスガソレハドウ云フ、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
其㸃ハ先程岡野委員カラモ述ベラレマシタ通リ現行非訟事件手續法ノ立テ方ガモウ隨分詳細ニ規定シテアリマスノデ準用ノ規定モ無論ゴザイマスケレドモヤハリ合名會社ハ合名會社株式會社ハ株式會社別々ニ書クコトニナツテ居リマスノデアリマスカラ其筆法ニ倣ヒマシタノデアリマス
○十九番(田部芳君)
ソレモ一ツノ理由ニナルカモ知レマセヌガ此現行法ノ百十五條ノ如キモノモ之ニヤハリ類シテ居ル規定デアリマシテヤハリ準用シタラバ宜クハナイカト言ヒマスルノデスガ
○二番(岡野敬次郞君)
チヨツト是ハ成ルベク其準用デ濟ムナラバ準用ニシタイノデアリマス所ガ百八十二條ノ三ニハ申請書ニ添付スベキ書面中ニ第百七十九條ノ第二項ニ揭ゲタル書面ト云フノガアツテ其百七十九條第二項ニ揭ゲテアル書面ト云フノハ何デアルカト云フト「社員中ニ未成年者又ハ妻アルトキハ其社員タルコトニ同意ヲ爲スヘキ者ノ同意ヲ證スル書面ヲ添付スルコトヲ要ス」是デス――是デ此何ノ方ハ株式會社ノ方第百九十三條三ノ場合ニハ百八十二條ノ第二項ニ揭ゲタル書面ト云フコトニナツテ居ルソレデ實ハ百七十九條ノ第二項ノ代リニ第百八十九條ノ第二項ヲ入レテ準用スルト云フ形ニナレバ斯ウヤツテ宜イノデアリマスガ實ハ此事ニ付テ餘程考ヘテ見マシタノデアリマスガ如何ニモ準用ニ困ル如何ニモ百八十二條ノ三カラ百七十九條ノ第二項ヲ其代リニ第百八十九條ノ二項ヲ入レルト云フ譯ニナリマスカラチョット準用ノ形ニ甚ダ困ッタ結果デ玆ニ獨立ノ條ヲ置イタノデアリマス
○議長(岡部長職君)
別ニ異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
第百九十五條カラ第百九十八條マデ
○三十四番(松波仁一郞君)
會長ノ御宣吿ヲ取違ヒテ置ツタノカモ知レマセヌガ百八十九條ガモウ濟ンダソデスカ――百八十九條ト云フ、、、、
(「是ハ餘程前ニ濟ンダ」又ハ前ニ說ガアルナラバ」ト言フ者アリ)
○三十四番(松波仁一郞君)
私ハ此百八十九條ノ一號及ビニ號ヲ左ノ如ク改ムト云フ此一號ヲ御改メニナツタ理由ヲ極ク簡單ニ伺ヒタイノデス
○四番(齋藤十一郞君)
此一號ト云フノハ全額拂込ノコトヲ證スル
○三十四番(松波仁一郞君)
サウデス
○四番(齋藤十一郞君)
是ハ會社ノ登記簿カラモ直グ分カル添付セシムル必要ハゴザイマセヌ其會社ノ登記簿ニ書イテアリマスカラソレデ削リマシタ
○二番(岡野敬次郞君)
是ハ其今齋藤君ノ述ベラレマシタ通リデアリマスガ恰度一號ハ形ノ上カラ言ヒマスト株式ノ引受ヲ證スル書面ガ各員全額ノ拂込アリタルコトヲ證スル書面ニ代リマシタケレドモ事柄カラ言フト要ラナイカラ廢メタンデソコデ株式ノ引受ヲ證スル書面ハ必要デアルガ恰度形カラ言フト空家ニ嵌ツタ譯デアリマス
○十八番(長谷川喬君)
本條ハ濟ミマシタカラ別ニ質ス程ノコトモアリマセヌケレドモ百九十八條ト云フノハ元ノ所ニハ此社債ノ登記ト云フコトガアリマシタカラソレデ宜ウゴザイマシタケレドモ此社債登記ノコトガ九十八條ノ二トナツテシマウト百九十八條ト云フモノハ百九十五條ノ一部分卽チ資本ノ增加並ニ辨償ノ場合ノ登記ニナリマスカラ寧冒百九十五條ノ主義ニ倣ツタ方ガ宜クハナイカ其間ニ九十五條ノ二トカ六トカ何トカエライ(此時注意スル者アリ)ヂヤ取消シマス
