明治商法(明治32年)

商法修正案

参考原資料

他言語・別版など

  • Entwurf des japanischen Handelsgesetzbuchs
  • Code de commerce de l'Empire du Japon
商法 第一編 総則 第一章 法例 第一条 商事ニ関シ本法ニ規定ナキモノニ付テハ商慣習法ヲ適用シ商慣習法ナキトキハ民法ヲ適用ス 第二条 公法人ノ商行為ニ付テハ法令ニ別段ノ定ナキトキニ限リ本法ノ規定ヲ適用ス 第三条 当事者ノ一方ノ為メニ商行為タル行為ニ付テハ本法ノ規定ヲ双方ニ適用ス 第二章 商人 第四条 本法ニ於テ商人トハ自己ノ名ヲ以テ商行為ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ 第五条 未成年者又ハ妻カ商業ヲ営ムトキハ登記ヲ為スコトヲ要ス 第六条 会社ノ無限責任社員ト為ルコトヲ許サレタル未成年者又ハ妻ハ其会社ノ業務ニ関シテハ之ヲ能力者ト看做ス 第七条 後見人カ被後見人ノ為メニ商業ヲ営ムトキハ登記ヲ為スコトヲ要ス 後見人ノ代理権ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第八条 戸戸ニ就キ又ハ道路ニ於テ物ヲ売買スル者其他小商人ニハ商業登記、商号及ヒ商業帳簿ニ関スル規定ヲ適用セス 第三章 商業登記 第九条 本法ノ規定ニ依リ登記スヘキ事項ハ当事者ノ請求ニ因リ其営業所ノ裁判所ニ備ヘタル商業登記簿ニ之ヲ登記ス 第十条 本店ノ所在地ニ於テ登記スヘキ事項ハ本法ニ別段ノ定ナキトキハ支店ノ所在地ニ於テモ亦之ヲ登記スルコトヲ要ス 第十一条 登記シタル事項ハ裁判所ニ於テ遅滞ナク之ヲ公告スルコトヲ要ス 第十二条 登記スヘキ事項ハ登記及ヒ公告ノ後ニ非サレハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス登記及ヒ公告ノ後ト雖モ第三者カ正当ノ事由ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキ亦同シ 第十三条 支店ノ所在地ニ於テ登記スヘキ事項ヲ登記セサリシトキハ前条ノ規定ハ其支店ニ於テ為シタル取引ニ付テノミ之ヲ適用ス 第十四条 登記ハ其公告ト牴触スルトキト雖モ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得 第十五条 登記シタル事項ニ変更ヲ生シ又ハ其事項カ消滅シタルトキハ当事者ハ遅滞ナク変更又ハ消滅ノ登記ヲ為スコトヲ要ス 第四章 商号 第十六条 商人ハ其氏、氏名其他ノ名称ヲ以テ商号ト為スコトヲ得 第十七条 会社ノ商号中ニハ其種類ニ従ヒ合名会社、合資会社、株式会社又ハ株式合資会社ナル文字ヲ用ユルコトヲ要ス 第十八条 会社ニ非スシテ商号中ニ会社タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ユルコトヲ得ス会社ノ営業ヲ譲受ケタルトキト雖モ亦同シ 前項ノ規定ニ違反シタル者ハ五円以上五十円以下ノ過料ニ処セラル 第十九条 他人カ登記シタル商号ハ同市町村内ニ於テ同一ノ営業ノ為メニ之ヲ登記スルコトヲ得ス 第二十条 商号ノ登記ヲ為シタル者ハ不正ノ競争ノ目的ヲ以テ同一又ハ類似ノ商号ヲ使用スル者ニ対シテ其使用ヲ止ムヘキコトヲ請求スルコトヲ得但損害賠償ノ請求ヲ妨ケス 同市町村内ニ於テ同一ノ営業ノ為メニ他人ノ登記シタル商号ヲ使用スル者ハ不正ノ競争ノ目的ヲ以テ之ヲ使用スルモノト推定ス 第二十一条 商号ノ譲渡ハ其登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第二十二条 商号ト共ニ営業ヲ譲渡シタル場合ニ於テ当事者カ別段ノ意思ヲ表示セサリシトキハ譲渡人ハ同市町村内ニ於テ二十年間同一ノ営業ヲ為スコトヲ得ス 譲渡人カ同一ノ営業ヲ為ササル特約ヲ為シタルトキハ其特約ハ同府県内且三十年ヲ超エサル範囲内ニ於テノミ其効力ヲ有ス 譲渡人ハ前二項ノ規定ニ拘ハラス不正ノ競争ノ目的ヲ以テ同一ノ営業ヲ為スコトヲ得ス 第二十三条 前条ノ規定ハ営業ノミヲ譲渡シタル場合ニ之ヲ準用ス 第二十四条 商号ノ登記ヲ為シタル者カ其商号ヲ廃止シ又ハ之ヲ変更シタル場合ニ於テ其廃止又ハ変更ノ登記ヲ為ササルトキハ利害関係人ハ其登記ノ抹消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ登記ヲ為シタル者ニ対シ相当ノ期間ヲ定メ異議アラハ其期間内ニ之ヲ申立ツヘキ旨ヲ催告シ若シ其期間内ニ異議ノ申立ナキトキハ直チニ其登記ヲ抹消スルコトヲ要ス 第五章 商業帳簿 第二十五条 商人ハ帳簿ヲ備ヘ之ニ日日ノ取引其他財産ニ影響ヲ及ホスヘキ一切ノ事項ヲ整然且明瞭ニ記載スルコトヲ要ス但家事費用ハ一个月毎ニ其総額ヲ記載スルヲ以テ足ル 小売ノ取引ハ現金売ト掛売トヲ分チ日日ノ売上総額ノミヲ記載スルコトヲ得 第二十六条 動産、不動産、債権、債務其他ノ財産ノ総目録及ヒ貸方借方ノ対照表ハ商人ノ開業ノ時又ハ会社ノ設立登記ノ時及ヒ毎年一回一定ノ時期ニ於テ之ヲ作リ特ニ設ケタル帳簿ニ之ヲ記載スルコトヲ要ス 財産目録ニハ動産、不動産、債権其他ノ財産ニ其目録調製ノ時ニ於ケル価格ヲ附スルコトヲ要ス 第二十七条 年二回以上利益ノ配当ヲ為ス会社ニ在リテハ毎配当期ニ前条ノ規定ニ従ヒ財産目録及ヒ貸借対照表ヲ作ルコトヲ要ス 第二十八条 商人ハ十年間其商業帳簿及ヒ其営業ニ関スル信書ヲ保存スルコトヲ要ス 前項ノ期間ハ商業帳簿ニ付テハ其帳簿閉鎖ノ時ヨリ之ヲ起算ス 第六章 商業使用人 第二十九条 商人ハ支配人ヲ選任シ其本店又ハ支店ニ於テ其商業ヲ営マシムルコトヲ得 第三十条 支配人ハ主人ニ代ハリテ其営業ニ関スル一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス 支配人ハ番頭、手代其他ノ使用人ヲ選任又ハ解任スルコトヲ得 支配人ノ代理権ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第三十一条 支配人ノ選任及ヒ其代理権ノ消滅ハ之ヲ置キタル本店又ハ支店ノ所在地ニ於テ主人之ヲ登記スルコトヲ要ス 第三十二条 支配人ハ主人ノ許諾アルニ非サレハ自己又ハ第三者ノ為メニ商行為ヲ為シ又ハ会社ノ無限責任社員ト為ルコトヲ得ス 支配人カ前項ノ規定ニ反シテ自己ノ為メニ商行為ヲ為シタルトキハ主人ハ之ヲ以テ自己ノ為メニ為シタルモノト看做スコトヲ得 前項ニ定メタル権利ハ主人カ其行為ヲ知リタル時ヨリ二週間之ヲ行ハサルトキハ消滅ス行為ノ時ヨリ一年ヲ経過シタルトキ亦同シ 第三十三条 商人ハ番頭又ハ手代ヲ選任シ其営業ニ関スル或種類又ハ特定ノ事項ヲ委任スルコトヲ得 番頭又ハ手代ハ其委任ヲ受ケタル事項ニ関シ一切ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス 第三十四条 支配人、番頭又ハ手代ニ非サル使用人ハ主人ニ代ハリテ法律行為ヲ為ス権限ヲ有セサルモノト推定ス 第三十五条 本章ノ規定ハ主人ト商業使用人トノ間ニ生スル雇傭関係ニ付キ民法ノ規定ヲ適用スルコトヲ妨ケス 第七章 代理商 第三十六条 代理商トハ使用人ニ非スシテ一定ノ商人ノ為メニ平常其営業ノ部類ニ属スル商行為ノ代理又ハ媒介ヲ為ス者ヲ謂フ 第三十七条 代理商カ商行為ノ代理又ハ媒介ヲ為シタルトキハ遅滞ナク本人ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 第三十八条 代理商ハ本人ノ許諾アルニ非サレハ自己又ハ第三者ノ為メニ本人ノ営業ノ部類ニ属スル商行為ヲ為シ又ハ同種ノ営業ヲ目的トスル会社ノ無限責任社員ト為ルコトヲ得ス 第三十二条第二項及ヒ第三項ノ規定ハ代理商カ前項ノ規定ニ違反シタル場合ニ之ヲ準用ス 第三十九条 物品販売ノ委託ヲ受ケタル代理商ハ売買ノ目的物ノ瑕疵又ハ其数量ノ不足其他売買ノ履行ニ関スル通知ヲ受クル権限ヲ有ス 第四十条 当事者カ契約ノ期間ヲ定メサリシトキハ各当事者ハ二个月前ニ予告ヲ為シテ其契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 当事者カ契約ノ期間ヲ定メタルト否トヲ問ハス已ムコトヲ得サル事由アルトキハ各当事者ハ何時ニテモ其契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 第四十一条 代理商ハ商行為ノ代理又ハ媒介ヲ為シタルニ因リテ生シタル債権ニ付キ本人ノ為メニ占有スル物ヲ留置スルコトヲ得但別段ノ意思表示アリタルトキハ此限ニ在ラス 第二編 会社 第一章 総則 第四十二条 本法ニ於テ会社トハ商行為ヲ為スヲ業トスル目的ヲ以テ設立シタルモノヲ謂フ 第四十三条 会社ハ合名会社、合資会社、株式会社及ヒ株式合資会社ノ四種トス 第四十四条 会社ハ之ヲ法人トス 会社ノ住所ハ其本店ノ所在地ニ在ルモノトス但支店ニ於テ為シタル取引ニ付テハ其支店ノ所在地ニ在ルモノト看做ス 第四十五条 会社ノ設立ハ其本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第四十六条 会社ハ其本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為スニ非サレハ開業ノ準備ニ著手スルコトヲ得ス 第四十七条 会社カ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為シタル後六个月内ニ開業ヲ為ササルトキハ裁判所ハ検事ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ其解散ヲ命スルコトヲ得但正当ノ事由アルトキハ其会社ノ請求ニ因リ此期間ヲ伸長スルコトヲ得 第四十八条 会社カ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル行為ヲ為シタルトキハ裁判所ハ検事ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ其解散ヲ命スルコトヲ得 第二章 合名会社 第一節 設立 第四十九条 合名会社ヲ設立スルニハ定款ヲ作ルコトヲ要ス 第五十条 合名会社ノ定款ニハ左ノ事項ヲ記載シ各社員之ニ署名スルコトヲ要ス 一 目的 二 商号 三 社員ノ氏名、住所 四 本店及ヒ支店ノ所在地 五 社員ノ出資ノ種類及ヒ価格又ハ評価ノ標準 第五十一条 会社ハ定款ヲ作リタル日ヨリ二週間内ニ其本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス 一 前条第一号乃至第三号ニ掲ケタル事項 二 本店及ヒ支店 三 設立ノ年月日 四 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其時期又ハ事由 五 社員ノ出資ノ種類及ヒ財産ヲ目的トスル出資ノ価格 六 会社ヲ代表スヘキ社員ヲ定メタルトキハ其氏名 会社設立ノ後支店ヲ設ケタルトキハ其支店ノ所在地ニ於テハ二週間内ニ前項ニ定メタル登記ヲ為シ本店及ヒ他ノ支店ノ所在地ニ於テハ同期間内ニ其支店ヲ設ケタルコトヲ登記スルコトヲ要ス 本店又ハ支店ノ所在地ヲ管轄スル登記所ノ管轄区域内ニ於テ新ニ支店ヲ設ケタルトキハ其支店ヲ設ケタルコトヲ登記スルヲ以テ足ル 第五十二条 会社カ其本店又ハ支店ヲ移転シタルトキハ旧所在地ニ於テハ二週間内ニ移転ノ登記ヲ為シ新所在地ニ於テハ同期間内ニ前条第一項ニ定メタル登記ヲ為スコトヲ要ス 同一ノ登記所ノ管轄区域内ニ於テ本店又ハ支店ヲ移転シタルトキハ其移転ノミノ登記ヲ為スコトヲ要ス 第五十三条 第五十一条第一項ニ掲ケタル事項中ニ変更ヲ生シタルトキハ二週間内ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ其登記ヲ為スコトヲ要ス 第二節 会社ノ内部ノ関係 第五十四条 会社ノ内部ノ関係ニ付テハ定款又ハ本法ニ別段ノ定ナキトキハ組合ニ関スル民法ノ規定ヲ準用ス 第五十五条 社員カ債権ヲ以テ出資ノ目的ト為シタル場合ニ於テ債務者カ弁済期ニ弁済ヲ為ササリシトキハ社員ハ其弁済ノ責ニ任ス此場合ニ於テハ其利息ヲ払フ外尚ホ損害ノ賠償ヲ為スコトヲ要ス 第五十六条 各社員ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ会社ノ業務ヲ執行スル権利ヲ有シ義務ヲ負フ 第五十七条 支配人ノ選任及ヒ解任ハ特ニ業務執行社員ヲ定メタルトキト雖モ社員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス 第五十八条 定款ノ変更其他会社ノ目的ノ範囲ニ属セサル行為ヲ為スニハ総社員ノ同意アルコトヲ要ス 第五十九条 社員カ他ノ社員ノ承諾ヲ得スシテ其持分ノ全部又ハ一部ヲ他人ニ譲渡シタルトキハ其譲渡ハ之ヲ以テ会社ニ対抗スルコトヲ得ス 第六十条 社員ハ他ノ社員ノ承諾アルニ非サレハ自己又ハ第三者ノ為メニ会社ノ営業ノ部類ニ属スル商行為ヲ為シ又ハ同種ノ営業ヲ目的トスル他ノ会社ノ無限責任社員ト為ルコトヲ得ス 第三十二条第二項及ヒ第三項ノ規定ハ社員カ前項ノ規定ニ違反シタル場合ニ之ヲ準用ス 第三節 会社ノ外部ノ関係 第六十一条 定款又ハ総社員ノ同意ヲ以テ特ニ会社ヲ代表スヘキ社員ヲ定メサルトキハ各社員会社ヲ代表ス 第六十二条 会社ヲ代表スヘキ社員ハ会社ノ営業ニ関スル一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス 民法第四十四条第一項及ヒ第五十四条ノ規定ハ合名会社ニ之ヲ準用ス 第六十三条 会社財産ヲ以テ会社ノ債務ヲ完済スルコト能ハサルトキハ各社員連帯シテ其弁済ノ責ニ任ス 第六十四条 設立ノ後会社ニ加入シタル社員ハ其加入前ニ生シタル会社ノ債務ニ付テモ亦責任ヲ負フ 第六十五条 社員ニ非サル者ニ自己ヲ社員ナリト信セシムヘキ行為アリタルトキハ其者ハ善意ノ第三者ニ対シテ社員ト同一ノ責任ヲ負フ 第六十六条 社員ノ出資ノ減少ハ之ヲ以テ会社ノ債権者ニ対抗スルコトヲ得ス但本店ノ所在地ニ於テ其登記ヲ為シタル後二年間債権者カ之ニ対シテ異議ヲ述ヘサリシトキハ此限ニ在ラス 第六十七条 会社ハ損失ヲ填補シタル後ニ非サレハ利益ノ配当ヲ為スコトヲ得ス 前項ノ規定ニ違反シテ配当ヲ為シタルトキハ会社ノ債権者ハ之ヲ返還セシムルコトヲ得 第四節 社員ノ退社 第六十八条 定款ヲ以テ会社ノ存立時期ヲ定メサリシトキ又ハ或社員ノ終身間会社ノ存続スヘキコトヲ定メタルトキハ各社員ハ事業年度ノ終ニ於テ退社ヲ為スコトヲ得但六个月前ニ其予告ヲ為スコトヲ要ス 会社ノ存立時期ヲ定メタルト否トヲ問ハス已ムコトヲ得サル事由アルトキハ各社員ハ何時ニテモ退社ヲ為スコトヲ得 第六十九条 前条ニ掲ケタル場合ノ外社員ハ左ノ事由ニ因リテ退社ス 一 定款ニ定メタル事由ノ発生 二 総社員ノ同意 三 死亡 四 破産 五 禁治産 六 除名 第七十条 社員ノ除名ハ左ノ場合ニ限リ他ノ社員ノ一致ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得但除名シタル社員ニ其旨ヲ通知スルニ非サレハ之ヲ以テ其社員ニ対抗スルコトヲ得ス 一 社員カ出資ヲ為スコト能ハサルトキ又ハ催告ヲ受ケタル後相当ノ期間内ニ出資ヲ為ササルトキ 二 社員カ第六十条第一項ノ規定ニ違反シタルトキ 三 社員カ会社ノ業務ヲ執行シ又ハ会社ヲ代表スルニ当タリ会社ニ対シテ不正ノ行為ヲ為シタルトキ 四 社員カ会社ノ業務ヲ執行スル権利ヲ有セサル場合ニ於テ其業務ノ執行ニ干与シタルトキ 五 其他社員カ重要ナル義務ヲ尽ササルトキ 第七十一条 退社員ハ労務又ハ信用ヲ以テ出資ノ目的ト為シタルトキト雖モ其持分ノ払戻ヲ受クルコトヲ得但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス 第七十二条 会社ノ商号中ニ退社員ノ氏又ハ氏名ヲ用井タルトキハ退社員ハ其氏又ハ氏名ノ使用ヲ止ムヘキコトヲ請求スルコトヲ得 第七十三条 退社員ハ本店ノ所在地ニ於テ退社ノ登記ヲ為ス前ニ生シタル会社ノ債務ニ付キ責任ヲ負フ此責任ハ其登記後二年ヲ経過シタルトキハ消滅ス 前項ノ規定ハ他ノ社員ノ承諾ヲ得テ持分ヲ譲渡シタル社員ニ之ヲ準用ス 第五節 解散 第七十四条 会社ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス 一 存立時期ノ満了其他定款ニ定メタル事由ノ発生 二 会社ノ目的タル事業ノ成功又ハ其成功ノ不能 三 総社員ノ同意 四 会社ノ合併 五 社員カ一人ト為リタルコト 六 会社ノ破産 七 裁判所ノ命令 第七十五条 前条第一号ノ場合ニ於テハ社員ノ全部又ハ一部ノ同意ヲ以テ会社ヲ継続スルコトヲ得但同意ヲ為ササリシ社員ハ退社ヲ為シタルモノト看做ス 第七十六条 会社カ解散シタルトキハ合併及ヒ破産ノ場合ヲ除ク外二週間内ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ其登記ヲ為スコトヲ要ス 第七十七条 会社ノ合併ハ総社員ノ同意ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得 第七十八条 会社カ合併ノ決議ヲ為シタルトキハ其決議ノ日ヨリ二週間内ニ財産目録及ヒ貸借対照表ヲ作ルコトヲ要ス 会社ハ前項ノ期間内ニ其債権者ニ対シ異議アラハ一定ノ期間内ニ之ヲ述フヘキ旨ヲ公告シ且知レタル債権者ニハ各別ニ之ヲ催告スルコトヲ要ス但其期間ハ二个月ヲ下ルコトヲ得ス 第七十九条 債権者カ前条第二項ノ期間内ニ会社ノ合併ニ対シテ異議ヲ述ヘサリシトキハ之ヲ承認シタルモノト看做ス 債権者カ異議ヲ述ヘタルトキハ会社ハ之ニ弁済ヲ為シ又ハ相当ノ担保ヲ供スルニ非サレハ合併ヲ為スコトヲ得ス 前項ノ規定ニ反シテ合併ヲ為シタルトキハ之ヲ以テ異議ヲ述ヘタル債権者ニ対抗スルコトヲ得ス 第八十条 会社カ第七十八条第二項ニ定メタル公告ヲ為サスシテ合併ヲ為シタルトキハ其合併ハ之ヲ以テ其債権者ニ対抗スルコトヲ得ス 会社カ知レタル債権者ニ催告ヲ為サスシテ合併ヲ為シタルトキハ其合併ハ之ヲ以テ其催告ヲ受ケサリシ債権者ニ対抗スルコトヲ得ス 第八十一条 会社カ合併ヲ為シタルトキハ二週間内ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ合併後存続スル会社ニ付テハ変更ノ登記ヲ為シ、合併ニ因リテ消滅シタル会社ニ付テハ解散ノ登記ヲ為シ、合併ニ因リテ設立シタル会社ニ付テハ第五十一条第一項ニ定メタル登記ヲ為スコトヲ要ス 第八十二条 合併後存続スル会社又ハ合併ニ因リテ設立シタル会社ハ合併ニ因リテ消滅シタル会社ノ権利義務ヲ承継ス 第八十三条 已ムコトヲ得サル事由アルトキハ各社員ハ会社ノ解散ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但裁判所ハ社員ノ請求ニ因リ会社ノ解散ニ代ヘテ或社員ヲ除名スルコトヲ得 第六節 清算 第八十四条 会社ハ解散ノ後ト雖モ清算ノ目的ノ範囲内ニ於テハ尚ホ存続スルモノト看做ス 第八十五条 解散ノ場合ニ於ケル会社財産ノ処分方法ハ定款又ハ総社員ノ同意ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得此場合ニ於テハ解散ノ日ヨリ二週間内ニ財産目録及ヒ貸借対照表ヲ作ルコトヲ要ス 第七十八条第二項、第七十九条及ヒ第八十条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第八十六条 前条ノ規定ニ依リテ会社財産ノ処分方法ヲ定メサリシトキハ合併及ヒ破産ノ場合ヲ除ク外後十四条ノ規定ニ従ヒテ清算ヲ為スコトヲ要ス 第八十七条 清算ハ総社員又ハ其選任シタル者ニ於テ之ヲ為ス 清算人ノ選任ハ社員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス 社員カ死亡シタル場合ニ於テ相続人数人アルトキハ前二項ニ定メタル権利ヲ行フヘキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス 第八十八条 第七十四条第五号ノ場合ニ於テハ裁判所ハ利害関係人ノ請求ニ因リ清算人ヲ選任ス 第八十九条 会社カ裁判所ノ命令ニ因リテ解散シタルトキハ裁判所ハ利害関係人又ハ検事ノ請求ニ因リ清算人ヲ選任ス 第九十条 清算人ノ選任アリタルトキハ其清算人ハ二週間内ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ自己ノ氏名、住所ヲ登記スルコトヲ要ス 第九十一条 清算人ノ職務左ノ如シ 一 現務ノ結了 二 債権ノ取立及ヒ債務ノ弁済 三 残余財産ノ分配 清算人ハ前項ノ職務ヲ行フ為メニ必要ナル一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス 民法第八十一条ノ規定ハ合名会社ノ清算ノ場合ニ之ヲ準用ス 第九十二条 会社ニ現存スル財産カ其債務ヲ完済スルニ不足ナルトキハ清算人ハ弁済期ニ拘ハラス社員ヲシテ出資ヲ為サシムルコトヲ得 第九十三条 清算人数人アルトキハ清算ニ関スル行為ハ其過半数ヲ以テ之ヲ決ス但第三者ニ対シテハ各自会社ヲ代表ス 第九十四条 清算人ノ代理権ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第九十五条 清算人ハ就職ノ後遅滞ナク会社財産ノ現況ヲ調査シ財産目録及ヒ貸借対照表ヲ作リ之ヲ社員ニ交付スルコトヲ要ス 清算人ハ社員ノ請求ニ因リ毎月清算ノ状況ヲ報告スルコトヲ要ス 第九十六条 清算人ハ会社ノ債務ヲ弁済シタル後ニ非サレハ会社財産ヲ社員ニ分配スルコトヲ得ス 第九十七条 社員カ選任シタル清算人ハ何時ニテモ之ヲ解任スルコトヲ得此解任ハ社員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ利害関係人ノ請求ニ因リ清算人ヲ解任スルコトヲ得 第九十八条 清算人ノ解任又ハ変更ハ二週間内ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ之ヲ登記スルコトヲ要ス 第九十九条 清算人ノ任務カ終了シタルトキハ清算人ハ遅滞ナク計算ヲ為シテ各社員ノ承認ヲ求ムルコトヲ要ス 前項ノ計算ニ対シ社員カ一个月内ニ異議ヲ述ヘサリシトキハ之ヲ承認シタルモノト看做ス但清算人ニ不正ノ行為アリタルトキハ此限ニ在ラス 第百条 清算カ結了シタルトキハ清算人ハ遅滞ナク本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ其登記ヲ為スコトヲ要ス 第百一条 会社カ事業ニ著手シタル後其設立カ取消サレタルトキハ解散ノ場合ニ準シテ清算ヲ為スコトヲ要ス此場合ニ於テハ第八十八条ノ規定ヲ準用ス 第百二条 会社ノ帳簿、其営業ニ関スル信書及ヒ清算ニ関スル一切ノ書類ハ本店ノ所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ為シタル後十年間之ヲ保存スルコトヲ要ス其保存者ハ社員ノ過半数ヲ以テ之ヲ定ム 