310条
日用品供給ノ先取特権ハ債務者又ハ其扶養スヘキ同居ノ親族並ニ家族及ヒ其僕婢ノ生活ニ必要ナル最後ノ六个月間ノ飲食品及ヒ薪炭油ノ供給ニ付キ存在ス
第三百十條 日用品供給ノ先取特權ハ債務者又ハ其扶養スヘキ同居ノ親族竝ニ家族及ヒ其僕婢ノ生活ニ必要ナル最後ノ六个月間ノ飮食品及ヒ薪炭油ノ供給ニ付キ存在ス（擔一四二）
本條ハ日用品供給ノ先取特權 ニ付テ規定セリ日用品トハ飮食品及ヒ薪炭油ヲ云ヘルモノニシテ之ニ付テ先取特權ヲ與フル所以ノモノ他ナシ是等ノ物ハ皆生活ニ必要ナル物ナルカ故ニ若シ之ニ付テ先取特權ヲ與ヘサレハ負債多キ債務者ハ其生活ノ爲メ右ノ日用品ヲ買ハント欲スルモ現金ニ非サレハ之ヲ賣ル者アラサルヘシ而シテ貧困ナル債務者ハ常ニ現金ニテ之ヲ買フコト能ハサルカ故ニ飢餓ニ瀕スルコト稀ナリトセサルヘシ是レ事情實ニ憐ムヘキモノニシテ法律ノ宜シク保護スヘキ所ナリ故ニ本條ノ先取特權ヲ設ケタリ
右ノ理由ナルカ故ニ先取特權ノ原因タル日用品ハ必ス生活ニ必要ナル物タルコトヲ要ス例ヘハ酒類、菓子類等ハ此中ニ入ラス又米鹽、薪炭ノ如キ必要品ト雖モ其量甚タ多クシテ生活ニ必要ナラサル程度ニ達スルトキハ其生活ニ必要ナル程度ニ於テノミ先取特權アルモノトス例ヘハ一戶三口ノ者一月ニ一石ノ米ヲ購ヒタル場合ノ如キハ其一部例ヘハ三斗ハ生活ニ必要ナリト雖モ他ノ七斗ハ必ス他ニ用フル所アリテ之ヲ購ヒタルモノニシテ敢テ生活ニ必要ナリト謂フコトヲ得ス此場合ニ於テハ其三斗ニ付テハ先取特權アリト雖モ他ノ七斗ニ付テハ之アルコトナシ又「生活ニ必要ナル」ト云フハ債務者及ヒ其扶養スヘキ同居ノ親族、家族竝ニ其僕婢ノ生活ニ必要ナルヲ云フ故ニ例ヘハ扶養スルコトヲ要セサル親族カ同居スルモ其者ノ生活ニ必要ナル日用品ノ代價ニ付テハ先取特權アルコトナシ（人事編ニ依レハ叔姪間ニ於テハ扶養ノ義務ナシ况ヤ從兄弟姉妹間ニ於テヲヤ）又債務者ノ扶養スヘキ親族又ハ家族ナルモ債務者ト同居セザル者ノ生活ニ必要ナル日用品ノ代價ニ付テハ亦先取特權アルコトナシ是レ他ナシ扶養ノ義務ナルモノハ扶養ヲ爲ス者ト扶養ヲ受クル者トノ資力ノ程度ニ從ヒ之ヲ定ムヘキモノニシテ（人二九）先取特權ノ必要アル債務者ノ如キ無資力者ハ多クハ同居セサル親族又ハ家族ニ米金ヲ支給スヘキ義務ナシ而シテ債權者ハ同居ノ親族、家族ハ債務者カ扶養スヘキ者ナルコトヲ知ルヘキモ同居セサル親族、家族ハ債權者之ヲ知ラサルコト多キヲ以テ其扶養ノ費用ニ付テモ亦先取特權アルモノトスルトキハ債權者ハ意外ノ損失ヲ被ムルノ虞アリ是等ノ理由ニ因リテ本條ニ於テハ同居ノ親族、家族ノ生活ニ必要ナル物ニ付テ先取特權アル旨ヲ規定シタルナリ
以上述フルカ如キ必要ナル日用品ノ代價ト雖モ一年乃至數年間ノモノニ付キ皆先取特權アルモノトスルトキハ竟ニ巨額ニ上リ他ノ債權者ハ殆ト辨濟ヲ受クルコト能ハサルニ至ルノ虞アリ故ニ是レ亦之ヲ六个月ニ限レリ蓋シ是等ノ物ノ代價ハ通常速ニ之ヲ辨濟スヘキモノニシテ六个月以上之ヲ辨濟セサルカ如キコトハ寧ロ例外ニ屬スヘキヲ以テ之ヲ六个月ニ限リタルナリ尙ホ是等ノ債權ハ二年ノ短期時效ニ罹ルヘキモノナルコトヲ思フヘシ（一七三、一號）
