商法(~1951年)

第二次法律取調委員会 商法中改正法律案 議事速記録 第15回

参考原資料

備考

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法律取調委員會(商法中改正法律案)第十五回議事速記錄
出席缺席
○議長(子爵岡部長職君)
是ヨリ開會シマス、會社ノ組織變更ニ關スル件ニ付イテハ豫テ調査ニ附シテアリマス、之ヲ本日ノ第一ノ議題ト致シマス
○十番(梅謙次郞君)
唯今議題ニナリマシタ會社ノ組織變更ノ議ニ付イテハ、此前サウ云フ案ヲ作ツテ見タラバ宜カラウト云フヤウナ御意見ガ大分アツタヤウデアリマスカラ、試ニ私モ一ノ案ヲ提出致シマスルシ、又松波君ヨレモ一ノ案、二ツマデ案ヲ提出セラレマシタ譯デアリマス、松波君ハイヅレ御提出ノコトニ付イテ御說明モアルデアリマセウガ馬極メテ簡單ニ私ノ立案ノ趣意ヲ申上ゲマシテ、詳細ノ議ハ若シ御質問ガアレバ御答ヘ致シマセウシ、又幸ニ一滿唄金目ヲ{通過致シマスレパ、各條議ノ際ニ詳シク說明ヲ致シマセウト考ヘマス、私ノ立案致シマシタル大體ノ方針ハ成ルベク會社ノ組織ヲ變更スルト云フコトハ自由ニ致シタイ、中ニハ實際餘リ必要ノナイト云フ場合モアルカバ知レマセヌケレドモ、多少必要ノアルベキ見込ノ場合ハ悉ク網羅致シマシテ、規定ヲシテ置タ方ガ宜カラウト云フ斯ウ云フ考ヘデ、第一ニハ合名會社ヲ合資會社トナスコト、株式會社トナスコト、株式合資會社トナスコト、次ニハ合資會社ヲ株式會社トナスコト、及ビ株式合資會社トナスコト、ソレカラ終リニハ株式會社ヲ株式合資會社トナスコト、是ダケノコトヲ總テ規定致シマシタノデアリマス、尤モ其中ニハ既ニ起草委員ヨリ提出ニナツテ居リマスル案ニ存シテ居ッタ場合モアリマス、ソレハ少數デ、ソレカラ純然タル組織變更デナク此種類ノ違ツタ社員ヲ加ヘテ、サウシテ、組織變更ト略ボ同ジヤウナ結果ガ起ル場合モ見テ居リマシタノデアリマス、各條ニ付イテハ初メ咄嗟ノ間ニ調ベマシタコトデ、十分注意ノ屆カナカツタ㸃モアリマスルノデ、其後心付キマシタコトヲニ一㸃又附加ヘテ置キマシタノデアリマスカラ、マアソレデドウニカ實際差支ヘナキヤウニ參ラウカトマア思ヒマス、此ヤウニ相成リタイト思ヒマス、松波君ノ御案ハ誠ニ簡單デニ共簡單デアリマシテ、三ツデシタカ三案出テ居リマシタガ、三案共ニ極メテ簡單デアリマシテ、若シ是ダケノ規定デ濟ムコトデアレパ誠ニサツパリ致シテ宜シイノデアリマスケレドモ、私ノ見込デハドウモ是デハ其」趣意ノ疑シイコトヤラ、行キ詰ルコトヤラガアリソウニ考ヘマスノデ、ソレデ私ノハ簡單デハアリマスケレドモ、松波君ノ御案ヨリハ宜シイ、稍々條數ガ多クナツテ居リマス、獪ホ御質問ガアレバ御答ヘ致シマス
○二番(岡野敬次郞君)
會社ガ其組織ヲ變更スルト云フコトハ或種類ニ限ツテハ、既ニ此議場ニ於テ議決ニナツタ所ノ案ニ認メテアルノデアリマス、然ルニ之ヲ議場ニ於キマシテ唯今梅君カラ述ベラレタ如ク、會社ノ組織變更ヲ極メテ自由ナモノニ致シテ、合名會社ハ株式會社トモナルト云フヤウナ類ヲモ併セテ認メヤウト云フ議ガ出マシテ、其種類ノ組織變更ヲ認ムルヲ可トスルヤ否ヤト云フコトニ付キマシテハ、此議場デハイヅレトモ決定セラレテハ居ラナカツタノデアリマス、兎ニ角モ一案ヲ立テテ然ル後ニ議スルガ宜カロウト云フコトニ決定ニナリマシテ、卽チ梅君ヨリハ一種ノ案ヲ提出セラレ、又松波君ヨリモ一種ノ案ヲ提出セラレタノデアリマス、ソレニ對シマシテ吾々起草委員ハ一同協議ヲ致シマシテ、此ニ案ニ對スル所ノ起草委員ノ見ル所ヲ此議場ニ御紹介ヲ致シタイト云フ積リデ、其コトヲ此議場ニ御願ヒヲシタノデアリマシテ暫ラク休會ニナツテ居リマシタカラ、結局休會シタノハ餘程以前ニナルノデアリマスケレドモ、結局愼重ニ相談ヲシマシタ末ガ、此組織變更ト云フモノヲ極メテ自由ニ認メルト云フ根本ノ問題ガ果シテ行ハルルモノデアラウカドウカ、更ニ梅幷ニ松波君カラ御提出ニナツタ所ノ案ニ付イテモ、一應ノ調査ヲ致シタノデアリマスケレドモ、ソレハ拜見致シマシタ所種々疑問モアリマシテ、是等ノ疑問ヲ解決スルト云フコトニ付テハ、獪ホ各條ニ付イテ御尋モ致シタシ又御答辯ヲ得タイノデアリマス、先ヅ此組織變更ト云フ事柄ガ、ドウ云フ其事柄デアルカト言ヘバ、申スマデモナク會吐ノ經濟的ニ其經營ハ變ラナイノデ、會社ノ構造ガ變ルノデアル、法律的構造ガ變ルノデアルト云フコトガ、私ノ組織新更ト解スル所ノモノデアルノデ、卽チ會社組織ノ形體ヲ變造スルト云フコトデアラウト私ハ思フノデアル、ソレデ會社ガ其組織ヲ改造スルト云フコトニ付イテハ是ハ申上ゲルマデモナク、色々ノ經濟上ノ利益ノアルト云フコトハ認メルノデアリマスケレドモ、亦冖外國ノ法律等ヲ見マシテモ組織變更ト云フコトハ追々ト認メラレテ來ルト云フ趨 勢デアルト云フコトハ申シテ宜ロシカロウト思フノデアリマス、併シナガラ其趨勢ト云フノモ自ラ制限入アルコトデアツテ、總テノ商事會社ダケヲ例ニ取ツテ申上ゲレバ、商事會社ガ互ニ自由自在ニ其組織ヲ變更スルト云フマデニハ今日進ムデ居ラヌヤウデアリマスシ、又組織變更ニ關スル著書幷ニ論文ヲモ參照致シタノデアリマスケレドモ、是等ノ問題ニ關スル所ノ著書等ハ甚ダ少ナイノデアリマシテ、十分ニ此問題ヲ硏究スルト云フノ材料ヲ得ナカッタノデアリマス、併ナガラ組織變更ノコトヲ論ジテ居ル書物ニ付イテ一應ノ調査ヲ致シマシタ結果、多少御參考トシテ申上ゲタイ㸃モアルノデアリマシテ、是ヨリ出來ルダケ簡單ニ其大要ダケヲ御參考ニ供シタイト思フノデアリマス、先ヅ第一ニ株式會社ト云フモノガ其目的商業デナケレバナラヌ、其㸃ヲ採ッテ居ル所ノ法律ニ於キマシテハ、商事會社ヲ民事會社トスル、民事會社ヲ商事會社トスル、是モ矢張リ一種ノ組織ノ變更ト云フヤウニ論ジテ居ラルルヤウデアリマスケレドモ、兎ニ角モ民事會社ガ商事會社トナリ、商事會社ガ民事會社トナルト云フコトハ、是ハ法律ニ明文ノアル場合ニ抅ハラズ、學說トシテモ亦實際ニ於テモ之ヲ認メテ居ルヤウデアリマス、此㸃ニ付イテハ我此商法修正案ニ於キマシテハ、餘程議論ノアッタ㸃デアリマシタケレドモ、苟モ營利ノ目的トスル所ノ會社デアリマシタナラバ、其目的ガ商業デナクテモ矢張リ之ヲ商事會社ト看做シテ、商法ノ規定ニ因ラシムルト云フコトニ決議ニナッタモノデアリマスカラ、此㸃ニ付イテハ所謂組織變更ヲ認メルト云フノ必要ハナイノデアリマス、ソレカラ第二ニハ此會社組織ノ形式ニ於テ根本ニ於テ相類シテ居ル所ノモノハ資本ヲ中心トスル所ノ會社デ、純然タル資本的組織ノ會社デアル、或ハ主トシテ資本的組織ノモノガ互ニ其組織ヲ變更スルト云フコト、竝ニ合名會社デアルトカ、合資會社デアルトカ云フモノガ、又互ニ其組織ヲ變更スルト云フコトハ、是ハ又學說ニ於テモ、亦立法例ニ於テモ認メテ居ルヤウデアリマス、或ハ株式合資會社ガ株式會社トナリ、合名會社ガ合資會社トナリ、或ハ合資會社ガ合名會社トナルト云フコトハ、斯ウ云フコトハ認メテ居ルヤウデアリマス、併シナガラ株式會社ガ合名會社ト云フモノトナルトカ、或ハ株式會社ガ合名會社ニナル、合名會社ガ株式會社トナルト云フノデ、資本ヲ中心トスル會社ガ人ヲ中心トスル會社トナル、或ハ人ヲ中心トスル會社ガ資本ヲ中心トスル會社トナルト云フ類ハ、是ハイヅレノ法律ニ於テモ認メテ居ラヌヤウデアリマス、デ曩ニ松波君ヨリ英吉利ノ會社ノ簡單ナル御話ガアリマシテ、英吉利ノポソタニス卽チジヨンタニス色々ノ種類ナリ形チガアルニ抅ハラズ、互ニ其組織ヲ變更スルコトハ出來ルト云フコトヲ認メテ居ルト云フ御話ガアツタノデアリマス、是ハ書物ニ依ツテ見マシテモ松波君ノ御說ノ通リデアルヤウデアリマス、併ナガラ是ハ擧者ノ解スル所ニ依レバ一ノジヨンエソトスコンパニース大ナル種類ノ中ノ小區分ニ過ギナイノデアツテ、卽チ資本的組織ト云フモノガ元ニナッテ居ル、此資本的組織ガ本ニナッテ居ル會社デアル、資本的組織ノ會社ナルガ故ニ其或部分ニ於テモ互ニ異ナル所ガアツテモ是ハ矢張リ組織變更ヲスルト云フゆこコトヲ認メテ差支ヘナイノデアル、併ナガラパート云フモノタこガコソパニスニナルトカ、或ハコンパニスガパーニナルト云フコトハ、是ハ組織變更トシテ英吉利ノ法律ガ認メテ居ル所ノモノデハナイト思フノデアリマス、ソレデ人的會社ガ物的會社ニ變ルト云フコトハ、ドウモ會社組織ノ基礎ガ異ツテ居ルノデアルカラ、之ヲ認ムルト云フコトハ困難デアラウト云フコトヲ、嘗テ此議場ニ於テ若槻君ノ御尋ネニ對シテ私ハ御答ヲシタコトヲ記憶シテ居ルノデアル、其際ニ若槻君ノ御說ニハ一個人ノ計盡シテ居ル所ノ事情ニ基イテ株式會社ヲ組織スルト云フコトハ、ソレハ例ノ゚アルコトデアル、此一個人ガ事業ヲ經營シテ居ルノハ人的ノ最モ著シイモノデアル、此場合ニ一個人ノ事業カラ之ヲ基礎トシテ株式會社ヲ設立スルコトヲ認ムルナラバ、合名會社ガ其組織ヲ變更シテ株式會社トナスト云フコトモ之ヲ認ムルニ於テ何モ不都合ハナイ、人的ガ物的ニナルノハイカヌト云フ私ノ說明ニ對スル御話トシテ、サウ云フ御說明ノアッタコトヲ私ハ記憶シテ居ルノデア  リマス、併ナガラ唯今ノコンパニスパート云フモノハ英吉利ノ法律ガポンタニスガパータニスニナルト云フコトハドウモナイヤウニ思フノデアリマス、此獨逸ノ法律ニ於テ商法以外ノ株式會社ガ、獨逸ノ法律ニ認メテ居ル所ノ一種ノ會社卽チ有限責任會社ひマ トデモ譯シタナラバ當ルノデアリマスカ、イタ云フ」種ノ特別ノ法律ニ依ツテ認メラレテ居ル所ノ會社ガアルノデアリマス、株式會社ガ其組織ヲ變更シテ此特種ノ有限責任會社トナルコトガ出來ルト云フコトハ是ハ認メテアルノデアリマスケレドモ、是モ矢張リ其會社組織ノ根本ガ卽チ資本的會社デアルニ依ッテ、是ハ組織變更トシテ認メルト云フコトモ一モ差支ヘナイノデアル、デ英吉利ノ法律ニ於テコンパニスガ互ニ其組織ヲ變更スルコトガ出來ル、獨逸ニ於テ株式會社ガ一種ノ有限責任會社ニナルコトガ出來ルト云フコトモ、亦佛蘭西ヤ伊太利ノ法律ニ於テ株式會社ヲ變ジテ今ノソレイテート云フモノニ組織ヲ變更スルコトガ出來ルト云フコトハ、イヅレモ同ジ觀念ニ基イテ居ルノデアル、卽チ資本的組織ノ會社ノ其種類ニ過ギナイノデアルカラ、是ハ差支ヘナイト云フコトハ學者ノ總テガ說明シテ居ルヤウデアリマス、併ナガラ唯今モ申シマシタ通リニ人的組織トソレカラ資本的組織ト云フモノガ互ニ共通スルト云フコトハ立法ノ上ニ於テハ私ノ調ベマシタ所ニハ一ツモナイヤウデアリマス、學說トシテハ幾分カ之ヲ論ジテ居ル所ノモノガアルノデアリマスガ、私ガ見マシテ比較的組織變更ノコトヲ詳シク論ジテ居ル所ノ書物ハレーマンノ所說デアリマスガ、其レーマンノ所說ニ依リマスルト、詰リ唯今申上ゲタヤウナ卽チ人的會社ト物的會社ト云フノハ、其經營組織ニ於テ互ニ相容レヌ所ノモノデアルカラシテ、人的ヲ變ジテ物的トナシ、物的ヲ變ジテ人的トナスト云フガ如キ又組織ノ變更ハ之ヲ認ムベキモノデナイト云フコトヲ是ハ斷言シテ居ルノデアリマス、而シテ例ヲ擧ゲテ株式會社ヨリ合名會社ヲ造リ、合名會社ヨリ株式會社ヲ造ルト云フガ如キハ、所謂根本的組織ヲ變更スルモノデアルカラシテ、一ノ會社ノ解散ト共ニ他ノ會社ヲ設立スルト云フ手段ニ依ルヨリ外ナイト云フコトマデ申シテ居ルノデアリマス、而シテ獪ホ進ムデ廣ク合併ヲ認メテ居ル所ノ法律案ハ其例ガアルノデアル、而モ會社ノ合併ヲ認メテ居ル所ノ法律ニ於テハ、主義トシテハ組織變更ヲ認メテモ差支ヘナイト云フ理窟ハアルノデアル、組織變更、廣イ組織變更ニ反對スル理由ハナイノデアラウ、併ナガラ合併ヲ廣ク認メテ居ル、卽チ一般的規定トシテ設ケテ居ル所ノモノハ、伊太利ト葡萄牙ノ商法デアリマスケレドモ、此伊太利葡萄牙ノ商法ニ於テモ獪ホ自由自在ニ組織變更ト云フモノハ認メテ居ラナイノデアリマス、其認メテ居ラナイト云フコトハ理由ノアルト云フコトヲ附加ヘテレーマソガ申シテ居ルノデアリマス、大體ハ唯今申上ゲタヤウナコトデアリマシテ、私ノ或範圍ニ於テ調査シタ所ノ結果ハ卽チサウ云フモノデアリマス、獪ホ私ガ考ヘマスル二日本ノ今日ニ於テ果シテサウ云フ廣イ組織變更ヲ認ムルノ必要ガアルヤ否ヤト云フコトニ付イテモ、多少ノ私ハ疑ヲ有ッテ居ルノデアリマス、例ハアルヤウデアリマス、例ヘバ三井ガ合名會社デアツタモノガ終ニ株式會社ニナッタ、是ニ類スル所ノ例ハ或ハ他ニ一ニアルカモ知レヌノデアリマスガ、併ナガラ是ガ果シテ組織變更ヲ認メネバナラヌト云フ實際ノ要求デアルカドウカト云フコトハ、獪ホ私ハドウモ十分ニ自分ノ見込ハ立タヌノデアリマス、ソレハ幾分ノ例ハアルカモ知レヌガ、併ナガラ若シサウ云フ其僅カノ例ニ依ツテ其組織變更モ亦商法ニ規定シテ置カネバナラヌト云フ論ニナリマスレバ、梅君ノ案ノ後、修正ニナツタ所ハ私ハスツカリ覺ヘマセヌガ、合名會社ガ株式會社ニナルトガ、株式會社ガ合名會社ニナルト云フコトハナイヤウニ私ハ記憶シテ居ルノデアリマス、是モ或ハ起ルカモ知レヌノデアリマス、或ハ合名會社デアリマスレバ、淸算ノ報吿モ簡易デアルニ依ツテ或ハ之ヲ解散シテ株式會社トスルト云