第百三条 第六十三条ニ定メタル社員ノ責任ハ本店ノ所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ為シタル後五年ヲ経過シタルトキハ消滅ス 前項ノ期間経過ノ後ト雖モ分配セサル残余財産尚ホ存スルトキハ会社ノ債権者ハ之ニ対シテ弁済ヲ請求スルコトヲ得 第三章 合資会社 第百四条 合資会社ハ有限責任社員ト無限責任社員トヲ以テ之ヲ組織ス 第百五条 合資会社ニハ本章ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外合名会社ニ関スル規定ヲ準用ス 第百六条 合資会社ノ定款ニハ第五十条ニ掲ケタル事項ノ外各社員ノ責任ノ有限又ハ無限ナルコトヲ記載スルコトヲ要ス 第百七条 会社ハ定款ヲ作リタル日ヨリ二週間内ニ其本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ第五十一条第一項ニ掲ケタル事項ノ外各社員ノ責任ノ有限又ハ無限ナルコトヲ登記スルコトヲ要ス 第百八条 有限責任社員ハ金銭其他ノ財産ノミヲ以テ出資ノ目的ト為スコトヲ得 第百九条 各無限責任社員ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ会社ノ業務ヲ執行スル権利ヲ有シ義務ヲ負フ 無限責任社員数人アルトキハ会社ノ業務執行ハ其過半数ヲ以テ之ヲ決ス 第百十条 支配人ノ選任及ヒ解任ハ特ニ業務執行社員ヲ定メタルトキト雖モ無限責任社員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス 第百十一条 有限責任社員ハ事業年度ノ終ニ於テ営業時間内ニ限リ会社ノ財産目録及ヒ貸借対照表ノ閲覧ヲ求メ且会社ノ業務及ヒ会社財産ノ状況ヲ検査スルコトヲ得 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ有限責任社員ノ請求ニ因リ何時ニテモ会社ノ業務及ヒ会社財産ノ状況ノ検査ヲ許スコトヲ得 第百十二条 有限責任社員ハ無限責任社員ノ承諾アルトキハ其持分ノ全部又ハ一部ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得 第百十三条 有限責任社員ハ自己又ハ第三者ノ為メニ会社ノ営業ノ部類ニ属スル商行為ヲ為シ又ハ同種ノ営業ヲ目的トスル他ノ会社ノ無限責任社員ト為ルコトヲ得 第百十四条 定款又ハ総社員ノ同意ヲ以テ特ニ会社ヲ代表スヘキ無限責任社員ヲ定メサルトキハ各無限責任社員会社ヲ代表ス 第百十五条 有限責任社員ハ会社ノ業務ヲ執行シ又ハ会社ヲ代表スルコトヲ得ス 第百十六条 有限責任社員ニ自己ヲ無限責任社員ナリト信セシムヘキ行為アリタルトキハ其社員ハ善意ノ第三者ニ対シテ無限責任社員ト同一ノ責任ヲ負フ 第百十七条 有限責任社員カ死亡シタルトキハ其相続人之ニ代ハリテ社員ト為ル 有限責任社員ハ禁治産ノ宣告ヲ受クルモ之ニ因リテ退社セス 第百十八条 合資会社ハ無限責任社員又ハ有限責任社員ノ全員カ退社シタルトキハ解散ス但有限責任社員ノ全員カ退社シタル場合ニ於テ無限責任社員ノ一致ヲ以テ合名会社トシテ会社ヲ継続スルコトヲ妨ケス 前項但書ノ場合ニ於テハ二週間内ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ合資会社ニ付テハ解散ノ登記ヲ為シ合名会社ニ付テハ第五十一条第一項ニ定メタル登記ヲ為スコトヲ要ス 第四章 株式会社 第一節 設立 第百十九条 株式会社ノ設立ニハ七人以上ノ発起人アルコトヲ要ス 第百二十条 発起人ハ定款ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載シテ署名スルコトヲ要ス 一 目的 二 商号 三 資本ノ総額 四 一株ノ金額 五 取締役カ有スヘキ株式ノ数 六 本店及ヒ支店ノ所在地 七 会社カ公告ヲ為ス方法 八 発起人ノ氏名、住所 第百二十一条 前条第五号乃至第七号ニ掲ケタル事項ヲ定款ニ記載セサリシトキハ創立総会又ハ株主総会ニ於テ之ヲ補足スルコトヲ得 前項ノ株主総会ノ決議ハ第二百九条ノ規定ニ従ヒテ之ヲ為スコトヲ要ス 第百二十二条 左ニ掲ケタル事項タ定メタルトキハ之ヲ定款ニ記載スルニ非サレハ其効ナシ 一 存立時期又ハ解散ノ事由 二 株式ノ額面以上ノ発行 三 発起人カ受クヘキ特別ノ利益及ヒ之ヲ受クヘキ者ノ氏名 四 金銭以外ノ財産ヲ以テ出資ノ目的ト為ス者ノ氏名、其財産ノ種類、価格及ヒ之ニ対シテ与フル株式ノ数 五 会社ノ負担ニ帰スヘキ設立費用及ヒ発起人カ受クヘキ報酬ノ額 第百二十三条 発起人カ株式ノ総数ヲ引受ケタルトキハ会社ハ之ニ因リテ成立ス此場合ニ於テハ発起人ハ遅滞ナク株金ノ四分ノ一ヲ下ラサル第一回ノ払込ヲ為シ且取締役及ヒ監査役ヲ選任スルコトヲ要ス此選任ハ発起人ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス 第百二十四条 取締役ハ其選任後遅滞ナク第百二十二条第三号乃至第五号ニ掲ケタル事項及ヒ第一回ノ払込ヲ為シタルヤ否ヤヲ調査セシムル為メ検査役ノ選任ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ要ス 裁判所ハ検査役ノ報告ヲ聴キ第百三十五条ノ規定ニ準拠シテ相当ノ処分ヲ為スコトヲ得 第百二十五条 発起人カ株式ノ総数ヲ引受ケサルトキハ株主ヲ募集スルコトヲ要ス 第百二十六条 株式ノ申込ヲ為サントスル者ハ株式申込証二通ニ其引受クヘキ株式ノ数ヲ記載シ之ニ署名スルコトヲ要ス 株式申込証ハ発起人之ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 一 定款作成ノ年月日 二 第百二十条及ヒ第百二十二条第一号、第三号乃至第五号ニ掲ケタル事項 三 各発起人カ引受ケタル株式ノ数 四 株式発行ノ価額 五 第一回払込ノ金額 第百二十七条 株式ノ申込ヲ為シタル者ハ其引受クヘキ株式ノ数ニ応シテ払込ヲ為ス義務ヲ負フ 第百二十八条 株式発行ノ価額ハ券面額ヲ下ルコトヲ得ス 第一回払込ノ金額ハ株金ノ四分ノ一ヲ下ルコトヲ得ス 第百二十九条 株式総数ノ引受アリタルトキハ発起人ハ遅滞ナク各株ニ付キ第一回ノ払込ヲ為サシムルコトヲ要ス 額面以上ノ価額ヲ以テ株式ヲ発行シタルトキハ其額面ヲ超ユル金額ハ第一回ノ払込ト同時ニ之ヲ払込マシムルコトヲ要ス 第百三十条 株式引受人カ前条ノ払込ヲ為ササルトキハ発起人ハ一定ノ期間内ニ其払込ヲ為スヘキ旨及ヒ其期間内ニ之ヲ為ササルトキハ其権利ヲ失フコトアルヘキ旨ヲ其株式引受人ニ通知スルコトヲ得但其期間ハ二週間ヲ下ルコトヲ得ス 発起人カ前項ノ通知ヲ為シタルモ株式引受人カ払込ヲ為ササルトキハ発起人ハ其者カ引受ケタル株式ニ付キ更ニ株主ヲ募集スルコトヲ得 前二項ノ規定ハ株式引受人ニ対スル損害賠償ノ請求ヲ妨ケス 第百三十一条 各株ニ付キ第百二十九条ノ払込アリタルトキハ発起人ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スルコトヲ要ス 創立総会ニハ株式引受人ノ半数以上ニシテ資本ノ半額以上ヲ引受ケタル者出席シ其議決権ノ過半数ヲ以テ一切ノ決議ヲ為ス 第百五十七条第一項、第二項及ヒ第百六十二条第三項、第四項、第百六十三条及ヒ第百六十四条ノ規定ハ創立総会ニ之ヲ準用ス 第百三十二条 発起人ハ創立総会ニ会社ノ創立ニ関スル事項ヲ報告スルコトヲ要ス 第百三十三条 創立総会ニ於テハ取締役及ヒ監査役ヲ選任スルコトヲ要ス 第百三十四条 取締役及ヒ監査役ハ左ニ掲ケタル事項ヲ調査シ之ヲ創立総会ニ報告スルコトヲ要ス 一 株式総数ノ引受アリタルヤ否ヤ 二 各株ニ付キ第百二十九条ノ払込アリタルヤ否ヤ 三 第百二十二条第三号乃至第五号ニ掲ケタル事項ノ正当ナルヤ否ヤ 取締役又ハ監査役中発起人ヨリ選任セラレタル者アルトキハ創立総会ハ特ニ検査役ヲ選任シ其者ニ代ハリテ前項ノ調査及ヒ報告ヲ為サシムルコトヲ得 第百三十五条 創立総会ニ於テ第百二十二条第三号乃至第五号ニ掲ケタル事項ヲ不当ト認メタルトキハ之ヲ変更スルコトヲ得但金銭以外ノ財産ヲ以テ出資ノ目的ト為ス者アル場合ニ於テ之ニ対シテ与フル株式ノ数ヲ減シタルトキハ其者ハ金銭ヲ以テ払込ヲ為スコトヲ得 第百三十六条 引受ナキ株式又ハ第百二十九条ノ払込ノ未済ナル株式アルトキハ発起人ハ連帯シテ其株式ヲ引受ケ又ハ其払込ヲ為ス義務ヲ負フ株式ノ申込カ取消サレタルトキ亦同シ 第百三十七条 前二条ノ規定ハ発起人ニ対スル損害賠償ノ請求ヲ妨ケス 第百三十八条 創立総会ニ於テハ定款ノ変更又ハ設立ノ廃止ノ決議ヲモ為スコトヲ得 第百三十九条 発起人カ株式ノ総数ヲ引受ケサリシトキハ会社ハ創立総会ノ終結ニ因リテ成立ス 第百四十条 株式総数ノ引受アリタル後一年内ニ第百二十九条ノ払込カ終ハラサルトキ又ハ其払込カ終ハリタル後六个月内ニ発起人カ創立総会ヲ招集セサルトキハ株式引受人ハ其申込ヲ取消シ払込ミタル金額ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 第百四十一条 会社ハ発起人カ株式ノ総数ヲ引受ケタルトキハ第百二十四条ニ定メタル調査終了ノ日ヨリ又発起人カ株式ノ総数ヲ引受ケサリシトキハ創立総会終結ノ日ヨリ二週間内ニ其本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス 一 第百二十条第一号乃至第四号及ヒ第七号ニ掲ケタル事項 二 本店及ヒ支店 三 設立ノ年月日 四 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其時期又ハ事由 五 各株ニ付キ払込ミタル株金額 六 開業前ニ利息ヲ配当スヘキコトヲ定メタルトキハ其利率 七 取締役及ヒ監査役ノ氏名、住所 第五十一条第二項第三項、第五十二条及ヒ第五十三条ノ規定ハ株式会社ニ之ヲ準用ス 第百四十二条 会社カ前条第一項ノ規定ニ従ヒ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為シタル後ハ株式引受人ハ詐欺又ハ強迫ニ因リテ其申込ヲ取消スコトヲ得ス 第二節 株式 第百四十三条 株式会社ノ資本ハ之ヲ株式ニ分ツコトヲ要ス 第百四十四条 株主ノ責任ハ其引受ケ又ハ譲受ケタル株式ノ金額ヲ限度トス 株主ハ株金ノ払込ニ付キ相殺ヲ以テ会社ニ対抗スルコトヲ得ス 第百四十五条 株式ノ金額ハ均一ナルコトヲ要ス 株式ノ金額ハ五十円ヲ下ルコトヲ得ス但一時ニ株金ノ全額ヲ払込ムヘキ場合ニ限リ之ヲ二十円マテニ下スコトヲ得 第百四十六条 株式ハ之ヲ分割スルコトヲ得ス 第百四十七条 株式カ数人ノ共有ニ属スルトキハ共有者ハ株主ノ権利ヲ行フヘキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス 共有者ハ会社ニ対シ連帯シテ株金ノ払込ヲ為ス義務ヲ負フ 第百四十八条 株券ハ第百四十一条第一項ノ規定ニ従ヒ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為シタル後ニ非サレハ之ヲ発行スルコトヲ得ス 前項ノ規定ニ反シテ発行シタル株券ハ之ヲ無効トス但株券ヲ発行シタル者ニ対スル損害賠償ノ請求ヲ妨ケス 第百四十九条 株券ニハ左ノ事項及ヒ番号ヲ記載シ取締役之ニ署名スルコトヲ要ス 一 会社ノ商号 二 第百四十一条第一項ノ規定ニ従ヒ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為シタル年月日 三 資本ノ総額 四 一株ノ金額 一時ニ株金ノ全額ヲ払込マシメサル場合ニ於テハ払込アル毎ニ其金額ヲ株券ニ記載スルコトヲ要ス 第百五十条 株式ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ会社ノ承諾ナクシテ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得但第百四十一条第一項ノ規定ニ従ヒ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為スマテハ之ヲ譲渡シ又ハ其譲渡ノ予約ヲ為スコトヲ得ス 第百五十一条 記名株式ノ譲渡ハ譲受人ノ氏名、住所ヲ株主名簿ニ記載シ且其氏名ヲ株券ニ記載スルニ非サレハ之ヲ以テ会社其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第百五十二条 会社ハ自己ノ株式ヲ取得シ又ハ質権ノ目的トシテ之ヲ受クルコトヲ得ス 株式ハ資本減少ノ規定ニ従フニ非サレハ之ヲ消却スルコトヲ得ス但定款ノ定ムル所ニ従ヒ株主ニ配当スヘキ利益ヲ以テスルハ此限ニ在ラス 第百五十三条 株金ノ払込ハ二週間前ニ之ヲ各株主ニ催告スルコトヲ要ス 株主カ期日ニ払込ヲ為ササルトキハ会社ハ更ニ一定ノ期間内ニ其払込ヲ為スヘキ旨及ヒ其期間内ニ之ヲ為ササルトキハ株主ノ権利ヲ失フヘキ旨ヲ其株主ニ通知スルコトヲ得但其期間ハ二週間ヲ下ルコトヲ得ス 第百五十四条 会社カ前条ニ定メタル手続ヲ践ミタルモ株主カ払込ヲ為ササルトキハ其権利ヲ失フ 前項ノ場合ニ於テハ会社ハ株式ノ各譲渡人ニ対シ二週間ヲ下ラサル期間内ニ払込ヲ為スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ最モ先ニ滞納金額ノ払込ヲ為シタル譲渡人株式ヲ取得ス 譲渡人カ払込ヲ為ササルトキハ会社ハ株式ヲ競売スルコトヲ要ス若シ競売ニ依リテ得タル金額カ滞納金額ニ満タサルトキハ従前ノ株主ハ其不足額ヲ弁済スル責ニ任ス但従前ノ株主カ二週間内ニ之ヲ弁済セサルトキハ会社ハ譲渡人ニ対シテ其弁済ヲ請求スルコトヲ得 前三項ノ規定ハ会社カ損害賠償及ヒ定款ヲ以テ定メタル違約金ノ請求ヲ為スコトヲ妨ケス 第百五十五条 前条ニ定メタル譲渡人ノ責任ハ譲渡ヲ株主名簿ニ記載シタル後二年ヲ経過シタルトキハ消滅ス 第百五十六条 株金全額ノ払込アリタルトキハ株主ハ其株券ヲ無記名式ト為スコトヲ請求スルコトヲ得 株主ハ何時ニテモ其無記名式ノ株券ヲ記名式ト為スコトヲ請求スルコトヲ得 第三節 会社ノ機関 第一款 株主総会 第百五十七条 総会ヲ招集スルニハ会日ヨリ二週間前ニ各株主ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 前項ノ通知ニハ総会ノ目的及ヒ総会ニ於テ決議スヘキ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 会社カ無記名式ノ株券ヲ発行シタル場合ニ於テハ会日ヨリ三週間前ニ総会ヲ開クヘキ旨及ヒ前項ニ掲ケタル事項ヲ公告スルコトヲ要ス 第百五十八条 定時総会ハ毎年一回一定ノ時期ニ於テ取締役之ヲ招集スルコトヲ要ス 年二回以上利益ノ配当ヲ為ス会社ニ在リテハ毎配当期ニ総会ヲ招集スルコトヲ要ス 第百五十九条 定時総会ハ取締役カ提出シタル書類及ヒ監査役ノ報告書ヲ調査シ且利益又ハ利息ノ配当ヲ決議ス 前項ニ掲ケタル書類ノ当否ヲ調査セシムル為メ総会ハ特ニ検査役ヲ選任スルコトヲ得 第百六十条 臨時総会ハ必要アル毎ニ取締役之ヲ招集ス 第百六十一条 資本ノ十分ノ一以上ニ当タル株主ハ総会ノ目的及ヒ其招集ノ理由ヲ記載シタル書面ヲ取締役ニ提出シテ総会ノ招集ヲ請求スルコトヲ得 取締役カ前項ノ請求アリタル後二週間内ニ総会招集ノ手続ヲ為ササルトキハ其請求ヲ為シタル株主ハ裁判所ノ許可ヲ得テ其招集ヲ為スコトヲ得 第百六十二条 総会ノ決議ハ本法又ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外出席シタル株主ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ為ス 無記名式ノ株券ヲ有スル者ハ会日ヨリ一週間前ニ其株券ヲ会社ニ供託スルニ非サレハ其議決権ヲ行フコトヲ得ス 株主ハ代理人ヲ以テ其議決権ヲ行フコトヲ得但其代理人ハ委任状ヲ会社ニ差出タスコトヲ要ス 総会ノ決議ニ付キ特別ノ利害関係ヲ有スル者ハ其議決権ヲ行フコトヲ得ス 第百六十三条 各株主ハ一株ニ付キ一個ノ議決権ヲ有ス但十一株以上ヲ有スル株主ノ議決権ハ定款ヲ以テ之ヲ制限スルコトヲ得 第百六十四条 総会招集ノ手続又ハ其決議ノ方法カ法令又ハ定款ニ反スルトキハ裁判所ハ株主ノ請求ニ因リ其決議ノ無効ヲ宣告スルコトヲ得 前項ノ請求ハ決議ノ日ヨリ一个月内ニ之ヲ為スコトヲ要ス 取締役又ハ監査役ニ非サル株主カ第一項ノ請求ヲ為シタルトキハ其株券ヲ供託シ且会社ノ請求ニ因リ相当ノ担保ヲ供スルコトヲ要ス 第二款 取締役 第百六十五条 取締役ハ株主総会ニ於テ株主中ヨリ之ヲ選任ス 第百六十六条 取締役ハ三人以上タルコトヲ要ス 第百六十七条 取締役ノ任期ハ三年ヲ超ユルコトヲ得ス但其任期満了ノ後之ヲ再選スルコトヲ妨ケス 第百六十八条 取締役ハ何時ニテモ株主総会ノ決議ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得但任期ノ定アル場合ニ於テ正当ノ理由ナクシテ其任期前ニ之ヲ解任シタルトキハ其取締役ハ会社ニ対シ解任ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得 第百六十九条 取締役ハ定款ニ定メタル員数ノ株券ヲ監査役ニ供託スルコトヲ要ス 第百七十条 会社ノ業務執行ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ取締役ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス支配人ノ選任及ヒ解任亦同シ 第百七十一条 取締役ハ各自会社ヲ代表ス 第六十二条ノ規定ハ取締役ニ之ヲ準用ス 第百七十二条 取締役ハ定款及ヒ創立総会並ニ株主総会ノ決議録ヲ本店及ヒ支店ニ備ヘ置キ且株主名簿及ヒ社債原簿ヲ本店ニ備ヘ置クコトヲ要ス 株主及ヒ会社ノ債権者ハ営業時間内何時ニテモ前項ニ掲ケタル書類ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得 第百七十三条 株主名簿ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 一 各株主ノ氏名、住所 二 各株主ノ株式ノ数及ヒ株券ノ番号 三 各株ニ付キ払込ミタル株金額及ヒ払込ノ年月日 四 各株式ノ取得ノ年月日 五 無記名式ノ株券ヲ発行シタルトキハ其数、番号及ヒ発行ノ年月日 第百七十四条 会社カ其資本ノ半額ヲ失ヒタルトキハ取締役ハ遅滞ナク株主総会ヲ招集シテ之ヲ報告スルコトヲ要ス 会社財産ヲ以テ会社ノ債務ヲ完済スルコト能ハサルニ至リタルトキハ取締役ハ直チニ破産宣告ノ請求ヲ為スコトヲ要ス 第百七十五条 取締役ハ株主総会ノ認許アルニ非サレハ自己又ハ第三者ノ為メニ会社ノ営業ノ部類ニ属スル商行為ヲ為シ又ハ同種ノ営業ヲ目的トスル他ノ会社ノ無限責任社員ト為ルコトヲ得ス 第三十二条第二項及ヒ第三項ノ規定ハ取締役カ前項ノ規定ニ違反シタル場合ニ之ヲ準用ス 第百七十六条 取締役ハ監査役ノ承認ヲ得ルニ非サレハ自己又ハ第三者ノ為メニ会社ト取引ヲ為スコトヲ得 第百七十七条 取締役カ法令又ハ定款ニ反スル行為ヲ為シタルトキハ株主総会ノ決議ニ依リタル場合ト雖モ第三者ニ対シテ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス 前項ノ規定ハ其行為ニ対シ株主総会ニ於テ異議ヲ述ヘ且監査役ニ其旨ヲ通知シタル取締役ニハ之ヲ適用セス 第百七十八条 株主総会ニ於テ取締役ニ対シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルトキ又ハ之ヲ否決シタル場合ニ於テ資本ノ十分ノ一以上ニ当タル株主カ之ヲ監査役ニ請求シタルトキハ会社ハ決議又ハ請求ノ日ヨリ一个月内ニ訴ヲ提起スルコトヲ要ス 前項ノ請求ヲ為シタル株主ハ其株券ヲ供託シ且監査役ノ請求ニ因リ相当ノ担保ヲ供スルコトヲ要ス 会社カ敗訴シタルトキハ右ノ株主ハ会社ニ対シテノミ損害賠償ノ責ニ任ス 第百七十九条 取締役カ受クヘキ報酬ハ定款ニ其額ヲ定メサリシトキハ株主総会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム 第三款 監査役 第百八十条 監査役ノ任期ハ之ヲ一年トス但其任期満了ノ後之ヲ再選スルコトヲ妨ケス 第百八十一条 監査役ハ何時ニテモ取締役ニ対シテ事業ノ報告ヲ求メ又ハ会社ノ業務及ヒ会社財産ノ状況ヲ調査スルコトヲ得 第百八十二条 監査役ハ株主総会ヲ招集スル必要アリト認メタルトキハ其招集ヲ為スコトヲ得此総会ニ於テハ会社ノ業務及ヒ会社財産ノ状況ヲ調査セシムル為メ特ニ検査役ヲ選任スルコトヲ得 第百八十三条 監査役ハ取締役カ株主総会ニ提出セントスル書類ヲ調査シ株主総会ニ其意見ヲ報告スルコトヲ要ス 第百八十四条 監査役ハ取締役又ハ支配人ヲ兼ヌルコトヲ得ス但取締役中ニ缺員アルトキハ取締役及ヒ監査役ノ協議ヲ以テ監査役中ヨリ一時取締役ノ職務ヲ行フヘキ者ヲ定ムルコトヲ得 前項ノ規定ニ依リテ取締役ノ職務ヲ行フ監査役ハ第百九十二条第一項ノ規定ニ従ヒ株主総会ノ承認ヲ得ルマテハ監査役ノ職務ヲ行フコトヲ得ス 第百八十五条 会社カ取締役ニ対シ又ハ取締役カ会社ニ対シ訴ヲ提起スル場合ニ於テハ其訴ニ付テハ監査役会社ヲ代表ス但株主総会ハ他人ヲシテ之ヲ代表セシムルコトヲ得 資本ノ十分ノ一以上ニ当タル株主カ取締役ニ対シテ訴ヲ提起スルコトヲ請求シタルトキハ特ニ代表者ヲ指定スルコトヲ得 第百八十六条 監査役カ其任務ヲ怠リタルトキハ会社及ヒ第三者ニ対シテ損害賠償ノ責ニ任ス 第百八十七条 株主総会ニ於テ監査役ニ対シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルトキ又ハ之ヲ否決シタル場合ニ於テ資本ノ十分ノ一以上ニ当タル株主カ之ヲ取締役ニ請求シタルトキハ会社ハ決議又ハ請求ノ日ヨリ一个月内ニ訴ヲ提起スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ第百八十五条第一項但書及ヒ第二項ノ規定ヲ準用ス 前項ノ請求ヲ為シタル株主ハ其株券ヲ供託シ且取締役ノ請求ニ因リ相当ノ担保ヲ供スルコトヲ要ス 会社カ敗訴シタルトキハ右ノ株主ハ会社ニ対シテノミ損害賠償ノ責ニ任ス 第百八十八条 監査役ハ其破産又ハ禁治産ニ因リテ退任ス 第百八十九条 第百六十五条、第百六十八条及ヒ第百七十九条ノ規定ハ監査役ニ之ヲ準用ス 第四節 会社ノ計算 第百九十条 取締役ハ定時総会ノ会日ヨリ一週間前ニ左ノ書類ヲ監査役ニ提出スルコトヲ要ス 一 財産目録 二 貸借対照表 三 事業報告書 四 損益計算書 五 準備金及ヒ利益又ハ利息ノ配当ニ関スル議案 第百九十一条 取締役ハ定時総会ノ会日前ニ前条ニ掲ケタル書類及ヒ監査役ノ報告書ヲ本店ニ備フルコトヲ要ス 株主及ヒ会社ノ債権者ハ営業時間内何時ニテモ前項ニ掲ケタル書類ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得 