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○前加成規
第壱条 法律上ニテ警察ノ刑ヲ以テ罰スル所ノ違犯ハ違警罪タリ
法律上ニテ懲治ノ刑ヲ以テ罰スル所ノ違犯ハ軽罪タリ
法律上ニテ施体又ハ加辱ノ刑ヲ以テ罰スル所ノ違犯ハ重罪タリ
第弐条 凡ソ執行ノ開端ニ依リ顕ハレタル重罪ノ謀試ハ其犯人ノ意ニ関セサル景況ノミニ依テ之ヲ停止シ又ハ之ヲ仕損シタル時ハ即チ重罪ト看做ス可シ
第三条 軽罪ノ謀試ハ法律ノ特別ナル成規ヲ以テ定メタル場合ニ非サレハ軽罪ト看做ス可カラス
第四条 如何ナル違警罪、如何ナル軽罪、如何ナル重罪ト雖モ之ヲ行フ前ニ法律上ニ定メアラサル刑ヲ以テ罰スルコトヲ得ス
第五条 此法典ノ成規ハ軍事ノ違警罪、軽罪、重罪ニ適用セサルモノトス
○第壱編 重罪及ヒ懲治罪ノ事項ニ於ケル刑及ヒ其効力
第六条 重罪ノ事項ニ於ケル刑ハ施体且ツ加辱ノモノアリ又ハ唯加辱ノミノモノアリ
第七条 施体且ツ加辱ノモノタル刑ハ左ノ如シ
第一 死刑
第二 無期ノ徒刑
第三 流刑
第四 有期ノ徒刑
第五 禁獄
第六 懲役
第八条 加辱ノ刑ハ左ノ如シ
第一 追放
第二 公権剥奪
第九条 懲治罪ノ事項ニ於ケル刑ハ左ノ如シ
第一 懲治ノ場所ニ於ケル有期ノ禁錮
第二 特定ノ国士権、民権又ハ族権ノ有期ノ禁止
第三 罰金
第拾条 法律上ニ定メタル刑ノ言渡ハ関係各人ニ対シテ負担スルコトアル可キ物件返還及ヒ損害賠償ニ必ス牴触スルコトナキ様之ヲ宣告ス可シ
第拾壱条 高等警察ノ特別監視ニ附スル事及ヒ罰金並ニ犯罪物件ノ所有権カ刑ヲ言渡サレタル者ニ属スル時ハ其犯罪物件ノ特別ナル没収若クハ犯罪ニ依テ得タル物件若クハ犯罪ヲ行フニ用ヒ又ハ犯罪ヲ行フノ用ニ供シタル物件ノ特別ナル没収ハ重罪及ヒ懲治罪ノ事項ニ共通ノ刑トス
○第壱章 重罪ノ事項ニ於ケル刑
第拾弐条 凡ソ死刑ヲ言渡サレタル者ハ之ヲ斬首ス可シ
第拾三条 尊属親殺害ノ為メニ死刑ヲ言渡サレタル者ハ繻絆ノ侭跣足ニテ頭ニ黒絹ヲ被ラシメ処刑ノ場所ニ送致ス可シ
其者ハ裁判所使吏ノ処刑言渡ノ裁判書ヲ公衆ニ読ミ聞カス間刑壇ノ上ニ肆シ置キテ直チニ之ヲ死刑ニ処ス可シ
第拾四条 死刑ニ処セラレタル者ノ遺骸ハ其親族ヨリ請求スル時ハ之ヲ交付ス可シ但シ親族ハ礼式ナク之ヲ埋葬セシム可キモノトス
第拾五条 徒刑ヲ言渡サレタル者ハ至難ノ役ニ使用セラル可シ但シ其使用セラルヽ役ノ性質ニ依リ為シ得可キ時ハ其両足ニ重球ヲ繋キ又ハ二人ツヽ鎖ヲ用ヒテ聯接ス可キモノトス
第拾六条 徒刑ヲ言渡サレタル婦女ハ苦役場ノ内部ノミニ於テ使用セラル可シ
第拾七条 流刑ハ王国(共和国)ノ大陸ノ領地外ニ於テ法律上ニ定メタル地ニ移送セラレ期限無ク其地ニ居住スルニ在リトス
若シ流刑ニ処セラレタル者ノ王国(共和国)ノ領地内ニ帰リ来ル時ハ其者ノ人違ニ非サルノ証拠ノミニ依リ無期ノ徒刑ヲ言渡サル可シ
流刑ヲ言渡サレタル者ノ王国(共和国)ノ領地内ニ帰リ来ラスト雖モ仏蘭西兵ノ占拠スル国ニ於テ召捕ヘラレタル時ハ其流刑ノ地ニ送致セラル可シ
流刑ノ地ヲ設定セサル間ハ裁判官ノ其処刑言渡ノ裁判書ヲ以テ明白ニ裁定シタル所ニ従ヒ其刑ヲ言渡サレタル者王国(共和国)ノ獄舎ニテ期限無ク禁獄ノ刑ヲ受ケ若クハ法律上ニ定ム可キ仏蘭西領地中ノ一箇ニ於テ其大陸ノ領地外ニ在ル獄舎ニテ期限無ク禁獄ノ刑ヲ受ク可シ
若シ本国ト処刑ノ場所トノ間ニ往来ノ梗塞シタル時ハ仏蘭西ニ於テ仮リニ処刑ノ執行ヲ為ス可シ
第拾八条 無期ノ徒刑及ヒ流刑ヲ言渡シタル時ハ准死ヲ惹起スルモノトス○然レトモ政府ハ流刑ヲ言渡サレタル者ニ民権ノ執行又ハ民権中或者ノ執行ヲ許ルスコトヲ得可シ
第拾九条 有期徒刑ノ言渡ハ少クトモ五年間多クトモ二十年間之ヲ宣告ス可シ
第弐拾条 何人ニ限ラス禁獄ヲ言渡サレタル者ハ公ケノ行政規則ノ体裁ヲ以テ発シタル国王ノ命令書(共和国大統領ノ告令書)ニ依リ定ムル所ノ王国(共和国)大陸ノ領地内ニ在ル城寨中ニ之ヲ監禁ス可シ
其者ハ国王ノ命令書(共和国大統領ノ告令書)ニ定メタル警察規則ニ従ヒ其禁獄場ノ内部ニ在ル各人又ハ其外ニ在ル各人ト通交ス可シ
禁獄ハ五年間ヨリ少ナク又二十年間ヨリ多ク之ヲ宣告スルコトヲ得ス但シ第三十三条ニ定メタル場合ハ格別ナリトス
第弐拾壱条 凡ソ男女ヲ問ハス懲役ノ刑ヲ言渡サレタル者ハ苦役場内ニ監禁セラレテ使役ヲ受ク可シ但シ其使役ノ上リ高ハ政府ヨリ規定スル如クニ一部分ハ其者ノ利益ニ於テ之ヲ用フルコトヲ得可キモノトス
此刑ノ期限ハ少クトモ五年多クトモ十年タル可シ
第弐拾弐条 何人ニ限ラス無期ノ徒刑、有期ノ徒刑又ハ懲役ノ刑中ノ一箇ヲ言渡サレタル者ハ其刑ヲ受クル前ニ一時間公場ニ於テ公衆ノ目前ニ肆シ置ク可シ○其者ノ頭上ニ其姓名、職業、住所、刑名及ヒ其処刑言渡ノ原由ヲ読ミ易キ大字ニテ記シタル貼附書ヲ置ク可シ
有期ノ徒刑又ハ懲役ノ刑ヲ言渡シタル場合ニ於テハ重罪裁判所ヨリ其刑ヲ言渡サレタル者ノ再犯ノ景状ニアラサルニ於テハ公肆ヲ受ケサル可キ旨ヲ其裁判書ヲ以テ命令スルコトヲ得可シ
然レトモ十八歳以下ノ幼者及ヒ七十歳以上ノ者ニ関シテハ決シテ公肆ヲ宣告ス可カラス
本条ハ公肆ノ刑ヲ廃止シタル千八百四十八年四月十二日ノ告令ヲ以テ削除シタリ
第弐拾三条 有期刑ノ期限ハ其言渡ノ廃止ス可カラサルモノトナリタル日ヨリ之ヲ起算ス可シ
第弐拾四条 然レトモ予メ禁獄ノ景状ニアル所ノ各人ニ対シテ宣告シタル禁錮ノ言渡ニ関シテハ其刑ノ期限ハ其刑ヲ言渡サレタル者ノ上訴セサルニ於テハ検察官ノ控訴又ハ上訴ニ拘ハラス又其控訴或ハ上訴ノ成果如何ヲ問ハス上等又ハ下等裁判所ノ裁判ノ日ヨリ之ヲ起算ス可シ
刑ヲ言渡サレタル者ノ控訴又ハ上訴ノ上ニテ其刑ノ減セラレタル場合ニ於テモ亦右ト同一タル可シ
第弐拾五条 如何ナル刑ノ言渡ト雖モ国祭又ハ教祭ノ日ニモ又日曜日ニモ之ヲ執行スルコトヲ得ス
第弐拾六条 其執行ハ刑ノ言渡ノ裁判書ニ指示シタル地ノ公場中ノ一箇ニ於テ之ヲ為ス可シ
第弐拾七条 若シ死刑ヲ言渡サレタル婦女カ其懐胎ナル旨ヲ申述シ而シテ其旨ヲ験明シタル時ハ出産ノ後ニ非サレハ其刑ヲ受ケサルモノトス
第弐拾八条 有期徒刑、禁獄ノ刑、懲役ノ刑、追放ノ刑ヲ言渡シタル時ハ公権剥奪ヲ惹起スルモノトス○公権剥奪ハ其刑ノ言渡ノ廃止ス可カラサルモノトナリタル日ヨリ之ヲ受ク可ク又重罪缺席ニテ刑ヲ言渡サレタル場合ニ於テハ肖像ニ依レル執行ノ日ヨリ之ヲ受ク可シ
第弐拾九条 何人ニ限ラス有期徒刑、禁獄ノ刑、懲役ノ刑ヲ言渡サレタル者ハ右ノ外其刑ノ期限間法律上ノ治産禁ノ景状ニアル可キモノトス但シ治産禁ヲ受ケタル者ノ後見人及ヒ代後見人ヲ撰任スル為メニ定メタル法式ヲ以テ右刑ヲ言渡サレタル者ノ為メ其財産ヲ管理スル為メノ後見人及ヒ代後見人ヲ撰任ス可シ
第三拾条 刑ヲ言渡サレタル者ノ財産ハ其者ノ刑ヲ受ケ終リシ後之ヲ其者ニ還付ス可ク而シテ後見人ハ其者ニ管理ノ計算ヲ為ス可シ
第三拾壱条 其刑ノ期限間ハ如何ナル金額ヲモ又如何ナル手当ヲモ又如何ナル入額ノ部分ヲモ其者ニ交付スルコトヲ得ス
第三拾弐条 何人ニ限ラス追放ヲ言渡サレタル者ハ政府ノ命令ヲ以テ王国(共和国)ノ領地外ニ移送セラル可シ
追放ノ期限ハ少クトモ五年多クトモ十年タル可シ
第三拾三条 若シ追放セラレタル者ノ其刑期ノ終ル前ニ王国(共和国)ノ領地内ニ帰リ来ル時ハ其人違ニ非サルノ証拠ノミニ依リ少クトモ其追放ノ期限ノ終リニ至ル迄ノ残期ニ等シク又其残期ノ二倍ニ過クルコトヲ得サル時間禁獄ノ刑ヲ言渡サル可シ
第三拾四条 公権剥奪ハ左ノ諸件ニアリトス
第一 刑ヲ言渡サレタル者ノ総テ公ケノ職務、役務又ハ職任ノ罷免及ヒ除斥
第二 投票、選挙、被選挙ノ権利及ヒ一般ニ総テノ国士権及ヒ政権ノ剥奪並ニ勲章ヲ佩フル権利ノ剥奪
第三 宣誓鑑定人トナルノ無能力、証書ニ於テ証人トシテ用ヒラルヽノ無能力及ヒ単一ナル参照件ヲ備フル為メノ外裁判上ニテ証拠ヲ申述スルノ無能力
第四 親族会議ニ加ハルノ無能力及ヒ後見人、管財人、代後見人又ハ裁判上ノ輔佐人トナルノ無能力但シ親族ノ同意スル意見ニ依リテ自己ノ子ノ為メニスルハ格別ナリトス
第五 兵器ヲ携帯スルノ権利、護国兵ニ加ハルノ権利、仏蘭西ノ兵役ニ服スルノ権利、学校ヲ開設シ又ハ教師、教員、校監ノ名義ヲ以テ学校ニ於テ教授ヲ為シ及ヒ任用ヲ受クル権利ノ剥奪
第三拾五条 公権剥奪ヲ主刑トシテ宣告スル度毎ニ禁錮ノ刑ヲ之ニ附添スルコトヲ得可シ但シ其禁錮ノ刑ノ期限ハ刑ヲ言渡ス裁判書ヲ以テ定ム可キモノニシテ五年ニ過ク可カラス
若シ其犯罪人カ外国人タリ又ハ国士タルノ分限ヲ失ヒシ仏蘭西人タル時ハ常ニ必ス禁錮ノ刑ヲ宣告セサルヲ得ス
第三拾六条 凡ソ死刑、無期及ヒ有期ノ徒刑、流刑、禁獄ノ刑、懲役ノ刑、公権剥奪ノ刑、追放ノ刑ヲ載スル処ノ裁判書ハ抜書ヲ以テ之ヲ印刷ス可シ
其裁判書ハ本州中央ノ都府ト其裁判ヲ為シタル都府ト犯罪ヲ行ヒタル地ノ邑ト執行ヲ為ス邑ト刑ヲ言渡サレタル者ノ住所ノ邑トニ於テ之ヲ貼附ス可シ
第三拾七条、第三拾八条、第三拾九条
○第弐章 懲治罪ノ事項ニ於ケル刑
第四拾条 何人ニ限ラス禁錮ノ刑ヲ言渡サレタル者ハ懲治場内ニ之ヲ監禁シ其撰択ニ従ヒ懲治場内ニ設ケアル数箇ノ使役中ノ一ニ使用セラル可シ
其刑ノ期限ハ少クトモ六日多クトモ五年タル可シ但シ再犯ノ場合又ハ法律上ニ右ト異ナレル制限ヲ定メタル其他ノ場合ハ格別ナリトス
一日禁錮ノ刑ハ二十四時トス
一月禁錮ノ刑ハ三十日トス
第四拾壱条 懲治軽罪ノ為メニ禁錮セラレタル各人ノ使役ノ上リ高ハ一部分ハ懲治場ノ共同ノ入費ニ用ヒ一部分ハ其各人ニ或ル慰安ヲ得セシムルノ適宜ナル時ハ之ヲ得セシムルニ用ヒ一部分ハ其各人出場ノ時ニ於テ之レカ為メ貯蔵ノ資本ヲ設クルニ用フ可シ但シ右ノ諸件ハ公ケノ行政規則ニ定メタル所ニ従フ可キモノトス
第四拾弐条 懲治上ニテ裁判ヲ為ス裁判所ハ或ル場合ニ於テハ左ノ国十権、民権及ヒ族権ノ執行ヲ全ク禁止シ又ハ一部分禁止スルコトヲ得可シ
第一 投票及ヒ選挙ノ権利
第二 被選挙ノ権利
第三 陪審員ノ職務又ハ其他ノ公ケノ職務或ハ行政上ノ役務ニ招喚セラレ又ハ選任セラルヽノ権利又ハ右ノ職務或ハ役務ヲ執行スルノ権利
第四 兵器ヲ携帯スルノ権利
第五 親族ノ評議ニ於ケル投票及ヒ発言ノ権利
第六 後見人又ハ管財人タルノ権利」但シ親族ノ意見ノミニ依リテ自己ノ子ノ為メニスルハ格別ナリトス
第七 鑑定人タルノ権利又ハ証書ニ於テ証人トシテ用ヒラルヽノ権利
第八 単一ナル申述ヲ為ス為メノ外裁判上ニテ証拠ヲ申述スルノ権利
第四拾三条 裁判所ハ法律ノ別段ナル成規ニ依テ許可セラレ又ハ命令セラレタル時ニ非サレハ前条ニ記載シタル禁止ヲ宣告ス可カラス
○第三章 重罪又ハ軽罪ノ為メニ宣告スルコトヲ得可キ刑及ヒ其他ノ言渡
第四拾四条 高等警察ノ監視ニ附スル事ノ効ハ刑ヲ言渡サレタル者ノ其刑ヲ受ケ終リシ後ニ其赴クコトヲ禁止ス可キ別段ノ地ヲ定ムルノ権利ヲ政府ニ附与スルニアリトス
刑ヲ言渡サレタル者ハ其釈放ヲ得ルヨリ少クトモ十五日前ニ其居住ヲ定メント欲スル地ヲ申述セサルヲ得ス若其申述ヲ為サヽルニ於テハ政府自カラ之ヲ定ム可シ
監視ヲ言渡サレタル者ハ内務卿ノ許可ヲ受クルニ非サレハ六月ノ期限ノ終ラサル前ニ其嘗テ自カラ撰定シ又ハ政府ヨリ定メラレタル居住ヲ去ルコトヲ得ス
然レトモ州長ハ左ノ場合ニ於テハ右ノ許可ヲ附与スルコトヲ得可シ
第一 其州ノ限界内ニ於テ単一ナル移動ノ場合
第二 至急ヲ要スル場合但シ此場合ニ於テハ仮リノ名義ノミヲ以テス可シ
刑ヲ言渡サレタル者ハ六月ノ期限ノ終リシ後又必要ナル許可ヲ得タル時ハ其期限ノ終ラサル前ト雖モ禁止セラレサル総テノ居住ニ移転スルコトヲ得可シ但シ八日前ニ邑長ニ通知ス可キノ負任アリトス
刑ヲ言渡サレタル者ハ総テ其監視ヲ受クル間ニ逐次撰定シタル各箇ノ居住ニ於テ六月間ノ滞在ヲ必要トス但シ前ノ成規ニ従ヒ内務卿若クハ州長ヨリ附与シタル特別ノ許可アル時ハ格別ナリトス
凡ソ刑ヲ言渡サレタル者ノ其居住ニ赴ク時ハ途中必ス離ルヽコトヲ得サル路筋ト其通行ノ各地ニ於ケル滞在ノ時間トヲ規定スル所ノ路券ヲ受ク可シ
刑ヲ言渡サレタル者ハ其到着ノ時ヨリ二十四時内ニ其居住スヘキ邑ノ邑長ノ面前ニ出席ス可シ
第四拾五条 若シ高等警察ノ監視ニ附セラレタル者ノ前条ニ定メタル成規ニ背戻シタル場合ニ於テハ懲治裁判所ヨリ五年ニ過クルコトヲ得サル禁錮ヲ言渡サル可シ
第四拾六条 如何ナル場合ニ於テモ監視ノ期限ハ二十年ニ過クルコトヲ得ス
有期ノ徒刑、禁獄ノ刑、懲役ノ刑ヲ言渡サレタル犯罪人ハ其刑ヲ受ケ終リシ後二十年間ハ当然高等警察ノ監視ヲ受ク可キモノトス
然レトモ刑ヲ言渡ス上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ監視ノ期限ヲ減縮スルコトヲ得可ク又然ノミナラス刑ヲ言渡サレタル者ノ監視ヲ受ケサル可キ旨ヲ宣告スルコトヲ得可シ
凡ソ無期ノ刑ヲ言渡サレタル者ノ其刑ノ変換又ハ釈免ヲ得タル時ハ当然二十年間高等警察ノ監視ヲ受ク可シ但シ特赦ノ裁定ニ依リ之ニ異ナレル処分ヲ定メタル時ハ格別ナリトス
第四拾七条 追放ノ刑ヲ言渡サレタル犯罪人ハ其受ケ終リタル刑ノ期限ニ等シキ時間当然高等警察ノ監視ヲ受ク可シ但シ刑ヲ言渡ス上等又ハ下等裁判所ノ裁判ニ依リ之ニ異ナレル処分ヲ定メタル時ハ格別ナリトス
本条ト前条ノ第二項及ヒ第三項トニ定メタル場合ニ於テ若シ上等又ハ下等裁判所ノ裁判書ニ監視ノ免除又ハ減軽ヲ記セサル時ハ免除又ハ減軽ノ事ヲ評議セシ旨ノ記載ヲ為ス可ク若シ之ニ違フ時ハ無効ナリトス
第四拾八条 監視ハ特赦ノ方法ヲ以テ之ヲ釈免シ又ハ減軽スルコトヲ得可シ
監視ハ行政上ノ処分ヲ以テ之ヲ停止スルコトヲ得可シ
刑ノ期満効ハ刑ヲ言渡サレタル者ニ其受クル所ノ監視ヲ免カレシムルコトナシ
無期ノ刑ノ期満効ノ場合ニ於テハ其刑ヲ言渡サレタル者ハ当然二十年間高等警察ノ監視ヲ受ク可シ
監視ハ期満効ノ成就シタル日ヨリ後ニ非サレハ其効ヲ生セサルモノトス
第四拾九条 国ノ内部又ハ外部ノ安寧ニ関スル重罪又ハ軽罪ノ為メニ刑ヲ言渡サレタル者ハ亦右ニ同シキ監視ニ附セサルヲ得ス
第五拾条 前数条ニ定メタル場合ヲ除クノ外、刑ヲ言渡サレタル者ハ法律ノ別段ノ成規ヲ以テ許シタル場合ニ非サレハ国ノ高等警察ノ監視ヲ受ケシム可カラサルモノトス
第五拾壱条 物件返還ヲ為ス可キコトアル時ハ其犯罪人ハ右ノ外被害者ノ求メニ依リ其被害者ニ対シテ賠償ヲ言渡サルヽコトアル可ク而シテ其賠償ノ定メ方ハ法律上ニ之ヲ規定セサル時ハ上等裁判所又ハ下等裁判所ノ裁定ニ任カス可シ但シ上等裁判所又ハ下等裁判所ハ右被害者ノ承諾アリト雖モ其賠償ヲ各種ノ事業ニ適用ス可キ旨ヲ宣告スルコトヲ得サルモノトス
第五拾弐条 罰金、物件返還、損害賠償及ヒ費用ニ付テノ言渡ノ執行ハ拘留ノ方法ヲ以テ之ヲ要求スルコトヲ得可シ
第五拾三条 国ノ利益ニ於テ罰金及ヒ費用ヲ宣告シタル時若シ施体又ハ加辱ノ刑ノ終リシ後右金円上ノ言渡ヲ弁済セシムル為メ満一年間其刑ヲ言渡サレタル者ヲ禁錮シタルニ於テハ法律上ノ方法ニ依リ其完全ナル無資力ノ証拠ヲ獲得シタル上其者ニ於テ仮リノ釈放ヲ得ルコトヲ得可シ
其禁錮ノ期限ハ軽罪ニ関スル時ハ之ヲ減シテ六ケ月トス但シ如何ナル場合ニ於テモ若シ刑ヲ言渡サレタル者ノ幾許カ其弁済ノ資力ヲ得タル時ハ更ニ再ヒ之ヲ拘留スルコトヲ得可シ
第五拾四条 若シ刑ヲ言渡サレタル者ノ不足ナル財産ニ付キ罰金ト物件返還及ヒ損害賠償ト相牴触スル場合ニ於テハ物件返還及ヒ損害賠償ノ言渡ニ先取リノ権利アルモノトス
第五拾五条 同一ノ重罪ノ為メ又ハ同一ノ軽罪ノ為メニ刑ヲ言渡サレタル各人ハ相連帯シテ罰金、物件返還、損害賠償及ヒ費用ヲ負担ス可シ
○第四章 重罪及ヒ軽罪ニ付キ再犯ノ刑
第五拾六条 何人ニ限ラス施体又ハ加辱ノ刑ヲ言渡サレタル後更ニ主刑トシテ公権剥奪ヲ惹起スル第二回ノ重罪ヲ行ヒタル者ハ追放ノ刑ヲ言渡サル可シ
若シ第二回ノ重罪カ追放ノ刑ヲ惹起スル時ハ禁獄ノ刑ヲ言渡サル可シ
若シ第二回ノ重罪カ懲役ノ刑ヲ惹起スル時ハ有期ノ徒刑ヲ言渡サル可シ
若シ第二回ノ重罪カ禁獄ノ刑ヲ惹起スル時ハ其同刑ノ最上限ヲ言渡サル可シ但シ其刑ハ二倍ニ至ル迄之ヲ加重スルコトヲ得可キモノトス
若シ第二回ノ重罪カ有期ノ徒刑ヲ惹起スル時ハ其同刑ノ最上限ヲ言渡サル可シ但シ其刑ハ二倍ニ至ル迄之ヲ加重スルコトヲ得可キモノトス
若シ第二回ノ重罪カ流刑ヲ惹起スル時ハ無期ノ徒刑ヲ言渡サル可シ
何人ニ限ラス無期ノ徒刑ヲ言渡サレタル後更ニ同刑ヲ惹起スル第二回ノ重罪ヲ行ヒタル者ハ死刑ヲ言渡サル可シ
然レトモ陸軍又ハ海軍ノ裁判所ヨリ刑ヲ言渡サレタル者ハ通常ノ刑事ノ法律ニ従ヒ罰ス可キ重罪又ハ軽罪ノ為メ其第一回ノ刑ノ言渡ヲ宣告シタル時ニ非サレハ其後ノ重罪又ハ軽罪ノ場合ニ於テ再犯ノ刑ヲ受ケサルモノトス
第五拾七条 何人ニ限ラス重罪ノ為メ禁錮一年以上ノ刑ヲ言渡サレタル後更ニ懲治ノ刑ノミヲ以テ罰ス可キ軽罪又ハ重罪ヲ行ヒタル者ハ法律上ニ定メタル刑ノ最上限ヲ言渡サル可シ而シテ其刑ハ二倍ニ至ル迄之ヲ加重スルコトヲ得可キモノトス
其刑ヲ言渡サレタル者ハ右ノ外少クトモ五年多クトモ十年間高等警察ノ特別監視ニ附セラル可シ
第五拾八条 懲治上ニテ一年以上ノ禁錮ヲ言渡サレタル犯罪人ハ亦更ニ懲治ノ刑ノミヲ以テ罰ス可キ第二回ノ軽罪又ハ重罪ヲ行ヒタル場合ニ於テハ法律上ニ定メタル刑ノ最上限ヲ言渡サル可ク而シテ其刑ハ二倍ニ至ル迄之ヲ加重スルコトヲ得可シ又其犯罪人ハ右ノ外少クトモ五年多クトモ十年間政府ノ特別監視ニ附セラル可キモノトス
○第弐編 重罪又ハ軽罪ノ為メニ罰セラル可キ人、宥恕セラル可キ人又ハ責メニ任ス可キ人
○第壱章
第五拾九条 重罪又ハ軽罪ノ従犯ハ其重罪又ハ軽罪ノ正犯ト同一ノ刑ヲ以テ罰セラル可シ但シ法律上ニ之ト異ナレル成規ヲ定メタル場合ハ格別ナリトス
第六拾条 贈物、約束、脅迫、擅威又ハ擅権、奸計、悪策ヲ以テ重罪又ハ軽罪ノ名称ヲ附セラレタル所為ヲ教唆シ又ハ之ヲ行ハシムル為メノ差図ヲ附与シタル者ハ其重罪又ハ軽罪ノ名称ヲ附セラレタル所為ノ従犯トシテ罰セラル可シ
右ノ所為ニ用フ可キコトヲ知リテ其所為ニ用ヒタル所ノ兵器、器具又ハ総テ其他ノ方便ヲ得セシメタル者ハ亦同シ
右ノ所為ヲ設備シ又ハ容易ナラシメタル事柄ニ於テ又ハ之ヲ成就セシメタル事柄ニ於テ其所為ヲ知リテ之カ正犯一名又ハ数名ヲ幇助シタル者ハ亦同シ但シ国ノ内部又ハ外部ノ安寧ヲ害スル陰謀又ハ教唆ヲ為ス者ノ目的タル重罪ヲ行ハサリシ場合ニ於テモ其陰謀又ハ教唆ヲ為ス者ニ対シテ此法典ニ特ニ定ムル所ノ刑ト相触ルヽコトナカル可シ
第六拾壱条 国ノ安寧、公ケノ治安、各人ノ身体又ハ財産ニ対シ強奪又ハ暴行ヲ行フ兇徒ノ悪業ヲ知リテ平常之ニ宿所、隠レ場所又ハ集会場ヲ給与スル者ハ其従犯トシテ罰セラル可シ
第六拾弐条 重罪又ハ軽罪ニ依テ盗奪シ、詐取シ又ハ獲得シタル物件ノ全部又ハ一部ヲ情ヲ知テ隠匿シタル者ハ亦其重罪又ハ軽罪ノ従犯トシテ罰セラル可シ
第六拾三条 然レトモ重罪ノ正犯ニ死刑ヲ適用ス可キ時ハ隠匿者ニ関シテハ死刑ニ換ユルニ無期ノ徒刑ヲ以テス可シ
如何ナル場合ニ於テモ隠匿者カ其隠匿ノ時ニ当リテ法律上ニ死刑、無期徒刑及ヒ流刑ヲ附スル所ノ景況ヲ知リタルノ証アル時ニ非サレハ無期徒刑又ハ流刑ヲ適用ス可キ場合ニ於テ其隠匿者ニ対シテ無期徒刑又ハ流刑ヲ宣告スルコトヲ得ス若シ然ラサル時ハ其隠匿者ハ有期徒刑ノミヲ受ク可シ
第六拾四条 若シ犯罪被告人ノ其所為ノ時ニ於テ瘋癲ノ景状ニアリシ時又ハ其抗拒スルコト能ハサル力ニ依テ強制セラレタル時ハ重罪モ又軽罪モアラサルモノトス
第六拾五条 法律上ニ所為ヲ宥恕ス可キモノナリト定メ又ハ其所為ニ更ニ軽キ刑ヲ適用スルコトヲ許シタル場合ト景況トニ非サレハ如何ナル重罪又ハ軽罪ヲモ宥恕スルコトヲ得ス又其刑ヲ軽減スルコトヲ得ス
第六拾六条 重罪被告人ノ十六歳ニ足ラサル時若シ其是非ノ弁別ナクシテ事ヲ行ヒタルノ裁決アルニ於テハ之ヲ放免ス可シ然レトモ景況ニ従ヒ其重罪被告人ヲ血属親ニ交付シ又ハ裁判ヲ以テ定ムル所ノ若干年間懲治場内ニテ之ヲ教育シ且ツ拘留スル為メ懲治場内ニ送致ス可シ但シ其年数ハ右重罪被告人ノ其満二十歳ニ至リタル時期ニ超ユルコトヲ得サルモノトス
第六拾七条 若シ其重罪被告人ノ是非ヲ弁別シテ事ヲ行ヒタルノ裁決アル時ハ左ノ如クニ其刑ヲ宣告ス可シ
若シ死刑、無期徒刑、流刑ヲ受ク可キモノタル時ハ懲治場内ニ於テ十年乃至二十年ノ禁錮ノ刑ヲ言渡サル可シ
若シ有期徒刑、禁獄ノ刑、懲役ノ刑ヲ受ク可キモノタル時ハ其刑中ノ一箇ニ付キ右重罪被告人ニ言渡スコトヲ得タル可キ期限ノ少クトモ三分一、多クトモ一半ニ等シキ期限間懲治場内ニ監禁ス可キ旨ヲ言渡サル可シ
如何ナル場合ニ於テモ其重罪被告人ハ上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ少クトモ五年多クトモ十年間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
若シ其重罪被告人ノ公権剥奪又ハ追放ノ刑ヲ受ク可キモノタル時ハ一年乃至五年間懲治場内ニ監禁ス可キ旨ヲ言渡サル可シ
第六拾八条 十六歳ニ足ラサル年齢ニシテ其年齢以上ノ現在スル従犯アラサル者ノ法律上ニテ死刑、無期徒刑、流刑、禁獄ノ刑ヲ以テ罰スルモノヨリ更ニ他ノ重罪ヲ訴ヘラレタル時ハ懲治裁判所ニ於テ前二条ニ従ヒ之ヲ裁判ス可シ
第六拾九条 十六歳ニ足ラサル幼者ノ単一ナル軽罪ノミヲ行ヒタル総テノ場合ニ於テハ其幼者ニ対シテ宣告ス可キ刑ハ若シ其者ノ十六歳以上タル時ニ於テ言渡スコトヲ得可キ刑ノ一半以上ニ及フコトヲ得ス
第七拾条 無期徒刑、流刑、有期徒刑ハ裁判ノ時ニ当リテ満七十歳ノ齢ニ達シタル各人ニ対シテ之ヲ宣告ス可カラス
第七拾壱条 右ノ刑ハ満七十歳ノ齢ニ達シタル各人ニ関シテハ左ノ如ク之ヲ換フ可シ
流刑ハ無期ノ禁獄ノ刑ニ換ヘ又其他ノ刑ハ其刑ノ期限ニ従ヒ無期ノ懲役ノ刑若クハ有期ノ懲役ノ刑ニ換フ可シ
第七拾弐条 凡ソ無期又ハ有期ノ徒刑ヲ言渡サレタル者ノ満七十歳ノ齢ニ達シタル時ハ其刑ヲ免セラレ恰モ懲役ノ刑ノミヲ言渡サレタルカ如クニ其刑期ノ終リニ至ル迄ノ間苦役場内ニ監禁セラル可シ
第七拾三条 旅店又ハ旅舎ニ滞在ノ間ニ重罪又ハ軽罪ヲ行ヒタル者ヲ二十四時間以上宿泊セシメタルノ証アル旅店主及ヒ旅舎主ハ其簿冊上ニ犯罪人ノ姓名、職業、住所ヲ記入セサリシカ為メ其重罪又ハ軽罪ニ依リ若干ノ損害ヲ被リタル者ニ裁可セラレタル物件返還、賠償及ヒ費用ニ付キ民事上ニテ其責ニ任ス可キモノトス但シ民法第千九百五十二条及ヒ第千九百五十三条ノ場合ニ於ケル其責任ト相触ルヽコトナカル可シ
第七拾四条 重罪、懲治罪、違警罪ノ事件ニ付キ生スルコトアル可キ民事上責任ノ其他ノ場合ニ於テハ其事件ヲ申告セラレタル上等裁判所及ヒ下等裁判所ハ民法第三編第四巻第二章ノ成規ニ従フ可キモノトス
○第三編 重罪、軽罪及ヒ其罰
○第壱巻 公事ニ対スル重罪及ヒ軽罪
○第壱章 国ノ安寧ニ対スル重罪及ヒ軽罪
○第壱節 国ノ外部ノ安寧ニ対スル重罪及ヒ軽罪
第七拾五条 凡ソ仏蘭西ニ対シテ兵器ヲ携帯シタル各仏蘭西人ハ死刑ニ処セラル可シ
第七拾六条 何人ニ限ラス外国或ハ其役員ヲシテ仏蘭西ニ対シテ敵対ヲ行ヒ又ハ戦闘ヲ起スニ決定セシムル為メ又ハ其敵対ヲ行ヒ或ハ戦闘ヲ起スノ方便ヲ得セシムル為メ外国或ハ其役員ト共ニ奸計ヲ行ヒ又ハ之ト通謀ヲ為シタル者ハ死刑ニ処セラル可シ
右ノ成規ハ其奸計又ハ通謀ヨリ現ニ敵対ヲ為サシムルニ至ラサル場合ニ於テモ之ヲ適用ス可キモノトス
第七拾七条 何人ニ限ラス国敵ノ王国(共和国)ノ領地及ヒ其附属地ニ進入スルコトヲ容易ナラシムル為メ又ハ国敵ニ仏蘭西ニ属スル都府、城寨、陣営、港口、倉庫、武庫、船舶ヲ交付スル為メ又ハ国敵ニ兵卒、人夫、金円、糧食、兵器、弾薬ヲ供給スル為メ又ハ士官、兵卒、水夫又ハ其他ノ者ノ国王及ヒ国ニ対スル忠誠ノ心ヲ動乱シ若クハ総テ其他ノ方法ヲ以テ仏蘭西ノ所領又ハ仏蘭西ノ陸海軍ニ対スル敵兵ノ進撃ヲ助クル為メ国敵ト共ニ計策ヲ行ヒ又ハ之ト通謀ヲ為シタル者ハ亦死刑ニ処セラル可シ
第七拾八条 若シ敵国臣民トノ通信カ前条ニ表示シタル重罪中ノ一箇ヲ目的ト為サスト雖モ仏蘭西又ハ其同盟国ノ軍事上又ハ政事上ノ情況ニ有害ナル通知ヲ敵ニ給与スルノ成果アリタル時ハ其通信ヲ為シタル者ハ禁獄ノ刑ニ処セラル可シ但シ間諜ノ所為タル共議ニ依リ右ノ通知ヲ為シタル場合ニ於テハ更ニ重刑ニ処ス可キ事ト相触ルヽコトナカル可シ
第七拾九条 第七十六条及ヒ第七十七条ニ明記シタル刑ハ其二条ニ表示シタル奸計又ハ計策ヲ仏蘭西ニ対シテ行ヒタルト共同ノ敵ト戦フ仏蘭西ノ同盟国ニ対シテ行ヒタルトヲ問ハス相同シカル可シ