○議長(岡部長職君)
サウスルト此數條モ別ニ異議ハアリマセヌカ――御異議ナイト認メマス第百九十八條ノ二カラ第百九十八條ノ三マデ
(「是ハ議論アリマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
御異議ガナイト認メマス第百九十九條カラ二百六條中ト云フ所マデ
(「異議ハゴザイマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
異議アリマセヌカ異議ガナイト認メマス、次ニ附則ノ全部――之モ別ニ御異議ゴザイマセヌカ
○二十番(花井卓藏君)
附則ノ第二項デス二項ト云フカ何ト云フカ二番目ノ二行目ニ書イテアルソレカラ三行目ニ書イテアル所ダケノ一ツ御說明ヲ願ヒタイ六カシクテ分ラナイ
○四番(齋藤十一郞君)
此附則ノ第二項ト第三項ニ書イテアリマスル規定ハ吾々共ノ中ニ於キマシテモ是ハ或ハ不必要ヂヤナイカト云フ話モ一旦ハアツタノデアリマス所ガ現行非訟事件手續法ノ附則デアリマス附則ノ第二百九條ト云フ所ニ非訟事件手續法其他從前ノ法令ニシテ本法ノ規定ト牴觸シ又ハ重複スルモノハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス、本法施行前ニ裁判所カ申立テヲ受ケ又ハ着手シタル事件ハ舊法令ニ依ル」ト斯ウ云フ規定ガアリマスソレデ非訟事件手續法改正法律ガ實行セラレマスルト只今朗讀致シマシタ第二百九條ノ第一項ノ如キハ趣意ハ自ラ斯ウナルノデアリマス是ハ其言フヲ俟タナイノデ修正ニナリマシタ舊法ハモウ當然消滅スルノデサウ致シマスルト非訟事件手續法ノ二百九條ノ第二項ノ趣意ガドウナルノデアラウカ現行法ニゴザイマシテ此修正案ノ方ニアリマセヌト云フトマダ少クトモ其疑ヒガ遺ルソレデ此調和ヲ執リマシテ此第二項ヲ入レマシタ之ヲ入レマスル以上ハヤハリ第三項ノ規定モ當然ラシイコトデアリマスケレドモ是モ其疑ヒヲ避ケルタメニ入レテ置ク方ガ宜シイト斯ウ私ハ思ツテ居リマス
○二十番(花井卓藏君)
非訟事件手續法ノ二百九條ノ二項ノコトハ、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
本法施行前ニ裁判所ガ申立テヲ受ケ又ハ着手シタル事件ニ付テハ既ニ其消滅シテ居ル規定ヲ適用スルカ新法ヲ適用スルカ斯ウ云フ疑ヒガ起ルト思フ、、、、
○二十番(花井卓藏君)
消滅シテ居ル法律ヲ適用スルト云フノハドウ云フ場合ナソデ、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
消滅シテ居ルト云フノハ、、、、
○二十番(花井卓藏君)
私ハ其要ラヌダラウト云フ解釋ヲ執ルノデスケレドモアナタノ今ノ御說明デ尙ホ要ラヌダラウト云フ解釋ガ執レル消滅シタル規定ヲ適用スルト云フ疑ヒガ貽ルト云フノハドウ云フーソラ疑ヒニモ何モナラヌデハナイカ
○四番(齋藤十一郞君)
消滅シタル法律ノ適用ヲ受ケル譯ハナイノデスガ、、、、
○二番(岡野敬次郞君)
