改定律例

参考原資料

第一条 凡笞杖徒流ノ刑名ヲ改メ。一体ニ。懲役ニ換ヘ。例ニ照シテ。役ニ服ス。 懲役十日 原笞一十 二十日 二十 三十日 三十 四十日 四十 五十日 五十 六十日 原杖六十 七十日 七十 八十日 八十 九十日 九十 百日 一百 一年 原徒一年 一年半 一年半 二年 二年 二年半 二年半 三年 三年 五年 原流一等 七年 二等 十年 三等 第二条 凡懲役十年ノ上ニ。懲役終身ノ刑ヲ設ケ。其犯罪。持兇器強盗。監守常人盗。謀故殺。放火。反獄。偽造宝貨ヲ除ク外。罪。死ニ該ル者。一体ニ。寛宥シテ。此刑ニ科ス。 第三条 凡懲役ハ。平民。老小。婦女。癩。盲。廃疾者。及ヒ無力不能贖者。監獄則ニ照シ。分別シテ。役ニ服ス。其雇工銭ヲ給与領置スルノ法モ。亦獄則ニ従フ。 第四条 凡懲役ノ年月日限ハ。刑名宣告ノ日ヨリ起算ス。 第五条 凡笞杖打決ヲ廃スト雖モ。存留養親。及ヒ懲役人逃。即時決ス可キ等ハ。条例ニ照シテ。並ニ。棒鎖ニ換フ。 棒鎖一日 原笞一十至五十 二日 原杖六十至七十 三日 八十至一百 第六条 凡所犯。極テ軽ク。罪。懲役十日ニ及ハサル者ハ。止タ呵責シテ放免ス。 第七条 凡梟示ハ。犯由牌ニ。罪状ヲ書シ。梟場。及ヒ各所ニ掲示スル外。斬絞二死モ。亦犯由牌ニ。罪状ヲ書シ。通衢一個所ニ掲示ス。仍ホ梟斬絞。及ヒ懲役五年以上ニ処スル者ハ。並ニ。罪状ヲ紙牌ニ書シ。三日間。犯人本籍ノ掲榜場ニ掲示ス。 第八条 凡梟示ニ該ル者。罪名已ニ定リ。奏請待報内ニ在テ。死亡スレハ。屍ヲ刑セス。止タ犯由牌ヲ立ツ。 第九条 凡梟示ノ遺骸モ。亦親属請フ者アレハ。下付スルコトヲ聴ス。 第十条 凡梟斬絞ノ遺骸ハ。親属請フ者アレハ。下付スト雖モ。墓石ニ。止タ氏名年月日ヲ記スコトヲ得テ。式ヲ以テ。葬ルコトヲ聴サス。 勅奏官位犯罪条例 第十一条 凡勅奏官位。及ヒ華族。罪ヲ犯セハ。其事由ヲ奏聞シテ。旨ヲ請ヒ。推問スト雖モ。若シ事。急卒ニ出テ。即時推問セサルコトヲ得サル者ハ。推問シテ後ニ奏請ス。 第十二条 凡華族。過誤失錯ノ罪ヲ犯ス者ハ。華族贖罪例図ニ照シテ。贖フコトヲ聴ス。其私罪ヲ犯ス者ハ。士族ノ法ニ同シ。 改正閏刑律 第十三条 凡士族。罪ヲ犯ス者ハ。謹慎。閉門。禁錮。辺戍。自裁ニ処スル律ヲ改メ。一体ニ。禁錮ニ処ス。若シ奸盗等ノ罪ヲ犯シ。廉恥ヲ破ルコト甚シキ者。懲役百日以下ニ該ルハ。除族ニ止メ。一年以上ハ。仍ホ本刑ヲ加フ。罪科未タ定ラサル者ハ。監倉ニ入レ。平民ト別異ス。 禁錮十日 原謹慎一十日 二十日 二十日 三十日 三十日 四十日 四十日 五十日 五十日 六十日 原閉門六十日 七十日 七十日 八十日 八十日 九十日 九十日 百日 一百日 一年 原禁錮一年 一年半 一年半 二年 二年 二年半 二年半 三年 三年 五年 原辺戍一等 七年 二等 十年 三等 終身 原自裁 凡禁錮ハ。一室内ニ。鎖錮セシメ。外人ニ。接見通信スルコトヲ聴サス。若シ疾病アレハ。医ヲ延キ。及ヒ近隣火ヲ失シ。邸宅ニ延焼セントスル時ハ。防救遷移スルコトヲ聴ス。其才能用フルニ堪ル者。限満レハ。仍ホ収用スルコトヲ聴シ。限未タ満スシテ。死亡スレハ。即チ罪ヲ免ス。其五年。七年。十年ニ該ル者。功俸賞禄ノ一身ニ止ルハ。追奪シ。終身ニ該ル者。世禄ハ。子孫ニ給ス。 閏刑条例 第十四条 凡華士族。罪ヲ犯シ。破廉恥甚ニ係リ。廃シテ庶人ト為ス者。改テ除族ト称ス。其除族ニ該ル者ハ。禄ヲ収メ。本犯一人ヲ除シ。族ハ。子孫ニ襲カシム。 第十五条 凡華士族。罪ヲ犯シ。破廉恥甚ニ係ルト雖モ。年七十以上。十五以下。懲役十年以下ノ罪ヲ犯ス者ハ。並ニ。収贖スルコトヲ聴シ。除族スルノ限ニ在ラス。 第十六条 凡華士族。罪ヲ犯シ。除族ニ該リ。別ニ生産ナク。同族ノ家ニ。同居スルコトヲ願フ者ハ。之ヲ聴スト雖モ。附籍スルコトヲ聴サス。 第十七条 凡士族。罪ヲ犯シ。過誤失錯ニ係ル者ハ。平民ト同ク。贖罪例図ニ照シテ。贖フコトヲ聴ス。 第十八条 凡華士族。賭博ノ罪ヲ犯ス者ハ。破廉恥甚ヲ以テ論シ。除族スル律ヲ改メ。閏刑ニ処ス。 第十九条 凡禁錮百日以下。限内ニ。祖父母。父母。死亡スレハ。官ニ告ケ。門ヲ出テ。葬式ヲ行フコトヲ聴ス。其一年以上ハ。此限ニ在ラス。 第二十条 凡禁錮ハ。一室内ニ鎖錮スト雖モ。門扉ヲ鎖サヽス。家属ハ。出入スルコトヲ聴ス。 第二十一条 凡他地方ニ在リ。禁錮百日以下ヲ犯シ。帰郷ヲ願フ者ハ。保人ニ責付シテ。郷里帰到ノ日ヨリ。日数ヲ起算ス。其一年以上ハ。刑名宣告ノ日ヨリ算ス。 官吏犯公罪条例 第二十二条 凡官吏。公罪。及ヒ過誤失錯ノ罪ヲ犯シ。罪。笞杖ニ該ル者ハ。謹慎。閉門ニ処スル律ヲ改メ。官吏公罪贖例図ニ照シテ。勅奏判ヲ分チ。各贖フコトヲ聴シ。等外吏ハ。平民贖罪例ニ依ル。其徒以上ヲ犯ス者ハ。降官ニ処スル律ヲ改メ。官吏公罪罰俸例図ニ照シテ。俸ヲ追ス。其官十四等以下ノ者ハ。亦平民贖罪例ニ依ル。 官吏犯私罪条例 第二十三条 凡官吏。私罪。及ヒ有心故造ノ罪ヲ犯シ。罪。笞杖ニ該ル者ハ。謹慎。降官ニ処スル律ヲ改メ。官吏私罪贖例図ニ照シテ。贖フコトヲ聴シ。其徒刑ヲ犯ス者ハ。免職ニ処スル律ヲ改メ。士族犯罪法ノ如ク。閏刑ニ処ス。 第二十四条 凡平民。官ニ在ル者。一切私罪ハ。官吏私罪贖例図ニ照シテ科断シ。破廉恥甚ニ係ル者ハ。懲役百日以下ト雖モ。実断シ。限満テ。本籍ニ附ス。其勅奏官位ニ係ル者。秦聞請旨等ハ。仍ホ本法ヲ尽ス。 第二十五条 凡平民。官ニ在ル者。其父母。兄弟。子孫。一切犯罪ハ。並ニ。士族ニ準シテ論ス。破廉恥甚ニ係ル者ハ。平民ヲ以テ論ス。若シ在官人。家長ニ非レハ。此例ヲ用フルコトヲ得ス。 有官僧徒犯罪条例 第二十六条 凡僧徒。罪ヲ犯スニ。寺職ノ者ハ。士族ニ準シテ論シ。破廉恥甚ニ係ル者ハ。職ヲ奪ヒ。実断シ。限満テ。本寺ニ附ス。其職ヲ経テ。退隠スル者モ。亦同シ。余僧ハ。平民ト同ク科断ス。 改正軍人犯罪律 第二十七条 凡軍人。軍属。罪ヲ犯スニ。出征。行軍ノ際ニ非スト雖モ。陸軍。海軍。並ニ。其律ヲ以テ。科断スルコトヲ得ヘシ。若シ事。常人ニ関渉シ。及ヒ共犯ニ係ル者。軍官。逮捕スレハ。軍衙ニ於テ推問シ。常人ハ。鞫状ヲ併セ。法司ニ交付ス。法司。逮捕スレハ。法衙ニ於テ推問シ。軍人。軍属ハ。鞫状ヲ併セ。軍官ニ交付シ。軍人。軍属ハ。軍律ニ処シ。常人ハ。常律ニ依ル。其大獄疑識ニ係ル者ハ。軍官。法司。会同商議シテ。亦囚ヲ分チ。各自ニ区処ス。 第二十八条 凡後備兵等。名氏。軍籍ニ在リト雖モ。現ニ軍役ニ服セサル者ハ。仍ホ常人ト同ク。法司科断シ訖テ。本属ノ軍官ニ移告ス。 糾弾官吏犯罪条例 第二十九条 凡糾弾官吏ト称スルハ。検事。警保官吏ヲ謂フ。其贓罪ヲ犯ス者ハ。律ニ照シ。二等ヲ加フルヲ除ク外。私罪。及ヒ有心故造ノ罪ヲ犯ス者モ。公罪ト同ク。常律ニ依ル。 平民犯罪不実断条例原庶人犯罪不的決律 第三十条 凡平民。罪ヲ犯シ。贖罪ス可キ者。無力ニシテ。贖フコト能ハサル者ハ。律ニ依リ。実断スト雖モ。死罪ハ。一等ヲ減シテ。懲役ニ服ス。 第三十一条 凡老小。廃疾者。罪ヲ犯シ。収贖ス可キ者。無力ニシテ。贖フコト能ハサル者。懲役百日以下ハ。折半シ。一年以上ハ。五等ヲ滅シテ。並ニ。懲役ニ服ス 第三十二条 凡過失殺傷ヲ犯シ。収贖ス可キ者。無力ニシテ。贖フコト能ハサルハ。懲治監ニ入レ。一等役囚ト同ク。雇工銭ノ全数ヲ領置シ。食費ヲ除キ。贖金ノ半ヲ。殺傷セラルヽ家ニ。給スルニ足ルヲ期ト為シ。役ヲ免ス。 第三十三条 凡贖金ハ。宣告ノ日ヨリ。五日以内ニ納完ス。若シ無力ニシテ。限内。贖フコト能ハサル者ハ。例ニ照シテ。延期スルコトヲ聴ス。 贖懲役五十日以下 限三十日 懲役百日以下 四十日 懲役三年以下 五十日 懲役十年以下 六十日 懲役終身 七十日 死刑 八十日 第三十四条 凡贖罪。収贖ス可キ者。無力ニシテ。贖フコト能ハス。親属。代テ贖フコトヲ願フ者アレハ聴ス。 犯罪存留養親条例 第三十五条 凡犯罪存留養親者。徒流。並ニ。杖一百実決シテ。余罪ヲ収贖スル律ヲ改メ。懲役一年以上ニ該ル者ハ。棒鎖三日ニ科シテ。余罪ヲ収贖シ。其百日以下ニ該ル者ハ。全罪ヲ収贖スルコトヲ聴ス。 