第八拾条 凡ソ公ケノ官吏、政府ノ役員又ハ総テ其他ノ者ノ職務上ニテ又ハ其身分ニ依リ商議或ハ出兵ノ枢密ヲ委任セラレ又ハ之ヲ知得シテ外国又ハ敵国ノ役員ニ之ヲ洩ラシタル時ハ第七十六条ニ明記シタル刑ニ処セラル可シ
第八拾壱条 凡ソ職務上ニテ城寨、武庫、港口、碇泊場ノ図面ヲ委託セラレタル公ケノ官吏、政府ノ役員、吏員ヨリ其図面数箇又ハ一箇ヲ敵国又ハ敵国ノ役員ニ交付シタル時ハ死刑ニ処ス可シ
若シ又右ノ者ヨリ其図面ヲ局外中立又ハ同盟ノモノタル外国ノ役員ニ交付シタル時ハ禁獄ノ刑ニ処ス可シ
第八拾弐条 総テ其他ノ者ノ賄賂、詐欺又ハ暴行ニ依リ右ノ図面ヲ取リ出スコトヲ得タル上ニテ之ヲ敵国又ハ外国ノ役員ニ交付シタル時ハ前条ニ定メタル差別ニ従ヒ前条ニ記載シタル官吏又ハ役員ニ同シク之ヲ罰ス可シ
若シ其図面ヲ交付シタル者ノ予メ不正ノ方法ヲ用フルコトナクシテ之ヲ得タル時ハ其刑ハ第八十一条ニ記載シタル第一ノ場合ニ於テハ流刑タル可シ
又同条ノ第二ノ場合ニ於テハ二年乃至五年ノ禁錮タル可シ
第八拾三条 何人ニ限ラス探偵ニ来リシ敵国ノ間諜又ハ兵卒ナルコトヲ知テ之ヲ隠匿シ又ハ隠匿セシメタル者ハ死刑ヲ言渡サル可シ
第八拾四条 何人ニ限ラス政府ノ許可セサル敵対ノ所為ニ依リ国ヲシテ交戦公告ノ危難ニ罹ラシメタル者ハ追放ノ刑ニ処セラル可シ若シ又之レカ為メ戦闘ニ至ラシメタル時ハ流刑ニ処セラル可シ
第八拾五条 何人ニ限ラス政府ノ許可セサル所為ニ依リ仏蘭西人ヲシテ外国ノ報復ヲ受クルノ危難ニ罹ラシメタル者ハ追放ノ刑ニ処セラル可シ
○第弐節 国ノ内部安寧ニ対スル重罪
○第壱款 国王及ヒ皇族ニ対シテ為ス所ノ乱害及ヒ陰謀
第八拾六条 皇帝ノ生命ニ対シ又ハ其身体ニ対スル乱害ハ尊属親殺害ノ刑ニ処セラル可シ
皇族各員ノ生命ニ対スル乱害ハ死刑ニ処セラル可シ
皇族各員ノ身体ニ対スル乱害ハ城砦内ニ於ケル流刑ニ処セラル可シ
凡ソ皇帝ノ身体ニ対シテ公ケニ行ヒタル不敬ハ六月乃至五年ノ禁錮ト五百「フランク」乃至一万「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ○其犯罪人ニハ右ノ外其言渡サレタル禁錮ノ期限ニ等シキ期限間第四十二条ニ記載シタル権利ノ全部又ハ一部ヲ禁止スルコトヲ得可シ○右ノ期限ハ犯罪人ノ其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ之ヲ起算スルモノトス
凡ソ皇族ノ各員ニ対シテ公ケニ行ヒタル不敬ハ一月乃至三年ノ禁錮ト百「フランク」乃至五千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第八拾七条 政府又ハ帝位嗣継ノ順序ヲ亡滅シ又ハ之ヲ変更シ若クハ国士又ハ人民ヲ挑唆シテ皇帝ノ威力ニ対シ兵器ヲ弄セシムルヲ以テ主眼ト為ス乱害ハ城砦内ニ於ケル流刑ニ処セラル可シ
第八拾八条 執行又ハ謀試ノミヲ以テ乱害ト為ス可キモノトス
第八拾九条 第八十六条及ヒ第八十七条ニ記載シタル重罪ヲ以テ主眼ト為ス陰謀ハ若シ其執行ヲ予備スル為メニ一箇ノ所為ヲ行ヒ又ハ一箇ノ所為ヲ始メタル時ハ流刑ニ処セラル可シ
若シ其陰謀ノ執行ヲ予備スル為メニ何等ノ所為ヲモ行ハス又何等ノ所為ヲモ始メサル時ハ其刑ハ禁獄ノ刑タル可シ
二人又ハ数人ノ間ニ於テ事ヲ行フノ決心ヲ共議固定シタル時ハ陰謀アリトス
若シ又第八十六条及ヒ第八十七条ニ記載シタル重罪ヲ行フ為メノ陰謀ヲ為サントスルノ発議アリテ其発議ノ承引セラレサル時ハ其発議ヲ為シタル者ハ一年乃至五年ノ禁錮ニ処セラル可シ○其犯罪人ニハ右ノ外第四十二条ニ記載シタル権利ノ全部又ハ一部ヲ禁止スルコトヲ得可シ
第九拾条 若シ一人ニテ第八十六条ニ定メタル重罪中ノ一箇ヲ行ハントスルノ決心ヲ為シ其執行ヲ予備スル為メノ所為ヲ他人ノ助ナク其者一人ニテ行ヒ又ハ之ヲ始メタル時ハ其刑ハ禁獄ノ刑タル可シ
○第弐款 内乱、兵力ノ不法ナル使用、公ケノ乱暴及ヒ劫掠ニ依リ国ヲ擾乱セントスルノ重罪
第九拾壱条 国士又ハ人民ヲシテ互ニ兵器ヲ弄セシメ又ハ兵器ヲ弄セシメントシテ内乱ヲ唆起シ若クハ一邑又ハ数邑ニ於テ乱暴、乱殺、劫掠ヲ為スヲ以テ主眼トスル悪業ハ死刑ニ処セラル可シ
本条ニ定メタル重罪中ノ一箇ヲ主眼ト為ス陰謀及ヒ其陰謀ヲ為スノ発議ハ第八十九条ニ定メタル差別ニ従ヒ同条ニ載セタル刑ニ処セラル可キモノトス
第九拾弐条 正当ノ権力アル者ノ命令又ハ許可ナクシテ兵隊ヲ召募シ又ハ招募セシメ若クハ兵卒ヲ徴集シ或ハ兵籍ニ編入シ又ハ徴集セシメ或ハ兵籍ニ編入セシメ若クハ其兵隊又ハ兵卒ニ兵器或ハ弾薬ヲ供給シ又ハ之ヲ得セシメタル者ハ死刑ニ処セラル可シ
第九拾三条 正当ノ権利又ハ理由ナクシテ一軍団、一兵隊、一船隊、一艦隊、一兵船、一城塞、一陣営、一港口、一都府ノ司令職ヲ取リタル者
政府ノ令令ニ反シテ各種ノ陸軍司令職ヲ保持シタル者
屯集セシメタル一軍又ハ一隊ノ解散又ハ離分ヲ命令セラレタル後猶其軍隊ヲ屯集シ置キタル司令官
此等ノ各人ハ死刑ニ処セラル可シ
第九拾四条 凡ソ公力ヲ処分スルコトヲ得可キ者ニシテ法ニ従ヒ定メラレタル軍人ノ招募ヲ妨クル為メ其公力ノ動作又ハ使用ヲ要求シ或ハ命令シ又ハ要求セシメ或ハ命令セシメタル各人ハ流刑ニ処セラル可シ
若シ其要求又ハ命令ノ効アリシ時ハ其犯罪人死刑ニ処セラル可シ
第九拾五条 凡ソ地雷火ノ破裂ニ依リ国ニ属スル建築物、倉庫、武庫、船艦又ハ其他ノ所有物ヲ焚毀シ又ハ毀壊シタル各人ハ死刑ニ処セラル可シ
第九拾六条 何人ニ限ラス公ケノ所領、所有物或ハ金円又ハ国ニ属スル城寨、都府、堡砦、陣営、倉庫、武庫、港口、艦船ヲ侵占センカ為メ若クハ公ケノ所有物或ハ国ノ所有物又ハ人民一般ノ所有物ヲ劫掠シ又ハ分派スル為メ若クハ此等ノ重罪ノ主犯ヲ制スル公力ニ対シテ攻撃又ハ抗拒ヲ為ス為メ兵器ヲ携ヘタル群衆ノ首トナリ又ハ其群衆中ニ於テ一箇ノ職務或ハ司令ヲ行ヒタル者ハ死刑ニ処セラル可シ
其結合ヲ指揮シ、群衆ヲ招募シ或ハ招募セシメ又ハ之ヲ編成シ或ハ編成セシメ又ハ情ヲ知リ且ツ任意ニテ其群衆ニ兵器、弾薬又ハ重罪ノ器具ヲ供給シ或ハ之ヲ得セシメ又ハ糧餉ノ輜重ヲ送リ又ハ総テ其他ノ方法ヲ以テ其群衆ノ指揮者又ハ司令者ト通謀ヲ行ヒタル者ニハ右ト同一ノ刑ヲ適用ス可シ
第九拾七条 一箇ノ群衆ニ於テ第八十六条、第八十七条、第九十一条ニ記載シタル重罪中ノ一箇又ハ数箇ヲ執行シ又ハ唯謀試シタル場合ニ於テハ其群衆中ニ加ハリタル者ニシテ其騒乱ヲ為ス集合ノ地ニ於テ召捕ヘラレタル各人ニ等級ノ差別ナク死刑ヲ適用ス可シ
其地ニ於テ召捕ヘラレスト雖モ其騒乱ヲ指揮シ又ハ其群衆中ニ於テ各種ノ役務又ハ司令ヲ執行シタル各人ハ右ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
第九拾八条 其騒乱ヲ為ス集合カ第八十六条、第八十七条、第九十一条ニ表示シタル重罪中ノ一箇又ハ数箇ヲ目的又ハ成果ト為シタル場合ノ外ハ前ニ記シタル群衆中ニ加ハリテ其司令ヲモ又役務ヲモ執行スルコトナク其地ニ於テ召捕ヘラレタル各人ハ流刑ニ処セラル可シ
第九拾九条 右群衆ノ主眼及ヒ性質ヲ知リテ強制セラルヽコトナク之ニ宿所、隠レ場所又ハ集会場ヲ給与シタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第壱百条 右ノ群衆中ニ加ハリタレトモ何等ノ司令ヲモ執行スルコトナク且ツ何等ノ役務ヲモ又職務ヲモ履行スルコトナクシテ文官又ハ武官ノ第一回ノ叱責ニ依リ引退キタル者又ハ其後ト雖モ抗拒ヲ為スコトナク且ツ兵器ナクシテ其騒乱ヲ為ス集合ノ地ノ外ニ於テ召捕ヘラレタル者ニ対シテハ騒乱ノ所為ノ為メ何等ノ刑ヲモ宣告ス可カラス
此場合ニ於テ右ノ者ハ其己レ一個ニテ行ヒタル別段ノ重罪ノミノ為メニ罰セラル可シ然レトモ其者ヲ五年間又ハ多クトモ十年間高等警察ノ特別監視ニ附スルコトヲ得可キモノトス
第百壱条 兵器ト言ヘル語ハ凡ソ切リ、刺シ又ハ殴傷スル各種ノ器械器具ヲ包含スルモノトス
懐中小刀、剪刀及ヒ通常ノ杖ハ殺シ傷ケ又ハ打ツ為メニ之ニ用ヒタルトキニ非サレハ兵器ト看做ス可カラス
○本節ノ二款ニ共通ノモノタル成規
第百弐条
○第三節 国ノ内部又ハ外部ノ安寧ヲ害スル重罪ヲ洩露シ及ヒ洩露セサル事
第百八条 第百三条ヨリ第百七条ニ至ル迄ノ各条ハ千八百三十二年四月二十八日ノ法律第十二条ヲ以テ削除シタリ
凡ソ国ノ内部又ハ外部ノ安寧ヲ害スル陰謀又ハ其他ノ重罪ヲ執行シ又ハ謀試スル前及ヒ総テ起訴ノ始マラサル前ニ政府又ハ行政官又ハ司法警察官ニ其陰謀又ハ重罪及ヒ其正犯又ハ従犯ヲ第一ニ通知シタル犯罪人又ハ起訴ノ始マリシ後ト雖モ其正犯又ハ従犯ノ逮捕ヲ得セシメタル犯罪人ハ其陰謀又ハ其他ノ重罪ノ正犯ニ対シテ宣告スル所ノ刑ヲ免セラル可シ
然レトモ右ノ通知ヲ為シ又ハ其逮捕ヲ得セシメタル犯罪人ハ終身又ハ定期間高等警察ノ監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
○第弐章 憲法ニ対スル重罪及ヒ軽罪
○第壱節 国士権ノ執行ニ関スル重罪及ヒ軽罪
第百九条 若シ乱群、強暴又ハ脅迫ニ依リ国士一名又ハ数名ノ其国士権ヲ執行スルコトヲ妨ケタル時ハ其各犯罪人ハ少クトモ六月多クトモ二年ノ禁錮ト少クトモ五年多クトモ十年間投票ヲ為シ及ヒ選挙ヲ受クル権利ノ禁止トニ処セラル可シ
第百拾条 若シ王国(共和国)ノ全部若クハ一州又ハ数州若クハ一郡又ハ数郡ニ於テ執行スル為メニ共議シタル計策ニ依リ右ノ重罪ヲ行ヒタル時ハ其刑ハ追放ノ刑タル可シ
第百拾壱条 凡ソ選挙ノ投票ニ於テ各国士ノ人撰ヲ記シタル投票ノ計算ヲ委任セラレタル者ニシテ其投票ヲ変造シ又ハ其合部中ヨリ之ヲ取去リ又ハ其合部中ニ之ヲ添加シ又ハ文字ヲ書スルコト能ハサル投票者ノ投票ニ其申述シタルモノヨリ更ニ他ノ姓名ヲ記入スルヲ発見セラレタル国士ハ公権剥奪ノ刑ニ処セラル可シ
第百拾弐条 総テ其他ノ各人ニシテ前条ニ表示シタル罪ヲ犯シタル者ハ少クトモ六月多クトモ二年ノ禁錮ト少クトモ五年多クトモ十年間投票ヲ為シ及ヒ選挙ヲ受クル権利ノ禁止トニ処セラル可シ
第百拾三条 凡ソ選挙ニ於テ一個ノ人撰ヲ若干ノ価ニテ買ヒ又ハ売リタル各個ノ国士ハ少クトモ五年多クトモ十年間国士ノ権利及ヒ総テ公ケノ職務又ハ役務ノ禁止ニ処セラル可シ
右ノ外其人撰ノ売主及ヒ買主ハ各々其収受シ又ハ約束シタル物ノ価額ニ二倍シタル罰金ヲ言渡サル可シ
○第弐節 自由ニ対スル乱害
第百拾四条 若シ公ケノ官吏、政府ノ役員又ハ吏員カ或ル擅枉ナル所為又ハ各人ノ自由若クハ国士一名或ハ数名ノ国士権若クハ国憲ヲ乱害スル或ル所為ヲ命令シ又ハ行ヒタル時ハ公権剥奪ノ刑ニ処セラル可シ
若シ然レトモ其命ニ順聴ス可キ長官ノ管轄タル事項ニ付キ其長官ノ命令ニ依テ事ヲ行ヒタル旨ヲ証明スル時ハ其刑ヲ免セラレ而シテ此場合ニ於テハ其命令ヲ附与シタル長官ノミニ其刑ヲ適用スヘキモノトス
第百拾五条 若シ各省卿ノ前条ニ記載シタル所為又ハ其所為中ノ一箇ヲ命令シ又ハ行ヒ而シテ共和立国第十二年「フロレアル」月二十八日ノ元老院決定書第六十三条及ヒ第六十七条ニ記載シタル告戒ノ後猶其決定書ニ定メタル期限内ニ右ノ所為ヲ改メシムルコトヲ否拒シ又ハ之ヲ怠リタル時ハ追放ノ刑ニ処セラル可シ
第百拾六条 若シ国憲ニ反スル所為ヲ命令シ又ハ許可シタルノ罪ヲ訴ヘラレタル各省卿ニ於テ其己レニ帰セラレタル署名ノ他人ノ詭詐ニ依レル旨ヲ称言スル時ハ其各省卿ハ右ノ所為ヲ止メシメテ其詭詐ノ正犯ナリト申述スル所ノ者ヲ告発ス可ク若シ然ラサレハ己レ自カラ其罪ヲ訴ヘラル可シ
第百拾七条 第百十四条ニ明記シタル乱害ノ為メニ宣告セラルヽコトアル可キ損害賠償ハ刑事ノ起訴ニ依リ若クハ民事ノ方法ヲ以テ之ヲ訟求ス可ク而シテ其被害者ト其景況及ヒ受ケタル損害トニ准シテ之ヲ規定ス可シ但シ其場合ノ如何ヲ問ハス又被害者ノ何人タルヲ問ハス右ノ損害賠償ハ各人ヲ不法擅枉ニ収監シタル日毎ニ二十五「フランク」以下タルコトヲ得サルモノトス
第百拾八条 若シ各省卿又ハ公ケノ官吏ノ姓名偽署ニ拠リ国憲ニ反スル所為ヲ行ヒタル時ハ其偽造ノ正犯及ヒ情ヲ知テ之ヲ用ヒタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ但シ此場合ニ於テハ常ニ必ス其刑ノ最上限ヲ適用ス可キモノトス
第百拾九条 行政警察又ハ司法警察ヲ任セラレタル公ケノ官吏ニシテ囚人収監ノ用ニ供シタル廠舎内若クハ其他ノ各所ニ於ケル不法擅枉ノ収監ヲ証明セントスル適法ノ要求ニ応スルコトヲ否拒シ又ハ之ヲ怠リ而シテ其収監ヲ高等官憲ニ上申シタル旨ヲ証明セサル者ハ公権剥奪ノ刑ニ処セラレ且ツ損害賠償ヲ担任ス可キモノトス但シ其損害賠償ハ第百十七条ニ記シタル如ク之ヲ規定ス可シ
第百弐拾条 留置場、収監場、拘留場、服役場ノ監守人及ヒ門監ニシテ令状又ハ裁判書ナク又ハ政府ノ仮リノ命令書ナクシテ囚人ヲ収受シタル者又ハ検事或ハ裁判官ノ禁止ヲ証明セスシテ囚人ヲ引留メ又ハ之ヲ警察官吏或ハ其命令書ノ所持人ニ示スコトヲ否拒シタル者又ハ其簿冊ヲ警察官吏ニ示スコトヲ否拒シタル者ハ擅枉ナル収監ノ罪アリトシテ六月乃至二年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第百弐拾壱条 凡ソ司法警察官吏、検事長又ハ検事、其代職又ハ裁判官ニシテ国ノ法律ニ定メタル許可ナクシテ各省卿若クハ貴族院、代議士院、参議院ノ各議員ニ対スル一身上ノ起訴又ハ其重罪公訴ヲ為サシムル裁判書、命令書又ハ令状ヲ要求シ、附与シ又ハ之ニ署名シタル者又ハ現行犯罪或ハ公ケノ叫喚ノ場合ヲ除クノ外右ニ同シキ許可ナクシテ各省卿一名或ハ数名又ハ貴族院、代議士院、参議院ノ各議員ヲ召捕ヘ又ハ之ヲ逮捕スルノ命令書又ハ令状ヲ附与シ又ハ之ニ署名シタル者ハ涜職ノ罪アリトシテ公権剥奪ノ刑ニ処セラル可シ
第百弐拾弐条 検事長、検事、其代職、裁判官又ハ公ケノ役員ニシテ政府又ハ行政官ヨリ定メタル場所ノ外ニ於テ人ヲ拘留シ又ハ拘留セシメタル者又ハ予メ法ニ適シテ重罪裁判所ニ移ス旨ノ言渡ナクシテ一個ノ国士ヲ重罪裁判所ニ送致シタル者ハ亦公権剥奪ノ刑ニ処セラル可シ
○第三節 官吏ノ通同
第百弐拾三条 凡ソ公ケノ威権ノ一部分ヲ預カル各人又ハ各局ノ集合ニ依リ若クハ此等ノ者ノ間ニ於ケル代理者ノ送遣又ハ書信ノ往復ニ依リ法律ニ反スル処分ヲ共議シタル時ハ各個ノ犯罪人ニ対シテ少クトモ二月多クトモ六月ノ禁錮ヲ言渡ス可シ而シテ又右ノ外其犯罪人ニ多クトモ十年間国士権及ヒ総テ公ケノ役務ノ禁止ヲ言渡スコトヲ得可キモノトス
第百弐拾四条 若シ前ニ明記シタル方法中ノ一個ニ依リ法律ノ執行ヲ妨ケ又ハ政府ノ命令ニ反スル処分ヲ共議シタル時ハ其刑ハ追放ノ刑タル可シ若シ又文官ト軍隊又ハ其首長トノ間ニ右ノ共議ヲ為シタル時ハ其正犯又ハ教唆者タル各人ハ流刑ニ処セラル可ク其他ノ犯罪人ハ追放セラル可シ
第百弐拾五条 其共議カ国ノ内部ノ安寧ヲ害スル陰謀ヲ以テ目的又ハ成果ト為シタル場合ニ於テハ其犯罪人ハ死刑ニ処セラル可シ
第百弐拾六条 公ケノ官吏ノ相合議シテ退職ヲ申立ツルコトヲ決シ而シテ裁判ノ管理若クハ各種公務ノ履行ヲ妨ケ又ハ停止スルヲ以テ其目的ト為シ又ハ其成果ト為シタル時ハ涜職ノ罪アリトシテ公権剥奪ノ刑ニ処セラル可シ
○第四節 行政権及ヒ司法権ノ侵害
第百弐拾七条 左ノ各人ハ涜職ノ罪アリトシテ公権剥奪ノ刑ニ処セラル可シ
第一 裁判官、検事長、検事又ハ其代職或ハ警察官吏ニシテ法律上ノ成規ヲ包含スル規則ヲ設ケ若クハ一箇又ハ数箇ノ法律ノ執行ヲ防止シ又ハ停止シ若クハ法律ヲ公布シ又ハ執行ス可キヤ否ヲ定ムル為メニ議決ヲ為シテ立法権ノ執行ニ干渉シタル者
第二 裁判官、検事長、検事又ハ其代職或ハ司法警察官吏ニシテ行政権ノ管轄ニ帰セラレタル事項ニ付キ規則ヲ作リ若クハ行政権ヨリ発シタル命令ヲ執行スルコトヲ禁止スルニ依リ行政権ノ管轄ニ帰セラレタル事項ニ干渉シテ其権限ヲ越ヘタル者又ハ行政官ヲ其職務執行ノ為メニ呼出スコトヲ許ルシ又ハ命令シタル上ニテ其裁判又ハ命令ノ取消ヲ宣告セラレ又ハ権限牴触ノ裁定書ヲ送付セラレタルニ拘ハラス其裁判又ハ命令ヲ執行スルニ於テ固執シタル者
第百弐拾八条 裁判官其申告ヲ受ケタル訴訟事件ニ付キ明確ニ行政権ヨリ其管轄取戻ノ照会ヲ受ケ而シテ高等官憲ノ裁決アラサル前ニ其裁判ヲ為シタル時ハ各々少ナクトモ十六「フランク」多クトモ百五十「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
右ノ裁判ノ為メニ請求ヲ為シ又ハ意見申立ヲ為シタル検察官ハ右ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
第百弐拾九条 関係各人又ハ行政権ヨリ適法ノ要求ヲ受ケタル後政府ノ許可ナクシテ其職務ノ執行ニ於テ重罪又ハ軽罪ヲ行ヒシ旨ヲ訴ヘラレタル政府ノ役員又ハ吏員ニ対シテ命令書ヲ発シ又ハ令状ヲ附与シタル各個ノ裁判官ニ対スル刑ハ少クトモ百「フランク」多クトモ五百「フランク」ノ罰金タル可シ
右ノ命令書又ハ令状ヲ請求シタル検察官又ハ警察官ニモ右ト同一ノ刑ヲ適用ス可シ
第百三拾条 第百二十七条ノ第一ニ記シタル如ク立法権ノ執行ニ干渉シ又ハ上等裁判所或ハ下等裁判所ニ各種ノ命令又ハ禁止ヲ諭示スル為メノ一般ノ命令ヲ為スコトニ干預シタル州長、郡長、邑長及ヒ其他ノ行政官ハ公権剥奪ノ刑ニ処セラル可シ
第百三拾壱条 若シ右ノ行政官カ裁判所ノ管轄タル私ノ権利及ヒ利益ヲ裁定スルコトニ干預シテ司法ノ職務ヲ行ハント為シ原告人及ヒ被告人ノ双方又ハ其一方ヨリ異論ノ申立ヲ受ケシ後猶高等官憲ノ宣告アラサル前ニ其訴訟事件ヲ裁定シタル時ハ少クトモ十六「フランク」多クトモ百五十「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
○第三章 公ケノ治安ニ対スル重罪及ヒ軽罪
○第壱節 偽造
○第壱款 貨幣ノ偽造
第百三拾弐条 何人ニ限ラス仏蘭西ニ於テ法律上ノ通用アル金銀貨幣ヲ偽造シ或ハ変造シ又ハ其偽造シ或ハ変造シタル貨幣ノ発行又ハ展示ニ参加シ又ハ之ヲ仏蘭西ノ領地ニ輸入スルコトニ参加シタル者ハ無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
仏蘭西ニ於テ法律上ノ通用アル混合銅貨又ハ銅貨ヲ偽造シ或ハ変造シ又ハ其偽造シ或ハ変造シタル貨幣ノ発行又ハ展示ニ参加シ又ハ之ヲ仏蘭西ノ領地ニ輸入スル事ニ参加シタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第百三拾三条 凡ソ仏蘭西ニ於テ外国ノ貨幣ヲ偽造シ或ハ変造シ又ハ其偽造シ或ハ変造シタル外国ノ貨幣ヲ発行シ展示シ又ハ之ヲ仏蘭西ニ輸入スルコトニ参加シタル各人ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第百三拾四条 何人ニ限ラス金属ノ性合ヲ偽ラントスルノ主眼ヲ以テ仏蘭西ニ於テ法律上ノ通用アル貨幣又ハ外国ノ貨幣ニ着色シ又ハ此等ノ貨幣ヲ発行シ或ハ仏蘭西ノ領地ニ輸入シタル者ハ六月乃至三年ノ禁錮ニ処セラル可シ
右ノ如クニ着色シタル貨幣ノ発行又ハ輸入ニ参加シタル者ハ右ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
第百三拾五条 前数条ニ表示シタル参加ハ偽造シ、変造シ又ハ着色シタル貨幣ヲ良質ノモノト思ヒ収受シタル上ニテ更ニ再ヒ之ヲ行使シタル者ニ適用ス可カラサルモノトス
然レトモ右貨幣ノ悪質タルコトヲ験明シ又ハ験明セシメタル後ニ之ヲ行使シタル者ハ其行使シタル貨幣ノ表示スル金額ノ少クトモ三倍多クトモ六倍ニ当レル罰金ニ処セラル可シ但シ其罰金ハ如何ナル場合ニ於テモ十六「フランク」ヨリ少ナキコトヲ得サルモノトス
第百三拾六条及ヒ第百三拾七条ノ二条ハ千八百三十二年四月二十八日ノ法律ヲ以テ削除シタリ
第百三拾八条 第百三十二条ニ記載シタル重罪ヲ犯シタル各人ハ其重罪ヲ成就セサル前且ツ総テ起訴ヲ受ケサル前ニ其重罪ヲ設置セラレタル官憲ニ告知シテ其正犯ヲ洩露シ又ハ其起訴ノ始マリシ後ト雖モ他ノ犯罪人ノ逮捕ヲ得セシメタル時ハ刑ヲ免セラルルモノトス
然レトモ右ノ各人ハ終身又ハ定期間、高等警察ノ特別監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
○第弐款 国璽、銀行ノ切手、公ケノ手形及ヒ鑿記、印章、記号ノ偽造
第百三拾九条 国璽ヲ偽造シ又ハ偽造シタル国璽ヲ用ヒタル者
国庫ノ印章ヲ附シテ国庫ヨリ発行シタル手形若クハ法律上ニテ許可セラレタル銀行ノ切手ヲ偽造シ或ハ変造シ又ハ其偽造シ或ハ変造シタル手形及ヒ切手ヲ用ヒ又ハ之ヲ仏蘭西領地ノ区域内ニ輸入シタル者
右等ノ者ハ無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第百四拾条 一箇又ハ数箇ノ国ノ印章若クハ森林ノ記号ニ用フル国ノ烙印若クハ金銀ノ物料ニ記号ヲ附スルニ用フル一箇又ハ数箇ノ鑿記ヲ偽造シ或ハ変造シ又ハ其偽造シ或ハ変造シタル書類、手形、印章、烙印、鑿記ヲ用ヒタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ但シ此場合ニ於テハ常ニ必ス其刑ノ最上限ヲ適用ス可キモノトス
第百四拾壱条 何人ニ限ラス第百四十条ニ明記シタル一箇ノ用方アル真正ノ印章、烙印、鑿記ヲ不当ニ得タル上ニテ国ノ権利又ハ利益ニ害アル適用又ハ用方ヲ為シタル者ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第百四拾弐条 政府ノ名ヲ以テ各種ノ飲食物又ハ商品ニ附スルノ用ニ供シタル記号ヲ偽造シ又ハ某偽造ノ記号ヲ用ヒタル者若クハ各種ノ官憲ノ璽印、印章、記号ヲ偽造シ又ハ其偽造シタル璽印、印章、記号ヲ用ヒタル者若クハ郵便切手ヲ偽造シ又ハ故意ヲ以テ偽造シタル郵便切手ヲ用ヒタル者ハ少クトモ二年多クトモ五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可シ
又其犯罪人ハ上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
右ニ記シタル成規ハ其同一ノ犯罪ノ謀試ニ適用ス可キモノトス
第百四拾三条 何人ニ限ラス第百四十二条ニ明記シタル一箇ノ用方アル真正ノ璽印、印章、記号ヲ不当ニ得タル上ニテ国ノ権利或ハ利益又ハ各種ノ官憲ノ権利或ハ利益ニ害アル適用又ハ用方ヲ為シ又ハ為サント謀試シタル者ハ六月乃至三年ノ禁錮ニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可シ
又其犯罪人ハ上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
第百四拾四条 第百三十八条ノ成規ハ第百三十九条ニ記載シタル重罪ニ適用ス可キモノトス
○第三款 公ケノ書類又ハ公正ノ書類及ヒ商業或ハ銀行ノ書類ノ偽造
第百四拾五条 凡ソ公ケノ官吏又ハ役員ニシテ其職務ノ執行ニ於テ左ノ方法ニ依リ偽造ヲ行ヒタル者
偽リノ署名
証書、手書、署名ノ変造
人ノ仮設
公ケノ簿冊又ハ其他ノ公ケノ証書ヲ成就シ又ハ之ヲ終成シタル後ニ其簿冊又ハ証書ニ為シタル手書又ハ挿入シタル手書
右ノ者ハ無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第百四拾六条 凡ソ公ケノ官吏又ハ役員ニシテ其参渉ノ証書ヲ作ルニ当リ契約者ヨリ指示サレ又ハ口授セラレタルモノヨリ更ニ他ノ合意ヲ書記シ若クハ偽リノ事柄ヲ真正ナリトシテ証明シ又ハ自認セサル事柄ヲ自認シタリトシテ証明スルニ依リ詐テ其証書ノ本旨又ハ景況ヲ変性セシメタル者ハ亦無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第百四拾七条 凡ソ右ニ記シタルヨリ更ニ他ノ各人ニシテ左ノ方法ニ依リ公正ノ書類及ヒ公ケノ書類又ハ商業或ハ銀行ノ書類ニ付キ偽造ヲ行ヒタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
手書又ハ署名ノ偽造又ハ変造
合意、処分、義務ノ証又ハ義務免除ノ証ヲ仮作スル事又ハ右ノ証書ヲ作リシ後ニ妄ニ此等ノ諸件ヲ記入スル事
右ノ証書ヲ以テ収受シ及ヒ証明スルコトヲ目的ト為ス所ノ約款、申述又ハ事柄ヲ添加スル事又ハ変造スル事
