374条
抵当権者カ利息其他ノ定期金ヲ請求スル権利ヲ有スルトキハ其満期ト為リタル最後ノ二年分ニ付テノミ其抵当権ヲ行フコトヲ得但其以前ノ定期金ニ付テモ満期後特別ノ登記ヲ為シタルトキハ其登記ノ時ヨリ之ヲ行フコトヲ妨ケス
第三百七十四條 抵當權者カ利息其他ノ定期金ヲ請求スル權利ヲ有スルトキハ其滿期ト爲リタル最後ノ二年分ニ付テノミ其抵當權ヲ行フコトヲ得但其以前ノ定期金ニ付テモ滿期後特別ノ登記ヲ爲シタルトキハ其登記ノ時ヨリ之ヲ行フコトヲ妨ケス（擔一八六、二四〇）
本條ハ抵當權ヲ以テ擔保スル債權ニ利息其他ノ定期金アル場合ニ付テ規定シタルモノナリ蓋シ利息其他ノ定期金ハ通常每期ニ之ヲ請求スヘキモノニシテ其長ク延滯スルカ如キコトハ極メテ稀ナル所ナリ故ニ他ノ債權者カ抵當アル債權ニ利息アルコトヲ知ルモ其數年分カ延滯シテ皆抵當ニ由リテ擔保セラルルモノナラント信セサルハ當然ニシテ若シ數年前ノ利息ノ延滯セルヲ名トシテ之ニ付テ抵當權ヲ行フコトヲ得ルモノトセハ他ノ債權者ハ不慮ノ損失ヲ被ムルコト稀ナリトセサルヘシ是レ本條ニ於テ滿期ト爲リタル最後ノ二年分ニ付テノミ其抵當權ヲ行フコトヲ得ルモノトセル所以ナリ例ヘハ每年十二月三十一日ニ利息ヲ支拂フヘキ場合ニ於テ明治二十九年七月ニ抵當權ヲ行フヘキモノトセハ明治二十七年及ヒ同二十八年ノ兩年分ニ付テノミ抵當權ヲ行フコトヲ得ヘシ故ニ明治二十六年以前ノ利息ノ延滯スルモノアルモ抵當權ヲ以テ之ヲ請求スルコトヲ得ス尙ホ定期金ハ五年ノ短期時效ニ罹ルヘキモノトシタルモ全ク同一ノ理由ニ基キタルモノナリ（一六九、一卷三六〇頁）
然リト雖モ元來抵當權ハ利息附債權ニ付テハ其利息ヲモ擔保スヘキハ固ヨリニシテ苟モ其利息アルコトヲ登記スル以上ハ其利息ヲ請求スルニモ亦抵當權ヲ行フコトヲ得ルヲ本則トスルハ勿論ナリ况ヤ利息ナラサル定期金ノ如キハ元本ノ一部ナルカ故ニ抵當權ヲ以テ之ヲ請求スルコトヲ得ヘキハ固ヨリ言フヲ竢タス然ルニ假令債權者ニ直チニ之ヲ請求セサルノ怠慢アルニモセヨ債務者カ未タ辨濟ヲ爲ササルニ二年以外ノ定期金ニ付テハ抵當權全ク消滅スルモノト爲スハ蓋シ法律ノ干涉深キニ過キ却テ不公平ノ誹ヲ免レ難キカ如シ故ニ本條但書ヲ以テ前ニ論シタル二年分ノ定期金ノ外若シ特別ノ登記ヲ爲ストキハ尙ホ抵當權ヲ以テ之ヲ請求スルコトヲ得ヘキモノトセリ唯此定期金ニ付テハ登記ノ日ヨリ抵當權ヲ行フコトヲ得ルモノニシテ初ノ登記ト同順位ニ於テ之ヲ行フコトヲ許ササルノミ之ニ依リテ一方ニ於テハ抵當權者ヲシテ其抵當權ヲ失ハサラシメ他ノ一方ニ於テハ登記ニ因リ他ノ債權者ヲシテ意外ノ損失ヲ被ムルコトナカラシメタリ例ヘハ甲カ明治二十六年一月一日ニ抵當權ヲ得乙カ同年二月一日ニ同一ノ不動產ニ付キ第二ノ抵當權ヲ得タリトセンニ若シ甲ノ債權カ利息附ニシテ明治二十九年ニ至ルマテ甲カ未タ一錢ノ利息ヲ受取ラサルモ明治二十六年分ノ利息ニ付テハ翌二十七年一月一日ニ登記ヲ爲シタリトセハ二十九年ニ至リ抵當權ヲ實行セント欲スルニ當リ甲ハ第一ニ其債權ノ元本及ヒ明治二十七八兩年ノ利息ヲ受ケ次ニ乙ハ其債權ノ全部ノ辨濟ヲ受ケ尙ホ餘アルニ非サレハ甲ハ明治二十六年分ノ利息ヲ受クルコト能ハサルノ類是ナリ
第三百七十四條 抵當權者カ其利息其他ノ定期金ヲ請求スル權利ヲ有スルトキハ其滿期ト爲リタル最後ノ二年分ニ付テノミ其抵當權ヲ行フコトヲ得但其以前ノ定期金ニ付テモ滿期後特別ノ登記ヲ爲シタルトキハ其登記ノ時ヨリ之ヲ行フコトヲ妨ケス
前項ノ規定ハ抵當權者カ債務ノ不履行ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スル權利ヲ有スル場合ニ於テ其最後ノ二年分ニ付テモ亦之ヲ適用ス但利息其他ノ定期金ト通シテ二年分ヲ超ユルコトヲ得ス（擔一八六、二四〇、三四年四月一二日法三六號）
本條ハ抵當權ヲ以テ擔保スル債權ニ利息其他ノ定期金アル場合ニ付テ規定シタルモノナリ蓋シ利息其他ノ定期金ハ通常每期ニ之ヲ請求スヘキモノニシテ其長ク延滯スルカ如キコトハ極メテ稀ナル所ナリ故ニ他ノ債權者カ抵當アル債權ニ利息アルコトヲ知ルモ其數年分カ延滯シテ皆抵當ニ由リテ擔保セラルルモノナラント信セサルハ當然ニシテ若シ數年前ノ利息ノ延滯セルヲ名トシテ之ニ付テ抵當權ヲ行フコトヲ得ルモノトセハ他ノ債權者ハ不慮ノ損失ヲ被ムルコト稀ナリトセサルヘシ是レ本條ニ於テ滿期ト爲リタル最後ノ二年分ニ付テノミ其抵當權ヲ行フコトヲ得ルモノトセル所以ナリ例ヘハ每年十二月三十一日ニ利息ヲ支拂フヘキ場合ニ於テ明治四十一年七月ニ抵當權ヲ行フヘキモノトセハ明治三十九年及ヒ同四十年ノ兩年分ニ付テノミ抵當權ヲ行フコトヲ得ヘシ故ニ明治三十八年以前ノ利息ノ延滯スルモノアルモ抵當權ヲ以テ之ヲ請求スルコトヲ得ス尙ホ定期金ハ五年ノ短期時效ニ罹ルヘキモノトシタルモ全ク同一ノ理由ニ基キタルモノナリ（一六九、三十八年版一卷四二八頁）
