商法(~1951年)

第二次法律取調委員会 商法中改正法律案 議事速記録 第23回

参考原資料

備考

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法律取調委員會(商法中改正法律案附則ノ部)第二十三回議事速記錄
出席缺席
○議長(子爵岡部長職君)
是ヨリ開會致シマス、商法中改正法律案附則ノ部、是ハ豫テ審査會ニ於テ調査中デアリマシタ所ガ今度調査濟ノ報吿ガアリマシタノデ、本日總會ヲ開會致シマスコトニナリマシタ、第一ニ主査委員長カラ報吿ヲ求メマス
○一番(富井政章君)
此夏休ノ前ニ當總會ニ於テ今度ノ商法改正案ヲ議了セラレマシテ、其時ヨリ起草委員諸君ニ於テ其施行規定竝ニ非訟事件手續法ノ改正ノ調査ニ取掛ラレマシテ、夏休中非常ノ勉强デ施行規定ガ出來マシタ、非訟事件手續法モ案ハ出來マシテ唯今評議中デアリマスルカラ、近イ中ニ御手許ニ廻ハルコトニナルデアラウト思ヒマス、此施行法案ハ起草委員會ニ於テ愼重ニ審議セラレタノデアリマス、數回ノ會議ヲ開イテ十分ニ討議ヲ盡シテ斯ノ如ク極ツタノデアリマス、初メハ色々ノ案ガ出來テドウ極メタラ宜イノデアラウカ、殊ニ原則ハ舊法ニ依ルトスベキデアルカ、新法ニ依ルトスベキデアルカト云フコトニ付テモ、初ハ兩方ニ考ヘテ見テ其利害得失ヲ攻究セラレタ結果、途ニ意見ガ一致シテ玆ニ提出シタヤウニ極ツタノデアリマス、ソレカラ主査委員會ニ掛カリマシタガ、主査委員會ニ於テハ格別ヤカマシイ議論モナク大體起草委員會デ極ツタ所ヲ採用セラレタコトデアリマス、本案ノ大要ニ關シテハニ一ニノ大問題モアリマスルガ、ソレハ起草委員カラ說明ニナリマセウ、唯經過ダケヲ御報吿ヲシテ置キマス
○議長(子爵岡部長職君)
大體ニ付イテ御質問ノ亷ガアリマスレバ此際御質問ニナルヤウニ致シタイ
○三十五番(横田國臣君)
直ニ個條ニ這入ツテ戴キタイ
○議長(子爵岡部長職君)
大體ニ付イテ別ニ御質問モナイヤウデアリマスカラ逐條議ニ移リマス
○一番(富井政章君)
此附則ト云フコトニ付イテ起草委員カラ說明ガアラウト思ヒマスカラ、先ヅソレカラ御始メヲ願ヒタイ
○議長(子爵岡部長職君)
然ラバ附則第一條、是ダケヲ問題ニ供シマス
書記朗讀
第一條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
○四番(齋藤十一郞君)
本日ノ議題ニナツテ居リマス商法中改正法律案附則ノ形ニ付キマシテ先ヅ一言申上ゲテ置キタイノデアリマス、商法改正法律ノ施行規則ヲドソナ形デ條文ニ現ハスカ塾云フコトニ付キ'マシテ起草委員ノ中ニ於キマシテ色々考ヘヲ運ラシマシタノデアリマス、先ヅ大體三ッノ形ニ於テ規定ガ出來ルモノト考ガ付キマシタノデアリマス、其一ツハ商法施行法ノ例ニ倣ヒマシテ單獨ノ法律ト致スト云フニト、第二ガ商法施行法中ノ改正案トスルト云フコト、第三ガ此議案ノ形ニ現ハレマシタ附則ト致スコト、此三ッノ方法ガアルモノト云フ考デアツタノデアリマス、商法施行法中ノ改正ト致シマスルコトハ理窟カラ申シマシテモ或ハ議論ノ餘地ガアルカモ知レナイノデアリマス、又議論ノ餘地ガナイモノト假定シマシタ所デ却テ適用上困難ヲ生ズル、其譯ハ規定セラレマスル關係ガ誠ニ複雜致ス爲メニ適用上困難ヲ生ズルノデアリマス、ソレ故ニ先ヅ此形ノ方ハ採用セナイ方ガ宜カラウト云フコトニ相成ツタノデアリマス、次ニ單行法デ規定致ス方法デアリマスルガ、是ハ起草委員ニ於キマシテモ一旦採用致シマシテ、其形式デ掛ツテハ見タノデアリマス、然ルニ申上ゲルマデモナク此度ノ改正ハ商法全部ニ涉リマスル改正デゴザイマセヌ爲メニ、商法施行法ノ如ク立派ニ規定スルコトガ餘程困難デアリマス、先ヅ規定ノ形ヲ爲スト致シマシテモ商法中改正法律ト云フモノヲ何ト命名スルカト云フコトニ困難ヲ感ジマシタノデアリマス、此商法改正法律案ト施行規定トガ同時ニ提出セラルルノデゴザイマセヌケレパ《卽チ商法中改正法律案ガ法律第何號ト云フ形ヲ採リマシテ先ニ發布セラル丶コトニナリマスレバ施行規定ハ其法律ノ施行法トシテ甘ク書クコトモ出來マスノデアリマスケレドモ、同時ニ議會ニ提出スルコトニナリマスト、商法中改正法律ト云フモノヲ何ト稱ヘテ宜シイカ其言葉ニ誠ニ困難ヲ感ジタノデアリマス、矢張商法中改正法律ト云フヤウナ言葉ヲ用ヰル外ニハ致シ方ガナイコトニナリマス、左樣致シマスルト一個條一個條ノ規定ヲ見マスルト誠ニ語呂ガ惡シ餘程オカシイ規定ト相成ルノデ、是ハ先ヅ體裁ニ於テ餘ザ宜シカラヌモノデアルト云フコトニ決シマシタノデアリマス、殘リマスルモノハ附則ト云フ形ヲ採リマス方法デアリマスルガ、實ハ此方法ニ付キマシテモ斯樣ニ數十箇條ノ規定デアリマスルカラ、附則ノ形デ是マデ出來テ居ル法律ノ實例ハ餘リナイノデアリマス、中ニハ法律全部ノ改正デゴザイマシテ、初メヨリ第一條カラ順次ニ條ヲ逐ヒマシテ規定サレテアル法律デゴザイマスレバ、附則ノ部ニ至リマシテ本文ノ條ヲ逐ヒマシテ第何條ト書クコトガ出來ルノデアリマスケレドモ、一部修正ノ場合ハ條ヲ逐フテハゴザイマセヌガ爲メニ附則ノ所ニ參リマシテ條ヲ新ニ起サネバナラヌヤウナ必要ガアル、左樣致シマセヌトマルデ條ナシデアツテ甚ダ規定ガ錯雜致シマス、殊ニ引用ナド致ス場合ニ甚ダ錯雜ヲ來スノデアリマスカラ、ドウシテモ條ヲ附ケナケレバナラヌ、條ヲ附ケルト致シマスルト、此案ニ現バレル通リニ已ムヲ得ズ第一條第二條ト云フ順ヲ逐フテ附ケテ行カネバナラヌノデ、是モ甚ダ體裁トシテハ如何ナモノデアラウカ、餘リ立派ナ形デモナイヤウニ考ヘマシタノデアリマス、而シテ其實例モ殆ンドナイト申シテ宜シイノデアリマス、餘程現在ノ法律ヲ調ベマシタノデアリマスルガ、調方ガ不十分デアッタカ知レマセヌケレドモ、ツイ見當リマセヌノデアリマス、唯刑事訴訟法ダケハ附則ノ所ニ參リマシテ第一條第二條ト云フ條數ヲ逐ヒマシテ規定セラレテアリマス、是ガ唯一ノ例トナツテ居ル次第デアツテ、刑事訴訟法ハ御承知ノ通リ古イ法律デモアリマスシ、獪亦附則ノ所ハ餘リ條數モ多クナイノデアリマスカラ、刑事訴訟法トシマシテハ已ムヲ得ヌトシタ所デ、新ニ法律ヲ作リマストキニ何トカ宜イ方法ガアレバト思フテ餘程苦心ヲ致シマシタノデアリマスケレドモ、外ニ名案モゴザイマセヌガ爲メニ、先ヅ已ムヲ得ズ刑事訴訟法ノ規定ヲ逐ヒマシテ斯樣ナ形ニ致スト云フコトニナツタ次第デアリマス、ソレハ形ニ付イテノ經過ノ御報吿デアリマス、ソレカラ第一條ニ付キマシテハ趣旨ニ付イテハ別ニ申上ゲルコトモゴザイマセヌガ、唯勅令ヲ以テ規定スルコトニ致シマシタ、理由トシテ一言申上ゲテ置キマスルコトハ、御承知ノ通リニ商法ノ改正ニ俘ヒマシテ非訟事件手續法ノ改正モアルノデアリマシテ、其中ニハ裁判所デ登記簿ヤラ色々設備ヲ要スル事柄モアルノデアリマス、ソレデ其日取ヲ豫メ今日ニ於テ定メテ置クコトガ餘程困難デゴザイマスルカラ、是ハ實際設備ガ整ヒマスル日ヲ俟チマシテ敕令デ定ムル方ガ便宜デアルト云フ考ヘカラ敕令ニ讓リマシタ次第デアリマス
○二十三番(高木豐三君)
チヨツト伺ヒマス、サウスルト商法施行法ト云フモノハ依然トシテ存シテ居ルノデアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
左樣デアリマス、商法施行法ハ法律其モノハ此附則ガ出來マシタ爲メニ改正セラル丶コトハナイノデアリマス、但シ或規定ノ如キハ其内容ガ餘程變ツテ參ルモノモゴザイマセウ、或ハ改正案ト權衡ヲ得セシメマスル爲メ[ニ二個條改正ノ必要ヲ認メテ居ル規定モゴザイマス、イヅレ商法施行法ノ改正ニ付キマシテハ他日又議題ト致シマシテ此會場ニ現ハル丶場合ガアルト信ジテ居リマス
○二十九番(岡松參太郞君)
此附則ト云フ名前ヲ付ケラル丶ニ付イテモ別ニ異論ハナイノデアリマスガ、イヅレ是ハ商法改正法律案ノ一部トシテ出ルノデアリマセウガ、此附則ガドノ部分一ニ這入ルカ、是ハ當然商法ノ終リニ付クト云フコトガドコデ分リマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
其㸃ハ申落シマシタ、イヅレ此附則ガ議了セラレマシテ閣一議ヲ駐祕ヒマスル 場合ニハ、一ツニ纏}メマシテ「圓朋隅ニ提出スルコトニナルノデアリマス、ソレデ此附則トシテゴザイマス部分ハ既ニ議了セラレマシタ商法中改正法律案ノ末尾ニ付クコトニナルモノト御承知ヲ願ヒタイ
○二十九番(岡松參太郞君)
末尾ニ付クト云フコトガドウシテ分リマスカ、第何條ノ幾ツトシテアレバ宜イノデアリマスガ、今度ハ附則第一條トシテアル、是マデノ商法ニ這入ル場合ニドコニ是ガ這入ルカ
○二番(岡野敬次郞君)
先ヅ此議案ハ商法中改正法律案附則ノ部ト題シテアリマス、先ヅ附則ハ本法ノ施行ニ伴フノデ、卽チ施行ニ關スル規定デアリマスカラシテ、自カラ一番後ニ繫ガルト云フコトニナルベキモノト思フテ居リマス、又是ガ一ノ法律案トシテ出ルノデアリマスルカラ、獨立ノ法律デアルナラバ附則デナイ、矢張一ノ法律デアリマス、一ノ法律ニナレバ從來ノ附則ナルモノハ一番後ニ付クノガ當然デアリマス、併ナガラ此議場ニ於テ申セバサウ云フ趣意デ御議決ヲ願フノデアツテ、ソレデ宜シイノデアリマス、ソレカラ愈々發布セラレタ後ニハ附則ガドノ部ニ行クカト云フコトハ是ハ今度改正セラレマシタ商法ノ分ト此附則ノ分トハ一ノ法律トシテ發布セラル丶ノデアリマスカラ、吾々ガ便宜ノ爲メニ商法ヲ參照スルトキニ、ドウ云フヤウニ編纂スルカト云フコトハ別問題デアリマシテ、改正法律ト致シマシテハ先ニ改正セラレタ分ノミニ付イテ發布セラル丶ノデアリマスカラ、サウ云フ例ハ幾クラモアルノデアリマス、一向私ハ差支ナイト思ヒマス
○二十九番(岡松參太郞君)
私ハ此附則ノ前ニ斯ウ云フ條文ガ要ル、商法第六百八十九條ノ次ニ左ノ附則ヲ設ク、ソレカラ附則斯ウ云フコトニナラヌト是ガ一番終リニ付クト云フコトガドウモ分ラヌト恩ヒマス
○二番(岡野敬次郞君)
