仏蘭西民法 (加太邦憲 中村健三 訳)

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前加篇 第一条 法律ハ国王ヨリ為シタル頒布ニ因リ仏蘭西全国内ニ之ヲ執行ス可シ 法律ハ其頒布ヲ知ルヲ得可キ時ヨリ王国ノ各部ニ於テ之ヲ執行ス可キモノトス 国王ヨリ為シタル頒布ハ王居アル県《デパルトマン》ニ於テハ頒布ノ日ヨリ一日後其他ノ県ニ於テハ頒布ヲ為シタル都府ト各県ノ首府トノ間十「ミリヤメートル」{凡ソ我二十里}毎ニ一日ノ猶予ヲ加ヘタル上尚ホ一日ノ期限ノ尽キタル後之ヲ知リタリト推測ス 第二条 法律ハ将来ヲ規定スルノミニシテ効ヲ既往ニ生セズ 第三条 警察及ヒ安寧ニ関スル法律ハ国内ニ居住スル者皆之ヲ循守ス可シ 不動産ハ外国人ノ所有スルモノト雖トモ仏蘭西ノ法律ヲ以テ之ヲ管理ス 人ノ身分及ヒ能力ニ関スル法律ハ外国ニ居住スル者ト雖トモ総テ仏蘭西人ヲ支配ス 第四条 法律ノ虧缺、不明又ハ不備ヲ口実トシ裁判ヲ為スヲ拒ミタル裁判官ハ裁判拒絶ノ罪アリトシテ訴ヲ受ク可シ 第五条 裁判官ハ申告ヲ受ケタル訴訟ニ付一般ノ例規ヲ定ムル方法ヲ以テ裁判言渡ヲ為ス可カラス 第六条 私ノ契約ヲ以テ一般ノ秩序及ヒ風俗ニ関スル法律ニ戻ル可カラス 第一篇 人事 第一巻 私権ノ得有及ヒ剥奪(千八百三年三月八日決定同月十八日頒布) 第一章 私権ノ得有 第七条 私権ノ執行ハ国士タルノ資格ニ関係セス国士タルノ資格ハ憲法ニ因テノミ之ヲ獲得保有スルモノトス 第八条 仏蘭西人ハ皆私権ヲ得有ス可シ 第九条 仏蘭西ニ於テ生レタル外国人ノ子ハ丁年ニ至リシ時ヨリ一年内ニ仏蘭西人タルノ資格ヲ得ンコトヲ要ムルヲ得但シ其者仏蘭西ニ居住スル時ハ仏蘭西ニ住所ヲ定ムルノ意アルコトヲ陳述ス可ク又外国ニ住スル時ハ仏蘭西ニ住所ヲ定厶可キノ証書ヲ出タシ其時ヨリ一年内ニ仏蘭西ニ住所ヲ定ム可シ 第十条 総テ外国ニ於テ生レタル仏蘭西人ノ子ハ仏蘭西人ナリ 仏蘭西人タル資格ヲ失ヒタル仏蘭西人ノ外国ニ於テ生ミタル子ハ常ニ第九条ニ記スル法式ヲ履行シテ仏蘭西人タル資格ヲ復スルヲ得 第十一条 外国人ハ其本国ト仏蘭西トノ条約ニ因テ其国ニ於テ仏蘭西人ニ授与シ又ハ授与スヘキ私権ト同一ノ私権ヲ仏蘭西ニ於テ得有ス可シ 第十二条 仏蘭西人ニ嫁シタル外国ノ女ハ夫ノ身分ニ従フ可シ 第十三条 国王ヨリ仏蘭西ニ住所ヲ定ムルノ允許ヲ得タル外国人ハ仏蘭西ニ居住スル間総テノ私権ヲ得有ス可シ 第十四条 外国人ハ仏蘭西ニ居住セサル者ト雖トモ仏蘭西ニ於テ仏蘭西人ト結ヒタル義務ノ執行ニ付仏蘭西ノ裁判所ニ召喚セラル可ク又外国人ハ外国ニ於テ仏蘭西人ト結ヒタル義務ニ付キ仏蘭西ノ裁判所ニ召喚セラル可シ 第十五条 仏蘭西人ハ外国ニ於テ結ヒタル義務ニ付テハ外国人ト結ヒタルトキト雖トモ仏蘭西ノ裁判所ニ召喚セラル可シ 第十六条 商事ヲ除クノ外何事ヲ問ハス原告タル外国人ハ仏蘭西ニ於テ其訴訟ヨリ生スル費用及ヒ損害賠償ヲ担保スルニ足ル可キ価額ノ不動産ヲ有セサル時ハ其弁済ノ為メ保証人ヲ立ツ可シ 第二章 私権ノ剥奪 第一款 仏蘭西人タル資格ノ喪失ニ因ル私権ノ剥奪 第十七条 仏蘭西人タルノ資格ハ第一外国ヘ入籍シタルコト第二国王ノ允許ヲ得スシテ外国政府ヨリ任セラレタル公務ヲ受諾セシコト第三帰国ノ意ナク外国ニエタブリスマン」ヲ為セシコトニ因リ喪失ス可シ{外国ニエタブリスマン」ヲ為ストハ外国ニ駐マリテ或ハ資本ヲ益用シ或ハ商業工業ヲ営ミ或ハ芸術ヲ以テ生活スルコトヲ云フ} 商業ノ為メ「エタブリスマン」ヲ{外国ニ}為スハ決シテ帰国ノ意ナク之ヲ為シタリト看做ス可カラス 第十八条 仏蘭西人タル資格ヲ喪失シタル仏蘭西人ハ常ニ国王ノ允許ヲ得テ仏蘭西ニ帰国シ仏蘭西ニ住所ヲ定ムルノ意旨ト仏蘭西ノ法律ニ反スル総テノ格位ヲ放棄ス可キコトトヲ陳述シテ其資格ヲ復スルヲ得 第十九条 外国人ニ嫁シタル仏蘭西ノ女ハ夫ノ身分ニ従フ可シ 若シ寡婦ト為リタル時ハ現ニ仏蘭西ニ居住シ又ハ国王ノ允許ヲ得テ仏蘭西ニ帰国シ仏蘭西ニ住所ヲ定ムルノ意旨ヲ陳述シテ仏蘭西人タルノ資格ヲ復ス可シ 第二十条 第十条第十八条第十九条ニ記シタル場合ニ於テ仏蘭西人タルノ資格ヲ復スル者ハ此数条ニ定メタル要件ヲ履践シタル後ニ於テ其利益ノ為メニ得タル権利ヲ執行スル為メニ非レハ其資格ヲ利用スルヲ得ス 第二十一条 国王ノ允許ヲ得スシテ外国ノ兵役ニ服シ又ハ外国ノ兵社ニ加ハリシ仏蘭西人ハ仏蘭西人タルノ資格ヲ喪失ス可シ 其仏蘭西人ハ国王ノ允許ヲ得ルニ非サレハ仏蘭西ニ帰国スルヲ得ス且ツ外国人ニシテ国士{仏蘭西ノ}トナルニ付キ必要トスル条件ヲ履践スルニ非サレハ仏蘭西人タルノ資格ヲ復スルヲ得ス但シ本条ニ記スル所ト本国ニ叛キテ兵器ヲ弄シ又ハ弄セントスル仏蘭西人ニ対シテ刑法ニ定ムル刑ト抵触スルコトナカル可シ 第二款 刑ノ言渡ニ因ル私権ノ剥奪 第二十二条 後条ニ記スル私権ニ参与ス可カラサル効果ヲ生ス可キ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニハ其言渡ニ由テ准死ヲ提起ス可シ(准死ハ千八百五十四年五月三十一日決定同年六月三日布告ノ法律ニ依テ廃止ス) 第二十三条 死刑ノ言渡ハ准死ヲ提起ス可シ 第二十四条 其他無期ノ施体ノ刑ハ法律ニ於テ准死ヲ提起ス可キノ効果ヲ附スル時ニ非サレハ准死ヲ提起セス 第二十五条 被刑者ハ准死ニ因リ己レニ属スル総テノ財産ノ所有権ヲ喪失シ遺嘱ヲ為スコト無ク実ニ死去セシト均シク其相続人ノ為メ相続ヲ開始シ被刑者ノ財産ハ悉ク之ニ属ス可シ○又被刑者ハ何レノ相続ヲモ収受スルヲ得ス又准死ノ言渡後ニ獲得セシ財産ヲ相続ノ名義ニテ人ニ移転スルヲ得ス○被刑者ハ生者間ノ贈遺又ハ遺嘱ニ因テ財産ノ全部又ハ一部ヲ処分スルヲ得ス又養料ノ外贈遺又ハ遺嘱ノ名義ニテ之ヲ収受スルヲ得ス○被刑者ハ後見人トナルヲ得ス又後見事務ニ関スル所為ニ参加スルヲ得ス○被刑者ハ端式証書《アクトソラン子ール》又ハ公正証書ニ付キ証人タルヲ得ス又裁判所ニ於テ証拠ヲ陳述スルヲ得ス○被刑者ハ訴訟ヲ為ス裁判所ヨリ任シタル別段ノ管財人ノ紹介ニ因リ且其氏名ヲ以テスルニ非サレハ原告又ハ被告ト為リテ裁判所ニ出廷スルヲ得ス○被刑者ハ民法上ノ効果ヲ生スル婚姻ヲ結フヲ得ス○被刑者ノ以前結ヒタル婚姻ハ解除シ総テ民法上ノ効果ヲ生セス○配偶者及ヒ相続人ハ被刑者ノ実ノ死去ニ因テ生ス可キ権利及ヒ訴権ヲ互ニ行フヲ得 第二十六条 刑ノ対審言渡ハ之ヲ現ニ執行シ又ハ肖像ヲ以テ執行シタル日ヨリ後ニ非サレハ准死ヲ提起セス 第二十七条 刑ノ缺席言渡ハ肖像ヲ以テ裁判ノ執行ヲ為シタル日ヨリ五年ノ後ニ非サレハ准死ヲ提起セス此五年間ニハ被刑者{缺席ノ}裁判所ニ出廷スルヲ得 第二十八条 缺席被刑者ハ五年間若クハ此期限内ニ出廷シ又ハ逮捕ヲ受クル迄ハ私権ノ執行ヲ剥奪セラル可シ○其財産ハ失踪者ノ財産ノ如ク之ヲ管理シ其権利ハ失踪者ノ権利ノ如ク之ヲ執行ス可シ 第二十九条 缺席被刑者執行ノ日ヨリ五年内ニ任意ニテ出廷シタル時又ハ此期限内ニ逮捕ヲ受ケ拘留セラレタル時ハ裁判言渡{缺席ノ}ハ当然消滅シ被刑者財産ノ所有ヲ復シ更ニ裁判ヲ受ク可シ若シ此再度ノ裁判ニ因リ同一ノ刑又ハ均シク准死ヲ提起ス可キ他ノ刑ノ言渡ヲ受クル時ハ再度ノ裁判執行ノ日ヨリ後ニ非サレハ准死ヲ提起セズ 第三十条 五年内ニ出廷セズ又ハ拘留セラレザル缺席被刑者再度ノ裁判ニ因テ不論罪ノ言渡ヲ受ケ又ハ准死ヲ提起セサル刑ノ言渡ヲ受ケタル時ハ裁判所ニ出廷シタル日ヨリ全ク私権ヲ将来ニ復ス可シ然レトモ初度ノ裁判言渡ハ五年ノ期限ノ尽キタル時ヨリ出廷ノ日ニ至ル迄ノ間ニ准死ヨリ生シタル効果ヲ既往ニ保持ス可シ 第三十一条 缺席被刑者出廷スル事ナク又ハ逮捕拘留セラルル事ナク五年ノ恩恵期限内ニ死去セシ時ハ権利ヲ全有シテ死去セリト看做シ缺席ノ言渡ハ当然消滅ス可シ但シ此規則ト被刑者ノ相続人ニ対シテ私訴ノミヲ為スヲ得可キ民事原告人ノ訴権ト抵触スルコトナカル可シ 第三十二条 何レノ場合ニ於テモ被刑者刑ノ期満免除ヲ得ルト雖トモ私権ヲ将来ニ復セサル可シ 第三十三条 被刑者准死ノ言渡後ニ獲得シ実ノ死去ノ日ニ於テ猶ホ所有スル財産ハ政府ノ相続権ニ因テ政府ニ属ス可シ 然レトモ国王ハ被刑者ノ寡婦、子又ハ血属ノ為メ仁恤ト思惟スル処置ヲ為スコトヲ得 第二巻 身分証書(千八百三年三月十一日決定同月二十一日頒布) 第一章 総則 第三十四条 身分証書ニハ之ヲ記シタル年日時ト其証書ニ記名ス可キ人ノ氏名年齢職業住所ヲ記載ス可シ 第三十五条 身分取扱役ハ其記スル証書ニ出席人ノ陳述ス可キ事件ノ外註解又ハ説明トシテ何事ヲモ附記ス可カラス 第三十六条 本人自ラ出席スルニ及ハサル場合ニ於テハ別段ノ公証委任状ヲ以テ任シタル代理人ヲ出タスヲ得 第三十七条 身分証書ノ証人ハ本人ノ血属タルト否トヲ問ハス二十一才以上ノ男ニ限ル可シ且ツ其証人ハ本人之ヲ選択ス可シ 第三十八条 身分取扱役ハ出席人若クハ代理人及ヒ証人ニ証書ヲ読ミ聞カス可シ 又証書ニハ其法式ヲ履践シタル旨ヲ附記ス可シ 第三十九条 其証書ニハ身分取扱役、出席人及ヒ証人手署ス可シ若シ出席人及ヒ証人手署スル能ハサル時ハ其事由ヲ附記ス可シ 第四十条 身分証書ハ各邑ニ於テ一箇又ハ数箇ノ簿冊ニ登記ス可シ但シ簿冊ハ各二冊ヲ備フ可シ 第四十一条 其簿冊ハ始審裁判所長又ハ代リテ職務ヲ執ル裁判官初葉ヨリ末葉ニ至ル迄記号ヲ附シ且ツ各葉ニ手署ニ代用スル横線ヲ画ス可シ 第四十二条 証書ハ簿冊ニ空行ナク連続シテ登記ス可シ塗抹及ヒ欄外ノ附記モ証書ノ本文ト均シク之ヲ認視シ之ニ手署ス可シ且ツ証書中略語ヲ用フ可カラス又数字ヲ以テ日附ヲ記ス可カラス 第四十三条 身分取扱役ハ毎年末ニ簿冊ヲ終結シ一箇月内ニ其一冊ヲ邑ノ旧記庫ニ蔵メ他ノ一冊ヲ始審裁判所ノ書記局ニ納ム可シ 第四十四条 身分証書ニ添ヘ置ク可キ委任状及ヒ其他ノ証書類ハ之ヲ出シタル者ト身分取扱役トニテ手署ニ代用スル横線ヲ画シタル後簿冊ト共ニ書記局ニ納ム可シ 第四十五条 何人ト雖トモ身分証書ノ簿冊看守人ヨリ其抜書ヲ請取ルコトヲ得、請取リタル抜書ハ簿冊ニ異ナル所無ク且ツ始審裁判所長又ハ代リテ職務ヲ執ル裁判官其公正ナルコトヲ認ムル時ハ偽造ノ訴アル迄之ヲ真正ノモノトス可シ 第四十六条 若シ簿冊ノ存在セズ又ハ滅失シタル時ハ証書又ハ証人ヲ以テ之ヲ証スルヲ得此場合ニ於テハ死去シタル父母ノ記シタル簿冊及ヒ書面又ハ証人ヲ以テ婚姻、出産、死去ヲ証スルヲ得 第四十七条 外国ニ於テ記シタル仏蘭西人及ヒ外国人ノ身分証書ハ其国ニ於テ用フル法式ニ従テ記シタル時ハ之ヲ真正ノモノトス 第四十八条 外国ニ在ル仏蘭西人ノ身分証書ハ仏蘭西ノ法律ニ従ヒ外交官又ハ領事之ヲ記シタル時ハ有効ナリトス 第四十九条 既ニ登記{簿冊ニ}シタル証書ノ欄外ニ身分ニ関スル証書ヲ附記ス可キ場合ニ於テハ本人ノ要メニ因テ身分取扱役ハ其年ノ簿冊又ハ邑ノ旧記庫ニ蔵メタル簿冊ニ其附記ヲ為シ始審裁判所書記ハ書記局ニ納メタル簿冊ニ其附記ヲ為ス可シ書記局ニ納メタル簿冊ニ其附記ヲ為スニ付身分取扱役ハ三日内ニ始審裁判所ノ検事ニ其通知ヲ為シ検事ハ二箇ノ簿冊ニ同一ノ方法ヲ以テ附記ス可キコトヲ監督ス可シ 第五十条 前数条ニ記スル官吏其規則ニ違背スル時ハ始審裁判所ニ告発セラレ百「フラン」以下ノ罰金ノ言渡ヲ受ク可シ 第五十一条 簿冊ノ看守人ハ簿冊中ニ生シタル変更ニ付キ民法上ノ責ニ任ス可シ但シ他ニ其変更ヲ為シタル者アル時ハ之ニ対シテ其償ヲ要ム可シ 第五十二条 身分証書ヲ変更偽造シ又ハ之ヲ零紙若クハ登記ス可キニ非サル簿冊ニ登記シタル時ハ之ヲ為シタル者本人ニ対シ損害ノ賠償ヲ為ス可シ但シ此規則ト刑法ニ定ムル刑ト抵触スルコトナカル可シ 第五十三条 始審裁判所ノ検事ハ書記局ニ簿冊ヲ納ムル時其状況ヲ審査シ簡単ニ其審査ノ調書ヲ記シ身分取扱役ノ犯シタル違警罪又ハ軽罪ヲ告発シ之ニ対シテ罰金ノ言渡ヲ要ム可シ 第五十四条 始審裁判所ニ於テ身分ニ関スル証書ニ付キ裁判ヲ為ス総テノ場合ニ於テ本人ハ其裁判ニ対シテ上告ヲ為スヲ得 第二章 出産証書 第五十五条 出産ノ陳述ハ分娩ノ時ヨリ三日内ニ其地ノ身分取扱役ニ為シ之ニ子ヲ示ス可シ 第五十六条 出産ハ父、若シ父アラサル時ハ内科又ハ外科医、産婆、下等医又ハ分娩ニ立会ヒタル者ヨリ陳述ス可シ若シ母其住所外ニ於テ分娩シタル時ハ分娩アリタル家ノ者ヨリ陳述ス可シ 出産証書ハ直チニ証人二人ノ面前ニ於テ之ヲ記ス可シ 第五十七条 出産証書ニハ出産ノ日、時、場所、子ノ男女、子ニ命シタル名、父母及ヒ証人ノ氏名職業住所ヲ記載ス可シ 第五十八条 初生ノ子{遺棄シタル}ヲ見出シタル者ハ子並ニ子ト共ニ見出シタル衣服其他ノ物品ヲ身分取扱役ニ交付シ其子ヲ発見シタル時及ヒ場所ノ状況ヲ陳述ス可シ 右ノ件々ニ付テハ詳細ノ調書ヲ作リ且ツ其調書ニ子ノ見積年齢、男女、命ス可キ名、之ヲ預リタル官署ヲ記シ其調書ヲ簿冊ニ登記ス可シ 第五十九条 航海中ニ出産アリタル時ハ父其所ニ在ルトキハ父ト船ノ士官中若シ士官アラサルトキハ乗組人中ヨリ撰ミタル証人二人トノ面前ニ於テ二十四時間内ニ出産証書ヲ記ス可シ此証書ハ国王ニ属スル船舶ニ於テハ海軍庶務官之ヲ記シ艤送者又ハ商人ニ属スル船舶ニ於テハ船長又ハ指揮役之ヲ記ス可シ其証書ハ乗組人名簿ノ末尾ニ之ヲ記ス可シ 第六十条 船具《デサルムマン》解収ノ為メニ非ス休泊又ハ其他ノ原由ノ為メ船舶ノ始メテ投錨シタル港ニ於テハ海軍庶務官船長又ハ指揮役其記シタル出産証書ノ公正ノ謄本二通ヲ仏蘭西ノ港ニ於テハ海兵徴募局ニ納メ外国ノ港ニ於テハ領事ニ出タス可シ 此謄本ノ一通ハ海兵徴募局又ハ領事館ノ事務局ニ納メ他ノ一通ハ海軍卿ニ送呈ス海軍卿ハ謄本ノ写書ヲ記シ之ヲ証認シテ子ノ父ノ住所ノ身分取扱役ニ送達シ父分明ナラサル時ハ母ノ住所ノ身分取扱役ニ送達ス但シ其写書ハ直チニ簿冊ニ登記ス可シ 第六十一条 船具ヲ解収ス可キ港ニ船舶ノ到着セシ時ハ乗組人ノ姓名薄ヲ海兵徴募局ニ納ム可シ海兵徴募局ハ出産証書ノ謄本ニ捺印シテ子ノ父ノ住所ノ身分取扱役ニ送達シ父分明ナラサル時ハ母ノ住所ノ身分取扱役ニ送達ス此謄本ハ直チニ簿冊ニ登記ス可シ 第六十二条 子{私生ノ}ノ認知証書ハ認知シタル時ノ日附ヲ以テ簿冊ニ登記シ且ツ出産証書アル時ハ其欄外ニ其旨ヲ附記ス可シ 第三章 婚姻証書 第六十三条 身分取扱役ハ婚姻ノ執行前ニ邑庁ノ門前ニ八日ヲ隔テ二次公告書ヲ掲示シ其一ハ日曜日ニ之ヲ為ス可シ其公告書及ヒ其公告ニ付キ記シタル証書ニ夫婦トナラントスル双方ノ氏名、職業,住所、丁年又ハ幼年ナル事ト其父母ノ氏名、職業、住所ヲ記ス可シ又其証書ニハ別ニ公告ヲ為シタル日、場所及ヒ時ヲ記シテ特別ノ簿冊ニ登記ス可シ但シ其簿冊ハ第四十一条ニ記スル如ク記号ヲ附シ横線ヲ画〆各年末ニ郡裁判所{始審裁判所}ノ書記局ニ納ム可シ 第六十四条 初次ノ公告ヨリ二次ノ公告迄ノ八日間ハ邑庁ノ門前ニ公告証書ノ抜書ヲ掲示シ置ク可シ婚姻ハ第二ノ公告ヲ為シタル日ヨリ第三日前ニ行フ可カラス但シ公告ヲ為シタル日ハ此三日中ニ算入セス 第六十五条 若シ公告期限ノ尽キタル時ヨリ一年内ニ婚姻ヲ行ハサリシ時ハ上ニ記シタル法式ニ従テ更ニ公告ヲ為シタル後ニ非サレハ婚姻ヲ執行ス可カラス 第六十六条 婚姻ニ付キ故障ヲ為ス証書ノ正本及ヒ謄本ニハ故障者又ハ別仮ノ公正ノ委任状ヲ持スル代理人手署シ其証書ハ委任状ト共ニ婚姻ヲ行ハントスル本人若クハ其住所ト身分取扱役トニ送達シ身分取扱役ハ其正本ニ認印ス可シ 第六十七条 身分取扱役ハ遅延ナク公告書ノ簿冊ニ故障書ヲ略記シ裁判言渡書又ハ故障除去ノ証書ノ謄本ヲ受取リタル時ハ又之ヲ故障書ヲ登記シタル欄外ニ附記ス可シ 第六十八条 故障アル場合ニ於テハ身分取扱役ハ故障除去ノ証書ヲ受取ラサル前ニ婚姻ヲ執行セシムルヲ得ス此規則ニ背ク時ハ三百「フラン」以下ノ罰金及ヒ損害賠償ノ言渡ヲ受ク可シ 第六十九条 絶テ故障ナキ時ハ婚姻証書ニ其旨ヲ附記ス可シ若シ数邑ニ於テ公告{婚姻ノ}ヲ為セシ時ハ夫婦トナラントスル双方ハ各邑ノ身分取扱役ヨリ絶テ故障ナキ旨ヲ証スル為メ交付シタル証状ヲ出タス{婚姻ヲ執行スル邑ノ身分取扱役ニ}可シ 第七十条 身分取扱役ハ夫婦トナラントスル双方ノ出産証書ヲ出タサシム可シ双方ノ中之ヲ得ルコト能ハサル者ハ其出産ノ地又ハ住所ノ治安裁判官ヨリ交付シタル公知証書《ノトリトエテー》{証書ナキ時ニ於テ世人ノ普ク知ル旨ヲ証スル書ナリ}ヲ出シ之ニ代フ可シ 第七十一条 公知証書ニハ男又ハ女ト血属又ハ非血属トヲ問ハス証人七人ノ為シタル夫婦トナラントスル者ノ氏名職業住所、分明ナルニ於テハ父母ノ氏名職業住所ノ陳述且ツ夫婦トナラントスル者ノ出生ノ地又知リ得可キニ於テハ出産ノ時及ヒ出産証書ヲ出ス能ハサル原由ヲ記ス可シ○証人ハ治安裁判官ト共ニ公知証書ニ手署ス可シ若シ手署スル能ハサルカ或ハ知ラサル者アル時ハ其旨ヲ附記ス可シ 第七十二条 公知証書ハ婚姻ヲ執行ス可キ地ノ始審裁判所ニ出ス可シ裁判所ニ於テハ検事ノ意見ヲ聴キタル後証人ノ陳述ト出産証書ヲ出ス能ハサル原由トヲ充分ナリト思惟スル時ハ公知証書ヲ認許シ又充分ナラストスル時ハ認許スルコトヲ拒ム可シ 第七十三条 父母又ハ祖父母、其アラサル時ハ親族ノ許諾{婚姻ノ}ヲ為ス公正ノ証書ニハ夫婦トナラントスル者ノ氏名、職業住所及ヒ其証書ニ関スル者ノ氏名職業住所ト其等親トヲ記ス可シ 第七十四条 婚姻ハ夫婦トナラントスル者ノ中一方ノ住所アル邑ニ於テ執行ス可シ婚姻ニ付テハ一邑内ニ六月間継続シテ居住シタルヲ以テ其住所トス 第七十五条 身分取扱役ハ公告期限ノ尽キタル後婚姻ヲ為サントスル双方ヨリ指定シタル日ニ邑庁ニ於テ其血属ト否トヲ問ハス証人四人ノ面前ニ於テ双方ニ其身分及ヒ婚姻ノ法式ニ関スル前数条ニ記シタル証書類ト夫婦相互ノ権利義務ヲ規定スル婚姻ノ巻第六章トヲ読ミ聞カス可シ (第二項千八百五十年七月十日追加)身分取扱役ハ婚姻ヲ為サントスル双方ニ又婚姻ノ許諾ヲ為シタル者出席スル時ハ其者ニモ婚姻財産《コントラトマリヤージュ》契約ヲ為シタルヤ否ヤヲ問ヒ糾シ此等ノ者其契約ヲ為シタル旨ヲ答フル時ハ其日附ト契約書ヲ記シタル公証人ノ氏名住所ヲ問ヒ糾ス可シ 身分取扱役ハ婚姻ヲ為サントスル双方ヨリ逐次夫婦トナランコトヲ欲スル旨ノ陳述ヲ受ケ婚姻ニ因テ双方連結セシ旨ヲ法律ニ従テ言渡シ直チニ婚姻証書ヲ記ス可シ 第七十六条 婚姻証書ニハ左ノ諸件ヲ記載ス可シ 第一 夫婦ノ氏名、職業、年齢、出産ノ地、住所 第二 夫婦ノ丁年又ハ幼年ナル事 第三 父母ノ氏名、職業、住所 第四 父母祖父母ノ許諾及ヒ親族ノ許諾ノ必要ナル時ニハ其許諾 第五 恭敬書《アクトレスペチユウー》ヲ出シタル時ハ其書 第六 諸住所ニ於テ為シタル公告書 第七 故障アリシ時ハ其故障、其除去又ハ故障ナカリシ旨ノ附記 第八 婚姻ヲ為サントスル者互ニ夫婦トナランコトヲ欲スル陳述及ヒ公吏ヨリ其連結シタル旨ヲ言渡シタル事 第九 証人ノ氏名年齢職業住所証人夫婦ノ血属姻属ナル時ハ本宗又ハ外族タル事及ヒ等親ノ陳述 第十 (千八百五十年七月十日追加)前条ニ記シタル問糾ニ従ヒ婚姻財産契約ヲ為セシヤ否ヤノ陳述其契約ヲ為セシ時ハ可成的其日附ノ陳述及ヒ其契約書ヲ記シタル公証人ノ氏名住所 此諸件ヲ記セサル身分取扱役ハ第五十条ニ定ムル罰金ノ言渡ヲ受ク可シ 総テ陳述ニ遺脱又ハ錯誤アル時ハ始審裁判所検事ヨリ其遺脱錯誤ニ関シテ証書ノ釐正ヲ請求スルヲ得可シ但シ此規則ト第九十九条ニ記スル関係人ノ権利ト抵触スルコトナカル可シ 第四章 死去証書 第七十七条 埋葬ハ身分取扱役ヨリ無税ノ免状ヲ以テ允許ヲ受クルニ非サレハ為ス可カラス身分取扱役ハ死者ノ所ニ就キ死去ヲ認視シ且ツ警察規則ニ定ムル場合ノ外ハ死去ノ時ヨリ二十四時後ニ非サレハ其允許ヲ与フ可カラス 第七十八条 死去証書ハ証人二人ノ陳述ニ因リ身分取扱役之ヲ記ス可シ其証人ハ可成的最親ノ血属又ハ隣人ヲ用フ可シ若シ又住所外ニ於テ死去シタル時ハ其死去シタル家ノ者ト血属又ハ其他ノ人トヲ用フ可シ 第七十九条 死去証書ニハ死者ノ氏名、年齢、職業、住所、既婚者ナルカ又ハ鰥寡者ナル時ハ其配偶者ノ氏名、陳述者ノ氏名、年齢、職業、住所及ヒ陳述者死者ノ血属ナル時ハ其等親ヲ記ス可シ 且ツ此証書ニハ知ルヲ得可キニ於テハ父母ノ氏名、職業、住所、及ヒ死者出産ノ地ヲ記ス可シ 第八十条 陸軍病院通常病院又ハ其他ノ公舎ニ於テ死去アル場合ニ於テハ其院舎ノ長、管理人又ハ所有者ヨリ二十四時間内ニ身分取扱役ニ其報告ヲ為ス可シ身分取扱役ハ院舎ニ就テ死去ヲ認視シ前条ニ従ヒ聴取リタル陳述ト認視シタル所トニ循ヒ証書ヲ記ス可シ 病院及ヒ公舎ニ於テハ陳述ト認視ノ件々トヲ記載ス可キ別段ノ簿冊ヲ設ケ置ク可シ 身分取扱役ハ死者最終ノ住所ノ身分取扱役ニ死去証書ヲ送達シ最終ノ住所ノ身分取扱役ハ之ヲ簿冊ニ登記ス可シ 第八十一条 変死ノ徴候又ハ証憑アルカ若シクハ変死ト思料シタル情状アル時ハ警察官内科又ハ外科医ノ立会ニテ死屍ノ形状及ヒ之ニ関スル情状ト死者ノ氏名、年齢、職業、出産ノ地、住所ニ付キ蒐集シ得タル件々トヲ調書ニ記シタル後ニ非サレハ埋葬ヲ為ス可カラス 第八十二条 警察官ハ人ノ死去シタル地ノ身分取扱役ニ調書ニ記シタル件々ヲ直チニ報告シ身分取扱役ハ之ニ従テ死去証書ヲ記ス可シ 身分取扱役ハ死者ノ住所分明ナル時ハ其地ノ身分取扱役ニ死去証書ノ謄本ヲ送達ス可シ但シ此謄本ハ薄冊{身分証書ノ}ニ登記ス可シ 第八十三条 刑事ノ書記ハ死刑ヲ言渡シタル裁判執行ノ時ヨリ二十四時間内ニ其執行アリタル地ノ身分取扱役ニ第七十九条ニ掲ケタル諸件ヲ記シタル書面ヲ送達ス可シ但シ死去証書ハ之ニ従テ記ス可シ 第八十四条 監獄、懲役場又ハ留置場ニ於テ死去アル時ハ獄丁又ハ守卒ヲ以テ直チニ身分取扱役ニ其報告ヲ為ス可シ身分取扱役ハ第八十条ニ定ムル如ク其所ニ臨ミ死去証書ヲ記ス可シ 第八十五条 変死獄死又ハ刑死ノ総テノ場合ニ於テハ其情状ヲ簿冊{身分証書ノ}ニ記セス第七十九条ニ定ムル法式ニ従テ単ニ死去証書ヲ記ス可シ 第八十六条 航海中死去アル場合ニ於テハ二十四時間内ニ船舶ノ士官若シ其アラサル時ハ乗組人中ヨリ撰ミタル証人二人ノ面前ニテ死去証書ヲ記ス可シ此証書ハ国王ニ属スル船舶ニ於テハ海軍庶務官之ヲ記シ商人又ハ艤送者ニ属スル船舶ニ於テハ船長又ハ指揮役之ヲ記ス可シ○死去証書ハ乗組人ノ名簿ノ末尾ニ登記ス可シ 第八十七条 死去証書ヲ記シタル海軍庶務官、船長、指揮役ハ船具解収ノ為メニ非サル休泊又ハ其他ノ事由ノ為メ船舶ノ始メテ投錨セシ港ニ於テ第六十条ニ従ヒ其謄本二通ヲ納ム可シ 船具解収ノ港ニ船舶ノ到着セシ時ハ乗組人ノ名簿ヲ海兵徴募局ニ納メ海兵徴募局ハ死去証書ノ胆本一通ヲ作リ之ニ捺印シテ死者ノ住所ノ身分取扱役ニ送達ス可シ此謄本ハ直チニ簿冊{身分証書ノ}ニ登記ス可シ 第五章 仏蘭西国外ニ在ル軍人ノ身分証書 第八十八条 仏蘭西国外ニ於テ記スル軍人軍属ノ身分証書ハ下ノ数条ニ記スル例外ヲ除キ前数条ニ定メタル法式ニ従テ之ヲ記ス可シ 第八十九条 一箇又ハ数箇ノ歩兵大隊又ハ騎兵大隊ニ於テハ営官{共和第十二年「ワンデミエール」月一日ノ決議ニ因テ連隊ノ参謀ニ改ム}其他ノ諸隊ニ於テハ指揮ヲ掌トル大尉身分取扱役ノ職務ヲ行フ可シ隊外士官及ヒ軍属ニ付テハ一軍又ハ一軍団ニ属スル検閲官{同決議ニ因リ副官又ハ下副官ニ改ム}其職務ヲ行フ可シ 第九十条 各隊ニ隊中ノ者ノ身分証書ノ簿冊一冊ヲ備置キ一軍若クハ一軍団ノ参謀部ニ隊外士官及ヒ軍属ノ身分証書ノ簿冊一冊ヲ備置ク可シ此簿冊ハ各隊又ハ参謀部ノ他ノ簿冊ト同一ノ方法ヲ以テ保存シ仏蘭西ニ帰国ノ上陸軍旧記庫ニ納ム可シ 第九十一条 簿冊ニハ、各隊ニテハ之ヲ指揮スル士官、参謀部ニテハ参謀長記号ヲ附シ手署ニ代用スル横線ヲ画ス可シ 第九十二条 軍中ニ於テ出産ノ陳述ハ分娩ノ日ヨリ十日内ニ之ヲ為ス可シ 第九十三条 身分証書ノ簿記ヲ掌トル士官ハ出産証書ヲ簿冊ニ登記シタル日ヨリ十日内ニ其抜書ヲ子ノ父ノ最終ノ住所ノ身分取扱役ニ若シ父分明ナラザルトキハ母ノ最終ノ住所ノ身分取扱役ニ送達ス可シ 第九十四条 軍人軍属ノ婚姻ノ公告ハ其最終ノ住所ノ地ニ於テ之ヲ為ス可シ其公告ハ隊中ノ者ニ付テハ婚姻執行ヨリ二十五日前ニ之ヲ隊ノ日誌ニ記ス可ク隊外士官及ヒ軍属ニ付テハ之ヲ一軍又ハ一軍団ノ日誌ニ記ス可シ 第九十五条 簿記ヲ掌トル士官ハ婚姻執行ノ証書ヲ簿冊ニ登記シタル後直チニ夫婦ノ最終ノ身分取扱役ニ其謄本ヲ送達ス可シ 第九十六条 死去証書ハ各隊ニ於テハ営官之ヲ記シ隊外士官及ヒ軍属ニ付テハ検閲官証人三人ノ証明ニ従ヒ之ヲ記シ十日内ニ死者ノ最終ノ住所ノ身分取扱役ニ其抜書ヲ送達ス可シ 第九十七条 陸軍移動病院又ハ陸軍定置病院ニ於テ死去アル場合ニ於テハ院長死去証書ヲ記シ死者所属ノ隊ノ営官又ハ一軍若クハ一軍団ノ検閲官ニ之ヲ送達ス可シ営官検閲官ハ死者最終ノ住所ノ身分取扱役ニ其謄本ヲ送達ス可シ 第九十八条 一軍ヨリ身分証書ノ謄本ノ送達ヲ受ケタル死者ノ住所ノ身分取扱役ハ直チニ之ヲ簿冊ニ登記スヘシ 第六章 身分証書ノ釐正 第九十九条 身分証書釐正ノ訟求アル時ハ管轄裁判所ニ於テ検事ノ意見ヲ聴キ裁判ヲ為ス可シ但シ其裁判ハ控訴スルヲ得ヘシ○訴訟関係人ノ呼出ヲ要スル時ハ之ヲ呼出ス可シ 第百条 釐正ノ言渡ハ何レノ時ト雖トモ之ヲ要メサル者又ハ呼出ヲ受ケサル者ニ之ヲ以テ対抗スルヲ得ス 第百一条 釐正ノ言渡書ハ身分取扱役之ヲ受取リタル時直チニ薄冊ニ登記シ且ツ釐正シタル証書ノ欄外ニ其事ヲ附記ス可シ 第三巻 住所(千八百三年三月十四日決定同月二十四日頒布) 第百二条 私権ノ執行ニ付キ各仏蘭西人ノ住所ハ其主タル住居アル処ニ在リトス 第百三条 住所外ノ地ニ現ニ住居スル事実ト其地ニ主タル住居ヲ定ムル意思アルトニ因テ移住アリタリト為ス可シ 第百四条 意思{移住スル}アルノ証拠ハ退去セントスル地ノ邑庁ト住所ヲ転置セントスル地ノ邑庁トニ為シタル特別ノ陳述ヨリ生ス可シ 第百五条 其陳述ナキニ於テハ意思ノ証拠アルト否トハ情状ニ関ス可シ 第百六条 一時ノ公務又ハ罷免ス可キ公務ヲ任セラレタル国士ハ従来ノ住所ヲ保有ス可シ但シ之ニ反スル意思ヲ表スル時ハ格別ナリトス 第百七条 畢生間ノ公務ノ任ヲ受諾スル官吏ハ職務ヲ行フ可キ地ニ直チニ住所ヲ移転ス可シ 第百八条 婚姻シタル婦ハ夫ノ住所ノ外他ニ住所ヲ有セズ後見ヲ受クル幼者ハ父母又ハ後見人ノ住所ヲ以テ其住所ト為シ丁年ノ被禁治産者ハ後見人ノ住所ヲ以テ其住所ト為ス可シ 第百九条 平常他人ノ家ニテ使役セラレ又ハ執業スル丁年者ハ使役スル者又ハ執業セシムル者ト同家屋ニ住スル時ハ此者ノ住所ヲ以テ其住所ト為ス可シ 第百十条 相続ヲ開始ス可キ地ハ住所ノ地タル可シ 第百十一条 真ノ住所外ニ於テ証書ヲ執行スル為メ結約者双方又ハ一方ヨリ仮住所ヲ撰定スル事ヲ其証書ニ記スル時ハ其証書ニ関スル召喚、訟求及ヒ起訴ハ其仮定ノ住所ニ於テ其地ノ裁判官ニ為スコトヲ得 第四巻 失踪(千八百三年三月十五日決定同月二十五日頒布) 第一章 失踪推測 第百十二条 失踪者ト推測セラレタル者代理人ヲ置カサル時其遺留シタル財産ノ全部又ハ一部ヲ管理ス可キ准備ヲ為スノ必要ナルニ於テハ関係人ノ要求ニ従ヒ始審裁判所ニ於テ其事ヲ裁決ス可シ 第百十三条 裁判所ハ最モ利害ニ関係アル者ノ請願ニ依リ失踪者ト推測セラレタル者ノ関係アル目録、計算、分配、結算ニ付キ失踪者ト推測セラレタル者ヲ代理ス可キ公証人一名ヲ任ス可シ 第百十四条 検察官ハ格段ニ失踪者ト推測セラレタル者ノ利益ニ注意ス可シ又此者ニ関スル訟求ニ付キ必ス意見ヲ裁判官ニ陳述ス可シ 第二章 失踪ノ宣告 第百十五条 人其住所又ハ寄留所ニ帰来スルコトナク又四年来絶テ消息アラサル時ハ関係人ハ始審裁判所ニ失踪ノ宣告アランコトヲ訟求スルヲ得 第百十六条 裁判所ハ失踪ヲ証明スル為メ其収受シタル証書及ヒ参考書ニ従ヒ住処{失踪者ノ}ノ郡ニ於テ検事ト対審ニテ吟味ヲ為ス可キコトヲ言渡ス可シ若シ住所ノ外ニ寄留所アルトキハ寄留所ノ郡ニ於テモ検事ト対審ニテ吟味ヲ為ス可キコトヲ言渡ス可シ 第百十七条 裁判所ハ訟求ノ吟味ヲ為スニ当リ失踪ノ趣旨及ヒ失踪者ト推測セラレタル者ノ消息ヲ得ルノ妨害トナルコトヲ得タル原由ニモ注意ス可シ 第百十八条 始審裁判所ノ検事ハ裁判言渡アルトキハ其予審タルト完結《デフイニチーフ》タルトヲ問ハス其言渡書ヲ司法卿ニ送呈シ司法卿之ヲ公告ス可シ 第百十九条 失踪宣告ノ言渡ハ吟味ヲ命スル言渡ヨリ一年ノ後ニ非サレハ之ヲ為ス可カラス 第三章 失踪ノ効果 第一款 失踪者失踪ノ日ニ占有セシ財産ニ関スル失踪ノ効果 第百二十条 失踪者財産ノ管理ニ付代理人ヲ置カサル場合ニ於テハ推定相続人《エリチエーブレゾンブチーフ》ハ失踪ノ完結ノ言渡ニ由リ失踪ノ日又ハ最終ノ消息ヲ得タル日ニ於テ失踪者ニ属セシ財産ヲ其日ヨリ仮ニ占有スルコトヲ得但シ其相続人ハ安全ニ財産ヲ管理ス可キコトヲ証スル為メ保証人ヲ立ツ可シ 第百二十一条 失踪者代理人ヲ置キタル時ハ推定相続人ハ失踪ノ日又ハ最終ノ消息ヲ得タル日ヨリ満十年ノ後ニ非サレハ失踪ノ宣告及ヒ仮占有ヲ要求スルヲ得ス 第百二十二条 代理ノ消滅シタル時モ亦前条ト同一ナリトス此場合ニ於テハ此巻第一章ニ定ムル如ク失踪者ノ財産ノ管理ニ付准備ヲ為ス可シ 第百二十三条 推定相続人仮占有ヲ為スヲ得タル時若シ遺嘱書アリシ時ハ関係人又ハ検事ノ請求ニ依リ之ヲ開封シ受嘱者受贈者及ヒ其他総テ失踪者死去ノ時ニ於テ其財産ニ付キ権利ヲ有スル者ハ仮ニ其権利ヲ行フヲ得可シ但シ此事ニ付テハ保証人ヲ立ツ可シ 第百二十四条 財産ヲ共通スル配偶者{失踪者ノ}共通ヲ継続センコトヲ要求スル時ハ仮占有及ヒ失踪者ノ死去ニ因テ他人ニ属ス可キ総テノ権利ノ仮執行ヲ拒ミ其選ミニ依リ失踪者ノ財産ノ管理ヲ始メ又ハ保持スルヲ得若シ配偶者共通ノ仮解除ヲ要求スル時ハ其取戻権{財産ノ}及ヒ法律上並ニ約束上ノ総テノ権利ヲ行フコトヲ得但シ返還ス可キ物件{夫ノ帰来シタル時之ニ返還ス可キモノ}ニ付テハ保証人ヲ立ツ可シ 婦ハ共通ヲ継続センコトヲ要求セシ時ト雖トモ其後ニ至リ其継続ヲ放棄スルノ権アリトス 第百二十五条 仮占有ハ附託ニ過キス仮占有ヲ為ス者ハ失踪者ノ財産ヲ管理シ失踪者帰来シ又ハ消息アリタル時之ニ其計算ヲ為ス可シ 第百二十六条 仮占有ヲ為シタル者又ハ共通継続ノ要求ヲ為シタル配偶者ハ始審裁判所ノ検事又ハ検事ノ撰ミタル治安裁判官ノ面前ニ於テ失踪者ノ動産及ヒ証書ノ目録ヲ記サシム可シ 動産ノ全部又ハ一部ノ売却ヲ要スル時ハ裁判所ヨリ之ヲ言渡ス可シ売却ヲ為シタル場合ニ於テハ所得シタル入額ト均シク其代価ヲ使用{失踪者ノ利益ニ}ス可シ 仮占有ヲ為シタル者ハ自己ノ安全ノ為メ裁判所ヨリ任シタル鑑定人ヲシテ不動産ヲ検査シ其状況ヲ証明セシムルコトヲ請求スルヲ得始審裁判所ハ鑑定人ノ報告書ヲ検事ノ面前ニ於テ確的ノモノト認メ其費用ハ失踪者ノ財産中ヨリ支弁ス可シ 第百二十七条 仮占有又ハ法律上ノ管理ニ因リ失踪者ノ財産ニ付入額ヲ所得シタル者ハ失踪ノ日ヨリ満十五年内ニ失踪者帰来スル時ハ其入額ノ五分一、満十五年ノ後ニ帰来スルトキハ十分一ニ非サレハ返還スルニ及ハス 失踪ヨリ三十年ノ後ハ其者入額ノ全部ヲ所得ス可シ 第百二十八条 仮占有ニ因テ得{失踪者ノ財産ヲ}タル者ハ失踪者ノ不動産ヲ譲与シ又ハ書入質ト為スヲ得ス 第百二十九条 仮占有ヲ為シタル時又ハ財産ヲ共通スル配偶者失踪者ノ財産ノ管理ヲ始メタル時ヨリ三十年間失踪ノ継続シ又ハ失踪者ノ出産ノ時ヨリ満百年ヲ経過セシ時ハ保証人ハ責ヲ免レ総テノ承権人《エイヤンドロワー》ハ失踪者ノ財産ノ分派ヲ要求シ始審裁判所ヨリ確定ノ占有ヲ言渡サシムルヲ得 第百三十条 失踪者ノ相続ハ失踪者死去ノ証拠アリタル日ヨリ当時最親ノ相続人ノ為メニ開始ス可シ但シ失踪者ノ財産ニ付キ入額ヲ所得シタル者ハ第百二十七条ニ因テ所得シタルモノノ外総テノ菓実ヲ返還ス可シ 第百三十一条 仮占有中ニ失踪者帰来シ又其生存ノ証拠アリタル時ハ失踪ヲ宣告シタル裁判ノ効果ハ消滅ス可シ此規則ト財産ノ管理ニ付キ此巻第一章ニ定メタル保存{財産ノ}ノ処分ト抵触スルコトナカル可シ 第百三十二条 確定ノ占有ノ後ト雖トモ失踪者帰来シ又ハ其生存ノ証拠アリタル時ハ失踪者ハ其財産ヲ現状ノ侭ニテ取戻シ又譲与シタル財産ノ代価又ハ其代価ヲ使用シテ得タル財産ヲ取戻スコトヲ得 第百三十三条 失踪者ノ子及宗系ノ卑属親ハ確定ノ占有ノ時ヨリ三十年ニ満タサル間ハ前条ニ記スル如ク失踪者ノ財産ノ返還ヲ要求スルコトヲ得 第百三十四条 失踪宣告ノ言渡後ハ総テ失踪者ニ対シテ執行ス可キ権利ヲ有スル者ハ財産ノ占有ヲ得タル者又ハ法律上ノ管理ヲ為ス者ニ対シテノミ訟求ヲ為スコトヲ得 第二款 失踪者ニ属スルヲ得可キ未必ノ権利ニ関スル失踪ノ効果 第百三十五条 生存ノ分明ナラサル者ニ属ス可キ権利ヲ己レニ得ント訟求スル者ハ既ニ其権利ノ生シタル時其者ノ生存セシ旨ヲ証ス可シ其証アル迄ハ其訟求ヲ受理ス可カラサルノ言渡ヲ受ク可シ 第百三十六条 生存ノ分明ナラサル者ノ得可キ相続ノ開始アル時ハ其者ト共ニ相続ヲ為ス可キ権利アル者又ハ其者ノ在ラサル時ニ於テ相続ヲ為ス可キ者ノミ其相続ヲ為ス可シ 第百三十七条 前条ノ規則ハ失踪者又ハ其代理者即チ承権人ニ属ス可キ相続及ヒ時効《プレスクリプション》{時効トハ時ヲ経タル効果ニ因リ権利ヲ得又ハ義務ヲ免カルルヲ云フ}ニ付キ定メタル時間ノ経過スルニ非サレハ消滅セサル其他ノ権利ヲ訟求スルノ訴権ト抵触スルコトナカル可シ 第百三十八条 相続ヲ得タル者ハ失踪者ノ帰来セサル時間又ハ失踪者ニ代リ訴権ヲ行フ者ナキ時間善意ヲ以テ獲収シタル菓実ヲ所得ス可シ 第三款 婚姻ニ関スル失踪ノ効果 第百三十九条 失踪者ノ配偶者再婚ヲ為シタル時ハ失踪者自ラ又ハ失踪者生存ノ証拠ヲ持シタル代理人ヲ以テ再婚ヲ攻撃スルヲ得 第百四十条 失踪者相続ヲ為ス可キ血属親ヲ遺留セサリシ時ハ其配偶者ハ財産ノ仮占有ヲ訟求スルヲ得 第四章 失踪シタル父ノ幼年ノ子ノ監督 第百四十一条 若シ父夫婦ノ間ニ生レタル幼年ノ子ヲ遺留シ失踪シタル時ハ母之レヲ監督シ其教育及ヒ財産ノ管理ニ付キ総テ父ノ権ヲ行フ可シ 第百四十二条 父ノ失踪ノ時母既ニ死去シ又ハ父ノ失踪宣告前ニ母死去セシ時ハ父ノ失踪ノ時ヨリ六月ノ後親族会議ニテ其子ノ監督ヲ最親ノ尊属親若シ其在ラサルニ於テハ仮ノ後見人ニ任ス可シ 第百四十三条 夫婦ノ一方其前婚ノ幼年ノ子ヲ遺留シテ失踪シタル場合モ前条ニ同シ 第五巻 婚姻(千八百三年三月十七日決定同月二十七日頒布) 第一章 婚姻ヲ為スニ必要ナル資格及ヒ条件 第百四十四条 十八歳未満ノ男及ヒ十五歳未満ノ女ハ婚姻ヲ為スヲ得ス 第百四十五条 然レトモ重要ノ理由アル時ハ国王ハ其年齢ニ至ラスシテ婚姻ヲ為スノ允許ヲ与フルヲ得 第百四十六条 承諾{夫婦ノ}アラサル時ハ婚姻ナシトス 第百四十七条 初婚ノ解除前ニ再婚ヲ為スヲ得ス 第百四十八条 二十五歳未満ノ男及ヒ二十一歳未満ノ女ハ父母ノ許諾ナクシテ婚姻ヲ為スヲ得ス若シ異議{父母ノ間ニ}アル時ハ父ノ許諾ヲ以テ足レリトス 第百四十九条 父母ノ一人死去シ又ハ其意ヲ表スル能ハサル時ハ他ノ一人ノ許諾ヲ以テ足レリトス 第百五十条 若シ父母共ニ死去シ又ハ其意ヲ表スル能ハサル時ハ祖父母之ニ代ル可シ若シ同系{本宗又ハ外族}ノ祖父母ノ間ニ異議アル時ハ祖父ノ許諾ノミヲ以テ足レリトス 若シ両系ノ間ニ異議アルトキハ其異議アリタルヲ以テ許諾アリタリトス 第百五十一条 第百四十八条ニ定ムル年齢ニ至リタル子ハ婚姻ヲ為ス前ニ明確ナル恭敬書ヲ以テ父母ニ其誨諭《コンセイユ》ヲ請フ可シ若シ父母死去シ又ハ其意ヲ表スル能ハサル時ハ祖父母ニ誨諭ヲ請フ可シ (第百五十二ヨリ第百五十七ニ至ル六条ハ千八百四年三月十二日決定同月二十二日頒布) 第百五十二条 第百四十八条ニ定ムル年齢ニ至リシ後男ハ三十歳ニ至ル迄女ハ二十五歳ニ至ル迄ノ間ハ前条ニ記スル恭敬書ヲ出タシ婚姻ノ許諾ヲ得サル時ハ其後月ヲ逐フテ更ニ二次其書ヲ出タシ第三次ノ書ヲ出タセシ時ヨリ一月ノ後其許諾ヲ得サルニ拘ハラス婚姻ヲ執行スルヲ得 第百五十三条 三十歳ノ齢ニ至リシ後ハ一次恭敬書ヲ出タシ許諾ヲ得サルモ一月ノ後婚姻ヲ執行スルヲ得 第百五十四条 恭敬書ハ公証人二人又ハ公証人一人ト証人二人ヨリ第百五十一条ニ記シタル尊属親ノ一人又ハ数人ニ送達ス可シ○此事ニ付キ記ス可キ調書ニハ尊属親ノ荅ヲモ記入ス可シ 第百五十五条 若シ恭敬書ヲ出タス可キ尊属親ノ失踪シタル時ハ其失踪宜告ノ言渡書ヲ出タシ又其言渡書アラサル時ハ其吟味ヲ命シタル言渡書ヲ出タシ又其言渡書ヲモアラサル時ハ尊属親ノ最終ノ住所ノ地ノ治安裁判官ヨリ渡シタル公知証書《ノトリエテー》ヲ出タシテ婚姻ヲ執行スルヲ得○此公知証書ニハ治安裁判官ヨリ職権ヲ以テ呼出シタル証人四人ノ陳述ヲ記ス可シ 第百五十六条 父母祖父母及ヒ親族ノ許諾ヲ要スル場合ニ於テ其許諾アリシコトヲ婚姻証書ニ記載セズ〆二十五歳未満ノ男又ハ二十一歳未満ノ女ノ結タル婚姻ヲ執行セシメタル身分取扱役ハ関係人及ヒ其婚姻ヲ執行シタル地ノ始審裁判所検事ノ申立ニ因リ第百九十二条ニ記シタル罰金ノ言渡ヲ受ケ且ツ六月以下禁錮ノ刑ニ処セラル可シ 第百五十七条 恭敬書ノ必要ナル場合ニ於テ恭敬書ナクシテ婚姻ヲ執行セシメタル身分取扱役ハ同上ノ罰金ノ言渡ヲ受ケ且ツ一月以下禁錮ノ刑ニ処セラル可シ 第百五十八条 第百四十八条第百四十九条ニ記スル規則及ヒ父母ニ出タス可キ恭敬書ノ事ニ関スル第百五十一条第百五十二条第百五十三条第百五十四条第百五十五条ノ規則ハ法律ニ従ヒ認知シタル私生ノ子ニモ適用ス可シ 第百五十九条 認知セラレサル私生ノ子及ヒ認知セラレタル後父母ヲ失ヒ又ハ其父母意ヲ表スル能ハサル私生ノ子ハ満二十一歳ニ至ラサル前ハ別段ニ任セラルヘキ後見人ノ許諾ヲ得タル後ニ非サレハ婚姻ヲ為スヲ得ス 第百六十条 二十一歳未満ノ男女ハ父母祖父母アラサルカ又ハ其意ヲ表スル能ハサル時ハ親族会議ノ許諾ヲ得スシテ婚姻ヲ為スヲ得ス 第百六十一条 宗系ニ於テハ嫡出又ハ私生ノ尊属親ト卑属親トノ間及ヒ同上ノ系ニテハ姻属親ノ間互ニ婚姻ヲ為スヲ禁ス第百六十二条傍系ニ於テハ嫡出又ハ私生ノ兄弟姉妹ノ間及ヒ同等ノ姻属ノ間ニ婚姻ヲ為スヲ禁ス 第百六十三条 又伯叔父ト姪女トノ間及ヒ伯叔母ト姪男トノ間ニ婚姻ヲ為スヲ禁ス 第百六十四条 (千八百三十二年四月十六日改定)然レトモ重要ノ理由アルトキハ国王ハ第百六十二条ニ記スル姻属ノ兄弟姉妹ノ間ニ婚姻ヲ為スノ禁及ヒ第百六十三条ニ記スル伯叔父ト姪女トノ間及ヒ伯叔母ト姪男トノ間ニ婚姻ヲ為スノ禁ヲ除去スルヲ得 第二章 婚姻ノ執行ニ関スル法式 第百六十五条 婚姻ハ夫婦トナラントスル者ノ中一方ノ住所ノ身分取扱役ノ面前ニ於テ公ケニ之ヲ執行ス可シ 第百六十六条 身分証書ノ巻第六十三条ニ定ムル二次ノ公告ハ夫婦トナラントスル各自ノ住所アル地ノ邑庁ニ於テ之ヲ為ス可シ 第百六十七条 然レトモ現今ノ住所ニ住居ヲ定メテヨリ未タ六月ニ満タサル時ハ其最終{移住前ノ}ノ住所ノ邑庁ニ於テモ其公告ヲ為ス可シ 第百六十八条 婚姻ヲ為サントスル双方又ハ一方婚姻ノ事ニ付キ他人ノ権内ニ在ル時ハ其権ヲ有スル者ノ住所ノ邑庁ニ於テモ其公告ヲ為ス可シ 第百六十九条 重要ノ理由アル時ハ国王及ヒ此事ニ付キ国王ヨリ任スル官吏ハ第二次ノ公告ヲ免除スルヲ得 第百七十条 外国ニ於テ仏蘭西人ノ間及ヒ仏蘭西人ト外国人トノ間ニ結ヒタル婚姻ハ其国ニ於テ用フル法式ニ従テ執行シ且ツ予メ身分証書ノ巻第六十三条ニ記スル所ノ公告ヲ為シ仏蘭西人前章ニ記スル規則ニ違背セサル時ハ其効アリトス 第百七十一条 仏蘭西人ハ仏蘭西ノ領地内ニ帰来セシ時ヨリ三月内ニ外国ニ於テ結ヒタル婚姻ノ執行証書ヲ其住所ノ地ノ婚姻証書ノ公ケノ簿冊ニ登記ス可シ 第三章 婚姻ニ故障ヲ為ス事 第百七十二条 婚姻ノ執行ニ故障ヲ為スノ権ハ婚姻ヲ為サントスル一方ト婚姻ヲ約シタル者ニ属ス 第百七十三条 父、若シ父ナキ時ハ母又父母共ニナキトキハ祖父母ハ其子及ビ卑属親ノ満二十五歳以上ナル時ト雖トモ其婚姻ニ故障ヲ為スヲ得 第百七十四条 尊属親ナキ時ハ丁年ノ兄弟、姉妹、伯叔父母、従兄弟従姉妹ハ左ノ二箇ノ場合ニ非レバ婚姻ニ故障ヲ為スヲ得ズ 第一 第百六十条ニ於テ必要ナリト定メタル親族会議ノ許諾ヲ得ザル時 第二 婚姻ヲ結バントスル者ノ瘋癲ノ状況アルニ因リ故障ヲナス時但シ故障者ヨリ治産ノ禁ヲ受ケシムルノ訴ヲ為シ且ツ裁判所ヨリ定厶ル期限内ニ其訴ヲ裁判セシムルノ手続ヲ為スニ非サレバ決シテ故障ヲ受理セザルモノトス又裁判所ハ単純ニ故障除去ノ言渡ヲ為スヲ得 第百七十五条 前条ニ記載シタル二箇ノ場合ニ於テ後見人又ハ管財人ハ後見又ハ管財ヲ行フ間ハ親族会議ヲ召集シテ其允許ヲ得タル上ニ非ザレバ故障ヲ為スヲ得ズ 第百七十六条 故障ノ書ニハ故障者ノ為メニ故障ヲ為スノ権ヲ生ズル資格ト婚姻ヲ執行ス可キ地ニ住所ヲ選択セシコトヲ記載ス可シ又尊属親ヨリ故障ヲ為シタル時ノ外ハ其趣意ヲモ記載ス可シ 若シ此規則ニ背ク時ハ故障ハ其効ナク且ツ其書ニ手署シタル裁判所附属吏《オヒシエーミニステリエール》ハ定期間其職ヲ罷メラルヘシ 第百七十七条 始審裁判所ハ故障除去ノ訟求アルトキハ十日内ニ裁判ヲ為ス可シ 第百七十八条 控訴アリタル時ハ召喚《シタシヨン》ノ時ヨリ十日内ニ裁判ヲ為ス可シ 第百七十九条 故障ノ却下セラレタル時ハ故障者ハ尊属親ヲ除クノ外損害賠償ノ言渡ヲ受ク可シ 第四章 婚姻無効ノ訟求 第百八十条 夫婦双方又ハ一方ノ任意ノ承諾ナクシテ結ヒタル婚姻ハ其双方又ハ任意ノ承諾ヲナササリシ一方ニ非サレハ之ヲ攻撃スルヲ得ス 人ニ於ケル錯誤《ダンラペルソンヌ》アリシ時ハ夫婦中錯誤ニ陥リタル者ニ非サレハ婚姻ヲ攻撃スルヲ得ス 第百八十一条 前条ノ場合ト雖モ夫婦全ク其自由ヲ得又ハ其錯誤ヲ知リシ時ヨリ六月間絶ヘス同居セシ時ハ婚姻無効ノ訟求ハ之ヲ受理ス可カラサルモノトス 第百八十二条 父母尊属親又ハ親族会議ノ許諾必要ナル場合ニ於テ其許諾ヲ得スシテ結ヒタル婚姻ハ其許諾ヲ為ス可キ者又ハ夫婦中ニテ其許諾ヲ要スル者ニ非サレハ之ヲ攻撃スルヲ得ス 第百八十三条 婚姻ノ許諾ヲ為ス可キ者婚姻ヲ明許又ハ黙許シ又ハ婚姻アリタル事ヲ知リタル後一年間自己ヨリ訴ヲ為ササリシ時ハ夫婦又ハ婚姻許諾ノ要求ヲ受ケタル親族ヨリ婚姻ノ無効ヲ訴フルヲ得ス又夫婦ノ一方自ラ婚姻ノ承諾ヲ為スヲ得可キ齢ニ至リシ時ヨリ一年間訴ヲ為ササリシ時モ其無効ヲ訴フルヲ得ス 第百八十四条 第百四十四条第百四十七条第百六十一条第百六十二条第百六十三条ニ記シタル規則ニ背キテ結ヒタル婚姻ハ夫婦又ハ其無効ニ付キ利益ヲ有スル者又ハ検察官之ヲ攻撃スルヲ得 第百八十五条 然レトモ婚姻ヲ行フニ必要ナル年齢ニ至ラサル夫婦又ハ其一方ノ此年齢ニ至ラスシテ結ヒタル婚姻ハ第一夫婦ノ一方又ハ双方其年齢ニ至リシ時ヨリ六月ヲ経過セシ時、第二其年齢ニ至ラサル婦六月ヲ経過セサル前ニ懐妊シタル時ハ之ヲ攻撃スルヲ得ス 第百八十六条 前条ノ場合ニ於テ結ヒタル婚姻ヲ許諾シタル父母、尊属親及ヒ親族ニハ其無効ヲ訴フルヲ許サス 第百八十七条 第百八十四条ニ従ヒ総テ婚姻ノ無効ニ付キ利益ヲ有スル者ヨリ其無効ノ訴ヲ為スヲ得可キ総テノ場合ト雖トモ傍系ノ親又ハ初婚ノ子ハ現ニ生シタル利益アル時ニ非サレハ夫婦ノ生存中ハ其訴ヲ為スヲ得ス 第百八十八条 夫婦中ノ一方再婚ヲ結ヒタル為メニ害ヲ受ケタル他ノ一方ハ己ト既ニ婚姻セシ配偶者ノ生存中ト雖トモ其無効ヲ訴フルヲ得 第百八十九条 若シ新夫婦前婚ノ無効ヲ申立ツルトキハ其有効ナルヤ無効ナルヤハ予メ之ヲ裁判ス可シ 第百九十条 始審裁判所ノ検事ハ第百八十四条ヲ適用スヘキ総テノ場合ニ於テハ第百八十五条ニ記載スル変更ニ従ヒ夫婦ノ生存中婚姻ノ無効ヲ要ムルヲ得又要ム可ク且ツ夫婦ヲ離別セシムル言渡ヲ為サシムルヲ得又為サシム可シ 第百九十一条 公ケニ取結ハス且ツ主務ノ公吏ノ面前ニ於テ執行セサリシ婚姻ハ夫婦自身、父母、尊属親及ヒ其取消ニ付キ現ニ生シタル利益ヲ有スル者又ハ検察官ヨリ攻撃スルヲ得 第百九十二条 若シ婚姻ニ付キ法律ニ定ムル二次ノ公告ヲ予メ為ササリシカ又ハ法律ニ於テ允許シタル免除ヲ得サリシカ又ハ公告ト婚姻執行トノ間ニ法律ニ定ムル時間ヲ経過セサリシ時ハ始審裁判所ノ検事ハ公吏{其婚姻ヲ執行セシメシ}ニ対シテ三百「フラン」以下ノ罰金ヲ言渡サシメ且ツ婚姻ヲ執行セシ双方又ハ之ニ指令シタル者ニ対シテ其資産ニ准シタル罰金ヲ言渡サシム可シ 第百九十三条 前条ニ記載シタル刑ハ第百六十五条ニ記載シタル規則ノ違背アル時ハ仮令其違背ニ付キ婚姻無効ノ言渡ヲ為サシムルニ足ラスト思惟シタル時ト雖トモ前条ニ記載シタル者之ヲ受ク可シ 第百九十四条 何人ト雖トモ身分証書ノ簿冊ニ記シタル婚姻執行証書ヲ出ササル者ハ夫婦ノ名義及ヒ婚姻ノ民法上ノ効果ヲ要ムルヲ得ス但シ身分証書ノ巻第四十六条ニ記シタル場合ハ格別ナリトス 第百九十五条 相互ニ夫婦ナリト言做ス者其身分ヲ占有スル時ト雖トモ身分取扱役ノ面前ニ於テ為シタル婚姻執行ノ証書ヲ出タササルヲ得ス 第百九十六条 身分{夫婦タル}ノ占有アリテ且ツ身分取扱役ノ面前ニ於テ為シタル婚姻執行ノ証書ヲ出タス時ハ夫婦ヨリ為ス該証書無効ノ訴ハ受理ス可カラサルモノトス 第百九十七条 然レトモ第百九十四条及ヒ第百九十五条ノ場合ニ於テ公然夫婦ノ状況ニテ生活シ且ツ共ニ死去シタル二人ヨリ生シタル子アリテ身分ノ占有ヲ以テ其嫡出タルコトヲ証シ且ツ其出産証書ニモ之ニ反シタル記載ナキトキハ只婚姻執行ノ証書ナキノ一事ヲ以テ其嫡出ニ非サルコトヲ訟争スルヲ得ス 第百九十八条 刑事訴訟ニ因リ法律上婚姻ノ執行ヲ為シタル証拠ノ判然スル時ハ其裁判ノ言渡ヲ身分証書ノ簿冊ニ記載スルヲ以テ夫婦及ヒ其婚姻ニ因テ生シタル子ノ為メニ其執行ノ日ヨリ総テ民法上ノ効果ヲ婚姻ニ生セシム可シ 第百九十九条 夫婦双方又ハ其一方詐欺《フロード》{公吏ノ}ヲ発見セスシテ死去セシ時ハ其婚姻ヲ有効ト為スノ利益アル者及ヒ始審裁判所検事ヨリ刑事ノ訴ヲ為スヲ得 第二百条 公吏ノ詐欺ヲ発見シタル時ニ於テ其公吏既ニ死去セシ時ハ始審裁判所ノ検事ハ関係人ノ告訴ニ従ヒ其面前ニ於テ公吏ノ相続人ニ対シテ民事ノ訴ヲ起ス可シ 第二百一条 無効ノ言渡アリタル婚姻ト雖トモ善意ヲ以テ結ヒシ時ハ夫婦及ヒ其子ノ為メ民法上ノ効果ヲ生ス 第二百二条 夫婦ノ一方ニノミ善意アリシ時ハ其婚姻ハ其一方及ヒ婚姻ニ因テ生レタル子ノ為ニノミ民法上ノ効果ヲ生ス 第五章 婚姻ヨリ生スル義務 第二百三条 夫婦ハ婚姻ノ所為ノミニ因リ相共ニ其子ヲ給養教育スルノ義務アリトス 第二百四条 子ハ其父母ニ対シテ婚姻ノ為メニ「エタブリスマン」{「エタブリスマン」トハ商業工業其他代書人等ノ職業ノ如ク総テ一身ノ独立ヲ為シ生計ヲ営ムニ足ルノ途ヲ得ルコトヲ云フ}又ハ其他ノ物件ヲ得ルノ訴権ヲ有セス 第二百五条 子ハ父母及ヒ其他ノ尊属親要用トスル時ハ養料ヲ給スルノ義務アリトス 第二百六条 又婿【ムコ】及ヒ嫁【ヨメ】ハ同上ノ場合ニ於テ其舅姑ニ養料ヲ給スルノ義務アリ然レトモ第一姑再婚シタル時第二姻属ノ縁ヲ生シタル夫婦中ノ一方{婿又ハ嫁}及ヒ其配偶者トノ間ニ生シタル子共ニ死去シタル時ハ其義務消滅スヘシ 第二百七条 父母及ヒ尊属親ハ子ニ対シ舅姑ハ婿嫁ニ対シ同一ノ義務アリトス 第二百八条 養料ハ之ヲ要ムル者ノ要用ト之ヲ給スル者ノ資産トノ割合ヲ以テ之ヲ給ス可シ 第二百九条 若シ養料ヲ給スル者之ヲ給スル能ハサルニ至リ又之ヲ受クル者其全部又ハ一部ヲ受クルヲ要セサルニ至リタル時ハ其廃止又ハ減殺ヲ要ムルヲ得 第二百十条 養料ヲ給ス可キ者之ヲ給スル能ハサルコトヲ証スル時ハ裁判所ニ於テ其事由ヲ糾シタル後養料ヲ受クル者ヲ其住所ニ引取リ之ヲ給養ス可キコトヲ命スルヲ得 第二百十一条 又父母養料ヲ給ス可キ子ヲ其住所ニ引取リ給養センコトヲ述フル時ハ裁判所ニ於テハ養料ヲ給スルニ及ハサルコトヲ言渡ス可シ 第六章 夫婦ノ権利及ヒ義務 第二百十二条 夫婦ハ互ニ誠実ニシテ相扶持救護ス可シ 第二百十三条 夫ハ婦ヲ保護シ婦ハ夫ニ聴順ス可シ 第二百十四条 婦ハ必ス夫ト同居シ且ツ必ス夫ノ住居ニ適当ナリトスル地ニ随行ス可シ又夫ハ必ス婦ヲ引受ケ資力身分ニ応シ総テ生活ニ必要ナルモノヲ給ス可シ 第二百十五条 婦ハ公ケノ商人タル時又ハ財産ヲ共通{夫ト}セサル時又ハ財産分割ヲ為シタル時ト雖モ其夫ノ許諾ナク裁判所ニ出廷スルヲ得ス 第二百十六条 婦刑事又ハ違警事ノ訴ヲ受ケタル時ハ夫ノ許諾{出廷ノ}ヲ要セス 第二百十七条 婦ハ財産ヲ共通セス又財産ヲ分割シタル時ト雖トモ其夫ト所為ヲ共ニスルカ又ハ書ヲ以テ其夫ノ許諾ヲ得ルニ非サレハ物ヲ贈遺又ハ譲与シ又ハ書入質トナシ又ハ無償若クハ有償ニテ獲得スルヲ得ス 第二百十八条 若シ夫其婦ノ裁判所ニ出ツルヲ許諾セサル時ハ裁判官其允許ヲ与フルヲ得 