395条
第六百二条ニ定メタル期間ヲ超エサル賃貸借ハ抵当権ノ登記後ニ登記シタルモノト雖モ之ヲ以テ抵当権者ニ対抗スルコトヲ得但其賃貸借カ抵当権者ニ損害ヲ及ホストキハ裁判所ハ抵当権者ノ請求ニ因リ其解除ヲ命スルコトヲ得
第三百九十五條 第六百二條ニ定メタル期間ヲ超エサル賃貸借ハ抵當權ノ登記後ニ登記シタルモノト雖モ之ヲ以テ抵當權者ニ對抗スルコトヲ得但其賃貸借カ抵當權者ニ損害ヲ及ホストキハ裁判所ハ抵當權者ノ請求ニ因リ其解除ヲ命スルコトヲ得（擔二四八條、二項）
新民法ニ於テハ賃借權ハ一ノ債權ニ過キサルモノトセルコトハ已ニ述ヘタルカ如シ（一九七頁乃至一九九頁、二一二頁乃至二一四頁）故ニ純理ヨリ之ヲ言ヘハ賃借權ハ賃貸人以外ノ者ニ對シテ之ヲ援用スルコトヲ得サルカ如シ然リト雖モ不動產ノ賃貸借ハ極メテ必要ナルコト多ク徃徃管理ノ方法トシテ之ニ由ラサルコトヲ得サルコトアリ而シテ若シ相當ノ借賃ヲ以テ之ヲ爲ストキハ爲メニ不動產ノ價ヲ减スルコトナク時トシテハ却テ不動產ノ取得者ニ便益ヲ與フルコトアリ故ニ新民法ニ於テハ不動產ノ賃貸借ハ若シ之ヲ登記スルトキハ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ヘキモノトセリ（六〇五）故ニ賃貸借登記ノ後ニ抵當權ヲ取得シタル者ハ其賃貸借ヲ承認セサルコトヲ得サルハ固ヨリナリ故ニ抵當權ノ實行ニ由リ不動產ヲ賣却スルモ其買主ハ必ス其賃貸借ヲ承認セサルヘカラス若シ又抵當權ノ登記ノ後ニ賃貸借ヲ登記スルモ之ヲ抵當權者ニ對抗スルコトヲ得サルヲ本則トセサルコトヲ得ス何トナレハ是レ抵當權ヲ减殺スルノ虞アレハナリ然リト雖モ賃貸借ニシテ長期ナラサルトキハ右ニ述ヘタル理由ニ因リ之ヲ有效トスルニ非サレハ實際ノ不便尠カラス殊ニ自ラ抵當不動產ヲ使用スルコトヲ得サル者ニ在リテハ若シ有效ニ賃貸借ヲ爲スコトヲ得ストセハ實際其不動產ヲ利用スルコト能ハス爲メニ天物ヲ暴殄シ抵當權ノ利便ヲシテ全カラシムルコトヲ得サルニ至ルヘシ（三七一參觀）然ルニ槪シテ短期ノ賃貸借アルモ爲メニ不動產ノ價格ヲ减スルカ如キコトハ盖シ之アラサルヲ以テ本條ニ於テハ特ニ短期ノ賃貸借ニ限リ之ヲ抵當權者ニ對抗スルコトヲ得ルモノトセリ但之ニハ左ノ二條件アリ
第一 其賃貸借ハ第六百二條ニ定メタル期間ヲ超エサルコトヲ要ス蓋シ第六百二條ノ期間ハ賃貸借ヲ管理行爲ト視ルヘキ最上限ヲ定メタルモノニシテ此期間ヲ超エサル賃貸借ハ敢テ抵當權ヲ害スルモノト看做スヘカラサレハナリ
第二 其賃貸借ハ抵當權者ニ損害ヲ及ホササルコトヲ要ス即チ借賃不當ニ低廉ニシテ爲メニ抵當權者カ不動產ヲ賣却スルニ當リ其代價ヲ低廉ナラシムルニ至ルトキハ其賃貸借ハ當然無效ナルニ非スト雖モ抵當權者ハ裁判所ニ請求シテ其解除ヲ命セシムルコトヲ得ヘシ此條件ハ衆議院ニ於テ之ヲ加ヘタルモノニシテ一見理由アルカ如シト雖モ而モ余ハ充分ノ理由ヲ發見スルコト能ハス蓋シ賃貸借アルトキハ其借賃非常ニ不廉ナル場合ヲ除ク外不動產ヲ賣却スルニ當リ賃貸借ナキヨリハ幾分カ其價ヲ低廉ナラシムルコトアリ故ニ之ヲ口實トシテ常ニ賃貸借ヲ解除スルコトヲ得ルモノトセハ本條ノ規定ハ殆ト其目的ヲ達スルコト能ハサルヘシ若シ夫レ詐欺ニ因リ不當ノ低賃ヲ以テ賃貸借ヲ約シタル場合ニ於テハ抵當權者ハ第四百二十四條ノ規定ニ依リテ之ヲ取消スコトヲ得ヘキハ勿論其詐欺ノ意思ニシテ之ヲ證明スルコトヲ得ハ其行爲ハ不法ナルカ爲メニ無效ナリ（九〇）故ニ余ハ立法論トシテハ寧ロ本條ノ但書ナキヲ可トスル者ナリ
