243条
各別ノ所有者ニ属スル数個ノ動産カ附合ニ因リ毀損スルニ非サレハ之ヲ分離スルコト能ハサルニ至リタルトキハ其合成物ノ所有権ハ主タル動産ノ所有者ニ属ス分離ノ為メ過分ノ費用ヲ要スルトキ亦同シ
第二百四十三條 各別ノ所有者ニ屬スル數個ノ動產カ附合ニ因リ毀損スルニ非サレハ之ヲ分離スルコト能ハサルニ至リタルトキハ其合成物ノ所有權ハ主タル動產ノ所有者ニ屬ス分離ノ爲メ過分ノ費用ヲ要スルトキ亦同シ（取七、一四、一五）
本條以下第二百四十六條ニ至ルマテハ動產ノ添附ニ關セリ動產ノ添附ニ三アリ曰ク附合 曰ク混和 （Confusion ou mélange, Vermengung oder Vermischung）曰ク加工 （Spécification, Verarbeitung）是ナリ而シテ本條及ヒ次條ハ其附合 ニ關セリ動產ノ附合ハ二個以上ノ動產カ附著、合併シテ一物ヲ成シ之ヲ毀損スルニ非サレハ到底之ヲ分離スルコト能ハサルニ至リタルナリ而シテ其附合ニ因リテ成リタル物ヲ合成物 ト云フ此場合ニ於テハ始メ二個以上ナリシ物カ合シテ一個ト爲リタルカ故ニ其附合シタル物カ各〻別異ノ所有者ニ屬セシ場合ニ於テハ毀損ヲ厭ハス之ヲ分離シテ舊ニ復スルニ非サレハ必ス其各自ノ所有權ハ一旦消滅シタルモノト看サルコトヲ得ス然ルニ之ヲ毀損スルハ國家ノ經濟上甚タ不利益ニシテ且最モ多クノ場合ニ於テハ其各所有者ノ爲メニモ利益ト爲ラサルヘシ故ニ立法者ハ一旦其各所有者ノ權利消滅スルモノト視テ更ニ合成物ニ付キ權利ヲ生スヘキモノトセリ此合成物ノ所有權ニ付テハ或ハ其所有者ノ一人ニ之ヲ與フルカ又ハ之ヲ其共有物ト爲スカ二者其一ニ居ラサルヘカラス而シテ第一方ヲ取レハ其所有者ノ誰ヲ以テ合成物ノ所有者トスヘキカ第二方ヲ取レハ其共有ノ割合如何ヲ定メサルヘカラス是レ本條及ヒ次條ニ規定スル所ナリ
先ツ本條ニ於テハ原則トシテ第一方ヲ取リ合成物ノ所有權ハ附合シタル物ノ中其主タルモノノ所有者ニ屬スヘキモノトセリ是レ他ナシ共有ナルモノハ不便多キモノニシテ經濟上最モ希望スヘキモノニ非サルカ故ニ力メテ之ヲ避ケ寧ロ一人ヲシテ其物ノ全部ヲ所有セシムルコトトセシナリ
物ノ附合ノ程度ハ如何ナルモノタルコトヲ要スルカハ是亦事實問題ニシテ一般ニ之ヲ規定スルコト能ハスト雖モ例ヘハ右ニ例示セル場合ノ如ク或ル物質ヲ以テ其物ヲ附着セシメ之ヲ分離スルトキハ必ス多少ノ毀損ヲ生スヘキ場合ニハ固ヨリ本條ノ適用ヲ受クヘキモノトス其他附着ノ程度ハ右ニ述フルカ如クナラサルモ其分離ノ結果、物カ其性質ヲ失フニ至ルヘキトキハ亦之ヲ毀損ト謂ハサルヘカラス例ヘハ他人ノ所有ニ屬スル裏地ヲ用ヒテ衣服ヲ製シタル場合ノ如キハ固ヨリ之ヲ分離スルコトヲ得ルト雖モ若シ之ヲ分離スレハ復衣服ニ非ス唯一ノ切地ヲ生スルノミ乃チ衣服トシテハ之ヲ毀損シタルモノト謂ハサルコトヲ得ス故ニ之ニ本條ノ規定ヲ適用スヘキコト固ヨリナリ
附合ハ素ト毀損スルニ非サレハ分離スヘカラサル物ニ付テ存スルヲ本則トスルト雖モ若シ分離ノ爲メ莫大ノ費用ヲ要シ其費用却テ物ノ價ヨリモ多ク又ハ物ノ價ノ大部分ニ相當スルカ如キ場合ニ於テハ之ヲ分離スルハ經濟上大ナル不利益ニシテ各當事者ノ爲メニモ不利益多キヲ常トス故ニ之ニ附合ノ規定ヲ適用スヘキハ固ヨリ當然ナリ是レ本條ノ末文アル所以ナリ例ヘハ襖又ハ屛風ニ張リタル紙ハ經師屋ヲ雇ヒテ之ヲ剝取ラシムレハ或ハ其紙ヲ扯裂セス又襖若クハ屛風ヲ毀損スルコトナク之ヲ剝取ルコトヲ得サルニ非スト雖モ爲メニ莫大ノ費用ヲ要シ却テ其費用、紙ノ代價ヨリモ多キコトアルヘシ故ニ此場合ニ於テモ本條ノ規定ニ依リ其紙ノ所有者ハ之ヲ剝取ルコトヲ得サルモノトス