第二百十九条 若シ夫其婦ノ所為ヲ行フヲ許諾セサル時ハ婦ハ直チニ其夫ヲ共同ノ住所アル郡ノ始審裁判所ニ召喚セシムルヲ得裁判所ハ夫ノ申立ヲ聴キタル上又ハ之ヲ会議局ニ呼出シ其出廷セサル上ニテ允許ヲ与ヘ或ハ拒ムヲ得 第二百二十条 婦公ケノ商人ナル時ハ其商業ニ関スル事件ニ付テハ其夫ノ許諾ヲ得スシテ義務ヲ約スルヲ得此場合ニ於テ夫婦財産ヲ共通スル時ハ夫ニモ其義務ヲ負ハシム可シ 婦其夫ノ商売ノ品物ヲ零売【コウリ】スルニ止マル時ハ之ヲ公ケノ商人ト看做サス然レトモ婦別ニ商業ヲ営ム時ハ格別ナリトス 第二百二十一条 夫施体又ハ加辱ノ刑ノ言渡ヲ受ケシ時ハ其言渡ハ缺席ノ裁判言渡ニ過キサル時ト雖モ婦ハ其{夫ノ}刑期間ハ丁年ナリト雖トモ裁判官ノ允許ヲ得タル後ニ非サレハ裁判所ニ出廷シ又ハ契約スルヲ得ス但シ裁判官ハ此場合ニ於テハ夫ノ申立ヲ聴キ又ハ之ヲ呼出タスコトナク允許ヲ与フルヲ得 第二百二十二条 夫若シ被禁治産者又ハ失踪者ナル時ハ裁判官其事由ヲ糾シタル上其婦ニ裁判所ニ出テ又ハ契約ヲ為スコトヲ允許スルヲ得 第二百二十三条 総テ一般ノ允許ハ婚姻財産《コントラドマリヤージュ》契約ニ因テ約{夫ヨリ婦ニ}シタル時ト雖トモ婦ノ財産ノ管理ニ関シテノミ効アリトス 第二百二十四条 夫幼年ナル時ハ其婦裁判所ニ出テ及ヒ契約ヲ為スニ付キ裁判官ノ允許ヲ得ルヲ必要ナリトス 第二百二十五条 許諾{夫ノ}ナキニ原由スル無効ハ婦、夫又ハ其相続人ニ非サレハ之ヲ申立ツルヲ得ス 第二百二十六条 婦ハ夫ノ許諾ヲ得スシテ遺嘱ヲ為スヲ得 第七章 婚姻ノ解除 第二百二十七条 婚姻ハ左ノ場合ニ於テ解除ス 第一 夫婦ノ一人ノ死去 第二 法律上言渡サレタル離婚 第三 夫婦ノ一人准死ヲ生スル刑ノ言渡ヲ受ケ其完結《デヒニチーフ》シタル事 第八章 再婚 第二百二十八条 婦ハ前婚ノ解除ヨリ満十月ノ後ニ非サレハ再婚ヲ為スヲ得ス 第六巻 離婚(千八百三年三月二十一日決定同月三十一日頒布千八百十六年五月八日廃止) 第一章 離婚ノ原由 第二百二十九条 夫ハ其婦ノ奸通ヲ原由ト為シ離婚ヲ訟求スルヲ得 第二百三十条 婦ハ其夫共同ノ家ニ妾ヲ畜置キタル時其奸通ヲ原由ト為シ離婚ヲ要ムルヲ得 第二百三十一条 夫婦ハ其一方ノ他ノ一方ニ対スル過慾、苛虐、又ハ重キ侮辱ヲ原由ト為シ互ニ離婚ヲ要ムルヲ得 第二百三十二条 夫婦中ノ一方加辱ノ刑ノ言渡ヲ受ケタル時ハ其言渡ハ他ノ一方ノ為メニ離婚ノ原由トナル可シ 第二百三十三条 法律ニ定ムル方法ヲ以テ其条件ニ従ヒ法律ニ定ムル視験【タメシ】ノ後ニ述ヘタル夫婦相互ノ固執ノ承諾ハ其共同ノ生活ニ堪ヘサルコトト離婚ニ付キ双方ノ間ニ確的ノ原由アルコトトノ充分ナル証トナル可シ 第二章 定マリタル原由ニ付テノ離婚 第一款 定マリタル原由ニ付テノ離婚ノ法式 第二百三十四条 定マリタル原由ニ付テノ離婚ノ訟求ハ訟求ヲ為スニ至ラシメタル事実又ハ罪科ノ性質如何ヲ問ハス夫婦ノ住所アル郡ノ裁判所{始審裁判所}ニ為ス可シ 第二百三十五条 原告配偶者ノ主張スル事実中ノ二三ニ付キ検察官ヨリ刑事ノ訴ヲ為スニ至ル時ハ重罪裁判所ノ判決ノ後迄離婚ノ訟求ヲ停止ス可シ判決ノ後ニハ原告配偶者ニ対シテ如何ナル不可受理ノ申立又如何ナル予判ス可キ排訴ヲモ其判決ヨリ演繹スルコトヲ{被告人ニ}許サズシテ離婚ノ訴ヲ継続スルコトヲ得 第二百三十六条 離婚ノ訟求書ニハ其事実ヲ詳記シ其憑拠ト為ス可キ証書類アル時ハ之ト共ニ原告配偶者躬ラ裁判所長又ハ代リテ職務ヲ執ル可キ裁判官ニ出ス可シ若シ原告人病ニ罹リテ之ヲ出ス能ハザル時ハ裁判官ハ本人ノ請願ト内科又ハ外科医二人若クハ下等医二人ノ証状トニ従ヒ原告人ノ住所ニ就キ其訟求書ヲ受ク可シ 第二百三十七条 裁判官ハ原告人ノ申立ヲ聴キ且ツ相当ト思惟シタル注意ヲ為シタル後訟求書及ビ証書類ニ手署代用ノ横線ヲ画シ是等ノ書類ヲ全ク其手ニ請取リシ調書ヲ作リ裁判官及ビ原告人之レニ手署ス可シ若シ原告人手署スルヲ知ラザルカ又ハ能ハザル時ハ其旨ヲ附記ス可シ 第二百三十八条 裁判官ハ其指定ス可キ日時ニ於テ訴訟人双方躬ラ其面前ニ出席ス可キノ命令ト之カ為メ被告人ニ其命令書ノ謄本ヲ送達ス可キノ言渡トヲ調書ノ末尾ニ記ス可シ 第二百三十九条 裁判官ハ其指定シタル日ニ於テ双方出席スル時ハ双方ニ又原告人ノミ出席スル時ハ原告人ニ和解ヲ為サシムルニ適当ト思惟シタル説諭ヲ為シ若シ和解ニ至ラサリシ時ハ其調書ヲ記シ且ツ訟求書及ヒ証書類ヲ検察官ニ送達シ之ヲ裁判所ニ出ス可キ事ヲ命ス可シ 第二百四十条 此時ヨリ三日内ニ裁判所ハ裁判所長又ハ代リテ職務ヲ執リタル裁判官ノ報告ト検察官ノ意見トニ従ヒ召喚ノ允許ヲ与ヒ又ハ之ヲ停止ス可シ停止ノ期限ハ二十日ヲ経過スルヲ得ス 第二百四十一条 原告人ハ裁判所ノ允許ニ因リ通常ノ法式ニ従ヒ法律ニ定メタル期限内ニ被告人ニ躬ラ秘審訟廷ニ出席ス可キ召喚状ヲ送達ス可シ召喚状ノ冒頭ニハ離婚ノ訟求書及ヒ憑拠ト為ス可キ証書類ノ写ヲ記入ス可シ 第二百四十二条 期限ノ終リニ至リ被告人ノ出席スルト否トヲ問ハス原告人ハ躬ラ訟求ノ趣意ヲ述ヘ又ハ補佐人ヲ設クルヲ要用ト思惟スル時ハ補佐人ニ其趣意ヲ述ヘシム可シ又原告人ハ訟求ノ憑拠トナル可キ証書類ヲ出シ且ツ吟味ヲ受ケシメント欲スル証人ヲ指命ス可シ 第二百四十三条 被告人自ラ出席スルカ又ハ代理人ヲ出席セシメシ時ハ訟求ノ趣意、原告人ヨリ出タシタル証書類及ヒ原告人ノ指名シタル証人ノ事ニ付キ自ラ注意ノ件々ヲ述ヘ又ハ代理人ニ之ヲ述ヘシムルヲ得又被告人ハ自巳ノ方ニテ吟味ヲ受ケシメント欲スル証人ヲ指名ス可シ原告人モ此証人ノ事ニ付キ注意ノ件々ヲ述フルヲ得 第二百四十四条 双方ノ出席、申立、注意及ヒ原告又ハ被告ノ為シタル自認ハ調書ヲ作リテ之ヲ記シ之ヲ双方ニ読聞カセタル後双方ニ手署セシム可シ又双方ノ手署セシ事又ハ手署スルヲ得サルカ又ハ欲セサルノ陳述ヲ特ニ附記ス可シ 第二百四十五条 裁判所ハ双方ニ公審訟廷ニ出席ス可キコトヲ命シ其出席ス可キ日、時ヲ定メ且ツ検察官ニ訴訟手続書{秘審訟廷ニ於ケル}ヲ送達ス可キコトヲ命シ専任裁判官ヲ定ム可シ被告人出席セサリシ場合ニ於テハ原告人ハ裁判所ノ命令書ニ定ムル期限内ニ其命令書ヲ被告人ニ送達セシム可シ 第二百四十六条 予定シタル日時ニ於テ専任裁判官ノ報告ニ従ヒ且ツ検察官ノ意見ヲ聴キタル上裁判所ハ不可受理ノ申立アル時ハ先ツ之ヲ裁判シ其申立ヲ至当ト思惟シタル時ハ離婚ノ訟求ヲ却下シ之ニ反スル場合又ハ不可受理ノ申立ナキ時ハ離婚ノ訟求ヲ許可ス可シ 第二百四十七条 裁判所ハ離婚ノ訟求ヲ許可シタル後直チニ専任裁判官ノ報告ニ従ヒ且ツ検察官ノ意見ヲ聴キタル上本案ノ裁判ヲ為ス可シ但シ其訟求ハ裁判ヲ為シ得可キ状況ノモノナルトキハ之ヲ判決シ然ラサル時ハ原告人ニ其主張スル事実ノ証拠ヲ出タシ被告人ニ其反証ヲ出タスノ許可ヲ為ス可シ 第二百四十八条 訴訟中何時ニテモ双方ノ者ハ裁判官ノ報告ノ後検察官ノ意見陳述前ハ先ツ不可受理ノ申立ニ付キ、次ニ本案ニ付キ相互ニ弁論ヲ為シ又ハ之ヲ為サシムルヲ得但シ如何ナル場合ニ於テモ原告人自ラ出席セサル時ハ其補佐人ヲ出タスヲ許サス 第二百四十九条 証人吟味ヲ命スル言渡ノ後裁判所ノ書記ハ直チニ調書中双方ニ吟味ヲ受ケシメント欲スル証人指名ノ事ヲ記シタル部分ヲ読聞カス可シ○裁判所長ハ双方ニ現時尚ホ他ノ証人ヲ指名スルコトヲ得可シト雖トモ而後ハ之ヲ許ササル旨ヲ告ク可シ 第二百五十条 其後双方ハ互ニ其拒マント欲スル証人ニ対シテ故障ヲ為ス可シ裁判所ハ検察官ノ意見ヲ聴キタル上其故障ニ付キ判決ヲ為ス可シ 第二百五十一条 双方ノ者ハ子及ヒ卑属親ヲ除クノ外他ノ親族ニ付テハ等親ノ故ヲ以テ故障ヲ為スヲ得ス夫婦ノ僕婢ニ付テハ身分ノ故ヲ以テ亦故障ヲ為スヲ得ス然レトモ裁判所ニ於テハ其等親及ヒ僕婢ノ陳述ニ付キ斟酌スル所アル可シ 第二百五十二条 人証《プルーブテスチモニアル》ヲ許ス言渡書ニハ吟味ヲ為サントスル証人ヲ列記シ双方証人ヲ出席セシム可キ日時ヲ定ム可シ 第二百五十三条 裁判所ハ検察官、原被告、其補佐人又ハ故旧ノ面前ニテ秘審訟廷ニ於テ証人ノ陳述ヲ聴ク可シ補佐人又ハ故旧ノ員数ハ一方ニ付三人ヲ過ク可カラス 第二百五十四条 双方ハ相当ト思惟スル注意及ヒ訊問ヲ証人ニ為シ又ハ補佐人ニ之ヲ為サシムルヲ得但シ証人ノ陳述中ニ之ヲ為スヲ得ス 第二百五十五条 証人ノ陳述及ヒ原被告ノ為ス注意訊問ハ之ヲ書面ニ記ス可シ証人吟味ノ調書ハ双方及ヒ証人ニ読聞カセタル後之ニ手署セシム可シ但シ其手署セシ事又ハ手署スル能ハサルカ若シクハ欲セサルノ陳述ヲ調書ニ附記ス可シ 第二百五十六条 双方ノ証人吟味終結ノ後又ハ被告人ヨリ証人ヲ出タササル時ハ原告人ノ証人吟味終結ノ後裁判所ハ双方ニ公審訟廷ニ出席ス可キコトヲ言渡シ其日時ヲ定メ且ツ検察官ニ秘審訴訟ノ書ヲ送達ス可キコトヲ命シ専任裁判官ヲ定ム可シ此命令書ハ原告人ノ請願ニ由テ其書ニ定メタル期限内ニ被告人ニ送達ス可シ 第二百五十七条 完結裁判ヲ為スニ付定メタル日ニ於テ専任裁判官ヨリ報告ヲ為シタル上双方ハ其訟求ニ有益ト思惟スル注意ヲ為シ又ハ補佐人ニ之ヲ為サシムルヲ得其後検察官ハ其意見ヲ陳述ス可シ 第二百五十八条 完結裁判ハ公ケニ言渡ス可シ完結裁判ニ因テ原告人離婚ヲ許ス言渡ヲ得タル時ハ身分取扱役ノ面前ニ至リ離婚ノ言渡ヲ為サシムルヲ得 第二百五十九条 過慾苛虐又ハ重キ侮辱ニ基キ離婚ノ訟求ヲ為シ其訟求ノ確証アル時ト雖トモ裁判官ハ直チニ離婚ヲ許ササルヲ得此場合ニ於テハ裁判官ハ判決ヲ為ス前ニ婦ニ夫ト別居シ婦相当ト思惟スル時ハ夫ヲ容待スルニ及ハサルコトヲ允許シ且ツ婦自己ノ需要ニ足ル可キ入額ヲ有セサル時ハ夫ヨリ其資力ニ応シタル養料ヲ婦ニ給与ス可キコトヲ言渡ス可シ 第二百六十条 視験一年ノ後双方猶ホ協和セサル時ハ原告配偶者ハ法律ニ定ムル期限内ニ其一方ヲ裁判所ニ出廷セシメ離婚ヲ允許ス可キ完結裁判ヲ為サシムルヲ得 第二百六十一条 夫婦ノ一方加辱ノ刑ニ処セラレタルヲ理由トシ離婚ヲ訴フル時ハ重罪裁判所ノ刑ノ言渡ハ法律上如何ナル方法ニ因ルモ決シテ改更ス可カラサルモノタルコトヲ記シタル其裁判所ノ証状ト其刑ノ言渡書ノ整正ナル謄本トヲ始審裁判所ニ出タスノ法式ヲ要スルノミトス 第二百六十二条 離婚ノ事ニ付キ始審裁判所ニ於テ為シタル訴訟允許ノ言渡又ハ完結ノ言渡ニ付キ控訴アル場合ニ於テハ控訴院ハ急速ヲ要スル事件トシテ之ヲ吟味シ且ツ判決スヘシ 第二百六十三条 控訴ハ対審裁判又ハ缺席裁判ノ言渡書ヲ送達シタル日ヨリ三月内ニ為シタル時ニ非サレハ受理ス可カラス終審裁判ニ対スル大審院ヘノ上告期限モ其言渡書ヲ送達シタル日ヨリ三月ナリトス但シ上告中ハ裁判執行ヲ停止スヘシ 第二百六十四条 離婚ノ允許ヲ得タル配偶者ノ一方ハ之ヲ允許スル終審ノ裁判言渡又ハ既判効ヲ生シタル裁判言渡ニ因リ二月ノ期限内ニ身分取扱役ノ面前ニ出席シ他ノ一方ヲ呼出シ又ハ其出廷セサル上ニテ離婚ヲ言渡サシム可シ 第二百六十五条 此二月ハ始審ノ言渡ニ付テハ控訴期限ノ尽キタル時ヨリ控訴ノ缺席裁判ニ付テハ故障期限ノ尽キタル時ヨリ終審ノ対審裁判ニ付テハ上告期限ノ尽キタル時ヨリ之ヲ起算ス 第二百六十六条 原告配偶者其一方ヲ身分取扱役ノ面前ニ呼出スコトナク前ニ定ムル二月ノ期限ヲ経過セシ時ハ既ニ得タル裁判ノ利益ヲ失ヒ新タナル事由アルニ非サレハ更ニ離婚ヲ訴フルヲ得ス但シ新タナル事由アリテ更ニ離婚ヲ訴フル時ハ以前ノ事由ヲ利用スルコトヲ得第二款定リタル原由ニ付テノ離婚ノ訟求ヨリ生スル仮処分 第二百六十七条 子ヲ仮リニ管理スルコトハ離婚ノ原告又ハ被告タル夫ニ属ス但シ子ノ至重ノ利益ノ為メニ母、親族又ハ検察官ノ要求ニ因リ裁判所ニ於テ別段ニ管理ヲ命シタル時ハ格別ナリトス 第二百六十八条 離婚ノ原告又ハ被告タル婦ハ訴訟中夫ノ住所ヲ去リ其ノ資力ニ応シタル養料ヲ要ムルヲ得裁判所ハ婦ノ住居ス可キ家屋ヲ指定シ且ツ夫ヨリ養料ヲ給ス可キ時ハ其高ヲ定ム可シ 第二百六十九条 婦ハ裁判所ヨリ指定シタル家屋ニ住居スルコトヲ証明ス可キ要求ヲ受ケシ時ハ之ヲ証明ス可シ若シ此証明ヲ為サザル時ハ夫ハ養料ヲ給スルコトヲ拒ミ且ツ婦離婚ノ原告人タル時ハ其訴訟ヲ継続スルコトヲ許ササルノ言渡ヲ為サシムルコトヲ得 第二百七十条 財産ヲ共通スル婦ハ離婚ノ原告タルト被告タルトヲ問ハス第二百三十八条ニ記スル言渡ノ日ヨリ後訴訟中ハ何時タリトモ其権利保護ノ為メ共通ノ動産ニ封印ヲ為スコトヲ要求スルヲ得但シ其封印ハ動産ヲ評価シテ目録ヲ作リ且ツ夫目録ニ記シタル物件ヲ婦ニ引渡シ又ハ裁判上ノ看守人トシテ其価額ヲ償フノ責務ヲ担当スルニ非サレハ之ヲ除去ス可カラス 第二百七十一条 第二百三十八条ニ記スル言渡ノ日以後ニ共通財産ノ負担ヲ以テ夫ノ約シタル義務及ヒ夫ノ為シタル共通不動産ノ譲与ハ婦ノ権利ヲ害センカ為メニ為シ又約シタルノ証アル時ハ無効ノ言渡ヲ受ク可シ 第三款 定マリタル原由ニ付テノ離婚ノ訟求ニ対スル不可受理ノ申立 第二百七十二条 離婚ノ訴ハ此訴ヲ為スノ允許ヲ得ルニ至ラシム可キ事実アリタル後又ハ離婚ノ訟求アリタル後夫婦双方ノ和解ニ因リ消滅ス可シ 第二百七十三条 此二箇ノ場合ニ於テ原告人ハ訴訟不可受理ノ言渡ヲ受ク可シ然レトモ原告人ハ和解後ニ生シタル事由アル時ハ更ニ訴訟ヲ為シ且ツ以前ノ事由ヲ用井テ新タナル訟求ノ幇助ト為スヲ得 第二百七十四条 若シ原告人和解ヲ為シタルコトナキ旨ヲ申述スル時ハ被告人ハ本章第一款ニ記シタル法式ニ従ヒ証書類又ハ証人ヲ以テ和解ヲ為シタルコトヲ証明ス可シ 第三章 相互ノ承諾ニテ為ス離婚 第二百七十五条 夫婦相互ノ承諾{相互ノ承諾ニテ為ス離婚}ハ夫二十五才以下婦二十一才以下ナル時ハ決シテ之ヲ許サス 第二百七十六条 相互ノ承諾ハ婚姻ヲ為シテヨリ二年ノ後ニ非サレハ之ヲ許サス 第二百七十七条 相互ノ承諾ハ婚姻ヲ為シテヨリ二十五年ノ後又ハ婦四十五才ノ年齢ニ至リシ時モ之ヲ許サス 第二百七十八条 何レノ場合ニ於テモ夫婦相互ノ承諾ハ婚姻ノ巻第百五十条ニ記シタル規則ニ従テ其父母又ハ其他生存スル尊属親ノ許諾アルニ非サレハ完全ナラサルモノトス 第二百七十九条 相互ノ承諾ヲ以テ離婚ヲ為スニ決シタル夫婦ハ予メ其総テノ動産不動産ノ目録ヲ作リ其評価ヲ為シテ双方ノ権利ヲ規定ス可シ但シ其規定ニ付キ互ニ協議シテ授受スル所アルハ双方ノ自由ナリトス 第二百八十条 夫婦ハ亦書面ヲ以テ左ノ三件ニ付キ約束ヲ証明ス可シ 第一 婚姻ニ因テ生レタル子ヲ紛議中又ハ離婚ノ言渡後何人ニ委託ス可キヤノ事 第二 訴訟中婦ハ何レノ家ニ到リ住居ス可キヤノ事 第三 婦自己ノ生計ニ充分ナル入額ヲ有セサル時ハ訴訟中夫ヨリ幾何ノ金額ヲ給ス可キヤノ事 第二百八十一条 夫婦ハ相共ニ自ラ郡ノ民事裁判所長又ハ代テ職務ヲ行フ裁判官ノ面前ニ到リ其伴行シタル公証人二人ノ立会ニテ其意ヲ陳述ス可シ 第二百八十二条 裁判官ハ公証人二人ノ面前ニ於テ夫婦双方又其各人ニ其相当ト思惟シタル説諭ヲ加ヘ且ツ離婚ノ効果ヲ規定スル本巻ノ第四章ヲ読ミ聞カセ離婚ニ由デ生スル総テノ結果ヲ説明ス可シ 第二百八十三条 夫婦双方其決意{離婚ノ}ヲ固執スル時ハ裁判官ハ双方離婚ヲ要求シ相互ニ之ヲ承諾スル旨ヲ記シタル証書ヲ渡ス可シ又双方ノ者ハ第二百七十九条第二百八十条ニ記シタル証書ノ外ニ左ノ証書ヲ出シ直チニ之ヲ公証人ニ附託ス可シ 第一 夫婦ノ出産証書及ヒ婚姻証書 第二 夫婦ノ間ニ生レタル子ノ出産証書及ヒ死去証書 第三 父母又ハ生存スル尊属親其識知スル事由ニ付キ誰某ト婚姻シタル男又ハ女或ハ孫男又ハ孫女ノ離婚ヲ訴フルコトヲ許諾セシ旨ヲ記シタル公正ノ陳述書、○夫婦ノ父母祖父母ハ其死去ヲ証スル証書ヲ出ス迄ハ之ヲ生存者ト推測ス可シ 第二百八十四条 公証人二人ハ前条ニ記シ且ツ執行シタル諸件ヲ詳カニ調書ニ記シ其中ノ年長者其正本ト之ニ附属ス可キ証書類トヲ看守ス可シ但シ其調書ニハ婦其夫ト約定シタル家ニ二十四時間内ニ移転シ離婚ノ言渡迄之ニ住居ス可キコトヲ命シタル旨ヲモ附記ス可シ 第二百八十五条 夫婦離婚ヲ固執スル陳述ハ同一ノ法式ニ従テ其時ヨリ第四月第七月第十月ノ前半月内ニ更ニ之ヲ為シ毎次双方ヨリ公証書ヲ以テ其父母又ハ生存スル尊属親ハ最初ノ決定ヲ固執スル旨ヲ証ス可シ但シ其他ノ証書ハ更ニ出タスニ及ハス 第二百八十六条 最初ノ陳述ヲ為セシ日ヨリ満一年ニ至リシ後十五日内ニ夫婦各郡内ノ望族ニシテ五十才以上ノ故旧二人ヲ伴行シテ裁判所長又ハ代リテ職務ヲ執ル裁判官ノ面前ニ共ニ自ラ出席シ相互ノ承諾ヲ記シタル調書四通ト附属書類トノ整正ノ謄本ヲ出タシ双方互ニ其一方ト四人ノ望族トノ面前ニ於テ各別ニ離婚ノ允許ヲ裁判官ニ要ム可シ 第二百八十七条 裁判官及ヒ立会人ハ双方ニ説諭ヲ為シタル後猶ホ固執スル時ハ其要求及ヒ其証拠トナル可キ書類呈出ノ証書ヲ双方ニ渡ス可シ且ツ裁判所書記ハ調書ヲ記シ夫婦四人ノ立会人裁判官及ヒ書記之ニ手署ス可シ若シ夫婦手署スルヲ知ラサルカ又ハ能ハサル旨ヲ陳述スル時ハ其旨ヲ附記ス可シ 第二百八十八条 裁判官ハ三日内ニ裁判所ノ会議局ニ於テ検察官ノ意見書ニ従ヒ吟味ヲ為ス可キノ言渡ヲ調書ノ末尾ニ記ス可シ但シ此事ニ付キ書記ヨリ検察官ニ証書類ヲ送達ス可シ 第二百八十九条 若シ検察官証書類中ニ双方最初ノ陳述ヲ為シタル時ハ夫二十五才婦二十一才ノ齢ニ至リタリシ事、当時ハ婚姻ヲ為シタル時ヨリ二年ヲ過キタリシコト、二十年以上ニ至ラサリシ事、婦四十五才以下タリシコト又本章ニ記スル規則法式ニ従ヒ殊ニ父母又ハ父母ノ死去セシトキハ生存スル他ノ尊属親ノ許諾ニ因リ一年内ニ四次相互ノ承諾ヲ述ヘシコトヲ認視セシ時ハ法律ニ於テ允許スト云フ語ヲ以テ其意見ヲ加ヘ之ニ反スル場合ニ於テハ法律ニ於テ禁止スト云フ語ヲ以テ其意見ヲ加フ可シ 第二百九十条 裁判所ハ至急吟味{更ニ会議局ニ於テ為ス}ヲ為スニ付キ前条ニ記シタル審査ノ外他ノ審査ヲ為スヲ得ス裁判所ニ於テ吟味ニ因テ夫婦双方法律ニ定ムル条件ヲ具備シ且ツ法式ヲ尽シタリト思惟スル時ハ離婚ヲ允許シ双方ヲ身分取扱役ノ面前ニ送リテ離婚ヲ言渡サシメ之ニ反スル場合ニ於テハ裁判所ニ於テ離婚ヲ允許セサル旨ヲ言渡シ其裁判ノ趣旨ヲ説明ス可シ 第二百九十一条 離婚ヲ允許セサル旨ヲ言渡シタル裁判ノ控訴ハ始審ノ裁判言渡ノ日ヨリ早クモ十日後遅クモ二十日前ニ双方各別ニ訴状ヲ出スニ非サレハ受理ス可カラス 第二百九十二条 控訴状ハ相互ニ配偶者ノ一方及ヒ始審裁判所ノ検事ニ送達ス可シ 第二百九十三条 始審裁判所ノ検事ハ控訴状ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ十日内ニ裁判言渡書ノ謄本及ヒ其裁判ヲ為スニ取用シタル証書類ヲ控訴院検事長ニ送達ス可シ控訴院検事長ハ証書類ヲ領受シタル時ヨリ十日内ニ書面ヲ以テ其意見ヲ陳述シ控訴院長又ハ代リテ職務ヲ執ル裁判官ハ控訴院ノ会議局ニ於テ報告ヲ為シ検事長ノ意見書ヲ出シタル時ヨリ十日内ニ完結裁判ヲ為ス可シ 第二百九十四条 双方ハ離婚ヲ允許スル判決ニ因リ其日附ヨリ二十日内ニ共ニ自ラ身分取扱役ノ面前ニ出テ離婚ヲ言渡サシム可シ若シ此期ヲ過ス時ハ裁判言渡ハ其効ナシトス 第四章 離婚ノ効果 第二百九十五条 何ノ原由ニ因リタルヲ問ハス離婚ヲ為シタル夫婦ハ復タ互ニ婚姻ヲ為スヲ得ス 第二百九十六条 定マリタル原由ニ因リ婚姻ヲ言渡シタル場合ニ於テハ離婚セラレタル婦ハ其言渡ノ時ヨリ十月ノ後ニ非サレハ再婚ヲ為スヲ得ス 第二百九十七条 相互ノ承諾ニ因リ離婚ヲ為シタル場合ニ於テハ夫婦各其言渡ノ時ヨリ三年ノ後ニ非サレハ再婚ヲ為スヲ得ス 第二百九十八条 奸通ノ為メニ裁判所ニ於テ離婚ヲ言渡シタル場合ニ於テハ夫婦中奸罪ヲ犯シタル者ハ決シテ其従犯者{奸夫又ハ奸婦}ト婚姻ヲ為スコトヲ得ス且ツ奸通ヲ為シタル婦ハ検察官ノ申立ニ因リ離婚ノ言渡ト共ニ三月以上二年以下ノ定時間懲役ノ刑ニ処セラレ中央懲戒獄《メーゾンドコレクション》ニ監囚セラル可シ 第二百九十九条 相互ノ承諾ノ場合ニ於ケルノ外離婚ノ原由如何ヲ問ハス夫婦中離婚ノ言渡ヲ受ケタル者ハ婚姻財産契約ニ因リ又ハ結婚後ニ配偶者ヨリ得タル総テノ利益ヲ失フ可シ 第三百条 夫婦中離婚ヲ為シタル者{原告人}ハ仮令双方互ニ利益ヲ約シ他ノ一方{被告}ニ之ヲ与ヘサリシ時ト雖トモ其一方ヨリ得タル利益ハ之ヲ保有ス可シ 第三百一条 夫婦互ニ如何ナル利益ヲモ与ヘサリシ時又ハ与ヘタル利益ノミニテ離婚ヲ為シタル者ノ生計ヲ保ツニ足ラサル時ハ裁判所ハ他ノ一方ヨリ其財産ノ入額三分ノ一以下ノ養料ヲ給ス可キコトヲ言渡ス可シ其養料ハ要セサルニ至リシ場合ニ於テハ之ヲ廃スルヲ得 第三百二条 子ハ離婚ヲ為シタル者ニ託セラル可シ但シ子ノ至重ノ利益ノ為メ親族又ハ検察官ノ要メニ因リ裁判所ヨリ子ヲ皆ナ又ハ其中ノ幾人ヲ他ノ一方又ハ他人ニ託ス可キコトヲ言渡シタルトキハ格別ナリトス 第三百三条 子ヲ託セラレタル者ノ何人ナルヲ問ハス父母ハ互ニ其子ノ給養教育ヲ監督スルノ権ヲ保有シ且ツ其資力ニ応シテ其補助ヲ為ス可シ 第三百四条 裁判所ヨリ允許シタル離婚ニ因テ婚姻ヲ解除セシ時ト雖トモ此婚姻ニ因テ生レタル子ハ法律又ハ父母ノ婚姻財産契約ニ依テ子ノ為メニ定メタル如何ナル利益ヲモ失フコトナシ但シ子ノ権利ハ離婚{父母ノ}ヲ為ササリシ場合ニ於テ生スル時ト同一ノ事状アリテ同一ノ方法ニ従フニ非サレハ生セサルモノトス 第三百五条 相互ノ承諾ニ因テ離婚ヲ為セシ場合ニ於テハ夫婦各自ノ財産ノ一半ノ所有権ハ最初ノ陳述ノ日ヨリ当然其婚姻ニ因テ生レタル子ニ属ス可シ然レトモ父母ハ其子ノ丁年ニ至ル迄ノ間ハ其資力、身分ニ応シテ之ヲ給養教育スルノ責務ヲ以テ其一半ノ財産ノ入額ヲ所得ス可シ但シ此規則ト父母ノ婚姻財産契約ニ因テ其子ニ与フルヲ得可キ他ノ利益ト抵触スルコトナカル可シ 第五章 夫婦別居{本章ハ千八百十六年五月八日ノ法ニ因テ廃止セサルモノナリ} 第三百六条 定マリタル原由ノ為メ離婚ヲ訟求スルヲ得可キ場合ニ於テ夫婦ハ別居ノ訟求ヲ為スコト自由ナリトス 第三百七条 夫婦別居ノ訟求ハ他ノ民事訴訟ト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ為シ之ヲ吟味シ又之ヲ裁判ス可シ但シ夫婦別居ノ訟求ハ相互ノ承諾ヲ以テ為スコトヲ得ス 第三百八条 奸通ノ為メニ離婚ノ言渡ヲ受ケタル婦ハ検察官ノ申立ニ因リ其言渡ト共ニ三月以上二年以下ノ定時間懲役ノ刑ニ処セラレ中央懲戒獄ニ監囚セラル可シ 第三百九条 夫ハ婦ヲ引取ルコトヲ承諾シテ其処刑ノ効果ヲ止メシムルノ権アリトス 第三百十条 婦ノ奸通ヲ除キ其他ノ原由ノ為メ夫婦別居ノ言渡アリタル時ハ其言渡ヨリ三年ノ後最初被告人タリシ者ヨリ裁判所ニ離婚ヲ訴フルコトヲ得裁判所ハ最初ノ原告人ヲ呼出シ又ハ其出廷セサル上ニテ原告人直チニ夫婦別居ヲ止メシムル承諾ヲ為ササル時ハ離婚ノ訟求ヲ允許ス可シ(千八百十六年五月八日廃止) 第三百十一条 夫婦別居ハ必ス財産分割ヲ提起ス可シ 第七巻 父タル事及ヒ子タル事(千八百三年三月二十三日決定四月二日領布) 第一章 嫡出ノ子即チ婚姻中ニ生レタル子ノ子タル事 第三百十二条 婚姻中ニ懐胎セシ子ハ夫ヲ以テ其父トス 然レトモ夫ハ子ノ出産前三百日ヨリ百八十日ニ至ルノ時間離隔又ハ変災ノ為メ実際婦ト同居スル能ハサリシコトヲ証スル時ハ子ヲ認知セサルコトヲ得 第三百十三条 夫ハ自然ノ無勢力ヲ主張シテ子ヲ認知セサルコトヲ得ス又夫ニ子ノ出産ヲ隠蔽セサルニ於テハ奸通ヲ原由トシテ子ヲ認知セサルコトヲ得ス但シ出産ヲ隠蔽セシ場合ニ於テハ夫ハ父ニ非サルコトヲ証明ス可キ総テノ事実ヲ陳述スルヲ得 (千八百五十年十二月六日追加)夫婦別居ノ言渡アリタルカ又ハ之ヲ訟求シタル場合ニ於テ夫ハ訴訟法第八百七十八条ニ従ヒ裁判所長ヨリ命令ヲ出シタル時ヨリ三百日ノ後ニ生レシ子又ハ訟求ノ確定ノ却下若クハ和解ノ後百八十日ニ至ラサル時間ニ生レシ子ヲ認知セサルコトヲ得但シ夫婦間既ニ私和ノ事実アリシ時ハ不認知ノ訴訟ヲ許サス 第三百十四条 夫ハ左ノ場合ニ於テハ婚姻ノ時ヨリ百八十日ニ至ラサル前ニ生レタル子ヲ認知セサルコトヲ得ス第一夫婚姻前ニ懐妊ナリシコトヲ知リシ時第二夫出産証書ヲ記スルニ立会ヒ且其証書ニ手署シ又ハ手署スルコト能ハサル陳述ノ記載アル時第三子生存ス可キノ陳述ナキ時 第三百十五条 婚姻解除ヨリ三百日ノ後ニ生レタル子ノ嫡出タルト否ハ訟争スルコトヲ得 第三百十六条 夫訴ヲ為スヲ得可キ総テノ場合ニ於テ子ノ出産ノ地ニ在ル時ハ一月内{出産ノ時ヨリ}ニ之ヲ為ス可シ 夫若シ当時{出産ノ時}不在ナリシ時ハ帰来後二月内ニ之ヲ為ス可シ 若シ夫ニ出産ヲ隠蔽セシ時ハ詐欺ノ発覚後二月内ニ之ヲ為ス可シ 第三百十七条 夫若シ訴ヲ為スヲ得可キ期限内ニ之ヲ為サスシテ死去セシ時ハ其相続人ハ子、夫ノ財産ヲ占有セシ時又ハ子ノ占有ニ因テ相続人障害ヲ受ケシ時ヨリ二月間ハ子ノ嫡出タルト否ヲ訟争スルコトヲ得 第三百十八条 夫又ハ其相続人ノ不認知ヲ記シタル裁判外ノ証書ハ一月内ニ子ノ為メニ任シタル別段ノ後見人ニ対シテ母ノ面前ニ於テ訴訟ヲ為ササルニ於テハ其効ナシトス 第二章 嫡出ノ子ノ子タル証拠 第三百十九条 嫡出ノ子ノ子タル事ハ身分証書ノ簿冊ニ登記シタル出産証書ヲ以テ之ヲ証ス可シ 第三百二十条 其証書ナキ時ハ嫡出ノ子タル身分ヲ継続シテ占有スルヲ以テ足レリトス 第三百二十一条 一個人{嫡出ノ子タル者}ト其所出ナリト言做ス氏族トノ間ニ血縁及ヒ子タルノ関係ヲ指定スル事実ノ充分ニ集合スル時ハ身分ノ占有アリトス 其事実ノ主タルモノ左ノ如シ 一 一個人{子タル者}其所出ナリト言做ス父ノ氏ヲ常ニ冒用スル事 一 父其一個人ヲ我子ノ如クニ待遇シ子ノ資格ヲ以テ之ヲ教育シ之ニ衣食住ヲ給スル事 一 世間ニテ其一個人ヲ常ニ嫡出ノ子ト認視シタル事 一 親族モ之ヲ嫡出ノ子ト認視シタル事 第三百二十二条 何人ト雖トモ出産証書ト該証書ニ恰当スル身分ノ占有トニ因テ有スル身分ニ反シタル身分ヲ訟求スルヲ得ス 又何人ト雖トモ出産証書ニ恰当スル身分ヲ占有スル者ノ身分ヲ訟争スルヲ得ス 第三百二十三条 出産証書ノ存在セス又継続シテ身分ヲ占有セサルカ又ハ出産証書ニ偽氏ノ記載若シクハ分明ナラサル父母ノ生ミタル子ナリト記載アル時ハ証人ヲ以テ子タル証拠ヲ立ルヲ得 然レトモ此証拠ハ書面ニ拠ル証拠ノ端緒アルカ又ハ継続シタル事状ヨリ生シタル推測或ハ徴憑其証拠ヲ立ツルヲ許スニ足ル可キ時ニ非サレハ之ヲ立ルヲ許サス 第三百二十四条 書面ニ拠ル証拠ノ端緒ハ親族ノ証書類、父母ノ私ノ簿冊及ヒ書類、訴訟ニ関係シタル者又ハ若シ生存スルニ於テハ訴訟ニ関係ス可キ者ノ公私ノ証書ヨリ生スルモノトス 第三百二十五条 反証ハ子ナリト訴フル者其母ナリト言做ス者ノ子ニ非サル事又其母ニ付キ証拠アルモ其父ノ子ニ非サル事ヲ証スルニ足ル可キ総テノ方法ヲ以テ之ヲ立ルヲ得 第三百二十六条 民事裁判所{始審裁判所}ノミ身分ノ訟求ヲ裁判スルノ任アリトス 第三百二十七条 身分滅却《シュプレションデター》ノ罪ニ対スル刑事ノ訴ハ身分ノ訟争ニ付キ完結《デヒニチーフ》ノ裁判{民事ノ}アリタル後ニ非サレハ之ヲ為スヲ得ス 第三百二十八条 身分訟求ノ訴権ハ子ニ対シ時効ニ因テ消滅ス可カラサルモノトス 第三百二十九条 訟求ヲ為ササリシ子ノ相続人ハ子幼年ニテ死去シ又ハ丁年ニ至リシ時ヨリ五年内ニ死去セシ時ニ非サレハ訟求{先人ノ身分ヲ}スルヲ得ス 第三百三十条 子訴訟ヲ始メ公然其願下ケヲ為ササリシカ又ハ訴訟ノ最終ノ手続ヲ為シタル時ヨリ三年間訴訟ヲ中止セシコトナカリシ時ハ其相続人ハ訴訟ヲ継続スルヲ得 第三章 私生ノ子 第一款 私生ノ子ヲ嫡出ノ子ト為ス事 第三百三十一条 婚姻外ニ生レタル子ハ乱倫又ハ奸通ニ因テ生レタル者ノ外ハ父母其婚姻前ニ適法ニ之ヲ認知シ又ハ婚姻執行ノ証書中ニ其認知ヲ為セシ時ハ其後父母ノ婚姻ニ依リ之ヲ嫡出ノ子ト為スヲ得 第三百三十二条 卑属親ヲ遺留シテ死去シタル子ト雖モ之ヲ嫡出ノ子ト{其死後ニ}認知スルヲ得此場合ニ於テハ其認知ハ卑属親ノ利益ト為ル可シ 第三百三十三条 後ノ婚姻ニ依テ嫡出ト為シタル子ハ婚姻ニ因テ生レタル子ト同一ノ権利ヲ有ス可シ 第二款 私生ノ子ノ認知 第三百三十四条 私生ノ子ノ認知ハ出産証書中ニ為ササリシ時ハ公正ノ証書ヲ以テ之ヲ為ス可シ 第三百三十五条 私生ノ子ノ認知ハ乱倫又ハ奸通ニ因テ生レタル子ノ為メニ之ヲ為スヲ得ス 第三百三十六条 母ノ指示及ヒ自認ナク父ノ為シタル認知ハ父ニ対シテノミ効アリトス 第三百三十七条 婚姻前ニ配偶者ニ非サル者トノ間ニ生レタル私生ノ子ノ為メニ婚姻中ニ夫婦ノ一方ノ為シタル認知ニ因リテ他ノ一方及ヒ婚姻ニ因テ生レタル子ニ損害ヲ為スコトヲ得ス 然レトモ其認知ハ婚姻解除ノ後ニ於テ其婚姻ニ因テ生レタル子ナキ時ハ其効{婚姻外ニ生レタル子ノ為メニ}ヲ生ス可シ 第三百三十八条 認知セラレタル私生ノ子ハ嫡出ノ子タル権利ヲ要ムルヲ得ス私生ノ子ノ権利ハ相続ノ巻ニ規定ス可シ 第三百三十九条 父又ハ母ヨリ為ス認知及ヒ子ヨリ為ス訟求ハ之ニ関係アル者ヨリ訟争スルコトヲ得 第三百四十条 父タルノ捜索《ルシエルシュ》{人ヲ指シテ我父ナリト訴フル事}ハ之ヲ禁ス誘拐{母ノ}ノ場合ニ於テハ誘拐ノ時ト懐妊ノ時ト適合スル時ハ誘拐者ハ関係人ノ訟求ニ因リテ子ノ父タルノ言渡ヲ受クルコトアル可シ 第三百四十一条 母タルノ捜索ハ之ヲ許ス 人ヲ指シテ我母ナリト訴フル子ハ其人ノ生ミタル子ニ相違ナキコトヲ証ス可シ 書面ニ拠ル証拠ノ端緒アル時ニ非サレハ子ニ証人ヲ以テ其証拠ヲ立ルコトヲ許サス 第三百四十二条 第三百三十五条ニ従ヒ認知ヲ許ササル場合ニ於テハ子ニ父タリ母タルコトヲ捜索スルコトヲ許サス 第八巻 養子ヲ為ス事及ヒ好意後見《チュテールオヒシューズ》(千八百三年三月二十三日決定同月二日頒布) 第一章 養子ヲ為ス事 第一款 養子ヲ為ス事及ヒ其効果 第三百四十三条 五十歳以上ノ男女ニシテ養子ヲ為ス時ニ嫡出ノ子又ハ卑属親ナク且ツ養子ト為サントスル者ヨリ少クモ十五歳以上年長ノ者ニ非サレハ養子ヲ為スヲ得ス 第三百四十四条 何人ト雖トモ夫婦ノ外数人ノ養子ト為ルヲ得ス 第三百六十六条ノ場合ノ外夫婦ノ一方ハ其配偶者ノ承諾ナクシテ養子ヲ為スヲ得ス 第三百四十五条 養子ヲ為スノ権ハ幼年ノ時少クモ六年間絶ヘス扶助保管《セハ》ヲ受タル者又ハ戦闘若クハ水火災ノ時ニ於テ養親ノ性命ヲ救ヒタル者ニ対シテノミ之ヲ行フヲ得 此第二ノ場合ニ於テハ養親ハ丁年ニシテ嫡出ノ子又ハ卑属親ナク且ツ養子ヨリ年長ナル事ト若シ養親婚姻シタル者ナル時ハ其配偶者養子ヲ為スコトヲ承諾スル事トヲ以テ足レリトス 第三百四十六条 何レノ場合ニ於テモ養子トナル可キ者丁年ニ至ラサル前ハ養子ト為スヲ得ス若シ養子トナル可キ者父母又ハ其一人アリテ二十五歳未満ナル時ハ父母又ハ其生存者ヨリ養子トナル許諾ヲ得又二十五歳以上ナル時ハ其誨諭《コンセイユ》ヲ求ム可シ 第三百四十七条 養子ハ其固有ノ氏ニ養親ノ氏ヲ加称ス可シ 第三百四十八条 養子ハ猶ホ実家ノ関係ヲ離レス且ツ実家ニ於テ総テノ権利ヲ保有ス可シ但シ左ノ者ノ間ニハ婚姻ヲ禁ス 一 養親ト養子及ヒ其卑属親トノ間 一 同一ノ人ノ数人ノ養子ノ間 一 養子ト養子ヲ為シタル後ニ生レタル養親ノ子トノ間 一 養子ト養親ノ配偶者トノ間及ヒ養親ト養子ノ配偶者トノ間 第三百四十九条 法律ニ定メタル場合ニ於テ養子ト其父母{実ノ}トノ間ニ継続スル相互ニ養料ヲ給ス可キ自然ノ義務ハ養親ト養子トノ間ニモ互ニ之ヲ行フヘキモノトス 第三百五十条 養子ハ養親ノ血属親ノ財産ニ付キ相続ヲ為スノ権ナシ然レトモ養親ノ相続ニ付テハ養子ヲ為シタル後ニ生レタル養親ノ子アル時ト雖モ養親ノ婚姻ニ因テ生レタル子ト同一ノ権利ヲ有ス可シ 第三百五十一条 若シ養子嫡出ノ卑属親ヲ遺留セスシテ死去セシ時ハ養親ヨリ贈遺又ハ相続ニ因テ得タル物件ニシテ死去ノ時現ニ存在スルモノハ養親又ハ其卑属親ニ戻ル可シ但シ養親又ハ其卑属親ハ戻リタル財産ノ割合ヲ以テ負債{養子ノ}ヲ償フノ責務アリ且ツ他人ノ権利ヲ害ス可カラス 其他ノ養子ノ財産ハ其血属親ニ属ス可シ且ツ養子ノ血属親ハ別段ニ本条ニ定ムル財産ニ付テモ養親ノ卑属親ニ非サル総テノ相続人ヲ除却シテ其相続ヲ為ス可シ 第三百五十二条 養親ノ生存中且ツ養子ノ死後養子ノ遺留セシ子又ハ卑属親子孫ヲ遺留セスシテ死去セシ時ハ養親ハ前条ニ記スル如ク其贈遺シタル物件ニ付キ相続ヲ為ス可シ然レトモ此権ハ養親一身ニ属シ其卑属タル相続人ニ移転セス 第二款 養子ヲ為スノ法式 第三百五十三条 養子ヲ為サント欲スル者及ヒ養子トナラント欲スル者ハ養親ノ住所ノ治安裁判官ノ面前ニ於テ相互ノ承諾証書ヲ記ス可シ 第三百五十四条 此証書ノ謄本ハ最モ利害ニ関係アル者ヨリ十日内ニ養親ノ住所ヲ管轄スル始審裁判所ノ検事ニ出シ其裁判所ノ認許ヲ受ク可シ 第三百五十五条 裁判所ハ会議局ニ集会シ相当ノ参考《ランセイヌユマン》ヲ得タル後第一法律上ノ要件具備スルヤ第二養子ヲ為サントスル者名誉ヲ有スルヤヲ審査ス可シ 第三百五十六条 裁判所ハ検事ノ意見ヲ聴キタル後別ニ法式ヲ要スルコトナク且ツ理由ヲ附スルコトナク養子ヲ允許ス又養子ヲ允許セストノ言辞ヲ以テ言渡ヲ為ス可シ 第三百五十七条 始審裁判所ノ言渡ヨリ一月内ニ最モ利害ニ関係アル者ノ出訴ニ因テ其言渡ヲ控訴院ニ出タス可シ控訴院ハ始審裁判所ト同一ノ法式ヲ以テ取調ヲ為シ理由ヲ附セスシテ言渡{始審裁判所ノ}ヲ確認ス又ハ言渡シヲ改更ス故ニ養子ヲ允許ス又ハ養子ヲ允許セスト言渡ス可シ 第三百五十八条 控訴院ニテ養子ヲ允許スル判決ハ訟廷ニ於テ言渡シ且ツ裁判所{始審}ニテ相当ト思惟シタル場所ニ相当ト思惟シタル判決書ノ部数ヲ掲示ス可シ 第三百五十九条 其言渡ヨリ三月内ニ養子又ハ養親ノ申立ニ因リ養親ノ住所ノ地ノ身分証書ノ簿冊ニ養子ヲ為スコトヲ登記ス可シ 其登記ハ控訴院ノ言渡ノ法ニ適シタル謄本ヲ点視シテ之ヲ為ス可シ若シ其期限内ニ登記ヲ為ササル時ハ養子ヲ為スコトハ無効ニ属ス可シ 第三百六十条 養子ノ契約ヲ為スノ意思ヲ表スル証書ヲ治安裁判官ノ面前ニ於テ記シ始審裁判所ニ出シタル後始審裁判所ニ於テ完結ノ言渡ヲ為ササル前ニ養親ノ死去セシ時ト雖モ其取調ヲ継続シ養子ヲ允許ス可キニ於テハ之ヲ允許ス可シ 若シ養親ノ相続人養子ヲ允許ス可カラスト思惟シタル時ハ之ニ関スル趣意書及ヒ意見書ヲ検事ニ出スヲ得 第二章 好意後見 第三百六十一条 五十歳以上ニシテ嫡出ノ子又ハ卑属親ナキ者人ノ幼年ノ間法律上ノ名義ヲ以テ之ヲ己レニ依託セシメント欲スル時ハ子ノ父母又ハ其中ノ生存者又其在ラサル時ハ親族会議又幼者ノ親族分明ナラサル時ハ其寄寓スル養育院ノ管理者又ハ其現住ノ地ノ邑庁ノ許諾ヲ得テ好意後見人ト為ルコトヲ得 第三百六十二条 夫婦ノ一方ハ其配偶者ノ承諾ヲ得スシテ好意後見人ト為ルヲ得ス 第三百六十三条 子ノ住所ノ治安裁判官ハ好意後見ニ関スル要求及ヒ承諾ノ調書ヲ記ス可シ 第三百六十四条 此後見ハ十五歳未満ノ子ノ為メニ非サレハ之ヲ為スヲ得ス 好意後見ハ幼者ヲ養育シ生活ヲ為スノ途ヲ得セシムルノ義務ヲ提起ス可シ但シ別段ノ契約アル時ハ格別ナリトス 第三百六十五条 若シ幼者財産ヲ有シ且ツ以前後見ヲ受ケシ時ハ其財産ノ管理及ヒ其身上ノ支配ハ好意後見人ニ属ス可シ但シ好意後見人ハ幼者ノ入額ヲ教育ノ費用ニ抵充スルヲ得ス 第三百六十六条 若シ好意後見人後見ヲ始メテヨリ満五年ノ後幼者丁年ニ至ラサル中自己ノ死去ヲ推知シ遺嘱書ヲ以テ幼者ヲ養子トナサント欲スル時ハ好意後見人嫡出ノ子ヲ遺留セサルニ於テハ其処置有効ナリトス 第三百六十七条 好意後見人五年前若シクハ五年後ニ幼者ヲ養子ト為サスシテ死去セシ場合ニ於テハ幼年ノ間生活ヲ為スヘキ財産ヲ幼者ニ給ス可シ其財産ノ分量及ヒ種類ハ予メ契約書ヲ以テ定メサリシ時ハ後見人ノ代理人ト幼者ノ代理人ニテ協議ヲ以テ之ヲ定メ争論アル場合ニ於テハ裁判所ニテ之ヲ定ム可シ 第三百六十八条 幼者丁年ニ至リタル時好意後見人之ヲ養子ト為サント欲シ幼者承諾スル時ハ前章ニ記シタル法式ニ従テ養子ト為スノ手続ヲ為ス可ク其効果モ総テ同一{前章ト}ナル可シ 第三百六十九条 幼者丁年ニ至リタル時ヨリ三月内ニ養子ト為ル可キコトヲ好意後見人ニ要求シテ其要求無効ニ属セシ時及ヒ幼者生計ノ途ヲ得可ラサル時ハ好意後見人ハ幼者生計ノ途ヲ得ルノ能力無キニ付キ幼者ニ賠償ヲ為ス可キ言渡ヲ受ク可シ 此賠償ハ幼者ニ職業ヲ得セシムルニ足ル可キ資助ヲ与フルニ在リトス但シ此賠償ト予メ如此キ場合ヲ推知シテ為シタル契約ト抵触スルコトナカル可シ 第三百七十条 幼者ノ財産ヲ管理シタル好意後見人ハ総テノ場合ニ於テ其計算ヲ為ス可シ 第九巻 父権(千八百三年三月二十四日決定四月三日頒布) 第三百七十一条 子ハ其年齢ヲ問ハス父母ヲ尊敬ス可シ 第三百七十二条 子ハ丁年又ハ後見免除ニ至ル迄父母ノ威権ニ従フ可シ 第三百七十三条 婚姻中ハ父ノミ其威権ヲ行フ可シ 第三百七十四条 子ハ満十八歳ノ齢ニ至リタル後壮兵ノ徴募ニ応スル時ノ外父ノ許諾ヲ得スシテ父ノ家ヲ去ル可カラス 第三百七十五条 父其子ノ行状ニ付キ至重ナル戻意ノ事アル時ハ左ノ懲治方法ヲ用フ可シ 第三百七十六条 若シ子十六歳以下ナル時ハ父ハ一月ニ超ヘサル時間之ヲ禁錮セシムルヲ得但シ之ニ付キ郡裁判所長ハ父ノ要求ニ従ヒ逮捕ノ命令書ヲ渡ス可シ 第三百七十七条 満十六歳以上ニシテ丁年又ハ後見免除ニ至ル迄ハ父ハ唯タ六月ニ超ヘサル時間其子ノ禁錮ヲ請願スルヲ得父ハ郡裁判所長ニ其請願ヲ為シ郡裁判所長ハ検事ト商議シタル後逮捕ノ命令書ヲ渡シ又ハ之ヲ拒ム可シ逮捕ノ命令書ヲ渡シタル場合ニ於テハ父ヨリ請願シタル禁錮ノ時間ヲ減縮スルヲ得 第三百七十八条 何レノ場合ニ於テモ逮捕ノ命令書ノ外ニ書類及ヒ裁判上ノ法式ヲ要スルコトナシ又其命令書ニハ逮捕ノ理由ヲ記スルコトナカル可シ 父ハ唯諸費用ヲ償ヒ且ツ相当ノ養料ヲ給ス可キ証書ヲ記ス可シ 第三百七十九条 父ハ自ラ命シ又ハ裁判所ニ請願シタル禁錮ノ時間ヲ常ニ減縮スルヲ得若シ子出獄後再ヒ不良ノ所行ヲ為ス時ハ前数条ニ定ムル方法ニ従テ更ニ禁錮ヲ命スルヲ得 第三百八十条 父再婚セシ時ハ前婚ノ子ヲ禁錮セシムルニ付キ其十六歳以下ナル時ト雖モ第三百七十七条ニ従フ可シ 第三百八十一条 再婚セサル生存ノ母ハ父ノ最親ノ血属二人ノ同意ヲ得且ツ第三百七十七条ニ従テ請願ヲ為シタルニ非サレハ子ヲ禁錮セシムルヲ得ス 第三百八十二条 子自己ノ財産ヲ有シ又ハ身分ヲ行フ時ハ十六歳以下タル時ト雖モ第三百七十七条ニ定ムル法式ニ従テ請願ヲ為シタルニ非サレハ之ヲ禁錮スルヲ得ス 禁錮ヲ受ケタル子ハ控訴院検事長ニ願書{宥恕ノ}ヲ出タスヲ得控訴院検事長ハ始審裁判所検事ヲシテ取調ヲ為シ控訴院長ニ其報告ヲ為サシメ控訴院長ハ父ニ意見ヲ述ヘ且ツ総テノ参考書ヲ蒐集シタル後始審裁判所長ヨリ渡シタル命令書ヲ取消シ又ハ変更スルヲ得 第三百八十三条 第三百七十六条第三百七十七条第三百七十八条第三百七十九条ハ法律上認知シタル私生ノ子ノ父母ニモ適用ス可シ 第三百八十四条 婚姻中ハ父其解除後ハ父母中ノ生存者其子ノ満十八歳ニ至ル迄又ハ十八歳以下ニテ為スヲ得可キ後見免除ニ至ル迄子ノ財産ニ付キ収益ヲ為スコトヲ得 第三百八十五条 収益《ジュイサンス》ヲ為スニ付キ担当ス可キ責務左ノ如シ 第一 収実者《ユジュフルィチェー》ノ担当ス可キ責務 第二 子ノ資産ニ准シタル給養教育 第三 年金ノ賦額《アレラージュ》及ヒ元金ノ利息ノ弁済 第四 埋葬費及ヒ最後ノ疾病ノ費 第三百八十六条 収益権ハ父母ノ中離婚ノ言渡ヲ受ケタル者ノ為メニ消滅シ又再婚ヲ為シタル母ノ為メニモ消滅ス可シ 第三百八十七条 収益権ハ子其父母ニ管係ナキ労動及工業ニ因リ獲得シタル財産及ヒ父母収益ヲ為ササル明約ヲ以テ外人ヨリ子ニ贈遺又ハ遺嘱シタル財産ニ及ホス可カラス 第十巻 幼年、後見及ヒ後見免除(千八百三年三月二十六日決定五月五日頒布) 第一章 幼年 第三百八十八条 幼者トハ二十一歳未満ノ男女ヲ云フ 第二章 後見 第一款 父母ノ後見 第三百八十九条 婚姻中父ハ幼年ノ子ノ財産ノ管理人ナリトス 父ハ収益権ヲ有セサル財産ニ付テハ其所有権ト入額トヲ返還ス可ク又法律ニ於テ収益権ヲ有スル財産ニ付テハ所有権ノミヲ返還ス可シ 第三百九十条 夫婦ノ一方自然ノ死去又ハ准死ニ因テ婚姻ヲ解除セシ後ハ後見免除ヲ得サル幼年ノ子ノ後見ハ当然父母中ノ生存者ニ属ス可シ 第三百九十一条 然レトモ父ハ後見ヲ為ス生存ノ母ニ別段ノ補佐人ヲ任シ其意見ヲ聴カスシテ後見ニ関スル何ノ所為ヲモ為スヲ得サラシムルコトヲ得 若シ父補佐人ノ干渉ス可キ所為ヲ特定シタル時ハ母ハ其補佐ナクシテ其他ノ所為ヲ為スコトヲ得 第三百九十二条 此補佐人ノ任命ハ左ノ方法ノ中ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ為スヲ得ス 第一 遺嘱証書ヲ以テスルコト 第二 書記ノ立会ニテ治安裁判官ノ面前又ハ公証人ノ面前ニ於テ為シタル陳述ヲ以テスルコト 第三百九十三条 若シ夫ノ死去ノ時婦懐妊ナルニ於テハ親族会議ニテ胎児ノ管財人ヲ任ス可シ 子出産ノ後ハ母其後見人トナリ管財人ハ当然監察後見人トナル可シ 第三百九十四条 母ハ後見ヲ承諾スルニ及ハス然レトモ之ヲ承諾セサル場合ニ於テハ後見人ヲ任スル迄ノ間其義務ヲ尽ス可シ 第三百九十五条 後見ヲ為ス母再婚セント欲スル時ハ婚姻証書ヲ記スル前ニ親族会議ヲ開ク可シ親族会議ハ後見ヲ引続キテ其母ニ任ス可キヤ否ヤヲ議決ス可シ 若シ親族会議ヲ開カサル時ハ母ハ当然後見ノ職ヲ失ヒ其後夫ハ母後見ヲ不当ニ継続シタルヨリ生セシ総テノ件ニ付キ連帯シテ其責ニ任ス可シ 第三百九十六条 適法ニ開キタル親族会議ニ於テ母ニ後見ヲ継続セシムル時ハ必ス後夫ヲ副後見人ニ任ス可シ後夫ハ婚姻以後ニ行ヒタル事務ニ付キ婦ト連帯シテ其責ニ任ス可シ 第二款 父母ヨリ任シタル後見 第三百九十七条 血属タルト他人タルトヲ問ハス後見人ヲ撰ム一身ノ権ハ父母ノ中後ニ死去スル者ニ属ス可シ 第三百九十八条 此権ハ第三百九十二条ニ定メタル法式及ヒ左ニ記スル例外及ヒ変更ニ従ヒ之ヲ執行ス可シ 第三百九十九条 再婚シタル母前婚ノ子ノ後見ノ職ヲ保持セサル時ハ其子ノ為メニ後見人ヲ撰ムコトヲ得ス 第四百条 後見ヲ為ス再婚シタル母前婚ノ子ノ後見人ヲ撰ミタルモ此撰択ハ親族会議ニ於テ確認シタル時ニ非サレハ効ナシトス 第四百一条 父又ハ母ノ撰ミタル後見人ハ其特撰ナキニ於テハ親族会議ニテ撰ミ得可キ階級ノ者ニ非サル時ハ其任ヲ承諾スルニ及ハス 第三款 尊属親ノ後見 第四百二条 父母中ノ後ニ死去セシ者幼者ノ後見ヲ選マサリシ時ハ後見ハ当然本宗ノ祖父ニ属シ其アラサルニ於テハ外族ノ祖父ニ属シ如此ク常ニ本宗ノ尊属親ハ同等ノ外族ノ尊属親ニ先チ順次遡リテ後見ヲ為ス可シ 第四百三条 幼者ノ本宗ノ祖父及ヒ外族ノ祖父共ニナクシテ本宗ノ上級ノ尊属親二人ノ間ニ権利ノ抵触セシ時ハ後見ハ幼者ノ父ノ本宗ノ祖父ニ属ス可シ 第四百四条 外族ノ曽祖父二人ノ間ニ権利ノ抵触セシ時ハ親族会議ニ於テ其中一人ヲ撰ミ後見人ニ任ス可シ 第四款 親族会議ヨリ任シタル後見 第四百五条 幼年ニシテ未タ後見ヲ免カレサル子父母又ハ父母ノ任シタル後見人又ハ尊属ノ男ナク且ツ前ニ記シタル資格アル後見人後ニ記スル如ク後見ノ職ヲ斥除セラル可キ時又ハ有効ニ之ヲ辞シタル時ハ親族会議ニテ後見人任命ノ手続ヲ為ス可シ 第四百六条 親族会議ハ幼者ノ血属債主其他ノ関係人ノ要求又ハ幼者ノ住所ノ治安裁判官ノ要求ニ因リ若クハ其職権ヲ以テ之ヲ召集ス可シ○何人ヲ問ハス後見人ヲ任命ス可キ事情ヲ治安裁判官ニ申告スルヲ得 第四百七条 親族会議ハ治安裁判官ヲ除クノ外後見ヲ開始ス可キ邑内及ヒ二「ミリヤメートル」ノ距離内ニ在ル血属又ハ姻属ノ親六人ヲ以テ之ヲ組織ス可シ但シ其半数ハ父系、半数ハ母系ノ親ニシテ両系共ニ近親ノ順序ニ従フ可シ 同等中ニテハ血属ハ姻属ヨリ先ニ又同等ノ血属中ニテハ年長者ハ年少者ヨリ先ニ其撰任ヲ受ク可シ 第四百八条 幼者ト同父母ノ兄弟及ヒ同父母ノ姉妹ノ夫ノミハ前条ニ記シタル員数ノ制限ノ外タル可シ 若シ此等ノ者六人又ハ其以上アル時ハ悉ク親族会議ノ員トナリ尊属親ノ寡婦及ヒ有効ニ後見ノ職ヲ免レタル尊属親アル時ハ之ト共ニ親族会議ヲ組織ス可シ 若シ此等ノ者ノ員数六人以下ナル時ハ他ノ親族ヲ召集シテ定員ニ充ツ可シ 第四百九条 邑内又ハ第四百七条ニ記シタル距離内ニ在ル本宗又ハ外族ノ血属又ハ姻属ノ数定員ニ充タサル時ハ治安裁判官ハ更ニ遠隔ノ地ニ住居スル血属又ハ姻属又ハ邑内ニ於テ幼者ノ父母ト平生親交シタルコト分明ナル者ヲ召集ス可シ 第四百十条 治安裁判官ハ邑内ニ在ル血属又ハ姻属ノ数定員ニ充ツル時ト雖トモ現在ノ血属又ハ姻属ヨリ尚ホ近親ノ血属又ハ姻属又ハ同等ノ血属又ハ姻属ヲ其住居スル距離ノ遠近ニ拘ラス召集スルコトヲ允許スルヲ得但シ其召集ヲ為スニハ現在ノ血属又ハ姻属ノ幾何人ヲ省キ前数条ニ定メタル員数ヲ超過ス可カラス 第四百十一条 出会ノ期限ハ治安裁判官ヨリ日ヲ指シテ之ヲ定ム可シ然レトモ召喚状ノ送達ヲ受ケタル者邑内又ハ二「ミリヤメートル」ノ距離内ニ住スル時ハ召喚状ヲ送達シタル日ト会議ノ為メ指定シタル日トノ間少クモ三日ヲ隔ツ可シ召喚状ノ送達ヲ受ケタル者ノ中其距離外ニ住スル者アルトキハ三「ミリヤメートル」毎ニ一日ノ猶予ヲ加フ可シ 第四百十二条 斯ノ如ク召集ヲ受ケタル血属姻属又ハ故旧ハ自身出会スルカ又ハ部理代人ヲシテ代理セシム可シ代理人ハ一人以上ノ代理ヲ為スヲ得ス 第四百十三条 召集ヲ受ケタル血属姻属又ハ故旧正当ノ理由ナク出会セサル時ハ治安裁判官ヨリ五十フラン以下ノ罰金ノ言渡ヲ受ク可シ但シ其言渡ニ付テハ控訴ヲ為スヲ得ス 第四百十四条 正当ノ理由アリテ出会セサル者アルニ由リ其出会ヲ待チ又ハ其缺ヲ補フ可キ場合ニ於テハ幼者ノ利益ノ為メ必要トスル他ノ総テノ場合ニ於ル如ク治安裁判官ハ日ヲ定メ或ハ定メスシテ会議ヲ延期スルヲ得 第四百十五条 治安裁判官会議ノ場所ヲ別段ニ定メサル時ハ当然其家ニテ之ヲ開ク可シ議事ヲ為スニ付テハ少クモ召集ヲ受ケタル者ノ四分ノ三ノ出席アルヲ要ス 第四百十六条 治安裁判官ハ親族会議ニ上席シ討議スルノ権アリ且ツ可否同数ナル時ハ自己ノ説ニ従ヒ決議スルノ権アリトス 第四百十七条 仏蘭西ニ住居スル幼者藩属地ニ財産ヲ有シ又ハ藩属地ニ住居スル幼者仏蘭西ニ財産ヲ有スル時ハ准後見人其別段ノ管理ヲ為ス可シ 此場合ニ於テ後見人ト准後見人トハ互ニ関係ナク且ツ各自管理セシ事ニ付互ニ責ニ任スルコト無シ 第四百十八条 後見人ハ後見ヲ任セラレタル時其地ニ在リシ時ハ其任命ノ日ヨリ其地ニ在ラサリシ時ハ任命ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ後見人ノ資格ヲ以テ其職務ヲ行フ可シ 第四百十九条 後見ハ一身ニ属スル任ニシテ後見人ノ相続人ニ移ルコトナシ○後見人ノ相続人ハ先人ノ管理ニ付テノミ責ニ任ス可ク且ツ丁年ナルニ於テハ新後見人ノ任命アル迄後見ヲ継続ス可シ 第五款 監察後見人 第四百二十条 総テノ後見ニ付親族会議ヨリ監察後見人ヲ任ス可シ 監察後見人ノ職務ハ幼者ノ利益ト後見人ノ利益ト抵触スル時ニ於テ幼者ノ利益ノ為メニ処置ヲ為スニ在リトス 第四百二十一条 此章ノ第一款第二款第三款ニ記シタル資格アル者後見ノ任ヲ受ケシ時ハ其職務ヲ執ルノ前ニ監察後見人ヲ任スル為メ第四款ニ記スル如ク組織シタル親族会議ヲ召集セシム可シ 若シ後見人此法式ヲ履行セスシテ職務ヲ行ヒシ時ハ血属、債主、其他ノ関係人ノ要求ニ因リ又ハ治安裁判官ノ職権ヲ以テ召集シタル親族会議ニ於テ後見人ニ詐欺アル時ハ其職ヲ退カシムルヲ得 但シ此規則ト幼者ニ為ス可キ損害ノ賠償ト抵触スルコトナカル可シ 第四百二十二条 其他ノ後見ニ付テハ後見人ノ任命後直チニ監察後見人ヲ任ス可シ 第四百二十三条 何ノ場合ニ於テモ後見人ハ監察後見人ノ任命ニ付キ発議ヲ為ス可カラス監察後見人ハ後見人同父母{幼者ノ}ノ兄弟タル場合ノ外ハ之ヲ両系{本宗外族}ノ中後見人ノ属セサル系中ヨリ撰択ス可シ 第四百二十四条 監察後見人ハ後見ノ職ノ空位トナリ又ハ後見人失踪ニ因テ其職ヲ放棄セシ時当然代リテ後見人トナル可カラス此場合ニ於テハ監察後見人ハ新後見人ヲ任ス可キ手続ヲ為ス可シ若シ此規則ニ背キ幼者ニ損害ヲ来タス時ハ其賠償ヲ為ス可キノ言渡ヲ受ク可シ 第四百二十五条 監察後見人ノ職務ハ後見人ノ職務ト同時ニ終ル可シ 第四百二十六条 此章ノ第六款第七款ニ記スル規則ハ監察後見人ニモ適用ス可シ 然レトモ後見人ハ監察後見人ヲ免スル手続ヲ為ス可カラス又監察後見人ヲ任スル為メ召集シタル親族会議ニ於テ其任命ニ付キ発議ヲ為ス可カラス 第六款 後見人タルヲ免カルル原因 第四百二十七条 左ノ者ハ後見人トナルコトヲ免カル 一 千八百四年五月十八日ノ法律第三章第五章第六章第八章第九章第十章第十一章ニ記載スル者 