第三十六条 凡懲役一年以上ヲ犯シ。已ニ実断シテ。役百日ヲ過キ。祖父母。父母。老疾シテ。家ニ侍養ノ子孫ナク。父祖親属ノ侍養スルコトヲ願フコト切ナル者ハ。余罪ヲ収贖シ。放還スルコトヲ聴ス。 第三十七条 凡華士族。禁錮一年以上ヲ犯シ。祖父母。父母。老疾シテ。家ニ侍養ノ子孫ナキ者ハ。侍養スルコトヲ聴シ。已ムヲ得サルノ事故アリト雖モ。官ニ告ルニ非レハ。外出スルコトヲ聴サス。 第三十八条 凡侍養子孫ト称スルハ。年十六以上。成丁ノ者ヲ謂フ。若シ家ニ丁男ナシト雖モ。妻。若クハ女。年十六以上ノ者アレハ。留養スルコトヲ聴サス。 婦女犯罪条例 第三十九条 凡婦女。不孝。奸。盗。人命。放火ノ徒罪以上ヲ犯ス者ハ。各律ニ依テ断決シ。笞杖ニ該ル者ハ。日数ニ折シテ。禁獄スル律ヲ改メ。並ニ。懲役ニ服ス。其余ノ罪。収贖ス可キ者。無力ニシテ。贖フコト能ハサル者。懲役百日以下ハ。折半シ。一年以上ハ。五等ヲ減シテ。並ニ。懲役ニ服ス。 第四十条 凡華士族ノ婦女。不孝。奸。盗。人命。放火ノ罪ヲ犯シ。懲役百日以下ニ該ル者ハ。日数ニ照シテ。鎖錮ニ換ヘ。一年以上ハ。並ニ。本刑ヲ加フ。 懲役人又犯罪条例原徒流人又犯罪律 第四十一条 凡懲役百日以下ノ囚。役限内ニ在リ。又百日以下ノ罪ヲ犯ス者ハ。前犯ノ日数ニ通算シテ。之ヲ科ス。若シ後犯。一年以上ニ該ル者ハ。新ニ後犯ノ罪ヲ全科ス。 第四十二条 凡懲役一年以上ノ囚。役限内ニ在リ。又罪ヲ犯ス者ハ。後犯ノ日数ヲ加役スト雖モ。重子テ。一年以上ノ罪ヲ犯ス者ハ。已ニ役過スル日数ヲ通算シテ。前後四年ニ過ルコトヲ得ス。若シ五年以上ノ罪ヲ犯ス者ハ。已ニ役過スル日数ヲ問ハス。新ニ。後犯ノ罪ヲ全科ス。 第四十三条 凡懲役五年以上ノ囚。重子テ五年以上ノ罪ヲ犯ス者ハ。並ニ。拘役四年ヲ加フ。若シ三年以下ノ罪ヲ犯ス者ハ。後犯ノ年限ヲ折半シテ。加役シ。百日以下ノ罪ヲ犯ス者モ。亦日数ニ照シテ。加役ス。 第四十四条 凡懲役限内。重子テ罪ヲ犯ス者ハ。後犯推問曠役ノ日数ヲ以テ。原役限内ニ算入スルコトヲ得ス。若シ推問ヲ経テ。無罪ニ帰スル者ハ。仍ホ限内ニ算入ス。 老小廃疾収贖条例 第四十五条 凡人ノ一目ヲ瞎スルハ。人ヲ廃疾ニ致ス律ニ依ルト雖モ。一目ノ人。罪ヲ犯セハ。廃疾ヲ以テ収贖スルコトヲ得ス。人ノ両目ヲ瞎スルハ。人ヲ篤疾ニ致ス律ニ依ルト雖モ。盲人。罪ヲ犯セハ懲役ハ。収贖シテ。死罪ハ。収贖スルコトヲ聴サス。 第四十六条 凡盲人。及ヒ廃疾者。奸盗ノ罪ヲ犯ス者ハ。律例ニ照シテ。収贖スト雖モ。其強盗強奸ヲ犯ス者ハ。実断シテ。収贖スルコトヲ聴サス。 第四十七条 凡老小。及ヒ廃疾者。官ニ在リ。罪ヲ犯スニ。公罪ハ。官吏贖罪罰俸例図ニ依リ。私罪ハ。官吏犯私罪律例ニ依ル。其破廉恥甚ニ係ル者。懲役百日以下ハ。除族ニ止メ。一年以上ハ。仍ホ律ニ依リ。収贖セシム。 第四十八条 凡老小。及ヒ廃疾者。懲役終身以下ヲ犯ス者。例ニ照シテ。収贖スルノ後。再ヒ罪ヲ犯ス者ハ。仍ホ例ニ照シ。収贖スルコトヲ聴ス。若シ盗罪。賭博等。加等ス可キ。再犯ニ係ル者ハ。但加等ノ罪ヲ宥メ。本罪ヲ実断シテ。再ヒ収贖スルコトヲ聴サス。三犯以上ハ凡人再犯以上ノ例ニ照シテ加等ス。 犯罪時未老疾条例 第四十九条 凡懲役限内老疾収贖者。孤独貧困ニシテ。即時贖フコト能ハサル者ハ。贖金延期限内。軽役ニ拘服ス。 第五十条 凡懲役一年以上ノ罪犯。病ニ罹リ。休役スル者。一年毎ニ。日数五十日以内ハ。限内ニ算入シ。五十日以外ハ。病愈ルヲ待チ。仍ホ役ヲ償ハシム。百日以下ノ罪犯。日数十分ノ二ハ。算入シ。十分ノ二ニ過ル者ハ。亦償ハシム若シ数次ニ及フ者ハ。通計合算シテ乗除ス。其役場ヲ出シテ責付スル日数ハ。一体ニ。限内ニ算入セス。 給没贓物条例 第五十一条 凡正贓現在ト称スルハ。贓。賊ノ手ニ存在シ。及ヒ輾転シテ。他人ノ手ニ在ル者ヲ謂フ若シ買取シテ。公商。公賈ニ由ル者ハ。正贓現在スト雖モ。商賈。其価ヲ償ハサレハ。直ニ追徴スルコトヲ得ス。 第五十二条 凡贓物。現在シ。及ヒ現在セスト雖モ。事主。本犯ノ口供ヲ審明シ。評価人ニ估計セシム。若シ犯所。遠隔ニシテ。事主ノ口供ヲ審スルニ。便ナラサル者ハ。本犯ノ口供ニ依リ。罪ヲ定ム。 第五十三条 凡盗贓タルコトヲ知ラスト雖モ。買取シテ。公商。公賈ニ由ラサル者ハ。直ニ追徴スルコトヲ得。其転売スル者ハ。仍ホ転償セシム。 第五十四条 凡転売スル贓物ハ。転償セシムト雖モ。若シ転償者。死亡。破産等。追徴スルコト能ハサレハ。贓物現在ノ所ヨリ。直ニ追徴スルコトヲ得。其公商。公賈ニ由ル者ハ此例ヲ用ヒス。 第五十五条 凡盗犯。正贓。已ニ費用シテ。現在セスト雖モ。賠償ス可キ。資力アル者ハ。必ス追徴シテ。本主ニ給ス。 第五十六条 凡盗贓タルコトヲ知ラスト雖モ。其餽送纏頭ニ係ル者ハ。必ス追徴シテ。本主ニ給ス。若シ已ニ費用スル者ハ。追徴スルコト勿レ。 第五十七条 凡盗贓ヲ以テ。物品ヲ買取シ。人ニ餽送スルニ。物品現在スル者ハ。追徴シテ。本主ニ給ス。若シ已ニ費用スル者ハ。追徴スルコト勿レ。 第五十八条 凡盗贓ヲ以テ。旧債ニ抵償スル者ハ。債主。情ヲ知ラスト雖モ。仍ホ追徴シテ。本主ニ給ス。若シ已ニ費用スル者ハ。追徴スルコト勿レ。 犯罪自首条例 第五十九条 凡罪ヲ犯シ。人ノ官ニ陳告セント欲スルコトヲ知テ。自首スル者ハ。本罪ニ。一等ヲ減スル律ヲ改メ。減二等ニ従ヒ。官ノ捕獲セント欲スルコトヲ聞テ。自首スル者ハ。本罪ニ。一等ヲ減ス。 第六十条 凡罪ヲ犯シ。事。巳ニ告発ヲ経ルト雖モ。本犯。未タ知ラス。及ヒ官。罪犯ノ名ヲ知ラスシテ。自首スル者ハ。仍ホ未発自首ト同ク。並ニ。罪ヲ免ス。 第六十一条 凡越獄逃走シテ。自首スル者ハ。止タ加等ス可キ罪ヲ減シテ。本罪ハ。減スルコトヲ聴サス。 第六十二条 凡贓罪ヲ犯シ。人ノ告ント欲スルコトヲ知テ自首シ。贓。徴ス可ラサル者モ。例ニ照シテ。本罪ニ。二等ヲ減ス。 第六十三条 凡首免ヲ与フルノ事ニ因リ。首免ヲ与ヘサル罪ヲ犯シ。自首スル者ハ。因ル所ノ原罪ヲ免シ。止タ首免ヲ与ヘサルノ本罪ヲ科ス。仮令ハ。強窃盗ヲ犯シ。因テ人ヲ殺傷スル者ハ。其強窃盗ハ。首免ヲ与フト雖モ。殺傷ハ。謀故■過失ノ各法ヲ尽スノ類。 第六十四条 凡罪ヲ犯シ。自首スル者。仮令ハ。窃盗贓百円。五十円ハ。仍ホ現在シ。五十円ハ。已ニ費用シテ。追徴スルコト能ハサレハ。五十円ノ贓ニ。二等ヲ減シテ。罪ヲ科ス。其余ノ贓罪モ。亦之ニ準ス。 第六十五条 凡人ヲ罪ニ誣告シテ。自首スル者ハ。巳断。未断ヲ分チ。未タ受断ヲ経サルハ。仍ホ首免ヲ聴シ。巳ニ受断ヲ経ルハ。告誣ノ本罪ヲ科ス。 第六十六条 凡罪ヲ首シ。減免ヲ経ルノ後。再ヒ同罪ヲ犯ス者ハ。減免スルコトヲ聴サス。若シ前後犯罪。各別ナル者ハ。此限ニ在ラス。 第六十七条 凡華士族。罪ヲ犯シ。自首スル者。破廉恥甚ニ係ルト雖モ。本条。自首ヲ聴ス可キ者ハ。一体ニ。罪ヲ免シ。除族スルノ限ニ在ラス。 第六十八条 凡華士族。罪ヲ犯シ。人ノ告ント欲スルコトヲ知テ。自首スル者。本条。自首ヲ聴ス可キ者ハ。罪。減等セスシテ。閏刑ニ処シ。破廉恥甚ヲ以テ論セス。 第六十九条 凡知人欲告而首ト称スルハ。名ヲ指テ官ニ告ケ。事已ニ発セント欲スルコトヲ知テ。自首スル者ヲ謂フ。真ニ。罪ヲ悔ル心ナク。事発シ。罪ヲ畏ルヽニ因リ首出ス。故ニ本罪ニ。二等ヲ減ス。聞捕而首ト称スルハ。官司。人ヲ差シ。已ニ捕獲セント欲スルコトヲ偵知シテ。自首スル者ヲ謂フ。事機緊急。已ムコトヲ得サルニ出テ。悔惧ノ心。尤モ薄シ。故ニ本罪ニ。一等ヲ減ス。越獄而首ト称スルハ。已ニ囚禁セラレテ。越獄逃走シ。自首スル者ヲ謂フ。止タ越獄ノ加等ス可キ罪ヲ免シテ。本罪ハ。減スルコトヲ聴サス。 二罪倶発以重論条例 第七十条 凡罪ヲ犯シ。実断。贖罪。並発スルニ。罪。各等キ者ハ。一ノ実断ヲ以テ論ス。若シ贖罪。実断ヨリ重キ者ハ。重キニ従ヒ。贖罪ニ処ス。士族ノ破廉恥甚ヲ犯ス者ハ。此例ヲ用ヒス。 第七十一条 凡二罪以上。倶ニ発覚スレハ。一ノ重キ者ヲ以テ論シ。各等キハ。一ニ従テ科スト雖モ。其贓物ノ追徴シテ。官ニ入レ。主ニ給シ。若クハ。棄毀器物ノ賠償ス可キ等ハ。各本法ヲ尽ス。 第七十二条 凡二次以上。