チヨツト御尋ネシマスガ、何條ノ次ト云フ御冖考デアリマスカ
○二十九番(岡松參太郞君)
末條ノ次デアリマス
○二番(岡野敬次郞君)
ソレハ末條ト云フノハドノ末條デアリマスカ
○二十九番(岡松參太郞君)
現行法ノ次デアリマス
○二番(岡野敬次郞君)
ソレハ間違デアリマス、商法改正法律ハ獨立ノ法律デアリマスカラ、現行法ノ末條ニ付ケル理由ガナイ、一ノ獨立ナル法律ヲ出シテ其獨立ナル法律ニ對スル施行規定デアリマスカラ、其獨立ナル法律ニ付キサヘスレバ宜イノデアリマス、現行商法ガ吾々ガ見ルト後カラ出タ法律ノミ改正セラレマシタケレドモ、此附則ナルモノガ改正セラレテ法典ノアトニ付クノデナイノデアリマス、將ニ發布セラレソトスル改正法律ノ後ニ付キサヘスレ、、ハソレデ宜イノデアリマス、アトハ商法ノ改正セラレタ法典ノドノ分ニ入レルカト云フコトハ吾々ノ便宜ノ爲メニ參照スルニ過ギヌノデアリマスカラ、ドコヘ入レテモ差支ナイ、ソレデアリマスカラアナタノ御考ハ既ニ在ル所ノ法律ト發布セラレタ法律ト云フモノガ一緖ニナツテ一ノ法律ニナル、斯ウ云フアナタノ御冖考デアラウト思ヒマスガ、私ハサウデナイ、既ニ出タ法律ガアトノ法律ノ爲メニ改正セラレタノデアツテ、其アトノ改正法律ノ施行規定ニナルノデアリマスカラ、其アトノ法律ノ卽チ今度提出セラレベキ法律ノ一番終リニ付キサヘスレバソレデ一向差支ナイ
○二十九番(岡松參太郞君)
ドウモ能ク分リマセヌ、此修正案ト云フモノハ此前ノ所デハ第何條ノ幾ツト云フ形ニナツテ居リマス、其所謂第何條ト云フモノハ現行商法ノ第何條デアル、現行商法ヘ持テ行テ朱ヲ加ヘルト云フ案デアリマス、ソレデアリマスカラ第何條ノ二トカ三トカ云フノデヤルノデアリマス、デアルカラ此現行商法ニドウ云フ修正ヲ加ヘヤウカト云フ案デアリマスカラ、此修正法ニ是ガ付イテ行ケバ現行商法ノドノ部分ニ此修正ガ加ハルト云フコトガ分ラナケレバナラヌト思ヒマス
○二番(岡野敬次郞君)
ソレハ私ハ見解ガ違ヒマスケレドモ、既ニ此議場デ議定セラレマシタ商法中改正法律案ト云フ一ノ法律ニナひマ ツテ出マスノデ其末條ガ「」ト云フノガ此新シイ法律ノ末條デアリマス、其次ニ附則トシテ第一條トシテ今問題ニナツテ居ルモノヲ繫イデ少シモ差支ナイノデアリマス、ソレデ商法ノ改正セラルニノデアリマス、固ヨリ此改正法律案ノ爲メニ變ヘラル尅ノデハゴザイマスケレドモ、矢張】ノ法律デアツテ、其法律タルコトニ於テハ現行商法ノ法典ト何ニモ違ヒガナイ、而シテ此分ノ施行ニ關スル規定デアリマスルカラ、獨立ノ法律トシテ出スガ宜イ、之ヲ吾々ガ參照スル場合ニ不便デアルカラト云フテ現行商法ノ一番終リ卽チ第六百八十九條ノ後ニ施行規則トシテ並ベテ附則ヲ付ケテモ差支アリマセヌケレドモ、ソレハ法律ノ鱧裁デナクシテ、吾々ノ參照ニスルニ過ギナイノデアルト思ヒマス
○二十九番(岡松參太郞君)
併シ今度ノ修正案ハ商法ノ中ニ這入ルノデアリマスカラ、現ニ法律取調委員會カラ出サレタ商法ト書テアリマス、此後ニ付ケナケレバイカヌ譯ニナリマス、ドウシテモ私ハイカヌト思ヒマス
○三十四番(穗積陳重君)
岡松サンノ御議論モ議論トシテハチョット面白イノデアリマスガ、併シサウスルト之ヲ商法ノ中ヘ本法ヲ送込ソデ仕舞ヒマスト大變ニ又困ルコトガ出來ルノデアリマシテ、例ヘパ第一條ニ本法ト云フコトガ直グ商法ノ中ヘ送込デ仕舞フト商法ガ施行セラレテ居ルノヲ又勅令ヲ以テ其期日ヲ定メ、本法ヲ送込ソデ仕舞フト商法ガ新ニナツテ仕舞ヒマスカラ、是ハ商法ノ附則デナイ、商法改正案ノ附則デアルカラ、ドウモ之ヲ向フヘ送込ンデ商法ノ第六百八十九條ノ後ヘ付ケルト非常ニ差支ガアル、前カラノガ商法ニ改正ヲ加ヘタノデアルカラト云フコトノ御議論トシテハ面白イヤウニ拜聽シマシタケレドモ、サウヤツタラ又大事ダラウト思ヒマス、實際上此附則ト云フモノガ出テ第一條ニ當嵌ルノハオカシイデスケレドモ、理由ヲ承ツテ見ルト餘程御硏究ノ上仕方ナシニ此處ヘ來タノデアルト思ヒマス、此通リデ仕方ガナイカト私ハ思ヒマス
○二十九番(岡松參太郞君)
獪伺ヒマスガ、此法律ガ法律ニナツタ場合ニ於テハ此附則ハ商法中改正法律附則ト云フコトニナリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
商法中改正法律附則ト云フ名前ヲ取テ獨立ノ法律トシテ出來ルカト云フ御尋ネト心得マスガ、、、、
○二十九番(岡松參太郞君)
サウデハナイ、是ハ法律ニナツタ場合ニ第何條ト云フ其時ニハ商法中改正法律附則第何條トシマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
分リマシタ、其場合ニハ明治何年法律第何號トスルノデアリマス
○二十九番(岡松參太郞君)
商法ニ附則トカ何トカ云フ名ガアルト便宜ダト思ヒマス
○四番(齋藤十一郞君)
商法中改正法律ト云フ、斯ウ云フ名稱ヲ作リマシタコトガ誠ニ困ツタカラ斯ウ云フ形ニナツタト云フコトハ先程繰返シテ申上ゲタ通リデアリマシテ、商法中改正ト云フモノヲ一ツノ斯ウ云フ名稱ニ致シマシテ、今度議侖日ニ提出スルモノダケニ付ケルト云フコトガ出來ナイ、將亷商法中改正法律案ガ出マストキニソレト區別ガ立タナクナル、ソレ故ニ附則ヲ引用スル上ニ於テ明治何年第何號法律附則トスルヨリ仕方ガナイト思ヒマス
○二番(岡野敬次郞君)
此附則ト云フノハ御承知ノ通リニ色々法律ニモ勅令ニモアリマス、今度提出セラレベキモノハ此議場ニ於テハ商法中改正法律案ト云フ名稱ニナツテ居リマス、ソレデ私ノ想像ニ過ギナイノデアリマスケレドモ、是ハ大分此法律ノ名ハ商法中改正法律案ト云フコトデ議會ニ提出セラレテ是ガ公布セラルル時分ニハ商法中改正法律ト云フコトデ公布セラル丶デアラウト思ヒマス、而シテ附則ガ特ニ商法中改正法律ノ附則ト云フ名稱ハナイ、唯附則トシテクツ付イテ行クノデアリマス、併ナガラ他日吾々ガ法律ヲ引用スルニ當ツテハ商法中改正法律ノ附則ト云フテ少シモ差支ガナイ、ソレガ法律上ノ名稱デナイ、法律上ノ名稱ヲ付ケル必要ガナイノデアリマス、矢張他ノ法律ニシマシテモ他ノ勅令ニ致シマシテモ唯名義ノナイ卽チ明治何年法律第何號トシテ附則トシテ引用スル場合ガアル、法律勅令ニ名稱ノアル場合ハ其名稱ヲ繼イデ第何條ト云フコトニシテモ差支ナイノデアリマス、是モ矢張商法中改正法律ト云フ題ガ法律ノ題ニナリマスナラバ其附則ヲ云フ時分ニ附則デハ分リマセヌカラ、商法中改正法律附則ト云フコトヲ云フノデアリマシテ、私ハソレデ差支ナイ、法律ノ名トシテハ商法中改正法律附則ト云フモノハナイノデゴザイマス
○二十九番(岡松參太郞君)
私ハ少シ意見ガ違ヒマス、商法中改正法律附則ト言ハル丶ヨリモ寧ロ商法附則ト云フ名ヲ付ケラルムヤウニシタ方ガ便宜ダラウト思ヒマス、ソレデ現行商法ノ終リニ付ケルト云フコトヲ明ニシタラ宜イト思ヒマス
○二番(岡野敬次郞君)
私ハ如何ニモ理由ガ分ラヌノデアリマスケレドモ、併ナガラ御」趣意ハ能ク分ツテ居リマス、吾々ノ言ハヌト欲スル所モ明瞭デアラウト思ヒマスカラ、重テハ私ハ申シマセヌ、唯獨立ノ法律ノ附則ガアルノニ其附則ニ持テ來テ別段ノ名稱ヲ附スル例ガナイ、而シテ岡松君ノ御考ノ如キコトハ現行商法ノ法典ガ赤イ字ニナルト云フコトヲ頭ニ御持チダラウト思ヒマス、私ハ赤イ字ニナルトハ思ハヌ、赤イ字ニナルモノハ經過デアツテ、此法律ノ發布セラルニトキハ獨立ノ法律デアリマスカラ其獨立ノ法律ニ附則ヲ付ケテ差支ナイ、商法ノ附則ニナルト云フコトハ理由ガナイ、ナゼナレバ岡松君ノ御考ニシタ所デサウデアル、赤クセラレタ商法ニ附則ノアルベキ道理ガナイ、ソレデアリマスカラ、之ヲ商法ノ附則ト云フコトハ擧理上ニ於テモ全ク不適當ナルモノデアルト思ヒマス
○三十四番(穗積陳重君)
岡松君ニ伺ヒマスガ、唯今述ベラレタ趣意、若シ御意見ノ如ク商法ノ後ヘ付キマスト、第一條ノ「本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」是ハドウ直シタラ宜イノデアリマスカ、商法中ノ改正セラレタ其朱書ノ部分デス、朱書ノ部分ニモ施行期日ト云フテ新ニ書ソトイカヌコトニナリマス
○二十九番(岡松參太郞君)
サウデス
○議長(子爵岡部長職君)
他ニ御發讓ハゴザイマセヌカ、附則カラ一條マデニ付イテ採決ヲ致シマス、原案ノ通リデ御異議ゴザイマセヌカ
「異議ナシ」ト言フ者アリ
○議長(子爵岡部長職君)
然ラバ可決ト認メマス、第二條
書記朗讀
第二條 本法ノ規定ハ本法施行ノ日ヨリ其施行前ニ生シタル事項ニモ亦之ヲ適用ス但從前ノ規定ニ依リテ生シタル効力ヲ妨ケス
○四番(齋藤十一郞君)