フコトハ、現行商法ノ下ニ於テハ比較的容易イ、却テ株式會社ガ解散スルト云フコトニナレバ、廣イ法律ニ定メテアル所ノ嚴格ナル淸算手續ヲ蠡サネバナラヌト云フコトニナルカラシテ(實際全ク必要ガナイト言ヘパ格別デアリマスケレドモ、若シ或ハアルカ知レヌト云フコトデアリマスレバ、寧ロ株式會社ガ淸算ノ手續ヲ省略シテ其組織ヲ變更シテ、合名會社トナルトカ或ハ合資會社トナルトカ云フコトハ認メル方ガ、或ハ理窟ニ適ツテ居ルデハナイカト私ハ思フノデアリマス、要スルニドウモ其實際果シテ必要デアルノデアルカドウカト云フコトハ、ドウモ其能ク分ラヌノデアリマス、而シテ更ニ組織變更ヲ認メテ是ニ對シテ相當ノ其規定ヲ設クルト云フコトニナルニ付イテハ、私共甚タ見聞ノ狹イ譯デアリマスガ、實ハ其外國ニ一ノ例ガナイノデアリマスカラ、又組織變更トシテ論ジテ居ル所ノ著述モ甚ダ少ナイノデ、斯ウ云フ規定ヲ設ケタナラバ定メシ安心シテ商法ノ此組織變更ヲ廣ク認メテモ差支アルマイト云フ、ドウモ其結論ニドウシテモ至ラヌノデアリマス、甚ダ私ハ懸念ニ思フノデアリマス、ニ三ノ例ヲ以テ申上ゲテ見マスレバ先ヅ其合名會社ニ於テハ社員ノ數ガ極メテ少ナキヲ例トシテ居ルノデアル、日本ニ於テハ隨分幾分カ多數ノ合名會社モアルヤウデアリマスケレドモ、併ナガラ外國ノ合名會社ト云フモノハ、マア社員ノ數ガ少ナイヤウデアリマス、又少ナイノガ當然デアラウト思フノデアリマス、所デ我此實際ニ於ケル所ノ合名會社ノ數ガドレダケアツテ而シテ其合名會社ニ於ケル各社員ノ數ガドレダケアルカト云フト總計ハ私ハ存ジマセヌガ、併シナガラ七人未滿ノ合名會社ト云フノガ多分相當デアルト思ヒマス、所デ株式會社ニハ申スマデモナク、會社ヲ創立スルニ當ツテハ發起人ガ七人ナケレバナラヌ、又會社ガ其生活ヲ存續ヲシテ行クニハ七人ノ社員ガナクテハナラヌト云フコトヲ定メテ居ルノデアリマスカラ、ソレデ今七人ヨリモ少ナイ所ノ社員カラ成ル所ノ合名會社ガ、其組織ヲ變更シテ株式會社トナルト云フコトニ付イテハ、或ハ先ヅ以テ合名會社ノ社員ヲ殖シテ置テ、サウシテ株式會社ニ變ルカ或ハ株式會社ニ變ル場合ニ、自身ガ卽チ合名會社ノ社員以外ニ獪ホ發起人トナルベキ者ヲ、支配人トナルベキ者ヲ募集スルト云フコトヲ認ムルカ、イヅレカ其一ツシナケレパナラヌト思フノデアリマス、ソレデ若シ合名會社ノ社員トシテ加入サセテ於テ然ル後ニ株式會社ニ組織ヲ變更スルト云フコトハ、是ハ無要ノ手續デアラウト思ヒマスカラ、其組織變更ノ場合ニ於テ社員ヲ募集スル、卽チ新ニ七人ノ、少クトモ七人ニ達スルマデノ社員ヲ此處デ拵ヘナケレバナラヌト云フ手續ヲ採ラナケレバナラヌト思フノデアリマス、サウスルト云フト玆ニ色々ナムヅカシイ問題ガドウモ起ツテハ來ハセヌカト私ハ思フノデアリマス、先ヅ其株式會社ニナル場合ニ於テ其株式會社ヨリ各社員ニ與フベキ株式ノ數ガドレダケノモノニナルノガ相當デアルカ、又新タニ株式會社トナルベキ其資本ノ額ガ、合名會社ノ營業基金ト定メテアル所ノモノト同額ト云フコトニ限ルノデアルカ、或ハ資本ヲ獪ホ增スコトヲ許スノデアルカ、又資本ヲ獪ホ減ズルコトヲ許スノデアルカト云フヤウナ問題ガ起ルヤウニ思フノデアリマス、ソレカラ是モ何トカ相當ノ規定ヲ設ケナケレバ、ドウモ法律ノ適用ニ於テ甚ダ不明デアルト云フコトニナリハセヌカト云フコトヲ恐ルルノデアリマス、又合名會社ニ於キマシテハ出資ト云フモノガ必ズ財產出資ニ限ツテ居ルノデハアリマセヌ、我現行商法ニ於キマシテモ信用ヲ以テ出資トスルコトモ、勞務ヲ以テ出資トスルコトモ認メテ居ルノデアリマス、而シテ利益ノ配當ヲ如何ニスルカト言ヘバ、其信用或ハ勞務ニ付イテハ出資トシテノ額ハ財產出資ニ對ンテドレダケノ比例ヲ持ツモノデアルカ、其額ノ評定ト云フモノヲ定款ニ定メテアルカラ是ニ依ツテ利益ノ配當モ出來マスシ、又損ノアツタ場合ニハ一定ノ率ヲ掛ケテ往クト云フコトモ出來ルノデアリマスケレドモ是ハ合名會社トシテハ之ヲ出資トシテ認メ、或ハ出資ノ額ニ損益ノ分配スルコトモ出來ルノデアリマスガ、一度ビ株式會社ニ變ヘル場合ニ於テハ勞務株或ハ信用株ト云フモノハ無論認ムベキモノデナイカラシテ、此場合ニ於テハ如何ニシタナラバ此信用又ハ勞務ヲ以テ出資ノ目的トシテ居ル所ノ社員ニ對シテ株式ヲ割當テルコトガ出來ルカト云フコトモ必ズ問題ニナルト思ヒマス、又合名會社ニ在ツテハ損益ノ分配ハ出資ニ關スルコトニナツテ居リマスケレドモ、是ハ其株ハ別問題トシテ固ヨリ命令的ノ規定デナク會社ノ合名會社ノ定款ニ依テハドウデモ之ヲ變更スルコトガ出來ルト思ヒマス、利益ノ配當ハ決シテ法律上出資ノ額ニ應ズルト確定シテ居ル譯デハナイノデアリマス、其損失ノ分擔ト云フコトモ決シテ出資ノ額ニ應ズルト云フコトニ定ツテ居ル譯デハナイ、ソコデ或ハ出資ヲ大ニ供シテ、サウシテ此財產出資ヲ大ニ供シテ比較的利益ノ分配ニ與カルコト少キ者モアリマセウ、又社員ニ依ツテハ損失ヲ分擔シナイ、利益ガアツタラバ利益ノ分配ニハ與カルケレドモ、損失ノ分配ニハ加ハラナイト云フコトヲ定ムルコトモ固ヨリ差支ヘナイノデアリマス、此場合ニ於テハ各社員ノ會社ニ對スル關係ト云フモノハ、色々ニ錯雜シテ居リマスカラ是等ノ株式ヲ割當ル場合ニ於テハ唯出資ノ一額ニ雁蝸ジテ割當テルト云フノデハ決シテ適轡國入ル所ノ方法デハ無カラウカト思ヒマス、又合名會社ニ在ツテハ社員ガ出資トシテ其實際會社ニ供スル所ノモノハ固ヨリ其額ニ於テ一定シテ居ラヌコトハ幾ラモ實例ニ於テアルコトデアラウト思フノデアリマス、株式會社ニ於テモ株金ノ拂込ハ株主ニ依ツテ異ナルコトノアルベキコトハ無論商法ニ於テモ認メテ居ルノデアリマスケレドモ、併シ先ヅ原則トシテハ株式會社ニ在ツテハ、佛込ムベキ株金ハ一株ニ付イテ定ツテ居リマスカラ、社員中ニ於テ左程違イノアルコトデハナカラウト思フノデアリマス、要スルニ先ヅ株主ト云フモノハ同等ノ先ヅ扱ヒヲ受ケテ居ルト云フノガ原則デアル、併ナガラ合名會社ニ在ツテハ決シテ同等デハナイノデアリマス、サウ云フコトモアリマスカラ、是モ組織變更ヲナス上ニ於テハ多少ノ其困難ハ私ハアルデアラウト思フノデアリマス、又株式會社ニ在ツテハ純然タル資本ノ會社デアリマスカラ株主タルノ權利モ單位タルノ株ニ依ツテ極マルノデアル、株主タル義務ニ單位タル株ニ依ツテ極マルノデアリマスケレドモ、合名會社ニ在ツテハサウ云フ譯デハナイノデアリマスカラ、出資ノ額ノ如何ニ依ラズ議決權ハ一ツデアルト云フノガ通則デアル、是モ議決權ヲニ個與ヘルト云フコトモ出來マセウケレドモ、併ナガラ實例ニ於テ社員ニ對シテ違ツタ議決權ヲ與ヘテ居ルト云フ例ヲ私ハ聞カヌノデアリマス、サウ云フヤウナ譯デアリマシテドウモ其色々此合名會社ガ其組織ヲ變更シテ、株式會社ニナルト云フコトヲ認ムルニ付キマシテハ攻究スベキ㸃ガ頗ル多イヤウニ思フノデアリマスカラ、之ヲ法律ニ揭ゲテ總テノ場含ニ差支ナイヤウニ、法律ノ其運用ニ於テ妨ゲナイヤウニシヤウト云フノハ餘程ノ困難デアラウカト私ハ思フノデアリマス、而モ困難アルトシテ十分ニ硏究ヲ致シマシタ、所デドウモ其外國ニ例モナイコトデアリマス、學說トシテハ甚ダ據ルベキモノモ少ナイヤウデアリマスカラ、餘程其愈々立法スルニ當ッテハ大ニ懸念デアル、如何ニシタラバ宜シイカト云フ其見當ガ付カヌノデアリマス、又兔モ角モ出來ルダケ色々ノ場合ヲ想像シテ立案ヲ試ミマシタ所デ、果シテ實際ガ左程ニ此ソレマデノ硏究ヲ重ヌルニ、而モ劍呑ナル硏究ヲ重ヌルニ値ヒスルダケノ要求ガアルカドウカト云フコトモ私ハ甚ダ疑フノデアリマス、此色々ノ細カイ㸃ニ付イテハ獪ホ起草委員他ノ諸君カラ御話モゴザイマセウガ、私ガ起草委員ノ一人トシテ自分ノ思フコトダケヲ申上ゲレバ、先ヅ此議場ニ於テ決議ニナツタ所ノ組織變更位ナ程度ニ止メテ置ク方ガ穩當デアルマイカ、ソレヨリモ進ンデ物的會社ガ人的會社ニナリ、人的會社ガ物的會社ニナルト云フコトマデハ、世上稀ニ在ル所ノ例デアリマシテ、而モ其例ハドウニカ會社債權者ノ關係サヘ附ケバ必ズ實行ガ出來ナイト云フ程ノコトデハナイ、法律ニ認ムル以上ハ色々ノ場合ヲ想像シテ規定シナケレバナラヌコトニナルノデアリマスカラ、暫ク果シテ實際ニ大ニ之ヲ要求スルニ至ルカト云フコトヲ俟ツテ立案シテモ或ハ遲クハアルマイカト私ハ思フノデアリマス、御參考マデニ私ハ考ヘマシタコトヲ申上ゲタノデアリマス
○十番(梅謙次郞君)
イヅレ松波君カラ御意見ガアリマセウ、他ノ諸君カラモ御意見モアリマセウガ、私ハ先刻提案ノ理由ニモ殆ソドナラヌ程簡單ナコトヲ申シマシタガ、唯今岡野君カラ段々詳細ナル御說明ヲ承ハリマシタガ、岡野君ノ御述ベニナツタコトハ大耡脚私共豫期シタコトヲ御述ベニナツタノデアリマスカラ、初メヨリ其御話ヲシタ方ガ宜イカト思ヒマシタガ、自然個條ニ亙ルコトニナリマスカラ控ヘマシタ、ソレニ對シテハ一應私ノ考ヘル所ヲ述ベテ置キマセヌト云フト、提案ノ責任ガ盡サレナイコトニ相成リマスカラ、私ハ岡野君ノ唯今御述ベニナツタヤウナコトヲ考ヘツツ獪ホ本案ヲ提出シタ理由ヲ極メテ簡單ニ申上ゲマス、私ノ案ハ唯今岡野君ノ御述ベニナツタ中ニモ略ボアリマシタヤウニ最モ會社組織ノ變更ヲ自由ニシタイト云フ精神デハアリマスケレドモ、松波君ノ御案ノヤウニ總テノ會社ヲ自由自在ニドンナ種類ノ會社カラドンナ種類 ノ金目社ニデモ組織}ヲ變更スルコトガ出來ルト云フ程ニハ立案シナカッタノデアリマス、岡野君ノ或ハソレハ權衡ヲ得テ居ラヌデハナイカト云フヤウナ御批難モアリマシタガ、私ハサウ思ハヌノデ、卽チ現行法及ビ既ニ決議ニナツテアル若クハ御預リニナツテ居ル所ノ此主査委員ノ提出ノ案ニ、既ニ定ツテ居ルモノヲ除キマシテ、新ニ此私ノ案ニ依ツテ附加ヘマシタノハ先刻申シマシタ中デ、此合名會社ヲ株式會社又ハ株式合資會社トナスト云フコトト、合資會社ヲ株式會社又ハ株式合資會社トナスト云フコトト、株式會社ヲ株式合資會社トナスコトトソレダケデアリマス、ソレデ松波君ノ御案ニ依ルト其外獪ホ株式會社若クハ株式合資會社ヲ合名會社合資會社爭ナスト云フコトモアリマス、一層廣クハナツテ居リマスガ、是コソハドウモ私ハ實際ニ必要ガナイデアラウ、又是マデ嘗テ例ヲ聞イタコトガナイ、其譯ハドウカト申シマスト、大體此會社組織ノ上カラ申シマスレバ合名會社ガ旦取モ幼稚ナルモノデアツテ、合咨ハ會社ガ稍々ソレヨリモ進ムダモノデテル、株式會社株式合資會社ハドチラガ進ムデ居ルカト云フコトハ人々見ル所ヲ異ニ致シマセウガ、兎ニ角亦一層進ソダモノデアル、ソレデ會社組織デ一番進步シタモノハ株式會社若クハ株式合資會社デアラウト思フ、故ニ或事業ヲ先ヅ以テ合名會社デ企テテ見タガ、段々事業ガ大キクナリ基礎ガ固クナッテ參ツタカラ、ソレヲ合資會社ニシヤウ株式會社若クハ株式合咨ハ會社ニシヤウト云フコトハ、是ハ理窟カラ考ヘテモアリサウナコトデ、又實例モ見ヘル、是ニ反シテ一旦進步シタ株式會社若クハ株式合資會社ノ組織ヲ採ツタガドウモ旨ク行カヌカラ之ヲ變更シテ合名會社又ハ合資會社ニシヤウト云フコトハ言ハヽ其退步ノヤウナ姿デアリマスカラ、サウ云フコトヲ希望スル場合ハドウモ實際ニ餘リナイノハ尤モナコトデアルト思フ、ソレデ元來ガ組織ノ違フモノヲソレヲ變更シテ同尸ノ會社ト見倣シテサウシテ其變更ヲ許スト云フコトハ固ヨリ變則デアル、ソレガ爲メニハ多少ノ手續上ノ困難ノアルト云フコトハ固ヨリ認メンケレバナラヌノデアリマス、必要ガナイノニサウ云フコトヲ無闇ニ規定ヲ設クルト云フコトハソレハ大體其㸃ニ於テハ岡野君ト御同意デ、私モサウ云フコトハ敢テ定メテ置クニ及、ハヌコトデアルト思フノデアリマス、ソレデ此合資會社カ株式會社又ハ株式合資會社ヨリシテ合名會社又ハ合資會社トナスト云フ方ハ私ハドウモ必要ヲ感ジマセヌカラ案ニ揭ゲナカッタガ、是ニ反シテ合名會社若クハ合資會社カラ株式會社又ハ株式合資會社ニ組織ヲ變更シヤウト云フコトハ繖 テノ場合ニ付イテ悉ク實例ガアルトハ申シマセヌガ、大體ニ於テ實例モアリ又ソレカラ理窟カラ考ヘテ見テモ事業ガ進步スルニ從ツテ、サウ云フ風ニナルノガ自然ノ順序デアル、御承知ノ通リ一個人ガ或事業ヲ始メテ居ツテ其事業ガ段々盛大ニ赴キマシテカラ、ソレヲ會社事業ニスル或ハ先ヅ合名會社ニスルコトモアル、亦合資會社ニスルコトモアル、亦一足飛ビニ株式會社又ハ株式合資會社トナスト云フモ!