一 大審院長同院判事検事長検事 一 県令 一 後見ヲ置ク県外ニ於テ公務ヲ行フ者 第四百二十八条 左ノ者モ後見人トナルヲ免カル 一 現役ノ軍人其他王国外ニ於テ国王ヨリ任シタル職務ヲ行フ者 第四百二十九条 若シ其職務ニ付キ公正ノ証ナキニ因リ争論アル時ハ後見ヲ免カレント請求スル者ヨリ之ヲ免カル可キノ公務ヲ行フ省ノ卿ノ証状ヲ出シタル後其免除ヲ言渡ス可シ 第四百三十条 前数条ニ記シタル資格アル者後見人タルヲ免カルルヲ得可キ公務ニ任シタル後ニ後見ヲ承諾シタル時ハ後ニ其原由ヲ述ヘテ後見ヲ辞スルヲ得ス 第四百三十一条 之ニ反シテ後見ノ職ヲ承諾シ其事務ヲ執リタル後ニ上ノ公務ニ任シタル者後見ヲ継続スルヲ欲セサル時ハ一月内ニ親族会議ヲ召集シ代員任命ノ手続ヲ為サシムルヲ得 前ノ後見人若シ公務ノ任ノ満チタル後再ヒ後見人トナランコトヲ要求シ又新後見人辞職ヲ要求スル時ハ親族会議ニテ前ノ後見人ヲ其職ニ復セシムルヲ得 第四百三十二条 血属又ハ姻属ニ非サル者ハ四「ミリヤメ1ートル」内ニ後見ヲ為ス可キ血属又ハ姻属ナキ場合ニ非サレハ後見ヲ承諾スルニ及ハス 第四百三十三条 満六十五歳以上ノ者ハ後見人タルヲ辞スルヲ得此年齢ニ至ラサル前ニ後見人ニ任セラレタル者ハ七十歳ニ至リテ後見ヲ辞スルヲ得 第四百三十四条 重キ廃疾ニ罹リ正当ニ之ヲ証明スル者ハ後見ノ職ヲ免カル可シ 後見人ニ任セラレタル後重キ廃疾ニ罹リタル時ハ其職ヲ辞スルヲ得 第四百三十五条 何人ニ限ラス二箇ノ後見ニ任シタル時ハ第三ノ後見ノ職ヲ正当ニ免カル可シ 夫又ハ父タル者既ニ一箇ノ後見ニ任シタル時ハ第二ノ後見ヲ承諾スルニ及ハス但シ子ノ後見ハ格別ナリトス 第四百三十六条 嫡出ノ子五人アル者ハ其子ノ後見ノ外総テ他ノ後見ノ職ヲ免カル可シ 他ノ後見ノ職ヲ免カルル為メニハ国王ノ軍隊ニ在リテ現役中ニ死去シタル子ヲ常ニ其数中ニ{五人ノ}算入ス可シ 其他ノ死去シタル子ハ子ヲ遺留シ其子ノ存在スル時ニ非サレハ其数中ニ算入ス可カラス 第四百三十七条 後見ヲ行フ時間ニ子ノ出産スルコトアルモ之カ為メニ其職ヲ辞スルヲ得ス 第四百三十八条 後見人ニ任セラレタル者後見ヲ任スル議事ノ席ニ在ル時ハ其席ニ於テ其職ヲ免カル可キ旨ヲ陳述シ親族会議ハ之ニ付キ評議ヲ為ス可シ其後ハ総テノ申立ヲ為スヲ許サス 第四百三十九条 後見人ニ任セラレタル者後見ヲ任スル議事ニ出席セサリシ時ハ其後見ヲ免カル可キコトヲ議スル為メ親族会議ヲ召集セシムルコトヲ得 此申立ハ任命ノ通知ヲ得タル時ヨリ三日内ニ之ヲ為ス可シ但シ此期限ハ住所{後見人ノ}ノ地ト後見開始ノ地トノ距離三「ミリヤメートル」毎ニ一日ノ猶予ヲ加ヘ其期限後ハ其申立ヲ為スヲ許サス 第四百四十条 若シ申立ノ許サレサル時ハ後見ヲ免カルルノ允許ヲ受クル為メ裁判所ニ上訴スルヲ得然レトモ後見人ハ争論中仮ニ後見事務ヲ行フ可シ 第四百四十一条 後見人後見ノ職ヲ免カルルヲ得タル時ハ其申立ヲ許ササリシ者ハ裁判費ヲ払フノ言渡ヲ受ク可シ 若シ後見人ニ任セラレタル者敗訴セシ時ハ自ラ裁判費ヲ払フノ言渡ヲ受ク可シ 第七款 後見人タルノ無能力、後見人タルノ斥除《エキスクリユジヨン》、及ヒ後見人ノ罷免《デスチチュシヨン》 第四百四十二条 左ニ記載スル者ハ後見人又ハ親族会議員タルヲ得ス 第一 父母ヲ除クノ外ノ幼者 第二 被禁治産者 第三 母及ヒ尊属親ニ非サル女 第四 幼者ニ対シテ自ラ又ハ其父母訴訟ヲ為シ其訴訟ニ因テ幼者ノ身分、資産又ハ財産ノ大部ニ損害ヲ生スルノ恐レアル者 第四百四十三条 施体又ハ加辱ノ刑ノ言渡ハ当然後見ノ斥除ヲ提起シ既ニ後見ニ任セラレタル場合ニ於テハ其罷免ヲ提起ス 第四百四十四条 左ニ記載スル者モ同シク後見ノ職ヲ斥除セラレ既ニ之ヲ執行スルトキハ罷免セラル可シ 第一 不品行著シキ者 第二 無能力又ハ不誠実ヲ証スル管理ヲ為シタル者 第四百四十五条 後見ノ職ヲ斥除罷免セラレタル者ハ親族会議ノ員タルヲ得ス 第四百四十六条 後見人ヲ罷免ス可キ時ハ監察後見人ノ要求ニ因リ又ハ治安裁判官ノ職権ヲ以テ召集シタル親族会議ニテ其罷免ヲ言渡ス可シ 治安裁判官ハ幼者ノ従兄弟又ハ更ニ近親ノ血属又ハ姻属一人又ハ数人ヨリ公然要求ヲ為シタル時ハ必ス其召集ヲ為ササルヲ得ス 第四百四十七条 後見人ノ斥除又ハ罷免ヲ言渡ス親族会議ノ決議書ニハ其理由ヲ記ス可シ且ツ後見人ノ申立ヲ聴キタル上又ハ之ヲ呼出シテ出席セサル上ニ非サレハ其決議ヲ為スヲ得ス 第四百四十八条 後見人決議{親族会議ノ}ヲ承諾セシ時ハ其旨ヲ決議書ニ附記シ新後見人直チニ職務ヲ執ル可シ 若シ後見人承諾セサル時ハ監察後見人ハ始審裁判所ニ決議ノ認許ヲ訟求シ始審裁判所ハ其裁判ヲ為ス可シ但シ敗訴者ハ其裁判ニ付キ控訴ヲ為スコトヲ得 此場合ニ於テ斥除又ハ罷免セラレタル後見人ハ裁判所ヲシテ己レニ其職ヲ維持セシムルノ言渡ヲ為サシムル為メ監察後見人ヲ召喚スルコトヲ得 第四百四十九条 召集{親族会議ノ}ヲ要求シタル血属又ハ姻属ハ訴訟ニ干渉スルヲ得此訴訟ハ急速ヲ要スル事件トシテ吟味シ且ツ裁判ス可シ 第八款 後見人ノ管理 第四百五十条 後見人ハ幼者ノ身ヲ保管シ且総テノ民事上ノ所為ニ付キ幼者ヲ代理ス可シ 後見人ハ良家父ノ如ク幼者ノ財産ヲ管理シ其不良ノ管理ヨリ生スル損害ヲ賠償ス可シ 後見人ハ幼者ノ財産ヲ買フコトヲ得ス又親族会議ヨリ幼者ノ財産ヲ後見人ニ賃貸ス可キヲ監察後見人ニ允許セシ時ニ非サレハ後見人ハ之ヲ賃借スルヲ得ス又幼者ニ対スル債主権又ハ何ノ権利ノ譲与ヲモ受クルコトヲ得ス 第四百五十一条 後見人ハ封印アル{幼者ノ財産ニ}時ハ当然其任命ヲ知リタル日ノ翌日ヨリ十日内ニ封印ノ除去ヲ要求シ監察後見人ノ立会ヲ以テ直チニ幼者ノ財産ノ目録ヲ作ラシム可シ 幼者ヨリ後見人ニ償フ可キ物アル時ハ後見人ハ公吏ヨリ為ス要求ニ従テ幼者ヨリ償フヘキ物ヲ目録中ニ記載シ且ツ其旨ヲ調書ニ記サシム可シ後見人若シ此事ヲ為ササル時ハ其物ヲ得ルノ権ヲ失フ可シ 第四百五十二条 後見人ハ目録終結ノ時ヨリ一月内ニ監察後見人ノ立会ニテ且ツ売却ノ調書ニ記ス可キ掲示及ヒ公告ヲ為シタル後親族会議ニ於テ品物ノ侭保存スルコトヲ允許シタル動産ノ外幼者ノ総テノ動産ヲ競売ヲ以テ公吏ニ売却セシム可シ 第四百五十三条 父母ハ幼者ノ財産ニ付キ法律上及ヒ固有ノ収益権ヲ有スル時間ハ其動産ヲ保存シテ品物ノ侭引渡{幼者ニ}サント欲スル時ハ之ヲ売却スルニ及ハス 此場合ニ於テハ父母ハ監察後見人ヨリ任シ且ツ治安裁判官ノ面前ニ於テ誓ヲ為シタル監定人ニ自費ニテ動産ノ真価ヲ評定セシム可シ父母ハ品物ノ侭引渡スコトヲ得サル動産ニ付テハ評定ノ代価ヲ償還ス可シ 第四百五十四条 父母ノ後見ヲ除クノ外ハ後見ヲ執行シ始ムル時親族会議ハ管理ス可キ財産ノ多寡ニ従ヒ見積書ヲ以テ幼者ノ年費及ヒ財産管理ノ費額ヲ定ム可シ 又其見積書ニハ後見人其管理ヲ為スニ付キ後見人ノ責任ニテ事務ヲ行ヒ且給料ヲ受クル別段ノ管理人一名又ハ数名ノ補助ヲ受クルコトヲ得可キヤ否ヲ特定ス可シ 第四百五十五条 親族会議ハ入額ノ費額ヲ超過スルコト幾何ノ高ニ至リタル時ハ其過額ヲ使用スルノ義務ヲ後見人ニ生ス可キコトヲ明確ニ定ム可シ其使用ハ六月内ニ之ヲ為ス可シ此期限内ニ使用ヲ為ササリシ時ハ後見人其利息ヲ払フ可シ 第四百五十六条 若シ後見人親族会議ニ使用ヲ為スノ義務ヲ生ス可キ金額ヲ定メシメサリシ時ハ前条ニ記シタル期限後ハ使用セサル金額ノ多少ヲ問ハス其利息ヲ払フ可シ 第四百五十七条 後見人ハ父母ト雖トモ親族会議ノ許諾ヲ得スシテ幼者ノ為メニ金額ヲ借入レ又幼者ノ不動産ヲ譲与シ又ハ書入質ト為スヲ得ス 其許諾ハ緊要ノ事由又ハ的実ノ利益アル時ニ非サレハ之ヲ為ス可カラス 第一ノ場合ニ於テハ親族会議ハ後見人ヨリ出シタル簡略ノ計算書ニ依リ幼者ノ金額動産及ヒ入額ノ不足ナルコトヲ検認シタル後ニ非サレハ許諾ヲ為ス可カラス 何レノ場合ニ於テモ親族会議ハ先ニ売却ス可キ不動産及ヒ其有益ト思惟シタル総テノ条件ヲ指示ス可シ 第四百五十八条 此事ニ関スル親族会議ノ決議ハ後見人ヨリ始審裁判所ニ其認許ヲ要求シ之ヲ得タル後ニ非サレハ執行ス可カラス始審裁判所ハ会議局ニ於テ検事ノ意見ヲ聴キタル上其裁決ヲ為ス何シ 第四百五十九条 売却ハ郷内《カントン》常例ノ場所ニ相次テ三次ノ日曜日ニ其掲示ヲ為シタル後監察後見人ノ立会ヲ以テ始審裁判所ノ裁判官又ハ特任ノ公証人競売ニテ公然之ヲ為ス可シ 其掲示書ノ各通ニハ掲示ヲ為ス可キ邑ノ邑長認印シテ之ヲ保証ス可シ 第四百六十条 幼者ノ財産ノ譲与ニ付キ第四百五十七条及ヒ第四百五十八条ニ記シタル法式ハ未分共有者一人ノ要求ニ因リ裁判所ヨリ共有物競売ノ言渡ヲ為ス場合ニ適当セス 此場合ニ於テハ共有物競売ハ唯タ前条ニ記シタル法式ニ従ヒテ之ヲ為ス可シ但シ此競売ニハ必ス外人ノ参関ヲ許ス可シ 第四百六十一条 後見人ハ予メ親族会議ノ允許ヲ得ルニ非サレハ幼者ニ属ス可キ相続ヲ領受シ又ハ辞謝スルヲ得ス○領受ハ目録相続法《ベ子ーフィースダンワンテール》ヲ以テスルノ外之ヲ為スヲ得ス 第四百六十二条 幼者ノ名ヲ以テ辞謝シタル相続ヲ外人ノ領受セサリシ場合ニ於テハ親族会議ノ再議ニ因リ別段ノ允許ヲ得タル後見人又ハ丁年ニ至リタル幼者ハ其時ノ状況ノ侭ニテ相続人ノ缺位《ワカンス》中ニ適法ニ為シタル売却及ヒ其他ノ所為ヲ攻撃スルヲ得ルコトナク更ニ相続ヲ領受スルコトヲ得 第四百六十三条 後見人ハ親族会議ノ允許ヲ得タル後ニ非サレハ外人ヨリ幼者ニ為シタル贈遺ヲ領受スルヲ得ス 贈遺ハ幼者ニ対シテ丁年者ニ対スルト同一ノ効果ヲ生ス可シ 第四百六十四条 後見人ハ親族会議ノ允許ヲ得スシテ幼者ノ不動産権ニ関スル訴ヲ為シ又ハ其権ニ関スル訟求ヲ承諾スルヲ得ス 第四百六十五条 後見人ハ分派ヲ要求スルニ付テモ必ス同一ノ允許ヲ得ルヲ要ス然レトモ後見人ハ外人ヨリ幼者ニ対シテ為シタル分派ノ訟求ニ付キテハ其允許ヲ得スシテ之レニ対答スルコトヲ得 第四百六十六条 丁年者間ニ生ス可キ総テノ効果ヲ幼者ニ得セシムルニハ裁判所ニ於テ分派ヲ為シ且ツ相続開始ノ地ノ始審裁判所ヨリ命シタル鑑定人ニ予メ評価ヲ為サシム可シ 鑑定人ハ其裁判所ノ長又ハ之ニ代ル他ノ裁判官ノ面前ニ於テ誠実ヲ以テ能ク其職務ヲ尽ス可キノ誓約ヲ為シタル後裁判官又ハ裁判官ノ任シタル公証人ノ面前ニ於テ相続財産ヲ区分シテ其分前【ワケマエ】ヲ作ル事ニ着手ス可シ分前ハ此等ノ官吏ヨリ抽籤ヲ以テ之ヲ引渡ス可シ 此他ノ方法ヲ以テ為シタル分派ハ之ヲ仮定ノモノト看做ス可シ 第四百六十七条 後見人ハ親族会議ノ允許ヲ得且ツ始審裁判所検事ヨリ指名シタル法律学士三名ノ意見ヲ聴キタル後ニ非サレハ幼者ノ名ヲ以テ和解ヲ為スヲ得ス 和解ハ始審裁判所ニ於テ検事ノ意見ヲ聴キタル上之ヲ認許シタルニ非サレハ効ナシトス 第四百六十八条 後見人幼者ノ行状ニ付キ重キ戻意ノ事アル時ハ親族会議ニ其事ヲ訴ヘ其允許ヲ得タル時ハ此事ニ関シテ父権ノ巻ニ規定シタル所ニ従ヒ幼者ヲ禁錮センコトヲ要求スルヲ得 第九款 後見人ノ計算 第四百六十九条 後見人管理ヲ終リタル時ハ其管理ニ付キ計算ヲ為ス可シ 第四百七十条 父母ヲ除クノ外後見人ハ後見ノ職ヲ行フ時間中ト雖トモ親族会議ニテ至当ト思惟シタル時ニ於テ其管理ノ状況書ヲ監察後見人ニ出タス可シ但シ後見人ハ毎年一回以上之ヲ出タスニ及ハス 其状況書ハ費用及ヒ裁判上ノ法式ヲ要スルコトナク印税《ダンブル》ナキ紙ニ記シ之ヲ出タス可シ 第四百七十一条 後見ノ決算ハ幼者丁年ニ至リ又ハ後見免除ヲ得タリシ時ハ幼者ノ費用ヲ以テ之ヲ為ス可シ但シ後見人ハ其費用ノ前払ヲ為ス可シ 充分ノ証明アリテ且ツ有益ノ目的ヲ以テ為シタル費用ハ之ヲ後見人ニ償フ可シ 第四百七十二条 後見人ト丁年ニ至リタル幼者トノ間ニ為シタル約束ハ予メ詳細ノ計算書{後見ノ}及ヒ計算ヲ証明スル書類ヲ出シ{後見人ヨリ丁年ニ至リタル幼者ニ}且ツ約束ヲ為シタル時ヨリ少クモ十日前ニ計算書及ヒ書類ノ領受者ヨリ渡シタル領収書ヲ以テ之ヲ証スルニ非サレハ効ナシトス 第四百七十三条 若シ計算ニ付キ争議ヲ生セシ時ハ他ノ民事ノ争議ノ如ク訴訟ヲ為シ裁判ヲ受ク可シ 第四百七十四条 後見人ノ償フ可キ残額ハ計算終結ノ日ヨリ訟求ヲ俟タスシテ利息ヲ生ス可シ 幼者ヨリ後見人ニ償フ可キ残額ハ計算終結ノ後其弁済ノ督促ヲ為シタル日以後ニ非サレハ利息ヲ生セス 第四百七十五条 後見ノ費用ニ関シテ幼者ヨリ後見人ニ対スル総テノ訴権ハ幼者丁年ニ至リタル時ヨリ十年ニシテ時効ヲ生ス可シ 第三章 後見免除《エマンシパション》 第四百七十六条 幼者ハ婚姻ニ因リ当然後見ノ免除ヲ得 第四百七十七条 婚姻ヲ為ササル幼者ト雖モ満十五歳ニ至リシ時ハ其父又父ナキ時ハ其母ヨリ後見ヲ免除スルヲ得 此後見免除ハ父又ハ母ノ陳述ノミニテ之ヲ為ス可シ其陳述ハ治安裁判官書記ノ立会ヲ以テ之ヲ受ク可シ 第四百七十八条 父母ナキ幼者モ満十八歳ニ至リタル時親族会議ニテ相当ト思惟スル時ハ其後見ヲ免除スルコトヲ得 此場合ニ於テハ後見免除ハ之ヲ允許シタル議決書ト治安裁判官親族会議長トシテ其議決書中ニ幼者ノ後見ヲ免除スト記シタル陳述トニ因リテ生ス可シ 第四百七十九条 後見人前条ニ記シタル幼者ノ後見免除ニ付キ何ノ要求ヲモ為サスシテ幼者ノ従兄弟又ハ更ニ近親ノ血属又ハ姻属一人又ハ数人ニ於テ後見免除ヲ為スコトヲ相当ト思惟スル時ハ此等ノ者ヨリ治安裁判官ニ親属会議ノ召集ヲ要求シ其件ヲ議セシムルヲ得 治安裁判官ハ必ス其要求ニ任ス可シ 第四百八十条 後見ノ計算ハ親族会議ニ於テ幼者ノ為メニ任シタル管財人ノ立会ヲ以テ後見免除ヲ得タル幼者ニ之ヲ為ス可シ 第四百八十一条 後見ヲ免カレタル幼者ハ九年ニ超ヘサル賃貸ヲ為シ其入額ヲ収受シ其領収書ヲ交付シ其他単純ノ管理ニ過キサル総テノ所為ヲ為スヲ得但シ丁年者ノ取消ヲ要求スルコトヲ得サル総テノ場合ニ於テハ幼者モ其所為ノ取消ヲ要求スルヲ得ス 第四百八十二条 後見ヲ免カレタル幼者ハ管財人ノ立会ナクシテ不動産ニ関スル訴訟ヲ為シ又其訴訟ノ被告人トナリ又ハ元金ヲ収受シ其領収書ヲ交付スルヲ得ス箸財人ハ第二ノ場合ニ於テハ領収シタル元金ノ使用ヲ監察ス可シ 第四百八十三条 後見ヲ免カレタル幼者ハ始審裁判所ニテ検事ノ意見ヲ聴キタル上認許シタル親族会議ノ議決ヲ得サレハ何ノ名義ニテモ金額ヲ借入ルルヲ得ス 第四百八十四条 後見ヲ免カレタル幼者ハ後見ヲ免カレサル幼者ニ付キ定メタル法式ヲ履行スルニ非サレハ不動産ヲ売却譲与シ又単純ノ管理外ノ所為ヲ為スヲ得ス 幼者買入其他ノ方法ニ因リ約シタル義務ハ過度ノ場合ニ於テハ之ヲ減殺ス可シ此事ニ付キ裁判所ハ幼者ノ資産幼者ト結約シタル者ノ善意悪意費用ノ有益無益ヲ考察ス可シ 第四百八十五条 後見ヲ免カレタル幼者前条ニ従ヒ義務ノ減殺ヲ受クル時ハ後見免除ノ利益ヲ剥奪シ後見免除ハ之ヲ為スニ付キ履行シタルト同一ノ法式ニ従ヒ之ヲ取消ス可シ 第四百八十六条 幼者ハ後見免除ヲ取消シタル日ヨリ再ヒ後見人ノ支配ニ復シ丁年ニ至ル迄後見ヲ受ク可シ 第四百八十七条 後見ヲ免カレタル幼者商業ヲ為ス時ハ商業ニ関スル所為ニ付テハ之ヲ丁年者ト看做ス可シ 第十一巻 丁年、禁治産、裁判所ヨリ任スル補佐人(千八百三年三月二十九日決定四月八日領布) 第一章 丁年 第四百八十八条 丁年ハ満二十一歳ト定ム此年齢ニ至リタル者ハ婚姻ノ巻ニ記シタル制限ヲ除クノ外民生上総テノ所為ヲ行フノ能力アリトス 第二章 禁治産 第四百八十九条 常ニ白痴瘋癲狂疾ノ状況アル丁年者ハ間平癒ノ状アル時ト雖モ治産ノ禁ヲ受ク可シ 第四百九十条 凡テ血属ハ其血属ノ治産ノ禁ヲ訟求スルヲ得夫婦ノ一方モ其配偶者ニ対シテ同一ノ訟求ヲ為スヲ得 第四百九十一条 狂疾ノ場合ニ於テ配偶者又ハ血属ヨリ治産ノ禁ヲ訟求セサル時ハ始審裁判所検事之ヲ訟求ス可シ白痴又ハ瘋癲ノ場合ニ於テモ配偶者又ハ分明ノ血属ナキ時ハ検事之ヲ訟求スルヲ得 第四百九十二条 禁治産ノ訟求ハ始審裁判所ニ為ス可シ 第四百九十三条 白痴、瘋癲、狂疾ノ事実ハ書面ニ詳記ス可シ治産ノ禁ヲ訟求スル者ハ証人及ヒ証書類ヲ出ス可シ 第四百九十四条 裁判所ハ幼年、後見、後見免除ノ巻第二章第四款ニ定メタル方法ニ従ヒ組織シタル親族会議ニ禁治産ノ訴ヲ受ケタル者ノ状況ニ付キ意見ヲ陳述ス可キコトヲ命ス可シ 第四百九十五条 治産ノ禁ヲ訟求シタル者ハ親族会議ニ参加スルヲ得ス然レトモ配偶者及ヒ禁治産ノ訴ヲ受ケタル者ノ子ハ親族会議ニ参加スルヲ得但シ討議ヲ為スヲ得ス 第四百九十六条 裁判所ハ親族会議ノ意見ヲ聴キタル後会議局ニ於テ被告人ヲ訊問ス可シ被告人若シ出廷スル能ハサル時ハ専任裁判官中ノ一人其住所ニ就キ書記ノ立会ニテ訊問ヲ為ス可シ総テノ場合ニ於テ検事ハ訊問ニ臨ム可シ 第四百九十七条 裁判所ハ初度ノ訊問後要用ト思惟スル時ハ被告人ノ身体財産ヲ保管スル為メ仮管理人ヲ任ス可シ 第四百九十八条 禁治産訟求ノ裁判ハ双方ノ申立ヲ聴キタル上又ハ一方ノ者ヲ召喚シ其出廷セサル上ニテ訟廷ニ於テ公ケニ之ヲ為ス可シ 第四百九十九条 裁判所ハ禁治産ノ訟求ヲ却下セシトキト雖モ其時ノ事情ニ従ヒ向後被告人ハ其言渡{却下ノ}ニ因リテ任シタル補佐人ノ立会ナクシテ訴訟和解又ハ金額ノ借入ヲ為シ元金ヲ領受シ其領収書ヲ交付シ財産ヲ譲与シ又ハ書入質トナスヲ得サルコトヲ命スルヲ得 第五百条 始審裁判所ニテ為シタル裁判ニ付キ控訴アリタル場合ニ於テ控訴院ニテ必要ト思惟スル時ハ禁治産ノ訟求ヲ受ケタル者ヲ更ニ訊問シ又ハ専任裁判官ヨリ其訊問ヲ為サシムルヲ得 第五百一条 禁治産又ハ補佐人ノ任命ニ関スル控訴院ノ判決書又ハ始審裁判所ノ言渡書ハ原告人ノ要求ニ因リ十日内ニ其謄本ヲ交付シ之ヲ対手人ニ送達セシメ且ツ之ヲ懸札ニ記載シテ訟廷及ヒ郡ノ公証人役所ニ掲示ス可シ 第五百二条 禁治産又ハ補佐人ノ任命ハ其言渡ノ日ヨリ効ヲ生ス可シ被禁治産者其言渡ノ後ニ為シ又ハ補佐人ノ立会ナクシテ為シタル契約ハ当然其効ナシトス 第五百三条 禁治産以前ニ為シタル契約ハ之ヲ為シタル時既ニ治産ヲ禁スル原由ノ明カニ成立シタリシ時ハ之ヲ取消スヲ得 第五百四条 人ノ死去前ニ禁治産ノ言渡アリシカ又ハ其要求ヲ為セシ時ニ非サレハ其既ニ為シタル契約ヲ其死後ニ於テ瘋癲ノ原由ヲ以テ攻撃スルヲ得ス但シ攻撃シタル契約書ヨリ瘋癲ノ証拠ノ現出スルトキハ格別ナリトス 第五百五条 始審裁判所ニ於テ為シタル禁治産ノ言渡ニ付キ控訴ヲ為ササル時又ハ控訴ヲ為シタル上其言渡ノ確認セラレシ時ハ幼年、後見、後見免除ノ巻ニ定メタル規則ニ従ヒ被禁治産者ノ為メ後見人及ヒ監察後見人ヲ任スルノ准備ヲ為ス可シ○仮管理人ハ其職ヲ退キ自カラ後見人ニ任セラレサリシ時ハ後見人ニ計算ヲ為ス可シ 第五百六条 夫ハ当然治産ノ禁ヲ受ケタル婦ノ後見人トナル可シ 第五百七条 婦ハ夫ノ後見人ニ任セラルルコトヲ得、此場合ニ於テハ親族会議管理ノ法式及ヒ条件ヲ規定ス可シ但シ婦親族会議ノ決議ニ因リ害ヲ受ケタリト思惟スル時ハ裁判所ニ上訴スルヲ得 第五百八条 配偶者尊属親及ヒ卑属親ヲ除クノ外何人ト雖トモ十年以上被禁治産者ノ後見ヲ行フニ及ハス此期限ノ後ハ後見人ハ交代ヲ要求シテ退職スルコトヲ得 第五百九条 被禁治産者ハ其身其財産ニ付キ之ヲ幼者ト同視ス幼者ノ後見ニ関スル法律ハ総テ被禁治産者ノ後見ニ適用ス可シ 第五百十条 被禁治産者ノ入額ハ必ズ其不幸ヲ軽クシ其疾ヲ速カニ平愈セシムルノ用ニ供ス可シ○親族会議ハ幼者ノ疾病ノ性質及其資産ノ状況ニ従ヒ之ヲ其住所ニ於テ療養セシムルカ又ハ摂生所若クハ貧院ニ入ル可キカヲ議定スルヲ得 第五百十一条 被禁治産者ノ子婚姻ヲ為サントスルトキハ嫁資又ハ相続物ノ前受取其他婚姻財産ニ関スル約束ハ裁判所ヨリ検事ノ意見ヲ聴キタル上認許シタル親族会議ノ意見ニ因テ之ヲ規定ス可シ 第五百十二条 禁治産ハ之ヲ為シタル原因ノ消滅ト共ニ消滅ス然レトモ禁治産ノ除去ハ治産ノ禁ヲ為スニ付キ定メタル法式ヲ履行シタル後ニ非サレハ之ヲ言渡サス又被禁治産者ハ除去ノ言渡後ニ非サレハ其権利ノ執行ヲ復スルヲ得ス 第三章 裁判所ヨリ任スル補佐人 第五百十三条 浪費者ハ裁判所ヨリ任シタル補佐人ノ立会ナクシテ訴訟、和解、金額ノ借入ヲ為シ元金ヲ領受シテ其領収書ヲ与ヘ財産ノ譲与ヲ為シ不動産ヲ書入質ト為スノ禁ヲ受クルコトアル可シ 第五百十四条 補佐人ノ立会ナクシテ所為ヲ行フノ禁ハ禁治産ヲ要求スルノ権アル者之ヲ要求スルヲ得其要求ハ同一ノ方法{禁治産ノ要求ト}ヲ以テ吟味裁判ス可シ 此禁ハ同一ノ法式{禁治産ノ除去ト}ヲ履行スルニ非サレハ除去スルヲ得ス 第五百十五条 禁治産又ハ補佐人ノ任命ニ付テハ始審控訴ヲ問ハス検察官ノ意見ヲ聴キタル上ニ非サレハ何ノ言渡ヲモ為スヲ得ス 第二篇 財産及ヒ所有権ノ種々ノ変更 第一巻 財産ノ区別(千八百四年一月二十五日決定二月四日頒布) 第五百十六条 総テノ財産ハ動産又ハ不動産ナリトス 第一章 不動産 第五百十七条 財産ハ或ハ其性質ニ因テ或ハ其用法ニ因テ或ハ其適従スル目的ニ因テ不動産ナリトス 第五百十八条 土地及ヒ建造物ハ其性質ニ因テ不動産ナリトス 第五百十九条 杙ニ附着シテ建造物ノ一部ヲ為ス風車及ヒ水車モ其性質ニ因テ不動産ナリトス 第五百二十条 根ニ因テ地ニ附着スル収穫物及ヒ未タ摘採セサル樹菓モ同シク不動産ナリトス 収穫物ハ之ヲ刈取シ菓実ハ之ヲ摘採スレハ未タ之ヲ持去ラサル時ト雖トモ動産ナリトス 若シ収穫物ノ一部ノミヲ刈取セシ時ハ其部分ノミ動産ナリトス 第五百二十一条 伐採ス可キ小樹及ヒ定期伐採ヲ為ス可キ大樹ノ常例伐採スルモノハ伐倒スニ従ヒ動産ナリトス 第五百二十二条 耕作ノ為メ土地ノ所有者ヨリ土地賃借人又ハ小作人《メティエー》ニ交付スル獣類ハ評価セシト否トヲ問ハス契約ノ効ニ因テ土地ニ附着セラルル間之ヲ不動産ト看做ス可シ 所有者ヨリ土地賃借人又ハ小作人ニ非サル者ニ賃貸シタル獣類ハ動産ナリトス 第五百二十三条 家屋又ハ其他ノ不動産ニ水ヲ導ク管ハ不動産ニシテ其附着スル不動産ノ一部ヲ為スモノトス 第五百二十四条 土地ノ所有者土地ニ使用シ及ヒ土地ノ耕耘ノ為メ備ヘタル物件ハ用法ニ因ル不動産ナリトス 故ニ左ニ記スル物件ハ所有者ヨリ土地ノ使用及ヒ耕耘ノ為メ備ヘタル時ハ用法ニ因ル不動産ナリトス 耕耘ニ用ユル獣類 農具 土地賃借人又ハ小作人ニ渡シタル種子 鳩舎アル鳩 兎圏アル兎 巣アル蜜蜂 池沼アル魚 圧搾器、釜、蒸溜器、桶、樽 鎔鋳、製紙、其他ノ製造ヲ為スニ必要ノ器具 藁及ヒ肥料 所有者永久ノ為メ土地ニ附着シタル総テノ動産モ用法ニ因ル不動産ナリトス 第五百二十五条 粘土、石灰又ハ漆喰【シツクヒ】ヲ以テ動産ヲ不動産ニ附着シタル時又ハ動産ヲ毀壊損敗セス又其附着スル不動産ノ一部ヲ毀壊損敗セスシテ動産ヲ分離スルヲ得サル時ハ所有者永久ノ為メ動産ヲ不動産ニ附着シタリト看做ス可シ 房室ノ玻璃板ハ之ヲ附着スル框【ワク】ノ造作物《ボワズリー》ト一体ヲ為ス時ハ永久ノ為メニ附着セラレタリト看做ス可シ 画額及ヒ其他ノ装飾具モ同前ナリトス 尊像{尊像トハ全体ノ像ヲ云フ}ハ之ヲ安置スル為メ特ニ壁ニ鑿チタル龕洞ニ在ル時ハ毀壊損敗ヲ為スコトナク除去スルヲ得ル時ト雖トモ不動産ナリトス 第五百二十六条 左ノ物件ハ其適従スル目的ニ因テ不動産ナリトス 不動産ノ収実権《ユジユフルイ》 地権《セルヴィチウド》 不動産取戻ノ訴権 第二章 動産 第五百二十七条 財産ハ其性質ニ因テ又ハ法定ニ因テ動産ナリトス 第五百二十八条 禽獣ノ如ク自ラ転動スルト無生活物ノ如ク外力ノ効ニ因リ其位置ヲ変スルトヲ問ハス此所ヨリ彼所ニ運転スルヲ得可キ物体ハ其性質ニ因テ動産ナリトス 第五百二十九条 弁済期限ニ至リタル金額又ハ動産ヲ目的トスル義務及ヒ訴権、銀行業、商業又ハ工業ノ会社ノ株式ハ其作業ニ関スル不動産カ会社ニ属スル時ト雖トモ法定ニ因リ之ヲ動産ナリトス其株式ハ会社ノ存続スル間各社員ニ対シテノミ之ヲ動産ト看做ス可シ 政府又ハ常人ニ対スル無期又ハ畢生間ノ年金モ法定ニ因テ動産ナリトス 第五百三十条 (千八百四年三月二十一日決定同月三十一日頒布)不動産売却ノ代価トシテ若クハ不動産ノ有償又無償ノ譲与ノ約件《コンヂシヨン》トシテ永久ニ約定シタル年金ハ当然之ヲ買戻スコトヲ得 然レトモ権利者ハ買戻ノ約款《クローズ》及約件ヲ定ムルヲ得 又権利者ハ或ル期限ノ後ニ非サレハ年金ノ払戻ヲ為スヲ得サルコトヲ要約スルヲ得但シ其期限ハ三十年ヲ超過ス可カラス○之ニ反スル契約ハ総テ効ナシトス 第五百三十一条 小艇、援渡船【ツナワタシブ子】、船舶、水車船、浴泳船及ヒ概シテ杙ヲ以テ結搆セス且ツ家屋ノ一部ヲ為ササル総テノ製造所ハ動産ナリトス然レトモ此物件中ノ二三ノ差押ヲ為スニハ其重大ナルノ故ニ因リ訴訟法ニ明記スル如ク別段ノ法式ニ循フ可シ 第五百三十二条 建造物ヲ毀壊ノ得タル材料及ヒ新建築ヲ為ス為メニ集メタル材料ハ工丁之ヲ建築ニ使用スル迄ハ動産ナリトス 第五百三十三条 動産《ミユーブル》ノ語ハ法律ノ条令《ヂスポジシヨン》中又ハ人ノ規約《ヂスポジシヨン》中ニ指定モ添加モナク単ニ之ヲ用井シ時ハ貨幣、賓石、貸金、書籍、賞牌、学術工芸ノ器具、襯衣、馬、車、兵器、穀物、葡萄酒、枯草及ヒ其他ノ日用物ヲ含マズ又商業ノ目的タル物件ヲモ含マサルモノトス 第五百三十四条 装飾動産《ミユーブルミユーブラン》ノ語ハ「タピスリー」{臥床倚子等ニ懸ケ其他房室内ノ壁並ニ諸物件ヲ蔽フ為メニ用ユル麻布ノ織物ヲ云フ}臥床、倚子、鏡、懸時計、卓子、陶器其他之ト同質ノ諸物件ノ如ク房室ノ装飾及ヒ使用ニ供スル動産ニ非サレハ含マサルモノトス 房室ノ動産ノ一部ヲ為ス画額及ヒ尊像モ装飾動産中ニ含ム然レトモ展列室又ハ別段ノ房室内ニ集メタル画額ハ此中ニ含マス 陶器モ同様ナリトス但シ房室ノ装飾ノ一部ヲ為ス者ニ限リ装飾動産ノ名称中ニ含ム 第五百三十五条 「ビヤンミューブル」「モビリエー」「エフエーモビリエー」ノ語ハ概シテ前数条ニ定メタル規則ニ循ヒ動産ト看做ス可キ総テノ物ヲ含ム 動産附キ家屋ノ売却又ハ贈遺ニハ装飾動産ニ非サレハ含マス 第五百三十六条 家屋内ニ在ル諸物件ト共ニ為ス家屋ノ売却又ハ贈遺ニハ貨幣、貸金及ヒ其他家屋内ニ証書ヲ蔵置スルコトヲ得可キ権利ヲ含マス其他ノ動産ハ総テ之ヲ含ム 第三章 財産ヲ占有スル者トノ関係ニ於ケル財産 第五百三十七条 常人ハ法律ニ因リ定メタル変更ニ従ヒ己レニ属スル財産ヲ自由ニ処分スルコトヲ得常人ニ属セサル財産ハ別段ノ法式規則ニ循テ管理シ又別段ノ法式規則ニ循フニ非レハ譲与スルコトヲ得ス 第五百三十八条 政府ニテ負担スル道路、街衢、舟筏ノ通ス可キ河川、浜岸、積地、湊港、小港、碇泊場其他概シテ私有ト為ス可カラサル仏蘭西領地ノ総テノ部分ハ公領ノ所属ト看做ス可シ 第五百三十九条 主ナキ缺位ノ財産、相続人ヲ遺留セス死去シタル者ノ財産又ハ相続ノ辞謝セラレタル財産ハ総テ公領ニ属ス可シ 第五百四十条 城寨ノ門、壁、壕、塁モ公領ノ一部ナリトス 第五百四十一条 現今城寨ニ非サル場所ノ土地、塁砦モ同前ナリトス是等ハ政府ヨリ有効ニ譲与セス又ハ政府ニ対シ時効ニ因テ其所有権ヲ獲得セサリシ時ハ政府ニ属ス可シ 第五百四十二条 邑財産トハ一邑若シクハ数邑ノ住民カ所有又ハ菓実ニ付キ既得権ヲ有スル財産ヲ云フ 第五百四十三条 人ハ財産ニ付キ或ハ所有権ヲ有シ或ハ単純ノ収益権ヲ有シ或ハ止タ地権ヲ有スルコトヲ主張スルヲ得 第二巻 所有権(千八百四年一月二十七日決定二月六日頒布) 第五百四十四条 所有権トハ法律又ハ規則ヲ以テ禁止シタル使用ヲ為ササルニ於テハ不羈《アブソリユム》ノ方法ヲ以テ物件ニ付キ収益ヲ為シ且ツ物件ヲ処分スルノ権ヲ云フ 第五百四十五条 何人ト雖モ公用ノ為メニシテ且ツ予メ至当ノ賠償ヲ得ルニ非サレハ所有権ヲ譲与スルコトヲ要強セラルルコトナシ 第五百四十六条 動産不動産ヲ問ハス物件ノ所有権ハ其物件ヨリ生スル物ニ付キ及ヒ自然又ハ人為ニ因テ其物件ニ附従結合スル物ニ付キ権利ヲ与{所有者ニ}フルモノトス 此権利ヲ附加権ト云フ 第一章 物件ヨリ生シタル物ニ付テノ附加権 第五百四十七条 土地ノ自然又ハ人為ノ菓実 民法上ノ菓実 獣類ノ増殖 是等ハ附加権ニ因リ所有者ニ属ス 第五百四十八条 物件ヨリ生シタル菓実ハ外人ノ為シタル耕耘労力及ヒ種子ノ費用ヲ償ハサレハ所有者ニ属セス 第五百四十九条 単純ノ占有者ハ善意ニテ占有スル時ニ非サレハ菓実ヲ自己ノ所有ト為スヲ得ス反対ノ場合ニ於テハ物件ノ取戻ヲ要求スル所有者ニ其物件ト共ニ菓実ヲ返還ス可シ 第五百五十条 占有者所有権ヲ移転スル証書ニ瑕瑾アルコトヲ知ラス其証書ニ因テ所有者トシテ占有ヲ為ス時ハ善意ノ占有者ナリトス占有者其瑕瑾ヲ知リタル時ハ善意ノ占有者タルコトヲ巳ム可シ 第二章 物件ニ結合混同スル物ニ付テノ附加権 第五百五十一条 物件ニ結合混同スル物ハ下ニ定ムル規則ニ循ヒ所有者ニ属ス 第一款 不動産物件ニ関スル附加権 第五百五十二条 土地ノ所有権ハ地上地下ノ所有権ヲ提起ス可シ 所有者ハ地役ノ巻ニ記スル例外ヲ除キ相当ト思惟スル総テノ植栽及ヒ建築ヲ地上ニ為スコトヲ得 所有者ハ鉱坑ニ関スル法律規則及ヒ警察ノ法律規則ヨリ生スル変更ヲ除キ相当ト思惟スル総テノ建築及ヒ掘鑿ヲ地下ニ為シ其掘鑿ヨリ生スルヲ得可キ総テノ菓実ヲ収得スルヲ得 第五百五十三条 地上又ハ地下ノ総テノ建築、植栽及ヒ工作ハ反対ノ証ナキニ於テハ所有者其費用ヲ以テ之ヲ為シ且ツ所有者ニ属スト看做ス可シ但シ此規則ト他人ノ家屋敷地ノ地下又ハ家屋ノ他ノ部分ニ付キ外人時効ニ因リノ獲得シ又ハ獲得スルヲ得ル所有権ト抵触スルコトナカル可シ 第五百五十四条 自己ニ属セサリシ材料ヲ以テ建築、植栽、工作ヲ為シタル土地ノ所有者ハ其代価ヲ払フ可シ若シ損害アル時ハ其賠償ヲ為スノ言渡ヲモ受ク可シ然レトモ材料ノ所有者ハ之ヲ取去ルノ権ナシトス 第五百五十五条 外人若シ自己ノ材料ヲ以テ植栽、建築及ヒ工作ヲ為セシ時ハ土地ノ所有者ハ或ハ之ヲ保有シ或ハ之ヲ除去スヘキコトヲ外人ニ要強スルノ権アリトス 若シ土地ノ所有者植栽及ヒ建築ノ除去ヲ要求スル時ハ所有者ニ賠償ヲ為スコトナク植栽、建築ヲ為セシ者ノ費用ヲ以テ其除去ヲ為ス可シ植栽、建築ヲ為セシ者ハ土地ノ所有者ヨリ証スルヲ得可キ損害アル時ハ其賠償ヲ為スノ言渡ヲ受クルコトアル可シ 土地ノ所有者若シ植栽及ヒ建築ヲ保有セント欲スル時ハ土地ノ得タル地価ノ多少ノ増加ニ拘ハラス材料ノ代価ト作料トヲ償フ可シ但シ善意ナルヲ以テ菓実返還ノ言渡ヲ受ク可カラサル被却外人《チエールエワンセー》{占有スル物件ヲ其所有者ヨリ取戻サルル者}カ植栽建築工作ヲ為セシ時ハ土地ノ所有者ハ其工作植栽建築ノ取去ヲ要求スルヲ得ス然レトモ土地ノ所有者ハ材料ノ代価及ヒ作料ヲ償フカ或ハ土地ノ代価ノ増加シタル高ニ均シキ金額ヲ償フノ撰択権ヲ有ス可シ 第五百五十六条 河川ノ沿岸ノ地ニ人ノ知覚スルコトナク漸々一生シタル洲渚及ヒ堆積地ヲ漸積地《アリユウイヨン》ト云フ 漸積地ハ舟筏ノ通ス可キ河川タルト否トヲ問ハス其沿岸ノ地ノ所有者ニ属ス可シ○第一ノ場合ニ於テハ規則ニ循ヒ纜路【ヒキフ子ミチ】ヲ余スノ負担アリトス 第五百五十七条 流水カ人ノ知覚スルコトナク岸ノ一方ヲ退キ他ノ一方ヲ浸スニ因リ生シタル乾凅地モ同前ナリトス露出シタル岸ノ所有者ハ其漸積地ヲ益【エキ】シ対岸ノ者ハ其失フクル土地ヲ要求スルコトヲ得ス 此権利ハ海ノ乾凅地ニ関シテ生スルコトナシトス 第五百五十八条 湖及ヒ池ニ付テハ漸積地有ルコト無シ湖池ノ所有者ハ水量ノ減シタル時ト雖モ水量ノ池ノ水吐口ト均シキ高サニ至リタル時水ノ淹フ土地ヲ常ニ保有スヘシ 之ニ準シ池ノ所有者ハ水ノ異常ノ匯出ニ因テ淹フ沿岸ノ地ニ付キ何等ノ権利ヲモ獲得セス 第五百五十九条 舟ノ通スヘキ又ハ通ス可ラザル河川急激ノ力ニ因テ沿岸ノ田圃ノ闊大ニシテ弁識シ得可キ部分ヲ割取リ之ヲ下流ノ田圃又ハ対岸ニ転置セシ時ハ割取ラレタル部分ノ所有者ハ其所有権ヲ要求スルヲ得然レトモ一年内ニ其訟求ヲ為ササルヲ得ス此期限後ハ割取ラレタル部分ヲ合併シタル田圃ノ所有者尚ホ其部分ヲ占有セサリシ時ニ非サレハ其訟求ヲ受理セサル可シ 第五百六十条 舟筏ノ通ス可キ河川ノ河身中ニ生スル島嶼、洲渚ハ反対ノ証書若クハ時効アルニ非サレハ政府ニ属ス可シ 第五百六十一条 舟筏ノ通ス可カラサル河川中ニ生スル島嶼、洲渚ハ島嶼ヲ生シタル方ノ沿岸ノ所有者ニ属ス島嶼若シ一方ニ就テノミ生セサル時ハ河川ノ中央ニ画引スル想定線ヲ彊界トシ両岸ノ所有者ニ属ス可シ 第五百六十二条 若シ河川新タニ支流ヲ生シ沿岸所有者ノ田圃ヲ中断環繞シテ島ト為シタル時ハ其島舟筏ノ通ス可キ河川中ニ生セシ時ト雖トモ所有者ハ其田圃ノ所有権ヲ保有ス可シ 第五百六十三条 舟筏ノ通スヘキ又ハ通ス可ラサル河川旧河身ヲ遺棄シテ新決路ヲ生スル時ハ新タニ浸占セラレタル土地ノ所有者ハ賠償ノ名義ヲ以テ割取ラレタル土地ノ割合ニ従ヒ各旧河身ヲ所有ス可シ 第五百六十四条 他ノ鳩舎、兎圏、池沼ニ移棲スル鳩、兎、魚ハ詐欺、奸計ヲ以テ誘致セラレタルニ非ルトキハ此物件{鳩舎、兎圏等}ノ所有者ニ属ス可シ 第二款 動産物件ニ関スル附加権 第五百六十五条 附加権若シ二人殊別ノ所有者ニ属スル二箇ノ動産物件ヲ以テ其目的ト為ス時ハ全ク正理ノ原則ニ循フ可シ 次ノ規則ハ法律ノ予定セサル場合ニ於テ別段ノ情況ニ従ヒ裁判官裁判ヲ為スノ例規トナル可シ 第五百六十六条 殊別ノ所有者ニ属スル二箇ノ物件結合シテ一全体ヲ為シタリト雖トモ其一ハ他ノ一ナキモ成立シ得ル如ク分離スルヲ得可キ時ハ其全体ハ結合シタル物件ノ代価ヲ他ノ所有者ニ償フノ負担ヲ以テ主部分ヲ為ス物件ノ所有者ニ属ス可シ 第五百六十七条 第一ノ部分ノ使用、装飾、又ハ補缺ノ為メニ非サレハ他ノ部分ノ結合ヲ受ケサルモノヲ主部分ト看做ス可シ 第五百六十八条 然レトモ結合ヲ為シタル物件、主物件ヨリ最モ貴重ニシテ且ツ其所有者知ルコトナクシテ主物件ノ所有者之ヲ使用セシ時ハ結合物件ノ所有者ハ其結合ヲ受ケタル物件ニ幾分ノ損壊ヲ生スルヲ得可キ時ト雖モ返還ヲ得ル為メ結合シタル物件ヲ分離センコトヲ要求スルヲ得 第五百六十九条 若シ一箇ノ全体ヲ為ス為メ結合シタル二箇ノ物件中ノ一、他ノ物件ノ附属物ト看做スヲ得サル時ハ代価最貴キモノヲ以テ若シ又代価殆ント同シキ時ハ積量最大ナルモノヲ以テ主物件ト看做ス可シ 第五百七十条 若シ工師又ハ其他ノ人、新種ノ物件ヲ製作センカ為メ自巳ニ属セサル材料ヲ使用シタル時ハ其材料ノ原形ニ復スルト否トヲ問ハス其所有者ハ作料ヲ償ヒ其材料ヲ以テ製作シタル物件ヲ要求スルノ権アリトス 第五百七十一条 然レトモ作料若シ使用シタル材料ノ代価ヨリ著シク倍過スルカ如クニ貴キ時ハ製作ヲ以テ主部分ト看做シ工師ハ所有者ニ材料ノ代価ヲ償ヒテ製作シタル物件ヲ保有スルノ権アリトス 第五百七十二条 人若シ新種ノ物件ヲ製作センカ為メ二部ノ材料各々全ク毀壊スルコトナシト雖モ障碍ナク之ヲ離分スルヲ得サルカ如クニ一部ハ自巳ニ属セシ材料一部ハ自巳ニ属セサリシ材料ヲ使用セシ時ハ其物件ハ一方{所有者ノ}ノ為メニハ之ニ属セシ材料ノ割合ヲ以テ、他ノ一方ノ為メニハ之ニ属セシ材料ト作料トノ割合ヲ以テ二人ノ所有者ノ共有トナル可シ 第五百七十三条 数人ノ所有者ニ属スル数多ノ材料ノ混合ヲ以テ一物件ヲ製作シ孰レモ主物件ト看做スヲ得サル時若シ其材料ヲ分離スルヲ得ル時ハ知ルコトナクシテ材料ヲ混合セラレタル者其分離ヲ要求スルヲ得 若シ障碍ナク物件ヲ分離スルヲ得サル時ハ数人ノ所有者ハ各自ニ属スル材料ノ分量、品位及ヒ代価ノ割合ニ従テ共同ニ其所有権ヲ獲得ス可シ 第五百七十四条 諸所有者中ノ一人ニ属スル材料若シ分量及ヒ代価ニ於テ著シク他ノ材料ニ倍過スル時ハ代償ノ倍過スル材料ノ所有者ハ此場合ニ於テ他ノ所有者ニ其材料ノ代価ヲ償ヒ混合ニ因テ生シタル物件ヲ要求スルコトヲ得 第五百七十五条 物件若シ之ヲ製作シタル材料ノ諸所有者ノ間ニ共同ニ存スル時ハ其物件ハ共同ノ利益ノ為メ之ヲ競売ス可シ 第五百七十六条 他種ノ物件ヲ製作スル為メ知ルコトナクシテ其材料ヲ使用セラレタル所有者其物件ノ所有権ヲ要求スルヲ得ル総テノ場合ニ於テハ其所有者ハ同一ノ性質、分量、度量、品位ヲ以テ其材料ノ返還又ハ其代価ヲ要求スルノ撰択権ヲ有ス可シ 第五百七十七条 他人ニ属スル材料ヲ他人知ルコト無クシテ使用シタル者ハ損害ノ賠償ヲ為ス可キ場合ニ於テハ其言渡ヲモ受ク可シ但シ此規則ト場合ニ因リ変例法ニ依テ為ス訴訟ト抵触スルコトナカル可シ 第三巻 収実権《ユジユフンイ》、使用権及ヒ住居権(千八百四年一月三十日決定二月九日頒布) 第一章 収実権 第五百七十八条 収実権トハ他人所有権ヲ有スル物件ニ付キ其体質ヲ保存スルノ負担ヲ以テ所有者自身ノ如ク収益ヲ為スノ権ヲ云フ 第五百七十九条 収実権ハ法律又ハ人意ニ因テ設定ス 第五百八十条 収実権ハ或ハ単純ニ或ハ日ヲ定メ或ハ約件ヲ以テ設定スルヲ得 第五百八十一条 収実権ハ諸種ノ動産又ハ不動産ニ付キ設定スルヲ得 第一款 収実者ノ権利 第五百八十二条 収実者ハ其収実権ヲ有スル物件ヨリ生スルヲ得可キ天然、人為又ハ民法上ノ諸種ノ菓実ニ付キ収益ヲ為スノ権アリトス 第五百八十三条 天然ノ菓実トハ土地ノ偶成ノ産物ヲ云フ獣類ヨリ生スル産物、獣類ノ増殖モ天然ノ菓実ナリトス 土地ノ人為ノ菓実トハ耕作ニ因テ得ルモノヲ云フ 第五百八十四条 民法上ノ菓実トハ家屋ノ貸賃、弁済期限ニ至リタル金額ノ利息、年金ノ賦額ヲ云フ 土地ノ貸賃モ民法上ノ菓実ノ部中ニ加フ可シ 第五百八十五条 収実権ノ開始シタル時ニ於テ枝又ハ根ニ因テ附着スル天然及ヒ人為ノ菓実ハ収実者ニ属ス可シ 収実権ノ終リタル時ニ於テ同一ノ状況アル菓実ハ双方ヨリ労動ト種子トヲ相償フコトナク所有者ニ属ス可シ但シ収実権ノ開始又ハ終了ノ時ニ於テ小作人アリシ時ハ其得可キ菓実ノ部分ニ損害ヲ加フルコトナカル可シ 第五百八十六条 民法上ノ菓実ハ日毎ニ之ヲ獲得スルモノト看做シ、収実権ノ時期ニ准シ収実者ニ属ス○此規則ハ家屋ノ貸賃及ヒ其他ノ民法上ノ菓実ニ適当スル如ク土地ノ貸賃ニ適当ス可シ 第五百八十七条 収実権若シ貨幣、穀物、飲料ノ如ク消費スルニ非サレハ使用ヲ為スヲ得サル物件ヲ含ム時ハ収実者ハ之ヲ使用スルノ権アリ但シ収実権ノ終期ニ於テ同一ノ分量、品位、価格又ハ其評定代価ヲ返還スルノ負担アリトス 第五百八十八条 畢生間ノ年金ノ収実権ハ何等ノ返還ヲモ為スコトナク収実ノ時間其賦額ヲ収受スルノ権ヲ収実者ニ附与ス可シ 第五百八十九条 収実権若シ麻布、装飾動産ノ如ク直チニ消費セサルモ使用ニ因テ漸々損敗ス可キ物件ヲ含ム時ハ収実者ハ其定マリタル用法ニ従ヒ使用ヲ為スノ権利アリテ収実権ノ終期ニ於テ其時ノ状況ノ侭ニテ其返還ヲ為スノ義務アルノミ但シ詐欺又ハ過失ニ因テ損敗セシ時ハ格別ナリトス 第五百九十条 収実権若シ定時伐採ス可キ小樹ヲ含ム時ハ収実者ハ必ス所有者ノ伐採法又ハ慣例ニ従テ伐採ノ順序及ヒ分量ヲ循守ス可シ但シ小樹《タイイー》、中樹《バリボー》、大樹《ヒュテー》ヲ問ハス収実者収益ノ時間ニ常例ノ伐採ヲ為ササリシモ収実者又ハ其相続人ノ為メ其償ヲ出タスコトナカル可シ 培樹場ヲ毀損スルコトナク抜取ルコトヲ得可キ樹木ハ収実者代樹ヲ植ルニ付キ其地ノ慣習ニ従フノ負担ヲ以テスルニ非サレハ収実権ノ部分ヲ為ササルモノトス 第五百九十一条 又収実者ハ旧所有者ノ伐採ノ時期ト慣例トニ循ヒ土地ノ一部ニ付キ定時ニ伐採ヲ為スト土地ノ全部ニ付キ樹木ノ差別ナク定数ノ伐採ヲ為ストヲ問ハス定期伐採ヲ為ス可キ大樹ノ一部ニ付キ常ニ収益ヲ為ス可シ 第五百九十二条 其他ノ場合ニ於テハ収実者ハ大樹ニ干触スルヲ得ス唯其担当ス可キ修理ヲ為ス為メニ変災ニ因テ倒仆シ或ハ摧折シタル樹木ヲ使用スルヲ得ルノミ又修理ノ為メ必要ナルニ於テハ尚ホ之ヲ伐倒スコトヲ得但シ所有者ト共ニ其必要ナルコトヲ証明セシムルノ負担アリトス 第五百九十三条 収実者ハ葡萄ノ架材ヲ樹林ヨリ採取スルヲ得又年々又ハ時々ノ産物ヲ樹木ヨリ採取スルヲ得但シ孰レモ土地ノ慣例又ハ所有者ノ慣習ニ循フ可シ 第五百九十四条 枯稿セシ菓樹、変災ニ因テ倒仆シ又ハ摧折セシ菓樹ハ他ノ菓樹ヲ補植スルノ負担ヲ以テ収実者ニ属ス 第五百九十五条 収実者ハ自ラ収益ヲ為シ其権利ヲ他人ニ賃貸、売却シ又ハ無償ニテ譲与スルヲ得若シ其賃貸ヲ為ス時ハ其契約ヲ改更ス可キ時期及ヒ其期限ニ付テハ婚姻財産契約及ヒ夫婦相互ノ権利ノ巻ニ於テ婦ノ財産ニ対シ夫ノ為メニ定メタル規則ニ循フ可シ 第五百九十六条 収実者ハ漸積ニ因テ収実権ヲ有スル物件ニ生シタル増加物ニ付キ収益ヲ為ス可シ 第五百九十七条 収実者ハ地権、通行権及ヒ概シテ所有者ノ収益ヲ為スヲ得ル総テノ権利ニ付キ収益ヲ為シ且ツ所有者自身ノ如ク其収益ヲ為ス可シ 第五百九十八条 又収実者ハ収実権開始ノ時ニ於テ掘採中ノ金属砿及ヒ石砿ニ付キ所有者ト同一ノ方法ヲ以テ収益ヲ為ス可シ然レトモ借地免許ヲ得スシテ為スヲ得サル掘採ニ付テハ収実者ハ国王ノ允許ヲ得タル上ニ非サレハ其収益ヲ為スヲ得ス 収実者ハ未タ掘採セサル金属砿及ヒ石砿、未タ掘採ヲ始メサル泥炭地、収実時間ニ発見スルヲ得可キ埋蔵物《トンゾール》ニ付テハ何等ノ権ヲモ有セス 第五百九十九条 所有者ハ其所為ニ因リ又何等ノ方法ニ依ルヲ問ハス収実者ノ権利ヲ害スルヲ得ス 収実者ハ収実権終了ノ時ニ於テ仮令物件ノ価格増加シタル時ト雖トモ其為シタリト主張スル改良ニ付キ己レノ方ヨリ何等ノ賠償ヲモ要求スルヲ得ス 然レトモ収実者及ヒ其相続人ハ収実者ノ備付ケタル鏡、画額其他ノ装飾物ヲ持去ルヲ得但シ場所ヲ原状ニ復スルノ負担アリトス 第二款 収実者ノ義務 第六百条 収実者ハ現状ノ侭ニテ物件ヲ領受ス然レトモ収実者ハ所有者ノ立会ニテ又ハ之ヲ呼出シ其出会セサル上ニテ収実権ニ供シタル動産ノ目録ト不動産ノ景状書トヲ作ラシメタル後ニ非サレハ収益ヲ始ムルヲ得ス 第六百一条 収実者ハ収実権設定証書ニ因テ保証人ヲ立ツルノ免除ヲ得サル時ハ良家父ノ如ク収益ヲ為スニ付キ保証人ヲ立ツ可シ但シ子ノ財産ニ付キ法律上ノ収実権ヲ有スル父母、収実権ヲ保有スル売主又ハ贈遺者ハ保証人ヲ立ツルニ及ハス 第六百二条 収実者若シ保証人ヲ得サル時ハ不動産{収実ヲ為ス}ハ之ヲ賃貸シ又ハ附託シ 収実権中ニ含ム金額ハ之ヲ益用シ 日用物ハ之ヲ売却シ其売却ニ因テ得タル代価ハ同シク之ヲ益川シ 其金額ノ利息及ヒ不動産ノ貸賃ハ此場合ニ於テ収実者ニ属ス可シ 第六百三条 収実者ヨリ保証人ヲ立テサル時ハ所有者ハ使用ニ因テ消耗ス可キ動産ノ代価ヲ日用物ノ代価ノ如ク益用センカ為メ其動産ヲ売却センコトヲ要求スルヲ得此場合ニ於テハ収実者ハ収実ノ時間其利息ヲ収益ス但シ収実者ハ事情ニ因リ単ニ誓約ヲ以テ且ツ収実権消滅ノ時其返還ヲ為スノ負担ヲ以テ其使用ノ為メ必要ナル動産ノ一部ヲ存留センコトヲ要求スルヲ得又裁判官ハ之ヲ命スルヲ得 第六百四条 保証人ヲ立ツルノ淹滞ハ収実者ニ其権利ヲ有スルヲ得ル菓実ヲ失ハシメズ菓実ハ収実権ノ開始セシ時ヨリ収実者ニ属ス可シ 第六百五条 収実者ハ保存ノ修理ニ非サレハ為スニ及ハス 大修理ハ収実権ノ開始後小修理ヲ為ササルニ起因セサリシ以上ハ所有者ノ負担ニ帰ス但シ小修理ヲ為ササルニ起因シタル場合ニ於テハ収実者ノ負担ニ帰ス 第六百六条 大修理トハ大墻壁、天井ノ修理、棟梁【ム子】及ヒ屋蓋【ヤ子】ノ全部ノ改造、塘堤及ヒ支持ノ墻壁、繞囲ノ墻壁ノ全部ノ改造ヲ云フ 其他ノ修理ハ総テ保存ノ修理トス 第六百七条 所有者モ収実者モ朽腐ニ因テ潰廃シ又ハ意外ノ変ニ因テ敗壊シタルモノヲ再建スルニ及ハス 第六百八条 収実者ハ収益ノ時間租税其他慣習ニ因リ菓実ニ付テノ負担ト看做ス可キモノノ如キ総テ不動産ニ付テノ年々ノ負担ヲ為ス可シ 第六百九条 収実権ノ時間所有権ニ課スルヲ得ル負担ニ付テハ収実者及ヒ所有者ハ左ノ如ク分担ス可シ 所有者ハ必ス負担ヲ支弁ス可ク収実者ハ所有者ニ必ス其利息ヲ計算ス可シ 収実者若シ予シメ負担ヲ支弁セシ時ハ収実権ノ終期ニ於テ元金ノ返還ヲ得可シ 第六百十条 遺嘱者ノ為シタル畢生間ノ年金又ハ養料ノ遺嘱ニ付テハ何等ノ償還ヲモ得ル{所有者ヨリ}コトナク収実権全部ノ受嘱者ハ其{年金又ハ養料ノ}全部ヲ支弁シ又収実権一部ノ受嘱者ハ其収益ノ割合ニ従ヒ之ヲ支弁ス可シ 第六百十一条 特定遺嘱物ノ収実者ハ不動産ヲ書入質トシテ為{遺嘱者ノ}シタル負債ヲ負担スルニ及ハス若シ其弁済ヲ要強セラレシ時ハ生者間ノ贈遺及ヒ遺嘱ノ巻第千二十条ニ記スル場合ノ外所有者ニ対シテ其償還ヲ要求ス可シ 第六百十二条 財産ノ全部又ハ一部ノ収実者ハ左ノ如ク所有者ト共ニ負債ノ弁済ヲ分担ス可シ 収実権ニ供シタル不動産ノ価額ヲ評定シ然ル後其価額ノ割合ニ従テ負債分担法ヲ定ム可シ 収実者若シ不動産ヲ以テ分担ス可キ金額ヲ予メ支弁セント欲スル時ハ其元金ハ収実権ノ終期ニ於テ利息ヲ附スルコトナク償還{所有者ヨリ}セラル可シ 収実者若シ予シメ之ヲ支弁スルコトヲ欲セサル時ハ所有者ハ或ハ此金額ヲ弁済シテ収実権ノ時間収実者ニ其利息ヲ計算セシムルカ或ハ収実権ニ供シタル財産ノ一部ヲ負債ノ高ニ至ル迄売却セシムルノ撰択権ヲ有ス 第六百十三条 収実者ハ収実権ニ関スル訴訟ノ入費其他此訴訟ヨリ生スルヲ得可キ言渡ニ非サレハ担当スルニ及ハス 第六百十四条 若シ収実権ノ時間ニ外人不動産{収費権ニ供シタル}ニ付キ幾分ノ侵掠ヲ為シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ所有者ノ権利ニ妨害ヲ加フル時ハ収実者ハ必ス之ヲ所有者ニ告知ス可シ収実者若シ之ヲ為ササル時ハ自ラ毀損ヲ為シタル時ト同シク所有者ノ為メニ生スルヲ得ル総テノ損害ヲ負担ス可シ 第六百十五条 収実権若シ収実者ノ過失ナクシテ斃死ス可キ獣ノ上ニ設定セラレタル時ハ収実者ハ他ノ獣ヲ償還シ又ハ其評定代価ヲ弁償スルニ及ハス 第六百十六条 収実権ヲ設定シタル獣群収実者ノ過失ニ非ス変災又ハ疾病ニ因リ悉皆斃死セシ時ハ収実者ハ其皮又ハ皮ノ代価ニ非サレハ所有者ニ償還スルニ及ハス 獣群若シ悉皆斃死セサリシ時ハ収実者ハ増殖ノ数ニ至ル迄斃死シタル獣ノ頭数ヲ補増ス可シ 第三款 収実権ノ消滅如何 第六百十七条 収実権ハ左ノ件々ニ因リ消滅ス 収実者ノ実ノ死去及ヒ准死 収実権ヲ許与シタル時間ノ終了 同一人ニ収実者ト所有者トノ二資格ノ混同、併合 三十年間権利ノ無使用 収実権ヲ設定シタル物件全部ノ滅失 第六百十八条 又収実権ハ収実者或ハ不動産ヲ毀損シ或ハ保存ノ修理ヲ加ヘス不動産ヲ廃潰セシメテ収益権ヲ濫用セシニ因リ消滅スルヲ得 収実者ノ権利者ハ其権利保有ノ為メ訟争ニ干渉スルヲ得又為{収実者ノ}シタル毀損ノ修理及ヒ後来ノ為メ担保ヲ提供{所有者ニ}スルヲ得 裁判官ハ事情ノ軽重ニ従ヒ或ハ収実権完全ノ消滅ヲ命シ或ハ止タ所有者ヨリ収実権ノ終了ス可キ時期ニ至ル迄収実者又ハ其承権人ニ定マリタル金額ヲ年々弁償スルノ負担ヲ以テ所有者収実権ニ供シタル物件ノ収益ヲ復スルコトヲ命スルヲ得 第六百十九条 常人ニ許与セサル収実権ハ三十年間ニ非サレハ存続セス 第六百二十条 外人ノ或ル年齢ニ達スル迄許与シタル収実権ハ外人其定齢ニ至ラスシテ死去セシ時ト雖トモ其時期{定齢ノ}迄存続ス可シ 第六百二十一条 収実権ニ供シタル物件ノ売却ハ収実者ノ権利ニ何等ノ変更ヲモ為スコトナシ収実者ハ明確ニ其権利ヲ放棄セサルニ於テハ収実権ニ付キ収益ヲ継続ス可シ 第六百二十二条 収実者ノ権利者ハ収実者権利者ヲ害シテ為シタル放棄ヲ取消サシムルヲ得 第六百二十三条 収実権ニ供シタル物件ノ一部ノミ毀壊セシ時ハ収実権ハ其遺存スルモノニ付キ存続ス 第六百二十四条 収実権若シ建造物ノ上ニノミ設定セラレ其建造物火災其他ノ変災ニ因テ毀壊シ又ハ朽腐ニ因テ潰廃セシ時ハ収実者ハ土地及ヒ材料ニ付キ収益ヲ為スノ権ナシ 収実権若シ建造物カ一部ヲ為ス土地ノ上ニ設定セラレシ時ハ収実者ハ土地及ヒ材料ニ付キ収益ヲ為ス可シ 第二章 使用権及ヒ住居権 第六百二十五条 使用及ヒ住居ノ権ハ収実権ト同一ノ方法ニテ設定消滅ス 第六百二十六条 収実権ノ場合ト同シク予メ保証人ヲ立テ且ツ景状書及ヒ目録ヲ作ラサレハ収益ヲ為スヲ得ス 第六百二十七条 使用者及ヒ住居権ヲ有スル者ハ良家父ノ如ク収益ヲ為ス可シ 第六百二十八条 使用及ヒ住居ノ権ハ之ヲ設定シタル証書ヲ以テ之ヲ規定シ其規約ニ従テ其広狭ヲ決ス可シ 第六百二十九条 若シ設定証書ニ其権利ノ広狭ヲ明記セサル時ハ左ノ如ク之ヲ規定ス 第六百三十条 不動産ノ菓実ニ付キ使用権ヲ有スル者ハ自己及ヒ家族ノ需要ノ為メニ須要スル限リニ非サレハ菓実ヲ要求スルヲ得ス又使用権ヲ得タル後ニ出生シタル子ノ需要ノ為メニモ之ヲ要求スルヲ得 第六百三十一条 使用者ハ其権利ヲ他人ニ譲与、賃貸スルヲ得ス 第六百三十二条 家屋ニ住居スルノ権ヲ有スル者ハ之ヲ得タル時未タ婚姻ヲ為ササリシト雖トモ其家族ト共ニ之ニ住居スルヲ得 