394条
抵当権者ハ抵当不動産ノ代価ヲ以テ弁済ヲ受ケサル債権ノ部分ニ付テノミ他ノ財産ヲ以テ弁済ヲ受クルコトヲ得
前項ノ規定ハ抵当不動産ノ代価ニ先チテ他ノ財産ノ代価ヲ配当スヘキ場合ニハ之ヲ適用セス但他ノ各債権者ハ抵当権者ヲシテ前項ノ規定ニ従ヒ弁済ヲ受ケシムル為メ之ニ配当スヘキ金額ノ供託ヲ請求スルコトヲ得
第三百九十四條 抵當權者ハ抵當不動產ノ代價ヲ以テ辨濟ヲ受ケサル債權ノ部分ニ付テノミ他ノ財產ヲ以テ辨濟ヲ受クルコトヲ得
前項ノ規定ハ抵當不動產ノ代價ニ先チテ他ノ財產ノ代價ヲ配當スヘキ場合ニハ之ヲ適用セス但他ノ各債權者ハ抵當權者ヲシテ前項ノ規定ニ從ヒ辨濟ヲ受ケシムル爲メ之ニ配當スヘキ金額ノ供託ヲ請求スルコトヲ得（擔二四七、六年一月一七日吿一八號地所質入書入規則一〇、同年八月二三日吿三〇六號動產不動產書入金榖貸借規則二項、七年五月一二日吿五二號、八年九月三〇日吿一四八號建物書入質規則一二）
本條ハ抵當權者カ抵當不動產ヲ以テ全部ノ辨濟ヲ受クルコト能ハサル場合ニ於テ他ノ財產ニ付キ辨濟ヲ受クルニ必要ナル條件ヲ定メタルモノナリ而シテ原則トシテハ抵當權者ハ先ツ抵當不動產ニ付テ辨濟ヲ受ケタル後ニ非サレハ其不足額ニ付キ他ノ財產ヲ以テ辨濟ヲ受クルコトヲ得ス蓋シ抵當權者モ亦債權者ニシテ抵當不動產以外ノ財產ニ付テハ尋常ノ債權者ト同一ノ權利ヲ有スルモノトス故ニ理論上ヨリ之ヲ言ヘハ抵當權者ト雖モ他ノ債權者ト同樣ニ債務者ノ各財產ニ付キ辨濟ヲ受クルコトヲ得スンハアルヘカラス然リト雖モ是レ他ノ債權者ノ爲メニハ甚タ不利益トスル所ナリ何トナレハ抵當權者ハ抵當不動產ニ付テハ他ノ債權者ヲ排シテ辨濟ヲ受クルコトヲ得ル者ナリト雖モ尋常ノ債權者ハ特別ノ擔保ヲ有スル債權者カ辨濟ヲ受ケタル後債務者ノ各財產ニ付キ各〻平等ノ割合ヲ以テ辨濟ヲ受クルコトヲ得ルニ過キス故ニ抵當權者ニシテ姑ク抵當不動產ヲ措キテ他ノ財產ニ付テ尋常ノ債權者ト同樣ニ辨濟ヲ受ケント欲スルトキハ他ノ債權者ハ一層其受クヘキ金額ヲ减少スルコトアルヘシ例ヘハ甲ハ千圓ノ債權ニ付キ五百圓ノ價アル不動產ノ上ニ抵當權ヲ有シ乙ハ同シク千圓ノ債權ヲ有スルト雖モ毫モ特別擔保ヲ有セス然ルニ債務者ハ抵當不動產ノ他ニ千圓ノ價アル財產ヲ有セリトセンニ若シ甲ニシテ先ツ不動產ニ付テ五百圓ノ辨濟ヲ受ケ殘額五百圓ニ付テ他ノ財產ノ代價ノ配當ニ加入スルトキハ甲ノ債權五百圓及ヒ乙ノ債權千圓ニ對シ債務者ノ財產