盗ヲ為シ。首従ノ贓。並発スル者ハ。首従ノ贓ヲ併セテ。罪。一等ヲ減ス。若シ併セテ。首贓ノ本罪ト。仍ホ等キ者ハ。更ニ減セス。仮令ハ。従贓。五十円ナルニ。首贓。四十円ナレハ。之ヲ併セテ。九十円。懲役三年。一等ヲ減シ。二年半ヲ科ス。若シ首贓。百二十円。懲役十年ニ該ル者。従贓ニ併セテ。罪。仍ホ等キ者ハ。減セスシテ全科ス。 第七十三条 凡二次。盗ヲ為シ。一次先キニ発シ。已ニ論決ヲ経テ。一次後ニ発シ。及ヒ先キニ審結シテ。贓ヲ尽サヽル者。論決ノ後。発覚スレハ。倶ニ後発ノ贓ヲ以テ。前贓ニ併セ。罪。加フ可キ無ケレ。ハ論セス。若シ併セテ。重キ者ハ。更ニ加ヘテ全科ス。 第七十四条 凡罪ヲ犯シ。実断。収贖。並発スル者ハ。収贖折減法ニ照シテ。重キニ従ヒ。実断ニ処ス。仮令ハ。実断ノ懲役十日ヲ犯シ。又収贖ノ十年ヲ犯セハ。十年ヨリ。五等ヲ減シテ。懲役二年ニ実断ス。実断ノ五十日ヲ犯シ。又収贖ノ百日ヲ犯セハ。百日ヲ折半シテ。五十日。罪。仍ホ等シ。実断ノ五十日ニ処スルノ類。 第七十五条 凡華士族。破廉恥甚ノ懲役百日以下ヲ犯シ。又閏刑ノ禁錮一年以上ヲ犯シ。二罪倶発スレハ。一ノ破廉恥甚ヲ以テ。重ト為シテ論ス。 同僚犯公罪条例 第七十六条 凡府県官吏ハ。知事。及ヒ令ヲ長官ト為シ。参事ヲ次官ト為シ。典事ヲ判官ト為シ。属以下ヲ主典ト為ス。其公罪ヲ犯ス者ハ。此例ニ依リ。逓減シテ罪ヲ科ス。 第七十七条 凡主典。罪囚ノ口供結案ヲ具題シ。判官。律ニ依テ。刑名ヲ擬断スルニ。刑名。口供ト。差錯セスト雖モ。覆審シテ。罪ノ当ラサルコトヲ検挙スレハ。刑名ノ錯ハ。口供ノ誤ニ由ルヲ以テ。罪。但タ所由ノ主典ヲ坐シ。判官ハ。公罪逓減法ヲ用ヒス 公事失錯 第七十八条 凡人ヲ罪ニ失出スル者ハ。已ニ決放スト雖モ。貼断スル律ヲ改メ。能ク検挙スト雖モ。貼断スルコトヲ用ヒス。仍ホ。失出人罪律ニ依テ之ヲ科ス。 共犯罪分首従条例 第七十九条 凡本条ニ。皆ト言ハスト雖モ。脱籍。越獄。及ヒ犯奸。若クハ。懲役人逃等。身自ラ犯スヲ以テ。罪ヲ得ルニ係ル者ハ。並ニ。首従ヲ分タス。各本科ニ処ス。 第八十条 凡一家人。共ニ宝貨ヲ偽造スル者ハ。一家共犯律ニ依リ。止タ尊長ヲ坐シ。卑幼ハ論セス。 親属相為容隠条例 第八十一条 凡祖父母ト称スル者ハ。曽高同シ。孫ト称スル者ハ。曽玄同シ。嫡孫承祖ハ。父母ト同シ。子ト称スル者ハ。男女同シ。 第八十二条 凡異籍ノ親属。共居同爨シ。若クハ産ヲ破リ。寄食シテ。恩養ヲ受ル者ハ。倶ニ同居親属ヲ以テ論ス。 加減罪例条例 第八十三条 凡三流。同ク一減ト為ス律ヲ改メ。懲役三年以下ト同ク。分テ三等ト為シテ減ス。其二死ノ減法ハ。仍ホ本律ニ依ル。 第八十四条 凡懲役終身ハ。死刑ノ一部ニ準スト雖モ。其加減ノ法。二死ニ通シテ。同ク一減ト為スヲ得ス。仮令ハ。死罪ヲ犯スニ。一等ヲ減スレハ。絞斬ヲ分タス。懲役終身ニ坐ス。若シ本条。加ヘテ死ニ入ル者ハ改テ一体ニ。懲役終身ニ止ム。其監守常人盗。私借官物。及ヒ雇人盗家長財物者ハ。此限ニ在ラス。 第八十五条 凡罪ヲ犯シ。年ヲ歴テ。発覚スル者ハ。並ニ。旧悪ヲ以テ論シ。旧悪減免例図ニ照シテ。区処スルコトヲ聴ス。若シ事ノ改正ス可ク。贓ノ追徴ス可キ等ハ。罪ヲ免スト雖モ。仍ホ追究明白シテ。各本法ヲ尽ス。其謀故殺ヲ犯ス者ハ。此限ニ在ラス。 *再犯加等罪例条例 第八十六条 凡減一等赦前後ニ。盗ヲ犯ス者ハ。赦後ノ贓ヲ以テ。赦前ノ贓ニ併セ。罪。一等ヲ減ス。若シ併セテ。赦後ノ本贓ト。罪。等キ者ハ減セス。例。首従贓並発者ト同シ。 第八十七条 凡徒限内ニ逃走シ。外ニ在テ。又罪ヲ犯ス者。徒罪以下。杖笞ニ至ルマテ。並ニ。徒一等ヲ加フル律ヲ改メ。懲役人逃条例ニ依テ科断ス。 称同罪条例 第八十八条 凡正犯ノ財ヲ受ケ。故縦スル同罪者。正犯。死ニ至レハ。同罪者ハ。絞ニ処スル律ヲ改メ。懲役終身ニ従フ。 第八十九条 凡盗ニ準シテ論スル罪ハ。犯数ニ計ヘス。罪。懲役十年ニ止ル 第九十条 凡詐欺恐喝取財等。盗ニ準スル罪。士族ハ。破廉恥甚ヲ以テ論ス。其棄毀器物等。盗ニ準シ。及ヒ枉法ニ準スル罪ハ。破廉恥甚ノ限ニ在ラス。 称日者以二十四時条例原称日者以十二時律 第九十一条 凡一日ト称スル者ハ。十二時ヲ以テスル律ヲ改メ。二十四時ト為シ。一年ト称スル者ハ。三百六十日ヲ以テスル律ヲ改メ。三百六十五日ト為シ。閏年ハ。一日ヲ加算シ。半年ト称スル者ハ。六個月ヲ以テス。 第九十二条 凡年七十以上。十五以下ト称スル者ハ。生年本年ノ月数ヲ通算シテ。年。七十歳十五歳ニ満ル者ヲ謂フ。八十以上。十歳以下ト称スル等モ。亦之ニ準ス。 第九十三条 凡生年ヲ知テ。生月ヲ知ラサル者ハ。生年ヲ以テ。半年ト為シテ。計算ス。 第九十四条 凡懲役ノ年限ヲ算スル。其断了。陽暦頒降以前ニ在ル者ハ。名例。一年三百六十日ノ数ヲ以テ放還シ。頒暦以後ニ在ル者ハ。条例三百六十五日ノ数ヲ以テ放還ス。 称両者以金両条例 第九十五条 凡律ニ両ト称スル者。改テ円ト称ス。 称等内人条例 第九十六条 凡等内人ト称スル者ハ。初位以上ヲ謂フ律ヲ改メ。官十五等以上ヲ謂フ。 称雇人条例原称奴婢雇人律 第九十七条 凡官吏華士族ノ家ニ。給侍役使スル男女ヲ。奴婢ト称シ。卒庶人ノ家ニ。役使スル者ハ。雇人ト称スル律ヲ改メ。倶ニ。雇人ト称ス。其各律ニ。分別軽重アル者モ。一体ニ。雇人ノ権衡ニ従ヒ科断ス。若シ但タ奴婢ト単称シテ。雇人ヲ挙サル者ハ。改正各条ニ依リ科断ス。 第九十八条 凡勅奏官位ノ執事。及ヒ華族ノ家令扶従ハ。本籍。平民ト雖モ。家長ニ代ル公事ニ係レハ。倶ニ。士族ニ準ス。其私事ニ係ル者ハ。各本籍ヲ以テ処分ス。 断罪無正条条例 第九十九条 凡律例ニ罪名ナク。令ニ制禁アリ。及ヒ制禁ナキ者。各所犯ノ軽重ヲ量リ。不応為違令違式ヲ以テ論シ。情罪重キ者ハ。違制ニ問擬ス。 断罪依新頒律条例 第百条 凡例モ。亦頒降ノ日ヨリ始ト為スト雖モ。若シ事犯。頒例以前ニ在テ。原律罪名軽キ者ハ。仍ホ原律ニ依テ定擬ス。 職制律 棄毀官文書条例 第百一条 凡官庁ノ通行印鑑ヲ遺失シ。及ヒ誤毀スル者ハ。懲役十日。 第百二条 凡官司ノ密事ヲ漏泄スル者ハ。懲役一年。軽キ者ハ。一等ヲ減ス。 第百三条 凡官ノ印ヲ棄毀スル者ハ。懲役二年。遺失シ。及ヒ誤毀スル者ハ。懲役百日。院省寮司府県ノ印ハ。各二等ヲ減シ。余ノ印ハ。各五等ヲ減ス。規避スル所アル者ハ。各重キニ従テ論ス。 無故不朝参公座条例 第百四条 (原書此処七行ノ空罫ナリ) 改正私借官物律 第百五条 凡監臨。主守。監守スル所ノ。官ノ財物ヲ。私ニ借用シ。若クハ人ニ転借シ。及ヒ自己ノ物ヲ以テ。官物ニ抵換スル者ハ。監守自盗ト罪同。其監守人ニ非スシテ借用シ。情ヲ知ル者ハ。罪同。知ラサル者ハ。坐セス。 私借官物条例 第百六条 凡監臨。主守。監守スル所ノ銭糧ヲ。私ニ借用シ。若クハ人ニ転借シ。及ヒ之ヲ借ル者。事未タ発覚セスシテ。完備スル者ハ。止タ犯情ヲ量リテ。不応為ニ問ヒ。軽重ヲ分ツ。 不覚被盗条例 第百七条 凡垣墻内ニ在ル。木石等ヲ盗ミ。主守。覚察ニ失スル者ハ。懲役二十日。 戸婚律 欺隠田糧条例 第百八条 凡税糧ヲ納ムルニ。限ニ違フテ。完セサル者ハ。明治五年第二百八十五号布令ニ依テ処分ス 第百九条 凡田宅版籍ノ文字ヲ変易スル者ハ。懲役一年半。財ヲ得ル者ハ。贓ニ計ヘ。窃盗ニ準シ。重キニ従テ論ス。 棄毀器物稼穡条例 第百十条 凡牛馬ヲ失防シテ。田野ノ穀麦ヲ毀損スル者ハ。違式軽ニ依リ。若シ毀損スル所。贓ニ計ヘテ重キ者ハ。坐贓ニ依リ。二等ヲ減シ。仍ホ毀損スル所ノ物ヲ。賠償セシム。 第百十一条 凡故ナク。河防ヲ決潰シ。水柵。石篭ヲ毀損スル者ハ。情ヲ量リテ。不応為ニ問ヒ。軽重ヲ分ツ。 立嫡違法条例 第百十二条 凡子女ヲ棄ル者ハ。父母。養父母ヲ分タス。並ニ。懲役百日。継父母ハ。一等ヲ加フ。雇ヲ受ケ棄ル者ハ。懲役九十日。婦女ト雖モ。収贖スルコトヲ聴サス。 第百十三条 凡財ヲ図リ。人ノ子女ヲ乞養シテ棄ル者ハ。懲役十年。婦女ト雖モ。収贖スルコトヲ聴サス。殺ス者ハ。斬。 第百十四条 凡故サラニ。堕胎スル者ハ。懲役百日。情ヲ知テ。薬ヲ売リ。及ヒ技術ヲ施ス者ハ。同罪。婦女ト雖モ。収贖スルコトヲ聴サス。 