748条 (民法（～2019年）) - 法律情報基盤

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制定

787条

婚姻ノ取消ハ其効力ヲ既往ニ及ホサス

婚姻ノ当時其取消ノ原因ノ存スルコトヲ知ラサリシ当事者カ婚姻ニ因リテ財産ヲ得タルトキハ現ニ利益ヲ受クル限度ニ於テ其返還ヲ為スコトヲ要ス

婚姻ノ当時其取消ノ原因ノ存スルコトヲ知リタル当事者ハ婚姻ニ因リテ得タル利益ノ全部ヲ返還スルコトヲ要ス尚ホ相手方カ善意ナリシトキハ之ニ対シテ損害賠償ノ責ニ任ス

制定過程

明治民法787条

関連資料

梅謙次郎『民法要義』*未校正資料全体表示

第七百八十七條　婚姻ノ取消ハ其效力ヲ旣往ニ及ホサス

　婚姻ノ當時其取消ノ原因ノ存スルコトヲ知ラサリシ當事者カ婚姻ニ因リテ財產ヲ得タルトキハ現ニ利益ヲ受クル限度ニ於テ其返還ヲ爲スコトヲ要ス

　婚姻ノ當時其取消ノ原因ノ存スルコトヲ知リタル當事者ハ婚姻ニ因リテ得タル利益ノ全部ヲ返還スルコトヲ要ス尙ホ相手方カ善意ナリシトキハ之ニ對シテ損害賠償ノ責ニ任ス（人六六）

本條ハ婚姻ノ取消ノ效力ヲ定メタルモノナリ蓋シ婚姻ハ當事者及ヒ其間ニ擧ケタル子ノ爲メニ身分上又ハ財產上ノ關係ヲ生セシムルモノナルカ故ニ若シ一般ノ規定ニ從ヒ其取消ハ既往ニ遡リ婚姻ヲ初ヨリ無效ナリシモノノ如ク看做サンカ是レカ爲メニ生スル一家ノ撹亂ハ實ニ名狀スヘカラサルコト多カルヘシ殊ニ况ヤ婚姻ノ取消ハ往往ニシテ數十年ノ後ニ於テ之ヲ請求スルコトアルヘキニ於テヲヤ故ニ外國ノ法律ニ於テモ婚姻ノ取消ノ效力ヲ以テ全然既往ニ遡ルモノトセルハ寧ロ稀ナリトス唯如何ナル程度マテ婚姻ノ效力ヲ存セシムヘキカニ付キ各國ノ法律其揆ヲ一ニセスト雖モ我民法ニ於テハ寧ロ原則トシテ婚姻ノ取消ハ其效力ヲ既往ニ及ホササルモノトシ身分上ニ於テモ財產上ニ於テモ既ニ過去ニ屬スル事項ハ總テ之ヲ現狀ノ儘トシ敢テ撹亂ヲ試ムルコトヲ許サス而シテ其最モ重モナル結果ハ夫婦間ニ擧ケタル子ハ之ヲ嫡出子ト看做シ總テ嫡出子ノ權利義務ヲ有スル者トスルニ在リ唯將來ニ向ケテハ婚姻ナキモノト看ルカ故ニ夫婦ハ自ラ互ニ其夫婦タル關係ヲ失ヒ財產モ亦將來全ク獨立シタル二人ノ財產ト爲ルヘシ唯不當利得及ヒ不法行爲ノ原則ニ依リ夫婦間ノ財產關係ヲ定ムルノミ即チ婚姻ノ當時其取消ノ原因ノ存スルコトヲ知ラサリシ當事者カ婚姻ニ因リテ財產ヲ得タルトキハ現ニ利益ヲ受クル限度ニ於テ其返還ヲ爲スコトヲ要ス是レ不當利得ヲ許ササルナリ（七〇三）例ヘハ婚姻ノ結果夫カ妻ノ財產ノ收益ヲ得タルトキハ若シ其全部ヲ婚姻間ノ費用ニ充テタリトセンカ夫ハ妻ニ對シ何等ノ返還ヲ爲スコトヲ要セスト雖モ若シ其一部現ニ夫ノ手ニ存スルカ又ハ夫カ之ヲ以テ自己ノ負債ヲ弁償シタルトキハ其金額ヲ限トシ之ヲ妻ニ返還スルコトヲ要ス又例ヘハ夫婦カ財產共通制ヲ以テ婚姻ヲ爲シタル場合ニ於テ其計算上夫婦ノ一方カ此財產制ニ因リ現ニ利益ヲ受ケ或ハ其收入ノ一部ヲ自己ノ特有財產トシテ保有シ或ハ之ヲ以テ自己ノ負債ヲ弁償シタルトキハ現在ノ共通財產ヲ婚姻當時ノ夫婦ノ財產ノ有樣ニ應シテ分配スル外ニ右ノ利益ヲ受ケタル者ハ其利益ノ限度ニ於テ之ヲ其配偶者ニ返還スヘキモノトス又例ヘハ夫婦財產契約ニ由リ夫カ妻ニ其財產ノ一部ヲ贈与シタル場合ニ於テ其贈与ノ全部又ハ一部カ現存スルトキハ妻ハ之ヲ夫ニ返還スヘキカ如キ即チ是ナリ