第百九十二条 取締役ハ第百九十条ニ掲ケタル書類ヲ定時総会ニ提出シテ其承認ヲ求ムルコトヲ要ス 取締役ハ前項ノ承認ヲ得タル後貸借対照表ヲ公告スルコトヲ要ス 第百九十三条 定時総会ニ於テ前条第一項ノ承認ヲ為シタルトキハ会社ハ取締役及ヒ監査役ニ対シテ其責任ヲ解除シタルモノト看做ス但取締役又ハ監査役ニ不正ノ行為アリタルトキハ此限ニ在ラス 第百九十四条 会社ハ其資本ノ四分ノ一ニ達スルマテハ利益ヲ配当スル毎ニ其利益ノ二十分ノ一以上ヲ準備金トシテ積立ツルコトヲ要ス 額面以上ノ価額ヲ以テ株式ヲ発行シタルトキハ其額面ヲ超ユル金額ハ前項ノ額ニ達スルマテ之ヲ準備金ニ組入ルルコトヲ要ス 第百九十五条 会社ハ損失ヲ填補シ且前条第一項ニ定メタル準備金ヲ控除シタル後ニ非サレハ利益ノ配当ヲ為スコトヲ得ス 前項ノ規定ニ違反シテ配当ヲ為シタルトキハ会社ノ債権者ハ之ヲ返還セシムルコトヲ得 第百九十六条 会社ノ目的タル事業ノ性質ニ依リ第百四十一条第一項ノ規定ニ従ヒ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為シタル後二年以上開業ヲ為スコト能ハサルモノト認ムルトキハ会社ハ定款ヲ以テ開業ヲ為スニ至ルマテ一定ノ利息ヲ株主ニ配当スヘキコトヲ定ムルコトヲ得但其利率ハ法定利率ニ超ユルコトヲ得ス 前項ニ掲ケタル定款ノ規定ハ登記前ニ裁判所ノ認可ヲ得ルコトヲ要ス 第百九十七条 利益又ハ利息ノ配当ハ定款ニ依リテ払込ミタル株金額ノ割合ニ応シテ之ヲ為ス但会社カ優先株ヲ発行シタル場合ニ於テ之ニ異ナリタル定アルトキハ此限ニ在ラス 第百九十八条 裁判所ハ資本ノ十分ノ一以上ニ当タル株主ノ請求ニ因リ会社ノ業務及ヒ会社財産ノ状況ヲ調査セシムル為メ検査役ヲ選任スルコトヲ得 検査役ハ其調査ノ結果ヲ裁判所ニ報告スルコトヲ要ス此場合ニ於テ裁判所ハ必要アリト認ムルトキハ監査役ヲシテ株主総会ヲ招集セシムルコトヲ得 第五節 社債 第百九十九条 社債ハ第二百九条ニ定メタル決議ニ依ルニ非サレハ之ヲ募集スルコトヲ得ス 第二百条 社債ノ総額ハ払込ミタル株金額ニ超ユルコトヲ得ス 最終ノ貸借対照表ニ依リ会社ニ現存スル財産カ前項ノ金額ニ満タサルトキハ社債ノ総額ハ其財産ノ額ニ超ユルコトヲ得ス 第二百一条 各社債ノ金額ハ二十円ヲ下ルコトヲ得ス 第二百二条 社債権者ニ償還スヘキ金額カ券面額ニ超ユヘキコトヲ定メタルトキハ其金額ハ各社債ニ付キ同一ナルコトヲ要ス 第二百三条 社債ヲ募集セントスルトキハ取締役ハ左ノ事項ヲ公告スルコトヲ要ス 一 会社ノ商号 二 社債ノ総額 三 社債ノ総数及ヒ其金額 四 社債ノ利率 五 社債償還ノ方法及ヒ期限 六 前ニ社債ヲ募集シタルトキハ其償還ヲ了ヘサル総額 七 社債発行ノ価額又ハ其最低価額 八 会社ノ資本及ヒ払込ミタル株金ノ総額 九 最終ノ貸借対照表ニ依リ会社ニ現存スル財産ノ額 第二百四条 社債ノ募集カ完了シタルトキハ取締役ハ各社債ニ付キ其全額ヲ払込マシムルコトヲ要ス 取締役ハ前項ノ規定ニ従ヒ全額ノ払込ヲ受ケタル日ヨリ二週間内ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ前条第二号乃至第五号ニ掲ケタル事項ヲ登記スルコトヲ要ス 第二百五条 債券ニハ第二百三条第一号乃至第五号ニ掲ケタル事項及ヒ番号ヲ記載シ取締役之ニ署名スルコトヲ要ス 第二百六条 記名社債ノ譲渡ハ譲受人ノ氏名、住所ヲ社債原簿ニ記載シ且其氏名ヲ債券ニ記載スルニ非サレハ之ヲ以テ会社其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第二百七条 第百五十六条ノ規定ハ債券ニ之ヲ準用ス 第六節 定款ノ変更 第二百八条 定款ハ株主総会ノ決議ニ依リテノミ之ヲ変更スルコトヲ得 第二百九条 定款ノ変更ハ総株主ノ半数以上ニシテ資本ノ半額以上ニ当タル株主出席シ其議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス 前項ニ定メタル員数ノ株主カ出席セサルトキハ出席シタル株主ノ議決権ノ過半数ヲ以テ仮決議ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ各株主ニ対シテ其仮決議ノ趣旨ノ通知ヲ発シ且無記名式ノ株券ヲ発行シタルトキハ其趣旨ヲ公告シ更ニ一个月ヲ下ラサル期間内ニ第二回ノ株主総会ヲ招集スルコトヲ要ス 第二回ノ株主総会ニ於テハ出席シタル株主ノ議決権ノ過半数ヲ以テ仮決議ノ認否ヲ決ス 前二項ノ規定ハ会社ノ目的タル事業ヲ変更スル場合ニハ之ヲ適用セス 第二百十条 会社ノ資本ハ株金全額払込ノ後ニ非サレハ之ヲ増加スルコトヲ得ス 第二百十一条 会社ハ其資本ヲ増加スル場合ニ限リ優先株ヲ発行スルコトヲ得此場合ニ於テハ其旨ヲ定款ニ記載スルコトヲ要ス 第二百十二条 会社カ優先株ヲ発行シタル場合ニ於テ定款ノ変更カ優先株主ニ損害ヲ及ホスヘキトキハ株主総会ノ決議ノ外優先株主ノ総会ノ決議アルコトヲ要ス 優先株主ノ総会ニハ株主総会ニ関スル規定ヲ準用ス 第二百十三条 会社カ其資本ヲ増加シタル場合ニ於テ各新株ニ付キ第百二十九条ノ払込アリタルトキハ取締役ハ遅滞ナク株主総会ヲ招集シテ之ニ新株ノ募集ニ関スル事項ヲ報告スルコトヲ要ス 第二百十四条 監査役ハ左ニ掲ケタル事項ヲ調査シ之ヲ株主総会ニ報告スルコトヲ要ス 一 新株総数ノ引受アリタルヤ否ヤ 二 各新株ニ付キ第百二十九条ノ払込アリタルヤ否ヤ 三 金銭以外ノ財産ヲ以テ出資ノ目的ト為シタル者アルトキハ其財産ニ対シテ与フル株式ノ数ノ正当ナルヤ否ヤ 前項ノ調査及ヒ報告ヲ為サシムル為メ株主総会ハ特ニ検査役ヲ選任スルコトヲ得 第二百十五条 株主総会ニ於テ金銭以外ノ財産ニ対シテ与フル株式ノ数ヲ不当ト認メタルトキハ之ヲ減少スルコトヲ得此場合ニ於テハ第百三十五条但書ノ規定ヲ準用ス 第二百十六条 引受ナキ株式又ハ第百二十九条ノ払込ノ未済ナル株式アルトキハ取締役ハ連帯シテ其株式ヲ引受ケ又ハ其払込ヲ為ス義務ヲ負フ株式ノ申込カ取消サレタルトキ亦同シ 第二百十七条 会社ハ第二百十三条ノ規定ニ依リテ招集シタル株主総会終結ノ日ヨリ二週間内ニ本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス 一 増加シタル資本ノ総額 二 資本増加ノ決議ノ年月日 三 各新株ニ付キ払込ミタル株金額 四 優先株ヲ発行シタルトキハ其株主ノ権利 前項ノ規定ニ従ヒ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為スマテハ新株券ノ発行及ヒ新株ノ譲渡又ハ其予約ヲ為スコトヲ得ス 第二百十八条 新株ヲ発行シタルトキハ前条第一項ノ規定ニ従ヒ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為シタル年月日ヲ株券ニ記載スルコトヲ要ス 優先株ヲ発行シタルトキハ其株主ノ権利ヲ株券ニ記載スルコトヲ要ス 第二百十九条 第百二十七条乃至第百三十条、第百四十条、第百四十二条及ヒ第百四十八条第二項ノ規定ハ新株発行ノ場合ニ之ヲ準用ス 第二百二十条 株主総会ニ於テ資本減少ノ決議ヲ為ストキハ同時ニ其減少ノ方法ヲ決議スルコトヲ要ス 第七十八条乃至第八十条ノ規定ハ資本減少ノ場合ニ之ヲ準用ス 第七節 解散 第二百二十一条 会社ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス 一 第七十四条第一号、第二号、第四号、第六号及ヒ第七号ニ掲ケタル事由 二 株主総会ノ決議 三 株主カ七人未満ニ減シタルコト 第二百二十二条 前条第二号及ヒ合併ノ決議ハ第二百九条ノ規定ニ従フニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス 第二百二十三条 会社カ合併ヲ為サント欲スルトキハ其旨ヲ公告シテ株主総会ノ会日前一个月ヲ超エサル期間及ヒ開会中記名株ノ譲渡ヲ停止スルコトヲ得 株主総会ニ於テ合併ノ決議ヲ為シタルトキハ其決議ノ日ヨリ第八十一条ノ規定ニ従ヒ本店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為スマテハ株主ハ其記名株ヲ譲渡スコトヲ得ス 第二百二十四条 会社カ解散シタルトキハ破産ノ場合ヲ除ク外取締役ハ遅滞ナク株主ニ対シテ其通知ヲ発シ且無記名式ノ株券ヲ発行シタル場合ニ於テハ之ヲ公告スルコトヲ要ス 第二百二十五条 第七十六条及ヒ第七十八条乃至第八十二条ノ規定ハ株式会社ニ之ヲ準用ス 第八節 清算 第二百二十六条 会社カ解散シタルトキハ合併及ヒ破産ノ場合ヲ除ク外取締役其清算人ト為ル但定款ニ別段ノ定アルトキ又ハ株主総会ニ於テ他人ヲ選任シタルトキハ此限ニ在ラス 前項ノ規定ニ依リテ清算人タル者ナキトキハ裁判所ハ利害関係人ノ請求ニ因リ清算人ヲ選任ス 第二百二十七条 清算人ハ就職ノ後遅滞ナク会社財産ノ現況ヲ調査シ財産目録及ヒ貸借対照表ヲ作リ之ヲ株主総会ニ提出シテ其承認ヲ求ムルコトヲ要ス 第百五十九条第二項及ヒ第百九十二条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第二百二十八条 株主総会ニ於テ選任シタル清算人ハ何時ニテモ株主総会ノ決議ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ監査役又ハ資本ノ十分ノ一以上ニ当タル株主ノ請求ニ因リ清算人ヲ解任スルコトヲ得 第二百二十九条 残余財産ハ定款ニ依リテ払込ミタル株金額ノ割合ニ応シテ之ヲ株主ニ分配スルコトヲ要ス但会社カ優先株ヲ発行シタル場合ニ於テ之ニ異ナリタル定アルトキハ此限ニ在ラス 第二百三十条 清算事務カ終ハリタルトキハ清算人ハ遅滞ナク決算報告書ヲ作リ之ヲ株主総会ニ提出シテ其承認ヲ求ムルコトヲ要ス 第百五十九条第二項及ヒ第百九十三条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第二百三十一条 総会招集ノ手続又ハ其決議ノ方法カ法令又ハ定款ニ反スルトキハ清算人ハ其決議ノ無効ノ宣告ヲ請求スルコトヲ要ス 第二百三十二条 会社カ事業ニ著手シタル後其設立ノ無効ナルコトヲ発見シタルトキハ解散ノ場合ニ準シテ清算ヲ為スコトヲ要ス此場合ニ於テハ第二百二十六条第二項ノ規定ヲ準用ス 第二百三十三条 会社ノ帳簿、其営業ニ関スル信書及ヒ清算ニ関スル一切ノ書類ハ本店ノ所在地ニ於テ解散ノ登記ヲ為シタル後十年間之ヲ保存スルコトヲ要ス其保存者ハ清算人其他ノ利害関係人ノ請求ニ因リ裁判所之ヲ選任ス 第二百三十四条 第八十四条、第八十九条乃至第九十四条、第九十六条、第九十八条、第百条、第百六十条、第百六十一条、第百六十四条、第百七十七条、第百七十八条第百八十一条乃至第百八十五条、第百八十七条及ヒ民法第七十九条、第八十条ノ規定ハ株式会社ノ清算ノ場合ニ之ヲ準用ス 第五章 株式合資会社 第二百三十五条 株式合資会社ハ無限責任社員ト株主トヲ以テ之ヲ組織ス 第二百三十六条 左ノ事項ニ付テハ合資会社ニ関スル規定ヲ準用ス 一 無限責任社員相互間ノ関係 二 無限責任社員ト株主及ヒ第三者トノ関係 三 無限責任社員ノ退社 此他株式合資会社ニハ本章ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外株式会社ニ関スル規定ヲ準用ス 第二百三十七条 無限責任社員ハ発起人ト為リテ定款ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載シテ署名スルコトヲ要ス 一 第百二十条第一号、第二号、第四号、第六号及ヒ第七号ニ掲ケタル事項 二 株金ノ総額 三 無限責任社員ノ氏名、住所 四 無限責任社員ノ株金以外ノ出資ノ種類及ヒ価格又ハ評価ノ標準 第二百三十八条 無限責任社員ハ株主ヲ募集スルコトヲ要ス 株式申込証ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 一 第百二十二条、第百二十六条第二項第一号、第四号、第五号及ヒ前条ニ掲ケタル事項 二 無限責任社員カ株式ヲ引受ケタルトキハ其各自カ引受ケタル株式ノ数 第二百三十九条 創立総会ニ於テハ監査役ヲ選任スルコトヲ要ス 無限責任社員ハ監査役ト為ルコトヲ得ス 第二百四十条 無限責任社員ハ創立総会ニ出席シテ其意見ヲ述フルコトヲ得但株式ヲ引受ケタルトキト雖モ議決ノ数ニ加ハルコトヲ得ス 無限責任社員カ引受ケタル株式其他ノ出資ハ議決権ニ関シテハ之ヲ算入セス 前二項ノ規定ハ株主総会ニ之ヲ準用ス 第二百四十一条 監査役ハ第百三十四条第一項及ヒ第二百三十七条第四号ニ掲ケタル事項ヲ調査シ之ヲ創立総会ニ報告スルコトヲ要ス 第二百四十二条 会社ハ創立総会終結ノ日ヨリ二週間内ニ其本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス 一 第百二十条第一号、第二号、第四号、第七号及ヒ第百四十一条第一項第二号乃至第六号ニ掲ケタル事項 二 株金ノ総額 三 無限責任社員ノ氏名、住所 四 無限責任社員ノ株金以外ノ出資ノ種類及ヒ財産ヲ目的トスル出資ノ価格 五 会社ヲ代表スヘキ無限責任社員ヲ定メタルトキハ其氏名 六 監査役ノ氏名、住所 第二百四十三条 会社ヲ代表スヘキ無限責任社員ニハ株式会社ノ取締役ニ関スル規定ヲ準用ス但第百六十五条乃至第百六十九条、第百七十五条及ヒ第百七十九条ノ規定ハ此限ニ在ラス 第二百四十四条 合資会社ニ於テ総社員ノ同意ヲ要スル事項ニ付テハ株主総会ノ決議ノ外無限責任社員ノ一致アルコトヲ要ス 第二百九条ノ規定ハ前項ノ決議ニ之ヲ準用ス 第二百四十五条 監査役ハ無限責任社員ヲシテ株主総会ノ決議ヲ執行セシムル責ニ任ス 第二百四十六条 株式合資会社ハ合資会社ト同一ノ事由ニ因リテ解散ス但第八十三条ノ場合ハ此限ニ在ラス 第二百四十七条 無限責任社員ノ全員カ退社シタル場合ニ於テ株主ハ第二百九条ニ定メタル決議ニ依リ株式会社トシテ会社ヲ継続スルコトヲ得此場合ニ於テハ株式会社ノ組織ニ必要ナル事項ヲ決議スルコトヲ要ス 第百十八条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第二百四十八条 会社カ解散シタルトキハ合併、破産又ハ裁判所ノ命令ニ因リテ解散シタル場合ヲ除ク外清算ハ無限責任社員ノ全員又ハ其選任シタル者及ヒ株主総会ニ於テ選任シタル者之ヲ為ス但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス 無限責任社員カ清算人ヲ選任スルトキハ其過半数ヲ以テ之ヲ決ス 第八十七条第三項ノ規定ハ無限責任社員ノ相続人ニ之ヲ準用ス 株主総会ニ於テ選任スル清算人ハ無限責任社員ノ全員若クハ其相続人又ハ其選任スル者ト同数ナルコトヲ要ス 第二百四十九条 無限責任社員ハ何時ニテモ其選任シタル清算人ヲ解任スルコトヲ得 前条第二項及ヒ第三項ノ規定ハ清算人ノ解任ニ之ヲ準用ス 第二百五十条 清算人ハ第二百二十七条及ヒ第二百三十条ニ定メタル計算ニ付キ無限責任社員全員ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス 第二百五十一条 株式合資会社ハ第二百四十四条ノ規定ニ従ヒ其組織ヲ変更シテ之ヲ株式会社ト為スコトヲ得 第二百五十二条 前条ノ場合ニ於テハ株主総会ハ直チニ株式会社ノ組織ニ必要ナル事項ヲ決議スルコトヲ要ス此総会ニ於テハ無限責任社員モ亦其引受クヘキ株式ノ数ニ応シテ議決権ヲ行フコトヲ得 第二百五十三条 第七十八条及ヒ第七十九条第一項、第二項ノ規定ハ前条ノ場合ニ之ヲ準用ス 第二百五十四条 会社ハ組織変更ニ付キ債権者ノ承認ヲ得又ハ第七十九条第二項ニ定メタル義務ヲ履行シタル後二週間内ニ其本店及ヒ支店ノ所在地ニ於テ株式合資会社ニ付テハ解散ノ登記ヲ為シ株式会社ニ付テハ第百四十一条第一項ニ定メタル登記ヲ為スコトヲ要ス 第六章 外国会社 第二百五十五条 外国会社カ日本ニ支店ヲ設ケタルトキハ日本ニ成立スル同種ノモノ又ハ最モ之ニ類似セルモノト同一ノ登記及ヒ公告ヲ為スコトヲ要ス 右ノ外日本ニ支店ヲ設ケタル外国会社ハ其日本ニ於ケル代表者ヲ定メ且支店設立ノ登記ト同時ニ其氏名、住所ヲ登記スルコトヲ要ス 第六十二条ノ規定ハ外国会社ノ代表者ニ之ヲ準用ス 第二百五十六条 前条第一項及ヒ第二項ノ規定ニ依リ登記スヘキ事項カ外国ニ於テ生シタルトキハ登記ノ期間ハ其通知ノ到達シタル時ヨリ之ヲ起算ス 第二百五十七条 外国会社カ始メテ日本ニ支店ヲ設ケタルトキハ其支店ノ所在地ニ於テ登記ヲ為スマテハ他人ハ其会社ノ成立ヲ否認スルコトヲ得 第二百五十八条 日本ニ本店ヲ設ケ又ハ日本ニ於テ商業ヲ営ムヲ以テ主タル目的トスル会社ハ外国ニ於テ設立スルモノト雖モ日本ニ於テ設立スル会社ト同一ノ規定ニ従フコトヲ要ス 第二百五十九条 第百四十八条、第百五十条、第百五十一条、第百五十六条第一項、第二百六条、第二百七条及ヒ第二百十七条第二項ノ規定ハ日本ニ於テスル外国会社ノ株式ノ発行及ヒ其株式若クハ社債ノ譲渡ニ之ヲ準用ス此場合ニ於テハ始メテ日本ニ設ケタル支店ヲ以テ本店ト看做ス 第二百六十条 外国会社カ日本ニ支店ヲ設ケタル場合ニ於テ其代表者カ会社ノ業務ニ付キ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル行為ヲ為シタルトキハ裁判所ハ検事ノ請求ニ因リ又ハ職権ヲ以テ其支店ノ閉鎖ヲ命スルコトヲ得 第七章 罰則 第二百六十一条 発起人、会社ノ業務ヲ執行スル社員、取締役、外国会社ノ代表者、監査役又ハ清算人ハ左ノ場合ニ於テハ五円以上五百円以下ノ過料ニ処セラル 一 本編ニ定メタル登記ヲ為スコトヲ怠リタルトキ 二 本編ニ定メタル公告若クハ通知ヲ怠リ又ハ不正ノ公告若クハ通知ヲ為シタルトキ 三 本編ノ規定ニ依リ閲覧ヲ許スヘキ書類ヲ正当ノ理由ナクシテ閲覧セシメサリシトキ 四 本編ノ規定ニ依ル調査ヲ妨ケタルトキ 五 第四十六条ノ規定ニ違反シテ開業ノ準備ニ著手シタルトキ 六 第百二十六条第二項及ヒ第二百三十八条第二項ノ規定ニ反シ株式申込証ヲ作ラス、之ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ 七 第百四十八条第一項又ハ第二百十七条第二項ノ規定ニ違反シテ株券ヲ発行シタルトキ 八 株券又ハ債券ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ 九 定款、株主名簿、社債原簿、創立総会並ニ株主総会ノ決議録、財産目録、貸借対照表、事業報告書、損益計算書及ヒ準備金並ニ利益又ハ利息ノ配当ニ関スル議案ヲ本店若クハ支店ニ備ヘ置カス、之ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ之ニ不正ノ記載ヲ為シタルトキ 十 第百七十四条第一項又ハ第百九十八条第二項ノ規定ニ反シテ株主総会ヲ招集セサルトキ 第二百六十二条 発起人、会社ノ業務ヲ執行スル社員、取締役、外国会社ノ代表者、監査役又ハ清算人ハ左ノ場合ニ於テハ十円以上千円以下ノ過料ニ処セラル 一 官庁又ハ創立総会若クハ株主総会ニ対シ不実ノ申立ヲ為シ又ハ事実ヲ隠蔽シタルトキ 二 第七十八条乃至第八十条ノ規定ニ違反シテ合併、会社財産ノ処分、資本ノ減少又ハ組織ノ変更ヲ為シタルトキ 三 検査役ノ調査ヲ妨ケタルトキ 四 第百五十二条第一項ノ規定ニ反シ株式ヲ取得シ若クハ質権ノ目的トシテ之ヲ受ケ又ハ同条第二項ノ規定ニ違反シテ之ヲ消却シタルトキ 五 第百五十六条第一項ノ規定ニ違反シテ株券ヲ無記名式ト為シタルトキ 六 第百七十四条第二項又ハ民法第八十一条ノ規定ニ反シ破産宣告ノ請求ヲ為スコトヲ怠リタルトキ 七 第百九十四条ノ規定ニ反シ準備金ヲ積立テス又ハ第百九十五条第一項若クハ第百九十六条ノ規定ニ違反シテ配当ヲ為シタルトキ 八 第二百条ノ規定ニ違反シテ社債ヲ募集シタルトキ 九 民法第七十九条ノ期間内ニ或債権者ニ弁済ヲ為シ又ハ第九十六条ノ規定ニ違反シテ会社財産ヲ分配シタルトキ 十 第二百六十条ノ規定ニ依ル裁判所ノ命令ニ違反シタルトキ 第三編 商行為 第一章 総則 第二百六十三条 左ニ掲ケタル行為ハ之ヲ商行為トス 一 利益ヲ得テ譲渡ス意思ヲ以テスル動産、不動産若クハ有価証券ノ有償取得又ハ其取得シタルモノノ譲渡ヲ目的トスル行為 二 他人ヨリ取得スヘキ動産又ハ有価証券ノ供給契約及ヒ其履行ノ為メニスル有償取得ヲ目的トスル行為 三 取引所ニ於テスル取引 四 手形其他ノ商業証券ニ関スル行為 第二百六十四条 左ニ掲ケタル行為ハ営業トシテ之ヲ為ストキハ之ヲ商行為トス但専ラ賃金ヲ得ル目的ヲ以テ物ヲ製造シ又ハ労務ニ服スル者ノ行為ハ此限ニ在ラス 一 賃貸スル意思ヲ以テスル動産若クハ不動産ノ有償取得若クハ賃借又ハ其取得若クハ賃借シタルモノノ賃貸ヲ目的トスル行為 二 他人ノ為メニスル製造又ハ加工ニ関スル行為 三 電気又ハ瓦斯ノ供給ニ関スル行為 四 運送ニ関スル行為 五 作業又ハ労務ノ請負 六 出版、印刷又ハ撮影ニ関スル行為 七 客ノ来集ヲ目的トスル場屋ニ於テスル取引 八 両替其他ノ銀行取引 九 保険 十 寄託ノ引受 十一 仲立又ハ取次ニ関スル行為 十二 商行為ノ代理ノ引受 第二百六十五条 商人カ其営業ノ為メニスル行為ハ之ヲ商行為トス 商人ノ行為ハ其営業ノ為メニスルモノト推定ス 第二百六十六条 商行為ノ代理人カ本人ノ為メニスルコトヲ示ササルトキト雖モ其行為ハ本人ニ対シテ其効力ヲ生ス但相手方カ本人ノ為メニスルコトヲ知ラサリシトキハ代理人ニ対シテ履行ノ請求ヲ為スコトヲ妨ケス 第二百六十七条 商行為ノ受任者ハ委任ノ本旨ニ反セサル範囲内ニ於テ委任ヲ受ケサル行為ヲ為スコトヲ得 第二百六十八条 商行為ノ委任ニ因ル代理権ハ本人ノ死亡ニ因リテ消滅セス 第二百六十九条 対話者間ニ於テ契約ノ申込ヲ受ケタル者カ直チニ承諾ヲ為ササルトキハ申込ハ其効力ヲ失フ 第二百七十条 隔地者間ニ於テ承諾期間ノ定ナクシテ契約ノ申込ヲ受ケタル者カ相当ノ期間内ニ承諾ノ通知ヲ発セサルトキハ申込ハ其効力ヲ失フ 民法第五百二十三条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第二百七十一条 商人カ平常取引ヲ為ス者ヨリ其営業ノ部類ニ属スル契約ノ申込ヲ受ケタルトキハ遅滞ナク諾否ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス若シ之ヲ発スルコトヲ怠リタルトキハ申込ヲ承諾シタルモノト看做ス 第二百七十二条 商人カ其営業ノ部類ニ属スル契約ノ申込ヲ受ケタル場合ニ於テ申込ト共ニ受取リタル物品アルトキハ其申込ヲ拒絶シタルトキト雖モ申込者ノ費用ヲ以テ其物品ヲ保管スルコトヲ要ス但其物品ノ価額カ其費用ヲ償フニ足ラサルトキ又ハ商人カ其保管ニ因リテ損害ヲ受クヘキトキハ此限ニ在ラス 第二百七十三条 数人カ其一人又ハ全員ノ為メニ商行為タル行為ニ因リテ債務ヲ負担シタルトキハ其債務ハ各自連帯シテ之ヲ負担ス 保証人アル場合ニ於テ債務カ主タル債務者ノ商行為ニ因リテ生シタルトキ又ハ保証カ商行為ナルトキハ主タル債務者及ヒ保証人カ各別ノ行為ヲ以テ債務ヲ負担シタルトキト雖モ其債務ハ各自連帯シテ之ヲ負担ス 