商法(~1951年)

第二次法律取調委員会 商法中改正法律案 議事速記録 第2回

参考原資料

備考

  • 未校正のテキストデータです.
法律取調委員會議事速記録
出席委員
第一番  富井政章君
第二番  岡野敬次郞君
第三番  富谷鉎太郞君
第四番  齋藤十一郞君
第五番  一木喜德郞君
第六番  關幽直彦君
第七番  阿部泰藏君
第九番  大久保利武君
第十番  梅謙次郞君
第十一番  菊池武夫君
第十二番  志村源太郞君
第十三番  原嘉道君
第十四番  岸本辰雄君
第十五番  穗積八束君
第十六番  河村善益君
第十七番  長谷川喬君
第十八番  石渡敏一君
第十九番  豐島直通君
第二十番  小山溫君
第二十一番  花井卓藏君
第二十二番  奧田義人君
第二十三番  江木衷君
第二十四番  高木豐三君
第二十五番  磯部四郞君
第二十六番  鵜澤總明君
第二十七番  若槻禮次郞君
第二十八番  元田肇君
第二十九番  田部芳君
第三十番  内田嘉吉君
第三十一番  山根正次君
第三十二番  村田保君
第三十三番  河村讓君
第三十四番  穗積陳重君
第三十六番  横田國臣君
第三十七番  松波仁一郞君
第三十八番  安廣伴一郞君
第三十九番  平沼騏一郞君
○會長(子爵岡部長職君)
是ヨリ前回ニ引續キ總會ヲ開キマス、前回議題トナツテ居リマシタノハ第二十六條第二項デアリマス、前回ニハ獪ホ修正ニ付イテ諸君ガ討議セラルル餘地ガ殘ツテ居ルト記憶致シテ居リマス、此際ニ於テ御意見ガアルナラバ此處デ御發表ニナツタラ宜シウゴザイマセウ
○三十六番(横田國臣君)
大槪此コトニ付イテハ議論モ濟ンダコトニ考ヘマスカラ、又是ニ居ラレタ主ナル御方ガドウモ是ハ獨逸ニ於テモ、、、、、佛蘭西ハ確カニナイト思ヒマスガ、今ノ學讀ハ是デアル、斯ウ云フコトデゴザイマス、學說ト云フ程ノ價値モ何モナイト思ヒマスガ、唯是ハ善イカ惡イカ位ノ話デアル、ソレデ向フデ左リト言ヒ其左リニ寄ッタモノダカラ、此方モ左リニナツタ所ガ又向フハ右ニ變ヘタト云フコトガ幾ラモアルコトデゴザイマス、唯併シナガラ此際私ハ獪ホ之ヲ主張スル御方ニ對シテ、ドウゾ斯ウ云フ點ガ斯クシナクテハ悪イ唯先日ノ今ノ時價ト云フモノガ分ラヌトカ何トカ云フダケデアルガ、實際斯ウデアルカラシテ是非時價デサヘアレバ宜シイト云フ其道理ヲモウ一ツ私ハ承ハリタイ、吾々ハ餘リ分ツタ者デモナイモノダカラソレガ宜シイトサヘ思ヘバ直キ今此處デ裏返リマス、決シテソンナ情ケナイコトハ致シマセヌカラ、ドウゾ此以下デ宜イ何程デモ下ノ方ナラ宜イト云フ理田ハ茲ニ在ル、是ガ主ナ點ダト云フコトヲドウカモウ一度說明ヲ願ヒマス
○二番(岡野敬次郞君)
全體此條ニ付キマシテ段々御議論ガアリマシテ、又色々ノ御意見モ伺ツタノデアリマス、多少此問題ニ付イテ今日マデノ所私ハ特ニ特別ノ調査ヲ致シマシタ結果ヲ御參考ノ爲メニ御報吿ヲ致シテ置キタイト思フノデゴザイマス、前回ニハ岸本君カラ佛蘭西ノ法律ニ於テハ必ズ時價ニ見積ルベキコトヲ定メテ居ツテ、而シテ學者ノ間ニモ此點ニ於テハ議論ガナイノデアル、舊商法ノ下ニ於テモ矢張リ時價ヲ附セナケレバナラヌト云フコトヲ定メテ居ツテ、而シテ其時價ハ此修正案ノ意味デナイ卽チ必ズ時價ニ見積ラナケレバナラヌト云フ意味デアル、法文ノ沼革ガ卽チサウデアルト云フコトヲ御述ベニナツタコトヲ私ハ記憶致シテ居ルノデアリマス、佛蘭西ノ商法ニ付キマシテハ每年財產目録ヲ作リ、又財產目録ヲ作ツタ場合ニハ財產目録帳トデモ稱スベキ特別ノ帳簿ニ之ヲ登記シナケレバナラヌト云フコトヲ定メテハ居リマスケレドモ、併ナガラ如何ナル價額ニ評定スベキモノデアルカト云フコトハ少シモ商法ハ定メテ居ラヌノデアリマス、又價額ヲ附セヨト云フコトハ佛蘭西ノ商法ニハナイノデアル、是ハ財產目録ハ價額ヲ附セネバ意味ヲナサヌト云フ所カラ多分來テ居ルモノダラウト思ヒマス、貸借對照表ニ付キマシテモ、一般ノ原則中ニ貸借對照表ヲ作レト云フコトヲ命ジテ居ラヌノデアリ呵、ス、私ハ佛蘭西ノ法律ヲ詳シクハ存ジマセヌケレドモ、チョット私ハ或書物ヲ見マシタ所ガ價額ニ付イテ論ジテ居ルコトヲ發見シナイノデアリマス、佛蘭西ノ學說トシテ如何デアルカト云フコトヲ今私ハ茲ニシツカリ申上ゲルコトハ出來マセヌケレドモ、私ノ調ベタ範圍ニ於テハ詳シク論ジテアルモノヲ發見シナイノデアリマス、從テ學說トシテ私ハ承知シテ居ラヌノデアリマス、又舊商法ノ規定ニ付キマシテ三十二條ノ二項ノ財產目録及ビ貸借對照表ヲ、、、、、當時ノ相場又ハ市場價額ヲ附スル云々ト云フコトヲ言フテアリマシテ、是ハ草案ノ第三十三條ノ第二項ト文字ニ於テ少シモ變ツテ居ラヌノデアリマス、其草案ノ理由書ニ付イテ見マシタ所ガ此條ハ獨乙ノ商法ニ倣ツタモノデアツテ、而シテ其立法ノ趣旨トスル所ハ假想的ニ時價ヲ超ユル所ノ價額ヲ附スコトヲ禁ズルト云フ意味デアルト云フコトヲ言フテ居ルノデアリマスカラ、若シ舊商法ノ草案ノ理由書ニ記載スル所ガ正シイノデアルナラバ、又ソレガ舊商法ノ解釋トシテ採ルベキ點デアルナラバ、矢張リ舊商法ノ趣旨ハ決シテ嚴格ニ市場又ハ市價ニ見積ラナケレバナラヌモノデアルト云フコトヲ言明シテ居ルモノトハ受取レナイノデアリマス、解釋トシテ果シテ之ヲ許スヤ否ヤト云フコトハ、ソレハ丁度現行ノ商法ニ於デ時價ヲ附スルコトヲ要スト云フノガ矢張壁疑問デアルト言ヘバ、疑問デアルト同ジヤウニ舊商法ノ規定ニ付イテモ矢張リ疑問デアルカモ知レマセヌ、併シナガラ立法ノ理由トシテ說明シテアル所ハ、サウ云フ意味デナイト云フコトヲ私ハ=言シテ置キマス、ソレカラ更ニ獨乙ノ商法ノ解釋ニ付キマシテハ、大變廣ク調ベテ見マシタケレドモ、イヅレノ書物ニモ必ズ詳細ニ此點マデ論究シテ居ルト云フモノハナイノデアリマス、併シナガラ私ノ調ベマシタ範圍ニ於テハ五六ノ學者ハイヅレモ時價ヨリモ安ク見積ルヲ妨ゲルモノニアラズト云フ意見ヲ述ベテ居らこルノデアリマス、最モ詳シク書イテアル本ハ是ハト云フ論文デアリマシテ、此論文ニハ餘程詳シク書イテアルノデ此論ニ於テハ說明シテ居ル所ハ矢張リ時價以下ニ見積ルコトヲ妨ゲズト云フ論ヲ釋ツテ居ルノデアル、其外「レーマ(ママ)ソ」ノ商法トカ「レーマン」ノ註釋書デアルトカ、トノ註釋書デアルトカ、イヅレモ同一ノ論デアル、又梅君ノ能クハマこ御引用ニナル獨乙ノ商法ノ四十條ノ註釋ニ依リマスト獨乙ノ商法ノ四十條ノ規定ト云フモノハ、一ノ「インスツチユーシヨソ」デアルト云フノデ殊更其意味ニ付イテモ矢張リ說明ヲ加ヘテ居ルノデアリマシテ、時價以上トニ見積ルコトハ固ヨリ法律ノ禁ズル所デアルガ、併シナガラ時價ヨリ安ク見積ルコトヲ妨ゲナイト云フコトヲ矢張說明シテ居ルノデアリマス、一々其出所ヲ茲ニ申上ゲル必要ハアリマセヌ、獨乙ノ擧者ノ說明スル所ハ大要サウ云フモノデアツテ、反對ノ論トシテ書イテアル所ノモノハ發見シナイノデアリマス、ソレカラ先刻横田君カラノ御質問ニ於テハ前回ニモ度々皆サンカラモ繰返ヘサレテ說明ノアツタコトトハ存ジマスルケレドモ、極ク簡單ニ御答ヘダケヲ致シタイト思フノデアリマス、先ヅ時價以下ニ見積ルコトガナゼイケナイカ時價以上ニ見積レバ財產ノ實際ハ無クシテ表面ダケ大變財產ノアルヤウニ見ヘルノデアルカラシテソレハ會社事業ニ在ツテモ債權者ヲ害スルトカ或ハ世間ノ人ヲ欺クト云フ基礎ニナルト云フコトハ是ハ言フマデモナイコトデアル、併シナガラ時價以下ニ見積ル場合ニ在ツテハ寧ロ會社ノ基礎ノ鞏固デアルト云フコトヲ示スノデアル一萬圓ノ財產シカナイト云フコトガ財產目録ノ上ニハ現ハレテ居ツテ、サウシテ其實ニ於テハ一萬五千圓ノ財產ガアルト云フコトヲ言ツタナラバ是ガ爲メニ損害ヲ被ル者ハ一人モナイノデ何人ガ是ガ爲メニ損害ヲ被ルベキカ、損害ヲ被ル者ハナイノデアリマス、唯一ノ例ヲ以テ申セバ例ヘバ株式會社ニ付イテ言ヘバ時價ヨリモ安ク見積レバ是ガ爲メニ會社ノ債權者ハ寧ロ安心シテ宜シイノデアル一向不安ノ念ヲ懷ク必要ハナイノデアル、併シナガラ會社財產ヲ大變低ク見積ツタナラバ是ガ爲メニ或ハ株劵ノ値段ニ影響ヲ及ボスカモ知レナイ、若シ眞實ノ價額ヲ附シタナラバ百圓ノ價額アル所ノ株劵ヲ財產目録ニ低イ價額ヲ見積ッタガ爲メニ其株劵ノ値段ガ八十圓シカナイト云フヤウナコトハアリ得ルコトデアル、是ハ卽チ確カニ株主ガ其時價以下ニ見積ルガ爲メニ受クル所ノ影響デアル、結果デアルト云フコトヲ申シテ宜シイノデアル、併シナガラ前回ニモ詳シク述ベマシタ通リニ第二十六條ノ第二項ヲ存ジテ置タ所デ、又同樣ノ趣意ガ株式會社ニ適用セラル丶モノト見マシタ所デ唯斯ノ如キコトヲ書イタカラソレデ理事者ガ財產ノ評價ニ付イテ時價ヨリモ著シク例ヘバ安イ價額ヲ附シテ株主ハ是ニ對シテ異議ヲ述ベルノ機會ガナイト云フコトニナリマシタナラバ、ソレハ理事者ノ專斷ノ爲メニ株劵ノ値段ガ下ル利益ノ配當モ少クナイ從ツテ株劵モ價額ヲ減ズルト云フコトニナルノデアリマスカラ、ソレハ株主ハ必ズ迷惑ヲ被ルニ相違ナイノデアル、併ナガラ是ハ前ニモ私ガ申シマシタ通リニ私ノ考ヘデハ縱ヘ時價以下ニ見積ツテモ妨ゲナイト云フコトヲ法律ガ規定シタ所デ合名會社ニ在ツテハ社員トシテハ先張リ社員ノ權利ヲ有ツテ居ルノデアル、株式會社ニ在ツテモ又株主ハ株主トシテ總會ニ於テ議決權ヲ行ツテ卽チ社員タル權利ヲ行フコトガ出來ルノデアリマスカラ、若シ時價以下ニ見積ルコトヲ以テ是等ノ社員株主ニ對抗スル卽チ是ニ對シテ異議ヲ言ハセナイヤウニスルト云フナラバ定款ニ其規定ヲ設ケナケレバナラヌノデアル、卽チ此途ヲ開イタガ爲メニ理事者ガ勝手ニ時價以下ニ見積ッテ社員ハ是ガ爲メニ縛.ハラレル、株主モ亦是ガ爲メニ縛.ハラレテ少シモ異議ガ言ヘナイト云フ意味デハナイ、又サウ云フ意味ニ解釋スベキモノデナイト云フコトハ是ハ前回ニ述ベタノデアリマス、若シサウ云フ意味デアリマシタナラバ、社員權ヲ行フテ以テ理事者ノ蓴斷ニ異議ヲ述ブルノ餘裕アリ決シテ之ガ爲メニ株主、社員ガ損害ヲ被ルト云フコトハナイノデアル、併ナガラ多數ノ株主ガ之ヲ希望スル場合ニ於テ或ハ少數ノ株主ガ迷惑ヲ被ルト云フヤウナコトハアリ得ル、何トナレバ定款ニ此規定ヲ入レルト云フコトヲ出サシテ行ケルノデアル、併ナガラ是ハイヅレノ場合ニ於テモ株主一人一人ノ意見カラ言ヘバ定款ニ定ムル所總會ニ決ムル所ハ多數株主ト利害ヲ同ジウスルコトハナイノデ是ハ據ロナク多數ノ希望=隨ハナケレバナラヌト云フ結果ニナリマセウ、而シテ社員ニ對スル關係ハ先ヅサウ云フヤウナモノデアツテ而シテ世間ニ對シ又會社ノ債權者ニ對スル者カラ申シマシタナラバ、是ハ言フマデモナク他人ガ時價以下ニ見積ツタ爲メニ損害ヲ被ルト云フコトハ是ハ斷ジテ無イノデアル寧ロ低ク見積ル方ガ所謂レリテートノ標シデアル、會社ノ基礎ノ固イト云フ證據デアル、又實例ニ於テドウデアル外國ノコトヲ申スマデモアリマセヌ、日本ノ實際ニ於テドウデアルカト言ヘバ澤山アルノデアル、例ヘバ横濱ノ正金銀行ガ神戶ニ支店ヲ持ツテ居ル、サウシテ其支店ニハ澤山ノ道具ガアル年々此價額ノ減少ヲ見積ツテ數年ノ後ニハ全ク價額ガナクナツテ仕舞ツタト云フヤウナ實例モアルノデアル、其他私ガ一々會社ノ内容ハ存ジマセヌケレドモ、苟モ固イ會社デアルナラバ財產ノ價額ヲ内輪ニ見積ツテ置クト云フコトハ實際上必要デアルノミナラズ又事實ヤツテ居ル事柄デアル、ソレデ若シソレガ相當ノ方法デアルト云フナラバ現行法ノ解釋トシテ其時價以下ニ見積ルノ餘地ヲ開イテヤルト云フコトモ必要デアルシ又若シ疑問デアルトスルナラバ其疑ヲ解イテ以テ時價以下ニ見積ルトシテ差支ヘナイト云フ意味ヲ明カニスルト云フコトハ立法上當然ノコトデアラウト吾々ドモハ信ジテ居ルノデアリマシテ、格別深イ理由ガアルト云フ譯デハナイノデアリマス、獪ホ前回ニ横田サンバ實際會社ナリ何ナリノ所有シテ居ル所.ノ財產ガ非常三咼イモノデアルナラバ其高イ額ヲ公然ト社員ナリ株主ナリニ言フタラ宜イジヤナイカ何モソレヲ隱シテ置ク必要ハナカラウ、斯ウ云フ御議論デアッタ、而カモ熱心ニ其コトヲ御主張ニナツタヤウデアリマス、サウナリマスト云フトソレハ机ノ上ノ論トシテハ私ハ或ハ相當デアラウト思ヒマスガ、併シナガラ會社事業ノ經營.ニ當ル者ガ果シテ之ヲ實行シ得ルモノデアルカドウカト云フコトヲ私ハ疑フ者冖デアル、ソレハドウ云フ譯デアルカト言ヘバ先ヅ以テ言フマデモナク財產ノ價額鰰樊動ノ著キモノヲ斯ノ如ク營業年度ノ終リニ於テ一パイノ時價ニ見積リ或ハ一年或ハ數年ノ後三於テ其價額ガ著シク減ジタト云フ場合ニ於テハ矢張リ前述ノ意味ヲ以テ其財產ノ價額ヲ茲ニ財產目録ヤ貸借對照表ニ揭ゲナケレバナラヌコトニナルノデ郞甲チ市場價額ノ變動ニ依ツテ會社ノ財產ガ常ニ動搖ヲ免カレナイト云フノデアリマシタナラバ、是ハ私ノ考デハ尠クモ注意深キヤリ方デハアルマイト思フ、ソレハ茲二百萬圓アルカラ百萬圓ト言ヘ七十萬圓ニナッタラ七十萬園ト言ヘバ宜イジヤナイカト斯ウ御話ニナルカ知レマセヌガ、此百萬圓ノモノガ七十萬圓ニナツタトシタナラバ三十萬圓ダケハ會社ガ椙叭ヲ被ツタト云フコトニナルノデアル、其損ヲ財產【目録貸借對照表ノ上ニ現ハスト云フコトハ餘リ事業經營上好マシカラザルコトデアラウト私ハ思フノデアル、殊二百萬圓ノ財產アリトシテ卽チ價額一パイニ見積ッタナラバ言フマデモナク財產目録貸借對照表ノ計算ノ上カラ申シタナラバ必ズ利益トシテ現ハルル所ノ價額ヲ墸スノデアル三十萬圓ニ見積ル所ヲ百萬圓ニ見積ツタナラバ外ノ財產ニ付イテ變リノナイ限リハ三十萬圓ト云フモノハ必ズ利益トシテ貸借對照表ノ上ニ現ハレテ居ルノデアル、若シモ三十萬圓ノ利益ト云フモノガ現ハレテ居ルト云フコトニナリマシタナラバ、正サニ是ハ横田サンノ御承知ノ如ク定款ニ於テ利益ノ何分一ハ取締役ガ取リ何分一ハドウ云フヤウニスルドレダケヲ配當ニスルト云フヤウニナツテ居ルノデアルカラ苟モ利益ノ形チニ於テ現ハレタ以上ハ現在ノ定款ニ定ムル所ニ依ツテ其利益ノ處分ヲシナケレバナラヌノデアル、サウシテ株主ハ御承知ノ通リナルダケ利益ノ多イコトヲ、配當ノ多イコトヲ希望スルノデアリマスガ、貸借對照表ノ上ニ利益トシテ現ハレテ居ルノハ茲ニ是ガ分配ガ尠ナイデモ宜シイト云フコトハ餘程行ヒ難イコトデアル、ソレハ出來ヌコトデアルトハ申シマセヌ、併ナガラ人情トシテ株主タル者ハ成丈ケ一時ニ於テモ配當ノ多イコトヲ希望シ其配當ノ多イ時ニ株劵ノ上ルノヲ利用シテ株劵ヲ賣ラウト云フコトハ是ハ株式會社ノ株主トシテ普通アルノデ是ハ定款ニ之ヲ積立ツテ置ケバ宜イト云フコトデアレバ理窟ハサウデアルガ實際行ハルヽモノデハナイノデアル、ソレデアリマスカラ先ヅ用心ニ或ハ價額ノ變動ノアルカモ知レヌト云フ準備トシテ財產ヲ内輪ニ見積ツテ置クコトハ決シテ惡イコトデナイ又私ハ獎勵スベキコトデアラウト思フ、併ナガラ若シモ害ガアルナラバソレハ仕方ガナイケレドモ害ハナイノデアル一向害ガナイト云フコトハ先刻述ベタ通リデアリマスノデ、私ハ矢張リ色々御希望ヲ承ハツタ後ニ於テ獪ホ此修正ハ最モ至當ナモノデアラウト信ジテ居ルノデアリマス