第六百三十三条 住居権ハ之ヲ得タル者及ヒ其家族ノ住居ニ必要ナル所ノミニ限ル可シ 第六百三十四条 住居権ハ之ヲ譲与、賃貸スルヲ得ス 第六百三十五条 使用者若シ土地ノ総テノ菓実ヲ専用シ又ハ家屋ノ全部ヲ占領スル時ハ収実者ト同シク耕作ノ費用、保存ノ修理及ヒ租税ノ弁済ヲ負担ス可シ 菓実ノ一部ニ非サレハ採取セス家屋ノ一部ニ非サレハ占領セサル時ハ其収益ヲ為ス物件ノ割合ニ従ヒ之ヲ分担ス可シ 第六百三十六条 森林ノ使用権ハ別段ノ法律ヲ以テ之ヲ規定ス 第四巻 地役《セルウイチウド》即チ土地ノ役務《セルウイースフォンシエー》{「セルウイチウド」ナル原語ハ地役ニ対スル権利ニモ用ユルコトアリ此ノ如ク意義ヲ転用スルトキハ之ヲ地権ト訳ス}(千八百四年一月三十一日決定二月十日頒布) 第六百三十七条 地役トハ他ノ所有者ニ属スル不動産ノ使用及ヒ便益ノ為メ不動産ニ課シタル負担ヲ云フ 第六百三十八条 地役ハ一不動産ヨリ他ノ不動産ノ優等ヲ設定セズ 第六百三十九条 地役ハ或ハ土地ノ天然ノ位置ニ因テ生シ或ハ法律ニ定メタル義務ニ因テ生シ或ハ所有者間ノ契約ニ因テ生ス 第一章 土地ノ位置ニ因テ生スル地役 第六百四十条 低下地ハ高上地ニ対シ人為ニ因ラス自然ニ流下スル水ヲ受クルノ義務アリトス 低下地ノ所有者ハ其流下ヲ障碍ス可キ堤塘ヲ築クヲ得ス 高上地ノ所有者ハ低下地ノ地役ヲ加重ス可キ事ヲ為スヲ得ス 第六百四十一条 土地内ニ水源ヲ有スル者ハ低下地ノ所有者証書又ハ時効ニ因テ獲得シタル権利アル時ノ外ハ適意ニ之ヲ使用スルヲ得 第六百四十二条 此場合ニ於テ時効ハ低下地ノ所有者其土地内ニ水ノ墜落流下ヲ容易ナラシムル為メ外顕ノ工作ヲ為シ且ツ終リシ時ヨリ三十年間為シタル無間断ノ収益ニ因ルニ非サレハ之ヲ獲得スルヲ得ス 第六百四十三条 水源ノ所有者ハ其水流カ邑、村又ハ里ノ住民ニ必要ノ水ヲ供給スル時ハ其水路ヲ変転スルヲ得ス然レトモ住民未タ其使用ヲ獲得セス{証書ニ因テ}又ハ時効ニ因テ獲得セサリシ時ハ所有者ハ賠償ヲ要求スルヲ得但シ賠償ノ額ハ鑑定人之ヲ定ム可シ 第六百四十四条 財産ノ区別ノ巻第五百三十八条ニ因リ公領ノ所属ト定ムルモノノ外水流ニ沿ヒ土地ヲ有スル者ハ其潅漑ノ為メ水路ニ於テ水ヲ使用スルヲ得 水ノ流過スル土地ヲ有スル者ハ其土地ヨリ水ノ流出スル時之ヲ原ノ水路ニ復スルノ負担ヲ以テ其土地ヲ流過スル時間、水ヲ使用スルヲ得 第六百四十五条 其水ヲ益用スル諸所有者ノ間ニ訟争ヲ生スル時ハ裁判所ハ其裁判ヲ為スニ付キ所有権ニ為ス可キ敬尊ト農業ノ利益トヲ斟酌ス可ク且ツ総テノ場合ニ於テ水ノ流通及ヒ使用ニ関スル地方ノ別段ノ規則ヲ循守ス可シ 第六百四十六条 総テ所有者ハ隣接スル土地ノ経界設立ヲ隣人ニ要強スルヲ得○経界設立ハ共同費ヲ以テ之ヲ為ス可シ 第六百四十七条 総テ所有者ハ第六百八十二条ニ記シタル例外ヲ除キ其土地ヲ繞囲スルヲ得 第六百四十八条 繞囲ヲ作ラント欲スル所有者ハ繞囲築造ノ為メニ減殺シタル土地{繞囲内ノ}ノ割合ニ従ヒ数邑《パルクール》又ハ一邑住民《ウエーヌパチユール》ノ共同牧畜権ヲ喪失ス可シ 第二章 法律ニ因テ設定シタル地役 第六百四十九条 法律ニ因テ設定シタル地役ハ公用、邑用、又ハ常人用ヲ以テ其目的トス 第六百五十条 公用又ハ邑用ノ為メニ設定シタル地役ハ舟筏ノ通ス可キ河川ニ沿フ纜路、道路ノ築造修理、其他公用又ハ邑川ノ工作ヲ以テ其目的トス 総テ此種ノ地役ニ関スルモノハ別段ノ法律規則ヲ以テ之ヲ規定ス 第六百五十一条 法律ハ何等ノ契約ニ関セス諸所有者ニ、他ノ所有者ニ対シテ諸般ノ義務ヲ課ス 第六百五十二条 其義務ノ一部ハ田野警察察法ニ之ヲ規定ス 其他ハ共有ノ墻壁及ヒ溝渠、重壁ヲ生ス可キ場合、隣地ノ観望、屋蓋ノ承霤、通行潅ニ関ス 第一款 共有《ミトワィヤン》ノ墻壁及ヒ溝渠 第六百五十三条 市府及ヒ田野ニ於テハ「ヘベルジユ」{低キ建造物ト高キ建造物ト一墻壁ニ依リ隣接スル場合ニ於テ低キ家屋ノ尽頭ノ点ヲ云フ}迄建造物ノ間又ハ中庭及ヒ庭園ノ間及ヒ田圃ニ於テハ繞囲地ノ間ニ分界ノ用ヲ為ス総テノ墻壁ハ反対ノ証書又ハ標識アラサル時ハ之ヲ共有ト看做ス可シ 第六百五十四条 墻壁ノ頂ノ一方ノ外面直垂ニシテ他ノ一方傾斜スル時ハ共有ニ非サルノ標識アリトス 墻壁ヲ築造スル時ニ設ケタル墻簷、「フィレー」{墻簷ノ水ノ墜落ヲ容易ナラシムル為メ墻簷ニ付シタルモノ}及ヒ「コルボー」{建造ヲ為ストキ棟梁ヲ支持スル為メニ墻壁ニ設ケタル台石}ノ一方ニノミアル時モ同前ナリトス 此場合ニ於テハ墻壁ハ専ラ承霤、「コルボー」及ヒ「フィレー」アル方ノ所有者ニ属スト看做ス可シ 第六百五十五条 共有墻壁ノ修理及ヒ改築ハ其墻壁ニ付キ権利ヲ有スル総テノ者其権利ノ割合ニ従ヒ之ヲ負担ス可シ 第六百五十六条 然レトモ共有墻壁ノ共有者ハ其墻壁、自己ニ属スル建造物ヲ支持セサルニ於テハ共有ノ権利ヲ放棄シテ修理改築ヲ分担スルコトヲ免カルルヲ得 第六百五十七条 共有者ハ共有墻壁ニ傍ヒテ築造ヲ為シ及ヒ五十四「ミリメートル」(二寸)ヲ除キ墻壁ノ全厚積ニ棟材梁桁ヲ箝入セシムルヲ得但シ隣人モ同一ノ所ニ棟材ヲ箝入シ若クハ奥竃ヲ搆造セント欲スル場合ニ於テハ墻壁ノ中央迄鑿器ヲ以テ棟材ヲ截縮【キリチ】ムルニ付キ隣人ノ有スル権利ト抵触スルコトナカル可シ 第六百五十八条 共有者ハ共有墻壁ヲ増高セシムルヲ得然レトモ其共有者{墻壁ヲ高メシメタル}ノミ増高ノ費、共同繞囲ノ高点以上ノ維持費其他増高ニ准シ且ツ其{増高ノ}価額ニ従ヒ負担ノ償ヲ支弁ス可シ 第六百五十九条 若シ共有墻壁増高ニ堪フルノ状況有ラサル時ハ増高ヲ為サント欲スル者其費用ヲ以テ其全部ヲ改築ス可ク且ツ厚積{墻壁ノ}増加ハ自己ノ方{其地所内ニ}ニ之ヲ為ス可シ 第六百六十条 増高ヲ分担セサリシ隣人ノ増高ノ費用ノ半額ト厚積ノ増加アリシ時ハ其増加ニ供シタル土地ノ一半ノ価額トヲ償ヒ増高ノ共有ヲ獲得スルヲ得 第六百六十一条 墻壁ニ接スル所有者ハ又其価額ノ一半又ハ共有ト為サント欲スル部分ノ墻壁ノ価額ノ一半ト墻壁ヲ築造シタル敷地ノ価額ノ一半トヲ墻壁ノ所有者ニ償ヒ其全部又ハ一部ヲ共有ト為スノ権能《ファキュルテー》ヲ有ス 第六百六十二条 各隣人ハ他ノ隣人ノ承諾ナク又其拒絶スルニ於テハ新工作ノ他ノ隣人ノ権利ヲ害セサル為メ鑑定人ヲシテ必要ノ方法ヲ規定セシムルコトナクシテ壁体ニ穴ヲ穿チ又何レノ物件ヲモ当【アテ】懸【カ】ケ倚懸【ヨセカ】クルヲ得ス 第六百六十三条 何人ト雖トモ市府及ヒ其廓外ニ於テハ其市府及ヒ廓外ニ在ル家屋、中庭及ヒ庭園ノ分界ヲ為ス繞囲ノ築造修理ヲ分担スヘキコトヲ隣人ニ要強スルヲ得繞囲ノ高卑ハ別段ノ規則又ハ永続〆認許{世人ニ}セラレタル慣習ニ循ヒ之ヲ定ム若シ慣習規則アラサル時ハ後来築造改築ス可キ隣人間ノ分界壁ハ五万人及ヒ其以上ノ市府ニ於テハ墻簷ヲ加ヘテ少クモ三十二「デシメートル」(十尺)其他ノ地ニ於テハ二十六「デシメートル」(八尺)ノ高サト為ス可シ 第六百六十四条 家屋ノ数箇ノ層階数多ノ所有者ニ属スル時所有権ノ証書ニ修理及ヒ改築ノ方法ヲ規定セサルニ於テハ左ノ如ク之ヲ為ス可シ 大壁及ヒ屋蓋ハ各所有者ニ属スル層階ノ価額ノ割合ニ従ヒ総テノ所有者之ヲ負担ス可キコト 各層階ノ所有者ハ其踏歩スル楼板ヲ造ル可キコト 第一階ノ所有者ハ第一階ニ到ル梯子ヲ造リ第二階ノ所有者ハ第一階ヨリ第二階ニ到ルノ梯子ヲ造リ以下之ニ準ス可キコト 第六百六十五条 共有墻壁又ハ家屋ヲ改築スル時ハ施的《アクチーフ》及ヒ受的《パッシーフ》ノ地役ハ之ヲ加重スルコトナク且ツ時効ヲ獲得スル以前ニ其改築ヲ為スニ於テハ新墻壁又ハ新家屋ニ付キ継続ス可シ 第六百六十六条 (千八百八十一年八月二十日改定)数箇ノ土地ヲ分界スル繞囲ハ数箇ノ土地中ノ一ノミヲ繞囲スル状況ナキ時又ハ証書、時効若クハ反対ノ標識ナキ時ハ之ヲ共有ト看做ス可シ 溝渠ニ付テハ堤塘又ハ土砂ノ堆積、溝渠ノ一方ニノミアル時ハ不共有ノ標識アリトス 溝渠ハ専ラ土砂ノ堆積アル方ノ所有者ニ属スト看做ス可シ 第六百六十七条 (同上)共有ノ繞囲ハ共同費ヲ以テ維持ス可シ然レトモ隣人ハ共有ヲ放棄シテ其義務ヲ免カルルヲ得 此権能《ファキュルテー》ハ溝渠常ニ水流ノ用ヲ為ス時ハ終了ス 第六百六十八条 (同上)共有ニ非サル溝渠又ハ植籬ニ接シテ土地ヲ有スル隣人ハ此溝渠又ハ植籬ノ所有者ヨリ自己ニ其共有ヲ譲与スヘキコトヲ要強スルヲ得ス 共有植籬ノ共有者ハ其土地ノ経界ニ墻壁ヲ築造スルノ負担ヲ以テ経界ノ所迄植籬ヲ毀壊スルヲ得 此規則ハ繞囲ノ用ニ非サレハ為サル共有溝渠ノ共有者ニモ適当ス可シ 第六百六十九条 (同上)植籬ノ共有ノ継続スル間ハ其産物ハ半額ツツ双方ノ所有者ニ属ス 第六百七十条 (同上)共有植籬中ニ在ル樹木ハ植籬ト同シク共有ナリトス二箇ノ土地ノ分界線ニ植栽シタル樹木モ亦共有ト看做ス可シ若シ此樹木ノ枯槁スルカ又ハ之ヲ伐採抜取セシ時ハ之ヲ折半ス可シ其菓実ハ自然ニ墜落セシト、墜落セシメシト、摘取セシトヲ問ハス共同費ヲ以テ採収シ又之ヲ折半ス可シ 各所有者ハ共有樹木ノ抜取ヲ要求スルノ権アリトス 第六百七十一条 (同上)現今存立スル別段ノ規則又ハ永続シテ認許セラレタル慣習ニ因リ定メタル距離ニ非サレハ隣地ノ経界ニ接シテ大小樹木ヲ有ス可カラス若シ規則慣習アラサル時ハ高サ二「メートル」ヲ超過スル植栽ニ付キテハ二箇ノ土地ノ分界線ヨリ二「メートル」、其他ノ植栽ニ付キテハ半「メートル」ノ距離ニ非サレハ之ヲ有ス可カラス 分界壁ノ双方ニハ何ノ距離ヲモ循守スルコトナク諸種ノ大小樹木ヲ墻壁ニ傍ヒテ植栽スルヲ得然レトモ墻壁ノ頂ヲ超過スルヲ得ス 墻壁若シ共有ニアラサル時ハ其所有者ノミ傍栽ヲ為スノ権アリトス 第六百七十二条 (同上)隣人ハ証書、家父{土地ノ最先ノ所有者}ノ意思、又ハ三十年ノ時効アラサル時ハ法律上ノ距離以内ノ距離ニ植栽シタル大小ノ樹木ヲ抜取シ又ハ之ヲ前条ニ定ムル高サニ減縮センコトヲ要求スルヲ得 樹木若シ枯稿シ又ハ之ヲ伐採抜取セシ時ハ隣人ハ法律上ノ距離ヲ循守スルニ非サレハ之ヲ補植スルコトヲ得ス 第六百七十三条 (同上)隣人ノ樹木ノ枝葉ノ侵入ヲ受ケタル土地ノ所有者ハ其截断ヲ隣人ニ要強スルヲ得此樹枝ヨリ自然ニ墜落シタル菓実ハ其者{侵入ヲ受ケタル土地ノ所有者}ニ属ス 若シ土地ニ侵入スルモノ樹根ナル時ハ其侵入ヲ受ケタル土地ノ所有者自ラ之ヲ芟除スルノ権アリトス 樹根ヲ芟除シ樹枝ヲ截断セシムルノ権ハ時効ニ因リ獲得ス可カラス 第二款 或ル造営ニ必要ノ距離及ヒ間介ノ工作 第六百七十四条 共有又ハ不共有ノ墻壁ノ傍側ニ並又ハ厠窖ヲ掘ラシムル者 同一ノ所ニ奥竃、炉、鎔鋳所、竃ヲ建造セント欲スル者 上ノ墻壁ニ傍ヒテ獣欄又ハ塩庫又ハ腐蝕ス可キ物質ノ貯蓄所ヲ建造セント欲スル者 右等ノ者ハ此物件ニ付キ特別ノ規則及ヒ慣習ニ因リ定メタル距離ヲ余シ又ハ隣人ニ害ヲ避クル為メ同一ノ規則及ヒ慣習ニ因リ定メタル工作ヲ為スノ義務アリトス 第三款 隣地ノ観望 第六百七十五条 隣人ノ一人ハ方法ノ如何ヲ問ハス又仮令開閉ス可カラサル玻璃障子ヲ用ユルモ他ノ隣人ノ承諾ナクシテ共有壁中ニ窓窓又ハ穴口ヲ穿開スルヲ得ス 第六百七十六条 他人ノ土地ニ直接スル不共有壁ノ所有者ハ其墻壁ニ鉄格子ト開閉ス可カラサル玻璃障子トヲ以テ亮窓【アカリマド】又ハ観望窓ヲ穿開スルヲ得 其窓窓ハ目【アミメ】一「デシメートル」(凡ソ三寸八分)以下ノ鉄格子ト開閉ス可カラサル玻璃障子ノ框【ワク】トヲ以テ装造ス可シ 第六百七十七条 其観望窓及ヒ亮窓ハ階下ニ在リテハ光明ヲ引カント欲スル房室ノ床板又ハ土地ヨリ二十六「デシメートル」(八尺)以上ノ所又層階ニ在リテハ楼板ヨリ十九「デシメートル」(六尺)以上ノ所ニ非サレハ之ヲ穿開スルヲ得ス 第六百七十八条 直線ノ観望窓、欄縁《バルコン》若クハ之ニ類似ノ突出物ハ之ヲ造設セントスル墻壁ト、閉囲シ又ハ閉囲セサル隣人ノ土地トノ間ニ十九「デシメートル」(六尺)ノ距離アルニ非サレハ之ヲ造設スルヲ得ス 第六百七十九条 六「デシメートル」(ニ尺)ノ距離アルニ非サレハ同上ノ地上ニ斜線観望ノ窓ヲ穿開スルヲ得ス 第六百八十条 前二条ニ記シタル距離ハ穿開ヲ為シタル墻壁外部ノ表面ヨリ、若シ又欄縁若クハ之ニ類似ノ突出物アル時ハ其外線ヨリ二箇ノ土地ノ分界線迄之ヲ測ル可シ 第四款 承霤 第六百八十一条 凡テ所有者ハ雨水ノ其土地又ハ公道ニ流下スル方法ヲ以テ屋蓋ヲ築造ス可シ之ヲ隣人ノ土地ニ流下セシムルヲ得ス 第五款 通行権 第六百八十二条 (千八百八十一年八月二十日改定)公道ニ接シテ出口ナク又ハ土地ノ農工業《エキスブロワタション》ニ不充分ノ出口ナラテハ有ラサル閉囲セラレタル土地ノ所有者ハ其隣人ノ地上ニ通行ヲ要求スルヲ得但シ其レカ為メ生スルヲ得可キ損害ニ相当ノ賠償ヲ負担ス可シ 第六百八十三条 (同上)通路ハ閉囲セラレタル土地ヨリ公道ニ至ル最近ノ線路ニ就キテ規則正シク之ヲ開設ス可シ 然レトモ通路ハ通行ヲ許ス土地ノ所有者ノ為メ損害ノ最小ナル場所ニ就キ之ヲ開設ス可シ 第六百八十四条 (同上)若シ売却、交換、分派又ハ其他ノ契約ニ因リ土地ヲ分割セシニ因テ閉囲地ヲ生スル時ハ此所為ノ目的タリシ土地上ニ非サレハ通行ヲ要求スルヲ得ス 然レトモ分割シタル土地上ニ充分ノ通路ヲ開設スルヲ得サル時ハ第六百八十二条ヲ適用ス可シ 第六百八十五条 (同上)閉囲地ノ為メノ通行ノ地役ノ基本及ヒ方法ハ三十年間継続シタル使用ニ因リ之ヲ規定ス 第六百八十二条ニ記シタル場合ニ於ケル損害賠償ノ訴権ハ時効ニ因テ獲得ス可ク且ツ仮令損害賠償ノ訴権ハ受理セラレサルモ通行ハ之ヲ継続スルヲ得 第三章 人為ニ因リ設定シタル地権 第一款 財産ニ付キ設定スルヲ得可キ地権ノ種類 第六百八十六条 所有者ハ其不動産ノ上ニ又ハ其不動産ノ為メニ至当ト思惟シタル地役地権ヲ設定スルヲ得但シ其設定シタル役務ハ人ニ又人ノ為メニ課スルコトナク唯土地ニ又土地ノ為メニノミ課ス可ク且ツ其役務ハ決シテ一般ノ秩序ニ反スルコトナカル可シ 右ノ如ク設定シタル地権ノ使用及ヒ広狭ハ其設定証書ニ因テ、若シ其証書アラサル時ハ下ノ規則ニ因テ之ヲ規定ス 第六百八十七条 地権ハ或ハ建造物ノ使用ニ付キ或ハ土地ノ使用ニ付キ之ヲ設定ス 第一種ノ地権ハ之ヲ設定シタル建造物ノ市府ニ在ルト田野ニ在ルトヲ問ハス市府《ユルベーヌ》地権ト称ス 第二種ノ地権ハ田野《リユラール》地権ト称ス 第六百八十八条 地権ハ或ハ継続或ハ不継続ナリ 継続地権トハ人ノ現際ノ所為ヲ要スルコトナク其使用ノ継続シ又ハ継続スルヲ得可キモノヲ云フ水樋、承霤、観望其他之ニ類スルモノノ如キ是ナリ 不継続地権トハ之ヲ施行スルニ人ノ現際ノ所為ヲ要スルモノヲ云フ通行、汲水、牧畜ノ権其他之ニ類スルモノノ如キ是ナリ 第六百八十九条 地権ハ或ハ外顕、或ハ不外顕ナリ 外顕地権トハ外部ノ工作ニ因リ外ニ顕ハルルモノヲ云フ門戸、窓窓、水渠ノ如キ是ナリ 不外顕地権トハ其成立ニ付キ外部ノ徴憑ナキモノヲ云フ例ヘハ或ル土地ニ建築ヲ為スノ禁又ハ定マリタル高サニ非サレハ建築ヲ為ス可カラサルノ禁ノ如シ 第二款 地権ノ設定如何 第六百九十条 継続ニシテ外顕ノ地権ハ証書又ハ三十年ノ占有ニ因テ獲得ス 第六百九十一条 継続ニシテ不外顕ノ地権及ヒ外顕又ハ不外顕ニシテ不継続ノ地権ハ証書ニ因ルニ非サレハ設定スルヲ得ス記臆{其起原ヲ}ス可カラサル占有ト雖モ其地権ヲ設定スルニ足ラス但シ占有ニ因テ獲得スルヲ得可キ地方ニ於テ既ニ此方法ニ因テ獲得シタル此種ノ地権ハ今日ニ至リ之ヲ訟撃スルヲ得ス 第六百九十二条 家父ノ意思{地権ヲ生セシム可キ}ハ継続ニシテ外顕ノ地権ニ付テハ証書ニ均シキ効力アリトス 第六百九十三条 現今分割セル二箇ノ土地一人ノ所有者ニ属シ且ツ其所有者物件ヲ地権ヲ生スル状況ニ付セシ証アル時ニ非サレハ家父ノ意思アリトセス 第六百九十四条 二箇ノ土地ノ間ニ地権ノ外顕ノ徴憑アリテ其所有者契約書ニ地権ニ関スル何等ノ約件ヲモ載セスシテ其一箇ヲ処分セシ時ハ地権ハ譲与シタル土地ノ為メ又ハ譲与シタル土地ノ上ニ施的又ハ受的ニ存続ス可シ 第六百九十五条 時効ニ因テ獲得スルヲ得サル地権ニ付テハ供役地ノ所有者ヨリ出シタル地権ノ追認証書ニ非サレハ地権設定証書ニ代用スルヲ得ス 第六百九十六条 地権ヲ設定シタル時ハ之ヲ使用スルニ付キ必要ノ諸件ヲ許容セシモノト看做ス可シ 故ニ他人ノ水源ニ於テ汲水ヲ為スノ地権ハ必ス通行権ヲ提起ス可シ 第三款 地権ノ属スル土地ノ所有者ノ権利 第六百九十七条 地権ヲ有スル者ハ之ヲ使用シ又之ヲ保存スル為メニ必要ノ工作ヲ為スノ権アリトス 第六百九十八条 其工作ハ地権設定証書ニ反対ヲ記セサルニ於テハ其{地権ヲ有スル者}費用ヲ以テ為シ供役地ノ所有者ノ費用ヲ以テ之ヲ為サス 第六百九十九条 供役地ノ所有者其費用ヲ以テ地権ノ使用又ハ保存ニ必要ノ工作ヲ為ス可キコトヲ証書{設定ノ}ニ因テ負担セシ場合ト雖トモ地権ノ属スル土地ノ所有者ニ供役地ヲ放棄シテ常ニ其負担ヲ免カルルヲ得 第七百条 地権ノ設定セラレタル土地ヲ分割セシ時ハ地権ハ其各部ニ付キ存立ス可シ但シ供役地ノ約件ヲ加重スルコトナカル可シ 故ニ例ヘハ通行権ニ付テハ総テノ共有者ハ必ス同一ノ場所ニ就キ其権ヲ行フ可シ 第七百一条 地役ヲ負担スル土地ノ所有者ハ其使用ヲ減縮シ又ハ地役ヲ最初ヨリモ不便ナラシムル事為ヲ為スヲ得ス 故ニ其所有者ハ場所ノ状況ヲ変更シ又最初指定シタル場所ト異ナリタル場所ニ地権ノ執行ヲ移転スルヲ得ス 然レトモ最初ノ指定若シ供役地ノ所有者ニ最初ヨリモ過重ノ費用ヲ要スルニ至リタルカ又ハ其土地ニ於テ有益ノ修理ヲ為スノ障害トナリタル時ハ其所有者ハ他ノ土地ノ所有者ニ其権利ノ執行ニ付キ以前ニ均シキ便益ノ土地ヲ提供スルヲ得又他ノ土地ノ所有者ハ之ヲ拒ムヲ得ス 第七百二条 又地権ヲ有スル者ハ地役アル土地ニ於テモ地権アル土地ニ於テモ地役アル土地ノ約件ヲ加重ス可キ変更ヲ為スヲ得ルコトナク其証書ニ従テ其権ヲ使用スルヲ得 第四款 地権ノ消滅如何 第七百三条 地権ハ物件{地権ニ供シタル}ノ使用スルヲ得サルカ如キ状況ニ至リタル時ニ終了ス 第七百四条 地権ハ物件ノ使用スルヲ得可キ状況ニ復セシ時ハ再生ス但シ第七百七条ニ記スル如ク既ニ地権ノ消滅ヲ推測セシムルニ足ル可キ時間ヲ経過セシ時ハ格別ナリトス 第七百五条 凡テ地権ハ地権アル土地ト地役アル土地ト同一人ニ帰合スル時ハ消滅ス 第七百六条 地権ハ三十年間ノ無使用ニ因テ消滅ス 第七百七条 三十年ハ地権ノ種類ニ従ヒ、不継続地権ニ付テハ、人其収益ヲヤメタル日ヨリ又継続地権ニ付テハ地権ニ反スル所為ヲ行フタル日ヨリ之ヲ起算ス可シ 第七百八条 地権ノ方法ハ地権ノ如ク且ツ同一{地権ト}ノ方法ヲ以テ時効ニ因リ獲得スルヲ得 第七百九条 地権ノ設定セラレタル土地、未分ニテ数人ニ属スル時ハ一人{其中ノ}収益ハ総テノ共有者ノ為メ時効ヲ妨止ス可シ 第七百十条 若シ共有者中ニ幼者ノ如ク之ニ対シテ時効ノ経過シ能ハサル者アル時ハ総テノ共有者ノ権利ヲ保存ス可シ 第三篇 所有権ヲ獲得スル種々ノ方法 総則(千八百三年四月十九日決定同月二十九日頒布) 第七百十一条 財産所有権ハ相続、生者間又ハ遺嘱ノ贈遺及ヒ義務ノ効果ニ因テ獲得移転ス可シ 第七百十二条 所有権ハ亦附加若クハ結合及ヒ時効ニ因テ獲得ス可シ 第七百十三条 主ナキ財産ハ政府ニ属ス可シ 第七百十四条 何人ニモ属セス諸人ノ共用スル物件アリ 其収益方法ハ警察法ヲ以テ之ヲ規定ス 第七百十五条 狩猟及ヒ捕魚ノ権能モ同シク別毀ノ法律ヲ以テ之ヲ規定ス 第七百十六条 埋蔵物ノ所有権ハ自己ノ地内ニ於テハ之ヲ発見スル者ニ属ス若シ埋蔵物他人ノ地内ニ於テ発見セラレタル時ハ其一半ハ之ヲ発見シタル者ニ属シ他ノ一半ハ土地ノ所有者ニ属ス可シ 埋蔵物トハ何人モ其所有権ヲ証明スルヲ得ス偶然発見シタル隠蔵若クハ埋没シタル物件ヲ云フ 第七百十七条 性質ノ如何ヲ問ハス海中ニ投擲セシ物件、海波ノ打揚セシ物件、海岸ニ生スル植物及ヒ草類ニ関スル権利モ亦別段ノ法律ヲ以テ之ヲ規定ス 主ノ出現セサル遺失物ニ付テモ同前ナリトス 第一巻 相続(千八百三年四月十九日決定同月廿九日頒布) 第一章 相続ノ開始及ヒ相続人ノ遺物収握 第七百十八条 相続ハ実ノ死去及ヒ准死ニ因テ開始ス 第七百十九条 相続ハ私権ノ得有及ヒ剥奪ノ巻第二章第二款ノ規則ニ循ヒ准死ノ言渡ノ時ヨリ准死ニ因テ開始ス可シ 第七百二十条 若シ互ニ相続ヲ為ス可キ数人孰レカ先キニ死去セシヤヲ弁識スルヲ得ルコトナク同一ノ事変ニテ死去セシ時ハ後死《シユルウイ》ノ推測ハ事実ニ因テ又事実ナキニ於テハ年齢若クハ男女ノ力ニ因テ之ヲ定ム可シ 第七百二十一条 共ニ死去セシ者十五歳以下ナル時ハ年長者後ニ死去セリト推測ス可シ 共ニ死去セシ者皆六十歳以上ナリシ時ハ年少者後ニ死去セリト推測ス可シ 若シ其中数人十五歳以下ニシテ数人六十歳以上ナル時ハ十五歳以下ノ者後ニ死去セリト推測ス可シ 第七百二十二条 若シ共ニ死去セシ者満十五歳以上六十歳以下ニシテ年齢均シキカ又ハ其差違一年ニ超ヘサル時ハ常ニ男ハ後ニ死去セリト推測ス可シ 若シ皆男若クハ女ナル時ハ自然ノ順序ニ従ヒ相続ヲ開始ス可キ後死ノ推測ヲ許ス可シ故ニ年少者年長者ヨリ後ニ死去セリト推測ス可シ 第七百二十三条 法律ハ正当相続人ノ間ニ相続ヲ為スノ順序ヲ規定ス正当相続人アラサル時ハ財産ノ{相続ノ}ハ私生ノ子ニ移リ次ニ夫婦中ノ遺存者ニ移リ其在ラサル時ハ政府ニ移ル可シ 第七百二十四条 正当相続人ハ相続ノ総テノ負担ヲ弁済スルノ義務ヲ以テ当然死者ノ財産、権利及ヒ訴権ヲ収握ス可シ私生ノ子、夫婦中ノ遺存者及ヒ政府ハ定マリタル法式ニ循ヒ裁判所ノ允許ヲ得テ其占有ヲ為ス可シ 第二章 相続ヲ為スニ必要ノ資格 第七百二十五条 相続ヲ為スニハ其開始ノ時生存スルヲ必要トス 故ニ左ノ者ハ相続ヲ為スノ能力ナシトス 第一 未ダ懐妊セラレザル者 第二 生存ス可キ状ヲ以テ生レザル子 第三 准死者 第七百二十六条 (千八百十九年七月十四日廃止)外国人ハ私権ノ得有及ヒ剥奪ノ巻第十一条ノ規則ニ循ヒ仏蘭人其外国人ノ本国ニテ財産ヲ所有スル親族ニ相続ス可キ場合ニ於テ且ツ其方法ニ従フニ非レハ外国人又ハ仏蘭西人ナル其親族カ王国ノ土地ニ於テ所有スル財産ヲ相続スルヲ許サス 第七百二十七条 左ノ者ハ相続ヲ為スノ格位《アンヂーヌユ》ナシ故ニ相続ヨリ斥除セラル可シ 第一 死者ヲ死ニ致シ又ハ死ニ致サント謀試セシ為メ刑ニ処セラレタル者 第二 死者ヲ極刑ニ処ス可キ告訴ヲ為シ誣告ト裁判セラレタル者 第三 死者ノ故殺セラレタルヲ知リテ之ヲ裁判所ニ告訴セサリシ丁年ノ相続人 第七百二十八条 故殺者ノ尊属及ヒ卑属ノ親其同等ノ姻属親、配偶者、兄弟姉妹、伯叔父母、姪男女ニ対シテハ告訴ヲ為ササリシ故ヲ以テ抗拒{相続ニ付キ}ヲ為スヲ得ス 第七百二十九条 無格位ノ為メ相続ヨリ斥除セラレタル相続人ハ相続ノ開始以来収益ヲ為シタル菓実及ヒ入額ヲ返還ス可シ 第七百三十条 代襲権ニ依ルコトナク自己ノ権ニ因リ相続ヲ為ス可キ無格位者ノ子ハ其父ノ過失ノ為メニ斥除{相続ヨリ}セラルルコトナシ然レトモ父ハ何等ノ場合ニ於テモ法律ニ於テ子ノ財産ニ付キ父母ニ許与シタル収実権ヲ此相続ノ財産ニ付キ要求スルヲ得ス 第三章 相続ノ種々ノ順序 第一款 総則 第七百三十一条 相続ハ下ニ定ムル順序及ヒ規則ニ循ヒ死者ノ子、卑属親、尊属親及ヒ傍系親ニ帰属ス可シ 第七百三十二条 法律ハ相続ヲ規定スル為メニ財産ノ性質由来ヲ問ハス 第七百三十三条 尊属親又ハ傍系親ニ帰属スル相続ハ之ヲ二部ニ平分シ其一ハ父系ノ親ニ他ノ一ハ母系ノ親ニ帰属ス 異父又ハ異母ノ親ハ同父母ノ親ノ為メニ斥除セラルルコトナシ然レトモ第七百五十二条ニ記スル場合ノ外ハ其系中ニ非サレハ相続ニ参加スルヲ得ス同父母ノ親ハ両系ニ於テ之ニ参加ス可シ 二系中ノ一方ニ尊属親及ヒ傍系親全ク在ラサル時ニ非サレハ一系ニ属ス可キモノヲ他ノ系ニ移スコトナカル可シ 第七百三十四条 父系ト母系トノ間ニ此第一ノ区分ヲ為シタル上ハ其支族ノ間ニ更ラニ区分ヲ為スコトナシ然レトモ各系ニ属シタル一半ハ代襲相続ノ場合ヲ除キ下ニ記スル如ク最親ノ等級ノ相続人一人又ハ数人ニ属ス可シ 第七百三十五条 血属ノ親疎ハ代ヲ《ゼ子ラション》以テ之ヲ定メ各代ヲ等親ト云フ 第七百三十六条 等親ノ連脈ハ系ヲ為シ一人ヨリ他ノ一人ノ出テタル数人間ノ等親ノ連脈ヲ宗系ト云ヒ一人ヨリ他ノ一人ノ出テタルコトナク共同ノ主祖ヨリ出テタル数人間ノ等親ノ連脈ヲ傍系ト云フ 宗系ヲ分チテ卑属宗系、尊属宗系トス 卑属宗系トハ主祖ト之ヨリ出テタル数人トヲ連結スルモノヲ云ヒ尊属宗系トハ一人ト其出テタル数人トヲ連結スルモノヲ云フ 第七百三十七条 宗系ニ於テハ数人間ノ代ノ数ニ准シテ等親ノ数アリ故ニ父ニ対シテハ子ハ一等親、孫ハ二等親ナリ父及ヒ祖父ハ子及ヒ孫ニ対シテ亦同シトス 第七百三十八条 傍系ニ於テハ等親ノ数ハ親族ノ一人ヨリ共同ノ主祖ニ遡リ又其主祖ヨリ他ノ親族一人ニ降ル代ノ数ニ准ス但シ其数中ニ主祖ヲ算入セス 故ニ兄弟ハ二等親トシ伯叔父ト姪男トハ三等親トシ従兄弟ハ互ニ四等親トシ以下之ニ準ス 第二款 代襲相続 第七百三十九条 代襲相続トハ効果トシテ代襲者ニ被代襲者ノ地位、等親、権利ヲ占得セシムル所ノ法律上ノ想定ヲ云フ 第七百四十条 代襲相続ハ卑属ノ宗系ニ於テハ之ヲ無限{何等親ニ至ル迄モ}ニ継承ス可シ 代襲相続ハ死者ノ数人ノ子死者ヨリ先キニ死去シタル子ノ卑属親ト相続ヲ並承ス可キ時又ハ死者ノ数人ノ子悉ク死者ヨリ先キニ死去シ其卑属親互ニ同等若クハ不同等ナル時ト雖トモ総テノ場合ニ於テ之ヲ為スコトヲ許ス 第七百四十一条 代襲相続ハ尊属親ノ為メニハ之ヲ許サス各系{父系母系}ニ於テ最親ノ者ハ常ニ最疎ノ者ヲ斥除ス 第七百四十二条 傍系ニ於テハ代襲相続ハ死者ノ兄弟姉妹ノ子及ヒ卑属親其伯叔父母ト相続ヲ並承スル時又ハ死者ノ兄弟姉妹悉ク先ニ死去シテ相続ノ其同等若クハ不同等ノ卑属親ニ帰属スル時ト雖トモ死者ノ兄弟姉妹ノ子及ヒ卑属親ノ為メニ之ヲ許ス 第七百四十三条 代襲相続ヲ許ス総テノ場合ニ於テハ族ニ《スーミユ》因テ分派ヲ為シ若シ一ノ族、支族《ブランシユ》ヲ生スル時ハ各支族更ニ族ニ因テ分派ヲ為シ一支族ノ諸人ハ分頭ニ分派ヲ為ス可シ 第七百四十四条 人ハ生存スル者ノ代襲相続ヲ為スコトヲ得ス然レトモ止タ実ニ死去セシ者又ハ准死セシ者ノ代襲相続ヲ為スコトヲ得 相続ヲ辞謝シタル者ハ其辞謝ヲ受ケタル者ノ代襲相続ヲ為スコトヲ得 第三款 卑属親ニ帰属スル相続 第七百四十五条 子又ハ其卑属親ハ男女、出生ノ前後ノ別ナク又殊別ノ婚姻ヨリ出生シタルヲ問ハス其父母祖父母又ハ其他ノ尊属親ノ相続ヲ為ス可シ 子又ハ其卑属親ハ皆一等親ニシテ自己ノ権ヲ以テ相続ヲ為ス時ハ各自平等ノ部分ニ付キ相続ヲ為シ又皆若クハ一部ノ者代襲相続ヲ為ス時ハ族ニ因テ相続ヲ為ス可シ 第四款 尊属親ニ帰属スル相続 第七百四十六条 死者若シ子孫兄弟姉妹又ハ其卑属親ヲ遺留セサリシ時ハ相続ハ父系ノ尊属親ト母系ノ尊属親トノ間ニ之ヲ平分ス 最親ノ等級ノ尊属親ハ他ノ尊属親ヲ斥除シテ其系ニ属スル一半ヲ収得ス可シ 同等ノ尊属親数人ハ分頭ニテ相続ヲ為ス可シ 第七百四十七条 尊属親ハ子孫ヲ遺留セスシテ死去シタル子又ハ卑属親ニ自己ヨリ贈遺シタル物件実物ニテ遺物中ニ存スル時ハ他ノ尊属親ヲ斥除シテ其相続ヲ為ス可シ 物件{贈遺シタル}若シ譲与セラレシ時ハ尊属親ハ未タ弁済ナキ其代価ヲ収得ス又尊属親ハ受贈者ノ有スルヲ得可キ物件買戻ノ訴権《アクシヨンアンルブリーブ》ニ付キ相続ヲ為ス可シ 第七百四十八条 子孫ヲ遺留セスシテ死去シタル者ノ父母遺存シタル時死者、兄弟姉妹又ハ其卑属親ヲ遺留セシ時ハ相続ハ平等ニ二分シ其一半ノミ父母ニ帰属シ父母ノ間更ニ之ヲ平分ス可シ 他ノ一半ハ本章第五款ニ記スル如ク兄弟姉妹又ハ其卑属親ニ帰属ス可シ 第七百四十九条 子孫ヲ遺留セスシテ死去シタル者兄弟姉妹又ハ其卑属親ヲ遺留セシ場合ニ於テ父又ハ母{死者ノ}先キニ{死者ヨリ}死去セシ時ハ前条ニ循ヒ父母ニ帰属ス可キ部分ハ本章第五款ニ記スル如ク兄弟姉妹又ハ其卑属親ニ帰属シタル一半ニ併合スベシ 第五款 傍系相続 第七百五十条 子孫ヲ遺留セスシテ死去シタル者ノ父母先キニ死去セシ場合ニ於テハ兄弟姉妹{死者ノ}及ヒ其卑属親ハ尊属親及ヒ他ノ傍系親ヲ斥除シテ相続ヲ為ス可シ 兄弟姉妹ハ或ハ自己ノ権利ヲ以テ或ハ本章第二款ニ規定スル如ク代襲権ニ因テ相続ヲ為ス可シ 第七百五十一条 子孫ヲ遺留セスシテ死去シタル者ノ父母遺存セシ時ハ兄弟姉妹又ハ其卑属親ハ相続ノ一半ニ非サレハ収得セス父若クハ母ノミ遺存セシ時ハ兄弟姉妹又ハ其卑属親ハ四分ノ三ヲ収得ス可シ 第七百五十二条 前条ニ循ヒ兄弟姉妹ニ帰属シタル一半又ハ四分ノ三ノ分派ハ兄弟姉妹皆同一ノ婚姻ヨリ出生セシ時ハ平等ニ之ヲ為シ殊別ノ婚姻ヨリ出生セシ時ハ死者ノ父系ト母系トノ間ニ二分シ同父母兄弟ハ二系ニ於テ相続ニ参加シ異父母兄弟ハ各其系ニ於テノミ相続ニ参加ス可シ兄弟姉妹若シ一方ニノミ在ル時ハ総テ他ノ系ノ親族ヲ斥除シ全部ノ相続ヲ為ス可シ 第七百五十三条 兄弟姉妹又ハ其卑属親ナク又父系若クハ母系ニ於テ尊属親ナキ時ハ相続ノ一半ハ遺存スル尊属親ニ帰属シ他ノ一半ハ他ノ系ノ最親ノ族員ニ帰属ス可シ 同等ノ傍系親ト相続ヲ並承スル時ハ分頭ニ分派ヲ為ス可シ 第七百五十四条 前条ノ場合ニ於テ遺存スル父又ハ母ハ其所有トシテ相続セサル財産ノ三分一ノ収実権ヲ有ス可シ 第七百五十五条 十二等親以外ノ族員ハ相続ヲ為ササルモノトス 一系中相続ヲ為ス可キ等親ノ族員アラサル時ハ他系ノ族員全部ノ相続ヲ為ス可シ 第四章 変例相続 第一款 父母ノ財産ニ付キ私生ノ子ノ権利、及ヒ子孫ヲ遺留セスシテ死去シタル私生ノ子ニ相続スル権 第七百五十六条 私生ノ子ハ相続人ニ非ストス法律ハ私生ノ子適法ニ認知セラレタル時ニ非サレハ死去シタル父又ハ母ノ財産ニ付キ之ニ権利ヲ許与セス 法律ハ其父又ハ母ノ親族ノ財産ニ付キ之ニ何等ノ権利ヲモ許与セス 第七百五十七条 死去シタル父又ハ母ノ財産ニ付キ私生ノ子ノ有スル権利ハ左ノ如ク之ヲ規定ス 父又ハ母嫡出ノ卑属親ヲ遺留セシ時ハ私生ノ子ノ権利ハ私生ノ子若シ嫡出ノ子タルニ於テハ獲得シ得可キ相続部分ノ三分ノ一ニアリトス父又ハ母卑属親ヲ遺留セスシテ尊属親又ハ兄弟姉妹ヲ遺留セシ時ハ一半ニアリトシ父又ハ母卑属親ヲモ尊属親ヲモ兄弟姉妹ヲモ遺留セサリシ時ハ四分ノ三ニアリトス 第七百五十八条 父又ハ母相続ヲ為ス可キ等親ノ族員ヲ遺留セサリシ時ハ私生ノ子ハ財産全部ニ付キ権利ヲ有ス可シ 第七百五十九条 私生ノ子先キニ{父母ヨリ}死去セシ場合ニ於テハ其子又ハ卑属親ハ前数条ニ定メタル権利ヲ要求スルコトヲ得 第七百六十条 私生ノ子又ハ其卑属親ハ相続ノ開始アリタル父又ハ母ヨリ収受セシ物件ニシテ本巻第六章第二款ニ定ムル規則ニ循ヒ遺物中ニ返還ス可キモノヲ其要求ノ権アル物件ト相殺ス可シ 第七百六十一条 私生ノ子又ハ其卑属親其父又ハ母ノ生存中ニ前数条ニ因テ自己ニ帰属スベキモノノ一半ヲ収受シ父母ノ意思私生ノ子又ハ其卑属親ニ指定シタル部分ニ迄其相続スベキ部分ヲ減殺スルニ在ルコトヲ明陳セシ時ハ私生ノ子又ハ其卑属親ニ何等ノ要求ヲモ為スコトヲ禁ス 其部分私生ノ子ニ帰属ス可キモノノ一半ニ至ラサル場合ニ於テハ私生ノ子ハ全ク其一半ヲ為スニ必要ノ補充ニ非サレハ要求スルヲ得ス 第七百六十二条 第七百五十七条及ヒ第七百五十八条ノ規則ハ奸通又ハ乱倫ノ子ニ適当セス 法律ハ之レニ養料ノミヲ許ス 第七百六十三条 其養料ハ父又ハ母ノ資力ト正当相続人ノ員数及ヒ資格トニ準シテ之ヲ規定ス 第七百六十四条 奸通又ハ乱倫ノ子ノ父又ハ母之ニ機関術ヲ学ハシメシ時又ハ其父母ノ一人生存中ヨリ之ニ養料ヲ保約セシ時ハ子ハ父又ハ母ノ相続ニ対シテ何等ノ要求ヲモ為スコトヲ得ス 第七百六十五条 子孫ナク死去シタル私生ノ子ノ相続ハ之ヲ認知シタル父又ハ母ニ帰属シ父母共ニ認知セシ時ハ一半ツツ双方ニ帰属ス可シ 第七百六十六条 私生ノ子ノ父母先キニ死去セシ場合ニ於テハ私生ノ子其父母ヨリ収受セシ財産若シ尚ホ実物ノ侭遺物中ニ存スル時ハ其財産ハ嫡出ノ兄弟姉妹ニ転還ス可シ 若シ其財産ニ付キ買戻ノ訴権アル時ハ其訴権、又譲与シタル其財産ノ代価ノ若シ未タ弁済ナキニ於テハ其代価モ同シク嫡出ノ兄弟姉妹ニ転還ス可シ其他ノ財産ハ総テ私生ノ兄弟姉妹又ハ其卑親属ニ移ル可シ 第二款 遺存配偶者及ヒ政府ノ権利 第七百六十七条 死者若シ相続ヲ為ス可キ等親ノ族員ヲモ私生ノ子ヲモ遺留セサリシ時ハ其相続ノ財産ハ離婚セサル遺存配偶者ニ属ス 第七百六十八条 遺存配偶者アラサル時ハ政府相続権ヲ獲得ス 第七百六十九条 相続ノ権アリト主張スル遺存配偶者及ヒ公領ノ管理所ハ目録相続ノ領承ニ付キ定メタル法式ニ循ヒ封印ヲ為シ及ヒ目録ヲ記ス可シ 第七百七十条 遺存配偶者及ヒ公領ノ管理所ハ相続ノ開始アリタル裁判区ノ始審裁判所ニ占有ヲ為スコトヲ訟求ス可シ裁判所ハ常式ニ循ヒ三次ノ公告及ヒ掲示ヲ為シ且ツ始審裁判所検事ノ意見ヲ聴キタル上ニ非サレハ訟求ニ付キ判決ヲ為スヲ得ス 第七百七十一条 又遺存配偶者ハ動産ヲ売却シテ其代価ヲ益用スルカ又ハ三年ノ期限内ニ死者ノ相続人ノ出現シタル場合ニ於テハ動産ヲ還給スルコトヲ保証スル為メ充分ノ保証人ヲ立ツ可シ其期限後ハ保証人ハ責ヲ免カル可シ 第七百七十二条 法律ニ定メタル法式ヲ履践セサリシ遺存配偶者又ハ公領ノ管理所ハ相続人ノ出現シタル時之ニ損害賠償ヲ為スノ言渡ヲ受ク可シ 第七百七十三条 第七百六十九条、第七百七十条、第七百七十一条、第七百七十二条ノ規則ハ親族ナキ場合ニ於テ相続ヲ為ス可キ私生ノ子ニモ適用ス可シ 第五章 相続ノ領承及ヒ辞謝 第一款 領承 第七百七十四条 相続ハ単純ニ之ヲ領承シ又ハ目録相続法{目録相続法トハ相続シタル財産ノ高ニ至ル迄ノ外死者ノ負債ヲ負担セサルノ特権ヲ云フ}ニ従ヒ之ヲ領承スルヲ得 第七百七十五条 何人モ自己ニ帰属シタル相続ヲ必スシモ領承スルニ及バス 第七百七十六条 有夫ノ婦ハ婚姻ノ巻第六章ノ規則ニ循ヒ其夫又ハ裁判所ノ允許ヲ得サレハ有効ニ相続ヲ領承スルヲ得ス 幼者及ヒ被禁治産者ニ帰属シタル相続ハ幼年、後見及ヒ後見免除ノ巻ノ規則ニ循フニ非サレハ有効ニ之ヲ領承スルヲ得ス 第七百七十七条 領承ノ効果ハ相続開始ノ日ニ追遡ス 第七百七十八条 領承ハ之ヲ明諾又ハ黙諾ニテ為スコトヲ得公正又ハ私印ノ証書中ニ相続人ノ名称又ハ資格ヲ冒用スル時ハ明諾ニテ領承シタリトシ又相続人必ス領承ヲ為スノ意タルコトヲ推知ス可キ所為及ヒ相続人ノ資格ヲ以テスルニ非サレハ為ス可カラサル所為ヲ為セシ時ハ黙諾ニテ領承シタリトス 第七百七十九条 純然ノ保存、看守及仮管理ニ関スル所為ハ相続人ノ名称又ハ資格ヲ冒用セサリシニ於テハ相続領承ノ所為ニ非ストス 第七百八十条 共同相続人ノ一人其相続権ニ付キ外人若クハ共同相続人ノ全員又ハ一人ニ為シタル贈遺売却又ハ移転ハ其者{贈遺売却移転ヲ為シタル者}ノ為メ相続領承ヲ提起ス可シ 左ノ場合ニ於テモ同前ナリトス 第一 相続人ノ一人カ共同相続人ノ一人又ハ数人ノ為メ仮令無償タリトモ辞謝{相続ノ}ヲ為セシ時 第二 相続人ノ一人区別ナク其共同相続人全員ノ為メニ辞謝ヲ為セシト雖トモ辞謝ノ報償ヲ収受セシ時 第七百八十一条 相続ノ帰属シタル者明諾若クハ黙諾ニテ之ヲ辞謝又ハ領承スルコトナクシテ死去セシ時ハ諸相続人ハ其{死者ノ}権利ヲ以テ之ヲ領承又ハ辞謝スルヲ得 第七百八十二条 若シ諸相続人相続ヲ領承シ若クハ辞謝スルニ付キ商議ノ整ハサル時ハ目録相続法ニ従ヒ相続ヲ為スヲ要ス 第七百八十三条 丁年者ハ自己ニ対シテ為シタル詐欺ノ為メニ領承ヲ為セシ場合ニ非サレハ自ラ為シタル明諾又黙諾ノ相続領承ヲ訟撃スルヲ得ス丁年者ハ領承ノ時未タ分明ナラサリシ遺嘱ノ発見ニ因リ遺物皆無ニ属シ又ハ半額以上減少シタル場合ノ外決シテ損失《レジヨン》ヲ口実トシテ何等ノ要求ヲモ為スコトヲ得ス 第二款 相続ノ辞謝 第七百八十四条 相続ノ辞謝ハ推測ス可ラズ相続ノ辞謝ハ相続ノ開始アリタル郡ノ始審裁判所ノ書記局ニ於テ此事ニ付キ備ヘタル別段ノ簿冊ニ載セサレハ之ヲ為スヲ得ス 第七百八十五条 辞謝ヲ為シタル相続人ハ曽テ相続人ニ非サリシト推測セラル可シ 第七百八十六条 辞謝ヲ為シタル者ノ得分ハ其共同相続人ニ属ス若シ辞謝ヲ為シタル者単一ノ相続人ナル時ハ其得分ハ次ノ等親ニ属ス可シ 第七百八十七条 何人ト雖トモ辞謝ヲ為シタル相続人ノ代襲ヲ為スヲ得ス辞謝ヲ為シタル者若シ其等親ニ於テ単一ノ相続人ナルカ又ハ其共同相続人挙ナ辞謝ヲ為ス時ハ子{辞謝ヲ為シタル者ノ}ハ自己ノ権利ヲ以テ且ツ分頭ニ相続ヲ為ス可シ 第七百八十八条 債主ノ権利ヲ害シテ辞謝ヲ為シタル者ノ債主ハ其負債主ニ代リ負債主ノ権利ヲ以テ相続ヲ領承スルノ允許ヲ裁判所ヨリ得ルノ権アリトス 此場合ニ於テハ辞謝ハ止タ債主ノ為メ其貸高ニ至ル迄之ヲ取消シ辞謝ヲ為シタル相続人ノ為メニ之ヲ取消スコトナシトス 第七百八十九条 相続ヲ領承シ又ハ辞謝スルノ権能ハ不動産権ノ最長期ノ時効ニ付キ必要ノ時間ヲ以テ其時効ヲ生ス可シ 第七百九十条 辞謝ヲ為シタル相続人ニ対シ領承ヲ為スノ権ヲ時効ニ因テ獲得セサル間ハ其相続人ハ他ノ相続人未タ相続ヲ領承セサリシニ於テハ猶ホ之ヲ領承スルノ権能アリトス但シ時効ニ因リ若クハ缺位相続ノ管財人ト共ニ有効ニ為シタル所為ニ因リ遺物ニ付キ外人ノ獲得スルヲ得タル権利ヲ害スルコトナカル可シ 第七百九十一条 仮令婚姻財産契約ヲ以テスルモ生存者ノ相続ヲ辞謝シ又ハ其相続ニ付キ有スルヲ得ヘキ未定ノ権利ヲ譲与スルヲ得ス 第七百九十二条 遺物ヲ窃取若クハ蔵匿セシ相続人ハ相続ヲ辞謝スルノ権能ヲ喪失シ辞謝ニ拘ラス純然ノ相続人トナリ窃取若クハ蔵匿シタル物件ニ付テハ何等ノ部分ヲモ要求スルヲ得ス 第三款 目録相続、其効果及ヒ目録相続人ノ義務 第七百九十三条 目録相続ニ非ラサレハ相続人タルノ資格ヲ冒用セスト主張スル相続人ノ陳述ハ相続ノ開始アリタル郡ノ始審裁判所ノ書記局ニ於テ之ヲ為シ辞謝ノ証書ヲ登記ス可キ為メ備ヘタル簿冊ニ之ヲ記載ス可シ 第七百九十四条 其陳述ハ訴訟法ニ規定スル法式ニ循ヒ後条ニ定ムル期限内ニ遺物ノ正実詳密ナル目録ヲ記スル前若クハ後ニ為セシニ非サレハ効ナシトス 第七百九十五条 相続人ハ相続開始ノ日ヨリ三月内ニ目録ヲ記ス可シ 且ツ相続人ハ領承又ハ辞謝ヲ為スニ付キ熟慮ヲ為ス為メニ、目録ヲ記スルニ付キ与ヘタル三月ノ尽了ノ日又ハ三月前ニ目録ヲ記シ終リタル時ハ其終了ノ日ヨリ四十日ノ猶予ヲ得可シ 第七百九十六条 然レトモ若シ遺物中ニ損敗ス可キ物件又ハ保存ノ為メ巨額ノ費用ヲ要スル物件アル時ハ相続人ハ相続ヲ為ス可キノ資格ヲ以テ裁判所ヨリ其物件ノ売却ヲ為スノ允許ヲ受クルヲ得但シ之カ為メ領承ヲ為ス可キノ義務アリト為ス可ラス 其売却ハ訴訟法ニ規定シタル掲示公告ノ後公吏之ヲ為ス可シ 第七百九十七条 目録ヲ記シ熟慮ヲ為ス猶予ノ間ハ相続人ハ資格{相続人ノ}ヲ冒用スヘキコトヲ要強セラルルコトナカルヘク且ツ自己ニ対シ言渡{資格ヲ冒用ス可キノ}ヲ受クルコトナカル可シ若シ猶予ノ終ル時又ハ終ル前ニ辞謝ヲ為ス時ハ相続人其時迄ニ正当ニ為シタル費用ハ遺物ノ負担ニ帰ス可シ 第七百九十八条 前条ノ期限尽了ノ後相続人訴{資格ヲ冒用ス可キノ}ヲ受ケシ時ハ更ニ猶予ヲ要求スルヲ得訟求ヲ受ケタル裁判所ハ事情ニ因リ猶予ヲ允許シ又ハ之ヲ抗拒ス可シ 第七百九十九条 前条ノ場合ニ於テ訟求ノ費用ハ相続人若シ死去{相続ノ開始ヲ来シタル人ノ}ヲ知ラサリシカ又ハ財産ノ位置若クハ不意ノ紛争ノ為メ猶予充分ナラサリシコトヲ証明スル時ハ相続ノ負担ニ帰ス可シ相続人若シ此等ノ事ヲ証明セサル時ハ費用ハ其一身ノ負担ニ帰ス可シ 第八百条 然レトモ相続人ハ第七百九十五条ニ因リ許与セラレタル猶予及ヒ第七百九十八条ニ循ヒ裁判官ノ許与シタル猶予尽了ノ後ニ至リ若シ未タ相続人タルノ所為ヲ為サズ又ハ純然ノ相続人タルノ資格ヲ冒用スヘキヲ宣告シ既判効ヲ生シタル裁判書渡アラサリシ時ハ猶ホ目録ヲ作リ目録相続人ト為ルノ権能ヲ保有ス可シ 第八百一条 蔵匿ノ罪ヲ犯シ又ハ故意及ヒ悪意ヲ以テ遺物ヲ目録ニ載スルコトヲ懈怠シタル相続人ハ目録相続ヲ為スノ権ヲ喪失ス可シ 第八百二条 目録相続ノ効果ハ相続人ニ左ノ利益ヲ与フルニ在リトス 第一 其収得シタル財産ノ価額ニ至ル迄ノ外相続ノ負債ヲ弁済スルニ及バス且ツ債主及ヒ受贈者ニ総テノ遺物ヲ放棄シテ負債ノ弁済ヲ免カルルヲ得ルコト 第二 遺物ト自己ノ財産トヲ混同セス且ツ遺物ニ対シテ自己ノ貸金ノ弁済ヲ要求スルノ権利ヲ保有スルコト 第八百三条 目録相続人ハ相続ヲ管理シ其管理ニ付キ債主及ヒ受贈者ニ計算ヲ為スコトヲ負担ス可シ 目録相続人ハ其計算ヲ示スコトヲ要促《メツトルアンドムール》セラレタル後且ツ其義務{計算ヲ示スノ}ヲ尽ササリシ時ニ非サレハ自己ノ財産ニ付キ要強セラルルコトナカル可シ 計算清釐ノ後ハ目録相続人ハ残計ノ額ニ至ル迄ノ外自己ノ財産ニ付キ要強セラルルコトナカル可シ 第八百四条 目録相続人ハ其負担スル管理{遺物ノ}ニ関スル重大ノ過失ニ非ラサレハ賠償スルニ及ハス 第八百五条 目録相続人ハ常式ノ掲示公告ヲ為シタル後公吏ノ紹介《ミニステール》ヲ以テシ且ツ公売ニ依ルニ非サレハ遺物ノ動産ヲ売却スルコトヲ得ス 目録相続人若シ其動産ヲ実物ヲ以テ持出ス時ハ懈怠ニ起因シタル其下落又ハ損敗ニ非サレハ賠償スルニ及バス 第八百六条 目録相続人ハ訴訟法ニ定メタル法式ニ循フニ非サレハ不動産ヲ売却スルヲ得ス目録相続人ハ通知{書入質ノ債主タル}ヲ為シタル書入質ノ債主ニ不動産ノ代価{売却ニ因テ得タル}ヲ給付ス可シ 第八百七条 目録相続人ハ債主其他ノ関係人ヨリ要求アルニ於テハ目録ニ記シタル動産ノ価額及ヒ書入質ノ債主ニ給付セサル不動産ノ代価ノ一部ニ付キ正実ニシテ資力アル保証人ヲ立ツ可シ 目録相続人其保証人ヲ立テサル時ハ相続ノ負担ノ弁済ニ充ツル為メ動産ヲ売却シ其代価ハ不動産ノ代価ノ未タ給付セサル部分ト同ク之ヲ附託{公ケノ附託署ニ}ス可シ 第八百八条 若シ故障ヲ為ス債主アル時ハ目録相続人ハ裁判官ノ定メタル順序方法ニ循フニ非サレハ弁済ヲ為スヲ得ス 若シ故障ヲ為ス債主ナキ時ハ目録相続人ハ債主及ヒ受嘱者ノ出会順序ニ従ヒ之ニ弁済ヲ為ス可シ 第八百九条 故障ヲ為ササル債主ニシテ計算ノ清釐及ヒ残計額弁済ノ後ニ出会シタル者ハ受嘱者ニ対シテノミ弁済ヲ要求ス可シ 何レノ場合{第一項ノ}ニ於テモ弁済ノ要求ハ計算ノ清釐及ヒ残計額弁済ノ日ヨリ三年ノ時間ヲ以テ時効ヲ生ス可シ 第八百十条 封印ヲ為シタル時ハ其費用並ニ目録及ヒ計算ノ費用ハ遺物ノ負担ナリトス 第四款 缺位相続 第八百十一条 目録ヲ作リ及ヒ熟慮ヲ為スベキ猶予尽了ノ後ニ相続ヲ要求スル者出会セサルカ分明ノ相続人ナキカ又ハ分明ノ相続人相続ヲ辞謝セシ時ハ其相続ハ之ヲ缺位的ト看做ス可シ 第八百十二条 相続ノ開始アリタル郡ノ始審裁判所ハ関係人ノ要求又ハ検事ノ中立ニ因リ管財人ヲ任命ス可シ 第八百十三条 缺位相続ノ管財人ハ先ツ目録ヲ以テ遺物ノ状況ヲ検証ス可シ管財人ハ権利{相続ノ}ヲ執行訟求シ相続ニ対シテ為{人ノ}シタル訟求ニ付キ応答ヲ為シ権利保存ノ為メ遺物中ニ在ル金額ト売却シタル動産不動産ノ代価ニ因テ得タル金額トヲ租税徴収官{現今ハ公ケノ附託所(第二千九百十五条以下)}ニ附託シ及ヒ権利アル者ニ計算ヲ為スノ負担ヲ以テ管理{遺物ノ}ヲ為ス可シ 第八百十四条 目録ノ法式、管理ノ方法及ヒ目録相続人ノ為ス可キ計算ニ関スル本章第三款ノ規則ハ尚ホ缺位相続ノ管財人ニモ適当ス可シ 第六章 分派及ヒ返還 第一款 分派ノ訴訟及ヒ其法式 第八百十五条 何人ト雖トモ遺物ヲ未分ニ委スルコトヲ要強セラルルコトナシ防止及ヒ反対ノ約束ニ抱ハラス常ニ分派ヲ訟求スルコトヲ得 但シ定マリタル時間分派ヲ停止スルコトヲ約束スルヲ得此約束ハ五年以上循守スルニ及ハスト雖トモ之ヲ更新スルコトヲ得 第八百十六条 分派ハ共同相続人ノ一人遺物ノ一部ヲ別ニ得有シタル時ト雖トモ分派ノ証書又ハ時効ヲ獲得スルニ足ル可キ占有ナキ時ハ之ヲ訟求スルヲ得 第八百十七条 幼者又ハ被禁治産者ナル共同相続人ノ為メノ分派ノ訴訟ハ其後見人親族会議ノ特許ヲ得テ之ヲ為スコトヲ得 失踪ノ共同相続人ニ付テハ訴権ハ仮占有{失踪者ノ財産ノ}ヲ為シタル血属ニ属ス可シ 第八百十八条 夫ハ其婦ノ同意ヲ得ス婦ニ帰属シタル動産又ハ不動産ニシテ共通ニ帰ス可キモノノ分派ヲ訟求スルヲ得共通ニ帰セサル物件ニ付テハ夫ハ婦ノ同意ヲ得スシテ其分派ヲ訟求スルヲ得ス止タ其財産ニ付キ収益権ヲ有スル時仮分派ヲ訟求スルヲ得ルノミ婦ノ共同相続人ハ夫婦ヲ対手【アイテ】取ルニ非サレハ確定ノ分派ヲ訟求スルヲ得ス 第八百十九条 相続人悉ク其地ニ在リテ且ツ丁年者ナル時ハ遺物ニ封印ヲ為スヲ要セス分派ハ総テノ関係人ノ至当ト思惟スル法式及ヒ証書ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得 相続人若シ悉ク其地ニ在ラス又ハ相続人中ニ幼者又ハ被禁治産者アル時ハ相続人ノ要求又ハ始審裁判所検事ノ申立ニ因リ又ハ相続ノ開始アリタル郡内ノ治安裁判官ノ職権ヲ以テ最短ノ期限内コ封印ヲ為ス可シ 第八百二十条 債主モ執行証《チートルエキゼキユトワール》又ハ裁判官ノ允許ニ因テ封印ヲ為スコトヲ要求スルヲ得 第八百二十一条 封印ヲ為シタル時ハ諸債主ハ執行証ヲ有セス裁判官ノ允許ヲモ得サル時ト雖トモ之ニ付キ故障ヲ為スコトヲ得 封印ノ除去及ヒ目録ノ調製ニ関スル法式ハ訴訟法ニ規定ス 第八百二十二条 分派ノ訴訟及ヒ分派中ニ生スル紛争ハ相続開始ノ地ノ裁判所ニ出タス可シ 共有物《リシタシヨン》競売ノ手続ヲ為シ又共同分派人間ノ股分【ワケマイ】《ロー》ノ担保ニ関スル訟求及ヒ分派廃棄ノ訟求ヲ出タスモ同上ノ裁判所ナリトス 第八百二十三条 若シ共同相続人ノ一人分派ヲ承諾スルヲ拒ミ又ハ分派ノ手続ヲ為シ若クハ分派ヲ終結スルノ方法ニ付キ訟争ヲ生スル時ハ裁判所ハ簡略事件トシテ裁判言渡ヲ為シ又ハ分派ノ手続ヲ行フニ付キ専任裁判官ヲ任ス可キ時ハ之ヲ任シ其報告ニ従テ訟争ヲ判決ス可シ 第八百二十四条 不動産ノ評価ハ関係人ノ撰定シタル鑑定人之ヲ為シ若シ其拒{撰定スルコトヲ}ミタル時ハ職権{裁判官ノ}ヲ以テ任命シタル鑑定人之ヲ為ス可シ 鑑定人ノ調書ニハ評価ノ因拠ヲ記示シ評価シタル物件ハ好便ニ分派スルヲ得可キヤ又如何ノ方法ヲ以テ分派ス可キヤヲ指定ス可シ次ニ分割ノ場合ニ於テハ分割ニ付キ作成ス可キ各股分及其価額ヲモ記定ス可シ 第八百二十五条 動産ノ評価ハ整式ノ目録ニ記載ナカリシ時ハ其職掌ノ者{監定人等}ヲシテ増価ナク正純ノ代価ニ従ヒ之ヲ為サシム可シ 第八百二十六条 各共同相続人ハ相続ノ動産及ヒ不動産ノ股分ヲ実物ニテ得ンコトヲ要求スルヲ得然レトモ差押又ハ故障ヲ為ス債主アルカ又ハ多数ノ共同相続人遺物ノ負債及ヒ負担ヲ弁済スル為メ売却ヲ必要ナリト思惟スル時ハ動産ハ通常ノ法式ニ循ヒ之ヲ公売ス可シ 第八百二十七条 若シ不動産ヲ好便ニ分派スルヲ得サル時ハ裁判所ヲ経テ共有物競売ノ手続ヲ為ス可シ 然レトモ関係人皆ナ丁年ナル時ハ其協議ヲ以テ撰定シタル公証人ノ面前ニ於テ競売ヲ為ス可キコトヲ承諾スルヲ得 第八百二十八条 動産及ヒ不動産ヲ評価売却スヘキ時ハ之ヲ評価売却シタル後専任裁判官ハ関係人ヲ其{関係人ノ}撰定シタル公証人ノ面前ニ送致シ又其撰定ニ付キ関係人協議ヲ遂ケサリシ時ハ職権ヲ以テ任命シタル公証人ノ面前ニ送致ス可シ 此公吏ノ面前ニ於テ共同分派人相互ニ為ス可キ計算、遺物ノ合部《マツス》ノ集成、股分ノ作成及ヒ各共同分派人ニ為ス可キ供給ヲ為スノ手続ヲ行フ可シ 第八百二十九条 共同分派人ハ下ノ数条ニ定ムル規則ニ循ヒ既ニ収受{死者ヨリ}シタル贈遺及ヒ負債ノ金額ヲ合部中ニ返還ス可シ 第八百三十条 若シ実物ニテ返還ヲ為ササル時ハ返還ヲ受ク可キ共同分派人ハ遺物ノ合部中ヨリ同額{他ノ共同分派人ノ返還ス可キ部分ト}ノ部分ヲ引去ル可シ 其引去《プレレープマン》ハ可成的実物ニテ返還セサリシ物件ト同一ノ性質品位ノ物件ヲ以テ之ヲ為ス可シ 第八百三十一条 其引去ノ後合部中ニ残余スル物ニ付キテハ共同分派人又ハ分派ヲ為ス族ノ員数ニ均シキ股分ヲ作成スルノ手続ヲ為ス可シ 第八百三十二条 股分ノ作成ニ付テハ可成的不動産ヲ細分シ農工業《エキスプロワタシヨン》ヲ区分スルコトヲ避ク可シ又各股分中ニハ可成的同一ノ性質価額ノ動産不動産、権利、若クハ債主権ノ同一ノ分量ヲ加フルヲ至当トス 第八百三十三条 実物ヲ以テ為ス股分ノ不同ハ或ハ年金或ハ金額ノ支給ヲ以テ之ヲ補充ス可シ 第八百三十四条 共同相続人其中ノ一人ヲ撰定シテ股分ヲ作成スル協議ヲ遂ケ且ツ撰定セラレタル者其任ヲ承諾スル時ハ共同相続人中ノ一人ニテ之ヲ作成シ反対ノ場合ニ於テハ専任裁判官ノ指命シタル鑑定人之ヲ作成ス可シ 