斯ウ云フ此非訟事件手續法改正ノ爲メニ例ヘバ登記ノ申請者ガ變ツテ居ル場合ソレカラ登記ノ申請ニ付テ添付スベキ其書類ノ變ツテ居ルノガアル非訟事件手續法改正ノ爲メニ、ソレデ若シ既ニ其受理シタ事件ニ付テ新法ノ規定ヲ適用スルト云フコトニナルト申請者ガ法律ノ規定ノ變ラナイ――或ハ添付書類ガ整ツテ居ラヌト云フコトノ結果ニナル所デ手續法ノ改正ノ爲メニ新法ヲ適用スルト云フコトハ到底ナイコトデアルカラシテソレデ從前ノ規定ニ依ルノガ當然デアルカラ是ハ要ラヌト云フコトデアルナラバ私ハ一ツノ御議論デアルト思フノデアリマスケレドモ齋藤君ガ現行非訟事件手續法ノ第二百九條第二項ヲ引カレタ理由ハ現行非訟事件手續法ニヤハリ舊法ニ依ルト云フ明文ガアルカラ此附則ニモヤハリ同樣ノ明文ヲ置カヌト彼是對照シテ現行法ハ舊法ニ依ル趣意ヲ執ッタガ此法律ハ新法ニ依ルト云フ主義ヲ執ツタカノ如キ疑ヒヲ起スト行カヌト云フ所カラヤハリ此現行ノ非訟事件手續法第二百九條ノ第二項ニ倣ッテ此二項ヲ置イタソデアルト斯ウ云フ齋藤君ノ御說明ノ趣意ダラウト私ハ思ヒマス
○二十番(花井卓藏君)
ソレハ分リマシタ三行目ハドウデス
○四番(齋藤十一郞君)
是ハ其商法ノ改正案ノ中ニ株式會社ノ設立ニ付テ改正法實施後モ或ル場合ニ於テハ舊法ノ規定ヲ適用スル規定ニナツテ居ルデ左樣ナ場合ニ只今岡野サンノ述ベラレマシタ通リニ新法ノ此登記ノ裁判所ガ既ニ受理シテ居ッタ事件ニハ舊法ヲ適用スルト斯ウ云フコトダケヲ書キマスルト未ダ受理シナイ事件デアツテ而カモ實體法ノ舊法ヲ適用スル場合ニハ新法ヲ適用スル趣意デアルカノ如キ疑ヒガ起ルソレ故三貫體法ガ舊法ノ規定ヲ適用スル場合ニ於テハ手續法ハヤハリ舊法ノ規定ニ依ラシムルト斯ウ云フ趣意ヲ明カニスル必要ガアル
○二十番(花井卓藏君)
分リマシタ
○三十一番(穗積陳重君)
此附則ノ第一號ニ「本法ハ商法中改正法律施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス」トアリマス此商法中改正法律ト云フノハ定メテ先頃玆デ議定ニ相成リマシタ法律案ガ法律ニナツタトキノコトヲ云フ此第一回ノ大修正法律ヲ指スノデアラウト思ヒマスガ此商法中改正法律第一項ニハーソレカラ第三項ニハ商法中改正附則云々ト云フモノガ此所ニ於テ規定セラレ今度提出ニナリマスル案ノ固有名詞ニデモ之ガナル譯デゴザイマセウカ是カラ先キノ商法中改正法律幾年出ハシマイガ是マデモアリハシナイカト思ヒマスガ此唯改正法律ノ固有名詞ニナサル丶御考ヘデアリマスカ
○二十番(花井卓藏君)
只今ノ穗積委員ノ御質問ニ關係ハ何ニモアリマセヌガヤハリ此第一項ニ付テノ疑ヒデスガ此條文ヲ一番末項ニ揭ゲラレタナラバ其所ヲ得タモノト私ハ思フタノデアル一番前ニ揭ゲラレタノハヤハリ特段ナル理由デモアルノデアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
穗積サンノ御尋ニ御答シマスガ此商法改正法律ト唄ツテアリマスルノハ御說ノ通リ先程議了致シマシタ彼ノ法律ヲ言フノデアリマシテソレデ彼ノ法律ガ此議題トナツテ居リマスル案ヨリモ前ニ發布ニデモナツテ居マスレバ法律第何號ト云フコトデ現ハシテ極ク宜イノデアリマスケレドモ同時ニ之ヲ發布スルト云フコトニナリマスルト洵ニ其現シ方ニ困リマスソレデ或ハ本法ト同時ニ公布セラル丶商法中改正法律ト云フヤウナ言葉デ書イテ見マシタケレドモ甚ダ不味イノデ之ヲ同時ニ公布致シマスレバ彼ノ法律中改正法律ヲ指スノデアルト云フコトハドウモ疑ヒハナカラウト、形ハ甚ダ不味イコトハ認メテ居ルノデアリマスソレカラ花井サンノ御尋デスガ此民法ヤラ此商法ナドノ法典是ハ施行ノ期日ノコトハズツト終リニ書イテアリマシタヤウニ私ハ記憶シテ居リマス民法モ總則ノ一番終リ――近頃ノ一番先キニアルヤウデアリマスカラ是ハ近頃ノ文例ニ倣ヘマシタ