(十番梅謙次郞君發言ノ許可ヲ求ム)
○三十六番(横田國臣君)
梅委員ニ私ハ御協議シタイガドウカ今斯ウセネパナラヌト云フ理由ヲ、、、、、
○十番(梅謙次郞君)
私ハ極メテ簡單デスカラ決シテ御妨ゲバ致シマセヌ、私ハ前回ニ二回マデ起立ヲ致シマシテ簡單ナガラ意見ヲ述ベマシタカラ、今日ハ成ル可ク沈默致シテ居ル積リデアリマシタケレドモ、實ハ岡野君ノ言ハレタ中デチヨツト辯ジテ置キタイト思フコトガアリマシタカラチョット立チマシタガ、第一ハ佛蘭西ニ於テ明文ニ價額ヲ附スルト云フ規定ガナイ是ハ誠ニ其通リデアリマス、併ナガラ學說ニ於テハモウ解釋ガ一定シテ居ルノデ必ズ其時ノ相場ヲ附セナケレバナラヌト云フコトハドノ本ニモ書イテアルヤウニ記憶致シマス、殊ニ近頃私ハ見マセヌガターレルノ如キハ最モ明カニ嚴重ナル時價ヲ附セナケレパナラヌト云フコトガ書イテアル、ソレハ成程嚴重ト言ヒマシタ所デ時價ヲ少シモ動カヌト云フ所ノモノハ分リヤウハアリマセヌガ、幾ラ嚴重ト申シタ所デ程度問題デアリマスカラ兎ニ角解釋ハサウナツテ居ル、ソレカラ今一ツ私ノ申シタイト思ヒマスコトハ、岡野君ハ獨乙ノ學說ヲ引カレマシテ獨乙ニ於テハ價ヲ低クスルノハ差支ナイト云フヤウニナツテ居ルト申サレマシタ、或ハサウデアリマセウガ併ナガラ其意味デ是ガ差支ナイト云フ岡野君ノ御考ヘト私共ノ考ヘト違ツテ居リハシナイカ岡野君ガ言ハレマスノニ財產目録ノ評價ガ實價ヨリ安イ不當ニ安イト云フ場合ニハ或ハ株主ガソレヲ爭フコトハ少シモ妨ゲナイ定款ニ特ニ反對ノ規定ガナイ以上ハ爭フコトハマこガ出來ルト申サレマシタ、是ハスターブニモ明カニ書イテアリマス、苟モ株主ガ爭フコトガ出來ルト云フナラバ矢張リ時價相當ニ値ヲ附シテ置カナケレパナラヌト云フ原則ガ茲ニ在ツテ始メテ之ヲ爭フコトヲ得ルノデアラウト思フ、ソレハスターブモ言ツテ居ル通リ價ヲ高ク見積ツテハナラヌト云フノハ命令的ノ規定デアハルケレドモ、値ヲ安ク見積ラヌト云フコトハソレハニ歸スルノデアツテ詰リ定款ニ別段ニ定メガアレバ低ク見積ツテモ宜イ、併ナガラ定款ニ別段ノ定メガナケレパ株主ハソレヲ見積レヨト云ツテ請求スルコトガ出來ル斯ウ云フコトガ書イテアルソレハサウナケレバナラヌ、或場合ニ於テ重役ノ意見ト株主ノ多數ノ意見ト違フ場合ニ株主ノ意見ニ依ラナケレバナラヌ、爭フコトガ固ヨリ出來ルノデアラウト云フナラバ本來ハ時價ニ相當スル値段ヲ附セナケレバナラヌト云フ原則ガ如何ナル意味ニ於テモナクテハナラヌ、獨乙ノ商法ニハ明カニソレガ書イテアル、時價ヲ附セナケレバナラヌト云フコトガ書イテアルサウシテ株式會社ニ付イテハ其外ノ制限ガ設ケテアル、此制限ハ私共ハ至極贊成シテ居ル點デアル、併ナガラ其制限ノ外ニハ矢張リ原則ガ嵌マルコトニナツテ居ル、ソレダカラ株主ハ之ヲ爭フコトガ出來ル、然ラバ株式會社ニ付イテハ特ニ時價ニ超ユルコトヲ得ナイト云フ外ニ又制限ヲ設ケタノハドウ云フ譯デアルカト云フト、ソレハ株式會社ハ有限責任ノ會社デア丿マスカラ、唯今岡野君ガ繧々述ベラレタ通リ危險ガアルトシテソレデ特ニ一層ノ制限ヲ加ヘテアル其制限ヲ加ヘテアルト云フコトハ私共同意デアルケレドモ、併ナガラ原則トシテ値ヲ幾ラ安ク見積ツテモ宜イト云フコトハ私ハ同意スルコトハ出來ナイ是ガ害ガナイト云フコトヲ頻リニ言ハレマスケレドモ、第三者ヲ害スルコトハ原則トシテナカラウト思ヒマス、併ナガラ現ニ今申シタ通リ會社ナドニ於テ其内部ニ於テ害ヲ受ケル者ガアリ得ルト云フコトハ認メナケレバナラヌ、株主ガ不當ニ少ナイ配當ヲ受ケルト云フコトハ若シ單ニ會社經營ノ用心ノ爲メニシタト云フナラバ宜イケレドモ時トシテハ不正ノ目的ヲ以テナスコトモ絕無トハ言ヘヌノデスリマスカラ第ヨ一者ヲ宝ロシサヘシナケレバ宜イト云フ譯ニハイカヌノデアラウト思ヒマス、併ナガラ財產ヲ内輪ニ見積ル方ガ宜イト云フコトニ付キマシテハ私モ多クノ場△ロニソレヲ靭隱メル、多クノ場合ニハ蜜了ロ内輪ニ見{積ツテ兜旦ク方ガ宜イト云フコトハ固ヨリ認メマスケレドモ、併ナガラ内輪ニ見積ル必要ノアル場合ハ主ニ株式會社ノ場合デアラウト思フ、個人ニ付イテ申シマスト財產目録ニ付イテ第三者ノ權利ガ定マルコトガナシ財產目録ヲ當ニシテ第三者ノ權利ヲ極メルコトハ固ヨリナイ、合名會社合資會社ニ至ツテハ無限責任社員ト云フモノガアツテ、ソレガ無限ノ責任ヲ負ヒマスカラ株式會社程ニ第三者ガ危險ヲ受ケルコトガナイデスカラ株式魯社ニ付イテ後ニ問題トナルデアリマセウケレドモ主査委員カラ提出ニナツテ居ル案ノ如キガ通過致シマスレバ、私ハ一般ノ原則ハ矢張リ正シイ時價ヲ附スルト云フコトニシテ置ク方ガ正當デアラウト思フ
○二番(岡野敬次郞君)
私ハ極メテ簡單ニ申上ゲマス佛蘭西ノ書物ノ私ノ言ヒマシタノハ「リンクターロル」デアリマシテ是ハ價額ノコトハ論ジテアリマセヌ、私ノモ誤リカモ存ジマセヌ、ソレカラ梅君ハ二十六條ノ第二項ニ對シテ反對セラレテサウシテ今問題ニナツテ居リマセヌケレドモ、百九十條ノ二ニハ贊成セラレテ居ル
(十番梅謙次郞君「全部デハナイ」ト述ブ)
若シ百九十條ノ意味ニ修正ヲ加ヘレバソレハ別ノコトデアリマスケレドモ、主査會ニ於ケル梅君ノ御意見ニ依レバ大體此趣意ニハ私ハ二十六條ノ二ノアルナシニ拘ハラズ私ハ御贊成ナリト申シタコトデアリマス、是ガ縱ヘ百九十條ノ二ダケヲ見マシタ所デ是ハ最後ノ制限ヲ定メタモノデ其以下ノコトハ一向百九十條ノ二ハ言フテ居ラヌノデアリマス、ソレデアリマスカラ若シ二十六條ノ二ヲ修正シテ時價ニ見積ルコトヲ原則ニスルト云フ梅君ノ理由ガ株式會社ニ應用セラルルモノデアルナラバ百九十條ノ二ト云フモノモ取得價額又ハ製作價額ニ見積ラナケレバナラヌト云フコトヲ定メナイ以上ハ、眞逆時價ニ見積ラナケレパナラヌト云フモノニナラウト思フ、ソレデハ百九十條ノ二ト云フモノ丶精神ハナクナルノデアリマス、サウシテ製作價額、取得價額ニ見積ルト云フコトハ其以下ヲ見積ッタ場合ニ株主名義ヲ備ヘルト云フコトニ付キマシテハソレハ明文ハナイノデアリマス故ニ二十六條ノ存否如何ニ拘ハラズ株主ガ異議ガ言ヘルナラバ百九十條ノ二ガアッテモ言ヘルノデアル、ソレハ二十六條ノ存否如何ニ拘ハラヌモノト思フ、固ヨリ是ハ二ツナガラ違フケレドモ妨ゲラル丶ト云フ點ハ同ジコトデアリマス、チョット其コトヲ申上ゲテ置キマス
○十番(梅謙次郞君)
違ヒダケ正シテ置キマス、私ハ百九十條ノ二ニ全部同意シテ居ルノデアリマセヌ、第二項ノ書方ガ變レバ百九十條ノ二ノ書方モ當然變ラナケレバナラヌト思フ、ソレヲ別段問題トシテ唯時價ガ取得價額製作價額ト云ヒ高イ場合ト雖ドモソレヨリ高ク見積テハナラヌト云フコトニナル、時價ガ安ケレバ矢張リ安ク見積ラナケレパナラヌ其意味ニ於テ百九十條ノ二ニ贊成シテ居ル、獨乙ノ商法ニモ其意味ニ於テ書イテアル
○五番(一木喜德郞君)
私ハ前回ニ時價論ニ贊成ノ意見ヲ表明シテ置キマシタガ、獪ホ會議ガ御延期ニナリマシタニ付イテ原案贊成ノ御意見ヲ段々咀嚼シテ考ヘテ見マスト是ニモ鐐程御尤モナ所ガアルト思フ何カ中庸ヲ得タ所ノ案ハアルマイカト考テ見タ、併ナガラマダ修正案トシテ茲ニ提出致スマデノ勇氣ガナイト申スノハ此案ガ稍々人工的ニナツテ居リマス餘リ拵ヘゴトニ近イデハナイカト云フ御批難ガアルカモ知レヌト思ヒマスガ、試ニ茲ニ其案ヲ提出致シマシテ、諸君ノ是ニ對スル御感覺ヲ伺ツテ見タイト思フ、私ハ一番恐レマス點、又時價論ニ贊成致シマシタ所ノ主ナル趣旨ハ此財產目録ナルモノガ餘リ飴細工ニナツテ高クサヘナケレバ安クト云フコトデ何處マデ往ツテモ宜シイト云フコトハ道理ガナイコトデアリ餘リ弊ガアリハシナイカト云フコトヲ心配致シタノデアル其方カラ致シマスト時價ニ見積ルト云フコトガ一番理窟モ正シク又弊モ少クナイデアラウト思フノデアリマスガ、併ナガラ實際當局ノ方ノ段々御意見ヲ伺フト云フト是ハ隨分實行ニ困難デアル又會社ヲ經營シテ行ク上ニ於テハ差障リガアルト云フ御意見ガアリマス、是モ當局者ノ御意見デアリマスカラ、最モ深ク考ヘナケレバナラヌ點デアルト思ヒマス、或ハ穗積委員ノ修正ノ御意見ニ少シク附加ヘマシテ、其價額ハ財產目録調製ノ時ニ於ケル價額ヲ超ヘ又ハ其價額ノ例ヘバ三分ノ二ヲ下ルコトヲ得ズトカ何トカ云フコトニ致シマシテ上ニモ限リヲ置キ下ニモ限リヲ置キ其中間ニ於テ會社ノ認ムル所ニ依ツテ適當ナリトスル所ノ價ヲ記入シテ置クト云フコトニ致シタナラバ私ノ心配シテ居ル所ノ弊害モナクシテ、而シテ又當局者ノ御懸念ヲモ除クコトヲ得ハセヌカト云フ考ヘヲチヨツト起シタノデアリマス、最モ前ニ申シマスル通リ或ハ飴細工過ギハセヌカト云フ御批難ガアラウト云フコトハ豫メ懸念致シテ居ルノデアリマスカラ一雁響試ニ案ヲ提出致シテ起草委員其他ノ諸君ノ御感覺ヲ伺ッテ見タイト思フ、又是ハ前キノ箇條ニ關係致ス問題デアリマスケレドモ、取得價額ヲ超ユル時ニ其取得價額ニ超ユルコトヲ得ズト云フノハ誠ニ安全ナ立派ナ結構ナ修正デ大體ノ趣意ニ於テハ誠ニ私モ贊成致シテ居ルノデアリマスケレドモ、獪ホ考ヘテ見マスト云フト數十年前ニ買ツタ所ノ當時ノ價ハ今日ニ至ツテハ或ハ百分ノ一ニ當ルノカ或ハ二百分ノ一ニ當ルト云フ場合ガアラウト思フ、ソレハ其當時ノ取得價額ニ依ツテ書クト云フコトハ餘リ面白クナイト思フ、唯今申シタ通リ上ト下ノ限リヲ附ケタナラバ適當ナル價額ヲ附ケテ居ルコトヲ得テ實際ニ於テモ不便ナク又弊害ナキコトニナリハセヌカト氣付キマシタカラ試ニ之ヲ提出致シマス
○四番(齋藤十一郞君)
私モチヨツト、唯今一木サンノ御言葉ノ中ニ數十年前ノ取得財產ガ今日價額ガ非常三咼クナツテ居ルカラ、此案ガ成立チマシテハ適用上宜シクアルマイト云フ御言葉ガアリマシタカラ、起草會デアリマシタカ、主査委員會デアリマシタカ、多分主査會ト思ヒマスガ、此箇條ノ實行ニ關スル問題ニ付イテ意見ガアリマシタカラ、其コトヲチョット御參考マデニ申シマス、此箇條ハ成立チマシテモ直グ此形デ其儘通用スルト云フコトハ困難デアラウト云フコトヲ大體ニ於テ認メテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ實際今日成立シ居ル會社ノ財產目録ヲ作成シマスル時ニ至リマシテ如何ニ適用スルカト云フコトニ付イテハ施行法ニ何等カノ規定ヲ定ムル必要ガアラウト云フコトニ傾ムイテ居ルノデアリマス、其趣旨ハ具體的ニ極ツテ居ラヌノデアリマスケレドモ、或ハ既存會社ニハ全部適用セヌト云フコトニナルカ、或ハ適用スルニシマシテモ從來ノ財產目録ニ書イテアル價額ハ買入レ値段ヨリ高クアリマシテモソレハ認ムルト云フコトニ致シマスルカ、何等カノ方法デ調和ヲシテ參ル必要ガアラウト考ヘマス、其コトヲチヨツト御參考マデニ申シテ置キマス
○三十番(内田嘉吉君)