千圓アルカ故ニ甲ハ三百三十三圓三十三錢三厘ヲ受ケ乙ハ殘餘ノ全額ヲ受クルコトヲ得ヘキニ若シ甲ニシテ先ツ抵當不動產以外ノ財產ニ付テ辨濟ヲ受ケント欲スルトキハ甲ノ債權千圓及ヒ乙ノ債權千圓ニ對シ債務者ノ財產千圓アルカ故ニ甲乙各〻五百圓ヲ受クヘシ而シテ甲ハ殘額五百圓ニ付キ抵當權ヲ行フトキハ抵當不動產ノ價恰モ五百圓ナルカ故ニ甲ハ千圓ヲ受クルコトヲ得テ乙ハ僅ニ五百圓ヲ受クルニ過キサルヘシ故ニ前例ニ比シテ甲ハ百六十六圓六十六錢七厘丈多ク受取リテ乙ハ同額丈少ク受取ルニ至ルヘシ若シ抵當不動產ニ付キ數名ノ抵當權者アリトセハ假令其不動產ノ代價ハ一抵當權者ニ辨濟シテ餘アリトスルモ尙ホ尋常債權者ノ損害ヲ被ムルコト多カルヘシ而シテ抵當權者ハ素ト債務者ヲ信用セスシテ特ニ抵當權ヲ請求シタル者ナルカ故ニ抵當不動產以外ノ財產ハ殆ト其計算外ニ在リタルモノト謂フヘク抵當不動產ノ代價ヲ以テ其債權ノ全額ヲ償フニ足ラサルトキハ多クハ是レ抵當權者ノ不注意ヨリ生スルモノナルカ故ニ先ツ抵當不動產ニ付テ辨濟ヲ受ケシムルモ敢テ不當ト謂フヘカラス殊ニ抵當權者ハ抵當不動產ノ代價丈ニ付テハ獨リ辨濟ヲ受クルコトヲ得ルモ他ノ債權者ハ一切ノ財產ニ付キ各〻平等ノ割合ヲ以テスルニ非サレハ辨濟ヲ受クルコトヲ得ス故ニ債務者カ無資力ナル場合ニ於テハ抵當權者ノ損スルコトハ稀ニシテ他ノ債權者ノ損スルコトハ明カナリ故ニ本條ノ規定ニ由リ幾分カ抵當權者ノ他ノ財產ニ對スル權利ニ制限ヲ附スルモ敢テ不公平ナリト謂フコトヲ得ス
右ノ原則ハ抵當不動產ノ代價ヲ先ニ配當スヘキ場合ニ於テハ毫モ之ヲ適用スルニ困難ナシト雖モ若シ抵當不動產ノ代價ニ先チ他ノ財產ノ代價ヲ配當スヘキトキハ右ノ原則ヲ適用シ難キカ如シ此場合ニ於テ第三百九十二條ニ於ケルカ如ク代位ノ方法ニ由リ畢竟右ノ原則ノ趣旨ヲ貫徹スルコト能ハサルニ非スト雖モ是レ頗ル錯雜ヲ極メ而モ其利スル所ハ多カラサルヲ常トス故ニ本條第二項ニ於テハ先ツ此塲合ニハ第一項ノ規定ヲ適用セサルヲ本則トシ唯他ノ債權者ヨリ第一項ノ規定ノ計算ニ從ヒ抵當權者カ受クヘキ金額ヲ供託セシムルコトヲ得ルモノトセリ故ニ前例ニ仍レハ甲カ乙ト各〻五百圓ヲ受ケントスルニ當リ乙ハ甲ヲシテ其受クヘキ五百圓ヲ供託セシメ抵當不動產ヲ賣却シタル後甲カ其不動產ニ付キ幾千ノ辨濟ヲ受クルカヲ見若シ全額ヲ受クルコト能ハサルトキハ其殘餘ニ付キ他ノ財產ノ配當ニ加入シタルモノト看做シ前ニ述ヘタルカ如ク計算ヲ爲スコトヲ得ヘシ此方法ニ由ルトキハ法律ノ趣旨ハ略〻貫徹スルコトヲ得テ而モ第三百九十二條ノ方法ニ從フカ如ク煩雜ナル手續ヲ要セサルナリ