子弟私擅用財条例 第百十五条 凡同居ノ卑幼。尊長ニ由ラスシテ私擅ニ。家ノ財物ヲ用フル者ハ。子弟私擅用財律ニ依ル。 第百十六条 凡僧尼。師ノ財物ヲ盗ム者ハ。子弟私擅用財律ニ依ル。同居ノ徒弟。相盗ム者ハ。親属相盗律ニ依リ。凡人ニ。三等ヲ減ス。其各居ニ係ル者ハ。師弟ト雖モ。並ニ凡盗ヲ以テ論ス。 逃亡条例 第百十七条 凡脱籍逃亡シテ。二年以外。復帰セサル者ハ。律ニ依テ。科断シ。華士族ハ。破廉恥甚ヲ以テ論ス。 第百十八条 凡逃亡シテ。二年以外。復帰シ。及ヒ自首スル者ハ。首免ヲ聴サスト雖モ。平民ハ。贖罪ニ処シ。華士族ハ。族ヲ復シテ。禄ヲ給セス。 第百十九条 凡逃亡スル者。再犯以上ハ。一等ヲ累加シ。罪。懲役一年ニ止ル。 第百二十条 凡官庁ニ。陳告セスシテ。私擅ニ。他管ニ出テ。五十日ヲ過ル者ハ。違令重ニ問フ。 第百二十一条 凡外国ニ逃亡スル者ハ。逃亡罪ニ。二等ヲ加フ。 賊盗律 盗大祀神御物条例 第百二十二条 凡大祀大社ノ神御神宝ヲ盗ム者ハ。皆絞。改テ懲役終身。 第百二十三条 凡伊勢神宮。及ヒ宮中神殿ノ神御神宝ヲ盗ム者ハ。例ニ依リ。懲役終身ニ処スル外。官幣。国幣。大社ノ神御神宝ヲ盗ム者ハ。懲役十年。中社ハ。懲役三年。小社ハ。懲役二年半。府県社ハ。懲役百日。郷社ハ。懲役九十日。贓ニ計ヘ。重キ者ハ。各盗罪ヲ以テ論ス。 盗乗輿服御物条例 第百二十四条 凡乗輿ノ服御物ヲ盗ム者ハ。皆絞。改テ懲役終身。 盗官印条例 第百二十五条 凡私ノ印ヲ盗ム者ハ。懲役七十日。因テ財ヲ得ル者ハ。贓ニ計ヘ各盗罪ヲ以テ。重キニ従テ論ス。 *常人盗条例 第百二十六条 凡常人。官ノ財物ヲ盗ム者。二百五十両以上。絞ニ処スル律ヲ改メ。二百五十円以上。懲役終身。三百円以上。絞。 ×改正強盗律 第百二十七条 凡強盗。兇器ヲ持セス。威力ヲ以テ人ヲ劫シ。財ヲ得サル者ハ。皆懲役二年。財ヲ得ル者ハ。贓ヲ分タスト雖モ。贓ヲ併セ。首従ヲ分タス罪ヲ科ス。人ヲ殺ス者ハ。皆斬。人ヲ傷スル者ハ。皆絞。其殺傷ニ与ラサル者ハ。止タ盗罪ヲ科ス 其兇器ヲ持スル者ハ。財ヲ得スト雖モ。首ハ。絞。従ハ。懲役終身。財ヲ得ル者ハ。皆斬。其財ヲ得スト雖モ。人ヲ殺傷スル者。亦同シ。 其薬酒等ヲ以テ。人ヲ酔迷セシメ。財ヲ図ル者ハ。不持兇器ヲ以テ論ス。 若シ盗ニ因テ奸スル者ハ。成否ヲ論セス。絞。 不持兇器 五円以下。懲役二年半 五円以上。懲役三年 十円以上。懲役五年 十五円以上。懲役七年 二十円以上。懲役十年 三十円以上。懲役終身○再犯ハ。財ヲ得スト雖モ。懲役終身。 強盗条例 第百二十八条 凡強盗。未タ室ニ入リ財ヲ捜セス。外ニ在テ瞭望シ。財物ヲ接逓スル者ハ。贓ヲ分チ。分タサルヲ論セス。本犯ニ。一等ヲ減ス。其造意者ハ。此限ニ在ラス。 第百二十九条 凡強盗。脅誘セラレ。畏惧随行シテ。室ニ入リ。贓ヲ分ツ者ハ。本犯ニ。二等ヲ減ス。若シ室ニ入ルト雖モ。贓ヲ分タス。及ヒ止タ外ニ在テ瞭望シ。財物ヲ接逓スル者ハ。贓ヲ分チ。分タサルヲ論セス。並ニ三等ヲ減ス。 第百三十条 凡強盗。未タ行ハスト雖モ。已ニ途ニ在テ。捕ニ就キ。盗情顕跡アル者。持兇器ハ。懲役三年不持兇器ハ。懲役百日。 第百三十一条 凡強窃盗。同居ノ父母兄弟姉妹等。情ヲ知テ。贓ヲ分ツ者ハ。凡人ト同ク。分ツ所ノ贓ヲ計ヘ。窃盗ニ準シ。従ト為シテ論ス。 第百三十二条 凡失火。及ヒ破船等ノ難ニ乗シ。財物ヲ窃取スル者ハ。窃盗ヲ以テ論シ。搶奪スル者ハ。強盗ヲ以テ論ス。 第百三十三条 凡盗犯。門戸墻壁ヲ破壊シ。人ノ覚知スルコトヲ畏憚セサル者ハ。強盗ヲ以テ論シ。若シ火ヲ用ヒ鎖鑰ヲ燬損シ。及ヒ鑿鋸等ヲ以テ。戸壁ヲ穿ツト雖モ。強劫放火ノ情ナキ者ハ。仍ホ窃盗ヲ以テ論ス。 劫囚条例 第百三十四条 凡囚ヲ劫スル者ハ。皆流二等。改テ懲役十年。人ヲ傷シ。及ヒ死囚ヲ劫スル者ハ。皆絞。改テ懲役終身。 窃盗条例 第百三十五条 凡窃盗。三百円以上。及ヒ三犯五十円以上。絞ニ処スル律ヲ改メ。並ニ。懲役終身。 第百三十六条 凡窃盗。再犯。財ヲ得サル者ハ。律ニ依リ。一等ヲ加ヘ。三犯以上。財ヲ得サル者ハ。懲役三年。 第百三十七条 凡二人以上。共ニ窃盗ヲ為シ。事主ニ覚逐セラレテ。一人ハ。逃走シ。一人ハ。抗拒スレハ。抗拒スル者ヲ以テ。罪人拒捕律ニ科ス。 第百三十八条 凡事主。盗犯ヲ捕得シテ。私縦私和スル者ハ。情ヲ量リ。違式軽重ニ問ヒ。贖フコトヲ聴ス。若シ別ニ。財ヲ受ル者ハ。贓ニ計ヘ。枉法ニ準シ。財ヲ過スル人ハ。説事過銭ニ準シ。各重キニ従テ論ス。 第百三十九条 凡盗贓ヲ以テ。窃ニ事主ニ投還スル者ハ未得財ヲ以テ論シ。懲役四十日。若シ贓。虧缺スルコトアル者ハ。虧缺スル所ノ数ヲ計ヘ。盗罪ヲ科ス。 盗官私牛馬条例 第百四十条 凡官私牧場ノ牛馬ヲ盗ム者ハ。律ニ照シテ罪ヲ科シ。懲役十年ニ止ルヲ除ク外。其官ノ厩闌ノ牛馬ヲ盗ム者ハ。常人盗ヲ以テ論シ。監守人。自ラ盗ム者ハ。監守盗ヲ以テ論シ。民間厩闌ノ牛馬ハ。窃盗ヲ以テ論ス。若シ盗テ殺ス者。官ニ係ルハ。懲役一年。私ニ係ルハ。一等ヲ減ス。贓ニ計ヘ。本罪ヨリ重キ者ハ。前ニ照シ。各盗罪ヲ以テ論シ。一等ヲ加フ。 第百四十一条 凡官ノ牛馬ヲ故殺スル者ハ。懲役百日。民間ノ牛馬ハ。一等ヲ減ス。若シ贓ニ計ヘ。本罪ヨリ重キ者。官ニ係ルハ。常人盗ニ準シ。私ニ係ルハ。窃盗ニ準シテ論シ。並ニ。罪。懲役十年ニ止ル。 親属相盗条例 第百四十二条 凡文武百工技芸ノ人。受業師ノ財物ヲ窃取スル者ハ。窃盗ニ準シテ論シ。罪。懲役十年ニ止ル其各居ニ係ル者ハ。窃盗ヲ以テ論ス。若シ強奪スル者ハ。凡人強盗ヲ以テ論ス。 改正雇人盗家長財物律原奴婢盗家長財物律 第百四十三条 凡雇人。家長ノ財物ヲ盗ム者ハ。常人盗ヲ以テ論シ。管守者自ラ盗ム者ハ。監守盗ヲ以テ論ス。若シ管守者。私ニ自ラ借用シ。及ヒ人ニ転借餽送スル者。罪。亦同。 雇人盗家長財物条倒 第百四十四条 凡客廛。倉戸。及ヒ工人。舟子脚夫。馬丁。車力等。一時雇ヲ受クル者ト雖モ。其寄託スル所ノ財物ヲ盗ムハ。並ニ。管守者ト罪同。 略売人条例 第百四十五条 凡人ヲ略売シテ。雇人ト為ス者ハ。懲役二年半。其賎辱虐使ヲ受シムル者ハ。為娼妓律ニ依ル。 第百四十六条 凡妻ヲ略売シテ。娼妓ト為ス者ハ凡人略売法ニ依ル。和売スル者ハ。懲役七十日。 第百四十七条 凡子孫ヲ略売シテ。娼妓ト為ス者ハ。懲役五十日。妹。姪。及ヒ外孫ハ。各二等ヲ加フ 第百四十八条 凡人ヲ略シテ。自己ノ妻妾雇人ト為ス者ハ。略売ト罪同シ。 第百四十九条 凡人ノ妻ヲ略シテ。他人ノ妻妾ト為シ。及ヒ自己ノ妻妾ト為ス者ハ。懲役五年。人ノ妾ヲ略シテ妻妾ト為ス者ハ。懲役三年。和誘スル者ハ。各一等ヲ減シ。誘セラルヽ婦女ハ。各三等ヲ減ス。 第百五十条 凡人ヲ略シテ。外国人ニ売ル者ハ。成否ヲ論セス。皆懲役十年。因テ人ヲ傷スル者ハ。皆懲役終身。殺ス者ハ。皆斬。其和誘スル者ハ。一等ヲ減シ。誘セラルヽ人ハ。三等ヲ減ス。若シ子孫ヲ略シテ。外国人ニ売ル者ハ。懲役一年。和売スル者ハ。一等ヲ減ス。和略。未タ成ラサル者ハ。和略ノ罪ニ。又一等ヲ減ス。売ラルヽ卑幼ハ。和スト雖モ。坐セス。若シ外国人ヲ買フ者ハ。前ニ照シテ。各一等ヲ減ス。 兇徒聚衆条例 第百五十一条 凡兇徒聚衆ノ従ニシテ。情軽キ者ハ。懲役三年。 第百五十二条 凡附和随行シテ。火ヲ放ツ者ハ。従ニシテ火ヲ放ツ者ニ。二等ヲ減シ。懲役十年。其脅誘セラレテ。火ヲ放ツ者ハ。懲役三年。其余。墻屋ヲ毀ツ者ハ。不応為重ニ問フ。其止タ場ニ在テ。勢ヲ助クル者ハ。勿論ノ律ヲ改メ。違令ニ問ヒ。軽重ヲ分チ。贖罪スルコトヲ聴ス。 第百五十三条 凡衆ヲ聚メ。訟ヲ搆ヘ。官ニ強逼スト雖モ。良民ヲ擾害スルニ至ラサル者。首ハ。懲役十年。従ハ。一等ヲ減ス。従ニシテ。情軽キ者ハ。二等ヲ減ス。 第百五十四条 凡地方官。督撫ニ失シ。民衆ノ騒擾ヲ致シ。及ヒ兇徒衆ヲ聚メテ。潜匿スルコトヲ覚察セス。却テ他管ニ覚知セラルヽ者ハ。懲役百日。軽キ者ハ。懲役七十日。 夜無故入人家条例 第百五十五条 凡黒夜。田野ノ穀麦菜菓ヲ窃取シ。或ハ。白日。人家ニ入リ。及ヒ市井田野。人ノ看守スル器物ヲ盗ムニ。事主。看守人。追捕殴打シテ。死ニ至ル者ハ。