唯今議題ニナツテ居リマスル問題ニ付キマシテハ大分御議論モ出マシテ法律上ノ御論ニ付キマシテハ十分御研究ガゴザイマシタヤウデアリマスカラ、私ハ自分ノ承知致シテ居リマスル實際ノ點カラ=言申上ゲテ御參考ニ供シタイト思フノデアリマス、私ハ此修正案ハ至極結構ナモノダト考テ居リマス、卽チ二十六條ノ原案ト云フモノニ私ハ同意ヲ表スルモノデアリマス、現在ノ商法ニ於キマシテモ矢張リ此價額ヲ記載スルト云フコトハドウシテモ此修正案ノ意味ヨリ外ニハ實際ニ之ヲ行フコトガ出來ナイモノト私ハ認メテ居ルノデアリマス、又此價額ト云フ字ニ付キマシテモ色々解釋モゴザイマシタヤウニ時ノ相場卽チ賣買ニスル所ノ相場ト云フモノヲ附ケナケレバナラヌ、是レ或ハ一番正確ノ議論カ知レマセヌガ、此家或ハ土地或ハ商品或ハ船舶ノ如キモノヲ悉クドノ位ノ價額デ賣買ガ出來ルカト云フコトヲ一々調ベマシテモ價額ヲ此帳簿ニ記載スルト云フコトハ殆ンド是ハ出來ナイコトデアラウト思フノデアリマス、サウ致シマスト云フト此所有者ガ使用スル所ノ上カラ相當ノ價額ヲ見積ルト云フコトモ亦必要デナイカト思フ或ハ此價額ヲ見積ルコトニ付キマシテハ慣例モアラウシ又或ハ會社デアリマスト云フト其定款ニ定ムル所ガアツテ是ニ依ツテ附ケテ往クト云フコトデアラウト思フ、幸ニ現在ノ商法ニ於キマシテハ調製ノトキニ於ケル價額トアルノデアリマスカラ、其中ニハ必ズシモ賣買價額デアルト私共ハ考テ居ラヌノデアリマス、現在吾々ノ知ツテ居リマス會社或ハ船舶ヲ所有シテ居ル個人自ラガドウ云フコトニシテ居ルカト云フト先ヅ船舶ノ製造若クハ買入ノ時ノ價額ヲ財產目録ニ登記シテ置テサウシテ年々或ハ百分ノ五或ハ百分ノ四卽チ二十五年間ニ其元價ヲ償却スル、或ハ二十年間ニ此元價ヲ償却スルト云フコトニ實際シテ居リマス、從ツテ或場合ニハ其船舶ト云フモノガ二十五年或ハ二十年卽ち規定ノ年數ヲ經過致シマスト云フト是ハ全ク其帳簿上ニ於テハ價額ノナイモノトナル、實際ニ於テハ其價額ハアルモノデアル尠ナクモ之ヲ解ホドイテ賣レバ其財產ト云フモノハ幾分ヲナシテ居ルニ違ヒナイノデゴザイマス、併ナガラ確實ニ營業スル上ニ又是ハ殆ンド日本バカリデナイ世界一般ノ慣習ト致シテ船舶業ヲ致ス者ニ於テハ必ズヤ元價償却ト云フコトヲ行フテ居リマシテ、年限ガ經過スルト帳簿上値ノナイモノニシテ居リマス、從ツテ二十六條ノ現在ノ商法ヲ極ク嚴格ニ解釋シ前回以來御議論ノゴザイマシタヤウニ、ドウデモ斯ウデモ賣買價額ヲ書カナケレバナラヌト云フコトニナルト此商賣ト云フモノガ安全ニ出來ナイコトニ歸着致スノデゴザイマス、現在ノ商法ニ於テモ私共ハ其解釋ヲ採ラナケレバナラヌコトエ考ヘテ居リマス、若シ現在ノ商法ガ或ル意味ニ於テ判決ヲサレタヤウニ又此席ニ於テモ御議論ノゴザイマシタヤウニドウシテモ狹イ意味ノ賣買價額ヲ記載シナケレパナラヌコトニナルト唯今行ハレテ居ル所ノ召慣ガ殆ンド打破サレテ仕舞フコトニナリマス、疑ノナイ方ハ尠ナクモ此起草委員ノ御調ベニナツタ所ノ其時ニ於ケル價額ヲ超過スルコトヲ得ズト云フコトニシナケレバナラヌコト丶考ヘルノデゴザイマス、又此外ノ財產ニ付キマシテモ矢張リ普通ノ慣例トシテ私ノ承知シテ居リマス所ハ是ハ會社デモ一個人ノ商人デモ同ジヤウデゴザイマスガ槪シテ矢張リ買入ノ價額ノ取得ノ價額ヲ基礎ト致シマシテ其以上ニ上ツテ居ルモノハ或ハ其價額ニ止メテ於キマスガ、或ハ相場其他ノ種々ノ原因ニ依ツテ價額ガ原因シテ居ルト認メマシタナラバ所謂店卸ト稱シテ年一回又ハニ回相當ノ價額ニ切下ゲルコトニナツテ居ルヤウデゴザイマス、不動產家屋或ハ什器商品ナドニ於テモ矢張リ同樣ノ慣例ニナツテ居ルヤウデアリマシテ、槪シテ財產ノ見積リト云フモノハ時價ト云フ極ク正確ナ賣買價額デハナイヤウニ承知シテ居ルノデゴザイマス、ソレカラ又商頁ノ慣例ニ於テハ相當ナコトデハナカラウト思フノデゴザイマス、株式會社ニ於テ株主ノ財產目録ニ對スル關係ハドウデアルカト云フ御議論ガ出マシテゴザイマスガ、是ハ私ノ思フ所デハ財產目録ト云フモノハ株主總會ニ提出シテ承認ヲ經ルモノデゴザイマスカラ定款ニ依ツテ極ツタ船舶ノ價額ノ如キモノハ定款ニ極メテアル所ノ價額ニ依ツテ其他ノ重役ガ慣例等ニ依ツテ調査シタモノヲ目録ニ揭載シテ株主ノ承認ヲ得ルコトニナツテ居リマスカラ、特ニ手續トシテ株主ハ無論重役ノ作ツタ所ノ財產目録ニ對シテ相當ノ意見ヲ言フコトガ出來又之ヲ變更セシムルコトハ法律上ニ權限ヲ認メテ居ルコトエ思ヒマス、先程一木君カラシテ是ハマダ確定ノ御意見デハナイヤウニ承知致シマシタガ、財產價額ト云フモノハ三分ノ二位ヲ標準ニシタラドウカト云フ御議論ガアリマシタ、是ハ吾々ガ知ツテ居ルト申上ゲタ船舶等ノ價額ニ於テ事實ニ行フコトガ出來ナイノデ是モ隨分此案ノヤウニ現行商法ヲ修正ニナル方ガ其處置ニ於テ甚ダ明カニナツテ宜イヤウニ考ヘマス、最モ文章ニ付イテハ穗積委員カラ御意見ガゴザイマシタガ、是ハ起草委員ノ御意見デモ、穗積委員ノ御意見デモドチラデモ私ハ異議ハナイノデゴザイマス、唯實際ニハ起草委員ノ修正ヲ御採用ニナルコトヲ希望致スノデゴザイマス
○十三番(原嘉道君)
私モ修正ニハ極メテ熱心ナル贊成者ノ一人デアリマスカラ、先程横田君ガ述ベラレタ如ク何故修正ヲ必要トスル、其點ニ付イテ一言ダケ申上ゲテ置キタイト思ヒマス、私ナドノ是非修正ヲシテ戴ケナケレバナラヌト思フ理由ハ會社ノ基礎ヲ鞏固ニスル爲メニ相當ノ範圍ニ於テ時價以内ニ見積ッテ居ル其當局者ガ却テ商法違反ノ責ヲ負ハナケレバナラヌト云フヤウナ、不都合ナ法律ハ止メテホシイト云フノガ私共ノ是非改正シナケレバナラヌト思フ點デ、今日ノ商法ノ書キ方カラ申シマスト云フト、小山君ガ言ハレタヤウニ解釋スル餘地モアルカモ知レマセヌガ、先ヅ大審院デモサウ解釋シテ居リマスルシ、梅君ノ如ク、岸本君ノ如ク、江木君ノ如ク有カナル委員モサウデハナイ、大審院ノ言フ通リ交換價額ヲ書クノデアル斯ウ云フ風ニ言ハレテ居ル
(十番梅謙次郞君「私ハサウデハナイ」ト述ブ)
ソレデハ梅君ハ除キマス、他ノ委員ハ兎ニ角是ハ交換價額ヲ指スノデアルカラ、時價ト云フノハ交換價額ヲ指スノデアル、其價額ヲ書カナケレバナラヌト云フノデアル、斯ウ云フコトヲ主張サレル餘地ガアルノデアル、梅君ハソレニ附加ヘテ或程度マデハ時價ぱデナクテモ宜イト云フヤウナコトモ言ハレマシタケレドモ、ソレハドノ理窟カラ出テ來タノカ私ニハ了解ガ出來ナカツタ此法文ニ時價ト書イテアル、ソレハ假リニ交換價額ヲ指スモノデアツタトスレバドウシテモ時價以下ニスレバ宜イト云フコトハ何處ニモ書イテナイ、サウナルト大審院ガ言フテ居ル通リ商法ノ事項ニ依ツテ罰セラルヽコトニナル、是ニ對シテ是ハ大審院ガ間違デアル惡イコトヲスル意味デヤツタ場合デナケレバ罰シタ方ガ悪イト云フコトヲ言ハレマシタガ、私ガ商法ヲ解釋スル所ニ依レバ、若シ交換價額デアルト極メタナラバ其交換價額デナイコトヲ知リツ丶其値ヲ記載シタモノハ矢張リ不正ノ記載ヲナシタト云フ解釋ガ正當デハアルマイカ、若シサウデアルトスルト若槻君、志村君、内田君等カラ言ハレタ會社ノ基礎ヲ鞏固ニスル爲メニ、財產ノ價額ノ變動ヨリ起ル損失ト云フヤウナコトヲ現ハサナイヤウナ、會社ノ事業ヲ鞏固ニスルヤウナ目的デ以テヤツタル會社ノ理事者ト云フ者ハ悉ク商法違反ノ責ヲ負ハナケレバナラヌ、不法ナコトヲ今日ノ商法ノ上デハ致シテ居ル斯ウ云フコトニナル、斯ノ如ク會社ノ基礎ヲ鞏固ニシヤウト云フ人ガ不法ナコトニナルト云フコトハ忍ブコトハ出來ナイ、最モ罰セラレタ例ハ少ナイガ摘發スレバ何時デモ罰セラルルコトニナルカラ、サウ云フ危險ヲ防イデヤルト云フノデ商法ヲ獪ホ修正シヤウト云フ極メテ適切ナル意見デアラウト思フ、唯先程梅君カラ承ハル所ニヨリマスト云フト、會社ノ内部ニ於テ株主總會デ重役ノ附シタ價額ヲ變更スルト云フヤウナ意見ヲ提出スルコトガ出來ルノハ、ソレハ卽チ時價ニ見積ルベシト云フ原則ガアル爲メデアラウ、欺ウ云フ御意見デアリマシタガ、私ノ研究ガ足ラヌノカモ知レマセヌガサウハ思ハヌ、株主總會ニ於テ價額變更ノ動議ヲ提出スルノハ時價ヨリ高イト云フ爲メニ提出スルノデナイ、會社ノ基礎ヲ鞏固ニスル爲メニハ道理アルガ、ソレ程低クスルニハ及.ハヌ、普通價額モ時價デナイコトハ一致シテ居ルガソレ程ニ低ク見積ラヌデモ宜イ、必ズシモ時價ニ見積ルベシト云フ原則ニ依ツテ時價ニ直セト云フ勤議スルモノデハナイト思フ、要スルニ會社ノ基礎ヲ鞏固ニスル爲メニハドレ程ノ價額ヲ附シテ置クガ正當デアルカト云フコトハ、株主總會デハ討議スルノデ時價ガ幾ラカト云フコトヲ討議スル必要ハナイト思フ、ソレ故ニ株主總會デ原案ヲ修正スルコトガ出來ルヤウナコトハ決シテ時價ヲ附ケナケレバナラヌト云フ原則カラ來ルモノデハ私ハナイト思フ、唯時價論ノ超ユルコトヲ得ズト云フダケニシテ置クコトダケニ付イテハ、最モ有カナル反對ノ根據ト云フモノハ、此前一木君カラ御注意ニナツタ如ク會社ノ危險ヲ防グ爲メニハ餘リ低クスルト云フコトハイケナイト云フ一木君ノ御意見デアリマシタ、是ハ成程御尤モノ意見デゴザイマス、併ナガラ是ハ極メテ稀レニ起ル例デハアルマイカ悉ク株主總會、社員總會デハ價額ヲ調製シテサウ云フ疑ヒノアルトキハ監査役ヲ選任スルコトガ出來、裁判所ノ手ヲ借リテ調ブルコトモ出來ルヤウナ機關ガ備ツテ居ルノデアリマスカラ、會社ノ外部ニ對シテ第三者ニ財產ガ多イヤウニ見セ掛ケテ、若クハサウ云フ目的デナクトモ會社ノ株ガ一時ニ上ツタ場合ニ於テ其價額ヲ利益ニ見積ツテ仕舞フト云フヤウナコトヲ防グト云フ目下ノ必要、其ニノ目下ノ必要上ノ點カラ申シマスルト、此商法ノ改正ハ極メテ必要デアル、最モ一木君ガ言ハレルヤウナ風ノ最低價額ニ極メルト云フコトハ適當ニ行ハレマスレバ是ニハ贊成ヲ致シマスガ、サウ云フコトヲ是非今日極メナケレバナラヌト云フ必要ガアルカドウカト云フト私ハマダソレ程必要ハナイ、是レガ爲メニ價額ヲ附スルト云フコトノ爲メニ弊害ヲ生ズル、其通リニスルト云フコトヲ原則ニスルト云フト非常ニ混同ヲ生ジテ三十九年ノ株劵ノ暴騰ノ際ニハ、現ニ農商務省ニ於テ時價ニ見積ル可ラズト云フ訓令ヲ發シタ位ニテ時價ニ見積ル取引所ノ財產株式ヲ時價ニ見積ツタナラバ、翌日カラ皆取引所ハ潰レタニ相違ナイ、ソレハ横田委員ノ株主ニ能ク言ツテ聞カセルガ宜イト言ハレマシタガ、情實裁剣ガ行ハレマスレバ兎ニ角、サウ云フコトハ今日デハ行ハレマセヌ、成丈ケ利益ノ配當ヲ餘計ニシタイト云フコトハ新聞ヲ御覽ニナツテモ分ルノデ是レハ中々行ハルベキコトデハナイ、サウスルト云フト私等ノ考ヘデハ重役其他ノ理事者ニ於キマシテドウシテモ會社ヲ鞏固ニスル爲メニ財產目録ノ價額ヲ時價以下ニ附スルト云フ必要ガアルコトハ爭フベカラザルコトデアル、ソレハ商法上不法ナリト見ルコトハ吾々トシテハ甚ダ不都合ナ解釋デアルト思フ、故ニドウシテモ改正シナケレバナラヌ、ソレデ斯ノ如キ修正ヲ必要トスルモノデハナカラウカト考ヘマス
○十七番(長谷川喬君)
私ハ此現行法ノ通リデアツテモ又ハ此修正案ノ通リデアツテモ文字コソ違ツテ居ルケレドモ趣意ニ於テハ違ツテ居ラナイト斯ウ思ツテ居リマシタカラシテ此問題ハサウ喧マシク論ジナクテモ宜カラウト思ツテ居リマシタガ又起草委員モ最初ニ此修正案ハ現行法ト同一趣意デアルト云フコトヲ辨明セラレマシテ私大ニ安心セラレマシタガ段々前回カラ今日ニ於ケル岡野君ノ演說ナドヲ聞キマスルトドウモ此修正案ガ現行法ニ大分違ツテ來タヤウデアル其違ツテ來タノハ何處ニ在ルカト云フト此修正案ニ於テハ此超ヘルコトヲ得ズトアルノデアルカラ價額以上ニハ行ケナイガ價額以下ナラバ幾ラデモ宜イ百萬圓ノモノヲ十萬圓ニシテモ一萬圓トシテモ宜イノデアルト斯ウ云フコトニ多クノ方ガ解釋サレテ居ルヤウデ若シサウ云フモノデアルナラバ何ノタメニ此財產目録ニ價額ヲ附スルト云フコトヲ法律ガ規定スルノデアリマセウカ此價額ヲ附スルノ要ハ卽チ幾ラノ會社ノ資カガアルト云フコトヲ見ルガ爲メデアラウノニ百萬圓ノモノヲ一萬圓ニ書イテモ宜イト云フヤウナ法律ヲ拵ヘルナラバ、何ノ目的デアルカ殆ド分ラナイ私ハ矢張財產目録ニハ價額ヲ附スルト云フコトヲ命ズル法律ニ致シタイ其價額ヲ附スルコトヲ命ズルニ付テハ相當ノ價額デナクテハナラヌ而シテ此現行法ハ今最後ニ述ベラレタ十三番委員ノ言ハレタ如クサウ窮屈ナモノデハアルマイト思フソレハ起草委員モ前回ニモ述ベラレ又横田大審院長モ前回ニ最終ニ言ハレマシタガ此現行法ノ價額ト云フモノハソンナ價額デハナイ一錢一厘モ違ツテモ行ケナイヤウニ言ハレタガサウ云フモノデハナイト言ハレマシタガ私ハ矢張其通リニ解釋シテ居リマスカラ成ルベクハ眞實ノ價額ヲ得タイ其價額ヲ得ルニ付イテハドウカ上ニ積ツテモ幾ラカ内輪ニ積ツテモ宜シイト云フ方ガ現行法ノ解釋トシテ相當ナコトト思ヒマスガ此現行法ハ或ル議員ノ言ハレタ如ク前ノ商法ト同一字デアツテ前ノ商法ヲ解釋スルニ於テモ今ノ通リノ意味デアルト云フコトヲ明言シテ違ツテ居ラナカツタ然ルニ此現行法ニ付テ一錢一厘モ違ツテモ行ケナイノデアルカノ如クニ窮屈ニ解釋セラル丶人ガアル其解釋セラルニ大ナル根據ヲ爲シタノハ或ル一ツノ判決ニ於テ價額以下ニ見積ツタ者ヲ懲罰シタコトガアルト云フコトヲバ根據トシテ居ルヤウデアリマスガ之ハ私ハ判決例ヲ見マシタガ或ハソレハ何カ惡意ガアツタトカ何トカデ罰スベキ事情ガアッタカラデアラウト思ヒマス今原君ノ恐ルニガ如クサウ無闇ニ懲罰スルト云フコトハ現行法ハ許シテ居ラヌト解釋シテ居ルサウシテ見レバ現行法ハ財產ノ目録ヲ作ルニ其價額ヲ知ルニ便ナル相當ノ方法デアル唯ダ内輪ニ積ッテ置クガ宜シイ然ルニ此修正案ニ依ルト云フト前申スガ如ク以下ナレパ幾ラデモ宜イト云フニ至ツテハドウモ之ヲ法律トシテ存スル必要ハナカラウト思フノデアリマスソレ故ニ私ハ私ノ解釋スルガ如クニ諸君ガ修正案ヲ解釋シテ下サレバ修正案ノ通リデモ宜イノデアリマスガ今言フ如クドウモ是ヨリモ度ヲ超エテ居リマスカラソレデ殘念ナガラ此修正案ヲ贊成スルコトガ出來ナイノデ今一木君ノ言ハレタ所ガ恰度事實ニ甚ダ至極宜イヤウデアリマスガドウモ之ヲ法文トシテ現ハスノハ餘程難カシイコトデアラウト思フ、今假リニ一ニ分ノ二ト云フコトヲ言ハレマシタガ先ヅ三分ノ二ヲドウシテ計ルカ是カラ難カシカラウガ三分ノ二ガ一般ニ適當デアルカ是モ難カシイコトデアリマスカラ矢張現行法ノ解釋ヲ起草委員其他ノ人ノ言ハルル如ク悠ニ解釋シテサウシテ實際ニ妨ゲナイヤウニシタ方ガ却テ宜クハナイカ、ソレ故ニ私ハドウモ此修正案ニハ同意スルコトハ出來ナイ最初ハ何方ヲデモ宜カラウト思ヒマシタガドウモ今言フ如キ解釋ガアリマシテハドウモ之ニ贊成スルコトハ出來ナイ、ソレカラ立ツタ序デニ申シテ置キマスガ、前回ニハ此本案ニ付テハ殆ド會ガ討議ガ盡キテ其採決方法ニ付テ又議論ガ起リ且ツ其議論モ稍々終結ニ至ラントシテ穗積君ノ修正意見ノ出タ爲メニ今日マデ延會ニナツタノデアリマスガ、穗積君ノ修正說ハ此修正案ノ通ツタ場合ニ其文章ヲパ云々ト修正シタイト云フ譯デアリマスカラ此修正案ガ通レバ宜イガ通ラナケレバ無用ニナルノデアリマスカラ穗積君ニ於テ御異議ガナケレバ先ヅ修正案ヲ採ルカ採ラヌカト云フコトノ採決シテサウシテ修正案ノ通過シタ場合ニ穗積君ノ言ハルル通リニシテハドウカト思ヒマス、ソレカラ尙ホ採決方法ニ付テ色々案ガ出マシタガ私ハ富井君ノ最後ニ言ハレタ案ガ穩當デアラウト思フ、其案ハ第一ニ此本案ニ遠イ削除說カラ採ルソレカラ修正說ヲ採リソレカラ尙ホ原案ニ付テノ可否ヲ諮フ斯ウ云フコトデアリマシタガソレガ先ヅ私ノ考ベタ所デハ理窟モ宜カラウガ理窟ハ暫ク止メタ所デモ各委員ノ意見ヲ漏レナク發表セシムルニハ其方ガ宜カラウト思ヒマスカラ成ルベクサウ願ヒタイ積リデアリマスガ併シ採決ノ方法ハ全胆ナカナカ色々ノ根據ガアリマスカラ又之ヲ討議スルニ付テハ隨分面倒カ知レマセヌカラ其決定ノ方法ハ議長ニ一任シタイ積リデアリマス