第百四拾八条 本款ニ明記シタル総テノ場合ニ於テ其偽造ノ証書ヲ用ヒタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第百四拾九条 往来切手、軍人ノ往来切手及ヒ猟ノ免状ニ付キ行ヒタル偽造ハ前ノ成規ノ例外ニシテ此等ノ諸件ニ付テハ以下ニ於テ別段ニ之ヲ規定スルモノトス
○第四款 私シノ書類ノ偽造
第百五拾条 凡ソ第百四十七条ニ明記シタル方法中ノ一箇ヲ以テ私シノ書類ニ於ケル偽造ヲ行ヒタル各人ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第百五拾壱条 其偽造シタル書類ヲ用ヒタル者ハ右ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
第百五拾弐条 以下ニ記スル書類ノ偽造ノ保証書ハ前ノ成規ノ例外ナリトス
○第五款 往来切手、猟ノ免状、軍人ノ往来切手及ヒ保証書ニ付キ行ヒタル偽造
第百五拾三条 何人ニ限ラス往来切手或ハ猟ノ免状ヲ偽造シ又ハ原来真正ノモノタル往来切手或ハ猟ノ免状ヲ変造シ又ハ其偽造シ或ハ変造シタル往来切手或ハ猟ノ免状ヲ用ヒタル者ハ少クトモ六月多クトモ三年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第百五拾四条 何人ニ限ラス往来切手又ハ猟ノ免状ニ於テ仮設ノ姓名ヲ用フル者又ハ仮設ノ姓名ヲ以テ往来切手ヲ交付セシムルニ付キ証人トナリテ助成シタル者ハ三月乃至一年ノ禁錮ニ処セラル可シ
自己ノ姓名ヨリ更ニ他ノ姓名ヲ以テ交付シタル往来切手又ハ猟ノ免状ヲ用ヒタル各人ニハ右ト同一ノ刑ヲ適用ス可キモノトス
旅舎主及ヒ旅店主ニシテ其宿泊シタル旅客ヲ情ヲ知テ偽造又ハ仮設ノ姓名ニテ其簿冊上ニ記入シタル者又ハ旅客ト相通謀シテ之ヲ記入スルコトヲ遺脱シタル者ハ少クトモ六日多クトモ三月ノ禁錮ニ処セラル可シ
第百五拾五条 公ケノ役員ニシテ其自カラ知ラサル者ノ姓名及ヒ分限ヲ己レノ知ル所ノ国士二名ヲシテ証明セシムルコトナク之ニ往来切手ヲ交付シ又ハ交付セシメタル者ハ一月乃至六月ノ禁錮ニ処セラル可シ
若シ公ケノ役員カ姓名ノ仮設ヲ知リタルト雖トモ其仮設ノ姓名ヲ以テ往来切手ヲ交付シ又ハ交付セシメタル時ハ少クトモ一年多クトモ四年ノ禁錮ニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可シ
第百五拾六条 何人ニ限ラス軍人ノ往来切手ヲ偽造シ又ハ原来真正ノモノタル軍人ノ往来切手ヲ変造シ又ハ其偽造シ或ハ変造シタル軍人ノ往来切手ヲ用ヒタル者ハ左ノ刑ニ処セラル可シ
若シ偽造ノ軍人往来切手カ公ケノ官憲ノ監視ヲ詐リ免カルヽコトノミヲ以テ目的ト為ス時ハ少クトモ六月多クトモ三年ノ禁錮ニ処セラル可シ
若シ国庫ヨリ偽造ノ軍人往来切手ノ所持人ニ其得可カラサル旅費ヲ弁済シ又ハ其得可キノ権利アル高ニ過キタル旅費ヲ弁済シタル時ハ少クトモ一年多クトモ四年ノ禁錮ニ処セラル可シ但シ其金額ノ百「フランク」以下タル時ニ限ル
若シ又軍人往来切手ノ所持人ニ於テ不当ニ収取シタル金額カ百「フランク」以上ニ登ル時ハ少クトモ二年多クトモ五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
右最後ニ記シタル二箇ノ場合ニ於テハ其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可シ
又其犯罪人ハ上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
第百五拾七条 前条ニ載セタル刑ハ其条ニ定メタル差別ニ従ヒ凡ソ仮設ノ姓名ヲ以テ軍人往来切手ヲ公ケノ役員ヨリ交付セシメ又ハ自己ノ姓名ヨリ更ニ他ノ姓名ヲ以テ交付シタル軍人往来切手ヲ用ヒタル各人ニ適用ス可キモノトス
第百五拾八条 若シ公ケノ役員カ軍人往来切手ヲ交付セシ時姓名ノ仮設ヲ知リタルニ於テハ左ノ如ク刑ニ処セラル可シ
第百五十六条ニ定メタル第一ノ場合ニ於テハ少クトモ一年多クトモ四年ノ禁錮ニ処セラル可シ
同条ノ第二ノ場合ニ於テハ少クトモ二年多クトモ五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第三ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
右最初ニ記シタル二箇ノ場合ニ於テハ其公ケノ役員ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可シ
第百五拾九条 何人ニ限ラス己レ自カラ各種ノ公役ヲ免カレ又ハ他人ヲシテ之ヲ免カレシムル為メ医師、外科医師又ハ其他ノ医学得業生ノ姓名ヲ以テ疾病廃疾ノ保証書ヲ仮作シタル者ハ少クトモ一年多クトモ三年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第百六拾条 凡ソ医師、外科医師又ハ其他ノ医学得業生ニシテ或人ヲ曲庇スル為メ公役ヲ免カレシムルコトヲ得可キ疾病廃疾ヲ詐テ保証シタル者ハ少クトモ一年多クトモ三年ノ禁錮ニ処セラル可シ
若シ右ノ者ノ贈与又ハ約束ニ依テ心ヲ動カサレタル時ハ禁錮ノ刑ハ少クトモ一年多クトモ四年タル可シ
右二箇ノ場合ニ於テハ其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可シ
右第二ノ場合ニ於テハ其行賄者ハ偽リノ保証書ヲ交付シタル医師、外科医師又ハ医学得業生ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
第百六拾壱条 何人ニ限ラス指定セラレタル人ノ為メニ政府又ハ人民ノ仁慈ヲ引起サシメ而シテ其人ニ地位、信用又ハ扶助ヲ得セシムルコトヲ得可キ善良ナル品行ノ保証書、貧困ノ保証書又ハ其他ノ景況ノ保証書ヲ公ケノ官吏又ハ役員ノ姓名ヲ用ヒテ仮作シタル者ハ六月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
又左ノ各人ニモ右ト同一ノ刑ヲ適用ス可シ
第一 右ニ記シタル種類ノ保証書ヲ始メ交付セラレシ人ヨリ更ニ他ノ者ニ之ヲ適当セシムル為メ原来真正ナル其保証書ヲ変造シタル者
第二 斯クノ如クニ仮作シ又ハ変造シタル保証書ヲ用ヒタル者
若シ通常人民ノ姓名ヲ用ヒテ右ノ保証書ヲ仮作シタル時ハ其仮作又ハ使用ハ十五日乃至六月ノ禁錮ニ処セラル可シ
第百六拾弐条 凡ソ第三ノ人ニ対シテ損失ヲ生セシメ若クハ国庫ニ対シテ損害ヲ生セシム可キ総テ其他ノ性質ノ保証書ヲ偽造シタル時ハ其場合ニ準シ本節ノ第三款及ヒ第四款ノ成規ニ従ヒ刑ニ処セラル可シ
○共通ノ成規
第百六拾三条 贋造シ、偽造シ、仮作シ、変造シタル貨幣、切手、璽印、印章、烙印、鑿記、記号及ヒ文書ヲ用ヒタル者ニ対シテ定メタル刑ノ適用ハ其偽造物ヲ用ヒタル者ニ於テ偽造ヲ知ラサリシ時ハ之ヲ止ム可シ
第百六拾四条 其犯罪人ニ対シテハ其最下限ノ百「フランク」其最上限ノ三千「フランク」タル罰金ヲ宣告ス可シ然レトモ其罰金ハ偽造ノ為メニ其重罪又ハ軽罪ノ正犯又ハ其従犯又ハ偽造物ヲ用ヒタル者ニ得セシメ又ハ得セシメント図リタル不正当ノ利益ノ四分一迄ニ至ラシムルコトヲ得可シ
第百六拾五条 凡ソ偽造者ニシテ徒刑若クハ懲役ノ刑ヲ言渡サレタル者ハ公肆ヲ受ク可シ
○第弐節 公ケノ官吏涜職ノ罪及ヒ官吏ノ其職務ノ執行ニ於ケル重罪及ヒ軽罪
第百六拾六条 凡ソ公ケノ官吏ノ其職務ノ執行ニ於テ行ヒタル重罪ハ涜職ノ罪ナリトス
第百六拾七条 凡ソ法律上ニテ更ニ重劇ノ刑ヲ定メサル涜職ノ罪ハ公権剥奪ノ刑ニ処セラル可シ
第百六拾八条 単一ナル軽罪ノミニテハ官吏ニ涜職ノ罪アリトセス
○第壱款 公ケノ受託者ノ行ヒタル窃取
第百六拾九条 凡ソ収税官吏、収税ノ手伝役、公ケノ受託者又ハ会計者ニシテ其職務ニ拠リ自己ノ手裏ニアル所ノ公私ノ金円又ハ之ニ代用ス可キ能働ノ手形又ハ証拠物、証券、証書、動産ヲ詐取シ又ハ窃取シタル者ハ若シ其詐取シ又ハ窃取シタル物カ三千「フランク」以上ノ価アルモノタル時ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第百七拾条 其詐取シ又ハ窃取シタル金円又ハ物品ノ価額カ一旦受取リ又ハ受託シタル金円又ハ物品ニ関スルニ於テハ其受取高又ハ受託高ノ三分一ニ等シク或ハ之ニ過クル時若クハ保証金ヲ差出ス可キ職役ニ附添シタル受取高又ハ受託高ニ関スルニ於テハ其保証高ニ等シク或ハ之ニ過クル時若クハ保証金ヲ差出スニ及ハスシテ漸次ニ収受シタル受取高ニ関スルニ於テハ一月間収受ノ通常ノ上リ高ノ三分一ニ等シク或ハ之ニ過クル時ハ其詐取シ又ハ窃取シタル金円又ハ物品ノ価額如何ヲ問ハス右ニ同シク有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第百七拾壱条 若シ詐取シ又ハ窃取シタル価額カ三千「フランク」以下ニシテ且ツ前条ニ明記シタル限度ノ以下タル時ハ其刑ハ少クトモ二年多クトモ五年ノ禁錮タル可ク且ツ其刑ヲ言渡サレタル者ハ右ノ外永久何等ノ公ケノ職務ヲモ執行スルコト能ハサル旨ヲ宣告セラル可シ
第百七拾弐条 前三条ニ明記シタル場合ニ於テハ常ニ必ス其言渡ヲ受ケタル者ニ対シテ罰金ヲ宣告ス可シ但シ其罰金ノ最上限ハ物件返還及ヒ賠償高ノ四分一ニシテ其最下限ハ之レカ十二分一タル可キモノトス
第百七拾三条 凡ソ裁判官、行政官、公ケノ官吏又ハ役員ニシテ其分限ヲ以テ受託シタル証書及ヒ証券又ハ其職務ノ為メニ交付セラレ或ハ通知伝観セシメラレタル証書及ヒ証券ヲ破毀シ、滅却シ、窃取シ又ハ詐取シタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
凡ソ政府若クハ公ケノ受託者ヨリ委任ヲ受ケタル代理員、下役又ハ手伝役ニシテ右ニ同シキ窃取ノ罪ヲ犯シタル者ハ亦右ニ同シキ刑ニ処セラル可シ
○第弐款 公ケノ官吏ノ行ヒタル貪利
第百七拾四条 凡ソ公ケノ官吏、公ケノ役員又ハ此等ノ者ノ手伝役或ハ下役若クハ公ケノ又ハ邑ノ租税、金円、入額ノ収受役及ヒ其収受役ノ手伝役或ハ下役ニシテ其租税、金円、入額ノ為メ又ハ謝金、俸給ノ為メニ其受取ル可カラサルヲ知リ又ハ其受取ル可キ高ニ超過スルヲ知リテ之ヲ収取スルコトヲ命令シ又ハ強テ之ヲ納メシメ又ハ之ヲ収受シテ貪利ノ重罪ヲ犯シタル者ハ若シ其不当ニ強テ納メシメ又ハ収受シタル金高又ハ其収取ヲ命令シタル金高ノ金額三百「フランク」以上タル時ハ其公ケノ官吏又ハ役員ハ懲役ノ刑ニ処セラレ又其手伝役又ハ下役ハ少クトモ二年多クトモ五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
右金高ノ全額カ三百「フランク」ニ過キサル時ハ前ニ指定シタル公ケノ官吏又ハ役員ハ二年乃至五年ノ禁錮ニ処セラレ又其手伝役又ハ下役ハ少クトモ一年多クトモ四年ノ禁錮ニ処セラル可シ
右犯罪ノ謀試ハ其犯罪ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
禁錮ノ刑ヲ宣告シタル総テノ場合ニ於テハ其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可ク又其犯罪人ハ上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
本条ニ定メタル総テノ場合ニ於テ其犯罪人ハ罰金ヲ言渡サル可シ但シ其罰金ノ最上限ハ物件返還及ヒ損害賠償高ノ四分一ニシテ其最下限ハ之レカ十二分一タル可キモノトス
本条ノ成規ハ裁判所ノ書記及ヒ裁判所役員ノ其法律上ニテ委任セラレタル金額収受ノ事ニ付キ右ノ所為ヲ行ヒタル時ハ其裁判所書記及ヒ裁判所附役員ニ之ヲ適用ス可キモノトス
○第三款 官吏ノ其分限ト並ヒ行フ可カラサル事件又ハ商業ニ干預スルノ軽罪
第百七拾五条 凡ソ公ケノ官吏、役員又ハ政府ノ代理員ニシテ当時其全部又ハ一部ニ於テ管理又ハ監視ヲ為シ又ハ為セシ所ノ所為、落札、業務又ハ事業請負ニ於テ公然タルト佯偽ノ所為ニ依ルト他人ノ介入ニ依ルトヲ問ハス若干ノ利益ヲ取リ又ハ収受シタル者ハ少クトモ六月多クトモ二年ノ禁錮ニ処セラレ且ツ返還及ヒ賠償ノ四分一ニ過クルコトヲ得ス又其十二分一以下タルコトヲ得サル罰金ヲ言渡サル可シ
又其者ハ右ノ外永久何等ノ公ケノ職務ヲモ執行スルコト能ハサル旨ヲ宣告セラル可シ
本条ノ成規ハ凡ソ其弁済ヲ差図シ又ハ其算定ヲ為スコトヲ委任セラレタル事件ニ於テ若干ノ利益ヲ取リタル公ケノ官吏又ハ政府ノ代理員ニ適用ス可キモノトス
第百七拾六条 凡ソ師管、各州又ハ城寨、都府ノ司令官又ハ州長、郡長ニシテ其威権ヲ執行スルノ権利アル土地ノ区域内ニ於テ公然又ハ佯偽ノ所為ニ依リ又ハ他人ノ介入ニ依リ自己ノ所有地ニ産出シタルモノヽ外総テ穀物、粗穀、穀粉、粉質物、葡萄酒又ハ飲料ノ商業ヲ為シタル者ハ少クトモ五百「フランク」多クトモ一万「フフンク」ノ罰金ト右ノ商業ニ属スル飲食品ノ没収トニ処セラル可シ
○第四款 公ケノ官吏ノ受賄
第百七拾七条 凡ソ行政又ハ司法部内ノ公ケノ官吏又ハ公ケノ行政ノ吏員或ハ下役ニシテ仮令正当ノモノタリトモ謝金ヲ受ク可カラサル職務上又ハ役務上ノ所為ヲ行フ為メ他人ノ供陳又ハ約束ヲ承引シ若クハ贈与或ハ餽贈ヲ収受シタル者ハ公権剥奪ノ刑ニ処セラレ且ツ其承引シタル約束又ハ収受シタル物件ノ価額ニ二倍シタル罰金ヲ言渡サル可シ但シ其罰金ハ二百「フランク」以下タルコトヲ得サルモノトス
本条ノ成規ハ前ニ明記シタル性質ノ各官吏、吏員又ハ下役ニシテ供陳又ハ約束ヲ承引シ又ハ贈与或ハ餽贈ヲ収受スルニ依リ其本分内ノモノタル一箇ノ所為ヲ行フコトヲ故ラニ差控ヘタル者ニ適用ス可キモノトス
凡ソ裁判所若クハ原告人又ハ被告人ヨリ選任セラレタル各裁断人又ハ鑑定人ニシテ原告人又ハ被告人中ノ一方ヲ曲庇スル裁断ヲ為シ又ハ意見ヲ申立ツル為メ他人ノ供陳又ハ約束ヲ承引シ若クハ贈与或ハ餽贈ヲ収受シタル者ハ右ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
第百七拾八条 若シ其受賄カ公権剥奪ノ刑ヨリ更ニ重劇ノ刑ニ当レル重罪ノ所為ヲ以テ目的ト為シタル場合ニ於テハ犯罪人ニ其重劇ノ刑ヲ適用ス可シ
第百七拾九条 何人ニ限ラス曲庇ノ意見ヲ得ル為メ若クハ真実ニ反シタル調書、目録、保証書又ハ評価ヲ得ル為メ若クハ地位、役務、落札、業務又ハ其他各種ノ利益ヲ得ル為メ若クハ其他総テ官吏、吏員又ハ下役ノ参渉ニ依レル所為ヲ得ル為メ、若クハ此等各員ノ其本分ノ執行中ニ属スル所為ノ差控ヲ得ル為メ第百七十七条ニ明記シタル性質ノ各人中一個ヲ強暴又ハ脅迫ヲ以テ強制シ又ハ強制セント謀試シ若クハ約束、供陳、贈与又ハ餽贈ニ依テ賄賂シ又ハ賄賂セント謀試シタル者ハ其賄賂ヲ受ケタル者ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
然レトモ若シ其強制又ハ賄賂ノ謀試ノ効験ナキ時ハ其謀試ヲ為シタル者ハ唯少クトモ三月多クトモ六月ノ禁錮ト百「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第百八拾条 其賄賂ヲ為シタル者ニハ其交付セシ物件又ハ其価額ヲ決シテ返還ス可カラス但シ其物件又ハ其価額ハ賄賂ヲ行ヒタル地ノ貧院ノ利益ニ於テ之ヲ没収ス可キモノトス
第百八拾壱条 若シ重罪ノ事項ニ付キ宣告スル裁判官又ハ陪審員カ重罪被告人ノ益ニ於テ若クハ其害ニ於テ賄賂ヲ納レタル時ハ第百七十七条ニ定メタル罰金ノ外懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第百八拾弐条 若シ賄賂ノ効験ニ依リ懲役以上ノ刑ヲ言渡シタル時ハ其刑ノ如何ヲ問ハス之ヲ其受賄ノ罪アル裁判官又ハ陪審員ニ適用ス可シ
第百八拾三条 凡ソ裁判官又ハ行政官ニシテ原告人又ハ被告人中ノ一方ヲ恵愛シ又ハ之ヲ疾悪シテ裁定シタル者ハ涜職ノ罪アリテ公権剥奪ノ刑ニ処セラル可シ
○第五款 妄権ノ罪
○第壱種 人民ニ対スル妄権ノ罪
第百八拾四条 凡ソ行政又ハ司法部内ノ官吏、司法又ハ警察官吏、公力ノ司令官又ハ公力ノ管理員ニシテ其分限ヲ以テ事ヲ行フニ当リ法律上ニ定メタル場合ノ外及ヒ法律上ニ規定シタル法式ナク一個ノ国士ノ意ニ背キテ其住所ニ入リ込ミタル者ハ六日乃至一年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ但シ第百十四条ノ第二項ノ適用ト相触ルルコトナカル可シ
何人ニ限ラス脅迫又ハ暴行ニ依テ一個ノ国士ノ住所ニ入リ込ミタル者ハ六日乃至三月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第百八拾五条 凡ソ裁判官又ハ裁判所、行政官又ハ行政官憲ニシテ如何ナル口実アリト雖モ仮令又法律ノ欠缺又ハ不明ヲ口実ト為スト雖モ原告人又ハ被告人ヨリ請求セラレタル後其双方ニ相当ノ裁判ヲ為スコトヲ否拒シ而シテ其長官ノ告戒又ハ譴責ヲ受ケシ後猶固執シテ之ヲ否拒シタル者ハ其罪ヲ訴ヘラレテ少クトモ二百「フランク」多クトモ五百「フランク」ノ罰金ト五年乃至二十年間公ケノ職務執行ノ禁止トニ処セラル可シ
第百八拾六条 若シ公ケノ官吏、役員、行政官、政府又ハ警察ノ吏員、下役、裁判上ノ令状又ハ裁判書ノ執行者、公力ノ司令長官又ハ其所属ノ司令官其職務ノ執行ニ於テ又ハ其職務ノ執行ノ為メ正当ノ理由ナクシテ人ニ対シテ暴行ヲ加ヘ又ハ加ヘシメタル時ハ其暴行ノ性質及ヒ軽重ニ従ヒ刑ニ処セラル可シ但シ以下第百九十八条ニ定ムル所ノ規則ニ従ヒ其刑ヲ加重ス可キモノトス
第百八拾七条 凡ソ政府又ハ郵便管理局ノ官吏或ハ吏員ニ於テ郵便ニ託セラレタル書状ノ滅却又ハ開封ヲ行ヒ又ハ之ヲ容易ナラシメタル時ハ十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金ト三月乃至五年ノ禁錮トニ処セラル可シ○其犯罪人ハ右ノ外少クトモ五年多クトモ十年間総テ公ケノ職務又ハ役務ヲ禁止セラル可キモノトス
○第弐種 公事ニ対スル妄権ノ罪
第百八拾八条 凡ソ身分及ヒ等級ノ如何ヲ問ハス公ケノ官吏又ハ政府ノ吏員或ハ下役ニシテ法律ノ執行ニ対シ又ハ適法ナル租税ノ収取ニ対シ又ハ裁判上ノ命令書或ハ令状若クハ其他総テ正当ノ威権アル者ヨリ発シタル命令ノ執行ニ対シテ公力ノ動作又ハ使用ヲ請求シ又ハ命令シ若クハ請求セシメ又ハ命令セシメタル者ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第百八拾九条 若シ其請求又ハ其命令ノ効験アリシ時ハ其刑ハ懲役ノ刑ノ最上限タル可シ
第百九拾条 前条ニ記シタル官吏又ハ下役ノ長官タル者ヨリ其管轄タル条件ニ付キ右ノ命令ヲ附与シ而シテ右官吏又ハ下役ノ其条件ニ付キ長官ノ命ニ従フ可キモノタル場合ニ非サレハ其長官ノ命令ニ依テ事ヲ行ヒタル官吏又ハ下役ニ第百八十八条及ヒ第百八十九条ニ表示シタル刑ヲ適用スルコトヲ止ム可カラス但シ右ノ場合ニ於テハ前記ノ刑ヲ最初其命令ヲ附与シタル長官ノミニ適用ス可キモノトス
第百九拾壱条 若シ右ノ命令又ハ請求ニ依リ第百八十八条及ヒ第百八十九条ニ明記シタル刑ヨリ更ニ重劇ノ刑ニ処ス可キ他ノ重罪ヲ犯シタル時ハ右ノ命令ヲ附与シ又ハ右ノ請求ヲ為シタルノ罪アル官吏、吏員又ハ下役ニ其重劇ノ刑ヲ適用ス可シ
○第六款 身分証書ノ設備ニ関スル或ル軽罪
第百九拾弐条 単一ナル零紙ニ其証書ヲ記入シタル身分取扱役ハ少クトモ一月多クトモ三月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラルヘシ
第百九拾三条 婚姻ヲ有効ノモノト為ス為メ法律上ニ父母又ハ其他ノ者ノ許諾ヲ必要ナリト定メタル場合ニ於テ身分取扱役其許諾ノ存在ヲ験認セサル時ハ十六「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金ト少クトモ六月多クトモ一年ノ禁錮トニ処セラル可シ
第百九拾四条 身分取扱役若シ民法第二百廿八条ニ定メタル時期ニ至ラサル前ニ既ニ一旦結婚シタル婦ノ婚姻証書ヲ記シタル時ハ亦十六「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
第百九拾五条 身分取扱役ノ所為ノ無効タル可キコトヲ訟求スル者ナク又ハ其無効ノ蓋蔽セラレタル時ト雖モ前条ニ於テ身分取扱役ニ対シテ定メタル刑ヲ其身分取扱役ニ適用ス可シ但シ右ノ諸件ト通謀ノ場合ニ於テ宣告ス可キ更ニ重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可ク又民法第一編第五巻ノ其他ノ罰則トモ相触ルヽコトナカル可シ
○第七款 公ケノ威力ヲ不法ニ其時期ニ先ンシテ執行シ又ハ其時期ヨリ後ニ至リテ執行スルノ罪
第百九拾六条 凡ソ公ケノ官吏ニシテ誓ヲ為スコトナク其職務ヲ執行シ始メタル者ハ其罪ヲ訴ヘラレ十六「フランク」乃至百五十「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
第百九拾七条 凡ソ公ケノ官吏ニシテ法ニ従ヒ其職務ヲ廃止セラレ、罷免セラレ、停止セラレ又ハ禁止セラレタル旨ヲ公然知リ得タル後猶其職務ノ執行ヲ継続シタル者又ハ選挙セラルヽ職務或ハ有期ノ職務ニ在リテ後職ノ者ノ撰任セラレタル後猶其職務ヲ執行シタル者ハ少クトモ六月多クトモ二年ノ禁錮ト百「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ○右ノ者ハ其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間総テ公ケノ職務ノ執行ヲ禁止セラル可シ但シ右ノ諸件ト此法典第九十三条ニ依リ陸軍士官又ハ陸軍司令官ニ対シテ定メタル更ニ重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可シ
○別段ノ成規
第百九拾八条 法律上ニテ公ケノ官吏又ハ役員ノ行ヒタル重罪又ハ軽罪ノ為メニ受ク可キ刑ヲ特ニ規定シタル場合ノ外公ケノ官吏又ハ役員中ニテ其監視シ又ハ制止スルコトヲ委任セラレタル其他ノ重罪又ハ軽罪ニ参加シタル者ハ左ノ如ク刑ニ処セラル可シ
若シ懲治警察ノ軽罪ニ関スル時ハ其官吏又ハ役員ハ常ニ必ス其種類ノ軽罪ニ附セラレタル刑ノ最上限ヲ受ク可シ
若シ重罪ニ関スル時ハ其重罪カ総テ其他ノ犯罪人ニ対シテ追放又ハ公権剥奪ノ刑ニ当ル可キ場合ニ於テハ其官吏又ハ役員ハ懲役ノ刑ヲ言渡サル可シ
若シ又其重罪カ総テ其他ノ犯罪人ニ対シテ懲役又ハ禁獄ノ刑ニ当ル可キ場合ニ於テハ有期ノ徒刑ヲ言渡サル可シ
若シ又其重罪カ総テ其他ノ犯罪人ニ対シテ流刑又ハ有期徒刑ノ刑ニ当ル可キ場合ニ於テハ無期ノ徒刑ヲ言渡サル可シ
右ニ明記シタル場合ノ外ハ加重ナクシテ普通ノ刑ヲ適用ス可キモノトス
○第三節 法教師ノ其職務ノ執行ニ於テ公ケノ秩序ヲ妨害スルノ罪
○第壱款 各人ノ身分ヲ害ス可キ犯則
第百九拾九条 凡ソ身分取扱役ノ予メ婚姻ノ証書ヲ記シタル旨ノ証明ヲ得スシテ婚姻ノ法教上ノ礼式ヲ行ヒタル法教師ハ初犯ニ付テハ十六「フランク」乃至百「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
第弐百条 前条ニ明記シタル種類ノ犯則再犯ノ場合ニ於テハ之ヲ行ヒタル法教師ハ左ノ如ク刑ニ処セラル可シ
第一回ノ再犯ニ付テハ二年乃至五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第二回ノ再犯ニ付テハ禁獄ノ刑ニ処セラル可シ
○第弐款 公ケニ述ヘタル説教ノ演説ニ於テ公ケノ威力ニ対シ批評、誹謗又ハ教唆ヲ為スノ罪
第弐百壱条 法教師ニシテ其職務ノ執行ニ当リ公ケノ集会ニ於テ政府、法律、国王ノ命令(告令)又ハ其他総テ公ケノ威力ノ所為ヲ批評シ或ハ誹謗スル演説ヲ述ヘタル者ハ三月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百弐条 若シ其演説カ法律又ハ公ケノ威力ノ其他ノ所為ニ違悖スルコトヲ直接ニ教唆シタル時又ハ国士中ノ一部分ヲ他ノ一部分ニ対シテ煽動シ或ハ兵器ヲ弄セシメント為シタル時其教唆ノ効験ナキニ於テハ右ノ演説ヲ述ヘタル法教師ハ二年乃至五年ノ禁錮ニ処セラル可ク又其教唆ノ為メニ騒乱又ハ叛逆ヲ起サシムルニ至ラスト雖モ違悖ヲ起サシメタルニ於テハ其法教師ハ追放ノ刑ニ処セラル可シ