股分ハ其後抽籤ス可シ 第八百三十五条 各共同分派人ハ股分抽籤ノ手続ヲ行フ前股分ノ作成ニ付キ異議ヲ陳述スルヲ得 第八百三十六条 分派ヲ為ス可キ合部ノ分割ニ付キ定メタル規則ハ分派ニ与カル族ノ間ニ為ス可キ再分ニ付キテモ同シク之ヲ循守ス可シ 第八百三十七条 公証人ノ面前ニテ為ス分派ノ手続ニ付キ紛箏ヲ生スル時ハ公証人ハ紛争ノ調書ヲ作リ双方ノ申立ヲ記シ分派ノ為メニ任命セラレタル専任裁判官ニ之ヲ送附シ其他ノ手続ハ訴訟法ニ定ムル法式ニ従テ之ヲ為ス可シ 第八百三十八条 若シ共同相続人皆不在ナルカ又ハ共同相続人中ニ被禁治産者又ハ後見免除ヲ得タリト雖トモ幼者アルトキハ分派ハ第八百十九条以下前条ニ至ル数条ニ記シタル規則ニ循ヒ裁判所ニ於テ之ヲ為ス可シ若シ分派ニ付キ互ニ反対ノ利益ヲ有スル幼者数人アル時ハ各人ニ別段ノ後見人ヲ附スベシ 第八百三十九条 前条ノ場合ニ於テ若シ競売ヲ為ス時ハ幼者ノ財産ノ譲与ニ付キ定メタル法式ニ循ヒ裁判所ニ於テ之ヲ為ス可シ此競売ニハ常ニ外人ノ参加ヲ許ス可シ 第八百四十条 前数条ニ定メタル規則ニ順ヒ親族会議ノ允許ヲ得タル後見人ノ為シ又管財人ノ立会ヲ以テ後見免除ヲ得タル幼者ノ為シ失踪者又ハ不在者ノ名代ニテ為シタル分派ハ確定ノモノトス若シ前ニ定メタル規則ヲ循守セサル時ハ仮分派タルニ過キストス 第八百四十一条 死者ニ相続ス可キ者ニ非ズシテ共同相続人ヨリ相続権ノ譲与ヲ得タル者ハ仮令死者ノ血属ナルモ共同相続人ノ全員又ハ一人ヨリ譲与ノ代価ヲ弁償シテ之ヲ分派ニ参ヘサルコトヲ得 第八百四十二条 分派ノ後共同分派人ノ各人ニ属ス可キ物件ノ証券ハ之ヲ各人ニ交付スヘシ 分割シタル所有権ノ証券ハ之ヲ利用セントスル共同分派人ノ要求アル時ハ其用ニ供スル負担ヲ以テ其最大部ヲ有スル者之ヲ保存ス可シ 総テノ遺物ニ通シ用ユル証券ハ共同分派人ノ要求アル時ハ其用ニ供スルノ負担ヲ以テ受託者トシテ相続人全員ノ撰定シタル者ニ之ヲ交付ス 其撰定ニ付キ訟争アル時ハ裁判官之ヲ規定ス 第二款 返還 第八百四十三条 相続ヲ為シタル相続人ハ仮令目録相続人タリト雖トモ生者間ノ贈遺トシテ死者ヨリ直接若クハ間接ニ収受シタル物件ヲ共同相続人ニ返還ス可シ股分外ノ予収物トシテ若シクハ返還ノ免除ヲ以テ死者ヨリ特ニ贈遺及ヒ遺嘱ヲ収受シタル時ニ非サレハ其贈遺物ヲ保蓄シ遺嘱物ヲ要求スルヲ得ス 第八百四十四条 予収物トシ若クハ返還ノ免除ヲ以テ贈遺及ヒ遺嘱ヲ為シタル場合ト雖トモ分派ヲ為ス相続人ハ贈与制限額ニ至ル迄ノ外之ヲ保蓄スルヲ得ス超過ノ額ハ之ヲ返還ス可シ 第八百四十五条 相続ヲ辞謝シタル相続人ト雖トモ贈与制限額ニ至ル迄ハ生者間ノ贈遺ヲ保蓄シ又ハ遺嘱物ヲ要求スルヲ得 第八百四十六条 贈遺ノ時ニ推定相続人ニ非スシテ相続開始ノ日ニ相続人トナリタル受贈者ハ贈遺者ヨリ返還ノ免除ヲ得サリシニ於テハ同シク返還ヲ為ス可シ 第八百四十七条 相続開始ノ時ニ相続人トナリタル者ノ子ニ為シタル贈遺及ヒ遺嘱ハ常ニ返還ノ免除ヲ以テ為シタルモノト看做可シ贈遺者ノ相続ヲ為ス父モ之ヲ返還スルニ及ハス 第八百四十八条 又自己ノ権ヲ以テ贈遺者ノ相続ヲナス子ハ父ノ相続ヲ領承シタル時ト雖トモ其父ニ為サレタル贈遺物ヲ返還スルニ及ハス然レトモ子若シ代襲相続ヲ為セシ時ハ父ノ相続ヲ辞謝セシ場合ト雖トモ父ニ為サレタル贈遺物ヲ返還セサルヲ得ス 第八百四十九条 相続ヲ為スヘキモノノ配偶者ニ為サレタル贈遺及遺嘱ハ返還ノ免除ヲ以テ為サレタルモノト見做スヘシ 夫婦双方ニ合同シテ贈遺及遺嘱ヲ為シ其一人相続人{贈遺、遺嘱ヲ為シタル者ノ}トナル可キ時ハ其者ハ其一半ヲ返還スヘク若シ之ヲ相続人ト為ル可キ一方ニ為シタル時ハ其者ハ其全部ヲ返還スベシ 第八百五十条 返還ハ贈遺者ノ遺物中ニ為ス可シ 第八百五十一条 返還ハ共同相続人ノ「エタブリスマン」{「エタブリスマン」ノ語第二百四条ニ照スベシ}ノ為メ又ハ負債弁済ノ為ニ用井タル物ニ付キ之ヲ為ス可シ 第八百五十二条 給養、教育、受業ノ費、服装ノ常費、婚姻及ヒ常例ノ贈物ノ費用ハ之ヲ返還スルニ及ハス 第八百五十三条 相続人死者ト結ヒタル契約ニ因テ得タル利益ハ其契約ヲ為シタル時ニ何等ノ間接ノ利益ヲモ示サザリシニ於テハ又同前ナリトス 第八百五十四条 又死者ト相続人ノ一人トノ間ニ詐欺ナク為シタル結社ニ付テモ公正ノ証書ヲ以テ其ノ約件ヲ規定セシ時ハ返還ヲ為スニ及ハス 第八百五十五条 意外ノ変ニ因リ受贈者ノ過失ナクシテ滅失シタル不動産ハ返還スルニ及ハス 第八百五十六条 返還ヲ為スヘキ物件ノ菓実及ヒ利益ハ相続開始ノノ日以後ノモノニ非レハ返還スルニ及ハス 第八百五十七条 返還ハ共同相続人ヨリ其共同相続人ニ為ス可ク遺物ノ受嘱者若クハ債主ニ為スニ及ハス 第八百五十八条 返還ハ実物ヲ以テ為シ又ハ控減法《アンモワンブルナン》ヲ以テ為スヘシ 第八百五十九条 不動産ニ付テハ受贈者贈遺セラレタル不動産ヲ譲与セス又遺物中ニ他ノ共同相続人ノ為メ稍等シキ股分ヲ作成シ得可キ同一ノ性質価額品位ノ不動産アラサル時ハ受贈者ハ常ニ実物ニテ返還ヲ為スヲ要ス 第八百六十条 受贈者相続ノ開始前ニ不動産ヲ譲与シタル時ハ控減法ヲ以テ其返還ヲ為ス可ク其高ハ開始ノ時ノ不動産ノ価額ニ従フ可シ 第八百六十一条 総テノ場合ニ於テ物件ヲ改良シタル費用ハ分派ノ時ノ増加額ニ準シテ之ヲ受贈者ニ計算スヘシ 第八百六十二条 物件保存ノ為メニ為シタル必用ノ費用モ不動産ヲ改良スルニ至ラサリシ時ト雖トモ又之ヲ受贈者ニ計算スヘシ 第八百六十三条 受贈者ハ自己ノ所為、過失、懈怠ニ因リ不動産ヲ毀壊損敗シテ其価額ヲ減少セシ時ハ自ラ其計算ヲ為スヘシ 第八百六十四条 受贈者不動産ヲ譲与シタル場合ニ於テ獲得者ノ為シタル改良又ハ毀壊ハ前三条ニ循ヒ其計算ヲナスヘシ 第八百六十五条 実物ヲ以テ返還ヲ為ス時ハ財産ハ受贈者ノ為タル総テノ負担ヲ滌除シテ之ヲ遺物ノ合部ニ併合ス可シ然レトモ書入質ノ権アル債主ハ自己ノ権利ヲ害シテ為シタル返還ニ付キ故障ヲ為サンカ為メ分派ニ干渉スルコトヲ得 第八百六十六条 相続ヲ為ス可キ者ニ返還ノ免除ヲ以テ為シタル不動産ノ贈遺若シ贈与制限額ヲ超過スル時ハ好便ニ其過額ノ分割ヲ為スヲ得ルニ於テハ過額ノ返還ハ実物ヲ以テ之ヲ為スヘシ 反対ノ場合ニ於テ過額若シ不動産ノ価額ノ一半以上ナル時ハ受贈者ハ不動産ノ全部ヲ返還シ贈与制限額ノ価額ヲ合部中ヨリ引去ル可シ制限額若シ不動産ノ価額ノ一半ヲ超過スル時ハ受贈者ハ不動産ノ全部ヲ保蓄シテ股分ヲ控減シ貨幣ニテ又ハ其他ノ方法ヲ以テ共同相続人ニ其償還ヲ為ス可シ 第八百六十七条 実物ヲ以テ不動産ノ返還ヲ為タル共同相続人ハ費用又ハ改良ニ付キ己レニ帰戻ス可キ金額ノ現実ノ弁済ヲ得ル迄ハ其不動産ノ占有権ヲ保有ス可シ 第八百六十八条 動産ノ返還ハ控減法ヲ以テ之ヲ為スヘシ其返還ハ贈遺証書ニ添附シタル評価書ニ従ヒ贈遺ノ時ノ動産ノ価額ニ照シテ之ヲ為ス可シ評価書アラサル時ハ鑑定人ノ為シタル増価ナキ正純ノ代価ノ評定ニ従ヒ之ヲ為ス可シ 第八百六十九条 贈遺セラレタル貨幣ノ返還ハ遺物ノ金額中ニ控減法ヲ以テ之ヲ為スヘシ 金額ノ不足スル場合ニ於テハ受贈者ハ返還スヘキ金額ニ至ル迄遺物ノ動産又動産ナキ時ハ不動産ヲ放棄シ金額ヲ以テ返還ヲ為スノ免除ヲ得ヘシ 第三款 負債ノ弁済 第八百七十条 共同相続人ハ其収得シタル物ノ割合ニ従ヒ遺物ノ負債及ヒ負担ノ弁済ヲ各自分担ス可シ 第八百七十一条 財産一部ノ受嘱者ハ其得分ノ割合ニ従ヒ相続人ト共ニ分担{負債ノ弁済ノ}ヲ為ス可シ然レトモ特定物ノ受嘱者ハ遺嘱セラレタル不動産ニ付キ書入質ノ訴ヲ受クルノ外、負債及ヒ負担ヲ担当スルニ及ハス 第八百七十二条 若シ相続ノ不動産ヲ年金支弁ノ為メ別段ノ書入質ト為シタル時ハ各共同相続人ハ股分作成ノ手続ヲ行フノ前ニ年金ヲ弁償シ不動産ヲ自由トナスコトヲ要求スルヲ得共同相続人若シ其時ノ状況ノ侭ニテ遺物ヲ分派スル時ハ書入質不動産ハ他ノ不動産ト同一ノ価額ニ之ヲ評価シ其代価ノ全部ヨリ年金ノ元金ヲ控除シ其不動産ヲ股分中ニ得タル相続人ハ独リ年金ノ役務ヲ負担シ共同相続人ニ其担保ヲ為ス可シ 第八百七十三条 相続人ハ其得分ニ従テ遺物ノ負債及ヒ負担ヲ一身ニ担当シ書入質ニ関シテハ其全額ヲ担当ス可シ但シ共同相続人及ヒ財産全部ノ受嘱者ニ対シ其得分ノ割合ニ従テ分担ス可キ部分ノ還給ヲ要ムルヲ得 第八百七十四条 遺嘱セラレタル不動産ニ付キ書入質ノ負債ヲ弁済シタル特定物ノ受嘱者ハ相続人及ヒ財産一部ノ受嘱者ニ対シ債主ノ権利ヲ継襲ス可シ 第八百七十五条 書入質ノ効ニ因リ自巳ノ得分ヲ超ヘテ共同ノ負債ヲ弁済シタル共同相続人又ハ財産一部ノ受嘱者ハ負債ヲ弁済シタル共同相続人債主ノ権利ヲ継襲ス可キ場合ト雖トモ共同相続人又ハ財産一部ノ受嘱者ニ対シ其各自ノ一身ニ担当ス可キ部分ニ非サレハ還給ヲ要ムルヲ得ス但シ此規則ト目録相続ノ効ニ因リ他ノ債主ノ如ク一身上ノ貸金ノ弁済ヲ要求スルノ権能ヲ保有シタル共同相続人ノ権利ト抵触スルコトナカル可シ 第八百七十六条 共同相続人又ハ財産一部ノ受嘱者ノ一人無資力ノ場合ニ於テハ書入質ノ負償ニ付テ其担当ス可キ部分ハ得分ノ割合ニ従ヒ他ノ共同相続人又ハ受嘱者ニ之ヲ分賦ス可シ 第八百七十七条 死者ニ対スル執行証ハ相続人ノ一身ニ対シテモ均シク之ヲ執行ス可シ但シ債主ハ相続人本人又ハ其住所ニ其証書ヲ送達シタル時ヨリ八日後ニ非サレハ其執行ヲ為スヲ得ス 第八百七十八条 執行証ヲ有スル債主ハ総テノ場合ニ於テ総テノ債主ニ対シ死者ノ資産ヨリ相続人ノ資産ヲ区分スルコトヲ要求スルヲ得 第八百七十九条 然レトモ相続人負債主トナルコトヲ承諾セシニ因リ死者ニ対スル貸金ニ付キ更改アリシ時ハ最早其権利ヲ行フヲ得ス 第八百八十条 動産ニ関シテハ三年ノ時間ニ因テ時効ヲ生ス 不動産ニ関シテハ相続人ノ手中ニ其存在スル限リハ訴権ヲ行フヲ得 第八百八十一条 相続人ノ債主ハ遺物ノ債主ニ対シ決シテ資産ノ区分ヲ訟求スルヲ得ス 第八百八十二条 共同分派人ノ債主ハ巳レノ権利ヲ害シテ分派ヲ行フコトヲ防止スル為メ己レノ立会ナクシテ分派ノ手続ヲ行フニ付キ故障ヲ為スコトヲ得債主ハ自己ノ費用ヲ以テ分派ニ干渉スルノ権アリ然レトモ己レノ立会ナク且ツ故障ヲ為シタルニ拘ハラス分派ノ手続ヲ行ヒタル時ニ非サレハ終結シタル分派ヲ訟撃スルヲ得ス 第四款 分派ノ効果及ヒ股分ノ担保 第八百八十三条 各共同相続人ハ其股分中ニ組入リ又ハ競売ニ因テ帰属シタル総テノ物件ニ付キ独リ直チニ相続ヲ為シタリト看做シ遺物中ノ他ノ物件ニ付テハ曽テ其所有権ヲ有セサリシト看做ス可シ 第八百八十四条 共同相続人ハ止タ分派以前ニ係ハル原因ヨリ生シタル擾碍及ヒ強却《エウイクシヨン》【トリアゲ】ニ付キ互ニ其担保ヲ為ス可シ 受ケタル強却ノ種類ニ付キ分派証書ニ別仮明確ノ約款ヲ以テ例外ヲ掲ケシ時ハ担保ナシトス共同相続人若シ其過失ニ因テ強却ヲ受ケタル時ハ担保ハ消滅ス可シ 第八百八十五条 共同相続人ハ各自ニ相続ノ得分ノ割合ニ従ヒ強却ニ因テ損失ヲ受ケタル共同相続人ニ其償還ヲ為スノ義務アリトス 共同相続人ノ一人若シ無資力ナル時ハ其担当ス可キ部分ハ被保人ト資力アル共同相続人トノ間ニ均シク之ヲ分賦ス可シ 第八百八十六条 年金ノ負債主ノ資力担保ニ付テノ訴権ハ分派ヨリ五年内ニ非サレハ之ヲ行フヲ得ス負債主ノ無資力若シ分派終結後ニ起リシ時ハ其無資力ニ付テ担保ノ訴訟ヲ為スヲ得ス 第五款 分派ノ廃棄 第八百八十七条 分派ハ暴行、詐欺ヲ原由トシテ之ヲ廃棄スルコトヲ得 共同相続人ノ一人自己ノ損害トナリテ四分一以上ノ損失アルコトヲ証スル時ハ亦之ヲ廃棄スルヲ得遺物ノ純然ノ遺漏ハ廃棄ノ訴訟ヲ開始スルコトナク唯分派ノ所為ニ追補ヲ行フノミ 第八百八十八条 共同相続人ノ間ニ未分的ヲ止了スルヲ以テ目的トスル所為カ売却、交換、和解、其他ノ方法ヲ以テ其名義ト為ス時ト雖トモ其所為ニ対シテ廃棄ノ訴訟ヲ為スコトヲ得 然レトモ分派又ハ分派ニ准ス可キ所為ノ後ニ其所為ヨリ生シタル真個ノ紛争ニ付キ為シタル和解ニ対シテハ仮令ヒ此事ニ関シテ曽テ訴訟ヲ始メサリシ時ト雖トモ最早廃棄ノ訴訟ヲ為スコトヲ許サス 第八百八十九条 共同相続人ノ一人ニ其損失担当ヲ以テ他ノ共同相続人数人又ハ一人ヨリ詐欺ヲ用井ス為シタル相続権ノ売却ニ対シテハ廃棄ノ訴訟ヲ為スコトヲ許サス 第八百九十条 損失アリシヤ否ヲ判センニハ分派ノ時ノ価格ニ従テ物件ヲ評価ス可シ 第八百九十一条 廃棄訟求ノ被告人ハ原告人ニ金額又ハ実物ヲ以テ其相続部分ノ追補ヲ提供給付シテ其訟求ヲ遏止シ更ニ分派ヲ行フコトヲ防止スルヲ得 第八百九十二条 股分ノ全部若クハ一部ヲ譲与シタル共同相続人其譲与ヲ詐欺ノ発見又ハ暴行ノ止了ノ後ニ為シタル時ハ最早詐欺又ハ暴行ノ為メ廃棄ノ訴訟ヲ為スヲ許サス 第二巻 生者間ノ贈遺及ヒ遺嘱ノ贈遺(千八百三年五月三日決定同月十三日頒布) 第一章 総則 第八百九十三条 下ニ定ムル法式ニ循ヒ生者間ノ贈遺又ハ遺嘱ノ贈遺ニ因ルニ非サレハ無償ニテ其財産ヲ処分《ヂスポセー》{贈遺ヲ指ス}スルヲ得ス 第八百九十四条 生者間ノ贈遺トハ贈遺者贈遺ヲ領承スル受贈者ノ為メ即時ニ且ツ取消ス《イレボカープルマン》可カラスシテ贈遺物ヲ自己ヨリ離却スルノ所為ヲ云フ 第八百九十五条 遺嘱ノ贈遺トハ遺嘱者其生存セサル時ノ為メ其財産ノ全部若クハ一部ヲ処分スルノ所為ニシテ又之ヲ取消シ得ルモノヲ云フ 第八百九十六条 復贈遺《シュプスチチユシヨン》ハ之ヲ禁ス 受贈者、予定相続人《エリチエーアンスチチユエー》又ハ受嘱者外人ノ為メニ保蓄{贈遺物又ハ遺嘱物ヲ}シテ後ニ之ニ還給ス可キノ負担アル贈遺又ハ遺嘱ハ受贈者、予定相続人又ハ受嘱者ニ対シテモ効ナシトス (第三項千八百四十九年五月七日廃止)然レトモ国王ヨリ世襲ノ為メ王族又ハ家長ニ贈与シタル自由財産ハ千八百六年三月三十日及ヒ同年八月十四日ノ法令ニ因リ規定シタル如ク之ヲ世襲ニ移転スルヲ得 第八百九十七条 本巻第六章ニ於テ父母及ヒ兄弟姉妹ニ許与シタル贈遺又ハ遺嘱ハ前条初二項ノ例外ナリトス 第八百九十八条 受贈者、予定相続人又ハ受嘱者贈遺、相続又ハ遺嘱ヲ収受セサル場合ニ於テ外人之ヲ収受セシ贈遺又ハ遺嘱ハ之ヲ復贈遺ト看做サスシテ有効ナリトス 第八百九十九条 一人ニ収実権ヲ贈遺シ他ノ一人ニ虚有権ヲ贈遺セシ生者間及ヒ遺嘱ノ贈遺ニ付テモ同前ナリトス 第九百条 生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ノ証書中ニアル不能《アンポッシーブル》為ノ約件、法律又ハ風俗ニ反スル約件ハ之ヲ記セサルモノト看做ス可シ 第二章 生者間ノ贈遺又ハ遺嘱ノ贈遺ニ因テ財産ヲ処分シ又ハ収受スルノ能力 第九百一条 生者間贈遺又ハ遺嘱ヲ為スニハ精神ノ健全ナルヲ要ス 第九百二条 法律ニ於テ無能力ト認定シタル者ヲ除キ何人ト雖トモ生者間ノ贈遺又ハ遺嘱ニ因テ財産ヲ処分シ又ハ之ヲ収受スルヲ得 第九百三条 十六歳以下ノ幼者ハ本巻第九章ニ規定スル場合ノ外ハ何等ノ方法ニ因ルモ財産ヲ処分スルヲ得ス 第九百四条 十六歳ニ至リタル幼者ハ遺嘱ノ贈遺ニ因テノミ且ツ法律ニ於テ丁年者ニ処分スルコトヲ許シタル財産ノ半額ニ非サレハ処分スルヲ得ス 第九百五条 有夫ノ婦ハ夫ノ立会若クハ其特許ナク又ハ婚姻ノ巻第二百十七条及ヒ第二百十九条ニ定メタル規則ニ循ヒ裁判所ノ允許ヲ得スシテ生者間ノ贈遺ヲ為スヲ得ス 有夫ノ婦ハ遺嘱ニ因リ贈遺ヲ為スニハ夫ノ許諾ヲモ裁判所ノ允許ヲモ得ルニ及ハス 第九百六条 生者間ノ贈遺ヲ収受スルノ能力アランニハ贈遺ノ時ニ懐妊アリタルヲ以テ足レリトス 但シ贈遺又ハ遺嘱ハ子生存ス可キ状ヲ以テ生レタル時ニ非サレハ効ナシトス 第九百七条 幼者十六歳ニ至リタル時ト雖トモ其後見人ノ為メニハ遺嘱ニ因ルトモ其財産ヲ処分スルヲ得ス 丁年ニ至リタル幼者ハ其後見人タリシ者ノ為メニハ後見ノ計算ヲ予メ終結清釐セサリシニ於テハ生者間ノ贈遺ニ因ルモ遺嘱ニ因ルモ其財産ヲ処分スルヲ得ス 幼者ノ後見人タリ又後見人タリシ尊属親ハ右二項ノ例外ナリトス 第九百八条 私生ノ子ハ相続ノ巻ニ於テ許ス所ニ超ヘ生者間ノ贈遺又ハ遺嘱ニ因リ何等ノ物ヲモ収受スルヲ得ス 第九百九条 死去ヲ来タシタル疾病中ニ病者ヲ世話シタル内外科医下等医及ヒ製薬師ハ病者ノ疾病中ニ己等ノ為メニ為シタル生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ニ付キ利スルヲ得ス 但シ左ノ場合ハ例外ナリトス 第一 贈遺者又ハ遺嘱者ノ資産ト人ノ尽シタル役務トニ応シテ為シタル特定物ノ賞与 第二 死者宗系ノ相続人ナクシテ医師、製薬師、四等及ヒ其以内ノ血族{死者ノ}ナル場合ニ於テ死者ノ為シタル財産全部ノ贈遺又ハ遺嘱但シ贈遺又ハ遺嘱ノ財産ヲ収受スル者自ラ其相続人中ノ一員タル時ハ此限ニ在ラストス 此規則ハ僧侶《ミニストルドキュルト》ニモ適用ス可シ 第九百十条 貧院、邑ノ貧民又ハ公用ノ公舎ニ為シタル生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ハ勅令ヲ以テ允許シタル上ニ非サレハ効ナシトス 第九百十一条 無能力者ノ為メニ為ス贈遺及ヒ遺嘱ハ有償契約ノ形様ヲ以テ之ヲ仮装シ又ハ仲介人ノ名ヲ借リテ之ヲ為スモ効ナシトス 無能力者ノ父母、子、卑属親及ヒ配偶者ハ之ヲ仲介人ト看做ス可シ 第九百十二条 (千八百十九年七月十四日廃止)外国人仏蘭西人ノ為メニ贈遺及ヒ遺嘱ヲ為スヲ得ル場合ニ非サレハ外国人ノ為メニ之ヲ為スヲ得ス 第三章 財産ノ贈与制限額及ヒ減殺 第一款 財産ノ贈与制限額 第九百十三条 生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ハ贈遺者又ハ遺嘱者其死去ニ当リテ嫡出ノ子一人ヲ遺留スル時ハ財産ノ半額、二人ヲ遺留スル時ハ三分ノ一、三人若クハ其以上ヲ遺留スル時ハ四分ノ一ヲ超過スルヲ得ス 第九百十四条 前条ニ記スル子ノ語ハ等級ニ拘ハラス諸卑属親ヲ包含ス然レトモ贈遺者又ハ遺嘱者ノ相続ニ付テハ諸卑属親ヲ其代襲スル所ノ子{処分者ノ}一人トシテ算スルノミ 第九百十五条 生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ハ死者子ヲ遺留セス父系及ヒ母系ニ一人若クハ数人ノ尊属親ヲ遺留スル時ハ財産ノ半額ヲ超過スルヲ得ス一系ニノミ尊属親ヲ遺留スル時ハ四分ノ三ヲ超過スルヲ得ス 如此ク尊属親ノ為メ貯存シタル財産ハ法律ニ定ムル相続順序ニ従ヒ尊属親之ヲ収受ス可シ尊属親ハ傍系親{死者ノ}ト分派ヲ共ニスルガ為メニ定額ノ財産ヲ収受スル能ハサル総テノ場合ニ於テ此貯存財産ニ付キ独リ権利ヲ有ス可シ 第九百十六条 尊属親及ヒ卑属親アラサル時ハ生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ニ因リ財産ノ全部ヲ贈尽スルコトヲ得 第九百十七条 若シ生者間又ハ遺嘱ノ贈遺収実権又ハ畢生間ノ年金ニアリテ其価額贈与制限額ヲ超過スル時ハ法律ニ因リ貯存ノ利益ヲ受クル相続人ハ其処分ヲ執行スルカ又ハ贈与制限額ノ所有権ヲ放棄{収実権又ハ年金ノ受贈者ノ為メ}スルノ撰択権ヲ有ス可シ 第九百十八条 宗系ノ相続人トナル可キ者ノ一人ニ畢生間ノ年金ヲ負担セシメ又ハ収実権ノ貯存ヲ以テ譲与シタル財産ノ全有権ノ価額ハ贈与制限額ニ抵充シ若シ其過額アル時ハ之ヲ合部{遺物ノ}中ニ返還ス可シ此抵充及ヒ返還ハ宗系ノ相続ヲ為ス可キ諸人ノ中其譲与ヲ承諾シタル者ヨリ要求スルヲ得ス又何等ノ場合ニ於テモ傍系ノ相続ヲ為ス可キ者ヨリ要求スルヲ得ス 第九百十九条 贈与制限額ハ生者間ノ贈遺又ハ遺嘱ニ因テ贈遺者又ハ遺嘱者ノ子又ハ相続ヲ為ス可キ者ニ其全部又ハ一部ヲ贈遺スルヲ得特ニ予収物又ハ股分外ノ名義ヲ以テ之ヲ贈遺シタル時ハ後ニ相続ヲ為ス受贈者又ハ受嘱者ハ其返還ヲ為スニ及ハス 予収物又ハ股分外ノ名義ヲ以テ贈遺又ハ遺嘱ヲ為シタル旨ノ陳述ハ贈遺又ハ遺嘱ヲ記スル証書中又ハ後ニ生者間又ハ遺嘱ノ贈遺書ト同一ノ法式ニ循フタル書中ニ之ヲ記スルヲ得 第二款 贈遺及ヒ遺嘱ノ減殺 第九百二十条 贈与制限額ヲ超過シタル生者間及ヒ遺嘱ノ贈遺ハ相続開始ノ時ニ此制限額ニ迄之ヲ減殺ス可シ 第九百二十一条 生者間ノ贈遺ノ減殺ハ法律ニ因テ貯存ノ利益ヲ受クル者相続人又ハ承権人ニ非サレハ之ヲ要求スルヲ得ス受贈者、受嘱者及ヒ死者ノ債主ハ其減殺ヲ要求シ又其減殺ニ因テ利益ヲ得ルコトヲ得ス 第九百二十二条 減殺ハ贈遺者又ハ遺嘱者ノ死去ノ時ニ存在セシ総財産ノ合部ヲ作成シテ之ヲ定ム其合部中ニハ贈遺ノ時ノ状況ト贈遺者ノ死去ノ時ニ於ケル価額トニ従ヒ生者間ノ贈遺ト為シタル財産ヲ想像上ニテ集合シ其中ヨリ負債ヲ控除シタル後死者ノ遺留シタル相続人ノ資格ヲ考察シテ死者ノ贈遺スルヲ得タル部分幾何ナルヤヲ其総財産ニ就テ計算ス可シ 第九百二十三条 遺嘱ノ贈遺ト為シタル財産ノ価額ヲ滅尽シタル後ニ非サレハ生者間ノ贈遺ヲ減殺スルヲ得ス若シ此減殺{生者間ノ贈遺ノ}ヲ為ス可キ時ハ最後ノ贈遺ヨリ之ヲ始メ逐次最前ノ贈遺ニ遡リテ之ヲ為ス可シ 第九百二十四条 相続ヲ為ス可キ者ノ一人ニ為シタル生者間ノ贈遺ヲ減殺ス可キ時ハ贈与制限額ニ属セサル財産ト贈遺財産ト同質ナルニ於テハ其一人ハ贈与制限額ニ属セサル財産中相続人トシテ自己ニ帰属ス可キ部分ノ価額ヲ贈遺財産{減殺ス可キ}ノ上ニ拿有スルヲ得 第九百二十五条 生者間ノ贈遺ノ価額贈与制限額ヲ超過スルカ又ハ之ニ均シキ時ハ総テノ遺嘱ノ贈遺ハ無効ニ属ス可シ 第九百二十六条 数多ノ遺嘱ノ贈遺若シ贈与制限額ヲ超過スルカ又ハ生者間ノ贈遺ノ価額ヲ控除シテ残リタル此制限額ノ一部ヲ超過スル時ハ其減殺ハ財産全部ノ遺嘱ト特定物ノ遺嘱トノ別ナク其割合{遺嘱額ノ}ニ准シテ之ヲ為ス可シ 第九百二十七条 然レトモ遺嘱者某遺嘱物ヲ他ノ遺嘱物ヨリ先《ブレヘランス》キニ弁済セント欲スル旨ヲ明カニ陳述セシ総テノ場合ニ於テハ其先弁済ヲ為ス可シ先弁済ノ目的タリシ遺嘱物ハ他ノ遺嘱物ノ価額法律上ノ貯存ニ抵充スルニ足ラサル時ニ非サレハ之ヲ減殺セス 第九百二十八条 受贈者ハ一年内ニ減殺ノ訟求ヲ受ケシ時ハ贈遺者ノ死去ノ日ヨリ、其他ノ場合ニ於テハ訟求ノ日ヨリ贈与制限額ノ超過高ノ菓実ヲ還給ス可シ 第九百二十九条 減殺ノ効ニ因リ回収ス可キ不動産ハ受贈者ノ為シタル負債又ハ書入質ノ負担ナク回収ス可シ 第九百三十条 減殺又ハ取戻ノ訴ハ受贈者ノ譲与シタル贈遺物ノ一部ヲ為ス不動産ノ領有外人《チェールデタンツール》ニ対シ受贈者自身ニ対スルト同一ノ方法順序ニ従ヒ又タ予メ受贈者ノ財産ヲ差押ヘ売却シタル後相続人之ヲ為ス可シ此訴ハ譲与ノ日附ノ順ニ従ヒ其日附ノ最新ナルモノヨリ之ヲ為ス可シ 第四章 生者間ノ贈遺 第一款 生者間ノ贈遺ノ法式 第九百三十一条 生者間ノ贈遺ヲ記スル証書ハ契約書ノ通例ノ書式ニ従ヒ公証人ノ面前ニ於テ之ヲ記シ其正本ヲ公証人ノ許ニ留置ス可シ此事ヲ為ササル時ハ証書ハ効ナシトス 第九百三十二条 生者間ノ贈遺ハ明カニ領承ヲ為シタル日以後ニ非サレハ贈遺者ノ義務ヲ生スルコトナク又何等ノ効ヲモ生スルコトナカル可シ 領承ハ贈遺者ノ生存中、後ニ記シタル公正ノ証書ヲ以テ之ヲ為スヲ得其正本ハ公証人ノ許ニ留置ス可シ然レトモ此場合ニ於テハ贈遺ハ其領承ヲ証スル証書ヲ贈遺者ニ送達シタル日以後ニ非サレハ贈遺者ニ対シテ其効ヲ生セズ 第九百三十三条 受贈者丁年ナル時ハ自身ニテ領承ヲ為スカ又ハ人ノ為シタル贈遺ヲ領承スルノ権ヲ記シ若クハ既ニ人ノ為シ又ハ後ニ為ス可キ諸贈遺ヲ領承スルノ総理権《セ子ラル》ヲ記シタル委任状ヲ所持スル者受贈者ノ名ヲ以テ領承ヲ為ス可シ 其委任状ハ公証人ノ面前ニ於テ之ヲ記シ其謄本ヲ贈遺ノ正本又ハ別書ヲ以テ為シタル領承証書ノ正本ニ添附ス可シ 第九百三十四条 有夫ノ婦ハ婚姻ノ巻第二百十七条及ヒ第二百十九条ニ定ムル所ニ循ヒ夫ノ許諾ナク又其拒ム時ハ裁判所ノ允許ヲ得スシテ贈遺ヲ領承スルヲ得ス 第九百三十五条 後見免除ヲ得サル幼者又ハ被禁治産者ニ為シタル贈遺ハ幼年後見及ヒ後見免除ノ巻第四百六十三条ニ循ヒ後見人之ヲ領承ス可シ 後見免除ヲ得タル幼者ハ管財人ノ立会ヲ以テ領承ヲ為スヲ得 然レトモ後見免除ヲ得又ハ得サル幼者ノ父母又ハ父母ノ生存中ト雖トモ其他ノ尊属親ハ幼者ノ後見人若シクハ管財人ニ非サル時ト雖トモ幼者ノ為メニ領承ヲ為スヲ得 第九百三十六条 文辞ヲ書スルコトヲ知ル聾唖者ハ自身ニテ又ハ代理人ヲ以テ領承ヲ為スコトヲ得 聾唖者若シ文辞ヲ書スルコトヲ知ラサル時ハ幼年、後見及ヒ後見免除ノ巻ニ定ムル規則ニ循ヒ此事ニ付キ任命シタル管財人其領承ヲ為ス可シ 第九百三十七条 貧院、邑ノ貧民又ハ公用ノ公舎ニ為シタル贈遺ハ邑又ハ公舎ノ管理人其領承ヲ為スニ付キ適法ノ允許ヲ得タル上ニテ之ヲ領承ス可シ 第九百三十八条 適法ニ領承シタル贈遺ハ授受者《パルチー》ノ承諾ノミヲ以テ完成シ贈遺物件ノ所有権ハ更ニ移転式ヲ要セスシテ受贈者ニ移転ス可シ 第九百三十九条 書入質ト為スヲ得可キ財産ノ贈遺アリシ時ハ贈遺並ニ領承ヲ記スル証書及ヒ別証書ヲ以テ為シタル領承ノ通知書ノ登記ヲ財産所在ノ郡ノ書入質管理署ニ於テ為ス可シ 第九百四十条 其登記ハ婦ニ財産ノ贈遺アリタル時ハ夫ノ要求ニ因テ之ヲ為ス可シ夫若シ此法式ヲ履行セサル時ハ婦ハ允許ナク其手続ヲ為サシムルヲ得 幼者、被禁治産者又ハ公舎ニ贈遺アリタル時ハ登記ハ後見人、管財人又ハ管理人ノ要求ニ因リ之ヲ為ス可シ 第九百四十一条 登記ヲ為ササルニ付テハ登記ヲ為サシムルコトヲ担任スル者其承権人及ヒ贈遺者ヲ除キ総テ利益ヲ有スル者ヨリ故障ヲ為スコトヲ得 第九百四十二条 幼者、被禁治産者、有夫ノ婦ハ贈遺ノ領承又ハ登記ヲ為{夫又ハ後見人ガ}ササルニ付キ自ラ其効果ヲ受ク可シ但シ要償ヲ為スヘキ理由アルニ於テハ後見人又ハ夫ニ対シテ之ヲ為ス可シ且ツ其後見人及ヒ夫ノ無資力トナリタル場合ニ於テモ領承登記ヲ為ササルニ付テノ効果ヲ受ルコトヲ{有夫ノ婦幼者等ガ}免レズ 第九百四十三条 生者間ノ贈遺ニハ贈遺者ノ現有ノ財産ニ非サレハ含マス若シ未有ノ財産ヲ含ム時ハ贈遺ハ此財産{未有ノ}ニ付テハ効ナシトス 第九百四十四条 執行ヲ為スト否トハ贈遺者ノ意ノミニ関スルノ約件ヲ以テ為シタル生者間ノ贈遺ハ効ナシトス 第九百四十五条 若シ贈遺ノ時ニ現存シテ贈遺証書又ハ之ニ添附ス可キ状況書中ニ記シタル負債又ハ負担ニ非サル他ノ負債負担ヲ弁済ス可キノ約件ヲ以テ贈遺ヲ為シタル時ハ其贈遺ハ同シク効ナシトス 第九百四十六条 贈遺者贈遺中ニ含ム物件又ハ贈遺財産中ノ定数ノ金額ヲ処分スルノ自由ヲ保有セル場合ニ於テ其処分ヲ為サスシテ死去セシ時ハ其物件金額ハ反対ノ約款要約ニ拘ハラス贈遺者ノ相続人ニ属ス可シ 第九百四十七条 前四条ハ本巻第八章及ヒ第九章ニ記スル贈遺ニ適用ス可カラス 第九百四十八条 動産物件ノ贈遺証書ハ贈遺者及ヒ受贈者又ハ受贈者ニ代リテ領承ヲ為ス者ノ手署シタル評価書ヲ贈遺ノ正本ニ添附シタル物件ニ付テノミ有効ナリトス 第九百四十九条 贈遺者ハ贈遺ノ動産又ハ不動産ノ収益権又ハ収実権ヲ自己ノ為メニ貯存シ又ハ他人ノ為メニ贈遺スルコトヲ得 第九百五十条 収実権ノ貯存ヲ以テ動産物件ノ贈遺ヲ為セシ時ハ受贈者ハ収実権終了ノ時ニ実物ニテ存スル贈遺物件ヲ其時ノ状況ノ侭ニテ収受シ実物ニテ存セサル物件ニ付テハ贈遺者又ハ其相続人ニ対シテ評価書中ニ定メタル価額ニ至ル迄ノ金額ヲ訟求ス可シ 第九百五十一条 贈遺者ハ受贈者ノミ先ニ{贈遺者ヨリ}死去スル場合又ハ受贈者及ヒ其卑属親ノ先ニ死去スル場合ノ為メ贈遺物件ノ回収権ヲ要約スルヲ得 此権ハ贈遺者ノミノ利益ノ為メニ非サレハ要約スルヲ得ス 第九百五十二条 回収権ノ効ハ贈遺財産ノ総テノ譲与ヲ解除シ総テノ負担及ヒ書入質義務ヲ滌除シテ其財産ヲ贈遺者ニ復帰セシムルニ在リ但シ嫁資及ヒ婚姻財産契約ニ関スル書入質権{婦ノ為メニ生スル}ニ付テハ贈遺ヲ受ケタル夫{贈遺者ヨリ先ニ死去シタル}ノ他ノ財産充分{嫁資ヲ償還シ婚姻財産契約ヲ執行スルニ}ナラス且ツ此権及ヒ此書入質権ノ生シタル婚姻財産契約書ニ因テ夫ニ贈遺ヲ為セシ場合ハ此限ニ在ラストス 第二款 生者間ノ贈遺ヲ取消ス可カラサル規則ノ例外 第九百五十三条 生者間ノ贈遺ハ之ヲ為スニ付テノ約件ノ不執行、負恩《アングテチチェード》及ヒ子ノ出生《シュルブナンス》ノ為メニ非レハ之ヲ取消スヲ得ス 第九百五十四条 約件不執行ノ為メノ取消ノ場合ニ於テハ財産ハ受贈者ノ為シタル負担及ヒ書入質義務ヲ滌除シテ贈遺者ノ手中ニ復帰ス可シ又タ贈遺者ハ贈遺不動産ノ領有外人ニ対シ受贈者自身ニ対シテ有スル総テノ権利ヲ有ス可シ 第九百五十五条 生者間ノ贈遺ハ左ノ場合ニ非サレハ負恩トシテ取消スヲ得ス 第一 受贈者贈遺者ノ生命ヲ害セント謀リタル時 第二 贈遺者ニ対シテ苛虐、犯罪又ハ重侮辱ノ罪人トナリタル時 第三 贈遺者ニ養料ヲ給セサル時 第九百五十六条 約件不執行ノ為メ及ヒ負恩ノ為メノ取消ハ当然之ヲ為スヲ得ス 第九百五十七条 負恩ノ為メノ取消ノ訟求ハ贈遺者、受贈者ニ罪ヲ帰シタル日又ハ其犯罪ヲ知ルコトヲ得タル日ヨリ一年内ニ之ヲ為ス可シ 其取消ハ贈遺者ヨリ受贈者ノ相続人ニ対シ又贈遺者ノ相続人ヨリ受贈者ニ対シ之ヲ訟求スルヲ得ス但シ此第二ノ場合ニ於テ贈遺者訴訟ヲ起セシ時又ハ犯罪ノ時ヨリ一年内ニ死去セシ時ハ此限ニ在ラストス 第九百五十八条 受贈者ノ為シタル譲与及ヒ受贈者贈遺物件ニ課スルヲ得タル書入質其他物上ノ負担若シ第九百三十九条ニ定ムル登記ノ欄外ニ取消ノ訟求ノ抜書ヲ記入スルヨリ以前ニアリシ時ハ負恩ノ為メノ取消ハ其譲与書入質及ヒ負担ヲ害スルコトナカル可シ 取消ヲ為ス場合ニ於テハ受贈者ハ訟求ノ時ノ譲与物件ノ価格ト訟求ノ日以後ノ菓実トヲ還給ス可キノ言渡ヲ受ク可シ 第九百五十九条 婚姻ノ為メノ贈遺ハ負恩ノ為メ之ヲ取消ス可カラス 第九百六十条 贈遺ノ時現ニ生存スル子又ハ卑属親アラサリシ者ノ為シタル生者間ノ贈遺ハ其価額幾許ナルヤ何ノ名義ヲ以テ之ヲ為セシヤ又相互ニ為セシヤ報酬ノ為メニ為セシヤヲ問ハス且ツ尊属親ヨリ夫婦{卑属ノ}ニ為シ又ハ夫婦相互ニ為シタルニ非スシテ他人ヨリ婚姻ノ為メニ為シタリモノト雖モ贈遺者ノ嫡出ノ子仮令ヒ遺子タリトモ其出生ニ因テ又ハ私生ノ子若シ贈遺後ニ生レタルニ於テハ後{私生ノ子出生ノ}ノ婚姻ニテ其認知ニ因テ当然其贈遺ヲ取消ス可シ 第九百六十一条 其取消ハ贈遺ノ時贈遺者ノ子懐妊中ナリシ時ト雖トモ之ヲ為スヲ得 第九百六十二条 贈遺ハ受贈者既ニ贈遺物件ヲ占有シ贈遺者子ノ出生後之ヲ其侭ニ委セシ時ト雖トモ同シク之ヲ取消ス可シ但シ受贈者ハ使丁ノ書其他整正ノ書ヲ以テ子ノ出産又ハ後ノ婚姻ニ因ル認知ノ通知ヲ受ケタル日以後ノモノニ非サレハ既ニ収受シタル菓実ヲ其性質ノ如何ニ拘ハラス還給スルニ及ハス贈与財産回収ノ訟求ヲ其通知後ニ為セシ時ト雖トモ同前ナリトス 第九百六十三条 当然取消シタル贈遺中ニ含ム財産ハ受贈者ノ婦ノ嫁資ノ還給其買戻又ハ其他ノ婚姻財産上ノ契約ニ補充トシテモ之ヲ抵供シ置クコトヲ得ルコトナク受贈者ノ為シタル総テノ負担及ヒ書入質ヲ滌除シテ贈遺者ノ資産中ニ復帰ス可シ受贈者ノ婚姻ノ為メニ贈遺ヲ為シ之ヲ契約{婚姻財産ノ}中ニ記入セシ時及ヒ贈遺者贈遺ヲ以テ婚姻財産契約ノ執行ノ保証人タルノ義務ヲ負ヒシ時ト雖トモ同前ナリトス 第九百六十四条 如此ク取消シタル贈遺ハ贈遺者ノ子ノ死去ニ因ルモ又何等ノ確定証書ニ因ルモ其効ヲ再生セス若シ贈遺者子ノ出産ノ為メ贈遺ヲ取消シ其子ノ死去ノ前又ハ後ニ同一ノ受贈者ニ同一ノ財産ヲ贈遺セント欲スル時ハ新贈遺ニ因ルニ非レハ之ヲ為スヲ得ス 第九百六十五条 贈遺者子ノ出生ノ為メノ贈遺取消ヲ放棄セシ総テノ約款又ハ約束ハ無効ト看做シ何等ノ効ヲモ生スルヲ得ス 第九百六十六条 受贈者其相続人承権人又ハ贈遺物ノ領有者《デタンツール》ハ仮令ヒ遺子タリトモ贈遺者ノ季子ノ出産ノ日ヨリ起算シ三十年ノ占有ノ後ニ非サレハ子ノ出生ニ因テ取消シタル贈遺ヲ効アラシムル為メ時効ヲ主張スルヲ得ス但シ此事{時効ヲ主張スルコト}ト法律ニ定ムル時効中断ト抵触スルコトナカル可シ 第五章 遺嘱ノ贈遺 第一款 遺嘱ノ法式ニ付テノ総則 第九百六十七条 何人ト雖トモ或ハ相続人定立ノ名義ヲ以テ或ハ遺嘱物ノ名義ヲ以テ或ハ其他其意思ヲ表スルニ相当ノ名義ヲ以テ遺嘱ニ因リ贈遺ヲ為スコトヲ得 第九百六十八条 二人若クハ数人ノ者外人ノ為メニスルト相互遺嘱ノ名義ヲ以テスルトヲ問ハス同一ノ証書ヲ以テ遺嘱ヲ為スヲ得ス 第九百六十九条 遺嘱ハ或ハ手記証書ヲ以テ或ハ公証書ニ因テ或ハ秘密証書ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得 第九百七十条 手記遺嘱書ハ遺嘱者其全文ト日附トヲ手記シテ之ニ手署セシニ非サレハ効ナシトス手記遺嘱書ハ其他ニ何等ノ法式ヲモ履践スルニ及ハス 第九百七十一条 公証書ニ因ル遺嘱書トハ証人二人ノ立会ニテ公証人二人ノ記シ又ハ証人四人ノ立会ニテ公証人一人ノ記シタルモノヲ云フ 第九百七十二条 公証人二人ニテ遺嘱書ヲ記スル時ハ遺嘱者之ニ口授{遺嘱文ノ}ヲ為シ公証人ノ一人其口授ノ如ク筆記ス可シ 公証人一人ノミノ時モ遺嘱者同シク口授ヲ為シ公証人之ヲ筆記ス可シ 右二項ノ場合ニ於テハ遺嘱文ヲ証人ノ立会ニテ遺嘱者ニ読ミ聴カス可シ 其等ノ事ハ特ニ之ヲ附記ス可シ 第九百七十三条 其遺嘱書ニハ遺嘱者手署ス可シ若シ手署スルヲ知ラサルカ又ハ能ハサルコトヲ陳述スル時ハ其陳述ト手署スルコトヲ障碍セシ原由トヲ特ニ遺嘱書ニ附記ス可シ 第九百七十四条 遺嘱書ニハ証人手署ス可シ然レトモ偏郷ニ於テハ公証人二人遺嘱書ヲ記ス可キ時ハ証人二人ノ中一人、又公証人一人之ヲ記ス可キ時ハ証人四人ノ中二人手署スルヲ以テ足レリトス 第九百七十五条 名義{遺嘱ノ}如何ヲ問ハス総テノ受嘱者、四等親及ヒ其以内ノ血族姻族{受嘱者ノ}及ヒ遺嘱証書ヲ記シタル公証人ノ見習役ハ公証書ニ因ル遺嘱ノ証人トナルコトヲ得ス 第九百七十六条 遺嘱者秘密ノ遺嘱ヲ為サント欲スル時ハ遺嘱証書ヲ自記セシト他人ニ記セシメシトヲ問ハス之ニ手署ス可シ○遺嘱ヲ記シタル紙、又封紙アルトキハ封紙ニ用井シ紙ハ之ヲ閉緘シテ之ニ印ヲ捺ス可シ○遺嘱者ハ如此ク閉緘シテ印ヲ捺シタル後公証人一人及ヒ少クモ証人六人ニ之ヲ渡シ又ハ其立会ニテ之ヲ閉緘シテ印ヲ捺セシメ其紙中ニ記スル所ハ自ラ記シテ手署シタル遺嘱書ナルコト若シクハ他人ニ記セシメテ自ラ手署シタル遺嘱書ナルコトヲ陳述ス可シ、公証人ハ遺嘱ノ紙又ハ封紙ノ表ニ其陳述ヲ記シ遺嘱者公証人証人共ニ之ニ手署ス可シ○以上ノ諸事ハ引続テ之ヲ為シ中途ニシテ他ノ証書ニ従事ス可カラス若シ遺嘱者遺嘱書ニ手署セシ後支障ヲ生シ表書ニ手署スルヲ得サル場合ニ於テハ遺嘱者ノ其事ニ付キ為シタル陳述ヲ附記ス可シ但シ此場合ニ於テハ証人ノ員数ヲ増加スルニ及ハス 第九百七十七条 遺嘱者遺嘱書ヲ記セシメタル時手署スルヲ知ラサルカ又ハ能ハサリシニ於テハ其表書ニ手署セシムル為メ前条ニ記シタル定員外ニ証人一人ヲ呼出シ他ノ証人ト共ニ表書ニ手署セシメ此証人ヲ呼出シタル原由ヲ之ニ附記ス可シ 第九百七十八条 文辞ヲ読ムコトヲ知ラス又ハ能ハサル者ハ秘密証書ノ法式ニ循ヒ遺嘱ヲ為スヲ得ス 第九百七十九条 遺嘱者語スルヲ得スト雖トモ書スルヲ知ル時ハ遺嘱書ノ全文及ヒ日附ヲ手記シテ之ニ手署シ之ヲ公証人及ヒ証人ニ渡シ其立会ニテ表書ノ上部ニ其渡シタル紙ハ遺嘱書ナルコトヲ記スルノ負担ヲ以テ秘密ノ遺嘱ヲ為スコトヲ得然ル後公証人ハ表書ヲ記シ公証人及ヒ証人立会ニテ遺嘱者其文{上部ニ記シタルモノヲ指ス}ヲ記セシ旨ヲ附記シ其他総テ第九百七十六条ニ定ムル所ニ循フ可シ 第九百八十条 遺嘱ニ立会ノ為メ呼出サレタル証人ハ私権ヲ有スル仏蘭西臣民ニシテ丁年ノ男タルコトヲ要ス 第二款 或ル遺嘱ノ法式ニ特別ナル規則 第九百八十一条 軍人軍属ノ遺嘱ハ何国ニ於テモ歩兵大隊又ハ騎兵大隊ノ長又ハ其他上級ノ士官証人二人ノ立会ニテ之ヲ記シ又ハ庶務官《コンミセールデゲール》二人ニテ之ヲ記シ又ハ庶務官一人証人二人ノ立会ニテ之ヲ記スルヲ得 第九百八十二条 軍人軍属ノ遺嘱ハ遺嘱者ノ疾病負傷中ハ病院取締ノ任アル士官ノ立会ニテ軍医長之ヲ記スルヲ得 第九百八十三条 前数条ノ規則ハ仏蘭西国外ニ遠征、駐陣、屯営中ノ者又ハ敵中ニ捕虜トナリタル者ニノミ適当ス国内ニ於テ屯営駐陣中ノ者ハ攻囲ヲ受ケタル場所又ハ戦争ノ為メ門ヲ閉鎖シ交通ヲ絶断シタル城砦其他ノ場所ニ在ル時ニ非サレハ其規則ヲ適用スルヲ得ス 第九百八十四条 以上定メタル法式ニ循ヒ為シタル遺嘱ハ遺嘱者通常ノ法式ヲ用フルノ自由アル地ニ帰来シタル時ヨリ六月後ニハ効ナシトス 第九百八十五条 時疫其他伝染病ノ為メ交通ノ絶ヘタル地ニ於テ為ス遺嘱ハ証人二人ノ立会ニテ治安判事ノ面前又ハ邑ノ官吏一人ノ面前ニ於テ之ヲ為スコトヲ得 第九百八十六条 此遺嘱方法ハ其病ニ罹リタル者及ヒ現ニ病ニ罹ラスト雖トモ病ノ流行スル地ニ在ル者ニモ適用ス可シ 第九百八十七条 前二条ニ記シタル遺嘱ハ遺嘱者所在ノ地ニ交通ノ復シタル時又ハ遺嘱者交通ノ絶ヘサル地ニ移転シタル時ヨリ六月ノ後ニハ効ナシトス 第九百八十八条 旅行中海上ニテ為ス遺嘱ハ左ノ者之ヲ記スルコトヲ得 国王ノ兵艦其他ノ船舶ニ於テハ船艦ノ指令官若シ其在ラサル時ハ執務ノ順序ニ於テ其代理ヲ為ス者但シ孰レモ庶務官又ハ代リテ庶務ヲ司ル者ト共ニ之ヲ記ス可シ 商船ニ於テハ船ノ書記役又ハ代リテ職務ヲ執ル者但シ孰レモ船長指揮役若シ其在ラサル時ハ其代理ヲ為ス者ト共ニ之ヲ記ス可シ 其遺嘱書ハ総テノ場合ニ於テ証人二人ノ立会ニテ之ヲ記ス可シ 第九百八十九条 兵艦ニ於ノ艦長又ハ庶務官ノ遺嘱、商船ニ於テ船長指揮役又ハ書記役ノ遺嘱ハ執務ノ順序ニ於テ其次位ニ列スル者総テ前条ノ規則ニ循ヒ之ヲ記スルヲ得 第九百九十条 総テノ場合ニ於テ前二条ニ記シタル遺嘱書ノ正本二通ヲ記ス可シ 第九百九十一条 若シ船艦仏蘭西領事ノ駐剳スル外国ノ港ニ到着スル時ハ遺嘱書ヲ記シタル者ハ正本一通ニ封印シテ之ヲ領事ニ渡ス可シ領事ハ之ヲ海軍卿ニ送呈シ海軍卿ハ之ヲ遺嘱者ノ住所ノ地ノ治安裁判所ノ書記局ニ送達セシム可シ 第九百九十二条 艤送シタル仏蘭西ノ港又ハ艤送シタル港ニ非サル仏蘭西ノ他ノ港ニ船艦ノ帰来セシ時ハ同シク封印シタル遺嘱書ノ正本二通ヲ海兵徴募局ニ渡シ若シ前条ニ循ヒ航海中ニ正本一通ヲ渡セシ時ハ残リ一通ヲ海兵徴募局ニ渡ス可シ海兵徴募局ハ直チニ之ヲ海軍卿ニ送呈シ海軍卿ハ前条ニ記スル如ク其送達ヲ命ス可シ 第九百九十三条 船艦乗組名簿中遺嘱者ノ氏名ノ欄外ニ領事ノ手中又ハ海兵徴募局ニ遺嘱ノ正本ヲ渡シタル旨ヲ附記ス可シ 第九百九十四条 遺嘱ハ旅行中ニ為シタル時ト雖トモ之ヲ為シタル時船艦ノ仏蘭西官吏ノ駐剳スル外国ノ土地又ハ仏蘭西ノ支配地ニ到着セシ時ハ之ヲ海上ニテ為シタリト看做サス此場合ニ於テハ遺嘱ハ仏蘭西ニ於テ規定セル法式又ハ遺嘱ヲ為セシ国ニ於テ慣用スル法式ニ循テ之ヲ記シタルニ非サレハ効ナシトス 第九百九十五条 前数条ノ規則ハ乗組人ニ非サル通常ノ船客ノ為シタル遺嘱ニモ適用ス可シ 第九百九十六条 第九百八十八条ニ定ムル法式ニ循ヒ海上ニテ為シタル遺嘱ハ遺嘱者海上ニテ死去セシカ又ハ通常ノ法式ニ循ヒ更ニ遺嘱ヲ為スヲ得ヘキ土地ニ上陸ノ時ヨリ三月内ニ死去セシ時ニ非サレハ効十シトス 第九百九十七条 海上ニテ為ス遺嘱書ニハ船艦ノ士官若シ遺嘱者ノ血族ニ非リルニ於テハ其{士官ノ}利益ノ為メ何等ノ贈遺ヲモ記載スルヲ得ス 第九百九十八条 本款前数条ニ記スル遺嘱書ニハ遺嘱者及ヒ之ヲ記セシ者手署ス可シ 若シ遺嘱者手署スルヲ知ラサルカ又ハ能ハサルコトヲ陳述スル時ハ其陳述ト手署スルコトヲ障碍スル原由トヲ附記ス可シ 証人二人ノ立会ヲ要スル場合ニ於テハ少クモ其中ノ一人遺嘱書ニ手署シ他ノ一人ノ手署セサリシ原由ヲ附記ス可シ 第九百九十九条 外国ニ在留スル仏蘭西人ハ第九百七十条ニ定ムル如ク私印ノ証書ヲ以テ又ハ証書ヲ記スル地ニ於テ慣用スル法式ニ循ヒ公正ノ証書ヲ以テ遺嘱ノ贈遺ヲ為スヲ得 第千条 外国ニテ為シタル遺嘱ハ遺嘱者仏蘭西ニ住所ヲ有セシ時ハ其住所ノ登記局ニ於テ若シ然ラサル時ハ仏蘭西ニ於テ分明ナル其最終ノ住所ノ登記局ニ於テ其登記ヲ為シタル後ニ非サレハ仏蘭西ニ在ル財産ニ付キ其執行ヲ為スヲ得ス若シ遺嘱書ニ仏蘭西ニ在ル不動産ノ贈遺ヲ記スル時ハ尚ホ其不動産所在ノ地ノ登記局ニ於テモ其登記ヲ為ス可シ但シ登記税ハ重子テ払フニ及ハス 第千一条 本款及ヒ前款ノ規則ニ因リ諸般ノ遺嘱ニ適用ス可キ法式ハ必ズ之ヲ循守ス可シ若シ之ヲ循守セサル時ハ遺嘱ハ効ナシトス 第三款 相続人ノ定立及ヒ一般ノ遺嘱 第千二条 遺嘱ノ贈遺ニハ財産全部《ユニウエルセール》ノモノアリ財産一部《アチートルユニウエルセール》ノモノアリ又特定物《アチートルパルチキユリエー》ニ係ハルモノアリ 此各種ノ遺嘱ハ相続人定立ノ名義ヲ以テ為スモ遺嘱物ノ名義ヲ以テ為スモ財産全部ノ遺嘱、財産一部ノ遺嘱及ヒ特定物ノ遺嘱ニ付キ下ニ定ムル規則ニ循ヒ其効ヲ生ス可シ 第四款 財産全部ノ遺嘱 第千三条 財産全部ノ遺嘱トハ遺嘱者其死去ニ当リテ遺留ス可キ財産ノ全部ヲ一人又ハ数人ニ遺嘱ノ贈遺ト為スヲ云フ 第千四条 遺嘱者死去ノ時法律ニ因リ其財産一部ノ貯存ヲ受クル相続人在ル時ハ其相続人ハ遺嘱者ノ死去ニ因テ当然総テノ遺物ヲ収握ス財産全部ノ受嘱者ハ遺嘱書中ニ記シタル財産ノ引渡ヲ相続人ニ要求ス可シ 第千五条 然レトモ右ノ場合ニ於テ財産全部ノ受嘱者ハ死去{遺嘱者ノ}ノ時ヨリ一年内ニ引渡ノ要求ヲ為シタルニ於テハ遺嘱書中路記シタル財産ニ付キ死去ノ日ヨリ収益ヲ為ス可シ若シ然ラサル時ハ裁判所ニ其要求ヲ為シタル日若シクハ好意ニテ其引渡ヲ承諾シタル日ヨリスルニ非サレハ収益ヲ始ムルヲ得ス 第千六条 遺嘱者死去ノ時法律ニ因リ其財産一部ノ貯存ヲ受クル相続人在ラサル時ハ財産全部ノ受嘱者ハ遺嘱者ノ死去ニ因リ当然其収握ヲ為シ引渡ヲ要求スルニ及ハス 第千七条 手記遺嘱書ハ其執行ヲ為ス前ニ相続ノ開始アリタル郡ノ始審裁判所長ニ之ヲ差出タス可シ裁判所長ハ遺嘱書封緘アル時ハ之ヲ開封シ遺嘱書ノ差出、開封、状況ノ調書ヲ作リ之ヲ其特任シタル公証人ニ附託ス可キコトヲ命ス可シ 遺嘱書若シ秘密ノ法式ニ循ヒシ時ハ其差出、開封、状況記載及ヒ附託ハ同上ノ方法ニ従ヒ之ヲ為ス可シト雖トモ開封ハ表書ノ手署人ニシテ其地ニ在リ又ハ呼出ヲ受ケタル公証人及ヒ証人ノ立会アルニ非サレハ之ヲ為スヲ得ス 第千八条 第千六条ノ場合ニ於テ遺嘱ノ手記又ハ秘密ノモノナル時ハ財産全部ノ受嘱者ハ附託証書ヲ添ヘ差出シタル要願書{仮占有ノ}ノ末尾ニ裁判所長ノ載セタル命令ニ因リ仮占有ヲ為ス可シ 第千九条 財産一部ノ貯存ヲ受クル相続人ト相続ヲ並承スル財産全部ノ受嘱者ハ其得分ニ従テ遺嘱者ノ遺物ノ負債及ヒ負担ヲ一身ニ担当シ書入質ニ関シテハ其全額ヲ担当ス可シ又財産全部ノ受嘱者ハ第九百二十六条及ヒ第九百二十七条ニ定ムル如ク減殺ノ場合ノ外ハ総テ遺嘱物ノ弁済{他ノ受嘱者ニ}ヲ為ス可シ 第五款 財産一部ノ遺嘱 第千十条 財産一部ノ遺嘱トハ遺嘱者其財産一半、三分一、総不動産、又ハ総動産若シクハ総不動産又ハ総動産ノ一定ノ部分ノ如ク法律ニ於テ処分スルコトヲ許ス財産ノ一部ヲ遺嘱スルヲ云フ 其他ノ遺嘱ハ総テ特定物ノ遺嘱ナリトス 第千十一条 財産一部ノ受嘱者ハ法律ニ因リ財産一部ノ貯存ヲ受クル相続人若シ其在ラサル時ハ財産全部ノ受嘱者又其在ラサル時ハ相続ノ巻ニ定メタル順序ニ従ヒ相続ヲ為ス可キ者ニ引渡{遺嘱物ノ}ヲ要求ス可シ 第千十二条 財産一部ノ受嘱者ハ財産全部ノ受嘱者ノ如ク其得分ニ従ヒ遺嘱者ノ相続ノ負債負担ヲ一身ニ担当シ書入質ニ関シテハ其全額ヲ担当ス可シ 第千十三条 遺嘱者贈与制限額ノミヲ財産一部ノ名義ニテ遺嘱セシ時ハ其受嘱者ハ私生ノ相続人ト共ニ特定遺嘱物ノ弁済ヲ為ス可シ 第六款 特定物ノ遺嘱 第千十四条 単純ノ遺嘱ハ遺嘱者死去ノ日ヨリ遺嘱物ニ付キ受嘱者ニ権利ヲ授与ス可シ其権利ハ受嘱者ノ相続人又ハ承権人ニ移転ス可キモノトス 然レトモ特定物ノ受嘱者ハ第千十一条ニ定メタル順序ニ従ヒ引渡ノ訟求ヲ為シタル日又ハ好意ニテ引渡ノ承諾アリタル日ヨリスルニ非サレハ遺嘱物ヲ占有シ若シクハ其菓実又ハ利益ヲ得ンコトヲ主張スルヲ得ス 第千十五条 遺嘱物ノ利益又ハ菓実ハ左ノ場合ニ於テハ訟求ヲ為サスシテ死去{遺嘱者ノ}ノ日ヨリ受嘱者ノ利益ニ帰属ス可シ 第一 遺嘱者遺嘱書中ニ此事ニ付キ特ラニ其意ヲ表シタル時 第二 畢生間ノ年金又ハ給与ヲ養料ノ名義ニテ遺嘱シタル時 第千十六条 引渡訟求ノ費用ハ相続ノ負担ナリトス然レトモ之カ為メ法律上ノ貯存ニ減殺ヲ来タスコトナカル可シ 登記税ハ受嘱者ノ負担ナリトス 右ハ遺嘱書中ニ別段ノ規定ナキ時ニ限ル可シ 各遺嘱ハ別々ニ之ヲ登記スルヲ得其登記ハ受嘱者又ハ其承権人以外ノ者ニ利スルコトナカル可シ 第千十七条 遺嘱者ノ相続人其他遺嘱物ノ義務者ハ各々相続ニ付キ利益シタル得分ノ割合ニ従ヒ遺嘱物ノ弁済ヲ一身ニ担当ス可シ 又相続人又ハ義務者ハ書入質ニ関シテハ其現ニ領有スル相続不動産ノ価額ニ至ル迄遺嘱物ノ全額ヲ弁済ス可シ 第千十八条 遺嘱物ハ其必要ノ附属物ト共ニ遺嘱者ノ死去ノ日ノ状況ノ侭之ヲ引渡ス可シ 第千十九条 一不動産ノ所有権ヲ遺嘱シタル者其後獲得ニ因テ其所有権ヲ増加セシ時其獲得シタル物ハ仮令ヒ接着{在来ノ不動産ト}スル時ト雖トモ更ニ遺嘱ヲ為スニ非サレハ遺嘱物ノ一部ヲ為サズト看做ス可シ 遺嘱不動産ニ加ヘタル装飾物又ハ新建築物若シクハ遺嘱者カ周囲ヲ拡メタル繞囲地ハ此限ニ在ラストス 第千二十条 若シ遺嘱ノ前又ハ後ニ相続ノ負債若クハ外人ノ負債ノ為メ遺嘱物ヲ書入質ト為シ又ハ収実権ニ供シタル時ハ遺嘱物ヲ弁済ス可キ者ハ遺嘱者ノ明的ノ規約ニ因リ其受戻ヲ為ス可キコトヲ担当シタルニ非サレハ之ヲ為スニ及ハス 第千二十一条 遺嘱者若シ他人ノ物件ヲ遺嘱ト為シタル時ハ遺嘱者其物件ノ自己ニ属セサルコトヲ知リシト否トヲ問ハス其遺嘱ハ効ナシトス 第千二十二条 遺嘱ノ不確定物ニ係ハル時ハ相続人ハ最上等ノ物ヲ与フルニ及ハス又最下等ノ物ヲ供スルヲ得ス 第千二十三条 債主ニ為シタル遺嘱ハ其貸金ト相殺ノタメニ為シタルモノト看做サス又僕婢ニ為シタル遺嘱ハ其給料ト相殺ノタメニ為シタルモノト見做サス 第千二十四条 特定物ノ受嘱者ハ前ニ記シタル如ク遺嘱物ノ減殺ヲ受ケ及ヒ債主ヨリ書入質上ノ訴訟ヲ受クルノ外相続ノ負債ヲ担当スルニ及ハス 第七款 遺嘱執行者 第千二十五条 遺嘱者ハ遺嘱執行者一人又ハ数人ヲ指命スルヲ得 第千二十六条 遺嘱者ハ遺嘱執行者ニ自己ノ動産ノ全部若クハ止タ一部ノ収握権ヲ附与スルヲ得然レトモ此権ハ其死去ノ日ヨリ一年一日以上維存スルヲ得ス 遺嘱者若シ遺嘱執行者ニ此権ヲ附与セサル時ハ遺嘱執行者ヨリ之ヲ要求スルヲ得ス 第千二十七条 相続人ハ遺嘱動産ノ弁済ニ足ルヘキ金額ヲ遺嘱執行者ニ渡サント要メ又ハ其弁済ヲ為セシコトヲ証シテ収握ヲ終了セシムルヲ得 第千二十八条 義務ヲ負フ能ハサル者ハ遺嘱執行者ト為ルコトヲ得ス 第千二十九条 有夫ノ婦ハ夫ノ許諾ヲ得ルニ非サレハ遺嘱執行者ト為ルコトヲ承諾スルヲ得ス 有夫ノ婦若シ婚姻財産契約又ハ裁判言渡ニ因リ財産ヲ分割スル時婚姻ノ巻第二百十七条及ヒ第二百十九条ニ記スル所ニ循ヒ夫ノ許諾ヲ得夫若シ拒ミタル時ハ裁判所ノ允許ヲ得タル上遺嘱執行者ト為ルコトヲ得 第千三十条 幼者ハ後見人又ハ管財人ノ許諾ヲ得ルモ遺嘱執行者ト為ルコトヲ得ス 第千三十一条 遺嘱執行者ハ幼年、被禁治産又ハ失踪ノ相続人アル時ハ封印ヲ為サシム可シ 遺嘱執行者ハ推定相続人ノ立会ニテ又ハ之ヲ呼出シ其出席セサル上ニテ遺物ノ目録ヲ作ラシム可シ 遺嘱執行者ハ遺嘱ヲ弁済スルニ足ルヘキ金額ナキ時ハ動産ノ売却ヲ要促ス可シ 遺嘱執行者ハ遺嘱ノ執行ヲ監査ス可シ若シ其執行ニ付キ訟争アル場合ニ於テハ遺嘱ノ有効ナルコトヲ主張スル為メ之ニ干渉スルヲ得 遺嘱執行者ハ遺嘱者ノ死去ヨリ一年ノ終期ニ其管理ノ計算ヲ為ス可シ 第千三十二条 遺嘱執行者ノ権ハ其相続人ニ移転スルコトナシトス 第千三十三条 遺嘱執行者タルコトヲ承諾シタル者数人アル時其中一人ハ他ノ執行者ノ在ラサル時ハ独リ管理ヲ為スヲ得又諸遺嘱執行者ハ遺嘱者其各自ノ職掌ヲ分定セサリシカ又ハ各自ニ分定セラレタル職掌ニノミ関参セサリシニ於テハ其委託セラレタル動産ノ計算ニ付キ連帯シテ責ニ任ス可シ 第千三十四条 封印、目録、計算ニ付キ遺嘱執行者ノ為シタル費用其他其職掌ニ関スル費用ハ遺物ノ負担ナリトス 第八款 遺嘱ノ取消及ヒ遺嘱ノ無効 第千三十五条 