383条
第三取得者カ抵当権ヲ滌除セント欲スルトキハ登記ヲ為シタル各債権者ニ左ノ書面ヲ送達スルコトヲ要ス
取得ノ原因、年月日、譲渡人及ヒ取得者ノ氏名、住所、抵当不動産ノ性質、所在、代価其他取得者ノ負担ヲ記載シタル書面
抵当不動産ニ関スル登記簿ノ謄本但既ニ消滅シタル権利ニ関スル登記ハ之ヲ掲クルコトヲ要セス
債権者カ一个月内ニ次条ノ規定ニ従ヒ増価競売ヲ請求セサルトキハ第三取得者ハ第一号ニ掲ケタル代価又ハ特ニ指定シタル金額ヲ債権ノ順位ニ従ヒテ弁済又ハ供託スヘキ旨ヲ記載シタル書面
第三百八十三條 第三取得者カ抵當權ヲ滌除セント欲スルトキハ登記ヲ爲シタル各債權者ニ左ノ書面ヲ送達スルコトヲ要ス
一 取得ノ原因、年月日、讓渡人及ヒ取得者ノ氏名、住所、抵當不動產ノ性質、所在、代價其他取得者ノ負擔ヲ記載シタル書面
二 抵當不動產ニ關スル登記簿ノ謄本但既ニ消滅シタル權利ニ關スル登記ハ之ヲ揭クルコトヲ要セス
三 債權者カ一个月內ニ次條ノ規定ニ從ヒ增價競賣ヲ請求セサルトキハ第三取得者ハ第一號ニ揭ケタル代價又ハ特ニ指定シタル金額ヲ債權ノ順位ニ從ヒテ辨濟又ハ供託スヘキ旨ヲ記載シタル書面（擔二六二、二六四）
本條ハ第三取得者カ滌除ヲ爲スニ付キ踐ムヘキ手續ヲ定メタルモノナリ而シテ其手續ハ凡ソ登記ヲ爲シタル各債權者ニ三種ノ書面ヲ送達スルニ在リ（第一）取得行爲ノ要素ヲ揭ケタル書面（第二）登記簿ノ謄本（第三）第三取得者カ提供スル金額ヲ揭ケタル書面是ナリ而シテ是レ皆債權者ヲシテ第三取得者ノ提供ヲ承諾スルニ利アルヤ否ヤヲ判斷セシムルニ必要ナル材料ナリ
「登記ヲ爲シタル各債權者」トハ先取特權、質權又ハ抵當權ヲ有スル一切ノ債權者ニシテ代位ニ因リテ是等ノ權利ヲ行フ者モ若シ登記ヲ爲シタルトキハ此中ニ包含スルモノトス（三九三、五〇一、一號、五號二項）但本條ハ抵當權ニ關スル規定ナルカ故ニ直接ニハ抵當權ノミニ關スルト雖モ第三百四十一條及ヒ第三百六十一條ノ規定ニ依リ先取特權及ヒ不動產質ニ之ヲ準用スヘキモノトス
本條第三號ニ「代價又ハ特ニ指定シタル金額」ト云ヘルモノ他ナシ買主ハ其約定ノ代價ヲ第一號ニ記載スヘキモノニシテ通常ハ直チニ其代價ヲ提供シテ滌除ヲ行ハント欲スルモノナリト雖モ（第一）贈與、交換等ノ場合ニ於テハ別ニ代價ノ定ナク（第二）賣買ノ場合ニ於テモ取得者カ誤テ已ニ代價ヲ賣主ニ支拂ヒタル後ハ復支拂フヘキ代價ナク（第三）未タ代價ヲ支拂ハスト雖モ若シ其代價ニシテ過廉ナルカ又ハ取得者カ不當ノ高價ヲ出シテモ其不動產ヲ取得セント欲スルヲ以テ特ニ金額ヲ指定スルコトアレハナリ而シテ其金額ノ多少ハ固ヨリ論スル所ニ非スト雖モ實際ニ於テハ大抵相當代價ヲ下ラサル金額タルコト固ヨリナリ然ラスンハ債權者ハ之ヲ承諾セサルヘケレハナリ
又「辨濟又ハ供託」ト云ヘリ果シテ如何ナル場合ニ辨濟ヲ爲シ如何ナル場合ニ供託ヲ爲スヘキカ蓋シ第三取得者ニシテ債權者ノ權利ヲ信認スルトキハ直チニ其提供シタル金額ノ全部ヲ辨濟スルモ可ナリ唯或ハ權利ナキ者或ハ債權額ニ差違アル者或ハ優先ノ順位ヲ誤リタル者等アルトキハ第三取得者ハ二重ニ全部又ハ一部ノ辨濟ヲ爲ササルヘカラサルノ危險アリ故ニ若シ第三取得者ニシテ債權者ノ權利ニ多少ノ疑ヲ抱キ自ラ一切ノ責任ヲ負フコトヲ欲セサレハ其提供シタル金額ノ全部ヲ供託シテ可ナリ然レトモ通常ハ權利ノ尤モ明確ナル債權者ニハ直チニ辨濟ヲ爲スヘク權利ノ稍〻疑ハシキ債權者ニ對シテハ特ニ供託ヲ爲スヘキノミ（尙ホ第一號ノ讓渡人 ナル文字ニ付テハ三八五ニ論スル所ヲ參觀スヘシ）
第三百八十三條 第三取得者カ抵當權ヲ滌除セント欲スルトキハ登記ヲ爲シタル各債權者ニ左ノ書面ヲ送達スルコトヲ要ス