盗所ヲ離ルヽト。否ト。贓ヲ得ルト。否トヲ問ハス。懲役二年。其已ニ拘獲ニ就クヲ。復タ畳殴シ。若クハ。事後殴打シテ。擅ニ殺傷スル者。折傷以上ハ。闘殴傷ニ。一等ヲ減ス。若シ盗犯。兇器ヲ持シ。拒捕スルニ。即時挌闘殺死スル者ハ。罪人拒捕律ニ依ル。 盗賊窩主条例 等百五十六条 凡盗贓タルコトヲ知テ典売ノ牙保ヲ為ス者ハ。典売スル所ノ数ヲ計ヘ。坐贓ヲ以テ論シ。一等ヲ減ス。若シ別ニ。金ヲ受ル者ハ。窃盗ニ準シ。従ト為シ。重キニ従テ論ス。 第百五十七条 凡典舗。盗贓タルコトヲ知ラスト雖モ。牙保ナクシテ。典買スレハ。物ヲ追シテ。本主ニ給ス。若シ牙保。及ヒ回暦ヲ借ス者アレハ。価ヲ償ハシム。其償フコト能ハサル者ハ。直チニ典舗ヨリ追ス。 第百五十八条 凡恐喝詐欺。枉法。不枉法ノ贓タルコトヲ知テ。受ル者ハ。坐贓ヲ以テ論シ。故買スル者ハ。坐贓ニ。一等ヲ減シ。寄蔵スル者ハ。又一等ヲ減ス。知ラサル者ハ坐セス。 第百五十九条 凡盗贓タルコトヲ知テ。故買スル者。再犯以上ハ。一等ヲ累加シ。罪。懲役三年ニ止ル。其知テ寄蔵シ。及ヒ牙保スル者モ。亦並ニ。一等ヲ累加シ。罪。懲役二年半ニ止ル。 改定律例巻一 改定律例巻二目録 人命律計四十八条 謀殺五条 謀殺官吏三条 謀殺祖父母父母一条 殺死奸夫四条 殺一家三人一条 毒薬殺人一条 闘殴及故殺五条 屏去服食一条 過失殺傷人二条 殴死有罪妻妾一条 殺雇人二条 将屍図頼一条 弓銃殺傷人三条 車馬殺傷人二条 瘋癲殺人六条 謀同死二条 私和人命一条 移地界内死屍六条 同行知有謀害一条 闘殴律計二十六条 闘殴七条 宮殿内忿争一条 殴官吏三条 殴受業師一条 殴家長二条 殴夫一条 殴傷妻妾一条 殴三等親以下尊長二条 殴二等親尊長二条 殴祖父母父母三条 妻妾与夫親属相殴一条 父祖被殴二条 罵詈律計五条 罵官吏四条 罵祖父母父母一条 訴訟律計三条 誣告一条 干名犯義一条 子孫違教一条 受贓律計四条 官吏受財一条 事後受財一条 以財請求一条 受外国人餽送一条 詐偽律計十四条 詐為官文書一条 対詔上書詐不以実一条 偽造官印一条 偽造宝貨十条 詐称官一条 犯奸律計九条 犯奸一条 親属相奸一条 奸家長妻一条 奸部民妻一条 居喪犯奸一条 犯奸条例四条 雑犯律計二十三条 賭博四条 失火五条 放火四条 得遺失物五条 違令二条 不応為三条 捕亡律計二十条 追捕罪人一条 獄囚脱監及反獄逃走五条 懲役人逃十条 主守不覚失囚三条 蔵匿罪人一条 断獄律計七条 与囚金刃二条 出入人罪二条 死囚奏請待報一条 断罪不当二条 改定律例巻二 人命律 謀殺条例 第百六十条 凡人ヲ殺サント謀リ。未タ行ハスト雖モ。謀状。顕跡アル者。首ハ。懲役百日。従ハ。懲役五十日。 第百六十一条 凡謀殺。已行未行ノ罪犯。並ニ。罪。死ニ至ラサル者。処断シ訖レハ。親属隣佑ニ。再犯ノ念ナキコトヲ。保証セシメ。始テ放還スルコトヲ聴ス。若シ保人ナケレハ。獄則ニ照シテ。懲治監ニ入レ。悔過ノ日ヲ待チ。始テ放還スルコトヲ聴ス。 第百六十二条 凡人ヲ殺サント謀リ。巳ニ行フテ。其人。知覚奔逃シ。未タ傷ヲ受ケスト雖モ。失跌。及ヒ堕水等。奔脱ニ因テ。他所ニ死スル者。造意者ハ。懲役十年。従タル者ハ。懲役三年。若シ兇悍ニ迫ラレテ。当時失跌シテ死スル者。造意者ハ。絞。従タル者ハ。懲役十年。 第百六十三条 凡人ヲ謀殺セント欲シテ。謀ヲ挙ル時。其謀ラルヽノ人。謀機ヲ知覚シテ。却テ謀者ヲ殺ス者ハ。故殺律ニ依リ。已ニ行フ時ニ臨ミ。却テ殺ス者ハ。罪人不拒捕而殺律ニ依リ。殺スノ時ニ臨ミ。却テ殺ス者ハ。捕吏挌殺律ニ依リ。論スルコト勿レ。 第百六十四条 凡嬰児ヲ殺ス者ハ。各等親ニ照シ。謀故殺本条ニ依テ。科断ス。若シ穏婆。嘱託ヲ受テ殺ス者ハ。嘱託スル者ト。同罪。 謀殺官吏律原謀殺本属長官律 第百六十五条 凡勅任官ヲ謀殺スルニ。已ニ行フ者。首ハ。懲役十年。従ハ。懲役七年。已ニ傷スル者。首ハ。斬。従ニシテ。加功スル者ハ。懲役終身。加功セサル者ハ。懲役十年。已ニ殺ス者ハ。皆斬。 若シ奏任官ヲ謀殺スルニ。已ニ行フ首ハ。懲役七年。従ハ。懲役五年。已ニ傷スル者。首ハ。絞。従ニシテ加功スル者ハ。懲役終身。加功セサル者ハ。懲役十年。巳ニ殺ス者ハ。皆斬。 若シ判任官ヲ謀殺スルニ。巳ニ行フ者。首ハ。懲役五年。従ハ。懲役三年。巳ニ傷スル者。首ハ。絞。従ニシテ。加功スル者ハ。懲役終身。加功セサル者ハ。懲役十年。巳ニ殺ス者ハ。皆斬。 謀殺官吏条例 第百六十六条 凡判任官。勅任官ヲ謀殺スルニ。巳ニ行フ者。首ハ。懲役七年。従ハ。懲役五年。巳ニ傷スル者。首ハ。絞。従ニシテ。加功スル者ハ。懲役終身。加功セサル者ハ。懲役五年。巳ニ殺ス者ハ。皆斬。若シ奏任官ヲ謀殺スルニ。巳ニ行フ者。首ハ。懲役五年。従ハ。懲役三年。巳ニ傷スル者。首ハ。絞。従ニシテ加功スル者ハ。懲役終身。加功セサル者ハ。懲役五年。巳ニ殺ス者ハ。皆斬。 第百六十七条 凡奏任官。勅任官ヲ謀殺スル者ハ。判任官。奏任官ヲ謀殺スルト。罪同シ。其勅任官。奏任官ヲ謀殺シ。及ヒ奏任官。判任官ヲ謀殺スル者ハ。凡人謀殺ヲ以テ論ス。 謀殺祖父母父母条例 第百六十八条 凡祖父母。父母。及ヒ伯叔父。姑。兄。姉。若クハ外祖父母。夫。夫ノ祖父母。父母ヲ謀殺スルニ。已ニ行フ者ハ。皆斬ニ処スル律ヲ改メ。皆絞。 殺死奸夫条例 第百六十九条 凡奸夫。自ラ本夫ヲ殺ス者ハ。奸婦。情ヲ知ラスト雖モ。絞。改テ懲役終身。 第百七十条 凡奸婦。自ラ本夫ヲ殺ス者。奸夫。果シテ情ヲ知ラサレハ。止タ奸罪ヲ科ス。 第百七十一条 凡奸婦。過ヲ悔ヒ。拒絶スル後。奸夫。奸好ノ続キ難キヲ憤リ。本夫。及ヒ祖父母。父母ヲ殺死スル者。拒絶ノ証拠。明白ナレハ。婦女ハ。止タ奸罪ヲ科ス。 第百七十二条 凡奸夫。奸婦。奸所ニ於テ。本夫ニ撞見セラレ。直ニ脱逃スルニ。本夫。即時逐テ門外ニ至リ殺ス者ハ。奸所ト同シ。若シ奸所。及ヒ即時ニ非スシテ。奸夫ヲ殺傷スル者。審糾スルニ。奸情確実ナレハ。闘殺傷ニ。二等ヲ減ス。止タ奸婦ヲ殺傷スル者。折傷以上ハ。闘殺傷ニ。五等ヲ減ス。奸夫ハ和奸本条ニ依ル。若シ奸情曖昧。確拠ナクシテ男婦ヲ殺傷スル者ハ。各謀故闘殺傷本条ニ依ル。 殺一家三人条例 第百七十三条 凡一家ノ死罪ニ非サル。三人以上ヲ殺スト称スルハ。雇人ト雖モ。同居ニ係ル者。及ヒ同居セスト雖モ。父子兄弟等。至親ニ係ル者。皆是ナリ。 毒薬殺人条例 第百七十四条 凡人ヲ殺スノ心ナシト雖モ。毒薬ヲ用ヒテ。故ラニ。疾苦セシムル者ハ。懲役八十日。 闘殴及故殺条例 第百七十五条 凡闘殴。人ヲ殺ス者ハ。絞。改テ懲役終身。 第百七十六条 凡乱殴シテ。人ヲ殺シ。傷ノ先後軽重ヲ知ラサル者。原謀アレハ原謀者ヲ。懲役終身ニ処ス。若シ原謀。共ニ殴サレハ。初闘者ヲ懲役終身ニ処シ。原謀者ハ懲役十年。余人ハ。並ニ。懲役九十日。 第百七十七条 凡乱殴シテ。人ヲ殺シ。先後軽重ヲ知ラサル者。若クハ。原謀。同夥。共ニ殴テ。各致命重傷ヲ為ス者。一人。実ニ罪ヲ畏レテ自尽シ。及ヒ已ニ獄ニ在リ。或ハ。押解中途ニ在リテ。病斃スル者アレハ。一等ヲ減シ。懲役十年ニ処ス。 第百七十八条 凡同謀。共ニ人ヲ殴チ。傷。皆致命ニシテ。即時身死スレハ。後ニ手ヲ下シ。傷ヲ成スコト重キ者ヲ。懲役終身ニ処ス。若シ時日ヲ経テ。身死スルニ至ル者ハ。何傷。死ニ致スコトヲ究明シテ。傷ヲ成スコト重キ者ヲ。懲役終身ニ処ス若シ原謀。共ニ殴テ。亦致命重傷ヲ為スニ係ラハ。原謀者ヲ。懲役終身ニ処ス。 第百七十九条 凡人ト争論闘殴シテ。臨時殺意ヲ起シ。人ヲ殺ス者ハ。故殺ニ坐ス。若シ争闘ノ後。仍ホ余怒ヲ尋キ。追逐シテ兇殺シ。及ヒ争闘ニ因ルニ非スト雖モ。臨時殺意ヲ起シテ殺ス者。預謀ノ顕跡ナキハ。並ニ。故殺ヲ以テ論ス。其傷シテ。死セサル者ハ。仍ホ闘殴傷ニ依ル。 屏去服食条例 第百八十条 凡人ノ服用。飲食ノ物ヲ屏去シ。若クハ。物ヲ以テ。人ノ耳鼻。及ヒ孔竅中ニ置キ。因テ死ニ至ル者ハ。絞。改テ懲役終身。若シ謀故ノ情アル者ハ。各本律ニ依ル。 過失殺傷人条例 第百八十一条 凡過失殺傷収贖ハ。官吏。華士族。平民ヲ分タス一体ニ。本図ニ照シ。追シテ其家ニ給ス。 第百八十二条 凡一人。