242条
不動産ノ所有者ハ其不動産ノ従トシテ之ニ附合シタル物ノ所有権ヲ取得ス但権原ニ因リテ其物ヲ附属セシメタル他人ノ権利ヲ妨ケス
四 添附
第二百四十二條 不動產ノ所有者ハ其不動產ノ從トシテ之ニ附合シタル物ノ所有權ヲ取得ス但權原ニ因リテ其物ヲ附屬セシメタル他人ノ權利ヲ妨ケス（取七乃至一一）
本條以下第二百四十八條ニ至ルマテハ所謂添附 （Accessio）ニ關スルモノニシテ本條ヨリ第二百四十四條ニ至ルマテハ其第一種ナル附合 （Adjonction, Verbindung）ニ關セリ添附トハ有形ノ物カ他ノ有形ノ物ト合併シタルカ又ハ有形ノ物ニ人工ノ加ハリタル場合ニ於テ其一物ノ所有者又ハ人工ヲ加ヘタル者カ其物ノ全部ノ所有權ヲ取得スルヲ謂ヒ附合トハ有形ノ物カ他ノ有形ノ物ト相附著シテ殆ト離ルヘカラサルニ至リタルトキ其一物ノ所有者カ物ノ全部ノ所有權ヲ取得スルヲ謂フ而シテ本條ハ不動產ノ附合ニ關セリ
本條ノ規定ニ依レハ不動產ノ所有者ハ其不動產ニ從トシテ附着セシメタル物ノ所有權ヲ取得スルヲ原則トセリ而シテ其之ヲ附着セシメタルハ不動產ノ所有者自身ナルト他ノ者ナルトヲ問ハス又其附着セシメタル物カ不動產ノ所有者ノ所有ニ屬スルト否トヲ論セス蓋シ此場合ニ於テハ若シ附着セシメタル物ヲ不動產ヨリ取離ストキハ其物モ大ニ價ヲ失ヒ且動モスレハ不動產ニモ損害ヲ生セシムルニ至ルヲ以テ寧ロ法律ノ力ニ據リ其附着セシメタル物ハ不動產ト一體ヲ爲スモノト看做シ不動產ノ所有者ヲシテ其物ノ所有權ヲ得セシムルヲ便トシタルナリ或ハ曰ハン此規定タル他人カ之ヲ其不動產ニ附着セシメタルトキ及ヒ不動產ノ所有者カ之ヲ附着セシメタルモ其者ノ善意ナルトキハ則チ可ナリト雖モ不動產ノ所有者カ之ヲ附着セシメタル場合ニ於テ其者カ惡意ナルトキハ本條ノ規定ハ惡意者ヲ保護スル不當ノ規定タルヲ免レスト是レ一應理アルカ如シト雖モ（第一）此場合ニ於テハ其附着セシメタル物ハ已ニ其性質ヲ變シタルモノト云フヘク（第二）此規定ハ敢テ不動產ノ所有者ヲ保護スルニ非ス唯經濟上其物ヲ取離スハ甚タ不利益ニシテ大ニシテ之ヲ言ヘハ則チ國損タルヲ免レサルヲ以テ特ニ之ヲ取離スコトヲ許ササルナリ而シテ惡意者ニ對スル制裁ハ後ノ第二百四十八條ニ依リ更ニ第七百四條ノ規定ヲ適用スルヲ以テ足レリトセリ
本條ノ場合ニ於テ不動產ト之ニ附着セシメタル物トハ果シテ一物ヲ成スカ將タ二物ヲ成スカノ疑アリ添附ノ性質ヨリ之ヲ論シ又次條以下ノ規定ニ比較シテ之ヲ視ルトキハ一物ヲ成スモノト謂フヘキカ如シト雖モ不動產ニ附着シタル物ハ慣習上之ヲ別物トシテ觀察スルモノ多キカ故ニ本條ニ於テハ槪シテ之ヲ二物トシテ觀察セリ例ヘハ土地ニ建築シタル家屋之ニ栽植シタル草木ノ如シ然リト雖モ場合ニ因リテハ到底二物トシテ之ヲ視ルコト能ハサルコトアリ例ヘハ木材ヲ以テ家屋ノ一部ニ使用シタルカ如キ又ハ壁土若クハ漆喰ヲ以テ建物、塗池其他ノ工作物ニ使用シタルカ如キ此類ナリ故ニ本條ニ於テ「附合シタル物ノ所有權ヲ取得ス」ト云ヘルハ必スシモ其物カ獨立ノ存在ヲ有スヘキコトヲ定メタルニ非ス唯次條以下ノ場合ト異ナリテ附合物カ獨立ノ一物ヲ成スコトアルヲ以テ次條ニ於ケルカ如ク合成物ノ所有權ヲ取得スト云フコトヲ得サルカ故ナリ但附合物カ獨立ノ存在ヲ有スル場合ト雖モ多クハ從ハ主ニ從フ （Accessorium sequitur principale）ノ原則ニ據リ主タル不動產ヲ處分スルトキハ從タル物モ亦共ニ處分セラレタルモノト看做スヘキヲ以テ其從物カ獨立ノ一物ヲ成スヤ否ヤヲ論スル必要ナキコト多カルヘシ（八七、二項又一卷一六〇頁以下）但家屋ハ土地ノ從物ト看做サス
本條但書ノ規定ハ殆ト當然言フヲ竢タサル所ナリト雖モ本文ノ規定アルカ爲メ或ハ疑ヲ生セサルコトヲ保セサルカ故ニ特ニ之ヲ設ケタルナリ即チ地上權者、永小作人、賃借人、使用借主等カ其權利ノ目的物ニ自己ノ費用ヲ以テ他ノ物ヲ附屬セシメタル場合ニ於テハ其物ハ直チニ其權利ノ目的物ノ所有者ノ有ニ歸セサルヤ固ヨリナリ故ニ是等ノ權利ヲ有スル者ハ自己カ附屬セシメタル物ヲ分離シテ之ヲ取去リ又ハ之ヲ賣却スル等一ニ其隨意ナリトス唯其權利ノ目的物ヲ原狀ニ復スルコトヲ要スルノミ（二六九、二七九、五九八、六一六）尙ホ第二百六十九條ニ定メタル土地ノ所有者ノ權利ニ注意スヘシ
四 添附
第二百四十二條 不動產ノ所有者ハ其不動產ノ從トシテ之ニ附合シタル物ノ所有權ヲ取得ス但權原ニ因リテ其物ヲ附屬セシメタル他人ノ權利ヲ妨ケス（取七乃至一一）
本條以下第二百四十八條ニ至ルマテハ所謂添附 （accessio, accession）ニ關スルモノニシテ本條ヨリ第二百四十四條ニ至ルマテ第一種ナル附合 （adjonction, Verbindung）ニ關セリ添附トハ一物ニ他人ノ物カ合同シ又ハ他人ノ工作カ加ハハルヲ謂ヒ附合トハ一物カ他ノ物ニ附着シテ毀損スルニ非サレハ之ヲ分離スルコト能ハサルニ至ルヲ謂フ而シテ本條ハ不動產ノ附合ニ關セリ
本條ノ規定ニ依レハ不動產ノ所有者ハ其不動產ニ從トシテ附着セシメタル物ノ所有權ヲ取得スルヲ原則トセリ而シテ其之ヲ附着セシメタルハ不動產ノ所有者自身ナルト他ノ者ナルトヲ問ハス又其附着セシメタル物カ不動產ノ所有者ノ所有ニ屬セサルコトヲ想定セリ蓋シ此場合ニ於テハ若シ附着セシメタル物ヲ不動產ヨリ取離ストキハ其物モ大ニ價ヲ失ヒ且動モスレハ不動產ニモ損害ヲ生セシムルニ至ルヲ以テ寧ロ法律ノ力ニ據リ其附着セシメタル物ハ不動產ト一體ヲ成スモノト看做シ不動產ノ所有者ヲシテ其物ノ所有權ヲ得セシムルヲ便トシタルナリ或ハ曰ハン此規定タル他人カ之ヲ其不動產ニ附着セシメタルトキ及ヒ不動產ノ所有者カ之ヲ附着セシメタルモ其者ノ善意ナルトキハ則チ可ナリト雖モ不動產ノ所有者カ之ヲ附着セシメタル場合ニ於テ其者カ惡意ナルトキハ本條ノ規定ハ惡意者ヲ保護スル不當ノ規定タルヲ免レスト是レ一應理アルカ如シト雖モ（第一）此場合ニ於テハ其附着セシメタル物ハ已ニ其性質ヲ變シタルモノト云フヘク（第二）此規定ハ敢テ不動產ノ所有者ヲ保護スルニ非ス唯經濟上其物ヲ取離スハ甚タ不利益ニシテ大ニシテ之ヲ言ヘハ則チ國損タルヲ免レサルヲ以テ特ニ之ヲ取離スコトヲ許ササルナリ而シテ惡意者ニ對スル制裁ハ後ノ第二百四十八條ニ依リ第七百四條ノ規定ヲ適用スルヲ以テ足レリトセリ
本條ノ場合ニ於テ不動產ト之ニ附着セシメタル物トハ果シテ一物ヲ爲スカ將タ二物ヲ成スカノ疑アリ添附ノ性質ヨリ之ヲ論シ又次條以下ノ規定ニ比較シテ之ヲ視ルトキハ一物ヲ成スモノト謂フヘキカ如シト雖モ不動產ニ附着シタル物ハ慣習上之ヲ別物トシテ觀察スルモノ多キカ故ニ本條ニ於テハ槪シテ之ヲ二物トシテ觀察セリ例ヘハ土地ニ建築シタル家屋、之ニ栽植シタル草木ノ如シ然リト雖モ場合ニ因リテハ到底二物トシテ之ヲ視ルコト能ハサルコトアリ例ヘハ木材ヲ家屋ノ一部ニ使用シタルカ如キ又ハ壁土若クハ漆喰ヲ建物、塗池其他ノ工作物ニ使用シタルカ如キ此類ナリ故ニ本條ニ於テ「附合シタル物ノ所有權ヲ取得ス」ト云ヘルハ必スシモ其物カ獨立ノ存在ヲ有スヘキコトヲ定メタルニ非ス唯次條以下ノ場合ト異ナリテ附合物カ獨立ノ一物ヲ成スコトアルヲ以テ次條ニ於ケルカ如ク合成物ノ所有權ヲ取得スト云フコトヲ得サルカ故ナリ但附合物カ獨立ノ存在ヲ有スル場合ト雖モ多クハ從ハ主ニ隨フ （Accessorium sequitur principale）ノ原則ニ據リ主タル不動產ヲ處分スルトキハ從タル物モ亦共ニ處分セラレタルモノト看做スヘキヲ以テ其從物カ獨立ノ一物ヲ成スヤ否ヤヲ論スル必要ナキコト多カルヘシ（八七、二項、又三十八年版一卷一八九頁以下）但家屋ハ土地ノ從物ト看做サス
本條但書ノ規定ハ殆ト當然言フヲ竢タサル所ナリト雖モ本文ノ規定アルカ爲メ或ハ疑ヲ生セサルコトヲ保セサルカ故ニ特ニ之ヲ設ケタルナリ即チ地上權者、永小作人、賃借人、使用借主等カ其權利ノ目的物ニ自己ノ費用ヲ以テ他ノ物ヲ附屬セシメタル場合ニ於テハ其物ハ直チニ其權利ノ目的物ノ所有者ノ有ニ歸セサルヤ固ヨリナリ故ニ是等ノ權利ヲ有スル者ハ自己カ附屬セシメタル物ヲ分離シテ之ヲ取去リ又ハ之ヲ賣却スル等一ニ其隨意ナリトス唯其權利ノ目的物ヲ原狀ニ復スルコトヲ要スルノミ（二六九、二七九、五九八、六一六）尙ホ第二百六十九條ニ定メタル土地ノ所有者ノ權利ニ注意スヘシ