○三十四番(穗積陳重君)
私ノ前回提出致シマシタ修正案ハ只今長谷川君カラ述ベラレタ所ノ御取計ラヘヲ私モ願ヒタイト思フノデアリマス、勿論之ハ實質ノ修正案デハナクシテ其趣意ニ於キマシテハ改正案ニ同意ヲ表シテ居ル修正案デ唯ダ文字上ノ修正案デアリマス、若シ之ヲ重ナル採決トサレマスルト事ニ依ルト其形式ノ爲メニ其實質論ガ岐レテハ洵ニ困ル、成立ツタ曉ニ願ヒマス若シ不幸ニシテ成立タナケレバ止ムヲ得ヌト思フノデアリマス
○二十五番(磯部四郞君)
唯今色々ノ議論デゴザイマシテ此原案ト稱スル此改正案、ソレニ付テ只今長谷川君カラシテ百圓ノ價額ノアルモ/ニ對シテモ十圓ト書カレテモ甚ダ不都合デアル又一萬圓ト書カレデモ仕方ガナイコトニナツテ居ル、ソレデハ財產目録調製ノ必要ト云フモノハナクナツテシマウ、目録調製デモスルナラ品物デモ書イテ置イタ方ガ宜カラウ、御尤モナ御說デアル、所ガソジヲ折衷セラレタノカ穗積委員ノ修正案ガ十分ニ折衷シテアルト思フサウ云フ弊ハ見ナイソノ案ヲ讀ンデ見ルト斯ウナツテ居ル「財產目録ニハ動產不動產其他ノ財產ノ價額ノ附シテ之ヲ記載スルコトヲ要ス」デアルカラ兎ニ角一ツノ價額ガナクチヤナラヌ其價額ハ時價ニ超エルコトハ出來ヌト云フノデアルカラ百萬圓ノモノヲ十萬圓ニ書クノ十萬圓ノモノヲ百萬圓ニ書クト云フコトハソレデハ價額デナクナツテシマウ唯ダ時價ニ超エルコトガ出來ヌト云フダケガ卽チ價額ノ上ニ上ルコトガ出來ヌト云フノデアリマスカラ餘リ十萬圓ノモノヲ一萬圓ニ書クトカ或ハ三萬圓ニ書クトカ云フ所マデ下ゲ得ル方法ハ示シテナイノデアリマスカラ丁度此穗積委員カラ提出ニナリマシタ修正案ト云フモノガ甚ダ此改正案ノ例ノ長谷川君カラ言ハレタヤウナ弊害ヲ救ヒ得ルヤウニ見エルノデゴザイマスカラ是デ何誰モ反對ノナイ筈デアラウト私ハ考ヘルノデゴザイマスカラドウカ此修正案ノ通リニナルヤウニ一ツ願ヒタイト斯ウ云フ考ヘデアリマス
○議長(岡部長職君)
チョット諸君ニ申シマスガ大體諸君ノ修正ニ付テノ唯今議題ニナツテ居ル改正案ニ付テハ最早修正ノ御討議ガ盡キタラウト思ヒマスガ如何デアリマスカ
○二十三番(江木衷君)
段々諸君ノ御議論デ此二十六條ノ修正案ハ一方デハ原案ト稱セラレテ居リマスガ私ハ是ハ修正案ト認メマス此修正案ノ御趣意モ段々分ツテ居リマシテサウシテ唯今長谷川委員カラノ御說明デ益々此點ガ明瞭ニナツテ來マシタ卽チ此改正ヲ要スルト云フ點ハ大審院ニ於テ其價額ヲ安ク見積ツテモ罰セラレタ者ガアルト斯ウ云フヤウナ一體コトガ動機デ或ハ之ヲ改正シナケレバナラヌト云フ解釋側ノ勤機モソコラ等ニ原因シテ居ル如クニ見エル、段々諸君ノ此修正案贊成ノ御方ノ議論ヲ聞キマストソレガ根據ニナツテ居ルヤウニ聞エル、所ガサウデアルト此問題ハ大ニ違ウノデ此商法ノ規定ニ違反シタト言ツテ之ヲ罰スル方ハ罰スルノ條デヤツテ貰ハナケレバナラヌ卽チ此價額ヲ超エルコトヲ卽チ此時價ニ超エタ場合ヲ記載スルト云フ場合デアツタナラバ之ヲ罰シテ宜カラウ況シテ不正ナ目的ヲ以テ時價ニ超エタ價額ヲ財產目録ニ書イテアルナラバズツト重クナツテ宜カラウ或ハ此價額ヲ低ク書イタ場合ニモ會社ノ其會社ヲ自分ガ乘取ルガタメニ安クヤッタト云フ場合ニハ重クヤツテ宜カラウ併シサウデナク詰リ言フト成ルベク安全ニ營業シテ行カウト云フ用心深イ心カラ時價ヨリ安ク書クヤウナ場合デアリマスレバ之ハ打抛ツテ置イテモ宜イ之ハ卽チ制裁ノ附クコトデアリマスカラソレト是トヲ一緒ニシテ大審院ニサウ云フ例ガアツタカラト斯ウ云フコトデアリマスガ、ソレハ大審院ガドウ云フヤウニ事實ノ認定ヲセラレノタカ、法律ヲ大審院ガ間違ヘル譯ガナイ事實ノ認定ガ間違ツタナラバソレハ大審院ノ認定ニ過ギナイノデ其一槪ニ例ヲ採ツテ此法律ノ全般ヲ誤ツ譯ニハ行カヌ、卽チ幾ラデモ價額ニ超ユルコトヲ得ズト云フコトハ低イコトハ宜イト言ツテ處ヲ吐イテモ宜イト云フコトハ自ラ欺クノ甚ダシイモノデ此點ハ須ラク制裁ヲ附スルノ點ニ讓ルベキモノデアツテ其制裁ノ點ニ付テ諸君二十分ノ御研究ヲ願ヘパ宜イノデアル、詰リ現行法ノ通リデ十分デ長谷川委員ノ御說ノ通リデ十分デアラウト思フ、詰リ今ノ制裁ノ場合ハ唯ダ法律ノ規定ヲ要スル財產目録ノ價額ヲ記載セヨト云フコトヲ規定スルト大分違ツテ居ルヤウデアルガサウ云フ御說ガ多イヤウデ、制裁ノ點カラ此ノ如ノ法律ニ規定シヤウト云フコトハ根本的ノ觀念ヲ誤ツテ居ルト考ヘル
○三十六番(横田國臣君)
私ハ唯今マデ唯ダ之ヲ此案ノヤウニセネバナラヌ、惡ルイノハドヴ云フコトカト云フコトヲマア餘程聞キタイノデ自分ニ未ダ說モ何モ出シマセヌ、先日モ自分等ハ此席ニ出テ餘リ饒舌ルダケハ、成ルタケハ饒舌ラヌ積リデアルケレドモト云フヤウナ御話ガゴザイマシタガ是ハ私ハ最モ我輩ノ望ム所ニ背クノデアリマス、吾々ハ其法律學者ノ何カ其コネッタヤウナ理窟ヲ聞キタイコトモ何モナイ、唯ダドウゾシテ實際家ガ商法ノコトデハアルシ、澤山言ツテ貰ヒタイ、今マデ此法典調査會以來此實際家トカ何トカ云フモノ者ヲ皆雜ゼネバ行カヌト言ツテイッモ雜ゼタ、雑ゼタケレドモ其言ハナイコトトシタラ夥シイ、其マア一例ヲチョット擧ゲマスト小中村ヲ文ヲ修正スルタメニア丶云フ人ガナクチヤ行カヌト云フノデ小中村ガ委員ニナツタ、ケレドモ此人ガイッデモ滅多ニ言ツタコトハナイ、タツタ一偏言ツタ、ヤレ贊成セザルヲ得ヌ斯ウ云フ人ヲト云フノデ直グ贊成シタ、所ガ勿卒ニ贊成シタノデ、其小中村ノ言ツタノハマルデ詰ラヌコトデ私ハ實ニ赤面シタ丁度其後モ同ジコトデ、ドウゾ實際ト云フ人ハ其内ノ皆皆デモナイケレドモ實際家ガ皆言ハナイソレハ以テノ外デドウゾ悉ク言ツテ下サイ此方ヂヤト云フコトヲ聞キタイ、吾々ハソンナニ何トカ獨逸ガドウトカシテ居ルカラサウセネバナラヌト云フコトハ聞カヌデモ宜イ又言フ程ノコトデモ何デモナイソレガ學說モ何モアッタモノヂヤナイ學讀ト云フノガモウ既ニ間違ツテ居ル位ニ思ツテ居ル、ソレデスカラ誠ニ實際家カラ言ツテ貰ヒタイ、所ガドウモ此會ニ於テモ實際家ト稱スル御方ハ殆ド皆此通リガ宜イト云フヤウニナル、ソレダカラ吾々ハ餘程之ハ愼マネバナラヌコトデアルト思フノデアリマス、所ガ此實際家ノ言フコトニモ思ヒノ外ニ間違ヒノアルモノデ裁判官ハ常識ガナイトカ何トカ言ヒマスルガ、マア私ハ官奪民卑ノ場合ジヤカラ宜イマア宜イト思フケレドモ官尊民卑ニナル筈ジヤ裁判官ガ一ツ言ツテモ常識ニ外ル丶ト云フ今ノ亠買業社會ヲ調ベテ回ツタナラバ常識ガアルカナイカ私ハ甚ダ怪シムノダ、ケレドモ民卑ダカラ宜イト云フヤウナコトニハナツテ居ラヌガ常識ト云フモノハ皆恐ラクハ餘程外レテ居ルダラウト思フ證據ヲ出セト言ヘバ何程デモ出ス裁判官ガ判決ガ間違ツテハ公ケニナルカラ悪ルウゴザイマセウ、又常識ノナイ者モアリマセウ要スルニ皆豪ライ者デアツテ實際ニ適合スルトハ皆思ハヌケレドモ今日此社會ニ成立ツテ居ル所ノ常識ガ果シテ何處ニアルカ人ノコトダケハ常識ガナイト豪ライヤウニ言フケレドモ常識バ――官尊民卑ハ當リ前ダ(問題外ト呼プ者アリ)先ヅ私ハサウ思フ、ソレデゴザイマスカラシテ必ズシモ一槪ニ私ハ少シ私モ是ハ考ヘテ居ツタカラ言ヒ過ギタカモ知レマセヌ、問題外ナラ問題外デ最早ソレハ置キマス、ソレデ是ニ付テモ考ヘテ見マシタガ私ハモウソレデ最初カラ待ツテ居ルノデゴザイマスカラドウカシテ之ヲ改メタイ、實際家モサウ云フノデアルカラシテ定メテサウデアリハセヌカトマア先刻カラジツトシテ考ヘテ居ル、所ガドウモ私ニハ此缺點ヲ解クコトガドウシテモ出來ヌ其マア重モナル點ハ此時價ト云フモノガ時價ヨリ是デハナクテモ宜イト斯ウ云フノデゴザイマスケレドモ實ハモウ時價ヨリ外ニハ値段ト云フモノハ斯ソナコトハ附ケ衆ネル買フタトキノ値段ト云フナレパソラモウ買フタトキニハ千圓モシタラウガ今ハ惡ルウナツテシマウテ百圓シカナイモノヲ元ノ原價デ附テモ何ニナルカ役ニ立タウ譯ハナイ又將來ニ此値段ハ何程ニナラウト云ツテモ之ハマタドウナルカ分ラヌ百圓ノモノガ一圓ニナルヤラ一向分ラヌソレデアルカラ苟クモ價ヲ附ケル上言ロツタナラバ時價ヨリ外ニ附ケラレル譯ガナイ外ノ價ヲ附ケテ見タマヘ附クカ、ソレデアルカラ價ト言ヘバ時價ヨリナイ、ソレデ私ハ實際ヲ能ク考ヘテ見マスルト此相場ノ立ツモノトソレカラ相場ノ立タヌモノトニ付テハ大變ニ違ヒガアル、ソレデ此一々イヤ或ハ田地トカ或ハ家トカ云フ斯ウ云フモノノ時價ト云フモノハモウ餘程ノ餘裕ノアルモノデソレニ低ク附ケテハ行カヌトカ行クトカ云フコトハナイト思ツテ居ル、例ヘバ近邊ノ田地ノ價ヨリ百圓ヨリ安カラズ五百圓ヨリ高カラズト云フ位ノモノカ知ラヌ其場合ニハ時價ヨリ行カヌト云フケレドモ其時價ナルモノモ分リハシナイ却ツテソレヲ誤ツテ居ルタメニ實際家ト云フモノガ法律ヲ必ラズ正直ニ守リ過ギテ居ルカラシテサウナルカモ知レヌ又原委員ハ此相場ノ今ノ株式ノ騰ガルトキト云フコトヲ仰シヤツタ株式トカ何トカ云フ此相場ノ附クモノハソレハモウ實ニ心易イソレニ直グ據ルカラ、チヤソト每日每日相場附ケニ書イテアルノヲソレヲ如何ニ此時價ヲ書カウトモソレニ瞞マサレルヤウナ者ガアリマセウカ例ヘバ百圓ノモノヲ今ノ五十圓ト書イテ置ク、ドウダ昨日ノ相場附ケヲ見タコトガナイカト直グ言バレルソレヲ何シテ置カナケレバナラヌト云フヤウナ情ケナイ實際家ト云フモノガアラレマスカ、ソレカラ此先又私ハ決シテソレヂヤ悪ルイコト許リカト云フニサウモ思ヒマセヌ、ソラ此民ハ依ラシムベシ知ラシムベカラズト云フ、知ラシムベカラズヂヤカラシテ株主デモ瞞カシテ置クト言ヘパチヨツト惡ルイヤウニモナルケレドモガソレハ極ク豪ライ人デ居ツテヤルナラバ、ソレハ宜イ場合モアラウト思ヒマス、決シテ私ハソレヲ咎メハシナイ、ケレドモガ是ハ到底行ハルベキコトヂヤナカラウト思フ、ソレカラ矢張私ハ株主ノ會社デコソアルカラシテ株主ニ先ヅ知ラシタ方ガ宜カラウ、ソレデ多クハソレハ理窟サヘ附クナラバ言ツテ聞カセ何方ラモ信ジテ斯ウ云フ場合ハソンナ三咼クシタツテ仕方ノアルモノヂヤナイ、ソンナニ御前達ガ配當ヲ澤山望ンダ所ガソレジヤ行カヌ、ソレヲ隱シテ置イテ瞞カシテ置カウト云フコトハ私ハ文明流デアルマイト思フ、ソラ斯ウ云フコトモ決シテ惡ルイトハ申シマセヌ或ル場合ニ於テハ宜イコトガアル、唯ダ茲ニ私ハ其實際ノ權 利ガアリマスル是ニ其チヨツト申上ゲマスガ不當ノ利益計算報吿ヲ爲スヲ防グニ足ルト雖モ一面之ガ爲メニ臨機時價以下ノ價額ヲ附シテ會社財產ノ安固ヲ圖カルノ美風ヲ妨グルノミナラズ段々ト物價ノ騰ツタリ下ツタリスルコトガアルソレデ是カラ來タモノデアラウ、デ或ハ恐ル私ハ今ノ價ヲ附ケルノガ忙ハシイトカ或ハドウデモ直樣時價ヲ勝手次第二書ケバ心易イト云フノガ本トデハナ柔カソレデ僅カニタツタ一度此爲メニ罰金ニ處セラレタト云フ位ノ弊害ヲ以テソレデ之ヲ變ヘルガ宜イト云フノハ餘リ早急過ギル方デハコザイマセヌカ若シ之ヲ今度今ハ宜イヤウニアルケレドモ若シ實際ヤッタナラバ或ハアベコベニ弊害ガ出テ來ヌトモ私ハ限ラレヌ、デ先刻起草委員ヨリ第三者ハ宝ロセヌト言ヒマスガ第三者モ密周スル場〃合モナシトハシマセヌ株式ノ如キハ相場ニモアルノデアリマスカラ直チニ第三者ヲ害スルヤウナ場合モアル間接ニソレデドウモドウ考ヘテ見テモ唯ダ其株式ハ皆其之ハ素人ガ多イカラシテ豪ライ人ガ今ノ取締役ガ何カシテ居レバ其場合ハ私ハ宜カラウヤウニモ私ハナルノデゴザイマス、ソレハ成程實際ハ忙ガシイデアラウト思フ、ソレハ幾分カ附ケレバケレドモ今申上ゲル通リサウ難カシイコトデモナイ、今ノ時價ト言ツテモ果シテ是ガ何程ト云フノヂヤナイソレデ今後時價ト云フモノヲ確カニアル僅カノコトデ罰セラルルト云フヤウナコトハ私ハモウ恐ラクハアリハシマイトマア私アリトスレバ言ツタ所ガ仕方ガナイケレドモガ其位ニ私ハ思フノデゴザイマス、ソレト云フモノハ時價ト云フモノガ唯ダノ當リ前ノモノデ見ルト眞ノコトハ分ラヌ何ヲ時價トスルカ今賣ツテ見ルトスルト買フヤツガ入用ノトキニハ高ク買ウ要リ用デナケレバ安ク買ウ(「御採決ヲ願ヒマス」ト呼ブ者アリ)御採決ドコロヂヤナイ、ドウゾ何ノアル御方ハドウカシテ、、、、、
○二十八番(元田肇君)
私モ發言權ヲ要望シテ居リマス
○三十六番(横田國臣君)
ソレデドウゾ私ハ尙ホ此實際家ヨリシテ斯ウ云フ弊害モアルト云フコトモ聞キタイシモウ私ハ決シテ心中ニ何ハアリマセヌ最初カラシテ其弊害ノ多寡ニ依ツテドウカシヤウト思ツテ居ルノデアリマス
○二十一番(花井卓藏君)
議長
○議長(岡部長職君)
御說ガアレバ私ハイツマデデモ御說ノアルコトヲ希診壬シマス
○二十閏番(花井卓藏君)
質問シテ置キタイ私ハ此案ニ付テノ贊否ノ意見ハ粗々定マツテ居ルノデゴザイマスガ罰則ニ付テ質問ヲシタイト思フ、ソレハ其條文ノ所ニ參リマシテ御尋ネヲ致シテ然ルベキコトデアルノデアリマスケレドモ私ガ本案ノ贊否ヲ決スルニ付テハドウシテモ此前以テ承ツテ置カソケレバ困ルノデアリマスカラ御尋ヲスルノデ此本案ノ罰則ト云フモノニハ案ニゴザイマスル二百六十一條ノ三ノ何號ニ當ルノデスカ(「三號」ト呼ブ者アリ)三號デスカ宜シウゴザイマス三號ニ當ルモノデアルト致シマスルト云フト場合ニ依リマシテハ同一ノ事柄ニ付テ一號ニモニ號ニ孟觸レ得ベキコトガアルト云フコトヲ御認メニナルノデアリマセウカ譬ヘバ貸借對照表ニ本案ニ背キタル行爲ヲ爲シ卽チ書類ニ不正ノ記載ヲ爲シタルトキハ五年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處スル、ソレカラ其不正ノ貸借對照表ヲ總會ニ報吿スル、之ハ第噌號ニ書イテアル總會ニ對シテ不實ノ申述ヲ爲シタノデアルト斯ウ云フコトデ此五年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處スル事實ハ一ツデアリマスケレドモ罰則ノ上ニ見タル犯法行爲ガ二ツニナルノデアリマスカラ矢張併合罪ノ流儀ニ基イテ二ツノ罰則ノ上ニ於テハ問ハナケレバナラヌ趣意ニ立案者ハ見ラレタノデアルカ其邊ヲ承ツテ置カナケレバ贊否ノ決定ガ出來ナイノデアル
