209条
土地ノ所有者ハ疆界又ハ其近傍ニ於テ墻壁若クハ建物ヲ築造シ又ハ之ヲ修繕スル為メ必要ナル範囲内ニ於テ隣地ノ使用ヲ請求スルコトヲ得但隣人ノ承諾アルニ非サレハ其住家ニ立入ルコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於テ隣人カ損害ヲ受ケタルトキハ其償金ヲ請求スルコトヲ得
第二百九條 土地ノ所有者ハ疆界又ハ其近傍ニ於テ牆壁若クハ建物ヲ築造シ又ハ之ヲ修繕スル爲メ必要ナル範圍內ニ於テ隣地ノ使用ヲ請求スルコトヲ得但隣人ノ承諾アルニ非サレハ其住家ニ立入ルコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於テ隣人カ損害ヲ受ケタルトキハ其償金ヲ請求スルコトヲ得（財二一五乃至二一七）
本條以下第二百三十八條ニ至ルマテハ隣地間ノ關係 ヲ定メタルモノナリ而シテ本條ハ隣地ノ使用權 ヲ定メタルモノナリ蓋シ或土地ノ所有者カ隣地トノ疆界又ハ其近傍ニ於テ牆壁若クハ建物ヲ築造シ或ハ之ヲ修繕セント欲スルトキハ勢ヒ隣地ノ一部ヲ使用スルニ非サレハ能ハサルコトアリ此場合ニ於テ隣人ノ承諾アルニ非サレハ隣地ニ立入ルコトヲ得ストセハ實際是等ノ築造若クハ修繕ヲ爲スコト能ハサルニ至ルヘシ此ノ如クンハ疆界又ハ其近傍ニハ建物ヲ爲スコトヲ得サル場合ヲ生スヘク或ハ無益ニ土地ノ一部ヲ空存シ以テ其築造若クハ修繕ノ用ニ供セサルコトヲ得サルヘシ殊ニ疆界線ニハ徃徃牆壁ヲ設クルノ必要アリト雖モ若シ隣地ニ立入ルコトヲ得サレハ或ハ之ヲ設クルコトヲ得サルニ至ルヘシ是レ經濟上甚タ不利益ナル所ニシテ此ノ如クニシテハ土地ノ所有權ハ充分ノ效用ヲ爲ササルモノト謂フヘシ故ニ本條ニ於テハ右ニ述ヘタルカ如キ必要アル場合ニ於テハ隣地ヲ使用スルコトヲ得ルモノトセリ唯之ニ四ノ制限アリ
第一 隣地ノ使用カ牆壁、建物ノ築造、修繕ニ必要ナルコトヲ要ス故ニ單ニ之ヲ便トスルモ若シ隣地ニ立入ラスシテ其築造、修繕ヲ爲スコトヲ得ハ敢テ隣地ニ立入ルコトヲ得サルモノトス
第二 元來他人ノ所有地ニ侵入スルモノナルカ故ニ一應隣人ニ其旨ヲ述ヘテ其許可ヲ請フヘシ而シテ若シ隣人カ之ヲ聽カサルトキハ法廷ニ訴ヘ隣人ニ其命令ヲ下サシムルノ他アラサルナリ而シテ隣人ノ承諾ナキニ拘ハラス妄ニ腕力ニ訴ヘテ隣地ニ闖入スルコトヲ得サルハ固ヨリナリ
第三 隣人ノ庭園、田畑等ニ立入ルコトハ本條ノ規定ニ依リテ之ヲ許スト雖モ其住家ニ立入ルコトハ隣人ノ承諾アルニ非サレハ之ヲ許サス是レ他ナシ人ノ住居ハ最モ侵スヘカラサルモノニシテ已ニ刑法ニ明文アル所ナリ（刑一七一、一七二）故ニ其隣人ニシテ建築、修繕等ヲ爲サンカ爲メ住家ニ立入ルノ必要アリトスルモ若シ之ヲ許ストキハ隣人ノ保護ニノミ厚クシテ其家屋ノ住人ノ保護ニ薄キノ觀ナキニ非ス故ニ此ノ如キ場合ニ於テハ其住人ノ承諾ヲ得レハ固ヨリ可ナリト雖モ其承諾ナキトキハ隣人ハ其土地ノ一部ヲ無益ニ空存スルノ不便アルモ之ヲ忍ハサルヘカラサルモノトセシナリ
第四 本條ニ於テ與ヘタル權利ハ實ニ必要已ムコトヲ得サルモノナリト雖モ亦他人ノ所有權ヲ害スルコト甚シキモノト謂ハサルコトヲ得ス故ニ法律ハ之ニ依リテ利益ヲ得ル者ヲシテ損害ノ賠償ヲ爲サシムルコトトセリ