此第二條ノ規定ハ附則全體ニ通ジマスル原則ヲ定メタ規定デゴザイマス、商法施行法ノ第一條ニハ「商法施行前ニ生シタル事項ニ付イテハ舊法ノ規定ヲ適用ス」ト云フ原則ヲ極メテアルノデアリマスケレドモ、其第二十二條ニ至リマシテ「商法中會社ニ關スル規定ハ商法施行ノ日ヨリ其施行前ニ設立シタル會社ニモ亦之ヲ適用ス」ト云フコトノ規定ガ設ケラレテアリマス、ソレデ商法施行法ノ趣意ヲ考ヘテ見マスト其第一條ノ趣意ハ民法施行法ノ第一條ト同ジ趣意ヲ採リマシテ、新法ハ既存事實ニ適用セヌト云フ原則ヲ認メタノデアリマスケレドモ、會社ノ所ニ參リマシテハ既存會社ニモ適用スル方ガ新規定ノ性質上相當デアツテ、又其必要ガアルト認メタノデ、一大例外ヲ設ケタモノト思フノデアリマス、商法施行法ニ斯樣ナ趣意ガ採用サレテゴザイマスルカラシテ、起草委員ニ於キマシテモ第一ノ草案ニハ此趣意ヲ採リマシテ、先ヅ原則トシテハ新法ハ既存事實ニ適用セヌト云フコトヲ規定致シ、而シテ會社ノ所ニ參リマシテ施行前ノ設立會社ニモ新法ノ規定ヲ適用スルト云フコトヲ規定シテ見タノデゴザイマス、尤モドチラニ致シマシテモ本法ノ特別ノ規定ノアル場合ニハ其特別ノ規定ニ依ルト云フコトハ含ムノデゴザイマスガ、所ガ御承知ノ通リ今回ノ商法中改正ノ法律ノ規定ハ其大部分ハ會社ニ鬮係ノ規定デゴザイマシテ、又會社以外ノ規定ニ於キマシテモ、丁度商法施行法ノ二十二條デ認メマシタト同ジヤウナ趣意カラシテ、既ニ生ジタル事項ニモ新法ヲ適用セシムル方ガ宜シイト云フ規定ガ多々アルノデアリマス、デ書イテハ見タノデゴザイマスガ、折角大原則トシテ商法施行法第一條ノ如キ規定ヲ設ケテ見マシタ所デ、却テ特別ナ規定、例外ノ規定ノ方ガナカナカ數多ク規定スル必要ガアツタノデ、殊ニ會社ノ部ニ關シマスル新規定ガ最モ多數ヲ占メテ居ルノデアリマスルカラ、施行法ノ第二十二條ノ趣意ト一致セシメマスルト、却テ規定事項ノ方ガ新規定ヲ適用スル部分ニ屬スルモノガ非常ニ多クナル、ソレ故ニ必ズシモ商法施行法第一條ノ原則ヲ採ラネバナラヌト云フ理論上ノ必要モナイノデアリマスルカラ、施行規定ノコトデモアリマスルカラシテ、却テ此新法ノ規定ハ原則トシテハ施行前ニ生ジタル事項ニモ適用スル、斯ウ云フ趣意ヲ採リマシタ次第デアリマス、併ナガラ單ニ施行前ニ生ジタル事項ニモ適用スト云フ文字ダケデ規定致シマスルト、既往ニ遡ツテ施行ノ日前ノ關係ニモ適用スルト云フ恐モアリマスカラシテ、本法施行ノ日ヨリト云フ字ヲ加ヘタノデアリマス、丁度施行法ノ二十二條ニモ其通リニナツテ居リマス、獪但書ヲ加ヘマシタ趣意ハ、本法施行ノ日ヨリ施行前ニ生ジタル事項ニモ適用スダケデハ、既ニ法律上効力ヲ生ジテ居ッタ所ノ其効力ニマデ影響ヲ及ボス恐ガアル、ソレ故ニ其舊法ニ依ツテ生ジテ居ル所ノ効力ガ是ニ依ツテ妨ゲラレヌト云フ趣意ヲ明ニ致シマシタ次第デアリマス、簡單ニソレダケノコトヲ申シテ置キマス
○三十四番(穗積陳重君)
私ハ或ハ甚ダ稚ナイコトヲ伺フノカモ分リマセヌガ、若シ分リ切ツタコトデアルナラバドウゾ答ハ極ク簡單ニシテ置テ御貰ヒ申シテモ宜シイ、時ヲ費スコトバ好マヌノデアリマスガ、私ノ疑ガ斯ウ云フコトニ在ルノデアリマス、本文ニ於テハ「施行前ニ生シタル事項ニモ亦之ヲ適用ス」トアツテ、但書ニ從前ノ規定ニ依ツテ生ジタル効力ヲ妨ゲズト云フコトデアリマス、其事項ト云フコトデアリマス、事項ハ法律事項デナケレバ吾々ガ問フコトガナイ、法律ノ効力ヲ既ニ生ジテ居ナイ事項ナラバ何モ之ヲ書クニ及ブマイト云フ私ノ疑ヒデアリマス、ソレデ常ニ事項トナレバ法ノ規定ニ依ツテ生ジタル事項トナラバ効力ガ生ジテ居ルノデアルカラ、効力ヲ妨ゲズト云フ關係ガ如何ナモノデアルカ、或ハ但書ハ既ニ其所謂是マデアッタ所ノ既得權トカ何トカ云フヤウナ權利トシテノ効力或ハ利害關係ノ効力トカ云フヤウナ特別ノ効力ヲ指シタ意味デハナイカ、本文ノ事項ト云フノモ其法律ノ規定ニ依ツテ法律事項タル効力ハ生ジテ居ルモノデナイカト云フ疑ヒデアリマス
○四番(齋藤十一郞君)
成程御尋ネハ御尤モナ御尋ネデアリマス、本法施行ノ日ヨリ施行前ニ生ジタル事項ニモ適用スダケデアリマスル小、本法ノ施行ノ日ヨリ新規定ヲ適用致シマシテ、新規定ニ認メテアル所ノ効力ヲバ既ニ生ジタル法律事項ニモ適用スル恐ガアル?假リニ舊法時代ニ無效デアルトシテアルモノヲ今度有效デアル〔左樣ナ規定ガアルトシマスルト、但書ノ規定ガアリ々セヌ亦云フト、矢張本法施行ノ日ヨリ又有效ニナルト云フヤウナ、恐ラクサウ云フコトガアリマスマイケレドモ、ナイトハ限ラヌノデアリマス宀其適用上ノ疑ヒヲ避ケマスル爲メニ此但書ヲ加ヘマシタ次第デアリマス
○一番(富井政章君)
此事項ト云フ言葉ガ極メテ漠然トシタ言葉デアツテ、民法商法ノ適用上ニ於テモ是マデ屢々疑義ヲ生ジタコトデアリマス、、其上ニ斯ウ云フ効力ト云フ言葉モ甚ダ漠然トシテ居ツテ、或ハ是デハ總テノ場合ヲ言ヒ盡シテ居ナイカモ知レヌト思ヒマス、ドウモ此條ニ書イテアルコ干ヲ具體的ニ言ハフトシテモ言ヘナイノデ、必ズ叭脫漏トカ結果ガ却テ宜シクナイカラシテ、裁判官ノ明敏ナル運用ニ任スト云フコトヨリ仕方ガナイ、ドウモ事項涉云フコトハ必ズシモ有效ノ法律トノミ解スルコトモ出來ヌ、ソレカラ此但書ノ効力ト云フコトハ通常ハ既得權ト云フコトニナルノデアリマセウガ、」既得權ニ障ハラナイト云フダケデモナイデアラウト思ヒマス、丁度齋藤君ガ言ハレタ例ノ如キハ一ノ善イ例デアラウト思フ、舊法時代ニ卽チ此法律ノ施行前ニ無效ノ法律行爲ヲナシタ、例ヘバ無效ノ會社設立ヲナシタ、新法ニ依レバ有效デアルト云フ實例ハナイカモ知レヌデス、ケレドモ假丿ニアルトシタ所デ理論上カラ言ヘバ、既往ニ遡ルト云フコトハナイ譯デアリマスケレドモ、既ニ斯ウ云フ第二條本文ヲ置ク以上ハ文字カラ言ヘバ、遡ツテソレモ有效トナルト云フヤウナルト云フヤウナ形ニナルノデアリマス、ソレデ但書ヲ其場合ニハ効力ト云フノガ義務ト云フ意味ノ効力デナイ、確定的ニ生ジテ仕舞ッタ結果ト云フヤウナコトデ、ソレモ一ツノ効力デ、」廣イ意味ニ於ケル効力ト云フ意味デアリマス、兎ニ角私ノ解スル所デハ事項ト云フコトガ必ズシモ法律事實トノミ限ラナイ、有效ノ法律事實トノミ限ラナイ、又此効力ト云フコトガ通常ハ既得權デアルケレドモ、既得權ニモ限ラナイト思ヒマス
○三番(富谷鉎太郞君)
但書ニ付イテハ私モ疑ヒヲ懷キマシタ、少シバカリ是ガ出來テカラモ調ベタノデアリ町、ス、此働ノアルコトハ附則中デモアルカト思ヒマス、例ヘバ實例ヲ探ツテ見マスト、此十一條ニモ九十八條ノ三ノ第二項ノ適用ノ場合ナドハ是ハ施行ノ日ヨリ施行前ニ生ジタル事項ニモ亦之ヲ適用スダケデアリマスト、此施行前ニ訴訟ヲ起シテヤツテシマツタト云フ場合ガアル、其事件ガ控訴ニ繼績シテ居ルト云フトキニ、先ノ辯論ガ無效デアルカ有效デアルカト云フヤウナ疑ヲ起シハシマスマイカト思ヒマス、其元ノ訴訟法ノ規定ニ依ツテ保護セヌデモ宜カツタノデアルカラ、其場合ニハ法律的ノモノトシテ罰シテ居ツタ、此法律ガ施行サレタガ爲メニ、後ニ至ツテ影響ヲ受ケルト云フヤウナコトカ但書デナイト云フヤウニナルカト思フノデアリマス、若シサウデナイト控訴ニ行ツテ前ノ一審ノ手續ヲ破ラナケレバナラヌト云フヤウナ不都合ガ起ルカト考ヘラレマス、其他此但書ガ此施行法ノ例ヘバ三十二條三十三條等ニ於テ明瞭ニ分ツテ居リマスケレドモ、斯ウ云フ場合モドウモアリハセヌカト云フ疑ヒカラ第二條ヲ存シテアッタヤウニ心得テ居ウマス、私モサウ云フコトニ付イテ同意シタノデアリマス、ドウモ之ヲマルデ取テ仕舞フノハ疑デアリマス、字ノ現ハシ方ハ宜イト思ヒマセヌケレドモ、必要ノアルコトハ確カニアルヤウニ認メラル丶ノデアリマス
○二十九番(岡松參太郞君)
チョット私モ質問致シタイ、此商法施行法ノ第三條ニハ前ノ法律ニ依ルベキモノト云フ規定モプル、商法ノ施行ノ後ト雖モ獪此効力ヲ存ストアリマスガ、此意味ト此但書ノ意味ト同ジ意味デアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
チヨツト御質問ノ趣意ヲ確メタイ豫思ヒマスガ、此効力ヲ認メテアル所ノ但書ニ書テアリマスル、既ニ生ジタル効力ヲ認メテアリマスル所ノ從前ノ規定ガ生キテ居ルコト鹽ニナルカドウカ斯ウ云フ御尋デアリマスカ
○二十九番(岡松參太郞君)
但シ從前ノ規定ニ依リテ生ジタル効力ヲ妨ゲズト云フノハ既ニ生ジタル効力ハ妨ゲガナイガ、其効力ヲ其儘持テ行ク譯デナイカト云フ意味ニ解釋スルノカ或ハ又商法施行法ノ如ク從來ソモノニモ持テ行クモノト解釋スルノデアリマスカ、既ニ生ジタル結果ハ動カサヌト云フノデアルカ、サウデナイノデアルカト云フノデアリマス
○四番(齋藤十一郞君)
既ニ生ジタ゚ル効力ハ勤カサナイ、而シテ其効力カラ從前ノ規定ニ依テ生ジテ參ル所ノ効力モ矢張從前ノ規定ニ依テ判斷シテ宜イカドウカト云フノデスカ
○二十九番(岡松參太郞君)
左樣、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
其㸃デゴザイマスト一槪ニ御答ガ出來兼ネルソデアリマス、何モ特別ノ規定ノナイ場合ニハ從前ノ効力及ピ其効力ニ件フ所ノ効力ハ矢張認メテアル趣意デアリマスケレドモ一々ノ場合ニ付イテ規定ガゴザイマスノデ、殊ニ手形法ノ規定ノ如キハ色々ナ規定ガアリマス、一槪ニドノ場合ニモサウト云フコトハ御答致シ條マス、何モ特別ノ規定ガゴザイマセヌケレバ申上ゲルヤウニナラウト思ヒマス
○二番(岡野敬次郞君)
チヨツト一言シタイノデアリマス、此附則きこノ規定ト云フモノハ實ハ第三條以下第三十八條ニ至ルマデ――三十七條デスケレドモ、此附則ノ殆ド全部ト云フモノハ今度改正セラルベキ新條ニ付イテ殆ド每條施行規定ガアルヤウナ形ニナツテ居ルノデアリマス、ソレデアリマスカラ此三條以下三十七條ニ規定シテアル事柄、卽チ此法律ノ施行ニ件フモノトシテハ蓋シ第二條ガナクトモ或ハ足リルカモ分リマセヌ、デ吾々モ相當調査ヲ致シマシテ遺漏ナキ積リデハアリマスケレドモ、併ナガラ何分個條ガ多クアルノデアリマスシ、如何ナル事柄ガ將來起ラヌトモ限リマセヌカラ、ソレデ實ハ第二條ノ如キモノガナイト云フト原則ガナクナルヤウニナリマスカラ、如何ニ新法ガ適用シテ行ツテ宜シイカト云フ標準ガナイノヲ甚ダ心配スルノデアリマス、ソレガ故ニ第二條ヲ生カサウト云フコトニ御考ヘ下スツテ宜シイト思ヒマス、ソレカラ第二條ノ本文ニ付キマシテ元來此施行前ニ生ジタル事項ト云フノハ何デアルカ、又但書ノ規定ニ於テ生ジタル効力ハ何ゾヤ、斯ウ云フコトヲ餘リ嚴格ニ論ズルコトニナリマスルト云フト、是ハドウモ各人或ハ意見ヲ異ニスル所ガアルカモ分ラヌノデアリマス、鹽ツレデ何人ガ見テモ解釋上更ニ疑ヒノ起ラナイヤウナ適當ナ文字ガアレバ無論吾々ハ其文字ニ從ヒタイノデアリマス、併ナガラドウシテモ名案ガ浮ハヌノデアリマシテ、殊ニ民法ノ施行法律トシマシテモ、商法ノ施行法律トシマシテモ原則ノ取方ガ反對ニナツテ居リマスケレドモ、生ジタル事項ト云フ文字ヲ用ヰルコトニ於テハ殆ド、一致シテ居ルノデアリマシテ、蓋シ他ニ名案ガナイト云フ所カラ據ナク此文字ヲ撰ンダモノデアラウト推測ヲセラレマス、ソレデ先程岡松君カラ商法施行法ノ三條ノ効力ヲ存スト云フコトガアルガ、是ト同ジデアルカト云フ御尋ネデアリ゚マシタガ、但書ノ生ジタル効力ハ同意味デアルカト云フ御尋ネデアリマシタガ、此㸃ハ確ニ前例ニ違フモノデアルト云フコトヲ私一人ハ考ヘテ居リマス、商法施行法ノ三條ハ例ヘバ他ノ法律中ノ舊商法ノ規定ヲ引イテ第何條、商法第何條ト引イテ居ル個條ガアル場合ニ、現行商法ガ行ハル丶其時ニハ矢張特別法中ニ舊商法ノ規定ヲ引張ツテ居ツタナラバ、其舊商法ノ規定ハ獪効力ヲ存シテ居ルゾト云フ意味デアリマスカラ、生ジタル事項ニ付イテ生ジタル効力ト云フコトハ全ク違フノデアリマス、若シ比較ヲ取テ見マシタナラバ、實ハ商法施行法ノ第一條ニ生ジタル事項ト云フ方ニ比較ヲスベキ譯デアラウト思ヒマス、ソレカラ先刻齋藤君カラ若シ但書ノヤウナ規定ガナイト云フト現行商法ノ下ニ無效デアツタモノガ有效トナルト云フヤウナコトニ誤解セラル丶恐レガアルト云フ御話デアリマシテ、富井サンモ是ハ適例ト云フ御話デアリマシタガ、私ハ是ハ忌憚ナク申セバ適例ト考ヘテ居ラヌノデアリマス、生ジタル効力ト云フノハ何カ法律上ノ効力ヲ生ジタル場合ヲ指シテ言フノデアツテ、無效ノモノガ有效ニナル、但書ノ規定ガナクトモサウ云フコトガ斷ジテナイ、況ンヤ生ジタル効力ヲ妨ゲズト云フコトハサウ云フ意味デナイ、無效デアルコトガ確定シタモノガ新法施行ニナツテモ有效ニナラヌ、同ジク有效デアルケレドモ舊法ニ規定スルモノト新法ニ規定スルモノトガ異ツテ居ル場合ハ矢張舊法ニ依ル、斯ウ云フコトニ解釋ヲシタイノデアリマス、サウ云フ漠然タルコトヲ申シテモ適切デナイカモ知レマセヌガ、例ヘバ留置權ノ目的トシテハ有價證劵ガ加ハツタ、ソレデ現行商法ノ下ニ於テ有價證劵ガ留置權ノ目的ニナルカドウカト云フコトニ臼付キマシテハ見解ヲ異ニスルデアリマセウ、其疑ヲ叫避ケル爲メニ有價證劵ト云フ文字ヲ加ヘテ以テ一方ニハ其㸃ヲ明ニシ、他ノ方ニハ有價證劵モ亦留置權ノ目的ニナルニ差支ナイト云フコトヲ現ハシタ}譁デアリマス、是モ今ノ第二條ノ適用カラ言ヒマスト、嘗テ新法ノ下ニ於テ有價證劵ガ留置權ノ目的デナイト云フ解釋ヲ取ツタ場合ニ新法ガ行ハレテ之ヲ有價證劵ヲ留置スルコトヲ得ト云フコトニナツテハ餘リ必要ガナイコトニナリマスカラ、サウ云フヤウナ場合ニハ但書ノ從前ノ規定ニ依ツテ生ジタル効力ヲ變ヘナイ、斯ウ云フ意味デ私ハ解釋ヲシテ宜シイト思ヒマス、ソレカラ又會社ガ他ノ會社ノ無限責任社員トナルコトヲ得ズト云フコトヲ第四十四條ノ二ガ定メテアリマス、是ハ現行法ニ於テ商事會社ガ合名會社ノ社員トナルコトヲ得ルカドウカト云フコトニ付キマシテハ、今日議論ノ異ツテ居ル㸃デアリマス、私ハ得ズト云フ論者デアル、得ト云フ論者モ大ニアル、假リニ得ルト云フ論ヲ採ツテ、唯今會社ニ於テ合名會社ノ社員デアル者ガアルト假定シテ、此後ニナツテ此新法ガ行ハル丶時ニ其會社ノ無限責任社員タルコトヲ得ズトナツタナラバ退社シタル老ト見ルカ、或ハ依然トシテ社員デ居ラル丶カト云フコトモ矢張私ハ疑問デアラウト思ヒマス、此㸃ニ於テ或ハ他ノ諸君ト私ハ見解ヲ異ニシテ居ルカモ分リマセヌケレドモ、試ニ自分ダケノ考ヲ申述ベテ見マスレバ、私ハ矢張ニ條ノ規定ニ依ツテ新法施行ノ後ト雖モ尙無限責任社員デ居ラル丶、斯ウ云フヤウニ解釋シテ宜カラウカト思ヒマス、大體ニ條ノ但書ト云フモノハ議論カラ言ツタナラバ或ハ但書ガ私ハナクテモ宜シイモノト自分モ思フテ居リマス、併ナガラ先刻齋藤君カラ述ベラレタ如ク、施行前ニ生ジタル事項ニモ亦之ヲ適用ストシテ新法ノ効力ヲモ新法施行以後ハ動カスト云フヤウナコトニ誤解セラル丶ト云フ恐レガ文字上アルト思ヒマスカラ、ソレデ但書ヲ入レタ方ガ施行後ニハ明デ宜カラウト云フ意味ニ於テ、私モ矢張但書ノ存置ニ贊成シタ譯デアリマス
○一番(富井政章君)
少シ枝葉ニ涉リマスケレドモ、唯今岡野君ノ御演說中ニ私ノ先ニ述ベタコトニ對シテ反對意見ガアツタヤウデアリマスルカラ、チヨツト辯ジテ置キタイ、私ガ採ツタ例モ岡野君ノ採ラレタ例モ唯程度ガ少シ違ウト云フダケデ同ジモノデアル、法律行爲ガ會社ノ設立ノ目的、設立ノ行爲ガ無效デアル、新法ニ依レバ有效デアルト云フノモ本法施行ノ際ニ債權者ガ債權ニ關連シテ有價證劵ヲ占有シテ居ツタト云フ、法ニ依レバ有價證劵ハ留置權ノ目的タルコトヲ得ズト云フ解釋ヲ採レバ、ソレハ正シイ解釋デアルニシロ、ソレハ留置權ノ目的ニナラズ、有價證劵ハ留置權ノ上ニ併立シナイ、ソレニハ障ラナイ、是カラ有價證劵ノ上ニ留置權ガ成立スルノデナイゾト云フコトデアレバ、今ノ會社ノ設立ハ無效デアルノト何處ガ違フ、全ク同ジコトデアル、占有シテ居ツタ有價證劵ト云フモノハ留置權ノ目的タルコトヲ得ナイ、留置權ハ成立シナイト云フ結果ノ現ハレナイト云フコトデアル、少シモ違ハヌト思ヒマス、私ハ全ク同ジコトデアルト思ヒマス
○二番(岡野敬次郞君)
私ハドウデモ宜シイノデアリマス、議論ハ富井サンノ仰シヤル通リデアリマシテ、私ハ理論上違ヒガナイ、而シテ但書ノ存在スル所以ハ私ハ誤解ヲ防グ爲メニ之ヲ置クノデアルト云フコトヲ申シタノデアリマス、唯ソレハ文字ノ論ニ過ギナイコトニナルカ知レマセヌガ、從前ノ規定ニ依リテ生ジタル効力ヲ防ゲズ、生ゼザルモノヲ但書デ言フコトガ出來ナイ、留置權ノ場合ハ私ハ留置權ガアル以上ハ何カ留置スルコトヲ得ル、成程有價證劵ハ留置權ノ目的タルコトヲ得ズト云フ解釋ヲ正シイトシマシテモ、、動產ハ留置スルコトヲ得トアルノデアリマス、ソレデアリマスカラ動產ヲ留置スルコトヲ得ト云フコトダケハ變ヘヌト云フ意味デアリマス、ソレト全然或法律上ノ行爲ガ無效デアル場合ニ理論ガ同ジカ知レマセヌガ、但書ノ文字ヲ以テ無效ナリシモノヲ有效トスルト云フ誤解ヲ防グト云フコトニ私ハ解釋ヲセヌト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス
○二十九番(岡松參太郞君)
唯今伺ヒマスト起草委員ノ中ニモ但書ノ範圍ニ付イテ御意見ガ違フヤウデアリマス、ト云フモノハ詰リ効力ト云フ文字ガ適當デナイカラデアラウト思ヒマス、私モ其㸃ニ付イテ疑ヲ有ツテ居リマス、成程舊法ニ依レバ無效デアル、新法ニ依レバ有效デアル場合ニ於テモ獪効力ヲ妨ゲズト云フ中ニ這入ルカ這入ラヌカト云フコトガムヅカシイ問題デアル、若シ効力ト云フ文字カラ申シマスレバ無效ナルモノガ効力デアルト鹽云フコトガナイ、効力ヲ生ジタル場合デナケレバナラヌ、生ジナイモノ゚ヲ妨ゲナイト云フコトハ言ヘナイ、ソレカラ又刑罰ノ規定ニ付イテハ先ニ二十五條三十六條等ニ規定ガアルヤウデアリマスガ、是ハ規定ハ多クハ舊法デ罰シテアツタ行爲パ新法デ施行後ト雖モ矢張舊法ニ依ツテ罰スルト云フ規定ニナツテ居リマス、舊法デ無罪下ナヅタ行爲ガ新法ニ依ツテ有罪トナツタ、其場合ニ於テ又此行爲ガ罰セラレテ居ラヌノデアリマスカラ、第二條ノ本文三於キマスレバ罰シタル舊法時代ニヤッタ行爲デアッテモ新法ニ依ツテ有罪ニナッタモノガ是ニ依ツテ罰シ得ル、此場合ニ於テ此但書ガ出來ナケレバナラヌ場合デアルト思ヒマスガ、併シソレハ從前ノ規定ニ依ッテ生ジタル効力デアルカ、甚ダ困難デナイカト思ヒマス、前ニ無罪デアツタ行爲ハ新法デ無罪デアルト云フコトガナイ、デアリマスカラ詰リ効力ト云フ文字ニ病ガアルノデナイカ、此文字ニ付イテハ大分御硏究ニナッタノダサウデアリマシテ、外ニ善イ文字ガナイノデソレヲ御用ヰニナツタト云フコトデアリマスガ、例ヘバ從前ノ規定ニ依ツテ生ジタル效果ニ變更ナシトカ何トカ言フヤウナコトニナスッタナラバ今ノヤウナ疑問ガナクナルシ(ソレカラ無罪デアツタト云フヤウナ場合モ其中ニ含マルヽコトニナリハシマイカト思ヒマス、サウナル方ガ廣クナリマシテ穩カデナイカト思ヒマス
○三番(富谷鉎太郞君)
唯今文字ノコ小ニ付イテハ新法ヲ成ルベク採リタイ、罰例ノコトニ付イテハ別ニ今度新シイ罰案ガ刑法ノ總則デ罰スル譯ニイカヌコトニナル、ソレダケハチョット、、、、
○三十七番(松波仁一郞君)
私モ非常ニムヅカシイ條文ダト思ツテ居リマス、前カラ少シ讀ミマシテ又今マデ伺ツテ居リマシタガ、目ヲ以テ見マスト合名會社ガ合資會社ニ變更スル事實ヲヤッタトスルトキニ前ノ法律デアレバ無效デアル、併ナガラ本法ガ施行サレエバ施行前ニサウ云フコトヲヤツテモ有效ニナルト云フ風ニ前文デ讀マル丶ノデ讀デ居ツタノデアリマスガ、段々ト起草委員ノ御說ヲ伺フト、施行前ニサウ云フ事實ヲヤツテモ其事實ガ其施行ニ依ツテ有效トナル、但書ハ從前ノ規定ニ依リテ生ジタル効力ヲ妨ゲズ、生ジタル効力ヲ生ゼシムルコトナシ、此二ツニナルノダト云フノデアリマシテ、サウ云フ風ニ解シ得ルト、今言フタ施行前ニ合名ヲ合資ニ變更スルコトヲヤツテ居ツテモ、此施行ニ依ツテソレガ有效ニナラナイト云フコトガ分リマスケレドモ、此本文ダケデハドウシテモ施行前ニ生ジタ事項ニモ本法ヲ適用スルト有效ニナルヤウニ思ヒマスカラ、ソレデ私ノ讀方ガ惡イノカ或ハ今マデ限ツテ居ルヤウナ例ガニ條ニナラヌノカ、ソレカラ先キニ事項ヲ言ハル丶時ニ穗積委員カラノ御尋ネデ、法律ノ効力ニ關係ノナイモノハ無論問題ニナラヌカラ、法律ノ効力ニ關係ガアルノデアラウト云フコトデアリマシタガ、私ハサウ云フ風ニ全然法律問題ニナラナケレバ無論言ハナイノデアリマスカラ、ナルカナラ塚カヲ此處デ言フノデアツテ、事項ト書テアリマスケレドモ、事實ト云フ風ニ讀デ居リマス、或事實ガ生ジテソレニ法律ガ當嵌ツテ有效ニナルカ無效ニナルカト云フ問題ヲ決スル際ニ此條文ヲ適用スルト云フノデ、事項トアルケレドモ、單純ナ事實ト讀ソデ居リマスガ、ソレデ宜イノデアリマスカ、今合名會社ヲ合資會社ニ變更スルコトヲヤルノモ矢張一ノ事實ト見テ居ル、其事實ガ施行前生ジテモ施行後ニ此規定ヲ適用スル、斯ウ讀ンダノデアリマヌ、事實ト讀ムノハ廣スギルト云フコトニナリマスカ、其邊ヲ伺ヒマス
○二十九番(岡松參太郞君)
唯今ノ無罪ノ例ハ刑法ノ存續ニ依ツテ適用ガナイカト云フコトヲ伺ッタノデアリマスガ、刑法ノ第八條ノ特別ノ規定ト云フコトニ第二條ガ這入リマセヌカ、若シ是ガ特別デナイナラバ刑法ニ依ツテ二十五條三十六條等ハ必要ガナイ.
