明治商法(明治32年)

商甲第五十五号 (明治三十年十月六日配付)

参考原資料

第五編 第三章 運送 第一節 物品運送 第一款 総則 第四百七十二条 船舶ノ全部又ハ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタルトキハ各当事者ハ相手方ニ対シ運送契約書ノ交付ヲ請求スルコトヲ得 第四百七十三条 船舶所有者ハ傭船者又ハ荷送人ニ対シ発航ノ当時船舶カ航海ニ堪フルコトヲ担保ス 第四百七十四条 法令ニ違反シ又ハ契約ニ依ラスシテ運送品ヲ船積シタル者ハ船舶所有者其他ノ利害関係人ニ対シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス 前項ノ運送品ハ船長ニ於テ何時ニテモ之ヲ陸揚シ若シ船舶又ハ積荷ニ危害ヲ及ホス虞アルトキハ之ヲ放棄スルコトヲ得但船長カ其運送ヲ継続スルトキハ其船積ノ時及ヒ場所ニ於テ同種ノ運送品ニ付キ約シタル最高ノ運送賃ヲ請求スルコトヲ得 第四百七十五条 船舶ノ全部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テ運送品ヲ船積スヘキ準備カ整頓シタルトキハ船舶所有者ハ其旨ヲ傭船者ニ通知スルコトヲ要ス 傭船者カ運送品ヲ船積スヘキ期間ノ定アル場合ニ於テハ其期間ハ前項ノ通知アリタル日ノ翌日ヨリ之ヲ起算ス其期間経渦ノ後尚ホ運送品ヲ船積シタルトキハ船舶所有者ハ特約ナキトキト雖モ相当ノ報酬ヲ請求スルコトヲ得 前項ノ期間中ニハ不可抗力ニ因リテ船積ヲ為スコト能ハサル日ヲ算入セス 第四百七十六条 船長カ第三者ヨリ運送品ヲ受取ルヘキ場合ニ於テ其者ヲ確知スルコト能ハサルトキ又ハ其者カ運送品ヲ船積スルコトヲ拒ミタルトキハ船長ハ直チニ其旨ヲ傭船者ニ通知スルコトヲ要ス此場合ニ於テハ契約ヲ以テ定メタル期間内ニ限リ傭船者ニ於テ運送品ヲ船積スルコトヲ得 第四百七十七条 傭船者ハ契約ヲ以テ定メタル運送品ノ全部ヲ船積セサルトキト雖モ船長ニ対シ発航ノ請求ヲ為スコトヲ得 傭船者カ前項ノ請求ヲ為シタルトキハ運送賃全額ノ外運送品ノ全部ヲ船積セサルニ因リテ生シタル費用ヲ支払ヒ尚ホ船舶所有者ノ請求アルトキハ相当ノ担保ヲ供スルコトヲ要ス 第四百七十八条 運送品ヲ船積スヘキ期間ヲ経過シタルトキハ傭船者カ其全部ヲ船積セサルトキト雖モ船長ハ直チニ発航ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テ傭船者ハ前条第二項ニ定メタル責任ヲ負フ 第四百七十九条 発航前ニ於テハ傭船者ハ運送賃ノ半額ヲ支払ヒテ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但既ニ運送品ノ全部又ハ一部ヲ船積シタルトキハ傭船者ハ其船積及ヒ陸揚ノ費用ヲ負担ス 往復航海ヲ為スヘキ場合ニ於テ傭船者カ其帰航ノ発航前ニ契約ノ解除ヲ為シタルトキハ運送賃ノ三分ノ二ヲ支払フコトヲ要ス他港ヨリ船積港ニ航行スヘキ場合ニ於テ傭船者カ其船積港ヲ発スル前ニ契約ノ解除ヲ為シタルトキ亦同シ 傭船者カ運送品ヲ船積スヘキ期間内ニ其船積ヲ為ササリシトキハ契約ノ解除ヲ為シタルモノト看做ス 第四百八十条 発航後ニ於テハ傭船者ハ運送賃ノ全額ヲ支払フ外第    条ニ定メタル債務ヲ弁済シ且陸揚ノ為メニ生スヘキ損害ヲ賠償シ又ハ相当ノ担保ヲ供スルニ非サレハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得ス 第四百八十一条 船舶ノ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テ傭船者カ他ノ傭船者ト共同セスシテ発航前ニ契約ノ解除ヲ為シタルトキハ運送賃ノ全額ヲ支払フコトヲ要ス但船舶所有者カ他ノ運送品ヨリ得タル運送賃ハ之ヲ控除ス 発航前ト雖モ傭船者カ既ニ運送品ノ全部又ハ一部ヲ船積シタルトキハ他ノ傭船者ノ同意ヲ得ルニ非サレハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得ス 前六条ノ規定ハ船舶ノ一部ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタル場合ニ之ヲ準用ス 第四百八十二条 個々ノ運送品ヲ以テ運送契約ノ目的ト為シタルトキハ荷送人ハ船長ノ指図ニ従ヒ遅滞ナク運送品ヲ船積スルコトヲ要ス 荷送人カ前項ノ船積ヲ怠リタルトキハ船長ハ直チニ発航ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ荷送人ハ運送賃ノ全額ヲ支払フコトヲ要ス但船舶所有者カ他ノ運送品ヨリ得タル運送賃ハ之ヲ控除ス 第四百八十三条 第四百八十一条第一項及ヒ第二項ノ規定ハ荷送人カ契約ノ解除ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス 第四百八十四条 傭船者又ハ荷送人ハ運送品ヲ船積スヘキ期間内ニ其運送ニ必要ナル書類ヲ船長ニ交付スルコトヲ要ス