第三百九十四條 抵當權者ハ抵當不動產ノ代價ヲ以テ辨濟ヲ受ケサル債權ノ部分ニ付テノミ他ノ財產ヲ以テ辨濟ヲ受クルコトヲ得
前項ノ規定ハ抵當不動產ノ代價ニ先チテ他ノ財產ノ代價ヲ配當スヘキ場合ニハ之ヲ適用セス但他ノ各債權者ハ抵當權者ヲシテ前項ノ規定ニ從ヒ辨濟ヲ受ケシムル爲メ之ニ配當スヘキ金額ノ供託ヲ請求スルコトヲ得（擔二四七、六年一月一七日吿一八號地所質入書入規則一〇、同年八月二三日吿三〇六號動產不動產書入金榖貸借規則二項、七年五月一二日吿五二號、八年九月三〇日吿一四八號建物書入質規則一二）
本條ハ抵當權者カ抵當不動產ヲ以テ全部ノ辨濟ヲ受クルコト能ハサル場合ニ於テ他ノ財產ニ付キ辨濟ヲ受クルニ必要ナル條件ヲ定メタルモノナリ而シテ原則トシテハ抵當權者ハ先ツ抵當不動產ニ付テ辨濟ヲ受ケタル後ニ非サレハ其不足額ニ付キ他ノ財產ヲ以テ辨濟ヲ受クルコトヲ得ス葢シ抵當權者モ亦債權者ニシテ抵當不動產以外ノ財產ニ付テハ尋常ノ債權者ト同一ノ權利ヲ有スルモノトス故ニ理論上ヨリ之ヲ言ヘハ抵當權者ト雖モ他ノ債權者ト同樣ニ債務者ノ各財產ニ付キ辨濟ヲ受クルコトヲ得スンハアルヘカラス然リト雖モ是レ他ノ債權者ノ爲メニハ甚タ不利益トスル所ナリ何トナレハ抵當權者ハ抵當不動產ニ付テハ他ノ債權者ヲ排シテ辨濟ヲ受クルコトヲ得ル者ナリト雖モ尋常ノ債權者ハ特別ノ擔保ヲ有スル債權者カ辨濟ヲ受ケタル後債務者ノ各財產ニ付キ各〻平等ノ割合ヲ以テ辨濟ヲ受クルコトヲ得ルニ過キス故ニ抵當權者ニシテ姑ク抵當不動產ヲ措キテ他ノ財產ニ付テ尋常ノ傳權者ト同樣ニ辨濟ヲ受ケント欲スルトキハ他ノ債權者ハ一層其受クヘキ金額ノ減少ヲ見ルコトアルヘシ例ヘハ甲ハ千圓ノ債權ニ付キ五百圓ノ價アル不動產ノ上ニ抵當權ヲ有シ乙ハ同シク千圓ノ債權ヲ有スルト雖モ毫モ特別擔保ヲ有セス然ルニ債務者ハ抵當不動產ノ他ニ千圓ノ價アル財產ヲ有セリトセンニ若シ甲ニシテ先ツ不動產ニ付テ五百圓ノ辨濟ヲ受ケ殘額五百圓ニ付テ他ノ財產ノ代價ノ配當ニ加入スルトキハ甲ノ債權五百圓及ヒ乙ノ債權千圓ニ對シ債務者ノ財產千圓アルカ故ニ甲ハ三百三十三圓三十三錢三厘ヲ受ケ乙ハ殘餘ノ全部ヲ受クルコトヲ得ヘキニ若シ甲ニシテ先ツ抵當不動產以外ノ財產ニ付テ辨濟ヲ受ケント欲スルトキハ甲ノ債