二人ヲ過失殺スル者ハ例ニ照シ。金八十円ヲ収贖シテ。均シク二人ニ分給シ。二人。一人ヲ過失殺スル者ハ。金四十円ヲ二人ニ分追シテ。一人ニ給付ス。一人。二人ヲ傷シ。二人。一人ヲ傷スル者モ。亦此例ニ依ル。 殴死有罪妻妾条例 第百八十三条 凡妻妾。夫ノ祖父母。父母ヲ。殴罵スルニ因テ。夫。官ニ告ケス。擅ニ殺ス者ハ。杖九十改テ懲役一年。其傷スルニ因テ擅ニ殺ス者ハ。懲役九十日。 改正殺雇人律原殺奴婢律 第百八十四条 凡雇人。死罪ヲ犯スニ。家長。官ニ告ケス。擅ニ殺ス者ハ。懲役八十日。 第百八十五条 凡家長。雇人ヲ殴チ。死ニ至ル者ハ。流一等。改テ懲役十年。 将屍図頼条例 第百八十六条 凡雇人。已ニ死スル家長ノ屍ヲ将テ。人ニ図頼スル者ハ。懲役百日。 改正弓銃殺傷人律 第百八十七条 凡故ナク。弓箭銃砲ヲ放チ。及ヒ剣刃ヲ挺ク者ハ。人ヲ傷セスト雖モ。杖六十。改テ懲役三十日。傷スル者ハ。凡闘殴傷ヲ以テ論ス。因テ死ニ致ス者ハ。絞。改テ懲役終身。 第百八十八条 凡曠野無人ノ地ニ於テ。故ナク。弓銃ヲ放チ。因テ人ヲ殺傷スル者ハ。過失殺傷ヲ以テ論ス。 第百八十九条 凡弓銃ヲ放チ。及ヒ剣刃ヲ挺ク者。華士族ハ。破廉恥甚ヲ以テ論スル律ヲ改メ。一体ニ。閏刑ニ処ス。 車馬殺傷人条例 第百九十条 凡深山。曠野。猛獣ノ往来スル処ニ於テ。阬穽ヲ穿作シ。及ヒ窩弓ヲ安置シテ。望竿。及ヒ抹眉索ヲ立サル者ハ懲役四十日。以テ人ヲ傷スル者ハ。闘殴傷ニ四等ヲ減ス。減シテ本罪ヨリ軽キ者ハ。本罪ニ依テ論シ。死ニ致ス者ハ。懲役三年。仍ホ埋葬金二十五円ヲ追シテ。死者ノ家ニ給付ス。若シ深山曠野ニ非スシテ。人ヲ殺傷スル者ハ。車馬殺傷人律ニ依ル。 第百九十一条 凡窩弓。人ヲ殺ス者。例ニ依リ。罪ヲ科スト雖モ。貧困ニシテ。埋葬金ヲ追スルコト能ハサレハ。其雇工銭ノ全数ヲ領置シ。食費ヲ除キ。余ル所ノ雇銭。金二十五円ニ満レハ。死者ノ家ニ給シ仍ホ役限ハ。本法ヲ尽ス。 瘋癩殺人条例 第百九十二条 凡瘋癲人。人ヲ殺シ。埋葬金二十五円ヲ追スル者。改テ。過失殺収贖例ニ照シ。四十円ヲ追シテ。死者ノ家ニ給付ス。其人ヲ傷スル者ハ。並ニ過失傷収贖例ニ照シ。追シテ傷者ニ給シ。医薬ノ資ト為ス。 第百九十三条 凡瘋癲人。二命以上ヲ連殺スル者ハ。絞。改テ。鎖錮終身。 第百九十四条 凡瘋癲人。祖父母。父母ヲ殺ス者ハ鎖錮終身。 第百九十五条 凡瘋癲人。人ヲ殺ス者ハ。鎖錮終身ニ処スト雖モ。若シ果シテ。痊愈スレハ。親属隣佑ノ保証ヲ取リ。懲役五年ニ改正シ。限満テ放還ス。 第百九十六条 凡瘋癲人。自殺ヲ致スニ。看守人。失察スル者ハ。懲役二十日。若シ人ヲ傷スルニ至ラシムル者ハ。懲役四十日。 第百九十七条 凡瘋癲人。人ヲ殺ス者。孤独貧困ニシテ。親属ノ保管スル者ナケレハ。鎖錮ヲ禁獄ニ換ヘ。埋葬金ヲ追セス。 謀同死条例 第百九十八条 凡奸夫。奸婦。同ク謀リ。堕胎スルニ。奸婦。身死スル者。奸夫ハ。流三等。改テ懲役三年。 第百九十九条 凡奸夫。奸婦。同死ヲ謀リ。傷スト雖モ。人ニ阻救セラレ。未タ死セサル者ハ。闘殴傷ニ。一等ヲ減ス。 私和人命条例 第二百条 凡家長。人ニ殺サレ。雇人。私和スル者ハ。懲役百日。若シ雇人。人ニ殺サレ。家長。私和スル者ハ。懲役七十日。 移地界内死屍条例 第二百一条 凡墳塚ヲ発掘シテ。棺槨ヲ見ハス者ハ。懲役一年。已ニ開テ。屍ヲ見ハス者ハ。懲役三年。屍ヲ残毀スル者ハ。懲役五年。 第二百二条 凡地界内ニ。死屍アルヲ。輙ク水中ニ棄ルト雖モ。未タ屍ヲ失サル者ハ。律ニ照シテ。一等ヲ減シ。懲役九十日。 第二百三条 凡子孫ノ死屍ヲ棄ル者ハ。懲役七十日。 第二百四条 凡変死ニ係ル屍ハ。官ノ検視ヲ経ルニ非レハ。私擅ニ埋葬スルコトヲ聴サス。違フ者ハ。懲役四十日。 第二百五条 凡人ヲ押解シ。中途ニ在リテ病斃スルヲ。輙ク棄去ル者ハ。移地界内死屍律ニ。一等ヲ加ヘ。懲役八十日。 第二百六条 凡地界内ニ棄児アリ。及ヒ病ニ因リテ。昏倒スルヲ。輙ク他所ニ移ス者ハ。懲役七十日。 同行知有謀害条例 第二百七条 凡同行謀害アルコトヲ知テ。阻当救護セスト雖モ。已ニ害セラルヽ後。首告スル者ハ。其罪ヲ免ス。 闘殴律 闘殴条側 第二百八条 凡闘殴成傷ト称スルハ。殴ツ所ノ皮膚。色。青赤ニシテ。腫起スル者ヲ謂フ。刀ヲ持シ人ヲ傷スト雖モ。其背柄ヲ以テ。殴チ。刃ヲ用ヒサレハ。仍ホ槌棒ト同ク論ス。 第二百九条 凡闘殴。髪。方寸以上ヲ抜ク者ハ。懲役四十日。若シ一時昏絶セシムル者ハ。懲役八十日。 第二百十条 凡二人。共ニ人ヲ殴チ。各一目ヲ瞎シ。盲ニ至ラシムルニ。先キニ殴ツ者ハ。廃疾律ニ依リ。懲役三年。後ニ殴ツ者ハ。篤疾律ニ依リ。懲役十年。仍ホ養贍金ヲ。二人ニ分追ス。若シ原謀者アレハ。倶ニ殴ツト。否トヲ問ハス。後ニ殴ツ者ニ。一等ヲ減ス 第二百十一条 凡婦女ヲ殴チ。堕胎セシムル者ハ。懲役二年。 第二百十二条 凡闘殴。人ヲ殺スニ。後ニ手ヲ下シテ。理直ナル者ハ。律ニ照シテ。懲役十年ニ科シ。仍ホ事情原諒ス可キ者ハ。又一等ヲ減ス。 第二百十三条 凡闘殴。後ニ手ヲ下シテ。理直ナル者ハ。減等シテ罪ヲ科シ。仍ホ。養贍。埋葬金両ヲ追給スル律ヲ改メ。止タ其罪ヲ科シテ金円ヲ追セス。 第二百十四条 凡闘殴。人ヲ傷スルニ。鎌刀。菜刀等ヲ用ヒ。傷軽キ者ハ。懲役七十日。仍ホ軽キ者ハ。三等ヲ減ス。 宮殿内忿争条例 第二百十五条 凡皇城門ニ。擅入スルハ者ハ。懲役五十日。宮殿ニ擅入スル者ハ。懲役百日。 殴官吏律原殴本属長官律 第二百十六条 凡勅任官ヲ殴ツ者ハ。懲役五年。傷スル者ハ。懲役十年。折傷以上ハ。絞。 若シ奏任官ヲ殴ツ者ハ。懲役二年。傷スル者ハ。懲役三年。折傷以上ハ。懲役七年。廃疾ハ。絞。 若シ判任官ヲ殴ツ者ハ。懲役九十日。傷スル者ハ。懲役一年。折傷以上ハ。懲役三年。廃疾ハ。懲役五年。篤疾ハ。絞。死ニ至ル者ハ。並ニ。斬。 殴官吏条例 第二百十七条 凡判任官。勅任官ヲ殴ツ者ハ。懲役九十日。傷スル者ハ。懲役一年半。折傷以上ハ。懲役五年。廃疾ハ。絞。若シ奏任官ヲ殴ツ者ハ。懲役七十日。傷スル者ハ。懲役百日。折傷以上ハ。懲役三年。廃疾ハ。懲役十年。篤疾ハ。絞。死ニ至ル者ハ。並ニ。斬。 第二百十八条 凡奏任官。勅任官ヲ殴ツ者ハ。判任官。奏任官ヲ殴ツト。罪同シ。其勅任官。奏任官ヲ殴チ。及ヒ奏任官。判任官ヲ殴ツ者ハ。並ニ。凡闘殴ヲ以テ論ス。 殴受業師条例 第二百十九条 凡受業師ヲ殴テ。死ニ至ル者ハ。斬。改テ。懲役終身。 殴家長条例 第二百二十条 凡雇人。家長ヲ殴チ。篤疾。及ヒ死ニ至ル者ハ。絞斬ニ処スル律ヲ改メ。倶ニ。懲役終身。 第二百二十一条 凡雇人。家長ノ教令ニ違犯スルニ。督責シテ。邂逅ニ。死ニ致ス者ハ。笞五十。改テ。懲役七十日。 殴夫条例 第二百二十二条 凡妻妾。夫ヲ殴テ。廃篤疾ニ至ル者ハ。絞ニ入ルヽ律ヲ改メ。倶ニ。懲役終身。妾ノ正妻ヲ殴ツ者モ。亦同シ。 殴傷妻妾条例 第二百二十三条 凡夫。妻ヲ殴チ。死ニ至ル者ハ。絞。改テ、懲役終身。其故殺スル者ハ。絞。若シ夫。妻ノ父母ヲ殴チ。篤疾。及ヒ死ニ至ル者ハ。絞斬ニ処スル律ヲ改メ。懲役終身。其故殺スル者ハ。斬。 殴三等親以下尊長条例 第二百二十四条 凡卑幼。三等親ノ尊長ヲ殴チ。篤疾ハ。絞。改テ。懲役終身。死ニ至ル者ハ。斬。改テ。絞。其故殺スル者ハ。斬。若シ尊長。三等親以下ノ卑幼ヲ殴チ。死ニ至ル者ハ。絞。亦改テ。懲役終身。其故殺スル者ハ。絞。 第二百二十五条 凡卑幼。三等親以下ノ尊長ヲ過失殺傷スル者ハ。並ニ凡人過失殺傷ヲ以テ論シ収贖スルコトヲ聴ス。 殴二等親尊長条例 第二百二十六条 凡卑幼。二等親ノ尊長。及ヒ外祖父母ヲ。過失殺傷スル者ハ。各本殺傷罪ニ。二等ヲ。減スル律ヲ改メ。殺ス者ハ。懲役二年。傷スル者ハ。懲役百日。並ニ収贖スルコトヲ聴サス。 第二百二十七条 凡弟妹。兄姉ヲ殴チ。篤疾ニ至ル者ハ。絞。改テ。懲役終身。死ニ至ル者ハ。皆斬。改テ皆絞。若シ姪。伯叔父姑ヲ殴チ。及ヒ外孫。外祖父母ヲ殴チ。篤疾及ヒ死ニ至ル者。罪亦同。 殴祖父母父母条例 第二百二十八条 凡子孫。祖父母父母ヲ殴チ。及ヒ妻妾。夫ノ祖父母父母ヲ殴ツ律ヲ改メ。殴ツ者ハ懲役十年。