○四番(齋藤十一郞君)
會社ノ理事者ガ財產目録ヲ調製致シテソレヲ總會ニ報吿致シマスル場合ハ此第一號ニ當ル趣意デアリマス卽チ一罪ヲ爲ス趣意デアリマス
○二十一番(花井卓藏君)
サウ致シマスルト云フト貸借對照表ガ不正ノ記載ヲセラレタト云フ事柄ガ一ツノ所爲ソレカラソレガ總會ニ報吿セラルムト云フトソレモ一ツノ所爲トナツテ卽チニ罪ニナル御見解ニナル事柄デアルト云フコトヲ斷言ガ出來ルノデアリマスカ場合ニ依ツタラバ三罪ニ爲ルト云フコトモ四罪ニナルト云フコトモ豫想シナケレバナラヌト云フ恐レガナイノデアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
唯今御述ベニナリマシタ事實ニ付キマシテハ第一號ニ當ツテ卽チ一罪シカ構成セヌト云フ考ヘデアリマス
○二十一番(花井卓藏君)
サウ致シマスルト云フト不正ノ記載ヲ爲シタル分ダケハ無責任ニナルノデアリマスカ第三號ニハ「不正ノ記載ヲ爲シタルトキ」ト斯ウアル之ハ貸借對照表ノ本案ノ通リ定メラレテアルニモ拘ラズソレニ反シテ背キタル記載ヲ爲シタルコトニ當ルコトハ疑ヒナイソレダケガ罪トナルソレカラソレヲ本トシテ總會ニ報吿ヲスルト云フコトハ總會ニ向ツテ不實ノ申述ヲ爲スト云フコトニナルカラ別ノモノト見ソケレバナラヌ貴方ノ御說明ハ初メニ二罪ニナルト云フ御說明デアツタガ後ニ私ノ問フガ如キコトハ一罪ニナルト云フ、、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
ソレデ以テ財產目録ガ効力ヲ生ジテ財產目録ノ記載ガ總會ニ報吿セラル丶トキニ其犯罪ガ成立ツ是ガ一罪ニナル、、、、、
○二十[番(花井卓藏君)
サウスルト書イタ許リヂヤ罪ニナラヌノデスカ
○四番(齋藤十一郞君)
財產目録ヲ書クト云フノハドウ云フ場合ヲ、、、、、
○二十一番(花井卓藏君)
本案ニ背キタル制裁ハ第二百六十一條ノ何號ニ當ルノデスカ斯ウ云フ問ニ對シテ御答ガ三號ニ當ルノデアルト斯ウ仰シヤッタ、、、、、
○四番(齋藤十一郞君)
私ノ研究ガ足ラヌカモ知レマセヌガ兎ニ角其財產目録ハ効力ヲ生ズル時期ニ依ツテ極マル問題ト思フノデアリマス内部ニ於テ財產目録ヲ書キマシテモ總會ニ報吿スル時デナケレバ未ダ犯罪トシテ罰スルコトハナイト思ヒマス
○二十一番(花井卓藏君)
サウスルト總會ニ報吿スル場合ノミ本條ノ制裁ガアルノデ其以前ノ行爲ニ付テハ無責任ニナルベキモノデアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
未ダ自分ノ手ノ内ニ於テ作ツテ置クト云フ時代ニハ犯罪ハ成立シマイト思ヒマス
○二十一番(花井卓藏君)
自分ノ手ニ於テデハナイ會社ニ備ヘ附ケタラバドウデアルカ
○三番(富谷鉎太郞君)
色々見解ガ出テ喧マシイ議論ガアルト思ヒマスガ私ノ解釋デハ罪トハナルンデアラウト思ヒマスガ何方ラカ矢張其主罪併合罪ノ方デナクシテ所謂想像的ノナンニハ併合罪ト云フモノニナルノデ一ツハ面割セラレ一ツハ罰セラレヌト云フ結果ニナルト思ヒマスソコデ直接ノ御答トシマシテハ財產目録ヲ不正ニ作ツテ不正ト云フ意味ノ解釋ハ又別ニアリマセウ、不正ト云フコトガ先ヅ極ツテ、デアルナラバ此事項ヲ記載シテソレデ會社ニ備ヘテ置ケバ罰セラルヽコト丶思ヒマス、ソレダケデ而シテ両ホ第=號ノトキニ、今度之ヲ總會ニ提出スルトキニ至ツタト云フノハソレハ作ツタ結果デアルカラ詰リ罰ハ之ヲニ罪ヲ同ジク三千圓又三千圓ト云フヤウニ罰スルモノデハナイト思フ或ハ併合罪ノ罰則ニ依テスルノデハナイ一ツシカ罰セラレソト思ヒマス
○二十一番(花井卓藏君)
分リマセヌケレドモ質問致シマセヌト云フロトダケヲ止メテ置キマス
○二十八番(元田肇君)
私ハサウ云フ一罪ニナルカナラヌカトカ難カシイ尋デハナイノデアリマスガ此修正案ノヤウニナリマシテ百圓ノモノヲ十圓位ニ書出シタトキニハ罰則ノ中ニ何カ當ルノデスカ當ラヌノデスカ
○四番(齋藤十一郞君)
先程カラ其點ニ付テ一應御答ヲシテ置カウト思ツテ居リマシタガ、原委員カラ御話モゴザイマシタカラシテ控イテ居ツタノデス、會社ノ役員ガ所謂會社喰ヒノタメニ會社ノ財產ヲ安ク見積ツテサウシテ財產目録ヲ作ルト云フコトモ此二十六條ノ改正ニ依テ出來ルヂヤナイカト云フヤウナ趣意ノ御議論ガアリマシタ、デ、私共ノ見解ニ依リマスルトサウハナラヌ、百萬圓ノモノヲ其以下ニ價額ヲ附ケルト云フコトハ健全ナル自分ノ考ヘニ依リマシテ商業上相當ト認メタ所ノ價額ヲ附ケル、卽チ營業ノ安固ヲ計ルガタメニ値ヲ下ゲルト云フ場合ニハ不正ノ記載デハアリマセヌノデアリマスガ、會社ヲ、例ヘバ飴細工トカ云フヤウナ御話モゴザイマシタガ、會社ヲ喰フト云フガタメニ惡意デ以テ安ク財產ノ價額ヲ附ケルト云フトキニハ不正ノ記載ヲ爲スト云フコトニ當ルト思ヒマス
○二十八番(元田肇君)
ソレデ斯ウ云フ問題ノ外私共ノ意見ヲ述ベル機會ハアリマセヌノデ先日モ述ベタンデアリマスガ甚ダ曖昧ノコトデ申上ゲテ何方ラニ贊成シテ宜イカ分ラヌ、今日マデ愼ンデ居リマシタガ私ハ是ニ至ツテ何方ラニカ起立スル趣意ヲ申上ゲテ置カウト思ヒマス財產目録ヲ商法デ作ルト云フ規定ガ必要ガアルナラバ相當ナル價額ヲ記載シタル財產目録デナケレバナラヌ其必要ガナイナラバ財產目録ト云フモノハ此規定カラ削ルガ當然デアルト考ヘル此點カラ見マスルト云フト現行法ヲ長谷川サンノ御解釋ニナルヤウニ解釋シテ存シテ置クト云フコトハ誠ニ適當ナル頗ル明白ナルコトデアルト思フノデゴザイマスルガ此商法ヲ行フテ以來無闇ニ價額ヲ超エルソレデ弊ガ大變ニ起ツテ來タト云フコトヲ大藏當局者モ全國ヲ見渡シテサウ看做サレルト云フコトデ勸業銀行ニ御關係ノ委員モ看倣サレテ居ル其他實業方面カラ代表サレタ人ハ極カ主張シテ其主張ヲ實際家ノ意見ヲ容レテ今度ノ修正案ガ出來タト信ズル實際家ノ意見ヲ容レラレタ點ニ付キマシテハ誠ニ多謝スルノデアリマス此席ニ排斥セラルニ委員ガ多イニ拘ラズ洵ニ實際家ノ意見ヲ容レラレタト云フコトハ感謝ニ堪ヘナイノデアリマスガ併シナガラ是又一方ノ極端許リヲ御覽ニナツタデハナカラウカドウモ近來ノ全國ノ會社ヲ見マスルト隨分如何ハシイモノガ多クゴザイマシテ御列席ノ委員諸君ガ常ニ抱カレタル理想通リニ行ツテ居ルト云フコトハ、私共實際家トハ申シマセヌ法律家デモナケレバ書齋家トデモ言ハレタラ宜イカ知ラヌガ何方ニモ附カヌケレドモ左樣ニ看倣サレルノデアリマス併シナガラソレ程マデニ實際家ノ望ム事柄デアリマスカラ今日マデノ經過ハ十中ノ七八マデハ高ク積ッテ財產目録ニ書クト云フ弊ノ方ガ多イト云フコトハ見テ宜カラウ左樣致シマスルト云フト先ヅ修正案ノ如クニシテ但シ穗積サンノ修正案ガ出來テ居リマスガ之ハ實質ニ於テハ是ニ加ハラヌノデスカラ一ツニシテ置キマス、今日實際家ノ極論サレテ居ル所ニ據リマシテ私ハ修正案ノ方ニ贊成シヤウト思フノデゴザイマシテ而シテ獨リ懸念ニ堪ヘナカッタノハ十中ノ三四ニ居ル少數ノ場合デアラウガ併シナガラ今マデ世ノ中ニ現ハレテ居ル會社喰ヒノ利器トナランコトヲ虞レテ質問致シマシタ所ガソレハ罰則ノ上ニ於テ十分其コトガ取締ガ附クト云フコトデ私ハ極メテ之ヲ否決スル以上ハドウカ明カニ大審院デ妙ナ判決例ガアツタトカ會社ガ宜カツタトカ惡ルカツタトカ常識ヲ失ツタ判決ト云フモノハナイト云フコトデアリマスガサウ云フヤウナ判決ガ出テ來ルコトハ將來甚ダ憂ヒマスカラ罰則ノ上ニ於テ隨分分ラヌ判事デモ動キノ附カヌヤウニサウ云フ故意ニ低イ値段ヲ附ケタトキニハ取締ノ附ク場合ヲ豫期シテ修正案ヲ贊成シマス
○十番(梅謙次郞君)
唯今元田君ノ御質問ニ對シテ齋藤君ノ御答ヘニナリマシタノハ齋藤君ノ御意見トシテハ承リマスケレドモ此案ノ相當ナル解釋トシテハ私ハ請取ルコトハ出來ナイ、苟クモ法律ガ高キニ積ルコトハナラヌゾ安ク見積ルコトハ差支ナイゾト云フコトニナツテ居ルトキニハ安ク見積ッタノヲソレヲ不正ノ記載トシテ罰スルコトハ斷ジテ出來ヌト考ヘマスカラソレダケヲ、、、、、、、
○七番(阿部泰藏君)
私ハ前回ニハ病氣デ出席致シマセヌ、ドウ云フ御論ガアリマシタカ其邊ハ存ジマセヌガ此修正案ガ若シ成立タヌト云フコトハ甚ダ殘念ナコトト思ヒマスカラ=言述ベタイト思ヒマス、詰リ色々御議論ガゴザイマセウ委シイコトヲ申スニモ及ビマセヌガ詰リ此今マデノ法律ハ甚ダ不分明デアル或ハ其時ノ相場通リデナクチヤイカヌト云フ解釋モアル或ハ安イ方ハ構ハヌト云フ解釋モアル甚ダ不分明デアリマスノデ吾々ハ大ニ困ツテ居リマシタ、ソレヲ明カニスルコトガ一ツト第二ニハ其時ノ價ト云フモノガ自然ニ其モノ自然ノ價ナレパ宜シイノデアリマス此株式熱ナドノ盛ンナ時或ハ或ル品物ヲ買占メルトカ云フヤウナ時分ニハ一時其眞ノ價デナイ非常ナ高イ價ニナルコトガマア十年ニ一度位ハ今日マデ必ズアル其五十圓外價ノナイモノガ一時ノ熱ノタメニ或ハ一時投機商ノ買占ノタメニ忽チ二百圓ニナリ二百圓ニナル來年ニナレバ又元ノ五十圓ニ戻ルト云フコトハ殆ド分ツテ居ルヤウナコトガ瘻々アルサウ云フ時デモ此現行商法ヲ窮屈ニ解釋シテ必ズ十二月三十一日ナラ三十一日ノ相場ニシナクチヤナラヌト云フ斯ウ云フヤウナコトニナリマスルト非常ナ不都合ガ生ジテ來ル今年二百萬圓ト積ツタモノガ虛心平氣ニ考ヘテ見ルト來年ハ百萬圓一一減ルソダ必ズ下ゲルト云フコトガ分ツテモ此舊商法ヲ極ク窮屈ニ解釋スレバ來年ハ百萬圓ニ下ガルト思ヒナガラ二百萬圓ニシナクチヤナラヌ、其二百萬圓ニシタダケデ濟ンデ居レバ宜イガ之ハ又ナカナカ株主ノ中ニモ成ルタケ利益配當ヲ餘計取リタイ或ハ何トカシテ配當ヲ餘計ニシテモツト株ヲ騰ゲテ賣ッテ逃ゲタイト云フヤウナ者ハドウモアリ易イノデアリマス、此物ノ價ト云フモノガ自然ノ價ヲ始終保ツテ居ッテ格別ノ變動ガケナレバ宜シウゴザイマスガ最モ困ルノハ殆ド人爲的ニ非常ニ値ヲ上ゲルト云フコトガアル、サウ云フ時分ニ此人爲的ノ相場ニ依ツテ財產目録ヲ拵ヘテサウシテ表面現ハレテ來タ利益ヲ配當スルト云フヤウナコトハ實ニ經濟界ヲ攪亂スル非常ナ不都合ナコトデアリマスカラ是非共此相當ノ價デ幾分カ内輪ニ見積ツテ置クト云フコトニシタイト思ヒマス或ハ其百萬圓ノモノヲ一百圓ニ積ルトカ云フヤウナコトモ極端ニ言ヘパ現ハレルヤウナ譯デアリマスケレドモ實際サウ云フ風ノコトニハ事實ナイト申シテ宜シイ高ク積ルト云フ弊害ハ幾ラモアリマスガ安ク積ルト云フ弊害ハ殆ドナイノデアリマスソレヲサウ懸念スルニハ及ブマイト思ヒマス是非共此修正案ノ成立致スヤウニ希望致シマス
○十八番(石渡敏一君)
私ハ前回ニモチョット述ベマシタ通リ價額ヲ上セテ帳簿ニ附ケルト云フコトハ宜シクナイ、此事ニ付キマシテハ岡野君ノ說明如何ニモ私ハ尤モダト感服シマス他ノ實際家ノ說ヲ承ツテ見テモ御尤モダト思フ、唯ダ此前モ斯ウヤツテ岐レタノデスケレドモ其梅君其他ノ方ノ御說モ御尤ノ所ガアルト思フノハ極メテ安ク價額ヲ附ケテ會社ヲ乘取ルトカ或ハ賣飛バストカ云フヤウナ策ニ供スル場合ノコトガナイ上云フコトハ如何ニモ宜シクナイト云フ考ヘヲ持ツテ居ル、私ハ裁剣所ノ古ルイ例デアリマスケレドモ又今保險會社ニ其例ガ大阪ニアッタノデ其例ハ折々アツテ會社ノ株劵ヲ下ゲソレカラ後ニ自分ノ勝手ニシヤウ杢云フコトハ世ノ中ニ隨分例ノアルコトデアリマスカラ私ハ財產目録ニ會社ノ財產ヲ非常ニ不相當ニ價額ヲ下ノ方、、一附ケルト云フコトハ宜シクナイ、斯ウ考ヘテ居ルノデゴザイマス、ソレニ付テ先程カラ梅君カラモチョット述ベラレマシタガ、ソレヲ防グニハ訴ヘテモ構ハヌヂヤナイカ知ラヌケレドモソレヲ訴ヘル材料ガアルマイドウモ會社ノ總會ニ於テ極ツタト云フ以上ハ之ヲ訴ヘル材料ニハナリマスマイ、又長谷川君カラ此ナカナカ巧妙ノ解釋ガ出テ來テ、目録調製ノ價額ハ舊商法デ差支ナカラウ、價額ト云フ以上ハソンナ不相當ナモノハ出テ來ヌト云フコトデアルガ、併シナガラ財產目録調製ノトキニ於ケルト云フ文字ヲ頭ニ冠ツテ居ル以上ハ少シ解釋ガ外レテハ居ナイカ起草委員ノ讀ヲ承ツテ見ルト長谷川君ノ解釋通リニハ行カナイト思ヒマス、ソレデ案ハ持チマセヌ案ハ持チマセヌガ、大體ノ意見ニ於テハ先程一木君ノ述ベラレタ其財產ノ價額ハ時價ニ超エルコトヲ得ズト云フ上ノ方ニ制限ヲ置キ下ノ方ニモ制限ヲ置カウ、併シナガラ三分ノ二デ宜イカドウカバ私ハ實際家デナイカラ分ラヌ、恐ラクハ一木君ノ三分ノ二ト云フモノハ必ズ確定議デハナカラウト思ヒマス、是ハ御相談ヲスル餘裕ヲ附ケル、卽チ梅君アタリノ御說ハ御尤モデアリマスガ鯨リ}二ツノ價シカナイト云フコトハドウモ實際ニ穩カナラヌ結果ヲ生ズルソレカラ餘リニ起草委員アタリノ言フ如クニ其價ト云フモノハ時價カラシテ一錢一厘增シテモナラヌト云フコトニナルノハドウモ宜シクナイ結果ヲ生ジハシナイカ寧ロ其中間ノ所ニハ何カ相當ノ所ガアルデアラウ私ハ諸君ニ御相談ヲシタイト云フノハ三分ノ二ト云フコトデナク精神デ行ツタナラバ不相當ナル價額不相當ナル價額ト云フノハ實際ノ値ト云フコトデナイノデ不相當ノ價額ヲ記載スルコトハ出來ヌト云フ意味ダケニ置クコトハ如何デゴザイマセウカ其先ハ吾々ヨリ起草委員ノ方ガ委シカラウト思ヒマスカラ其起草委員ニ御任セシタナラバドウデアラウカト思ヒマス
○五番(一木喜德郞君)
唯今十八番カラ御相談ガゴザイマシタ、私モ固ヨリ三分ノ二ガ必ズ適當デアルト云フ考ヘデハアリマセヌ固ヨリ確カナ考ヘハナイ、唯ダ上ト下ニ大抵ノ大體ノ制限ヲ附ケテ置イタ方ガ宜カラウト思ヒマスノデ、例トシテ申述ベタノデアリマスカラ幸ヒニ御贊成ガアリマスレバ其程度ノ定メ方ニ付テハ出來得ベクンパ起草委員ニ於テ一應御考慮ヲ煩ハシタイト考ヘマス全ク十八番ト同感デアリマス