婚姻ノ當時其取消ノ原因ノ存スルコトヲ知リタル當事者ハ婚姻ニ因リテ得タル利益カ現ニ存スルト否トヲ問ハス其全部ヲ返還スヘキモノトス而シテ若シ其相手方カ善意ナリシトキハ之ニ對シテ損害ヲ賠償スルコトヲ要ス是レ不法行爲ヨリ生スル當然ノ義務ナリトス（七〇四、七〇九）蓋シ取消ノ原因ヲ知レル當事者ハ初ヨリ其婚姻ノ取消サルヘキモノナルコトヲ知レルヲ以テ婚姻ニ因リテ得タル利益ハ畢竟自己ノ有ニ歸セサルコトアルヘキヲ知レリ故ニ若シ之ヲ消費シタリトセハ是レ消費スヘカラサルモノヲ消費シタルナリ故ニ婚姻ノ取消サルルニ及ヒテハ必ス其利益ノ全部ヲ返還スヘキコト殆ト疑ヲ容レサル所ナリ而シテ相手方モ亦惡意ナルトキハ爲メニ其相手方カ損害ヲ被ムルコトアルモ是レ自ラ招ク禍ナルカ故ニ敢テ其損害ヲ賠償スルノ義務爲シト雖モ若シ相手方カ善意ナランニハ惡意ノ當事者ハ之ヲ欺キタリト謂ッテ可ナリ故ニ不法行爲ノ通則ニ從ヒ之ニ對シテ賠償ノ責ヲ負フハ固ヨリ其所ナリ例ヘハ夫ハ取消ノ原因アルコトヲ知レルモ妻ハ之ヲ知ラサリシトセンカ若シ夫カ婚姻ニ因リテ妻ノ財產ノ收益ヲ得タルトキハ之ヲ妻ノ利益ニ使用シタル部分ヲ除キ其他總テ之ヲ妻ニ償還スルコトヲ要ス尙ホ夫カ自己ノ財產ト同一ノ注意ヲ爲シタリトスルモ其注意タル普通人ノ注意ヨリ疎ナルトキハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ妻ニ賠償スルコトヲ要スルカ如キ即チ是ナリ尙ホ細目ニ至リ一般ノ規定ト合ハサルモノナキニ非スト雖モ是レ婚姻ノ性質上一般ノ規定ヲ本條ノ場合ニ適用シ難キモノアレハナリ

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昭和22年222号（家族法改正）

748条

婚姻の取消は、その効力を既往に及ぼさない。

婚姻の当時その取消の原因があることを知らなかつた当事者が、婚姻によつて財産を得たときは、現に利益を受ける限度において、その返還をしなければならない。

婚姻の当時その取消の原因があることを知つていた当事者は、婚姻によつて得た利益の全部を返還しなければならない。なお、相手方が善意であつたときは、これに対して損害を賠償する責に任ずる。

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平成16年147号（現代語化）

748条

（婚姻の取消しの効力）

婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。

婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。

婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。

この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。