本條ノ規定ニ依リテ各物ノ所有權消滅スルノ結果ニ付テハ後ノ第二百四十七條ニ規定アルヲ以テ其消滅ノ爲メ實際不便ヲ感スルコトナカルヘシ
第二百四十三條 各別ノ所有者ニ屬スル數個ノ動產カ附合ニ因リ毀損スルニ非サレハ之ヲ分離スルコト能ハサルニ至リタルトキハ其合成物ノ所有權ハ主タル動產ノ所有者ニ屬ス分離ノ爲メ過分ノ費用ヲ要スルトキ亦同シ（取七、一四、一五）
本條以下第二百四十六條ニ至ルマテハ動產ノ添附ニ關セリ動產ノ添附ニ三アリ曰ク附合 曰ク混和 （confusio avt commixtio, confusion ou mélange, Vermengung oder Vermischung）曰ク加工 （spécification, Verarbeitung）是ナリ而シテ本條及ヒ次條ハ其附合ニ關セリ動產ノ附合ハ二個以上ノ動產カ附著、合併シテ一物ヲ成シ之ヲ毀損スルニ非サレハ到底之ヲ分離スルコト能ハサルニ至リタルナリ而シテ其附合ニ因リテ成リタル物ヲ合成物 ト云フ此場合ニ於テハ初メ二個以上ナリシ物カ合シテ一個ト爲リタルカ故ニ其附合シタル物カ各〻別異ノ所有者ニ屬セシ場合ニ於テハ毀損ヲ厭ハス之ヲ分離シテ舊ニ復スルニ非サレハ必ス其各自ノ所有權ハ一旦消滅シタルモノト看サルコトヲ得ス然ルニ之ヲ毀損スルハ國家ノ經濟上甚タ不利益ニシテ且最モ多クノ場合ニ於テハ其各所有者ノ爲メニモ利益ト爲ラサルヘシ故ニ立法者ハ一旦其各所有者ノ權利消滅スルモノト視テ更ニ合成物ニ付キ權利ヲ生スヘキモノトセリ此合成物ノ所有權ニ付テハ或ハ其所有者ノ一人ニ之ヲ與フルカ又ハ之ヲ其共有物ト爲スカ二者其一ニ居ラサルヘカラス而シテ第一方ヲ取レハ其所有者ノ誰ヲ以テ合成物ノ所有者トスヘキカ、第二方ヲ取レハ其共有ノ割合如何ヲ定メサルヘカラス是レ本條及ヒ次條ニ規定スル所ナリ
先ツ本條ニ於テハ原則トシテ第一方ヲ取リ合成物ノ所有權ハ附合シタル物ノ中其主タルモノノ所有者ニ屬スヘキモノトセリ是レ他ナシ共有ナルモノハ不便多キモノニシテ經濟上最モ希望スヘキモノニ非サルカ故ニ力メテ之ヲ避ケ寧ロ一人ヲシテ其物ノ全部ヲ所有セシムルコトトセシナリ
物ノ附合ノ程度ハ如何ナルモノタルコトヲ要スルカハ是レ亦事實問題ニシテ一般ニ之ヲ規定スルコト能ハスト雖モ例ヘハ右ニ例示セル場合ノ如ク或ル物質ヲ以テ其物ヲ附着セシメ之ヲ分離スルトキハ必ス多少ノ毀損ヲ生スヘキ場合ニハ固ヨリ本條ノ適用ヲ受クヘキモノトス其他附着ノ程度ハ右ニ述フルカ如クナラサルモ其分離ノ結果、物カ其性質ヲ失フニ至ルヘキトキハ亦之ヲ毀損ト謂ハサルヘカラス例ヘハ他人ノ所有ニ屬スル裏地ヲ用ヒテ衣服ヲ製シタル場合ノ如キハ固ヨリ之ヲ分離スルコトヲ得ルト雖モ若シ之ヲ分離スレハ復衣服ニ非ス唯一ノ切地ヲ生スルノミ乃チ衣服トシテハ之ヲ毀損シタルモノト謂ハサルコトヲ得ス故ニ之ニ本條ノ規定ヲ適用スヘキコト固ヨリナリ
附合ハ素ト毀損スルニ非サレハ分離スヘカラサル物ニ付テ存スルヲ本則トスルト雖モ若シ分離ノ爲メ莫大ノ費用ヲ要シ其費用却テ物ノ價ヨリモ多ク又ハ物ノ價ノ大部分ニ相當スルカ如キ場合ニ於テハ之ヲ分離スルハ經濟上大ナル不利益ニシテ各當事者ノ爲メニモ不利益多キヲ常トス故ニ之ニ附合ノ規定ヲ適用スヘキモノトセリ是レ本條ノ末文ニ規定スル所ナリ例ヘハ襖又ハ屛風ニ張リタル紙ハ經師屋ヲ雇ヒテ之ヲ剝取ラシムレハ或ハ其紙ヲ扯裂セス又襖若クハ屛風ヲ毀損スルコトナク之ヲ剝取ルコトヲ得サルニ非スト雖モ爲メニ莫大ノ費用ヲ要シ却テ其費用、紙ノ代價ヨリモ多キコトアルヘシ故ニ此場合ニ於テモ本條ノ規定ニ依リ其紙ノ所有者ハ之ヲ剝取ルコトヲ得サルモノトス
本條ノ規定ニ依リテ各物ノ所有權消滅スルノ結果ニ付テハ後ノ第二百四十七條ニ規定アルヲ以テ其消滅ノ爲メ實際不便ヲ感スルコトナカルヘシ