○三十六番(横田國臣君)
今私モ幾分其五番ノ意ヲ何スルノデスガソレニ付テ七番ニ一ツ御尋シタイノデスガ七番ハ實際ハ御委シイモノデアル此俄カニサウ云フ株ガ隲ツタヤウナ場合ハマア無論アリマス、ソレハマア私共ノ考ヘデハドウ書イテ出シテモ株主モ知ツテ居ルダラウト思フ併シ唯ダ其御尋シタイノハ株トカ何トカ相場ノ立ツモノ許リデスカ又外ニモソンナ不時ナサウ倍ニモニ倍ニモナルヤウナモノガアリマスルカ、株ノ如キモノバカリデスカ其外ノモノヲ御示シヲ願ヒタイソレニ依テ其時價ニ超エテ大變ナ高隲リヲスルヤウナモノダケニ付テ五番ニ贊成シタイノデ、モウ當リ前ノモノナレバマア此コトハ作ル者ノ心持デ高カウモ作リ得ラレ丶バ低クモ作ラレルケレドモガ餘リソレガ百圓ノモノヲ二百圓ニシタリ又百圓ノモノヲ十圓ニシタ場合ガ今ノソレハモウ無論今日ナラバ罰シテ宜イト思フ、ソレデ御尋ネスルノハ唯ダ株式ノミデゴザイマセウカ、最モ外ノモノモ大變騰ガルコトモアリマスケレドモ先ヅドノ位ノ區域カ七番ニ御尋シマス
○七番(阿部泰藏君)
ソレヲドウモ一々御答申スト云フコトモ甚ダ難カシイコトデアリマスガ高低ノ最モ甚ダシイノハ有價證劵デアラウト思ヒマス、譬ヘバ地面ノ如キモノモ例ヘバ此所ラガ開港場ニナルトカ或ハ停車場ガ出來ルトカ云フヤウナコトガアレパ大變ニ騰ガル、是ガ出來ナケレバ又下ゲルト云フヤウナコトデ例ヘバ戰爭ノトキニ今マデハ仕方ガナイヤウナ船デモ戰爭ノ時分ナドニハ大變ニ縢ツタト云フヤウナ例モ幾ラモアルヤウナモノデ船ナドノコトハ或ハ船ノ專門ノ御方ガアツテ私ヨリモツト委シカラウト思ヒマスガ不斷デハ仕方ガナイヤウナ船デモ例ヘバ日露戰爭ノ如キ運輸ノ非常ニ忙シイトキニハ俄カニ價ガ昂ルト云フヤウナモノモチヨツト考ベタ所デアルノデアリマス必ズシモ其有價證劵有價證劵トハ申上ゲマスガ併シ一々例ヲ擧ゲテ皆申上ゲル譯ニモ行キマセヌケレドモ色々ナ數ガアルダラウト思ヒマス、併シ一種ノ事情ガアツテ其事情ノ續カヌト云フコトハ必ズシモ其船ダトカ地所ダトカ云フヤウナモノバカリデナカラウト思ヒマス
○三十六番(横田國臣君)
今ノソレデ此相場ノ立ツモノナレバ是ハモウ判然分カル、分ルカラ株主モ皆知ツテシマウ、ソレデスカラドウ書イテモソンナコトハ若シ配當デモ得ヤウト思ツテ喧マシケレパ同ジコトノヤウニ思ヒマスガ併シナガラソレモ防グト云フコトナレバ宜シウゴザイマスガ今ノ戰爭ノトキノ船トカ何々トカ云フモノモ是ハ其餘程私ハ今ノ時價ン稽 リガ出來ルダラウト思フ、高イノハ此位ダケレドモガ模樣ニ依テハ此位ニ外賣レナイト云フ、サウ云フ騰ツタ折碁ハ法ヲ以テ時價トシテ決シテ私ハ惡クハナイ又下ツタ折ニハソレモ出來ル下ツテアレバ上ニ超スコトハ出來ヌト云フケレドモソレハ越サネバ眞ソノコトハ行カナイ、唯ダ無算子ニ致サレテコソ行カヌケレドモ今ハ下ツテ半分ニナツタ、會社ノ財產ハ半分ニナツタト云フヤウナ場合ニ是モ實ハ敝辯霊ロガアルノデス其點カラ言ヘバ決シテ弊害ハナイデハナイケレドモソレヲ又何處マデモ構ハヌヤウセラレルト云フデハ行カヌカラシテ最上點ハナソシタンデアラウ、ソレデ私ハ有價證劵ノ如キ現工何圓何十錢ト云フヤウナモノデナイノハ取除ケテ跡ハ是非ニ御望ミトアルナラバ御覽ノ通リ相場ノ立ツモノニ付テハ私ハサウシタイト思ヒマス
○二十三番(江木衷君)
誠ニ此實際上ニ於テ大事ナ條デアラウト思ヒマスナカナカ決議ガサレナイト思フ其第七條ノコト昂付キマシテモ此前通過ジマシタガ考ヘテ見ルト世ノ中ニ實際合ハヌコトガアリマスガ通過シタモノデアルカラ仕方ガナイ、唯今議題ニナツテ居ル所ノ二十六條ノ改正案デゴザイマスガ之ハ私ハ五番ノ說ハ理由ガ含ンデ居ルト思フソレカラ七番ノ說ニナルト是ハ修正案ノ通リデモ行カヌヤウナコトニナルノデスナ其會社ガ何マデハ宜イ時價マデハ宜イト云フノデゴザイマスカラ時價マデ行ツテモ工合ノ惡ルイコトガアルカラシテ詰リ言ヒマスト此點ハ制裁ノ點ニモ矢張關係シテ來ハセヌカ、制裁ノ所ニ於テ後ニハ議論ガ起ツテ來ヤウト考ヘマスガ詰リ言ヒマスト何レ程ノ價額ヲ附ケタラ宜イカト云フコトガ問題デ是ハ昔カラ法律上議論ノアルコトデアリマス、斯ウ云フ場合ニハ相當ノ値段ヲ附ケルト云フコトヨリ法律デハ書キヤウガナイ是カラ上ハ裁判官ノ見込デ裁判官ニ任スヨリ外ニハ孰レノ國ノ法律デモ書キヤウハナイト思ヒマス五番ノ言フ通リ三分ノ一トカニトカ云フコトハ少シ拵ヘ過ギルト思ヒマスノデドウモ活字ニ現ハスコトハ出來ナイカラ法律ノ上デハ所謂相當ト云フ文字ヲ使ウヨリ外ニ仕方ガナイ、サウスルト起草委員ノ方ニ御相談デアリマスガ幸ヒ穗積委員カラ御提出ノ案ニモナツテ居リマス此穗積委員ノ御案ニモ或ル點ニハ誠ニ穩カナ意味ガ含マレテ居ル卽チ財產ニ價額ヲ附シテ之ヲ記載スルコトヲ要スト云フノハ詰リ相當ノ財產ノ價額ト云フコトデアラウト思フカラ、此財產ニハ相當ノ價〃額ヲ附ケロ、併シ幾ラ相當ト云フタ所デ價鮒韻ニ超エルコトハ出來ナイト斯ウ云フコトナラバ吾々ノ主義トモ牴觸シナイヤウニ行クダラウト思ブサウシテ跡ハ何ノ問題ニナルカト云フト相當ノ價額ハドウダト云フ問題ニナルト是ハ實際上ニ至テ最モ委ハシイ刑法上ノ制裁ガナイト容易ニ是ガ實行サレヌ問題ニナルト思ヒマスガ此制裁ノ場合ト一括シテ御議題ニナッテサウシテ此穗稽一委員ノ御說ノ如ク是ニ「相當ノ價一額」ト云フ文字ヲ加ヘテソレデ制晶裁ノ分ト併セテ御議題ニナルト或ハ起草委員ノ御レ趣意モ通リ吾々モ滿足シテ修正案ニ御贊成シテ社會ノタメニ安全デアルト云フコトニ考ヘマスガマア御贊成ガアルカナイカ知ラヌケレドモ一量目致シテ置キマス
○二番(岡野敬次郞君)
極ク簡單ニチヨツト一言致シタイ、先程一木君カラ出シマシタ上ノ方ノ制限下ノ方ノ制限之ハドウモ實際トドウモ適當シナイヤウニ思フ而シテ其實際ニ適當シナイナラバ幾ラ低クテモ差支ナイト云フコトハ之ハ其二十六條ノ第二項ヲ文字ノ通リニ讀メバサウデアル併シナガラ先刻來度々申シマシタ通リ一個ノ商人ガ財產目録ヲ作ル場合ニハ左程他ニ影響スルコトハナイ株式會社ハ百九十二條ノ二ガアリマスガ此二十六條ニ相當シテ來ル場合ハ他ノ金雪肛デアル合名會社トカ合資金口社トカ云フ場合デアル勿論一個ノ商人デモ適用ガアリマスガ實用ノ上ニハ會社デアリマス、其會社ニ就テ之ヲ考ヘテ見マスレバ社員ガ皆社員タルノ權利ヲ持ツテ居ルノデアルカラ、サウ無闇ニ非常ニ値段ヲ下ゲテシマツテサウシテ利益トシテ有スベキモノヲ自ラ減ラシテ配當スベキモノガ殆ドナクナツテシマウト云フコトハ蓋シ社員ノ承知シナイコトデアラウ必ズ合名會社ニアツテハ社員ハ全員ノ詰リ取扱ヒヲ有スルモノデアリマスカラ自然ノ制限ハソコニ在ルノデアツテ殊更ニ法律ガ五分ノ二デアルトカ三分ノ二デアルトカ云フヤウナ制限ヲ設ケナイデモ宜シカラウト思ヒマス又ソンナ制限ヲ設クルト矢張價額ノ變動ノ甚ダシキモノニ付テハ場合ニ依テハ適切ニナラヌト云フヤウナコトガアル、ソレ等ハ自然ニ理事者竝ニ社員權ヲ持ツテ居ル者ノ見ル所ニ任セル方ガ私ハ實際ニ適當デアラウト考ヘルノデアリマス、併シナガラ石渡委員カラ一木君ノ修正ノ」趣意ヲ贊成シテ起草委員ニ預ケルト云フヤウナ御意見デアリマシタガ甚ダ迷惑ヲ致シマス、何トモ書キヤウガナイト思ヒマス唯ダ下ラナイコトヲ相當ノ範圍ニ於テ價額ヲ附セト云フコトハドウモ私一個ノ考ヘデゴザイマスガ書キヤウガナイカラ若シサウ云フ制限ヲ附スルコトガ或ハ五分ノ一デアルトカ三分ノ二デアルトカ制限ヲ附スルコトハ或ハ人爲的デ面白グナイカラ何トカスルトカ云フヤウナコトデアレバ私ハ誠ニソレヲ贊成シ蕪ネルノデアリマスケレドモ何トカ決議ヲシテ戴カヌト云フト何トモ其執筆ノシヤウガナイト思ヒマス御預ケニナルコトハ甚ダ迷惑ニ存ズルノデアリマス
○議長(岡部長職君)
討議ガ盡キタト思ヒマス是カラ採決ヲ致シマス蝋休決ノ方法ニ付テ{豫メ能ク御打合セヲシテ置カウト思ヒマス、前回ニモ採決ノコトニ付テ委員中カラ御希望モアリマシタ兎ニ角滿場諸君ニ一番分リ宜イ方法ニ依テ採決スルガ宜カラウ、唯今私ノ考ヘルコトヲ申シマス先ヅ主査委員カラシテ提出シタ所ノ卽ち原案之ヲ大體ニ於テ採ルベキヤ否ヤト云フコトヲ採決ヲ致シテ之ニ絕對反對デアルナラバ之ハ削除セラルル之ガ削除セラルレバ卽チ現行法ガ其儘存スルト云フ意味ニナルソレカラ大體ニ於テ之ハ採ルベシト云フコトニナレバ其内容ニ付テハ穗積委員カラノ提出案モアリ又先刻五番カラノ價額ノ最下限ニ付テノ說モアル卽チ十八番ノ贊成モアルト云フコトニナリマスカラ、ソレニ付テ順ヲ追ツテ採決シタラバ宜カラウト思フ、マア第一ニ主査委員會カラ出シタ所ノ第二十六條第二項ヲ左ノ如ク改ム之ヲ大體ニ於テ探ルヤ否ヤ其内容ニ付テハ之ヲ採ツタト云フコトニナツタナラバ尙ホソコデ更ニ採決スル斯ウ云フコトニ致シタラバ如何デ、、、、、
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○五番(一木喜德郞君)
チヨツト、私ノ修正意見ガ未ダ固ツテ居リマセヌカラ
○議長(岡部長職君)
モウ大體分ツテ居リマセウト思ヒマス
○五番(一木喜德郞君)
文章ニ直シテ採決シタイト思ヒマス若シ採決ノ場合ニナリマスレバチヨツト御注意ヲ願ツテ置キタイ
○議長(岡部長職君)
宜シイ然ラバ原案ノ卽チ主査委員カラ出シタ所ノ此條ニ付テ採決致シマス此條ヲ大體ニ於テ採ルベシト云フ諸君ハ御手ヲ擧ゲテ下サイ
擧手者多數
○議長(岡部長職君)
多數デアリマス大體ニ於テ可決ヲ致シマシタ、ソコデ修正讀ガ二ツ出テ居リマス一ツハ穗積君ノ前回ニ於テ提出セラレタル案又五番ニ於テ提出サレタノデアリマスガ五番ハ條文トシテ修正說ヲ出シタイト云フコトデアリマスカラ修正案ヲ
○五番(一木喜德郞君)
文字ハ未ダ練レテ居リマセヌケレドモ大體斯ウ云フコトニシタラバドウデアルカ穗積委員ノ修正案ヲ拜借致シマシテ「財產目録ニハ動產、不動產債權其他ノ財產ニ財產目録調製ノ時ニ於ケル價額ニ超エサル範圍ニ於テ相當ノ價額ヲ附シテ之ヲ記載スルコトヲ要ス」ト斯ウ云フヤウナ意味ニ先刻二十三番ノ御讀ト詰リ同ジニナリマス
○議長(岡部長職君)
十八番ハソレニ贊成デスカ
○十八番(石渡敏一君)
贊成デス
○十五番(穗積八束君)
實ハ本案ノ最初カラ一度チョット御妨ゲニナラヌトキニ伺ツテ見タイト思ツテ居ツタノデゴザイマシテー
○議長(岡部長職君)
チヨツト討論ハ終結シテ居リマスカラ條文ニ付テノ質問トシテ、、、、、
○十五番(穗積八束君)
一木サンノ案ニ付テ質問シタイ併シ一木サンノ案ヲ見テ思ヒ出シタノデハナイ私此法律ノ精神カラ最初ニ現行商法ニ價額ノ字ガ木扁ニ書イテアルノガ今度價額ノ字ガ變ツタノガドウ云フ譯カソレハ能ク覺ヘテ居リマセヌガドウ云フ譯カト思ツテ居リマシタガソレニ付テ其價額ト云フコトノ私ハ意味ガ分ラナクナツタノデアリマシテ價額ト云フモノハ動產不動產ノ價額ト云フモノハ幾ツモアラウガ、併シソレハ時ヲ異ニシテ幾ツモアルノデアツテ同時ニハ價額ト云フモノハ一ツシカナイモノデ斯ク思ツテ讀ンデ居ツタノデアリマスソレデ其財產ニハ金額ノ見積リヲ附ケネバナラヌ併シナガラ其金額ノ見積リハ其財產目録ノトキニ於ケル價額ニ超エテハナラヌト斯ウ云フヤウナ意味ニ此原案ヲ私ハ讀ンデ居ルノデアリマス、今ノ相當ノ價額ト云フノデゴザイマスガ此相當ノ價額ト云フモノハドウ云フ意味ダラウカ相當ノ價額ト云フコトノ意味サヘ能ク激ヘテ下サレバ安心スルノデ
○五番(一木喜德郞君)
相當ノ價額ト申シマスルノハ之ヲ說明スルノハ甚ダ難シイノデ不相當ニナラザル價額、時價モ相當ノ價額デアリマセウソレカラ又併シ時價ニ合ハナクテモ是位ガ確實ノ價デアルト云フ價ヲ書イタモノハ不相當ノ價トハ言ハレナイ、相當ノ價ヲ得タモノデ唯ダ一萬圓ノ價額ノモノヲ百圓ト書クト云フコトハ常識デ判斷シテ相當デアルトハ見エナイ相當デアルヤ否ヤト云フコトハ常識デ剣斷スルヨリ外ハナイダラウト思フ若シ精確ニ書カフトスルト三分ノ二トカ或ハ五分ノ四トカ云フコトニシナケレパナラヌノデアルガ之ハ餘リニ細工過ギルト云フ御非難ガアラウト云フコトハ初メカラ覺悟シテ居ツタノデ先刻二十三番カラノ御注意ニ依テ改メテ案トシテ提出シタノデアリマス
○十番(梅謙次郞君)
私ハ意見ヲ言フデハナイガ穗積君ノ修正案ニ斯クナル上ハ私ハ同意シタイノデアリマスガ此文字ノコトデアリマスガ此文章デハ但ト云フノガ何ダカ蛇足ノヤウニ思フ其他ノ財產ニ價額ヲ附シテ記載スルコトヲ要ス其價額ハト云フ方ガアツサリシテ宜イト思ヒマス固ヨリ意味ノ變ハルコトデナイカラ若シ穗積君ガ御贊成下サレバ其形ヲ以テ贊成シタイト思ヒマス私ハ豫メ斷言シテ置キマス此價額ト云フノハ無論時價ト云フコトニナリマスカラソレデ此方ガ修正原案ヨリハ確カニ宜イト考ヘマスカラ
○三十四番(穗積陳重君)
但ト云フノガアリマスガ前回ニ岡野君カラ御注意ヲ蒙ツタヤウナ――尙ホ其價額ヲ記載スト致シマス
○議長(岡部長職君)
但ハ省ク、、、、、
○二十三番(江木衷君)
五番ハ御一諸ニナツタラドウデス矢張相當シカ取レナインダカラ
○五番(一木喜德郞君)
私ガ修正案ヲ出シテ既ニ贊成ガアツタカラ取消ス譯ニハ行カヌカラ少數ト云フコトハ分ツテ居リマスガマア御採決ヲ願ヒマセウ
○十番(梅謙次郞君)
其他ノ財產ニ相當ノ價額ヲ附シテ之ヲ記載スルコトヲ要ストシテ但ヲ削ツテシマウ
○二十三番(江木衷君)
私ハ最モ贊成ナソデスケレドモ、、、、、
○十五番(穗積八束君)
私ハ議論ジヤナイガ文字ノ意味ガ分ラヌ相當ノ價額ト云フノハ鄙チ時價ノコトヂヤアリマセヌカ
○十番(梅謙次郞君)
私共ハサウ解スル
○議長(岡部長職君)
チョット今條文ヲ書カシテ居マス
○五番(一木喜德郞君)
モウ一應十八番ニ御相談シマスガ今ノハ文章ガ管々シイヤウデスカラ此穗積委員ノ修正案ニ他ノ財產ニ相當ノ價額ヲ附シテト茲ニ書イテ置イテサウシテ但書ハ消シテ置イテ其儘ニシテハドウデスカ