第弐百三条 若シ其教唆ノ為メニ騒乱又ハ叛逆ヲ起サシメ而シテ其騒乱又ハ叛逆ノ性質カ犯罪人中ノ一名又ハ数名ニ対シテ追放ノ刑ヨリ更ニ重劇ノ刑ヲ適用ス可キモノタル時ハ其重劇ノ刑ノ如何ヲ問ハス右教唆ノ罪ヲ犯シタル法教師ニ之ヲ適用ス可シ
○第三款 説教ノ文書ニ於テ公ケノ威力ニ対シ批評、誹謗又ハ教唆ヲ為スノ罪
第弐百四条 凡ソ如何ナル体裁ノモノタルヲ問ハス説教ノ文書ヲ以テ法教師ノ政府若クハ総テ公ケノ威力ノ所為ヲ批評シ又ハ誹謗スルニ干預シタル時ハ其文書ヲ公布シタル法教師ニ対シテ追放ノ刑ヲ言渡ス可シ
第弐百五条 若シ前条ニ記載シタル文書カ法律又ハ公ケノ威力ノ其他ノ所為ニ違悖スルコトヲ直接ニ教唆シタル時又ハ国士中ノ一部分ヲ他ノ一部分ニ対シテ煽動シ或ハ兵器ヲ弄セシメント為シタル時ハ其文書ヲ公布シタル法教師ハ禁獄ノ刑ニ処セラル可シ
第弐百六条 若シ説教ノ文書ニ記シタル教唆ノ為メニ騒乱又ハ叛逆ヲ起サシメ而シテ其騒乱又ハ叛逆ノ性質カ犯罪人中ノ一名又ハ数名ニ対シテ流刑ヨリ更ニ重劇ノ刑ヲ適用ス可キモノタル時ハ其重劇ノ刑ノ如何ヲ問ハス右教唆ノ罪ヲ犯シタル法教師ニ之ヲ適用ス可シ
○第四款 法教ノ事項ニ付キ外国ノ朝廷又ハ外国ト法教師ノ書信往復
第弐百七条 凡ソ法教師ニシテ法教上ノ問題又ハ事項ニ付キ法教ノ監視ヲ委任セラレタル国王ノ主務卿ニ予メ通知シ其許可ヲ受クルコトナクシテ外国ノ朝廷又ハ外国ト書信ノ往復ヲ為シタル者ハ其所為ノミノ為メ百「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金ト一月乃至二年ノ禁錮トニ処セラル可シ
第弐百八条 若シ前条ニ記載シタル書信ノ往復ト共ニ又ハ其後ニ法律又ハ国王ノ告令ノ明確ナル成規ニ反シタル其他ノ所為ヲ行ヒタル時ハ其犯罪人ハ追放ノ刑ニ処セラル可シ但シ其所為ノ性質ニ依レル刑ノ更ニ重劇ナル場合ハ格別ニシテ此場合ニ於テハ其重劇ノ刑ノミヲ適用ス可キモノトス
○第四節 公ケノ威力ニ対スル抗命、違悖及ヒ其他ノ犯罪
○第壱款 抗命
第弐百九条 凡ソ法律、公ケノ威力ノ命令、裁判所ノ令状又ハ裁判書ノ執行ノ為メニ事ヲ行フ裁判所附役員、田野又ハ森林ノ監守人、公力、租税収受ノ吏員、拘留状ノ所持人、海関税ノ吏員、争訟アル物ノ受託者、行政又ハ司法警察官吏或ハ吏員ニ対スル攻撃又ハ暴行及ヒ強暴ヲ以テスル抗拒ハ景況ニ従ヒ抗命ノ重罪或ハ軽罪ノ名称ヲ附セラルヽモノトス
第弐百拾条 若シ兵器ヲ携ヘタル者二十名以上ニテ抗命ヲ行ヒタル時ハ其犯罪人ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可ク若シ又兵器ヲ携ヘサル時ハ其犯罪人ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第弐百拾壱条 若シ兵器ヲ携ヘタル者三名ヨリ二十名ニ至ル迄相集合シテ抗命ヲ行ヒタル時ハ其刑ハ懲役タル可ク若シ又兵器ヲ携ヘサル時ハ其刑ハ少クトモ六月多クトモ二年ノ禁錮タル可シ
第弐百拾弐条 若シ一人又ハ二人ノミノ兵器ヲ携ヘテ抗命ヲ行ヒタル時ハ六月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可ク若シ又兵器ヲ携ヘスシテ抗命ヲ行ヒタル時ハ六日乃至六月ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百拾三条 群衆又ハ乱群ヲ以テ抗命ヲ行ヒタル場合ニ於テハ其群衆中ニテ職務ヲモ又役務ヲモ行フコトナク公ケノ官憲ノ第一回ノ叱責ニ依リ引退キタル抗命者又ハ其後ト雖モ更ニ抗拒ヲ為スコトナク且ツ兵器ナクシテ其抗命ノ地ノ外ニ於テ召捕ヘラレタル抗命者ニハ此法典第一百条ヲ適用ス可キモノトス
第弐百拾四条 凡ソ重罪又ハ軽罪ノ為メノ人民ノ集合ハ若シ二人以上明顕ノ兵器ヲ携ヘタル時ハ兵器ヲ携ヘタル集合ト看做ス可シ
第弐百拾五条 隠蔵ノ兵器ヲ携帯スルヲ見出サレタル各人ニシテ兵器ヲ携ヘタルモノト看做サレサル群聚又ハ集合中ニ加ハリタル者ハ恰モ兵器ヲ携ヘタル群聚又ハ集合中ニ加ハリタルカ如クニ各自刑ニ処セラル可シ
第弐百拾六条 抗命ヲ為ス間ニ其抗命ノ為メニ行ヒタル重罪及ヒ軽罪ノ正犯ハ若シ其各箇ノ重罪ニ対シテ定ムル所ノ刑カ抗命ノ刑ヨリ更ニ重劇ノモノタル時ハ其重劇ノ刑ニ処セラル可シ
第弐百拾七条
第弐百拾八条 凡ソ抗命ノ所為ノ為メニ単一ナル禁錮ノ刑ヲ宣告ス可キ場合ニ於テハ其犯罪人ニ右ノ外十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金ヲ言渡スコトヲ得可シ
第弐百拾九条 兵器ノ有無ヲ問ハス左ノ各人ノ組成シ且ツ行政官憲、警察官吏及ヒ吏員又ハ公力ニ対シテ暴行又ハ脅迫ヲ為ス所ノ集合ハ抗命者ノ集合トシテ刑ニ処セラル可シ
第一 公ケノ工作場又ハ製造所ニ於ケル職工又ハ日雇人
第二 貧院ニ入レラレタル各人
第三 犯罪被告人タリ、重罪被告人タリ又ハ刑ヲ言渡サレシ者タル囚徒
第弐百弐拾条 他ノ重罪又ハ軽罪ニ関シ犯罪被告人タリ、重罪被告人タリ又ハ刑ヲ言渡サレシ者タル囚徒ニ抗命ノ罪ノ為メニ適用スル所ノ刑ハ左ノ如クニ之ヲ受ク可シ
其収監ノ原由タル重罪又ハ軽罪ノ為メニ死刑又ハ無期ノ刑ニ非サル刑ヲ言渡サレ又ハ言渡サル可キ者ハ其刑期ノ終リシ後直チニ抗命ノ罪ノ為メニ適用スル所ノ刑ヲ受ク可シ
其他ノ者ハ其収監ヲ受クルノ原由タル所為ヨリ之ヲ放免シ又ハ不問免訴ト為シタル上等又ハ下等裁判所ノ終審ノ裁判ノ後直チニ抗命ノ罪ノ為メニ適用スル所ノ刑ヲ受ク可シ
第弐百弐拾壱条 抗命ノ犯罪ノ首長及ヒ其犯罪ヲ教唆シタル者ハ其刑期ノ終リシ後少クトモ五年多クトモ十年間高等警察ノ特別監視ヲ受ケシム可キ旨ヲ言渡スコトヲ得可シ
○第弐款 公ケノ威力及ヒ公力ノ受託者ニ対スル侮辱及ヒ暴行
第弐百弐拾弐条 若シ行政又ハ司法部内ノ官吏一名又ハ数名若クハ陪審員一名又ハ数名カ其職務ノ執行ニ於テ又ハ其職務ノ執行ノ為メ公ケニ為サヽル言詞又ハ文書或ハ図書ニ依リ其各種ノ場合ニ於テ名誉又ハ廉正ヲ汚ス可キ或ル侮辱ヲ受ケタル時ハ右各員ニ対シテ其侮辱ヲ為シタル者ハ十五日乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
若シ又上等裁判所或ハ下等裁判所ノ審問席ニ於テ言詞ヲ以テスル侮辱ヲ為シタル時ハ其禁錮ハ二年乃至五年タル可シ
第弐百弐拾三条 官吏又ハ陪審員ノ職務執行ニ於テ又ハ職務執行ノ為メ其官吏又ハ陪審員ニ形容又ハ脅迫ヲ以テ為シタル侮辱ハ一月乃至六月ノ禁錮ニ処セラル可ク若シ又上等裁判所或ハ下等裁判所ノ審問席ニ於テ其侮辱ヲ為シタル時ハ一月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百弐拾四条 凡ソ裁判所附役員又ハ公力ノ受託者及ヒ公務ヲ委任セラレタル各個ノ国士ノ職務執行ニ於テ又ハ其職務執行ノ為メ此等ノ各員ニ言詞、形容又ハ脅迫ヲ以テ為シタル侮辱ハ六日乃至一月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラレ又ハ右二箇ノ刑中ノ一ノミニ処セラル可シ
第弐百弐拾五条 若シ前条ニ記載シタル侮辱ヲ公力ノ司令官ニ対シテ為シタル時ハ十五日乃至三月ノ禁錮ニ処セラル可ク且ツ又十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金ニ処スルコトヲ得可シ
第弐百弐拾六条 第二百二十二条、第二百二十三条、第二百二十五条ノ場合ニ於テハ其不敬ノ罪ヲ犯シタル者ニ禁錮ノ外更ニ第一回ノ審問席ニ於テ若クハ文書ヲ以テ謝罪ヲ為ス可キ旨ヲ言渡スコトヲ得ヘシ而シテ其者ニ対シテ宣告シタル禁錮ノ期限ハ右ノ謝罪ヲ為シタル日ヨリ之ヲ起算ス可キモノトス
第弐百弐拾七条 第二百二十四条ノ場合ニ於テモ亦不敬ノ罪ヲ犯シタル者ニ罰金ノ外其不敬ヲ受ケタル者ニ対シテ謝罪ヲ為ス可キ旨ヲ言渡スコトヲ得可シ而シテ若シ其者ノ謝罪ヲ為スコトヲ遅延シ又ハ之ヲ否拒スル時ハ之ヲ拘留ス可キモノトス
第弐百弐拾八条 凡ソ何人ニ限ラス仮令兵器ナク又創傷ヲ生セシムルコトナシト雖モ官吏ノ職務執行ニ於テ又ハ其職務執行ノ為メ官吏ヲ殴打シ又ハ右ト同一ノ景況ニ於テ官吏ニ対シ総テ其他ノ暴行又ハ強暴ヲ行ヒタル者ハ二年乃至五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
若シ上等裁判所又ハ下等裁判所ノ審問席ニ於テ右ノ強暴ヲ為シタル時ハ常ニ必ス右刑ノ最上限ヲ宣告ス可シ
其犯罪人ハ右ノ外其二箇ノ場合ニ於テハ其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪シ且ツ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
第弐百弐拾九条 前条ニ明記シタル二箇中何レノ場合ニ於テモ其犯罪人ニ右ノ外五年乃至十年間其官吏所在ノ地及ヒ其周囲二「ミリアメートル」ノ地ニ近ツク可カラサル旨ヲ言渡スコトヲ得可シ
右ノ成規ハ刑ヲ言渡サレタル者ノ其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ之ヲ執行ス可キモノトス
若シ刑ヲ言渡サレタル者ノ其定期ノ終ラサル前ニ右ノ命令ヲ犯シタル時ハ追放ノ刑ニ処セラル可シ
第弐百三拾条 若シ裁判所附役員、公力ノ受託者又ハ公務ヲ委任セラレタル国士ノ其職務ヲ執行スル間又ハ其職務執行ノ為メ此等ノ各員ニ対シテ第二百二十八条ニ明記シタル種類ノ暴行又ハ強暴ヲ為シタル時ハ少クトモ一月多クトモ三年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第弐百三拾壱条 若シ第二百二十八条及ヒ第二百三十条ニ指定メタル官吏及ヒ吏員ニ対シテ執行シタル暴行カ流血、創傷又ハ疾病ノ原由トナリタル時ハ其刑ハ懲役ノ刑タル可ク又其暴行ノ為メ四十日内ニ死亡セシメタル時ハ其犯罪人無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第弐百三拾弐条 右ノ暴行ノ為メニ流血、創傷又ハ疾病ヲ起サシメサリシ場合ト雖モ若シ予謀又ハ待伏ヲ以テ其殴打ヲ為シタル時ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第弐百三拾三条 若シ第二百二十八条及ヒ第二百三十条ニ指定メタル官吏又ハ吏員ヲ殺サントスルノ意思ヲ以テ右官吏又ハ吏員ノ職務執行ニ於テ又ハ其職務執行ノ為メ此等ノ各員ヲ殴打シ又ハ創傷シタル時ハ其犯罪人死刑ニ処セラル可シ
○第三款 当然行フ可キ公務ノ否拒
第弐百三拾四条 凡ソ公力ノ司令官、士官、下士官ニシテ文官ヨリ法ニ適シテ請求ヲ受ケタル後其命令スル公力ヲ動カスコトヲ否拒シタル者ハ一月乃至三月ノ禁錮ニ処セラル可シ但シ此法典第十条ノ文面ニ依リ負担スルコトアル可キ民事上ノ補償ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第弐百三拾五条 募兵ニ関スル刑事ノ法律及ヒ規則ハ従前ノ侭之ヲ執行ス可シ
第弐百三拾六条 偽リナリト認定セラレタル弁解ノ理由ヲ申立テタル証人及ヒ陪審員ハ不出席ノ為メニ宣告セラルヽ罰金ノ外六日乃至二月ノ禁錮ヲ言渡サル可シ
○第四款 囚人ノ逃走及ヒ重罪人ノ蔵匿
第弐百三拾七条 囚人ノ逃走シタル時ハ裁判所ノ使吏又ハ其護送ヲ為シ或ハ営所ニ衛戍スル憲兵若クハ兵隊ノ司令長官又ハ其附属ノ司令官、門監、監守人、獄監及ヒ其他総テ囚人ノ護送、送致又ハ看守ヲ委任セラレタル者ハ左ノ如ク刑ニ処セラル可シ
第弐百三拾八条 若シ其逃走者カ警察上ノ軽罪又ハ唯加辱ノ刑ノミヲ受ク可キ重罪ノ被告人タリ又ハ此等ノ重罪中ノ一箇ノ為メニ刑ヲ言渡サレシ者タリ又ハ戦闘ノ俘虜タル時ハ其看守又ハ護送ヲ委任セラレタル者ハ懈怠ノ場合ニ於テハ六日乃至二月ノ禁錮ニ処セラル可ク又逃走ヲ知テ故縦シタル場合ニ於テハ六月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
右囚人ノ看守又ハ護送ヲ委任セラレサル各人ニシテ其逃走ヲ得セシメ又ハ之ヲ容易ナラシメタル者ハ六日乃至三月ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百三拾九条 若シ逃走シタル囚人数名又ハ其中ノ一名カ有期ノ施体ノ刑ニ当ル可キ性質ノモノタル重罪ノ被告人タリ又ハ其重罪ノ為メニ重罪裁判所ニ移サレシ被告人タリ又ハ此等ノ重罪中ノ一箇ノ為メニ刑ヲ言渡サレシ者タル時ハ其看守又ハ護送ヲ委任セラレタル者ハ懈怠ノ場合ニ於テハ二月乃至六月ノ禁錮ニ処セラル可ク又逃走ヲ知テ故縦シタル場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
右囚人ノ看守ヲ委任セラレサル各人ニシテ其逃走ヲ得セシメ又ハ之ヲ容易ナラシメタル者ハ三月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百四拾条 若シ逃走者数名又ハ其中ノ一名カ死刑又ハ無期ノ刑ニ当ル可キ性質ノモノタル重罪ノ被告人タリ又ハ其重罪ノ為メニ重罪裁判所ニ移サレシ被告人タリ又ハ此等ノ刑中ノ一箇ヲ言渡サレシ者タル時ハ其護送人又ハ看守人ハ懈怠ノ場合ニ於テハ一年乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可ク又逃走ヲ知テ故縦シタル場合ニ於テハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
其護送又ハ看守ヲ委任セラレサル各人ニシテ其逃走ヲ容易ナラシメ又ハ之ヲ得セシメタル者ハ少クトモ一年多クトモ五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百四拾壱条 若シ暴行ヲ用ヒ又ハ破獄ヲ為シテ逃走ヲ為シ又ハ逃走ヲ謀試シタル時ハ此等ノ諸件ヲ為スコトヲ得可キ器具ヲ供給シテ之ヲ助ケタル者ニ対スル刑ハ左ノ如クタル可シ
若シ逃走シタル囚人カ第二百三十八条ニ定メタル場合ニアル時ハ三月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可ク又第二百三十九条ニ定メタル場合ニアル時ハ一年乃至四年ノ禁錮ニ処セラル可ク又第二百四十条ニ定メタル場合ニアル時ハ二年乃至五年ノ禁錮ト五十「フランク」乃至二千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
右最後ニ記シタル場合ニ於テハ其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可シ
第弐百四拾弐条 前ニ記シタル総テノ場合ニ於テ若シ逃走ヲ得セシメ又ハ之ヲ容易ナラシメタル第三ノ人カ看守人又ハ獄監ニ賄賂ヲ与ヘ又ハ此等ノ者ト通謀シ其故縦ヲ以テ逃走ヲ成就セシメタル時ハ其第三ノ人ハ右ノ看守人及ヒ獄監ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
第弐百四拾三条 若シ兵器ヲ送リタルニ依リ破獄又ハ暴行ヲ以テセシ逃走ヲ助ケタル時ハ之ニ参加シタル看守人及ヒ護送人ハ無期ノ徒刑ニ処セラレ其他ノ各人ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第弐百四拾四条 何人ニ限ラス囚人ノ逃走ヲ故縦シタル各人ハ民事原告人ノ其囚人ニ対シテ得可キノ権利ヲ有スル諸件ヲ損害賠償ノ名義ヲ以テ相連帯シテ言渡サル可キモノトス
第弐百四拾五条 破獄又ハ暴行ヲ以テ逃走シ又ハ逃走セント謀試シタル囚人ハ其所為ノミノ為メ六月乃至一年ノ禁錮ニ処セラル可ク而シテ其収監セラレシ原由タル重罪又ハ軽罪ノ為メニ受ケタル刑ノ終リシ後直チニ右ノ刑ヲ受ケ或ハ其重罪又ハ軽罪ヲ放免シ又ハ不問免訴ト為シタル上等又ハ下等裁判所ノ裁判ノ後直チニ右ノ刑ヲ受ク可シ但シ右ノ諸件ト其囚人ノ其暴行ニ於テ行ヒタル他ノ重罪ノ為メニ受タルコトアル可キ更ニ重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可シ
第弐百四拾六条 何人ニ限ラス逃走又ハ逃走ノ謀試ヲ助ケタル為メ六月以上ノ禁錮ヲ言渡サル可キ者ハ右ノ外五年乃至十年間高等警察ノ特別監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
第弐百四拾七条 懈怠ノミノ場合ニ於テ護送人又ハ看守人ニ対シテ前ニ定メタル禁錮ノ刑ハ逃走シタル者ノ其逃走ノ時ヨリ四月内ニ再ヒ召捕ヘラレ又ハ投首シ而シテ其後ニ行ヒタル他ノ重罪又ハ軽罪ノ為メニ逮捕セラレタルニ非サル時ハ止息ス可キモノトス
第弐百四拾八条 施体ノ刑ニ当レル重罪ヲ行ヒシコトヲ知リタル各人ヲ蔵匿シ又ハ蔵匿セシメタル者ハ少クトモ三月多クトモ二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
其蔵匿セラレタル重罪人ノ尊属親又ハ卑属親、離婚セラレタルモノト雖モ其夫又ハ婦、兄弟姉妹又ハ之ト同級ノ其姻属親ハ本条ノ成規ノ例外ナリトス
○第五款 封印ノ破毀及ヒ公ケノ預リ所ニ於ケル証拠物ノ取去
第弐百四拾九条 政府ノ命令ニ依リ若クハ如何ナル事項ニ於テ為シタルヲ問ハス裁判所ノ命令ニ依リ附シタル封印ヲ破毀セシ時ハ其監守人ハ単一ナル懈怠ノ為メニハ六日乃至六月ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百五拾条 若シ其封印ノ破毀カ死刑、無期徒刑、流刑ニ当ル可キ重罪ノ被告人タリ或ハ其重罪ノ為メニ重罪裁判所ニ移サレシ被告人タル者又ハ此等ノ刑中ノ一箇ヲ言渡サレシ者ノ書類及ヒ物品ニ係ル時ハ其懈怠ナル監守人ハ六月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百五拾壱条 何人ニ限ラス前条ニ表示シタル性質ノ書類又ハ物品ニ附シタル封印ヲ故意ヲ以テ破毀シ或ハ破毀セント謀試シ又ハ封印ノ破毀或ハ封印破毀ノ謀試ニ参加シタル者ハ一年乃至三年ノ禁錮ニ処セラル可シ
若シ監守人自カラ封印ヲ破毀シ又ハ封印ノ破毀ニ参加シタル時ハ二年乃至五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
右二箇中何レノ場合ニ於テモ其犯罪人ハ五十「フランク」乃至二千「フランク」ノ罰金ヲ言渡サル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可ク又其犯罪人ハ之ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
第弐百五拾弐条 総テ其他ノ封印ノ破毀ニ関シテハ其犯罪人ハ六月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可ク若シ又監守人自カラ其犯罪人タル時ハ二年乃至五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百五拾三条 凡ソ封印ノ破毀ニ依テ行ヒタル盗罪ハ破壊ニ依テ行ヒタル盗罪ニ同シク刑ニ処セラル可シ
第弐百五拾四条 公ケノ旧記庫、書記局、預リ所ニ蔵メ又ハ公ケノ受託者ニ其受託者タルノ分限ヲ以テ交付シタル証拠物又ハ重罪審理ノ証書類或ハ其他ノ書類、簿冊、証書及ヒ物品ノ窃取、滅却及ヒ取去ニ関シテハ懈怠ナル書記、旧記預リ人、公証人又ハ其他ノ受託者ハ三月乃至一年ノ禁錮ト百「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第弐百五拾五条 何人ニ限ラス前条ニ記載シタル窃取、取去又ハ滅却ノ罪ヲ犯シタル者ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
若シ受託者自カラ其重罪ヲ犯シタル時ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第弐百五拾六条 若シ封印ノ破毀又ハ証拠物ノ窃取、取去、滅却ヲ人ニ対スル暴行ヲ以テ行ヒタル時ハ其刑ハ総テノ人ニ対シ有期ノ徒刑タル可シ但シ右ノ諸件ニ添ヒタル暴行及ヒ他ノ重罪ノ性質ニ従ヒ更ニ重劇ノ刑ニ処ス可キ時ハ其重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
○第六款 記念碑ノ破壊
第弐百五拾七条 何人ニ限ラス公ケノ官憲ニ於テ建設シ又ハ其許可ヲ得テ建設シタルモノニシテ公同ノ資益又ハ粧飾ノ用ニ供シタル記念碑、立像及ヒ其他ノ物件ヲ滅却シ、打倒シ、毀傷シ又ハ破壊シタル者ハ一月乃至二年ノ禁錮ト百「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
○第七款 名称又ハ職務ノ侵僭
第弐百五拾八条 何人ニ限ラス名称ナクシテ文武ノ公務ニ干渉シ又ハ其公務中一箇ノ所為ヲ行ヒタル者ハ二年乃至五年ノ禁錮ニ処セラル可シ但シ其所為ニ偽造ノ重罪ノ性質アル時ハ其偽造ノ刑ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第弐百五拾九条 凡ソ己レニ属セサル服飾、章服又ハ勲章ヲ公ケニ佩用シタル者ハ六月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
何人ニ限ラス権利ナクシテ己レニ栄顕ヲ帰スル為メ公ケニ一箇ノ名称ヲ取リ用ヒ又ハ身分証書ニ記セラレタル姓名ヲ変更、変易、更改シタル者ハ五百「フランク」乃至一万「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
裁判所ハ不当ニ其名称ヲ取リ用ヒ又ハ姓名ヲ変易シタル公正ノ証書又ハ身分証書ノ端ニ其裁判書ヲ記載ス可キ旨ヲ命令ス可シ
本条ニ定メタル総テノ場合ニ於テハ裁判所ヨリ裁判書ノ全文又ハ其抜書ヲ其指定メタル新聞紙ニ記入ス可キ旨ヲ命令スルコトヲ得可シ
右ノ諸件ハ刑ヲ言渡サレタル者ノ費用ヲ以テ之ヲ為ス可キモノトス
○第八款 礼拝ノ自由ナル執行ノ障碍
第弐百六拾条 凡ソ強暴又ハ脅迫ニ依リ一人又ハ数人ノ其許可セラレタル礼拝中ノ一箇ヲ執行シ、其礼拝ノ執行ニ立会ヒ、或種ノ祭礼ヲ行ヒ、或ル安息日ヲ遵守シ依テ又其工作場、舗店、倉庫ヲ開キ或ハ閉チ及ヒ或種ノ事業ヲ為シ或ハ廃スルコトヲ強ヒ又ハ此等ノ諸件ヲ防止シタル各人民ハ其所為ノミノ為メ十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金ト六日乃至二月ノ禁錮トニ処セラル可シ
第弐百六拾壱条 礼拝執行ノ用ニ供シ又ハ現ニ礼拝執行ニ用フル所ノ礼拝堂又ハ其他ノ場合ニ於テ妨害又ハ擾乱ニ依リ其礼拝ノ執行ヲ防止シ又ハ之ヲ遅延セシメ或ハ之ヲ中断シタル者ハ十六「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金ト六日乃至三月ノ禁錮トニ処セラル可シ
第弐百六拾弐条 凡ソ礼拝執行ノ用ニ供シ又ハ現ニ礼拝執行ニ用フル所ノ場所ニ於テ其礼拝ノ目的物ヲ言詞又ハ形容ヲ以テ侮辱シ又ハ其礼拝ヲ掌ル法教師ノ其職務ヲ行フニ於テ言詞又ハ形容ヲ以テ之ヲ侮辱シタル者ハ十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金ト十五日乃至六月ノ禁錮トニ処セラル可シ
第弐百六拾三条 何人ニ限ラス礼拝ヲ掌ル法教師ノ其職務ヲ行フニ於テ之ヲ殴打シタル者ハ公権剥奪ノ刑ニ処セラル可シ
第弐百六拾四条 本款ノ成規ハ此法典中ノ他ノ成規ニ従ヒ其性質又ハ景況ニ依リ更ニ重劇ノ刑ヲ適用ス可キモノニ非サル妨害、侮辱又ハ強暴ノミニ適用ス可シ
○第五節 兇徒ノ結合、流浪及ヒ乞丐ノ罪
○第壱款 兇徒ノ結合
第弐百六拾五条 凡ソ人ノ身体又ハ財産ニ対スル兇徒ノ結合ハ公ケノ治安ニ対スル重罪ナリトス
第弐百六拾六条 右ノ重罪ハ群衆ノ編制又ハ群衆ト其首長或ハ司令者トノ間ニ於ケル書信往復又ハ兇行ニテ得タルモノヲ計算シ或ハ分配、分派セントスル合意ノ所為ノミニ依テ存在スルモノトス