第三百十條 日用品供給ノ先取特權ハ債務者又ハ其扶養スヘキ同居ノ親族竝ニ家族及ヒ其僕婢ノ生活ニ必要ナル最後ノ六个月間ノ飮食品及ヒ薪炭油ノ供給ニ付キ存在ス（擔一四二）
本條ハ日用品供給ノ先取特權 ニ付テ規定セリ日用品トハ飮食品及ヒ薪炭油ヲ云ヘルモノニシテ之ニ付テ先取特權ヲ與フル所以ノモノ他ナシ是等ノ物ハ皆生活ニ必要ナル物ナルカ故ニ若シ之ニ付テ先取特權ヲ與ヘサレハ負債多キ債務者ハ其生活ノ爲メ右ノ日用品ヲ買ハント欲スルモ現金ニ非サレハ之ヲ賣ル者アラサルヘシ而シテ貧困ナル債務者ハ常ニ現金ニテ之ヲ買フコト能ハサルカ故ニ飢餓ニ瀕スルコト稀ナリトセサルヘシ是レ事情實ニ憐ムヘキモノニシテ法律ノ宜シク保護スヘキ所ナリ故ニ本條ノ先取特權ヲ設ケタリ
右ノ理由ナルカ故ニ先取特權ノ原因タル日用品ハ必ス生活ニ必要ナル物タルコトヲ要ス例ヘハ酒類、菓子類等ハ此中ニ入ラス又米鹽、薪炭ノ如キ必要品ト雖モ其量甚タ多クシテ生活ニ必要ナラサル程度ニ達スルトキハ其生活ニ必要ナル程度ニ於テノミ先取特權アルモノトス例ヘハ一戶三口ノ者一月ニ一石ノ米ヲ購ヒタル場合ノ如キハ其一部例ヘハ三斗ハ生活ニ必要ナリト雖モ他ノ七斗ハ必ス他ニ用フル所アリテ之ヲ購ヒタルモノニシテ敢テ生活ニ必要ナリト謂フコトヲ得ス此場合ニ於テハ其三斗ニ付テハ先取特權アリト雖モ他ノ七斗ニ付テハ之アルコトナシ又「生活ニ必要ナル」ト云フハ債務者及ヒ其扶養スヘキ同居ノ親族、家族竝ニ其僕婢ノ生活ニ必要ナルヲ云フ故ニ例ヘハ扶養スルコトヲ要セサル親族カ同居スルモ其者ノ生活ニ必要ナル日用品ノ代價ニ付テハ先取特權アルコトナシ（親族編ノ規定〔九五四〕ニ依レハ叔姪間ニ於テハ扶養ノ義務ナシ况ヤ從兄弟姉妹間ニ於テヲヤ）又債務者ノ扶養スヘキ親族又ハ家族ナルモ債務者ト同居セサル者ノ生活ニ必要ナル日用品ノ代價ニ付テハ亦先取特權アルコトナシ是レ他ナシ扶養ノ義務ナルモノハ扶養ヲ爲ス者ト扶養ヲ受クル者トノ資力ノ程度ニ從ヒ之ヲ定ムヘキモノニシテ（九六〇）先取特權ノ必要アル債務者ノ如キ無資力者ハ多クハ同居セサル親族又ハ家族ニ米金ヲ支給スヘキ義務ナシ且債權者ハ同居ノ親族、家族ハ債務者カ扶養スヘキ者ナルコトヲ知ルヘキモ同居セサル親族、家族ハ債權者之ヲ知ラサルコト多キヲ以テ其扶養ノ費用ニ付テモ亦先取特權アルモノトスルトキハ債權者ハ意外ノ損失ヲ被ムルノ虞アリ是等ノ理由ニ因リテ本條ニ於テハ同居ノ親族、家族ノ生活ニ必要ナル物ニ付テノミ先取特權アル旨ヲ規定セリ
以上述フルカ如キ必要ナル日用品ノ代價ト雖モ一年乃至數年間ノモノニ付キ皆先取特權アルモノトスルトキハ竟ニ巨額ニ上リ他ノ債權者ハ殆ト辨濟ヲ受クルコト能ハサルニ至ルノ虞アリ故ニ是レ亦之ヲ六个月ニ限レリ蓋シ是等ノ物ノ代價ハ通常速ニ之ヲ辨濟スヘキモノニシテ六个月以上之ヲ辨濟セサルカ如キコトハ寧ロ例外ニ屬スヘキヲ以テナリ尙ホ是等ノ債權ハ二年ノ短期時效ニ罹ルヘキモノナルコトヲ思フヘシ（一七三、一號）