第二百七十四条 商人カ其営業ノ範囲内ニ於テ他人ノ為メニ或行為ヲ為シタルトキハ相当ノ報酬ヲ請求スルコトヲ得 第二百七十五条 商人間ニ於テ金銭ノ消費貸借ヲ為シタルトキハ貸主ハ法定利息ヲ請求スルコトヲ得 商人カ其営業ノ範囲内ニ於テ他人ノ為メニ金銭ノ立替ヲ為シタルトキハ其立替ノ日以後ノ法定利息ヲ請求スルコトヲ得 第二百七十六条 商行為ニ因リテ生シタル債務ニ関シテハ法定利率ハ年六分トス 第二百七十七条 商行為ニ因リテ生シタル債務ノ履行ヲ為スヘキ場所カ其行為ノ性質又ハ当事者ノ意思表示ニ因リテ定マラサルトキハ特定物ノ引渡ハ行為ノ当時其物ノ存在セシ場所ニ於テ之ヲ為シ其他ノ履行ハ債権者ノ現時ノ営業所、若シ営業所ナキトキハ其住所ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス 指図債権及ヒ無記名債権ノ弁済ハ債務者ノ現時ノ営業所、若シ営業所ナキトキハ其住所ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス 第二百七十八条 指図債権又ハ無記名債権ノ債務者ハ其履行ニ付キ期限ノ定アルトキト雖モ其期限カ到来シタル後所持人カ其証券ヲ呈示シテ履行ノ請求ヲ為シタル時ヨリ遅滞ノ責ニ任ス 第二百七十九条 第二百七十七条第二項及ヒ前条ノ規定ハ民法第四百七十一条ニ掲ケタル債権ニ之ヲ準用ス 第二百八十条 金銭其他ノ物ノ給付ヲ目的トスル指図証券ノ所持人カ其証券ヲ喪失シタル場合ニ於テ公示催告ノ申立ヲ為シタルトキハ債務者ヲシテ其債務ノ目的物ヲ供託セシメ又ハ相当ノ担保ヲ供シテ其証券ノ趣旨ニ従ヒ履行ヲ為サシムルコトヲ得 第二百八十一条 第四百三十八条、第四百五十四条、第四百五十八条及ヒ第四百六十一条ノ規定ハ金銭其他ノ物ノ給付ヲ目的トスル指図債権ニ之ヲ準用ス 第二百八十二条 法令又ハ慣習ニ依リ取引時間ノ定アルトキハ其取引時間内ニ限リ債務ノ履行ヲ為シ又ハ其履行ノ請求ヲ為スコトヲ得 第二百八十三条 商人間ニ於テ其双方ノ為メニ商行為タル行為ニ因リテ生シタル債権カ弁済期ニ在ルトキハ債権者ハ弁済ヲ受クルマテ其債務者トノ間ニ於ケル商行為ニ因リテ自己ノ占有ニ帰シタル債務者ノ所有物ヲ留置スルコトヲ得但別段ノ意思表示アリタルトキハ此限ニ在ラス 第二百八十四条 商行為ニ因リテ生シタル債権ハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外五年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス但他ノ法令ニ之ヨリ短キ時効期間ノ定アルトキハ其規定ニ従フ 第二章 売買 第二百八十五条 商人間ノ売買ニ於テ買主カ其目的物ヲ受取ルコトヲ拒ミ又ハ之ヲ受取ルコト能ハサルトキハ売主ハ其物ヲ供託シ又ハ相当ノ期間ヲ定メテ催告ヲ為シタル後之ヲ競売スルコトヲ得此場合ニ於テハ遅滞ナク買主ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 損敗シ易キ物ハ前項ノ催告ヲ為サスシテ之ヲ競売スルコトヲ得 前二項ノ規定ニ依リ売主カ売買ノ目的物ヲ競売シタルトキハ其代価ヲ供託スルコトヲ要ス但其全部又ハ一部ヲ代金ニ充当スルコトヲ妨ケス 第二百八十六条 売買ノ性質又ハ当事者ノ意思表示ニ依リ一定ノ日時又ハ一定ノ期間内ニ履行ヲ為スニ非サレハ契約ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサル場合ニ於テ当事者ノ一方カ履行ヲ為サスシテ其時期ヲ経過シタルトキハ相手方ハ直チニ其履行ヲ請求スルニ非サレハ契約ノ解除ヲ為シタルモノト看做ス 第二百八十七条 商人間ノ売買ニ於テ買主カ其目的物ヲ受取リタルトキハ遅滞ナク之ヲ検査シ若シ之ニ瑕疵アルコト又ハ其数量ニ不足アルコトヲ発見シタルトキハ直チニ売主ニ対シテ其通知ヲ発スルニ非サレハ其瑕疵又ハ不足ニ因リテ契約ノ解除又ハ代金減額若クハ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得ス売買ノ目的物ニ直チニ発見スルコト能ハサル瑕疵アリタル場合ニ於テ買主カ六个月内ニ之ヲ発見シタルトキ亦同シ 前項ノ規定ハ売主ニ悪意アリタル場合ニハ之ヲ適用セス 第二百八十八条 前条ノ場合ニ於テ買主ハ契約ノ解除ヲ為シタルトキト雖モ売主ノ費用ヲ以テ売買ノ目的物ヲ保管又ハ供託スルコトヲ要ス但其物ニ付キ滅失又ハ毀損ノ虞アルトキハ裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ競売シ其代価ヲ保管又ハ供託スルコトヲ要ス 前項ノ規定ニ依リ買主カ競売ヲ為シタルトキハ遅滞ナク売主ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 前二項ノ規定ハ売主及ヒ買主ノ営業所、若シ営業所ナキトキハ其住所カ同市町村内ニ在ル場合ニハ之ヲ適用セス 第二百八十九条 前条ノ規定ハ売主ヨリ買主ニ引渡シタル物品カ注文シタル物品ト異ナリタル場合ニ之ヲ準用ス其物品カ注文シタル数量ヲ超過シタル場合ニ於テ其超過額ニ付キ亦同シ 第三章 交互計算 第二百九十条 交互計算ハ商人間又ハ商人ト商人ニ非サル者トノ間ニ平常取引ヲ為ス場合ニ於テ一定ノ期間内ノ取引ヨリ生スル債権債務ノ総額ニ付キ相殺ヲ為シ其残額ノ支払ヲ為スヘキコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス 第二百九十一条 手形其他ノ商業証券ヨリ生シタル債権債務ヲ交互計算ニ組入レタル場合ニ於テ証券ノ債務者カ弁済ヲ為ササリシトキハ当事者ハ其債務ニ関スル項目ヲ交互計算ヨリ除去スルコトヲ得 第二百九十二条 当事者カ相殺ヲ為スヘキ期間ヲ定メサリシトキハ其期間ハ之ヲ六个月トス 第二百九十三条 当事者カ債権債務ノ各項目ヲ記載シタル計算書ノ承認ヲ為シタルトキハ其各項目ニ付キ異議ヲ述フルコトヲ得ス但錯誤又ハ脱漏アリタルトキハ此限ニ在ラス 第二百九十四条 相殺ニ因リテ生シタル残額ニ付テハ債権者ハ計算閉鎖ノ日以後ノ法定利息ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ規定ハ各項目ヲ交互計算ニ組入レタル日ヨリ之ニ利息ヲ附スルコトヲ妨ケス 第二百九十五条 各当事者ハ何時ニテモ交互計算ノ解除ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ直チニ計算ヲ閉鎖シテ残額ノ支払ヲ請求スルコトヲ得 第四章 匿名組合 第二百九十六条 匿名組合契約ハ当事者ノ一方カ相手方ノ営業ノ為メニ出資ヲ為シ其営業ヨリ生スル利益ヲ分配スヘキコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス 第二百九十七条 匿名組合員ノ出資ハ営業者ノ財産ニ帰ス 匿名組合員ハ営業者ノ行為ニ付キ第三者ニ対シテ権利義務ヲ有セス 第二百九十八条 匿名組合員カ其氏若クハ氏名ヲ営業者ノ商号中ニ用井又ハ其商号ヲ営業者ノ商号トシテ用ユルコトヲ許諾シタルトキハ其使用以後ニ生シタル債務ニ付テハ営業者ト連帯シテ其責ニ任ス 第二百九十九条 出資カ損失ニ因リテ減シタルトキハ其填補ノ後ニ非サレハ匿名組合員ハ利益ノ配当ヲ請求スルコトヲ得ス 第三百条 組合契約ヲ以テ組合ノ存続期間ヲ定メサリシトキ又ハ或当事者ノ終身間組合ノ存続スヘキコトヲ定メタルトキハ各当事者ハ事業年度ノ終ニ於テ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但六个月前ニ其予告ヲ為スコトヲ要ス 組合ノ存続期間ヲ定メタルト否トヲ問ハス已ムコトヲ得サル事由アルトキハ各当事者ハ何時ニテモ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 第三百一条 前条ニ掲ケタル場合ノ外組合契約ハ左ノ事由ニ因リテ終了ス 一 組合ノ目的タル事業ノ成功又ハ其成功ノ不能 二 営業者ノ死亡又ハ禁治産 三 営業者又ハ匿名組合員ノ破産 第三百二条 組合契約カ終了シタルトキハ営業者ハ匿名組合員ニ其出資ノ価額ヲ返還スルコトヲ要ス但出資カ損失ニ因リテ減シタルトキハ其残額ヲ返還スルヲ以テ足ル 第三百三条 第百八条、第百十一条及ヒ第百十五条ノ規定ハ匿名組合員ニ之ヲ準用ス 第五章 仲立営業 第三百四条 仲立人トハ他人間ノ商行為ノ媒介ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ 第三百五条 仲立人ハ其媒介シタル行為ニ付キ当事者ノ為メニ支払其他ノ給付ヲ受クルコトヲ得ス但別段ノ意思表示又ハ慣習アルトキハ此限ニ在ラス 第三百六条 仲立人カ其媒介スル行為ニ付キ見本ヲ受取リタルトキハ其行為カ完了スルマテ之ヲ保管スルコトヲ要ス 第三百七条 当事者間ニ於テ行為カ成立シタルトキハ仲立人ハ遅滞ナク各当事者ノ氏名又ハ商号、行為ノ年月日及ヒ其要領ヲ記載シタル書面ヲ作リ署名ノ後之ヲ各当事者ニ交付スルコトヲ要ス 当事者カ直チニ履行ヲ為スヘキ場合ヲ除ク外仲立人ハ各当事者ヲシテ前項ノ書面ニ署名セシメタル後之ヲ其相手方ニ交付スルコトヲ要ス 前二項ノ場合ニ於テ当事者ノ一方カ書面ヲ受領セス又ハ之ニ署名セサルトキハ仲立人ハ遅滞ナク相手方ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 第三百八条 仲立人ハ其帳簿ニ前条第一項ニ掲ケタル事項ヲ記載スルコトヲ要ス 当事者ハ何時ニテモ仲立人カ自己ノ為メニ媒介シタル行為ニ付キ其帳簿ノ謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得 第三百九条 当事者カ其氏名又ハ商号ヲ相手方ニ示ササルヘキ旨ヲ仲立人ニ命シタルトキハ仲立人ハ第三百七条第一項ノ書面及ヒ前条第二項ノ謄本ニ其氏名又ハ商号ヲ記載スルコトヲ得ス 第三百十条 仲立人カ当事者ノ一方ノ氏名又ハ商号ヲ其相手方ニ示ササリシトキハ之ニ対シテ自ラ履行ヲ為ス責ニ任ス 第三百十一条 仲立人ハ第三百七条ノ手続ヲ終ハリタル後ニ非サレハ報酬ヲ請求スルコトヲ得ス 仲立人ノ報酬ハ当事者双方平分シテ之ヲ負担ス 第六章 問屋営業 第三百十二条 問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ 第三百十三条 問屋ハ他人ノ為メニ為シタル販売又ハ買入ニ因リ相手方ニ対シテ自ラ権利ヲ得義務ヲ負フ 問屋ト委託者トノ間ニ於テハ本章ノ規定ノ外委任及ヒ代理ニ関スル規定ヲ準用ス 第三百十四条 問屋ハ委託者ノ為メニ為シタル販売又ハ買入ニ付キ相手方カ其債務ヲ履行セサル場合ニ於テ自ラ其履行ヲ為ス責ニ任ス但別段ノ意思表示又ハ慣習アルトキハ此限ニ在ラス 第三百十五条 問屋カ委託者ノ指定シタル金額ヨリ廉価ニテ販売ヲ為シ又ハ高価ニテ買入ヲ為シタル場合ニ於テ自ラ其差額ヲ負担スルトキハ其販売又ハ買入ハ委託者ニ対シテ其効力ヲ生ス 第三百十六条 問屋カ取引所ノ相場アル物品ノ販売又ハ買入ノ委託ヲ受ケタルトキハ自ラ買主又ハ売主ト為ルコトヲ得此場合ニ於テハ売買ノ代価ハ問屋カ買主又ハ売主ト為リタルコトノ通知ヲ発シタル時ニ於ケル取引所ノ相場ニ依リテ之ヲ定ム 前項ノ場合ニ於テモ問屋ハ委託者ニ対シテ報酬ヲ請求スルコトヲ得 第三百十七条 問屋カ買入ノ委託ヲ受ケタル場合ニ於テ委託者カ買入レタル物品ヲ受取ルコトヲ拒ミ又ハ之ヲ受取ルコト能ハサルトキハ第二百八十五条ノ規定ヲ準用ス 第三百十八条 第三十七条及ヒ第四十一条ノ規定ハ問屋ニ之ヲ準用ス 第三百十九条 前六条ノ規定ハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ販売又ハ買入ニ非サル行為ヲ為スヲ業トスル者ニ之ヲ準用ス 第七章 運送取扱営業 第三百二十条 運送取扱人トハ自己ノ名ヲ以テ物品運送ノ取次ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ 運送取扱人ニハ本章ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外問屋ニ関スル規定ヲ準用ス 第三百二十一条 運送取扱人ハ自己又ハ其使用人カ運送品ノ受取、引渡、保管、運送人又ハ他ノ運送取扱人ノ選択其他運送ニ関スル注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ運送品ノ滅失、毀損又ハ延著ニ付キ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス 第三百二十二条 運送取扱人カ運送品ヲ運送人ニ引渡シタルトキハ直チニ其報酬ヲ請求スルコトヲ得 運送取扱契約ヲ以テ運送賃ノ額ヲ定メタルトキハ運送取扱人ハ特約アルニ非サレハ別ニ報酬ヲ請求スルコトヲ得ス 第三百二十三条 運送取扱人ハ運送品ニ関シ受取ルヘキ報酬、運送賃其他委託者ノ為メニ為シタル立替又ハ前貸ニ付テノミ其運送品ヲ留置スルコトヲ得 第三百二十四条 数人相次テ運送ノ取次ヲ為ス場合ニ於テハ其後者ハ前者ニ代ハリテ其権利ヲ行使スル義務ヲ負フ 前項ノ場合ニ於テ後者カ前者ニ弁済ヲ為シタルトキハ前者ノ権利ヲ取得ス 第三百二十五条 運送取扱人カ運送人ニ弁済ヲ為シタルトキハ運送人ノ権利ヲ取得ス 第三百二十六条 運送取扱人ハ特約ナキトキハ自ラ運送ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ運送取扱人ハ運送人ト同一ノ権利義務ヲ有ス 第三百二十七条 運送取扱人ノ責任ハ荷受人カ運送品ヲ受取リタル日ヨリ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス 前項ノ期間ハ運送品ノ全部滅失ノ場合ニ於テハ其引渡アルヘカリシ日ヨリ之ヲ起算ス 前二項ノ規定ハ運送取扱人ニ悪意アリタル場合ニハ之ヲ適用セス 第三百二十八条 運送取扱人ノ委託者又ハ荷受人ニ対スル債権ハ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス 第三百二十九条 第三百三十七条及ヒ第三百四十二条ノ規定ハ運送取扱営業ニ之ヲ準用ス 第八章 運送営業 第三百三十条 運送人トハ陸上又ハ湖川、港湾ニ於テ物品又ハ旅客ノ運送ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ 第一節 物品運送 第三百三十一条 荷送人ハ運送人ノ請求ニ因リ運送状ヲ交付スルコトヲ要ス 運送状ニハ左ノ事項ヲ記載シ荷送人之ニ署名スルコトヲ要ス 一 運送品ノ種類、重量又ハ容積及ヒ其荷造ノ種類、個数並ニ記号 二 到達地 三 荷受人ノ氏名又ハ商号 四 運送状ノ作成地及ヒ其作成ノ年月日 第三百三十二条 運送人ハ荷送人ノ請求ニ因リ貨物引換証ヲ交付スルコトヲ要ス 貨物引換証ニハ左ノ事項ヲ記載シ運送人之ニ署名スルコトヲ要ス 一 前条第二項第一号乃至第三号ニ掲ケタル事項 二 荷送人ノ氏名又ハ商号 三 運送賃 四 貨物引換証ノ作成地及ヒ其作成ノ年月日 第三百三十三条 貨物引換証ヲ作リタルトキハ運送人ト所持人トノ間ニ於テハ運送ニ関スル事項ハ貨物引換証ノ定ムル所ニ依ル 第三百三十四条 裏書ニ依リテ貨物引換証ヲ譲渡シタルトキハ運送品ノ譲渡ト同一ノ効力ヲ有ス 第三百三十五条 運送品ノ全部又ハ一部カ不可抗力ニ因リテ滅失シタルトキハ運送人ハ其運送賃ヲ請求スルコトヲ得ス若シ運送人カ既ニ運送賃ノ全部又ハ一部ヲ受取リタルトキハ之ヲ返還スルコトヲ要ス 運送品ノ全部又ハ一部カ其性質若クハ瑕疵又ハ荷送人ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ運送人ハ運送賃ノ全額ヲ請求スルコトヲ得 第三百三十六条 運送人ハ自己若クハ運送取扱人又ハ其使用人其他運送ノ為メ使用シタル者カ運送品ノ受取、引渡、保管及ヒ運送ニ関シ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ運送品ノ滅失、毀損又ハ延著ニ付キ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス 第三百三十七条 貨幣、有価証券其他ノ高価品ニ付テハ荷送人カ運送ヲ委託スルニ当タリ其種類及ヒ価額ヲ明告シタルニ非サレハ運送人ハ損害賠償ノ責ニ任セス 第三百三十八条 数人相次テ運送ヲ為ス場合ニ於テハ各運送人ハ運送品ノ滅失、毀損又ハ延著ニ付キ連帯シテ損害賠償ノ責ニ任ス 第三百三十九条 運送品ノ全部滅失ノ場合ニ於ケル損害賠償ノ額ハ其引渡アルヘカリシ日ニ於ケル到達地ノ価格ニ依リテ之ヲ定ム 運送品ノ一部滅失又ハ毀損ノ場合ニ於ケル損害賠償ノ額ハ其引渡アリタル日ニ於ケル到達地ノ価格ニ依リテ之ヲ定ム但延著ノ場合ニ於テハ前項ノ規定ヲ準用ス 運送品ノ滅失又ハ毀損ノ為メ支払フコトヲ要セサル運送賃其他ノ費用ハ前二項ノ賠償額ヨリ之ヲ控除ス 第三百四十条 運送品カ運送人ノ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ運送人ハ一切ノ損害ヲ賠償スル責ニ任ス 第三百四十一条 荷送人又ハ貨物引換証ノ所持人ハ運送人ニ対シ運送ノ中止、運送品ノ返還其他ノ処分ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ運送人ハ既ニ為シタル運送ノ割合ニ応スル運送賃立替金及ヒ其処分ニ因リテ生シタル費用ノ弁済ヲ請求スルコトヲ得 前項ニ定メタル荷送人ノ権利ハ運送品カ到達地ニ達シタル後荷受人カ其引渡ヲ請求シタルトキハ消滅ス 第三百四十二条 運送品カ到達地ニ達シタル後ハ荷受人ハ運送契約ニ因リテ生シタル荷送人ノ権利ヲ取得ス 荷受人カ運送品ヲ受取リタルトキハ運送人ニ対シ運送賃其他ノ費用ヲ支払フ義務ヲ負フ 第三百四十三条 貨物引換証ヲ作リタル場合ニ於テハ之ト引換ニ非サレハ運送品ノ引渡ヲ請求スルコトヲ得ス 第三百四十四条 荷受人ヲ確知スルコト能ハサルトキハ運送人ハ運送品ヲ供託スルコトヲ得 前項ノ場合ニ於テ運送人カ荷送人ニ対シ相当ノ期間ヲ定メ運送品ノ処分ニ付キ指図ヲ為スヘキ旨ヲ催告スルモ荷送人カ其指図ヲ為ササルトキハ運送品ヲ競売スルコトヲ得 運送人カ前二項ノ規定ニ従ヒテ運送品ノ供託又ハ競売ヲ為シタルトキハ遅滞ナク荷送人ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 第三百四十五条 前条ノ規定ハ運送品ノ引渡ニ関シテ争アル場合ニ之ヲ準用ス 運送人カ競売ヲ為スニハ予メ荷受人ニ対シ相当ノ期間ヲ定メテ運送品ノ受取ヲ催告シ其期間経過ノ後更ニ荷送人ニ対スル催告ヲ為スコトヲ要ス 運送人ハ遅滞ナク荷受人ニ対シテモ運送品ノ供託又ハ競売ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス 第三百四十六条 第二百八十五条第二項及ヒ第三項ノ規定ハ前二条ノ場合ニ之ヲ準用ス 第三百四十七条 運送人ノ責任ハ荷受人カ留保ヲ為サスシテ運送品ヲ受取リ且運送賃其他ノ費用ヲ支払ヒタルトキハ消滅ス但運送品ニ直チニ発見スルコト能ハサル毀損又ハ一部滅失アリタル場合ニ於テ荷受人カ引渡ノ日ヨリ二週間内ニ運送人ニ対シテ其通知ヲ発シタルトキハ此限ニ在ラス 前項ノ規定ハ運送人ニ悪意アリタル場合ニハ之ヲ適用セス 第三百四十八条 第三百二十三条、第三百二十四条、第三百二十七条及ヒ第三百二十八条ノ規定ハ運送人ニ之ヲ準用ス 第二節 旅客運送 第三百四十九条 旅客ノ運送人ハ自己又ハ其使用人カ運送ニ関シ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ旅客カ運送ノ為メニ受ケタル損害ヲ賠償スル責ヲ免ルルコトヲ得ス 損害賠償ノ額ヲ定ムルニ付テハ裁判所ハ被害者及ヒ其家族ノ情況ヲ斟酌スルコトヲ要ス 第三百五十条 旅客ノ運送人ハ旅客ヨリ引渡ヲ受ケタル手荷物ニ付テハ特ニ運送賃ヲ請求セサルトキト雖モ物品ノ運送人ト同一ノ責任ヲ負フ 手荷物カ到達地ニ達シタル日ヨリ一週間内ニ旅客カ其引渡ヲ請求セサル場合ニ於テハ第二百八十五条ノ規定ヲ準用ス但住所又ハ居所ノ知レサル旅客ニハ催告及ヒ通知ヲ為スコトヲ要セス 第三百五十一条 旅客ノ運送人ハ旅客ヨリ引渡ヲ受ケサル手荷物ノ滅失又ハ毀損ニ付テハ自己又ハ其使用人ニ過失アル場合ヲ除ク外損害賠償ノ責ニ任セス 第九章 寄託 第一節 総則 第三百五十二条 商人カ其営業ノ範囲内ニ於テ寄託ヲ受ケタルトキハ報酬ヲ受ケサルトキト雖モ善良ナル管理者ノ注意ヲ為スコトヲ要ス 第三百五十三条 旅店、飲食店、浴場其他客ノ来集ヲ目的トスル場屋ノ主人ハ客ヨリ寄託ヲ受ケタル物品ノ滅失又ハ毀損ニ付キ其不可抗力ニ因リタルコトヲ証明スルニ非サレハ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス 客カ特ニ寄託セサル物品ト雖モ場屋中ニ携帯シタル物品カ場屋ノ主人又ハ其使用人ノ不注意ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ場屋ノ主人ハ損害賠償ノ責ニ任ス 客ノ携帯品ニ付キ責任ヲ負ハサル旨ヲ告示シタルトキト雖モ場屋ノ主人ハ前二項ノ責任ヲ免ルルコトヲ得ス 第三百五十四条 貨幣、有価証券其他ノ高価品ニ付テハ客カ其種類及ヒ価額ヲ明告シテ之ヲ前条ノ場屋ノ主人ニ寄託シタルニ非サレハ其場屋ノ主人ハ其物品ノ滅失又ハ毀損ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任セス 第三百五十五条 前二条ノ責任ハ場屋ノ主人カ寄託物ヲ返還シ又ハ客カ携帯品ヲ持去リタル後一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス 前項ノ期間ハ物品ノ全部滅失ノ場合ニ於テハ客カ場屋ヲ去リタル時ヨリ之ヲ起算ス 前二項ノ規定ハ場屋ノ主人ニ悪意アリタル場合ニハ之ヲ適用セス 第二節 倉庫営業 第三百五十六条 倉庫営業者トハ他人ノ為メニ物品ヲ倉庫ニ保管スルヲ業トスル者ヲ謂フ 第三百五十七条 倉庫営業者ハ寄託者ノ請求ニ因リ寄託物ノ預証券及ヒ質入証券ヲ交付スルコトヲ要ス 第三百五十八条 預証券及ヒ質入証券ニハ左ノ事項及ヒ番号ヲ記載シ倉庫営業者之ニ署名スルコトヲ要ス 一 受寄物ノ種類、品質、数量及ヒ其荷造ノ種類、個数並ニ記号 二 寄託者ノ氏名又ハ商号 三 保管ノ場所 四 保管料 五 保管ノ期間ヲ定メタルトキハ其期間 六 受寄物ヲ保険ニ付シタルトキハ保険金額、保険期間及ヒ保険者ノ氏名又ハ商号 七 証券ノ作成地及ヒ其作成ノ年月日 第三百五十九条 倉庫営業者カ預証券及ヒ質入証券ヲ寄託者ニ交付シタルトキハ其帳簿ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 一 前条第一号、第二号及ヒ第四号乃至第六号ニ掲ケタル事項 二 証券ノ番号及ヒ其作成ノ年月日 第三百六十条 