第三百九十五條 第六百二條ニ定メタル期間ヲ超エサル賃貸借ハ抵當權ノ登記後ニ登記シタルモノト雖モ之ヲ以テ抵當權者ニ對抗スルコトヲ得但其賃貸借カ抵當權者ニ損害ヲ及ホストキハ裁判所ハ抵當權者ノ請求ニ因リ其解除ヲ命スルコトヲ得（擔二四八條、二項）
新民法ニ於テハ賃借權ハ一ノ債權ニ過キサルモノトセルコトハ已ニ述ヘタルカ如シ（二二五頁乃至二二八頁二四三頁）故ニ純理ヨリ之ヲ言ヘハ賃借權ハ賃貸人以外ノ者ニ對シテ之ヲ援用スルコトヲ得サルカ如シ然リト雖モ不動產ノ賃貸借ハ極メテ必要ナルコト多ク徃徃管理ノ方法トシテ之ニ由ラサルコトヲ得サルコトアリ而シテ若シ相當ノ借賃ヲ以テ之ヲ爲ストキハ爲メニ不動產ノ價ヲ減スルコトナク時トシテハ却テ不動產ノ取得者ニ便益ヲ與フルコトアリ故ニ新民法ニ於テハ不動產ノ賃貸借ハ若シ之ヲ登記スルトキハ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ヘキモノトセリ（六〇五）故ニ賃貸借登記ノ後ニ抵當權ヲ取得シタル者ハ其賃貸借ヲ承認セサルコトヲ得サルハ固ヨリナリ隨テ抵當權ノ實行ニ因リ不動產ヲ賣却スルモ其買主ハ必ス其賃貸借ヲ承認セサルヘカラス之ニ反シテ若シ抵當權ノ登記ノ後ニ賃貸借ヲ登記シタルトキハ之ヲ抵當權者ニ對抗スルコトヲ得サルヲ本則トセサルヘカラス何トナレハ是レ抵當權ヲ減殺スルノ虞アレハナリ然リト雖モ賃貸借ニシテ長期ナラサルトキハ初ニ述ヘタル理由ニ因リ之ヲ有效トスルニ非サレハ實際ノ不便實ニ尠少ナラサルヘシ殊ニ自ラ抵當不動產ヲ使用スルコトヲ得サル者ニ在リテハ若シ有效ニ賃貸借ヲ爲スコトヲ得ストセハ實際其不動產ヲ利用スルコト能ハス爲メニ天物ヲ暴殄シ抵當權ノ利便ヲシテ全カラシムルコトヲ得サルニ至ルヘシ（三七一參觀）然ルニ槪シテ短期ノ賃貸借アルモ爲メニ不動產ノ價格ヲ減スルカ如キコトハ蓋シ之アラサルヲ以テ本條ニ於テハ特ニ短期ノ賃貸借ニ限リ之ヲ抵當權者ニ對抗スルコトヲ得ルモノトセリ但之ニハ左ノ二條件アリ
第一 其賃貸借ハ第六百二條ニ定メタル期間ヲ超エサルコトヲ要ス蓋シ第六百二條ノ期間ハ賃貸借ヲ管理行爲ト視ルヘキ最上限ヲ定メタルモノニシテ此期間ヲ超エサル賃貸借ニ限リ敢テ抵當權ヲ害セサルモノト看做スヘケレハナリ
第二 其賃貸借ハ抵當權者ニ損害ヲ及ホササルコトヲ要ス即チ借賃不當ニ低廉ナルカ又ハ借賃ハ低廉ナラサルモ數年分ノ借賃ヲ前拂セルトキハ抵當權者カ不動產ヲ賣却スルニ當リ其代價必ス低廉ナルヘシ此場合ニ於テハ其賃貸借ハ當然無效ナルニ非スト雖モ抵當權者ハ裁判所ニ請求シテ其解除ヲ命セシムルコトヲ得ヘシ此條件ハ衆議院ニ於テ之ヲ加ヘタルモノニシテ一見理由アルカ如シト雖モ而モ余ハ充分ノ理由ヲ發見スルコト能ハス蓋シ賃貸借アルトキハ其借賃非常ニ不廉ナル場合ヲ除ク外不動產ヲ賣却スルニ當リ賃貸借ナキヨリハ幾分カ其價ヲ低廉ナラシムルコトアリ故ニ之ヲ口實トシテ常ニ賃貸借ヲ解除スルコトヲ得ルモノトセハ本條ノ規定ハ殆ト其目的ヲ達スルコト能ハサルヘシ若シ夫レ詐欺ニ因リ不當ノ低賃ヲ以テ賃貸借ヲ約シ又ハ數年分ノ借賃ヲ前拂シタル場合ニ於テハ抵當權者ハ第四百二十四條ノ規定ニ依リテ之ヲ取消スコトヲ得ヘキハ勿論其詐欺ニシテ單ニ賃貸借ヲ假裝スルニ過キサルモノナルトキハ虗僞ノ意思表示ニシテ其行爲ハ無效ナリ（九四）故ニ余ハ立法論トシテハ寧ロ本條ノ但書ナキヲ可トスル者ナリ