傷スル者ハ。懲役終身。死ニ至ル者ハ。皆斬。故殺スル者ハ。皆梟過失殺スル者ハ。懲役三年。傷スル者ハ。懲役一年並ニ収贖スルコトヲ聴サス 第二百二十九条 凡継母。前妻ノ子ヲ非理ニ殴打シテ。折傷以上ニ至ル者ハ。凡闘傷ニ。三等ヲ減シ。死ニ至ル者ハ。懲役七年。 第二百三十条 凡子孫。教令ニ違犯スト雖モ。祖父母父母。非理ニ殴殺スル者ハ。懲役二年半。 妻妾与夫親属相殴条例 第二百三十一条 凡妻妾。夫ノ二等親以下。四等親以上ノ尊長ヲ殴チ。死ニ至ル者ハ。各斬。改テ。絞。其故殺スル者ハ斬。 父祖被殴条例 第二百三十二条 凡祖父母父母。人ニ殺サレ。子孫。擅ニ行兇人ヲ殺ス者ハ。謀殺ヲ以テ論ス。其即時ニ殺死スル者ハ。論スルコト勿レ。 第二百三十三条 凡子孫。祖父母父母ト同謀シテ。共ニ人ヲ殴チ。若クハ祖父母父母。人ト忿争シ。子孫ニ指令シテ殴打セシメ。及ヒ人ト闘殴スルニ。其子孫。勢ヲ助ケテ。共ニ殴ツ者ハ。倶ニ常律ニ照シテ。罪ヲ科シ。救護還殴律ヲ用ヒス。 罵詈律 罵官吏律原罵本属長官律 第二百三十四条 凡勅任官ヲ罵ル者ハ。懲役一年。奏任官ヲ罵ル者ハ。懲役九十日。判任官ヲ罵ル者ハ。懲役六十日。並ニ親ラ聞テ乃坐ス。 罵官吏条例 第二百三十五条 凡判任官。勅任官ヲ罵ル者ハ。懲役六十日。奏任官ヲ罵ル者ハ。懲役四十日。並ニ親ラ聞テ。乃坐ス。 第二百三十六条 凡奏任官。勅任官ヲ罵ル者ハ。判任官。奏任官ヲ罵ルト。罪同シ。其勅任官。奏任官ヲ罵リ。及ヒ奏任官。判任官ヲ罵ル者ハ。並ニ凡人罵詈ヲ以テ論ス。 第二百三十七条 凡平民。本属ノ戸長ヲ罵ル者ハ。凡人罵詈ニ。一等ヲ加ヘ。邏卒ヲ罵ル者ハ。又一等ヲ加フ。 罵祖父母父母条例 第二百三十八条 凡子孫。祖父母父母ヲ罵リ。及ヒ妻妾。夫ノ祖父母父母ヲ罵ル者ハ。流三等ニ処スル律ヲ改メ。並ニ懲役三年。 訴訟律 誣告条例 第二百三十九条 凡収贖。贖罪ニ該ル罪ヲ以テ。人ヲ誣告スル者ハ。即チ収贖贖罪ニ反坐ス。若シ己ノ罪ヲ避ンコトヲ規リ。人ヲ誣告スル者ハ。原罪。収贖。贖罪ニ該ルト雖モ反坐ノ罪。贖フコトヲ聴サス。婦女ノ犯ス者モ。亦此例ニ依ル。 干名犯義条例 第二百四十条 凡子孫。祖父母父母ヲ誣告シ妻妾。夫。及ヒ夫ノ祖父母父母ヲ誣告スル者ハ。絞ニ処スル律ヲ改メ。懲役終身。 子孫違教条例 第二百四十一条 凡祖父母父母。老疾シテ。家ニ侍養ノ親ナキニ。故ラニ棄去ル者ハ。懲役二年。 受贓律 官吏受財条例 第二百四十二条 凡官吏。枉法贓ヲ受ル者。等内人ハ。二百五十円以上。等外人ハ。三百円以上絞ニ処シ。及ヒ不枉法贓。等内人ハ。三百円以上絞ニ処スル律ヲ改メ。並ニ懲役終身。 事後受財条例 第二百四十三条 凡官吏。事後。財ヲ受ル者ハ。本条ニ依リ罪ヲ科スト雖モ。其銭ヲ出シ。及ヒ過スルノ人ハ。並ニ杖七十ニ処スル律ヲ改メ。坐贓ニ依テ論シ。一等ヲ減シテ。並ニ。罪。懲役七十日ニ止ル 以財請求条例 第二百四十四条 凡枉法ノ事ニ非スト雖モ。財ヲ以テ。官吏ノ受理ヲ請求スル者ハ。与フル所ノ財ヲ計ヘ。坐贓ニ依テ論シ。一等ヲ減ス。 受外国人餽送条例 第二百四十五条 凡外国人ノ餽送スル。飲食。土宜等。交際ノ礼ニ係リ。互ニ相贈遺スル者ハ。官ニ告ケスト雖モ。以不枉法論ノ限ニ在ラス。 詐偽律 詐為官文書条例 第二百四十六条 凡私ノ文書ヲ詐為スル者ハ。情ヲ量リ。不応為ニ問ヒ。軽重ヲ分ツ。 対詔上書詐不以実条例 第二百四十七条 凡対詔。及ヒ奏事。上書ヲ除ク外。上ニ告ルニ。詐テ実ヲ以テセサル者ハ。懲役一年。事情軽キ者ハ。懲役八十日。 偽造官印条例 第二百四十八条 凡官ノ印ヲ偽造スル者ハ。絞ニ処スル律ヲ改メ。懲役終身。 改正偽造宝貨律 第二百四十九条 凡宝貨ヲ偽造シ。已ニ行使スル者。首ハ。斬。従。及ヒ匠人。若クハ。情ヲ知テ買使スル者ハ。懲役終身。其雑役ニ供スル者ハ。懲役十年。未タ行使セサル者ハ。各一等ヲ減ス。 其偽造。未タ成ラサル者。首ハ。懲役三年。従。及ヒ匠人ハ。懲役二年半。雑役者ハ。懲役百日。 若シ過ヲ悔ヒ自首スル者。已ニ行使スルハ。二等ヲ減シ。未タ行使セサルハ。罪ヲ免ス。 偽造宝貨条例 第二百五十条 凡金銀貨幣ノ辺縁ヲ剪錯シテ。利ヲ取リ行使スル者ハ。懲役三年。 第二百五十一条 凡紙幣ノ字様ヲ挑剜シ。成片ヲ補輳シ。筆画ヲ描改シ。真ヲ以テ偽ニ作リ。行使スル者ハ。懲役五年。 第二百五十二条 凡偽造タルコトヲ知テ。買取シ。未タ行使セサル者ハ。已買使者ニ。一等ヲ減ス。 第二百五十三条 凡偽造タルコトヲ知テ。雇ヲ受ケ。接逓シテ。真貨ニ兌換スル者ハ。知情買使ヲ以テ論ス。 第二百五十四条 凡偽造スルノ情ヲ知テ。房屋ヲ給シ。及ヒ窩蔵スル者ハ。已未行使ヲ分チ。並ニ。偽造従ヲ以テ論ス。 第二百五十五条 凡雑役ニ供スル者。雇工銭ニ。偽貨ヲ受ケ。行使スル者ハ。知情行使律ニ依ル。 第二百五十六条 凡偽造。已ニ成リ。未タ行使セスシテ悔悟シ。其夥党ヲ脱スト雖モ。首報セサル者ハ。偽造已成未行使ヲ以テ論ス。其偽造。未タ成ラサル者ハ。懲役百日。 第二百五十七条 凡人ノ宝貨ヲ偽造スルコトヲ知テ。官司ニ申報セサル者ハ。違令重ニ問フ。 第二百五十八条 凡宝貨ヲ取受スルノ後。始テ偽造ニ係ルコトヲ知リ。官ノ検視ヲ経スシテ。行使スル者ハ。不応為重ニ問フ。 詐称官条例 第二百五十九条 凡郷貫名氏ヲ詐称シテ。客■ニ宿スル者ハ。不応為軽ニ問フ。 改正犯奸律 犯奸 第二百六十条 凡和奸。夫アル者ハ。各懲役一年。妾ハ。一等ヲ減ス。若シ媒合。及ヒ容止シテ。通奸セシムル者ハ。犯人ノ罪ニ。三等ヲ減ス。強奸スル者ハ。懲役十年。未タ成ラサル者ハ。一等ヲ減ス。因テ折傷スル者ハ。懲役終身。婦女ハ坐セス。十二歳以下ノ幼女ヲ奸スル者ハ。和ト雖モ。強ト同ク論ス。 親属相奸 第二百六十一条 凡父祖ノ妾。伯叔姑姉妹。及ヒ子孫ノ婦ヲ奸スル者ハ。各懲役三年。強奸スル者ハ。懲役終身。若シ母ノ姉妹。及ヒ兄弟ノ妻。姪ノ妻ヲ奸スル者ハ。懲役二年。妾ヲ奸スル者ハ。各一等ヲ減ス。強奸スル者ハ。並ニ懲役終身。 若シ兄弟姉妹ノ女。及ヒ前夫ノ女。同母異父姉妹ヲ奸スル者ハ。各懲役一年。強奸スル者ハ。懲役終身。 奸家長妻 第二百六十二条 凡雇人。家長ノ妻ヲ奸スル者ハ。各懲役一年半。強奸スル者ハ。懲役終身。 奸部民妻 第二百六十三条 凡官吏。部民ノ妻ヲ奸スル者ハ。懲役一年半。相奸スルノ妻ハ。懲役一年。 居喪犯奸 第二百六十四条 凡父母。舅姑。及ヒ夫ノ喪ニ居リ。奸ヲ犯ス者ハ。各凡奸ニ。一等ヲ加フ。相奸スルノ人ハ。凡奸ヲ以テ論ス。 犯奸条例 第二百六十五条 凡和奸ノ後。奸情敗露ニ因テ。奸婦。悔迫自尽スル者ハ。奸夫。情ヲ知ラスト雖モ。奸罪ニ。一等ヲ加フ。 第二百六十六条 凡鶏奸スル者ハ。各懲役九十日。華士族ハ。破廉恥甚ヲ以テ論ス。其奸セラルヽノ幼童。十五歳以下ノ者ハ。坐セス。若シ強奸スル者ハ。懲役十年。未タ成ラサル者ハ。一等ヲ減ス。 第二百六十七条 凡私娼ヲ衒売スル。窩主ハ。懲役四十日。婦女。及ヒ媒合容止スル者ハ。一等ヲ減ス。若シ父母ノ指令ヲ受ル者ハ。罪ヲ其父母ニ坐シ。婦女ハ坐セス。 第二百六十八条 凡僧尼ノ奸ヲ犯ス者ハ。凡奸罪ヲ以テ論ス。 雑犯律 賭博条例 第二百六十九条 凡賭博。三犯以上ハ。懲役一年。 第二百七十条 凡賭場。現在ノ財物ハ。官ニ入ルト雖モ。其田宅等。不動産ニ係ル者ハ。原主ニ還付シ。官ニ入ルヽノ限ニ在ラス。 第二百七十一条 凡博戯ニ用フル。骰子。骨牌ヲ売ル者ハ。賭博者ト。同罪。再犯ハ。一等ヲ加ヘ。三犯以上ハ。懲役一年。 第二百七十二条 凡賭博ノ列ニ与ラスト雖モ。母銭ヲ借シ。息ヲ収ル者ハ。犯人ト同罪。 失火条例 第二百七十三条 凡太廟。及ヒ山陵内ニ於テ。火ヲ失スル者ハ。律ニ依リ罪ヲ科スルノ外。官幣国幣大社ハ。山陵ト同シク論シ。中社ハ。懲役百日。小社ハ。懲役九十日。府県社ハ。懲役七十日。郷社ハ。懲役六十日。延焼スル者ハ。各本罪ニ。三等ヲ減ス。減シテ。人ノ宅舎ヲ延焼スルヨリ。軽ク。若クハ等キハ。並ニ。一等ヲ加フ。 第二百七十四条 凡税居人。火ヲ失シテ。其家ヲ焼ク者ハ。自己宅舎ヲ焼クニ。一等ヲ加フ。 第二百七十五条 凡火ヲ失シテ。人ヲ焼死ニ致ス者ハ。