○三番(富谷鉎太郞君)
私ハ斯ウ云フ考デアリマス、刑法ノ六條ニ規定ガアリマスノデ、二十五條三十六條ハ第二條アルガ爲メニ置イタノデアリマス
○二十九番(岡松參太郞君)
特別ノ規定デアリマスカラ刑法ガ適用ガナクナツテ無罪ノ場合ニ適用ガ出來ル
○三番(富谷鉎太郞君)
ソレデ商法ノ關係ハ二十五條ト三十六條デ、ニ條ノ規定ガアツテ差支ナイ譯ニナル、但書ガアッテモ從前ノ場合ニ依ツテ處置スベキモノデナイ、刑法ノ原則カラ效ヲ持チ得ザルモノニナルカラ差支ナイ
○二番(岡野敬次郞君)
私ハ先刻効力ト云゚フ文字ノ意義ガ甚ダ不明デアルカラ色々ナ議論ガ起ルト云フコトデアリマシタガ、ソレハ私ハ御尤ト思ヒマス、生ジタル事項ニ議論ガアル下同ジク、生ジタル事項モ議論ノ種ニナルコトハ私モ述ベテ居リマス、併ナガラ効力ト螢フ文字ヲ效果ニ變ヘルニシテ見タ所デ何ガ效ガアルト云フコトヲ申セバ、ソレハ効力ト違フノデアル、ドウ云フヤウニ違フノデアルカト云フコトヲ問ハレタラ矢張區別ガムヅカシカラウト思ヒマス、ノミナラズ効力ト云フ文字ハ民法商法ニモアルノデス、効力ト云フ文字ハ隨分用ヰテ居リマス、其効力ガ何デアルカト云フト矢張ドウモ分ラヌ、法律行爲ノ効力トハ何ゾヤト云フ問題ヲ揭ゲテ之ヲ各場合ニ適用致シマシタナラバ決シテ私ハ十人ガ十人同一ノ意見ヲ提出スルモノデナイ、而シテ法令ニ於テ法律行爲ノ効力ヲ定ムル法律ニハ斯ウアル、其効力ヲ定ムル法律トハ何デアルカ、又其法律行爲ノ効力ヲ定ムル其法律行爲ノ効力ガ各國ノ法律ニ依ツテ異ッテ居ル場合ガドレダケマデガ法律行爲ノ効力ト云フ中ニ含マル丶ト云フコトニナリマシタナラバ、私ハ矢張議論ガアルト思ヒマス、ソレデアリマスカラ成程効力ト云フ文字ガ惡イト云フコトハ認メマスケレドモ、已ムヲ得ザル文字デアツテ、之ヲ變ヘテ見マシタ所デ、別段ドウモ明瞭ニナルト云フ利益モナイヤウニ私ハ思ヒマス、ソレカラ會社ノ罰則ノコトデアリマスガ、是ハ私ノ見解ガ違ツテ居ルカ知リマセヌ、又刑法ノコトニ付キマシテハ不案内デアリマスカラシテ、或不適當ナル意見ヲ私ハ有ツテ居ルカモ存ジマセヌガ、此附則ノ二十五條ト云フモノハ必要デアルカドウカト云フコトハ問題デアルカ分リマセヌガ、併シ之ヲ置テ考ヘテ見マスト云フト、本法施行前ニ會社ニ關スル從前ノ罰則ヲ適用スベシ、新法施行ノ後ト雖モ其罰則ヲ適用スト云フコトハ舊法ノ下ニ於テ罰スベカラザルモノヲ新法ニ於テ罰スルモノダト云フ其主義ヲ私ハ採ラヌト云フコトハ二十五條デ明瞭デアル、ニ條ヲ引張ツテ來ル必要ガナイ、二十五條ガ售法デ罰スベカラザルモノハ矢張新法施行ノ後ト雖モ罰スルモノデナイト云フ意味ヲ含ンデ居ラナケレバ二十五條ノ理由ガナイ、此場合ハ刑法ノ原則上ナラヌト云フ御議論ガアルカ知レマセヌガ、例令サウナツタ所デ私ハニ條ノ問題デハナイノデアリマス
○二十九番(岡松參太郞君)
唯今ノ御說ニ依リマシテ、成程效果ト云フ文字ヲ効力ニ改メタ所ガ大シタコトガナイ、私ハ幾ラカ其方ガ利益ガアルカトハ思ヒマスケレドモ、ソレハ感情ノ問題カモ知レマセヌ、効力ト云フ文字ヲ生ジタル効力ト續イタモノデアルカラ問題ガ起ルノデアリマス、法律行爲ノ經歷ハ其効力ヲ定ムル法律ニ依ルトアレバ、無效ノ場合モ其中ニ這入ルト云フコトガ考ヘラレル、生ジタル効力トアルモノデアリマスカラ、効力ノ生ジナイ場合ハドウデアルカ、生ジタル効力ト續イタ所ニ病ガアリマス馬若シ從來使ッタト云フ理由ガアルナラバ、生ジタルト云フコトヲ御取リニナツタラドウデアリマスカ、從前ノ規定ニ依ルト云フコトニシタラ却テ明瞭ニナリハセヌカ、ソレカラ二十五條ノ行爲ヲ罰スルモノデナイゾト云フ御說明ガアリマシタガ、ソレハ二十五條ハ刑ノ輕キ場合ニ於テハ輕イモノニ從フト云フ主義ニ考ヘテ居ルモノナラバ、成程岡野委員ガ言ハルニ通リニ二十五條ニ依ツテ無罪デアツテ効力ヲ發シナイト云フコトガアリマセウガ、二十五條ハ必ズシモ輕イモノニ從フト云フ譯デナイ、必ズシモ輕イモノニ從フト云フ意味ハナイ、成程非常ニ蔓延スレバ二十五條トシテ無罪ノモノヲ罰シナイト云フコトガアリマス、寧ロ私ハ此ニ條ノ但書ニ依ツテ罰セラレナイト見ル方ガ宜イト思ヒマス
○一番(富井政章君)
二條ハ効力ト云フテモ生ジタル效果トナツテモ異議ハアリマセヌ、二十五條ノコトニ付イテハ私ハ少シ富谷君トモ岡野君トモ意見ガ違ウヤウデアリマス、私ハ斯ウ見テ居ル、二十五條ヲ置イタト云フコトハニ條アルカラデアル、是ガナイト何ダカニ條ニ依ラナケレバナラヌヤウニナツテ、少ナクモ形ニ於テサウ云フコトニナツテ來ルカラ二十五條ヲ置イテアル、其㸃ハ岡野君ト違フ、併シ又刑法第六條ガアルカラ宜イト云フ富谷君ノ意見ハ私ハ採ラナイ、サウ云フト今ノ無罪ノ場合ニハ岡松君ノ批難ガ生ズルノデアリマス、私ハ刑法ノ第六條ハ引張テ來ナイノガ正當デアル、從前ノ罰則ニ罰シテナカツタ行爲ハ無罪トナル、ソレハ從前罰則ニサウ云フ行爲ヲ罰シテナカツタカラ罰セナイト云フ適用ヲシタ、ソレデアルカラ今度ノ法律デソレヲ罰シタ所ガ元ノ法律ニ依ッテ罰シテナカッタカラ罰シナカッタ、ドコマデモ從前ノ罰則ヲ適用シテ行クノデアル
○二番(岡野敬次郞君)
エライ枝葉ニ涉ルヤウデアリマスガ、ニ條ト例ヘバ二十五條ノ關係ニ付キマシテハ、イヅレデモ宜シイノデ、ニ條ナリ二十五條ガアレバ私ハ是ニ滿足ヲ致スノデアリマス、其關係如何ト云フコトニ付イテハ說明ハ致シマセヌガ、私ハ舊法時代ニ於テ或行爲ヲ爲シテ、其行爲タルヤ舊法ノ規定ニ依ツテ科料ニ處セラルベキ行爲ノアツタ時ニ、其科料ニ依ツテ處セラル丶ト云フコトガ從前ノ規定ニ依ツテ生ジタル効力ト云フコトニ私ハナラヌト思ヒマス、私ハサウデハナイト思ヒマス、私ハニ條ヲ離レテ二十五條ダケデ解釋ガ出來ルヤウニ思ヒマス、若シソレハ但書ノ問題デナイ、施行前ニ生ジタル事項ニモ之ヲ適用スト云フ方ニ當ルノダト云フ說明デアルト、或科料ニ處セラルベキ行爲ガ卽チ施行前ニ生ジタル事項デアル、之ヲ舊法ノ科料ヲ適用スベキカ、或ハ新法ノ刑罰ヲ科スベキカ、斯ウ云フ問題ガ起ッタトキニハ事項ニモ亦之ヲ適用セヌト如何ニモ新法ノ罰則ヲ適用スルヤウニ聞ヘル、ソレガ爲メニ但書ガアルノデアル、斯ウ云フコトデアルト但書ノ適用問題ニナルノデアリマス、私ハサウハ思ハヌ、罰セラレベキコトガ科料ニナルトカ刑罰ニナルトカ言フコトガ、從前ノ規定ニ依リテ生ジタル効力トハ私ハ解釋ヲシナイノデアリマス、ソレカラ二十五條ニ付キマシテハ私ハ先刻岡松君ノ御尋ニ對シテ御答ヲ致シタ通リニ考ヘテ居リマスケレドモ、私ハ輕イ重イト云フコトヲ申スノデナイ、輕イ重イノ別ハドウデモ宜シイノデアル、而モ獪新法ト舊法トハ輕イ重イノ別ヲ立ツテ居ルモノハ一ツモナイ、卽チ現行法ハ科料ノ制裁ダケヲ定メテアル、新法ハ刑罰ヲ揭ゲテ居ル、ソレカラ科料ト過料ノ場合ガアル、若シ輕重ト云フコトヲ言ツタナラバ科料ト過科ノ比冖較デアリマセウガ、私ハ輕重ヲ以テ論ズル譯デナイ、二十五條ハ從前ノ罰則ヲ適用スル行爲ガアツタトキハ新法施行ノ後ト雖モ獪從前ノ罰則ヲ適用スルノデアルト云フコトハ從前ノ罰則ニ依ツテ罰スベカラザル、或ハ科料ニ處セナイ所ノ行爲ガ新法施行ノ後ト雖モ無論罰則ヲ適用セラレナイノデアルト云フコトヲ含ンデ居ルト解釋シテ居ル、然ラザレパ二十五條ハ何ノ意味ダカ分ラヌノデアリマスカラ、私一人ハ二十五條ハ其趣意ヲ含ンデ居ルモノト解釋致シマス
○二十四番(鳩山和夫君)
私ハ起草委員ノ御苦心ヲ御察シ申ス、何トカ之ヲシタイノデアラウトハ思ヒマスガ、讀ンダ如クデハ「其施行前ニ生シタル事項ニモ亦之ヲ適用ス」「但シ從前ノ規定ニ依リ生シタル効力ヲ妨ケス」ト云フコトデアルト、之ヲソツクリ後デ消シテ仕舞ツテ居ルヤウニ讀メル、事項ト云フノハ法律上ノコトデアラウト云フコトデアリマシタ、事實ヲ指シタモノデアルト云フヤウナ御話ノ方モアリマシタ、矢張法律上關係ノアル事實ヲ指シタノデアラウト思ヒマス、法律上關係ノナイ事實ナラバ三十七條ガナイ筈デアル、サウシテ法律上ノ効力ヲ生ジ得ベキ事實ニ此本法ヲ適用スト云フコトヲ規定セラレタモノト思フ、ソレカラ但書ガ少シ字ノ使ヒ方ガ儉約セラレマシタケレドモ、之ヲ儉約シナイデ但シ其施行ガ從前ノ規定ニ依リ効力ヲ生ジタルトキハ其効力ヲ妨ケズ、儉約シナイデ執拗ク書クトサウナルダラウト思ヒマス、サウスルト前ノヲ消スコトニナリマス、本法ハ施行前ニ生ジタル事項ニモ亦之ヲ適用ス、但シ其事項ガ從前ノ規定ニ依リ効力ヲ生ジタルトキハ其効力ヲ妨ゲズ、斯ウ讀ムト前ニ言ツタコトヲマルデ打消スコトニナリハシマセヌカ、一方ハ施行ト云フダケデ意志ヲ發表シテ一方ハ生ジタル効力ト云フ事柄ニ依ツテ違ツタ字ノミ使ツテ事項ト云フ字ヲ御省キニナツテアリマスカラ、違ツタヤウニ見ヘマスケレドモ、之ヲ日本文ノ略式ニヤルカラ何カ違ツタモノラシクチョット見エマスケレドモ、能ク考ヘテ見タナラバ此ニ句ト云フモノハ同ジモノデハナイガ前ニ書イタモノヲ直グ總テ取消スヤウニ讀メハセヌカト思ヒマス
○一番(富井政章君)
唯今ノ說ハ文字ハ大眉綺麗ニナルヤウデアリマス、併ナガラ如何デセウカ、事項ガ効力ヲ生ズルト云フコトハ如何デセウカ、少シ狹イコトハナイカ、斯ウ云フ意味ニ私ハ解釋シテ居ル、其事項ニ關係シテ舊法ニ依ツテ或結果ガ生ジテ仕舞ツタ時ハソレニ障ハラナイ、斯ウ云フ意味ダト思ヒマス、ソレヲ言現ハスニハ事項ガ効力ヲ生ズルト云フト、何カ斯ウ有效ノ法律事實ガアツテ、ソレヨリシテ權利義務ガ生ジタ、ソレニ障ハラナイト云フ範圍ニナリハセヌデセウカ、サウスレバ少シ狹イコトガアリハセヌカト云フノデアリマス
○二十四番(鳩山和夫君)