第弐百六拾七条 若シ右ノ重罪ニ添ヘテ更ニ他ノ重罪ヲ犯サス又ハ右ノ重罪ノ後ニ更ニ他ノ重罪ヲ犯サヽル時ハ兇徒結合ノ首謀、指揮者及ヒ右群衆ノ司令長又ハ其附属ノ司令者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第弐百六拾八条 右ノ外総テ其群衆中ニ於テ各種ノ用務ヲ任セラレタル各人及ヒ情ヲ知リ且ツ任意ニテ其群衆又ハ之レカ分隊ニ兵器、弾薬、重罪犯ノ器具、宿所、隠レ場所又ハ集会場ヲ給与シタル各人ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
○第弐款 流浪ノ罪
第弐百六拾九条 流浪ハ一箇ノ軽罪ナリトス
第弐百七拾条 流浪者即チ無宿人トハ定マリタル住所ヲモ又生計ノ方法ヲモ有セス且ツ平常工技ヲモ又職業ヲモ行ハサル者ヲ云フ
第弐百七拾壱条 法ニ適シテ流浪者即チ無宿人ナリト宣告セラレタル者ハ其所為ノミノ為メ三月乃至六月ノ禁錮ニ処セラル可シ○其流浪者即チ無宿者ハ其刑ヲ受ケ終リシ後少クトモ五年多クトモ十年間高等警察ノ監視ニ附ス可キモノトス
然レトモ十六歳以下ノ流浪者ハ禁錮ノ刑ニ処スルコトヲ得ス唯其流浪ノ所為ノ証拠ノミニ依リ満二十歳ノ齢ニ至ル迄高等警察ノ監視ニ附ス可シ但シ其齢ニ至ラサル前ニ右流浪者ノ正規ニ適ヒテ陸海軍ノ兵籍ニ入ルノ約務ヲ為シタル時ハ格別ナリトス
第弐百七拾弐条 裁判ニ依リ流浪者ナリト宣告セラレタル各人ハ若シ外国人タル時ハ政府ノ命令ヲ以テ王国(共和国)ノ領地外ニ送致スルコトヲ得可シ
第弐百七拾三条 仏蘭西ニ於テ生レタル流浪者ハ裁定事件ノ力ヲ得タル裁判ノ後ト雖モ其生レタル邑ノ邑会ノ議定ニ依リ其引渡ヲ得ント要求スルコトヲ得可ク又ハ負債弁償ノ資力アル国士ヨリ之ヲ保証スルコトヲ得可シ
若シ政府ニ於テ右引渡ノ要求ヲ聞届ケ又ハ保証人ヲ承引シタル時ハ斯クノ如クニ要求セラレ又ハ保証セラレタル各人ハ其引渡ヲ要求シタル邑内又ハ保証人ノ求メニ依リ其居住ノ為メニ定メラレタル邑内ニ政府ノ命令ヲ以テ之ヲ送還シ又ハ送致ス可シ
○第三款 乞丐ノ罪
第弐百七拾四条 乞丐ヲ防ク為メニ編成シタル公同設立場ノ存在スル地ニ於テ乞丐ヲ為スヲ見出サレタル各人ハ三月乃至六月ノ禁錮ニ処セラレ且ツ其刑期ノ終リシ後乞丐収養場ニ送致セラル可シ
第弐百七拾五条 右ノ如キ公同設立場ノ未タ存在セサル各地ニ於テハ乞丐ヲ以テ常慣ト為ス強壮ノ者ハ一月乃至三月ノ禁錮ニ処セラル可シ
若シ其乞丐者ノ其居住ノ県外ニ於テ逮捕セラレタル時ハ六月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百七拾六条 凡ソ強壮ナラサル者ト雖モ乞丐者ニシテ脅迫ヲ用ヒ又ハ所有者或ハ其家内ノ者ノ許ナクシテ一箇ノ人家若クハ之ニ附属スル囲ヒ地内ニ入リタル者
又ハ創傷或ハ疾病ヲ佯ル者
又ハ夫婦、父母及ヒ其幼年ノ子、盲者及ヒ其導引者ヲ除クノ外相集合シテ乞丐ヲ為ス者
此等ノ各人ハ六月乃至二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
○流浪者及ヒ乞丐者ニ共通ノ成規
第弐百七拾七条 凡ソ乞丐者又ハ流浪者ニシテ各種ノ方法ヲ用ヒ衣服ヲ変易シテ召捕ヘラレタル者
又ハ兵器ヲ用ヒス又脅迫セサル時ト雖モ兵器ヲ携ヘテ召捕ヘラレタル者
又ハ盗罪或ハ其他ノ犯罪ヲ行フニ適当シ若クハ家屋内ニ入リ込ム可キノ方法ヲ得セシムルニ適当ナル鑪、鈎又ハ其他ノ器具ヲ所持シテ召捕ヘラレタル者
此等ノ各人ハ二年乃至五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百七拾八条 凡ソ乞丐者又ハ流浪者ニシテ百「フランク」以上ノ価額アル一箇又ハ数箇ノ物品ヲ所持スルヲ見出サレ而シテ其物品ノ由来ヲ証明セサル者ハ第二百七十六条ニ載セタル刑ニ処セラル可シ
第弐百七拾九条 凡ソ乞丐者又ハ流浪者ニシテ如何ナル事タルヲ問ハス人ニ対シテ暴行ノ所為ヲ行ヒ又ハ行ハント謀試シタル者ハ二年乃至五年ノ禁錮ニ処セラル可シ但シ其暴行ノ種類及ヒ景況ニ依リ更ニ重劇ノ刑ニ処ス可キ時ハ其重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
若シ其暴行ヲ行ヒ又ハ行ハント謀試シタル乞丐者又ハ流浪者カ右ノ外第二百七十七条ニ明記シタル景況中ノ一箇ニ在ル時ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第弐百八拾条
第弐百八拾壱条 偽造ノ保証書、偽造ノ往来切手、偽造ノ軍人往来切手ヲ所持スル各人ニ対シテ此法典ニ定メタル刑ハ流浪者及乞丐者ニ之ヲ適用ス可キ時ハ常ニ必ス其各種ノ刑ニ於テ最上限ニ加重ス可キモノトス
第弐百八拾弐条 前数条ニ載セタル刑ヲ言渡サレタル乞丐者ハ其刑期ノ終リシ後少クトモ五年多クトモ十年間高等警察ノ監視ニ附ス可シ
○第六節 著作者、印刷者又ハ彫刻者ノ姓名ナクシテ分配シタル文書、肖像、彫刻物ノ方法ヲ以テ行ヒタル軽罪
第弐百八拾三条 凡ソ著作者又ハ印刷者ノ姓名、職業、居所ノ真正ナル指示ヲ記セサル書籍、文書、広告書、報告書、貼附書、新聞紙、定時刷出物又ハ其他ノ印刷物ヲ公布シ又ハ分配シタル時ハ情ヲ知テ其公布又ハ分配ニ助力シタル各人ハ其所為ノミノ為メ六日乃至六月ノ禁錮ニ処セラル可シ
第弐百八拾四条 右ノ成規ハ左ノ各人ニ関シテハ単一ナル警察ノ刑ニ減軽ス可キモノトス
第一 其印刷シタル文書ヲ附与セシ者ヲ知ラシメタル呼売人、貼附者、売捌人又ハ分配者
第二 何人ニ限ラス印刷者ヲ知ラシメタル者
第三 印刷者ト雖モ著作者ヲ知ラシメタル者
第弐百八拾五条 若シ印刷シタル文書ニ重罪又ハ軽罪ニ付テノ或ル教唆ヲ記シタル時ハ呼売人、貼附者、売捌人及ヒ分配者ハ其教唆者ノ従犯トシテ刑ニ処セラル可シ但シ右各員ノ其教唆ヲ記シタル文書ヲ附与セシ者ヲ知ラシメタル時ハ格別ナリトス
其洩露ヲ為シタル場合ニ於テハ右ノ各員ハ六日乃至三月ノ禁錮ノミヲ受ク可ク而シテ従犯ノ刑ハ其印刷シタル文書ヲ交付セシ者ヲ知ラシメサル各人及ヒ印刷者ノ知レタル時ハ其印刷者ノミニ之ヲ適用ス可キモノトス
第弐百八拾六条 前ニ記シタル何レノ場合ニ於テモ其差押ヘタル印本ノ没収ヲ為ス可シ
第弐百八拾七条 (凡ソ善良ノ風儀ヲ害スル歌謡、小冊、絵画又ハ肖像ノ展示又ハ分配ハ十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金ト一月乃至一年ノ禁錮ト其歌謡、絵画又ハ其他ノ犯罪ノ物件ヲ印刷シ或ハ彫刻シタル印版及ヒ印本ノ没収トニ処セラル可シ
第弐百八拾八条 前条ニ定メタル禁錮及ヒ罰金ノ刑ハ左ノ各人ニ関シテハ単一ナル警察ノ刑ニ減軽ス可キモノトス
第一 犯罪ノ物件ヲ己レニ交付セシ者ヲ知ラシメタル呼売人、売捌人又ハ分配者
第二 何人ニ限ラス印刷者又ハ彫刻者ヲ知ラシメタル者
第三 印刷者又ハ彫刻者ト雖モ著作者又ハ其印刷或ハ彫刻ヲ己レニ委託セシ人ヲ知ラシメタル者
第弐百八拾九条 本節ニ明記シタル何レノ場合ニ於テモ其正犯ノ知レタル時ハ其正犯ハ其種類ノ軽罪ニ附シタル刑ノ最上限ニ処セラル可シ
○格別ノ成規
第弐百九拾条
○第七節 法ニ反キタル結社又ハ集合
第弐百九拾壱条 凡ソ法教上、文学上、政事上ノ諸件又ハ其他ノ事件ニ従事スル為メ毎日又ハ特定ノ日ニ集合スルヲ以テ主眼ト為ス二十人以上ノ結社ハ政府ノ認可ヲ受ケ且ツ公ケノ官憲ヨリ其会社ニ負ハシメントスル所ノ条件ニ従フニ非サレハ之ヲ組成スル事ヲ得ス
其結社各員ノ集合スル所ノ家屋ニ住スル者ハ本条ニ指示シタル人員中ニ加ヘサルモノトス
第弐百九拾弐条 凡ソ許可ヲ得スシテ組成シ又ハ許可ヲ得タル後ニ其負ハシメラレタル条件ニ違背セシ前記ノ性質アル結社ハ之ヲ解散ス可シ
其結社ノ首長、指揮者、管理者ハ右ノ外十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
第弐百九拾三条 如何ナル国語ヲ以テスルヲ問ハス若シ演説、勧諭、請求、請願ニ依リ又ハ各種ノ文書ノ朗読、貼附、公布、分配ニ依リ右ノ集会ニ於テ重罪又ハ軽罪ニ付テノ或ル教唆ヲ為シタル時ハ其結社ノ首長、指揮者、管理者ニ対スル刑ハ百「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金及ヒ三月乃至二年ノ禁錮タル可シ但シ己レ自カラ其教唆ノ罪ヲ犯シタル各人ニ対シテ法律上ニ定メタル更ニ重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可クシテ其各人ハ如何ナル場合ニ於テモ右結社ノ首長、指揮者、管理者ニ被ラシムル所ノ刑ヨリ更ニ軽キ刑ニ処スルコトヲ得サルモノトス
第弐百九拾四条 凡ソ邑官ノ許ヲ得スシテ仮令許可セラレタル者ト雖モ一箇ノ結社ノ会員集合ノ為メ又ハ一箇ノ礼拝ノ執行ノ為メ自己ノ家屋又ハ房室ノ全部或ハ一部ノ使用ヲ許与シ又ハ承諾シタル各人ハ十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
○第弐巻 各人民ニ対スル重罪及ヒ軽罪
○第壱章 身体ニ対スル重罪及ヒ軽罪
○第壱節 故殺及ヒ其他ノ死刑ニ該レル重罪、身体ニ対スル乱害ノ脅迫
○第壱款 故殺、謀殺、尊属親ノ殺害、嬰児ノ殺害、毒殺
第弐百九拾五条 故意ヲ以テ行ヒタル人殺ハ之ヲ名称シテ故殺ト云フ
第弐百九拾六条 凡ソ予謀又ハ待伏ヲ以テ行ヒタル故殺ハ之ヲ名称シテ謀殺ト云フ
第弐百九拾七条 予謀トハ其行為ノ前ニ特ニ定メタル人又ハ然ノミナラス見出サレ或ハ出遭フ可キ人ノ身体ニ害ヲ加フル為メニ為シタル謀計ヲ指シ云フモノニシテ仮令其謀計カ或ル景況又ハ或ル条件ニ関スル時ト雖モ亦同一ナリトス
第弐百九拾八条 待伏トハ人ヲ殺ス為メ若クハ人ニ対シテ暴行ノ所為ヲ行フ為メ一箇又ハ数箇ノ地ニ於テ多少ノ時間其人ヲ待ツ事ヲ指シ云フモノトス
第弐百九拾九条 適法ノ父母、不適法ノ父母或ハ養父母又ハ総テ其他ノ適法ノ尊属親ノ故殺ハ之ヲ名称シテ尊属親ノ殺害ト云フ
第三百条 新産児ノ故殺ハ之ヲ名称シテ嬰児ノ殺害ト云フ
第三百壱条 凡ソ毒物ヲ用ヒ又ハ之ヲ配剤シタル方法ノ如何ヲ問ハス又其効験ノ如何ヲ問ハス多少速ニ人ヲ殺スコトヲ得可キ毒物ノ効力ニ依リ人ノ生命ニ対シテ行ヒタル乱害ハ之ヲ名称シテ毒殺ト云フ
第三百弐条 凡ソ謀殺、尊属親ノ殺害、嬰児ノ殺害、毒殺ノ罪ヲ犯シタル者ハ死刑ニ処セラル可シ但シ尊属親ノ殺害ニ関シテ第十三条ニ記シタル別段ノ成規ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第三百三条 凡ソ重罪執行ノ為メ拷責ヲ用ヒ又ハ惨刻ノ所為ヲ行フ処ノ兇徒ハ其名称ノ如何ヲ問ハス謀殺ノ罪アリトシテ刑ニ処セラル可シ
第三百四条 故殺ノ罪ヲ他ノ重罪ノ前ニ犯シ又ハ他ノ重罪ト同時ニ犯シ又ハ他ノ重罪ノ後ニ犯シタル時ハ故殺ハ死刑ヲ惹起スルモノトス
一箇ノ軽罪ヲ設備シ、容易ナラシメ又ハ執行シ若クハ其軽罪ノ正犯或ハ従犯ノ逃走ヲ助ケ又ハ其脱刑ヲ保スルヲ目的トシテ故殺ノ罪ヲ犯シタル時ハ亦故殺ハ死刑ヲ惹起スルモノトス
総テ其他ノ場合ニ於テハ故殺ノ犯罪人ハ無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
○第弐款 脅迫
第三百五条 何人ニ限ラス無名又ハ署名ノ文書ヲ以テ謀殺、毒殺又ハ其他総テ死刑、無期徒刑又ハ流刑ニ処セラル可キ身体ニ対スル乱害ヲ脅迫シタル者ハ若シ其指示シタル地ニ金額ヲ差送リ又ハ総テ其他ノ条件ヲ履行ス可キノ差図ヲ以テ其脅迫ヲ為シタル場合ニ於テハ二年乃至五年ノ禁錮ト百五十「フランク」乃至一千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可シ
其犯罪人ハ亦其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間高等警察ノ監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
第三百六条 若シ右ノ脅迫ニ何等ノ差図又ハ条件ヲモ添ヘサル時ハ其刑ハ少クトモ一年多クトモ三年ノ禁錮及ヒ百「フランク」乃至六百「フランク」ノ罰金タル可シ
此場合ニ於テハ前条ノ場合ニ於ケル如ク其犯罪人ニ対シテ監視ノ刑ヲ宣告スルコトヲ得可シ
第三百七条 若シ其差図又ハ条件ヲ添ヘテ為シタル脅迫カ口上ノモノタル時ハ其犯罪人ハ六月乃至二年ノ禁錮ト二十五「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
此場合ニ於テハ前数条ノ場合ニ於ケル如ク其犯罪人ニ対シテ監視ノ刑ヲ宣告スルコトヲ得可シ
第三百八条 何人ニ限ラス第三百五条ニ定メサル強暴又ハ暴行ヲ口上又ハ文書ヲ以テ脅迫シタル者ハ若シ差図又ハ条件ヲ添ヘテ脅追ヲ為シタル時ハ六日乃至三月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至百「フランク」ノ罰金トニ処セラレ又ハ其二箇ノ刑中ノ一箇ノミニ処セラル可シ
○第弐節 故殺ノ名称ヲ附セサル故意ノ創傷及ヒ殴打並ニ其他ノ故意ノ重罪及ヒ軽罪
第三百九条 凡ソ故意ヲ以テ創傷ヲ加ヘ又ハ殴打ヲ為シ又ハ総テ其他ノ暴行或ハ強暴ヲ行ヒタル者ハ若シ此種類ノ暴行ヨリシテ二十日以上病ニ罹ラシメ又ハ労働ヲ為スコト能ハサルニ至ラシメタル時ハ二年乃至五年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可シ
若シ前ニ明記シタル暴行ノ為メ一肢ヲ不具ニシ、切断シ或ハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメ又ハ両眼ヲ失ヒ或ハ一眼ヲ失フニ至ラシメ又ハ其他ノ廃疾ニ罹ラシメタル時ハ其犯罪人ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
若シ故意ヲ以テ為シタレトモ人ヲ殺スノ意思ナクシテ為シタル殴打又ハ創傷カ人ヲ死ニ致シタル時ハ其犯罪人ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第三百拾条 若シ予謀又ハ待伏ノアリタル時人ヲ死ニ致シタルニ於テハ無期ノ徒刑ニ処セラル可ク又其暴行ノ為メ一肢ヲ不具ニシ、切断シ或ハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメ又ハ両眼或ハ一眼ヲ失フニ至ラシメ又ハ其他ノ廃疾ニ罹ラシメタルニ於テハ有期ノ徒刑ニ処セラル可ク又第三百九条ノ第一項ニ定メタル場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第三百拾壱条 若シ創傷、殴打又ハ其他ノ暴行或ハ強暴ノ為メ第三百九条ニ記載シタル種類ノ病ニ罹ラシムルコトナク又ハ労働ヲ為スコト能ハサルニ至ラシムルコトナキ時ハ其犯罪人ハ六日乃至二年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラレ又ハ其二箇ノ刑中ノ一箇ノミニ処セラル可シ
若シ予謀又ハ待伏ノアリタル時ハ其禁錮ハ二年乃至五年タル可ク又罰金ハ五十「フランク」乃至五百「フランク」タル可シ
第三百拾弐条 適法ノ父母、不適法ノ父母、或ハ養父母又ハ其他ノ適法ノ尊属親ニ故意ヲ以テ創傷ヲ加ヘ又ハ殴打ヲ為シタル者ハ左ノ如ク刑ニ処セラル可シ
若シ其創傷又ハ殴打ノ為メ第三百九条ニ記載シタル種類ノ病ニ罹ラシムルコトナク又ハ労働ヲ為スコト能ハサルニ至ラシムルコトナキ時ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
若シ二十日以上ノ間労働ヲ為スコト能ハサルニ至ラシメタル時又ハ予謀或ハ待伏ノアリタル時ハ懲役ノ刑ノ最上限ニ処セラル可シ
若シ其場合ノ関係アル条ニ懲役ノ刑ヲ定メタル時ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
若シ其条ニ有期ノ徒刑ヲ定メタル時ハ無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第三百拾三条 本節及ヒ前節ニ定メタル重罪及ヒ軽罪ヲ騒乱ヲ為ス集合ニ於テ行ヒ又ハ抗命或ハ劫掠ヲ以テ行ヒタル時ハ其集合、抗命又ハ劫掠ノ首長、正犯、煽動者及ヒ教唆者ニ右ノ重罪及ヒ軽罪ヲ帰ス可ク而シテ此等ノ各員ハ右ノ重罪又ハ軽罪ヲ犯シタルモノトシテ刑ニ処セラレ且ツ自カラ其重罪又ハ軽罪ヲ行ヒタル者ト同一ノ刑ヲ言渡サル可シ
第三百拾四条 凡ソ匕首、袖銃又ハ如何ナル種類ノモノタルヲ問ハス法律又ハ公ケノ行政規則ニ依リ禁セラレタル兵器ヲ製造シ又ハ売粥キタル者ハ六日乃至六月ノ禁錮ニ処セラル可シ
右ノ兵器ヲ携帯シタル者ハ十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
右二箇中何レノ場合ニ於テモ其兵器ヲ没収ス可キモノトス
右ノ諸件ハ重罪ノ従犯タル場合ニ於テ更ニ重劇ノ刑ニ処ス可キ時ハ其重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可シ
第三百拾五条 前数条ニ記載シタル懲治ノ刑ノ外裁判所ヨリ二年乃至十年間高等警察ノ監視ニ附スル事ヲ宣告スルヲ得可シ
第三百拾六条 陽物ヲ切ルノ重罪ヲ犯シタル各人ハ無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
若シ其重罪ノ後四十日ヲ経過セサル前ニ之レカ為メ死ニ致シタル時ハ其犯罪人ハ死刑ニ処セラル可シ
第三百拾七条 何人ニ限ラス食料、飲料、薬品、暴行ニ依リ又ハ総テ其他ノ方法ニ依リ懐胎シタル婦女ノ堕胎ヲ得セシメタル者ハ其婦女ノ之ヲ承諾シタルト否トヲ問ハス懲役ノ刑ニ処セラル可シ
己レ自カラ堕胎ヲ為シタル婦女又ハ堕胎ノ為メニ指示セラレ或ハ配剤セラレタル方法ヲ用フルコトヲ承諾シタル婦女ハ若シ之レカ為メニ堕胎ヲ為シタル時ハ右ト同一ノ刑ヲ宣告セラル可シ
右ノ方法ヲ指示シ又ハ配剤シタル内科、外科ノ医師及ヒ其他ノ医学得業生並ニ製薬者ハ堕胎ヲ為シタル場合ニ於テハ有期ノ徒刑ヲ言渡サル可シ
如何ナル方法タルヲ問ハス人ヲ殺ス可キ性質ノモノニアラスシテ健康ヲ害ス可キモノタル毒物ヲ故意ヲ以テ人ニ与ヘ之レカ為メ其人ヲ病ニ罹ラシメ又ハ労働ヲ為スコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ一月乃至五年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可ク又其者ハ右ノ外少クトモ二年多クトモ十年間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
若シ其病又ハ労働スル能ハサルコトノ二十日以上継続シタル時ハ其刑ハ懲役ノ刑タル可シ
若シ其犯罪人カ第三百十二条ニ指定シタル其尊属親中ノ一人ニ対シテ前二項ニ明記シタル軽罪若クハ重罪ヲ行ヒタル時ハ軽罪ヲ行ヒタル場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ処セラル可ク又重罪ヲ行ヒタル場合ニ於テハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第三百拾八条 何人ニ限ラス健康ニ有害ナル混合物ヲ包含シタル変造ノ飲料ヲ売リ又ハ売粥キタル者ハ六日乃至二年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其売主又ハ売粥人ニ属スルヲ見出サレタル変造ノ飲料ハ之ヲ差押ヘテ没収ス可シ
○第三節 故意ニアラサル人殺、創傷及ヒ殴打、宥恕ス可キ重罪及ヒ軽罪並ニ重罪軽罪ヲ宥恕スル事ヲ得サル場合、重罪ニモ又軽罪ニモアラサル人殺、創傷及ヒ殴打
○第壱款 故意ニ非サル人殺、創傷及ヒ殴打
第三百拾九条 何人ニ限ラス拙劣、疎忽、不注意、懈怠又ハ規則ノ不遵守ニ依リ故意ニアラスシテ人殺ヲ行ヒ又ハ故意ニアラスシテ人殺ノ原由タル者ハ三月乃至二年ノ禁錮ト五十「フランク」乃至六百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第三百弐拾条 若シ技巧又ハ用心ノ缺ケタルカ為メ創傷又ハ殴打ノミヲ生セシメタル時ハ其犯罪人ハ六日乃至二月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至百「フランク」ノ罰金トニ処セラレ又ハ其二箇ノ刑中ノ一箇ノミニ処セラル可シ
○第弐款 宥恕ス可キ重罪及ヒ軽罪並ニ重罪軽罪ヲ宥恕スルコトヲ得サル場合
第三百弐拾壱条 故殺並ニ創傷及ヒ殴打ハ人ノ身体ニ対スル重劇ノ殴打又ハ暴行ニ依テ挑ミ起サレタル時ハ宥恕ス可キモノトス
第三百弐拾弐条 昼間ニ人ノ住スル家屋、房室又ハ其附属物ノ繞囲、墻壁又ハ入リ口ノ踰越又ハ破壊ヲ防止スルニ依リ前条ニ記載シタル重罪及ヒ軽罪ヲ行ヒタル時ハ亦其重罪及ヒ軽罪ヲ宥恕ス可キモノトス
若シ夜間ニ其所為ノアリタル時ハ第三百二十九条ヲ以テ其場合ヲ規定ス可シ
第三百弐拾三条 尊属親殺害ノ罪ハ決シテ宥恕ス可カラサルモノトス
第三百弐拾四条 夫ノ其婦ヲ故殺シ又ハ婦ノ其夫ヲ故殺シタル罪ハ若シ其故殺ヲ行ヒタル夫又ハ婦ノ生命カ其故殺ヲ為シタル時ニ当リテ危険ニ附セラレシコトナキニ於テハ宥恕ス可カラサルモノトス
然レトモ第三百三十六条ニ定メタル奸通ノ場合ニ於テ夫其夫婦同居ノ家ニ於テ婦及ヒ其従犯ノ現行犯罪ノ時ニ当リ婦並ニ其従犯ヲ故殺シタルノ罪ハ之ヲ宥恕ス可キモノトス
第三百弐拾五条 陽物ヲ切ルノ重罪ハ暴行ヲ用ヒタル猥褻ノ所行ニ依テ直チニ挑ミ起サレタル時ハ宥恕ス可キ故殺又ハ創傷ト看做ス可シ
第三百弐拾六条 宥恕ス可キ所為ノ証セラレタル場合ニ於テ
若シ死刑、無期ノ徒刑又ハ流刑ニ当ル可キ重罪ニ関スル時ハ其刑ヲ一年乃至五年ノ禁錮ニ減軽ス可シ
若シ又総テ其他ノ重罪ニ関スル時ハ其刑ヲ六月乃至二年ノ禁錮ニ減軽ス可シ
右二箇ノ初メノ場合ニ於テ其犯罪人ハ右ノ外上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ少クトモ五年多クトモ十年間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
若シ又軽罪ニ関スル時ハ其刑ヲ六日乃至六月ノ禁錮ニ減軽ス可シ
○第三款 重罪ノ名称ヲモ又軽罪ノ名称ヲモ附セサル人殺、創傷及ヒ殴打
第三百弐拾七条 若シ人殺、創傷及ヒ殴打カ法律上ヨリ命令セラレ及ヒ正当ノ威力ニ依テ指令セラレタル時ハ重罪ニモ又軽罪ニモアラサルモノトス
第三百弐拾八条 若シ人殺、創傷及ヒ殴打カ自己又ハ他人ノ正当ナル防衛ノ為メ現ニ已ムヲ得スシテ之ヲ為スニ至リタル時ハ重罪ニモ又軽罪ニモアラサルモノトス
第三百弐拾九条 左ニ記スル二箇ノ場合ハ防衛ノ為メ現ニ已ムヲ得サル場合中ニ包含セラルヽモノトス
第一 夜間ニ人ノ住スル家屋、房室又ハ其附属物ノ繞囲、墻壁又ハ入リ口ノ踰越又ハ破壊ヲ防止スルニ依リ人殺ヲ行ヒ、創傷ヲ加ヘ又ハ殴打ヲ為シタル時
第二 暴行ヲ以テ行ヒタル盗罪又ハ劫掠ノ犯者ニ対シテ防衛スルニ依リ右ノ所為ノアリタル時
○第四節 風俗ノ乱害
第三百三拾条 凡ソ公ケニ猥褻ノ所行ヲ為シタル各人ハ三月乃至二年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第三百三拾壱条 凡ソ男女ヲ問ハス十三歳以下ノ児童ノ身体ニ対シ暴行ヲ用ヒスシテ猥褻ノ乱業ヲ成就シ又ハ謀試シタル時ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
十三歳以上ノモノト雖モ婚姻ニ依テ後見ヲ免脱セラレサル幼者ノ身体ニ対シ其各尊属親ノ為シタル猥褻ノ乱業ハ右ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
第三百三拾弐条 何人ニ限ラス強奸ノ重罪ヲ行ヒタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
若シ満十五歳以下ノ児童ノ身体ニ対シテ右ノ重罪ヲ行ヒタル時ハ其犯罪人ハ有期徒刑ノ最上限ニ処セラル可シ
何人ニ限ラス男女ノ各人ニ対シ暴行ヲ以テ猥褻ノ乱業ヲ成就シ又ハ謀試シタル者ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
若シ満十五歳以下ノ児童ノ身体ニ対シテ右ノ重罪ヲ行ヒタタル時ハ其犯罪人ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第三百三拾三条 若シ犯罪人カ其乱業ヲ受ケシ者ノ尊属親タル時又ハ犯罪人カ其乱業ヲ受ケシ者ニ対シテ威力ヲ有スル人ノ種類中ニアル時又ハ犯罪人カ其乱業ヲ受ケシ者ノ教師或ハ其者ノ雇入ノ従者タリ或ハ前ニ指定シタル各人ノ雇入ノ従者タル時又ハ犯罪人カ官吏或ハ一箇ノ法教ノ法教師タル時又ハ犯罪人カ其如何ナル者タルヲ問ハス其重罪ニ於テ一人又ハ数人ノ助ヲ得タル時ハ其刑ハ第三百三十一条ノ第一項ニ定メタル場合ニ於テハ有期ノ徒刑タル可ク又前条ニ定メタル場合ニ於テハ無期ノ徒刑タル可シ
第三百三拾四条 何人ニ限ラス二十一歳以下ノ男女ノ少年ノ淫行又ハ汚穢ヲ平常勧誘シ、幇助シ又ハ容易ナラシメテ風俗ヲ乱害シタル者ハ六月乃至二年ノ禁錮ト五十「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
若シ其少年ノ父母、後見人又ハ其少年ノ監視ヲ任セラレタル其他ノ各人ニ於テ其淫行又ハ汚穢ヲ勧誘シ、幇助シ又ハ容易ナラシメタル時ハ其刑ハ二年乃至五年ノ禁錮及ヒ三百「フランク」乃至一千「フランク」ノ罰金タル可シ
第三百三拾五条 前条ニ記載シタル軽罪ノ犯罪人ハ総テ後見又ハ管財ノ職ト親族会議ニ於ケル総テノ参加トヲ禁止セラル可シ即チ前条ノ第一項ヲ適用ス可キ各人ハ少クトモ二年多クトモ五年間右ノ諸件ヲ禁止セラレ又前条ノ第二項ニ記シタル各人ハ少クトモ十年多クトモ二十年間右ノ諸件ヲ禁止セラル可キモノトス
若シ父母ノ其軽罪ヲ行ヒタル時ハ其犯罪人ハ右ノ外父ノ威権ニ関シタル民法第一編第九巻ニ依リ其子ノ身体及ヒ財産ニ付キ附与セラレタル権利及ヒ利益ヲ剥奪セラル可シ
如何ナル場合ニ於テモ其犯罪人ハ右ノ外上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ但シ其監視ノ期限ニ付テハ本条ノ記載シタル禁止ノ期限ニ付キ前文ニ定メタル所ノモノヲ遵守ス可キモノトス
第三百三拾六条 婦ノ奸通ハ夫ニ非サレハ之ヲ告発スルコトヲ得ス又夫カ第三百三十九条ニ定メタル場合ニアル時ハ右ノ権能モ止息スルモノトス
第三百三拾七条 奸通ヲ証セラレタル婦ハ少クトモ三月多クトモ二年間禁錮ノ刑ニ処セラル可シ
夫ハ其婦ヲ再ヒ引取ルコトヲ承諾シテ其言渡ノ効ヲ止ムルコト自由ナリトス
第三百三拾八条 奸通シタル婦ノ従犯ハ右ト同一ノ時間禁錮ノ刑ニ処セラレ且ツ其外ニ百「フランク」乃至二千「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
其従犯タル事ヲ訴ヘラレタル犯罪被告人ニ対シテ申立ツルコトヲ許スヲ得可キ証拠ハ現行犯罪ノ外其犯罪被告人ノ記シタル書状又ハ其他ノ証拠物ヨリ生スル所ノモノヽミニ限ル可シ
第三百三拾九条 夫其夫婦同居ノ家ニ於テ妾ヲ置キ婦ノ告訴ニ依リ其証ノ顕レタル時ハ百「フランク」乃至二千「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
第三百四拾条 何人ニ限ラス婚姻ノ羈絆ニ結束セラレタル者ニシテ前婚ノ解分スル前ニ更ニ他ノ婚姻ヲ契約シタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
前婚ノ存在スルコトヲ知テ其再婚ヲ許シタル公ケノ役員ハ右ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
○第五節 人ノ不法ナル逮捕及ヒ監禁
第三百四拾壱条 設置セラレタル官憲ノ命令ナク且ツ法律上ニテ犯罪被告人ヲ召捕フルコトヲ命令スル場合ノ外凡ソ如何ナル人タリトモ之ヲ逮捕シ、収監シ又ハ監禁シタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
何人ニ限ラス其収監又ハ監禁ヲ執行スル為メノ場所ヲ貸シタル者ハ右ト同一ノ刑ヲ受クヘシ
第三百四拾弐条 若シ其収監又ハ監禁カ一月以上継続シタル時ハ其刑ハ無期ノ徒刑タル可シ
第三百四拾三条 若シ第三百四十一条ニ記載シタル犯罪人カ未タ其所為ヲ訴ヘラレスシテ逮捕、収監又ハ監禁ノ日ヨリ満十日ニ至ラサル前ニ其逮捕シ、収監シ又ハ監禁シタル者ヲ釈放シタル時ハ其刑ヲ二年乃至五年ノ禁錮ニ減軽ス可シ○然レトモ其犯罪人ハ五年乃至十年間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
第三百四拾四条 左ノ各箇ノ場合ニ於テ即チ
第一 若シ偽リノ服飾、偽リノ姓名ヲ用ヒ又ハ公ケノ官憲ノ偽リノ命令ヲ以テ逮捕ヲ執行シタル時
第二 若シ其逮捕セラレ、収監セラレ又ハ監禁セラレタル者ヲ殺サント脅迫シタル時
右ノ場合ニ於テハ其犯罪人ハ無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
然レトモ若シ逮捕セラレ、収監セラレ又ハ監禁セラレタル各人ニ其身体上ノ拷責ヲ受ケシメタル時ハ其刑ハ死刑タル可シ
○第六節 小児ノ身分ノ証ヲ妨ケ或ハ滅却シ又ハ其生存ヲ害セントスルノ重罪及ヒ軽罪、幼者ノ略取、埋葬ニ関スル法律ノ違犯
○第壱款 小児ニ対スル重罪及ヒ軽罪
第三百四拾五条 小児ヲ略取シ、蔵匿シ又ハ隠蔽シ又ハ此小児ヲ以テ彼ノ小児ト更換シ又ハ分娩セサル婦女ノ小児ヲ産ミタリト偽リタル犯罪人ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
若シ其小児ノ生存シタルノ証アラサル時ハ其刑ハ一月乃至五年ノ禁錮タル可シ
若シ其小児ノ生存セサリシ証アル時ハ其刑ハ六日乃至二月ノ禁錮タル可シ
小児ヲ委託セラレテ其引渡ヲ要求スル権利アル各人ニ之ヲ示サヽル者ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第三百四拾六条 何人ニ限ラス分娩ニ立会ヒテ民法第五十六条ニ依リ定メラレタル申述ヲ同法典第五十五条ニ定メタル期限内ニ為サヽル各人ハ六日乃至六月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第三百四拾七条 凡ソ新産児ヲ見出シテ民法第五十八条ニ定メタル如ク之ヲ身分取扱役ニ渡サヽル各人ハ前条ニ載セタル刑ニ処セラル可シ
本条ノ成規ハ小児ヲ引受クル事ヲ承諾シ而シテ此事ニ関シテ其小児ヲ見出シタル地ノ邑庁ニ申述ヲ為シタル者ニ適用ス可カラサルモノトス
第三百四拾八条 満七歳以下ノ小児ヲ管照スル為メ又ハ総テ其他ノ原由ノ為メニ之ヲ委託セラレタル者ノ其小児ヲ貧院ニ送リタル時ハ六週乃至六月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至五十「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
然レトモ若シ其者ノ其小児ノ給養、保育ヲ無償ニテ設備スルノ義務ナク又ハ其義務ヲ契約スルコトナクシテ且ツ誰アリテ之ヲ設備スル者アラサル時ハ何等ノ刑ヲモ宣告ス可カラス
第三百四拾九条 満七歳以下ノ小児ヲ寥闃ノ地ニ遺棄シタル者又ハ斯ノ如ク小児ヲ遺棄スルノ命令ヲ附与シテ其命令ノ執行セラレタル者ハ其所為ノミノ為メ六月乃至二年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第三百五拾条 小児ノ後見人又ハ後見ヲ為ス女、教師又ハ女教師ニ於テ其小児ヲ遺棄シ又ハ遺棄スルノ命令ヲ附与シタル時ハ前条ニ載セタル刑ハ其各員ニ対シ二年乃至五年タル可ク且ツ罰金ハ五十「フランク」乃至四百「フランク」タル可シ
第三百五拾壱条 若シ第三百四十九条及ヒ第四百五十条ニ定メタル遺棄ノ為メ其小児ノ不具トナリ又ハ一肢ヲ用フルコト能ハサルニ至ラシメタル時ハ其行為ハ小児ヲ遺棄シタル者ニ於テ其小児ニ故意ヲ以テ加ヘタル創傷ト看做ス可ク若シ又之レカ為メ死ニ致セシ時ハ其行為ヲ故殺ト看做ス可シ而シテ其第一ニ記シタル場合ニ於テハ其犯罪人ハ故意ノ創傷ニ適用ス可キ刑ヲ受ク可ク又其第二ニ記シタル場合ニ於テハ故殺ニ適用ス可キ刑ヲ受ク可キモノトス
第三百五拾弐条 満七歳以下ノ小児ヲ寥闃ナラサル地ニ遺棄シタル者ハ三月乃至一年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第三百五拾三条 若シ小児ノ後見人又ハ後見ヲ為ス女、教師又ハ女教師ニ於テ前条ニ定メタル軽罪ヲ行ヒタル時ハ六月乃至二年ノ禁錮ト二十五「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
○第弐款 幼者ノ略取
第三百五拾四条 何人ニ限ラス詐欺又ハ暴行ヲ以テ幼者ヲ略取シ或ハ略取セシメ又ハ幼者ニ対シテ威力ヲ行フ可キ者或ハ之ニ対シテ指令ヲ委託セラレタル者ノ置キタル場所ヨリ其幼者ヲ引誘シ、誘拐シ或ハ引出シ又ハ之ヲ引誘セシメ、誘拐セシメ或ハ引出サシメタルモノハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第三百五拾五条 若シ右ノ如クニ略取セラレ又ハ誘拐セラレタル者カ満十六歳以下ノ女児ナル時ハ其刑ハ有期ノ徒刑タル可シ
第三百五拾六条 若シ十六歳以下ノ女児カ其略取ヲ承諾シ又ハ任意ニテ其誘騙者ニ随行シタル時其誘騙者ノ二十一歳以上ノ成年者タルニ於テハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
若シ其誘騙者ノ未タ二十一歳ニ至ラサル時ハ二年乃至五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第三百五拾七条 若シ其誘騙者カ其略取シタル女児ヲ妻ト為シタル時ハ民法ニ従ヒ婚姻ノ無効ヲ訟求スルノ権利アル各人ノ告訴ニ依ルニ非サレハ其罪ヲ訴フルコトヲ得ス又婚姻ノ無効ヲ宣告シタル後ニ非サレハ刑ヲ言渡スコトヲ得ス
○第三款 埋葬ニ関スル法律ノ違犯
第三百五拾八条 予メ公ケノ役員ノ許可ヲ受ク可キ旨ヲ定メタル場合ニ於テ其許可ヲ得スシテ死人ヲ埋葬セシメタル者ハ六日乃至二月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至五十「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ但シ其軽罪ノ正犯カ右ノ景況ニ於テ申立テラルヽコトアル可キ重罪ノ起訴ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
如何ナル方法ヲ問ハス定期ニ先ンシタル埋葬ニ関スル法律及ヒ規則ニ違犯シタル者ニ対シテ右ト同一ノ刑ヲ適用ス可シ
第三百五拾九条 何人ニ限ラス殺害セラレタル者又ハ殴打或ハ創傷ノ為メニ死シタル者ノ屍ヲ隠匿シ又ハ隠蔽シタル者ハ六月乃至二年ノ禁錮ト五十「フランク」乃至四百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ但シ其者ノ右ノ重罪ニ参加シタル時ハ更ニ重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第三百六拾条 何人ニ限ラス墳墓ヲ凌辱スルノ罪ヲ犯シタル者ハ三月乃至一年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ但シ其罪ニ添ヘ行ヒタル重罪又ハ軽罪ニ対スル刑ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
○第七節 偽証、誣告、誹毀、陰私ノ漏告
○第壱款 偽証
第三百六拾壱条 何人ニ限ラス重罪ノ事項ニ於テ重罪被告人ヲ陥害スル為メ若クハ之ヲ曲庇スル為メ偽証ノ罪ヲ犯シタル者ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
若シ然レトモ重罪被告人カ懲役ノ刑ヨリ更ニ重劇ノ刑ヲ言渡サレタル時ハ其重罪被告人ヲ陥害スル為メ偽証ヲ申述シタル証人ハ之ト同一ノ刑ヲ受ク可シ
第三百六拾弐条 何人ニ限ラス懲治ノ事項ニ於テ犯罪被告人ヲ陥害スル為メ若クハ之ヲ曲庇スル為メ偽証ノ罪ヲ犯シタル者ハ少クトモ二年多クトモ五年ノ禁錮ト五十「フランク」乃至二千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
若シ然レトモ犯罪被告人カ五年以上ノ禁錮ヲ言渡サレタル時ハ其犯罪被告人ヲ陥害スル為メ偽証ヲ申述シタル証人ハ之ト同一ノ刑ヲ受ク可シ
何人ニ限ラス警察ノ事項ニ於テ犯罪被告人ヲ陥害スル為メ若クハ之ヲ曲庇スル為メ偽証ノ罪ヲ犯シタル者ハ少クトモ一年多クトモ三年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
右二箇ノ場合ニ於テ其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪セラレ且ツ之ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
第三百六拾三条 民事ニ於テ偽証ノ罪ヲ犯シタル者ハ二年乃至五年ノ禁錮ト五十「フランク」乃至二千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ○又其者ハ前条ニ記載シタル附加刑ニ処スルコトヲ得可シ
第三百六拾四条 重罪ノ事項ニ於ケル偽証者ニシテ金円又ハ各種ノ報酬或ハ約束ヲ受ケタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ但シ第三百六十一条第二項ノ適用ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
懲治又ハ民事ノ事項ニ於ケル偽証者ニシテ金円又ハ各種ノ報酬或ハ約束ヲ受ケタル者ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
警察ノ事項ニ於ケル偽証者ニシテ金円又ハ各種ノ報酬或ハ約束ヲ受ケタル者ハ二年乃至五年ノ禁錮ト五十「フランク」乃至二千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其偽証者ハ亦第三百六十二条ニ記載シタル附加刑ニ処スルコトヲ得可シ
如何ナル場合ニ於テモ偽証者ノ受ケタル所ノモノハ之ヲ没収ス可シ
第三百六拾五条 証人ニ嘱託シテ偽証ヲ申述セシムルノ罪ヲ犯シタル者ハ第三百六十一条、第三百六十二条、第三百六十三条、第三百六十四条ニ記シタル差別ニ従ヒ其偽証者ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
第三百六拾六条 民事ニ於テ誓ヲ求メラレ又ハ反シ求メラレタル各人ニシテ偽リノ誓ヲ為シタル者ハ少クトモ一年多クトモ五年ノ禁錮ト百「フランク」乃至三千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其者ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪セラレ且之ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ヲ受ケシムルコトヲ得可シ
○第弐款 誣告、誹毀、陰私ノ漏告
第三百六拾七条ヨリ第三百七拾弐条ニ至ル迄ノ各条ハ之ヲ削除シタリ
第三百七拾三条 何人ニ限ラス書面ヲ以テ裁判官吏又ハ行政或ハ司法警察官吏ニ一人又ハ数人ニ対スル誣告ノ告発ヲ為シタル者ハ一月乃至一年ノ禁錮ト百「フランク」乃至三千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第三百七拾四条及ヒ第三百七拾五条ハ削除シタリ
第三百七拾六条 総テ其他ノ誹毀又ハ侮辱ノ言語ニシテ右ノ如ク重劇ト公示トノ二箇ノ性質ヲ併有セサルモノハ単一ナル警察ノ刑ノミニ処セラル可シ
第三百七拾七条ハ削除シタリ
第三百七拾八条 内科、外科ノ医師及ヒ其他ノ医学得業生並ニ製薬者、産婆及ヒ其他総テ身分又ハ職業ニ依リ己レニ委託セラレタル陰私ノ事ノ受託者ニシテ法律上ニテ告発人タラサルヲ得サル場合ノ外其陰私ノ事ヲ漏告シタル者ハ一月乃至六月ノ禁錮ト百「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
○第弐章 財産ニ対スル重罪及ヒ軽罪
○第壱節 盗罪
第三百七拾九条 何人ニ限ラス己レニ属セサル物ヲ悪意ヲ以テ窃取シタル者ハ盗罪ヲ犯シタルモノトス
第三百八拾条 夫ノ其婦ノ損害ニ於テ又ハ婦ノ其夫ノ損害ニ於テ又ハ鰥夫或ハ寡婦ノ其死去セシ配偶者ニ属シタル物ニ付キ又ハ子或ハ其他ノ卑属親ノ其父母或ハ其他ノ尊属親ノ損害ニ於テ又ハ父母或ハ其他ノ尊属親ノ其子或ハ其他ノ卑属親ノ損害ニ於テ又ハ右ト同級ニ於ケル姻属親ノ行ヒタル窃取ハ民事上ノ補償ノミノ原因トナル可キモノトス
総テ其他ノ各人ニシテ其盗取シタル物品ノ全部又ハ一部ヲ隠匿シ又ハ自己ノ利益ニ適用シタル者ニ関シテハ此等ノ者ハ盗罪ヲ犯シタリトシテ刑ニ処セラル可シ
第三百八拾壱条 左ニ記スル五箇ノ景況ヲ併合シテ行ヒタル盗罪ヲ犯セシ各人ハ無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第一 夜間盗罪ヲ行ヒタル時
第二 二人又ハ数人ニテ盗罪ヲ行ヒタル時
第三 犯罪人数名又ハ其中一名ノ明顕又ハ隠蔵ノ兵器ヲ携帯シタル時
第四 犯罪人カ人ノ住居シ或ハ人ノ住居スルニ用フル家屋、房室、部屋、宿所又ハ其附属物ニ於テ外部ノ破壊、踰越又ハ偽鑰ニ依リテ其重罪ヲ行ヒ若クハ公ケノ官吏或ハ文武役員ノ名称ヲ詐用シ又ハ官吏或ハ役員ノ章服或ハ服飾ヲ僭用シ又ハ文武官憲ノ偽命ヲ申立テヽ其重罪ヲ行ヒタル時
第五 犯罪人カ暴行ニ依リ又ハ其兵器ヲ用フ可キノ脅迫ニ依リ其重罪ヲ行ヒタル時
第三百八拾弐条 暴行ニ依テ行ヒタル盗罪ヲ犯セシ各人ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ○若シ其盗罪ヲ行フ為メニ為シタル暴行カ創傷又ハ打傷ノ痕跡ヲ遺シタル時ハ此景況ヲ以テ無期ノ徒刑ヲ宣告スルニ足レリトス
第三百八拾三条 公ケノ道路ニ於テ行ヒタル盗罪ハ若シ第三百八十一条ニ定メタル景況中ノ二箇ヲ以テ之ヲ行ヒタル時ハ無期ノ徒刑ヲ惹起スルモノトス
其盗罪ハ若シ右ノ景況中ノ一箇ヲ以テ之ヲ行ヒタル時ハ有期ノ徒刑ヲ惹起スルモノトス
其他ノ場合ニ於テハ其刑ハ懲役ノ刑タル可シ
第三百八拾四条 凡ソ第三百八十一条ノ第四ニ表示シタル方法中ノ一箇ニ依リ行ヒタル盗罪ヲ犯セシ各人ハ仮令人ノ住居ニ用ヒス又人ノ住居スル家屋ニ附属セサル建築物、繞囲地即チ囲ヒ地ニ於テ破壊、踰越及ヒ偽鑰ノ使用ヲ為シ且ツ其破壊ノ内部ノミニ限リタル時ト雖モ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第三百八拾五条 左ニ記スル三箇ノ景況中ノ二箇ヲ以テ行ヒタル盗罪ヲ犯セシ各人ハ亦有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第一 夜間盗罪ヲ行ヒタル時
第二 人ノ住居スル家屋又ハ仏蘭西ニ於テ法律上ニテ設定シタル法教ノ用ニ供スル建築物中ノ一箇ニ於テ盗罪ヲ行ヒタル時
第三 二人又ハ数人ニテ盗罪ヲ行ヒタル時
右ノ外若シ其犯罪人又ハ犯罪人数名中ノ一人カ明顕又ハ隠蔵ノ兵器ヲ携帯シタル時
第三百八拾六条 左ノ場合中ノ一箇ニ於テ行ヒタル盗罪ヲ犯セシ各人ハ懲役ノ刑ニ処セラル可シ
第一 夜間二人又ハ数人ニテ盗罪ヲ行ヒタル時又ハ其二箇ノ景況中ノ一箇ノミヲ以テスルト雖モ人ノ住居シ又ハ人ノ住居ニ用フル場所又ハ仏蘭西ニ於テ法律上ニテ設定シタル法教ノ用ニ供スル建築物ニ於テ盗罪ヲ行ヒタル時
第二 仮令盗罪ヲ行ヒタル場所カ人ノ住居スルモノニ非ス又人ノ住居ニ用フルモノニ非スト雖モ又昼間一人ノミニテ盗罪ヲ行ヒタル時ト雖モ其犯罪人又ハ犯罪人数名中ノ一人カ明顕又ハ隠蔵ノ兵器ヲ携帯シタル時
第三 雇人又ハ雇賃ヲ受ケテ労働スル者ノ其使役ヲ受クル主長ニ非スシテ其主長ノ家屋ニ在リ若クハ其主長ニ随行シテ赴キタル家屋ニ在ル各人ニ対シテ盗罪ヲ行ヒシ場合ト雖モ雇人タル者又ハ雇賃ヲ受ケテ労働スル者ノ盗罪ヲ行ヒタル時又ハ職工、雇工、工作受業者ノ其雇主ノ家屋、工作場、倉庫ニ於テ盗罪ヲ行ヒタル時又ハ労働ヲ為ス者ノ其平常労働ヲ為ス住家ニ於テ盗罪ヲ行ヒタル時
第四 旅店主、旅舎主、運送人、船夫又ハ此等各員ノ使用ヲ受クル者ノ中一名ノ此等ノ名義ヲ以テ己レニ委託セラレタル物ノ全部又ハ一部ヲ盗ミテ盗罪ヲ行ヒタル時
第三百八拾七条 運送人、船夫又ハ其使用ヲ受クル各人ニシテ其運送ヲ己レニ委託セラレタル葡萄酒又ハ総テ其他ノ種類ノ液類或ハ商品ヲ変造シ又ハ変造セント謀試シ而シテ有害物ノ混合ニ依テ其変造ヲ行ヒ或ハ行ハント謀試シタル者ハ二年乃至五年ノ禁錮ト二十五「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其各員ハ右ノ外少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可ク又其各員ハ上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
若シ又有害物ノ混合アラサル時ハ其刑ハ一月乃至一年ノ禁錮及ヒ十六「フランク」乃至百「フランク」ノ罰金タル可シ
第三百八拾八条 何人ニ限ラス物ヲ負載セシメ、物ヲ挽カシメ又ハ乗駕ニ用フル馬又ハ獣類、大小ノ家畜又ハ農業ノ器具ヲ田野ニ於テ盗取シ又ハ盗取セント謀試シタル者ハ少クトモ一年多クトモ五年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
樹木伐出場ニ在ル木材及ヒ石砿ニ在ル石ノ盗取ニ関シ並ニ池、魚池、生洲ニ在ル魚ノ盗取ニ関シテモ亦右ト同一タル可シ
何人ニ限ラス既ニ地ヨリ刈収セシ収穫物或ハ其他ノ有益ナル土地ノ産物又ハ収穫物ノ一部分ヲ為ス稲束ニ為シタル穀類ヲ田野ニ於テ盗取シ又ハ盗取セント謀試シタル者ハ十五日乃至二年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
若シ夜間ニ於テ若クハ数人ニテ若クハ車或ハ物ヲ負載セシムル獣類ヲ用ヒテ盗罪ヲ行ヒタル時ハ禁錮ハ一年乃至五年タル可ク又罰金ハ十六「フランク」乃至五百「フランク」タル可シ
若シ窃取スル前ニ未タ地ヨリ刈収セサル収穫物又ハ其他ノ有益ナル土地ノ産物ヲ籃、袋又ハ之ニ等シキ其他ノ物品ヲ用ヒ若クハ夜間ニ於テ若クハ車或ハ物ヲ負載セシムル獣類ヲ用ヒ若クハ数人ニテ盗取シ又ハ盗取セント謀試シタル時ハ其刑ハ十五日乃至二年ノ禁錮及ヒ十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金タル可シ
本条ニ列記シタル総テノ場合ニ於テ犯罪人ハ主刑ニ拘ハラス其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間第四十二条ニ記載シタル権利ノ全部又ハ一部ヲ禁止スルコトヲ得可シ○又其犯罪人ハ上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
第三百八拾九条 凡ソ盗罪ヲ行フ為メ所有地ノ分界ニ用フル界標ヲ取去リ又ハ取去ラント謀試シタル各人ハ二年乃至五年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪セラレ且ツ上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