○二十番(花井卓藏君)
何デモ斯ウ云フ書方ダト二項目以下ハ一項ノ中ニ締唱カレヌヤウナ氣冖持ガスルノデスナ
○二番(岡野敬次郞君)
此商法中改正法律案ノ附則デアリマス此附則ハ途ニ總會ノ決議ニ依ツテ此形ヲ取ルノガ宜シイト云フコトニナツタモノデアリマスカラ附則ニアリマスノデソコデ附則ノ第一條ニハ本法施行ノ期日ハ敕令ヲ以テ之ヲ定ムト云フノヲ先キニ置キマシテソレカラ跡ハ經過規定ヲ設ケタノデ是ハ其多ク斯ウ云フヤウナ形ニナツテ居ルヤウデアリマス此非訟事件手續法ニ付テモ附則前ノ分ハ卽チ非訟事件手續法ノ改正デアツテソレカラ附則ノ二項カラ三項マデガ所謂經過ノ規定デアリマスカラソレデ其ヤハリ其施行期日ヲ附則中ノ第一項ニ置イテソレカラ次ニ經過ニ關スル規定ヲ置クト云フ例ニ倣ツタ譯デアリマスソレデ實ハ此本法ハ商法中改正法律施行ノ日ヨリ之ヲ施行スト書イテサウシテ跡ニ經過規定ヲ書クト云フト恰度只今花井君カラ御尋ノ如クドウモイツカラ施行セラル丶カ分ラヌト斯ウ云フヤウナコトヲ其私モ疑ヒ且又論ジテ見タコトモアルノデアリマス餘リ其當時私ノ論ジタコトヲ考ヘテ見マスト云フト假リニ此二項以下ナイモノト見テ本法ハ商法中改正ノ施行ノ日ヨリ之ヲ施行スト云フト附則ヨリ前ノ箇條ハ此附則ノ箇條ニ依ツテ施行セラル丶ケレドモ其施行スル箇條ハイッカラ施行セラル丶カト云フコトハ又疑ハナケレバナラヌヤウニナル是ハ自ラ此ノ如ク書イタトキニハ同時ニ施行セラル丶ト云フ精神ヲ以テ立法セラル丶モノデアルト解釋スルヨリ致シ方アルマイト云フコトヲ私ハ其當時考ヘテ見タノデアリマスソレデ併シ其理窟ノコトハ措キマシテ勅令ニ致シマシテモ法徨厂ニ致シマシテモ附則ニハ第一ニ其コトヲ書イテソレカラ後ニ其經過ニ關スル規定ヲ設ルト云フノガ例ニナツテ居ルヤウデアリマス實ハ其例ニ倣ツタ一譯デアリマス
○二十番(花井卓藏君)
是ハ如何デスカネ御答ヲ得レバ直グ分カルコトデセウガ裁判文ナドニ書ク折ニハドウ云フ附則第二項附則第三項ト云フノデセウカ附則第二行目第三行目ト云フノデアリマスカヤハリ一項二項三項四項ト云フノデアリマスカ
○二番(岡野敬次郞君)
私ノ記憶スル所ニ據ルトヤハリ二項三項ト云フヤウデアリマス
(「モウ大抵議論ガゴザイマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
別ニ修正說ハ出マセヌカ
(「モウ異議ハゴザイマセヌ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
別ニ修正意見モアリマセヌカ然ラバ此附則モ異議ナイト認メマス是デ此案ハ議了致シマシタ次ニ商法施行法中改正法律案
○四番(齋藤十一郞君)
商法施行法中ノ改正法律案ニ付テ簡單ニ申上ゲマス要シマスルニ此規定ハ商法中改正法律案第二百六十一條ノ三ノ第五ヲ(「分リマシタ」ト言フ者アリ)分リマシタカ之ニ權衡ヲ得マスルヤウニ修正ヲ致シタ趣意デアリマス
(「異議ナシ」ト言フ者アリ)
