第一条 執達吏ニ任セラルヽニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 年齢満二十五歳以上ナルコト
第二 陸海軍ノ現役ヲ終ヘ又ハ之ヲ免セラレタルコト
第三 身体健全ナルコト
第四 家計ノ整理シタルコト
第五 品行方正ナルコト
第六 試験ニ及第シタルコト
第二条 左ニ掲クル者ハ執達吏ニ任セラルヽコトヲ得ス
第一 重罪ヲ犯シタル者但国事犯ニシテ復権シタル者ハ此限ニ非ス
第二 定役ニ服スヘキ軽罪ヲ犯シタル者
第三 身代限ノ処分ヲ受ケ負債ノ義務ヲ免カレサル者
第四 懲戒ノ処分ニ由リ免職セラレタル者
第三条 執達吏ノ試験ヲ受ケントスル者ハ少クトモ六箇月間区裁判所ニ於テ主トシテ執達吏ノ職務ヲ修習シ傍ラ書記ノ職務ヲ修習スルコトヲ要ス
職務ノ修習ヲ為ス者ハ職務上ノ秘密ヲ漏洩スヘカラス
第四条 職務修習ヲ願フニハ願書ニ兵役ニ関ル証書及履歴書ヲ添付シ之ヲ控訴院長ニ差出シ其許可ヲ受クヘシ
第五条 職務修習ノ許可ヲ為シタルトキハ控訴院長ハ修習者ノ属スヘキ区裁判所ヲ指定スヘシ
区裁判所ノ一人ノ判事若ハ監督判事ハ授業ヲ担当スヘキ執達吏及裁判所書記ヲ選定シ職務ノ訓導ヲ為サシムヘシ
第六条 控訴院長ハ修習者ノ行状執達吏トナルニ不適当ナリト認ムルトキハ其修習ヲ止ムルコトヲ得
第七条 職務修習者試験ヲ受ケントスルニハ第一条第一乃至第五ノ諸件ヲ具備シタルコト及第二条ノ諸件ニ触レサルコトヲ証明シ並修習ノ日数ヲ記入シタル願書ヲ区裁判所ノ一人ノ判事若ハ監督判事ヲ経由シテ控訴院長ニ差出スヘシ
区裁判所ノ一人ノ判事若ハ監督判事ハ前項ノ願書ニ意見ヲ付スヘシ
控訴院長ハ書類ヲ調査シ試験ノ許否ヲ定ムヘシ
第八条 試験ハ地方裁判所ニ於テ毎年一回之ヲ行フ
第九条 試験委員長及試験委員ハ地方裁判所及区裁判所ノ判事検事ノ中ヨリ試験挙行毎ニ司法大臣之ヲ命ス
第十条 控訴院長ハ試験ヲ受クヘキ修習者ノ名簿ヲ試験委員長ニ送付スヘシ
前項ノ送付アリタルトキハ試験委員長ハ試験期日ヲ定メ之ヲ修習者ニ告知スヘシ
第十一条 試験ハ筆記口述ノ二様トス
口述試験ハ筆記試験ニ及第シタル者ニ之ヲ行フ
第十二条 試験ハ左ノ科目ニ就キ之ヲ行フ
第一 民事訴訟法及治罪法ノ中書類送達及執行ニ関ル規程
第二 執達吏ニ関ル諸規則
第三 算術（加減乗除分数比例）
第四 読書筆写
第十三条 筆記試験問題ノ答案ハ裁判所ノ官吏監督シテ之ヲ作ラシム
試験委員長ハ受験者ノ申立アルトキハ区裁判所ニ於テ筆記試験問題ノ答案ヲ作ラシムルコトヲ得
第十四条 受験者ノ及第落第及及第者ノ優劣ハ筆記試験口述試験ノ成績ニ対スル委員過半数ノ意見ニ従テ之ヲ決ス
及第落第ニ付テノ意見数相半スルトキハ落第ト看做スヘシ
第十五条 試験ニ及第シタル者ニハ試験委員長及試験委員ノ連署シタル及第証書ヲ授与ス
第十六条 試験ニ落第シタル者ハ更ニ三箇月以上修習ヲ為スニ非サレハ再ヒ試験ヲ受クルコトヲ得ス
第十七条 不正ノ方法ヲ以テ及第ヲ企テタル者ハ再ヒ試験ヲ受クルコトヲ得ス其及第シタル者ハ及第ノ効ナキモノトス
第十八条 試験委員ハ試験ノ問題及成績ヲ記録ニ記載スヘシ
第十九条 試験委員長ハ及第者ノ氏名及其試験成績ヲ控訴院長ニ報告スヘシ
第二十条 左ニ掲クル者ハ試験ヲ要セス執達吏ニ任セラルヽコトヲ得
第一 官立府県立中学校又ハ之ト同等ナル官立府県立学校、司法省旧法学校又ハ帝国大学ノ監督ヲ受ケタル旧私立法学校及文部大臣ノ認可ヲ経タル学則ニ依リ法律学ヲ教授スル私立学校ノ卒業証書ヲ有スル者
第二 裁判所書記ノ登用試験ニ及第シタル者
第三 判任官以上ノ職ヲ現ニ奉シ又ハ曽テ奉シタル者
第四 陸軍下士ニシテ文官奉職ヲ請願スルコトヲ得ル者
第二十一条 第三条乃至第六条ノ規程ハ前条ニ掲ケタル者ニモ亦之ヲ適用ス
前条第四ニ該ル者ハ職務修習ノ願書ニ修習ヲ為サントスル区裁判所ヲ記載シ陸軍大臣ヲ経由シテ司法大臣ニ差出スヘシ司法大臣ハ願書ヲ管轄控訴院長ニ送付スヘシ
第二十二条 試験及第者及第二十条ニ掲ケタル者ニシテ職務修習ヲ終リタル者ノ任補ハ執達吏ノ缺員アルヲ待テ控訴院長之ヲ摂行ス
第二十三条 執達吏ニ任セラレタル者ハ任補ノ日ヨリ三十日内ニ保証金ヲ管轄地方裁判所ニ納ムヘシ若シ其期間内ニ保証金ヲ差出サヽルトキハ職務ヲ罷免ス
保証金ハ五百円以下ニ於テ土地ノ情況ニ従ヒ控訴院長之ヲ定ム
保証金ハ相当ノ価格アル公債証書若ハ日本銀行株券ヲ以テ之ニ代ユルコトヲ得
第二十四条 執達吏保証金ヲ納メタルトキハ裁判所ハ官印ヲ交付ス
執達吏ハ官印ノ交付ヲ得タル後ニ非サレハ職務ヲ行フコトヲ得ス
附則
第二十五条 本則実施ノ際ハ職務修習ヲ要セス試験及任補ヲ行フコトヲ得