第三百九拾条 凡ソ現ニ人ノ住居スルコトナシト雖モ人ノ住居ノ用ニ供シタル所ノ仮令動カス可キモノタリトモ一切ノ建造物、宿所、宿舎、小屋及ヒ之ニ附属スル所ノ諸件即チ用方ノ如何ヲ問ハス且ツ総体ノ繞囲或ハ郭内ニ於テ別段ノ繞囲アル時ト雖モ其建造物、宿所、宿舎、小屋ニ囲マレタル中庭、家畜ノ囿圏、納屋、厩、建築物ノ如キモノハ人ノ住居スル家屋ト看做ス可シ
第三百九拾壱条 鑰ヲ用ヒ或ハ其他ノ方法ニテ鎖閉スル門ノ設ケアラサル時又ハ透観ス可ク且ツ平常開キ置ク所ノ門ヲ設ケアル時ハ溝渠、杭、簀、板、生籬、籬墻又ハ各種ノ材料ヲ以テ造リタル墻壁ニ囲繞セラレタル総テノ地所ハ其各種ノ繞囲ノ高、深、朽廃、破壊ノ如何ヲ問ハス之ヲ繞囲地即チ囲ヒ地ト看做ス可シ
第三百九拾弐条 田野ニ於テ家畜類ヲ入レ置クノ用ニ供シタル動カス可キ欄囲モ亦囲ヒ地ト看做ス可シ而シテ若シ其欄囲カ看守人ノ為メニ設ケタル動カス可キ小屋又ハ其他ノ廠舎ニ属スル時ハ人ノ住居スル家屋ニ附属シタルモノト看做ス可シ
第三百九拾三条 凡ソ墻壁、屋蓋、隔板、門戸、窓窓、鎖、海老錠又ハ其他通行ヲ鎖閉シ或ハ防遮スルニ用フル器具及ヒ如何ナルモノタリトモ各種ノ繞囲ノ強開、打破、破壊、毀拆、取除ハ之ヲ名称シテ破壊ト云フ
第三百九拾四条 破壊ハ外部又ハ内部ノモノトス
第三百九拾五条 外部ノ破壊トハ其破壊ヲ以テ家屋、中庭、家畜ノ囿圏、囲ヒ地或ハ此等諸件ノ附属物又ハ各箇ノ房室或ハ宿所内ニ入ルコトヲ得可キモノヲ云フ
第三百九拾六条 内部ノ破壊トハ前条ニ記載シタル場所ニ入リタル後、内部ノ門戸又ハ繞囲並ニ戸棚又ハ其他ノ鎖閉シタル動産ニ為ス所ノモノヲ云フ
総テ各種ノ品物ヲ入レタル布ト綱トヲ以テ鎖閉シタル箱、匣、行李及ヒ其他ノ鎖閉シタル動産ノ単一ナル取去ハ仮令其場所ニテ破壊ヲ為サスト雖モ内部ノ破壊ノ種類中ニ包含スルモノトス
第三百九拾七条 凡ソ墻壁、門戸、屋蓋又ハ総テ其他ノ繞囲ヲ越ヘテ家屋、建造物、中庭、家畜ノ囿圏、各種ノ建築物、園庭、繞囲地及ヒ囲ヒ地ニ入ル事ヲ名称シテ踰越ト云フ
出入ノ為メニ設ケタルモノニ非サル地下ノ孔穴ヨリ入ル事ハ踰越ニ同シキ重劇ノ景況ナリトス
第三百九拾八条 凡ソ鈎鑰、搭鑰、合鑰又ハ擬造シ、偽造シ、変造シタル鑰或ハ所有者、家屋賃借人、旅店主、宿主カ其犯罪人ノ鑰ヲ用ヒタル鎖、海老錠又ハ各種ノ鎖閉物ノ為メニ設ケタルモノニ非サル鑰ハ之ヲ名称シテ偽鑰ト云フ
第三百九拾九条 何人ニ限ラス鑰ヲ偽造シ又ハ変造シタル者ハ三月乃至二年ノ禁錮ト二十五「フランク」乃至百五十「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
若シ其犯罪人カ鎖匠ヲ以テ職業ト為ス者タル時ハ二年乃至五年ノ禁錮ト五十「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間第四十二条ニ記載シタル権利ノ全部又ハ一部ヲ剥奪スルコトヲ得可ク又其犯罪人ハ上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
右ノ諸件ハ重罪ノ従犯タル場合ニ於テ更ニ重劇ノ刑ニ処ス可キ時ハ其重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第四百条 何人ニ限ラス強逼、暴行又ハ強制ニ依リ義務、処分又ハ義務免除ヲ包含シ或ハ此等ノ諸件ヲ作為スル各種ノ文書、証書、証券、証拠物ノ署名又ハ交付ヲ逼索シタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
何人ニ限ラス名誉ヲ害スル漏告又ハ䜛誣ノ文書或ハ口上ノ脅迫ニ依リ元資或ハ有価物ノ交付若クハ前ニ列記シタル文書類ノ署名或ハ交付ヲ逼索シ又ハ逼索セント謀試シタル者ハ一年乃至五年ノ禁錮ト五十「フランク」乃至三千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
財産ヲ差押ヘラレタル者ニシテ其差押ヘラレテ自己ノ監守ニ委託セラレタル物件ヲ滅却シ、詐取シ又ハ滅却シ或ハ詐取セント謀試シタル者ハ第四百六条ニ載セタル刑ニ処セラル可シ
若シ財産ヲ差押ヘラレタル者其差押ヘラレタル物件ノ監守ノ第三ノ人ニ委託セラレタル時之ヲ滅却シ、詐取シ又ハ滅却シ或ハ詐取セント謀試シタルニ於テハ第四百一条ニ載セタル刑ニ処セラル可シ
各個ノ負債者、借主又ハ質物ノ第三ノ附与者ニシテ其質物ノ名義ニテ附与セシ物件ヲ滅却シ、詐取シ又ハ滅却シ或ハ詐取セント謀試シタル者ハ亦第四百一条ノ刑ヲ適用セラル可キモノトス
詐取シタル物件ヲ情ヲ知テ隠匿シタル者又ハ財産ヲ差押ヘラレタル者、負債者、借主又ハ質物ノ第三ノ附与者ノ配偶者、尊属親及ヒ卑属親ニシテ右物件ノ滅却、詐取又ハ其滅却或ハ詐取ノ謀試ニ於テ右ノ各員ヲ幇助シタル者ハ右各員ノ受クル所ニ等シキ刑ニ処セラル可シ
第四百壱条 本節中ニ列記セサル他ノ盗罪即チ窃盗、掏摸並ニ此等ノ軽罪ノ謀試ハ少クトモ一年多クトモ五年ノ禁錮ニ処セラル可ク又然ノミナラス少クトモ十六「フランク」多クトモ五百「フランク」ノ罰金ニ処スルコトヲ得可シ
其犯罪人ハ猶其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ禁止スルコトヲ得可シ
其犯罪人ハ亦上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
何人ニ限ラス全ク弁済スルコト能ハサルヲ知リテ飲食ノ為メニ設ケタル設立場ニ於テ飲料又ハ食料ヲ給与セシメ其全部又ハ一部ヲ消耗シタル者ハ少クトモ六日多クトモ六月ノ禁錮ト少クトモ十六「フランク」多クトモ二百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
○第弐節 倒産、詐欺取財及ヒ詐欺ノ其他ノ種類
○第壱款 倒産及ヒ詐欺取財
第四百弐条 商法ニ定メタル場合ニ於テ倒産ノ罪アリト宣告セラレタル者ハ左ノ刑ニ処セラル可シ
詐欺ノ倒産者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
単一ナル倒産者ハ少クトモ一月多クトモ二年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第四百三条 商法ニ従ヒ詐欺ノ倒産ノ従犯ナリト宣告セラレタル者ハ詐欺ノ倒産者ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
第四百四条 家資分散ヲ為シタル手形売買世話人及ヒ商業世話人ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可ク若シ又詐欺ノ倒産ヲ証セラレタル時ハ其刑ハ無期ノ徒刑タル可シ
第四百五条 何人ニ限ラス偽リノ姓名又ハ偽リノ分限ヲ用フル事ニ依リ若クハ偽リノ業務、妄想ノ権勢或ハ信憑ノ存在ヲ信思セシムル為メ又ハ虚妄ナル幸福、災禍又ハ総テ其他ノ事故ノ希望或ハ畏惧ヲ生セシムル為メ詐欺ノ計策ヲ用フル事ニ依リ元資、動産又ハ義務ノ証書、処分ノ証書、切手、約束証書、受取証書、義務免除ノ証書ヲ己レニ渡サシメ或ハ交付セシメ又ハ渡サシメ或ハ交付セシメント謀試シ而シテ右ノ方便中ノ一箇ヲ以テ他人ノ家産ノ全部又ハ一部ヲ騙取シ又ハ騙取セント謀試シタル者ハ少クトモ一年多クトモ五年ノ禁錮ト少クトモ五十「フランク」多クトモ三千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ禁止スルコトヲ得可シ但シ右ノ諸件ハ若シ偽造ノ重罪アル時ハ更ニ重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
○第弐款 背信
第四百六条 何人ニ限ラス幼者ノ窮乏、孱弱、情欲ニ乗シテ金円又ハ動産又ハ商業上ノ手形又ハ其他総テ羈勒ノ力アル手形ノ貸借ノ為メ幼者ノ損害ニ於テ義務ノ証書、受取証書又ハ義務免除ノ証書ニ署名セシメタル者ハ其取引ヲ為シ又ハ之ヲ仮装シタル方法ノ如何ヲ問ハス少クトモ二月多クトモ二年ノ禁錮ト被害者ニ対シテ負担ス可キ物件返還及ヒ損害賠償ノ四分一ニ過クルコトヲ得ス又二十五「フランク」ヨリ少ナキコトヲ得サル罰金トニ処セラル可シ
又右ノ外前条第二項ニ載セタル成規ヲ適用スルコトヲ得可シ
第四百七条 何人ニ限ラス己レニ委託セラレタル署名ノ白紙ヲ妄用シ悪意ヲ以テ其上ニ一箇ノ義務又ハ義務ノ免除又ハ其他総テ署名者ノ身体或ハ家産ヲ害スルコトアル可キ証書ヲ記シタル者ハ第四百五条ニ載セタル刑ニ処セラル可シ
若シ其者ニ署名ノ白紙ヲ委託セサル場合ニ於テハ其者ハ偽造者ナリトシテ其罪ヲ訴ヘラレ且ツ斯クノ如キ者トシテ刑ニ処セラル可シ
第四百八条 何人ニ限ラス物品、金円、商品、切手、受取証書又ハ其他総テ義務或ハ義務免除ヲ包含シ或ハ之ヲ作為スル文書ヲ返還シ又ハ差出ス可キノ負任又ハ其定マリタル使用又ハ用方ヲ為ス可キノ負任ヲ以テ賃借、附託、代理、質入、使用貸借ノ名義ノミヲ以テ己レニ交付セラレ又ハ雇賃ノ有無ヲ問ハス製作ノ為メ己レニ交付セラレタル右ノ諸件ヲ其所有者、占有者又ハ保有者ノ損害ニ於テ詐取シ又ハ費耗シタル者ハ第四百六条ニ載セタル刑ニ処セラル可シ
若シ公ケノ役員或ハ裁判所附役員又ハ雇人、雇賃ヲ受ケテ労働スル者、生徒、書役、管店者、職工、雇工、工作受業者ノ其主長ノ損害ニ於テ前項ニ記シ及ヒ懲罰スル所ノ背信ノ罪ヲ行ヒタル時ハ其刑ハ懲役ノ刑タル可シ
右ノ諸件ハ公ケノ預リ所ニ於テ行ヒタル金円、物品又ハ証拠物ノ窃受及ヒ搬取ニ関シテ第二百五十四条、第二百五十五条、第二百五十六条ニ記シタル所ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第四百九条 何人ニ限ラス裁判上ノ争訟ニ於テ或ル証券、証拠物又ハ覚書ヲ差出シタル後如何ナル方法ヲ問ハス之ヲ窃取シタル者ハ二十五「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
右ノ刑ハ其争訟ヲ掌轄シタル裁判所ヨリ之ヲ宣告ス可キモノトス
○第三款 賭場、富講及ヒ質取貸附所ニ関スル規則ノ違犯
第四百拾条 賭場ヲ設ケテ自由ニ公衆ヲ入ラシメ若クハ関係人又ハ仲ケ間ノ申述ニ依リ公衆ヲ入ラシメタル者、賭場ノ貸元又ハ法律ニ依リ許可セラレサル富講ヲ設ケ或ハ開キタル者又ハ此等ノ設立場ノ管理者、幹事、世話人ハ少クトモ二月多クトモ六月ノ禁錮ト百「フランク」乃至六千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ禁止スルコトヲ得可シ
如何ナル場合ニ於テモ賭博ニ賭シ又ハ富講ニ附シタル総テノ元資又ハ物品並ニ賭博又ハ富講ニ用ヒ又ハ其用ニ供シタル動産、器具、器械及ヒ其場所ニ具備粧飾シタル什器、動産ハ之ヲ没収ス可シ
第四百拾壱条 適法ノ許可ヲ得スシテ質取貸附所ヲ設ケ又ハ開キタル者又ハ其許可ヲ得タリト雖モ其貸シタル金額又ハ物件、借主ノ姓名、住所、職業、質入ニ為シタル物件ノ性質、品質、価額ヲ規則ニ従ヒ毫モ空白ナク又行間ノ書入ナク相連接シテ記載シタル簿冊ヲ設ケサル者ハ少クトモ十五日多クトモ三月ノ禁錮ト百「フランク」乃至二千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
○第四款 糶買ノ自由ニ対シテ為シタル障碍
第四百拾弐条 動産又ハ不動産ノ所有権、使用収益権或ハ賃貸ノ入札又ハ一箇ノ業務、供給、収益或ハ各種ノ事業ノ入札ニ於テ其糶買又ハ受負入札ノ前ト其間トヲ問ハス強暴、暴行又ハ脅迫ニ依リ其糶買又ハ受負入札ノ自由ヲ障碍シ又ハ妨害シタル者ハ少クトモ十五日多クトモ三月ノ禁錮ト少クトモ百「フランク」多クトモ五千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
右ト同一ノ刑ハ贈与又ハ約束ニ依リ糶買人ノ其場所ニ至ルコトヲ止メシメタル者ニ対シテ之ヲ適用ス可シ
○第五款 製造、商業、技芸ニ関スル規則ノ背犯
第四百拾三条 凡ソ外国ニ輸出スル仏蘭西製造ノ産物ニ関スルモノニシテ其製造ノ良質、大サ及ヒ性質ヲ担保スルヲ以テ目的ト為ス公ケノ行政規則ニ背犯シタル者ハ少クトモ二百「フランク」多クトモ三千「フランク」ノ罰金ト其商品ノ没収トニ処セラル可シ○右二箇ノ刑ハ景況ニ従ヒ相併合シテ之ヲ宣告シ又ハ別々ニ之ヲ宣告スルコトヲ得可シ
第四百拾四条 何人ニ限ラス強テ雇賃ヲ昂低セシメ又ハ工業或ハ労働ノ自由ナル執行ヲ妨クルノ主眼ヲ以テ暴行、強暴、脅迫又ハ悪意ノ計策ニ依リ労働ノ共議シタル止息ヲ為サシメ或ハ之ヲ継続セシメ又ハ其止息ヲ為サシメント謀試シ或ハ其止息ヲ継続セシメント謀試シタル者ハ六日乃至三年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至三千「フランク」ノ罰金トニ処セラレ又ハ右二箇ノ刑中ノ一箇ノミニ処セラル可シ
第四百拾五条 若シ共議シタル計策ニ依リ前条ニ懲罰スル所為ヲ行ヒタル時ハ其犯罪人ハ上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ少クトモ二年多クトモ五年間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
第四百拾六条 凡ソ職工、雇主及ヒ工事起作人ニシテ共議シタル計策ヲ以テ定メタル過代金、禁制、制止、禁止ニ依リ工業又ハ労働ノ自由ナル執行ヲ妨ケタル者ハ六日乃至三月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金トニ処セラレ又ハ右二箇ノ刑中ノ一箇ノミニ処セラル可シ
第四百拾七条 何人ニ限ラス仏蘭西ノ工事ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ一箇ノ設立場ノ幹理者、管店者又ハ職工ヲ外国ニ出行セシメタル者ハ六月乃至二年ノ禁錮ト五十「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第四百拾八条 凡ソ製造所ノ幹理者、管店者、職工ニシテ其使用セラルヽ製造所ノ秘法ヲ外国人又ハ外国ニ居住スル仏蘭西人ニ漏洩シ又ハ漏洩セント謀試シタル者ハ二年乃至五年ノ禁錮ト五百「フランク」乃至二万「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外其刑ヲ受ケ終リシ日ヨリ起算シテ少クトモ五年多クトモ十年間此法典第四十二条ニ記載シタル権利ヲ剥奪スルコトヲ得可シ○又其犯罪人ハ右ト同一ノ年数間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
若シ仏蘭西ニ居住スル仏蘭西人ニ右ノ秘法ヲ漏洩シタル時ハ其刑ハ三月乃至二年ノ禁錮及ヒ十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金タル可シ
若シ又国ニ属スル兵器及ヒ弾薬ノ製造ノ秘法ニ関シタル時ハ本条第一項及ヒ第三項ニ定メタル刑ノ最上限ヲ必ス適用ス可キモノトス
第四百拾九条 凡ソ故意ヲ以テ公衆中ニ流布セシメタル詐偽又ハ䜛誣ノ所為ニ依リ又ハ売主ノ請求スル代価ヨリモ更ニ高価ヲ提供スル事ニ依リ又ハ同一ノ商品或ハ飲食品ノ重立チタル保有者数名ノ其商品或ハ飲食品ヲ売ラス又ハ特定ノ代価ニ非サレハ之ヲ売ラサル為メ其数名ノ間ニ為シタル集合又ハ通同ニ依リ若クハ各種ノ奸悪ノ方法或ハ方便ニ依リ飲食品又ハ商品又ハ公ケノ証券及ヒ手形ノ代価ヲ商業ノ自然ニシテ且ツ自由ナル競争ノ為メニ定マル可キ代価ヨリモ更ニ貴カラシメ或ハ更ニ賎シカラシメタル者ハ少クトモ一月多クトモ一年ノ禁錮ト五百「フランク」乃至一万「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ○其犯罪人ハ右ノ外上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ少クトモ二年多クトモ五年間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
第四百弐拾条 若シ右ノ計策ヲ穀物、粗穀、穀粉、粉質物、麺包、葡萄酒又ハ総テ其他ノ飲料ニ付キ行ヒタル時ハ其刑ハ少クトモ二月多クトモ二年ノ禁錮及ヒ一千「フランク」乃至二万「フランク」ノ罰金タル可シ
又少クトモ五年多クトモ十年間監視ニ附スルコトヲ宣告スルヲ得可シ
第四百弐拾壱条 公ケノ手形ノ昂低ニ付キ為シタル賭博ハ第四百十九条ニ載セタル刑ニ処セラル可シ
第四百弐拾弐条 凡ソ合意ノ時ニ当リテ売主ノ処分内ニ存在シ又ハ引渡ノ時ニ当リテ売主ノ処分内ニ在ル可キモノタル旨ヲ売主ニ於テ証セサル公ケノ手形ヲ売リ又ハ引渡ス可キノ合意ハ右ノ種類ノ賭博ト看做ス可シ
第四百弐拾三条 何人ニ限ラス金銀物料ノ性合ニ付キ、真物ナリトシテ売リタル偽造ノ石ノ品質ニ付キ各種ノ商品ノ性質ニ付キ買主ヲ欺キタル者又ハ何人ニ限ラス偽リノ度量権衡ノ具ヲ用フルニ依リ其売リタル物ノ分量ヲ詐リタル者ハ少クトモ三月多クトモ一年間ノ禁錮ト物件返還及ヒ損害賠償ノ四分一ニ過クルコトヲ得ス又五十「フランク」以下タルコトヲ得サル罰金トニ処セラル可シ
其犯罪ノ物件又ハ其代金ノ猶ホ売主ニ属スルニ於テハ之ヲ没収ス可ク其偽リノ度量権衡ノ具モ亦没収シテ之ヲ破毀ス可シ
裁判所ハ総テ其刑ヲ言渡サレタル者ノ費用ヲ以テ其指定スル所ノ場所ニ裁判書ヲ貼附スル事及ヒ其指定スル所ノ各新聞紙ニ右裁判書ノ全部ヲ記入シ又ハ其抜書ヲ記入スル事ヲ命令スルヲ得可シ
第四百弐拾四条 若シ売主及ヒ買主カ其契約ニ於テ国ノ法律ヲ以テ定メタルモノヨリ更ニ他ノ度量権衡ノ具ヲ用ヒタル時ハ買主ハ禁制ノ度量権衡ノ具ヲ用ヒテ欺キタル売主ニ対シテ総テノ訴権ヲ失フモノトス但シ其詐欺及ヒ禁制ノ度量権衡ノ具ノ使用ヲ懲罰スル為メノ公訴権ト相触ルヽコトナカル可シ
詐欺ノ場合ニ於ケル刑ハ前条ニ載セタルモノトス
禁制ノ度量権衡ノ具ノ使用ニ付テノ刑ハ単一ナル警察ノ刑ヲ記載シタル此法典第四編ニ之ヲ定ム
第四百弐拾五条 凡ソ文書、歌謡、絵画、図面又ハ総テ其他ノ作物ヲ著作者ノ所有権ニ関スル法律及ヒ規則ニ背キ全部又ハ一部ニ於テ印刷シ或ハ彫刻シテ発行スル事ハ偽造ナリトス而シテ凡ソ偽造ハ皆一箇ノ軽罪タリ
第四百弐拾六条 偽造ノ著作物ヲ売粥ク事及ヒ仏蘭西ニ於テ印刷セシ後外国ニ於テ偽造シタル著作物ヲ仏蘭西ノ領地内ニ輸入スル事ハ亦右ト同種ノ軽罪タリ
第四百弐拾七条 偽造者又ハ輸入者ニ対スル刑ハ少クトモ百「フランク」多クトモ二千「フランク」ノ罰金トシ又売粥人ニ対スル刑ハ少クトモ二十五「フランク」多クトモ五百「フランク」ノ罰金トス
偽造者並ニ輸入者及ヒ売粥人ニ対シテ其偽造シタル発行物ノ没収ヲ宣告ス可シ
其偽造シタル物ノ印版、鋳形、摸型ハ亦之ヲ没収ス可シ
第四百弐拾八条 凡ソ演劇ノ幹理者或ハ起作人又ハ技芸者ノ結社ニシテ著作者ノ所有権ニ関スル法律及ヒ規則ニ背キ其劇場ニ於テ戯曲ノ著作物ヲ演セシメタル者ハ少クトモ五十「フランク」多クトモ五百「フランク」ノ罰金ト収入額ノ没収トニ処セラル可シ
第四百弐拾九条 前四条ニ定メタル場合ニ於テハ所有者ノ受ケタル損害ヲ賠償スル為メ其没収ノ上リ高及ヒ没収シタル収入額ヲ其所有者ニ交付ス可シ又其余ノ賠償高又ハ没収シタル物品ノ売払モ収入額ノ差押モアラサル時ハ其賠償ノ全額ハ通常ノ方法ヲ以テ之ヲ規定ス可シ
○第六款 供給者ノ犯罪
第四百三拾条 凡ソ会社ノ社員タリ又ハ一個人ニシテ陸海軍ノ計算ノ為メ品物ノ供給、起作又ハ請負ヲ任セラレタル各人ノ抗拒ス可カラサル力ノ為メニ強制セラルヽニ非スシテ其任セラレタル公務ヲ失誤セシメタル時ハ懲役ノ刑ト損害賠償ノ四分一ニ過クルコトヲ得ス又五百「フランク」以下タルコトヲ得サル罰金トニ処セラル可シ但シ右ノ諸件ト敵ト適謀シタル場合ニ於テハ更ニ重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第四百三拾壱条 若シ公務ノ止息カ品物供給者ノ替弁者ノ所為ニ依ル時ハ其替弁者ハ前条ニ載セタル刑ヲ言渡サル可シ
若シ品物供給者及ヒ其替弁者ノ其重罪ニ参加シタル時ハ共ニ同シク刑ヲ言渡サル可シ
第四百三拾弐条 若シ公ケノ官吏又ハ政府ヨリ委任セラレ或ハ給料ヲ受クル吏員ニ於テ犯罪人ノ其公務ヲ失誤セシムルヲ幇助シタル時ハ此等ノ各員ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ但シ敵ト通謀シタル場合ニ於テハ更ニ重劇ノ刑ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第四百三拾三条 仮令公務ヲ失誤セシメスト雖モ若シ懈怠ニ依テ引渡及ヒ事業ヲ遅延セシメタル時又ハ事業或ハ手工或ハ供給シタル物ノ性質、品質、分量ニ付キ詐欺アル時ハ其犯罪人ハ少クトモ六月多クトモ五年ノ禁錮ト損害賠償ノ四分一ニ過クルコトヲ得ス又百「フランク」ヨリ少ナキコトヲ得サル罰金トニ処セラル可シ
本款ノ各条ニ定メタル種々ノ場合ニ於テハ政府ヨリノ告発アルニ非サレハ其起訴ヲ為スコトヲ得ス
○第三節 毀壊、毀損、損害
第四百三拾四条 何人ニ限ラス人ノ住居シ又ハ人ノ住居ニ用フル時建築物、船舶、倉庫、物置場ニ故意ヲ以テ火ヲ放チ及ヒ一般ニ人ノ住居シ又ハ人ノ住居ニ用フル場所ニ故意ヲ以テ火ヲ放チタル者ハ右諸件ノ其重罪ノ正犯ニ属スルト属セサルトヲ問ハス死刑ニ処セラル可シ
何人ニ限ラス人ヲ載セタル車或ハ火輪車又ハ人ヲ載セスト雖モ人ノ乗リタル列車ノ一部分タル車或ハ火輪車ニ故意ヲ以テ火ヲ放チタル者ハ右ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
何人ニ限ラス人ノ住居セサル時又ハ人ノ住居ニ用ヒサル時建築物、船舶、倉庫、物置場ニ故意ヲ以テ火ヲ放チ又ハ森林、小樹林又ハ根ニ依テ地上ニ附着スル収穫物ニ故意ヲ以テ火ヲ放チタル者ハ此等ノ物件ノ己レニ属セサル時ハ無期ノ徒刑ニ処セラル可シ
前項ニ列記シタルモノニシテ己レニ属スル所ノ物件中ノ一箇ニ火ヲ放チ又ハ放タシメ故意ヲ以テ他人ニ若干ノ損害ヲ被ムラシメタル者ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可ク又所有者ノ命令ニ依リ火ヲ放チタル者ハ右ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
何人ニ限ラス積堆シ又ハ稲束ニ為シタル藁又ハ収穫物若クハ積堆シ又ハ尺度ヲ定メテ整列シタル木材若クハ商品又ハ其他ノ動産ヲ載セタルト載セサルトヲ問ハス人ノ乗リタル列車ノ一部分タラサル車或ハ火輪車ニ故意ヲ以テ火ヲ放チタル者ハ此等ノ物件ノ己レニ属セサル時ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
前項ニ列記シタルモノニシテ己レニ属スル処ノ物件中ノ一箇ニ火ヲ放チ又ハ火ヲ放タシメ故意ヲ以テ他人ニ若干ノ損害ヲ被ムラシメタル者ハ懲役ノ刑ニ処セラル可ク又所有者ノ命令ニ依リ火ヲ放チタル者ハ之ト同一ノ刑ニ処セラル可シ
己レニ属シ又ハ他人ニ属スルモノニシテ前数項ニ列記シタル物件ニ火ヲ伝フ可キ様ニ置カレタル物件ニ故意ヲ以テ火ヲ放チ其前数項ニ列記シタル物件中ノ一箇ニ火ヲ伝ヘタル者ハ直チニ其物件中ノ一箇ニ火ヲ放チタルト同一ノ刑ニ処セラル可シ
如何ナル場合ニ於テモ若シ放火ノ為メニ其火ノ発シタル時ニ於テ其焼ケタル場所ニ在ル一人又ハ数人ヲ死ニ致シタル時ハ其刑ハ死刑タル可シ
第四百三拾五条 地雷火ニ依リ建築物、船舶、倉庫、物置場ヲ毀壊シタル者ニ対シテハ前条ニ為シタル差別ニ従ヒ之ト同一ノ刑ヲ適用ス可シ
第四百三拾六条 住家又ハ総テ其他ノ所有物ニ火ヲ放ツノ脅迫ハ第三百五条、第三百六条、第三百七条ニ定メタル差別ニ従ヒ謀殺ノ脅迫ニ対シテ定メタル刑ニ処ス可キモノトス
第四百三拾七条 何人ニ限ラス他人ニ属スルコトヲ知リタル建築物、橋梁、堤防、堤塘又ハ其他ノ建造物ノ全部又ハ一部ヲ其方法ノ如何ヲ問ハス故意ヲ以テ毀壊シ或ハ顛覆シ又ハ故意ヲ以テ蒸気機械ヲ破裂セシメタル者ハ懲役ノ刑ト物件返還及ヒ賠償ノ四分一ニ過クルコトヲ得ス又百「フランク」以下タルコトヲ得サル罰金トニ処セラル可シ