死屍ノ多寡ヲ論セス。一等ヲ加フ。其同居ノ祖父母父母ヲ。焼死ニ致ス者ハ。懲役百日。 第二百七十六条 凡火ヲ失シテ。人ノ山林柴草。及ヒ空間房屋。若クハ田場積聚ノ物ヲ延焼スル者ハ。官私ヲ分タス。人ノ宅舎ニ。延焼スルニ。一等ヲ減ス。 第二百七十七条 凡盗犯。火ヲ用ヒテ。門関戸枢ヲ焼燬シ。及ヒ燭炬ヲ持シ。期セスシテ。失火ニ致ス者ハ。懲役三年。若シ盗罪重キ者ハ。重キニ従テ論ス。 放火条例 第二百七十八条 凡火ヲ放テ。人ノ空間房屋。及ヒ田場積聚ノ物ヲ焼ク者ハ。懲役七年。未タ焼燬ニ至ラサル者ハ。懲役三年。 第二百七十九条 凡火ヲ放テ。故ラニ自己ノ房屋ヲ焼ク者ハ。懲役九十日。未タ焼燬ニ至ラサル者ハ。一等ヲ減ス。若シ期セスシテ。公廨倉庫。及ヒ民舎ヲ延焼スル者ハ。懲役二年半。因テ財ヲ盗ム者ハ。懲役終身。 第二百八十条 凡火ヲ放テ。人ノ空間房屋ヲ焼キ。期セスシテ。人ノ宅舎ニ延焼スル者ハ。懲役十年。 第二百八十一条 凡火ヲ放テ。人ノ宅舎ヲ焼キ。未タ焼燬ニ至ラサル者。律ニ照シ。懲役十年ニ処スル外。若シ雇人等。家長ノ督責ニ苛迫シ。一時脱身ヲ図リ。纔ニ火ヲ放チ。未タ焼燬ニ至ラサル者ハ。情ヲ量テ。三等ヲ減シ。懲役三年。 得遺失物条例 第二百八十二条 凡水中沈没ノ物ヲ得レハ。遺失物ヲ得ルヲ以テ論ス。 第二百八十三条 凡遺失物ヲ得ルニ。物品。盗贓ニ係ルト雖モ。私物ナレハ。一半ヲ。其主ニ給シ。一半ヲ。得ル人ニ給ス。 第二百八十四条 凡官吏。邏卒。遺失物ヲ得レハ。所部内外ヲ問ハス。主アルハ。全ク其主ニ還ス。如シ三十日内ニ。其主ナケレハ。得ル者ニ給ス。 第二百八十五条 凡一切応禁ノ物ヲ得レハ。遺失。及ヒ埋蔵。若クハ。沈没ヲ分タス。一体ニ。官ニ没入ス 第二百八十六条 凡人ノ邸宅内ニ於テ。遺失物ヲ窃取スル者ハ。窃盗ニ準シテ論ス。 違令条例 第二百八十七条 凡制ニ違フ者ハ。懲役百日。軽キ者ハ。一等ヲ減ス。 第二百八十八条 凡式ニ違フ者ハ。懲役二十日。軽キ者ハ。一等ヲ減ス。 不応為条例 第二百八十九条 凡二人以上。同ク不応為ヲ犯シ。首タル者。懲役三十日ニ該レハ。従ハ。懲役二十日首タル者。懲役七十日ニ該レハ。従ハ。懲役六十日ニ科ス。若シ所犯。軽重ノ分アレハ。不応軽重ニ分擬シ。首従ヲ以テ論セス。 第二百九十条 凡仏像ヲ棄毀スル者ハ。不応為重ニ科ス。 第二百九十一条 凡詭言怪説ヲ流伝シ。及ヒ著述シテ。政体ヲ妨害スル者ハ。不応為重ニ科ス。 捕亡律 追捕罪人条例 第二百九十二条 凡捕吏。正犯ノ財ヲ受ケ。故縦スル同罪者。正犯。死ニ至レハ。同罪者ハ。絞ニ処スル律ヲ改メ。懲役終身ニ従フト雖モ。其財ヲ受スシテ。故縦シ。及ヒ通信シテ。逃避セシムル同罪者ハ。罪。懲役十年ニ止ル。 獄囚脱監及反獄逃走条例 第二百九十三条 凡脱監及ヒ越獄シテ。逃走スル者ハ。各本罪上ニ。二等ヲ加ヘ。罪。流三等ニ止ル律ヲ改メ。懲役終身ニ止ル。 第二百九十四条 凡反獄シテ。逃走スル者ハ。皆斬ニ処スル律ヲ改メ。首ハ。斬。従ハ。懲役終身。 第二百九十五条 凡罪囚。糾合シテ。越獄スルニ。従ハス。実ニ拠テ首報シ。因テ罪囚。即時ニ獲ニ就キ。脱逃ヲ致サヽルコトヲ得ル者。及ヒ反獄ノ情ヲ知テ。首報スル者ハ。斬絞以下。各本罪ニ。一等ヲ減ス。 第二百九十六条 凡脱監。及ヒ越獄シテ。逃走スル者。再逃以上ハ。又二等ヲ累加シ。罪。懲役終身ニ止ム。懲役場ヲ逃走シ。又監獄ヲ脱越スル者。罪。亦同。 第二百九十七条 凡犯人。責付内ニ。逃走スル者ハ。本罪ニ。一等ヲ加フ。若シ囚禁。及ヒ責付内ニ。逃走シテ。自首スル者ハ。止タ本罪ヲ科シテ。逃罪ヲ免ス。 懲役人逃条例原徒流人逃律 第二百九十八条 凡懲役一年以上ノ囚人。限内。逃走スル者ハ。村七十。改テ棒鎖二日。再ヒ逃走スル者ハ。絞。改テ懲役終身。 第二百九十九条 凡懲役百日以下ノ囚人。限内。逃走スル者ハ。棒鎖一日。仍ホ原犯ノ日限ニ照シテ。新ニ拘役シ。再ヒ逃走スル者ハ。棒鎖二日。更ニ懲役一年ニ入ル。若シ外ニ在テ。又百日以下ノ罪ヲ犯セハ。原犯後犯ヲ通算シテ。新ニ拘役ス。其一年以上ノ罪ヲ犯ス者ハ。止タ後犯ノ年限ニ照シテ更ニ科断ス。 第三百条 凡懲役一年以上ノ囚人。逃走スル者ハ。例ニ照シ。棒鎖二日。仍ホ原犯ノ年限ニ照シテ。新ニ拘役スト雖モ。若シ逃走シ。外ニ在テ。又三年以下ノ罪ヲ犯セハ。後犯ノ年限ニ。原犯ノ年限ヲ合セテ。拘役スルモ。亦四年ニ過ルコトヲ得ス。百日以下ノ罪ヲ犯ス者モ。亦原犯ニ合セテ拘役ス。其五年以上ノ罪ヲ犯ス者ハ。止タ後犯ノ年限ニ照シテ。科断ス 第三百一条 凡懲役五年以上ノ囚人。限内逃走スル者モ。亦例ニ照シテ。棒鎖二日。仍ホ原犯ノ年限ニ照シテ。新ニ拘役スト雖モ。若シ逃走シ。外ニ在テ。重子テ五年以上。十年以下ノ罪ヲ犯ス者ハ。並ニ拘役四年ヲ加フ。其一年以上。三年以下ノ罪ヲ犯ス者ハ。後犯ノ年限ヲ折半シテ。加役ス。其百日以下ノ罪ヲ犯ス者ハ。役限ヲ全加シテ。折半スルコトヲ用ヒス。 第三百二条 凡懲役終身ノ囚人。逃走スル者ハ。絞。 第三百三条 凡懲役人。逃走シテ。自首スル者ハ。逃罪ヲ免シ。仍ホ原犯ノ年限ニ照シテ。新ニ拘役ス若シ外ニ在テ。又罪ヲ犯ス者ハ自首。法ニ照シテ。首免ヲ与フト雖モ。其逃罪。及ヒ従新拘役ハ。仍ホ本法ヲ尽ス。 第三百四条 凡懲役人ノ逃走ヲ報シ。因テ逃走ヲ致サヽルコトヲ得ル者ハ。本罪ニ。一等ヲ減ス。 第三百五条 凡懲役人。逃走ヲ図リ。未タ役場ヲ離レスシテ。捕ニ就ク者ハ。棒鎖二日。従新拘役ノ限ニ在ラス。 第三百六条 凡懲役人。水火震災ノ変ニ因テ逸出シ。二十四時間ニ。投帰スル者ハ。逃罪ヲ問ハス。若シ時ヲ過テ。投帰セサル者ハ。例ニ照シテ。棒鎖二日。仍ホ原役ノ剰ル日数ヲ役ス。其変ニ遇ヒ。内ニ在テ逸出セス。能ク消救防禦スル者ハ。本罪ニ。一等ヲ減ス。 第三百七条 凡禁錮限内。外人ニ接見通信シ。若クハ。疾病療養等ニ託シテ。潜出行歩スル者ハ。原限ノ年日ニ照シテ。新ニ之ヲ科ス。若シ潜出シテ。他ニ投宿シ。及ヒ縦飲スル等ニ係レハ。懲役七十日。贖罪スルコトヲ聴シ。仍ホ新ニ原限ヲ科ス。 主守不覚失囚条例 第三百八条 凡主守。看守ニ失シ。因テ未決ノ囚。自尽ニ至ラシムル者ハ。懲役三十日。 第三百九条 凡主守。囚ノ逃走ヲ覚ラサル者ハ。捕限三十日ヲ給シ。追捕セシム。限内。捕得スレハ。二等ヲ減ス。其故縦スル者ハ。捕限ヲ給セス。 第三百十条 凡保管人。囚ノ逃走ヲ覚ラサル者ハ。主守不覚失囚律ニ。二等ヲ減ス。 蔵匿罪人条例 第三百十一条 凡官司。人ヲ差ハシ。追喚スル罪人タルコトヲ知テ。為メニ。蔵匿指引シテ。隠避セシムル者ハ。各罪人ノ罪ニ。一等ヲ減スル律ヲ改メ。減二等ニ従フ。若シ罪人。未タ官司ノ追喚ニ係ラス。若クハ。已ニ追喚スル者ト雖モ。未タ知ラスシテ。蔵匿隠避セシムル者ハ。倶ニ情ヲ量テ。不応為ニ問ヒ。軽重ヲ分ツ。 断獄律 与囚金刃条例 第三百十二条 凡常人。囚ニ金刃ヲ与ヘ。及ヒ子孫。祖父母。父母ニ与ヘ。雇人。家長ニ与フル者ハ。各獄卒ノ罪ニ。一等ヲ減ス。 第三百十三条 凡獄卒。金銭。其他応禁ノ物ヲ伝逓シテ。囚ニ与フル者ハ。違令重ニ問フ。若シ財ヲ受ル者ハ。贓ニ計ヘ。枉法ヲ以テ。重キニ従テ論ス。 出入人罪条例 第三百十四条 凡故ラニ出入シ。及ヒ入ルヽニ失スル罪人ハ。已ニ断了ヲ経ルト雖モ。検挙シテ。改正スルコトヲ得ヘキ者ハ。改正シ。其出タスニ。失スル者ハ。貼断スルコトヲ用ヒス。 第三百十五条 凡官司。屍傷ヲ検視シテ。実ナラサル者ハ。懲役四十日。因テ罪ニ増減アル者ハ。失出入人罪ヲ以テ論ス。若シ財ヲ受ケ。故ラニ実ヲ以テセサル者ハ。故出入人罪ヲ以テ論ス。贓重キ者ハ。贓ニ計ヘ。枉法ヲ以テ。重キニ従テ論ス。 死囚奏請待報条例 第三百十六条 凡獄已ニ成リ。罪。死ニ該ル者ヲ奏請シ。待報内ニ在テ。死亡スルニ。遺骸ハ。親属請フ者アレハ。下付スルコトヲ聴ス。 断罪不当条例 第三百十七条 凡収贖ス可キヲ。誤テ実断スル者。改正スルコトヲ得ヘキ者ハ。改正シ。其実断ス可キヲ。誤テ収贖スル者ハ。貼断スルコトヲ用ヒス。 第三百十八条 凡罪ヲ断スルハ。口供結案ニ依ル。若シ甘結セスシテ。死亡スル者ハ。証佐アリト雖モ。其罪ヲ論セス。 改定律例巻二