明治商法(明治32年)

商甲第五十六号 (明治三十年十月十一日配付)

参考原資料

第四百八十五条 船舶ノ全部又ハ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テ運送品ヲ陸揚スヘキ準備カ整頓シタルトキハ船長ハ其旨ヲ荷受人ニ通知スルコトヲ要ス 運送品ヲ陸揚スヘキ期間ノ定アル場合ニ於テハ其期間ハ前項ノ通知アリタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス其期間経過ノ後運送品ヲ陸揚シタルトキハ船舶所有者ハ特約ナキトキト雖モ相当ノ報酬ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ期間中ニハ不可抗力ニ因リテ陸揚ヲ為スコト能ハサル日ヲ算入セス 個個ノ運送品ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタルトキハ荷受人ハ船長ノ指図ニ従ヒ遅滞ナク運送品ヲ陸揚スルコトヲ要ス 第四百八十六条 荷受人カ運送品ヲ受取リタルトキハ運送契約又ハ船荷証券ノ趣旨ニ従ヒテ運送賃、附随ノ費用、立替金及ヒ運送品ノ価格ニ応シ海損又ハ救助ノ為メ負担スヘキ金額ヲ支払フ義務ヲ負フ 船舶所有者ハ前項ニ定メタル金額ノ支払ト引換ニ非サレハ運送品ヲ引渡スコトヲ要セス 第四百八十七条 荷受人カ運送品ヲ受取ルコトヲ怠リタルトキハ船長ハ之ヲ供託スルコトヲ得此場合ニ於テハ遅滞ナク其旨ヲ荷受人ニ通知スルコトヲ要ス 荷送人ヲ確知スルコト能ハサルトキ又ハ荷受人カ運送品ヲ受取ルコトヲ拒ミタルトキハ船長ハ運送品ヲ供託スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ遅滞ナク其旨ヲ傭船者又ハ荷送人ニ通知スルコトヲ要ス 第四百八十八条 運送品ノ重量又ハ容積ヲ以テ運送賃ヲ定メタルトキハ其額ハ運送品引渡ノ当時ニ於ケル重量又ハ容積ニ依リテ之ヲ定ム 第四百八十九条 期間ヲ以テ運送賃ヲ定メタルトキハ其額ハ船舶発航ノ日ヨリ運送品ノ陸揚終了ノ日マテノ期間ニ依リテ之ヲ定ム但不可抗力ニ因リテ船舶カ発航港又ハ避難港ニ碇泊スヘキトキ又ハ航海中船舶ヲ修繕スヘキトキハ其期間ハ之ヲ算入セス 第四百九十条 船舶所有者ハ第四百八十六条第一項ニ定メタル金額ノ支払ヲ受クル為メ裁判所ノ許可ヲ得テ運送品ヲ競売スルコトヲ得 船長カ荷受人ニ運送品ヲ引渡シタル後ト雖モ船舶所有者ハ其運送品ノ上ニ権利ヲ行使スルコトヲ得但引渡ノ日ヨリ二週間ヲ経過シタルトキ又ハ第三者カ其占有ヲ取得シタルトキハ此限ニ在ラス 第四百九十一条 船舶所有者カ前条ニ定メタル権利ヲ行ハサルトキハ傭船者又ハ荷送人ニ対スル請求権ヲ失フ但傭船者又ハ荷送人ハ其受ケタル利益ノ限度ニ於テ償還ヲ為スコトヲ要ス 第四百九十二条 船舶ノ全部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テ其契約ハ左ノ事由ニ因リテ終了ス 一 船舶カ難破シタルコト 二 船舶カ海難ニ因リテ修繕スルコト能ハサルニ至リタルコト 三 船舶カ捕獲セラレタルコト 四 運送品カ不可抗力ニ因リテ滅失シタルコト 前項第一号乃至第三号ニ掲ケタル事由カ航海中ニ生シタルトキハ傭船者ハ運送ノ割合ニ応シ運送品ノ価格ヲ超エサル限度ニ於テ運送賃ヲ支払フコトヲ要ス 第四百九十三条 航海又ハ運送カ法令ニ反スルニ至リタルトキ其他不可抗力ニ因リテ契約ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサルニ至リタルトキハ各当事者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 前項ノ事由カ航海中ニ生シタル場合ニ於テ契約ノ解除ヲ為シタルトキハ傭船者ハ運送ノ割合ニ応シテ運送賃ヲ支払フコトヲ要ス 第四百九十四条 第四百九十二条第一項第四号及ヒ前条ニ定メタル事由カ運送品ノ一部ニ付キ生シタルトキハ傭船者ハ其選択ニ従ヒ船舶所有者ノ負担ヲ重カラシメサル範囲内ニ於テ他ノ運送品ヲ船積シ又ハ第四百七十九条第一項ノ規定ニ従ヒ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 傭船者カ前項ノ権利ヲ行ハント欲スルトキハ遅滞ナク運送品ヲ船積又ハ陸揚スルコトヲ要ス若シ其船積又ハ陸揚ヲ為ササルトキハ運送賃ノ全額ヲ支払フコトヲ要ス 第四百九十五条 第四百九十二条及ヒ第四百九十三条ノ規定ハ船舶ノ一部又ハ個個ノ運送品ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ之ヲ準用ス 第四百九十二条第一項第一号及ヒ第四百九十三条ニ定メタル事由カ運送品ノ一部ニ付キ生シタルトキハ傭船者又ハ荷送人ハ運送賃ノ全額ヲ支払ヒテ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 第四百九十六条 運送品カ不可抗力ニ因リテ滅失シタルトキハ船舶所有者ハ運送賃ヲ請求スルコトヲ得ス若シ船舶所有者カ既ニ運送賃ノ全部又ハ一部ヲ受取リタルトキハ之ヲ返還スルコトヲ要ス 第四百九十七条 運送品カ其性質若クハ暇疵又ハ傭船者若クハ荷送人ノ過失ニ因リテ滅失シタルトキハ船舶所有者ハ運送賃ノ全額ヲ請求スルコトヲ得 第四百九十八条 第二百七十八条乃至第二百八十条及ヒ第二百八十六条ノ規定ハ船舶所有者ニ之ヲ準用ス