預証券及ヒ質入証券ノ所持人ハ倉庫営業者ニ対シ寄託物ヲ分割シ且其各部分ニ対スル預証券及ヒ質入証券ノ交付ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ所持人ハ前ノ預証券及ヒ質入証券ヲ倉庫営業者ニ返還スルコトヲ要ス 前項ニ定メタル寄託物ノ分割及ヒ証券ノ交付ニ関スル費用ハ所持人之ヲ負担ス 第三百六十一条 預証券及ヒ質入証券ヲ作リタルトキハ倉庫営業者ト所持人トノ間ニ於テハ寄託ニ関スル事項ハ其証券ノ定ムル所ニ依ル 第三百六十二条 預証券及ヒ質入証券ヲ作リタルトキハ寄託物ニ関スル処分ハ其証券ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス 第三百六十三条 預証券及ヒ質入証券ハ其記名式ナルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡シ又ハ之ヲ質入スルコトヲ得但証券ニ裏書ヲ禁スル旨ヲ記載シタルトキハ此限ニ在ラス 預証券ノ所持人カ未タ質入ヲ為ササル間ハ預証券及ヒ質入証券ハ各別ニ之ヲ譲渡スコトヲ得ス 第三百六十四条 第三百三十四条ノ規定ハ預証券ニ之ヲ準用ス 第三百六十五条 預証券又ハ質入証券カ滅失シタルトキハ其所持人ハ相当ノ担保ヲ供シテ更ニ其証券ノ交付ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ倉庫営業者ハ其旨ヲ帳簿ニ記載スルコトヲ要ス 第三百六十六条 質入証券ニ第一ノ質入裏書ヲ為スニハ債権額、其利息及ヒ弁済期ヲ記載スルコトヲ要ス 第一ノ質権者カ前項ニ掲ケタル事項ヲ預証券ニ記載シテ之ニ署名スルニ非サレハ質権ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第三百六十七条 預証券ノ所持人ハ質入証券ニ記載シタル債権ノ弁済期前ト雖モ其債権ノ全額及ヒ弁済期マテノ利息ヲ倉庫営業者ニ供託シテ寄託物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ規定ニ従ヒテ供託シタル金額ハ質入証券ト引換ニ之ヲ其所持人ニ支払フコトヲ要ス 第三百六十八条 質入証券ノ所持人カ弁済期ニ至リ支払ヲ受ケサルトキハ為替手形ニ関スル規定ニ従ヒテ拒絶証書ヲ作ラシムルコトヲ要ス 第三百六十九条 質入証券ノ所持人ハ拒絶証書作成ノ日ヨリ一週間ヲ経過シタル後ニ非サレハ寄託物ノ競売ヲ請求スルコトヲ得ス 第三百七十条 倉庫営業者ハ競売代金ノ中ヨリ競売ニ関スル費用、受寄物ニ課スヘキ租税、保管料其他保管ニ関スル費用及ヒ立替金ヲ控除シタル後其残額ヲ質入証券ト引換ニ其所持人ニ支払フコトヲ要ス 競売代金ノ中ヨリ前項ニ掲ケタル費用、租税、保管料、立替金及ヒ質入証券所持人ノ債権額、利息、拒絶証書作成ノ費用ヲ控除シタル後余剰アルトキハ倉庫営業者ハ之ヲ預証券ト引換ニ其所持人ニ支払フコトヲ要ス 第三百七十一条 競売代金ヲ以テ質入証券ニ記載シタル債権ノ全部ヲ弁済スルコト能ハサリシトキハ倉庫営業者ハ其支払ヒタル金額ヲ質入証券ニ記載シテ其証券ヲ返還シ且其旨ヲ帳簿ニ記載スルコトヲ要ス 第三百七十二条 質入証券ノ所持人ハ先ツ寄託物ニ付キ弁済ヲ受ケ尚ホ不足アルニ非サレハ債務者其他ノ裏書人ニ対シテ請求ヲ為スコトヲ得ス 第三百七十三条 質入証券ノ所持人カ弁済期ニ至リ支払ヲ受ケサリシ場合ニ於テ拒絶証書ヲ作ラシメサリシトキ又ハ拒絶証書作成ノ日ヨリ二週間内ニ寄託物ノ競売ヲ請求セサリシトキハ裏書人ニ対スル請求権ヲ失フ 第三百七十四条 債務者其他ノ裏書人ニ対スル質入証券所持人ノ請求権ハ弁済期ヨリ一年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス 第三百七十五条 寄託者又ハ預証券ノ所持人ハ営業時間内何時ニテモ倉庫営業者ニ対シテ寄託物ノ点検若クハ其見本ノ摘出ヲ求メ又ハ其保存ニ必要ナル処分ヲ為スコトヲ得 質入証券ノ所持人ハ営業時間内何時ニテモ倉庫営業者ニ対シテ寄託物ノ点検ヲ求ムルコトヲ得 第三百七十六条 倉庫営業者ハ自己又ハ其使用人カ受寄物ノ保管ニ関シ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ其滅失又ハ毀損ニ付キ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス 第三百七十七条 倉庫営業者ハ受寄物出庫ノ時ニ非サレハ報酬及ヒ立替金其他受寄物ニ関スル費用ノ支払ヲ請求スルコトヲ得ス但受寄物ノ一部出庫ノ場合ニ於テハ割合ニ応シテ其支払ヲ請求スルコトヲ得 第三百七十八条 当事者カ保管ノ期間ヲ定メサリシトキハ倉庫営業者ハ受寄物入庫ノ日ヨリ六个月ヲ経過シタル後ニ非サレハ其返還ヲ為スコトヲ得ス但已ムコトヲ得サル事由アルトキハ此限ニ在ラス 第三百七十九条 預証券及ヒ質入証券ヲ作リタル場合ニ於テハ之ト引換ニ非サレハ寄託物ノ返還ヲ請求スルコトヲ得ス 第三百八十条 第二百八十五条ノ規定ハ寄託者又ハ預証券ノ所持人カ寄託物ヲ受取ルコトヲ拒ミ又ハ之ヲ受取ルコト能ハサル場合ニ之ヲ準用ス 第三百八十一条 第三百四十七条ノ規定ハ倉庫営業者ニ之ヲ準用ス 第三百八十二条 寄託物ノ滅失又ハ毀損ニ因リテ生シタル倉庫営業者ノ責任ハ出庫ノ日ヨリ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス 前項ノ期間ハ寄託物ノ全部滅失ノ場合ニ於テハ倉庫営業者カ預証券ノ所持人、若シ其所持人カ知レサルトキハ寄託者ニ対シテ其滅失ノ通知ヲ発シタル日ヨリ之ヲ起算ス 前二項ノ規定ハ倉庫営業者ニ悪意アリタル場合ニハ之ヲ適用セス 第十章 保険 第一節 損害保険 第一款 総則 第三百八十三条 損害保険契約ハ当事者ノ一方カ偶然ナル一定ノ事故ニ因リテ生スルコトアルヘキ損害ヲ填補スルコトヲ約シ相手方カ之ニ其報酬ヲ与フルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス 第三百八十四条 保険契約ハ金銭ニ見積ルコトヲ得ヘキ利益ニ限リ之ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得 第三百八十五条 保険金額カ保険契約ノ目的ノ価額ニ超過シタルトキハ其超過シタル部分ニ付テハ保険契約ハ無効トス 第三百八十六条 同一ノ目的ニ付キ同時ニ数個ノ保険契約ヲ為シタル場合ニ於テ其保険金額カ保険価額ニ超過シタルトキハ各保険者ノ負担額ハ其各自ノ保険金額ノ割合ニ依リテ之ヲ定ム 数個ノ保険契約ノ日附カ同一ナルトキハ其契約ハ同時ニ為シタルモノト推定ス 第三百八十七条 相次テ数個ノ保険契約ヲ為シタルトキハ前ノ保険者先ツ損害ヲ負担シ若シ其負担額カ損害ノ全部ヲ填補スルニ足ラサルトキハ後ノ保険者之ヲ負担ス 第三百八十八条 保険価額ノ全部ヲ保険ニ付シタル後ト雖モ左ノ場合ニ限リ更ニ保険契約ヲ為スコトヲ得 一 前ノ保険者ニ対スル権利ヲ後ノ保険者ニ譲渡スコトヲ約シタルトキ 二 前ノ保険者ニ対スル権利ノ全部又ハ一部ヲ放棄スヘキコトヲ後ノ保険者ニ約シタルトキ 三 前ノ保険者カ損害ノ填補ヲ為ササルコトヲ条件トシタルトキ 第三百八十九条 同時ニ又ハ相次テ数個ノ保険契約ヲ為シタル場合ニ於テ保険者ノ一人ニ対スル権利ノ放棄ハ他ノ保険者ノ権利義務ニ影響ヲ及ホサス 第三百九十条 保険価額ノ一部ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テハ保険者ノ負担ハ保険金額ノ保険価額ニ対スル割合ニ依リテ之ヲ定ム 第三百九十一条 保険価額カ保険期間中著シク減少シタルトキハ保険契約者ハ保険者ニ対シテ保険金額及ヒ保険料ノ減額ヲ請求スルコトヲ得但保険料ノ減額ハ将来ニ向テノミ其効力ヲ生ス 第三百九十二条 保険者カ填補スヘキ損害ノ額ハ其損害カ生シタル地ニ於ケル其時ノ価額ニ依リテ之ヲ定ム 前項ノ損害額ヲ計算スルニ必要ナル費用ハ保険者之ヲ負担ス 第三百九十三条 当事者カ保険価額ヲ定メタルトキハ保険者ハ其価額ノ著シク過当ナルコトヲ証明スルニ非サレハ其填補額ノ減少ヲ請求スルコトヲ得ス 第三百九十四条 戦争其他ノ変乱ニ因リテ生シタル損害ハ特約アルニ非サレハ保険者之ヲ填補スル責ニ任セス 第三百九十五条 保険ノ目的ノ性質若クハ瑕疵、其自然ノ消耗又ハ保険契約者、被保険者若クハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ悪意若クハ重大ナル過失ニ因リテ生シタル損害ハ保険者之ヲ填補スル責ニ任セス 第三百九十六条 保険契約ノ当時当事者ノ一方又ハ被保険者カ事故ノ生セサルヘキコト又ハ既ニ生シタルコトヲ知レルトキハ其契約ハ無効トス 第三百九十七条 保険契約者カ保険契約ヲ為スニ当タリ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ重要ナル事実ヲ告ケス又ハ重要ナル事項ニ付キ不実ノ事ヲ告ケタルトキハ其契約ハ無効トス但保険者カ其事実ヲ知リ又ハ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシトキハ此限ニ在ラス 第三百九十八条 保険契約ノ全部又ハ一部カ無効ナル場合ニ於テ保険契約者及ヒ被保険者カ善意ニシテ且重大ナル過失ナキトキハ保険者ニ対シテ保険料ノ全部又ハ一部ノ返還ヲ請求スルコトヲ得 第三百九十九条 保険契約ノ当事者カ特別ノ危険ヲ斟酌シテ保険料ノ額ヲ定メタル場合ニ於テ保険期間中其危険カ消滅シタルトキハ保険契約者ハ将来ニ向テ保険料ノ減額ヲ請求スルコトヲ得 第四百条 保険契約ハ他人ノ為メニモ之ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ保険契約者ハ保険者ニ対シ保険料ヲ支払フ義務ヲ負フ 第四百一条 保険契約者カ委任ヲ受ケスシテ他人ノ為メニ契約ヲ為シタル場合ニ於テ其旨ヲ保険者ニ告ケサルトキハ其契約ハ無効トス若シ之ヲ告ケタルトキハ被保険者ハ当然其契約ノ利益ヲ享受ス 第四百二条 保険者ハ保険契約者ノ請求ニ因リ保険証券ヲ交付スルコトヲ要ス 保険証券ニハ左ノ事項ヲ記載シ保険者之ニ署名スルコトヲ要ス 一 保険ノ目的 二 保険者ノ負担シタル危険 三 保険価額ヲ定メタルトキハ其価額 四 保険金額 五 保険料及ヒ其支払ノ方法 六 保険期間ヲ定メタルトキハ其始期及ヒ終期 七 保険契約者ノ氏名又ハ商号 八 保険契約ノ年月日 九 保険証券ノ作成地及ヒ其作成ノ年月日 第四百三条 被保険者カ保険ノ目的ヲ譲渡シタルトキハ同時ニ保険契約ニ因リテ生シタル権利ヲ譲渡シタルモノト推定ス 前項ノ場合ニ於テ保険ノ目的ノ譲渡カ著シク危険ヲ変更又ハ増加シタルトキハ保険契約ハ其効力ヲ失フ 第四百四条 保険者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ保険契約者ハ相当ノ担保ヲ供セシメ又ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 前項ノ規定ハ保険契約者カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス但保険契約者カ既ニ保険料ノ全部ヲ支払ヒタルトキハ此限ニ在ラス 第四百五条 他人ノ為メニ保険契約ヲ為シタル場合ニ於テ保険契約者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ保険者ハ被保険者ニ対シテ保険料ヲ請求スルコトヲ得但被保険者カ其権利ヲ放棄シタルトキハ此限ニ在ラス 第四百六条 保険者ノ責任カ始マル前ニ於テハ保険契約者ハ契約ノ全部又ハ一部ノ解除ヲ為スコトヲ得 第四百七条 保険者ノ責任カ始マル前ニ於テ保険契約者又ハ被保険者ノ行為ニ因ラスシテ保険ノ目的ノ全部又ハ一部ニ付キ保険者ノ負担ニ帰スヘキ危険カ生セサルニ至リタルトキハ保険者ハ保険料ノ全部又ハ一部ヲ返還スルコトヲ要ス 第四百八条 前二条ノ場合ニ於テハ保険者ハ其返還スヘキ保険料ノ半額ニ相当スル金額ヲ請求スルコトヲ得 第四百九条 保険期間中危険カ著シク変更又ハ増加シタルトキハ保険者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但其解除ハ将来ニ向テノミ其効力ヲ生ス 第四百十条 保険契約者又ハ被保険者カ危険ノ著シク変更又ハ増加シタルコトヲ知リタルトキハ遅滞ナク之ヲ保険者ニ通知スルコトヲ要ス若シ其通知ヲ怠リタルトキハ保険者ハ危険ノ変更又ハ増加ノ時ヨリ保険契約カ其効力ヲ失ヒタルモノト看做スコトヲ得 保険者カ前項ノ通知ヲ受ケ又ハ危険ノ変更若クハ増加ヲ知リタル後遅滞ナク契約ノ解除ヲ為ササルトキハ其契約ヲ承認シタルモノト看做ス 第四百十一条 保険者ノ負担シタル危険ノ発生ニ因リテ損害カ生シタル場合ニ於テ保険契約者又ハ被保険者カ其損害ノ生シタルコトヲ知リタルトキハ遅滞ナク保険者ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 第四百十二条 保険ノ目的ニ付キ保険者ノ負担スヘキ損害カ生シタルトキハ其後ニ至リ其目的カ保険者ノ負担セサル危険ノ発生ニ因リテ滅失シタルトキト雖モ保険者ハ其損害ヲ填補スル責ヲ免ルルコトヲ得ス 第四百十三条 被保険者ハ損害ノ防止ヲ力ムルコトヲ要ス但之カ為メニ必要又ハ有益ナリシ費用及ヒ填補額カ保険金額ニ超過スルトキト雖モ保険者之ヲ負担ス 第三百九十条ノ規定ハ前項但書ノ場合ニ之ヲ準用ス 第四百十四条 保険ノ目的ノ全部カ滅失シタル場合ニ於テ保険者カ保険金額ノ全部ヲ支払ヒタルトキハ被保険者カ其目的ニ付キ有セル権利ヲ取得ス但保険価額ノ一部ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テハ保険者ノ権利ハ保険金額ノ保険価額ニ対スル割合ニ依リテ之ヲ定ム 第四百十五条 損害カ第三者ノ行為ニ因リテ生シタル場合ニ於テ保険者カ被保険者ニ対シ其負担額ヲ支払ヒタルトキハ其支払ヒタル金額ノ限度ニ於テ保険契約者又ハ被保険者カ第三者ニ対シテ有セル権利ヲ取得ス 保険者カ被保険者ニ対シ其負担額ノ一部ヲ支払ヒタルトキハ保険契約者又ハ被保険者ノ権利ヲ害セサル範囲内ニ於テノミ前項ニ定メタル権利ヲ行フコトヲ得 第四百十六条 保険金額支払ノ義務ハ二年保険料支払ノ義務ハ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス 第四百十七条 本節ノ規定ハ相互保険ニ之ヲ準用ス但其性質カ之ヲ許ササルトキハ此限ニ在ラス 第二款 火災保険 第四百十八条 火災ニ因リテ生シタル損害ハ其火災ノ原因如何ヲ問ハス保険者之ヲ填補スル責ニ任ス但第三百九十四条及ヒ第三百九十五条ノ場合ハ此限ニ在ラス 第四百十九条 消防又ハ避難ニ必要ナル処分ニ因リ保険ノ目的ニ付キ生シタル損害ハ保険者之ヲ填補スル責ニ任ス 第四百二十条 賃借人其他他人ノ物ヲ保管スル者カ其支払フコトアルヘキ損害賠償ノ為メ其物ヲ火災保険ニ付シタルトキハ所有者ハ保険者ニ対シテ直接ニ其損害ノ填補ヲ請求スルコトヲ得 第四百二十一条 火災保険証券ニハ第四百二条第二項ニ掲ケタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 一 保険ニ付シタル建物ノ構造、用方及ヒ其所在ノ場所 二 動産ヲ保険ニ付シタルトキハ之ヲ貯蔵セル建物ノ構造、用方及ヒ其所在ノ場所 第三款 運送保険 第四百二十二条 保険者ハ特約ナキトキハ運送人カ運送品ヲ受取リタル時ヨリ之ヲ荷受人ニ引渡ス時マテニ生スルコトアルヘキ損害ヲ填補スル責ニ任ス 第四百二十三条 運送品ノ保険ニ付テハ発送ノ地及ヒ時ニ於ケル其価額及ヒ到達地マテノ運送賃其他ノ費用ヲ以テ保険価額トス 運送品ノ到達ニ因リテ得ヘキ利益ハ特約アルトキニ限リ之ヲ保険価額中ニ算入ス 第四百二十四条 運送保険証券ニハ第四百二条第二項ニ掲ケタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 一 運送ノ道筋及ヒ方法 二 運送人ノ氏名又ハ商号 三 運送品ノ受取及ヒ引渡ノ場所 四 運送期間ノ定アルトキハ其期間 第四百二十五条 保険契約ハ特約アルニ非サレハ運送上ノ必要ニ因リ一時運送ヲ中止シ又ハ運送ノ道筋若クハ方法ヲ変更シタルトキト雖モ其効力ヲ失ハス 第二節 生命保険 第四百二十六条 生命保険契約ハ当事者ノ一方カ相手方又ハ第三者ノ生死ニ関シ一定ノ金額ヲ支払フヘキコトヲ約シ相手方カ之ニ其報酬ヲ与フルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス 第四百二十七条 保険金額ヲ受取ルヘキ者ハ被保険者、其相続人又ハ親族ナルコトヲ要ス 保険契約ニ因リテ生シタル権利ハ被保険者ノ親族ニ限リ之ヲ譲受クルコトヲ得 保険金額ヲ受取ルヘキ者カ死亡シタルトキ又ハ被保険者ト保険金額ヲ受取ルヘキ者トノ親族関係カ止ミタルトキハ保険契約者ハ更ニ保険金額ヲ受取ルヘキ者ヲ定メ又ハ被保険者ノ為メニ積立テタル金額ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得 保険契約者カ前項ニ定メタル権利ヲ行ハスシテ死亡シタルトキハ被保険者ヲ以テ保険金額ヲ受取ルヘキ者トス 第四百二十八条 生命保険証券ニハ第四百二条第二項ニ掲ケタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 一 保険契約ノ種類 二 被保険者ノ氏名 三 保険金額ヲ受取ルヘキ者ヲ定メタルトキハ其者ノ氏名及ヒ其者ト被保険者ノ親族関係 第四百二十九条 左ノ場合ニ於テハ保険者ハ保険金額ヲ支払フ責ニ任セス 一 被保険者カ自殺、決闘其他ノ犯罪又ハ死刑ノ執行ニ因リテ死亡シタルトキ 二 保険金額ヲ受取ルヘキ者カ故意ニテ被保険者ヲ死ニ致シタルトキ但其者カ保険金額ノ一部ヲ受取ルヘキ場合ニ於テハ保険者ハ其残額ヲ支払フ責ヲ免ルルコトヲ得ス 前項第一号ノ場合ニ於テハ保険者ハ被保険者ノ為メニ積立テタル金額ヲ払戻スコトヲ要ス 第四百三十条 第三百九十四条、第三百九十六条乃至第四百条、第四百二条第一項、第四百四条乃至第四百六条、第四百九条乃至第四百十一条及ヒ第四百十五条乃至第四百十七条ノ規定ハ生命保険ニ之ヲ準用ス 第三百九十四条、第四百四条、第四百六条、第四百九条及ヒ第四百十条ノ場合ニ於テ保険者カ保険金額ヲ支払フコトヲ要セサルトキハ保険者ハ被保険者ノ為メニ積立テタル金額ヲ払戻スコトヲ要ス 第四編 手形 第一章 総則 第四百三十一条 本法ニ於テ手形トハ為替手形、約束手形及ヒ小切手ヲ謂フ 第四百三十二条 手形ニ署名シタル者ハ其手形ノ文言ニ従ヒテ責任ヲ負フ 第四百三十三条 代理人カ本人ノ為メニスルコトヲ記載セスシテ手形ニ署名シタルトキハ本人ハ手形上ノ責任ヲ負フコトナシ 第四百三十四条 偽造又ハ変造シタル手形ニ署名シタル者ハ其偽造又ハ変造シタル手形ノ文言ニ従ヒテ責任ヲ負フ 変造シタル手形ニ署名シタル者ハ変造前ニ署名シタルモノト推定ス 偽造者、変造者及ヒ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ偽造又ハ変造シタル手形ヲ取得シタル者ハ手形上ノ権利ヲ有セス 第四百三十五条 無能力者カ手形ヨリ生シタル債務ヲ取消シタルトキト雖モ他ノ手形上ノ権利義務ニ影響ヲ及ホサス 第四百三十六条 本編ニ規定ナキ事項ハ之ヲ手形ニ記載スルモ手形上ノ効力ヲ生セス 第四百三十七条 手形ノ債務者ハ本編ニ規定ナキ事由ヲ以テ手形上ノ請求ヲ為ス者ニ対抗スルコトヲ得ス但直接ニ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ事由ハ此限ニ在ラス 第四百三十八条 何人ト雖モ悪意又ハ重大ナル過失ナクシテ手形ヲ取得シタル者ニ対シ其手形ノ返還ヲ請求スルコトヲ得ス 第四百三十九条 手形ノ引受又ハ支払ヲ求ムル為メニスル呈示、拒絶証書ノ作成其他手形上ノ権利ノ行使又ハ保全ニ付キ利害関係人ニ対シテ為スヘキ行為ハ其営業所、若シ営業所ナキトキハ其住所又ハ居所ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス但其者ノ承諾アルトキハ他ノ場所ニ於テ之ヲ為スコトヲ妨ケス 利害関係人ノ営業所、住所又ハ居所カ知レサルトキハ拒絶証書ヲ作ルヘキ公証人又ハ執達吏ハ其地ノ官署又ハ公署ニ問合ヲ為スコトヲ要ス若シ問合ヲ為スモ営業所、住所又ハ居所カ知レサルトキハ其役場ニ於テ拒絶証書ヲ作ルコトヲ得 第四百四十条 引受人又ハ約束手形ノ振出人ニ対スル債権ハ満期日ヨリ三年所持人ノ其前者ニ対スル償還請求権ハ支払拒絶証書作成ノ日ヨリ六个月裏書人ノ其前者ニ対スル償還請求権ハ償還ヲ為シタル日ヨリ六个月ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス 第四百四十一条 手形ヨリ生シタル債権カ時効又ハ手続ノ欠缺ニ因リテ消滅シタルトキト雖モ所持人ハ振出人又ハ引受人ニ対シ其受ケタル利益ノ限度ニ於テ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得 第二章 為替手形 第一節 振出 第四百四十二条 為替手形ニハ左ノ事項ヲ記載シ振出人之ニ署名スルコトヲ要ス 一 其為替手形タルコトヲ示スヘキ文字 二 一定ノ金額 三 支払人ノ氏名又ハ商号 四 受取人ノ氏名又ハ商号 五 単純ナル支払ノ委託 六 振出ノ年月日 七 一定ノ満期日 八 支払地 第四百四十三条 為替手形ノ主タル部分ニ記載シタル金額カ他ノ部分ニ記載シタル金額ト異ナルトキハ主タル部分ニ記載シタル金額ヲ以テ手形金額トス 第四百四十四条 振出人ハ自己ヲ受取人又ハ支払人ト定ムルコトヲ得 第四百四十五条 振出人ハ為替手形ニ其支払地ニ於ケル予備支払人ヲ記載スルコトヲ得 第四百四十六条 為替手形ハ其金額三十円以上ノモノニ限リ之ヲ無記名式ト為スコトヲ得 第四百四十七条 満期日ハ左ニ掲ケタル種類ノ一タルコトヲ要ス 一 確定セル日 二 日附後確定セル期間ヲ経過シタル日 三 一覧ノ日 四 一覧後確定セル期間ヲ経過シタル日 第四百四十八条 振出人カ為替手形ニ満期日ヲ記載セサリシトキハ一覧ノ日ヲ以テ其為替手形ノ満期日トス 第四百四十九条 振出人カ為替手形ニ支払地ヲ記載セサリシトキハ其為替手形ニ記載シタル支払人ノ住所地ヲ以テ其支払地トス 第四百五十条 支払地カ支払人ノ住所地ト異ナルトキハ他人ヲ以テ支払担当者トシテ為替手形ニ記載スルコトヲ得 第四百五十一条 振出人ハ為替手形ニ其支払地ニ於ケル支払ノ場所ヲ記載スルコトヲ得 第二節 裏書 第四百五十二条 為替手形ハ其記名式ナルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得但振出人カ裏書ヲ禁スル旨ヲ記載シタルトキハ此限ニ在ラス 第四百五十三条 振出人、引受人又ハ裏書人カ裏書ニ依リテ為替手形ヲ譲受ケタルトキハ更ニ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得 第四百五十四条 裏書ハ為替手形、其謄本又ハ補箋ニ被裏書人ノ氏名又ハ商号及ヒ裏書ノ年月日ヲ記載シ裏書人署名スルニ依リテ之ヲ為ス 