278条
永小作権ノ存続期間ハ二十年以上五十年以下トス若シ五十年ヨリ長キ期間ヲ以テ永小作権ヲ設定シタルトキハ其期間ハ之ヲ五十年ニ短縮ス
永小作権ノ設定ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間ハ更新ノ時ヨリ五十年ヲ超ユルコトヲ得ス
設定行為ヲ以テ永小作権ノ存続期間ヲ定メサリシトキハ其期間ハ別段ノ慣習アル場合ヲ除ク外之ヲ三十年トス
第二百七十八條 永小作權ノ存續期間ハ二十年以上五十年以下トス若シ五十年ヨリ長キ期間ヲ以テ永小作權ヲ設定シタルトキハ其期間ハ之ヲ五十年ニ短縮ス
永小作權ノ設定ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間ハ更新ノ時ヨリ五十年ヲ超ユルコトヲ得ス
設定行爲ヲ以テ永小作權ノ存續期間ヲ定メサリシトキハ其期間ハ別段ノ慣習アル場合ヲ除ク外之ヲ三十年トス（財一五五）
本條ハ永小作權ノ存續期間ヲ定メタルモノナリ蓋シ其期間ハ設定行爲ヲ以テ之ヲ定ムヘキヲ本則トスルト雖モ之ニ制限ヲ設ケ二十年ヲ下リ若クハ五十年ヲ超ユルコトヲ得サルモノトセリ是レ他ナシ二十年未滿ノ期間ヲ以テスルモノハ特ニ永小作權トシテ之ヲ保護スルノ要ナク寧ロ賃借權トシテ之ヲ保護スルヲ妥當トシタルナリ而シテ五十年ヲ超ユルコトヲ得サルモノトシタルハ他ナシ其期間長キニ失スルトキハ竟ニ所有權ト擇ハサルニ至ルノ虞アリ是レ土地ノ制度ニ關シ徃徃混雜ヲ生スルノ虞アルノミナラス地主ハ僅少ノ小作料ヲ受クルノ外土地ヨリ如何ナル利益ヲモ收メサルカ故ニ之ヲ改良スルノ念ナク永小作人モ亦元來他人ノ土地ナルカ故ニ自己ノ所有地ノ如ク充分ニ之ヲ改良スルコトヲ望ムヘカラス殊ニ土地ノ價格及ヒ其生產力ハ世ノ進步スルニ從ヒ次第ニ增進スルヲ常トスルカ故ニ永小作權設定ノ時ヨリ五十年ヲ經過セハ其小作料ハ大抵殆ト有名無實ノ小額ト爲ルコト多カルヘシ况ヤ六七十年乃至百數十年ノ後ニ於テヲヤ故ニ若シ五十年ヲ超ユルノ長期永小作ヲ認ムルトキハ小作料ヲ相當ノ額ニ增加スルコトヲ得ルモノトスルニ非サレハ實ニ不公平ノ結果ニ至ルヘシ然リト雖モ法廷ニ於テ當事者ノ契約ヲ左右スルカ如キハ力メテ避クヘキ所ナリ故ニ寧ロ其期間ヲ制限シテ此煩ヲ避クルノ愈レルニ如カス但從來已ニ存スルモノノ中ニハ徃徃永久其他五十年ヲ超ユル長期ノモノ尠カラサルカ如シ之ニ付テハ必ス民法施行條例ニ於テ特ニ規定スル所アラン
一旦五十年ヲ以テ最長期トシタル以上ハ若シ當事者カ是ヨリ長キ期間ヲ以テ永小作權ヲ設定シタルトキハ其行爲ハ違法ニシテ或ハ無效ナルヘキカヲ疑フ者アラント雖モ是レ全體ニ於テ違法ナルニ非ス唯其期間ノミカ違法ナルヲ以テ單ニ其期間ヲ五十年ニ短縮セリ是レ或ハ當事者ノ契約ヲ左右スルノ嫌ナキニ非スト雖モ而モ當事者ハ其契約ヲ全然無效トセラレンヨリハ寧ロ其期間ノミヲ短縮セラルルヲ便トスヘキヲ慮リタルナリ
以上ノ規定ニ依レハ永小作權ハ決シテ五十年ヨリ長ク存續スルコトヲ得サルカ如シト雖モ當事者ハ徃徃ニシテ其是ヨリ長ク存續スルコトヲ希望スルコトナシトセス此場合ニ於テハ法律ハ絕對ニ之ヲ禁スルモノニ非ス故ニ當事者ハ初ノ永小作權ノ未タ消滅セサルニ及ヒ更ニ永小作契約ヲ取結フコトヲ得ヘシ唯此場合ニ於テモ其期間ハ後ノ永小作契約締結ノ時ヨリ五十年ヲ超エサルコトヲ要ス例ヘハ明治二十九年ニ五十年ノ期間ヲ以テ永小作權ヲ設定シ明治四十年ニ至リテ之ヲ更新スルトセンニ其新永小作ノ期間ハ明治四十年ヨリ五十年即チ明治九十年ヲ超ユルコトヲ得サルモノトス
以上ハ設定行爲ヲ以テ期間ヲ定メタル場合ニ付テ論セリ若シ當事者ニシテ期間ヲ定メサリシトキハ如何曰ク本條第三項ノ規定ニ依レハ此場合ニ於テハ專ラ慣習ニ依ルヲ本則トシ若シ明確ナル慣習ナクンハ其期間ハ常ニ之ヲ三十年トセリ是レ蓋シ已ムコトヲ得サルノ規定ト謂フヘシ