權千圓及ヒ乙ノ債權千圓ニ對シ債務者ノ財產千圓アルカ故ニ甲乙各五百圓ヲ受クヘシ而シテ甲ハ殘額五百圓ニ付キ抵當權ヲ行フトキハ抵當不動產ノ價恰モ五百圓ナルカ故ニ甲ハ千圓ヲ受クルコトヲ得テ乙ハ僅ニ五百圓ヲ受クルニ過キサルヘシ故ニ前例ニ比シテ甲ハ百六十六圓六十六錢七厘丈多ク受取リテ乙ハ同額丈少ク受取ルニ至ルヘシ若シ抵當不動產ニ付キ數名ノ抵當權者アリトセハ假令其不動產ノ代價ハ一抵當權者ニ辨濟シテ餘アリトスルモ猶ホ尋常債權者ハ同樣ノ損害ヲ被ムルヘシ而シテ抵當權者ハ素ト債務者ヲ信用セスシテ特ニ抵當權ヲ請求シタル者ナルカ故ニ抵當不動產以外ノ財產ハ殆ト其計算外ニ在リタルモノト謂フヘク抵當不動產ノ代價ヲ以テ其債權ノ全額ヲ償フニ足ラサルトキハ多クハ是レ抵當權者ノ不注意ヨリ生スルモノナルカ故ニ先ツ抵當不動產ニ付テ辨濟ヲ受ケシムルモ敢テ不當ナリト謂フヘカラス殊ニ抵當權者ハ抵當不動產ノ代價丈ニ付テハ獨リ辨濟ヲ受クルコトヲ得ルモ他ノ債權者ハ一切ノ財產ニ付キ各〻平等ノ割合ヲ以テスルニ非サレハ辨濟ヲ受クルコトヲ得ス故ニ債務者カ無資力ナル場合ニ於テハ抵當權者ノ損スルコトハ稀ニシテ他ノ債權者ノ損スルコトハ明カナリ故ニ本條ノ規定ニ由リ幾分カ抵當權者ノ他ノ財產ニ對スル權利ニ制限ヲ附スルモ敢テ不公平ナリト謂フコトヲ得ス
右ノ原則ハ抵當不動產ノ代價ヲ先ニ配當スヘキ場合ニ於テハ毫モ之ヲ適用スルニ難カラスト雖モ若シ抵當不動產ノ代價ニ先チ他ノ財產ノ代價ヲ配當スヘキトキハ之ヲ適用シ難キカ如シ此場合ニ於テ第三百九十二條ニ於ケルカ如ク代位ノ方法ニ由リ畢竟右ノ原則ノ趣旨ヲ貫徹スルコト能ハサルニ非スト雖モ是レ頗ル錯雜ヲ極メ而モ其利スル所ハ多カラサルヲ常トス故ニ本條第二項ニ於テハ先ツ此場合ニハ第一項ノ規定ヲ適用セサルヲ本則トシ唯他ノ債權者ノ請求ニ因リ第一項ノ規定ノ計算ニ從ヒ配當ヲ受ケシムル爲メ抵當權者カ受クヘキ金額ヲ供託セシムルコトヲ得ルモノトセリ故ニ前例ニ仍レハ甲ト乙ト各〻五百圓ヲ受ケントスルニ當リ乙ハ甲ヲシテ其受クヘキ五百圓ヲ供託セシメ抵當不動產ヲ賣却シタル後甲カ其不動產ニ付キ幾千ノ辨濟ヲ受クルカヲ見若シ全額ヲ受クルコト能ハサルトキハ其殘餘ニ付キ他ノ財產ノ配當ニ加入シタルモノト看做シ前ニ述ヘタルカ如ク計算ヲ爲スコトヲ得ヘシ此方法ニ由ルトキハ法律ノ趣旨ハ略〻貫徹スルコトヲ得テ而モ第三百九十二條ノ方法ニ從フカ如ク煩雜ナル手續ヲ要セサルナリ