第二百九條 土地ノ所有者ハ疆界又ハ其近傍ニ於テ牆壁若クハ建物ヲ築造シ又ハ之ヲ修繕スル爲メ必要ナル範圍內ニ於テ隣地ノ使用ヲ請求スルコトヲ得但隣人ノ承諾アルニ非サレハ其住家ニ立入ルコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於テ隣人カ損害ヲ受ケタルトキハ其償金ヲ請求スルコトヲ得（財二一五乃至二一七）
本條以下第二百三十八條ニ至ルマテハ隣地間ノ關係 ヲ定メタルモノナリ而シテ本條ハ隣地立入權 ヲ定メタルモノナリ蓋シ或土地ノ所有者カ隣地トノ疆界又ハ其近傍ニ於テ牆壁若クハ建物ヲ築造シ或ハ之ヲ修繕セント欲スルトキハ勢ヒ隣地ノ一部ヲ使用スルニ非サレハ能ハサルコトアリ此場合ニ於テ隣人ノ承諾アルニ非サレハ隣地ニ立入ルコトヲ得ストセハ實際是等ノ築造若クハ修繕ヲ爲スコト能ハサルニ至ルヘシ此ノ如クンハ疆界又ハ其近傍ニハ新ニ建物ヲ設ケ又ハ既ニ存スル建物ヲ修繕スルコトヲ得サル場合ヲ生スヘク或ハ無益ニ土地ノ一部ヲ空存シ以テ其築造若クハ修繕ノ用ニ供セサルコトヲ得サルヘシ（隣地者間ニ於テ平等ニ本條ノ權利ヲ行フコトヲ得ル爲メ二三四ノ規定アリ）殊ニ疆界線ニハ往往牆壁ヲ設クルノ必要アリト雖モ若シ隣地ニ立入ルコトヲ得サレハ或ハ之ヲ設クルコトヲ得サルニ至ルヘシ是レ經濟上甚タ不利益ナル所ニシテ此ノ如クニシテハ土地ノ所有權ハ充分ノ效用ヲ爲ササルモノト謂フヘシ故ニ本條ハ右ニ述ヘタルカ如キ必要アル場合ニ於テハ隣地ヲ使用スルコトヲ得ル旨ヲ規定セリ唯之ニ四ノ制限アリ
第一 隣地ノ使用カ牆壁、建物ノ築造、修繕ニ必要 ナルコトヲ要ス故ニ單ニ之ヲ便トスルモ若シ隣地ニ立入ラスシテ其築造、修繕ヲ爲スコトヲ得ハ敢テ隣地ニ立入ルコトヲ得ス其他使用ノ時期、場所等ニ付テモ亦必要ノ範圍內ニ於テノミ之ヲ許スナリ
第二 元來他人ノ所有地ニ侵入スルモノナルカ故ニ一應隣人ニ其旨ヲ述ヘテ其許可ヲ請フヘシ而シテ若シ隣人カ之ヲ聽カサルトキハ法廷ニ訴ヘ其命令ヲ隣人ニ下サシムルノ外ナシ敢テ隣人ノ承諾ナキニ拘ハラス妄ニ隣地ニ闖入スルコトヲ許ササルナリ
第三 隣人ノ庭園、田畑等ニ立入ルコトハ本條ノ規定ニ依リテ之ヲ許スト雖モ其住家ニ立入ルコトハ隣人ノ承諾アルニ非サレハ之ヲ許サス是レ他ナシ人ノ住居ハ最モ侵スヘカラサルモノニシテ已ニ憲法及ヒ刑法ニ明文アル所（憲二五、刑一七一、一七二）而シテ住家ニ侵入スルハ住居ヲ侵スノ最モ甚シキモノナリ故ニ其隣人ニシテ建築、修繕等ヲ爲サンカ爲メ住家ニ立入ルノ必要アリトスルモ若シ之ヲ許ストキハ隣人ノ保護ニノミ厚クシテ其家屋ノ住人ノ保護ニ薄キノ觀ナキニ非ス故ニ此ノ如キ場合ニ於テハ其住人ノ承諾ヲ得レハ固ヨリ可ナリト雖モ其承諾ナキトキハ隣人ハ其土地ノ一部ヲ無益ニ空存スルノ不便アルモ之ヲ忍ハサルヘカラサルモノトセシナリ
第四 本條ニ於テ與ヘタル權利ハ實ニ必要已ムコトヲ得サルモノナリト雖モ亦他人ノ所有權ヲ害スルモノト謂ハサルコトヲ得ス故ニ法律ハ之ニ因リテ利益ヲ得ル者ヲシテ損害ノ賠償ヲ爲サシムルコトトセリ