モアリマセウ組織變更ヲ許サヌケレバ仕方ガナイカラ初メニ此會社カラ會社ニ變ルベキ場合ニハ、先ヅ會社ヲ解散シテサウシテ其組織ヲ改メルト云フ外ハナイノデアリマスカラ、一個人カラ會社ヲ立テル場合ニハ固ヨリサウ云フ必要ハナイ、手續ノ上カラ言ヘバ新タニ會社ヲ設クルト同ジ手續デアルガ、實際ニ於テハ此或會社ガ他ノ會社ニ組織ヲ變更スルヨリ餘程容易イ、詰リ一個人ノ財產ト云フモノハ其自身ノ財產ハ自身ハ自由ニナルノデスカラ、ソレデ誠ニ其手續ハ容易ク出來ル所ガ、會社カラ組織ヲ改メテ他ノ會社ニナスト云フ場合ニドウ云フ所ノ凩【難一ガアルカト云フト、岡野君ノ言ハレタ困難ハ組織變更ニ拌ブ困難デアリマスガ、ソレハ岡野君ノ言ハルル程困難デナイト思フ、ソレヨリモ困難ナノハ若シ組織變更ヲ許シテ置カヌト、必ズ前ノ會社ヲ解散シテサウシテ新タニ會社ヲ組織シナケレバナラヌ、合名會社ノ解散後ノ財產ヲ處分スルニ付イテハ便法ガ設ケテアリマスカラ、此方ヘ此株式會社又ハ株式合資會社ノ資本トシテ移スト云フ方ハ比較的容易ク出來ルケレドモ先ヅ以テ株式會社若クハ株式合資會社ト云フモノヲ設立シナケレバナラヌ、ソレガ設立シテカラデナイト合名會社若クハ合資會社ノ財產ヲソレニ移スト云フコトモ出來ナイ、現ニ私ノ聞ク所ニ依レバ三井ノ合名會社ガ合資會社ニナツテ此際ニハ組織變更ヲ許シテナイモノデスカラ、合資會社ガ解散シテサウシテ株式會社ヲ設立スルト云フ手續ヲ採ラナケレバナラヌ、サウ致シマスト云フト先ヅ此株式會社ヲ設立スルニ付イテハ外ノコトハ暫ク措キマシテ四分ノ一ノ拂込ト云フモノヲシナケレバナラヌ、合名會社ノ方ニハ財產ガ十分ニ在ツテ或ハ四分ノ一ヨリモツトアルカモ知レヌケレドモ、是ハ株式會社ガ出來テカラデナケレパ移スコトガ出來ヌノデスカラ、ソツクリシテ置カナケレバナラヌ、サウシテ新タニ株式會社ノ株主トナルベキ者ガ少ナクトモ資本ノ四分ノ一ダケハ金策シテ出サナケレバナラヌ、ソレガ爲メニ隨分面倒ヲ見タト云フコトヲ聞イテ居リマスガ、アリサウナコトデアル、四分ノ一ノ金ヲ其處ヘ出シテソレカラ今度合名會社ノ資本ヲ又株式會社ニ移スト斯ウ云フコトニナル、四分ノ一ノ拂込ト云フモノハ唯會社設立ノ要件トシテ社員カラ餘計ナサウ云フ手數ヲスルノデ實際上ノ必要カラ申スト實ニ無駄ナコトデアル、ソレガ爲メニ色々面倒ガアル、是ガ其前ニ會社ヲ解散シテ新タナル會社ヲ組織スルト云フトキノ不必要ナル手數デアル、ソレヲ避ケタイト云フノガ吾々ノ案ノ趣意デアリマス、合資會社ニ付キマシテハ此合資會社ガ株式會社又ハ株式合資會社トナルト云フコトハ、外國ニハ例ノアルコトヲ聞イテ居リマス、併シ組織變更ヲ許サヌ所デハ無論一旦解散シテカラ、新ニ新組織ノ會社ヲ造ルト云フコトニ形チノ上ニハナリマスケレドモ、組織ノ上カラ言フトサウ云フ風ニ進化スル場合ハ往々ニシテアルコトヲ聞イテ居リマスガ、日本デモ合資會社ノ株式會社ニナラムコトヲ希望シテ居ルコトハ澤山私ハ承知シテ居ル、御承知ノ通リ此蕾商法ノ下ニ於テ合資會社ト云フモノガ數多ク起リマシテ當時ハ無限責任社員ガナクテモ合資會社トナスコトガ出來タカラ容易ク合資會社ヲ起シタノデアリマス、是等ノ會社ハ往々ニシテ今日ハ株式組織ニスルコトヲ希望シテ居ル、勿論私ノ案ニハ舊商法ニ依ル合資會社ノコトハ何トモ言フテ居リマセヌケレドモ、一旦此案ガ通過致シマスレバ私ハ施行法ノ中ニ必ズ其コトヲ入レテ御貰ヒ申シタイト云フ考ヘヲ持ツテ居ル、新商法ノ規定ニ依ツテ設立致シマシタ合資會社デ株式組織ニ改メタイト云フコトヲ希望シテ居ルモノガ現實今日アルカ知レマセヌガ、ソレモアリサウナコトト考ヘル、デ西洋ニマタ例ガ至ツテナイト云フコトハ私モサウデアラウト存ジマス、殊ニ調ベハ致シマセヌケレドモ如何ニモ其通リデアラウト思フ、併ナガラ此組織變更デアル、合併デアル、斯ウ云フヤウナ言ハ父變則デス、合併モ變則デス、此變則ノコトハ比較的新シク硏究モ出來、又ソレカラ立法例モ出來ルト云フヤウナコトデ合併ノコトナドモマタ舊式ノ法典ノ中ニハ我ガ此改正案ノ如キ廣ロイモノハ認メテ居ラヌヤウナ譯デアリマス、デ組織變更ノコトニ付イテモ段々實際家ガ必要ヲ感ズルニ至ツタナラバ隔外國デモ續々ト新シキ規定ヲ設ケルカモ知レヌガ、會社ニハマダ其例ガナイト云フコトハ事實デアリマセウ、併シ日本ニ於テ現ニ其必要ヲ感ズル以上ハ必ズシモ外國ノ糟粕ヲ舐ナケレバナラヌト云フノデハナクテ、偶ニハ日本ノ方デ先キヘ始メテモ宜カラウ、ソレデ日本ニ於テハ會社組織ニハ經驗ガ乏シイ爲メ、初メニ其組織ヲ撰ブニ於テ過テ一旦株式組織ニシナケレパナラヌモノヲ合名會社合資會社ニスルト云フヤウナコトモアルカモ知レヌ、ソレカラ舊商法ニ於テハ合資會社ガ濫設セラレタ事實ヲ見ルノデアリマス、サウ云フ會社ノ中デ倒レタモノモアリマセウガ、中デ稍々成功シタモノハ今日ニ至ツテハ株式會社ニ改メタイト思フ、前ノ合資會社ノ形チヲ採ッタノガ、誤リダト云フコトヲ覺ルト云フヤウナモノモ割合ニ先ヅ多クアルト云フコトハ、ソレハ却テ日本ニ於テ特ニ其事情ガアルト言ツテモ宜カラウカト思ヒマス、苟モ其實際ニ必要ト云フコトガ現ハレタ以上ハ外國ニ先ンジテ規定ヲ設ケテ却テ外國ヲシテ我國ニ倣ハシムルト云フコトガアッテモ敢テ差支ヘナイダロウト思フ、成程新シク模範ノ餘リナイ所ノ規定ヲ設クルト云フコトハ危險デアルト云フ岡野君ノ御論ハ誠ニ尤モデアリマス、吾々ノ起草シタモノニ於テモ模範ニナカッタモノニ付イテハ缺㸃ノ多イ所ハ認メナケレバナラヌ、誠ニ其通リデアリマスケレドモ、併ナガラ組織變更ノコトハ今問題ニナツテ居ルモノコソバ規定ガナイケレドモ、現ニ現行法ニモ規定シテアルモノガアル、又主査委員カラ提出ニナッテ居ルモノモアル、ソレ等ノ規定ヲ見マスルト云フト、極メテ簡單ニナツテ居ル、ソレニハ私共責任ガアルカラ決シテ惡ク言フ積リデハナイガ大抵ソレデ濟ムデアラウト思ツテ吾吾ハ同意ヲシテ居リマシタケレドモ、實ハ極メテ簡單デアル、就中合併ニ關スル規定ノ如キハ一般ノ規定トシテハ四十四條ノ三ノ會社ハ合併ヲナスコトヲ得、合併ニ因リテ會社ヲ設立スル場合ニ於テハ定款ノ作製其他設立ニ關スル行爲ハ各會社ニ於テ專任シタル者協同シテ之ヲナスコトヲ要スト云フ此一ノ規定デ以テ間ニ合セヤウト云フコトニナツテ居ルノデアリマス、多分是ハ其實際協議ヲ重ネタ上デナケレバ合併ト云フコトハ出來マセヌカラ、多分ハ是デ差支ヘナク行クデアラウト思ツテ、吾々ハ同意シテ居リマスケレドモ、實ハ頗ル懸念ニ思ツテ居ルノデ、合併ニ關スル外國ノ例ハ今覺エテ居リマセヌガ、此通リノ例モナカッタカ知レマセヌケレドモ、ソレモ經驗上ソレデ差支ヘナイト云フコトヲ十分ニ見極メテ然ル後規定ヲ設ケタノデハナクシテ、矢張リソレヲ書イタ人ハ多分是レデ差支ヘナイダラウト言ッテ書イタモノデアラウ、デ吾々モ多分ソレデ差支ヘナイダラウト言ッテ大膽ニ此簡單ノ規定デ濟マサウトシテ居ル、ソレ等ノ例ニ照シマシテ尠クトモソレト同一ノ程度或ハソレヨリモウ少シ詳シイ程度ノ規定ヲ設ケマシタナラバ、多分差支ヘハナイデアラウト思フノデアリマス、マルデ是ガ其ナイモノデ新タニ作ルノデスト危險モ多イノデスケレドモ、サウデハナイ、合名會社合資會社ト云フモノガ一般ノ規定ガ存シテ居ル、株式會社株式合資會社ノ規定ガ存シテ居ル、ダカラ規定ト規定ト較ベテ見テ違フ所ヲ十分ニ硏究スレバ如何ニ規定ヲ設ケタナラバ組織ノ變更ガ出來ルカト云フ位ハ凡ソ推測スルコトガ出來ルト思フノデアリマス、細カイ㸃ニ於テ後日氣ノ付カナイ所ヲ發見スルカモ知レヌガ是ハ立法ニ於テ免カレヌ所デアル、斯樣ナ譯デ私ハ決シテ此組織變更ニ關スル規定ヲ設クルト云フコトハ岡野君ノ考ヘル程ムツカシイモノジヤナイ、合併ト云フノハ申スマデモナク今度ノ案ニ依リマスルト云フト、此實際ニ最モ異ツタ岡野君ノ言ハルル人的會社ト物的會社ト合併スルコトガ出來ルヤウニナツテ居ル、ソレガ今朗讀シタ一ノ規定デ濟ムト云フ位ノモノデアルナラバ、組織皿變更ノ場合ニモサウデスケレ、ドモ、モウ少シ詳シイ規定ヲ設ケタナラバソレデ濟マヌト云フコトハ萬ナカラウト思ヒマス、岡野君ハニ三ノ例ヲ擧ゲテ斯ウ云フコトモアルカラムヅカシイト云フコトデアリマシタガ、ソレハ大抵此案ニ規定シテアルコトデアリマス、極ク簡單ニ申シマスルト、岡野君ハ合名會社ヲ株式會社トスル場合ヲ例トシテ疑ヲ述ベマシタガ、其第一ハ株式會社ノ社員ガ尠クトモ七人以上デナケレバナラヌ、所ガ合名會社ハソレヨリ尠ナイモノガアル、ソレハドウスルカト云フコトガ問題デアツタヤウデアリマス、其問題ハ私ノ案ニ於テモ豫見致シマシテ七人以上ノ社員ヲ有スル合名會社デナケレバ株式會社トナスコトハ出來ヌト云フ加趣意ヲ採ツタノデアリマス、此案デソレガ見ヘヌト言ハレマスケレドモ私ハ見ヘル積リデアリマス、從ツテ若シ現在七名未滿ノ社員ヲ有スルモノ入合名會社ガ變更シテ株式會社トナサント欲スル場合ニハ先ヅ社員ノ數ヲ殖スヨリ外ハナイケレドモ、合名會社ガ組織ヲ變更スル場合ハ總社員ノ同意デ以テ之ヲ爲ス、總社員ノ同意デ爲スナレバ新タニ社員ヲ加フルト云フコトモ大抵出來ルデアラウ、ソレガ出來ヌ場合ニハ變更シナクテモ宜イノデスカラ、先ヅ社員ヲ七人拵ヘルコトハ容易ク出來ルモノト私ハ見テ居ル、ソレカラ次ニ此社員ノ出資ノコトニ付イテ大ニ心配セラレマシタガ是ハ私モ大ニ心配シタ一ノ㸃ナノデ、ソコデ私ハ此案ノ第八十四條ノ四ノ第三項ノ會社財產ニ對シテ與フル株式ノ歟及ビ各社員ガ引受クベキ株式ノ數ハ之ヲ定款三記載スルコトヲ要スト書キマシタ、卽チ岡野君ノ言ハルル通リ社員ノ中ニハ勞務ヲ出資トシテ居ル者モアル、甚ダシキハ信用ヲ出資トシテ居ル者モアル、又財產ヲ出資トシテ居ル者デアツテモ、岡野君ノ言ハルル通リ株主ガ株金ヲ拂込ソダノトハソレハ餘程趣キガ違イマスカラソレト同ジク見ルコトハ出來ナイ、ソレデ總社員ノ同意ヲ以テ極メルノデスカラ、會社財產ノ現在ノ價ガドレダケアル、ソレヲ五十圓株百圓株ニスルト幾ラ々々ニナル其中デ甲社員ノ權利ニ屬スベキモノガドレダケ、乙社員ノ權利ニ屬スベキモノガドレダケト云フヤウニ協議デ以テ、卽チ總 社員ノ一致ヲ以テ之ヲ極メル、ソレデ信用若クハ勞務ヲ出シテ居ツタ人デモ既ニ會社財產ニ對シテ權利ヲ有ツテ居ル人ナソデ、ソレデスカラソレガ 幾ラカノ株ヲ貰フト云フコトニナルデアラウ、サウナツタナラバ先ヅ此出資トソレカラ株金トノ關係ハ定マルデアラウト思フ、ソコデ今度ハ拂込額ノ問題デアル是モ大キニ心配致シマシタ、今朝マデ心配致シマシタケレドモ、色々考ヘタ末マア宜カラウト考ベタ、ソレハドウデアルカト申シマスト唯今申上ゲタヤウニ合名會社ノ社員ノ權利ト云フモノハ各自餘程違フコトガアリ得ル、サウ致シマスト株ノ割當デハ甲ハ百株取リ乙ハ五十株取リ丙ハ三十株取ルト云フ風ニ割當テ見テモ其中デドレダケノ金額ガ拂込レタモノト見ルカト云フコトハ必ズシモ一樣ニ行カヌト思フ、場合ニ依ツテハ既ニ半額拂込ダ株モアリ中ニハマダ四分ノ一シカ拂込ダモノト見ルコトノ出來ナイモノガアルト云フコトハ免ガレヌト思フ、ソレデ各株々ニ付イテ拂込額ヲ同ジウスルト云フコトニシマスレバ便利デアリマスケレドモ、ソレハ直チニ行フコトガ出來ヌ場合モアル、例ヘバ出資ノ種類ニ依ツテハ今丁度同ジ額ニ達スルマデ出資ノ實行ヲサセルト云フコトハ出來ナイ場合モアリマセウカラ、ソコデ私ハ不平等ノ拂込ガアツテモ宜イト云フコトヲ決心シタ、ソレハ岡野君ノ言ハレタ通リ株式會社ニ於テモ全ク免カレザル困難デアリマス、例ヘバ四分ノ一ハ必ズ狒込デアルニ違イナイ、其後亦後ト四分ノ一拂込メト云フコトヲ命ジテモ總テノ株主ガ殆ソド同時ニ拂込ヲナスト云フコトハナイ甚シキハ何時マデモ拂込ヲシナイ者モアル、サウ云フ場合ニハ或株ハ四分ノ一或株ハ牛額拂込デアルト云フコトガ出來テ來ル、ソレハ實際四不便デハナイカト云フケレドモ、ソレハ株劵ニ拂込ダ金額ガ書イテアル間違ハ起ラナイ、今度此案ニ依リマシテ組織ヲ變更シタ株式會社ニ於テモサウ云フコトハ或ハ出來ルデアラウガ已ムヲ得ナイ、丁度今申シタヤウニ拂込ノ四分ノ一シカ濟マヌモノヲ以テ半分濟ソデ居ルモノト同ジモノデアルカラ仕方ガナイ、但シソレガ餘リニ不平等デアルト實際不便ガ多イデアリマセウカラ、ソコハ總社員ノ同意ヲ以テ組織ノ變更ヲナスノデアルカラ、多クハ餘リ差支ヘノナイマデニ之ヲ平等ニスルト云フコトヲ努メルデアラウカラシテ實際ノ不便ハ存外少ナイダラウト思フ、唯私ノ案デハ拂込總額ガ四分ノ二一滿タナイト云フコトデハイケマセヌカラ、ソレダケハ補フコトニシテ居リマスガ、此㸃ハ本條ヲ若シ議サルルコトガアリマスレバ、ソコデ十分ニ御評議ヲ願ヒタイト思フ、自分デモ多少其㸃ハ疑ハシイ斯ノ如ク書キマシタ、ソレカラ次ニハ此利益ノ配當ノコトデアリマスガ、利益ノ配當ノコトニ付イテハ如何ニモ合名會社ニ在ツテハ株式會社ノヤウニ單純ノ譯ニ定ツテ居ラヌコトガ多イ、ソレハ如何ニモ合名會社ノ時代ニハサウデアリマセウケレドモ、是モ組織變更ノ場合ニハ總社員ノ同意ヲ以テ定メルコトデアリマスカラ、原則トシテハ株式會社ノ一般ノ例ニ依ッテ各株主平等ノ權利ヲ持ツト云フコトニ實際定マルデアラウ、ソレヲ定メナケレバ不便ガ多イカラ、併ナガラ其中デ法律ノ不平等ハソレハ認メナケレバナラヌ、初メヨリ株式會社トシテ組織スル會社デモ多少ノ不平等ハ許シテアリマスカラ、ソレハ認メナケレバナラヌ、例ヘバ此株式會社ニ關スル第百二十二條ノ第三號以下、第三號ニハ發起人ガ受クベキ特別ノ利益及ビ之ヲ受クベキ者ノ氏名ト云フヤウナモノガアリマス、此合名會社ノ組織ヲ變更スル場合ニハ、私ハ總社員ヲ以テ發起人ト看做スト云フ規定ヲ設ケマシテ發起人ノ規定ガアル定款ニ定ムルコトガ出來ル、ソレカラ金錢以外ノ出資ニ關スルコト、是ハ必ズシモ不平等ト云フコトニナラヌカモ知レマセヌガ、兎ニ角普通ノ株主ト違ツタ者ガ出來ル、是