私ハ斯ウ云フヤウニ改正シタイト云フ意味デナイ、起草委員ガ頭ニ有ツテ居ラル丶意味ハ斯ウデハナイカト言ツタノデアリマス、卽チ富井博士ノ言ハレタヤウニ、從前生ジタル事項ニ付イテ法律行爲ガ生ジタ場合ニハ斯ウ云フ意味デアリマス、サウスルト富井博士ノ言ハレタ如キ事項ト云フノハ法律上ノ効力ヲ生ズベキ事項ヲ指スノデアツテ、法律上効力ヲ生ズベカラザル事項ノ如キハ効力ニ規定スル必要ガナイ、法律ノ効力ヲ生ズベキ事項デアツタナラバ、其事項ガアツタナラバ法律ノ効力ガ生ジテ居ルト解釋スレバ、總テノ事項卽チ法律上効力ヲ生ズベキ事項デアツタナラバ、其事項ガアツタトキハ効力ガ生ジテ居ル、サウスルト但書ガ前文ヲ抹消スルヤウナコトニナリハセヌカ、是ダケノ人ガ寄ツテコソナ問題ガ起リ法文ヲ解釋セズニシテ居ツタナラバドウナリマスカ、名判官ニ任スト云フコトガアレマシタガ、名判官ニマデ來ナイ中ニ會社ガシナケレバナラヌ仕事ガアリマス、成ルベクナラバ岡野博士ノ言フ如ク缺ケテ宜イモノナラバ但書ヲ御割リニナツタラドウデアリマスカ、十分ニ起草委員デ御調査ニナツタノデアリマスカラ此但書ハ寧ロナクテ、若シ詰ラヌモノガ漏レタラ其時ノ問題ニシテ置イテ但書ヲ全然削ルト云フ手段ガ宜イト思ヒマス、此儘デハ疑ヲ生ズルト思ヒ町、ス
○四番(齋藤十一郞君)
唯今ノ御意見ハ至極ク御尤ノ御意見デハアリマス、起草委員會ニ於キマシテモ其㸃ニ關シマシテ丁度唯今ノ御意見ノ如キ考モ起リマシタノデアリマス、唯本文ノ方ニ本法施行ノ日ヨリト云フ此文字ノ解釋ガ何人ガ見テモ少シモ疑ガナイカト云フ㸃ニ歸着スルト思ヒマス、理ヲ詰メテ申セバ本法施行ノ日ヨリ施行前ニ生ジタル事項ニ適用スト書テアルノハ本法ノ規定ノ適用モ本法施行ノ日ヨリ以前ニハ遡ラヌ、斯ウ云フコトニ取レルデアリマセウ、サウシテ左樣ナ解釋ハ學理上ノ解釋トシテ相當ノ解釋デアルデアラウト存ジマス、併ナガラ又一面ニ於キマシテ本法施行ノ日ヨリ適用スト云フノハ、適用ノ一事ヲ規定シタノデアル、矢張其新法ノ規定ノ適用ガ其施行ノ日ヲ潜ツテ先ノ方ニマデ及ブ、斯ウ云フ疑ガナイカト云フ心配ガアツタ、ソレデ此新法施行ノ日ヨリト云フノハ本法ノ規定ガ其日カラ後ダケノ事項ニ適用セラル丶ノデアツテ、其前ニ生ジタル事項ニハ適用サレヌノデアルト云フ趣意ヲ明ニシタ但書デアリマス、全ク打消シテ仕舞フコトニナルマイト思ヒマス、結局本法施行ノ日ヨリト云フ文字ノ解釋ガ先ニ申シマシタヤウニ確ニサウデアルト極ツタナラバ、或ハ打壞スコトニナルカ知レマセヌケレドモ、疑ガアリマスカラ斯樣ナ規定ガ必要トナツテ參ルノデアラウト思ヒマス
○二番(岡野敬次郞君)
鳩山サンノ御議論ハ私ハ先刻モ述ベマシタ如ク、理論カラ法律學者ガ詰メテ論ジマシタナラバ、或ハ但書ハ要ラヌト云フ論ガ立ツデアラウト云フコトハ私モ認メテ居リマス、併ナガラチヨツト一例ヲ申シマスト、會社ハ他ノ會社ノ無限責任社員トナルコトヲ得ズト云フ規定ガ今度ノ新シイノニアリマス、舊法ニ於キマシテモ會社ノ社員ト雖モ無限責任社員トナルコトガ出來ルト云フ說ヲ採リ呷、シテ、今日會社員ニナツテ居ルト斯ウ假定スル、サウシテ會社ハ會社ノ無限責任社員トナルコトヲ得ズト云フコトガ行ハレタトキニ、今マデ合名會社ノ社員デアツタ者ガ新法ノ施行ト共ニ最早社員トナルコトヲ得ナイコトニナツタカラシテ、例ヘバ退社スルト云フ法律上ノ結果ヲ生ズルカラ、斯ウ云フ問題ガ此處ニ私ハ起ルデアラウ、固ヨリ新法施行ノ時ヨリモ既往ニ遡ツテ全體會社ノ社員デアツタノガ不能デアルト云フコトガアリマスマイケレドモ、新法施行ノ時カラ社員ニナルコトヲ得ズト云フコトニナリハセヌカト云フ恐レヲ懷キマス、一例ヲ申シマストサウ云ウ規定ニ付イテ從前ノ規定ニ依ツテ生ジタル効力ヲ妨ゲズト云フコトガアレバ、明ニ新法施行ノ後ト雖モ依然トシテ社員デ居ラレル、唯生ジタル事項ニモ之ヲ適用スダケデアリマスト、新法施行ノ後ハ社員デ居ラレヌト云フ解釋ヲスル恐レガアリマス、之ヲ鳩山サンノ如ク法律的ニ理論的ニ申シマシタナラバ、サウ云フ結論ニナルカ知レマセヌガ、却テ私ハ其方ガ法律家ノ論デ分リ惡イ、素人ニ對シテ分リ惡クハナイカト思ヒマス、但書ノ規定ノ文字ニ付イテ御議論ガアリマスケレドモ、アツタ方ガ疑ガナカラウカ、ナイ方ガ疑ガナカラウカト言ヒマスト、私ハアツタ方ガ幾分カ誤解ヲ招ク恐ヲ防グコトガ出來ルデアラウト思ヒマス、而シテ此但書ノ規定ニ付イテ文字ノ云々ノ論ハ無效ナモノガ有效トナル場合ヲ含ムカ含マヌカト云フダケデ說ガ違ツテ居ルノデアリマシテ、吾々ノ方ノ論ハソレ等ハ私ハイヅレデモ宜シイノデアリマス、唯理論ノ上カラ或ハ要ラヌカ知リマセヌケレドモ、アツタ方ガ宜イカト私ハ考ヘテ居リマス
○二十四番(鳩山和夫君)
唯今岡野君ガ御引キニナツタ例ガ私ノ議論ヲ確メル、無限責任社員ニナルコトガ出來ルト假定スル、所ガ此施行前ニ生ジタル事項ニモ亦之ヲ適用スト云フ所ヲ適用シマスルト、所謂無限責任社員ニナツテ居ルコトガ出來ナイノデアリマスカラ、此個條ヲ適用スト云フ所ヲ適用シマスルト、他ノ無限責任社員ニナツテ居ルコトガ惡イ、無效ニナル、併シ待ツテ吳レ從前ノ規定ニ依リ効力ヲ生ジテ居ル、無限責任社員トナッテ効力ヲ生ジテ居ル、但書ニ依ツテ効力ガ生ジテ居ル、前ト同ジコトヲ言ツテ適用スト云フコトヲ裁判所ガ示シテ來レバ同ジ結果ヲ生ズル、但書ヲ適用スルト反對ノ結果ヲ生ズルノデアリマスカラ、但壷ロバ疑ヲ解カブト思ツテ疑ヲ殘シテ置クコトニナリマス、疑ヲ解カブト云フ親切ノ爲メニ但書ヲ置イテドツチヲ用ヰテ宜イカト云フコトニナリマス
○二番(岡野敬次郞君)
ソレハ詰リ同ジ議論ノ繰返シニナルノデアリマス、事項ニモ亦之ヲ適用スト云フコトト、從前ノ規定ニ依ツテ生ジタル効力ガ同ジモノデアルト云フコトニ極メテ置イテ御論ジニナレパ、全ク其通リデアリマス、ソレガ前ノ例ヲ取ッテ考ヘテ見ルト云フト、ドチラカ會社ガ新法施行ノ後ト雖モ獪無限責任社員デ居ラル丶ト云フコトノ趣意ガ正シイトシテ但書ノアル方ガ疑ヲ殘スマイカ、但書ノナイ方ガ宜カラウト云フ問題ニナルノデアリマスカラ、私ハ重テ其㸃ニ付イテハ申シマセヌガ、適用ヲ明ニシテ誤解ヲ防グニハ宜カラウ、、是ダケノ考デアリマス
○一番(富井政章君)
私ハ前座ヲ勤メマスガ便宜ダラウト思ヒマス、今ノ場合ハ施行前ニ會社ガ他ノ會社ノ無限責任耻員ト云フコトガ全體ナカラウト思ヒマスガ、假リニアルトスレバ但書ガナケレパ既往ニ遡ツテ無效ニナツテ仕舞フ、所ガソレニハ障ラナイト云フコトハ此但書ガアル以上ハ先ヅ明カデアル、ソレハ無限責任社員デ居ルト云フコトニナル、ソレデアリマスカラサウ云フ場合ニハ若シサウスル方ガ宜イノナラバ但書ノアル方ガ宜イト思ヒマス、併シサウ云フ場合ハ實際ニ殆ドナカラウト思ヒマスガ、ドウモ私ハ此但書ガナイト不安心ニ思ヒマス、餘程イロイロノ場合ヲ調ベテ此規定ヲ殖サソナラムコトハニ條ノ本文ダケデモウ一遍再調査ヲヤツテ蚤取リ眼デ調ベテ行ツテ規定ヲ置カナケレバナラヌト云フコトニナリハセヌカト云フ心配ガアリマス、イロイロノ場合ヲ是デ防ゲテ居リマス、是ハ適例デアルカナイカ知ラヌデスケレドモ、例ヘバ保險契約ガ現行法ニ依レバ無效トナル場合ガアル、今度ノ法律ニ依レバ解除ニナルコトニナツテ居リマス、サウ云フ場合ニハ第二條本文ダケデハマダ其儘デサウ云フ契約ガアルト云フ狀態デアリマスカラ、解除セネバイカヌト云フコトニナルノデアラウカト思ヒマス、ソレナドハ矢張無效デ行クト云フコトニナルベキデアラウト思ヒマス、サウ云フヤウナコトガ但書ガアルト云フト疑ガナイ、サウ云フ場合ガ澤山アリハシマスマイカトハ思ヒマスガ、何ダカ不安心ニ思ヒマス
○十二番(石渡敏一君)
チョット序ニ願ヒタイ、此改正商法ノ行ハレタ日ヨリ施行後ニ生ジタ事項ニ付イテ、此改正商法ヲ適用スルノハ當然デアリマス、其施行前ニ生ジタル事項ノ適用ハ但書ヲ適用シナイ場合ガ何カ此中ニアリマセウカ
○三十七番(松波仁一郞君)
私モソレヲ御尋シタイ、岡野委員ト他ノ委員トノ但シ以下ノ意見ガ違ツテ居リマスカラ――私ノ質問ハ寧ロ富井サン齋藤サンノ御意見ニ對シテ御尋シタイノデスガ、但書ノ㸃ハ二ツニ讀メルノデアル、或事實ガ起ツテ居ツテ、ソレガ現行法ノ解釋デ無效ト云フコトナラバ、此法律ガ施行シテモ有效ニハ達シナイ、又有效ト云フテ効力ガアツタトキニハ此法律デハ無效デモ其効力ヲ妨ゲナイ此二ツヲ含ンデ居ルノダ、斯ウ云フ風ニ御話ニナリマシタガ、サウスルト總テノコトハ有効力無效デアル、有效デアツテモ其効力ハ妨ゲナイ、無效デアツテモ効力ヲ生ゼシメナイ、斯ウ云フト原則ノ適用ノ趣旨ハドウ云フ所ニアルノカ、石渡君ノ御質問ト略ボ似テ居リマスカラ、原則ノ適用ハ何處ニ在リマスカ
○一番(富井政章君)
石渡君ノ御質問ハ能ク分ラヌデスガ斯ウ云フコトデナイカト思ヒマス、例ヘバ玆ニ會社ノ設立ト云フ一事項ガアッタ、ソレニ適用シナイト云フコトヲ本文ニ言フテ居レバ、但書ト云フモノハ何時モ付イテ居ルヤウナモノデアッテ、但書ノ付イテ居ナイ、其原則ヲ適用スル場合ガ何處ニ在ル、サウデスカ
○十二番(石渡敏一君)
サウデス
○一番(富井政章君)
ソレハ例ヘバ玆ニ會社ノ設立ガアル、拂込モ何モヤツテ居ナイ、總テノコトヲ是カラヤラナケレバナラヌト云フ場合ニハ但書ノ適用ガナイ、何モカモ新法ニ依テ行ク、唯會社ノ設立ダケデアル、ソレガ有効力無効力ト云フコトガ障ハラナイ、何モ效果ヲ生ジテ居ナイ、是カラ登記ヲヤル、其登記ノ仕方ダトカ總テ皆新法ニ依ツテヤルノデアリマス、但書ノ付イテ來ナイト云フ場合ガ隨分アルト思ヒマス
○十二番(石渡敏一君)
サウシマスト施行前ニ生ジタト云フ、登記ヲスルト云フヤウナコトハ施行前ニ生ジタル事項ノ中ニ「這入テ來ルノデアリマスカ
○一番(富井政章君)
ソレデハ困ル、會社ノ設立ト云フ事項サヘアレバ、其會社ニ付イテハ是カラ先キハ何モカモ奮法ニ依ツテヤツテ行クノダゾト云フコトハ困リマス、サウ云フ趣意デハナイノデアリマス、ソレハ第二條本文デ其結果ヲ避ケヤウトシテ居リマス
○三十七番(松波仁一郞君)