第二百七十八條 永小作權ノ存續期間ハ二十年以上五十年以下トス若シ五十年ヨリ長キ期間ヲ以テ永小作權ヲ設定シタルトキハ其期間ハ之ヲ五十年ニ短縮ス
永小作權ノ設定ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間ハ更新ノ時ヨリ五十年ヲ超ユルコトヲ得ス
設定行爲ヲ以テ永小作權ノ存續期間ヲ定メサリシトキハ其期間ハ別段ノ慣習アル場合ヲ除ク外之ヲ三十年トス（財一五五）
本條ハ永小作權ノ存續期間ヲ定メタルモノナリ蓋シ其期間ハ設定行爲ヲ以テ之ヲ定ムヘキヲ本則トスルト雖モ之ニ制限ヲ設ケ二十年ヲ下リ若クハ五十年ヲ超ニルコトヲ得サルモノトセリ是レ他ナシ二十年未滿ノ期間ヲ以テスルモノハ特ニ永小作權トシテ之ヲ保護スルノ要ナク寧ロ賃借權トシテ之ヲ保護スルヲ妥當トシタレハナリ而シテ五十年ヲ超ユルコトヲ得サルモノトシタルハ他ナシ其期間長キニ失スルトキハ竟ニ所有權ト擇ハサルニ至ルノ虞アリ是レ土地ノ制度ニ關シ往往混雜ヲ生スルノ虞アルノミナラス地主ハ僅少ノ小作料ヲ受クルノ外土地ヨリ如何ナル利益ヲモ收メサルカ故ニ之ヲ改良スルノ念ナク永小作人モ亦元來他人ノ土地ナルカ故ニ自己ノ所有地ノ如ク充分ニ之ヲ改良スルコトヲ望ムヘカラス且ヤ永小作權ノ存續期間內ハ所有者ハ其土地ヲ使用スルコト能ハサルカ故ニ之ヲ讓受クル者稀ニシテ其取引ヲ妨クルノ虞アリ殊ニ土地ノ價格及ヒ其生產力ハ世ノ進步スルニ從ヒ次第ニ增進スルト共ニ金錢ノ價格ハ次第ニ低下スルヲ常トスルカ故ニ永小作權設定ノ時ヨリ五十年ヲ經過セハ其小作料ハ大抵殆ト有名無實ノ小額ト爲ルコト多カルヘシ况ヤ六七十年乃至百數十年ノ後ニ於テヲヤ故ニ若シ五十年ヲ超ユルノ長期永小作ヲ認ムルトキハ小作料ヲ相當ノ額ニ增加スルコトヲ得ルモノトスルニ非サレハ實ニ不公平ノ結果ニ至ルヘシ然リト雖モ法廷ニ於テ當事者ノ契約ヲ左右スルカ如キハ力メテ避クヘキ所ナリ故ニ寧ロ其期間ヲ制限シテ此煩ヲ避クルノ愈レルニ如カス但從來已ニ存スルモノノ中ニハ往往永久其他五十年ヲ超ユル長期ノモノ尠カラサルカ如シ之ニ付テハ民法施行法第四十七條ニ於テ特ニ規定スル所アリ就テ看ルヘシ
一旦五十年ヲ以テ最長期トシタル以上ハ若シ當事者カ是ヨリ長キ期間ヲ以テ永小作權ヲ設定シタルトキハ其行爲ハ違法ニシテ或ハ無效ナルヘキカヲ疑フ者アラント雖モ是レ全體ニ於テ違法ナルニ非ス唯其期間ノミカ違法ナルヲ以テ單ニ其期間ヲ五十年ニ短縮セリ是レ或ハ當事者ノ契約ヲ左右スルノ嫌ナキニ非スト雖モ而モ當事者ハ其契約ヲ全然無效トセラレンヨリハ寧ロ其期間ノミヲ短縮セラルルヲ便トスヘキヲ慮リタルモノナリ
以上ノ規定ニ依レハ永小作權ハ決シテ五十年ヨリ長ク存續スルコトヲ得サルカ如シト雖モ當事者ハ往往ニシテ其是ヨリ長ク存續スルコトヲ希望スルコトナシトセス此場合ニ於テハ法律ハ絕對ニ之ヲ禁スルモノニ非ス故ニ當事者ハ初ノ永小作權ノ未タ消滅セサルニ及ヒ更ニ永小作契約ヲ取結フコトヲ得ヘシ唯此場合ニ於テモ其期間ハ後ノ永小作契約締結ノ時ヨリ五十年ヲ超エサルコトヲ要ス例ヘハ明治四十一年ニ五十年ノ期間ヲ以テ永小作權ヲ設定シ明治六十年ニ至リテ之ヲ更新スルトセンニ其新永小作ノ期間ハ明治六十年ヨリ五十年即チ明治百十年ヲ超ユルコトヲ得サルモノトス
以上ハ設定行爲ヲ以テ期間ヲ定メタル場合ニ付テ論セリ若シ當事者ニシテ期間ヲ定メサリシトキハ如何本條第三項ハ之ニ答ヘテ曰ク此場合ニ於テハ專ラ慣習ニ依ルヲ本則トシ（本條第一項ハ此場合ニモ適用アルヘキカ故ニ若シ從來ノ慣習ニ依レハ其期間五十年ヨリ長カルヘキトキハ最長期即チ五十年ヲ以テ慣習上ノ期間トスヘシ）若シ明確ナル慣習ナクンハ其期間ハ常ニ之ヲ三十年トセリ是レ蓋シ已ムコトヲ得サルノ規定ト謂フヘシ（衆議院ニ於テ最短期十年ノ原案ヲ改メテ二十年ト爲シタル以上ハ三十年モ亦之ヲ三十五年又ハ四十年ニ改ムヘカリシカ如シ）