第一条 西洋形商船（蒸滊船ハ拾噸以上風帆船ハ弐拾噸以上）ニ於テ海員ヲ雇入又ハ雇止ヲ為ス時ハ総テ此規則ノ条款ニ準拠スヘシ
第二条 雇入ノ時ハ其地ニ於ケル浦役場ニ於テ内務省ヨリ発スル海員雇入証書用紙ヲ以テ其定約書ヲ作リ雇者被雇者記名調印ノ上浦役人ノ公認ヲ受クヘシ
但定約書ハ正副弐通ニ作リ其本書ハ本船ニ保チ置キ副書ハ浦役場ニ止メ置クヘシ
第三条 内海回漕船ニ於テハ雇入期限ヲ六箇月以内ト定ム然レトモ外国航船ニ於テハ六箇月以外ヲ約スルヲ得ヘシ
第四条 雇止ノ時雇者ハ其地ニ於ケル浦役場ニ於テ内務省ヨリ発スル海員雇止証書用紙ヲ以テ雇止証書ヲ作リ記名調印ノ上浦役人ノ公認ヲ受ケ之ヲ其被雇者ニ付与スヘシ
（追加）雇入又ハ雇止ノトキ技術免状ヲ所持スルモノハ浦役人ノ検査ニ供シ且其検査証書ヲ申受ヘシ
雇入又ハ雇止ノ公認ヲ受クルトキハ手数料トシテ被雇者給金一月分ノ百分一ニ当ル金額ヲ雇者被雇者ヨリ各其半額ツヽ浦役場ニ納ムヘシ
雇入定約書及ヒ雇止証書ヲ亡失毀損シ其写ヲ乞フ者ハ弐名以上ノ保証人ト連署シテ当初公認ヲ受ケタル浦役場ニ申出ヘシ浦役人ハ簿冊ニヨリ之ヲ製シ認印ヲ捺シテ交付スヘシ
第五条 雇止ハ雇入地ニ限リ行フヘシ故ニ雇入地外ニ於テ満期ニ至ルモ雇入地ニ帰著スル迄ハ雇入期限内ト見做スコトヲ得ヘシ
但雇者被雇者双方ノ協意ヲ以テスルモノハ本条ノ限リニアラス
第六条 左ノ場合ニ於テハ雇入地外ト雇入期限内トニ拘ラス雇者ヨリ雇止ヲナスヲ得ヘシ
一疾病又ハ体質痿弱ノ故ヲ以テ本務ヲ執行シ能ハサル者
一本船難破其他ノ災厄ニ罹リ進航シ能ハサル時
但以上二項ノ場合ニ於テハ雇者ノ費用ヲ以テ雇入地ヘ帰還セシムヘシ
一第十条ニ掲クル違約一ケ月内三回以上ニ至ル者
一第十一条ヲ犯ス者
第七条 又左ノ場合ニ於テハ雇入地外ト雇入期限内トニ拘ラス被雇者ヨリ其定約ヲ解クヲ得ヘシ
一苛虐ノ取扱ヲ受ケシ時
一飲食物又ハ給金ノ全額或ハ幾分ヲ給与セラレサル時
但右ノ場合ニ於テハ雇入地ヘ帰著ノ旅費ヲ請求スルヲ得ヘシ
第八条 外国ニ於テ雇入若クハ雇止ヲ為ス時ハ其国駐留ノ我国領事館ニ於テ内務省ヨリ発スル用紙ヲ以テ定約書若クハ雇止証書ヲ作リ記名調印ノ上領事ノ公認ヲ受クヘシ
但定約書ハ正副弐通ニ作リ其本書ハ本船ニ保チ置キ副書ハ領事館ニ止メ置クヘシ
第九条 新タニ海員トナル者及ヒ此規則施行以前雇止トナリシ者ヲ除クノ外被雇者ハ必ス最後ノ雇止証書ヲ所持スヘシ又雇者ハ最後ノ雇上証書ヲ所持セサル者ヲ雇入スヘカラス
第十条 船長ノ指図ニ背ク者許可ヲ得スシテ上陸シ又ハ許可ノ時限ヲ過キテ帰船スル者（第十一条ノ脱船者ニアラス）本務ヲ怠ル者喧嘩口論ヲナス者酩酊スル者私ニ銃器刀槍或ハ酒類ヲ船中ニ貯フ者ハ毎回其給金三日分ヨリ多カラサル額ヲ違約金トシテ雇主之ヲ収メ且其銃器刀槍或ハ酒類ヲ取上クルヲ得ヘシ
第十一条 船中ニ於テ徒党ヲ謀ル者船長ヲ劫ス者脱船スル者（雇入期限内ニ逃亡スル者ヲ云フ）ハ其事情ニ因リ百日以内ノ懲役ニ処ス若シ船体船具ヲ毀傷シ又ハ載貨ヲ私用スル者ハ其実価ヲ償ハシムルノ外本条ニ依テ其罪ヲ科スヘシ
第十二条 海員ヲ虐使シ飲食物或ハ給金ノ全額又ハ幾分ヲ給与セサル者ハ其事情ニ因リ百円以内ノ罰金ヲ科シ其給与セサル金額ハ年六分ノ利子ヲ加ヘ償還セシムヘシ
第十三条 此規則中第十条第十一条第十二条ヲ除キ其他ノ諸条款ヲ犯ス者ハ其事情ニ因リ五拾円以内ノ罰金ヲ科スヘシ