モ認ムケレバナラヌ、ソレカラ第五項ノモノモ實際ハ少ナイデセウ、ソレデサウ云フ現ニ法律ノ認メテ居ル不平等ハ是ハ此場合ニモ認メマスケレドモ、例ヘバ議決權ナドニ付イテハ法律ノ制限ニ違フコトハ出來マセヌカラ、ソレデ例ヘバ合名會社設立ノ間ニ割合ニ多クノ權カヲ有ツテ居ツタ者ハ、例ヘバ株ヲ餘計ニ貰フ、株ヲ餘計ニ貰フ代リニ唯株ノ數ニ應ズル權利シカ持タヌト云フヤウナコトデ大抵ハ始末ガ付クダラウト思ヒマス、是等ハ格別心配スルニ及ブマイト思フ、ソレカラ今一ツノ此資本ノ額ニ付イテト云フコトハ現在ノ合名會社ノ資本ノ實額ヲ基礎トスルノカ、之ヲ減ズコトヲ許スノカ、增加スルノヲ許スノカト云フヤウナ問題モアリマシタガ、此㸃モ私ハ大ニ考ヘマシタ、單ニ便宜ト云フ方カラ言ヒマスレパ、組織變更ノ際ニ資本ノ增減ヲナスコトヲ許スコトモ便利デアルカ知ラヌ、現行法ノ組織變更ノ場合デアツテモソレカラ改正案ニ定メテアル組織變更ノ場合デアツテモ亦合併ノ場合デモ皆同ジコトデアル、其必要ハ往々ニシテアル、所ガイヅレノ規定ヲ見テモ曾資トカ減資トカサウ云フコトハ合セテ規定スルコ豫ニナツテ居ルノデ、別ナ規定ニハナッテ居ラヌ、ソレハ私ノ考ヘニハ一ハ既ニ合併ナリ組織變更ナリト云フモノガ複雜ナモノデアルノニ、ソレヘ增資減咨ハノヤウナ複雜ナモノヲ附加ヘマスレバ、エライ面倒ナモノニナルカラ之ヲニ段ニスレバ宜イ、先ヅ增資減資シテ然ル後組織ヲ變更スルカ或ハ組織ヲ變更シテ而シテ增資減資スレバ宜イト云フコトデ現行法モ出來テ居ルデアラウ、合併ノ場合モ同樣デアラウト斯ウ思フ、ソレデ此案ニモ矢張リ其㸃ハ同樣ノ主義ヲ採リマシテ、資本ノ塘減ト云フコトハ先ヅナイモノト見テ案ヲ立テマシタ、デスカラ必要ガアレバ其前ニスレバ宜イノデアリマス、而シテ此現在ノ會社財產ニ蜀シテ與フル株式ノ數ト云フモノハ總社員ノ同意ヲ以テ定款ノ中ニ定ムルコトニナツテ居リマスカラ、定方ハ或ハ議論ガアルカモ知レマセヌガ、議論ガ一致シタ上デナケレバ組織ノ變更ハ出來ヌノデアリマスカラ、是モ差支ヘナイト思フ、斯樣ニ考ヘテ見マスルト岡野君ノ大變心配セラルルノハ御尤モデアリマス、恰モ私ノ心配シタ㸃ノミデアリマスケレドモ、唯程度ガ違フノデアリマシテ其心配ノアルニ抅ハラズ左程マデニ後日困ルコトデハナカラウト思フノデアリマス、此處デハ岡野君其他ノ學者モ居ラルルシ、又實際家モ澤山御列席ニナツテ居ルコトデアリマス、又改正法ガ施行セラレテヨリ新商法ガ施行セラレテカラモ十數年ニナル、舊商法ガ施行セラレテカラ殆ソド二十年ニ垂ントシテ居リマスカラ此間ノ經驗ト云フモノハ必ズ參考トスベキモノト思ヒマスカラ、此際組織變更ニ關スル規定ヲ設クルト云フコトハ必ズシモ早計デハナカラウト思フ、是ダケノ人ガ集ツテ十分ニ硏究致シマスレバ後日役ニ立タヌヤウナモノ、實際ニエライ差支ヘヲ惹起スヤウナモノガ出來ヤウトハ思ハレマセヌカラ、何卒此組織變更ノ案ハ如何ヤウナル形チヲ持テカ通過致シマスヤウニ私ハ希望致シマス
○二番(岡野敬次郞君)
私ハ先刻大體ノコトヲ申述ベマシテ稍々詳細ニ亙ツテ私ノ思フ所ヲ述ベタコトデアリマスカラ、成ルベク細カイ所ハ省イテ唯今梅君カラ御述ベニナリマシタ㸃ニ付イテ簡單ニ私ノ思フ所ヲ述ベタイト思フノデアリマス、第一ハ此組織ノ變更ヲ認ムルノ實益ハ會社ノ淸算ヲナサズシテ一種ノ會社カラ他ノ會社ニ變ルト云フコト、卽チ經濟上ノ利益デアルト云フコトデアリマシテ是ハ私モ認ムルノデアリマス、合名會社ガ株式會社ニナルニ付イテハ先ヅ其會社合名會社ノ其會社財產處分ノ方法ガ定マル是ハ現行法ノ第八十五條ニ於テ會社財產處分ノ方法ハ定款又ハ總社員ノ同意ヲ以テ定メルコトデアリマスカラ、必ズシモ是ハ合名會社ガ其解散ヲナシテモ獪ホ其財產ノ自由、全然自由デハアリマセヌケレドモ、卽チ法律ノ手續ニ依ラナイ所ノ處分方法ガ出來ルノデアリマス、是ガ私ガ合名會社ガ株式會社ニナルニ付イテ此自由ニ財產處分方法ヲ利用スルコトガ出來ルト思フ㸃ガアルノデアリマス、此㸃ニ付イテ梅君ハ此財產ノ方ハ成ル程自由處分ガ出來ルケレドモ、先ヅ其別ニ株式會社ヲ設立シテソレカラ其資本ノ四分ノ一ニ當ルダケノ拂込ヲシテ、ソレカラ會社ガ出來テカラデナイト、合名會社ノ財產ヲ株式會社ニ移スコトガ出來ナイト云フヤウナ御話デアツタノデアリマス、私ハサウハ思ハナイノデアリマス、固ヨリ確定的ニ合名會社ノ財產ヲ株式會社ニ移スト云フコトニ付イテハ、株式會社ノ設立ヲ要スルコトハ勿論デアリマスケレドモ、併ナガラ合名會社ノ財產ヲ擧ゲテ之ヲ財產出資トシテ株式會社ノ資本ノ一部分トシテ之ヲ出資スルト云フコトニ於テハ差支ヘナイノデアリマス、デアリマスカラ私ハ斯ノ如ク解釋シテ居ルノデアル、又私ハソレガ穩當デアラウト自分ハ信ジテ居リマスカラ、必ズシモ株金トシテ先ヅ四分ノ一ノ拂込ヲシテ、ソレカラデナイト合名會社ノ財產ヲ株式會社ニ移スコトガ出來ヌト云フコトニハドウシテモナラヌ、合名會社ノ財產ヲ株式會社ノ財產ニスルト云フコトヲ豫メ定メテ卽チ恰モ不動產ヲ出資トスル又財產權ヲ出資トスルト同樣ニ合名會社ノ財產ハ矢張リ出資ノ目的トスルコトガ出來マスカラ、是ハ梅君ノ所謂無用ト云フコトハシナイデ濟ムト思ヒマス、決シテ現金デ四分ノ一拂込ム必要ハナイノデアリマス、ソレカラ第二ニハ合名會社ガ其組織ヲ變更シテ株式會社トシヤウト云フコトヲ希望シテ居ル例ハ澤山アルト自分ハ聞イテ居ルト云フ御話デアリマシタガ、ソレハ或ハアルカモ知レマセヌ、私ハ唯聞カヌダケノコトデアリマスガ、其中ニ付イテ舊商法ノ下ニ合資會社トシテ設立シタル所ノモノハ株式會社ニナリタガツテ居ルモノガアル、ソレハ苟モ此組織變更ノコトガ原則トシテ認メラレタナラバ施行法ニ自カラ其規定ヲ必要トスルコトハ論ハナイト斯ウ云フ御話デアリマシタ、是ハ梅君ノ御心配ニ及ハヌノ(マ啣)デアリマス、ソレハ現行ノ商法施行法ニ「舊商法施行前(ママ)ナスコトヲ得」ト云フコトガ規定シテアルノデアリマス、デアリマスガ、舊商法ノ合資侖日社ト云フモノハ、私ガ玆ニ亠甲上ゲルマデモナク現行商法ノ認メテアル所ノ合資會社ト云フノ掛ハ餘程其性質ノ違フ所一ノモノデアル、先ヅ是ハ梅君ノ御話ニナリマシタ通リニ舊商法ノ言葉ヲ藉リテ申セバ、會社契約ヲ以テ社員ノ責任ヲ無限ナルコトヲ定メナイトキハ確カ有限デアルト云フコトガ原則ニナツテ居ッタト思フ、ソレデアルカラ其組織ハ稍々株式會社ニ類シテ居ルモノガアルノデアリマス、卽チ非常ニ多數ノ社員アル所ノ曲警商法ノ合資會社ト云フモノハアリ得ルノデアル、又恰モ株式會社ト同樣ニ有限責任デアリマスカラシテ、先ヅ純然タル有限責任ノ下ニナッタ所ノ舊商法ノ合資會社ハ之ヲ株式會社ニ比較スルニ於テ決シテ私ハ穩當ヲ缺イテ居ラヌト思フノデアリマス、併ナガラ蕾商法ノ合資會社ト雖モ極ク少數ノ社員カラ成ルコトモ認メ、又其社員中ニ有限責任ヲ負擔スル者ト、無限責任ヲ}負擔スル者トノニ種ノ社員アルコトモ、舊商法ハ勿働メテ居ッタノデアリマスカラ、若シ其社員ガ少ナクシテ而シテ其社員中ニ有限無限ノ責任ヲ負擔スルニ種ノ社員ガアリ得ルナラバ自然是ハ其組織ヲ變更スルニ當ツテハ合資會社ノ組織ヲ變更スルト云フコトニナルト思フ、ソレハ決シテ法律ガソレヲ强制スル一譁デハアリマセヌガ、自カラサウ云フ風ニナルト思フ、若シ亦有限責任ノミカラ成ル所ノ合資會社デ、從ツテ自然ニ其社員ノ數ガ多イト云フヤウナ場合ハ其組織ヲ變更スル場合ニハ自然株式會社ト云フモノニナルデアラウ、或ハ株式合資會社ニナルデアラウト思フノデアリマス、私ノ聞イテ居ル所ハ株式會社ニシタイト云フ希望ヲ持ツテ居ルニハ人事生命合資會社デアリマス、是ハ私ハ其當時ノ社長辻男爵カラ確ニ其話ヲ聞イテ居リマシタ、他ニハ聞キマセヌノデアリマスガ、是ハ社員ガ餘程多イヤウデアリマス、而シテ之ヲ變ヘタイト云フノハ卽チ株式會社ニ變ヘタイト云フ希望アヤウデアリマス、其實例ハ私ハ聞イテ居リマス、又彼ノ會社ノ如キガ株式會社ニナルト云フヤウナコトハ是ハ至極尤モデアラウト思ヒマス、舊商法ノ第百五十一條ノ二項ノ規定ト云フモノハ實際ニ行ハレ難イカラ、ソレデ便法ヲ設ケテ貰イタイト云フコトデアツタヤウニ私ハ記憶シテ居リマス、併シ此舊商法ノ有限責任社員ノ多數カラ成ル合資會社ガ株式會社ニナルト云フ希晶望ガアルト云フコトハ決シテ現行商法ノ合資會社ガ其組織ヲ變更シテ株式會社ニナルト云フノ理由トハ私ハナラヌト思フ、ソレハ恰モ先刻申上ゲル通リニ此株式名ハ合資會社デアリマスケレドモ、舊商法ノ下ニ認メラレタ所ノ合資會社ノ中ニハ其本體ニ於テ株式會社ト異ラザル所ノモノガアルノデアリマス、ソレカラ其他或ハ社員ノ數ガ七人以上デナケレバ合名會社ハ株式會社ニナレヌ主義ヲ採ル、ソレカラ出資ノコトニ付イテ、四分ノ一ノコトニ付イテ、勞務ヲ出資トシタ者ニ付イテ、利益ノ㸃ニ付イテ、其他ノ㸃ニ付イテ詳シイ御說明ガアリマシタガ、要スルニソレ等ノコトハ總社員ノ同意ヲ以テ定メルカラ實際ニ困ラヌノデアラウト云フコトニ歸スルヤウデアリマス、是ハ獪ホ其各項ノ㸃ニ付イテハ私モ唯總社員ノ同意ガアッタナラバ宜イト云フ御說明デハ十分ニ了解ヲ致シ兼ネルノデアリマスケレドモ、唯總テノ㸃ニ付イテ==口私ハ心配スル所ヲ申上ゲタイノハ是ハ總社員ノ同意ダケデハ私ハ株式會社ト云フモノノ成立ノ基礎ヲ安全ニスルコトガ出來ヌト云フコトヲ確信シテ居ルノデアリマス、ソレハ私ガ何モ申スマデモナク株式會社ニ在ツテハ無論其資本ガ中心デアル、會社財產ガ責任ノ第一ノ目的物デアリマスカラ、ドウシテモ其會社財產ノ現實、ソレハ現實ト云フコトヲドウシテモ期セネバナラヌ、ソレハ損失ニ依ツテ其資本ノ財產ノ減ズルコトガアリマスケレドモ、併ナガラ減ジタナラバ財產ヲ充實セシメタ後デナケレバ、會社財產ノ自由ノ處分ヲ許サヌト云フコトニナツテ居リマスカラ、經濟上ノ損ハ已ムヲ得ナイコトデアリマスガ、法律ノ期スル所ハドウシテモ會社財產ノ充實ヲ圖ッテ居ルノデアリマス、ソレデ【例ヲ以テ申シマスレバ合資會社ノ社員ハ勞務或ハ信用ヲ以テ出資ノ目的トシタトキニハ、總社員ノ同立恩ガアツテソレニ川對シテ相當ノ株ヲ與ヘレバ宜イト云フコトデアリマシタガ、ソレデハ勞務ニ川對スル株式ヲ與ヘルト云フ結論ニナリハシナイカト思ヒマス、其他利益ノ配當ノコトニ付イテモ出資ヲ少ナク供シテ而シテ與カル所ノ利益ノ配當率ガ高イト云フコトハ自カラ權利ガ大キイノデアル、其大キイモノニ向ツテハ自カラ株式會社ガ出來タ上ハ株式ハ相當ニ大キク與ヘナケレバナラヌト云フコトニナレバ、社員間ノ權衡ハ得ルコトニナリマセウガ、是モ株式會社ガドコマデモ財產出資ヲ目的トシテ、其實額ヲ以テ株式ヲ與ヘルト云フコトニナツテ居ルノニ、唯合名會社ニ於テハ利益ノ配當ニ與カリ或ハ分配ニ與カル權利ガ大ナルガ故ニ之ヲ本ニシテ此株式ヲ割當テルト云フコトニナレバ、ドウモ株式會社ノ基礎ガ決シテ鞏固ナルモノデハナイト云フコトニナリハシナイカト思ヒマス、其色々ノ㸃ガアリマスケレドモソレ等ハ先ヅ餘リ詳細ニ亙ルヤウデアリマスカラ、私ハ此際ハ申述ベナイコト三致サウト思ヒマス
○三十八番(松波仁一郞君)
私モ大變簡單デアリマスガ、意味ノ大キナ提出案ヲ出シテアリマスカラ、唯甚ダ諸君カラ見マスト漠然ト見ヘマス案ガ、私ノ考ベタ後ノ案デアルト云フコトニ而シテ梅案及ビ改正案トノ差ヲ明カニシテ其位置ヲ定メヤウト思フノデアリマス、會社ノ組織變更ノ場合ヲ總テ勘定致シマスレバ、イツカ御手許ニ出シテ置キマシタガ十ニノ場合ヲ想像セラレマス、其中ニ現行法ヲ認メルノト改正案デ認メルノト從ツテ議論ノナイト云フノハ、合名會社ヲ合資會社ニスルコト丶合資會社ヲ合名會社ニスルコト丶、株式合資會社ヲ株式會社ニスル、此三ツハ私ト梅案ト改正案トノ一致シテ居ルコトデアリマス、其外ニ株式合資會社ヲ合名會社トスルコト、株式會社ヲ合資會社トスルコトハ前ノ三ツガ定ツタ後ノ結果及ビ商法ノ規定ノ解釋カラ私ハ出テ來ルト思フコトデアリマスガ、解釋ノコトデアリマスカラ反對論ハ豫期シテゴザイマス「若シ反對論ガアレバ又其時ニ御答ヘスルトシテ、此ニガ解釋ニ依ツテ出來ルトスレバ十ニノ中ノ五ハ先ヅ出來ルコトデアリマス、殘リ七ツノコトデ梅案ハ五ツマデヲ認メラルルノデアリマス、卽チ合名會社ヲ株式會社トスルコト、株式合資會社トスルコト卽チ二ツ、合資會社ヲ株式會社トスルコト、株式合資會社トスルコト卽チ二ツ株式會社ヲ株式合資會社トスルコト卽チ一ツ併セテ五ツ、七ッノ中五ツマデハ認メラレマスカラ、私ノ案ノ特色トモ言フベキモノハ二ツデアリマス、卽チ株式會社ヲ合名會社トスルコト及ビ株式會社ヲ合資會社トスルコト、デ他ノコトニ付キマシテハ既ニ梅委員カラ十分ニ大體ノ趣意ヲ御述ベニナツテ、組織變更ヲ認ムベシト云フコトデアリマスカラ、非常ニ細カイ所ハ違イマスケレドモ、先ヅ其㸃ハ後ニ討論ニ這入ツテ來マシテカラ意見ヲ述ベルト致シマシテ、大體矢張リ梅サンノ御話ノ理由デ私モ其五ハ認メテ居ルノデアリマス、サウスルト殘ル株式會社ヲ合名會社ニスルコトモ株式會社ヲ合資會社ニスルコトダケハ特色デアリマスノデ私カラ述ベナケレパナリマセヌガ、實ハ此二ツニ付キマシテハ實際ノ必要ハマダ私ハ聞カナイノデアリマス、不幸ニシテ株式會社ヲ合名會社ニシタイ或ハ合資會社ニシタイト云フ多クノ實業家ノ意見ヲ聞カナイノデアリマスカラ、私ノ理論カラ出テ居ツタ其㸃ニ於テハ根據ハ薄弱デアリマス、併シ之ヲ矢張リ入レマシタ譯ハ既二日本ノ法律ナドデ七人ノミデ株式會社ガ出來ル、僅ニ七人ノ發起人ダケデ株式會社ガ出來ルコトアル場合ニハ親族又ハ友人ダケデモ卽チ知ツテ居ル人ダケデモ株式會社ヲ組織スルコトガ出來ルト云フコトハ認メラレル、併シサウ云フ場合ニ僅ニ七人八人ノ株式會社デハ面白クナイカラ知合ヒノ人デアルカラ、寧ロ無限責任デ合資會社ニシタラ宜カラウト云フ斯ウ云フ場合ニ之ヲ許シテ宜イデハナイカト云フ理由デ、七人八人ノ人デ合資會社ニスル時ニ許シテモ宜クハナイカト云フ、幾分カ是ハ理窟ダケカラ出タノデアリマス、ソレトモウ一ツハ漑二十ニノ場合二十マデモ認メルナラバ僅ニ二ツノ場合ヲ除ク程ノコトハアルマイ害ガアレバ兎ニ角デアルガ十ニノ中ノ十、認メルナラバ寧ロ簡單ニ一切組織變更ヲ認メタラバ宜イダロウト云フヤウナ㸃カラ、斯ノ如ク總テノ十ニノ場合モ許ス趣意ニ立テタノデアリマス、是モ私ガ改正案ト梅案トノ違フコトヲ述ベタノデアリマスガ、然ラバ大體ニ於テナゼ大膽ニ總テノ組織變更ヲ許スカト云フコトニナリマスト是ハ矢張リ一般カラ申シマスト成ルベク斯ウ云フコトハ自由ニシタイ弊害ノナイ以上ハ自由ニ認メテ置タラバ宜イジヤナイカ、而シテ之ヲ許シタ所デ法律ノ書方ハ幾分カ、ジヤナイ、非常ニムヅカシイコトガアリマセウガ書ケナイコトモナカラウト思ヒマスカラ、書ケル以上ハ別ニ弊害ガナイコトナラバ認メテ置タラバ宜カラウ、殊ニ合併ナドニ付イテモ隨分大膽ニ大キナ其總テノ合併ヲ許スト云フコトニナツテ居ルノデアリマスカラ、此㸃ニ付イテモサウシタラバドウデアラウカ併シ斯ウ云フ案ヲ出シマスルニ付イテ不行屆デアリマスカラ、幾分カ不十分ナガラニ外國ノコトモ調ベマシタ、併シ不幸ニシテ是程マデニ總テ許スト云フコトハ如何ナル國ノ法律ニモ見當ラナカッタノデアリマス、併ナガラ部分ノ變更卽チ物的會社同志トカ人的會社同志トカ云フモノハ認ムルトカ云フコトハアリマスケレドモ、人的カラ物的、物的カラ人的ニ變更スルコトヲ自由自在ニ認ムルト云フ法律ハ一ツモアリマセナンダ、デ學者ノ說ハ岡野君ノ說ノ如クレーマソナドハ認メテハ惡イト云フノデ、甚ダ其㸃ハ私ニハ不利益デアリマスガ、稀ニハ漠然ト自由ニシタラバ宜イジヤナイカト書イテアルノガアリマシタ、如何ニシテ行ッタラバ宜イカト云フコトヲ言ツテアルモノハ私ニハ見當ラナカツタノデアリマス、デ英吉利ノ如キ自由ナ國デモ此變更ト云フモノハ實際一ニノ會社ヲ拵ヘテ置イテ其會社ニ既存ノ會社ノ事業ヲ移シタリ、シテ行クト云フノデ所謂組織變更ヲ認メテ居リマセヌカラ、先ヅ世界ニハ全體ノ組織變更ヲ認メテ居ルト云フモノガナイト言ハネバナリマセヌ、ソレニ抅ハラズ之ヲ出シマシタノハドウモ餘所ノ國デ認メナイノハマタソコマデ進マナイデアラウガ、ドウモ沼革上ナドノ理由デコダワツテ居ルノデアラウ幸ヒ二日本ニハ沿革上ノコダワリガナイカラ實際ニ許シタナラバドウデアルカ、梅サンノ御話ハ言繭茱ガ烈シイヤウデアリマシタガ、矢張リ出來ルナラバ日本デ率先シタラバ宜イデハナイカト云フコトガ私ノ頭ニモアッタノデアリマス、併シ斯ウ云フ簡單ナ僅ニ一個條デ組織變更ニハ合併ニ關スル規定ヲ準用スト云フ位デ宜イデアラウカ、是モ梅サンノ御話ニナルヤウナ小サクヤッテ見マシタガ、餘リ小サクナッテ却テムヅカシクナリ掛テ止メマシタノト、モウ一ツハ此改正案デ合併ヲ非常ニ自由ニナサツタ其趣意ヲ非常ニ信賴シテ居ルノデアリマス、デ私ガ日本商法ノ解釋トシテモ合併ハ自由ニ許スト云フ積リデアリマシタガ、反對論デアリマシテソコハ先ヅ未定デアッタノヲ幸ニ此改正案デ自由自在ニ許スト云フコトニナリマシタカラ、既ニ合併ヲ自由自在ニ許セバ、何時デモ合併ト組織變更ト云フモノ沿、同ジヤウニ擧者ナドハ論ジテ居ル際ニ、組織變更モ矢張リ自由自在ニ許シタラバ宜カラウト斯ウ云フ考ヘガ起ッタノデ、先程岡野君ノ御話デ、併ナガラ實際ノ困難ハドウスル例ヘパ二人ノ合名會社ヲ株式會社ニスルヤウナコトニナル、或ハ勞務ヲ出資トシテ居ルヤウナ社員ガアル際ニ、株冖式ノ拂込ナリ割當ハドウスルカ、或ハ株主ノ權利議決權ナリ其他ニ付イテドウスルカト云フ御質問ニ付イテハ大部分ハ梅委員ノ御答ヘニナツタ通リト私モ思ツテ居リマスガ、私モ其外ニ是ハ矢張リ合併ニ付イテモ起ル問題デアツテ、何故ニ合併ニ付イテハ其問題ガ起ラナイカ、安心シテ之ヲ御立テニナツテ組織變更ニナツテ初メテ其問題ガ起ルノデアラウカ、合併ノ場合ヲ想像シマシタガ、自由自在ニ御許シニナレバ十五箇ノ場合ガ想像出來ルノデス、別ニ數ヘ立テマセヌガ、調ベテ見マシタガ十五箇ノ場合ガ出來ル、合名會社ト合名會社モ出來レバ、合名會社ト合資會社モ出來レバ、極端ヲ想像スレパ合名會社ト株式合資會社ト合資會社ト株式合資會社ト四ツ寄ツテ一ノ會社トナルコトモ出來ル、其中ノ一例デ合名會社ト合資會社合併ナドハ最モ合併ヲ自由ニ許ス御方々ノ宜イトナサル所デアリマセウガ、其場合ヲ想像シテモ二人ヨリ成立ツ合名會社ガ二ツ合併スルヤウナ、而モ合名會社ト合名會社ト合スル、或ハソレガ極ク分リ易イ例デアリマスガ、合名會社ト株式會社ト合スル時ニハドウナルデアラウカ、合名會社ト株式會社ト合スル、サウシテソレガ吸收合併デアルト、合名會社ハ株式會社ニ吸收サレル、株式會社ガ合名命日社ニ吸收サレルト云フコトモ廣イ合併ノ中ニハ認メラレルト思ヒマスガ、サウ云フ場合ニハ餘程合名會社ノ資本ヲ、資產ヲ株式會社ニ合併スル上ニ矢張リ社員ニ其果シテ株式ヲ割當テルカドウカト云フ問題ニ困難ヲ感ズルコトデアラウ、ソレ等ノ困難ヲ忍ンデ吸收合併モ出來ルトスレバ同一ノ會社ノ組織變更位ハ割合ニ容易カラウト云フ位ノ考ヘデ、合併ガ自由ニナルト云フコトハ私ノ此案ノ詰リ土臺ニナツタノデアリマス、ソレカラ此簡單ニ致シマシタ理由ハ合併ニ付イテハ必ズ合併ラナスマデノ前提條件卽チ合名會社ト合資會社ト合併スルニハ合名會社自カラ先ヅ總社員ノ同意ガ要ル、合資會社モ先ヅ同意ガ要ルデアラウ、株式會社ト合併スル場合ニハ株式會社ノ特別決議ガ要ルデアラウト云フ前提條件ガ合併ヲナスニ必要デアラウ、其事柄ガ或會社ガ組織變更ヲナス際モ矢張リ同ジヤウニ合名會社ガ組織ヲ變更スルニハ總社員ノ同意ガ要ル、株式會社ガ組織ヲ變更スル場合ニハ株主總會ノ決議ガ要ルト云フヤウナ風ニ矢張リ合併ニ要スル前提條件ヲ組織變更ニ持テ來タナラバ往ケルデアラウ、ソレカラ又合併ヲ實行スル際ニ株式會社ヘ合名會社ヲ吸收合併スル際ニ、矢張リ此資本ヲ移ス際ニ、株式ノ割當トカ或ハ資本ノ拂込株劵ノ拂込ナドニ付イテ、種々ノ手續ガ要スルデアリマセウカラ、ソレガ合併ニ付イテ出來ル以上ハ矢張リ組織變更ノ際ニモ、其通リニ唯準用シテヤツタナラバ宜カラウ、ソレカラ合併ヲシマシタトキニハ必ズ合併後ニ登記ナドガアリマスカラ、解散シタモノニハ解散ノ登記、設立スレバ其設立登記、若シ吸收スルト其登記、イヅレ登記ト云フコトガアリマスカラ、組織變更ニ付イテモ總テ變更ニ付イテハ消滅登記ヲスル、變更後ニ付イテハ設立登記ノ登記カ或ハ變更登記ト云フコトモ幾分ノボケーシヨンヲ以テシテヤツタラバ宜カラウト云フコトデ、若シ合併ニ付イテ立派ニ出來ルトスレバ模範ニナルノデアリマスカラ、其準用デ足リハシマイカ、而シテモウ一ツ此改正案ニ重キヲ於テ準用シタノハ改正案デハ合併ト云フモノハ中々大變ナモノデアル、到底詳シク一々書キ切レナイデアラウ、ソレデ梅サソバ是デモ危險ガナイ少ナクトモ簡單ナ會社ノ合併ヲナスコトヲ得云云ノ規定デ少シ危ブナイカモ知レヌガ、マア起草委員ガ可イト信ジテ居ルカラ自分達モ安心シテ信ジタソダト云フ御話ガアリマシタガ、私モ其㸃ハ同ジコトデ安心シテ此通リニヤツテ居ルノデアリマスガ、起草委員ノ方デ合併ヲスルニハ實際宜イデアラウ、ムヅカシク書クヨリモ大キク書イテ置ク方ガ宜カラウ、到底合併ニ依ッテ設立スルトキニハ定款ノ作製トカ各社ニ於テ協同シタモノガ一致ノ意見ヲ以テ爲スヲ要スルノデ、協議員トカ云フ者ガ相合シテスルデアラウ、斯ウ云フコトデ態々大キナ書キ方デ而シテ實際ニ適フヤウナ書方ヲシテアリマスカラ、是モ矢張リ組織變更ニ準用スル積リデ、組織變更ト云フト言葉デハ簡單デアリマスケレドモ、中々合名會社ヲ合資會社ニスルダケデモ度々ダラウカ、有限責任社員ニナルトカ或ハ今マデノ業務執行社員ノ權利ヲ變ヘヤウトカ云フヤウナコトガ起ルト思ヒマス、株式合資會社ヲ株式會社ニ變ヘル、株式會社ヲ株式合資會社ニ變ヘルト云フテモ、無限責任社員ハドウスル、取締役ヲ殖スカドウカト云フコトデ種々ノ問題ガ起ルカラ、矢張リ實際ニハ其社ニ於テ撰任シタル者ガ協同シテナスト云フコトニナルデアラウ、然ラバ其㸃ニ付イテモ合併ノ規定ヲ準用シタラバ宜カラウト云フ趣意デ總テ合併ノ方ガ、私カラ見レバ組織變更ヨリモ會社ニ大變動ヲ及スモノダラウト思フ、ソレガ自由自在二十五箇ノ場合モ出來ル、而シテ此簡單ナル意味ノ規定デ出來ルト云フコトニ御決定ノ以上ハ、幾分カソレヨリモ輕イ組織變更ハ獪ホ出來ルダラウト思フテ準用シタノデアリマス、獪ホ組織變更ヲスル際ニ株式ノ四分ノ一排込ニ付イテハドウスルトカ、權利ノ個數ハドウスルトカト云フコトニ付イテ、梅岡野兩委員ノ御討論ガアリマシタガ、ソレニ付イテモ多少ノ意見ガナイデハアリマセヌケレドモ、イヅレ斯ウ云フコトハ細カイ時ニ申上ゲタイト思ヒマスノデ、唯今ハ自分ノ提出案ノ大體ノ理由ヲ申上ゲルニ止メマス
○十番(梅謙次郞君)
度々立チマシテ相濟マセヌガ今度ハ極メテ簡單デアリマスカラ暫ク御許シヲ願ヒタイ、大分ニ御意見ガ出マシタ其中デ、舊商法ニ依リ合資會社ハ株式會社若クハ株式合資會社トナルコトモ出來ルト云フ規定ガアッタコトハ、實ハ失念シテ居リマシタカラ、其㸃ダケハ岡野君ノ言フタ通リニナツテ居ルト云フコトヲ認メマス、合名會社ノ解散ノ場合ニ其財產ノ處分ニ付イテ、岡野君ハ其財產ノ處分方法ノ一トシテ全財產ヲバ、新タニ設立スベキ所ノ株式會社ノ財產トシテ出資トシテ出スト云フコトハ出來ルカラ、必ズシモ四分ノ一ノ拂込ヲシテ置イテカラデナケレバ其財產ヲ處分スルコトガ出來ヌト云フコトハナイト言ハレマシタガ、是ハ私ハ甚ダ疑フノデアリマス、ドウ云フ御意見デアルカ詳シクハ承ハリマセヌカラ分リマセヌケレドモ、新ニ株式會社ヲ設立スル場合ニ於キマシテハ如何ナル財產デアツテモ、其財產ニ對シテ一定ノ株ヲ配當シ、サウシテ其財產ガ少ナクトモ四分ノ一ノ拂込ニ相當スルダケノモノハ設立ノ際ニ出資トシテ、ソコニ出シテ居ラナケレバナラヌト思ヒマス、財產以外ノ出資ニ付イテハ或ハ全價額ノ出資ガナケレバナラヌト云フ說モアリマスシ、獨逸ノ如キハ明カニサウナツテ居ルヤウデアリマスガ、假リニ其誂ヲ採リマシテモ少ナクトモ四分ノ一ダケハ現實ニソコニ出資トシテ出テ居ラナケレバナラヌノデアリマス、ソコデ此一方ニ於テハ合名會社ノ財產ト云フモノガアルト致シマシタ所ガ、其財產ノ形チハ或ハ不動產モアラウシ、動產モアラウシ、債劵モアラウシ、其他ノ財產權モアラウシ、債務モアル、サウ云フモノモ滅茶ニナツタモノデアリマスカラ、ソレガ其設立ノ際ニ卽チ四分ノ一ノ拂込ニ相當スルモノニナルト云フコトハ、ドウ云フ方法ヲ以テナルノデアルカト云フコトヲ私ハ疑フノデアリマス、若シ此說ガ正シイトシテ岡野君ノ言ハルル通リニ出來ルモノデアルトシタナラバ、合併ノ場合ニ於テモ矢張リ同ジコトデハアルマイカ、合併ノ場合デモ岡野君ノ言ハルルヤウニスレバ、甲ノ會社ガ解散スル、乙ノ會社ガ解散スルト、サウシテ其財產ガ此合名會社ノ財產デアルナラバ、矢張リ此財產ヲ以テ直チニ新シク設立スベキ所ノ會社ノ財產トシテ、サウシテ出資トスル、サウスレバ合併ノ形チヲ採ラナクテモ新シク會社ヲ設立シテモ結果ハ同ジコトニナリハセヌカ、斯ウ云フコトニナリマスカラ、若シ其モノガ正シイトスルト、少ナクモ合名會社ト合名會社、又ハ合名會社ト合資會社、或ハ合資會社ト合資會社トノ合併ノ場合ニ於テハ、合併ト云フモノハ要ラナイ、普通ノ原則ニ依ツテ解散シテサウシテ新ニ會社ヲ設立スレバ同ジコトニナル、斯ウ云フコトニナルノデ畢竟合併ニ付イテモ特別ノ規定ヲ要スル、卽チニ會社ノ解散ト言ツテ新タニ會社ヲ設立スルニ非ズシテ、矢張リ實際淸算モセズ、ソレカラ又純然タル設立ノ手續モセズシテ、サウシテ其前二ツノ會社ノ權利ヲ新ラシイ一ノ會社ニ移スト云フコトガ便利デアルト同ジヤウニ、合名會社ノ組織ヲ變更シテ、株式會社トナスト云フ方ガ便利デアルカラ、之ヲ許ス方ガ宜イト云フコトニナリハセヌカト思フソデアリマス、ソレデ兎ニ角合名會社ヲ解散シテ新シク株式會社ヲ設立スルヨリモ組織ノ變更ヲ許シテ解散ヲセズニ仕舞タ方ガ便利デアルト云フコトハ多分疑ヒナイコトデアラウト思フ、若シ燃リトセバ此規定ヲ設クルト云フ方ガ宜シイト云フコトニナルト思ヒマスガ、ソレハ議論ニナリマスカラ再ビ申シマセヌ、唯此處デ一言シテ置カネバナラヌノハ岡野君ハ合名會社ノ社員ニ株ヲ配當スルニ當ツテ、例ヘバ信用ニ對シテ株ヲ配當スル勞務ニ對シテ株ヲ配當スル、又ハ出資ノナキモノニ對シテ多クノ株ヲヤルト云フヤウナコトハ總社員ノ一致ヲ以テ出來ルカバ知ラヌガ、ソレハ株式會社ノ性質カラ考ヘテ果シテ穩當デアラウカドウデアラウカト云フコトデアリマシタガ、私ハ穩當デアルト思フ、其譯ハ株式會社ノ財產トナルモノハ各社員ガ出シテ居ル出資内ト云フコトデ定メル、合名會社ノ財產全體ト云フモノガ、株式會社ノ財產トナル、其財產ノ總額ト云フモノガ適當ノ價ニ之ヲ見積ラヌケレバナラヌ、ソレガ適當ノ價ニ見積レヌト云フコトナレバ其中デ、甲ガ多クノ株ヲ取ラウト乙ガ多クノ株ヲ取ラウトモ、ソレハ私ハ自由ニシテ置イテ宜イト思フ、如何トナレバ其合名會社ノ財產ト云フモノハ法人ノ財產ニ相違アリマセヌケレドモ、畢竟ハ各社員ノ財產ニ歸シ得ベキモノデアル、ソレヲ歸セシムル場合ニ於テハ或ハ定款ノ定ムル所ニ依テ之ヲ領ツ、定款ニ何等ノ定メガナケレバ此利益配當ノ出資ノ價ノ割合、出資ノ價ノ割合ニ依ツテ財產ヲ分ツト云フコトニナル譯デアリマスカラ、ソレヲ其矢張リ總社員ノ一致ヲ以テ新タニ定款ヲ作ル場合ニ、中ニドレダケノ株ハ甲ニ與ヘル、ドレダケハ乙ニ與ヘルト云フコトヲ極メルノハソレハ自由ニシテ置テ宜カラウト思フ但シ總 