○十番(鵜澤總明君)
是ハ本文ノ方ノ改正ノ規定ヘ廻ハシテ行ケナイノデスカ
○四番(齋藤十一郞君)
商法施行法ノ六十條ノ第一項ニ妙ナ規定ガアリマシテ、、、、
○十番(鵜澤總明君)
ソレヲ削ツテ罰則ノ方ニ本文ノ方ニ、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
罰則ダケデモ行カヌ第一項ノ實體ノ規定ガ、、、、
○十番(鵜澤總明君)
サウスルト一體斯ウ云フ餘リ罰則ニハ餘リ贊成シナイノデスガ六十條ノ二項ノ罰金ヨリモ改正法ノ方ノ權衡ヲ得ルタメニ是ダケノ額ニナツタト云フ親明ハ分ツテ居リマスガ此方チノ方ハ百圓以上千圓以下ノ過料ニナツテ居ル此六十條ノ二項バ――今度改正案ノ二項ノ方ガ「前項ノ行爲カ過失ニ出テタルトキハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス」ト云フコトニナツテ居ツテ兩方ガ實質ハ同ジモノデアルヤウニ思ハレマスガ特ニ三千圓以下ト云フ二千圓直段ガ上ツテ居リマスガ
○二十番(花井卓藏君)
同ジダ二百六十一條ノ三ノ一番、占、、
○十番(鵜澤總明君)
ソツチノ方カラハ分ツテ居リマスケレドモ六十條ノ二項ノ修正トシテハ罰金ガ少シ高過ギハシナイカト斯ウ云フ疑ヒガアル
○二十番(花井卓藏君)
ソレハ二百六十一條ノ三ノ三ニ同ジモノデスガソレハ本法ノ罰金ガ大ニ惡ルイ之モ權衡ハ能ク合ツテ居ル
○十番(鵜澤總明君)
ソレハ分ツテ居ルガ、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
チヨツト斯ウナツテ居リマス現行法ノ二百六十二條ニ「發起人云々十圓以上千圓以下ノ過料ニ處セラル丶トシテサウシテ第五號ニ「第百五十五條第一項ノ規定ニ違反シテ株劵ヲ無記名式トナシタルトキ」ト此過料ガ普通ノ場合ニ廣ク無記名式ヲ罰シタトキニハ千圓以下ノ過料ナンデソレヲ直シマシテ三千圓以下ノ罰金ト致シマシタノデスカラ恰度商法施行法ノ六十條ニモ百圓以上千圓以下デスカラ恰度三千圓ニ直シテ、、、
○十番(鵜澤總明君)
改正案ノ方トノ權衡ヲ取ツタノデスナ
○二十番(花井卓藏君)
此罰則ノ規定ガナカツタラ二百六十一條ノ背任罪ニハナルデセウ
○四番(齋藤十一郞君)
之ガナカッタラデスカ
○二十番(花井卓藏君)
私ハ其ナカッタラ無罪ニナリマスカ背任罪ニナリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
背任罪ハ損害ノ㸃ガドウデセウカ損害ヲ加ヘルト云フコトハ、無記名式ノ株劵ヲ發行シタト云フノデ會社ニ損害ヲ加ヘルト云フコトハ、、、、
(「異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(岡部長職君)
全部、然ラバ此案モ可決ト認メマス、一言御挨拶ヲ致シマスガ是ニテ豫テ調査ニ付シタルトコ冒ノ商法改正並ニ商法牽連ノ發案モ議了致シマシタル譯デアツテ委員諸君ガ非常ナル熱誠ヲ以テ審査ヲ途ゲラレテ今日ヲ見ルニ至ツタコトニ對シマシテハ深ク多トスル所デアリマス一言御挨拶ヲ申上ゲマス本年ハ是デ委員會モ終リマシテ孰レ又明年相變ラズ調査ヲ進メル所ノ案ニ對シマシテハ御盡カアランコトヲ希望致シマス
○午後五時二十五分散會