裏書ハ裏書人ノ署名ノミヲ以テ之ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ爾後為替手形ハ引渡ノミニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得 第四百五十五条 裏書人ハ裏書ヲ為スニ当タリ支払地ニ於ケル予備支払人ヲ記載スルコトヲ得 第四百五十六条 裏書人ハ裏書ヲ為スニ当タリ手形上ノ責任ヲ負ハサル旨ヲ記載スルコトヲ得 第四百五十七条 裏書人カ裏書ヲ為スニ当タリ爾後裏書ヲ禁スル旨ヲ記載シタルトキハ其裏書人ハ被裏書人ノ後者ニ対シテ手形上ノ責任ヲ負フコトナシ 第四百五十八条 裏書人カ其署名ノミヲ以テ裏書ヲ為シタルトキハ所持人ハ自己ヲ其被裏書人ト為スコトヲ得 第四百五十九条 支払拒絶証書作成ノ期間経過ノ後所持人カ裏書ヲ為シタルトキハ被裏書人ハ裏書人ノ有シタル権利ノミヲ取得ス此場合ニ於テハ其裏書人ハ手形上ノ責任ヲ負フコトナシ 第四百六十条 所持人ハ裏書ニ依リテ為替手形ノ質入ヲ為シ又ハ其取立ノ委任ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ裏書ニ其目的ヲ附記スルコトヲ要ス 前項ノ場合ニ於テ被裏書人ハ同一ノ目的ヲ以テ更ニ裏書ヲ為スコトヲ得 第四百六十一条 裏書アル為替手形ノ所持人ハ其裏書カ連続スルニ非サレハ其権利ヲ行フコトヲ得ス但署名ノミヲ以テ為シタル裏書アルトキハ次ノ裏書人ハ其裏書ニ因リテ為替手形ヲ取得シタルモノト看做ス 第三節 引受 第四百六十二条 所持人ハ何時ニテモ為替手形ヲ支払人ニ呈示シテ其引受ヲ求ムルコトヲ得 第四百六十三条 一覧後定期払ノ為替手形ノ所持人ハ其日附ヨリ一年内ニ為替手形ヲ支払人ニ呈示シテ其引受ヲ求ムルコトヲ要ス但振出人ハ之ヨリ短キ呈示期間ヲ定ムルコトヲ得 所持人カ拒絶証書ニ依リ前項ニ定メタル呈示ヲ為シタルコトヲ証明セサルトキハ其前者ニ対スル手形上ノ権利ヲ失フ 第四百六十四条 所持人カ一覧後定期払ノ為替手形ヲ呈示シタル場合ニ於テ支払人カ其引受ヲ為サス又ハ引受ノ日附ヲ為替手形ニ記載セサリシトキハ所持人ハ呈示期間内ニ拒絶証書ヲ作ラシムルコトヲ要ス此場合ニ於テハ其拒絶証書作成ノ日ヲ以テ呈示ノ日ト看做ス 所持人カ拒絶証書ヲ作ラシメサリシトキハ其前者ニ対スル手形上ノ権利ヲ失フ 引受人カ引受ノ日附ヲ記載セサリシ場合ニ於テ所持人カ拒絶証書ヲ作ラシメサリシトキハ呈示期間ノ末日ヲ以テ呈示ノ日ト看做ス 第四百六十五条 引受ハ為替手形ニ其旨ヲ記載シ支払人署名スルニ依リテ之ヲ為ス 支払人カ為替手形ニ署名シタルトキハ其引受ヲ為シタルモノト看做ス 第四百六十六条 支払人ハ手形金額ノ一部ニ付キ引受ヲ為スコトヲ得 前項ノ場合ヲ除ク外支払人カ為替手形ノ単純ナル引受ヲ為ササリシトキハ其引受ヲ拒絶シタルモノト看做ス但引受人ハ其引受ノ文言ニ従ヒテ責任ヲ負フ 第四百六十七条 支払人ハ為替手形ノ引受ニ因リ満期日ニ於テ其引受ケタル金額ヲ支払フ義務ヲ負フ 第四百六十八条 引受人カ為替手形ノ支払ヲ為ササリシ場合ニ於テ其所持人又ハ償還ヲ為シタル裏書人若クハ振出人ニ対シテ支払フヘキ金額ハ第四百八十八条又ハ第四百八十九条ノ規定ニ依リテ之ヲ定ム 第四百六十九条 支払地カ支払人ノ住所地ト異ナル場合ニ於テ振出人カ為替手形ニ支払担当者ヲ記載セサリシトキハ支払人ハ其引受ヲ為スニ当タリ之ヲ記載スルコトヲ得若シ支払人カ之ヲ記載セサリシトキハ支払地ニ於テ自ラ支払ヲ為ス責ニ任ス 前項ノ場合ニ於テ振出人ハ為替手形ニ其引受ヲ求ムル為メ之ヲ呈示スヘキ旨ヲ記載スルコトヲ得此場合ニ於テ所持人カ拒絶証書ニ依リ其呈示ヲ為シタルコトヲ証明セサルトキハ其前者ニ対スル手形上ノ権利ヲ失フ 第四百七十条 支払人ハ引受ヲ為スニ当タリ為替手形ニ其支払地ニ於ケル支払ノ場所ヲ記載スルコトヲ得 第四節 担保ノ請求 第四百七十一条 支払人カ為替手形ノ引受ヲ為ササリシトキハ所持人ハ其前者ニ対シ手形金額及ヒ費用ニ付キ相当ノ担保ヲ請求スルコトヲ得 支払人カ手形金額ノ一部ニ付キ引受ヲ為シタルトキハ所持人ハ其残額及ヒ費用ニ付キ相当ノ担保ヲ請求スルコトヲ得 第四百七十二条 為替手形ノ所持人カ前条ノ請求ヲ為サント欲スルトキハ引受拒絶証書ヲ作ラシメ且担保ヲ供セシメント欲スル者ニ対シ遅滞ナク担保請求ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス 第四百七十三条 裏書人カ其後者ヨリ前条ノ通知ヲ受ケタルトキハ其前者ニ対シ其担保スヘキ金額及ヒ費用ニ付キ相当ノ担保ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ場合ニ於テ裏書人ハ担保ヲ供セシメント欲スル者ニ対シ遅滞ナク担保請求ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス 第四百七十四条 前三条ノ規定ニ依リテ担保ノ請求ヲ受ケタル者ハ遅滞ナク引受拒絶証書ト引換ニ相当ノ担保ヲ供スルコトヲ要ス但担保ニ代ヘテ相当ノ金額ヲ供託スルコトヲ得 第四百七十五条 前者カ担保ヲ供シ又ハ供託ヲ為シタルトキハ其後者全員ノ為メ且其後者全員ニ対シテ之ヲ為シタルモノト看做ス 所持人又ハ裏書人カ第四百七十二条又ハ第四百七十三条第二項ノ通知ヲ発シタルトキハ其通知ヲ受クル者ノ後者全員ノ為メニシタルモノト看做ス 第四百七十六条 左ノ場合ニ於テハ第四百七十四条ノ規定ニ依リテ供シタル担保ハ其効力ヲ失ヒ又供託シタル金額ハ之ヲ取戻スコトヲ得 一 後日ニ至リ為替手形ノ単純ナル引受アリタルトキ 二 手形金額及ヒ費用ノ支払アリタルトキ 三 担保ヲ供シ若クハ供託ヲ為シタル者又ハ其前者カ償還ヲ為シタルトキ 四 手形上ノ権利カ時効又ハ手続ノ欠缺ニ因リテ消滅シタルトキ 五 担保ヲ供シ又ハ供託ヲ為シタル者カ満期日ヨリ一年内ニ償還ノ請求ヲ受ケサリシトキ 第四百七十七条 引受人カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ相当ノ担保ヲ供セサルトキハ所持人ハ予備支払人ノ引受ヲ求ムルコトヲ得但拒絶証書ヲ作ラシメ且遅滞ナク予備支払人ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 予備支払人ナキトキ又ハ予備支払人カ単純ナル引受ヲ為ササリシトキハ所持人ハ其前者ニ対シテ相当ノ担保ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ第四百七十一条乃至第四百七十五条ノ規定ヲ準用ス 第四百七十八条 左ノ場合ニ於テハ前条第二項ノ規定ニ依リテ供シタル担保ハ其効力ヲ失ヒ又供託シタル金額ハ之ヲ取戻スコトヲ得 一 予備支払人カ後日ニ至リ単純ナル引受ヲ為シタルトキ 二 引受人カ後日ニ至リ相当ノ担保ヲ供シタルトキ 三 第四百七十六条第二号乃至第五号ノ場合 第五節 支払 第四百七十九条 一覧払ノ為替手形ノ所持人ハ其日附ヨリ一年内ニ為替手形ヲ呈示シテ其支払ヲ求ムルコトヲ要ス但振出人ハ之ヨリ短キ呈示期間ヲ定ムルコトヲ得 所持人カ拒絶証書ニ依リ前項ニ定メタル呈示ヲ為シタルコトヲ証明セサルトキハ其前者ニ対スル手形上ノ権利ヲ失フ 第四百八十条 支払ハ為替手形ト引換ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ要セス 支払ヲ為ス者ハ所持人ヲシテ為替手形ニ其支払ヲ受ケタル旨ヲ記載セシメ且之ニ署名セシムルコトヲ得 第四百八十一条 手形金額ノ全部ニ付キ引受アリタルトキト雖モ所持人ハ其一部ノ支払ヲ拒ムコトヲ得ス 一部ノ支払アリタルトキハ所持人ハ其旨ヲ為替手形ニ記載シ且其謄本ヲ作リ署名ノ後之ヲ交付スルコトヲ要ス 第四百八十二条 為替手形ノ支払ノ請求ナキトキハ引受人ハ支払拒絶証書作成ノ期間経過ノ後手形金額ヲ供託シテ其債務ヲ免ルルコトヲ得 第六節 償還ノ請求 第四百八十三条 支払人カ為替手形ノ支払ヲ為ササリシトキハ所持人ハ其前者ニ対シテ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得 第四百八十四条 所持人カ前条ノ請求ヲ為サント欲スルトキハ支払ヲ求ムル為メ為替手形ヲ支払人ニ呈示シ、若シ手形金額ノ支払ナキトキハ満期日又ハ其後二日内ニ支払拒絶証書ヲ作ラシメ且償還ヲ為サシメント欲スル者ニ対シ拒絶証書作成ノ翌日マテニ償還請求ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス 所持人カ前項ニ定メタル手続ヲ為ササリシトキハ其前者ニ対スル手形上ノ権利ヲ失フ 第四百八十五条 裏書人カ其後者ヨリ前条第一項ノ通知ヲ受ケタルトキハ其前者ニ対シテ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得 前項ノ場合ニ於テ裏書人ハ償還ヲ為サシメント欲スル者ニ対シ自己カ通知ヲ受ケタル日ノ翌日マテニ償還請求ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス 第四百八十六条 為替手形ノ所持人ハ支払拒絶証書ヲ作ラシメサリシトキト雖モ其作成ヲ免除シタル者ニ対シテハ手形上ノ権利ヲ失フコトナシ 所持人カ支払拒絶証書ヲ作ラシメタルトキハ其作成ヲ免除シタル者ト雖モ其費用ヲ償還スル義務ヲ免ルルコトヲ得ス 第四百八十七条 支払地カ支払人ノ住所地ト異ナル場合ニ於テ所持人カ償還ノ請求ヲ為サント欲スルトキハ支払担当者ニ若シ為替手形ニ支払担当者ノ記載ナキトキハ支払地ニ於テ支払人ニ為替手形ヲ呈示シテ其支払ヲ求ムルコトヲ要ス此場合ニ於テ支払担当者又ハ支払人カ支払ヲ為ササリシトキハ所持人ハ支払地ニ於テ第四百八十四条ノ規定ニ従ヒ支払拒絶証書ヲ作ラシメ且償還請求ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス 為替手形ニ支払担当者ノ記載アル場合ニ於テ所持人カ前項ニ定メタル手続ヲ為ササリシトキハ引受人ニ対シテモ手形上ノ権利ヲ失フ 第四百八十八条 為替手形ノ所持人ハ左ノ金額ニ付キ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得 一 支払アラサリシ手形金額及ヒ満期日以後ノ法定利息 二 拒絶証書作成ノ手数料其他ノ費用 前項ノ金額ハ償還ノ請求ヲ受クル者ノ住所地カ支払地ト異ナル場合ニ於テハ支払地ヨリ償還ノ請求ヲ受クル者ノ住所地ニ宛テ振出シタル一覧払ノ為替手形ノ相場ニ依リテ之ヲ計算ス若シ支払地ニ於テ其相場ナキトキハ償還ノ請求ヲ受クル者ノ住所地ニ最モ近キ地ニ宛テ振出シタル一覧払ノ為替手形ノ相場ニ依ル 第四百八十九条 償還ノ請求ヲ受ケタル裏書人ハ左ノ金額ニ付キ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得 一 其支払ヒタル金額及ヒ支払ノ日以後ノ法定利息 二 其支出シタル費用 前条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第四百九十条 為替手形ノ所持人又ハ裏書人ハ償還ノ請求ヲ為ス為メ其前者ヲ支払人トシテ更ニ為替手形ヲ振出スコトヲ得 第四百九十一条 所持人又ハ裏書人カ前条ノ規定ニ依リテ振出ス為替手形ハ償還ノ請求ヲ受クル者ノ住所地ヲ以テ其支払地ト定メタル一覧払ノモノタルコトヲ要ス 所持人カ振出ス為替手形ニハ本為替手形ノ支払地ヲ以テ振出地ト定メ裏書人カ振出ス為替手形ニハ其住所地ヲ以テ振出地ト定ムルコトヲ要ス 第四百九十二条 償還ハ為替手形、支払拒絶証書及ヒ償還計算書ト引換ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ要セス 償還ヲ為ス者ハ之ヲ受クル者ヲシテ償還計算書ニ償還ヲ受ケタル旨ヲ記載セシメ且之ニ署名セシムルコトヲ得 第四百九十三条 第四百七十五条第二項ノ規定ハ償還ノ請求ニ之ヲ準用ス 第七節 保証 第四百九十四条 為替手形ヨリ生シタル債務ヲ保証スル為メ為替手形、其謄本又ハ補箋ニ署名シタル者ハ其債務カ無効ナルトキト雖モ主タル債務者ト同一ノ責任ヲ負フ 第四百九十五条 何人ノ為メニ保証ヲ為シタルカ分明ナラサルトキハ其保証ハ引受人ノ為メニ之ヲ為シタルモノト看做ス但未タ引受アラサリシトキハ振出人ノ為メニ之ヲ為シタルモノト看做ス 第四百九十六条 保証人カ其債務ヲ履行シタルトキハ所持人カ主タル債務者ニ対シテ有セシ権利及ヒ主タル債務者カ其前者ニ対シテ有スヘキ権利ヲ取得ス 第八節 参加 第一款 参加引受 第四百九十七条 為替手形ノ所持人カ引受拒絶証書ヲ作ラシメタル場合ニ於テ予備支払人アルトキハ其予備支払人ニ引受ヲ求メタル後ニ非サレハ其前者ニ対シテ担保ヲ請求スルコトヲ得ス 予備支払人カ引受ヲ為ササリシトキハ所持人ハ其旨ヲ引受拒絶証書ニ記載セシムルコトヲ要ス 第四百九十八条 為替手形ノ所持人ハ予備支払人ニ非サル者ノ参加引受ヲ拒ムコトヲ得 第四百九十九条 参加引受ヲ為サントスル者数人アルトキハ所持人ハ其選択ニ従ヒ其一人ヲシテ引受ヲ為サシムルコトヲ得 第五百条 参加引受ハ為替手形ニ其旨ヲ記載シ参加引受人署名スルニ依リテ之ヲ為ス 参加引受人カ為替手形ニ被参加人ヲ定メサリシトキハ其引受ハ振出人ノ為メニ之ヲ為シタルモノト看做ス 第五百一条 所持人ハ引受拒絶証書ニ参加引受アリタル旨ヲ記載セシメ且其証書作成ノ費用ノ支払ト引換ニ之ヲ参加引受人ニ交付スルコトヲ要ス 参加引受人ハ遅滞ナク前項ノ拒絶証書ヲ被参加人ニ送付スルコトヲ要ス 第五百二条 参加引受人ハ支払人カ手形金額ノ支払ヲ為ササル場合ニ於テ被参加人ノ後者ニ対シ支払アラサリシ手形金額及ヒ費用ヲ支払フ義務ヲ負フ但所持人カ満期日又ハ其後二日内ニ支払ヲ求ムル為メ為替手形ヲ参加引受人ニ呈示セサルトキハ参加引受人ハ其義務ヲ免ル 第五百三条 為替手形ノ所持人及ヒ被参加人ノ後者ハ参加引受ニ因リテ担保ヲ請求スル権利ヲ失フ 第五百四条 被参加人ハ其前者ニ対シテ担保ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ第四百七十二条乃至第四百七十六条ノ規定ヲ準用ス 第二款 参加支払 第五百五条 為替手形ノ所持人カ支払拒絶証書ヲ作ラシメタル場合ニ於テ予備支払人又ハ参加引受人アルトキハ所持人ハ満期日又ハ其後二日内ニ参加引受人ニ、若シ参加引受人ナキトキ又ハ参加引受人カ支払ヲ為ササリシトキハ予備支払人ニ為替手形ヲ呈示シテ其支払ヲ求メタル後ニ非サレハ其前者ニ対シテ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得ス 参加引受人又ハ予備支払人カ支払ヲ為ササリシトキハ所持人ハ其旨ヲ支払拒絶証書ニ記載セシムルコトヲ要ス 所持人カ前二項ニ定メタル手続ヲ為ササリシトキハ予備支払人ヲ指定シタル者又ハ被参加人及ヒ其後者ニ対スル手形上ノ権利ヲ失フ 第五百六条 為替手形ノ所持人ハ予備支払人又ハ参加引受人ニ非サル者ノ参加支払ト雖モ之ヲ拒ムコトヲ得ス若シ之ヲ拒ミタルトキハ被参加人及ヒ其後者ニ対スル手形上ノ権利ヲ失フ 第五百七条 参加支払ヲ為サントスル者数人アルトキハ所持人ハ最モ多数ノ者ヲシテ債務ヲ免レシムル効力ヲ有スル支払ヲ受クルコトヲ要ス 第五百八条 予備支払人又ハ参加引受人ニ非サル参加支払人カ被参加人ヲ示ササリシトキハ其支払ハ支払人ノ為メニ之ヲ為シタルモノト看做ス 第五百九条 所持人ハ支払拒絶証書ニ参加支払アリタル旨ヲ記載セシメ且手形金額及ヒ費用ノ支払ト引換ニ其拒絶証書及ヒ為替手形ヲ参加支払人ニ交付スルコトヲ要ス 第五百十条 参加支払人カ支払ヲ為シタルトキハ引受人、被参加人及ヒ其前者ニ対スル所持人ノ権利ヲ取得ス 第九節 拒絶証書 第五百十一条 拒絶証書ハ為替手形ノ所持人ノ請求ニ因リ公証人又ハ執達吏之ヲ作ル 第五百十二条 拒絶証書ニハ左ノ事項ヲ記載シ公証人又ハ執達吏之ニ署名スルコトヲ要ス 一 為替手形、其謄本及ヒ補箋ニ記載シタル事項 二 拒絶者及ヒ被拒絶者ノ氏名又ハ商号 三 拒絶者ニ対シテ為シタル請求ノ趣旨及ヒ拒絶者カ其請求ニ応セサリシコト又ハ拒絶者ニ面会スルコト能ハサリシ理由 四 前号ノ請求ヲ為シ又ハ之ヲ為スコト能ハサリシ地及ヒ年月日 五 拒絶者ノ営業所、住所又ハ居所カ知レサル場合ニ於テ其地ノ官署又ハ公署ニ問合ヲ為シタルコト 六 法定ノ場所外ニ於テ拒絶証書ヲ作ルトキハ拒絶者カ之ヲ承諾シタルコト 七 参加引受又ハ参加支払アルトキハ参加ノ種類及ヒ参加人並ニ被参加人ノ氏名又ハ商号 第五百十三条 数人ニ対シテ手形上ノ請求ヲ為スヘキトキハ其請求ニ付キ一通ノ拒絶証書ヲ作ラシムルヲ以テ足ル 第五百十四条 公証人又ハ執達吏カ拒絶証書ヲ作リタルトキハ其帳簿ニ其証書ノ全文ヲ記載スルコトヲ要ス 拒絶証書カ滅失シタルトキハ利害関係人ハ其謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得此謄本ハ原本ト同一ノ効力ヲ有ス 第十節 為替手形ノ複本及ヒ謄本 第五百十五条 為替手形ノ所持人ハ振出人ニ対シテ其為替手形ノ複本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得但所持人カ受取人ニ非サルトキハ順次ニ其前者ヲ経由シテ之ヲ請求スルコトヲ要ス 振出人カ為替手形ノ複本ヲ作リタルトキハ各裏書人ハ各通ニ其裏書ヲ為スコトヲ要ス 第五百十六条 為替手形ノ複本ニ其複本タルコトヲ示ササルトキハ其各通ハ独立ノ為替手形トシテ其効力ヲ有ス 第五百十七条 為替手形ノ複本ヲ作リタル場合ニ於テ其一通ノ支払アリタルトキハ他ノ各通ハ其効力ヲ失フ但引受アルモノハ此限ニ在ラス 二人以上ニ各別ニ数通ノ為替手形ノ裏書ヲ為シタル者又ハ数通ノ為替手形ニ引受ヲ為シタル者ハ支払ノ時ニ於テ返還アラサリシ各通ニ付キ手形上ノ責任ヲ免ルルコトヲ得ス 第五百十八条 為替手形ノ複本ノ所持人カ引受ヲ求ムル為メ其一通ヲ送付シタルトキハ他ノ各通ニ其送付先ヲ記載スルコトヲ要ス 前項ノ記載アル為替手形ノ所持人ハ引受ヲ求ムル為メニ送付シタル一通ノ為替手形ヲ受取リタル者ニ対シテ其返還ヲ請求スルコトヲ得若シ其者カ之ヲ返還セサルトキハ拒絶証書ニ依リ其事実及ヒ他ノ一通又ハ数通ノ為替手形ヲ以テ引受又ハ支払ヲ受クルコト能ハサリシコトヲ証明スルニ非サレハ其前者ニ対シテ担保又ハ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得ス 第五百十九条 為替手形ノ所持人ハ其謄本ヲ作ルコトヲ得 為替手形ノ謄本ニ或事項ヲ記載シタルトキハ其事項ト原本ニ記載シタル事項トヲ区別スルコトヲ要ス 第五百二十条 所持人カ為替手形ノ引受ヲ求ムル為メ其原本ヲ送付シタル場合ニ於テ其謄本ヲ作リタルトキハ之ニ其原本ノ送付先ヲ記載スルコトヲ要ス 前項ノ記載アル謄本ノ所持人ハ原本ヲ受取リタル者ニ対シテ其返還ヲ請求スルコトヲ得 第五百二十一条 引受ヲ求ムル為メニ送付シタル為替手形ヲ受取リタル者カ之ヲ返還セサル場合ニ於テ其謄本ノ所持人カ拒絶証書ニ依リテ其事実ヲ証明スルトキハ謄本ニ署名シタル者ニ対シテ担保ノ請求ヲ為シ又謄本ニ記載シタル満期日カ到来シタル後ハ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得 第三章 約束手形 第五百二十二条 約束手形ニハ左ノ事項ヲ記載シ振出人之ニ署名スルコトヲ要ス 一 其約束手形タルコトヲ示スヘキ文字 二 一定ノ金額 三 受取人ノ氏名又ハ商号 四 単純ナル支払ノ約束 五 振出ノ年月日 六 一定ノ満期日 七 振出地 第五百二十三条 振出人カ約束手形ニ支払地ヲ記載セサリシトキハ振出地ヲ以テ其支払地トス 第五百二十四条 一覧後定期払ノ約束手形ノ所持人ハ其日附ヨリ一年内ニ振出人ニ約束手形ヲ呈示スルコトヲ要ス但振出人ハ之ヨリ短キ呈示期間ヲ定ムルコトヲ得 所持人カ拒絶証書ニ依リ前項ニ定メタル呈示ヲ為シタルコトヲ証明セサルトキハ振出人以外ノ前者ニ対スル手形上ノ権利ヲ失フ 第五百二十五条 所持人カ一覧後定期払ノ約束手形ヲ呈示シタル場合ニ於テ振出人カ呈示ヲ受ケタル旨又ハ其日附ヲ約束手形ニ記載セサリシトキハ所持人ハ呈示期間内ニ拒絶証書ヲ作ラシムルコトヲ要ス此場合ニ於テハ其拒絶証書作成ノ日ヲ以テ呈示ノ日ト看做ス 所持人カ拒絶証書ヲ作ラシメサリシトキハ振出人以外ノ前者ニ対スル手形上ノ権利ヲ失フ 振出人カ呈示ノ日附ヲ記載セサリシ場合ニ於テ所持人カ拒絶証書ヲ作ラシメサリシトキハ呈示期間ノ末日ヲ以テ呈示ノ日ト看做ス 第五百二十六条 第四百四十三条、第四百四十六条乃至第四百四十八条、第四百五十条乃至第四百五十四条、第四百五十六条乃至第四百六十一条、第四百六十八条、第四百七十七条乃至第四百九十六条、第五百五条乃至第五百十四条及ヒ第五百十九条ノ規定ハ約束手形ニ之ヲ準用ス 第四章 小切手 第五百二十七条 小切手ニハ左ノ事項ヲ記載シ振出人之ニ署名スルコトヲ要ス 一 其小切手タルコトヲ示スヘキ文字 二 一定ノ金額 三 支払人ノ氏名又ハ商号 四 受取人ノ氏名若クハ商号又ハ所持人ニ支払フヘキコト 五 単純ナル支払ノ委託 六 振出ノ年月日 七 支払地 第五百二十八条 小切手ノ振出人ハ自己ヲ受取人ト定ムルコトヲ得 第五百二十九条 小切手ハ一覧払ノモノトス 第五百三十条 小切手ノ所持人ハ其日附ヨリ一週間内ニ小切手ヲ呈示シテ其支払ヲ求ムルコトヲ要ス 所持人カ前項ニ定メタル呈示ヲ為ササリシトキハ其前者ニ対シテ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得ス 第五百三十一条 小切手ノ所持人カ其前者ニ対シテ償還ノ請求ヲ為スニハ支払拒絶証書ノ作成ニ代ヘ支払人ヲシテ前条第一項ニ定メタル期間内ニ支払拒絶ノ旨及ヒ其年月日ヲ小切手ニ記載セシメ且之ニ署名セシムルヲ以テ足ル 第五百三十二条 小切手ノ振出人又ハ所持人カ其表面ニ二条ノ平行線ヲ画キ其線内ニ銀行又ハ之ト同一ノ意義ヲ有スル文字ヲ記載シタルトキハ支払人ハ銀行ニ対シテノミ支払ヲ為スコトヲ得 振出人又ハ所持人カ平行線内ニ特定セル銀行ノ商号ヲ記載シタルトキハ支払人ハ其銀行ニ対シテノミ支払ヲ為スコトヲ得但其銀行カ其商号ヲ抹消シテ他ノ銀行ノ商号ヲ記載シ之ニ取立ノ委任ヲ為スコトヲ妨ケス 第五百三十三条 左ノ場合ニ於テハ振出人ハ五円以上千円以下ノ過料ニ処セラル 一 資金ナク又ハ信用ヲ得スシテ小切手ヲ振出シタルトキ 二 小切手ニ虚偽ノ日附ヲ記載シタルトキ 第五百三十四条 第四百四十三条、第四百四十九条、第四百五十二条、第四百五十四条、第四百五十六条乃至第四百五十九条、第四百六十一条、第四百六十二条、第四百六十五条、第四百六十七条、第四百六十八条、第四百八十条乃至第四百八十六条、第四百八十八条、第四百八十九条、第四百九十二条、第四百九十三条、第五百十一条、第五百十二条及ヒ第五百十四条ノ規定ハ小切手ニ之ヲ準用ス 第五編 海商 第一章 船舶及ヒ船舶所有者 第五百三十五条 本法ニ於テ船舶トハ営利ノ目的ヲ以テ航海ノ用ニ供スルモノヲ謂フ 本編ノ規定ハ端舟其他櫓櫂ノミヲ以テ運転シ又ハ主トシテ櫓櫂ヲ以テ運転スル舟ニハ之ヲ適用セス 第五百三十六条 