額ヲ山咼ク見{槓ルト云フコトガアッテハ無論イケマセヌ、獪又各社員ニ分ツ株ノ數モ或ハ不穩當ノコトガアルカモ知レマセヌカラ、ソレニ付イテハ初メノ案ニハ途イ漏シタノデ、漏シタト云フノハ私ノ考ヘガ少シ惡カツタノデ、矢張リ同ジ結果ニナルト思ヒマシタケレドモ、準用ノ結果其準用ダケデハ此前ノ案ノ準用ダケデハ足リマセヌカラ、ソレデ今日提出致シマシタ、所請第八十三條ノ終リニ「前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス」ト云フコトヲ入レルヤウニ立案致シマシタ、左樣致シマスルト云フフト百二十四條ノ規定ト云フモノガ御承知ノ通リ株式會社ノ設立ノ際ニ發起人ガ全株ヲ引受ケマシタトキニハ「取締役ハ其選任後遲滯ナク第百二十二條第三號乃至第五號ニ揭ケタル事項及ヒ第一回ノ拂込ヲ爲シタルヤ否ヤヲ調査セシムル爲メ、檢査役ノ選任ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ要ス」「裁判所ハ檢査役ノ報吿ヲ聽キ第百三十五條ノ規定ニ準據シテ相當ノ處分ヲ爲スコトヲ得」トアル此規定デアリマス、之ヲ準用致シマスト矢張リソレ等ノコトハ檢査役デ調ベマシテ裁判所ハ其報吿ヲ聽タ上デ然ルベク之ヲ變更スルコトガ出來ルヤウニナツテ居リマス、全ク不當ナコトニナルマイ、就中此財產ノ評價ナドガ不當デアレバ必ズ變更致スデアラウカラ差支ヘナイト斯ウ私ハ思フノデアリマス、詰リ合名會社ニ在ツテハ株式會社ト違フカラ會社財產ト云フモノハ必ズシモ出資ノ割合ニナツテ居ラナイノミナラズ、其出資ト云フモノハ必ズシモ財產ヨリ成立ツテ居ラナイノデアリマス、ソレハ固ヨリ株式會社トハ趣キガ違フ、株式會社ニ直ストキニ其直シテ置ケバ將來ハ差支ヘナイト思フ、終リニ一言松波君ノ案ニ付イテ申シテ置キマスガ、松波君ノ案ハ組織變更ニ合併ノ規定ヲ準用スルト云フ案デ、先刻申シタ理由ノ外ニ獪ホ附加ヘテ言フト定款ノ作製其他(ママ)協同シテ之ヲ爲ス」ト云フコトニナッテ居リマスガ、組織變更ノ場合ニハ會社ハ一ツシカナイ、サウスルトドウ云フ風ニソレガナルカ、ドウモ是デハ分ラヌト思フ、ソレデ合併ニ關スル規定ヲ準用シテ宜イトシテモ、モウ少シ具體的ニ準用シナイト餘リ漠然トシテ實際ノ適用ニ迷フヤウニナリハシナイカト思ヒマス、若シソレデ濟メバ簡單デ宜イケレドモ具體的ノ法則デモ設ケタ方ガ宜イト思ヒマス
○二十五番(磯部四郞君)
先程カラ色々議論ヲ承ハリマシタガ、チヨツト梅委員ニ質問シタイ、私ハ會社ノコトハ一向心得マセヌガ、唯今承ハル所ニ依リマスルト合名會社ニ其勞務ヲ以テ所請務メテ居ツタ人或ハ信用ト云フモノガ本ニナツテ居ル人ト、之ヲ株式會社ニ變更スル場合ニ於テ其勞務若クハ信用ト云フモノヲ、勞務若クハ信用價額ニ見積ツテ株式デ打切ッテ仕舞フ、サウスレバ差支ヘナイデハナイカト云フコトニ付イテ岡野委員ノ御答ヘニ依ルトソレハ資本ヲ目的トシテ居ル會社ニ於テハ資本ガ入ラズシテ勞務トカ信用ト云フモノヲ價額ニ打切ルコトハ出來ナイ困難デアルト云フコトデアリマシタガ、併シソレモ約束上出來ルトシタ所デ其株ナリ何ナリニ打切ラレタ是マデノ勞務信用ヲ本ニシテ居ツタ人ハ其株式會社ニ對シテハ株ヲ貰ヒ切リニナツテシマツテ將來勞務ヲ取ラナイノデアリマスカ、信用モ何モ要ラナクナツテシマウノデアリマスカ、純然タル株金ヲ拂込ナイ所ノ朦朧株ノヤウナモノヲ貰ツテ引込ムコトニナルノデアリマスカ、其㸃ガチョット私ニ分リマセヌカラ質問ヲ致スノデアリマス
○十番(梅謙次郞君)
唯今磯部サンノ御尋ネノコトニ付キマシテハ其第七十一條ノ規定ガアリマス、第七十一條ニ是ハ其會社ニ關スル規定ガ設ケテアリマスケレドモ「退社員ハ勞務又ハ信用ヲ以テ出資ノ目的ト爲シタルトキト雖モ其持分ノ拂戾ヲ受クルコトヲ得但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス」ト云フコトガアリマス、ソレデアリマスカラ合名會社ニ於テハ勞務又ハ信用ノミヲ以テ出資ト爲スモノデアツテモ、矢張リ持分ヲ認メテ詰リ會社財產ニ對スル或ル權利ヲ認メテ居ル、ソレデ會社ノ財產ニ於テモ原則トシテ其持分ヲ拂戾シテ貰フノデアリマス、ドウ云フ譯デ拂戾スカト云フト其初メニ出資ノ評價ト云フモノヲセヌケレバナラヌヤウニナツテ居ル、第五十條ノ五號ニ「社員ノ出資ノ種類及ヒ價格又ハ評價ノ標準」ト斯ウ云フコトガアル、ソレデスカラ勞務ヲ出資トシヤウト、信用ヲ出資トシヤウト、其出資ノ價格ト云フモノハ直接又ハ間接ニ必ズ定ツテ居ル、其標準ニ依ッテ持分ノ割合ガ原則トシテ定マル、定款ノ方デハ其定メガナケレバ、其標準ニ依ルノガ當然ト思ヒマスガ、固ヨリ總社員ノ一致ノコトデアリマスカラ、其結果勞務ノ額ヲ極メル是モ一種ノ決議デ定メテ宜イノデアリマスガ、先ヅ普通ニ定メルト思フノハ會社財產ノ總額ガ例ヘバ百萬圓アル、而シテ今會社ノ現財產既ニ出資ヲ實行シテ居ルモノト認メ、ソレニ積立テテアルモノ、サウ云フモノヲ例ヘバ五十萬圓アルト斯ウ云フコトニナル、サウスルト各社員ノ權利ヲ合名會社其他ノ定款其他ニ依ツテ定メマシテ、而シテ其割合ニ應ジテ持ッタラウト思ヒマス、サウ致シマスト此信用勞務ヲ出資トナシタルモノモ、將來信用ヤ勞務ヲ出資トスルコトガ出來マセヌカラ、後ノ半額トカ他ノ者ト同樣ニ拂込ヲシナケレバナラヌ、ソレガ一嫌ナラバ株ヲ賣ツテシマウト斯ウ云フコトニナル
○三十八番(松波仁一郞君)
チヨツト梅サンニ御尋ネシマスガ、成程合併ニ依ツテ會社ヲ設立スル場合ニハ會社ニ於テ選任シタル者協同シテ之ヲ爲スコトヲ要ストアツテ一ノ會社デハ各會社ト言ヘナイカラト言ヒマスト其準用デアリマスカラ、其會社デ組織變更委員ト云フ者ヲ拵ヘマスカラ、ソレガ萬事ヲ協定スルト云フ積リデアリマスカラ、磯部君ノ御質問ハ梅サンニサレタノデアリマスカ、サウ云フコトハ私モ矢張リ答ヘナケレバナラヌ位置ニナツテ居リマス、サウ云フ場合ニハ此株式會社ヲ拵ヘルトキニ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的ト爲スコトガ出來ルノデアリマスカラ、勞務信用ノ如キ金錢以外ニ出資ノ目的トシテ直グニ其儘ニヤラレル、言ババ其場合ニ合名會社ノ社員ニ對シテ是ガ悉ク發起人ト爲ツテ、株式會社ヲ組織スレバ極メテ簡單デアラウト思フノデ、既ニ株式會社ニ金錢以外ノ財產ヲ出資ノ出來ルト云フ以上ハ左程此場合ニ金錢以外ノ出資ヲ以テ株式ヲ得ルコトハ困難デナカラウヤウニ思ヒマス、唯價格ニシテ其後ノ拂込ノ殘ルモノトスルカト云フ實際ノ困難ニ出會ヒマスガ、其困難ガアツテ協定ガ纏ラナケレバ設立ガ出來ナイノデアリマスカラ、其邊マデモ矢張リ一致ノアル上ノコトト思フノデアリマス
○二番(岡野敬次郞君)
私ハ松波君ノ御案モ拜見ヲ致シ、獪ホ愼重ニ考ベタ積リデアリマスガ、併シ如何ニモ一言ニシテ申セバ茫邀トシテ居リマシテ、ドウ云フヤウニ此規定ガ動クノデアルカト云フ方針ガ立タヌノデアリマス、云フノハ梅君カラ先刻御說明ノアツタノデアリマスガ、松波君ノ御話ノ如クニ合併ト云フノハニ種類アル、卽チ松波君ノ所謂吸收合併ト云フノト、ソレカラ新タニ會社ヲ設立スル合併トノニ種類アル、ソレデ吸收合併トマア稱スル所ノモノモ矢張リ商法ニ依ル所ノ合併デアル、二ツ以上ノ會社ガ合シテ新タニ會社ヲ設立スルト云フノモ、矢張リ商法ニ依ル合併デアル、デ組織變更ニ付イテ合併ニ關スル規定ヲ準用スト云フコトハ、ドチラノ合併ヲ言フノデアルカ商法ノ合併ト云フ所ノ規定、合併ニ關スル所ノ規定ハイヅレモ準用セラルルノデアルカドウカト云フコトハ、實ハ私ハ仙弟ニ一起ツタ所ノ疑ヒデアルノデアリマス、然ルニ段々其御說明ヲ伺フト云フト此修正案ハ此議場デ決議ニナツタ所ノ案ノ第四十四條ノ三ノ財產合併ニ關スル規定ト斯ウ云フヤウニ御說明、サウ云フ御趣意ノヤウニ伺ッタノデアリマス、所ガソレハドウ云フモノデアリマセウカ一體其第四十四條ノ三ハ設立スル場合デアルカラ設立ニ關スル規定ヲシテ多ク玆ニ適用スル積リデ四十四條ノ三ト云フモノガ出來テ居ルノデ組織ノ變更ノ場合ニ果シテ設立ニ關スル規定ガドレダケマデ適用サレル、、又之ヲ適用スルノ各項ノ規定ニ付イテハ餘程其分ラナイコトデアリハセヌカト私ハ思フノデ四十四條ノ三ト云フモノハ無論漠然タルモノデアルガ、併ナガラ兎ニ角會社ヲ新設スル場合デアリマスカラ、之ヲ設立ニ關スル規定ハ其趣意ヲ各場合ニ相當ニ適用シテ往クト云フコトニ付イテハ略ボマア私ハ其困ラナイデアラウト云フ見込ヲ出テタノデアリマス、蓋シ四十四條ノ適用セラレタノモ蓋シサウ云フ趣意デアラウト思フ、此規定ガ一體組織變更ニ準用セラルルト云フコトガ餘程私ハ分ラヌノデアリマス、ドウ云フヤウニ準用シテ行クノデアルカト云フコトガ私ニハ分ラヌノデ、ソレデ實ハ松波君ノ御案ニ對シテ兎角ノ意見ヲ言ヘト云フコトヲ申サルルト云フト、ドウモ其ドコガ惡イノカ或ハドコガ宜イトカ言フテ意見ヲ實ハ申スコトガ出來ナイノデ、私ハ甚ダ遺憾ニ思フノデアリマス、ソレカラ此決議セラレタ案ノ中デ組織變更ノコトガ書イテアル、例ヘバ八十三條ノ四ノ所是モ矢張組織變更デアル、此組織變更ハ此前ニ置クノデアリマスガ或ハ松波君ノ御趣意ガ八十三條ノ二ノ如キモノモ、八十三條ノ三ノ如キモノモ四ノ如キモノモ倒}ツテ仕舞冖ツテ更ニ一條デ濟セヤウト斯ウ云フ御趣意デアルカ、甚ダ疑ツタノデアリマス、若シ斯ノ如ク廣ク書イテサウシテ八十三條ノ二以下ノ規定ヲ削ッテ而シテ會社ヲ新設スル場合ノ規定ヲ準用スルノデアルト膏ロツタナラバ、獪更分ラヌコトニ陷ルト思ヒマス、ソレデ均シク組織變更デアルケレドモ、八十三條ノ二以下ハ卽チ四十四條ノ四ト云フ松波君ノ案ノ外ニ矢張リ之ヲ認メテ置クノデアルカ、若シ之ヲ認メテ置クト云フト、會社ノ組織變更ニ關シテハ合併ニ關スル規定ヲ準用スト云フコトニナルト法文ノ上ニ於テハ頗ル不體裁デアツテ又實ニ其意味モ能ク分ラヌト思フ、ソレハ私ノ松波君ノ案ヲ拜讀シタ上ニ於テ起ツタ所ノ疑デアリマス、唯今勞務株ノコトニ付イテ松波君ノ御論ガアリマシタガ、是ハ株式會社ト云フ性質カラ考ヘテ穩當デアルカドウカ甚ダ私ハ疑フ、疑フ所デハナイ誤リデアルト云フコトヲ斷三=ロシテ私ハ宜カラウカト思フノデアリマス、成程法律ニハ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的トスルトキハ財產云々ト云フコトガ書イテアルガ、學說ニ依レバ勞務モ亦財產デアル、斯ウ云フ論ハ私モ聞イテ居ルノデアリマス、勞務モ亦財產ナリト云フコトハ是ハ學說ニ讓ルコトニ致シマシタ所デ、玆ニ言フ所ノ財產ト云フコトニ勞務ヲ含ムト云フコトハ是ハ株式會社ノ性質カラ考ヘルト言フト、ドウシテモ私ハ容ルルベカラザル論デアルト思フ合名會社デアルトカ合資會社デアルトカ云フノデアリマスト兎ニ角社員ガ無限責任ヲ負擔スル、總テニ非ザルモ一部ハ無限責任ヲ負擔スルノデアリマスカラ、ソレハ會社財產ガ會社債權者ノ權利ヲ行フ目的物デアルノデ見樣ニ依ツテハ各社員ノ財產ガ擔保デアルト斯ウ云フノデ、株式會社ニハソレガナイノデアル而シテソレヲ會社財產ノ充實ヲ計ルト云フコトハ勞務ノ如キ實際ニ實體ノ所ノモノヲ一萬圓ニ見積ルトカ或ハ十萬圓ニ見積ルトカ、ソレヲ財產目錄ニ揭ゲルト云フヤウナコトガ出來タナラバ、是ハ明カニ私ハ株式會社ノ本體ニ反スルモノデアルト思フノデアリマス、若シサウ云フモノデアリマスレハ言フマデモナク、會社ノ設立ニ當ツテモ無論勞務ヲ以テ財產トスル者ニ對シテ相當ノ株ヲ割當テルト云フコトハドウシテモ法律上許スベカラザルモノデアルト思フ、組織變更ノ場合ニ於テモソレヲ許