一 取得ノ原因、年月日、讓渡人及ヒ取得者ノ氏名、住所、抵當不動產ノ性質、所在、代價其他取得者ノ負擔ヲ記載シタル書面
二 抵當不動產ニ關スル登記簿ノ謄本但既ニ消滅シタル權利ニ關スル登記ハ之ヲ揭クルコトヲ要セス
三 債權者カ一个月內ニ次條ノ規定ニ從ヒ增價競賣ヲ請求セサルトキハ第三取得者ハ第一號ニ揭ケタル代價又ハ特ニ指定シタル金額ヲ債權ノ順位ニ從ヒテ辨濟又ハ供託スヘキ旨ヲ記載シタル書面（擔二六二、二六四）
本條ハ第三取得者カ滌除ヲ爲スニ付キ踐ムヘキ手續ヲ定メタルモノナリ而シテ其手續ハ凡ソ登記ヲ爲シタル各債權者ニ三種ノ書面ヲ送達スルニ在リ（第一）取得行爲ノ要素ヲ揭ケタル書面（第二）登記簿ノ謄本（第三）第三取得者カ提供スル金額ヲ揭ケタル書面是ナリ而シテ是レ皆債權者ヲシテ第三取得者ノ提供ヲ承諾スルニ利アルヤ否ヤヲ判斷セシムルニ必要ナル材料ナリ
「登記ヲ爲シタル各債權者」トハ先取特權、質權又ハ抵當權ヲ有スル一切ノ債權者ニシテ代位ニ因リテ是等ノ權利ヲ行フ者モ若シ登記ヲ爲シタルトキハ此中ニ包含スルモノトス（三九三、五〇一、一號、五號二項）但本條ハ抵當權ニ關スル規定ナルカ故ニ直接ニハ抵當權ノミニ關スルト雖モ第三百四十一條及ヒ第三百六十一條ノ規定ニ依リ先取特權及ヒ不動產質ニ之ヲ準用スヘキモノトス
本條第一號ニ所謂「讓渡人」トハ或ハ抵當不動產ニ付キ所有權ヲ讓渡シタル者ノ謂ナルカ如シト雖モ地上權又ハ永小作權ノ設定者モ亦此中ニ包含セルコト蓋シ疑ヲ容レス夫レ讓渡トハ自己ノ有スル權利ヲ他人ニ移スノ謂ナリ故ニ單ニ讓渡人 ト云ヘハ所有權ノ讓渡人ノミナラス地上權、永小作權ノ讓渡人モ亦其中ニ包含セルコトハ畧〻明カナル所ナリ抑〻地上權、永小作權カ所有權ノ支分權ニシテ即チ其一部分ナルコトハ既ニ論シタル所ナルカ故ニ（【一〇三】頁）「讓渡人」トハ不動產ノ所有權ノ全部又ハ一部ノ讓渡人ト云フノ意ナリト解スヘキノミ（五五五參觀）
本條第三號ニ「代價又ハ特ニ指定シタル金額」ト云ヘルモノ他ナシ買主ハ其約定ノ代價ヲ第一號ニ記載スヘキモノニシテ通常ハ直チニ其代價ヲ提供シテ滌除ヲ行ハント欲スルモノナリト雖モ（第一）贈與、交換等ノ場合ニ於テハ別ニ代價ノ定ナク（第二）賣買ノ場合ニ於テモ取得者カ誤テ已ニ代價ヲ賣主ニ支拂ヒタル後ハ復支拂フヘキ代價ナク（第三）未タ代價ヲ支拂ハスト雖モ若シ其代價ニシテ過廉ナルカ又ハ取得者カ不當ノ高價ヲ出タシテモ其不動產ヲ取得セント欲スルカ爲メ特ニ金額ヲ指定スルコトアルヘク（第四）地上權者又ハ永小作人カ滌除ヲ爲ス場合ニハ其代價ハ必ス不動產ノ價格ヨリモ廉ナルヘキカ故ニ特ニ相當ノ金額ヲ提供スル必要アルヘク（第五）買主カ抵當不動產ト共ニ他ノ財產ヲ買受ケタルトキハ其代價ノ全部ヲ提供セサルヲ常トスヘケレハナリ而シテ其金額ノ多少ハ固ヨリ論スル所ニ非スト雖モ實際ニ於テハ大抵相當代價ヲ下ラサル金額タルコト固ヨリナリ然ラスンハ債權者ハ之ヲ承諾セサルヘケレハナリ
又「辨濟又ハ供託」ト云ヘリ果シテ如何ナル場合ニ辨濟ヲ爲シ如何ナル場合ニ供託ヲ爲スヘキカ蓋シ第三取得者ニシテ債權者ノ權利ヲ信認スルトキハ直チニ其提供シタル金額ノ全部ヲ辨濟スルモ可ナリ唯或ハ權利ナキ者或ハ債權額ニ差違アル者或ハ優先ノ順位ヲ誤リタル者等アルトキハ第三取得者ハ二重ニ全部又ハ一部ノ辨濟ヲ爲ササルヘカラサルノ危險アリ故ニ若シ第三取得者ニシテ債權者ノ權利ニ多少ノ疑ヲ抱キ自ラ一切ノ責任ヲ負フコトヲ欲セサレハ其提供シタル金額ノ全部ヲ供託シテ可ナリ然レトモ通常ハ權利ノ尤モ明確ナル債權者ニハ直チニ辨濟ヲ爲スヘク權利ノ稍〻疑ハシキ債權者ニ對シテノミ特ニ供託ヲ爲スヘキカ尙ホ辨濟期ニ至ラサル債權アルトキハ之ニ對シテハ必ス供託ヲ爲スヘキモノトス