然リト雖モ元來抵當權ハ利息附債權ニ付テハ其利息ヲモ擔保スヘキハ固ヨリニシテ苟モ其利息アルコトヲ登記スル以上ハ其利息ヲ請求スルニ付テモ亦抵當權ヲ行フコトヲ得ルヲ本則トスルハ勿論ナリ况ヤ利息ナラサル定期金ノ如キハ元本ノ一部ナルカ故ニ抵當權ヲ以テ之ヲ請求スルコトヲ得ヘキハ固ヨリ言フヲ竢タス然ルニ假令債權者ニ直チニ之ヲ請求セサルノ怠慢アルニモセヨ債務者カ未タ辨濟ヲ爲ササルニ二年以外ノ定期金ニ付テハ抵當權全ク消滅スルモノト爲スハ蓋シ法律ノ干涉深キニ過キ却テ不公平ノ誹ヲ免レ難キカ如シ故ニ本條但書ヲ以テ前ニ論シタル二年分ノ定期金ノ外若シ特別ノ登記ヲ爲ストキハ尙ホ抵當權ヲ以テ之ヲ請求スルコトヲ得ヘキモノトセリ唯此定期金ニ付テハ登記ノ日ヨリ抵當權ヲ行フコトヲ得ルモノニシテ初ノ登記ト同順位ニ於テ之ヲ行フコトヲ許ササルノミ之ニ依リテ一方ニ於テハ抵當權者ヲシテ其抵當權ヲ失ハサラシメ他ノ一方ニ於テハ他ノ債權者ヲシテ意外ノ損失ヲ被ムルコトナカラシメタリ例ヘハ甲カ明治三十八年一月一日ニ抵當權ヲ得乙カ同年二月一日ニ同一ノ不動產ニ付キ第二ノ抵當權ヲ得タリトセンニ若シ甲ノ債權カ利息附ニシテ明治四十一年ニ至ルマテ甲カ未タ一錢ノ利息ヲ受取ラサルモ明治三十八年分ノ利息ニ付テハ翌三十九年一月一日ニ登記ヲ爲シタリトセハ四十一年ニ至リ抵當權ヲ實行セント欲スルニ當リ甲ハ第一ニ其債權ノ元本及ヒ明治三十九年及ヒ同四十年ノ兩年分ノ利息ヲ受ケ次ニ乙ハ其債權全部ノ辨濟ヲ受ケ尙ホ餘アルニ非サレハ甲ハ明治三十八年分ノ利息ヲ受クルコト能ハサルノ類是ナリ
本條第一項ニハ汎ク利息 ト云ヘルカ故ニ其約定利息ト遲延利息トヲ併セテ包含セルコト最モ明カナリ然ルニ大審院カ一タヒ誤リテ其中ニ遲延利息ヲ包含セスト判決シテヨリ（三十三年五月二日判決）大ニ輿論ノ憂慮ヲ招キ終ニ明治三十四年法律第三十六號ヲ以テ第二項ヲ追加スルニ至リタルハ余カ深ク遺憾トスル所ナリ然レトモ是レ唯第一項ノ意義ヲ明カニシタルニ過キスシテ決シテ之ヲ改メタルニ非サル證據ハ第二項ニ「適 用ス」ト云ヒテ「準 用ス」ト云ハサルニ在ルナリ但大審院ハ反對ノ解釋ヲ取リ右ノ法律施行前ニ設定シタル抵當權ニ付テハ其謬見ヲ固執セルハ余カ取ラサル所ナリ（最近ノ一例ヲ擧クレハ三十八年二月二十五日判決、尙ホ法學志林一二號五四頁參觀）
本條ノ規定ハ債務者カ破產ノ宣吿ヲ受ケタル場合ニ於テ特ニ其必要ヲ感スルナリ蓋シ破產ノ場合ニ於テハ通常ノ債權者ハ一切破產宣吿後ノ利息ヲ請求スルコト能ハス而シテ獨リ抵當權者、質權者、先取特權者等（本條ハ質權者及ヒ不動產ニ關スル先取特權者ニ準用スヘキコトハ三四一、三六一ニ明カナル所ナリ）ハ將來ノ利息ヲ請求スルコトヲ得ルカ故ニ若シ本條ノ制限ナクンハ最モ不公平ナル結果ヲ生スヘキノミ（舊商九八九、又九九二ヲ參觀セヨ）