遺嘱ハ日後ノ遺嘱書又ハ意思変更ノ陳述ヲ載スル公証人ノ面前ニテ記シタル証書ニ因ルニ非サレハ其全部又ハ一部ヲ取消スヲ得ス 第千三十六条 明確ノ方法ヲ以テ前ノ遺嘱ヲ取消ササル日後ノ遺嘱ハ前ノ遺嘱書中ニ記載セシ約款ニシテ日後ノ遺嘱書ニ記載セシ約款ト並行ス可カラサルモノ又ハ相反スルモノニ非サレハ取消スコトナシトス 第千三十七条 日後ノ遺嘱書中ニ為シタル取消ハ定立シタル相続人又ハ受嘱者ノ不能力ニ因リ又ハ其収受{日後ノ遺嘱ノ}ノ拒絶ニ因リ日後ノ証書ヲ執行セサル時ト雖トモ全ク其効ヲ生ス可シ 第千三十八条 遺嘱者遺嘱物ノ全部若クハ一部ニ付キ為ス譲与ハ買戻ノ権能ヲ以テ為シタル売却若クハ交換ニ依テ之ヲ為シタル時ト雖トモ又日後ノ譲与ノ無効ニ属シ又物件ノ遺嘱者ノ手中ニ戻リタル時ト雖トモ凡テ譲与シタル物ニ付テハ遺嘱ノ取消ヲ提起ス可シ 第千三十九条 凡ソ遺嘱ノ贈遺ハ遺嘱ヲ受ケタル者遺嘱者ヨリ後ニ死セサリシ時ハ効ナシトス 第千四十条 凡ソ遺嘱者ノ意思ニ於テ一事件ノ到来スルカ若クハ其到来セサル時ニ非サレハ遺嘱ヲ執行ス可カラスト定メシ場合ノ如ク未定ノ事件ニ関スル約件ヲ以テ為シタル遺嘱ノ贈遺ハ定立相続人又ハ受嘱者其約件ノ成就前ニ死去セシ時ハ効ナシトス 第千四十一条 遺嘱者ノ意思ニ於テ遺嘱ノ執行ヲ停止スルニ過キサル約件ハ定立相続人又ハ受嘱者ノ為メニハ其相続人ニ移転ス可キ既得権ヲ有スルノ障碍トナルコトナシトス 第千四十二条 遺嘱者ノ生存中ニ遺嘱物若シ全ク滅失セシ時ハ遺嘱ハ効ナシトス 相続人遺嘱物ノ引渡ヲ遅延セシ時ト雖トモ其所為及ヒ過失ニ非スシテ其物件ノ遺嘱者ノ死後ニ滅失セシ時ハ若シ其物件受嘱者ノ手中ニアルモ同シク滅失ス可カリシニ於テハ同前ナリトス 第千四十三条 遺嘱ノ贈遺ハ定立相続人又ハ受嘱者之ヲ辞謝スルカ又ハ之ヲ収受スルノ能力無キ者ト為リタル時ハ効ナシトス 第千四十四条 数人ニ通同シテ遺嘱ヲ為シタル場合ニ於テハ受嘱者ハ増加{他人ノ辞謝不能力ノ為メニ}ヲ受ク可シ 遺嘱ハ単一ノ証書ヲ以テ為シ且ツ遺嘱者遺嘱物中ニ受嘱者各自ノ得分ヲ指定セサリシ時ハ之ヲ通同ニ為シタリト看做ス可シ 第千四十五条 又損敗セサレハ分割ス可カラサル一物件ヲ一証書ヲ以テ数人ニ贈遺セシ時ハ仮令ヒ別々ニ{各人ニ其得分ヲ指定スルノ義}之ヲ為セシ時ト雖トモ通同ニ為シタリト看做ス可シ 第千四十六条 第九百五十四条及ヒ第九百五十五条初二項ニ循ヒ生者間ノ贈遺取消ノ訟求ヲ許スノ原由ハ遺嘱ノ贈遺取消ノ訟求ニ付テモ許容セラル可シ 第千四十七条 若シ其訟求ハ遺嘱者ノ名誉ニ重侮辱ヲ加ヘシニ起因スル時ハ犯罪ノ日ヨリ一年内ニ之ヲ為ス可シ 第六章 贈遺者又ハ遺嘱者ノ孫又ハ其兄弟姉妹ノ子ノ利益ノ為メニ許シタル贈遺、遺嘱 第千四十八条 父母ハ処分スルノ権能アル財産ノ全部又ハ一部ヲ其子ノ一人又ハ数人ニ生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ト為シ其財産ヲ受嘱者ノ一等親タル既生ノ子及ヒ未生ノ子ニ還給ス可キコトヲ負担セシムルヲ得 第千四十九条 死者法律ニ於テ其遺物中ニ貯存スルニ及ハサル財産ノ全部又ハ一部ヲ其兄弟姉妹ノ一人又ハ数人ノ為メ生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ト為シ其財産ヲ受嘱者ノ兄弟姉妹ノ一等親タル既生ノ子又ハ未生ノ子ニ還給ス可キコトヲ負担セシメシ時ハ其贈遺ハ子ヲ遺留セスシテ死去セシ場合ニ於テハ有効ナリトス 第千五十条 前二条ヲ以テ允許シタル贈遺ハ年齢、男女ノ撰択、例外ナク負担者《グルウエー》{還給ノ}ノ既生又ハ未生ノ総テノ子ノ為メニ還給ヲ負担セシメタル時ニ非サレハ効ナシトス 第千五十一条 前数条ノ場合ニ於テ子ノ為メニ還給ヲ負担スル者一等親ナル子ト既ニ死去シタル子ノ卑属親トヲ遺留シテ死去セシ時ハ既ニ死去シタル子ノ卑属親ハ代襲相続権ニ因リ既ニ死去シタル子ノ得分ヲ収受ス可シ 第千五十二条 還給ノ負担ナク生者間ノ贈遺ヲ以テ財産ヲ収受シタル子、兄弟、姉妹ハ前ニ贈遺セラレタル財産ニ付キ其負担{還給ノ}ヲ為スノ約件ヲ以テ更ニ生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ヲ収受スル時ハ再度ノ贈遺ノ財産ヲ還付セント申供スル時ト雖トモ自己ノ為メニ為シタル二箇ノ贈遺ヲ分離シ初度ノ贈遺ヲ維持センカ為メ再度ノ贈遺ヲ辞謝スルヲ許サス 第千五十三条 復受《アツプレー》贈者ノ権利ハ還給ヲ為ス可キ子、兄弟、姉妹ノ収益権ノ終了スル原因ノ如何ニ関セス其終了ノ時ニ開始ス可シ復受贈者ノ為メニ予メ為{還給者ヨリ}シタル収益権ノ放棄ハ放棄前ノ還給者ノ債主ヲ害スルヲ得ス 第千五十四条 還給者ノ婦ハ嫁資ノ元金(取戻)ノ為メ且ツ遺嘱者其事ヲ特ラニ命シタル場合ニ非サレハ自由財産{夫ノ}不足ノ場合ニ於テ還給ス可キ財産ヲ以テ補充ヲ得ンコトヲ要ムルヲ得ス 第千五十五条 前数条ニ因リ允許シタル贈遺ヲ為ス者ハ同一ノ証書ニ因リ又ハ公正ノ法式ヲ履践シタル日後ノ証書ニ因リ其贈遺ノ執行ヲ任スヘキ後見人ヲ指命スルヲ得其後見人ハ幼年、後見及ヒ後見免除ノ巻第二章第六款ニ記シタル原由中ノ一アルニ非サレハ其職ヲ拒辞スルヲ得ス 第千五十六条 若シ其後見人アラサル時ハ贈遺者又ハ遺嘱者ノ死去ノ日若クハ其死後贈遺ヲ記スル証書アルコトノ知レタル日ヨリ一月ノ期限内ニ還給者、又其幼者ナル時ハ其後見人{還給者ノ}ノ請求ニ因リ後見人{贈遺執行ノ}一人ヲ任ス可シ 第千五十七条 前条ニ循ハサル還給者ハ贈遺ノ利益ヲ失フ可シ此場合ニ於テハ復受贈者丁年ナル時ハ其復受贈者、若シ幼者又ハ被禁治産者ナル時ハ其後見人又ハ管財人、若クハ丁年幼年又ハ被禁治産者ナル復受贈者ノ血属ノ申立ニ因リ、又ハ相続ノ開始アリタル地ノ始審裁判所検事ノ申立ニ従ヒ職権ヲ以テ復受贈者ノ為メニ権利ノ開始アリタルコトヲ宣告スルヲ得 第千五十八条 還給ノ負担ヲ以テ贈遺ヲ為シタル者ノ死後ニハ特定物ノ遺嘱ニ関スル場合ヲ除キ通常ノ法式ニ循ヒ遺物ヲ組成スル財産ノ目録ヲ作ルノ手続ヲ為ス可シ其目録ニハ動産ノ正純ノ評価ヲ記ス可シ 第千五十九条 其目録ハ還給負担者ノ要求ニ因リ相続ノ巻ニ定メタル期限内ニ贈遺執行ノ為メニ任シタル後見人ノ立会ニテ之ヲ作ル可シ其費用ハ贈遺ト為シタル財産中ヨリ之ヲ引去ル可シ 第千六十条 若シ右ノ期限内ニ還給負担者ノ要求ニ因リ目録ヲ作ラサリシ時ハ贈遺執行ノ為メニ任シタル後見人ノ申立ニ因リ負担者又ハ其後見人{負担者ノ}ノ立会ニテ次ノ一月内ニ之ヲ作ルノ手続ヲ為ス可シ 第千六十一条 若シ前二条ヲ循守セサリシ時ハ第千五十七条ニ指示セシ諸人ノ申立ニ因リ負担者又ハ其後見人ト執行ノ為メニ任シタル後見人トヲ呼出シ同上ノ目録ヲ作ルノ手続ヲ為ス可シ 第千六十二条 還給負担者ハ掲示及ヒ競売ヲ以テ次ノ二条ニ記スル物件ヲ除キ総テノ贈遺動産ノ売却ヲ為ス可シ 第千六十三条 実物ニテ保存ス可キノ明約ヲ以テ贈遺セラレタル粧飾動産其他ノ動産物件ハ還給ノ時ノ状況ノ侭ニテ之ヲ還付ス可シ 第千六十四条 土地ヲ利潤スルニ用フル獣類及ヒ器具ハ其土地ノ生者間又ハ遺嘱ノ贈遺中ニ含ミタリト看做ス可シ負担者ハ還給ノ時其同一ノ価額ヲ還付スル為メ止タ其獣類及ヒ器具ヲ評価セシム可シ 第千六十五条 負担者ハ目録作了ノ日ヨリ六月ノ期限内ニ現金、売却シタル動産ノ代価ノ金額、及ヒ貸金証書ニ因リ収受シタル金額ヲ益用ス可シ 其期限ハ延ス可キニ於テハ之ヲ延スヲ得 第千六十六条 負担者ハ又取戻シタル貸金証書及ヒ年金ノ弁済ニ因テ収入スル金額ヲ収受シタル後遅クモ三月内ニ之ヲ益用ス可シ 第千六十七条 贈遺者若シ其益用ヲ為ス可キ物件ノ性質ヲ指定セシ時ハ其命スル所ニ従ヒ其益用ヲ為シ然ラサル時ハ不動産ニ付キ又ハ不動産上ニ特権ヲ以テ其益用ヲ為ス可シ 第千六十八条 前数条ヲ以テ命シタル益用ハ贈遺執行ノ為メ任シタル後見人ノ申立ニ因リ又其立会ニテ之ヲ為ス可シ 第千六十九条 還給ノ負担アル生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ハ負担者又ハ執行ノ為メニ任シタル後見人ノ申立ニ因リ之ヲ公示ス可シ即チ不動産ニ付テハ其所在ノ地ノ書入質登記局ノ簿冊ニ其証書ヲ登記シ又不動産上ニ先取権ヲ以テ益用シタル金額ニ付テハ先取権ニ供シタル財産{不動産}ヲ登記シタル端ニ其先取権ヲ記入シテ之ヲ公示ス可シ 第千七十条 権利者{受贈者ノ}及ヒ獲得外人ハ幼者又ハ被禁治産者{共ニ復受贈者ナリ}ニ対シテ贈遺ヲ記スル証書ノ登記ナキ旨ヲ述ヘテ其権利ヲ主張スルヲ得幼者又ハ被禁治産者ハ負担者及ヒ執行後見人ニ対シテ償還ヲ要ムルヲ得可シ但シ幼者又ハ被禁治産者ハ負担者及ヒ執行後見人ノ無資力ナル時ト雖トモ無登記ノ効果ヲ免カルルコトヲ得ス 第千七十一条 権利者又ハ獲得外人、登記外ノ方法ニ因テ贈遺アリタルコトヲ知リタリトモ之ヲ以テ其無登記ヲ補ヒ無登記ノ効果ヲ免レタリ{幼者等カ}ト看做スヲ得ス 第千七十二条 受贈者、受嘱者及ヒ贈遺ヲ為シタル者ノ正当相続人モ其者等ノ受贈者、受嘱者又ハ相続人モ何等ノ場合ニ於テモ復受贈者ニ対シテ登記又ハ記入ノ無キ旨ヲ述ベテ其権利ヲ主張スルヲ得ス 第千七十三条 執行ノ為メ任シタル後見人ハ財産ノ検証、動産ノ売却、金額ノ益用、登記、記入ニ付キ上ニ定メタル規則ヲ循守セサリシ時又概シテ還給ノ負担ノ善良誠実ニ執行セラレンカ為メニ必要ノ申立ヲ為ササリシ時ハ其責ヲ一身ニ担当ス可シ 第千七十四条 負担者ハ仮令ヒ幼年ナリト雖トモ又其後見人ノ無資力ナル場合ト雖トモ本章諸条ニ定メタル規則ノ不執行ニ付キ其効果ヲ免カルルヲ得ス 第七章 父母又ハ其他ノ尊親属ヨリ其卑属親ノ間ニ為ス分派 第千七十五条 父母及ヒ其他ノ尊属親ハ其子及ヒ卑属親ノ間ニ其財産ノ分派及ヒ配付ヲ為スヲ得 第千七十六条 其分派ハ生者間ノ贈遺及ヒ遺嘱ノ贈遺ニ付キ定メタル法式、条件、規則ヲ以テ生者間又ハ遺嘱ノ証書ニ因テ之ヲ為スヲ得 生者間ノ証書ニ因テ為ス分派ハ現有ノ財産ニ非サレハ目的ト為スヲ得ス 第千七十七条 尊属親死去ノ日ニ遺留スル総財産ヲ分派中ニ含マサリシ時ハ分派中ニ含マサリシ財産ハ法律ニ循ヒ分派ス可シ 第千七十八条 若シ死去ノ時ニ於テ生存スル諸子及ヒ既ニ死去シタル子ノ諸卑属親ノ間ニ分派ヲ為ササリシ時ハ其分派ハ全ク効ナシトス 分派ニ付キ何等ノ得分ヲモ収受セサリシ子若クハ卑属親モ又分派ヲ得タル者ト雖トモ法律上ノ法式ニ循ヒ再分派ヲ要求スルヲ得 第千七十九条 尊属親ノ為シタル分派ハ四分ノ一以上ノ損失ヲ原由トシテ之ヲ訟撃スルヲ得又分派ニ因リ又ハ予収ノ為メナシタル贈遺ニ因リ共同分派人ノ一人法律ノ許ス以上ノ利益ヲ得ルニ至リシ場合ニ於テモ亦分派ヲ訟撃スルヲ得 第千八十条 前条ニ記シタル原由ノ一ニ因リ尊属親ノ為シタル分派ヲ訟撃スル子ハ評価入費ノ前払ヲ為シ要求ノ立タサリシ時ハ訴訟入費ト共ニ断然之ヲ担当ス可シ 第八章 婚姻財産契約ニ因リ夫婦及ヒ其婚姻ニ因テ生ル可キ子ニ為ス贈遺 第千八十一条 現有財産ノ生者間ノ贈遺ハ仮令婚姻財産契約ニ因リ夫婦又ハ其一人ニ為シタル時ト雖トモ此名義{生者間ノ}ヲ以テ為ス贈遺ニ付キ定メタル一般ノ規則ニ循フ可シ 現有財産ノ生者間ノ贈遺ハ本巻第六章ニ記スル場合ニ非サレハ未生ノ子ノ為メニ之ヲ為スヲ得ス 第千八十二条 父母、其他ノ尊属親夫婦ノ傍系親及ヒ親族外ノ者ト雖トモ其死去ノ日ニ遺留ス可キ財産ノ全部又ハ一部ヲ婚姻財産契約ニ因リ上ノ夫婦ニ贈遺シ若シ贈遺者贈遺ヲ受ケタル配偶者ニ遺存スル場合ニ於テハ其婚姻ニ因テ生ル可キ子ニ贈遺スルヲ得 此贈遺ハ止タ夫婦又ハ其一方ノタメニ為シタル時ト雖トモ上ニ記シタル贈遺者遺存ノ場合ニ於テハ常ニ婚姻ニ因テ生ル可キ子及ヒ卑属親ノタメニ為シタリト看做ス可シ 第千八十三条 前条ニ記スル法式ニ従ヒ為シタル贈遺ハ贈遺者贈遺中ニ含ミタル物件ヲ最早無償ニテ贈遺{更ニ}スルヲ得サルノ一事ニ付テハ之ヲ取消ス可カラストス但シ些少ノ金額ニ限リ報酬ノ名義ヲ以テ又ハ其他ノ方法ニ依テ贈遺ヲ為スハ此限ニ在ラストス 第千八十四条 婚姻財産契約ニ因テ為ス贈遺ハ贈遺ノ日ニ現存スル負債及ヒ負担ノ状況書ヲ其証書ニ添附スルノ負担ヲ以テ現有ノ財産ト未有ノ財産トノ全部又ハ一部ニ付キ併セテ之ヲ為スヲ得此場合ニ於テハ受贈者ハ贈遺者ノ死去ノ時ニ贈遺者ノ現有{贈遺ヲ為セシ時ノ}ノ財産ノミヲ収受シテ其他ノ財産ヲ放棄スルノ自由アリトス 第千八十五条 若シ現有及ヒ未有ノ財産ノ贈遺ヲ記スル証書ニ前条ニ記載シタル状況書ヲ添附セサリシ時ハ受贈者ハ此贈遺ヲ全ク領承シ又ハ全ク辞謝スルノ義務アリトス領承ノ場合ニ於テハ受贈者ハ贈遺者ノ死去ノ日ニ現有スル財産ニ非サレハ要求スルヲ得ス且ツ受贈者ハ遺物ノ総テノ負債及ヒ負担ノ弁済ヲ為ス可シ 第千八十六条 又夫婦及ヒ其婚姻ニ因テ生ル可キ子ノ為メ婚姻財産契約ニ因テ為ス贈遺ハ贈遺ヲ為ス者ノ何人タルヲ問ハス受贈者ニ贈遺者ノ遺物ノ総テノ負債及ヒ負担ヲ区別ナク弁済セシムルノ約件ヲ以テ又ハ贈遺者ノ意思ニ従テ執行ヲ為ス可キ其他ノ約件ヲ以テ之ヲ為スヲ得受贈者ハ贈遺ヲ辞謝スルコトヲ欲セサルニ於テハ其約件ヲ履践ス可シ若シ又贈遺者婚姻財産契約ニ因リ其現有財産ノ贈遺中ニ含ミタル或ル物件又ハ其財産中ヨリ引去ル可キ定マリタル金額ヲ処分スルノ自由ヲ貯存セシ場合ニ於テ之ヲ処分スルコトナク死去セシ時ハ其物件又ハ金額ハ贈遺中ニ含ミタリト看做シ受贈者又ハ其相続人ニ帰属ス可シ 第千八十七条 婚姻財産契約ニ因テ為シタル贈遺ハ領承ナキヲ名義トシテ之ヲ訟撃シ之ヲ無効ト宣告スルヲ得ス 第千八十八条 婚姻ノ為メニ為シタル贈遺ハ婚姻ヲ為ササリシ時ハ効ナシトス 第千八十九条 上ノ第千八十二条第千八十四条第千八十六条ノ規則ニ従ヒ夫婦ノ一方ニ為シタル贈遺ハ贈遺者贈遺ヲ受クル配偶者及ヒ其卑属親ニ遺存セシ時ハ効ナシトス 第千九十条 婚姻財産契約ニ因リ夫婦ニ為シタル贈遺ハ贈遺者ノ相続開始ノ時ニ於テ之ヲ法律上贈遺スルヲ得可キ制限額ニ減殺スルヲ得可シ 第九章 婚姻財産契約ニ因リ又ハ婚姻中ニ為ス夫婦間ノ贈遺 第千九十一条 夫婦ハ婚姻財産契約ニ因テ相互ニ又ハ其一方ヨリ他ノ一方ニ下ノ数条ニ定ムル変更ニ従ヒ其相当ト思惟スル贈遺ヲ為スヲ得 第千九十二条 婚姻財産契約ニ因テ夫婦間ニ為シタル現有財産ノ生者間ノ贈遺ハ受贈者ノ遺存《シユルヴィー》ノ条件ヲ明確ニ記セサル時ハ其条件ヲ以テ為シタリト看做サス且ツ其贈遺ハ此種ノ贈遺ニ付キ下ニ記スル規則法式ニ循フ可シ 第千九十三条 婚姻財産契約ニ因テ夫婦間ニ為シタル未有ノ財産贈遺又ハ現有及ヒ未有ノ財産ノ贈遺ハ単純ナルト相互ナルトヲ問ハス外人ヨリ夫婦ニ為シタル同種ノ贈遺ニ付キ前章ニ定ムル規則ニ循フ可シ但シ夫婦中受贈者其贈遺者ヨリ前ニ死去スル場合ニ於テハ婚姻ニ因テ生レタル子ニ其贈遺ヲ移転スルヲ得ス 第千九十四条 夫婦ノ一方ハ外人ニ贈遺スルヲ得可キ物ノ所有権及ヒ法律ニ於テ相続人ヲ害シテ贈遺スルヲ禁スル部分ノ全部ノ収実権ヲ子及ヒ卑属親ヲ遺留セサル場合ノ為メニ婚姻財産契約ニ因テ又ハ婚姻中ニ他ノ一方ニ贈遺スルヲ得 又贈遺ヲ為ス一方子及ヒ卑属親ヲ遺留スル場合ノ為メニ他ノ一方ニ総財産四分一ノ所有権ト四分一ノ収実権トヲ贈遺シ又ハ総財産一半ノ収実権ノミヲ贈遺スルヲ得 第千九十五条 幼者ハ其婚姻ノ有効ノ為メ許諾ヲ要スル者ノ許諾ト立会トヲ得ルニ非サレハ婚姻財産契約ニ因テ単純ノ贈遺又ハ相互ノ贈遺ヲ其配偶者ニ為スヲ得ス其許諾ヲ得タル上ハ法律ニ於テ丁年者ヨリ其配偶者ニ贈遺スルヲ許ス所ノ物ヲ贈遺スルヲ得 第千九十六条 婚姻中ニ夫婦間ニ為シタル贈遺ハ生者間的ト名状シタリト雖トモ常ニ之ヲ取消スヲ得可シ 婦ハ夫ノ許諾又ハ裁判所ノ允許ヲ得スシテ其取消ヲ為スヲ得 其贈遺ハ子ノ出生ノ為メ取消ス可カラストス 第千九十七条 夫婦ハ婚姻中生者間ノ証書ニ因ルモ遺嘱ノ証書ニ因ルモ単一ノ証書ヲ以テ相互ニ何等ノ贈遺ヲモ為スヲ得ス 第千九十八条 前婚ノ子数人アリテ後婚ヲ為ス男又ハ女ハ嫡出ノ子中ニテ最少ノ財産ヲ得可キ者ノ得分ニ均シキ財産ニ非サレハ其後夫又ハ後婦ニ贈遺スルヲ得ス又何ノ場合ニ於テモ其贈遺ハ総財産ノ四分一ヲ超過ス可カラス 第千九十九条 夫婦ハ上ノ規則ニ因テ許ス所ニ超ヘ間接ニ贈遺ヲ為スヲ得ス 或ハ偽粧シ或ハ仲介人ニ為シタル贈遺ハ効ナシトス 第千百条 夫婦ノ一人ヨリ其配偶者ノ他ノ婚姻ニ因テ生レタル総テノ子又ハ其一人ニ為シタル贈遺ハ仲介人ニ為シタルモノト看做ス可シ又贈遺者ヨリ贈遺ノ日ニ於テ既ニ其配偶者ヲ推定相続人ト為シタル血属ニ為シタル贈遺モ仮令其配偶者受贈者ナル血属ニ遺存セサリシ時ト雖トモ亦之ヲ仲介人ニ為シタルモノト看做ス可シ 第三巻 契約即チ一般ノ約束上ノ義務(千八百四年二月七日決定同月十七日頒布) 第一章 前加規則 第千百一条 契約《コントラ》トハ或ル約束《コンワンション》ニシテ之ニ因テ一人若クハ数人他ノ一人若クハ数人ニ対シテ或ル物ヲ与フ可ク或ル事ヲ為ス可ク又ハ或ル事ヲ為ス可ラサルノ義務ヲ負フヲ云フ 第千百二条 契約者ノ双方相互ニ義務ヲ負フ時ハ契約ハ双務的ナリトス 第千百三条 一人若クハ数人他ノ一人若クハ数人ニ対シテ義務ヲ負ヒ他ノ一人若クハ数人ノ方ニテハ義務ヲ負ハサル時ハ契約ハ片務的ナリトス 第千百四条 契約者一方ヨリ与フル物又ハ一方ノ為メニ為ス事ノ代償ト看做ス可キモノヲ他ノ一方ニ与ヘ又ハ為スノ義務ヲ互ニ負フ時ハ契約ハ互易的ナリトス 代償物若シ契約者各自ノ為メ未定ノ事件ニ従テ或ハ利益トナリ或ハ損失トナルニアル時ハ契約ハ委運的《アレアトリール》ナリトス 第千百五条 恩恵ノ契約トハ契約者ノ一方ヨリ他ノ一方ニ全ク無償ニテ利益ヲ得セシムルノ契約ヲ云フ 第千百六条 有償契約トハ或ル物ヲ与ヘ又ハ或ル事ヲ為スコトヲ契約者ノ各方ニ担任セシムルノ契約ヲ云フ 第千百七条 契約ハ固有ノ名称ヲ有スルト有セサルトヲ問ハス本巻ノ目的トスル一般ノ規則ニ循フ可シ 或ル契約ニ特別ナル規則ハ其契約ニ関スル巻ニ於テ規定シ商事上ノ約束ニ特別ナル規則ハ商法ニ規定ス 第二章 契約ノ有効ニ必要ナル条件 第千百八条 契約ノ有効ニ付テハ左ノ四条件ヲ必要ナリトス 義務ヲ負フ契約者ノ承諾 契約者契約ヲ結フノ能力 契約ノ事物タル特定ノ目的 義務ノ適法ノ原由 第一款 承諾 第千百九条 若シ錯誤ニ因テ承諾ヲ為シ或ハ暴行ニ因テ承諾ヲ強ヒラレ或ハ詐欺ニ因テ承諾ヲ促カサレタル時ハ有効ノ承諾ナシトス 第千百十条 錯誤ハ契約ノ目的タル事物ノ体質上《シユブスタンス》ニ係ハル時ニ非サレハ契約無効ノ原由ト為ラストス 錯誤ハ契約ヲ為サントスル人ノ上《シユルラペルソンヌ》ニノミ係ハル時ハ其人ノ品格《コンシデラション》カ契約ノ主タル原由ニ非サルニ於テハ無効ノ原由ト為ラストス 第千百十一条 義務ヲ約シタル者ニ対シテ行ヒタル暴行ハ契約ニ因テ利益ヲ受ク可キ者ニ非ザル外人ノ行ヒタル時ト雖トモ無効ノ原由ト為ル可シ 第千百十二条 暴行ノ性質知覚《レーゾンナーブル》アル人ニ感覚ヲ起サシム可ク且ツ其身体又ハ其資産ニ現時著大ナル危害ヲ醸ス可キノ畏惧ヲ懐カシムルヲ得ル時ハ暴行アリトス 此事ニ付テハ人ノ年齢男女及ヒ地位ヲ斟酌ス可シ 第千百十三条 暴行ハ契約者ニ加ヘタル時ノミナラス其夫其婦其卑属親又ハ其尊属親ニ加ヘタル時ト雖トモ契約無効ノ原由ナリトス 第千百十四条 暴行ノ受ケタルモノナク単ニ父母又ハ其他ノ尊属親ニ対スル畏敬ハ契約ヲ取消スニ足ラストス 第千百十五条 暴行ノ止了シタル後明然又ハ黙然ニ又ハ法律ヲ以テ定メタル還給ノ期限ヲ経過セシメテ契約ヲ認許セシ時ハ最早暴行ヲ原由トシテ其契約ヲ訟撃スルヲ得ス 第千百十六条 詐欺ハ契約者ノ一方若シ詭計ヲ行ハサリシニ於テハ他ノ一方ノ契約ヲ為ササリシコト明白ナル時ハ契約無効ノ原由ト為ル可シ 詐欺ハ推測ス可カラス必ス之ヲ証ス可シ 第千百十七条 錯誤、暴行、詐欺ヲ以テ結ヒタル契約ハ当然無効ト為ルコトナシ其契約ハ止タ本巻第五章第七款ニ定ムル場合ト其方法トニ従ヒ無効即チ廃棄ノ訴訟ヲ為スヲ得ルモノトス 第千百十八条 損失《レジヨン》ハ同款ニ定タル如ク或ル契約ニ付テノミ又ハ或ル人ニ対シテノミ契約ヲ瑕瑾的ナリトス 第千百十九条 凡ソ自己ノ為メニ非サレハ自己ノ名ヲ以テ約諾シ又ハ要約スルヲ得ス 第千百二十条 然レトモ外人ノ所為ヲ約諾シテ其外人ニ付キ保証ヲ為スコトヲ得 若シ外人義務{保証人ノ約諾シタル}ノ執行ヲ拒辞スル時ハ保証ヲ為シタル者又ハ確認{外人ニ義務ヲ}セシムルコトヲ約諾シタル者其賠償ヲ為ス可シ 第千百二十一条 外人ノ為メニ為ス要約カ自己ノ為メニ為シタル要約ノ約件又ハ他人ニ為シタル贈遺ノ約件タルニ於テハ又外人ノ為メニ要約ヲ為スコトヲ得其要約ヲ為シタル者ハ外人其要約ニ付キ利益ヲ得ント欲スル旨ヲ陳述セシ時ハ最早之ヲ取消スヲ得ス 第千百二十二条 何人モ反対ノ約定ヲ為スカ又ハ契約ノ性質ニ因テ反対ヲ生スルニ非レハ自己ノ為メ又其相続人及ヒ承権人ノ為メニ要約シタリト看做ス可シ 第二款 契約者ノ能力 第千百二十三条 凡ソ法律ニ於テ契約ヲ為スノ能力ナシト定メラレサル者ハ契約ヲ為スコトヲ得 第千百二十四条 契約ヲ為スノ能力ナキ者左ノ如シ 一 幼者 一 被禁治産者 一 法律ニ定メタル場合ニ於テ有婦ノ婦 一 一般ニ法律ニ於テ或ル契約ヲ為スコトヲ禁シタル者 第千百二十五条 幼者、被禁治産者及ヒ有夫ノ婦ハ法律ニ定メタル場合ニ非サレハ無能力ノ原由ノ為メ其契約ヲ訟撃スルヲ得ス 契約ヲ為スノ能力アル者ハ其契約シタル幼者、被禁治産者又ハ有夫ノ婦ノ無能力ヲ申立テ契約ヲ取消スコトヲ得ス 第三款 契約ノ目的及ヒ事物 第千百二十六条 契約ハ契約者ノ一方カ与フ可キノ義務アル其物又ハ為ス可ク若クハ為ス可カラサルノ義務アル其事ヲ以テ其目的トス 第千百二十七条 物件ノ単純ノ使用又ハ単純ノ占有モ其物件ト同シク契約ノ目的タルヲ得 第千百二十八条 契約ノ目的タルヲ得ル物件ハ通易スルヲ得可キ物件ニ限ル可シ 第千百二十九条 義務ハ少クモ類《エスペース》ヲ以テ定メタル物件ヲ以テ其目的トスルヲ要ス 物件ノ分量ハ後ニ定ムルコトヲ得可キニ於テハ未定ニ委スルヲ得可シ 第千百三十条 将来ノ事物ハ義務ノ目的タルヲ得 然レトモ相続ノ主者ノ承諾アル時ト雖トモ未タ開始セサル相続ヲ辞謝シ又如此キ相続ニ付キ何等ノ要約ヲモ為スヲ得ス 第四款 原由 第千百三十一条 原由ナキ義務虚偽《フォース》ノ原由アル義務又ハ不適法ノ原由アル義務ハ無効ナリトス 第千百三十二条 契約ハ其原由ヲ明示セサルモ猶ホ有効ナリトス 第千百三十三条 原由ハ法律ニテ禁スル時又ハ風俗又ハ一般ノ秩序ニ反スル時ハ不適法ナリトス 第三章 義務ノ効果 第一款 総則 第千百三十四条 適法ニ結ヒタル契約ハ之ヲ結ヒタル者ノ間ニハ法律ノ格位アリトス 其契約ハ相互ノ承諾アルカ又ハ法律ニ於テ允許スル原由アルニ非サレハ取消スコトヲ得ス 其契約ハ善意ヲ以テ執行ス可シ 第千百三十五条 契約ハ之ニ明示シタル事ニ付テ義務ヲ生スルノミナラス公義、慣習又ハ法律ニ因リ義務ノ性質ニ従ヒ生スル従続ノ事ニ付テモ亦義務ヲ生ス可シ 第二款 可与義務 第千百三十六条 可与義務ハ物件ヲ引渡スノ義務及ヒ引渡迄之ヲ保存スルノ義務ヲ提起ス可シ此等ノ義務ヲ尽ササル時ハ権利者ニ対シテ損害賠償ヲ為ス可シ 第千百三十七条 物件保存ニ注意スルノ義務ハ契約カ契約者一方ノ便益ヲ目的トスルト其双方ノ便益ヲ目的トスルトヲ問ハス其保存ヲ負担スル者ニ良家父ニ同シキ注意ヲ其物件ニ加フルノ義務ヲ生ス 物件保存ノ義務ハ或ル契約ニ関シテ多少ノ広狭アリ此事ニ関シテ其契約ノ効果ハ其契約ヲ記載スル巻ニ於テ之ヲ明示ス可シ 第千百三十八条 物件ヲ引渡スノ義務ハ契約者双方ノ承諾ノミヲ以テ完成ス 其義務アル時ハ権利者ハ所有者ト為リ且ツ未タ物件引渡ヲ為ササリシモ其引渡ヲ為ス可キ時ヨリ物件ハ権利者ノ危険《リスク》ニ帰ス可シ但シ義務者引渡ヲ遅滞《アンドムール》セシ時ハ此限ニ在ラストス此場合ニ於テハ物件ハ義務者ノ損失ニ帰ス 第千百三十九条 義務者ハ督促書《ソンマクロン》若クハ之レト同力ノ他ノ書面ニ因リ又ハ契約書ニ書面ヲ要スルコトナク期限ニ至ルノミヲ以テ義務者ノ遅滞アリトス可キコトヲ記スル時ハ契約ノ効ニ因リ遅滞アリトセラル可シ 第千百四十条 不動産ヲ与ヘ又ハ引渡ス可キ義務ノ効果ハ売買ノ巻及ヒ先取権及ヒ書入質ノ巻ニ規定ス 第千百四十一条 相続ヲ二人ニ与ヘ又ハ引渡ス可キ義務アル物件単ニ動産ナル時ニ二人ノ中物件ノ現実ノ占有ヲ為シタル者仮令其証書ノ日附ハ後ナルモ善意ヲ以テ占有ヲ為シタルニ於テハ先チテ其所有者トナル可シ 第三款 可為義務及ヒ不可為義務 第千百四十二条 可為義務又ハ不可為義務ハ義務者ノ不執行ノ場合ニ於テハ損害賠償ヲ以テ消滅ス可シ 第千百四十三条 然レトモ権利者ハ契約ニ違背シテ為{義務者ノ}シタルモノヲ毀壊ス可キコトヲ要求スルヲ得又義務者ノ費用ヲ以テ自ラ之ヲ毀壊スルノ允許ヲ受クルヲ得但シ損害アル時ハ尚ホ其倍償ヲモ要ムルヲ得 第千百四十四条 又権利者ハ不執行ノ場合ニ於テハ義務者ノ費用ヲ以テ自ラ義務ヲ執行セシムルノ允許ヲ受クルヲ得 第千百四十五条 義務若シ不可為的ナル時ハ之ニ違背シタル者其違背ノ事ノミヲ以テ損害賠償ヲ為ス可シ 第四款 義務ノ不執行ニ因テ生スル損害賠償 第千百四十六条 損害賠償ハ義務者其義務ヲ尽スコトヲ遅滞シタル時ニ非サレハ為ササルモノトス但シ義務者カ可与義務アル物又可為ノ義務アル事ヲ其経過セシメタル或ル時間内ニ非サレハ与ヘ又ハ為スヲ得サリシ時ハ此限ニ在ラストス 第千百四十七条 義務者ハ義務不執行ノ為メ又ハ執行遅延ノ為メ損害ヲ来タシ其不執行カ義務者ニ帰ス可カラサル外因ヨリ起リシ事ヲ証明セサル時ハ義務者ニ於テ何ノ悪意ナキ時ト雖トモ損害賠償弁済ノ言渡ヲ受ク可シ 第千百四十八条 天災又ハ意外ノ変ニ因リ義務者与フ可キ物ヲ与ヘ若クハ為ス可キ事ヲ為スコトヲ妨碍セラレ又ハ禁セラレタル事ヲ為セシ時ハ損害賠償ヲ為スニ及ハス 第千百四十九条 権利者ニ為スヘキ損害賠償ハ下ノ数条ノ例外及ヒ変更ヲ除キ概シテ権利者ノ受ケタル損失ト其失フタル利得トニ在リトス 第千百五十条 義務者其義務ヲ執行セサリシハ詐欺ヲ以テシタルニ非サル時ハ止タ契約ノ時ニ予知シ又ハ予知スルヲ得タル損害賠償ヲ為ス可シ 第千百五十一条 契約ノ不執行カ義務者ノ詐欺ニ因リシ場合ト雖トモ損害賠償ハ権利者ノ受ケタル損失及ヒ其失フタル利得ニ関シテハ契約不執行ノ直接ノ結果ノ外ハ含マサルモノトス 第千百五十二条 若シ契約書中ニ契約ノ執行ヲ為ササル者ハ損害賠償ノ名義ヲ以テ或ル金額ヲ弁済ス可キコトヲ記スル時ハ契約者ノ一方{違約者}ニ較々多キ金額ヲモ較々少キ金額ヲモ負担セシムルヲ得ス 第千百五十三条 或ル金額ノ弁済ニ限レル義務ニ付テハ執行ノ遅延ヨリ生スル損害賠償ハ止タ法律ニ定ムル利息ノ言渡ヲ受クルニアリ但シ商事及ヒ保証ニ特別ナル規則ハ此限ニ在ラストス 此損害賠償ハ権利者何等ノ損失ヲモ証明スルニ及ハスシテ之ヲ為スヘシ 此損害賠償ハ法律ニ於テ当然利息ヲ生スル場合ノ外訟求ノ日ヨリ{起算シテ}之ヲ為ス可シ 第千百五十四条 元金ノ利息ニシテ弁済期限ノ至リタルモノハ或ハ訟求《ドマンドジュチシェール》ニ因リ或ハ別仮ノ約束ニ因リ其利息ヲ生ス可シ但シ訟求ノ場合ニ於テモ約束ノ場合ニ於テモ少クモ満一年以上払ハサル利息ニ限ル可シ 第千百五十五条 然レトモ借地料、借家料、無期若クハ畢生間ノ年金ノ賦額ノ如キ収入額ニシテ期限ノ至リタルモノハ訟求又ハ約束ノ日ヨリ利息ヲ生ス可シ 此規則ハ菓実ノ還給ニモ亦義務者ヲ免釈セシムル為メニ外人ヨリ権利者ニ弁済シタル利息ニモ適用ス可シ 第五款 契約ノ解釈 第千百五十六条 契約書ニ付テハ其文詞《テルム》ノ文意ニ拘泥セスシテ寧ロ契約者双方ノ意思如何ンヲ穿索ス可シ 第千百五十七条 一約款《クローズ》ノ二意ニ解釈スルヲ得可キ時ハ何ノ効果ヲモ生スルヲ得サル意ニヨリ寧ロ効果ヲ生スルヲ得可キ意ニ之ヲ解釈ス可シ 第千百五十八条 二意ニ解釈スルヲ得可キ文詞ハ契約ノ事柄ニ最モ適合スル意ニ解釈ス可シ 第千百五十九条 瞹昧ノ文詞ハ契約ヲ為シタル地方ノ慣習ニ従ヒ解釈ス可シ 第千百六十条 契約ニ慣用スル約款ハ契約書ニ記載セサルモ之ヲ契約ニ補充ス可シ 第千百六十一条 契約ノ各約款ニハ契約ノ全体ヨリ生スル意義ヲ与ヘテ互ニ相解釈ス可シ 第千百六十二条 疑義アル時ハ義務ヲ要約シタル者ニ反シ義務ヲ約諾シタル者ノ為メニ解釈ス可シ 第千百六十三条 契約ヲ包含スル文詞如何ニ広闊ナルモ契約ハ契約者互ニ契約シタル可シト認視ス可キ事物ニ非サレハ含マサル可シ 第千百六十四条 契約書中ニ義務ノ説明ノ為メ或ル場合ヲ載示セシ時ハ載示セサル場合ニ於テ契約ノ当然有スル広袤ヲ其載示ヲ以テ制限セント欲シタリト看做ス可カラス 第六款 外人ニ対スル契約ノ効果 第千百六十五条 契約ハ契約者双方ノ間ニ非サレハ効ヲ有セス契約ハ外人ヲ害セス又第千百二十一条ニ記シタル場合ニ非サレハ之ヲ利スルコトナシ 第千百六十六条 然レトモ権利者ハ専ラ義務者ノ一身ニ属スルモノヲ除キ義務者ノ総テノ権利及ヒ訴権ヲ行フヲ得 第千百六十七条 又権利者ハ義務者カ其権利ヲ害シテ為シタル所為ヲ自己ノ名ヲ以テ訟撃スルヲ得 然レトモ権利者ハ相続ノ巻及ヒ婚姻財産契約及ヒ夫婦相互ノ権利ノ巻ニ記シタル其権利ニ関シテハ此二巻ニ定メタル規則ニ循フヘシ 第四章 義務ノ種類 第一款 未必ノ約件アル義務 第一節 一般ノ約件及ヒ其種類 第千百六十八条 義務ハ事件ノ到来スル迄之ヲ停止スルト事件ノ到来シ又ハ到来セサルニ従テ之ヲ解除スルトヲ問ハス未来且ツ未定ノ事件ニ関スル時ハ未必ノ約件アルモノトス 第千百六十九条 偶成《カジュエール》ノ約件トハ偶然ノ事ニ関スルモノニシテ権利者及ヒ義務者ノ力ニテ奈何トモスル能ハサルモノヲ云フ 第千百七十条 任意《ホテスタチーテ》ノ約件トハ契約ノ執行ヲ契約者ノ一方又ハ他方ノ力ニテ到来セシメ又ハ防止スルヲ得可キ事件ニ関セシムルモノヲ云フ 第千百七十一条 混同《ミキスト》ノ約件トハ同一時ニ契約者一方ノ意思ト外人ノ意思トニ関スルモノヲ云フ 第千百七十二条 能ハサル事ヲ為スノ約件風俗ニ反スル約件又ハ法律ニテ禁スル約件ハ総テ効ナク其約件ニ関スル契約モ無効ニ属ス可シ 第千百七十三条 能ハサル事ヲ為ササルノ約件ハ之ヲ以テ契約シタル義務ヲ無効トナスコトナシ 第千百七十四条 凡テ義務ハ義務ヲ行フ者ヨリ任意ノ約件ヲ以テ契約シタル時ハ効ナシトス 第千百七十五条 凡テ約件ハ契約者双方ニテ約件ハ斯クアル可シト希望シ又理解シタル可シト推知スルヲ得ル方法ニ成就スルヲ要ス 第千百七十六条 一定期内ニ事件ノ到来ス可キ約件ヲ以テ義務ヲ約シタル時事件到来セスシテ定期ノ経過セシ時ハ其約件ハ消滅セシモノト看做ス可シ若シ定期ナキ時ハ約件ハ常ニ成就スルヲ得テ事件ノ到来セサルコト確実トナリタル時ニ非サレハ消滅セシモノト看做ス可カラス 第千百七十七条 一定期内ニ事件到来セサル可キノ約件ヲ以テ義務ヲ約シタル時事件到来セスシテ定期ノ経過セシ時ハ其約件ハ成就シタリトシ又定期前ニ事件ノ到来セサルコト確実ナル時モ同前ナリトス若シ定期ナキ時ハ事件ノ到来セサルコト確実トナリタル時ニ非サレハ約件ハ成就セサルモノトス 第千百七十八条 約件ヲ以テ義務ヲ約シタル者其成就ヲ妨碍セシ時ハ約件ハ成就セリト看做ス可シ 第千百七十九条 成就シタル約件ハ契約ヲ為シタル日ニ遡リ効ヲ生ス権利者若シ約件ノ成就前ニ死去セシ時ハ其権利ハ其相続人ニ移転ス可シ 第千百八十条 権利者ハ約件ノ成就スル前ニ其権利保全ノ所為ヲ行フヲ得 第二節 停止ノ約件 第千百八十一条 停止ノ約件ヲ以テ約シタル義務トハ或ハ未来且ツ未定ノ事件ニ関シ或ハ現ニ到来シタルモ契約者双方ノ未タ知ラサル事件ニ関スルモノヲ云フ 第一ノ場合ニ於テハ義務ハ事件後ニ非サレハ執行スルヲ得ス 第二ノ場合ニ於テハ義務ハ契約ヲ為シタル日ヨリ其効ヲ生ス 第千百八十二条 停止ノ約件ヲ以テ義務ヲ約シタル時ハ契約ノ目的タル物件ハ約件ノ事件アリタル場合ニ非サレハ之ヲ引渡スノ義務ナキ義務者ノ危険ニ帰ス 物件若シ義務者ノ過失ニ非スシテ全ク滅失セシ時ハ義務ハ消滅ス 物件若シ義務者ノ過失ニ非スシテ毀損セシ時ハ権利者ハ義務ヲ解徐スルカ又ハ代価ノ減殺ナク物件ヲ現状ノ侭要求スルノ撰択権ヲ有ス 物件若シ義務者ノ過失ニ因テ毀損セシ時ハ権利者ハ義務ヲ解除スルカ又ハ損害賠償ヲ得テ物件ヲ現状ノ侭要求スルノ権利ヲ有ス 第三節 解除ノ約件 第千百八十三条 解除ノ約件トハ其約件ノ成就シタル時義務ヲ取消シ最初ヨリ義務ノ成立セサリシト同シキ状況ニ物件ヲ復スルモノヲ云フ 解除ノ約件ハ義務ノ執行ヲ停止スルコトナク唯約件ヲ以テ予定シタル事件ノ到来セシ場合ニ於テ権利者ヲシテ其既ニ収受シタル物ヲ還給セシムルニアルノミ 第千百八十四条 解除ノ約件ハ契約者ノ一方其契約ヲ執行セサル場合ニ付キ常ニ之ヲ双務契約中ニ包含ス 此場合ニ於テハ契約ハ当然解除セス契約ノ執行ヲ得サリシ一方ハ契約ノ執行シ得可キモノナル時ハ其執行ヲ要強スルカ又ハ損害ノ賠償ヲ得テ其解除ヲ要求スルノ撰択権ヲ有ス 解除ハ裁判所ニ要求ス可シ裁判所ハ事情ニ従ヒ被告人ニ猶予ヲ許スコトヲ得 第二款 有期義務 第千百八十五条 期限ハ契約ヲ停止セス唯其執行ヲ遅延スルニ止マルニ因リ約件トハ異ナルモノトス 第千百八十六条 期限ニ至ラサレハ為スニ及バサルモノヲ期限ノ至ル前ニ要求スルヲ得ス然レトモ前以テ弁済シタルモノハ之ヲ還給スルニ及ハス 第千百八十七条 期限ハ要約又ハ事情ニ因テ権利者ノ為メニモ約セシコト分明ナラサル時ハ常ニ義務者ノ為メニ約セシモノト推測ス可シ 第千百八十八条 義務者ハ商事分散《ファイエット》ヲ為セシカ又ハ契約ニ因テ権利者ニ与ヘタル抵保《シュルテー》ヲ其所為ニ因テ減少セシ時ハ最早期限ノ利益ヲ要求スルヲ得ス 第三款 択取義務《アルテルナチープ》 第千百八十九条 択取義務ノ義務者ハ義務中ニ包含シタル二物件中ノ一ノ引渡ニ因テ其義務ヲ免カル可シ 第千百九十条 撰択権ハ特ラニ之ヲ権利者ニ与ヘサリシ時ハ義務者ニ属ス可シ 第千百九十一条 義務者ハ約シタル二物件中ノ一ヲ引渡シテ其義務ヲ免カルルヲ得然レトモ此物件ノ一部ト彼物件ノ一部トヲ収受ス可キコトヲ権利者ニ要強スルヲ得ス 第千百九十二条 択取方法ヲ以テ義務ヲ約シタル時ト雖トモ約諾シタル二物件中ノ一カ義務ノ目的タルヲ得サルモノナル時ハ義務ハ単純的ナリトス 第千百九十三条 約諾シタル物件ノ一、義務者ノ過失ニ因ルニモセヨ滅失シテ引渡スコトヲ得サルニ至リシ時ハ択取義務ハ単純的トナル可シ但シ其物件ノ代価ヲ物件ニ代ヘ提供スルヲ得ス 若シ二物件共ニ滅失シ其一ノ滅失カ義務者ノ過失ニ因リシ時ハ義務者ハ最後ニ滅失シタル物件ノ代価ヲ弁済ス可シ 第千百九十四条 前条ニ定メタル場合ニ於テ契約ニ因リ撰択権ヲ権利者ニ与ヘタル時二物件中ノ一ノミ滅失シ若シ其義務者ノ過失ニ因ラサル時ハ権利者ハ残余ノ物件ヲ得可シ若シ其義務者ノ過失ニ因リシ時ハ権利者ハ残余ノ物件又ハ滅失シタル物件ノ代価ヲ要求スルヲ得 又二物件共ニ滅失シ其二個ニ付キ若クハ其一個ノミニ付キ義務者ノ過失アリシ時ハ権利者ハ其撰択ニ従ヒ此又ハ彼ノ代価ヲ要求スルヲ得 第千百九十五条 若シ二物件共ニ義務者ノ過失ニ因ラス且ツ遅滞ニ至ル前ニ滅失セシ時ハ第千三百二条ニ循ヒ義務ハ消滅ス可シ 第千百九十六条 以上ノ規則ハ択取義務中二個以上ノ物件ヲ包含スル場合ニモ適用ス可シ 第五款 連帯義務 第一節 権利者間ノ連帯 第千百九十七条 権利者各自ニ債主権全部ノ弁済ヲ要求スルノ権ヲ証書{義務ノ}ニ因テ明許シ且ツ義務ノ利益ヲ諸権利者ノ間ニ分派分割シ得可キ時ト雖トモ其中一人ニ為{義務者ヨリ}シタル弁済ニ因リ義務者ヲ免釈セシムル時ハ義務ハ権利者間ニ於テ連帯ナリトス 第千百九十八条 義務者ハ権利者中一人ノ訟求ニ因テ催促ヲ受ケサル以上ハ連帯権利者中ノ是又ハ彼ニ弁済スルノ撰択権ヲ有ス 然レトモ連帯権利者中ノ一人ノ為シタル免釈ハ此権利者ノ得分ニ付テノミ義務者ヲ免釈セシム可シ 第千百九十九条 連帯権利者中ノ一人ノ為メ時効ヲ中断スルノ所為ハ其他ノ権利者ヲ利ス可シ 第二節 義務者ノ連帯 第千二百条 義務者ノ各自全部{義務ノ}ニ付キ要強セラル可キ方法ヲ以テ一事物ニ付キ義務ヲ負ヒ其一人ノ為シタル弁済ニ因リ権利者ニ対シ他ノ義務者ヲ免釈セシムル時ハ義務者ノ連帯アリトス 第千二百一条 義務者中ノ一人同一ノ事物ノ弁済ニ付キ他ノ一人ト異様ニ義務ヲ負フ時ト雖トモ義務ハ連帯タルヲ得例ヘハ一人ハ未必ノ約件ヲ以テ義務ヲ負ヒ他ノ一人ハ単純ニ義務ヲ負フ場合又一人ハ期限ヲ得テ他ノ一人ハ期限ヲ得サリシ場合ノ如シ 第千二百二条 連帯ハ推測ス可カラス明カニ要約スルヲ要ス 此規則ハ法律ノ条例ニ因リ当然連帯ヲ生ス可キ場合ニ非サレハ止息{其適用ヲ}セス 第千二百三条 連帯ヲ以テ約シタル義務ノ権利者ハ義務者ノ中其撰択セント欲スル者ニ対シ要求{全部ノ}ヲ為スヲ得其義務者{要求ヲ受ケタル}ハ分割{義務ノ}ヲ申立テ要求ヲ拒ムヲ得ス 第千二百四条 権利者義務者中ノ一人ニ対シテ為シタル訟求ハ他ノ義務者ニ対シテ同一ノ訟求ヲ為スノ障碍トナラズ 第千二百五条 弁済スヘキ物件連帯義務者中ノ一人若クハ数人ノ過失ニ因リ又ハ其遅滞ノ間ニ滅失セシ時ハ他ノ連帯義務者ハ其物件ノ代価ヲ弁済スルノ義務免カレス然レトモ損害賠償ハ之ヲ担当スルニ及ハス 権利者ハ物件ヲ滅失セシメタル義務者及ヒ遅滞ヲ為シタル義務者ニ対シテノミ損害賠償ヲ要求スルヲ得 第千二百六条 連帯義務者ノ一人ニ対シテ為シタル訟求ハ総テノ義務者ニ対シテ時効ヲ中断ス 第千二百七条 連帯義務者ノ一人ニ対シテ為シタル利息ノ訟求ハ総テノ義務者ニ対シテ利息ヲ生セシム可シ 第千二百八条 権利者ヨリ訟求ヲ受ケタル連帯ノ共同義務者ハ義務ノ性質ヨリ生スル排訴法、自己一身ニ関スル排訴法及ヒ総テノ共同義務者ニ普通ノ排訴法ニ因リ訟求ヲ拒ムヲ得 其共同義務者ハ全ク他ノ共同義務者中ノ二三ノ者ノ一身ニ関スル排訴法ニ因リ訟求ヲ拒ムヲ得ス 第千二百九条 若シ義務者中ノ一人権利者ノ単一ナル相続人トナルカ又ハ権利者義務者中ノ一人ノ単一ナル相続人トナル時ハ其義務者又ハ其権利者ノ部分ニ非サレハ渾同ニ因テ連帯債主権ヲ消滅スルコトナシ 第千二百十条 共同義務者中ノ一人ノ為メニ負債ノ分割ヲ許諾シタル権利者ハ他ノ義務者ニ対シ連帯ノ訴権ヲ保持ス可シ但シ連帯ヲ免カレタル義務者ノ部分ハ減殺ス可シ 第千二百十一条 領収書中ニ連帯権又ハ一般ノ権利ヲ貯存セスシテ義務者中ノ一人ノ部分ヲ分割シテ領収スル権利者ハ其義務者ニ対シテノミ連帯権ヲ放棄セシモノトス 権利者ハ義務者中ノ一人ノ負担スル部分ニ均シキ金額ヲ其者ヨリ領収スル時ト雖トモ領収書ニ其義務者ノ部分ノ為メナルコトヲ記セサル時ハ其義務者ノ為メニ連帯ヲ免釈シタリト見做サス 又権利者共同義務者ノ一人ニ対シ其部分ノミニ付キ単純ノ訟求ヲ為シタル場合ニ於テ若シ其義務者其訟求ヲ承諾セサリシカ又ハ弁済ノ言渡アラサリシ時ハ同前ナリトス 第千二百十二条 賦額{年金ノ}又ハ負債ノ利息ニ付キ共同義務者中ノ一人ノ部分ヲ分割シ且ツ貯存{権利ノ}ナク領収スル権利者ハ十年間継続シテ分割弁済ヲ為サザリシ以上ハ期限ノ満チタル賦額又ハ利息ニ付キ連帯権ヲ失フノミニシテ期限ノ満タサル賦額又ハ利息及ヒ元金ニ付キ其権ヲ失フコトナシ 第千二百十三条 権利者ニ対シ連帯シテ約シタル義務ハ義務者間ニ於テハ当然分割シ各自其部分ニ付キ義務ヲ負担スルノミ 第千二百十四条 連帯義務ノ全部ヲ弁済シタル共同義務者ハ他ノ共同義務者ニ対シテ各自ノ部分ノ償還ヲ要ムルヲ得ルノミ 若シ其中ノ一人無資力ナル時ハ其無資力ヨリ生スル損失ハ資力アル他ノ共同義務者ト弁済ヲ為シタル義務者トノ間ニ各自負担ノ割合ニ従ヒ之ヲ分賦ス可シ 第千二百十五条 権利者義務者中ノ一人ノ為メ連帯ノ訴権ヲ放棄セシ場合ニ於テ共同義務者中ノ一人又ハ数人無資力トナル時ハ無資力者ノ部分ハ曽テ権利者ヨリ連帯ヲ免釈セラレタル者ニ至ル迄総テノ義務者ノ間ニ各自負担ノ割合ニ従ヒ之ヲ分賦ス可シ 第千二百十六条 連帯シテ負債ヲ約シタル事件若シ連帯義務者中ノ一人ニノミ関スル時ハ此者ハ他ノ共同義務者ニ対シテ総テノ負債ヲ担当ス可シ他ノ共同義務者ハ此者トノ関係ニ付テハ之ヲ其保証人ト看做ス可シ 第五款 得分《デビジーブル》義務及ヒ不得分義務 第千二百十七条 義務ハ其目的タル物件ノ引渡又ハ其目的タル所為ノ執行ヲ外形上又ハ想像上分割スルヲ得ルト否トニ従ヒ得分的又ハ不得分的ナリトス 第千二百十八条 義務ハ其目的トスル物件又ハ所為ヲ其性質上分ツヲ得ル時ト雖トモ其義務ニ付キ思考シタル関係上ニ於テ分割シテ執行ヲ為スヲ得サル時ハ不得分的ナリトス 第千二百十九条 連帯ヲ約スルモ義務ニ不得分ノ性質ヲ与フルコトナシトス 第一節 得分義務ノ効果 第千二百二十条 分割スルヲ得可キ義務ハ権利者一人ト義務者一人トノ間ニハ分ツコトヲ得サルモノノ如ク之ヲ執行ス可シ其分割シ得ルコトハ権利者及ヒ義務者ノ相続人数人ノ間ニ非サレハ適用ス可カラス権利者ノ諸相続人ハ権利者ニ代リ各自ノ得可キ部分ニ非サレハ負債ヲ要求スルヲ得ス又義務者ノ諸相続人ハ義務者ニ代リ各自ノ担当ス可キ部分ニ非サレハ負債ヲ弁済スルニ及ハス 第千二百二十一条 前条ニ定メタル規則ハ義務者ノ諸相続人ニ付キ左ノ場合ニ於テ例外アリトス 第一 負債ノ書入質的ナル時 第二 負債ノ特定物ナル時 第三 権利者カ撰択権ヲ有スル物件ノ択取義務ニ関シ其物件中ノ一箇ノ不得分的ナル時 第四 相続人中ノ一人証書ニ因リ独リ義務ノ執行ヲ負担シタル時 第五 契約ノ性質、其目的トスル物件又ハ契約ノ趣旨ニ因テ契約者ノ意思分割シテ義務ヲ弁済スルニ在ラサリシコト分明ナリシ時 初三項ノ場合ニ於テハ弁済ス可キ物件又ハ負債ノ書入質トナシタル不動産ヲ占有スル相続人ハ其弁済ス可キ物件又ハ書入質トナシタル不動産ノ全部ニ付キ訟求ヲ受ク可シ但シ其共同相続人ニ対シ要償権ヲ有ス第四項ノ場合ニ於テハ独リ義務ヲ負担シタル相続人又第五項ノ場合ニ於テハ各相続人ハ亦全部ニ付キ訟求ヲ受ク可シ但シ其共同相続人ニ対シ要償権ヲ有ス 第二節 不得分義務ノ効果 第千二百二十二条 共同ニテ不得分義務ヲ約シタル各人ハ連帯シテ義務ヲ約セサリシ時ト雖トモ其全部ヲ弁済スルノ義務アリ 第千二百二十三条 其義務ヲ約シタル者ノ相続人ニ付テモ同前ナリトス 第千二百二十四条 権利者ノ各相続人ハ不得分義務ノ全部ノ執行ヲ要求スルヲ得 権利者ノ各相続人ハ独リ義務ノ全部ノ免釈ヲ為スヲ得ス又独リ物件ニ替ヘ代価ヲ収受スルヲ得ス若シ相続人中ノ一人独リ義務ヲ免釈シ又ハ物件ノ代価ヲ収受セシ時ハ其共同相続人ハ免釈ヲ為シ又ハ代価ヲ収受シタル共同相続人ノ部分ヲ控除スルニ非サレハ不得分物件ヲ要求スルヲ得ス 第千二百二十五条 義務ノ全部ニ付キ訟求ヲ受ケタル義務者ノ相続人ハ其共同相続人ヲ訴訟ニ参関セシムル為メ猶予ヲ要求スルヲ得但シ其義務訟求ヲ受ケタル相続人ヨリスルニ非サレハ弁済スルヲ得可カラサル性質ノモノナル時ハ此限ニ在ラストス此場合ニ於テハ其相続人ハ独リ弁済ノ言渡ヲ受ク可シ但シ其共同相続人ニ対シ要償権ヲ有ス 第六款 罰款アル義務 第千二百二十六条 罰款トハ契約ノ執行ヲ確保スル為メ其不執行ノ場合ニ於テ或ル事ヲ為ス可キコトヲ約スル条款ヲ云フ 第千二百二十七条 主タル義務ノ無効ハ罰款ノ無効ヲ提起ス 罰款ノ無効ハ主タル義務ノ無効ヲ堤起セス 第千二百二十八条 権利者ハ遅滞ヲ為シタル義務者ニ対シ既ニ要約シタル罰科《パース》ヲ要求セスシテ主タル義務ノ執行ヲ訟求スルヲ得 第千二百二十九条 罰款ハ主タル義務ノ不執行ニ因テ権利者ノ受ケタル損害ノ賠償ノ相殺ナリトス 権利者ハ純然ノ遅延ニ付キ罰科ヲ要約シタル場合ノ外ハ主タル義務ト罰科トヲ併セテ要求スルヲ得ス 第千二百三十条 主タル義務ヲ執行ス可キ期限ヲ定メシト否トニ関セス罰科ハ引渡ヲ為シ取去ヲ為シ又ハ事ヲ為ス可キ義務ヲ負フ者ノ遅滞セシ時ニ非サレハ生セサルモノトス 第千二百三十一条 若シ主タル義務ノ一部ヲ執行セシ時ハ裁判官ハ罰科ヲ変更スルコトヲ得 第千二百三十二条 罰科ヲ以テ約シタル主タル義務若シ不得分物件ニ係ハル時ハ罰科ハ義務者ノ相続人中ノ一人ノ違約ニ因テ生シ違約ヲ為シタル者ニ対シテハ其全部ヲ要求シ其共同相続人ノ各自ニ対シテハ其部分ヲ要求シ書入質ニ関シテハ其全部ヲ要求スルヲ得但シ共同相続人ハ罰科ヲ生セシメタル者ニ対シテ要償権ヲ有ス 第千二百三十三条 罰款ヲ以テ約シタル主タル義務若シ得分的ナル時ハ義務者ノ相続人中其義務ニ違背シタル者ニ対シ主タル義務中ニテ其担当スル部分ノミニ付テ罰科ヲ生シ義務ヲ執行シタル者ニ対シテハ訴権ヲ生セス 此規則ハ分割シテ弁済ヲ為スヲ得サラシムルノ意思ヲ以テ罰款ヲ加ヘタル時共同相続人中ノ一人若シ義務ノ全部ノ執行ヲ妨碍セシ場合ニ於テハ例外ナリトス此場合ニ於テハ此共同相続人{執行ヲ妨碍セシ}ニ対シテハ罰科ノ全部ヲ要求シ他ノ共同相続人ニ対シテハ其部分ノミヲ要求スルヲ得但シ他ノ共同相続人ハ義務ノ執行ヲ妨碍セシ者ニ対シテ要償権ヲ有ス 第五章 義務ノ消滅 第千二百三十四条 義務ハ左ノ事項ニ因テ消滅ス 弁済 更改 好意ノ免釈 相殺 渾同 物件ノ滅失 無効又ハ廃棄 解除ノ約件ノ効果但シ解除ノ約件ハ前章ニ載セリ 時効但シ別巻ニ載ス可シ 第一款 弁済 第一節 一般ノ弁済 第千二百三十五条 凡ソ弁済アレハ義務アリタリト推測ス義務ナクシテ弁済シタルモノハ回収《レペチシヨン》セラル可シ 回収ハ好意ニテ弁済シタル自然義務ニ付テハ之ヲ許サス 第千二百三十六条 義務ハ共同義務者又ハ保証人ノ如キ総テ之ニ関係アル者ヨリ弁済スルヲ得 義務ハ之ニ関係ナキ外人ト雖トモ義務者ノ名ヲ以テ且ツ其義務免釈ノ為メニスルニ於テハ之ヲ弁済スルヲ得又自己ノ名ヲ以テスト雖トモ権利者ノ権利ヲ代襲セサルニ於テハ之ヲ弁済スルヲ得 第千二百三十七条 可為義務ハ義務者自ラ之ヲ履行スルニ付キ権利者利益ヲ有スル時ハ権利者ノ望ニ反シ外人ニテ之ヲ弁済スルヲ得ス 第千二百三十八条 有効ニ弁済ヲ為サンニハ弁済ニ充ツル物件ノ所有者ニシテ之ヲ譲与スルノ能力アルヲ要ス 然レトモ金額其他使用ニ因リ消耗ス可キ物件ノ弁済ハ其所有者ニ非サリシ者又ハ之ヲ譲与スルノ能力ナキ者之ヲ為セシ時ト雖トモ善意ヲ以テ之ヲ消耗シタル権利者ニ対シ之ヲ回収スルヲ得ス 第千二百三十九条 弁済ハ権利者又ハ其名代人又ハ裁判若クハ法律ニ因リ権利者ノ為メニ領収スルコトヲ允許セラレタル者ニ之ヲ為ス可シ 権利者ノ為メニ領収スルノ権ヲ有セサル者ニ為シタル弁済ト雖トモ権利者若シ之ヲ追認セシカ又ハ之レニ付キ利益セシ時ハ有効ナリトス 第千二百四十条 債主権ヲ占有スル者ニ善意ヲ以テ為シタル弁済ハ占有者其後債主権ヲ奪却セラルル時ト雖トモ有効ナリトス 第千二百四十一条 権利者ニ為シタル弁済ハ権利者之ヲ領収スルノ能力ナキ時ハ無効ナリトス但シ義務者其弁済シタル物件カ権利者ノ利益ニ帰シタルコトヲ証スル時ハ此限ニ在ラストス 第千二百四十二条 差押又ハ故障アルニ拘ハラス義務者ヨリ権利者ニ為シタル弁済ハ差押又ハ故障ヲ為シタル権利者ニ関シテハ無効ナリトス差押又ハ故障ヲ為シタル権利者ハ自己ノ権利ヲ以テ更ニ弁済ヲ為ス可キコトヲ義務者ニ要強スルヲ得但シ此場合ニ限リ義務者ハ権利者{始メニ弁済ヲ受ケタル}ニ対シテ要償権ヲ有ス 第千ニ百四十三条 権利者ハ提供{義務者ヨリ}アリタル物件ノ価額己レニ弁済アル可キ物件ノ価額ト等一ナルカ又ハ之ヨリ高貴ナル時ト雖トモ己レニ弁済アル可キ物件ニ非サル他ノ物件ヲ収受ス可キヲ要強セラルルコト無ル可シ 第千二百四十四条 義務者ハ得分義務ト雖トモ其一部ノ弁済ヲ収受スヘキコトヲ権利者ニ要強スルヲ得ス 然レトモ裁判官ハ義務者ノ情状ヲ考察シ弁済ニ付キ相当ノ猶予ヲ許与シ且ツ訟求ノ執行ヲ中止シ諸事依然タラシムルヲ得但シ裁判官ハ深ク注意シテ其権ヲ行フ可シ 第千二百四十五条 特定物ノ義務者ハ引渡ノ時ノ状況ノ侭ニテ物件ヲ引渡シテ其義務ヲ免カル可シ但シ物件ニ生シタル毀損其所為若クハ其過失又ハ義務者自ラ責ニ任ス可キ人ノ過失ニ出テタルカ又ハ其毀損前ニ遅滞ヲ為シタル時ハ此限ニ在ラストス 第千二百四十六条 義務若シ種類ヲ以テ定メタル物件ニ係ハル時ハ義務者ハ義務ヲ免カレンカ為メ最上種ノ物件ヲ与フルニ及ハス然レトモ最下種ノ物件ヲ提供スルヲ得ス 第千二百四十七条 弁済ハ契約ニ因リ指定シタル場所ニ於テ執行ス可シ若シ場所ヲ指定セサリシ時ハ特定物ニ係ハル弁済ハ義務ヲ約シタル時其目的タル物件ノアリタル場所ニ於テ之ヲ為ス可シ 此二箇ノ場合ノ外弁済ハ義務者ノ住所ニ於テ為ス可シ 第千二百四十八条 弁済ノ費用ハ義務者ノ負担ナリトス 第二節 