明治商法(明治32年)

商甲第五十二号 (明治三十年九月十五日配付)

参考原資料

第五編 海商 第一章 船舶及ヒ船舶所有者 第四百二十八条 本法ニ於テ船舶トハ営利ノ目的ヲ以テ航海ノ用ニ供スルモノヲ謂フ 本編ノ規定ハ端舟其他櫓櫂ノミヲ以テ運転シ又ハ主トシテ櫓櫂ヲ以テ運転スル舟ニハ之ヲ適用セス 第四百二十九条 船舶ノ属具目録ニ記載シタル物ハ其従物ト推定ス 第四百三十条 船舶所有者ハ船籍港ヲ管轄スル船舶登記所ニ於テ左ノ事項ヲ登記シ且登記証書ヲ請受クルコトヲ要ス 一 船舶ノ名称及ヒ種類 二 船籍港 三 船舶ノ積量 四 船舶製造ノ場所及ヒ年月日 五 外国ノ船舶カ日本ノ船舶ト為リタルトキハ其原因及ヒ其製造ノ場所並ニ年月日ノ知レタルトキハ其場所並ニ年月日 六 船舶所有者ノ国籍、氏名又ハ商号及ヒ営業所又ハ住所 七 船舶取得ノ原因及ヒ船舶カ数人ノ共有ニ属スルトキハ其各自ノ持分 前項ノ規定ハ積量十五噸未満ノ船舶ニハ之ヲ適用セス 第四百三十一条 船舶所有権ノ譲渡ハ特別法ノ定ムル所ニ従ヒ其登記ヲ為シ且登記証書ニ之ヲ記入スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第四百三十二条 航海中ニ在ル船舶ノ所有権ヲ譲渡シタル場合ニ於テ特約ナキトキハ其航海ヨリ生スル利益及ヒ損失ハ譲受人ニ帰スヘキモノトス 第四百三十三条 差押及ヒ仮差押ハ発航ノ準備ヲ終ハリタル船舶ニ対シテ之ヲ為スコトヲ得ス但其航海ノ為メニ生シタル債務ニ付テハ此限ニ在ラス 第四百三十四条 船舶所有者ハ船長カ其法定ノ権限内ニ於テ為シタル行為又ハ船長其他ノ船員カ其職務ヲ行フニ付キ他人ニ加ヘタル損害ニ付テハ船舶及ヒ運送賃ヲ債権者ニ委付シテ其責任ヲ免ルルコトヲ得但船舶所有者ニ過失アルトキハ此限ニ在ラス 前項ノ規定ハ雇傭契約ニ因リテ生シタル船員ノ権利ニ付テハ之ヲ適用セス 第四百三十五条 船舶共有者ノ間ニ在リテハ船舶ノ利用ニ関スル事項ハ各共有者ノ持分ノ価格ニ従ヒ其過半数ヲ以テ之ヲ決ス 第四百三十六条 船舶共有者ハ其持分ノ価格ニ応シ船舶ノ利用ニ関スル費用ヲ支払フコトヲ要ス 第四百三十七条 船舶共有者カ新ニ航海ヲ為シ又ハ航海ノ終ハリタル後船舶ノ修繕ヲ為スヘキコトヲ決議シタルトキハ其決議ニ対シ異議アル者ハ他ノ共有者ニ対シ相当代価ヲ以テ自己ノ持分ヲ買取ルヘキコトヲ請求スルコトヲ得 前項ノ請求ヲ為サント欲スル者ハ決議ノ日ヨリ三日内ニ他ノ共有者又ハ船舶管理人ニ其旨ヲ通知スルコトヲ要ス但此期間ハ決議ニ加ハラサリシ者ニ付テハ其決議ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ之ヲ起算ス 第四百三十八条 船舶共有者ハ其持分ノ価格ニ応シ船舶ノ利用ニ付テ生シタル債務ヲ弁済スル責ニ任ス 第四百三十九条 損益ノ分配ハ毎航海ノ終ニ於テ船舶共有者ノ持分ノ価格ニ応シテ之ヲ為ス 第四百四十条 船舶共有者ノ持分ノ移転ニ因リテ船舶カ日本ノ国籍ヲ喪失スヘキトキハ他ノ共有者ハ相当代価ヲ以テ其持分ヲ買取リ又ハ其公売ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得 前項ノ規定ハ社員ノ持分又ハ株式ノ移転ニ因リテ船舶カ日本ノ国籍ヲ喪失スヘキ場合ニ之ヲ準用ス 第四百四十一条 船舶共有者ニ非サル者ヲ船舶管理人ト為スニハ共有者ノ一致アルコトヲ要ス 船舶管理人ノ選任及ヒ其代理権ノ消滅ハ船籍港ヲ管轄スル船舶登記所ニ於テ之ヲ登記スルコトヲ要ス 第四百四十二条 船舶管理人ハ左ニ掲ケタル行為ヲ除ク外船舶共有者ニ代ハリテ船舶ノ利用ニ関スル一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス 一 船舶ヲ売却シ、賃貸シ又ハ抵当ト為スコト 二 船舶ヲ保険ニ付スルコト 三 新ニ航海ヲ為スコト 四 船舶ノ大修繕ヲ為スコト 五 借財ヲ為スコト 船舶管理人ノ代理権ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス 第四百四十三条 船舶管理人ハ特ニ帳簿ヲ備ヘ之ニ船舶ノ利用ニ関スル一切ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス 船舶管理人ハ毎航海ノ終ニ於テ遅滞ナク其航海ニ関スル計算ノ報告ヲ為シテ各船舶共有者ノ承認ヲ求ムルコトヲ要ス