○十八番(石渡敏一君)
ソレデモ宜イ
○十番(梅謙次郞君)
ソレダト但ト云フ字ガナイト困ル
○十八番(石渡敏一君)
私ハ今ノ一木君ノ言ハル丶通リデ穩カニナルダロウト思フ他ノ財產ニ相當ノ價額ヲ附シテ記載スルコトヲ要ス其中ニハ財產目録ノ調製ノトキニ於ケル價額ヲ超エルコトヲ得ズト
○五番(一木喜德郞君)
但ト云フ字ガアツタ方ガ宜イソレデハ私ハサウ云フコトニ修正シマス財產目録ニハ動產不動產債權其他ノ財產ニ相當ノ價額ヲ附シテ之ヲ記載スルコトヲ要ス但シ其價額ハ云々下ハ同ジデ唯ダ相當ト云フノガ加ハルダケデ
○二十番(小山溫君)
私一ツ修正說穗積サンニ御相談スルコトガアリマス此價額ト云フノガ豪ライ澤山アリマスガ儉約ヲナサラナケレバ行ケマセヌ記載スルコトヲ要ス但シ財產目録調製ノトキニ於ケル價額ニ超エルコトヲ得ズデハ行ケマセヌカ
○十番(梅謙次郞君)
主格ガナイカライケナイ
○三十四番(穗積陳重君)
此文章ハ甚ダ苦シミマシテ内々起草委員ノ一人ニモ御相談シテ見タ譯デゴザイマスサウ斯ウ考ヘテ見マシタガ但シ財產其他ニ當ラヌヤウデアリマシテ決シテ明文トモ思ヒマセヌガ此三字ヲ省クコトハチヨツト御同意致シ兼ネマス
○議長(岡部長職君)
諸君ニ御尋ネシマスガチヨツト諸君ニ御尋ネシマスガ五番ノ修正說ハ今一應朗讀シマセヌデモ皆御了解ニナツテ居リマスカ
○二十五番(磯部四郞君)
相當ノ價額ト云フ文字ガアツテ尙ホ下ニハ是々ノ價額ニハ超エルコトヲ得ズト云フノハ如何ニモ變デスカラ矢張修正案ノ通リニシテ但其價額ハ財產目録調製ノトキニ於ケル價額ト云フノハ此價額ト云フ字ヲ木扁ノ價格ニシタ方ガ客扁價額ト變ラナクナツテサウナラソレデ螽唄メルノデスガ前ニ相當ノ價額トアツテソレカラ跡ニ又調製ノトキニ於ケル價額ニ超エルコトヲ得ズト云フノハ甚ダ妙ナモノニナリマスカラ寧ロ相當價額ト云フ文字ヲ作ラレルナラバ但書以下ヲ削除セラル丶ガ宜シ兩方ト云フナラバ今ノ相當ト云フノヲ廢シタ方ガ宜イト思ヒマスカラ僅カ一字カニ字ノ所デ立ツコトノ出來ナイト云フノハ甚ダ殘念ニ考ヘマスカラ
○三十六番(横田國臣君)
最早是ハ其私ハ殆ド趣意デ決シタト思フノデ今ノ五番ノ御說モアリ何モアッタケレドモ私ハ是デ第二案トシテ結好ト見テ之ニ贊成シマス
○議長(岡部長職君)
五番、變ヘマセヌカ
○五番(一木喜德郞君)
モウ贊成モアリマスカラ
○一番(富井政章君)
其修正案ハ前回ニモ亦タ今日モ提出者ガ御述ベニナリマシタ通リ原案ト趣意ヲ異ニスルト云フ趣意デナイト云フ御說明デアリマスカラ強イテ爭フ必要ハナイト思フノデアリマスガ私ハ何方カト言ヘバ原案ノ方ガ宜イト思フノデアル其理由ハ先刻チョット小穗積君カラ述ベラレマシタ通リ價額ニ二ツハナイ價額ト云フノニハ二ツハナイ、ソレデ此上ノ價額ト云フノハドウ云フ價額デアルカドウシテモ私ニハ分ラヌ財產目録調製ノトキニ於ケル價額ニ超エルコトヲ得ズ其價額ヲ超エナイ價額ト云フモノハ一ツシカ見テ居ナイ價額ト云フノハ一ツシカナイノデアルソレデ私ハ唯ダソレダケノ理由デ原案ノ方ガ宜イト思フ價額ニハ二ツハナイ
○十番(梅謙次郞君)
原案ニモ二ツアル
○三十四番(穗積陳重君)
原案ニ據レバ價額ハ幾ツモアルヤウニモ考ヘマスガ現ニ此價額ハ一ツ外ナイト云フ御議論ヲ御採リニナルト時價論ヲ御贊成ニナルヤウニ思ヒマスガ如何デアリマスカ
○一番(富井政章君)
原案ノハ其文字カラ言ヘバ二ツアルヤウニナリマスガ實際ニ據レバ二ツハナイ文字ノ上ニアルダケノコトデ
○三十四番(穗積陳重君)
富井サンノ御考ヘモ是ト近イト云フノハ原案ニ依レバ價額ト云フモノヽ範圍ハ色々アルデセウ、附スル價額ハ一ツト云フコトデセウ、價額上言ヘバタツタ一ツダト言ヘバソレハ時價ニ嚴正ナル時價モアリ範圍ニ於テ例ヘバ一萬圓曩キニモ極端論ガ出マシタガ百圓ノモノヲ一千圓ニ書クトカ何トカ云フノデアツテ價額デハアルマイト思フ、相當ノ範圍内ニ於テハ勿論價額ハアルノデ附スルノハ一ツデアルト私ハ承知シテ居リマス
○議長(岡部長職君)
サウスルト順序ハ五番ノ修正案ニ付テ採決ヲ致シテ若シソレガ成立チマセヌカツタナラバ三十四番ノ說ソレガ成立タナケレバ原案ニ付テ決ヲ採リマス、五番ノ修正說ニ同意ノ諸君ハ手ヲ 擧ゲヲ、、、、、
擧手者少數
○議長(岡部長職君)
少數、三十四番ノ說ニ同意ノ方ハ手ヲ擧ゲテ擧手者
(「多數」又ハ「少數」ト呼ブ老アリ)
○議長(岡部長職君)
ソンナラバチヨツト反對ノ方ヲ採リマスガ反對ノ方手ヲ擧ゲテ、、、、、
擧手者少數
○議長(岡部長職君)
然ラバ三十四番ノ說ガ成立チマシタ、次ニ三十條ノ二ニ移リマス
書記朗讀
○四番(齋藤十一郞君)
極ク簡單ニ趣意ヲ說明致シマス、現行法デ御覽ニナリマスル通リニ、支配人ノ權限ハ誠ニ廣クアリマシテ而カモ其代理權ニ加ヘタ制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズト、斯樣ナ規定ガアルノデ、ソレデ實際ニ於キマシテ往々支配人ノ代理權ニ制限ヲ加ヘ其制限ノ登記ヲ致シテサウシテ第三者ニ對抗ノ出來ル制度ニシテ貰ヒタイト云フ意見ガ出テ居ルノデアリマス、此代理權ノ制限ノナイコトハ獨リ支配人許リデハゴザイマセヌ、會社ノ業務執行社員、ソレカラ就中株式會社ノ取締役、ソレカラ各會社ノ精算人等ニ付テ孰レモ代理權ノ制限ノコトヲ認メテ貰ヒタイ、サウシテ之ハ學問上果シテ制限ト云フコトニナルカナラヌカ議論モアリマセウト思ヒマスガ、數人共同シテ代理權ヲ行フ制度ヲモ認メテ貰ヒタイ、斯ウ云フ意見ガ出テ居ルノデアリマス、ソレデ片一方ノ方、卽チ代理權ニ制限ヲ加ヘテ個々ニ代理權ノ制限ヲ登記シテサウシテ第三者ニ對抗スルコトノ出來ルヤウニシタイト云フ意見ハ主査會ニ於テハ採用ヲ致シマセヌノデ、實際ニ於テ非常ナ不便ニナル、マア要スルニサウ云フ趣意カラシテ採用致シマセヌ、併シナガラ此共同權限ノコトハ實際ニ於テ必要デアルト認メマシテ之ヲ採用シタ次第デアリマス、結局極ク立派ナ支配人ヲ得ルコトガ出來マスレバ現行法ノ通リデ差支ハナイノデアリマスケレドモ、左樣ニ立派ナ支配人ガ數多イモノデハアリマセヌ、主人ノ方デハ支配人ヲ信用シテ法律ニ定メタ一切ノ權限ヲ一人ニ任セルト云フコトハ餘程危險ヲ感ズルト云フ場合ガ多イダラウト思フノデアリマス、左樣ナ場合リニ一人若クハ三人ガ共同シテ、支配人トシテ代理權ヲ行フト云フ制度ニ致シテサウシテ此營業上ノ安全ヲ圖リ一ツハ各支配人ノ間ニ意思ノ一致シナイ場合ノナイヤウニ致シタイ、斯ウ云フ趣意カラシテ此數人共同ノ支配人ト云フ制度ヲ是認致シタ次第デアリマス、第二項ノ方ハ之ハ當然斯樣ニナラネバ實際上不都合デアリマスカラ是等ノ規定ヲ設ケタノデアリマス、極ク大體ヲ、、、、、
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○二十五番(磯部四郞君)
チョット質問致シタイノデスサウシマスルト此支配人ノ共同シテ代理權ヲ附セラレマシタ場合ニ於テハ此三人ガ連帶ノ責任ヲ以テ主人ニ對シテ義務ヲ負フ譯ニナルノデアリマスガ、ソレカラ第二項ヲ讀ンデ見マスルト前項ノ場合ニ於テ支配人ノ一人ニ對シテ爲シタル意志表示ハ主人ニ對シテ其効力ヲ生ズトナリマスト此支配人ノ一人ノ者ガ第三者ニ對シマシテハ矢張全權ノ代理權ヲ持ツテ居ルコトニ讀ンデ差支ナイコトデアラウト考ヘマス、サウ致シマスルト此三人ガ勝手ナコトヲヤツテ主人ニ損害ヲ生ジタルトキニハ主人ニ對シテ連帶シテ責任ヲ負フト云フ意吐ハ合ニ解スル譯デア凱マセウカ、ソレカラ又權限以外ノコトヲ一人ノモノガヤツタトキニハ第三者ハ此權限ヲ知ラナクチヤナラヌト云フコトニハ二項ノ場合ニ於テ見エマセヌノデスガ此共同ノ義務ハドウ云フ所マデ行クノデアリマスカソレヲチョットドウカ御示シヲ願ヒタイ
○四番(齋藤十一郞君)
此三十條ノ二ノ規定ハ主人ト支配人トノ關係ノコトハ一ツモ見テ居ラヌノデス、代理權ノコトダケヲ規定シテアルノデアリマス、第二項ノ方ハ其相手方、主人カラ見テ相手方デアリマス隅其者ノ意思表示ガ數人ノ支配人ガ共同シテ代理權ヲ行フト云フ場合ニ、例ヘバ三人支配人ガアリマストキニハ三人ニ湘對シテ意思表示ヲ爲サナケレバナラヌト云フコトハ實際ニ於テ困難デアリマスカラ其トキハ一人ニ對シテ表示ヲシテモ十分デアルト云フ趣意ノ規定デアリマス
○二十五番(磯部四郞君)
其失策シタトキニ責任ハ三人ガドウシテ負フノデスカ
○四番(齋藤十一郞君)
ソレハ三十條ノ二ニハ規定シテアリマセヌ、内部ノ關係デアリマスカラ、、、、、
○二十五番(磯部四郞君)
内部ノ關係ヲ承リタイ
○四番(齋藤十一郞君)
ソレハ現行法ノ三十五條ニアリマス
○二十六番(鵜澤總明君)
此三十條ノ二ノ第一項デアリマスルガ之ハ其三十一條ノ更ニ此修正案ニ據リマスルト悉ク登記ヲスルコトヲ要スルヤウニナツテ居リマスルガ例ヘバ此委任狀デ以テ或ル事項ニ付テ支配人ノ共同ノ代理權ヲ行ハシムル場合ト云フヤウナモノハソレハ全ク別問題トシテ居ッテ何デモ但登記ヲスル場合ノミト云フ意味ノ御趣意デアリマスカ
○四番(齋藤十一郞君)
唯今ノ御問ヒノ趣意ハハツキリ致シマセヌガ斯樣ニ伺ツテ宜シウゴザイマスカ
○二十六番(鵜澤總明君)
斯ウ云フノガアリマス獨逸ヤ英吉利ナドカラ來ル委任狀ニハ大分アリマスガ會社方ノ共同ノ支配權ノ登記ガナクテモ單ニ委任狀ニ依ツテ共同支配人ヲ定メテ居ルヤウナ場合ガアルト思フノデアリマスソレデ三十條ノ齢趣意ハサウ云フヤウナ場合ハ包含セズシテ何デモタッタ一個ノ委任行爲デアツテモ常ニ此登記ヲスルコトヲ要スルト斯ウ云フ趣意デアリマセウカ
○四番(齋藤十一郞君)
本案ノ趣意ハ共同代理ノコトハ總テ其登記ヲサセル趣意ニナツテ居リマス、書面上ノ權限委任ダケデハ足ラナイ、第三者ニ對抗スルニハ足ラヌト云フノデス、ソレカラ一個一個ノ行爲ニ付テ共同代理ノ關係ヲ認ムルカドウカト云フ御尋デアリマスガソレハ認メナイ、此案ノ趣意ハ總括的ノ趣意デアリマス
○三十七番(松波仁一郞君)
此先程ノ起草委員ノ御說明デ共同代表店ノコトハ合名會社ノ業務執行社員ニ付テモ株式會社ノ取締役ニ付テモ諸會社ノ淸算人ニ付テモアルコトダト云フ御考ヘデアリマスカ、是ハ甚ダ後ノ議論デドウナルカ分リマセヌガ、今擧ゲタ數例ノ中ノ一ツニシテ共同代表權ノコトガ破レルトスレバ悉ク矢張四ツナラ四ツ共通ニ共同代表權ヲ認メヌト云フ御考ヘデアリマスカ或ハ合名會社ノ社員ニ付テハ共同代表權ガ破レテモ外ノ三所デ卽チ支配人取締役等ニ付テハ維持スル或ハ取締役ニ付テ共同代表權ガ破レタ、サウスレバ遡ツテ支配人ニ付テモ共同代表權ノコトハ廢メヤウト云フノカ、簡略ニ言ヒマスト共同代表權ト云フモノハ初メテ此商法ニ現ハレテ來マシタガ總テノモノニ通ズルデナケレバ採用シナイカ不幸ニシテ何處カデ一ツ破レ丶バスッカリ認メナイト云フコトニ御考ヘガアルノカ、後ノコトデアルカラ分リマセヌケレドモ初メニ御起草ニナルトキニサウ云フ御考ヘデアツタカ、續イテ是モマダ問題ニナツタカ分リマセヌガ豫メ若シ御論定ニナツタナラバ御内情ヲ承ツテ置キタイノデスガ矢張此裁判上裁判外一切ノ行爲ヲ爲ス法定權限ヲ持ツテ居ル代理權ノ中ニ海商法ノ中ニ船舶管理人ノ規定ガアリマスガ矢張裁判上裁判外一切ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有ス之ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ザル主義ニ原案ニ於テハ支配人ニ合名會社ノ代表社員モ株式會社ノ取締役モ同ジコトニナツテ居リマスガ矢張海商法ノ船舶管理人ニ御認メニナルノデアリマスカ或ハアレハ認メナイ積リデアリマスカ或ハソコマデ御論定ガナイノデアリマスカ、チョット質問ヲ致シテ置キマス
○二番(岡野敬次郞君)
吾々起草ノ上ニ於キマシテハ支配人ノ場合モ合名會社ノ社員ノ場合モ株式會社ノ取締役ノ場合モ淸算人ノ場合モ皆一樣ニ共同代表ヲ認ムルガ便宜デアルト云フコトヲ信ジタノデアリマスカラソレデ各々其場所ニ於テ規定ヲシタノデアル、ソコデ私共ノ見ル所ノ趣意ハ卽チ原案ニ現ハレテアルノデアリマス併シナガラ例ヘバ三十條ノ二ト云フモノガ此ノ如クニ假リニ決セラレタモノト見テ先キノ淸算ノ所ニ行ツテ共同代表ガ割ラレルコトモアリ或ハ合名會社ノ場合ニハ共同代表ヲ認メナイト云フコトニ決セラルルコトガナイトモ限ラレヌノデアリマスガ其時ハ卽チ總會ノ決議デアツテ吾々共ノ左右スル所デナイノデアリマスカラ假令理窟ニ於テハ共同代表ヲ認ムルガ宜シイト云フコトヲ吾々ハ信ジテ居ツテモ總會ノ決議ニ服從セネバナラヌト云フコトハ當然ノコトデアラウト思フ吾々ノ趣意トスル所ハ原案ニ現ハレテ居ルノデアリマス、ソレカラ船舶管理人ノコトニ付テハ之ハ松波君ハ御承知ノ筈デアラウト考ヘテ居リマス船舶管理人ニ付テハ此ノ如キ規定ヲ設ケナイトカ設ケルトカ云フコトニハ決シテ居ラヌノデアリマス、之ハ御尋ガアレバ吾々ノ方ノ修正ヲスベキ點ハ主査委員會ニ於テ決シタノデアリマシテ修正ヲ加フベク決議シタ部分ノ中ニハ船舶管理人ノコトハナイノデアリマスカラ其コトダケヲ御答シテ皿旦キマス
(「採決ヲ願ヒマス」又ハ「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○議長(岡部長職君)
別ニ御發讓モナイヤウデアリマスカラ採決ヲ致シマス別ニ之ニ付テハ反對意見モナイヤウデスカラ是ハ諸君可トセラル丶モノト見テ宜シウゴザイマスカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○議長(岡部長職君)
然ラバ是ハ全會一致ヲ以テ可決致シマス、次ニ三十一條中
書記朗讀
○四番(齋藤十一郞君)
