234条
建物ヲ築造スルニハ疆界線ヨリ一尺五寸以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ違ヒテ建築ヲ為サントスル者アルトキハ隣地ノ所有者ハ其建築ヲ廃止シ又ハ之ヲ変更セシムルコトヲ得但建築著手ノ時ヨリ一年ヲ経過シ又ハ其建築ノ竣成シタル後ハ損害賠償ノ請求ノミヲ為スコトヲ得
第二百三十四條 建物ヲ築造スルニハ疆界線ヨリ一尺五寸以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ違ヒテ建築ヲ爲サントスル者アルトキハ隣地ノ所有者ハ其建築ヲ廢止シ又ハ之ヲ變更セシムルコトヲ得但建築着手ノ時ヨリ一年ヲ經過シ又ハ其建築ノ竣成シタル後ハ損害賠償ノ請求ノミヲ爲スコトヲ得（財二五七）
本條ハ疆界ノ近傍ニ建物ヲ築造スル場合ニ付テ規定セリ蓋シ疆界ノ近傍ニ建物ヲ築造スルニ當リ幾分ノ餘地ヲ殘ササルトキハ隣地ニ於テ同シク建物ヲ築造セント欲スルニ當リ其築造ノ爲メ又ハ一旦築造シタル建物ヲ修繕スル爲メ隣地ニ於テノミ充分ノ餘地ヲ存スルノ必要ヲ生シ爲メニ間接ニ隣地ノ所有權ヲ害スルニ至ルヘシ蓋シ此餘地ハ雙方ノ爲メニ必要ナルモノニシテ雙方其半ヲ殘スヲ至當トス而シテ通常三尺ノ餘地アレハ以テ足レリトスヘキモノト認メ各〻一尺五寸ヲ餘スヘキモノトセリ但此距離ハ建物ノ基礎ヨリ基礎ニ至ル間ヲ云ヘルモノニシテ屋根ト屋根トハ相接近スルモ妨ナシ唯此場合ニ於テハ、第一、一方ノ屋根カ隣地ノ上ニ突出セサルコトヲ要シ、第二、第二百十八條ノ規定ニ反セサルコトヲ要スルノミ
右ノ規定ニ依ラスシテ築造シタル建物ハ固ヨリ違法ノモノタリ故ニ純理ヨリ之ヲ言ヘハ隣地ノ所有者ハ何時ニテモ其建物ノ取拂ヲ命スルコトヲ得スンハアルヘカラス然リト雖モ是レ經濟上頗ル不利益ナル所ナリトス故ニ本條第二項ニ於テ隣地ノ所有者カ其建築ヲ廢止シ又ハ之ヲ變更セシムルコトヲ得ルハ其建築落成ノ前ニシテ且建築着手ノ時ヨリ一年ヲ經過セサル間ニ限ルモノトシ建築落成ノ後又ハ建築着手ノ時ヨリ一年ヲ經過シタル後ハ單ニ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ルニ止マルモノトセリ或ハ曰ハン本條ノ規定ハ第二百一條ノ規定ト相重複スルコトナキカト是レ非ナリ第二百一條ハ單ニ占有者ヲ保護スルノ規定ニシテ若シ本條第二項ノ規定ナクンハ所有者ハ占有者トシテハ第二百一條ノ規定ニ從ハサルコトヲ得スト雖モ所有者トシテハ十數年ノ後ト雖モ建物ノ取拂ヲ命スルコトヲ得ヘキノミ（但二八三ヲ參觀セヨ）然ルニ本條第二項ノ規定アルカ爲メ隣地ノ所有者ハ其所有權ヲ證明スルニ拘ハラス建築落成ノ後若クハ建築着手ノ時ヨリ一年ヲ經過シタル後ハ建物ノ取拂ヲ命スルコトヲ得サルモノトス或ハ又曰ハン然ラハ此場合ニ於テハ所有者ハ唯占有者トシテ保護ヲ受クルノ外毫モ權利ヲ有セサルモノニ非スヤト是レ亦非ナリ占有者ハ第二百一條ノ期間內ニ非サレハ一切ノ請求ヲ爲スコトヲ得スト雖モ所有者ハ單ニ建物ノ取拂ヲ命スルコトヲ得サルニ止マリ損害賠償ノ請求ハ其請求權カ時效ニ罹ルマテ之ヲ爲スコトヲ得ルモノトス（七二四）