船舶ノ属具目録ニ記載シタル物ハ其従物ト推定ス 第五百三十七条 船舶所有者ハ特別法ノ定ムル所ニ従ヒ登記ヲ為シ且船舶国籍証書ヲ請受クルコトヲ要ス 前項ノ規定ハ総噸数二十噸未満又ハ積石数二百石未満ノ船舶ニハ之ヲ適用セス 第五百三十八条 船舶所有権ノ譲渡ハ其登記ヲ為シ且船舶国籍証書ニ之ヲ記載スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第五百三十九条 航海中ニ在ル船舶ノ所有権ヲ譲渡シタル場合ニ於テ特約ナキトキハ其航海ニ因リテ生スル損益ハ譲受人ニ帰スヘキモノトス 第五百四十条 差押及ヒ仮差押ハ発航ノ準備ヲ終ハリタル船舶ニ対シテハ之ヲ為スコトヲ得ス 但其船舶カ発航ヲ為ス為メニ生シタル債務ニ付テハ此限ニ在ラス 第五百四十一条 船舶所有者ハ船長カ其法定ノ権限内ニ於テ為シタル行為又ハ船長其他ノ船員カ其職務ヲ行フニ当タリ他人ニ加ヘタル損害ニ付テハ航海ノ終ニ於テ船舶、運送賃及ヒ船舶所有者カ其船舶ニ付キ有スル損害賠償又ハ報酬ノ請求権ヲ債権者ニ委付シテ其責ヲ免ルルコトヲ得但船舶所有者ニ過失アリタルトキハ此限ニ在ラス 前項ノ規定ハ雇傭契約ニ因リテ生シタル船員ノ権利ニ付テハ之ヲ適用セス 第五百四十二条 船舶所有者カ債権者ノ同意ヲ得スシテ新ニ航海ヲ為サシメタルトキハ前条ニ定メタル権利ヲ行フコトヲ得ス 第五百四十三条 船舶共有者ノ間ニ在リテハ船舶ノ利用ニ関スル事項ハ各共有者ノ持分ノ価格ニ従ヒ其過半数ヲ以テ之ヲ決ス 第五百四十四条 船舶共有者ハ其持分ノ価格ニ応シ船舶ノ利用ニ関スル費用ヲ支払フコトヲ要ス 第五百四十五条 船舶共有者カ新ニ航海ヲ為シ又ハ船舶ノ大修繕ヲ為スヘキコトヲ決議シタルトキハ其決議ニ対シテ異議アル者ハ他ノ共有者ニ対シ相当代価ヲ以テ自己ノ持分ヲ買取ルヘキコトヲ請求スルコトヲ得 前項ノ請求ヲ為サント欲スル者ハ決議ノ日ヨリ三日内ニ他ノ共有者又ハ船舶管理人ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス但此期間ハ決議ニ加ハラサリシ者ニ付テハ其決議ノ通知ヲ受ケタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス 第五百四十六条 船舶共有者ハ其持分ノ価格ニ応シ船舶ノ利用ニ付テ生シタル債務ヲ弁済スル責ニ任ス 第五百四十七条 損益ノ分配ハ毎航海ノ終ニ於テ船舶共有者ノ持分ノ価格ニ応シテ之ヲ為ス 第五百四十八条 船舶共有者間ニ組合関係アルトキト雖モ各共有者ハ他ノ共有者ノ承諾ヲ得スシテ其持分ノ全部又ハ一部ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得但船舶管理人ハ此限ニ在ラス 第五百四十九条 船舶共有者ハ船舶管理人ヲ選任スルコトヲ要ス 船舶共有者ニ非サル者ヲ船舶管理人ト為スニハ共有者全員ノ同意アルコトヲ要ス 船舶管理人ノ選任及ヒ其代理権ノ消滅ハ之ヲ登記スルコトヲ要ス 第五百五十条 船舶管理人ハ左ニ掲ケタル行為ヲ除ク外船舶共有者ニ代ハリテ船舶ノ利用ニ関スル一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス 一 船舶ノ譲渡、委付若クハ賃貸ヲ為シ又ハ之ヲ抵当ト為スコト 二 船舶ヲ保険ニ付スルコト 三 新ニ航海ヲ為スコト 四 船舶ノ大修繕ヲ為スコト 五 借財ヲ為スコト 船舶管理人ノ代理権ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第五百五十一条 船舶管理人ハ特ニ帳簿ヲ備ヘ之ニ船舶ノ利用ニ関スル一切ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 船舶管理人ハ毎航海ノ終ニ於テ遅滞ナク其航海ニ関スル計算ヲ為シテ各船舶共有者ノ承認ヲ求ムルコトヲ要ス 第五百五十二条 船舶共有者ノ持分ノ移転又ハ其国籍喪失ニ因リテ船舶カ日本ノ国籍ヲ喪失スヘキトキハ他ノ共有者ハ相当代価ヲ以テ其持分ヲ買取リ又ハ其競売ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 社員ノ持分ノ移転ニ因リ会社ノ所有ニ属スル船舶カ日本ノ国籍ヲ喪失スヘキトキハ合名会社ニ在テハ他ノ社員、合資会社及ヒ株式合資会社ニ在テハ他ノ無限責任社員ハ相当代価ヲ以テ其持分ヲ買取ルコトヲ得 第五百五十三条 船舶ノ賃貸借ハ之ヲ登記シタルトキハ爾後其船舶ニ付キ物権ヲ取得シタル者ニ対シテモ其効力ヲ生ス 第五百五十四条 船舶ノ賃借人カ営利ノ目的ヲ以テ其船舶ヲ航海ノ用ニ供シタルトキハ其利用ニ関スル事項ニ付テハ第三者ニ対シテ船舶所有者ト同一ノ権利義務ヲ有ス 前項ノ場合ニ於テ船舶ノ利用ニ付キ生シタル先取特権ハ船舶所有者ニ対シテモ其効力ヲ生ス但先取特権者カ其利用ノ契約ニ反スルコトヲ知レルトキハ此限ニ在ラス 第二章 船員 第一節 船長 第五百五十五条 船長ハ其職務ヲ行フニ付キ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ船舶所有者、傭船者、荷送人其他ノ利害関係人ニ対シテ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス 船長ハ船舶所有者ノ指図ニ従ヒタルトキト雖モ船舶所有者以外ノ者ニ対シテハ前項ニ定メタル責任ヲ免ルルコトヲ得ス 第五百五十六条 海員カ其職務ヲ行フニ当タリ他人ニ損害ヲ加ヘタル場合ニ於テ船長ハ監督ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス 第五百五十七条 船長カ已ムコトヲ得サル事由ニ因リテ自ラ船舶ヲ指揮スルコト能ハサルトキハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外他人ヲ選任シテ自己ノ職務ヲ行ハシムルコトヲ得此場合ニ於テハ船長ハ其選任ニ付キ船舶所有者ニ対シテ其責ニ任ス 第五百五十八条 船長ハ発航前船舶ノ航海ニ支障ナキヤ否ヤ其他航海ニ必要ナル準備ノ整頓セルヤ否ヤヲ検査スルコトヲ要ス 第五百五十九条 船長ハ左ニ掲ケタル書類ヲ船中ニ備ヘ置クコトヲ要ス 一 船舶国籍証書 二 属具目録 三 海員名簿 四 旅客名簿但小航海ヲ為ス船舶ニ付テハ此限ニ在ラス 五 運送契約及ヒ積荷ニ関スル書類 六 税関ヨリ交付シタル書類 七 航海日誌 前項第三号乃至第五号ニ掲ケタル書類ハ外国ニ航行セサル船舶ニ限リ命令ヲ以テ之ヲ備フルコトヲ要セサルモノト定ムルコトヲ得 第五百六十条 船長ハ已ムコトヲ得サル場合ヲ除ク外荷物ノ船積及ヒ旅客ノ乗込ノ時ヨリ荷物ノ陸揚及ヒ旅客ノ上陸ノ時マテ其指揮スル船舶ヲ去ルコトヲ得ス 第五百六十一条 船長ハ航海ノ準備カ終ハリタルトキハ遅滞ナク発航ヲ為シ且必要アル場合ヲ除ク外予定ノ航路ヲ変更セスシテ到達港マテ航行スルコトヲ要ス 第五百六十二条 船長ハ航海中最モ利害関係人ノ利益ニ適スヘキ方法ニ依リテ積荷ノ処分ヲ為スコトヲ要ス 利害関係人ハ船長ノ行為ニ因リ其積荷ニ付テ生シタル債権ノ為メ之ヲ債権者ニ委付シテ其責ヲ免ルルコトヲ得但利害関係人ニ過失アリタルトキハ此限ニ在ラス 第五百六十三条 船籍港外ニ於テハ船長ハ航海ノ為メニ必要ナル一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス 船籍港ニ於テハ船長ハ特ニ委任ヲ受ケタル場合ヲ除ク外海員ノ雇入及ヒ雇止ヲ為ス権限ノミヲ有ス 第五百六十四条 船長ノ代理権ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第五百六十五条 船長ハ船舶ノ修繕、救援又ハ救助ノ費用其他航海ヲ継続スルニ必要ナル費用ヲ支弁スル為メニ非サレハ左ニ掲ケタル行為ヲ為スコトヲ得ス 一 船舶ヲ抵当ト為スコト 二 借財ヲ為スコト 三 積荷ノ全部又ハ一部ヲ売却又ハ質入スルコト但第五百六十二条第一項ノ場合ハ此限ニ在ラス 船長カ積荷ヲ売却又ハ質入シタル場合ニ於ケル損害賠償ノ額ハ其積荷ノ到達スヘカリシ時ニ於ケル陸揚港ノ価格ニ依リテ之ヲ定ム但其価格中ヨリ支払フコトヲ要セサリシ費用ヲ控除スルコトヲ要ス 第五百六十六条 船長カ特ニ委任ヲ受ケスシテ航海ノ為メニ費用ヲ出タシ又ハ債務ヲ負担シタルトキハ船舶所有者ハ船長ニ対シテ第五百四十一条ニ定メタル権利ヲ行フコトヲ得 第五百六十七条 船籍港外ニ於テ船舶カ修繕スルコト能ハサルニ至リタルトキハ船長ハ管海官庁ノ認可ヲ得テ之ヲ競売スルコトヲ得 第五百六十八条 左ノ場合ニ於テハ船舶ハ修繕スルコト能ハサルニ至リタルモノト看做ス 一 船舶カ其現在地ニ於テ修繕ヲ受クルコト能ハス且其修繕ヲ為スヘキ地ニ到ルコト能ハサルトキ 二 修繕費カ船舶ノ価額ノ四分ノ三ヲ超ユルトキ 前項第二号ノ価額ハ船舶カ航海中毀損シタル場合ニ於テハ其発航ノ時ニ於ケル価額トシ其他ノ場合ニ於テハ其毀損前ニ有セシ価額トス 第五百六十九条 船長ハ航海ヲ継続スル為メ必要ナルトキハ積荷ヲ航海ノ用ニ供スルコトヲ得此場合ニ於テハ第五百六十五条第二項ノ規定ヲ準用ス 第五百七十条 船長ハ遅滞ナク航海ニ関スル重要ナル事項ヲ船舶所有者ニ報告スルコトヲ要ス 船長ハ毎航海ノ終ニ於テ遅滞ナク其航海ニ関スル計算ヲ為シテ船舶所有者ノ承認ヲ求メ又船舶所有者ノ請求アルトキハ何時ニテモ計算ノ報告ヲ為スコトヲ要ス 第五百七十一条 船舶所有者ハ何時ニテモ船長ヲ解任スルコトヲ得但正当ノ理由ナクシテ之ヲ解任シタルトキハ船長ハ船舶所有者ニ対シ解任ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得 船長カ船舶共有者ナル場合ニ於テ其意ニ反シテ解任セラレタルトキハ他ノ共有者ニ対シ相当代価ヲ以テ自己ノ持分ヲ買取ルヘキコトヲ請求スルコトヲ得 船長カ前項ノ請求ヲ為サント欲スルトキハ遅滞ナク他ノ共有者又ハ船舶管理人ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 第五百七十二条 船長ノ船舶所有者ニ対スル債権ハ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス 第二節 海員 第五百七十三条 海員ハ其雇入ノ手続カ終ハリタルトキハ船長ノ指定シタル時ニ於テ船舶ニ乗込ムコトヲ要ス 海員ハ船長ノ許可ヲ得ルニ非サレハ其乗込ミタル船舶ヲ去ルコトヲ得ス 第五百七十四条 海員ノ服役中ノ食料ハ船舶所有者ノ負担トス 第五百七十五条 海員カ服役中不行跡其他重大ナル過失ニ因ラスシテ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタルトキハ船舶所有者ハ三个月ヲ超エサル期間内ノ治療及ヒ看護ノ費用ヲ負担ス 前項ノ場合ニ於テ海員ハ其服役シタル期間ニ対スル給料ヲ請求スルコトヲ得但其職務ヲ行フニ因リテ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタルトキハ其給料ノ全額ヲ請求スルコトヲ得 第五百七十六条 一航海ニ付キ給料ヲ定メタル場合ニ於テ航海ノ日数ヲ延長シ又ハ不可抗力ニ因ラスシテ其里程ヲ延長シタルトキハ海員ハ其割合ニ応シテ給料ノ増加ヲ請求スルコトヲ得但航海ノ日数又ハ里程ヲ短縮シタルトキト雖モ給料ノ全額ヲ請求スルコトヲ得 第五百七十七条 海員カ就役ノ後死亡シタルトキハ船舶所有者ハ死亡ノ日マテノ給料ヲ支払フコトヲ要ス 海員カ其職務ヲ行フニ因リテ死亡シタルトキハ其葬式ノ費用ハ船舶所有者ノ負担トス 第五百七十八条 左ノ場合ニ於テハ船長ハ海員ヲ雇止ムルコトヲ得 一 発航前海員カ其職務ニ不適任ナルコトヲ認メタルトキ 二 海員カ著シク其職務ヲ怠リ又ハ其職務ニ関シ之ニ重大ナル過失アリタルトキ 三 海員カ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキ 四 海員カ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケ其職務ニ堪ヘサルニ至リタルトキ 五 不可抗力ニ因リ発航ヲ為シ又ハ航海ヲ継続スルコト能ハサルニ至リタルトキ 前項第一号乃至第三号ノ場合ニ於テハ海員ハ其服役シタル期間ニ対スル給料ヲ請求スルコトヲ得 第一項第四号及ヒ第五号ノ場合ニ於テハ海員ハ其雇止ノ日マテノ給料及ヒ雇入港マテノ送還ヲ請求スルコトヲ得但第四号ノ場合ニ於テ海員ニ過失アルトキハ前項ノ規定ヲ準用ス 第五百七十九条 海員カ前条第一項ニ掲ケタル事由ニ因ラスシテ雇止メラレタルトキハ其服役シタル期間ニ対スル給料ノ外一个月分ノ給料ヲ請求スルコトヲ得若シ雇入港外ニ於テ雇止メラレタルトキハ雇入港マテ帰航スルニ必要ナル期間ニ対スル給料及ヒ雇入港マテノ送還ヲ請求スルコトヲ得 第五百八十条 左ノ場合ニ於テハ海員ハ其雇止ヲ請求スルコトヲ得 一 船舶カ日本ノ国籍ヲ喪失シタルトキ 二 自己ノ過失ニ因ラスシテ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケ其職務ニ堪ヘサルニ至リタルトキ 三 船長ヨリ虐待ヲ受ケタルトキ 前項ノ場合ニ於テハ海員ハ其雇止ノ日マテノ給料及ヒ雇入港マテノ送還ヲ請求スルコトヲ得 第五百八十一条 航海中船舶ノ所有者カ変更シタルトキハ海員ハ新所有者ニ対シ雇傭契約ニ因リテ生シタル権利義務ヲ有ス 第五百八十二条 海員ノ雇入期間ハ一年ヲ超ユルコトヲ得ス若シ之ヨリ長キ期間ヲ以テ海員ヲ雇入レタルトキハ其期間ハ之ヲ一年ニ短縮ス 海員ノ雇入ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間ハ更新ノ時ヨリ一年ヲ超ユルコトヲ得ス 第五百八十三条 雇入期間ノ定ナキトキハ海員ハ特約アル場合ヲ除ク外船舶カ安全ニ碇泊シ且積荷ノ陸揚及ヒ旅客ノ上陸カ終ハリタル後ニ非サレハ其雇止ヲ請求スルコトヲ得ス 第五百八十四条 海員ノ雇入契約ハ左ノ事由ニ因リテ終了ス 一 船舶カ沈没シタルコト 二 船舶カ修繕スルコト能ハサルニ至リタルコト 三 船舶カ捕獲セラレタルコト 前項ノ場合ニ於テハ海員ハ契約終了ノ日マテノ給料及ヒ雇入港マテノ送還ヲ請求スルコトヲ得 第五百八十五条 海員カ雇入港マテノ送還ヲ請求スル権利ヲ有スル場合ニ於テハ送還ニ代ヘテ其費用ヲ請求スルコトヲ得 第五百八十六条 第五百七十二条ノ規定ハ海員ノ債権ニ之ヲ準用ス 第三章 運送 第一節 物品運送 第一款 総則 第五百八十七条 船舶ノ全部又ハ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタルトキハ各当事者ハ相手方ノ請求ニ因リ運送契約書ヲ交付スルコトヲ要ス 第五百八十八条 船舶所有者ハ傭船者又ハ荷送人ニ対シ発航ノ当時船舶カ安全ニ航海ヲ為スニ堪フルコトヲ担保ス 第五百八十九条 船舶所有者ハ特約ヲ為シタルトキト雖モ自己ノ過失、船員其他ノ使用人ノ悪意若クハ重大ナル過失又ハ船舶カ航海ニ堪ヘサルニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ヲ免ルルコトヲ得ス 第五百九十条 法令ニ違反シ又ハ契約ニ依ラスシテ船積シタル運送品ハ船長ニ於テ何時ニテモ之ヲ陸揚シ、若シ船舶又ハ積荷ニ危害ヲ及ホス虞アルトキハ之ヲ放棄スルコトヲ得但船長カ之ヲ運送スルトキハ其船積ノ地及ヒ時ニ於ケル同種ノ運送品ノ最高ノ運送賃ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ規定ハ船舶所有者其他ノ利害関係人カ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ妨ケス 第五百九十一条 船舶ノ全部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テ運送品ヲ船積スルニ必要ナル準備カ整頓シタルトキハ船舶所有者ハ遅滞ナク傭船者ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 傭船者カ運送品ヲ船積スヘキ期間ノ定アル場合ニ於テハ其期間ハ前項ノ通知アリタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス其期間経過ノ後運送品ヲ船積シタルトキハ船舶所有者ハ特約ナキトキト雖モ相当ノ報酬ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ期間中ニハ不可抗力ニ因リテ船積ヲ為スコト能ハサル日ヲ算入セス 第五百九十二条 船長カ第三者ヨリ運送品ヲ受取ルヘキ場合ニ於テ其者ヲ確知スルコト能ハサルトキ又ハ其者カ運送品ヲ船積セサルトキハ船長ハ直チニ傭船者ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ船積期間内ニ限リ傭船者ニ於テ運送品ヲ船積スルコトヲ得 第五百九十三条 傭船者ハ運送品ノ全部ヲ船積セサルトキト雖モ船長ニ対シテ発航ノ請求ヲ為スコトヲ得 傭船者カ前項ノ請求ヲ為シタルトキハ運送賃ノ全額ノ外運送品ノ全部ヲ船積セサルニ因リテ生シタル費用ヲ支払ヒ尚ホ船舶所有者ノ請求アルトキハ相当ノ担保ヲ供スルコトヲ要ス 第五百九十四条 船積期間経過ノ後ハ傭船者カ運送品ノ全部ヲ船積セサルトキト雖モ船長ハ直チニ発航ヲ為スコトヲ得 前条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第五百九十五条 発航前ニ於テハ傭船者ハ運送賃ノ半額ヲ支払ヒテ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 往復航海ヲ為スヘキ場合ニ於テ傭船者カ其帰航ノ発航前ニ契約ノ解除ヲ為シタルトキハ運送賃ノ三分ノ二ヲ支払フコトヲ要ス他港ヨリ船積港ニ航行スヘキ場合ニ於テ傭船者カ其船積港ヲ発スル前ニ契約ノ解除ヲ為シタルトキ亦同シ 運送品ノ全部又ハ一部ヲ船積シタル後前二項ノ規定ニ従ヒテ契約ノ解除ヲ為シタルトキハ其船積及ヒ陸揚ノ費用ハ傭船者之ヲ負担ス 傭船者カ船積期間内ニ運送品ノ船積ヲ為ササリシトキハ契約ノ解除ヲ為シタルモノト看做ス 第五百九十六条 傭船者カ前条ノ規定ニ従ヒテ契約ノ解除ヲ為シタルトキト雖モ附随ノ費用及ヒ立替金ヲ支払フ責ヲ免ルルコトヲ得ス 前条第二項ノ場合ニ於テハ傭船者ハ前項ニ掲ケタルモノノ外運送品ノ価格ニ応シ共同海損、救援又ハ救助ノ為メ負担スヘキ金額ヲ支払フコトヲ要ス 第五百九十七条 発航後ニ於テハ傭船者ハ運送賃ノ全額ヲ支払フ外第六百三条第一項ニ定メタル債務ヲ弁済シ且陸揚ノ為メニ生スヘキ損害ヲ賠償シ又ハ相当ノ担保ヲ供スルニ非サレハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得ス 第五百九十八条 船舶ノ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テ傭船者カ他ノ傭船者及ヒ荷送人ト共同セスシテ発航前ニ契約ノ解除ヲ為シタルトキハ運送賃ノ全額ヲ支払フコトヲ要ス但船舶所有者カ他ノ運送品ヨリ得タル運送賃ハ之ヲ控除ス 発航前ト雖モ傭船者カ既ニ運送品ノ全部又ハ一部ヲ船積シタルトキハ他ノ傭船者及ヒ荷送人ノ同意ヲ得ルニ非サレハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得ス 前七条ノ規定ハ船舶ノ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ之ヲ準用ス 第五百九十九条 個個ノ運送品ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタルトキハ荷送人ハ船長ノ指図ニ従ヒ遅滞ナク運送品ヲ船積スルコトヲ要ス 荷送人カ運送品ノ船積ヲ怠リタルトキハ船長ハ直チニ発航ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ荷送人ハ運送賃ノ全額ヲ支払フコトヲ要ス但船舶所有者カ他ノ運送品ヨリ得タル運送賃ハ之ヲ控除ス 第六百条 第五百九十八条ノ規定ハ荷送人カ契約ノ解除ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス 第六百一条 傭船者又ハ荷送人ハ船積期間内ニ運送ニ必要ナル書類ヲ船長ニ交付スルコトヲ要ス 第六百二条 船舶ノ全部又ハ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テ運送品ヲ陸揚スルニ必要ナル準備カ整頓シタルトキハ船長ハ遅滞ナク荷受人ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 運送品ヲ陸揚スヘキ期間ノ定アル場合ニ於テハ其期間ハ前項ノ通知アリタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス其期間経過ノ後運送品ヲ陸揚シタルトキハ船舶所有者ハ特約ナキトキト雖モ相当ノ報酬ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ期間中ニハ不可抗力ニ因リテ陸揚ヲ為スコト能ハサル日ヲ算入セス 個個ノ運送品ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタルトキハ荷受人ハ船長ノ指図ニ従ヒ遅滞ナク運送品ヲ陸揚スルコトヲ要ス 第六百三条 荷受人カ運送品ヲ受取リタルトキハ運送契約又ハ船荷証券ノ趣旨ニ従ヒ運送賃、附随ノ費用、立替金及ヒ運送品ノ価格ニ応シ共同海損、救援又ハ救助ノ為メ負担スヘキ金額ヲ支払フ義務ヲ負フ 船長ハ前項ニ定メタル金額ノ支払ト引換ニ非サレハ運送品ヲ引渡スコトヲ要セス 第六百四条 荷受人カ運送品ヲ受取ルコトヲ怠リタルトキハ船長ハ之ヲ供託スルコトヲ得此場合ニ於テハ遅滞ナク荷受人ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 荷受人ヲ確知スルコト能ハサルトキ又ハ荷受人カ運送品ヲ受取ルコトヲ拒ミタルトキハ船長ハ運送品ヲ供託スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ遅滞ナク傭船者又ハ荷送人ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 第六百五条 運送品ノ重量又ハ容積ヲ以テ運送賃ヲ定メタルトキハ其額ハ運送品引渡ノ当時ニ於ケル重量又ハ容積ニ依リテ之ヲ定ム 第六百六条 期間ヲ以テ運送賃ヲ定メタルトキハ其額ハ運送品ノ船積著手ノ日ヨリ其陸揚終了ノ日マテノ期間ニ依リテ之ヲ定ム但船舶カ不可抗力ニ因リ発航港若クハ航海ノ途中ニ於テ碇泊ヲ為スヘキトキ又ハ航海ノ途中ニ於テ船舶ヲ修繕スヘキトキハ其期間ハ之ヲ算入セス第五百九十一条第二項又ハ第六百二条第二項ノ場合ニ於テ船積期間又ハ陸揚期間経過ノ後運送品ノ船積又ハ陸揚ヲ為シタル日数亦同シ 第六百七条 船舶所有者ハ第六百三条第一項ニ定メタル金額ノ支払ヲ受クル為メ裁判所ノ許可ヲ得テ運送品ヲ競売スルコトヲ得 