今ノヤウナコトハ暖昧デ、設立ト云フ單純ナ事實ガアッテ、法律上有效トモ無效トモ決セラレテナケレバ、ズツト行クコトデ、第二條ガナクテモ其事實ノ効力ヲ生ズルト云フトキニハ時ノ法律ニ依ルト云フコトガ當リ前デアリマセウ、第二條ノ本文ガナクテモ宜シイ
○三十四番(穗積陳重君)
先刻松波委員ヨリ御質問ニナリマシテ其御答ニ依ツテ私ノ疑ガ解ケルダラウト思ヒマシタガ、其御答ガナイヤウデアリマスガ、其中ノ一ノ事項ト云フ字ハ松波委員ハ例ヘバ法律事項デナイ事實モ總テ含ム、例ヘバ是ハ一番極端ナ例デアリマシテ、舊法デハ罰セザリシ行爲、此改正法デハ罰セラル丶行爲、サウ云フ事實ガ生ジテ居ツタ、單リ効力ヲ生ズベキ事柄ノ法律事項ニ於テ生ゼシモノノミナラズ不完全若クハ違法ノコト、新法ニ依レバ獪サウ云フ事實マデモ含ムノデアリマスカ、松波委員ノ質問ノ催促ヲ致シマス
○二番(岡野敬次郞君)
或ハ吾々ノ問ニ於テ意見ヲ異ニスル㸃ガアルカモ知レマセヌガ、私ハ斯ウ考ヘテ居リマス、何モ法律上ノ効力ヲ生ジナイモノニ付イテ新法ヲ適用スルトカ舊法ヲ適用スルトカ云フ規定ハ全ク無用デアル、無論法律上ノ效果ノ是ニ拌フモノガナケレバナラヌト云フコトハ私ハ前提トシテ自分ハ考ヘテ居リマス、而シテ効力ヲ異ニスルモノデナケレバ施行規定ガ要ラヌト思フテ居リマス、ソレデアリマスカラ唯施行前ニ生ジタル事項ニモ亦之ヲ適用スト云フコトデ效果ヲマルデ除イテ仕舞ツテ適用ヲ示セト言ハレ丶ハ私一人デハ考ガ浮バヌノデアリマス、ソレデアリマスカラ先刻來單純ノ議論カラ言ヘパ但書ガナクテモ宜カラウト云フコトヲ每々申シマシタ、先刻例トシテ擧ゲタノガ効力ガ違ツテ居ルノデアルガ、事項ニモ之ヲ適用スルト言放シテ置クト、先刻ノ例ニ依レバ會社ハ無限責任社員タルコトヲ得ト云フ解釋ヲ下ス恐レガアリマス、ソレ故ニ私一人ノ考トシテハ但書ノアル方ガ明カデアル、施行前ニ生ジタル效果ヲ生ジナイ、例ヲ擧ゲロト言ハレ丶バ私ハナイト云フコトヲ御答スルヨリ仕方ガナイ
○二十九番(岡松參太郞君)
私ノ考ヘル所デハ唯今ノ御質問ニ對スルノハ斯ウ云フ場合デアラウト思ヒマス、是マデハ後見人ガ商業ヲ營ム、彼ノ法定代理人ガヤル場合ニ於テハ既ニ親ガ未成年ニ代ツテ商業ヲヤツテ居ルト云フ事實ガアル、ソレガ本法施行ノ日ヨリ減ツテ來ル、ソレガ本文ヲ適用スル場合デアッテ其場合ニ於テハ効力ヲ妨ゲズデ登記セズトモ宜イ、斯ウ起草者ハ見ラレテ居ルダラウト思ヒマス、サウ云フ場合ニ於テハ本文ヲ適用スル、又据置三年拂ヒノ證劵ガ發行セラレタ、是ガ本法ニ依レバ無記名式デアル、是マデハサウ云フモノハ裏書ヲ要スルモノデアツタト假定シマス、サウスルト此本法施行ノ日カラソレガ記入證劵トナツテ此本文ガ適用ガ出來ル、但書ガ裏書ガナケレバ流通出來ナカツタト云フコトガ生ジタル効力デナイ、サウ云フ場合ニ適用ガアルカト思ヒマスガ、ケレドモ効力ト云フ文字ガ無效ノ考デアルト云フコト一一解釋ノ出來得ルコトニナレバ、登記セズトモ商賣ガ出來ル、親ガ商業ヲ營ム`ト云フ事項ノ効力デアルト云フコトガ言ヘヌコトモナイ、又据置拂ヒノ證劵ノ場合デアツテモ裏書ヲシナケレバ流通出來ナイト云フコトモ其證劵ノ効力デアル、若シサウ見レバ但書ノ適用ガアル、詰リ石渡委員ノ御質問ノヤウニ但書ノ適用ノナイ場合ハナイト云フコトニナツテ仕舞フ、卽チサウ云フ風ニ見マスルト先ヅ其効力ト云フ文字ニ弊ガアリマスノデ、効力ト云フ文字ノ解釋ヲ致シマスニ、或ハ本文ノミ適用ガ出來ルシ、或ハ適用ガナイ、ドツチヘデモ解釋ガ出來ル、何トカ但書ノ文字ヲ修正シテ貰ヒタイト斯ウ考ヘマス
○二番(岡野敬次郞君)
誠ニ御尤ナ御論デアリマシテ私共ガ度々繰返ヘシテ御答ヲ致シタ通リニ、効力ノ文字ハ明瞭ナル文字デアルト云フコトハ申サヌ、併ナガラ若シ効力ト云フ字ガ疑ガアルカラ之ヲ避ケルト云フノデアリマスト、岡松君ハ疑ガナイト言ハレマスケレドモ、ソレハ矢張疑ガアリマス、効力ヲ定ムルト云フノハドウ云フコトデアル、効力ト云フコトデ文字ガ分ラヌト言ヘバ分ラヌンデアリマス、効力ヲ定ムル法律、其効力ヲ定ムル法律トハ何ゾヤト云フコトニナリマス、デアリマスカラ是ハ每度申ス如ク疑ノアル文字デアルコトハ認ムルノデアリマスガ、吾々ガ苦心シタ結果デ是ヨリ外ニ字ガナイト云フコトデヤッタノデアリマシテ、明瞭デアルト云フコトハ御答シマセヌ、適當ナ旨イ文字ガアレバ進ンデ修正ニ同意ヲ致シタイノデアリマスケレドモ、效果ト變ヘタラドウカト云フコトハ私ニモ分リマセヌ、唯批難スルバカリデナシニ適當ナ修正案ノ御提出アラムコトヲ切ニ私ハ希望致シマス
○二十四番(鳩山和夫君)
大抵分ツタヤウデアリマス、富井博士ノ御心配ノ通リ但書ヲ置キマセヌト、非常ニ不安心ダト云フ御說、齋藤委員ノ此言葉ヲ以テ現ハシタ位ガ相當デアルト云フ御說ガアルノデアリマス、モウチツト吾々ノ安心ノ出來ルヤウニ御調査ヲ願ヒマシテ、若シ安心ガ出來マシタナラバ但書ヲ思ヒ切テ削ツテ仕舞フト云フコトニナサツテハ如何デアリマスカ、起草委員諸君ノ御取調ニ大抵アツタラウト思ヒマスガ、ドンナ所ガ不安心ダカ例ヲ御示シニナツテ居ラヌ、ソンナ御心配ガナイノデアリマス、ナケレバ斷然取ッテ仕舞フト云フコトヲ御協議ヲ願ヒタイ
○二番(岡野敬次郞君)
私ハ代ツテ御答スル次第デハアリマセヌガ、私ハ若シ新法施行ノ後ニ於テモ施行規定デソレゾレ皆始末ガ付クノデアルト云フ安心ガ出來ルナラバ私ハ但書ガ不必要ト云フノミデナクシテ、第二條全部ガ要ラヌト思ヒマス、但書ノ必要ナルコトハ先刻來度々申シマシタ通リニ、此本文ダケデハ不安心デアルカラ但書ヲ置イタ方ガ宜カラウト云フコトデ例ヲ申シタノデアリマス、若シ施行規定ガ極メテ完全デアリマシタナラバ、私ハニ條ハ要ラヌ、ニ條ノ本文ヲ置ク以上ハ但書ガナイト不安心デアル、斯ウ云フコトヲ申シタノデアリマスカラ、少シ論旨ガ違ツテ居リハセヌカト思ヒマス、詰ル所隨分司法省ノ參事官、幹事諸君モ餘程各條ニ涉ツテ調ベラレタノデアリマシテ、私モ自分自ラ調ベテ見マシテ多少補ツタラドウカト云フコトヲ氣付イタ㸃モアリマス、幾ラ述ベマシタ所デ原則ガ定メテナイト私ハ不安心デアルト思ヒマス、ソレデドウモニ條ヲ全部削除スルト云フヤウニハドソナニ調ベテモ出テ來ナイ、サウシテニ條ノ本文ヲ置ク以上ハ但書ガナイト不安心デアル、斯ウ思フノデアリマス
○十二番(石渡敏一君)
私ノ意見ガ鳩山君ノトハ少シ違ヒマス、無論修正意見デナイ、斯ウ云フ風ニスレバドウデゴザイマセウカト思ヒマス、一ツ起草委員ニ御相談ヲシテ置クノ考デアリマス、「本法ハ從前ノ規定ニ依リ効力ヲ妨ケス」間ノ「新法施行ノ日ヨリ適用ス」ト「但シ」ト云フマデ削ツテ見テモ同ジ意味デナイカト思ヒマスガ、如何デアリマスカ
○一番(富井政章君)
石渡君ノ御說ハ本法ト云フモノハ本法ノ施行ノ日ヨリ規定セラル鼓コトヲ前提トシテ居ル、ソレハ疑ハシイ、法律ハ既往ニ遡ラズト云フテソレゾレ各時代ニハ其時ノ法律ガアツテ何カ法律事實ガ生ズレバ、其時ノ法律ニ依ルト云フノガ當リ前デアリマス、後ノ法律ガ出來テ其時ノ法律關係ヲ廢止スルコトハ理論上カラ言ヘバ違例ノ法デアラウト思ヒマス、ソレデ反對ノ主義ヲ取ルナラバ明文ハ要ラヌノデアリマス、反對ノ主義ヲ取ルト條文ガ是ヨリ多少殖エルト云フ不便ガアルカラ遡ル主義ヲ取ルコトニナリマシタ、ドウモ今ノ前提トセラル丶コトハ前提ト出來ナイコトデナイカト思ヒマス
○二十三番(高木豐三君)
私モ少シ申シマス、色々御說ヲ伺ヒマシタガ、畢立見吾々ガ能ク分ラヌカラデアラウト思ヒマスガ、起草委員ノ御說ノ中ニモ多少御意見ノ違フ所モアルヤウニ考ヘラレマス、ドウカ願クバ起草委員諸君ニハ同ジ見解デアルト云フコトニ一致シテ御說明ヲ願ヘバ吾々モ分リ宜イノデアリマス、ドウモ其間ニ違フ所ガアツテ本當ニ解シ得ラレナイ、起草委員ニ對シテハ御氣グ毒デアリマスガ、モウ一應御評議ヲ願ツテハ同ホ吾々ノヤウナ者ニハ今日ノ改正商法ニ依ツテ此條ト此條ト斯ウ云フ場合ガ出來ルト云フ所ヲコンクレートニ御示シヲ願フコトガ出來レバ安心シテ贊成ガ出來ルト思ヒマス、ドウモ此法文ダケデハイロイロノ疑問ガ出ヤウカト考ヘマス、ドウ云フモノデアリマスカ、モウ一ツ此條ハ此儘デ置テモ宜シイ、次ノ方ヲ議スルコトニシテモ宜シイガ、モウ一ツ御相談ヲ請フト云フコトニ願ヘマセヌデセウカ、一ツ希望トシテ申上ゲマス
○二番(岡野敬次郞君)
此條ニ付キマシテハイ寧ロ疑問ガアリ又御議論ガアル、是ハ當然デアルト考ヘテ居リマス、併ナガラ吾々共ノ間ニ於テ意見ノ異ル所ハ無敷ナモノガ有效ニナルカト云フ卽チニ條ノ適用ノ上ニ於テ少々說ガ違ウト云フニ止マルノデアリマシテ、其他ノコトハ違ツテ居リマセヌ、ソレデアリマスカラ其場合ヲ含ムヤウニ但書ヲ修正スルカドウカ、或ハ富井サンノヤウニ解釋ガ出來ルナラバ私ハ文字ヲ直サヌデモ差支ナイ、是ハ幾ラ論ジマシタ所ガ際限ガナイ、又御委託ニナリマシテモ多分同一ノ形ヲ以テ議場ニ提出スル、如何ニ考ヘテモ案ガナイノデアリマス、ソレデ敢テ吾々共ニモウ=遞調ベロト云フ御希望デアレバ調ベテモ宜シイノデアリマスケレドモ、成ルベクハドウゾ是デ宜イモノナラバ宜イ、イカヌモノナラバドウ云フヤウナ趣意ニシタラ宜カラウト云フ、少ナクトモ趣意ダケノ御議定ヲ願ハヌト、實ハ同ジコトヲ繰返ヘシテ又論ズルコトニナルカラ、實益ニナラヌト考ヘマス、幾ラ考ヘテモ名案ガアリマセヌ、ドウゾ成ルベク此條ノ始末ノ付クヤウニ願ヒタイ
○一番(富井政章君)