スコトハナイノデアリマス、認ムベキモノデハナイノデアリマス、合併ノ場合ニ於テモ認ムベキ干ノデハナイノデアリマス、ソレカラ終リニ梅君ノ御論中詳細ナルコトハモウ申シマセヌガ、此組織變更ニ付イテ此合名會社ニハ所謂簡易ナル淸算方法ヲ認メテ居ルカラシテ、ソレデ此規定ヲ運用シテ恰モ組織變更ト同樣二月的ヲ達スルコトガ出來ルノデアルト云フコトヲ私モ申シマシタガ、ソレガ疑問ト云フ御話デ、私ハ疑問ト致シマセヌガ議論トシテ是ガ組織變更ノ場合ニ出來ルノデアルナラバ、合併ノ場合ニモ矢張リ同樣デハナイカ、單リ合併ノ場合ニ八十五條ノ規定アルニモ抅ハラズ、合併ヲ認メテ置テサウシテ組織變更ニ付イテソレヲ其場合ノ理由トスルト云フコトハ、頗ル權衡ヲ得ナイ論ジヤナイカト云フ御話デ、是ハ私ハ梅君ト全然御同感ノコトデアリマス、元來合併ト云フモノハ廣ク認メラレテ居ル例ハ全ク少ナイノデアリマシテ、先刻モ申上ゲマシタケレドモ商法中ニ合併ノ全部規定シテアルモノハ伊太利ト葡萄牙先ヅ此二ツヲ手本ト申シテ宜カラウト思フノデアリマス、他ノ法律ニ此合併、合名會社ガ合併スルト云フヤウナコトヲ規定シテ居ラナイ理由ガドコニアルカト言ヘパ、ソレハ丁度其梅君ノ御話ノ如ク合名會社ニ付イテハ解散ノ場合ニ於ケル會社財產自由ノ處分方法ヲ定メテ居ルカラ是ニ依ッテ自由ニ目的ヲ達スルコトガ出來ルカラ、ソレデ合併ヲ認メヌト云フノガ先ヅ一般ノ說明ノヤウデアリマス、固ヨリ法律論ヲ言ヘバ別デアリマスケレドモ、其法理論ヲ離レテ實際ノ結果カラ申セバ實際ニ自由ノ財產處分方法ニ依ッテ出來ルカラヤルノデ、ソレデアルカラ若シ理窟ヲ申上ゲレバ、或ハ合併中ニモ區別シテサウ云フヤウナ場合ニハ合併ヲ認メナイデモ宜イト云フ御趣意ハ私ハ決シテ反對デハナイノデアリマス、併ナガラ此組織變更ノ場合ニハ合併ノ場合ノ外ニ先刻來申上ゲル所ノ色々ノ困難ガアルノデアリマスカラ、此㸃ニ於テハ合併ト組織變更ヲ同ニ一看倣スコトハ出來ナイト斯ウ私ハ大體考ヘテ居ルノデアリマス
○三十八番(松波仁一郞君)
度々立ツテ恐縮デアリマスケレドモ意見ノ潼~フ所ハ申シマセヌガ量叩リ解釋凵ノ違フ所ハ申シマセヌガ、案ニ對シテ餘リ漠然ジヤナイカト云フコトニ對シテ=言ロシタイト思ヒマスガ、文字ノ上カラ極メテ漠然ニ見ヘマスガ、意味ニ於テハ是ハ漠然デハナイト思ヒマス、組織變更ニハ合併ニ關スル規定ヲ準用スト言ヒマスノハ、合併ニ關スル總テノ規定ヲ準用スル意味デ、先程既ニ申上ゲタ積リデアリマスガ、少シ事柄ガ足リナカッタ爲メカ幾分カ誤解ノヤウニ思ヒマスカラ、私ノハ合併ヲ爲スニハ先ヅ前提條件トシテ各會社ニ於テ内部關係デ何カ定メナケレバナラヌ、合名會社ガ或會社ト合併セントスルニハ必ズ總社員ノ同意ト云フコトガ要ルノデアル、又株式會社ガ或會社ト合併セントスルニハ株主總會ノ決議ヲシナケレバナラヌ、内部關係トシテハ卽チ愈々合併ヲシヤウト云フ際ニ先達ツテ、内部關係デ何カ極メナケレバナラヌト云フコトガアリマスカラ、其㸃ニ付イテハ矢張リ組織變更ニ付イテモ之ヲ準用スルノデ、會社ガ組織ヲ變更シヤウト云フテ組織變更ニ着手スル前ニ、合名會社ナレバ總社員ノ同意ガ要ル、株式會社ナラバ株主總會ノ決議ガ要ル、此㸃ニ付イテ合併スル際ニ前提條件ト同ジ條件ヲ用ヰレバ宜イジヤナイカト云フコトデ、會社ノ組織變更ニハ合併ニ關スル規定ヲ準用スト云フテ置ケバ其準用ガ必ズアルデアラウトサウ信ジマスノデ、ソレカラ續イテ合併ヲスルニ付イテハ此規定デハ合併ニ依リテ會社ヲ設立スル場合ニ於テハ定款ノ作製其他設立ニ關スル規定ハ各會社ニ於テ選任シタル者協同シテ之ヲ爲スコトヲ要スト云フノハ實行ニ當ツテ居ルコトダラウト思フ、卽チ合併ヲ實行スル、合併ニ依ツテ會社ヲ設立スルコトヲ實行スルニハ到底困難ナ一々單リ單リノ意見ヲ聽イテ居ツテハイケナイカラシテ、各會社デ或者ヲ選任シテ協同シテ實行ニ當ラシムルト云フ御案デアラウト思フ、ソレヲ組織變更ノトキニ準用シマスト、矢張リ合名會社ガ株式會社ニナラウトスルトキニハ大勢デ何時デモ一致シテ、一致ヲ要スルト云フコトガ面倒デアルカラ矢張リ其會社デ或ル委員ノ如キ者ヲ選任シテ其者ガ協同シテ之ヲ爲スト云フ卽チ實行ニ付イテモ合併ノ規定ヲ準用スト斯ウ云フコトガ矢張リ廣ク會社ノ組織變更ニハ合併ニ關スル規定ヲ準用スト云フテ置ケパ嵌マルデアラウ、ソレカラ又合併ヲスレバ必ズ登記ヲスルト云フコトハ玆ニ書イテアリマスカラ、デ合併ニ關スル登記ノ規定ガアルカラシテ、組織變更ニハ合併ニ關スル規定ヲ準用スト云フテ置ケバ、矢張リ或ルモノガ登記ノ變更シテ、或モノガ消滅ノ登記ニナルカモ知レヌ、或モノハ變更ノ登記ニナルカモ知レヌ、或場合ニ依ツテ違イマスケレドモ、合併ニ依ツテ或登記ヲ爲スト云フコトナレバ、其規定ヲ準用シテ來レバ組織變更ニモ準用スルト云フコトデ、總テノ場合ニ付イテ合併ニ關スル規定ヲ準用スルノデアル、詰リ三段ニナラウト思フ、合併ヲ爲スニ要スル前提條件、合併實行及ビ合併後ノ登記ト云フ三段ナガラ準用スルト云フ積リデ斯ク廣ク言ツテ置キマシタ、是デハ足リナイ餘程漠然デ足リナイダラウカト云フコトノ御話デアリマシタガ、合併ノ規定ニ詳シク出テ居ルノデアリマス、既ニ其改正案ノ四十四條デ詳シク大キナ規定ガアルノ、、、ナラズ、現行法デモ七十七條以下八十二條デアリマスガ、餘程詳シイ規定ガアッテ、其規定モ準用シテ行ケバ大抵コトハ足リヤウト思フノデアリマス、現ニ此改正案デ御引キニナツテ居ル八十三條ノ二、三以下ノコトモ、詰リ矢張リ此現行法ノ合併ノ規定ヲ殆ド大部分準用シテ御アリニナルノデ、例ヘバ八十三條ノ二ノ「合名會社ハ總社員ノ同意ヲ以テ其組織ヲ變更シテ之ヲ合資會社ト爲スコトヲ得」トアル、其實際ノ手續ニ付イテハドウスルカト云フト、七十八條七十九條等ヲ準用サレテアルノデアル、其七十八條七十九條ニ依ッテ見ルト「會社カ合併ノ決議ヲ爲シタルトキハ其決議ノ日ヨリ二週間内ニ財產目錄及ヒ貸借對照表ヲ作ルコトヲ要ス」トカアトハ讀ミマセヌガ、又ハ七十九條ニハ「債權者カ前條第二項ノ期間内ニ會社ノ合併ニ樹シテ異議ヲ述ヘサリシトキハ之ヲ承認シタルモノト看做ス」トカ、合併ニ關スルコトヲ準用サレテアルノデアリマス、八十三條ノ三ニ於テモ前條ノ場合ニ於テ會社ハ組織變更ニ付キ債權者ノ承認ヲ得又ハ七十九條第二項ニ定メタル云々ト云フ所ニ登記ノコトガアリマスルガ、矢張リ斯ウ云フコトハ合併ニ付イテモ略ボ是ニ準ジタル登記ノコトヲ定メテアリマスカラ、合併ガ詳シク書イテアルトスレバ又詳シクナケレバ合併ノ規定ハ詰リ不足ナンデスカラ補ハナクテハナリマセヌガ、詳シク書イテアルトスレバソレヲ準用シテ行ツテコトハ足リヤウ合併ノ規定ノ今ノ商法ニアリマスノハ合併ヲ爲スニハ先ヅ前提條件トシテ何ニヲ要スルカ曰ク總社員ノ同意デアル、後ハ株式會社ニ準用スレバ株主總會ノ一致ニナルノデス、株式合資會社ニナレバ社員ノ一致ト株主總會ノ決議ノ二ツ合名會社デハ合併ヲスルニハ先ヅ總社員ノ同意ヲ以テ爲スト云フ前提條件、ソレカラ實行ノ規定何ヲスルカト云フト財產目錄ヲ作リ貸借對照表ヲ作リ第三者ニ對抗スル手績トシテ異議アレバ申シ出ロト云フテ催吿ヲスル、申出タ者ニハ之ヲ拂フコトガアリマスカラ、矢張リ組織變更ニ付イテモ先ヅ組織變更ヲスルト云フ同意ヲスレバ、續イテ貸借對照表ヲ作リ財產目錄ヲ作リ、債權者ヲ保護スル爲メニ異議ガアレバ拂フ、異議ガナケレバ御仕舞ニナル、異議ガナケレバ登記ノ規定ヲ準用スルト云フコトニナリマスカラ、改正案ノ四十四條ノ三ノ規定ト、現行法ノ七十七條ノ今ノ規定ガ悉ク組織變更ノ場合ニ準用サレレパ、大體ニ於テ足リルダラウト思フ、甚ダ合併ノ規定ニエライ出過ギルカモ知レヌケレドモ、合併ノ規定ニ能ク出來テ居ルモノトスレバ、ソレデ凡ソ足リヤウト思フノデアリマシテ文字ハ非常ニ漠然トシテ短イモノデアリマスガ、意味ハ可ナリ含ムデ居ル積リデアリマス
○四番(齋藤十一郞君)
チョット松波君ニ伺ヒマスガ
○三十八番(松波仁一郞君)
チヨツト若シ此私ノ案ガ通ルトスレバ其趣意ニ依レバ無論八十三條ノ二、三、四ト云フモノガナクナリマシテ、廣イモノガアルカラ、狹イ此小サイモノガナクテ宜イト云フ趣意デアリマス
○四番(齋藤十一郞君)
松波君ニ御尋ネ致シマスガ、先程第一回ノ御演說ノトキニ後程說明スルト仰セニナツテマダ御說明ノナイ㸃ガアル、此改正案ノ規定ニモ關係シマスカラ、其㸃ヲ明カニ御說明ヲ願ヒタイ、改正案ノ趣意ハ御覽ノ通リニ、而シテ此前ニモ確カ盟說明ヲ致シマシタ通リニ合名會社ヲ合資會社ニ變更シ、合資會社ヲ合名會社ニ變更シ、ソレカラ株式合資會社ヲ株式會社ニ變更スル、ソレダケシカ認メテナイノデアリマス、然ルニ松波君ハ改正案ノ規定ニ依ツテデモ、株式合資會社ヲ合名會社ニ變更スル案ガ出來、又合資會社ニ變更スルコトガ出來ルト云フコトハ解釋上左樣ニ見ルコトガ出來ル、是ハ餘計ナコトデアリマスケレドモ、梅案ニ付イテモ同樣デアルト斯ウ云フ御話デアリマスガ、其㸃ノ御說明ヲ第一ニ伺ヒタイ、ソレカラモウ一ツハ先程ノ御說明ノ續キデアリマスガ、會社ノ組織變更ニハ合併ニ關スル規定ヲ準用ストシ、合併ニ關スル規定ノ中ニハ卽チ會社ノ其合併ノ場合ニ適用スル規定トシテ規定シテアルモノニ付イテノ御說明ハゴザイマシタガ、此改正案ニ於キマシテハ合併ノ場合ニ適用スベキ所ノ規定デアリマス、例ヘバ株式會社ノ設立ニ關スル全體ノ規定ニ依リ左樣ナモノモ矢張リ準用セラルル御趣意デアラウトハ存ジマスガ、念ノ爲メニ伺ツテ置キマス
○三十八番(松波仁一郞君)
後ノ御尋ネハ此文字ニ在ル積リデ先ヅ合併ノ規定ニ關スル規定ヲ悉ク準用シテモ宜イヤウニ思フタノデス、實ハ一遍合併ノ規定ヲ當ッテ見タノデアリマスガ、準用ト云フコトヲシテ置ケバ伸縮自在ニ行ケバ略ボ準用デ宜カラウト思ヒマス、悉ク準用スル積リデアリマス、ソレカラ前キニハ唯解釋ニ屬シマシテ、株式合資會社ノ解散ニ付イテハ、株式合資會社ハ合資會社ト同ジ事由ニ因ツテ解散スルト云フコトハ二百四十六條ニ在リマスノデ、卽チ二百四十六條「株式合資會社ハ合資會社ト同一ノ事由ニ因リテ解散ス、」サウスルト此合資會社ノ解散ノ事由タル、百十八條ガ準用デナシニ適用サレルト思ヒマスノデ、同一ノ理由デ幾分カ社員ノ性質ガ違イマスカラ準用ニナリマスケレドモ、百十八條ニハ「合資會社ハ無限責任社員又ハ有限責任社員全員カ退社シタルトキハ解散ス」ト此解散ノ事由ハ矢張リ株式合資會社ニモ當嵌ルデアラウ、然ラバ株式合資會社デハ株主ノ全員ガナクナルカ、無限責任社員ノ全員ガナクナッタトキニハ解散スルデアラウ、所ガ百十八條ノズツト續キニ「但有限責任社員ノ全員カ退社シタル場合ニ於テ無限責任社員ノ一致ヲ以テ合名會社トシテ會社ヲ繼續スルコトヲ妨ケス」ト、斯ウ云フ場合ニハ合資會社ヲ合名會社トシテ續ケテ行クコトガ出來ルト玆ニ書イテアリマスノデ、此百十八條ヲ本文ト但書ニ分割シマスト、ソレハ後ノ繼續ト云フコトハ此方ノ準用若クハ適用ガナイト見マシテモ、此一條ヲ不可分ト見マスト矢張リ株式合資會社ハ社員ノ全員ガ退社スルカ、株主ノ全員ガ退社スレバ解散シ、株主ノ全員ノ退社シタル場合ニ有限責任社員ノ一致デ合名會社トシテ繼續シテ往ケルト、斯ウ云フコトニ解サレテ宜カラウト思ヒマスノデ、其解釋ニ依ッテ株式合資會社ハ合名會社ニナリ得ル餘地ガ、現行法ノ解釋トシテモアル、獪ホ之ヲ斯ク解釋スル精神的ノ理由モアルノデアリマス、既ニ合資會社ニ於テ有限責任社員ガ皆無クナッタ後デ、無限責任社員ダケデ合名會社トシテ續ケルコトヲ許スナラバ、株式會社デ株主ガ無クナッタ後デ無限責任社員ダケヲ以テ續ケサセテモ宜イデアラウ、況ヤ此二百三十六條ニ於キマシテ無限責任社員ト第三者トノ關係、第二ニナリマスカ或ハ三ノ無限責任社員ノ退社ニハ殊ニ無限責任社員ト第三者ノ關係ニ付イテ合名會社ノ規定ヲ準用スルト云フ位ニシテ居ルコトカラ見テモ、矢張リ株式合資會社ノ株主ノ全員ガナクナツテ無限責任社員ノトキニ合名會社トシテ繼績サセテ宜カラウト、斯ウ云フ風ニ解釋シタノデアリマス、既ニ其位デアレバ今度ノ改正案ニ依ツテ合名ヲ自由ニ合資ニシ、合資ヲ自由ニ合名ニスルト云フコトニ御採リニナッタ以上ハ、株式合資會社モ合名ニシテ構ハナイデアラウト云フ解釋ニ段々落チテ來タノデ、幾分カ御反對モアラウト思ヒマスケレドモ、其理由ヲ以テ株式合資會社ガ改正案ノ出來上ツタ結果、合名會社ニモ合資會社ニモナリ得ルデアラウト斯ウ思フノデアリマス
○四番(齋藤十一郞君)
私ノ質問ハ百十八條ノ規定ハ組織變更ヲ改正案ニ於キマシテ組織變更トシテ規定シテアル事柄ノ場合ト同性質ノモノトハ認メテ居ラヌ、私ハマア此、、、、、
○三十八番(松波仁一郞君)
先ヅ現行法ノ解釋カラ言ッタソデアリマス
○四番(齋藤十一郞君)
現行法デハ矢張リ組織變更ノ一ツデアルト認メタノデ、モウ一ツハ合名會社トシテ妨ゲズトアルガ、合資會社ノ方ハドウデ
○三十八番(松波仁一郞君)
ソレハ飫ニ段々推シテ往キマシテ株式合資會社ヲ合名會社トスルコトガ出來ル、サウスルト改正案デハ合名會社ハ何時デモ合資會社ト出來ルト云フコトニナリマスカラ、一旦行キマシタケレドモ出來ルコトニ進ンデ行クト云フノデ