是ハ前條修正ノ結果デアリマシテ共同代表其變更並ニ消滅ノ登記ニ付テノ規定デアリマス
○三十四番(穗積陳重君)
此修正案ノ終ヘニ消滅ト云フ字ガアリマスガアレハ其代理權ノ消滅ト云フモノガ現行法ノ中ニアリマスソレカラ加ヘラレタ中ニ其變更並ニ消滅トアリマスノハ代理權ノ消滅ヲ言フノヂヤナイノデセウナ共同代理權ノ行使ニ定メタルコトノ消滅デスナ
○四番(齋藤十一郞君)
左樣デス
○議長(岡部長職君)
是ハ別ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○議長(岡部長職君)
然ラバ是ハ可決ト認メマス第四十一條中
書記朗讀
○四番(齋藤十一郞君)
是ハ極ク簡單デゴザイマスガ、此四十一條ニ唯ダ「物」トゴザイマシテ其中ニ有價證劵ヲ含ムト云フコトニハドウシテモ解釋ガ出來ナイノデアリマス、是ハ商行爲ノ總則ヲ極メマシタ規定ナンドデモ動產、不動產又ハ有價證劵トカ、或ハ又動產又ハ有價證劵ト云フコトニ書現ハシテ居リマシテ有價證劵ヲ物ト別ニ致シテアル、ソレデ其趣意ヲ明カニ致シマスル爲メニ本條ニモ又ハ有價證劵ト云フ文字ヲ加ヘル必要ヲ認メタノデアリマス
○二十一番(花井卓藏君)
私ハ此文字ノ意義ヲ實例ヲ示シテ貰ヒタイノガアリマスガ御修正ニ依リマシタル有價證劵トハ如何ナルモノヲ言フノデアリマスカ實例ヲ示シテ成ルベク多クノ實例ヲ示シテ說明ヲ請ヒタイ
○四番(齋藤十一郞君)
有價證劵ト云フ文字ハ現行法ノ文字ヲ其儘用ヒタノデアリマシテ起草委員ノ新發明デハナイノデアリマスカラ解釋ハ詰リ現行法ノ解釋ニナルノデアリマス、ソレデ擧問上カラ申セバ非常ナ疑問ノアル問題デゴザイマスルガ、例ト仰シヤレバ或ハ株劵デゴザイマストカ、公債證書トカ、アエ云フモノガ例デアラウト思ヒマス
○二十一番(花井卓藏君)
有價證劵ト云フ文字ハ現行法ノ解釋通リデアルト云フノガ私ニハ分ラナイ現行法ト云フノハ何處ニ有價證劵ヲ解釋シテアリマスカ、例ヘバ商法ヲ繙イテ見テモ刑法ヲ繙イテ見テモ有價證劵トハ何モノヲ指サスノカ甚ダ不判然デアル、不判然デアルノミナラズ非常特別稅法デアルトカ取引法デアルトカ云フモノニ對照シテ考ヘテ見タリ致シマスレバ音禦峩ト云フモノハ甚ダ不到明ニ屬シテ居、ルノデアル私モ有價證劵ニ含ム所ノ現行法ノ範圍位ハ心得テ居リマスガ幸ヒニ商法ノ修正案ガ主査委員會ニ現ハレマシタカラシテ御詮議ノ結果ドノヤウナル趣意ニ見ラレテ茲ニ委員ガ筆ヲ加ヘ執ラレタカ有價證劵ニ付テ注意ヲ頭ノ上ニ書カレテ筆ヲ執ラレタノデアルカト云フコトヲ承リタイ趣意デ現行法ト申シマスレバ現行ノ總テノ法令ト申サネバナラヌ、現行ノ總テノ法令ヲ讀ンデ見マスルト有價證劵ノ意義甚ダ明白ナラズ御承知ノ通リ能ク分ツテ居ルト仰シヤリマスルガ分ツテ居ラヌト云フ證據ナラバ幾ラデモ擧ゲテ見セマス
○四番(齋藤十一郞君)
私ガ言ヒヤウガ惡ルカツタカ知レマセヌガ、現行法ト云フノハ商法ノ議事中デアリマスカラ商法ヲ指シタ積リデ、商法ニハ有價證劵ト云フ文字ガ使ハレテアルノガ事實デアリマスカラソレヲ指シタノデ、解釋ガ商法ニ規定シテアルトハ申サナイ積リデ、二百六十三條一號ニ號等ニ有價證劵ト云フ文字ガ使ツテアル、此文字ヲ用ヰタニ過ギヌ斯ウ云フノニ過ギヌ、解釋ハ擧問上色々アルトハ申シマシタ、其コトハ花井君ハ十分御承知ノコトデアルト思ヒマス
○二十一番(花井卓藏君)
知ツテ居ルケレドモ言ハナイ
○四番(齋藤十一郞君)
唯ダ現行商法ノ文字ヲ用ヰタニ過ギナイノデス
○十四番(岸本辰雄君)
私モチヨツト質問致シマスガ此有價證劵此所ニ擧ゲラレタ民法モ文字ノ如ク解釋シテ嵌マラヌコトニナルカモ知レマセヌガ、是ハ其ドウ云フ所カラ起ツタ修正デスカ、唯ダ講義ヲスルノニ困ルトカ或ハ實際斯ウ云フ場合ガアツテ其時ニ有價證劵ガ這入ラナカッタ爲メニ困ツタトカ或ハ大審院ノ剣例ガ斯ウナツテ居ルカラ困ルトカ云フ實際ノ利害ガアツタタメニ此修正ヲ必要トナスツタノカ、サウ云フコトヲ承リタイト云フノハ私ハ茲ニ言フ占有スル物ト云フノハサウ窮屈ニ解釋シナクテモ物件ト云フ位デ何デモ物デアレバ整理スルコトガ出來ル、、、、、ノ如キモノデモ銀行デハ物ト見テ居ルカラ其他有價證劵ノ如キ矢張物ニハ相違ナイ、スルカラサウ云フモノハ解釋デ大審院ノ剣例デモ甘ク行キマセウ、又學者ノ解釋デモ能ク行キマセウ、又此法律運用ノ妙味ガサウ云フ所ニアルデハナイカ、サウドウモ馬鹿正直ニ解釋スルト云フノハソレハ法律ヲ殺シテ讀ムノデアル、商法デ言フ廣イ意味デハナイカ、先ヅ實例ガドウナツテ居ルカソレヲ承リタイ
○二番(岡野敬次郞君)
有價證劵ノ意義ノコトハ申述ベマセヌガ此四十一條中、「物」ト云フ文字ガ岸本サンノ御話ノ如クニ緩ヤカナル解釋ノ出來ルモノデ物件ト云フヤウナ漠然タルモノデ法律上ニ確カリシタ意義ヲ持タヌコトニ解釋冖ガ出來ルノデアルナラバソレハ御話ノ如ク修正ノ必要ハナカラウト思フノデアリマス、ケレドモ民法ノ規定ノ上カラ考ヘテ見マシテモ兎ニ角疑ハシイノデアリマス少クトモ疑ハシイノデ嚴格ニ申シタナラバ有價證劵ハ物ニアラズト云フ方ガ正シイデアラウト思フノデアリマス、殊ニ御承知ノ通リ民法ヲ見ツ丶商法ヲ修正ヲシタノデアリマスカラ特ニ商法上ニ廣ク解釋スベキ根據ノナイ限リハ矢張民法ニ定メタル所ノ意義ニ依ツテ解釋ヲ下スベキガ當然デアラウト思ヒマス、故ニ若シモ物ノ意味ガ民法上有價證劵ヲ含ムノデアルト云フコトガ言ヒルノデアリマスレバソレハ修正ノ理由ガナイノデアリマス併シナガラ民法上有價證劵ガ含マナイト云フノデアルナラバ、ドウモ留置權ノ目的トシテ有價證劵ヲ認ムルト云フコトハ是ハ實際ニ於テ必要ナコトデアラウ併シ實用上第四十一條ノ適用ニ於テ有價證劵ト云フモノガ加ラナカツタガタメニ斯ウ云フ其害ガ起ッタト云フコトハ是ハ聞キマセヌノデス、四十一條ノ適用ノ上ニ於テハ併シナガラ此一般ノ留置權ニ關スル所ノ規定カラ考ヘテ見マシテモ未ダ御手許ニハ主査委員會ノ決議ヲ經タルモノトシテ御配付ニハ及ンデ居リマセヌケレドモ併シナガラ商行爲ノ所ノ原則ニ於テモ第二百八十四條ニ一般ノ留置權ノコトガ規定シテアルノデアリマスガ是ニ矢張債務者ノ所有物トアルノデ此物モ矢張四十一條ノ物ト同樣デ矢張嚴格ナル意味ニ於テハ民法上ノ意味ニ據ルベキモノデアラウト思ヒマス、サウナリマスト二百八十四條ノ留置權ハ非常ニ廣ク適用ヲ見ルベキ規定デアリマシテ唯ダ動產ニ限ルト云フコトニナリマシテハ甚ダ實際ニ適セヌノデアル有價證劵モ亦タ是ニ對シテ留置權ヲ行フコトヲ得セシムルノハ當然ノコトデアラウト思ヒマス將來ニ於テ必ズ有價證劵留置ト云フコトノ問題ハ起ルデアラウト思フ必ズシモ四十一條ノミニ付テ之ヲ修正シタト云フ譯デハアリマセヌガ大體ニ通ジテ或ル點ニ於テハ少クトモ有價證劵ヲ物ト同樣ノ扱ヒヲスルト云フコトガ適當デナカラウト云フノデ此ノ如ク修正ヲ加ヘタノデアリマス
○三十七番(松波仁一郞君)
私ハ此御趣意ニハ極ク贊成スル、實ハ自分ガ始終之ハ疑ヒヲ抱イテ居ルコトデゴザイマスガ物ト云フト有價證劵ヲ含ムカ含マヌカト云フコトデ疑ヒガアルカラ之ヲ御入レニナツタト云フノデ、ソレガ其ドウ云フ方面カラ斯ウ云フ疑ヒガ起ツテ來タノカ實際ノ實業家ガ物ト云フ中ニハ有價證劵ハ這入ラヌカラ明カニ之ヲ書イテ呉レト言ツテ來タノカ或ハ又サウ云フコトハナイケレドモ解釋デ疑ヒガ起ルカラ御考ヘニナツテ御入レニナッタノガ實ハ度々自分デ困ツテ居リマスガ保管品ト云フノデハ此法律デ有價證劵ガ這入ツテ居ルノデスガ有價證劵其他保管品ト云フコトデ入レテアルガソレカラ物品ト云フコトデ物品運送ト云フ中ニドウモ有價證劵ガ入ルト言ツタリ入ラヌト言ツタリシテ居リマスガ、物ノ方ニハ有價證劵ガ這入ラヌカラ物又ハ有價證劵物品ト云フノハ這入ルカラ物品又ハ有價證劵ト言ハヌデモ宜イト云フコトニ解釋シテ居リマスガ、趣意ハ明カニ物及有價證劵トシテ置キタイノデスガ起草委員ノ御考ヘデ商法デ物ト云フ意味ト問屋營業倉庫營業運送營業デ物品ト云フ意味ト違ウト云フヤウニ御取リニナツタノデアリマスカ
○二番(岡野敬次郞君)
私ハ丁度今松波君ノ御話ニナツタコトモ此修正ノ理由トシテ考ヘテ居ルノデアリマス但倉庫營業ニ付テハ有價證劵付託ト云フモノハナイト信ジテ居リマス運送ニ付テ有價證劵ガ運送品デアツテ冖其價額ヲ明記シナケレバナラヌト云フコトヲ現ニ商法ガ言ツテ居ルノデ從ツテ果シテ物ト物品トノ間ニ法律上ドレダケノ差ガアルカト云フコトハ是ハ私ハ申スコトハ出來ナイト思ヒマス併シナガラ少クトモ物品ト云フモノトソレカラ物ト云フモノハ所謂物ハ商法ノ規定ノ上ニ於テ其間ニ違ヒガアル卽チ、物ハ狹ク物ハ狹イノデ物品ノ方ガ廣イノデアルト云フコトハ確カニ言ヒルト思ヒマス、併シナガラ物ハ何ゾヤト言ハレタナラバ民法ノ八十六條ニ據ルヨリ外ハ致シ方ガナイト思ヒマス、少クトモ留置權ノ目的トシテ之ヲ認ムルガ可ナリト云フノデアルナラバ假令所謂物ヲ民法ノ八十六條以外ニ於テ廣ク卽チ例ヘバ物品ト云フヤウナ意味ニ解釋スルトシテモ其解釋ヲ果シテ何人モ異議ナク之ヲ認ムルノデアルカドウカト云フコトハ疑問デアラウト思ヒマス、デ私ノ見ル所デハドウモソレハ嚴格ニ論ゼラレタナラバ物ト云フ中ニ有價證劵ガ這入ルト云フコトハドウモ甚ダ薄弱デアラウト思フソレデアルカラ若シ物ノ中ニハ有價證劵ガ這入ラヌナラバ之ヲ入レル方ガ適當デアルシ若又物ノ解釋上ニ疑義ガアルナラバ其疑義ヲ避クルト云フコトモ亦タ一ツノ必要デアルカラソレデ四十一條ニ有價證劵ト云フモノヲ加ヘタ方ガ孰レノ方面カラ見テモ適當デアルト信ジタノデアリマス
○三十七番(松波仁一郞君)
御案ニハ贊成シテ居ルガ、サウスルト物ト云フノハ稍々狹ク解釋スル人ガアルカラ少クトモ趣意ヲ示スタメニ有價證劵ヲ加ヘタ而シテ物品ト云フモノハ割合ニ廣イ此所ニ今所謂物ト云フノトハ違ウト云フ解釋デアリマスカ
○二番(岡野敬次郞君)
修正ノ趣意ハ私ノ述ベタ通リデアリマスガ併シナガラ商法中物品ト云フ字ガ何レノ場所ニアルカ私ハ今記憶シテ居ラヌノデアリマス、ケレドモ運送ノ所ニハ又運送品ト云フテ居ルノデ其中ニ有價證劵ノアルコトハ商法ノ解釋上疑ヒナカラウト思フ併シナガラ此物品ト云フ意味ヲ以テ此商法ヲ通ジテ苟モ物品トアル所ニハ有價證劵ガ這入ルノデアルト云フ解釋ハ當レルヤ否ヤト云フコトハ私ハ茲ニ斷言スルコトハ出來ナイノデアリマス併シナガラ物品中ニ有價證劵ガアルト云フコトハ明カデアル未ダ物品ト云フ文字ニ付テハ法律上確定ノ意義ガアルコトヲ承知致シマセヌ少クトモ物ニ付テハ確定ノ意義ガアルノデアル故ニ今他ノ商法中ノ箇條ニ付テ解釋上ノ疑點ヲ申シマシタ所デ是ハ餘リ意義ノナイコトデアリマスガ第四十一條ノ適用ノ上ニ於テハ先刻申シマシタ通リニ反對ノ解釋ガアルナラバ其ノ反對ノ解釋ヲ退クルニ疑義ガアルナラバ其疑義ヲ避クルタメニ加ヘタ方ガ適當デアルト云フ外ハナイノデアリマス、
○二十番(小山溫君)
チョット私モ御質問致シタイノデスガ私ハ無論四十一條ノ修正ニハ御贊成ヲ致スノデスガ此三十九條ノ物品販賣ノ委託ヲ受ケタル代理商ハ賣買ノ目的物ノ瑕疵又ハ其數量ノ不足云々ト云フノハ是ハ御改メニナランデモ宜イノデアリマセウカ、若シ此物品ト云フ中ニ有價證劵ガ這入ラヌトシマスト矢張有價證劵ヲ御加ヘニナル必要ガ生ジハシマセヌカ
○二番(岡野敬次郞君)
先刻述ベマシタ通リ物品ト云フモノハ商法ノ上ニ於テ確カニ定マツテ居ル一齋ニ異議ハナカラウト云フコトヲ申シタノデアリマスソレハ代理ニ限リマセヌ問屋營業ノ所ニモ矢張アリマスガ之ハ物品ノ中ニ有價證劵ガ這入ルト云フ解釋ヲ執ツテ居ルノデアリマスソレハ先刻問題ニナリマシタ運送品ト云フ中ニ有價證劵ガ收ツテ居ルト云フコトガ物品ノ意義ヲ定ムルノ一ツノ根據デアラウト私ハ思ヒマスソレデアリマスカラ此四十一條ニモ物品物ト云フコトデアツタナラバ或ハ有價證劵ヲ含ムト云フ解釋ヲ執ル餘地ガアルカ知ラヌ併シナガラ明カニ物ト云フコトヲ言ッテ居ルノデスカラ民法トノ關係上如何デアラウカト云フノデ改メタノデアリマス
○二十番(小山溫君)
私モ物品ニハ無論有價證劵ガ這入ルモノト心得テ居ルノデアリマスガ此三十九條ノ物品販賣ハ宜ウゴザイマスガ代理商ハ賣買ノ目的物ト斯ウ書放シニナツテ居ルソレデ伺ツタノデアリマス
○二番(岡野敬次郞君)
ソレハ私ガ一々此商法ノ解釋ヲ致スノハ甚ダ越權デアルノデ唯ダ私一個ノ意見ガドウデアルカト云フ御話デアルナラバ私ハ矢張目的物ト云フモノニハ這入ルト云フ解釋ヲ執ツテ居ル
○二十番(小山溫君)
私ハ怪シムノデゴザイマスガ此方チノ四十一條ノ物ト云フ中ニハ這入ラナイデ三十九條ノ方ニハ物ト云フ中ニ這入ルトナルトドウモ少シ變デハナイカト思ヒマス賣買ノ目的タル物又ハ有價證劵ト云フヤウニ此方チヲスレパ却ツテ明瞭ニナリハシナイカ御相談ヲ致スノデ
○二番(岡野敬次郞君)
唯今ノ三十何條許リデハナイノデアリマス例ヘバ二百八十六條ニモ商人間ノ賣買ニ於テ買主ガ其目的物ヲ受取ルコトヲ拒ミ云々之ハ私ハ物ト云フコトニ豪ライ重キヲ措イテ解釋ヲ私ハ少クトモシテ居ラヌ賣買ノ目的ト云フコトニ於テ私ハ解釋ヲシテ居ルンデアリマスカラドウモ物ト云フト或ル契約ヲ見テ其契約ノ目的物ト云フノトハ私ハ違ツタ解釋ヲ執ツテ居ルノデアリマスカラソレデ私ノ考ヘデハ目的物ノ所ハ必要ハナカラウカト思ヒマス
(「贊成」又ハ「採決」ト呼ブ者アリ)
○議長(岡部長職君)
別ニ御異議モナイヤウデスカラ是ハ可決ト認メテ宜シウゴザイマスカ、然ラバ是ハ可決ト認メマス
○十番(梅謙次郞君)
是ニ於テ私ガ茲ニ修正案ヲ提出シテ置キマシタガソレノ中ニハ第三十四條ノ次ニ一箇條ヲ加ヘルト云フ案ガアリマスガソレハ第四十二條ノ修正ト牽連シテ居リマスカラ願クバソレヲ一緒ニ議シテ戴キタイト思フ
○議長(岡部長職君)
既ニ六時ニナリマシタガ丁度是デ第一編ノ修正ハ終ルコトニナツテ居リマス今日ハ是デ終ルコトニ致シマス