代権弁済 第千二百四十九条 権利者ニ弁済ヲ為ス外人ニ権利者ノ権利ヲ代襲セシムルニハ約束上ノモノアリ法律上ノモノアリ 第千二百五十条 左ノ代権ハ約束上ノモノトス 第一 権利者外人ヨリ弁済ヲ収受シ自己ノ義務者ニ対スル権利、訴権、先取権又ハ書入質権ヲ外人ニ代襲セシムル時、此代権ハ弁済ト同時ニ明約ス可シ 第二 義務者其負債ヲ弁済センカ為メニ金額ヲ借用シ貸主ニ権利者ノ権利ヲ代襲セシムル時、此代権ヲシテ有効ナラシメンニハ公証人ノ面前ニ於テ借用証書及ヒ領収書ヲ記シ其借用証書ニハ弁済ヲ為サンカ為メニ借用ヲ為セシコトヲ記載シ又領収書ニハ弁済ノ為メニ新権利者ヨリ給与シタル金額ヲ以テ弁済ヲ為セシコトヲ記載スルヲ要ス此代権ハ権利者ノ同意ヲ待タス之ヲ為スヲ得 第千二百五十一条 左ノ者ノ為メニハ代権ハ当然成立ス可シ 第一 自身権利者ニシテ先取権又ハ書入質権アルカ為メニ自己ヨリ優等ノ権利者ニ弁済ヲ為シタル者ノ為メ 第二 不動産ノ獲得者ニシテ其代価ヲ其不動産ニ付キ書入質権ヲ有スル権利者ニ為ス弁済ニ供用シタル者ノ為メ 第三 他人ト共ニ又ハ他人ニ代リ負債ヲ弁済スルノ義務アルヲ以テ其弁済ヲ為スノ利益ヲ有セシ者ノ為メ 第四 自己ノ金額ヲ以テ相続ノ負債ヲ弁済シタル目録相続人ノ為メ 第千二百五十二条 前数条ニ定メタル代権ハ義務者ニ対スル如ク保証人ニ対シテ成立ス権利者若シ一部ノ弁済ノミヲ得タル時ハ代権ヲ以テ其権利者ヲ害スルヲ得ス此場合ニ於テ其権利者ハ弁済ヲ得サル残額ニ付キ一部ノ弁済ノミヲ為シタル者ニ先チテ其権利ヲ執行スルヲ得 第三節 弁済ノ抵充《アンピュタション》 第千二百五十三条 数箇ノ負債ノ義務者ハ弁済ヲ為ス時何ノ負債ヲ弁済スルノ意ナルヤヲ陳述スルノ権アリ 第千二百五十四条 利息又ハ賦額ヲ生スル負債ノ義務者ハ権利者ノ承諾ナクシテハ其為ス所ノ弁済ヲ賦額又ハ利息ニ先チテ元金ニ抵充スルヲ得ス元金及ヒ利息ニ付キ為ス弁済ニシテ全額ニ充タサルモノハ先ツ之ヲ利息ニ抵充ス可シ 第千二百五十五条 数箇ノ負債ノ義務者、其権利者ノ領収シタルモノヲ特ニ其負債ノ一ニ抵充セシ旨ノ領収書ヲ受諾セシ時ハ最早之ヲ他ノ負債ニ抵充センコトヲ要求スルヲ得ス但シ権利者ノ方ニ詐欺又ハ不当《シユル、フリーズ》ノ所為アリシ時ハ此限ニ在ラストス 第千二百五十六条 若シ領収書ニ何ノ抵充ヲモ記セサル時ハ弁済ハ其時同シク期限ノ至リタル負債中ニテ義務者ノ最モ弁済ノ利益ヲ有スルモノニ之ヲ抵充ス可シ然ラサレハ期限ノ至ラサル負債ヨリモ期限ノ至リタル負債ノ較々軽キ時ト雖トモ期限ノ至リタル負債ニ之ヲ抵充ス可シ 数箇ノ負債若シ同質ナル時ハ最旧ノ負債ニ抵充シ又全ク同様ナル時ハ割合ニ従ヒ抵充ス可シ 第四節 弁済ノ提供及ヒ附託 第千二百五十七条 権利者若シ弁済ヲ領収スルコトヲ拒ム時ハ義務者ハ権利者ニ実物提供ヲ為スヲ得権利者尚ホ之ヲ受諾スルコトヲ拒ム時ハ提供シタル金額又ハ物件ヲ附託スルヲ得 実物提供ヲ為シ尋テ附託ヲ為セシ時ハ義務者ヲ免釈ス可シ実物提供及ヒ附託ハ之ヲ有効ニ為セシ時ハ弁済ト同視シ如此ク附託シタル物件ハ権利者ノ危険ニ帰ス可シ 第千二百五十八条 実物提供ノ有効ナランニハ左ノ件々ヲ要ス 第一 領収ヲ為ス能力アル権利者又ハ之ニ代テ領収ヲ為ス権アル者ニ実物提供ヲ為スコト 第二 弁済ヲ為ス能力アル者ヨリ実物提供ヲ為スコト 第三 弁済期限ニ至リタル金額弁済スヘキ賦額又ハ利息、清算シタル費用、及ヒ未清算ノ費用ノ為メノ金額ノ全額ニ付キ実物提供ヲ為スコト但シ未清算ノ費用ノ為メノ金額若シ不足ナル時ハ之ヲ補充ス可シ 第四 権利者ノ為メニ要約シタル場合ニ於テハ期限ノ至リタルコト 第五 義務ヲ約シタル約件ノ到来シタルコト 第六 弁済ノ為メニ約定シタル場所ニ於テ提供ヲ為スコト、弁済ノ場所ニ付キ別段ノ約束ナキ時ハ権利者ニ提供ヲ為スカ又ハ其住所若クハ約束執行ノ為メニ撰定シタル住所ニ於テ提供ヲ為スコト 第七 此等ノ事ヲ管掌スル裁判所附属吏ニ依テ提供ヲ為スコト 第千二百五十九条 附託有効ナランニハ裁判官ノ附託ヲ允許セシコトヲ要セス左ノ件々アルヲ以テ足レリトス 第一 提供物件ヲ附託ス可キ日、時、場所ヲ記シタル催促書ヲ予メ権利者ニ送達セシコト 第二 義務者提供物件ヲ手放シ附託ノ日迄ノ利息ト共ニ之ヲ附託領収ノ為メ法律ニ指定シタル附託所ニ預ケシコト 第三 提供物件ノ性質、其領収ニ付キ権利者ノ抗拒又ハ其缺席及ヒ附託ノ事ニ付キ裁判所附属吏ニ調書ヲ作ラシメタルコト 第四 権利者缺席ノ場合ニ於テハ附託シタル物件ヲ領収ス可キノ催促書ト共ニ附託ノ調書ヲ権利者ニ送達セシコト 第千二百六十条 実物提供及ヒ附託ノ有効ナル時ハ其費用ハ権利者ノ負担ナリトス 第千二百六十一条 権利者附託物件ヲ受諾セサル間ハ義務者之ヲ引取ルヲ得若シ義務者之ヲ引取ル時ハ其共同義務者又ハ保証人ハ義務ヲ免カレス 第千二百六十二条 義務者若シ自ラ其提供及ヒ附託ノ整正ニシテ有効ナル言渡ヲ受ケ其言渡ノ既判効ヲ得タル時ハ権利者ノ承諾アリト雖トモ其附託物件ヲ引取リ其共同義務者又ハ保証人ヲ害スルヲ得ス 第千二百六十三条 既判効ヲ得タル言渡ニ因テ附託ノ有効ナルコトヲ宣告シタル後義務者カ其附託ヲ引取ルコトヲ承諾シタル権利者ハ最早其債主権ノ弁済ニ付キ之ニ附属スル先取権又ハ書入質権ヲ執行スルヲ得ス、権利者ハ附託ヲ引取ルコトヲ承諾シタル証書ヲ以テ更ニ書入質権ヲ生スルニ必要ナル法式ヲ履行シタル日以後ニ非サレハ書入質権ヲ有セス 第千二百六十四条 若シ弁済スヘキ物件其所在ノ場所ニ於テ引渡ス可キ特定物ナル時ハ義務者ハ権利者ニ又ハ其住所若クハ約束執行ノ為メ撰定シタル住所ニ送達シタル書ヲ以テ権利者ニ物件ヲ取去ルノ催促ヲ為ス可シ其催促ヲ為シタル上権利者物件ヲ取去ラス義務者ニ於テ物件所在ノ場所入用ナル時ハ義務者ハ他ノ場所ニ其物件ヲ附託スルノ允許ヲ裁判所ヨリ受ルコトヲ得 第五節 財産ノ委棄《セッション》 第千二百六十五条 財産委棄トハ義務者其負債ヲ弁済スル能ハサルニ至リシ時其全財産ヲ権利者ニ委付スルコトヲ云フ 第千二百六十六条 財産委棄ニハ好意上ノモノアリ裁判上ノモノアリ 第千二百六十七条 好意上ノ財産委棄トハ権利者随意ニ之ヲ承諾シ権利者ト義務者トノ間ニ為シタル約定ヨリ生スル効果ノ外他ノ効果ヲ生セサルモノヲ云フ 第千二百六十八条 裁判上ノ委棄トハ不幸ニシテ善意ナル義務者ニ其身体ノ自由ヲ有タシムル為メ反対ノ要約ニ係ハラス裁判所ニ於テ其全財産ヲ権利者ニ委付スルコトヲ許シ以テ法律上其義務者ニ与フル便益ヲ云フ 第千二百六十九条 裁判上ノ委棄ハ権利者ニ所有権ヲ附与セス唯其利益ノ為メ財産ヲ売却セシムルノ権及ヒ売却迄入額ヲ収得スルノ権ヲ附与スルノミ 第千二百七十条 権利者ハ法律ニ定ムル例外ノ場合ノ外裁判上ノ委棄ヲ拒ムヲ得ス 裁判上ノ委棄ハ拘禁《コントレントパルコール》{義務者ノ}ヲ免除ス 又裁判上ノ委棄ハ委棄シタル財産ノ価額ニ至ル迄ノ外義務ヲ免釈セス財産不足ノ場合ニ於テ他ノ財産若シ後ニ義務者ニ属スル時ハ義務者ハ完全ノ弁済ニ至ル迄之ヲ委棄スルノ義務アリ 第二款 更改 第千二百七十一条 更改ハ三箇ノ方法ヲ以テ成レルモノトス 第一 義務者権利者ニ対シ旧義務ニ替フル新義務ヲ約シ旧義務ノ消滅セシ時 第二 新義務者権利者ヨリ義務ノ免釈ヲ得タル旧義務者ト交迭セシ時 第三 新契約ノ効ニ因リ新権利者旧権利者ト交迭シ義務者旧権利者ニ対シ義務ノ免釈ヲ得タル時 第千二百七十二条 更改ハ契約ヲ為スノ能力アル者ノ間ニ非サレハ之ヲ為スヲ得ス 第千二百七十三条 更改ハ推測ス可カラス更改ヲ為スノ意思証書ニ因テ明カニ顕ハルルコトヲ要ス 第千二百七十四条 新義務者ノ交迭ニ因ル更改ハ旧義務者ノ同意ナクシテ之ヲ為スヲ得 第千二百七十五条 義務者、権利者ニ対シテ義務ヲ負フ可キ他ノ義務者ヲ権利者ニ供スルニアル代弁《デレガシヨン》約定ハ権利者ニ於テ之ヲ為シタル義務者ヲ免釈セント欲スル旨ヲ明カニ陳述セサル時ハ更改ヲ為ササルモノトス 第千二百七十六条 代弁約定ヲ為シタル義務者ヲ免釈シタル権利者ハ代弁者ノ無資力トナリシ時ト雖トモ義務者ニ対シテ要償権ヲ有セス但シ要償権ノ貯存ヲ別段証書ニ記シタルカ又ハ代弁者代弁約定ノ時既ニ民事分散《デコンフィチユール》又ハ開始シタル商事《フアイト》分散ヲ為セシ時ハ此限ニ在ラストス 第千二百七十七条 義務者ヨリ己レニ代リテ弁済ヲ為ス可キ者ヲ単ニ指示セシノミニテハ更改ヲ為サストス 権利者ヨリ己レニ代リ領収ヲ為ス可キ者ヲ単ニ指示セシ時モ同前ナリトス 第千二百七十八条 旧債主権ニ属スル先取権及ヒ書入質権ハ交迭シタル債主権ニ移転セス但シ権利者別段ニ其権ヲ貯存セシ時ハ此限ニ在ラストス 第千二百七十九条 更改若シ新義務者ノ交迭ニ因テ成リタル時ハ債主権ノ最初ノ先取権及ヒ書入質権ハ新義務者ノ財産上ニ移転スルヲ得ス 第千二百八十条 更改若シ権利者ト連帯義務者中ノ一人トノ間ニ成リタル時ハ旧債主権ノ先取権及ヒ書入質権ハ新義務ヲ約シタル者ノ財産ニ付テノミ之ヲ貯存スルヲ得 第千二百八十一条 権利者ト連帯義務者中ノ一人トノ間ニ為シタル更改ニ因テ共同義務者ハ免釈セラル可シ 主タル義務者ニ対シ為シタル更改ハ保証人ヲ免釈ス可シ 然レトモ権利者若シ第一項ノ場合ニ於テ共同義務者ノ従属ヲ要求シ第二項ノ場合ニ於テ保証人ノ従属ヲ要求シテ共同義務者又ハ保証人其新約定ヲ承諾スルコトヲ拒ミタル時ハ旧債主権ハ存続ス可シ 第三款 義務ノ免釈《レミース》 第千二百八十二条 権利者ヨリ義務者ニ好意ニテ為ス私印本証書ノ還付ハ免釈ノ証ト為ル可シ 第千二百八十三条 証書ノ大字謄本ノ好意ノ還付ハ反対ノ証ナキニ於テハ義務ノ免釈又ハ弁済アリタルコトヲ推測セシム可シ 第千二百八十四条 連帯義務者中ノ一人ニ為シタル私印本証書又ハ大字謄本ノ還付ハ其共同義務者ノ為メニ同一ノ効ヲ有ス可シ 第千二百八十五条 連帯義務者中ノ一人ニ為シタル約束上ノ免釈ハ其共同義務者ヲ免釈ス可シ但シ権利者特ラニ共同義務者ニ対シテ其権利ヲ貯存セシ時ハ此限ニ在ラストス 此終リノ場合ニ於テハ免釈ヲ得タル者ノ部分ヲ控除スルニ非サレハ負債ノ弁済ヲ要求スルヲ得ス 第千二百八十六条 質《ナニチスマン》ト為シタル物件ノ還付《ルミース》ハ義務ノ免釈ナリト推測スルニ足ラストス 第千二百八十七条 主タル義務者ニ為シタル約束上ノ免釈ハ保証人ヲ免釈ス 保証人ニ為シタル約束上ノ免釈ハ主タル義務者ヲ免釈セス 保証人中ノ一人ニ為シタル約束上ノ免釈ハ他ノ保証人ヲ免釈セス 第千二百八十八条 保証免釈ノ為メニ権利者保証人ヨリ領収シタル物ハ負債ニ抵充シ主タル義務者及ヒ他ノ保証人ノ免釈ニ充用ス可シ 第四款 相殺 第千二百八十九条 二人相互ニ義務者タル時ハ下ノ数条ニ定ムル方法ト場合トニ従ヒ双方ノ間ニ相殺ヲ為シ二箇ノ義務ヲ消滅セシム 第千二百九十条 相殺ハ義務者双方ノ知ラサル時ト雖トモ法律ノ効力ノミニ因リ当然之ヲ為シ二箇ノ義務ハ其同一時ニ成立スル時ニ於テ其相当ノ価額ニ至ル迄相互ニ消滅ス可シ 第千二百九十一条 相殺ハ相互ニ期限ノ至リ且清算シタル金額若クハ同種ノ得替物件ノ定量ヲ以テ其目的ト為ス所ノ二箇ノ義務ノ間ニ非サレハ之ヲ為スヲ得ス 争ニ係ハラズ且ツ其代価ノ物価表ニ規定セラレタル穀物又ハ日用品ノ供給ハ期限ノ至リ且清算シタル金額ト相殺スルヲ得 第千二百九十二条 恩恵ノ期限ハ相殺ノ障碍トナルコトナシ 第千二百九十三条 相殺ハ双方ノ義務ノ原由如何ニ係ハラス之ヲ為ス可シ但シ左ノ場合ハ例外ナリトス 第一 所有者ノ不当ニ奪取セラレタル物件還給ノ訟求 第二 附託物又ハ使用貸与物ノ還給ノ訟求 第三 差押フ可カラスト宣告セラレタル養料ヲ原由トスル義務 第千二百九十四条 保証人ハ主タル義務者ニ対シテ権利者ノ負フタル義務ニ付キ相殺アルコトヲ申立《シッポゼー》ツルヲ得 然レトモ主タル義務者ハ保証人ニ対シテ権利者ノ負フタル義務ニ付キ相殺アルコトヲ申立ツルヲ得ス 又連帯義務者ハ其共同義務者ニ対シテ権利者ノ負フタル義務ニ付キ相殺アルコトヲ申立ツルヲ得ス 第千二百九十五条 権利者ヨリ外人ニ為シタル権利ノ譲与ヲ単純ニ承諾シタル義務者ハ其承諾前ニ譲与者{権利者}ニ対シテ申立ツルコトヲ得タルベキ相殺ヲ受譲者ニ対シテ申立ツルコトヲ得ス 義務者譲与ノ承諾ヲ為サスト雖トモ其通知ヲ受ケタル時ハ譲与ハ其通知以後ニ係ハル債主権ノ相殺ノミヲ妨碍ス可シ 第千二百九十六条 二箇ノ義務同一ノ場所ニ於テ弁済ス可カラサル時ハ引渡ノ費用ヲ計算スルニ非サレハ其相殺アルコトヲ申立ツルヲ得ス 第千二百九十七条 若シ一人ニテ負フタル相殺ス可キ数多ノ義務アル時ハ抵充ニ付キ第千二百五十六条ニ定メタル規則ヲ相殺ニ付キ履践ス可シ 第千二百九十八条 相殺ハ外人ノ既得権ヲ害シテ之ヲ為スヲ得ス故ニ義務者ニシテ己レノ手内ニ於テ外人ノ留置《セシアレー》差押ヲ為シタル後ニ権利者{権利者ノ}トナリタル者ハ差押人ヲ害シテ相殺アルコトヲ申立ツルヲ得ス 第千二百九十九条 相殺ニ因リ当然消滅シタル負債ヲ弁済シタル者ハ相殺アルコトヲ申立テサリシ債主権ヲ執行スルニ付キ外人ヲ害シテ其債主権ニ附属シタル先取権又ハ書入質権ヲ利用スルヲ得ス但シ義務者其負債ヲ相殺ス可キ債主権アリシコトヲ知ラサリシ正当ノ理由アル時ハ此限ニ在ラストス 第五款 渾同 第千三百条 権利者及ヒ義務者ノ資格一人ニ着合スル時ハ権利ノ渾同ヲ生シ二箇ノ債主権ヲ消滅ス 第千三百一条 主タル義務者ノ身上ニ成レル渾同ハ其保証人ヲ益ス可シ 保証人ノ身上ニ成レル渾同ハ主タル義務ノ消滅ヲ提起セス 権利者ノ身上ニ成レル渾同ハ権利者ノ義務ニ属スル部分ニ非サレハ其連帯ノ共同義務者ヲ益セス 第六款 弁済ス可キ物件ノ滅失 第千三百二条 義務ノ目的タル特定物滅失スルカ通易ス可カラサルモノトナルカ又ハ全ク其存在ヲ知ラサル如ク紛失セシ時若シ其物件義務者ノ過失ナク又遅滞ニ至ラサル前ニ滅失紛失セシニ於テハ義務ハ消滅ス可シ 義務者遅滞ヲ為シタリト雖トモ意外ノ変ニ付キ自ラ責ニ任セサリシ時ハ若シ既ニ物件ヲ引渡セシモ其物件カ同シク権利者ノ許ニ於テ滅失ス可カリシ場合ニ於テハ義務ハ消滅ス可シ 義務者ハ其主張スル意外ノ変ヲ証ス可シ 臓物ノ滅失又ハ紛失シタル方法ノ如何ヲ問ハス其滅失ハ窃取ヲ為セシ者ニ代価ノ還給ヲ免除スルコトナシトス 第千三百三条 物件若シ義務者ノ過失ニ非スシテ滅失シ又ハ通易ス可カラサルモノトナリ又ハ紛失シタル時其物件ニ関シテ要償ノ権利又ハ訴権アル時ハ義務者ハ之ヲ権利者ニ譲与ス可シ 第七款 契約ノ無効又ハ廃棄ノ訴権 第千三百四条 別段ノ法律ニ因リ契約ノ無効又ハ廃棄ノ訴権ヲ尚ホ短期ニ限定セル場合ニ於テハ其訴権ハ十年間継続ス可シ 其時間ハ暴行ノ場合ニ於テハ其止了シタル日ヨリ、錯誤又ハ詐欺ノ場合ニ於テハ之ヲ発見シタル日ヨリ、有夫ノ婦允許{夫又ハ裁判所ノ}ヲ得スシテ為シタル所為ニ付テハ婚姻解除ノ日ヨリ起算ス 其時間ハ被禁治産者ノ為シタル所為ニ付テハ治産ノ禁ヲ解キタル日ヨリ、幼者ノ為シタル所為ニ付テハ丁年ニ至リタル日ヨリ起算ス 第千三百五条 単純ノ損失ハ後見免除ヲ得サル幼者ノ為メニハ諸種ノ契約ニ付キ廃棄ヲ生シ後見免除ヲ得タル幼者ノ為メニハ幼年後見及ヒ後見免除ノ巻ニ定ムル其能力ノ限度ヲ超過シタル総テノ契約ニ付キ廃棄ヲ生ス 第千三百六条 幼者ハ損失若シ偶然不虞ノ事情ヨリ生セシ時ハ損失ヲ原由トシテ廃棄{契約ノ}ヲ訴フルヲ得ス 第千三百七条 幼者ノ為シタル丁年タル旨ノ単純ノ陳述ハ廃棄ノ障碍トナルコトナシトス 第千三百八条 商人、銀行者又ハ技術師ナル幼者ハ其商業又ハ其技術ニ関シテ結ヒタル契約ノ廃棄{損失ノ為メニ}ヲ訴フルヲ得ス 第千三百九条 幼者ハ婚姻ノ有効ノ為メ許諾ヲ要スル者ノ許諾ト其者ノ立会トヲ以テ婚姻財産契約書ニ載セタル契約ヲ為セシ時ハ其契約ノ廃棄ヲ訴フルヲ得ス 第千三百十条 幼者ハ犯罪又ハ准犯罪ニ因テ生シタル義務ノ廃棄ヲ訴フルヲ得ス 第千三百十一条 幼年ニテ為シタル契約ヲ丁年ニ至リテ追認セシ時ハ其契約ノ法式上ニ於テ無効タルト又止タ廃棄ス可キトヲ問ハス其廃棄ノ訴ハ之ヲ受理セス 第千三百十二条 幼者、被禁治産者又ハ有夫ノ婦カ其資格ヲ以テ其為シタル契約ヲ廃棄スルコトヲ許サルル時ハ其契約ノ結果トシテ幼年、禁治産又ハ婚姻ノ間ニ弁済{対手ヨリ}シタル物ガ幼者等ノ利益ニ帰シタルコトヲ証スルニ非サレハ返還ヲ要求{幼者等ニ}スルヲ得ス 第千三百十三条 丁年者ハ別段ニ民法ニ定メタル場合ト条件トニ循フニ非サレハ損失ヲ原由トシテ廃棄ヲ訴フルヲ得ス 第千三百十四条 不動産ノ譲与若クハ遺物ノ分派ニ付キ幼者又ハ被禁治産者ノ為メニ要スル法式ヲ履践シタル時ハ幼者又ハ被禁治産者ハ其所為{譲与分派}ニ関シテハ丁年ニテ又ハ禁治産前ニ之ヲ為セシ如クニ看做サル可シ 第六章 義務ノ証拠及ヒ弁済ノ証拠 第千三百十五条 義務ノ執行ヲ要求スル者ハ之ヲ証ス可シ 右ニ反シ義務ヲ免釈セラレタリト主張スル者ハ弁済、又ハ其義務ノ消滅ヲ来タシタル事件ヲ証明ス可シ 第千三百十六条 書証、人証、推測、一方ノ自認及ヒ矢誓ニ関スル規則ハ左ノ数款ニ之ヲ記載ス 第一款 書証《プルーブリテラル》 第一節 公正証書 第千三百十七条 公正証書トハ証書ヲ記シタル地ニ於テ此事ヲ掌トル権アル公吏ノ必要ノ儀式ニ従ヒ記シタル証書ヲ云フ 第千三百十八条 管轄違又ハ官吏ノ無能力又ハ法式ノ虧缺ニ因リ公正ナラサル証書ハ契約者双方ノ手署アルニ於テハ私印証書ノ価格ヲ有ス可シ 第千三百十九条 公正証書ハ之ニ記載スル契約ニ付テハ契約者其相続人又ハ承権人ノ間ニハ確信ヲ為スモノトス 然レトモ偽造ノ主タル訴{刑事ノ訴}アリシ場合ニ於テハ偽造的ト訴ヘラレタル証書ノ執行ハ重罪告発ニ因テ之ヲ停止ス可シ又民事附帯ノ偽造ノ訴アリシ時ハ裁判所ハ事情ニ従ヒ仮ニ証書ノ執行ヲ停止スルヲ得 第千三百二十条 証書ハ公正タルト私印タルトヲ問ハス唯々釈明ノ為メニ記シタルモノト雖トモ其釈明ト契約ノ要旨ト直接ノ関係アルニ於テハ契約者ノ間ニハ確信アリトス契約ノ要旨ニ不関係ノ釈明ハ証拠ノ端緒ト為スヲ得ルノミ 第千三百二十一条 反約証書《コントルレットル》ハ契約者双方ノ間ニ非サレハ効ヲ有スルヲ得ス決シテ外人ニ対シテハ効ヲ有セズ 第二節 私印証書 第千三百二十二条 私印証書ニ付キ人ヨリ対抗ヲ受ケタル者ノ認諾シ又ハ法律上ニテ認諾シタリト做シタル其私印証書ハ之ヲ記シタル双方ノ間其相続人及ヒ承権人ノ間ニハ公正証書ト同シキ信アリトス 第千三百二十三条 私印証書ニ付キ対抗ヲ受ケタル者ハ其手跡又ハ其手署ヲ明確ニ是認シ又ハ非認スルノ義務アリ 其相続人又ハ承権人ハ主者ノ手跡又ハ手署ヲ識知セサル旨ヲ陳述シテ足レリトスルコトヲ得 第千三百二十四条 一方ノ者其手跡又ハ手署ヲ非認スル場合及ヒ其相続人又ハ承権人ノ之ヲ識知セサル旨ヲ陳述スル場合ニ於テハ裁判所ニ於テ其験真ヲ命ス可シ 第千三百二十五条 双務契約ヲ記スル私印証書ハ殊別ノ利益ヲ有スル契約者ノ員数ニ応シ数通ノ正本ヲ作ルニ非サレハ効ナシトス 同一ノ利益ヲ有スル数人ニ付テハ正本一通ニテ足レリトス 正本ノ各通ニハ作リタル正本ノ員数ヲ附記ス可シ 然レトモ正本ヲ二通三通等ニ作リタル旨ノ附記ノ欠缺ニ付テハ証書ニ記シタル契約ヲ先ツ執行シタル者ヨリ対抗スルヲ得ス 第千三百二十六条 契約者ノ一方其他方ニ金額又ハ評価スルヲ得可キ物件ヲ弁済スルノ義務ヲ約シタル手形又ハ私印約諾書ハ之ヲ記スル者其全文ヲ手記スルカ又ハ少クモ其手署ノ外ニ本字{数字ニ非サル}ヲ以テ金額又ハ物件ノ分量ヲ記載シテ認諾《ボン》又ハ承認《アップルベー》ノ語ヲ手記ス可シ 但シ証書ノ商人、工人、農夫、葡萄作人、傭工及ヒ傭夫ヨリ出テタル場合ハ此限ニ在ラストス 第千三百二十七条 証書ノ本文ニ記シタル金額認諾ノ所ニ記シタル金額ト相異ナル時ハ義務ヲ負フ者証書及ヒ認諾ノ全文ヲ手記セシ時ト雖トモ何レカ錯誤ナルヤヲ証セサル以上ハ義務ハ寡額ノ方ニ在リト推測ス可シ 第千三百二十八条 私印証書ハ外人ニ対シテハ之ヲ登記シタル日、之ヲ記シタル者又ハ記シタル者ノ中一人ノ死去ノ日又ハ封印若クハ目録ノ調書ノ如キ公吏ノ記シタル証書中ニ其{私印証書ノ}要旨ヲ証明シタル日ヲ以テ其日附ナリトス 第千三百二十九条 商人ノ簿冊ハ商人ニ非サル者ニ対シテハ矢誓ノ事ニ付キ後条ニ記スル所ノ外其簿冊ニ記載アル供給ノ証ト為ルコトナシトス 第千三百三十条 商人ノ簿冊ハ其商人ニ対スル証ト為ル可シ然レトモ其簿冊ニ依テ利益ヲ得ント欲スル者ハ其主張スル所ニ反スル事項ヲ簿冊中ヨリ分ツコトヲ得ス 第千三百三十一条 家事ノ簿冊及ヒ書類ハ之ヲ記シタル者ノ為メニ証ト為ラス其簿冊書類ハ第一領受シタル弁済ヲ明確ニ記載スル総テノ場合ニ於テ第二簿冊書類ニ記シタル義務ヲ利スル者ノ為メ証書欠缺ノ補トシテ覚書ヲ為シタル旨ノ別段ナル附記アリシ時ニ於テハ之ヲ記シタル者ニ対シテ信アリトス 第千三百三十二条 権利者ノ常ニ所持シタル証書ノ末尾、欄外又ハ裏面ニ権利者ノ記シタル文書ハ権利者之レニ手署ヲモ日附ヲモ為サズト雖トモ之ヲ以テ義務者ノ免釈ヲ知ルヲ得ル時ハ信アリトス又証書又ハ領収書ノ副本ノ裏面欄外又ハ末尾ニ権利者ノ記シタル文書ニ付テモ其副本ノ義務者ノ手中ニ在ルニ於テハ同前ナリトス 第三節 符木 第千三百三十三条 母木《エシャンチョン》ニ符合スル符木《タイユ》ハ零売ニテ為シ又ハ収受シタル供給ヲ之ニ依テ証スルコトヲ常慣トスル者ノ間ニハ信アリトス 第四節 証書ノ謄本 第千三百三十四条 謄本ハ製本ノ存在スル時ハ正本ニ記載スル所ノモノニ付テノミ信アリトス正本ノ呈示ハ常ニ要求セラルルコトヲ得 第千三百三十五条 正本既ニ存在セサル時ハ謄本ハ左ノ区別ニ従ヒ信アリトス 第一 大字謄本即チ第一ノ謄本ハ正本ニ均シキ信アリ、契約者双方立会ノ上又ハ之ヲ呼出シ其出席セサル上ニテ裁判官ノ職権ヲ以テ写取リタル謄本又ハ契約者双方立会ヲ以テ其承諾ノ上写取リタル謄本ニ付テモ同前ナリトス 第二 裁判官職権ヲ以テセス又ハ契約者双方ノ承諾ナク大字謄本即チ第一ノ謄本交付ノ後ニ曽テ証書ヲ記シタル公証人又ハ其後任者ノ一人又ハ公証人ノ資格ヲ以テ正本ヲ看守スル公吏カ証書ノ正本ヨリ写取リタル謄本ハ経久ノモノタルニ於テハ正本滅失ノ場合ニ於テ信アルコトヲ得 謄本ハ三十年以上ヲ経過シタル時ハ経久ノモノトス 謄本若シ三十年ヲ経過セサル時ハ書証ノ端緒ト為スヲ得ルノミ 第三 証書ノ正本ヨリ写取リタル謄本若シ曽テ証書ヲ記シタル公証人其後任者ノ一人又ハ公証人ノ資格ヲ以テ正本ヲ看守スル者ニ依テ写取ラレサル時ハ如何ニ経久ノモノタリト雖トモ之ヲ書証ノ端緒トシテ用井ルヲ得ルノミ 第四 謄本ノ謄本ハ事情ニ従ヒ純然ノ参考ト為スヲ得ルノミ 第千三百三十六条 公簿上ニ証書ノ登記ハ書証ノ端緒ト為スヲ得ルノミ且ツ之カ為メ左ノ事情アルヲ要ス 第一 右ノ証書ヲ記シタリト思想ス可キ年ニ公証人ノ記シタル諸正本ノ悉皆紛失セシコトノ確実ナル事又ハ右ノ証書ノ正本ノ滅失カ格段ノ変災ニ因リシ事ヲ証スル事 第二 公証人ノ整正ノ目録在リテ右ノ証書カ同一ノ日附ニ於テ記セラレタルコトノ分明ナル事 右二箇ノ事情ノ集合ニ因リ人証ヲ許ス可キ時ハ右ノ証書ノ証人タリシ者猶生存スルニ於テハ其申立ヲ聴クヲ要ス 第五節 追認及ヒ確約ノ証書 第千三百三十七条 追認証書ハ別段之ニ原証書ノ事項ヲ記載スルニ非サレハ原証書ノ呈示ヲ免レス 原証書以外ニ又ハ之レニ異リテ追認証書ニ記載スル事項ハ何ノ効ヲモ生セス 然レトモ引続テ所持シタル数通同様ノ追認証書アリテ其一通ノ日附三十年以上ナル時ハ権利者ハ原証書ヲ呈示スルコトヲ免カルルヲ得 第千三百三十八条 法律ニ於テ無効又ハ廃棄ノ訴訟ヲ許シタル義務ノ確約証書ハ其義務ノ要旨、廃棄訴権ノ理由ノ附記及ヒ其訴権ノ原由タル瑕瑾ヲ修良スルノ意思ヲ記載スル時ニ非サレハ効ナシトス 確約証書在ラスト雖トモ義務ヲ有効ニ確約スルヲ得可キ時期ノ後ニ至リ好意ヲ以テ義務ヲ執行スル時ハ確約アリタリトス 法律ニ定ムル時期内ニ法式ニ循ヒタル確約又ハ好意ノ執行ハ此所為ニ対シテ申立ツルヲ得可キ抗弁《モワイヤン》及ヒ排訴《エキセプション》ノ放棄ヲ提起ス但シ之カ為メ外人ノ権利ヲ害スルコトナカル可シ 第千三百三十九条 贈遺者ハ何ノ確約証書ニ依ルモ生者間ノ贈遺ノ瑕瑾ヲ修良スルヲ得ス法式上ニ於テ無効タル生者間ノ贈遺ハ法律上ノ法式ニ循ヒ更ニ之ヲ為スヲ要ス 第千三百四十条 贈遺者ノ死後其相続人又ハ承権人ノ為シタル贈遺ノ確約又ハ好意上ノ執行ハ法式ノ瑕瑾又ハ其他ノ排訴ヲ申立ツル権ノ放棄ヲ提起ス 第二款 人証《ブルーブテスチモニアル》 第千三百四十一条 凡ソ百五十「フラン」ノ金額又ハ価額ヲ超過スル事物ニ付テハ好意上ノ附託ト雖トモ公証人ノ面前ニテ又ハ私印ニテ証書ヲ記ス可シ証書ニ記載スル所ニ反対ノ事項、証書外ノ事項又ハ証書ヲ記スル時若クハ其前後ニ陳述シタリト主張スル事項ニ付テハ仮令ヒ百五十「フラン」以下ノ金額又ハ価額ニ係ハル時ト雖トモ証人ヲ以テ何ノ証拠ヲモ立ルコトヲ許サス 但シ此規則ト商事ニ関スル法律ニ定ムル所ト抵触スルコトナカル可シ 第千三百四十二条 前条ノ規則ハ訴訟カ元金ノ訟求外ニ元金ト合シテ百五十「フラン」ノ金額ヲ超過スル利息ノ訟求ヲ含ム場合ニモ適用ス 第千三百四十三条 百五十「フラン」ヲ超過スル訟求ヲ為シタル者ハ其訟求高ヲ減殺スルモ人証ヲ許サス 第千三百四十四条 百五十「フラン」以下ノ金額ノ訟求ニ付テモ其金額カ書面ニ因リ証明セラレサル百五十「フラン」以上ノ貸金ノ残額又ハ一部ナリト陳述セラルル時ハ人証ヲ許スヲ得ス 第千三百四十五条 若シ一方ノ者一訴訟中ニ数箇ノ要求ヲ為シ其要求ニ付テハ証書ナク且ツ合計百五十「フラン」ノ金額ヲ超過スル時ハ其債主権カ殊異ノ原由ニ因テ生シ且ツ殊異ノ時日ニ於テ成立シタルコトヲ主張スルモ其権利ノ相続、贈遺又ハ其他ノ原由ニ因リ数多ノ人ヨリ来リタルニ非サレハ証人ヲ以テ証拠ヲ立ルヲ許サス 第千三百四十六条 悉ク書面ニ因テ証明セサル総テノ訟求ハ其名義ノ如何ヲ問ハス一通ノ召喚状ヲ以テ之ヲ為ス可シ其召喚後ハ書証在ラザル他ノ訟求ハ之ヲ受理セス 第千三百四十七条 前数条ノ規則ハ書証ノ端緒アル時ハ例外ナリトス 書証ノ端緒トハ訟求ヲ受ケタル者又ハ其代理スル本人ヨリ出テタル書ニシテ主張{原告人ノ}スル事件ヲ真実ナリト思惟セシムルモノヲ云フ 第千三百四十八条 前数条ノ規則ハ亦権利者カ自己ニ対シテ他人ノ約シタル義務ノ書証ヲ得ル能ハサリシ総テノ場合ニ於テハ例外ナリトス 此第二ノ例外ハ左ノ件々ニ適用ス 第一 准契約及ヒ犯罪又ハ准犯罪ヨリ生スル義務 第二 火災、崩潰、騒擾又ハ破船ノ際ニ為シタル必須ノ附託及ヒ旅舎ニ投宿スル旅人ノ為シタル附託但シ何レモ人ノ身分ト事ノ状況トニ従フ可シ 第三 証書ヲ記スルコトヲ得可カラサリシ不虞ノ変災《アグシダン》ノ際ニ約シタル義務 第四 権利者カ天災《フォルスマジュール》ニ因テ生シタル不虞ノ意外《カーフォルチュイー》ノ変ニ因リ書証ト為ス可キ証書ヲ紛失シタル場合 第三款 測推 第千三百四十九条 推測トハ法律又ハ裁判官カ分明ナル事ヨリ不分明ナル事ニ引致スル結果ヲ云フ 第一節 法律ニ因テ定ムル推測 第千三百五十条 法律上ノ推測トハ別段ノ法律ニ因リ或ル所為又ハ或ル事件ニ擬当スルモノヲ云フ即チ左ノ如シ 第一 所為ノ性質ノミニ因テ法律ノ規則ニ背キテ為シタリト推測セラレタリトシ法律ニ於テ無効ト為ス所為 第二 法律ニ於テ定マリタル或ル事情ニ因リ所有権又ハ免釈{義務ノ}ヲ生シタリト為ス場合 第三 法律ニ於テ既判事件ニ附シタル効力 第四 法律ニ於テ一方ノ者ノ自認又ハ矢誓ニ附シタル効力 第千三百五十一条 既判事件ノ効力ハ裁判ノ目的タルモノニ付テノミ存スルモノトス故ニ訟求シタル事物ノ同一ナルコト、訟求ノ同一ノ原由ニ基クコト、訟求ノ同一ノ訴訟人間ニ同一ノ資格ヲ以テ同一ノ訴訟人ヨリ同一ノ訴訟人ニ対シテ生セシコトヲ要ス 第千三百五十二条 法律上ノ推測ハ其利益ヲ受クル者ニハ証拠ヲ立ルコトヲ免ス 法律上ノ推測カ其基本ニ従ヒ或ル所為ヲ取消シ又ハ訴権ヲ排却スル時ハ其推測ニ対シテ何ノ証拠ヲモ立ルヲ許サス但シ反証ヲ許ス場合及ヒ矢誓及ヒ裁判上ノ自認ニ付キ後ニ記スル所ハ此限ニ在ラストス 第二節 法律ニ因テ定メサル推測 第千三百五十三条 法律ニ因テ定メサル推測ハ裁判官ノ知識ト思慮トニ任ス裁判官ハ法律ニ於テ人証ヲ許ス場合ノミニ於テ且ツ重要、確詳、符合ノ推測ニ非サレハ為ス可カラス但シ所為カ詐欺ヲ原由トシテ訟撃セラルル時ハ此限ニ在ラストス 第四款 一方ノ者ノ自認 第千三百五十四条 一方ニ対抗セラルル自認ニハ裁判所外ニ於ケルモノアリ裁判所ニ於ケルモノアリ 第千三百五十五条 裁判所外ニ於ケル純然ノ言詞上ノ自認ノ申立ハ人証ヲ許ササル訟求ニ付テハ常ニ無用ナリトス 第千三百五十六条 裁判所ニ於ケル自認トハ一方又ハ其部理代人ノ裁判所ニ於テ為ス陳述ヲ云フ 其自認ハ之ヲ為シタル者ニ対シテ確信アリトス 其自認ハ之ヲ為シタル者ニ対シテ之ヲ分ツコトヲ得ス 其自認ハ事実上ノ錯誤ニ因リ為シタルコトヲ証セサルニ於テハ之ヲ取消スヲ得ス又法律上ノ錯誤ヲ口実トシテ之ヲ取消スヲ得ス 第五款 矢誓 第千三百五十七条 裁判所ニ於ケル矢誓ニ二種アリ 第一 一方カ訴訟ノ裁判ヲ依拠セシムル為メ他ノ一方ニ求ムルモノ、之ヲ審決的ト云フ 第二 裁判官職権ヲ以テ訴訟人ノ一方又ハ他方ニ命スルモノ 第一節 審決ノ矢誓 第千三百五十八条 審決ノ矢誓ハ訟争ノ種類如何ヲ問ハス之ヲ求ムルヲ得 第千三百五十九条 審決ノ矢誓ハ求メヲ受ケタル一方ノ一身上ノ事件ニ付テノミ之ヲ求ムルヲ得 第千三百六十条 審決ノ矢誓ハ之ヲ求ムヘキノ訟求又ハ排訴ニ付キ証拠ノ端緒ナキ時ト雖トモ何時ニテモ之ヲ求ムルヲ得 第千三百六十一条 矢誓ノ求メヲ受ケ之ヲ拒ミ若クハ之ヲ其対手ニ反求スルコトヲ諾セサル者又ハ矢誓ヲ反求セラレテ之ヲ拒ミタル対手ハ其訟求又ハ其排訴ニ付キ敗訴ス可シ 第千三百六十二条 矢誓ハ其目的タル事件カ訴訟人双方ニ関スルニ非スシテ唯矢誓ヲ求メラレタル一方ノ一身ニノミ関スル時ハ之ヲ反求スルヲ得ス 第千三百六十三条 求メ又ハ反求セラレタル矢誓ヲ為セシ時ハ対手ニ其詐偽タルコトヲ証スルヲ許サス 第千三百六十四条 矢誓ヲ求メ又ハ反求シタル者ハ対手カ其矢誓ヲ為スノ用意ヲ為セシ旨ヲ陳述セシ時ハ最早之ヲ取消スヲ得ス 第千三百六十五条 為シタル矢誓ハ之ヲ求メタル者ノ為メ又ハ之レニ対シ及ヒ其相続人及ヒ承権人ノ為メ又ハ之レニ対シテノミ証ト為ル可シ 然レトモ連帯権利者ノ一人ヨリ義務者ニ求メタル矢誓ハ之ヲ求メタル権利者ノ部分ニ付テノミ義務者ヲ免釈ス 主タル義務者ニ求メタル矢誓ハ保証人ヲモ免釈ス 連帯義務者ノ一人ニ求メタル矢誓ハ共同義務者ニ益ス 保証人ニ求メタル矢誓ハ主タル義務者ニ益ス 右ノ後二項ノ場合ニ於テハ連帯義務者及ヒ保証人ノ矢誓ハ負債ニ付キ之ヲ求メラレタル場合ニ於テノミ他ノ共同義務者又ハ主タル義務者ニ益シ連帯又ハ保証ノ事実上ニ付キ矢誓ヲ求メラレタル場合ニ於テハ益セス 第二節 職権ヲ以テ命スル矢誓 第千三百六十六条 裁判官ハ訴訟ノ判決ヲ依拠スル為メ又ハ唯々言渡ノ金額ヲ定ムル為メ訴訟人ノ一方ニ矢誓ヲ命スルヲ得 第千三百六十七条 裁判官ハ左ノ二条件ニ依ルニ非サレハ訟求又ハ訟求ニ対抗スル排訴ニ付キ職権ヲ以テ矢誓ヲ命スルヲ得ス 第一 訟求又ハ排訴ノ充分ニ証明セラレサルコト 第二 訟求又ハ排訴ノ全ク証拠ナキニ非サルコト 此二箇ノ場合ノ外ハ裁判官ハ単純ニ訟求ヲ受理シ又ハ却下ス可シ 第千三百六十八条 裁判官ノ職権ヲ以テ訴訟人ノ一方ニ命シタル矢誓ハ其一方ヨリ他ノ一方ニ反求スルヲ得ス 第千三百六十九条 訟求シタル物件ノ価額ニ付テノ矢誓ハ他ノ方法ヲ以テ価額ヲ判定スル能ハサル時ニ非サレハ裁判官ヨリ原告人ニ命スルヲ得ス 此場合ニ於テハ裁判官ハ幾何ノ金額ニ至ル迄原告人ノ矢誓ヲ信ス可キヤヲモ定ム可シ 第四巻 契約ナクシテ生スル義務(千八百四年二月九日決定同月十九日頒布) 第千三百七十条 或ル義務ハ義務ヲ負フ者ノ方ヨリモ之ヲ負ハシムル者ノ方ヨリモ何等ノ契約ヲ為スコトナクシテ生ス 其義務ノ一種ハ法律ノ効力ノミニ因テ生シ他ノ一種ハ義務ヲ負フ者ノ一身上ノ所為ニ因テ生ス 第一種ノ義務ハ相隣接スル所有者間ノ義務又ハ自己ニ任セラレタル職務ヲ拒辞スルコトヲ得サル後見人及ヒ其他ノ管理人ノ義務ノ如キ意思外ニ生シタルモノナリトス 義務ヲ負フ者ノ一身上ノ所為ヨリ生スル義務ハ准契約、犯罪又ハ准犯罪ニ因テ生ス此義務ハ本巻ノ目的トスル所ナリ 第一章 准契約 第千三百七十一条 准契約トハ全ク人ノ好意上ノ所為ニシテ之ニ依テ外人ニ対シテ或ル義務ヲ生シ又時トシテハ双方ノ間ニ相互ノ義務ヲ生スルモノヲ伝フ 第千三百七十二条 若シ好意上他人ノ事務ヲ管理スル時ハ所有者其管理ヲ識知スルモ又ハ之ヲ識知セサルモ管理者ハ所有者自ラ管理ヲ為スヲ得ルニ至ル迄其着手シタル管理ヲ継続シ且ツ之ヲ成就スル黙然ノ義務ヲ約セリトス又管理者ハ自ラ其事務ノ諸般ノ附帯事件ヲ担任ス可シ 管理者ハ所有者カ己レニ為シタル格段ノ委任ニ因テ生スル所ニ等シキ諸般ノ義務ヲ負担ス可シ 第千三百七十三条 管理者ハ事務ノ成就前ニ所有者ノ死去シタル時ト雖トモ相続人其管理ヲ為スヲ得ルニ至ル迄ハ管理ヲ継続スルノ義務アリ 第千三百七十四条 管理者ハ事務ノ管理ニ付キ良家父ノ為ス可キ諸般ノ注意ヲ為スノ義務アリ 然レトモ管理者自ラ事務ヲ担任スルニ至リタル事情ニ因リ裁判官ハ管理者ノ過失又ハ懈怠ニ因テ生シタル損害賠償ヲ軽減スルヲ得 第千三百七十五条 事務ヲ能ク管理セラレタル所有者ハ管理者カ自己ノ名ニテ約シタル義務ヲ履行シ管理者ノ為シタル一身上ノ総テノ義務ニ付キ之ニ其賠償ヲ為シ又管理者ノ為シタル有益又ハ必要ノ諸費用ヲ之ニ弁償ス可シ 第千三百七十六条 収受ス可ラサルモノヲ錯誤ニ因リ若クハ情ヲ知テ収受スル者ハ弁済スルノ義務ナクシテ弁済ヲ為シタル者ニ之ヲ還給ス可シ 第千三百七十七条 錯誤ニ因リ自ラ負債主ナリト信スル者負債ヲ弁済セシ時ハ権利者ニ対シテ還給ヲ要ムルノ権アリ 然レトモ此権利ハ権利者カ弁済ヲ得タルカ為メニ其証書ヲ滅却シタル場合ニ於テハ消滅ス可シ但シ弁済ヲ為シタル者ハ真ノ義務者ニ対シテ要償権ヲ有ス 第千三百七十八条 収受シタル者ノ方ニ悪意アリシ時ハ元金ト弁済ノ日ヨリノ利息又ハ菓実トヲ還給ス可シ 第千三百七十九条 不当ニ収受シタル物件若シ不動産又ハ有形ノ動産ナル時ハ之ヲ収受シタル者ハ其存在スルニ於テハ之ヲ実物ニテ還給シ物件若シ其過失ニ因テ滅失毀損セシニ於テハ其価額ヲ還給ス可シ若シ又悪意ヲ以テ之ヲ収受シタル時ハ意外ノ変ニ因ル其滅失ノ担保者ナリトス 第千三百八十条 善意ヲ以テ収受シタル者物件ヲ売却シタル時ハ売却ノ価額ニ非サレハ還給スルニ及ハス 第千三百八十一条 物件ノ還給ヲ得タル者ハ悪意ノ占有者ニ対シテモ物件保存ノ為メニ為シタル必要及ヒ有益ノ諸費用ヲ計算ス可シ 第二章 犯罪及ヒ准犯罪 第千三百八十二条 凡ソ人ノ所為ニシテ他人ニ損害ヲ起スモノハ其過失ニ因リ損害ヲ来シタル者ヨリ其賠償ヲ為サシム 第千三百八十三条 何人モ其所為ニ因テノミナラス尚ホ其懈怠又ハ不注意ニ因テ生シタル損害ノ責ニ任ス可シ 第千三百八十四条 何人モ其所為ニ因テノミナラス尚ホ己レ其責ニ任ス可キ人又ハ自ラ看守スル物件ノ所為ニ因テ生シタル損害ノ責ニ任ス可シ 父及ヒ夫ノ死後ニ於テハ母ハ已レト共ニ住居スル幼年ノ子ノ起シタル損害ノ責ニ任ス可シ 主人及ヒ傭主ハ其僕婢及ヒ傭人カ自己ヨリ命シタル執務中ニ起シタル損害ノ責ニ任ス可シ 教師及ヒ工師ハ其学生及ヒ技生カ自己ノ監督スル時間ニ起シタル損害ノ責ニ任ス可シ 以上ノ責任ハ父母教師及ヒ工師カ其責任ヲ生シタル所為ヲ防止スルヲ得サリシコトヲ証セサル場合ニ於テノミ生ス可シ 第千三百八十五条 獣類ノ所有者又ハ之ヲ使用スル者ハ其使用ノ間ハ其看守中ナルト其遁逸中ナルトヲ問ハス獣類ノ起シタル損害ノ責ニ任ス可シ 第千三百八十六条 建造物ノ所有者ハ保存ノ欠缺又ハ建築ノ粗悪ニ因テ崩潰ヲ来シタル時ハ其崩潰ニ因テ生シタル損害ノ責ニ任ス可シ 第五巻 婚姻財産契約及ヒ夫婦相互ノ権利(千八百四年二月十日決定同月二十日頒布) 第一章 総則 第千三百八十七条 法律ハ別段ノ契約ノ欠缺スル時ニ非サレハ財産ニ関シテ夫婦ノ結合ヲ管理セス夫婦ハ風俗ニ反セス且ツ以下ノ更改ニ従フ以上ハ其適当ト思惟スル所ニ従ヒ別段ノ契約ヲ為スヲ得 第千三百八十八条 夫婦ハ婦及ヒ子ノ身上ニ夫権ヨリ生シ又ハ家長トシテ夫ニ属スル権利、父権ノ巻及ヒ幼年、後見及ヒ後見免除ノ巻ニ因テ夫婦中ノ遺存者ニ附与シタル権利及ヒ本法ノ禁止スル規則ニ違背スルヲ得ス 第千三百八十九条 夫婦ハ其子又ハ卑属親ノ相続ニ付キ自己ニ関スルト其子相互ニ関スルトヲ問ハス相続ノ法律上ノ順序ヲ変更スルヲ目的トスル何ノ約束又ハ何ノ放棄ヲモ為スヲ得ス但シ此規則ト本法ニ定メタル法式及ヒ場合トニ循ヒ為スヲ得ル生者間又ハ遺嘱ノ贈遺ト抵触スルコトナカル可シ 第千三百九十条 夫婦ハ是迄仏蘭西国ノ各部ヲ支配シ本法ニ因テ廃止セラレタル地方ノ慣習、法律又ハ規則ノ一ニ因テ其結合ヲ規定スヘキヲ最早一般ノ方法ヲ以テ要約スルヲ得ス 第千三百九十一条 然レトモ夫婦ハ或ハ共通法ヲ以テ或ハ嫁資法ヲ以テ婚姻セント欲スル旨ヲ一般ノ方法ヲ以テ陳述スルヲ得 第一ノ場合ニテ共通法ヲ以テスルトキハ夫婦及ヒ其相続人ノ権利ハ本巻第二章ノ規則ニ因テ之ヲ規定ス 第二ノ場合ニテ嫁資法ヲ以テスルトキハ其権利ハ第三章ノ規則ニ因テ之ヲ規定ス (千八百五十年七月十日追加)然レトモ若シ婚姻執行証書ニ夫婦契約{財産上ノ}ナク婚姻セシ旨ヲ記スル時ハ婦ハ外人ニ対シテ普通法ノ規則ニ循ヒ契約ヲ為スノ能力アル者ト看做サル可シ但シ婦其義務{外人ニ対シテ}ヲ包含スル証書中ニ婚姻財産契約ヲ為シタリト陳述セシ時ハ此限ニ在ラス 第千三百九十二条 婦自ラ財産ヲ嫁資ト為シ若クハ婦ニ財産ヲ嫁資ト為スノ単純ナル要約ハ此事ニ付キ婚姻財産契約書中ニ明然ノ陳述アル時ニ非サレハ其財産ヲ嫁資法ニ従ハシムルニ足ラストス 又嫁資法ニ従ハシムルコトハ夫婦ノ共通ナク婚姻シ又ハ財産ヲ分割スル旨ノ単純ナル陳述ニ因テモ生セス 第千三百九十三条 共通法ニ背反シ又ハ之ヲ変更スル別段ノ要約ナキ時ハ第二章ノ第一部ニ定メタル規則ヲ以テ仏蘭西ノ普通法トス 第千三百九十四条 総テ婚姻財産上ノ契約ハ婚姻前ニ公証人ノ面前ニ於テ之ヲ証書ニ記ス可シ (千八百五十年七月十日追加)公証人ハ第千三百九十一条ノ末項ト本条ノ末項トヲ双方ニ読聞ス可シ○其読聞カセタルコトハ契約書中ニ之ヲ附記ス可シ其附記ヲ為ササリシ公証人ニ対シテハ十「フラン」ノ罰金ヲ言渡ス可シ 公証人ハ契約書ニ手署スル時ニ於テ其氏居住ノ地及ヒ夫婦トナラントスル者ノ氏名、身分、住所及ヒ契約ノ日附ヲ記シタル無税ノ零紙ノ証状ヲ双方ニ渡ス可シ其証状ニハ婚姻執行前ニ之ヲ身分取扱役ニ呈出ス可キコトヲモ記ス可シ 第千三百九十五条 総テ婚姻財産上ノ契約ハ婚姻執行後ニ何ノ変更ヲモ為スヲ得ス 第千三百九十六条 婚姻執行前ニ其財産契約ニ付キ為シタル変更ハ婚姻財産契約ト同一ノ法式ニ従ヒ記シタル証書ヲ以テ証明ス可シ 加之何等ノ変更又ハ反約証書ト雖トモ婚姻財産契約ニ参関シタル諸人ノ立会及ヒ其同時ノ承諾ナキニ於テハ無効ナリトス 第千三百九十七条 前条ニ記シタル法式ヲ具シタル総テノ変更及ヒ反約証書ト雖トモ婚姻財産契約ノ正本ノ末尾ニ之ヲ記載セサルニ於テハ外人ニ対シテ無効ナリトス公証人ハ変更又ハ反約証書ヲ末尾ニ登記セスシテ婚姻財産契約ノ大字謄本ヲモ其他ノ謄本ヲモ渡スコトヲ得ス若シ之ニ違背スル時ハ関係人ニ損害賠償ヲ為ス可キノ言渡ヲ受ケ尚ホ他ニ理由アル時ハ更ニ重罰ニ処セラル可シ 第千三百九十八条 婚姻ヲ契約スル能力アル幼者ハ其契約ニ関スル諸般ノ約束ヲ承諾スルノ能力アリトス又幼者ノ其婚姻ニ付キ為シタル約束及ヒ贈遺ハ婚姻ノ有効ノ為メ承諾ヲ要スル者ノ立会ヲ以テ其契約ヲ為シタルニ於テハ有効ナリトス 第二章 財産共通法 第千三百九十九条 財産共通ハ法律上タルト約束上タルトヲ問ハス身分取扱役ノ面前ニ於テ婚姻ヲ執行シタル日ヨリ始マルモノトス他ノ時期ニ於テ財産共通ノ始マルコトヲ要約スルヲ得ス 第一部 法律上ノ財産共通 第千四百条 財産共通法ヲ以テ婚姻ヲ為スノ単純ナル陳述ニ因リ設定シ又ハ契約ナクシテ設定シタル財産共通ハ下ノ六款ニ記シタル規則ニ循フ可シ 第一款 施的《アクチーブマン》及ヒ受的《パツシーブマン》ニ共通財産ヲ組成スル事 第一節 共通ノ施的《アクチーフ》ノモノ 第千四百一条 共通財産ハ施的上左ノ物件ヲ以テ組成ス 第一 婚姻執行ノ日ニ夫婦ノ占有セシ総テノ動産及ヒ婚姻中ニ相続又ハ贈遺ニ因リ夫婦ニ帰属スル総テノ動産但シ贈遺者反対ヲ記スル時ハ此限ニ在ラス 第二 婚姻執行ノ時ニ於テ既ニ夫婦ニ属セシ財産又ハ婚姻中ニ名義ノ如何ヲ問ハス夫婦ニ帰属シタル財産ヨリ生シテ婚姻中ニ期限ニ至リ又ハ収取シタル各性質ノ総テノ果実、入額、利息及ヒ賦額 第三 婚姻中ニ獲得シタル総テノ不動産 第千四百二条 総テノ不動産ハ夫婦ノ一方カ婚姻前ニ所有権又ハ法律上ノ占有ヲ有セシカ又ハ其後相続又ハ贈遺ニ因リ一方ニ帰属シタルコトヲ証セサルニ於テハ共通ノ獲得物ト看做ス可シ 第千四百三条 伐採スヘキ樹木及ヒ石坑金属砿ノ産物ハ収実権使用権及ヒ住居権ノ巻ニ記シタル規則ニ循ヒ収実物ト看做ス可キモノタルニ於テハ共通財産中ニ入ル可シ 此規則ニ循ヒ財産共通ノ間ニ為スヲ得可カリシ樹木ノ伐採ヲ為ササリシ時ハ土地ノ所有者ニ非サル一方{夫婦ノ}又ハ其相続人ニ補償ヲ為ス可シ 婚姻中ニ石坑及ヒ金属砿ヲ開鑿セシ時ハ其産物ハ夫婦中ニテ補償又ハ賠償ヲ受クルヲ得可キ者ニ補償又ハ賠償ヲ為スニ非サレハ共通財産中ニ入ラス 第千四百四条 婚姻執行ノ日ニ夫婦ノ占有シ又ハ婚姻中ニ相続ニ因テ夫婦ニ帰属スル不動産ハ共通財産中ニ入ラス 然レトモ夫婦ノ一方若シ共通ノ要約ヲ載セタル婚姻財産契約ノ後ニシテ婚姻執行ノ前ニ不動産ヲ獲得セシ時ハ此時間中ニ獲得シタル不動産ハ共通財産中ニ入ル可シ但シ婚姻ノ或ル約款ヲ執行シテ其獲得ヲ為シタル時ハ此限ニ在ラス此場合ニ於テハ約束ニ従テ其獲得ヲ規定ス 第千四百五条 婚姻中ニ夫婦ノ一方ノミニ為シタル不動産ノ贈遺ハ共通財産中ニ入ラスシテ受贈者ノミニ属ス但シ贈遺物ノ共通財産ニ属ス可キコトヲ明ラカニ贈遺証書ニ記セシ時ハ此限ニ在ラス 第千四百六条 父母其他尊属親、夫婦ノ一人ニ対シテ負担スルモノニ充ツル為メ又ハ外人ニ対シテ己レノ負債ヲ弁済スルコトヲ負担セシムル為メ夫婦ノ一方ニ委棄シ又ハ譲与シタル不動産ハ共通財産中ニ入ラス但シ補償又ハ賠償ヲ為スハ格別ナリトス 第千四百七条 夫婦ノ一方ニ属スル不動産トノ交換ニ因リ婚姻中ニ獲得シタル不動産ハ共通財産中ニ入ラスシテ譲与シタル不動産ニ代替ス但シ補充金アル時其補償ヲ為スハ格別ナリトス 第千四百八条 夫婦ノ一方カ未分所有者タリシ不動産ノ一部ニ付キ未分物《リシタシヨン》競売其他ノ方法ニ因リ婚姻中ニ為シタル獲得ハ共同獲得物ヲ為サス但シ其獲得ノ為メ共通財産中ヨリ供給シタル金額ヲ共通財産ニ賠償スルハ格別ナリトス 夫若シ未分ニテ婦ニ属シタル不動産ノ全部若クハ一部ニ付キ唯一人自己ノ名ヲ以テ獲得者又ハ競買人トナリシ場合ニ於テハ婦ハ財産共通解除ノ際ニ当リテ其物件ヲ共通財産ニ委付シ共通財産ヲシテ己レニ対シテ其代価中己レニ属スル部分ノ負債主タラシムルカ若クハ獲得ノ代価ヲ共通財産ニ償還シテ不動産ヲ取戻スノ撰択権ヲ有ス 第二節 共通ノ受的《バツシーフ》ノモノ及ヒ共通財産ニ対シテ之レヨリ生スル訴権 第千四百九条 共通財産ハ受的上左ノモノヲ以テ組成ス 第一 夫婦カ其婚姻執行ノ日ニ既ニ負フタル動産上ノ負債又ハ婚姻中ニ夫婦ニ帰属スル相続ノ負担シタル動産上ノ負債但シ夫婦ノ一方ニ専属スル不動産ニ関スル負債ニ付キ補償ヲ為スハ格別ナリトス 第二 財産共通ノ間ニ夫ノ契約シ又ハ夫ノ許諾ヲ得テ婦ノ契約シタル元金及ヒ賦額又ハ利息上ノ負債但シ補償ヲ為ス可キ場合ニ於テ之ヲ為スハ格別ナリトス 第三 夫婦各々一身ニ関スル年金又ハ負債ノ賦額及ヒ利息 第四 共通財産中ニ入ラサル不動産ノ収実権上ノ修理 第五 夫婦ノ養料、子ノ給養教育費其他総テ婚姻中ノ負担 第千四百十条 共通財産ハ婚姻前ニ婦ノ契約シタル動産上ノ負償ニ付テハ其負債カ婚姻前ノ公正証書ニ因テ生シ又ハ登記若クハ其証書ノ手署人一人若クハ数人ノ死去ニ因リ婚姻前ニ確実ナル日附ヲ受ケタル時ニ非サレハ之ヲ負担スルニ及ハス 婦ノ権利者ハ婚姻前ニ確実ナル日附ヲ記セサル証書ニ因リ婦ノ一身上ノ不動産ノ虚有権ヲ以テスルニ非サレハ婦ニ対シテ其{負債}弁済ヲ訴フルヲ得ス 此性質ノ負債ヲ婦ノ為メニ弁済シタリト主張スル夫ハ婦ニモ其相続人ニモ其補償ヲ要求スルヲ得ス 第千四百十一条 婚姻中ニ夫婦ニ帰属シタル単純ノ動産上ノ相続ノ負債ハ総テ共通財産ノ負担ナリトス 第千四百十二条 婚姻中ニ夫婦ノ一方ニ帰属スル単純ノ不動産上ノ相続ノ負債ハ共通財産ノ負担タラストス但シ権利者カ其相続ノ不動産ヲ以テ其弁済ヲ訴フルノ権ヲ有スルハ格別ナリトス 然レトモ相続若シ夫ニ帰属セシ時ハ相続ノ権利者ハ夫ニ専属スル総テノ財産ヲ以テモ又共通ノ総テノ財産ヲ以テモ其弁済ヲ訴フルヲ得但シ此第二ノ場合{共通ノ財産ヲ目的トスル場合}ニ於テ婦又ハ其相続人ニ為スヘキ補償ヲ為スハ格別ナリトス 第千四百十三条 単純ノ不動産上ノ相続若シ婦ニ帰属シ婦其夫ノ許諾ヲ得テ之ヲ領承セシ時ハ相続ノ権利者ハ婦ノ一身上ノ総テノ財産ヲ以テ弁済ヲ訴フルヲ得然レトモ婦其夫ノ拒ミニ於テ裁判所ノ允許ニ依テ相続ヲ領承セシ時ハ権利者ハ相続不動産不足ノ場合ニ於テハ婦ノ一身上ノ他ノ財産ノ虚有権ヲ以テノミ弁済ヲ訴フルヲ得 第千四百十四条 夫婦ノ一方ニ帰属シタル相続一部ハ動産ニシテ一部ハ不動産ナル時ハ相続ノ受ケタル負債ハ不動産ノ価額ニ比照シタル動産ノ価額ニ准シテ其負債ノ中動産ノ分担ス可キ部分ノ高ニ至ル迄ノ外共通財産ノ負担ニ帰セス 其分担ス可キ部分ハ相続若シ夫ノ一身上ニ関スル時ハ自己ノ権ヲ以テ若シ又婦ニ帰属スル相続ニ関スルトキハ婦ノ行為ヲ指揮シ又許諾セリトシテ夫ノ作成セシム可キ目録ニ従テ之ヲ規定ス 第千四百十五条 目録ノ欠缺シテ其欠缺ノ婦ニ損害トナル総テノ場合ニ於テ婦又ハ其相続人ハ財産共通解除ノ時ニ於テ当然補償ヲ訴フルヲ得ルノミナラス証書家内ノ書類及ヒ証人ヲ以テ又必要ナルニ於テハ世評ニ因テ目録ニ記載セサリシ動産ノ組立ト其価額トヲ証スルヲ得 夫ハ決シテ此証ヲ立ツルヲ許サス 第千四百十六条 第千四百十四条ノ規則ハ一部ハ動産ニシテ一部ハ不動産タル相続ノ権利者カ相続ノ夫ニ帰属シタルト婦其夫ノ許諾ヲ得テ領承ヲ為シタル時婦ニ帰属シタルトヲ問ハス共通ノ財産ヲ以テ其弁済ヲ訴フルノ妨碍トナルコトナシ但シ相互ノ補償ハ格別ナリトス 婦カ裁判所ノ允許ニ依テ相続ヲ領承シ而〆予メ記シタル目録ナクシテ其動産ノ共通ノ動産ト混淆セシ時モ同前ナリトス 第千四百十七条 婦其夫ノ拒ミニ於テ裁判所ノ允許ニ依テ相続ヲ領承シ又其目録アル時ハ権利者ハ其相続ノ動産及ヒ不動産ヲ以テノミ其弁済ヲ訴フルヲ得若シ其不足ノ場合ニ於テハ婦ノ一身上ノ他ノ財産ノ虚有権ヲ以テノミ其弁済ヲ訴フルヲ得 第千四百十八条 第千四百十一条以下ニ定メタル規則ハ相続ヨリ生シタル負債ノ如ク贈遺ニ属シタル負償ヲ管理ス 第千四百十九条 権利者ハ婦カ夫ノ許諾ヲ得テ契約シタル負債ニ付テハ共通ノ総テノ財産及ヒ夫又ハ婦ノ総テノ財産ヲ以テ其弁済ヲ訴フルヲ得但シ共通財産ニ為スヘキ補償又ハ夫ニ為スヘキ賠償ヲ為スハ格別ナリトス 第千四百二十条 夫ノ総理又ハ部理ノ委任ニ因リ婦ノ契約シタル総テノ負債ハ共通財産ノ負担ナリトス権利者ハ婦ニ対シテモ其一身上ノ財産ヲ以テモ其弁済ヲ訴フルヲ得ス 第二款 共通財産ノ管理及ヒ夫又ハ婦ノ所為ノ夫婦結合ニ関スル効果 第千四百二十一条 夫ハ一人ニシテ共通財産ヲ管理ス 夫ハ婦ノ助成ナク共通財産ヲ売却シ譲与シ又ハ書入質ト為スヲ得 第千四百二十二条 夫ハ共同ノ子ノ「エタブリスマン」{第二百四条ニ照ス可シ}ノ為メニ非サレハ共通ノ総不動産ヲモ動産ノ全部若クハ一部ヲモ無償ニテ生者間ノ贈遺ト為スヲ得ス 然レトモ夫ハ収実権ヲ貯存セサルニ於テハ何人ノ為メニモ無償且ツ特定ニテ動産物件ヲ贈遺スルヲ得 第千四百二十三条 夫ノ為シタル遺嘱ノ贈遺ハ共通財産中ノ其得分ヲ超過スルヲ得ス 夫若シ此法式ヲ以テ共通ノ物件ヲ贈遺シタル時ハ受嘱者ハ其物件カ分派ノ結果ニ因テ夫ノ相続ノ股分ニ入リタル時ニ非サレハ之ヲ実物ニテ要求スルヲ得ス物件若シ其相続人ノ股分ニ入ラサル時ハ受嘱者ハ共通財産中ニテ夫ノ相続人ノ得分及ヒ夫ノ一身上ノ財産ヲ以テ贈遺物件ノ全価額ノ補償ヲ受ク可シ 