第二百三十四條 建物ヲ築造スルニハ疆界線ヨリ一尺五寸以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ違ヒテ建築ヲ爲サントスル者アルトキハ隣地ノ所有者ハ其建築ヲ廢止シ又ハ之ヲ變更セシムルコトヲ得但建築着手ノ時ヨリ一年ヲ經過シ又ハ其建築ノ竣成シタル後ハ損害賠償ノ請求ノミヲ爲スコトヲ得（財二五七）
本條ハ疆界ノ近傍ニ建物ヲ築造スル場合ニ付テ規定セリ蓋シ疆界ノ近傍ニ建物ヲ築造スルニ當リ幾分ノ餘地ヲ殘ササルトキハ隣地ニ於テ同シク建物ヲ築造セント欲スルニ當リ其築造ノ爲メ及ヒ一旦築造シタル建物ヲ修繕スル爲メ隣地ニ於テノミ充分ノ餘地ヲ存スルノ必要ヲ生シ爲メニ間接ニ隣地ノ所有權ヲ害スルニ至ルヘシ蓋シ此餘地ハ雙方ノ爲メニ必要ナルモノニシテ雙方其半ヲ殘スヲ至當トス而シテ通常三尺ノ餘地アレハ以テ足レリトスヘキモノト認メ各〻一尺五寸ヲ餘スヘキモノトセリ是レ從來ノ慣習ニ於テモ多ク認ムル所ナルカ如シ（民事慣例類集四三〇頁以下）
右ノ規定ニ依ラスシテ築造シタル建物ハ固ヨリ違法ノモノタリ故ニ純理ヨリ之ヲ言ヘハ隣地ノ所有者ハ何時ニテモ其建物ノ取拂ヲ命スルコトヲ得スンハアルヘカラス然リト雖モ是レ經濟上頗ル不利益ナル所ナリ故ニ本條第二項ニ於テ隣地ノ所有者カ其建築ヲ廢止シ又ハ之ヲ變更セシムルコトヲ得ルハ其建築落成ノ前ニシテ且建築着手ノ時ヨリ一年ヲ經過セサル間ニ限ルモノトシ建築落成ノ後又ハ建築着手ノ時ヨリ一年ヲ經過シタル後ハ單ニ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ルニ止マルモノトセリ或ハ曰ハン本條ノ規定ハ第二百一條ノ規定ト相重複スルコトナキカト曰ク非ナリ第二百一條ハ單ニ占有者ヲ保護スルノ規定ニシテ若シ本條第二項ノ規定ナクンハ所有者ハ占有ノ訴ヲ提起セント欲セハ第二百一條ノ規定ニ從ハサルコトヲ得スト雖モ所有權ノ作用ニ由レハ十數年ノ後ト雖モ建物ノ取拂ヲ命スルコトヲ得ヘキノミ（但二八三ヲ參觀セヨ）然ルニ本條第二項ノ規定アルカ爲メ隣地ノ所有者ハ其所有權ヲ證明スルニ拘ハラス建築落成ノ後若クハ建築着手ノ時ヨリ一年ヲ經過シタル後ハ建物ノ取拂ヲ命スルコトヲ得サルモノトス或ハ又曰ハン然ラハ此場合ニ於テハ所有者ハ唯占有者トシテ保護ヲ受クルノ外毫モ權利ヲ有セサルモノニ非スヤト是レ亦非ナリ（一）占有者ハ第二百一條ノ期間內ニ非サレハ一切ノ請求ヲ爲スコトヲ得スト雖モ所有者ハ單ニ建物ノ取拂ヲ命スルコトヲ得サルニ止マリ損害賠償ノ請求ハ其請求權カ時效ニ罹ルマテ之ヲ爲スコトヲ得ルモノトス（七二四）（二）所有者カ其土地ヲ占有セサルトキト雖モ本條ノ適用アルハ固ヨリナリ（三）占有者ハ隣地ノ建物カ疆界線ヲ超ユルトキト雖モ第二百一條ノ期間ヲ過クレハ復占有ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス所有者ハ之ニ異ナリ第二百八十三條ニ依リ地役權ヲ取得スル者ナキ間ハ何時ニテモ建物ノ疆界線ヲ超エタル部分ヲ取拂ハシムルコトヲ得ヘシ