但書ヲ置ク置カヌト云フ間題ハ實際問題トシテ考ヘテ見レバ、詰リ裁判官ニ對スル信用問題ニ歸着スルノデナイカト私ハ思ヒマス、ド吻云フ譯カト申シマスト、私ハ初ハ今鳩山君ノ言ハレ」タ通リ、斯ウ云フ但書ハ必要ダト云フ觀念ヲ有ツテ居ナソダ、段々考ベタ末ニアッタ方ガ安心デアルト云フコトニナツタノデアリマスケレドモ、初ハサウ云フ考ヲ有ツテ居ナソダ、ソレデ詰リ其法律ノ學識ガ進ンデ裁判官ガ能ク適用シテ行ケバ適用シナイト云フ明文ガナクトモ、例令第二條ノ本文ガアツテモ此但書ガアルト同一ノ結果ニナラネバナラヌノデアル、是ガ卽チ舊法ニ依テ確定シタ法律狀態ヲ動カサナイト云フモノデアル、ソレハ煎ジ詰メテ見レバ例令第二條ノ本文ガアツテモ當然ノコトデアルダラウ、是ガナイト餘程エライ裁判官ナラバ知リマセヌガ、今日ノ裁判官バカリデナイ、今日ノ一般ノ法律知識デハ隨分本文ニ依ツテハナラヌ、本文アルガ爲メニ確定シタ法律狀態マデ動カスト云フヤウナ見解ガ出テ來ハセヌカト云フノガ卽ち心配ノ㸃デアリマス、實例デ擧ゲマスト幾ツモアラウト思ヒマス、但書ガナケレバ結果ガ違ウト云フ實例ガ少ナイカ知ラヌケレドモ、但書ガナケレバ本文ニ依ツテナラヌ場合ニ裁判官ガ依ルト云フコトガナイデアラウガト云フ疑ガアル場合ガ澤山ニ在ルデアラウ、寧ロソンヲ防グガ目的デアルカラ、但書ヲ除クト云フ御意見ガ辯讓士タル方ヨリ出ルノハ少シ以外ニ思ヒマス、私ハ今日ノ裁判官ヲ非常ニ信用シテ居ルノデアルケレドモ、ドウモ此本文ト但書ノ場合ヲ學問ノ知識デ使ヒ分ケテ行クト云フコトハ多少困難デナカラウカト思ヒマス、ソレデアッタ方ガ宜カラウカト思ヒマス
○議長(子爵岡部長職君)
如何デス、獪御發議ガアリマスカ
○二十三番(高木豐三君)
唯今ノ御說明ヲ聞ケバ名案ガナイト云フコトナラバソレマデノコトデアリマス、諸君ノ御苦心ニナツテ是ヨリ仕樣ガナイト云フコトデアリマスレバ、唯願フ所ハ法文ニ付イテ是々ノ事實ハ商法ノ第何條ニ於テ斯ウ云フ場合ガアル、此儘デ置クト云フト但書ガナイトイケナイト云フヤウナ緻密ナ例デモ御示シヲ願ツタナラバ、吾々ガ解釋ガ出來ルデアラウト思ヒマス
○二番(岡野敬次郞君)
私ハ度々申上ゲルコトデアリマスガ、ニ條ハ私ハ新舊ノ方ノ關係ノ經過規定デアツテ、經過規定ガ各條ニ付イテ一々アレバニ條ハ要ラヌト云フコトヲ私ハ信ジテ居リマス、念ノ爲メニ私ガニ條ガ必要デアルト云フコトヲ考ヘテ居リマス、今度修正セラルベキ各條ニ付イテ一々經過規定ガスツカリ揃ツテ居ツテ他ニ何モナイノデアルト云フコトガ確定シテ居レバ、私ハニ條ハ要ラヌ、ソレデアリマスカラ但書ノ要不要ハ私ハ考ヘテ居ラヌ、ニ條ノ要不要ヲ問題ニシテ居リマス、ソレハ私ハ新法ノ一々ノ條ニ付イテ此條ハ斯ウ云フヤウニ適用スル、此條ハ斯ウ云フヤウニ適用スルト云フコトニ書イテ而シテ一モ遺漏ナシト云フコトニナレバニ條ニ原則ハ要ラヌノデアリマス、併ナガラ但書ノ要不要ニナリマス下、先刻モ申シマシタ通リ、ニ條其モノ丶適用ヲ見ルノガ稀デアルト思ツテ居リマスカラ、ドウ云フモノガ漏レテ居ルカ、若シ漏レテ居ツタナラバ吾々ノ調査ガ粗漏デアルガ、先ヅ漏レテ居ラヌ積リデアリマス、本文ノ但書ノ關係ニ付イテ云フト、本文ダケデハ誤解ヲ來ス虞ガアルカラ但書ガ必要デアル
○二十四番(鳩山和夫君)
起草委員諸君ハ此事項ト云フ中ニハ法律上ノ効力ヲ生ゼザル事項ガアルト云フノデアリマスカ
○三番(富谷鉎太郞君)
是ハ先程岡野委員カラ御答ニナッタコトト思ヒマス、卽チ此法律ノ規定ヲ要スル事項ハマルデ法律的事項デナイモノニハ――事實デナイモノニハ關係ノナイト云フコトデアリマス、卽チ法律的ノ關係ノアル事實ト云フコトニナリマス、事項ト云フ文字ヲドウ云フ幅ニ解スルト云フコトハムヅカシイノデアリマス、場合々々ニ依ツテ事項ニナルト云フ問題ガアリマセウ、定義ヲ下スコトハムヅカシイノデアリマス、唯是ダケハ法律ニ關係ノナイモノマデ含ムノデナイノデアリマス
○一番(富井政章君)
私ハ鳩山君ノ言ハレタノト全ク同意見デアリマス、何カ法律ニ關係ノナイ權利義務ニ關係ノナイ事實ハ含マナイ、雨ガ降ルトカ風ガ吹クトカ云フコトハ無論含マナイガ、何カ法律上ニ關係ヲ有ツテ居ル事實デアリマス、ソレカラ生ジタルト云フ言葉ガムヅカシイ、事實ト云ヘバ何カ一ツソコヘ新規ニ現ハレタ出來事ガ起ツテ來ネバイカヌト云フ風ニ解セラレマスガ、ソレデハイケナイ場合ガアルダラウト思ヒマス、チヨツト今適例ヲ出スノハ困リマスガ、ソレデ民法施行法ニモ商法施行法ニモ事項ト云フヤウナ少シ未定的ナ字ヲ使ツタ、何カ契約ヲナストカ木法行爲ヲナストカ言フコトナラバ事實ト云フ方ガ宜イノデアリマスケレドモ、何カ繼續シタ無形狀態ガアルト云フ場合ガ探シテ見レパアルデアラウト思ヒマス、ソレデ斯ウ云フ文字ガ生ジタノデアリマス、法律上ノ關係ノナイ效果ノ發生モ拌ハナイ事項ハ無論含マナイダラウト思ヒマス
○二十番(古賀廉造君)
此本文ハ舊法ニ遡ルト云フ意味デアリマスカ、卽チ施行前ニ在ッタ事項ニ及ンデ、其事項ハ分リ易ク言ヘバ壞シテモ破ツテモ仕舞フト云フ意味デアリマスカ、又ハ舊法時代ニ出來タ事項ガ其事項ヲ新法ガ引受ケテ新法ノ規定デ後ヲ支配スルト云フノデアリマスカ、支配ヲ變ヘルト云フノデアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
其㸃ニ付イテ先程カラ吾々ノ仲間デ度々御答ヲ致シタノデアリマス、丁度先程鳩山サンノ御言葉ニ對シマシテ私ノ答ヘマシタトキニ、少シ言葉ガ足リマセヌ結果トシテ、岡野委員ガ御述ベニナリマシタノデアリマシテ、其御意見ハ私ノ意見ト違ツテ居ラヌ、ソレハ併セテ申上ゲテ見タイト思ヒマス、唯今御述ベニナリマシタ本法施行ノ日ヨリ施行前ニ生ジタル施行ノ法令ノ規定ヲ適用スルノデアル、其前ニハ本法施行前ニ生ジタル所ノ其事項ヲ打破ルト云フコトガナイノデアル、特別ノ規定ノナイ限リハソレヲ打破ラナイ、加之新法施行前ニ生ジテ居ル効力ハ特別ノ明文ノナイ限リハ施行後マデ引續イテ効力ヲ持タセル、斯ウ云フ意味デアリマス
○二十番(古賀廉造君)
分リマシタ、サウスルト明瞭ニナリマシタ
○四番(齋藤十一郞君)
ソレデ唯今但書ノ必要ガアルト云フノデアリマズ
○二十五番(奧田義人君)
私ハ別ニ意見ガアル譯デハアリマセヌガ、此議場ノ整理ニ付キマシテハイロイロナル御議論ガ出マシテ、今之ヲ咄嗟ニ議決ニナルト云フコトハナカナカムヅカシイ結果ヲ生ズルカノ如クニモ考ヘマスカラ、先ヅ假ニ此ニ條ハ原案ノ通リデ讓決ヲシテ置イテ、サウシテ進行ヲシテ其間ニ起草委員竝ニ各員ニ於テモ熟考ヲスルコトニ相成タラ如何デアリマスカ
(「贊成」ト云フ者アリ)
○議長(子爵岡部長職君)
唯今二十五番カラノ發議デソレニ贊成モゴザイマシタガ、唯今御聽ニナッタ通リ、先ヅ此際ニ於テ之ヲ假議決デモアリマセウカ、他日修正ノ餘地ヲ殘シツニ先ヅ此儘ニ決シテ置キタイト云フコトノヤウニ聞キマシタガ、ソレデ宜シイノデアリマスカ
○二十五番(奧田義人君)
ソレデ宜シイノデゴザイマス
○二十四番(鳩山和夫君)
私ハ原案ニ反對デアリマス
○議長(子爵岡部長職君)
最早討議ガ終レバ別ニ修正案トシテハ出テ居リマセヌ、依ツテ唯今二十五番ノ先ヅ假決議ト云フヤウナ形デ決議シテ置クト云フ說ニ贊成ガアリマスカラ之ヲ極メテ置キタイ、二十五番ノ說ニ同意ノ諸君ハ手ヲ御擧ゲ下サイ
擧手者少數
○議長(子爵岡部長職君)
少數デアリマス
○三十四番(穗積陳重君)
假決議ト云フコトニ或ハ疑ガアッタノカモ分リマセヌガ、私ノ贊成シマシタ理由ハ唯今マデイロイロナ疑、イロイロナ議論ガ出マシタケレドモ、之ヲ削除スルト云フ設ハ一ツモ出ナイ、然ラバ起草委員ガ苦心シタ結果出來タモノデアルケレドモ、併シ良イ案ガアリサウナモノダト云フダケハ隨分考ヘテ居ル者モアラウト思ヒマスカラ、其故ニ他日尙ホヨリ宜キ案ガ誰カ出來マシテ、又ヨリ宜キト自カラ考ヘル案ガ委員ノ中ニ出來マシタラ、其時ニ之ヲ再ビ議場ニ出サレテ再議ト言ヒマスカ、名義ハドウデモ宜シウゴザイマスガ、今カラ留保サレテ置イテ其時ニ議スル餘地ヲ存シテ置クヨリ仕方ガナイ、假リニ議決ヲシテ置イテ、ソレカラ其後ニ本決讓ヲシテ行クト云フヤウナ半殺シ半生シノヤウナ意味デナイ、ヨリ宜キ案ガ出ナイ以上ハ是ガヨリ宜キ案デアルカラ、議決シテ置カウト云フ意味デ贊成スルノデアリマス、ヨリ宜キ案アラザレバ此通リニ仕ヤウト云フ考デアリマス、蓋シ奧田君ノ考モソレダラウト思ツテ贊成シマシタノデアリマス
○二番(岡野敬次郞君)
唯今ニ條ニ對シテ修正ノ意見ガ出マシタガ、ソレハ奧田君ノ帳決議ノ案ガ消滅シマシタケレドモ、私ハ假決議ト云フ形ハ望マナイノデアリマス、故ニ手ヲ擧ゲナカッタノデアリマスケレドモ、併ナガラ尙ホ本條ハ疑ノナイ誠ニ一字モ動カスベカラザルモノトハ私自身モ最初カラ申上ゲタ通リニ信ジテ居ラヌノデアリマスカラ、考ヘマシテ相當ニ斯ウ云フヤウニシタラバ、定メシ諸君ノ御贊成ヲ得ルデアラウト云フ案ガアリマスレバ、私ハ私一人ト致シマシテハ例令不成立ニ終ルト致シマシテモ、私ハ再議ヲ要求スルカモ知レマセヌ、兎ニ角此處デ一旦成立ヲ願ヒタイト云フコトガ卽チ隈決議ニ對シテ手ヲ擧ゲナカツタノデアリマス、將來良イ案ガアリマシタナラバ御提出ヲ願ヒタイ、私自身モ提出スルカ知レマセヌガ、サウ云フ意味デ私ハ本條ヲ決議ヲ願ヒタイト云フ精神デアリマス
○議長(子爵岡部長職君)
諸君ニ御諮リヲシマスガ、唯今二番カラ發議ニナッタ如ク、又三十四番ノ御說モアツタ通リ、此際ハ之ヲ決議致シテ置イテ諸君ニ於テ尙ホ此條文ヨリカ良イ御考ガアレバ其時ニ再議ノ形デ御提案ニナツテモ一向差支ナイト思ヒマス、サウ云フ考ヲ以テ尙ホ十分ニ此條文ニ付イテ御硏究下サルト云フコトハ諸君ニ於テモ御含ミ下スツテ此際ハ是デ決シテ置キタイ
(「異議ナシ」ト言フ者アリ)
○議長(子爵岡部長職君)
二條ハ別ニ修正說モゴザイマセヌカラ、此儘デ御異議ガナイト認メテ宜シウゴザイマスカ
(「異議ナシ」ト言フ者アリ)
○二十四番(鳩山和夫君)
私ハ大ニ異議ガアリマス
○議長(子爵岡部長職君)
ソレナラバ決ヲ採リマセウ、二條ノ原案ニ同意ノ諸君ハ手ヲ御擧ゲ下サイ
擧手者多數
○議長(子爵岡部長職君)
多數デアリマス、最早六時ニ近フゴザイマスカラ、本日ハ是デ散會致シマス、次回ハ此次ノ水曜日矢張同ジ時間ニ始メマス