○四番(齋藤十一郞君)
株式合資會社ガ合名會社ニナリ合名會社ガ合資會社ニ變ルカラト云フノデスカ、直接ニ合名會社ガ合資會社ニ、、、、、
○三十八番(松波仁一郞君)
ソコデニ段ニ考ベガアソタ、私ノ解釋ヲ正シイトスレバ合名會社ヲ合資會社トスルコトニ此案ニ依ツテ御許シニナツテ居ル、然ラバ其位デアレバ面倒イ中ノ段ヲ經ズニ株式合資會社モ合資會社ニ變ヘテモ宜カラウ、殊ニ株式合資會社ト合資會社ハ餘程似タモノデアルカラト云フ積リデアリマス
○二十五番(磯部四郞君)
此問題ハ大變ヤカマシイ問題デアリマス、私共ハ先程カラ詳シク御說明ヲ承ハツタケレドモ、ドウモ腑ニ落チナイ所ガ澤山デアリマス、又殊ニ今松波君ノ御意見ニ依ツテモ、其改正案ノ意見ノ適用上ニ付イテモ多少反對モアルダラウト云フヤウナ御答振リデモアリマス、又冖梅磐ノ先程ノ言弗茱ヲ承ハルト勞務若クハ信用ヲ目的トシテ居ツタモノヲ、ソレヲ株デ買切ツテサウシテ後カラ半分位ハ拂込デ往クダラウ、拂込ムカガナカツタナラバ其トキニ賞レバ宜イジヤナイカト云フ、誠ニ簡單ナ御答辯デアリマシタガ、コイッヲ賣レル株ナラバ宜イガ、勞務ヤ信用ヲ出資トシテ居ツタ人ガ、元々自分ガ損失ヲ負擔セヌ考ヘデ居ツタ以上ハ會社變更ノ上カラ四分ノ一ノ拂込ガ終ツテ後ノ四分ノ三ハ拂込ガナケレバナラヌ、玆ニ於テ賣ラムト欲スルトキニ賣ルコトガ出來ナイ、一旦株主トナツタ以上ハ迷惑ヲシナケレバナラヌト云フコトニナルシ、又會社ガ色々ノ會社ニ變更スルニハ段々繁榮ニ赴イテ盛ン一一スルト云フヨリモ第三者ノ爲メニ財產ヲ胡麻化サウト云フ趣意カラスルノガ澤山アルノデアリマス、ソレ等ノ事柄ハ餘程定メテ是マデ十分ニ御硏究ニナツタコトデアリマセウケレドモ、獪ホ實際ノ狀況ニ付イテモ能ク御硏究ヲ要スル㸃デモアリマセウ、皆サンバ分リマシタカ存ジマセヌガ私ハ先程三人ノ色々御討論ヲ承ハリマシタケレドモマダ頭ガ錯雜シテ少シモ分リマセヌガ、今日ハ此問題ニ付イテ決ヲ御探リナサラズニ、私共多少硏究ヲシテ來タウゴザイマスカラ、次回ニ此問題ハ決議ナサルヤウニ願ヒタイト思ヒマス、又隣席カラ色々私ニ申上ゲテ吳レロト依賴モアッタコトデアリマス、今日ハ是デ閉會ヲ願ヒタイト考ヘル
○四番(齋藤十一郞君)
左樣ナ御發議ガ出マス場合デゴザイマスカラ、簡單ニ一ツ梅サンニ御答ヲ得タイ㸃ガアリマス、今日御出シニナリマシタ八十三條ノ第五項トシテ左ノ一項ヲ加フト云フ第百二十四條ノ規定ガ準用スト特ニ此條項ヲ入レルニ付イテノ御說明、先程御說明ヲ伺ヒマシタケレドモ、甚ダ不注意ニシテ宜フ分リリマセヌデシタ八十三條ノ四第一項二百二十四條ノ規定ヲ準用シテ居ルニモ抅ハラズ、尙ホ入レナケレバナラヌト云フ理由ヲ簡單ニ御說明ヲ願ヒマス
○十番(梅謙次郞君)
簡單ニ御答ヘ致シマス、私モ實ハ第一項ノ規定ガアルカラ要ルマイト思ツテ初メハ入レナカツタ、段々硏究シテ見ルトドウモソレハ少シ解釋上無理ジヤナイカト云フコトヲ感ジマシタ、ソレハドウ云フ譯カト申シマスト、百二十四條ニハドウ書イテアルカト云フト「取締役ハ其選任後遲滯ナク第百二十二條第三號乃至第五號ニ揭ケタル事項及ヒ第一回ノ拂込ヲ爲シタルヤ否ヤヲ調査セシムル爲メ」云々ト斯ウアル、百二十五條ノ第二項第三號ハドウカト云フト發起入ガ受クベキ特別ノ利益及ピ之ヲ受クベキ者ノ氏名、四號ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的ト爲ス者ノ氏名、其財產ノ種類、價格及ビ之ニ對シテ與フル株式ノ數、ソレカラ五ハ會社ノ負擔ニ歸スベキ設立費用及ビ發起人ガ受クベキ報酬ノ額ト斯ウアル、ソレカラ此會社財產ニ對シテ與フル株式ノ數及ビ各社員ガ引受ベキ株式ノ數ト云フモノトハ少シ違フト思フ、ドウモ似タモノデハアルケレドモ、此三號ノ中ニ含マレテ居ルト云フコトハドウモ無理ダラウト思フ、ソレカラ第一回ノ拂込ヲ爲シタルヤ否ヤト云フコトデ、第一回ノ拂込ト云フモノハ百二十三條ニ「發起人ハ遲滯ナク株金ノ四分ノ一ヲ下ラサル第一回ノ拂込ヲ爲シ」云々トアル、此拂込ノ意味デアル、所ガ會社ニ現存スル財產ガ云々、社員ガ出資ヲ爲スコトヲ要スト云フコトガアリマスケレドモ、ドウモ是ハ百二十三條ニ言フ所ノ株金ノ四分ノ一ヲ下ラザル第一回ノ拂込ト云フニハドウモ當リ兼ル、ソレデ第一項ノ準用ハ畢竟第一回ノ拂込ト云フコトニ付イテハ疑ヒノ㸃ガアル、第三號乃至第五號ノコトハアリ得ル、其コトガ適用セラルルノデアラウ、サウスルト此二ツノ場合ニ付イテ百二十四條ノ如キ檢査ヲ受ケヌト云フコトハ無論不都合デアル、矢張リ是ハ明カニ此場合ニモ百二十四條ノ規定ヲ準用スルト云フ規定ヲ置クノガ穩當デアラウト斯ウ覺リマシタノデ、意味ニ於テ改メタ積リデハアリマセヌガ、斯ウ書ク方ガ立法上穩當デアラウ、後ノ疑ヒヲ招クコトヲ避ケルコトガ出來ルト斯ウ考ヘタノデ、ソレカラ立チマシタ序ニ一言シテ置クコトハ唯今磯部君カラ勞務又ハ信用ヲ出資ト爲シタル者ガ或ハ株式ノ數ヲ引受ケマシテ、ソレガ未拂込ノ株デアルナラバ獪ホ株金ノ幾分ヲ拂込ムベキ義務ヲ負擔シナケレバナラヌ、ソレハ其者ニ取ツテ甚ダ迷惑デアル、サウ云フコトヲ定メタヂヤ困ルジヤナイカト云フ御話デアリマシタガ、迷惑デアレバ同意シナケレバ宜イ一人デモ同意ガナケレパ出來ヌノデ、同意シタ以上ハ差支ヘナイト思フ、ソレカラ序ニ松波君ニ對シテ一言致シマスガ、松波君ノ先刻ノ磯部君ノ問ヒニ對スル御答ヘニ付イテハ、私ハ矢張リ岡野君ト同意見デ、金錢以外ノ財產ト云フノハ勞務ヤ信用ヲ除イタ純然タル財產デアルコトハ我商法デハ蓋シ一㸃ノ疑ヒガナイト思ツテ居ル其證據ハ合資會社ニ關スル第百八條ニ「有限責任社員ハ金錢其他ノ財產ノミヲ以テ其出資ノ目的ト爲スコトヲ得」トアル、此處デ其他ノ財產ノミト限ツタノハ、何ノ爲メニ限ツタカト云フト、言フマデモナク信用ト勞務ヲ含ム爲メニ斯ウシタノデ、ソレ故ニ既ニ合資會社ニ付イテ其意味ノ財產ナリ文字ガ用ヰテアルナラバ、株式會社ニ付イテモ同一ノ意味ヲ以テスルノガ最モ相當ナル解釋デアルト信ジテ居ル、ソレカラ株式合資會社ヲ合名會社、合資會社トスルト云フコトハ、現行法ノ下ニ於テモ出來ル、或ハ尠ナクトモ改正案ノ下ニ於テハ出來ルト云フ御解釋ノヤウデ、先刻齋藤}君ノ御問ヒニ對シテ御答ガアリマシタガ、是ハ私ハ御同意致兼ネル、此百十八條ノ規定ハ是ハ其合資會社ガ無限責任社員又ハ有限責任社員全員ノ退社ニ因ツテ解散スル場合デ、株式合資會社ガ變更スル場合ニハ株主ハドウナル、株主ガ退社スル、株主ノ退社ト云フコトハドウモ商法ニ認メテ居ラヌヤウデ、サウスルト百十八條ノ適用ノ意味ガ分ラヌ、ソレカラ之ヲ合資會社トナスト云フコトハ獪更ラドウモ明文ガナクテハ出來ヌト思フ、百十八條ニハ無限責任社員又ハ有限責任社員ノ全員ガ退社シタル場合ヲ見テ居ルノデスカラ、合資會社ニ變ズル場合ニハ、、、ノ社員ガナクテハナラヌト云フノデスカラ矛盾シテ居ル、株式合資會社ガ合資會社トナルト云フコトハドウシテモ出來ヌンデアル、ソンナラバ合名金薗社トナツテ更ニ合資金回社ト變ハルト云フノデ、ドウシテモ一足飛ニハ往カヌノデ、ドウモ松波君ノ御解鯉怦ハ伽御鉦{理デアルト考ヘマス
○二十九番(高木豐三君)
色々御論モアリマシテ詳シク承ハリマシタ、唯今磯部君カラ今日ノ議事ハ重』大ノ案デアルカラ次回ニ抓休決ヲ延、ハシテ貰ヒタイト云フ御意見ガ出マシタガ、私共ハ誠ニ分ラヌ方デアリマスガ諸君ノ御說明ニ依ツテ略々斯ウシタラバ宜カラウト云フコトガ極ツタト思フ所デアリマス、諸君モ蓋シ磯部君ヲ除クノ外ハ同樣デアラウト思フ、何卒此問題ハ討論ヲ是デ御止メニナツテ今日直チニ御決定ヲ希望致シマス
○十五番(江木衷君)
今日御決議ニナルカ存ジマセヌガ、此次ニ延ビマシタ所デ御相談シテ置キタイ、梅君ト松波君トニ御相談シテ置キタイ、段々御說ヲ承ハツテ見ルト歸スル所ハ同ジコトデ、此準用論ハ或ハ松波君ノ御親モ尤モト考ヘル㸃モアルヤウニ思フ、併ナガラ此合併ノ場合ガ松波君ノハ廣クナツテ居ルケレドモ、實際ノ必要ハ梅君ノ案デ私ハ澤山ダラウト思フ、成程實際ノ場合モ見マシタケレドモ、株式會社ニシテ居ッタノヲ合名會社ニシタイト云フノハアルケレドモ、コイツハ極ク惡イノデ、今マデ株式會社デ信用ガナクナツタラ合名ニテ直シテ見ヤウト云フノガアルノデ餘リ必要ヲ認メルノハナイト思フ、實際ノ所ハ梅君ノ案デ殆ソド盡キテ居リハシマイカト思フ、サウスレバ此或ハ二ツノ案デドチラデモ折レテ戴ケレバ決ヲ採ルニモヤサシイ、吾々モ迷ハズニ濟ム、往々決ヲ採ルトキニ小サナ差カラシテ折角ノ良イ論ガ行ハレズ、途ニ梅君ノ論モ松波君ノ論モ行ハレヌト云フコトニナル、全ク起草委員ガ旨イカラ、サウ云フ譯デアリマスカラ此次ニ御廻ハシ下サレバ此商法ノ爲メニ爰協案ノ出來ルコトヲ望ムノデアリマス
○十番(梅謙次郞君)
先刻磯部君カラ延期說ガ出マシタガ、私ハ實ハ早ク決ヲ採ツテ貰ヒタイト思ヒマスガ、第一ニ見渡シマス所定則數ガ缺ケテ居ル、第二ニハ此問題ニ付イテ最モ意見ノアッタ若槻君ヲ始メトシテ元田君其他皆退席セラレタ、今月マデ延期ニナツテ居ルノデ今一回延期ノ出來ヌコトハナイト思ヒマスカラ、自分ノ意見カラ考ヘテ延期ヲ言フノデハナイガ公平ナル考ヘヲ以テ延期ヲ希冖望致シマス
○十九番(阿部泰藏君)
私ハ今ノ十五番ノ要協讀ハ至極宜シイト思ヒマスガ、此組織變更ヲ自由ニスルナラバ成ルタケ廣ク自由ニシタイト思フノデアリマス、例ヘバ株式會社ヲ合名會社合資會社或ハ株式合資會社ニスルト云フヤウナコトハ今日必要ノナイト云フ、世間デモ格別要求シテ居ナイト云フヤウナ御說ヲ先刻カラ度々伺ッタヤウデアリマスガ、今日必要ノナイコトデモ他日必要ガ生ズルカモ知レヌ、例ヘバ株式合資會社ノ如キモノガ現行商法ノ出來ル時分ニハ殆ンド必要ハナイ、コソナ法律ヲ設ケテモ入用ガアルダラウカト云フヤウナ議論ノアッタ位デアリマスガ、今日ハ株式合資會社ト云フモノハ之ヲ必要トシテ居ルヤウニナッタト思ヒマス、株式合資會社ヲ他ノ合名トカ合資會社ニ組織ヲ變更スルト云フコトモ私ハ必要ガアリハシナイカヘ思フ例ヘバ私ノ知ツテ居ル一例ヲ擧ゲテ見マスト、此株式會社ヲ或人ガ獨リデ株ヲ買ツタトカ、數人デ株ヲ買ッタトカ云フ時分ニ株式會社ヲ廢メテ合名會社カ或ハ合資會社ニシヤウト云フテモ、今日デハ出來ナイノデアリマス、其例ハ東京倉庫株式會社ト云フモノガ今日デモアル、ソレハ其株ノ大半ハ三菱デ持ッテ居ツタ、其倉庫モ三菱ノモノデ土地モ三菱ノモノデアル、皆三菱カラ土地モ倉庫モ借リテ、ソレデ倉庫ト云フ營業ヲシテ居ッタ、ソレデ三菱ヲ除クノ外ノ株ハ少數デアッタ、ソレデ三菱ノ方デハ此倉庫會社ハ大抵一割ノ配當ニ出來ルヤウニ、倉庫或ハ土地ノ借料ヲ極メテ居ッタ、ソコデ其會社ガ利益ガアルト三菱ノ方デハ或ハ土地ノ借料ヲ段々上ゲルト云フヤウナ傾キガアル、ソレデ他ノ株主ガドウモ是ハ持ツテ居ツタ所ガ、利益ガアレバ矢張リ一割位ニ倉庫ノ地代倉庫ノ家賃ヲ上ゲラレルカラ、寧ロ三菱ニ皆買ツテ貰ツタ方ガ宜イデハナイカト云フコトデ三菱デモソレガ宜カラウト云フノデ相談ガ出來テ拂込ノ二倍デ之ヲ三菱ノ方ヘ賣ツテシマツタ今日デハ實際三菱ノモノデアル、併ナガラ法律ガ許サヌカラ元ノ方ハ合資會社トナツテ居ル、倉庫會社ダケハ同ジ三菱ノモノデモ法律ノ爲メニ矢張リ株式會社トナツテ居ル、ソレガ組織變更ガ容易ク出來ルヤウニナツタナラバ、或ハ三菱ガ合資會社合名會社ニスルカ知ラヌ、サウ云フヤウナコトガ今後モ必要ガアルダラウト思フ、差支ヘノナイ以上ハドウカ廣ク組織變更ノ出來ルヤウニ、一ツ梅サンノ御說ヲ多少修正シテ、廣クナルヤウニ致シタイト云フコトヲ私ハ希望スル、チョット閉會前ニ申上ゲテ置キマス、ドウゾ此次ギマデニ御考ヘヲ願ヒマス
○四番(齋藤十一郞君)
ドウモ松波君ノ案ト梅君ノ案ハ程度問題ト大變違ツテ居ルヤウデアリマス、無理ニ合同シテ一ノモノニ往カナイカト云フコトモ餘程困難ノ話デハナイカト思ヒマス、餘程此儘デ詰リ三案ガアルトシテ御採決ニナツテ少シモ差支ヘナイコトデアラウト思ヒマス
○十九番(阿部泰藏君)
希望トシテ申上タノデ別ニ議論ヲ致ス譯デハアリマセヌ
○議長(子爵岡部長職君)
諸君ニ御相談シマスガ、本日ハ延期ト云フ說モ大分アリマスヤウデ、梅委員モ急グケレドモ延期シタ方ガ宜表フウ云フ御讀モアル、二十九番ハ本日採決求メラレテ居ル、兩方ニ說ガ分ツテ居ル
○十五番(江木衷君)
延期シテシマツテハドウデス
○三十八番(松波仁一郞君)
若シ御採決}ナルト云フ'トナレバモウ一言シタイ
○議長(子爵岡部長職君)
二十九番ドウデス
○二十九番(高木豐三君)
マタ延期ヲスルト云フナラバモウ少シ說明スルト云フナレバ、、、、
○十五番(江木衷君)
大事ノ問題テスカラ今日ノヤウナトキニハ延期ニナツタ方ガ宜イ
○議長(子爵岡部長職君)
諸君ノ御希望ハ延期ノ方ニ多數ノ希望ガアルヤウニ認メマスシ、マタ此問題ハ特ニ攻究スベキモノト考ヘマスカラ、今日ハ是デ閉會致シマス又次ハ水曜日二時カラ開キマス