船長カ荷受人ニ運送品ヲ引渡シタル後ト雖モ船舶所有者ハ其運送品ノ上ニ権利ヲ行使スルコトヲ得但引渡ノ日ヨリ二週間ヲ経過シタルトキ又ハ第三者カ其占有ヲ取得シタルトキハ此限ニ在ラス 第六百八条 船舶所有者カ前条ニ定メタル権利ヲ行ハサルトキハ傭船者又ハ荷送人ニ対スル請求権ヲ失フ但傭船者又ハ荷送人ハ其受ケタル利益ノ限度ニ於テ償還ヲ為スコトヲ要ス 第六百九条 船舶ノ全部又ハ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テ傭船者カ更ニ第三者ト運送契約ヲ為シタルトキハ其契約ノ履行カ船長ノ職務ニ属スル範囲内ニ於テハ船舶所有者ノミ其第三者ニ対シテ履行ノ責ニ任ス但第五百四十一条ニ定メタル権利ヲ行フコトヲ妨ケス 第六百十条 船舶ノ全部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テハ其契約ハ左ノ事由ニ因リテ終了ス 一 第五百八十四条第一項ニ掲ケタル事由 二 運送品カ不可抗力ニ因リテ滅失シタルコト 第五百八十四条第一項ニ掲ケタル事由カ航海中ニ生シタルトキハ傭船者ハ運送ノ割合ニ応シ運送品ノ価格ヲ超エサル限度ニ於テ運送賃ヲ支払フコトヲ要ス 第六百十一条 航海又ハ運送カ法令ニ反スルニ至リタルトキ其他不可抗力ニ因リテ契約ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサルニ至リタルトキハ各当事者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 前項ニ掲ケタル事由カ発航後ニ生シタル場合ニ於テ契約ノ解除ヲ為シタルトキハ傭船者ハ運送ノ割合ニ応シテ運送賃ヲ支払フコトヲ要ス 第六百十二条 第六百十条第一項第二号及ヒ前条第一項ニ掲ケタル事由カ運送品ノ一部ニ付テ生シタルトキハ傭船者ハ船舶所有者ノ負担ヲ重カラシメサル範囲内ニ於テ他ノ運送品ヲ船積スルコトヲ得 傭船者カ前項ニ定メタル権利ヲ行ハント欲スルトキハ遅滞ナク運送品ノ陸揚又ハ船積ヲ為スコトヲ要ス若シ其陸揚又ハ船積ヲ怠リタルトキハ運送賃ノ全額ヲ支払フコトヲ要ス 第六百十三条 第六百十条及ヒ第六百十一条ノ規定ハ船舶ノ一部又ハ個個ノ運送品ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ之ヲ準用ス 第六百十条第一項第二号及ヒ第六百十一条第一項ニ掲ケタル事由カ運送品ノ一部ニ付テ生シタルトキハ傭船者又ハ荷送人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但運送賃ノ全額ヲ支払フコトヲ要ス 第六百十四条 船舶所有者ハ左ノ場合ニ於テハ運送賃ノ全額ヲ請求スルコトヲ得 一 船長カ第五百六十五条第一項ノ規定ニ従ヒテ積荷ヲ売却又ハ質入シタルトキ 二 船長カ第五百六十九条ノ規定ニ従ヒテ積荷ヲ航海ノ用ニ供シタルトキ 三 船長カ第六百三十八条ノ規定ニ従ヒテ積荷ヲ処分シタルトキ 第六百十五条 船舶所有者ノ傭船者、荷送人又ハ荷受人ニ対スル債権ハ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス 第六百十六条 第三百二十七条、第三百三十五条乃至第三百四十条及ヒ第三百四十七条ノ規定ハ船舶所有者ニ之ヲ準用ス 第二款 船荷証券 第六百十七条 船長ハ傭船者又ハ荷送人ノ請求ニ因リ運送品ノ船積後遅滞ナク一通又ハ数通ノ船荷証券ヲ交付スルコトヲ要ス 第六百十八条 船舶所有者ハ船長以外ノ者ニ船長ニ代ハリテ船荷証券ヲ交付スルコトヲ委任スルコトヲ得 第六百十九条 船荷証券ニハ左ノ事項ヲ記載シ船長又ハ之ニ代ハル者署名スルコトヲ要ス 一 船舶ノ名称及ヒ国籍 二 船長カ船荷証券ヲ作ラサルトキハ船長ノ氏名 三 運送品ノ種類、重量若クハ容積及ヒ其荷造ノ種類、個数並ニ記号 四 傭船者又ハ荷送人ノ氏名又ハ商号 五 荷受人ノ氏名若クハ商号又ハ所持人ニ運送品ヲ引渡スヘキコト 六 船積港 七 陸揚港但発航後傭船者又ハ荷送人カ陸揚港ヲ指定スヘキトキハ其之ヲ指定スヘキ港 八 運送賃 九 数通ノ船荷証券ヲ作リタルトキハ其員数 十 船荷証券ノ作成地及ヒ其作成ノ年月日 第六百二十条 傭船者又ハ荷送人ハ船長又ハ之ニ代ハル者ノ請求ニ因リ船荷証券ノ謄本ニ署名シテ之ヲ交付スルコトヲ要ス 第六百二十一条 陸揚港ニ於テハ船長ハ数通ノ船荷証券中ノ一通ノ所持人カ運送品ノ引渡ヲ請求シタルトキト雖モ其引渡ヲ拒ムコトヲ得ス 第六百二十二条 陸揚港外ニ於テハ船長ハ船荷証券ノ各通ノ返還ヲ受クルニ非サレハ運送品ヲ引渡スコトヲ得ス 第六百二十三条 二人以上ノ船荷証券所持人カ運送品ノ引渡ヲ請求シタルトキハ船長ハ遅滞ナク運送品ヲ供託シ且請求ヲ為シタル各所持人ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス船長カ第六百二十一条ノ規定ニ依リテ運送品ノ一部ヲ引渡シタル後他ノ所持人カ運送品ノ引渡ヲ請求シタル場合ニ於テ其残部ニ付キ亦同シ 第六百二十四条 二人以上ノ船荷証券所持人アル場合ニ於テ其一人カ他ノ所持人ニ先チテ船長ヨリ運送品ノ引渡ヲ受ケタルトキハ他ノ所持人ノ船荷証券ハ其効力ヲ失フ 第六百二十五条 二人以上ノ船荷証券所持人アル場合ニ於テ船長カ未タ運送品ノ引渡ヲ為ササルトキハ原所持人カ最モ先ニ発送シ又ハ引渡シタル証券ヲ所持スル者ハ他ノ所持人ニ先チテ其権利ヲ行フコトヲ得 第六百二十六条 第三百三十三条、第三百三十四条、第四百五十二条及ヒ第四百八十条ノ規定ハ船荷証券ニ之ヲ準用ス 第二節 旅客運送 第六百二十七条 記名ノ乗船切符ハ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得ス 第六百二十八条 旅客ノ航海中ノ食料ハ船舶所有者ノ負担トス 第六百二十九条 旅客カ契約ニ依リ船中ニ携帯スルコトヲ得ル手荷物ニ付テハ船舶所有者ハ特約アルニ非サレハ別ニ運送賃ヲ請求スルコトヲ得ス 第六百三十条 旅客カ乗船時期マテニ船舶ニ乗込マサルトキハ船長ハ発航ヲ為シ又ハ航海ヲ継続スルコトヲ得此場合ニ於テハ旅客ハ運送賃ノ全額ヲ支払フコトヲ要ス 第六百三十一条 発航前ニ於テハ旅客ハ運送賃ノ半額ヲ支払ヒテ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 発航後ニ於テハ旅客ハ運送賃ノ全額ヲ支払フニ非サレハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得ス 第六百三十二条 旅客カ発航前ニ死亡、疾病其他一身ニ関スル不可抗力ニ因リテ航海ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキハ船舶所有者ハ運送賃ノ四分ノ一ヲ請求スルコトヲ得 前項ニ掲ケタル事由カ発航後ニ生シタルトキハ船舶所有者ハ其選択ニ従ヒ運送賃ノ四分ノ一ヲ請求シ又ハ運送ノ割合ニ応シテ運送賃ヲ請求スルコトヲ得 第六百三十三条 航海ノ途中ニ於テ船舶ヲ修繕スヘキトキハ船舶所有者ハ其修繕中旅客ニ相当ノ住居及ヒ食料ヲ供スルコトヲ要ス但旅客ノ権利ヲ害セサル範囲内ニ於テ他ノ船舶ヲ以テ上陸港マテ旅客ヲ運送スルコトヲ提供シタルトキハ此限ニ在ラス 第六百三十四条 旅客運送契約ハ第五百八十四条第一項ニ掲ケタル事由ニ因リテ終了ス若シ其事由カ航海中ニ生シタルトキハ旅客ハ運送ノ割合ニ応シテ運送賃ヲ支払フコトヲ要ス 第六百三十五条 旅客カ死亡シタルトキハ船長ハ最モ其相続人ノ利益ニ適スヘキ方法ニ依リテ其船中ニ在ル手荷物ノ処分ヲ為スコトヲ要ス 第六百三十六条 第三百四十九条、第三百五十条第一項、第三百五十一条、第五百八十八条、第五百八十九条、第六百十一条及ヒ第六百十五条ノ規定ハ海上ノ旅客運送ニ之ヲ準用ス 第五百九十条及ヒ第六百十四条ノ規定ハ旅客ノ手荷物ニ之ヲ準用ス 第六百三十七条 旅客運送ヲ為ス為メ船舶ノ全部又ハ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テハ船舶所有者ト傭船者トノ関係ニ付テハ前節第一款ノ規定ヲ準用ス 第四章 海損 第六百三十八条 船長カ船舶及ヒ積荷ヲシテ共同ノ危険ヲ免レシムル為メ船舶又ハ積荷ニ付キ為シタル処分ニ因リテ生シタル損害及ヒ費用ハ之ヲ共同海損トス 前項ノ規定ハ危険カ過失ニ因リテ生シタル場合ニ於テ利害関係人ノ過失者ニ対スル求償ヲ妨ケス 第六百三十九条 共同海損ハ之ニ因リテ保存スルコトヲ得タル船舶又ハ積荷ノ価格ト運送賃ノ半額ト共同海損タル損害ノ額トノ割合ニ応シテ各利害関係人之ヲ分担ス 第六百四十条 共同海損ノ分担額ニ付テハ船舶ノ価格ハ到達ノ地及ヒ時ニ於ケル価格トシ積荷ノ価格ハ陸揚ノ地及ヒ時ニ於ケル価格トス但積荷ニ付テハ其価格中ヨリ滅失ノ場合ニ於テ支払フコトヲ要セサル運送賃其他ノ費用ヲ控除スルコトヲ要ス 第六百四十一条 前二条ノ規定ニ依リ共同海損ヲ分担スヘキ者ハ船舶ノ到達又ハ積荷ノ引渡ノ時ニ於テ現存スル価額ノ限度ニ於テノミ其責ニ任ス 第六百四十二条 船舶ニ備附ケタル武器、船員ノ給料、船員及ヒ旅客ノ食料並ニ衣類ハ共同海損ノ分担ニ付キ其価額ヲ算入セス但此等ノ物ニ加ヘタル損害ハ他ノ利害関係人之ヲ分担ス 第六百四十三条 船荷証券其他積荷ノ価格ヲ評定スルニ足ルヘキ書類ナクシテ船積シタル荷物又ハ属具目録ニ記載セサル属具ニ加ヘタル損害ハ利害関係人ニ於テ之ヲ分担スルコトヲ要セス 甲板ニ積込ミタル荷物ニ加ヘタル損害亦同シ但沿岸ノ小航海ニ在リテハ此限ニ在ラス 前二項ニ掲ケタル積荷ノ利害関係人ト雖モ共同海損ヲ分担スル責ヲ免ルルコトヲ得ス 第六百四十四条 共同海損タル損害ノ額ハ到達ノ地及ヒ時ニ於ケル船舶ノ価格又ハ陸揚ノ地及ヒ時ニ於ケル積荷ノ価格ニ依リテ之ヲ定ム但積荷ニ付テハ其滅失又ハ毀損ノ為メ支払フコトヲ要セサリシ一切ノ費用ヲ控除スルコトヲ要ス 第三百三十七条ノ規定ハ共同海損ノ場合ニ之ヲ準用ス 第六百四十五条 船荷証券其他積荷ノ価格ヲ評定スルニ足ルヘキ書類ニ積荷ノ実価ヨリ低キ価額ヲ記載シタルトキハ其積荷ニ加ヘタル損害ノ額ハ其記載シタル価額ニ依リテ之ヲ定ム 積荷ノ実価ヨリ高キ価額ヲ記載シタルトキハ其積荷ノ利害関係人ハ其記載シタル価額ニ応シテ共同海損ヲ分担ス 前二項ノ規定ハ積荷ノ価格ニ影響ヲ及ホスヘキ事項ニ付キ虚偽ノ記載ヲ為シタル場合ニ之ヲ準用ス 第六百四十六条 第六百三十九条ノ規定ニ依リテ利害関係人カ共同海損ヲ分担シタル後船舶、其属具若クハ積荷ノ全部又ハ一部カ其所有者ニ復シタルトキハ其所有者ハ償金中ヨリ救助ノ費用及ヒ一部滅失又ハ毀損ニ因リテ生シタル損害ノ額ヲ控除シタルモノヲ返還スルコトヲ要ス 第六百四十七条 船舶カ双方ノ船員ノ過失ニ因リテ衝突シタル場合ニ於テ双方ノ過失ノ軽重ヲ判定スルコト能ハサルトキハ其衝突ニ因リテ生シタル損害ハ各船舶ノ所有者平分シテ之ヲ負担ス 第六百四十八条 共同海損又ハ船舶ノ衝突ニ因リテ生シタル債権ハ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス 前項ノ期間ハ共同海損ニ付テハ其計算終了ノ時ヨリ之ヲ起算ス 第六百四十九条 本章ノ規定ハ船舶カ不可抗力ニ因リ発航港又ハ航海ノ途中ニ於テ碇泊ヲ為ス為メニ要スル費用ニ之ヲ準用ス 第五章 保険 第六百五十条 海上保険契約ハ航海ニ関スル事故ニ因リテ生スルコトアルヘキ損害ノ填補ヲ以テ其目的トス 海上保険契約ニハ本章ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外第三編第十章第一節第一款ノ規定ヲ適用ス 第六百五十一条 保険者ハ本章又ハ保険契約ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外保険期間中保険ノ目的ニ付キ航海ニ関スル事故ニ因リテ生シタル一切ノ損害ヲ填補スル責ニ任ス 第六百五十二条 保険者ハ被保険者カ支払フヘキ共同海損ノ分担額ヲ填補スル責ニ任ス但保険価額ノ一部ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テハ保険者ノ負担ハ保険金額ノ保険価額ニ対スル割合ニ依リテ之ヲ定ム 第六百五十三条 船舶ノ保険ニ付テハ保険者ノ責任カ始マル時ニ於ケル其価額ヲ以テ保険価額トス 第六百五十四条 積荷ノ保険ニ付テハ其船積ノ地及ヒ時ニ於ケル其価額及ヒ船積並ニ保険ニ関スル費用ヲ以テ保険価額トス 第六百五十五条 積荷ノ到達ニ因リテ得ヘキ利益ノ保険ニ付テハ契約ヲ以テ保険価額ヲ定メサリシトキハ保険金額ヲ以テ保険価額トシタルモノト推定ス 第六百五十六条 一航海ニ付キ船舶ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テハ保険者ノ責任ハ荷物又ハ底荷ノ船積ニ著手シタル時ヲ以テ始マル 荷物又ハ底荷ノ船積ヲ為シタル後船舶ヲ保険ニ付シタルトキハ保険者ノ責任ハ契約成立ノ時ヲ以テ始マル 前二項ノ場合ニ於テ保険者ノ責任ハ到達港ニ於テ荷物又ハ底荷ノ陸揚カ終了シタル時ヲ以テ終ハル但其陸揚カ不可抗力ニ因ラスシテ遅延シタルトキハ其終了スヘカリシ時ヲ以テ終ハル 第六百五十七条 積荷ヲ保険ニ付シ又ハ積荷ノ到達ニ因リテ得ヘキ利益若クハ報酬ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テハ保険者ノ責任ハ其積荷カ陸地ヲ離レタル時ヲ以テ始マリ陸揚港ニ於テ其陸揚カ終了シタル時ヲ以テ終ハル 前条第三項但書ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第六百五十八条 海上保険証券ニハ第四百二条第二項ニ掲ケタル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 一 船舶ノ名称、国籍、種類及ヒ総噸数 二 船長ノ氏名 三 発航港、到達港又ハ寄航港ノ定アルトキハ其港 積荷ヲ保険ニ付シ又ハ積荷ノ到達ニ因リテ得ヘキ利益若クハ報酬ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テハ船積港及ヒ陸揚港ヲ記載スルコトヲ要ス 第六百五十九条 保険者ノ責任カ始マル前ニ於テ航海ヲ変更シタルトキハ保険契約ハ其効力ヲ失フ 保険者ノ責任カ始マリタル後航海ヲ変更シタルトキハ保険者ハ其変更後ノ事故ニ付キ責任ヲ負フコトナシ但其変更カ保険契約者又ハ被保険者ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リタルトキハ此限ニ在ラス 到達港ヲ変更シ其実行ニ著手シタルトキハ保険シタル航路ヲ離レサルトキト雖モ航海ヲ変更シタルモノト看做ス 第六百六十条 被保険者カ発航ヲ為シ若クハ航海ヲ継続スルコトヲ怠リ又ハ航路ヲ変更シ其他著シク危険ヲ変更若クハ増加シタルトキハ保険者ハ其変更又ハ増加以後ノ事故ニ付キ責任ヲ負フコトナシ但其変更又ハ増加カ事故ノ発生ニ影響ヲ及ホササリシトキ又ハ保険者ノ負担ニ帰スヘキ不可抗力若クハ正当ノ理由ニ因リテ生シタルトキハ此限ニ在ラス 第六百六十一条 保険契約中ニ船長ヲ指定シタルトキト雖モ船長ノ変更ハ契約ノ効力ニ影響ヲ及ホサス 第六百六十二条 積荷ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テ船舶ヲ変更シタルトキハ保険者ハ其変更以後ノ事故ニ付キ責任ヲ負フコトナシ但其変更カ保険契約者又ハ被保険者ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リタルトキハ此限ニ在ラス 第六百六十三条 保険契約ヲ為スニ当タリ荷物ヲ積込ムヘキ船舶ヲ定メサリシ場合ニ於テ保険契約者又ハ被保険者カ其荷物ヲ船積シタルコトヲ知リタルトキハ遅滞ナク保険者ニ対シテ船舶ノ名称及ヒ国籍ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス 保険契約者又ハ被保険者カ前項ノ通知ヲ怠リタルトキハ保険契約ハ其効力ヲ失フ 第六百六十四条 保険者ハ左ニ掲ケタル損害又ハ費用ヲ填補スル責ニ任セス 一 保険ノ目的ノ性質若クハ瑕疵、其自然ノ消耗又ハ保険契約者、被保険者若クハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ悪意若クハ重大ナル過失ニ因リテ生シタル損害 二 船舶又ハ運送賃ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テ発航ノ当時安全ニ航海ヲ為スニ必要ナル準備ヲ為サス又ハ必要ナル書類ヲ備ヘサルニ因リテ生シタル損害 三 積荷ヲ保険ニ付シ又ハ積荷ノ到達ニ因リテ得ヘキ利益ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テ傭船者、荷送人又ハ荷受人ノ悪意若クハ重大ナル過失ニ因リテ生シタル損害 四 水先案内料、入港料、灯台料、検疫料其他船舶又ハ積荷ニ付キ航海ノ為メニ出タシタル通常ノ費用 第六百六十五条 共同海損ニ非サル損害又ハ費用カ其計算ニ関スル費用ヲ算入セスシテ保険価額ノ百分ノ二ヲ超エサルトキハ保険者ハ之ヲ填補スル責ニ任セス 右ノ損害又ハ費用カ保険価額ノ百分ノ二ヲ超エタルトキハ保険者ハ其全額ヲ支払フコトヲ要ス 前二項ノ規定ハ当事者カ契約ヲ以テ保険者ノ負担セサル損害又ハ費用ノ割合ヲ定メタル場合ニ之ヲ準用ス 前三項ニ定メタル割合ハ各航海ニ付キ之ヲ計算ス 第六百六十六条 保険ノ目的タル積荷カ毀損シテ陸揚港ニ到達シタルトキハ保険者ハ其積荷カ毀損シタル状況ニ於ケル価額ノ毀損セサル状況ニ於テ有スヘカリシ価額ニ対スル割合ヲ以テ保険価額ノ一部ヲ填補スル責ニ任ス 第六百六十七条 航海ノ途中ニ於テ不可抗力ニ因リ保険ノ目的タル積荷ヲ売却シタルトキハ其売却ニ依リテ得タル代価ノ中ヨリ運送賃其他ノ費用ヲ控除シ其残額ト保険価額トノ差ヲ以テ保険者ノ負担トス但保険価額ノ一部ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テ第三百九十条ノ適用ヲ妨ケス 前項ノ場合ニ於テ買主カ代価ヲ支払ハサルトキハ保険者ハ其支払ヲ為スコトヲ要ス但其支払ヲ為シタルトキハ被保険者ノ買主ニ対シテ有セル権利ヲ取得ス 第六百六十八条 左ノ場合ニ於テハ被保険者ハ保険ノ目的ヲ保険者ニ委付シテ保険金額ノ全部ヲ請求スルコトヲ得 一 船舶カ沈没シタルトキ 二 船舶ノ行方カ知レサルトキ 三 船舶カ修繕スルコト能ハサルニ至リタルトキ 四 船舶又ハ積荷カ捕獲セラレタルトキ 五 船舶又ハ積荷カ官ノ処分ニ依リテ押収セラレ六个月間解放セラレサルトキ 第六百六十九条 船舶ノ存否カ六个月間分明ナラサルトキハ其船舶ハ行方ノ知レサルモノトス 保険期間ノ定アル場合ニ於テ其期間カ前項ノ期間内ニ経過シタルトキト雖モ被保険者ハ委付ヲ為スコトヲ得但船舶カ保険期間内ニ滅失セサリシコトノ証明アリタルトキハ其委付ハ無効トス 第六百七十条 第六百六十八条第三号ノ場合ニ於テ船長カ遅滞ナク他ノ船舶ヲ以テ積荷ノ運送ヲ継続シタルトキハ被保険者ハ其積荷ヲ委付スルコトヲ得ス 第六百七十一条 被保険者カ委付ヲ為サント欲スルトキハ三个月内ニ保険者ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス 前項ノ期間ハ第六百六十八条第一号、第三号及ヒ第四号ノ場合ニ於テハ被保険者カ其事由ヲ知リタル時ヨリ之ヲ起算ス 再保険ノ場合ニ於テハ第一項ノ期間ハ其被保険者カ自己ノ被保険者ヨリ委付ノ通知ヲ受ケタル時ヨリ之ヲ起算ス 第六百七十二条 委付ハ単純ナルコトヲ要ス 委付ハ保険ノ目的ノ全部ニ付テ之ヲ為スコトヲ要ス但委付ノ原因カ其一部ニ付テ生シタルトキハ其部分ニ付テノミ之ヲ為スコトヲ得 保険価額ノ一部ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テハ委付ハ保険金額ノ保険価額ニ対スル割合ニ応シテ之ヲ為スコトヲ得 第六百七十三条 保険者カ委付ヲ承認シタルトキハ後日其委付ニ対シテ異議ヲ述フルコトヲ得ス 第六百七十四条 保険者ハ委付ニ因リ被保険者カ保険ノ目的ニ付キ有セル一切ノ権利ヲ取得ス 被保険者カ委付ヲ為シタルトキハ保険ノ目的ニ関スル証書ヲ保険者ニ交付スルコトヲ要ス 第六百七十五条 被保険者ハ委付ヲ為スニ当タリ保険者ニ対シ保険ノ目的ニ関スル他ノ保険契約並ニ其負担ニ属スル債務ノ有無及ヒ其種類ヲ通知スルコトヲ要ス 保険者ハ前項ノ通知ヲ受クルマテハ保険金額ノ支払ヲ為スコトヲ要セス 保険金額ノ支払ニ付キ期間ノ定アルトキハ其期間ハ保険者カ第一項ノ通知ヲ受ケタル時ヨリ之ヲ起算ス 第六百七十六条 保険者カ委付ヲ承認セサルトキハ被保険者ハ委付ノ原因ヲ証明シタル後ニ非サレハ保険金額ノ支払ヲ請求スルコトヲ得ス 第六章 船舶債権者 第六百七十七条 左ニ掲ケタル債権ヲ有スル者ハ船舶、其属具及ヒ未タ受取ラサル運送賃ノ上ニ先取特権ヲ有ス 一 船舶並ニ其属具ノ競売ニ関スル費用及ヒ競売手続開始後ノ保存費 二 最後ノ港ニ於ケル船舶及ヒ其属具ノ保存費 三 航海ニ関シ船舶ニ課シタル諸税 四 水先案内料及ヒ挽船料 五 救援並ニ救助ノ費用及ヒ船舶ノ負担ニ属スル共同海損 六 航海継続ノ必要ニ因リテ生シタル債権 七 雇傭契約ニ因リテ生シタル船長其他ノ船員ノ債権 八 船舶カ其売買又ハ製造ノ後未タ航海ヲ為ササル場合ニ於テ其売買又ハ製造並ニ艤装ニ因リテ生シタル債権及ヒ最後ノ航海ノ為メニスル船舶ノ艤装、食料並ニ燃料ニ関スル債権 九 第二号、第四号乃至第六号及ヒ前号ニ掲ケタルモノヲ除ク外第五百四十一条ノ規定ニ依リ委付ヲ許シタル債権 第六百七十八条 船舶債権者ノ先取特権ハ運送賃ニ付テハ其先取特権ノ生シタル航海ニ於ケル運送賃ノ上ニノミ存在ス 第六百七十九条 船舶債権者ノ先取特権カ互ニ競合スル場合ニ於テハ其優先権ノ順位ハ第六百七十七条ニ掲ケタル順序ニ従フ但同条第四号乃至第六号ノ債権間ニ在リテハ後ニ生シタルモノ前ニ生シタルモノニ先ツ 同一順位ノ先取特権者数人アルトキハ各其債権額ノ割合ニ応シテ弁済ヲ受ク但第六百七十七条第四号乃至第六号ノ債権カ同時ニ生セサリシ場合ニ於テハ後ニ生シタルモノ前ニ生シタルモノニ先ツ 先取特権カ数回ノ航海ニ付テ生シタル場合ニ於テハ前二項ノ規定ニ拘ハラス後ノ航海ニ付テ生シタルモノ前ノ航海ニ付テ生シタルモノニ先ツ 第六百八十条 船舶所有者カ其船舶ヲ譲渡シタル場合ニ於テハ譲受人ハ其譲渡ヲ登記シタル後先取特権者ニ対シ一定ノ期間内ニ其債権ノ申出ヲ為スヘキ旨ヲ公告スルコトヲ要ス但其期間ハ一个月ヲ下ルコトヲ得ス 先取特権者カ前項ノ期間内ニ其債権ノ申出ヲ為ササリシトキハ其先取特権ハ消滅ス 第六百八十一条 船舶債権者ノ先取特権ハ其発生後一年ヲ経過シタルトキハ消滅ス 第六百七十七条第八号ノ先取特権ハ船舶ノ発航ニ因リテ消滅ス 第六百八十二条 登記シタル船舶ハ之ヲ以テ抵当権ノ目的ト為スコトヲ得 船舶ノ抵当権ハ其属具ニ及フ 船舶ノ抵当権ニハ不動産ノ抵当権ニ関スル規定ヲ準用ス 第六百八十三条 船舶ノ先取特権ハ抵当権ニ先チテ之ヲ行フコトヲ得 第六百八十四条 登記シタル船舶ハ之ヲ以テ質権ノ目的ト為スコトヲ得ス 第六百八十五条 本章ノ規定ハ製造中ノ船舶ニ之ヲ準用ス