明治商法(明治32年)

商甲第五十九号 (明治三十年十月二十七日配付)

参考原資料

第五編 第四章 海損 第五百七十一条 船長カ船舶及ヒ積荷ヲシテ共同ノ危険ヲ免レシムル為メ船舶又ハ積荷ニ付キ為シタル処分ニ因リテ生シタル損害及ヒ費用ハ其処分ニ因リテ保存スルコトヲ得タル船舶又ハ積荷ノ価格ト運送賃ノ半額トノ割合ニ応シ各利害関係人之ヲ分担ス但危険カ過失ニ因リテ生シタル場合ニ於テ利害関係人ノ過失者ニ対スル求償ヲ妨ケス 第五百七十二条 前条ニ定メタル海損ノ分担額ニ付テハ船舶及ヒ積荷ノ価格ハ積荷陸揚ノ地及ヒ時ニ於ケル価格トス但積荷ニ付テハ其価格中ヨリ喪失ノ場合ニ於テ支出スルコトヲ要セサル費用及ヒ支払フコトヲ要セサル運送賃ヲ控除スルコトヲ要ス 第五百七十三条 第五百七十一条ニ掲ケタル損害ヲ受ケタル者ハ積荷陸揚ノ地及ヒ時ニ於ケル船舶又ハ積荷ノ価額ニ応シテ海損ヲ分担ス 第五百七十四条 前三条ノ規定ニ依リ海損ヲ分担スヘキ者ハ積荷引渡ノ時ニ於テ現存スル価額ノ限度ニ於テノミ其責ニ任ス 第五百七十五条 船舶ニ備附ケタル武器、船員ノ給料、船員及ヒ旅客ノ食料並ニ衣類ハ海損ノ分担ニ付キ其価額ヲ算入セス但此等ノ物ニ加ヘタル損害ハ他ノ利害関係人之ヲ分担ス 第五百七十六条 船荷証券其他積荷ノ価格ヲ評定スルニ足ルヘキ書類ナクシテ船積シタル荷物ニ加ヘタル損害ハ利害関係人ニ於テ之ヲ分担スルコトヲ要セス 甲板ニ積込ミタル荷物ニ加ヘタル損害亦同シ但沿岸ノ小航海ニ在リテハ此限ニ在ラス 前二項ニ掲ケタル積荷ノ利害関係人ト雖モ海損分担ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス 第五百七十七条 第五百七十一条ニ掲ケタル損害ノ額ハ積荷陸揚ノ地及ヒ時ニ於ケル其価額ニ依リテ之ヲ定ム但積荷ニ付テハ其滅失又ハ毀損ノ為メ支払フコトヲ要セサリシ一切ノ費用ヲ控除スルコトヲ要ス 第二百八十五条ノ規定ハ海損ノ場合ニ之ヲ準用ス 第五百七十八条 船荷証券其他積荷ノ価格ヲ評定スルニ足ルヘキ書類ニ積荷ノ実価ヨリ低キ価額ヲ記載シタルトキハ其積荷ニ加ヘタル損害ノ額ハ其記載シタル価額ニ依リテ之ヲ定ム 積荷ノ実価ヨリ高キ価額ヲ記載シタルトキハ其積荷ノ利害関係人ハ其記載シタル価額ニ応シテ海損ヲ分担ス 前二項ノ規定ハ積荷ノ価格ニ影響ヲ及ホスヘキ事項ニ付キ虚偽ノ記載ヲ為シタル場合ニ之ヲ準用ス 第五百七十九条 第五百七十一条ノ規定ニ依リ利害関係人カ海損ヲ分担シタル後船舶、其属具若クハ積荷ノ全部又ハ一部カ其所有者ニ復シタルトキハ其所有者ハ償金中ヨリ救撈ノ費用及ヒ一部滅失又ハ毀損ニ因リテ生シタル損害ノ額ヲ控除シタルモノヲ返還スル義務ヲ負フ 第五百八十条 船舶カ双方ノ船員ノ過失ニ因リテ衝突シタル場合ニ於テ双方ノ過失ノ軽重ヲ判定スルコト能ハサルトキハ其衝突ニ因リテ生シタル損害ハ各船舶ノ所有者平分シテ之ヲ負担ス 第五百八十一条 本章ノ規定ハ船舶カ不可抗力ニ因リ発航港又ハ航海ノ途中ニ於テ碇泊スル為メニ要スル費用ニ之ヲ準用ス