若シ人殺又ハ創傷ノアリタル時ハ其犯罪人ハ人殺ノ場合ニ於テハ死刑ニ処セラレ又創傷ノ場合ニ於テハ有期ノ徒刑ニ処セラル可シ
第四百三拾八条 何人ニ限ラス強暴ヲ以テ政府ノ許可シタル工業ノ成就ヲ妨ケタル者ハ三月乃至二年ノ禁錮ト損害賠償ノ四分一ニ過クルコトヲ得ス又十六「フランク」以下タルコトヲ得サル罰金トニ処セラル可シ
其首謀ハ右刑ノ最上限ヲ受ク可シ
第四百三拾九条 何人ニ限ラス公ケノ官憲ノ簿冊、細字ノ正本或ハ証書ノ正本又ハ義務、処分或ハ義務ノ免除ヲ包含シ或ハ之ヲ作為スル証券、切手、為替手形、商業或ハ銀行ノ手形ヲ如何ナル方法ヲ問ハス故意ヲ以テ焼燬シ又ハ毀損シタル者ハ左ノ如ク刑ニ処セラル可シ
若シ其毀損シタル証拠物カ公ケノ官憲ノ証書タリ又ハ商業或ハ銀行ノ手形タル時ハ其刑ハ懲役ノ刑タル可シ
若シ又総テ其他ノ証拠物ニ関スル時ハ其犯罪人ハ二年乃至五年ノ禁錮ト百「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第四百四拾条 凡ソ集合又ハ群衆ヲ為シ且ツ顕然タル強逼ヲ以テ行ヒタル飲食品又ハ商品、物品、動産所有物ノ劫掠又ハ毀損ハ有期ノ徒刑ニ処セラル可ク且ツ各個ノ犯罪人ハ右ノ外二百「フランク」乃至五千「フランク」ノ罰金ヲ言渡サル可シ
第四百四拾壱条 然レトモ教唆又ハ誘引ニ依リ右ノ暴行ニ加ハルコトニ引入レラレシ旨ヲ証シタル者ハ懲役ノ刑ノミニ処セラルヽコトヲ得可シ
第四百四拾弐条 若シ劫掠セラレ又ハ毀損セラレタル飲食品カ穀物、粗穀又ハ穀粉、粉質物、麺包、葡萄酒又ハ其他ノ飲料タル時ハ其首謀、煽動者、教唆者ノミノ受ク可キ刑ハ有期徒刑ノ最上限及ヒ第四百四十条ニ定メタル罰金ノ最上限タル可シ
第四百四拾三条 何人ニ限ラス腐蝕セシムル液類ニ依リ又ハ総テ其他ノ方便ニ依リ製造ニ用フル各種ノ商品、物料又ハ器具ヲ故意ヲ以テ損敗セシメタル者ハ一月乃至二年ノ禁錮ト損害賠償ノ四分一ニ過クルコトヲ得ス又十六「フランク」ヨリ少ナキコトヲ得サル罰金トニ処セラル可シ
若シ製造所ノ職工又ハ商家ノ管店者カ右ノ軽罪ヲ行ヒタル時ハ其禁錮ハ二年乃至五年タル可シ但シ前ニ記シタル如キ罰金ノ言渡ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第四百四拾四条 何人ニ限ラス根ニ拠テ地上ニ附着スル収穫物又ハ天然ニ生シ或ハ人工ニ依レル草木ノ苗ヲ毀損シタル者ハ少クトモ二年多クトモ五年ノ禁錮ニ処セラル可シ
其犯罪人ハ右ノ外上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ少クトモ五年多クトモ十年間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
第四百四拾五条 何人ニ限ラス他人ニ属スルコトヲ知リタル樹木一株又ハ数株ヲ伐倒シタル者ハ其樹木一株毎ニ六日以下タル可カラス又六月以上タル可カラサル禁錮ニ処セラル可シ但シ其全数ハ五年ニ過クルコトヲ得サルモノトス
第四百四拾六条 其刑ハ樹木ヲ枯死セシム可キ様、傷ケ、伐リ又ハ皮ヲ剥キタル其一株毎ニ右ト同一タル可シ
第四百四拾七条 接木一株又ハ数株ヲ毀損シタル時ハ其一株毎ニ六日乃至二月ノ禁錮ニ処セラル可シ但シ其全数ハ二年ニ過クルコトヲ得サルモノトス
第四百四拾八条 若シ其樹木カ街衢、道路、市街、往還、邑路、径路ニ植ヘシモノタル時ハ第四百四十五条及ヒ第四百四十六条ニ定メタル場合ニ於テハ其刑ノ最下限ヲ二十日トシ又第四百四十七条ニ定メタル場合ニ於テハ其刑ノ最下限ヲ十日トス
第四百四拾九条 何人ニ限ラス他人ニ属スルコトヲ知リタル穀物又ハ芻蕘ヲ刈取シタル者ハ六日以下タル可カラス又二月以上タル可カラサル禁錮ニ処セラル可シ
第四百五拾条 若シ未熟ノ穀物ヲ刈取シタル時ハ其禁錮ハ少クトモ二十日多クトモ四月タル可シ
本条及ヒ前六条ニ定メタル場合ニ於テ若シ公ケノ官吏ノ職務ノ為メ之ヲ恨ミテ其所為ヲ行ヒタル時ハ其犯罪人ハ其場合ノ関係アル各条ニ定メタル刑ノ最上限ニ処セラル可シ
仮令又右ノ景況ノ存在セサル時ト雖モ若シ夜間其所為ヲ行ヒタルニ於テハ亦右ト同一タル可シ
第四百五拾壱条 凡ソ農業ノ器具、家畜類ノ欄囲、看守人ノ小屋ヲ破損毀壊シタル時ハ少クトモ一月多クトモ一年ノ禁錮ニ処セラル可シ
第四百五拾弐条 何人ニ限ラス物ヲ挽カシメ、乗駕ニ用ヒ又ハ物ヲ負載セシムル馬又ハ其他ノ獣類、有角獣、羊、山羊、豚又ハ池、魚池、生洲ニ在ル魚ヲ毒殺シタル者ハ一年乃至五年ノ禁錮ト十六「フランク」乃至三百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ○其犯罪人ハ右ノ外上等又ハ下等裁判所ノ裁判ヲ以テ少クトモ二年多クトモ五年間高等警察ノ監視ニ附スルコトヲ得可シ
第四百五拾三条 已ムヲ得サルニ非スシテ前条ニ記載シタル獣類中ノ一ヲ殺シタル者ハ左ノ如ク刑ニ処セラル可シ
若シ其殺サレタル獣類ヲ畜ヒ置キシ者カ所有者タリ、家屋賃借人タリ、分果耕作人タリ又ハ土地賃借人タル建造物、囲ヒ地及ヒ附属地又ハ土地内ニ於テ其軽罪ヲ行ヒタル時ハ其刑ハ二月乃至六月ノ禁錮タル可シ
若シ犯罪人カ所有者タリ、家屋賃借人タリ、分果耕作人タリ又ハ土地賃借人タル場所ニ於テ其軽罪ヲ行ヒタル時ハ其禁錮ハ六日乃至一月タル可シ
総テ其他ノ場所ニ於テ其軽罪ヲ行ヒタル時ハ其禁錮ハ十五日乃至六週タル可シ
繞囲ヲ犯シタル場合ニ於テハ常ニ必ス其刑ノ最上限ヲ宣告ス可キモノトス
第四百五拾四条 何人ニ限ラス已ムヲ得サルニ非スシテ家畜獣ヲ畜ヒ置キシ者カ所有者タリ、家屋賃借人タリ、分果耕作人又ハ土地賃借人タル場所ニ於テ其家畜獣ヲ殺シタル者ハ少クトモ六日多クトモ六月ノ禁錮ニ処セラル可シ
若シ繞囲ヲ犯シタル時ハ其刑ノ最上限ヲ宣告ス可シ
第四百五拾五条 第四百四十四条以下ヨリ前条ニ至ル迄ノ各条ニ定メタル場合ニ於テハ物件返還及ヒ損害賠償ノ四分一ニ過クルコトヲ得ス又十六「フランク」以下タルコトヲ得サル罰金ヲ宣告ス可シ
第四百五拾六条 何人ニ限ラス全部又ハ一部ニ於テ溝渠ヲ填メ、如何ナル材料ヲ以テ造リタルヲ問ハス繞囲ヲ毀壊シ、生籬或ハ籬墻ヲ伐リ或ハ之ヲ抜キタル者又ハ何人ニ限ラス界標或ハ分界ノ樹木又ハ其他二箇ノ所有地ノ間ノ分界ヲ定ムル為メニ植ヘ或ハ分界ヲ定ムルモノナリト認メラレタル樹木ヲ移動シ又ハ毀棄シタル者ハ一月以下タルコトヲ得ス又一年ニ過クルコトヲ得サル禁錮ト物件返還及ヒ損害賠償ノ四分一ニ等シキ罰金トニ処セラル可シ但シ其罰金ハ如何ナル場合ニ於テモ五十「フランク」以下タルコトヲ得サルモノトス
第四百五拾七条 水車、工作場又ハ池ノ収益ヲ為ス土地ノ所有者、土地賃借人又ハ総テ其他ノ各人ニシテ該管官憲ノ定メタル高サ以上ニ其水ノ流出口ヲ高ムルニ依リ道路又ハ他人ノ所有地ニ水ヲ流溢セシメタル者ハ物件返還及ヒ損害賠償ノ四分一ニ過クルコトヲ得ス又五十「フランク」以下タルコトヲ得サル罰金ニ処セラル可シ
若シ右ノ所為ヨリシテ若干ノ毀損ヲ生セシメタル時ハ其刑ハ罰金ノ外六日乃至一月ノ禁錮タル可シ
第四百五拾八条 他人ノ動産又ハ不動産ニ接近シタル竃、煖炉、鋳造所、家屋又ハ工作場ノ朽廃シタルニ依リ又ハ其修繕或ハ掃除ヲ怠リタルニ依リ又ハ家屋、建築物、森林、草叢、樹木、菓樹植附場、樹木植附場、墻籬、稲束、積堆シタル穀物、藁、枯草、芻蕘又ハ其他総テ燃焼質物ノ貯蔵所ヨリ百「メートル」以内ノ所ニテ田野ニ於テ火ヲ燃ヤシタルニ依リ又ハ充分ナル注意ナクシテ火或ハ灯火ヲ携帯シ或ハ棄テ置クニ依リ又ハ懈怠或ハ疎忽ヲ以テ煙火ヲ燃ヤシ或ハ発シタルニ仍リ他人ノ動産又ハ不動産ヲ焼キタル時ハ少クトモ五十「フランク」多クトモ五百「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
第四百五拾九条 凡ソ伝染病ニ罹リタルノ疑アル獣類又ハ家畜類ノ保有者又ハ看守人ニシテ其所在ノ邑ノ邑長ニ即時ニ其由ヲ通知セス及ヒ邑長ノ其通知ニ答フル前ト雖モ右ノ獣類又ハ家畜類ヲ監禁シ置カサリシ者ハ六日乃至二月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第四百六拾条 行政官ノ禁制ニ背キテ伝染病ニ罹リタル自己ノ獣類又ハ家畜類ヲ他ノ獣類又ハ家畜類ト雑処セシメタル者ハ亦二月乃至六月ノ禁錮ト百「フランク」乃至五百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
第四百六拾壱条 若シ前条ニ記載シタル雑処ヨリシテ他ノ獣類中ニ伝染病ヲ発セシメタル時ハ行政官ノ禁制ニ違犯シタル者ハ二年乃至五年ノ禁錮ト百「フランク」乃至一千「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ但シ右ノ諸件ト獣類ノ伝染病ニ関スル法律及ヒ規則ノ執行並ニ其法律及ヒ規則ニ載セタル刑ノ適用ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第四百六拾弐条 若シ田野又ハ森林ノ看守人又ハ名称ノ如何ヲ問ハス警察官吏ニ於テ本章ニ記シタル懲治警察ノ軽罪ヲ行ヒタル時ハ其禁錮ノ刑ハ少クトモ一月間多クトモ同一ノ軽罪ヲ犯シタル他ノ犯罪人ニ適用ス可キ最重劇ノ刑ニ三分一ヲ加ヘタルモノタル可シ
○総則
第四百六拾三条 有罪ナリト認定セラレタル重罪被告人一名又ハ数名ノ為メ陪審ニ於テ減軽ス可キ景況アル旨ヲ決断シタル時ハ其重罪被告人一名又ハ数名ニ対シテ法律上ニ定メタル刑ハ左ノ如ク之ヲ減軽ス可シ
若シ法律上ニ定メタル刑カ死刑タル時ハ裁判所ニ於テ無期ノ徒刑又ハ有期ノ徒刑ヲ適用ス可シ
若シ其刑カ無期ノ徒刑タル時ハ裁判所ニ於テ有期ノ徒刑又ハ懲役ノ刑ヲ適用ス可シ
若シ其刑カ城砦内ニ於ケル流刑タル時ハ裁判所ニ於テ単一ナル流刑又ハ禁獄ノ刑ヲ適用ス可シ然レトモ第九十六条及ヒ第九十七条ニ定メタル場合ニ於テハ単一ナル流刑ノミヲ適用ス可キモノトス
若シ其刑カ流刑タル時ハ裁判所ニ於テ禁獄ノ刑又ハ追放ノ刑ヲ適用ス可シ
若シ其刑カ有期ノ徒刑タル時ハ裁判所ニ於テ懲役ノ刑又ハ第四百一条ノ成規ヲ適用ス可シ然レトモ禁錮ノ時間ヲ二年以下ニ減スルコトヲ得サルモノトス
若シ其刑カ懲役、禁獄、追放又ハ公権剥奪ノ刑タル時ハ裁判所ニ於テ第四百一条ノ成規ヲ適用ス可シ然レトモ禁錮ノ時間ヲ一年以下ニ減スルコトヲ得サルモノトス
此法典ニ施体ノ刑ノ最上限ヲ定ムル場合ニ於テ若シ減軽ス可キ景況ノ存在スル時ハ裁判所ニ於テ其刑ノ最下限又ハ然ノミナラス更ニ下等ノ刑ヲ適用ス可シ
凡ソ刑法上ニ禁錮ノ刑及ヒ罰金ノ刑ヲ定ムル場合ニ於テ若シ景況カ減軽ス可キモノナリト見ユル時ハ懲治裁判所ニ於テ仮令再犯ノ場合ト雖モ禁錮ヲ六日以下ニモ減シ又罰金ヲ十六「フランク」以下ニモ減スルコトヲ得可ク又其裁判所ハ右刑中ノ一箇ノミヲ別々ニ宣告スルコトヲ得可ク又然ノミナラス禁錮ニ換ユルニ罰金ヲ以テスルコトヲ得可シ但シ如何ナル場合ニ於テモ其刑ハ単一ナル警察ノ刑以下タルコトヲ得サルモノトス
○第四編 違警罪及ヒ其刑
○第壱章 刑
第四百六拾四条 警察ノ刑ハ左ノ如シ
禁錮
罰金
差押ヘラレタル或ル物件ノ没収
第四百六拾五条 違警罪ノ為メノ禁錮ハ以下ニ明記スル所ノ種別、差別及ヒ場合ニ従ヒ一日ヨリ少ナキコトヲ得ス又五日ニ過クルコトヲ得サルモノトス
禁錮ノ一日ハ二十四時間ノ満一日ナリトス
第四百六拾六条 違警罪ノ為メノ罰金ハ以下ニ明記スル所ノ差別及ヒ種類ニ従ヒ一「フランク」ヨリ十五「フランク」迄ヲ宣告スルコトヲ得可ク而シテ其罰金ハ違警罪ヲ行ヒシ地ノ邑ノ利益ニ於テ之ヲ用フ可シ
第四百六拾七条 罰金弁済ノ為メニハ拘留ヲ為ス可シ
然レトモ刑ヲ言渡サレタル者ノ其弁済ノ無資力ヲ証明スルニ於テハ右ノ目的ノ為メ十五日以上之ヲ収監スルコトヲ得ス
第四百六拾八条 財産ノ不足ナル場合ニ於テハ被害者ニ対シテ負担シタル物件返還及ヒ賠償ヲ罰金ヨリモ更ニ優等ノモノトス
第四百六拾九条 物件返還、賠償及ヒ費用ハ拘留ヲ惹起ス可ク而シテ刑ヲ言渡サレタル者ハ其完全ノ弁済ニ至ル迄拘留ヲ受ク可キモノトス然レトモ若シ国ノ利益ニ於テ此等諸件ノ言渡ヲ為シタル時ハ其言渡ヲ受ケタル者ハ第四百六十七条ニ定メタル弁済無資力ノ場合ニ於テハ同条ニ依リ附与セラレタル権能ヲ享有スルコトヲ得可シ
第四百七拾条 警察裁判所ハ亦法律上ニ定メタル場合ニ於テハ違警罪犯ニ於テ差押ヘラレタル物件若クハ違警罪ニ依リ得タル物件若クハ違警罪ヲ行フニ用ヒ又ハ之ヲ行フノ用ニ供シタル物料又ハ器具ノ没収ヲ宣告スルコトヲ得可シ
○第弐章 違警罪及ヒ其刑
○第壱節 第一種
第四百七拾壱条 左ノ各人ハ一「フランク」ヨリ五「フランク」ニ至ル迄ノ罰金ニ処セラルヘシ
第一 火ヲ燃ヤス所ノ竃、煖炉又ハ工作場ヲ補理シ、修繕シ又ハ掃除スルコトヲ怠リタル者
第二 特定ノ場所ニ於テ煙火ヲ発スルノ禁制ヲ犯シタル者
第三 灯火ヲ点ス可キノ義務アリテ之ヲ怠リタル旅店主及ヒ其他ノ者又ハ人民ニ於テ市街或ハ径路ヲ掃除ス可キノ負任アル各邑ニ於テ其掃除ヲ為スコトヲ怠リタル者
第四 通行ノ自由或ハ安寧ヲ防ケ又ハ減少ス可キ材料又ハ各種ノ物件ヲ已ムヲ得サルニ非スシテ公ケノ往還ニ置キ又ハ棄テ置クニ依リ公ケノ往還ヲ障碍シタル者又ハ法律及ヒ規則ニ違犯シテ市街及ヒ街衢ニ堆積シタル材料又ハ市街及ヒ街衢ニ為シタル坑穴ニ灯火ヲ点スルコトヲ怠タリタル者
第五 小道路ニ関スル規則又ハ命令ヲ執行スルコトヲ怠タリ或ハ否拒シ又ハ将サニ崩壊セントスル建造物ヲ修繕シ或ハ取毀ツ可キ行政官憲ノ催促ニ従フコトヲ怠リ或ハ否拒シタル者
第六 墜落ニ依リ又ハ健康ヲ害スル発気ニ依リ人ノ害トナル可キ性質ノ物件ヲ其建造物ノ前ニ放擲シ又ハ展示シタル者
第七 市街、道路、街衢、公場又ハ田野ニ於テ盗賊及ヒ其他ノ兇徒ノ妄用スルコトヲ得可キ鋤、鉄鉗、鉄竿、鉄条又ハ其他ノ器械、器具又ハ兵器ヲ棄テ置キタル者
第八 法律又ハ規則ニ依リ田野又ハ園庭ニ於テ毛虫ヲ掃フ可キ旨ヲ定メタル時其田野又ハ園庭ニ於テ毛虫ヲ掃フコトヲ怠タリタル者
第九 法律上ニ定メタル他ノ景況ナクシテ他人ニ属スル果実ヲ其場所ニテ摘撮シ又ハ食ヒタル者
第十 他ノ景況ナクシテ未タ全ク其収穫物ヲ刈取セサル田野ニ於テ日出前又ハ日没後ニ刈残ノ穀類ヲ刈取シ、把聚シ又ハ摘残ノ葡萄ヲ摘取シタル者
第十一 挑ミ起サルヽコトナクシテ第三百六十七条ヨリ第三百七十八条ニ至ル迄ノ各条ニ定メタルモノヨリ更ニ他ノ誹毀ヲ或人ニ対シテ発言シタル者
第十二 疎忽ヲ以テ或人ニ汚穢物ヲ放擲シタル者
第十三 地所ノ所有者又ハ使用収益者又ハ家屋賃借人又ハ土地賃借人ニ非ス又地所或ハ通行ノ権利ヲ享有スル者ニ非ス又ハ右各人ノ替弁者或ハ其委任ヲ受クル者ニ非スシテ其地所ニ耕作ノ予備ヲ為シ又ハ種子ヲ蒔キタル時ニ於テ其地所又ハ其一部分ニ入リ及ヒ通行シタル者
第十四 収穫物取去ノ前ニ他人ノ地所ニ自己ノ家畜類又ハ物ヲ挽カシメ、物ヲ負載セシメ又ハ乗駕ニ用フル自己ノ獣類ヲ通行セシメタル者
第十五 法律ニ従ヒ行政官憲ノ設ケタル規則ニ違犯シタル者並ニ千七百九十年八月十六日決定廿四日宣令ノ法律第十一巻第三条、第四条及ヒ千七百九十一年七月十九日決定二十二日宣令ノ法律第一巻第四十六条ニ拠リ邑ノ官憲ヨリ公布シタル規則又ハ命令ニ従ハサル者
第四百七拾弐条 右ノ外第四百七十一条ノ第二ノ場合ニ於テ差押ヘタル煙火並ニ同条ノ第七ニ記載シタル鋤、器具及ヒ兵器ハ之ヲ没収ス可シ
第四百七拾三条 煙火ヲ発シタル者ニ対シ又ハ第四百七十一条ノ第十ニ違犯シテ刈残ノ穀類ヲ刈取シ、把聚シ又ハ摘残ノ葡萄ヲ摘取シタル者ニ対シテハ右ノ外景況ニ従ヒ多クトモ三日間ノ禁錮ノ刑ヲ宣告スルコトヲ得可シ
第四百七拾四条 第四百七十一条ニ記載シタル各人ノ再犯ノ場合ニ於テハ常ニ必ス多クトモ三日間ノ禁錮ノ刑ヲ適用ス可シ
○第弐節 第二種
第四百七拾五条 左ノ各人ハ六「フランク」ヨリ十「フランク」ニ至ル迄ノ罰金ニ処セラル可シ
第一 葡萄収穫ノ公布又ハ規則ヲ以テ許可シタル其他ノ収穫ノ公布ニ違犯シタル者
第二 旅店主、旅舎主、客舎主、器具ノ具ハリタル家屋ノ賃貸人ニシテ其家屋ニ於テ宿泊シ又ハ一夜ヲ過コシタル各人ノ姓名、分限、其平常ノ住所、出入ノ日附ヲ正規ニ従ヒ設ケタル簿冊ニ毫モ空白ナク相連接シテ記入スルコトヲ怠リタル者並ニ右ノ各人ニシテ規則ニ定メタル時期ニ於テ又ハ其要求ヲ受ケタル時ニ当リテ邑長、其副職、警察官吏、警部又ハ特ニ委任セラレタル国士ニ右ノ簿冊ヲ示サヽル者」但シ右ノ諸件ト宿泊又ハ滞在シタル旅客ヲ成規ニ従ヒ記入セサル時其旅客ノ重罪又ハ軽罪ニ関シテ此法典第七十三条ニ記載シタル責任ノ場合ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第三 車夫、御者又ハ各種ノ車或ハ物ヲ負載セシムル獣類ヲ牽引スル各人ニシテ絶ヘス其馬、物ヲ挽カシメ又ハ物ヲ負載セシムル獣類及ヒ其車ニ添テ之ヲ導引、執御スルコトヲ得ル場合ニアル可キノ規則又ハ市街、道路或ハ公ケノ往還ノ一側ノミニ片寄ル可キノ規則又ハ総テ他ノ車ニ対シ倚避シテ其近寄ルニ当リ市街、堤塘、道路ノ少クトモ一半ヲ譲ル可キノ規則ニ違犯シタル者
第四 馬又ハ物ヲ挽カシメ或ハ物ヲ負載セシメ或ハ乗駕ニ用フル獣類ヲ人ノ住居スル場所ノ内部ニ馳入ラシメ又ハ其馳入ルヲ知テ之ヲ止メサル者又ハ馬車ノ積載、速力又ハ悪シキ方向ニ対スル規則ヲ犯シタル者
左ノ諸件ヲ目的ト為ス命令及ヒ規則ノ成規ニ違犯シタル者
公同馬車ノ堅牢
其重量
積載ノ方法
旅客ノ人員及ヒ安寧
馬車ノ内部ニ其乗坐ノ数及ヒ其乗坐ノ賃銀ヲ指示スル事
外部ニ所有者ノ姓名ヲ指示スル事
第五 市街、道路、街衢又ハ公場ニ於テ富講ノ遊戯又ハ其他ノ偶然ニ関スル遊戯ヲ設ケ又ハ開キタル者
第六 変造シタル飲料ヲ売リ又ハ売粥キタル者」但シ其飲料中ニ健康ニ有害ナル混合物ヲ包含シタル場合ニ於テハ懲治警察裁判所ヨリ宣告ス可キ更ニ厳重ナル刑ト相触ルヽコトナカル可シ
第七 己レノ看守スル狂癲病者又ハ兇猛ノ獣類ヲ放チ置キタル者又ハ人ニ対シテ毫モ傷害ヲ加フルコトナキ時ト雖モ犬ヲ嗾シタル者又ハ犬ノ行人ヲ襲ヒ或ハ之ヲ追フ時ニ当リテ其犬ヲ捉ヘ留メサル者
第八 石或ハ其他ノ堅キ物又ハ汚穢物ヲ他人ノ家屋、建造物及ヒ繞囲物ニ向テ放チ又ハ園庭、囲ヒ地内ニ投入レタル者又ハ故意ヲ以テ堅キ物或ハ汚穢物ヲ或人ニ放チタル者
第九 地所ノ所有者又ハ使用収益者ニ非ス又地所或ハ通行ノ権利ヲ享有スル者ニ非スシテ其地所ニ成熟又ハ成熟ニ近キ穀草、葡萄又ハ其他ノ果実ノ生シタル時ニ於テ其地所ニ入リ及ヒ通行シタル者
第十 如何ナル時季タルヲ問ハス種子ヲ蒔キ又ハ収穫物ノ生シタル他人ノ地所又ハ他人ニ属スル小樹林ニ家畜類又ハ物ヲ拽カシメ或ハ物ヲ負載セシメ或ハ乗駕ニ用フル獣類ヲ通行セシメ又ハ其通行スルヲ知テ之ヲ止メサル者
第十一 偽造ニモ変造ニモ非サル国ノ貨幣ヲ其相場ノ価額ニ従ヒ収受スルコトヲ否拒シタル者
第十二 偶然ノ災禍、騒擾、破船、洪水、火災又ハ其他ノ災禍ノ景況ニ当リ並ニ強奪、劫掠、現行犯罪、公ケノ叫喚、裁判執行ノ場合ニ於テ其請求セラレタル工作、事業ヲ為シ又ハ扶助ヲ為スコトヲ得可クシテ之ヲ為スコトヲ否拒シ又ハ怠リタル者
第十三 此法典第二百八十四条及ヒ第二百八十八条ニ指定シタル各人
第十四 腐敗シ又ハ有害ナル食物ヲ売粥ク為メニ展示シタル者
第十五 窃取スル前ニ未タ地ヨリ刈取セサル収穫物又ハ其他ノ有益ナル土地ノ産物ヲ第三百八十八条ニ定メタル景況中ノ一箇ナクシテ窃取シタル者
第四百七拾六条 違警罪ヲ犯シタル車夫、御者及ヒ牽引者ニ対シ又ハ車或ハ獣類ノ速力、悪シキ方向、積載ヲ目的ト為シ若クハ公同馬車ノ堅牢、其重量、積載ノ方法、旅客ノ人員及ヒ安寧ヲ目的ト為ス規則ニ違犯シタル者ニ対シ又ハ変造シタル飲料ノ売主及ヒ売粥人ニ対シ又ハ堅キ物或ハ汚穢物ヲ放擲シタル者ニ対シテハ前条ニ載セタル罰金ノ外景況ニ従ヒ多クトモ三日間ノ禁錮ヲ宣告スルコトヲ得可シ
第四百七拾七条 左ノ諸件ハ之ヲ差押ヘテ没収ス可シ
第一 第四百七十六条ノ場合ニ於テ市街、道路及ヒ公ケノ往還ニ於テ設ケタル遊戯又ハ富講ノ卓子、器具、器械並ニ遊戯者ニ与ヘントスル賭物、元資、飲食品、物件又ハ富講ノ当リ品
第二 売主及ヒ売粥人ニ属スルコトヲ見出サレタル変造シタル飲料」但シ其飲料ハ流シ棄ツ可キモノトス
第三 風俗ヲ害スル文書又ハ彫刻物」但シ此等ノ物ハ細カニ引裂ク可キモノトス
第四 腐敗シ又ハ有害ナル食物」但シ其食物ハ之ヲ棄ツ可キモノトス
第四百七拾八条 再犯ノ場合ニ於テハ第四百七十五条ニ記載シタル各人ニ対シテ常ニ必ス多クトモ五日間ノ禁錮ノ刑ヲ宣告ス可キモノトス
同条ノ第五ニ記載シタル各人ニシテ同一ノ所為ノ為メ再犯ノ景状ニ於テ更ニ逮捕セラレタル者ハ懲治警察裁判所ニ送致セラレ六日乃至一月ノ禁錮ト十六「フランク」乃至二百「フランク」ノ罰金トニ処セラル可シ
○第三節 第三種
第四百七拾九条 左ノ各人ハ十一「フランク」乃至十五「フランク」ノ罰金ニ処セラル可シ
第一 第四百三十四条ヨリ第四百六十二条ニ至ル迄ノ各条ニ定メタル場合ノ外故意ヲ以テ他人ノ動産ニ損害ヲ被ムラシメタル者
第二 狂癲病者又ハ兇猛ノ獣類ヲ放チ置ク事ニ依リ又ハ車、馬、物ヲ拽カシメ或ハ物ヲ負載セシメ或ハ乗駕ニ用フル獣類ノ速力或ハ悪シキ方向或ハ過当ナル積載ニ依リ他人ニ属スル獣類又ハ家畜類ヲ死傷スルニ至ラシメタル者
第三 注意ナク又ハ拙劣ニ兵器ヲ用フルニ依リ又ハ石或ハ其他ノ堅キ物ヲ放擲スルニ依リ右ニ同シキ損害ヲ生セシメタル者
第四 家屋或ハ建造物ノ朽廃、破損、修繕或ハ補理ノ欠缺ニ依リ又ハ命令セラレ或ハ習慣上ニ定マリタル注意又ハ標識ナクシテ市街、道路、街衢又ハ公ケノ往還ノ中又ハ此等ノ諸件ニ接シテ障碍物ヲ置キ又ハ坑穴ヲ穿チ又ハ其他斯クノ如キ工事ヲ為スニ依リ右ニ同シキ怪我ヲ生セシメタル者
第五 自己ノ倉庫、店舗、工作場又ハ商店ニ於テ又ハ市会或ハ市場ニ於テ偽造ノ度量権衡ノ具ヲ所持シタル者」但シ其偽造ノ度量権衡ノ具ヲ使用シタル者ニ対シ懲治警察裁判所ヨリ宣告ス可キ刑ト相触ルヽコトナカル可キモノトス
第六 現行ノ法律ニ定メタルモノト異ナリタル度量権衡ノ具ヲ用ヒタル者
法律ニ従ヒ作リテ且ツ公布シタル代価表ニ定メアル代価以上ニ麺包又ハ肉類ヲ売リタル麺包商及ヒ屠者
第七 卜筮又ハ占夢ヲ以テ業ト為ス者
第八 人民ノ静安ヲ妨害スル誹毀又ハ夜間ノ嘈声又ハ噪閙ヲ為シタル正犯又ハ従犯
第九 行政官ノ命令ヲ以テ附シタル貼附書ヲ悪戯ヲ以テ取去リ又ハ引裂キタル者
第十 他人ノ地所殊ニ人工ノ生草地、葡萄園、楊柳園、「カプリヱー」樹ノ培養場、橄欖、桑、石榴、橙柚及ヒ之ト同種類ノ樹木ノ培養場及ヒ人工ヲ以テ作リタル果樹又ハ其他ノ樹木ノ各培養場又ハ培樹場内ニ如何ナル性質ノモノタルヲ問ハス家畜類ヲ牽キ入レタル者
第十一 如何ナル方法ヲ以テスルヲ問ハス公ケノ道路ヲ毀損破壊シ又ハ其道幅ヲ侵占シタル者
第十二 適法ニ許可セラルヽコトナクシテ公ケノ道路ヨリ芝、土又ハ石ヲ取去リタル者又ハ各邑ニ属スル地ニ於テ泥土又ハ材料ヲ取去リタル者」但シ右ノ諸件ヲ取去ルコトヲ許可スル一般ノ習慣ノ存在スル場合ハ格別ナリトス
第四百八拾条 左ノ各人ニ対シテハ景況ニ従ヒ多クトモ五日間ノ禁錮ノ刑ヲ宣告スルコトヲ得可シ
第一 前条ノ第三ニ定メタル場合ニ於テ他人ニ属スル獣類又ハ家畜類ヲ死傷スルニ至ラシメタル者
第二 偽造ノ度量権衡ノ具ヲ所持スル者
第三 現行ノ法律ニ定メタルモノト異ナリタル度量権衡ノ具ヲ用ヒタル者並ニ前条ノ第六項ニ定メタル場合ニ於ケル麺包商及ヒ屠者
第四 占夢者
第五 誹毀又ハ夜間ノ嘈声又ハ噪閙ヲ為シタル正犯又ハ従犯
第四百八拾壱条 右ノ外左ノ諸件ハ之ヲ差押ヘテ没収ス可シ
第一 偽造ノ度量権衡ノ具並ニ法律上ニ定メタルモノト異ナリタル度量権衡ノ具
第二 卜筮者又ハ占夢者ノ業ヲ執行スルニ用ヒ又ハ其用ニ供シタル器具、器械及ヒ服飾
第四百八拾弐条 再犯ニ付テハ第四百七十九条ニ記載シタル各人ニ対シ其各箇ノ場合ニ於テ常ニ必ス五日間ノ禁錮ノ刑ヲ宣告ス可キモノトス
○前三節ニ共通ノモノタル成規
第四百八拾三条 若シ前十二月以内ニ同一ノ裁判所ノ管轄地内ニ於テ行ヒタル違警罪ノ為メ其違警罪犯者ニ対シテ既ニ第一回ノ裁判ヲ為セシ時ハ本編ニ定メタル総テノ場合ニ於テ再犯アリトス
此法典第四百六十三条ハ前ニ指示シタル総テノ違警罪ニ適用ス可キモノトス
○総則
第四百八拾四条 此法典ニ規定セサルモノニシテ別段ノ法律及ヒ規則ヲ以テ制定シタル総テノ事項ニ付テハ上等裁判所及ヒ下等裁判所ニ於テ従前ノ如ク其法律及ヒ規則ヲ遵守ス可シ