明治商法(明治32年)

商甲第六十一号 (明治三十年十一月二日配付)

参考原資料

第五百九十四条 保険契約ヲ為スニ当タリ荷物ヲ積込ムヘキ船舶ヲ定メサリシ場合ニ於テ被保険者カ其荷物ヲ船積シタルコトヲ知リタルトキハ遅滞ナク船舶ノ名称及ヒ国籍ヲ保険者ニ通知スルコトヲ要ス 被保険者カ前項ノ通知ヲ為スコトヲ怠リタルトキハ保険者ハ其義務ヲ免ル 第五百九十五条 保険者ハ左ニ掲ケタル損害又ハ費用ヲ填補スル責ニ任セス 一 保険契約ノ目的ノ性質若クハ瑕疵、其自然ノ消耗又ハ保険契約者、被保険者若クハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ故意若クハ重大ナル過失ニ因リテ生シタル損害 二 船舶又ハ運送賃ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テ発航ノ当時安全ニ航海ヲ為スニ必要ナル準備ヲ為サス又ハ必要ナル書類ヲ備ヘサルニ因リテ生シタル損害 三 荷物ヲ保険ニ付シ又ハ荷物ノ到達ニ因リテ得ヘキ利益ヲ保険ニ付シタル場合ニ於テ傭船者、荷送人又ハ荷受人ノ故意又ハ重大ナル過失ニ因リテ生シタル損害 四 水先案内料、入港料、灯台料、検疫料其他船舶又ハ荷物ニ付キ航海ノ為メニ出タシタル通常ノ費用 第五百九十六条 第五百七十一条ニ定メタル海損ニ非サル損害又ハ費用ハ其計算ニ関スル費用ヲ算入セスシテ保険価額ノ百分ノ三ヲ超エサルトキハ保険者ハ之ヲ填補スルコトヲ要セス 右ノ損害又ハ費用カ保険価額ノ百分ノ三ヲ超エタルトキハ保険者ハ其全額ヲ支払フコトヲ要ス 前二項ノ規定ハ当事者カ契約ヲ以テ保険者ノ負担セサル損害又ハ費用ノ割合ヲ定メタル場合ニ之ヲ準用ス 前三項ニ定メタル割合ハ各航海ニ付キ之ヲ計算ス 第五百九十七条 保険ノ目的タル荷物カ毀損シテ陸揚港ニ到達シタルトキハ保険者ハ其荷物カ毀損シタル状況ニ於ケル価額ノ毀損セサル状況ニ於テ有スヘカリシ価額ニ対スル割合ヲ以テ保険価額ノ一部ヲ填補スルコトヲ要ス 前項ノ価額算定ニ関スル費用ハ保険者之ヲ負担ス 第五百九十八条 航海ノ途中ニ於テ不可抗力ニ因リ保険ノ目的タル荷物ヲ売却シタルトキハ其売却ニ依リテ得タル代価ノ中ヨリ運送賃其他ノ費用ヲ控除シ其残額ト保険価額トノ差ヲ以テ保険者ノ負担トス但買主カ無資力ナルトキハ保険者ハ買主カ支払ハサル金額ヲ支払フコトヲ要ス 第五百九十九条 保険者ノ責任カ始マル前ニ於テハ保険契約者ハ契約ノ全部又ハ一部ヲ解除スルコトヲ得 第六百条 保険者ノ責任カ始マル前ニ於テ保険契約者又ハ被保険者ノ行為ニ因ラスシテ保険契約ノ目的ノ全部又ハ一部ニ付キ保険者ノ負担ニ帰スヘキ危険カ生セサルニ至リタルトキハ保険者ハ保険料ノ全部又ハ一部ノ返還ヲ為スコトヲ要ス 第六百一条 前二条ノ場合ニ於テハ保険者ハ保険金額ノ二百分ノ一ニ当タル金額ヲ請求スルコトヲ得