第千四百二十四条 准死ヲ提起セサル重罪ノ為メ夫ニ科セラレタル罰金ハ共通財産ヲ以テ追徴スルヲ得但シ婦ニ為スヘキ補償ヲ為スハ格別ナリトス○婦ニ科セラレタル罰金ハ財産共通ノ継続スル間ハ其一身上ノ財産ノ虚有権ヲ以テノミ追徴スルヲ得 第千四百二十五条 准死ヲ提起スル重罪ニ付キ夫婦ノ一方ニ対スル言渡ハ共通財産中ノ其得分及ヒ其一身上ノ財産ニ非サレハ衝撃セス 第千四百二十六条 夫ノ許諾ナクシテ婦ノ為シタル所為ハ裁判所ノ允許ヲ以テ為シタルモ婦カ公ケノ商人トシテ其商業ノ事ノ為メニ契約シタル時ニ非サレハ共通ノ財産ヲ拘束《アンガゼー》スルヲ得ス 第千四百二十七条 婦ハ其夫ヲ獄舎ヨリ出タス為メ又ハ夫ノ失踪ノ場合ニ於テ子ノ「エタブリスマン」ノ為メト雖トモ裁判所ノ允許ヲ得タル後ニ非サレハ義務ヲ約シ又ハ共通ノ財産ヲ拘束スルヲ得ス 第千四百二十八条 夫ハ婦ノ一身上ノ総テノ財産ノ管理権ヲ有ス 夫ハ一人ニテ婦ニ属スル動産上及ヒ占有上ノ訴権ヲ行フヲ得 夫ハ婦ノ承諾ナクシテ婦ノ一身上ノ不動産ヲ譲与スルヲ得ス 夫ハ保存ノ所為ノ欠缺ニ因テ生シタル婦ノ一身上ノ財産ノ損敗ニ付キ其責ニ任ス 第千四百二十九条 九年ニ超過スル時間夫一人ニテ其婦ノ財産ニ付キ為シタル土地賃貸ハ財産共通解除ノ場合ニ於テ若シ契約者カ第一起ノ《パリオード》九年内ニ在ル時ハ其期限内若シクハ第二起ノ期限内ニテ経過シ残ル時間ノ為メニ非サレハ婦又ハ其相続人ニ対シテ拘束スルノ力ナシトス其後ノ期限ニ付テモ亦同シ仍テ土地賃借人ハ其在ル所ノ九年ノ起ノ収益ヲ完了スルノ権ノミヲ有ス 第千四百三十条 夫一人ニテ田野ノ財産ニ関シ現時ノ賃貸ノ終了ヨリ三年以上前又家屋ニ関シ同時期コリ二年以上前ニ婦ノ財産ニ付キ為シ又ハ更新シタル九年又ハ其以下ノ賃貸ハ財産共通解除前ニ其執行ヲ始メサリシニ於テハ無効ナリトス 第千四百三十一条 共通財産又ハ夫ノ事務ノ為メ其夫ト連帯ニテ義務ヲ負フタル婦ハ夫ニ対シテハ保証人トシテ義務ヲ負ヒタリト看做ス可シ婦ハ其契約シタル義務ニ付キ賠償ヲ受ク可シ 第千四百三十二条 婦カ其一身上ノ不動産ニ付キ為シタル売却ヲ連帯ニテ又ハ其他ノ方法ヲ以テ担保スル夫ハ妨害ヲ受ケシニ於テハ共通財産中婦ノ得分又ハ婦ノ一身上ノ財産ヲ以テ婦ニ対シテ同シク要償権ヲ有ス 第千四百三十三条 夫婦ノ一方ニ属スル不動産ヲ売却シ又ハ夫婦ノ一方ニ専属スル不動産ニ対シテ負担スル地役ヲ金額ヲ以テ買戻{他人ヨリ}サレ其代価ヲ全ク再用スルコトナク共通財産中ニ加ヘタル時ハ売却シタル不動産又ハ買戻サレタル地役ノ所有者タリシ者ノ利益ノ為メ共通財産中ヨリ其代価ノ引去ヲ為ス可シ 第千四百三十四条 或ル獲得ノ時ニ当リテ夫カ其一身ニ属セシ不動産ノ譲与ニ因テ得タル金額ヲ以テ且ツ自己ノ再用ニ供スル為メニ其獲得ヲ為シタルコトヲ陳述シタル時ハ常ニ夫ニ関シテハ其再用ヲ為セリト看做ス可シ 第千四百三十五条 婦ノ売却シタル不動産ニ因リ得タル金額ヲ以テ且ツ其再用ニ供スル為メニ獲得ヲ為シタル旨ノ夫ノ陳述ハ婦カ其再用ヲ明確ニ承諾セサリシニ於テハ完全ナラストス婦其承諾ヲ為ササリシ時ハ財産共通解除ノ時ニ於テ止タ其売却シタル不動産ノ代価ノ補償ヲ得ルノ権ヲ有ス 第千四百三十六条 夫ニ属スル不動産ノ代価ノ補償ハ共通財産ノ合部ノミヲ以テ之ヲ執行シ婦ニ属スル不動産ノ代価ノ補償ハ共通財産不足ノ場合ニ於テハ夫ノ一身上ノ財産ヲ以テ之ヲ執行ス補償ハ総テノ場合ニ於テ譲与不動産ノ価額ニ関シテ何ノ主唱アルニ拘ハラス只売却ニ基キテ之ヲ為ス可シ 第千四百三十七条 夫婦ノ一方ニ専属スル不動産ノ代価若クハ其一部又ハ地役ノ買戻ノ如ク其一身上ノ負債又ハ負担ヲ弁済スル為メ或ハ其一身上ノ財産ノ取戻保存又ハ改良ノ為メ共通財産中ヨリ金額ヲ取用シタル時又概子夫婦ノ一方カ共通ノ財産ニ依テ一身上ノ利益ヲ得タル時ハ常ニ其補償ヲ為ス可シ 第千四百三十八条 父母相共ニ其共同ノ子ニ嫁資ヲ与ヘテ各々其分担ス可キ部分ヲ明示セサル時ハ共通ノ物件ヲ以テ之ヲ供給シ若クハ予約シタルト夫婦ノ一方ノ一身上ノ財産ヲ以テ之ヲ供給シ若クハ予約シタルトヲ問ハス父母ハ各自一半ツツ嫁資ヲ与ヘタリト看做ス可シ 第二ノ場合ニ於テ一身上ノ不動産若クハ物件ヲ嫁資ニ設定シタル一方ハ贈遺ノ時ニ於ケル贈遺物件ノ価額ニ准シ右嫁資ノ半額ニ付キ他ノ一人ノ財産ヲ以テ賠償ノ訴権ヲ有ス 第千四百三十九条 夫一人ニテ共通ノ物件ヲ以テ共同ノ子ノ為メニ設定シタル嫁資ハ共通財産ノ負担ナリトス而〆婦財産共通ヲ承諾シタル場合ニ於テハ夫カ特ニ嫁資ノ全部若クハ其一半以上ノ部分ヲ負担スル旨ヲ陳述セサリシ時ハ婦ハ其半額ヲ担当ス可シ 第千四百四十条 嫁資ノ担保ハ之ヲ設定シタル総テノ者ニテ之ヲ為ス可シ嫁資ノ利息ハ弁済ニ付キ期限アル時ト雖トモ婚姻ノ日ヨリ生ス但シ反対ノ要約アル時ハ此限ニ在ラス 第三款 財産共通ノ解除及ヒ其効果中ノ二三ノ者 第千四百四十一条 財産共通ハ第一実ノ死去第二准死第三離婚第四夫婦別居第五財産分割ニ因テ解除ス 第千四百四十二条 夫婦ノ一方ノ実ノ死去又ハ准死ノ後ニ目録ノ欠缺ハ財産共通ノ継続ヲ生セス但シ各関係人ハ共通ノ財産及ヒ物件ノ組立ニ関シ訴ヲ起シ証書又ハ世評ニ因テ其証ヲ為スヲ得 若シ幼年ノ子アル時ハ目録ノ欠缺ハ其他遺存配偶者ニ子ノ入額ノ収益権ヲ失ハシメ遺存配偶者ニ目録ヲ強テ作成セシメサリシ監察後見人ハ幼者ノ利益ノ為メニ宣告セラレ得ル総テノ言渡ヲ之ト連帯シテ負担ス可シ 第千四百四十三条 財産分割ハ婦ノ嫁資ノ危険ニ委セラレ又夫ノ事務錯乱ノ為メ夫ノ財産ヲ以テ婦ノ権利及ヒ回収権ニ充ツルニ足ラサルノ恐レアル時ニ於テ婦ヨリ裁判所ニ之レヲ訟求スルヲ得ルノミ 総テ任意ノ分割ハ効ナシトス 第千四百四十四条 財産分割ハ仮令裁判所ヨリ宣告シタル時ト雖トモ夫ノ財産ノ限度ニ至ル迄公正証書ヲ以テ実施シタル婦ノ権利及ヒ回収権ノ現実ノ弁済ニ因テ又ハ少クモ言渡ヨリ十五日内ニ始メテ其後中断セサリシ訟求ニ依テ之ヲ執行セサリシニ於テハ効ナシトス 第千四百四十五条 凡テ財産分割ハ其執行前ニ始審裁判所ノ重モナル廷堂ニ其用ニ供ヘタル榜板ニ掲示シテ公示ス可シ加之夫若シ商人若クハ銀行者タル時ハ其住所ノ地ノ商事裁判所ノ重モナル廷堂ニモ公告ス可シ之ヲ為ササル時ハ其執行ハ無効ニ属ス可シ 財産分割ヲ宣告スル言渡ハ其効果ニ付テハ訟求ノ日ニ追遡ス 第千四百四十六条 婦ノ一身上ノ権利者ハ其承諾ナクシテ財産分割ヲ訟求スルヲ得ス 然レトモ夫ノ商事分散又ハ民事分散ノ場合ニ於テハ婦ノ一身上ノ権利者ハ其債主権ノ高ニ至ル迄其義務者{婦ヲ指ス}ノ権利ヲ執行スルヲ得 第千四百四十七条 夫ノ権利者ハ其権利ヲ害シテ宣告セラレ且ツ執行セラレタル財産分割ニ対シテ上訴スルヲ得且又財産分割ノ訟求ヲ抗争スル為メ其訴訟ニ干渉スルコトヲ得 第千四百四十八条 財産分割ヲ得タル婦ハ其資力ト夫ノ資力トノ割合ニ従ヒ家事ノ費用及ヒ共同ノ子ノ教育費ヲ分担ス可シ 若シ夫ニ少シモ残存スルモノナキニ於テハ婦ハ全ク是等ノ費用ヲ担当ス可シ 第千四百四十九条 夫婦別居ト財産分割トヲ為シ又ハ財産分割ノミヲ為シタル婦ハ財産ノ自由管理権ヲ復収ス 婦ハ其動産ヲ処分シ又之ヲ譲与スルヲ得 婦ハ夫ノ承諾ナク又其拒ミニ於テハ裁判所ノ允許ナクシテ其不動産ヲ譲与スルヲ得ス 第千四百五十条 夫ハ財産ヲ分割シタル婦カ裁判所ノ允許ヲ得テ譲与シタル不動産ノ代価ノ使用又ハ再用ノ欠缺ニ付テハ担保者ニアラストス但シ夫カ契約ニ参関セシカ又ハ金額ヲ領収シ若クハ之ヲ巳レノ利益ニ転用セシ証アル時ハ此限ニ在ラス 夫ハ其立会ト承諾トヲ以テ売却ヲ為シタル時ハ使用又ハ再用ノ欠缺ノ担保者ナリトス然レトモ夫ハ使用ノ有益タルト否トニ付テハ担保者ニアラス 第千四百五十一条 夫婦別居ト財産分割トニ因リ又ハ財産分割ノミニ因リ解除シタル財産共通ハ双方ノ承諾ヲ以テ之ヲ復設スルヲ得 其財産共通ハ公証人ノ面前ニ於テ細字正本ニ記シタル証書ニ依ルニ非サレハ復設スルヲ得ス其正本ノ謄本ハ第千四百四十五条ノ法式ニ従ヒ掲示ス可シ 此場合ニ於テハ復設シタル財産共通ハ婚姻ノ日ヨリ其効ヲ復有シ総テノ事物ヲ財産ノ分割アラサリシ時ト同シキ状況ニ復ス但シ此規則ト分割ノ時間ニ第千四百四十九条ニ循ヒ婦ノ為シタル所為ノ執行ト抵触スルコトナカル可シ 夫婦カ以前ニ財産共通ヲ規定セシ約件ト異リタル約件ヲ以テ其財産共通ヲ復設スルノ約束ハ効ナシトス 第千四百五十二条 離婚ニ因リ又ハ夫婦別居ト財産分割トニ因リ又ハ財産分割ノミニ因リ生シタル財産共通ノ解除ハ婦ノ遺存ノ権利ヲ開始スルコトナシトス然レトモ婦ハ其夫ノ実ノ死去又ハ准死ノ時ニ於テ其権利ヲ行フノ権能ヲ保有ス 第四款 財産共通ノ承諾及ヒ財産共通ニ付キ為スヲ得可キ放棄並ニ之レニ関スル条件 第千四百五十三条 財産共通ノ解除後ニ婦又ハ其相続人及ヒ承権人ハ財産共通ヲ承諾シ又ハ之ヲ放棄スルノ権能ヲ有ス然レトモ反対ノ約束ハ総テ効ナシトス 第千四百五十四条 共通財産ニ干渉シタル婦ハ財産共通ヲ放棄スルヲ得ス 単純ノ管理上又ハ保存上ノ所為ハ干渉ヲ提起セス 第千四百五十五条 一証書中ニ共通者ノ資格ヲ取リタル丁年ノ婦ハ目録ヲ作成スル前ニ其資格ヲ取リタル時ト雖トモ夫ノ相続人ノ方ニ詐欺アラサルニ於テハ最早財産共通ヲ放棄シ又ハ其資格ヲ取消サシムルコトヲ得ス 第千四百五十六条 財産共通ヲ放棄スルノ権能ヲ保有セント欲スル遺存ノ婦ハ夫ノ死去ノ日ヨリ三月内ニ夫ノ相続人ト対待シテ又ハ之ヲ呼出シ其出席セサル上ニテ共通ノ総財産ノ誠実ニシテ精確ナル目録ヲ作成セシム可シ 其目録ハ其終結ノ時ニ当リ之ヲ記シタル公吏ノ面前ニ於テ婦ヨリ其真正誠実ナルコトヲ確証ス可シ 第千四百五十七条 婦ハ夫ノ死去ノ後三月ト四十日内ニ夫ノ住所アリシ郡ノ始審裁判所ノ書記局ニ於テ其放棄ヲ為ス可シ其証書ハ相続ノ放棄ヲ記スル為メニ設ケタル簿冊ニ登記ス可シ 第千四百五十八条 寡婦ハ事情ニ因リ其放棄ノ為メ前条ニ定メタル期限ノ猶預ヲ始審裁判所ニ要求スルヲ得此猶預ハ之ヲ允許スル理由アル時ハ夫ノ相続人ト対待シテ又ハ之ヲ呼出シ其出席セサル上ニテ宣告ス可シ 第千四百五十九条 上ニ記シタル期限内ニ放棄ヲ為ササリシ寡婦ハ少シモ干渉ヲ為サス又目録ヲ作成セシトキハ放棄ヲ為スノ権能ヲ喪失セス止タ放棄ヲ為スニ至リシ迄共通者トシテ訴ヲ受クルコトアルヘク又放棄ノ時迄巳レニ対シテ為シタル費用ヲ負担ス可キノミ 寡婦若シ三月前ニ目録ヲ終結セシ時ハ其終結ヨリ四十日ノ終了後ニ亦訴ヲ受クルコトアル可シ 第千四百六十条 共通財産中ノ或ル物件ヲ窃取シ又ハ蔵匿シタル寡婦ハ其放棄ニ拘ハラス共通者ト宣告セラル可シ其相続人ニ対シテモ同前ナリトス 第千四百六十一条 寡婦若シ目録ヲ作成シ又ハ終結シタルコトナクシテ三月ノ終了前ニ死去セシ時ハ相続人ハ寡婦ノ死去ノ時ヨリ目録ヲ作成シ又ハ終結スル為メ更ニ三月ト目録終結ノ後熟考ノ為メ四十日ノ期限ヲ有ス 寡婦若シ目録ヲ終結シテ死去セシ時ハ其相続人ハ熟考ノ為メ寡婦ノ死去ノ時ヨリ更ニ四十日ノ期限ヲ有ス 加之相続人ハ上ニ定メタル法式ニ循ヒ財産共通ヲ放棄スルヲ得第千四百五十八条及ヒ第千四百五十九条ハ相続人ニ適用ス可シ 第千四百六十二条 第千四百五十六条以下ノ規則ハ准死ノ始マリタル時ヨリ准死者ノ婦ニ適用ス可シトス 第千四百六十三条 確定ニ宣告シタル離婚又ハ別居ノ後三月ト四十日内ニ財産共通ヲ承諾セサリシ離婚又ハ別居シタル婦ハ其期限内ニ在リテ夫ト対待シテ又ハ之ヲ呼出シ其出席セサル上ニテ裁判所ニ於テ猶預ヲ得サリシニ於テハ財産共通ヲ放棄シタリト看做ス可シ 第千四百六十四条 婦ノ権利者ハ其権利ヲ害シテ婦又ハ其相続人ノ為シタル放棄ヲ訟撃シ己レノ権利ヲ以テ財産共通ヲ承諾スルヲ得 第千四百六十五条 寡婦ハ承諾スルト放棄スルトヲ問ハス目録ヲ作成シ熟考ヲ為ス為メ許与セラレタル三月ト四十日ノ間ニ適度ニ使用スルノ負担ヲ以テ現存スル貯品中ヨリ己レノ飲食料ト僕婢ノ飲食料トヲ取用シ若シ其欠缺スル時ハ共通財産合部ノ計算ニ於ル金額借入ニ依テ己レノ飲食料ト僕婢ノ飲食料トヲ取用スルノ権ヲ有ス 寡婦ハ此期限ノ間ハ共通財産ニ係ハル家屋又ハ夫ノ相続人ニ属スル家屋ニ住居ヲ為シタルカ為メニ何ノ借賃ヲモ払フニ及ハス又財産共通解除ノ時ニ於テ夫婦ノ住居セシ家屋カ借賃ヲ以テ持タレシ時ト雖トモ婦ハ右ノ期限間ハ借賃ノ弁済ヲ分担セス其借賃ハ合部中ヨリ之ヲ取用ス可シ 第千四百六十六条 婦ノ死去ニ因リ財産共通ノ解除スル場合ニ於テハ其相続人ハ法律ニ於テ遺存ノ婦ノ為メニ定メタル期限ト法式トニ従ヒ財産共通ヲ放棄スルヲ得 第五款 承諾ノ後共通財産ノ分派 第千四百六十七条 婦又ハ其相続人ノ財産共通ヲ承諾シタル後以下ニ定ムル方法ニ従ヒ施的件《アクチーフ》ハ之ヲ分派シ受的件《パッシーフ》ハ之ヲ負担ス 第一節 施的件ノ分派 第千四百六十八条 夫婦又ハ其相続人ハ本章第一部第二款ニ於テ前ニ記シタル規則ニ循ヒ補償又ハ賠償ノ名義ヲ以テ其共通財産ニ対シテ負担スル諸件ヲ現存スル財産ノ合部中ニ返還ス可シ 第千四百六十九条 夫婦ノ各自又ハ其相続人ハ共通財産中ヨリ引出シタル金額又ハ他婚ノ子ニ嫁資ヲ与ヘ又ハ一身ニテ共通ノ子ニ嫁資ヲ与フル為メ夫婦中ノ一方カ共通財産中ヨリ取用シタル財産ノ価額ヲ返還ス可シ 第千四百七十条 夫婦ノ各自又ハ其相続人ハ財産ノ合部中ヨリ左ノ物件ヲ先収ス 第一 共通財産中ニ入ラサル其一身上ノ財産ノ実物ニテ存スル時ハ其財産又ハ再用ノ為メニ獲得シタル財産 第二 財産共通ノ間ニ譲与シ而〆再用ヲ為ササリシ不動産ノ代価 第三 共通財産カ夫婦ノ各自又ハ其相続人ニ対シテ負担スル賠償 第千四百七十一条 婦ノ先収ハ夫ノ先収ノ前ニ之ヲ執行ス可シ 其先収ハ既ニ実物ニテ存在セサル財産ニ付テハ先ツ共通財産中ノ現金ヲ以テ次ニ動産ヲ以テ又補充トシテハ不動産ヲ以テ之ヲ執行ス此終リノ場合ニ於テハ不動産ノ撰択権ハ婦又ハ其相続人ニ属ス可シ 第千四百七十二条 夫ハ共通ノ財産ヲ以テスルニ非サレハ其回収権ヲ執行スルヲ得ス 婦及ヒ其相続人ハ共通財産不足ノ場合ニ於テハ夫ノ一身上ノ財産ヲ以テ其回収権ヲ執行ス 第千四百七十三条 共通財産カ夫婦ニ対シテ負担スル再用及ヒ補償及ヒ夫婦カ共通財産ニ対シテ負担スル補償及ヒ賠償ハ財産共通解除ノ日ヨリ当然利息ヲ生ス 第千四百七十四条 合部中ヨリ夫婦双方ノ総テノ先収ヲ執行シタル後其残余ハ夫婦又ハ之ヲ名代スル者ノ間ニ半額ツツ分派ス 第千四百七十五条 婦ノ相続人ノ中一人ハ財産共通ヲ承諾シ一人ハ之ヲ放棄スルカ如ク分離シタル時ハ承諾ヲ為シタル者ハ婦ノ股分ニ帰属スル財産中ニテ巳レノ分頭ニ相続ス可キ部分ニ非サレハ収取スルヲ得ス 其残余ハ夫ニ帰属シ夫ハ放棄ヲ為シタル相続人ニ対シ婦カ放棄ノ場合ニ於テ執行スルヲ得タルヘキ権利ヲ負担ス可シ但シ放棄者ノ分頭ニ相続ス可キ部分ノ高ニ至ル迄之ヲ負担スルノミ 第千四百七十六条 其他共通財産ノ分派ハ其法式、為スヘキトキハ不動産ノ未分物競売、分派ノ効果、分派ヨリ生スル担保及ヒ補足金ニ関スル総テノ件ニ付テハ共同相続人間ノ分派ニ付キ相続ノ巻ニ規定シタル規則ニ循フ可シ 第千四百七十七条 夫婦ノ中共通ノ或ル物件ヲ窃取シ又ハ蔵匿シタル者ハ其物件中巳レノ部分ヲ剥奪セラル可シ 第千四百七十八条 分派ノ成就セシ後ニ若シ夫婦中ノ一方ノ財産ノ代価ヲ他ノ一方ノ一身上ノ負債ヲ弁済スル為メ使用シタル時ノ如ク又ハ其他ノ原由ノ為メ他ノ一方ノ一身上ノ権利者トナル時ハ其一方ノ者ハ共通財産中ニテ他ノ一方ニ帰属シタル得分又ハ其一身上ノ財産ヲ以テ債主権ヲ執行ス可シ 第千四百七十九条 夫婦ノ一方ヨリ他ノ一方ニ対シテ執行ス可キ一身上ノ債主権ハ訟求ノ日ヨリナラテハ利息ヲ生セス 第千四百八十条 夫婦ノ一方ヨリ他ノ一方ニ為シタル贈遺ハ共通財産中贈遺者ノ得分及ヒ其一身上ノ財産ヲ以テノミ之ヲ執行ス可シ 第千四百八十一条 婦ノ喪服ハ先死セシ夫ノ相続人ノ費用タル可シ 其喪服ノ価額ハ夫ノ資産ニ准シテ之ヲ定ム可シ 財産共通ヲ放棄シタル婦ニ対シテモ之ヲ負担ス可シ 第二節 共通ノ受的件及ヒ負債ノ分担 第千四百八十二条 共通ノ負債ハ夫婦ノ各自又ハ其相続人ニテ半額ツツ負担ス可シ封印、目録、動産ノ売却、清算、未分物競売及ヒ分派ノ費用ハ其負債ノ一部ナリトス 第千四百八十三条 婦ハ夫ニ対スルト権利者ニ対スルトヲ問ハス善良誠実ナル目録アリテ又其目録ニ包含スルモノト分派ニ因テ己レニ帰属シタルモノトヲ計算スルニ於テハ其利得ノ高ニ至ル迄ノ外共通ノ負債ヲ負担スルニ及ハス 第千四百八十四条 夫ハ已レノ契約シタル共通ノ負債ニ付テハ其金額ヲ負担ス可シ但シ其半額ニ付キ婦又ハ其相続人ニ対シテ要償権ヲ有ス 第千四百八十五条 夫ハ婦ノ一身上ノ負債ニシテ共通財産ノ負担ニ帰シタルモノニ付テハ其半額ナラテハ負担スルニ及ハス 第千四百八十六条 婦ハ巳レノ権ヲ以テ約シタル負債ニシテ共通財産中ニ入リシモノニ関シテハ其全額ニ付キ訴ヲ受クルコトアル可シ但シ其半額ニ付キ夫又ハ其相続人ニ対シテ要償権ヲ有ス 第千四百八十七条 婦ハ共通ノ負債ニ付キ一身ニ義務ヲ負ヒタル時ト雖トモ其義務ノ連帯タラサルニ於テハ其負債ノ半額ノミニ付キ訴ヲ受クルコトアル可シ 第千四百八十八条 共通ノ負債ヲ半額以上弁済シタル婦ハ領収書ニ其弁済セシ所半額ナルコトヲ記セサリシニ於テハ超過額ニ付キ権利者ニ対シテ回収権ヲ有セス 第千四百八十九条 夫婦ノ中分派ニ因テ己レニ帰属シタル不動産ノ上ニ執行シタル書入質権ノ効ニ因リ共通ノ負債ノ金額ニ付キ訴ヲ受ケタル者ハ他ノ一方又ハ其相続人ニ対シ其負債ノ半額ニ付キ当然要償権ヲ有ス 第千四百九十条 前数条ノ規則ハ分派ニ因リ共同分派人ノ一人カ負債ノ半額ヨリ更ニ他ノ部分且ツ或ハ其全額ヲ弁済スルコトヲ負担スルノ妨クトナルコトナシトス 共同分派人ノ一人カ己レノ負担シタル部分外ニ共通ノ負債ヲ弁済シタル時ハ過分ニ弁済ヲ為シタル者ハ他ノ者ニ対シテ常ニ要償権ヲ有ス 第千四百九十一条 夫又ハ婦ニ関シ前数条ニ記シタルモノハ其一方又ハ他ノ一方ノ相続人ニ適用ス相続人ハ其名代スル一方ト同一ノ権利ヲ執行シ同一ノ訴権ニ従フ可シ 第六款 財産共通ノ放棄及ヒ其効果 第千四百九十二条 放棄ヲ為ス婦ハ共通ノ財産ニ付キ且ツ己レノ権ヲ以テ共通財産中ニ加ヘタル動産ニ付キ諸般ノ権利ヲ喪失ス 其婦ハ止タ其使用スル布類及ヒ衣服ヲ引取ルノミ 第千四百九十三条 放棄ヲ為ス婦ハ左ノ物件ヲ回収スルノ権ヲ有ス 第一 婦ニ属スル不動産ノ実物ニテ存スル時ハ其不動産又ハ再用ノ為メ獲得シタル不動産 第二 婦ノ不動産ヲ譲与シテ前ニ記シタル如ク其代価ヲ再用セス又再用ヲ承諾セサル其代価 第三 婦ニ対シテ共通財産ノ負担シ得ル総テノ賠償 第千四百九十四条 放棄ヲ為シタル婦ハ夫及ヒ権利者ニ対シテ共通ノ負債ノ分担ヲ免カル可シ然レトモ婦其夫ト合同シテ義務ヲ負ヒシ時又ハ現ニ共通ノ負債ト為リタル負債カ原ト婦ノ権ヲ以テ約シタルヨリ生スル時ハ権利者ニ対シテ義務ヲ負担ス可シ但シ婦ハ夫又ハ其相続人ニ対シテ要償権ヲ有ス 第千四百九十五条 放棄ヲ為シタル婦ハ共通財産及ヒ夫ノ一身上ノ財産ノ上ニ前ニ詳記シタル総テノ訴権及ヒ回収権ヲ執行スルヲ得 其相続人モ布類及ヒ衣服ノ先収並ニ目録ヲ作成シ熟考ヲ為ス為メ許与セラレタル時間ノ住居及ヒ飲食ニ関スルモノヲ除キ同上ノ権ヲ執行スルヲ得ヘシ此等ノ権利ハ単ニ遺存スル婦ノ一身ニ属スルモノトス 夫婦ノ一方又ハ双方前婚ノ子ヲ有スル時法律上ノ財産共通ニ関スル規則 第千四百九十六条 上ニ記シタル規則ハ夫婦ノ一方又ハ双方前婚ノ子ヲ有スル時ト雖トモ之ヲ循守ス可シ 然レトモ若シ動産及ヒ負債ノ混淆ニ因テ生者間ノ贈遺及ヒ遺嘱ノ巻第千九十八条ニ因リ允許スル所ニ超ヘタル利益ヲ夫婦ノ一方ノ為メニ生セシ時ハ他ノ一方ノ前婚ノ子ハ減殺ノ訴権ヲ有ス可シ 第二部 約束上ノ財産共通及ヒ法律上ノ財産共通ヲ変更シ又ハ排除シタル約束 第千四百九十七条 夫婦ハ第千三百八十七条第千三百八十八条第千三百八十九条及ヒ第千三百九十条ニ反セサル諸種ノ約束ニ因リ法律上ノ財産共通ヲ変更スルヲ得 主タル変更ハ左ノ方法中ノ此又ハ彼ヲ要約シテ為スモノナリ 第一 共通財産ハ獲得物ナラテハ包含ス可カラサルコト 第二 現有又ハ未有ノ動産ハ共通財産中ニ入ラサルコト又ハ其一部ナラテハ共通財産中ニ入ラサルコト 第三 動産ト同視シテ現有又ハ未有ノ不動産ノ全部又ハ一部ヲ共通財産中ニ包含ス可キコト 第四 婚姻前ノ負債ハ夫婦各自ニ弁済ス可キコト 第五 放棄ノ場合ニ於テハ婦ハ其供出物ヲ負担ナク回収スルヲ得可キコト 第六 遺存者ハ予収権ヲ有ス可キコト 第七 夫婦ハ不平等ノ得分ヲ有ス可キコト 第八 夫婦間ニ財産一部《アチートルユニウエルセール》ノ共通アル可キコト 第一款 獲得物ニ限リタル財産共通 第千四百九十八条 夫婦若シ双方ノ間ニ獲得物ナラテハ共通ト為ササルコトヲ要約スル時ハ夫婦ハ各自ノ現有未有ノ負債及ヒ各自ノ現有未有ノ動産ヲ共通ヨリ除却セリト看做サル可シ 此場合ニ於テハ夫婦各自カ適法ニ証明シタル其供出物ヲ先取シタル後分派ハ婚姻中ニ夫婦ノ相共ニ又ハ各自ニ為シタル獲得物ニシテ共同ノ産業及ヒ夫婦双方ノ財産ノ果実及ヒ入額ニ付テ為シタル節倹ヨリ生シタルモノニノミ限ル可シ 第千四百九十九条 婚姻ノ時{其執行ノ時}ニ存在シ又ハ其後ニ帰属シタル動産若シ目録又ハ整正ノ状況書ニ依テ証明セラレサルニ於テハ之ヲ獲得物ト看做ス可シ 第二款 動産ノ全部又ハ一部ヲ共通財産ヨリ除却スル約款 第千五百条 夫婦ハ現有又ハ未有ノ総動産ヲ共通財産中ヨリ除却スルヲ得 夫婦若シ相互ニ定マリタル金額又ハ価額ニ至ル迄ヲ共通財産中ニ入ル可キコトヲ要約スル時ハ其事ノミヲ以テ其残余ヲ己レニ貯存スルモノト看做ス可シ 第千五百一条 此約款アル時ハ共通財産中ニ入ル可キコトヲ約諾シタル金額ニ付テハ夫婦ハ共通財産ニ対シテ負債主トナリ其供出物ヲ証明スルノ義務アリトス 第千五百二条 供出物ハ夫ニ関シテハ其動産ノ幾何ノ価額ナル旨ヲ婚姻財産契約書ニ記シタル陳述ニ因テ充分ニ証明セラレタリトス 供出物ハ婦ニ関シテハ夫ヨリ婦ニ附シ又ハ婦ニ嫁資ヲ与ヘタル者ニ附シタル領収書ニ因テ充分ニ証明セラレタリトス 第千五百三条 夫婦ノ各自ハ財産共通解除ノ時ニ於テ其婚姻ノ時ニ供出シ又ハ其後巳レニ帰属シタル動産カ共通ニ付ス可キ額ヲ超過セシ時ハ其超過額ヲ回収シ又先取スルノ権ヲ有ス 第千五百四条 婚姻中ニ夫婦各自ニ帰属シタル動産ハ目録ヲ以テ証明ス可シ 夫ニ帰属シタル動産ノ目録ノ欠缺シ又ハ負債ヲ引去リテ動産ノ組立及ヒ価額ヲ証明スルニ恰当ナル証書ノ欠缺スル時ハ夫ハ其回収権ヲ執行スルヲ得ス 婦ニ帰属シタル動産ノ目録ノ欠缺スル時ハ婦又ハ其相続人ハ或ハ証書或ハ証人或ハ世評ニ依テモ此動産ノ価額ヲ証スルコトヲ准許セラル可シ 第三款 動産《プレープリスマン》ト同視スルノ約款 第千五百五条 夫婦若クハ其一方現有又ハ未有ノ不動産ノ全部若クハ一部ヲ共通財産中ニ加ヘシムル時ハ此約款ヲ称シテ動産《プレープリスマン》同視ノ約款ト云フ 第千五百六条 動産同視ニハ特定的アリ不特定的アリ 夫又ハ婦カ某不動産ノ全部又ハ幾何ノ高ニ至ル迄ヲ動産ト同視シテ共通財産中ニ加フ可キ旨ヲ陳述セシ時ハ動産同視ハ特定的ナリトス 夫婦ノ一方カ単ニ幾何ノ高ニ至ル迄其諸不動産ヲ共通財産中ニ加フ可キ旨ヲ陳述セシ時ハ動産同視ハ不特定的ナリトス 第千五百七条 特定ノ動産同視ノ効果ハ動産同視ニ附シタル一不動産又ハ諸不動産ヲ動産ノ如ク共通ノ財産ト為スニ在リ 若シ婦ノ一不動産又ハ諸不動産ノ全部ヲ動産ト同視セシ時ハ夫ハ共通ノ他ノ財産ノ如ク之ヲ処分シ又其全部ヲ譲与スルヲ得 一不動産若シ或ル金額ニ至ル迄ナラテハ動産ト同視セラレサル時ハ夫ハ婦ノ承諾ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ譲与スルヲ得ス然レトモ夫ハ単ニ動産ト同視シタル部分ノ高ニ至ル迄ノミ婦ノ承諾ナクシテ之ヲ書入質ト為スヲ得 第千五百八条 不特定ノ動産同視ニ付テハ共通財産ハ動産ト同視シタル諸不動産ノ所有者トナラス其効果ハ止タ動産同視ヲ承諾シタル夫又ハ婦ヲシテ財産共通解除ノ時ニ於テ其約諾シタル金額ニ至ル迄其不動産ノ幾何ヲ必ス合部中ニ加ヘシムルニ限ル可シ 夫ハ不特定ノ動産同視トナシタル不動産ノ全部若クハ一部ヲ前条ニ於ケル如ク婦ノ承諾ナクシテ譲与スルヲ得ス然レトモ動産同視ノ高ニ至ル迄ハ之ヲ書入質ト為スヲ得 第千五百九条 不動産ヲ動産ト同視シタル夫又ハ婦ハ分派ノ時ニ、当リ其時ノ代価ニ従ヒ之ヲ巳レノ得分中ニ予算シテ留置スルノ権能 ヲ有ス○其相続人モ同一ノ権ヲ有ス 第四款 負債分離ノ約款 第千五百十条 夫婦カ其一身上ノ負債ヲ別々ニ弁済ス可キ旨ヲ要約シタル約款アル時ハ夫婦ノ中負債主タル者ノ義務免釈ノ為メ共通財産ヲ以テ弁済シタリト証明セラレタル負債ニ付テハ財産共通解除ノ時ニ於テ相互ニ償還ヲ為スノ義務アリ 此義務ハ目録在リシ時ト否トヲ問ハス相同シトス然レトモ夫婦ノ供出シタル動産カ目録又ハ婚姻前ノ公正ノ状況書ニ依テ証明セラレサルニ於テハ夫婦ノ一方ノ権利者ハ要求{夫婦ヨリ}セラレタル何ノ区別ニ拘ラス他ノ共通ノ財産ニ於ケル如ク目録ナキ動産ヲ以テ其弁済ヲ訟求スルヲ得 又権利者ハ財産共通ノ間ニ夫婦ニ帰属シタル動産カ前ニ同ク目録又ハ公正ノ状況書ニ依テ証明セラレサルニ於テハ其動産ノ上ニ同一ノ権利ヲ有ス可シ 第千五百十一条 夫婦若シ共通財産中ニ特定ノ金額又ハ特定物ヲ供出スル時ハ此如キ供出物ハ婚姻前ノ負債ヲ負担セルモノニアラサルノ黙約ヲ提起ス而〆約諾シタル供出額ヲ減少ス可キ婚姻前ノ総テノ負債ニ付テハ夫婦ノ中義務ヲ負フ者ヨリ他ノ一方ニ償還ヲ為ス可シ 第千五百十二条 負債分離ノ約款アルモ婚姻以後ニ生シタル利息及ヒ賦額ヲ共通財産ノ負担トナスノ妨トナルコトナシトス 第千五百十三条 契約{婚姻財産ノ}ニ因リ婚姻前ノ総テノ負債ヲ全免シタリト陳述セラレタル夫婦ノ一方ノ負債ノ為メニ共通財産カ訴ヲ受ケシ時ハ他ノ一方ハ或ハ義務者タル一方ニ帰還ス可キ共通財産中ノ得分ヨリ或ハ其一身上ノ財産ヨリ賠償ヲ収得スルノ権アリ若シ其不足ノ場合ニ於テハ負債ヲ全免シタリト陳述シタル父母尊属親又ハ後見人ニ対シテ担保ノ方法ヲ以テ其賠償ヲ訟求スルヲ得 若シ其負債カ婦ノ権ニ由来シタル時ハ財産共通ノ間ト雖トモ夫ヨリ其担保権ヲ執行スルヲ得但シ此場合ニ於テハ財産共通解除ノ後婦又ハ其相続人ヨリ担保者ニ償還ヲ為ス可シ 第五款 負担ナク供出物ヲ回収スルニ付キ婦ニ許与シタル権能 第千五百十四条 婦ハ財産共通放棄ノ場合ニ於テハ婚姻ノ時若クハ其後ニ其共通財産中ニ供出シタルモノノ全部若クハ一部ヲ回収ス可キ旨ヲ要約スルヲ得然レトモ此要約ハ明的ニ示サレタル物件ノ外ニ及ホスヲ得ス又指定セラレタル人ノ外ノ人ノ利益ニ及ホスヲ得ス 仍テ婚姻ノ時ニ婦ノ供出シタル動産ヲ回収スルノ権能ハ婚姻ノ間ニ帰属シタル動産上ニ及ハストス 仍テ婦ニ許与シタル権能ハ子ニ及ハス婦及ヒ子ニ許与シタル権能ハ尊属又ハ傍系ノ相続人ニ及ハストス 総テノ場合ニ於テ供出物ハ婦ノ一身上ノ負債ニシテ共通財産カ弁済シタルモノヲ引去リタル上ニ非サレハ之ヲ収回スルヲ得ス 第六款 約束上ノ先収 第千五百十五条 遺存配偶者カ分派ノ前ニ或ル金額又ハ動産ノ或ル分量ヲ実物ニテ先収スルコトヲ許スノ約款ハ遺存シタル婦ノ利益ニ於テハ婦カ財産共通ヲ承諾スル時ニ非サレハ其先収ノ権利ヲ与ヘス但シ婚姻財産契約ニ依テ仮令放棄ヲ為スモ此権利ヲ貯存スル時ハ此限ニ非ス 此貯存ノ場合ノ外ハ先収権ハ分派ス可キ合部ニ付テノミ執行シ先死シタル配偶者ノ一身上ノ財産ニ付テ執行セス 第千五百十六条 先収ハ贈遺ノ法式ニ循フタル一ノ利益ト看做サス一ノ婚姻上ノ約束ト看做ス可シ 第千五百十七条 実ノ死去又ハ准死ハ先収権ヲ開始ス 第千五百十八条 離婚又ハ夫婦別居ニ因テ財産共通ノ解除ヲ来タス時ハ先収物ノ現在ノ引渡ヲ生セス然レトモ離婚又ハ夫婦別居ヲ得タル一方ハ遺存ノ場合ニ於テ其先収ノ権利ヲ保有ス若シ離婚又ハ別居ヲ得タル者婦ナリシ時ハ先収物ヲ組成スル金額又ハ物件ハ夫ヨリ保証人ヲ立ルノ負担ヲ以テ常ニ仮リニ夫ノ許ニ留置ス 第千五百十九条 共通財産ノ権利者ハ常ニ先収物中ニ包含スル物件ヲ売却セシムルノ権アリ但シ夫婦中ノ一方ハ第千五百十五条ニ循ヒ要償権ヲ有ス 第七款 共通財産中ニテ不平等ノ得分ヲ夫婦各自ニ示定スル約款 第千五百二十条 夫婦ハ或ハ遺存配偶者又ハ其相続人ニ共通財産中ニテ其一半ヨリ少キ得分ヲ附与シ或ハ共通ノ総テノ権利トシテ定マリタル金額ヲ附与シ或ハ或ル場合ニ於テハ共通財産ノ全部カ遺存配偶者又ハ夫婦ノ一方ニノミ属スヘキ旨ヲ要約シテ法律ニ定メタル平等分派ヲ避クルヲ得 第千五百二十一条 若シ夫婦ノ一方又ハ其相続人カ共通財産中ニテ三分一又ハ四分一ノ如キ或ル得分ナラテハ得有ス可カラサルノ要約アリシ時ハ如此ク減殺ヲ受ケタル一方又ハ其相続人ハ共通ノ施的件中ニテ其収得スル部分ノ割合ニ従テノミ共通ノ負債ヲ負担ス 若シ如此ク減殺ヲ受タル一方又ハ其相続人ニ更ニ其多量ノ分部ヲ負担セシムルノ約束アル時又ハ施的件中ニテ其収得ス可キ分部ニ均シキ負債ノ部分ヲ負担スルコトヲ免除スルノ約束アル時ハ其約束ハ無効ナリトス 第千五百二十二条 夫婦ノ一方又ハ其相続人ハ共通ノ総テノ権利トシテ或ル金額ナラテハ主張シ能ハサル旨ノ要約アリシ時ハ其約款ハ他ノ一方又ハ其相続人ヲシテ共通財産ノ善キト悪キニ拘ハラス又其金額ヲ弁済スルニ充分ナルト否トヲ問ハス約束シタル金額ヲ弁済スルノ義務ヲ生スル一ノ請負ナリトス 第千五百二十三条 約款若シ夫婦ノ一方ノ相続人ニ付テノミ請負ヲ設定スル時ハ其一方ハ遺存スル場合ニ於テ一半ノ法律上ノ分派ヲ得ルノ権アリ 第千五百二十四条 第千五百二十条ニ記シタル約款ニ依リ共通財産ノ全部ヲ留置スル夫又ハ其相続人ハ其総テノ負債ヲ弁済スルノ義務アリ 権利者ハ此場合ニ於テハ婦ニ対シテモ其相続人ニ対シテモ何ノ訴権ヲモ有セス 遺存シタル婦若シ約束シタル或ル金額ヲ弁済シテ夫ノ相続人ニ対シ総テノ共通財産ヲ留置スルノ権利ヲ有スル時ハ其婦ハ総テノ負債ヲ負担シテ其金額ヲ弁済スルカ又ハ財産共通ヲ放棄シテ夫ノ相続人ニ財産ト負担トヲ放棄スルノ撰択権ヲ有ス 第千五百二十五条 夫婦ハ共通財産ノ全額カ遺存者又ハ夫婦ノ一方ニノミ属ス可キ旨ヲ要約スルコトヲ許サル可シ但シ他ノ一方ノ相続人ハ其主者ノ権利ヲ以テ共通財産ノ中ニ加ヘタル供出物及ヒ元金ヲ回収スルノ権アリ 此要約ハ基本ニ付テモ法式ニ付テモ贈遺ニ関スル規則ニ循ヒタル利益ト看做サス止タ婚姻上及ヒ社員間ノ約束ナリトス 第八款 財産一部ノ共通 第千五百二十六条 夫婦ハ婚姻財産契約ニ因リ現有及ヒ未有ノ動産及ヒ不動産若クハ止タ現有ノ総テノ財産又ハ止タ未有ノ総テノ財産ニ付キ財産一部ノ共通ヲ設定スルヲ得 前八款ニ通適スル規則 第千五百二十七条 前八款ニ記スル所ハ約束上ノ財産共通ニ付キ為スヲ得可キ要約ヲ其明記シタル規則ニ制限セス 夫婦ハ第千三百八十七条ニ記スル如ク其他ノ総テノ約束ヲ為スヲ得但シ第千三百八十八条第千三百八十九条及ヒ第千三百九十条ニ記シタル変更ニ違フヲ得ス 然レトモ前婚ノ子アル場合ニ於テハ生者間ノ贈遺及ヒ遺嘱ノ巻第千九十八条ニ規定シタル部分ノ外ニ夫婦中ノ一方ニ贈遺ヲ為スニ至ルノ効果ヲ生スヘキ総テノ約束ハ右ノ部分ヲ超過スルモノニ付テハ無効ナリトス然レトモ共同ノ労動及ヒ各自ノ入額ノ仮令不同ナル時ト雖トモ其入額ニ付キ為シタル節倹ヨリ生シタル純然ノ利得ハ前婚ノ子ヲ害シテ為シタル一ノ利益ト看做ス可カラス 第千五百二十八条 約束上ノ財産共通ハ契約ニ因リ暗然又ハ明然ニ法律上ノ財産共通ヲ避ケサリシ総テノ場合ニ付テハ法律上ノ財産共通ノ規則ニ循フ可シ 第九款 財産共通ヲ排除スル約束 第千五百二十九条 夫婦若シ嫁資法ニ循拠セスシテ財産ノ共通ナク婚姻シ又ハ財産ヲ分割スル旨ヲ陳述スル時ハ其要約ノ効果ハ以下ノ如ク規定ス 第一節 夫婦財産ノ共通ナク婚姻スル旨ヲ定ムル約款 第千五百三十条 夫婦財産ノ共通ナク婚姻スル旨ヲ定ムル約款ハ婦ニ其財産ヲ管理シ又其財産ノ菓実ヲ収獲スルノ権利ヲ附与セス此菓実ハ婚姻ノ負担ヲ支持スル為メ夫ニ供出シタリト看做ス可シ 第千五百三十一条 夫ハ婦ノ動産及ヒ不動産ノ管理権ヲ保有シ従テ婦カ嫁資トシテ供出シ又ハ婚姻中ニ婦ニ帰属シタル総テノ動産ヲ収受スルノ権利ヲ保有ス但シ夫ハ婚姻解除後又ハ裁判所ヨリ宣告シタル財産分割後ニ其還給ヲ為ス可シ 第千五百三十二条 夫ヨリ嫁資トシテ供出シ又ハ婚姻中ニ婦ニ帰属シタル動産ノ中ニ之ヲ消耗スルニ非サレハ使用ヲ為スヲ得サル物件アル時ハ婚姻財産契約書ニ其評価書ヲ添附シ又ハ之ヲ収受スル際ニ目録ヲ記シ夫ハ其評価ニ従ヒ其代価ヲ還給ス可シ 第千五百三十三条 夫ハ収実権ノ総テノ負担ヲ担当ス可シ 第千五百三十四条 本節ニ記スル約款ハ婦カ年々単純ノ領収書ヲ以テ其保養及ヒ一身上ノ需用ノ為メ其入額ノ或部分ヲ得可キ約束ヲ為スノ妨トナルコトナシトス 第千五百三十五条 本節ノ場合ニ於テ嫁資ニ設定シタル不動産ハ譲与ス可カラサルモノニ非ストス 然レトモ夫ノ承諾ナク又其拒ミニ於テハ裁判所ノ允許ナクシテ之ヲ譲与スルヲ得ス 第二節 財産分割ノ約款 第千五百三十六条 夫婦若シ婚姻財産契約ニ因リ財産ヲ分割ス可キ旨ヲ要約セシ時ハ婦ハ其動産及ヒ不動産ノ完全ナル管理権及ヒ其入額ノ自由収益権ヲ保有ス 第千五百三十七条 夫婦ノ各自ハ其契約ニ包含シタル約束ニ従ヒ婚姻ノ負担ヲ分担ス若シ此事ニ関スル約束ナキ時ハ婦ハ其入額ノ三分一ノ高ニ至ル迄其負担ヲ分担ス 第千五百三十八条 何ノ場合ニ於テモ又何ノ要約ノ為メニスルモ婦ハ夫ノ特別ノ承諾ナク又其拒ミニ於テハ裁判所ノ允許ヲ得スシテ其不動産ヲ譲与スルヲ得ス 婚姻財産契約ニ因リ若クハ其後婦ニ許与シタル不動産ヲ譲与スル一般ノ允許ハ無効ナリトス 第千五百三十九条 財産分割ヲ為シタル婦其財産ノ収益権ヲ夫ニ委付シタル時ハ夫ハ婦ヨリ自己ニ要求ヲ為スモ又婚姻解除ノ時ニ於ケルモ現存スル菓実ヲ提出スルニ止マリ当時迄ニ消耗シタルモノハ之ヲ計算スルニ及ハス 第三章 嫁資法 第千五百四十条 嫁資トハ此方法ニ於テモ第二章ノ方法ニ於ケル如ク婚姻ノ負担ヲ支持センカ為メ婦ヨリ夫ニ供出スル財産ヲ云フ 第千五百四十一条 婦ノ躬ヲ設定シタルモノ又ハ婚姻財産契約ニ因リ婦ニ贈遺セラレタルモノハ反対ノ要約ナキニ於テハ嫁資タリトス 第一款 嫁資ノ設定 第千五百四十二条 嫁資ノ設定ハ婦ノ現有及ヒ未有ノ総財産若クハ止タ其現有ノ総財産又ハ現有及ヒ未有ノ財産ノ一部且ツ又特定ノ物件ノ上ニ之ヲ及ホスヲ得 汎称シテ謂フ婦ノ総財産ノ設定ハ未有ノ財産ヲ含マス 第千五百四十三条 嫁資ハ婚姻ノ間ニ之ヲ設定スルコトヲ得ス加ヘ之ヲ増加スルコトヲ得ス 第千五百四十四条 若シ父母カ各自ノ部分ヲ区別スルコトナク合同シテ一ノ嫁資ヲ設定シタル時ハ嫁資ハ平等ノ部分ヲ以テ設定セラレタリト看做ス可シ 若シ父一人ニテ父権及ヒ母権ノ為メ嫁資ヲ設定セシ時ハ母ハ契約ニ立会ヒタル時ト雖トモ拘束セラルルコトナク嫁資ハ全ク父ノ負担ニ帰ス可シ 第千五百四十五条 若シ父母中ノ遺存者父母ノ財産ヲ以テ嫁資ヲ設定シ其部分ヲ特定セサル時ハ嫁資ハ既ニ死去シタル配偶者ノ財産中ニテ夫婦トナラントスル一方ノ権利中ヨリ先ツ之ヲ収取シ其余額ハ設定者ノ財産中ヨリ之ヲ収取ス 第千五百四十六条 父母ヨリ嫁資ヲ受ケタル女仮令父母カ収益ヲ為ス所ノ自巳ノ専属財産ヲ有スルモ反対ノ要約ナキニ於テハ嫁資ハ設定者ノ財産中ヨリ収取ス 第千五百四十七条 嫁資ヲ設定シタル者ハ設定シタル物件ニ付キ必ス担保ヲ為ス可シ 第千五百四十八条 嫁資ノ利息ハ嫁資ノ弁済ニ付キ期限アル時ト雖トモ反対ノ要約ナキニ於テハ嫁資ヲ約諾シタル者ニ対シ当然婚姻ノ日ヨリ生スルモノトス 第二款 嫁資財産ニ於ケル夫ノ権利及ヒ嫁資不動産ノ譲与ス可カラサルコト 第千五百四十九条 婚姻中ハ夫ハ一人ニテ嫁資財産ノ管理権ヲ有ス 夫ハ一人ニテ嫁資財産ノ負債主及ヒ領有者ヲ訴ヘ其菓実及ヒ利息ヲ収取シ又其元金ノ弁済ヲ収受スルノ権ヲ有ス 然レトモ婚姻財産契約ニ依リ婦ハ自己ノ給用及ヒ一身上ノ需用ノ為メ自己ノ領収書ノミヲ以テ年々其入額ノ一部ヲ収受ス可キコトヲ約束スルヲ得 第千五百五十条 夫ハ婚姻財産契約ニ依テ保証人ヲ立ツヘキノ拘束ヲ受ケサリシニ於テハ嫁資ノ収受ノ為メ保証人ヲ立ツルニ及ハス 第千五百五十一条 若シ嫁資又ハ其一部カ契約ニ依リ代価ヲ定メタル動産ニテ成リテ其評価ヲ以テ売却ト為ササル旨ヲ陳述セサル時ハ夫ハ其所有者トナリテ動産ニ附シタル代価ノミノ負債主ナリトス 第千五百五十二条 嫁資ニ設定シタル不動産ニ附シタル評価ハ別段ノ陳述ナキニ於テハ夫ニ所有権ヲ移転セス 第千五百五十三条 嫁資ノ金額ヲ以テ獲得シタル不動産ハ婚姻財産契約ニ依リ益用ノ条件ヲ要約セサリシニ於テハ嫁資タラストス 金額ヲ以テ設定シタル嫁資ノ弁済ノ為メニ与ヘタル不動産モ同前ナリトス 第千五百五十四条 嫁資ニ設定シタル不動産ハ婚姻ノ間夫モ婦モ又夫婦合同シテモ譲与シ又ハ書入質ト為スヲ得ス但シ以下ニ記スル例外ハ此限ニ在ラス 第千五百五十五条 婦ハ夫ノ許諾ヲ得テ又其拒ミニ於テハ裁判所ノ允許ヲ得テ嫁資財産ヲ前婚ノ子ノ「エタブリスマン」{第二百四条ニ照セ}ノ為メニ贈遺スルコトヲ得然レトモ裁判所ノ允許ヲ得タルノミナル時ニハ夫ニ其収益ヲ貯存ス可シ 第千五百五十六条 又婦ハ夫ノ許諾ヲ得テ其嫁資財産ヲ其共同ノ子ノ「エタブリスマン」ノ為メ贈遺スルコトヲ得 第千五百五十七条 嫁資不動産ハ婚姻財産契約ニ依リ其譲与ヲ許シタルニ於テハ之ヲ譲与スルヲ得 第千五百五十八条 嫁資不動産ハ又左ノ場合ニ於テハ裁判所ノ允許ヲ以テ且ツ三次ノ掲示ノ後公売ヲ以テ譲与スルヲ得 夫又ハ婦ヲ出獄セシムル為メ 婚姻ノ巻第二百三条第二百五条第二百六条ニ記シタル場合ニ於テ親族ニ養料ヲ給スル為メ 婦又ハ嫁資ヲ設定シ者タルノ負債ニシテ婚姻財産契約以前ナル確実ノ日附アルモノヲ弁済スル為メ 嫁資不動産ノ保存ノ為メニ必要ナル大修理ヲ為ス為メ 其不動産カ外人トノ間ニ未分的トナリテ分派ス可ラスト認定セラレタル時 総テ是等ノ場合ニ於テハ認定セラレタル需要以上ノ売価ノ余額ハ猶ホ嫁資タル可シ而シテ嫁資トシテ婦ノ利益ニ益用ス可シ 第千五百五十九条 嫁資不動産ハ其交換ノ有益ナルコトヲ証明シ裁判所ノ允許ヲ得裁判所ヨリ職権ヲ以テ任命シタル鑑定人ノ評価ニ従ヒ婦ノ承諾ヲ以テ少クトモ五分ノ四ニ相当スル同価額ノ他ノ不動産ト交換スルヲ得 此場合ニ於テ交換ニ依テ収受シタル不動産ハ嫁資タルヘク代価ノ余額アル時ハ其余額モ嫁資タルヘク而シテ之ヲ嫁資トシテ婦ノ利益ニ益用ス可シ 第千五百六十条 前ニ説明シタル例外場合ノ外若シ婦又ハ夫又ハ夫婦合同シテ嫁資不動産ヲ譲与スル時ハ婦又ハ其相続人ハ婚姻解除ノ後ニ其譲与ヲ取消サシムルヲ得可ク而シテ婚姻ノ継続間ハ婦又ハ其相続人ニ対シ何ノ時効ヲ以テモ対抗スルヲ得ス婦ハ財産分割ノ後同一ノ権利ヲ有ス可シ 夫モ婚姻ノ間ハ譲与ヲ取消サシムルヲ得但シ夫契約書中ニ売却シタル財産ノ嫁資タル旨ヲ陳述セサリシ時ハ買主ニ対シ損害賠償ヲ為ス可シ 第千五百六十一条 婚姻財産契約ニ因リ譲与ス可キ旨ノ陳述ナキ嫁資不動産ハ婚姻ノ以前ニ時効ノ始マラサルニ於テハ婚姻ノ間ハ時効ヲ得ヘカラサルモノトス 然レトモ其不動産ハ財産分割ノ後ニハ時効ノ始マリタル時期ノ如何ニ拘ハラス時効ヲ得ヘシ 第千五百六十二条 夫ハ嫁資財産ニ付テハ収実者ノ総テノ義務ヲ負担ス可シ 夫ハ其懈怠ニ因リ獲得セラレタル総テノ時効及ヒ起生シタル毀損ニ付キ責ニ任ス可シ 第千五百六十三条 嫁資若シ危険ニ付セラレタル時ハ婦ハ第千四百四十三条以下ニ記スル如ク財産分割ヲ訟求スルヲ得 第三款 嫁資ノ返還 第千五百六十四条 嫁資若シ不動産ヨリ成ル時 又ハ婚姻財産契約ニ依リ評価セサル動産又ハ評価ハ婦ニ其処有権ヲ除去セサル旨ノ陳述ヲ以テ代償ヲ付シタル動産ヨリ成ル時ハ夫又ハ其相続人ハ婚姻解除ノ後直チニ之ヲ返還スヘキコトヲ要強セフル可シ 第千五百六十五条 嫁資若シ金額ヨリ成ル時 又ハ評価ハ夫ヲ其処有者ト為ササル旨ノ陳述ナク契約ニ依リ代価ヲ付シタル動産ヨリ成ル時ハ 解除ヨリ一年ノ後ニ非サレハ其返還ヲ要求スルヲ得ス 第千五百六十六条 処有権ノ婦ニ属スル動産若シ夫ノ過失ナク使用ニ因リ壊敗セシ時ハ夫ハ其残存スルモノヲ其時ノ状況ノ侭ニテ返還スヘキノミナリトス 然レトモ婦ハ総テノ場合ニ於テ現ニ使用スル布類及ヒ衣服ヲ引取ルヲ得但シ其布類及ヒ衣服ヲ最初ニ評価シテ設定シタル時ハ其価額ヲ先算ス可シ 第千五百六十七条 嫁資若シ債主権又ハ年金権ヲ含ミ夫ノ懈怠ニ帰ス可カラスシテ滅失シ又ハ減耗ヲ受ケシ時ハ夫ハ其責ヲ負ハス契約書ヲ返還シテ其責ヲ免カル可シ 第千五百六十八条 収実権若シ嫁資ニ設定セラレシ時ハ夫又ハ其相続人ハ婚姻解除ノ時ニ於テ収実ノ権利ヲ返還スルノ義務アルノミニシテ婚姻間ニ帰属シタル果実ヲ返還スルニ及ハス 第千五百六十九条 婚姻若シ嫁資弁済ノ為メニ定メタル期限ノ至リタル以後十年間継続シタル時ハ婦又ハ其相続人ハ婚姻解除ノ後ニ夫カ嫁資ヲ収受シタルコトヲ証セスシテ夫ニ対シ其還給ヲ要ムルヲ得但シ夫ニ於テ其嫁資ノ弁済ヲ得ンカ為メニ無益ニ手続ヲ為セシコトヲ証明スル時ハ格別ナリトス 第千五百七十条 若シ婦ノ死去ニ因リ婚姻ノ解除シタル時ハ返還ス可キ嫁資ノ利息及ヒ果実ハ解除ノ日ヨリ当然其相続人ノ利益ニ生ス可シ 若シ夫ノ死去ニ因リ婚姻ノ解除シタル時ハ婦ハ居喪ノ一年間其嫁資ノ利息ヲ要求スルカ若クハ其時間夫ノ遺物ノ費用ヲ以テ養料ヲ支給セシムルノ撰択権ヲ有ス然レトモ此二箇ノ場合ニ於テ此一年間ノ住居及ヒ喪服ハ遺物ヲ以テ婦ニ支給シ婦ニ帰属ス可キ利息ヲ以テ之ニ抵充ス可カラス 第千五百七十一条 婚姻ノ解除ニ当リ嫁資不動産ノ果実ハ最終ノ一年間婚姻ノ存続セシ時間ノ割合ニ従ヒ夫婦又ハ其相続人ノ間ニ分派ス 此年ハ婚姻ヲ執行シタル日ヨリ之ヲ起算ス 第千五百七十二条 婦及ヒ其相続人ハ嫁資ノ還給ニ関シ自己ヨリ以前ノ書入質権アル権利者ニ先チテ先取権ヲ有セス 第千五百七十三条 父其女ニ嫁資ヲ設定シタル時ニ於テ夫既ニ無資力ニシテ且ツ技術ヲモ職業ヲモ有セサリシ時ハ女ハ己レニ嫁資ヲ償還セシムル為メ夫ノ遺物ニ対シテ有スル訴権ナラテハ父ノ遺物中ニ返還スルニ及ハス 然レトモ夫カ婚姻後ニナラテハ無資力トナラサリシ時 又ハ夫カ財産ニ代フ可キ技術又ハ職業ヲ有セシ時ハ 嫁資ノ損失ハ単ニ婦ニ帰ス 第四款 嫁資外ノ財産 第千五百七十四条 嫁資ニ設定セサリシ婦ノ総テノ財産ハ嫁資外ノモノトス 第千五百七十五条 婦ノ総テノ財産若シ嫁資外ノモノニシテ婚姻財産契約中ニ婚姻ノ負担ノ一部ヲ婦ニ担当セシムル為メノ約束アラサル時ハ婦ハ其入額ノ三分一ニ至ル迄其負担ヲ分担ス 第千五百七十六条 婦ハ嫁資外ノ財産ノ管理権及ヒ収益権ヲ有ス 然レトモ婦ハ夫ノ許諾ナク又ハ其拒ニ於テハ裁判所ノ允許ナクシテ嫁資外ノ財産ヲ譲与シ又ハ其財産ニ付キ裁判所ニ出廷スルコトヲ得ス 第千五百七十七条 婦若シ己レニ其果実ヲ計算セシムルノ負担ヲ以テ夫ニ嫁資外ノ財産ヲ管理スル為メノ委任ヲ与ヘシ時ハ夫ハ婦ニ対シテ凡テノ代理人ノ如ク責ニ任ス可シ 第千五百七十八条 夫若シ代理委任ナク去リトテ婦ノ故障モナク婦ノ嫁資外ノ財産ニ付キ収益ヲ為シタル時ハ婚姻解除ノ時又ハ婦ノ最初ノ要求ニ於テ現存スル果実ノ提供ヲ為スノミニシテ其時迄ニ消費シタル果実ヲ計算スルニ及ハス 第千四百七十九条 夫若シ婦ヨリ証明シタル故障ニ拘ハラス嫁資外ノ財産ニ付キ収益ヲ為シタル時ハ夫ハ婦ニ対シテ現存スル総テノ果実及ヒ消費シタル総テノ果実ヲ計算ス可シ 第千五百八十条 嫁資外ノ財産ニ付キ収益ヲ為ス夫ハ収実者ノ総テノ義務ヲ負担ス可シ別段ノ規則 第千五百八十一条 夫婦ハ嫁資法ニ従フモ獲得物ノ会社ヲ要約スルヲ得此会社ノ効果ハ第千四百九十八条及ヒ第千四百九十九条ニ記シタル如ク之ヲ規定ス 第六巻 売買(千八百四年三月六日決定同月十六日頒布) 第一章 売買ノ性質及ヒ法式 第千五百八十二条 売買トハ一方カ或ル物件ヲ引渡シ他ノ一方カ其(代価ヲ)弁済スルノ義務ヲ負フ約束ヲ云フ 売買ハ公正証書若クハ私印証書ニ依リ之ヲ為スヲ得 第千五百八十三条 物件ト其代価トニ付キ約束アリタル時ハ仮令未タ物件ヲ引渡サス代価ヲ弁済セスト雖トモ売買ハ双方ノ間ニ於テハ完成シ買主ハ売主ニ対シテ当然所有権ヲ獲得ス 第千五百八十四条 売買ハ単純ニ又ハ停止若クハ解除ノ約件ヲ以テ之ヲ為スヲ得 又売買ハ二箇又ハ数箇ノ択取物ヲ以テ其目的ト為スヲ得 総テ此等ノ場合ニ於テ其効果ハ契約ノ一般ノ原則ニ依テ之ヲ規定ス 第千五百八十五条 若シ商品ヲ一括シテ売却スルコトナク量目員数又ハ尺度ヲ以テ売却シタル時ハ売却シタル物件ハ之ヲ秤権シ計算シ度量スル迄ハ売主ノ損失ニ帰スルノ意義ニ於テハ売買ハ完成セストス然レトモ買主ハ或ハ其物件ノ引渡ヲ要求シ或ハ約束不執行ノ場合ニ於テ損害アル時ハ其賠償ヲ要求スルヲ得 第千五百八十六条 若シ之ニ反シテ商品ヲ一括シテ売却セシ時ハ未タ之ヲ秤権シ計算シ度量セサリシ時ト雖トモ買売ハ完成セリトス 第千五百八十七条 葡萄酒食油其他買入ヲ為ス前ニ試嘗スルヲ慣習トスル物件ニ付テハ買主カ之ヲ試嘗シ其適意ヲ表セサル間ハ売買ナシトス 第千五百八十八条 試験ヲ以テ為ス売買ハ常ニ停止ノ約件ヲ以テ為シタルモノト推測ス可シ 第千五百八十九条 売買ノ予約ハ物件ト其代価トニ付キ双方ノ間ニ相互ノ承諾アル時ハ売買ト同効アリ 第千五百九十条 若シ手附金ヲ以テ売買スルノ予約ヲ為セシ時ハ契約者双方ハ左ノ如クシテ之ヲ破約スルコト自由ナリトス 手附金ヲ附与シタル者ハ之ヲ損失スヘキ事 手附金ヲ収受シタル者ハ其倍額ヲ返還スヘキ事 第千五百九十一条 売買ノ代価ハ双方ノ者之ヲ決定指示ス可シ 第千五百九十二条 然レトモ之ヲ外人ノ仲裁ニ委スルコトヲ得若シ外人評価ヲ為スコトヲ欲セス又ハ得サル時ハ売買ナシトス 第千五百九十三条 証書ノ費用及ヒ売買ニ附属スル其他ノ費用ハ買主ノ負担ナリトス 第二章 買フコト又ハ売ルコトヲ得ル者 第千五百九十四条 法律ニ於テ売買スルコトヲ禁セサル者ハ買ヒ又ハ売ルコトヲ得 第千五百九十五条 売買ノ契約ハ夫婦ノ間ニハ左ノ三箇ノ場合ニ非サレハ為スコトヲ得ス 第一 夫婦ノ一方カ裁判上ニテ分離シタル他ノ一方ニ其権利ノ弁済ノ為メ財産ヲ委棄スル場合 第二 分離セサル時ト雖トモ夫ヨリ其婦ニ為シタル委棄ガ譲与シタル不動産又ハ婦ニ属スル金額ノ再用ノ如ク正当ノ原因アル場合但シ其不動産又ハ金額ノ共通財産中ニ入ル時ハ此限ニ在ラス 第三 共通排除ノ時ニ於テ婦ガ嫁資トシテ夫ニ約諾シタル金額ノ弁済ノ為メ夫ニ財産ヲ委棄スル場合 此三箇ノ場合ニ於テ若シ間接ノ利益アルニ於テハ契約者双方ノ相続人ノ権利ヲ害スルコト無ルヘシ 第千五百九十六条 左ノ者ハ左ノ財産ニ付キ自カラ又ハ仲介人ヲ以テ競買人タルヲ得ス若シ競買人トナリタル時ハ其競買ハ効ナシトス 後見人ハ後見ヲ受クル者ノ財産 代理人ハ売ルコトヲ委任セラレタル財産 管理人ハ保管ヲ任セラレタル邑又ハ公舎ノ財産 公吏ハ己レノ紹介ヲ以テ売却ヲ為ス国ノ財産 第千五百九十七条 判事、判事補、検察官ノ職務ヲ行フ官吏、裁判所書記、使吏、代書人、好意弁護人及ヒ公証人ハ其職務ヲ行フ区画ノ裁判所ノ管轄ニ属スル訴訟、係争ノ権利及ヒ訴権ノ譲受人トナルヲ得ス若シ譲受人トナリタル時ハ其譲受ハ効ナク且ツ費用及ヒ損害賠償ヲ担当ス可シ 第三章 売ルコトヲ得可キ物件 第千五百九十八条 凡ソ通易スルヲ得可キ物件ハ別段ノ法律ヲ以テ其譲与ヲ禁セサリシニ於テハ売ルコトヲ得 第千五百九十九条 他人ノ物件ノ売買ハ効ナシトス若シ買主ニ於テ其物件ノ他人ニ属スルコトヲ知ラサリシ時ハ損害賠償ヲ生スルコトヲ得 第千六百条 生存者ノ相続ハ其者ノ承諾アルモ之ヲ売ルコトヲ得ス 第千六百一条 若シ売買ノ時ニ於テ売買シタル物件ノ全部滅失シタリシ時ハ売買ハ効ナシトス 若シ物件ノ一部ノミ滅失シタリシ時ハ其獲得者ハ売買ヲ放棄スルカ若クハ全部ノ価額ニ比評シタル代価ヲ定メシメテ残存ノ部分ヲ要求スルノ撰択権ヲ有ス 第四章 売主ノ義務 第一款 総則 第千六百二条 売主ハ自ラ義務ヲ負フ所ノモノヲ明瞭ニ説明ス可シ 凡テ不明又ハ瞹昧ノ約款ハ売主ニ反シテ解釈ス 第千六百三条 売主ニハ二箇ノ重要ナル義務アリ売却シタル物件ヲ引渡スノ義務及ヒ之ヲ担保スルノ義務ナリ 第二款 引渡 第千六百四条 引渡トハ売却シタル物件ヲ買主ノ威権及ヒ占有ニ移スヲ云フ 第千六百五条 不動産ヲ引渡スノ義務ハ建造物ニ付テハ其鎖鑰ヲ交付シ又ハ所有権ノ証券ヲ交付シタル時ハ売主ヨリ之ヲ履行シタリトス 第千六百六条 動産物件ノ引渡ハ左ノ方法ニ因テ為スモノトス 或ハ実物ノ引渡 或ハ動産物件ヲ貯蔵スル建造物ノ鎖鑰ノ交付 或ハ売買ノ時ニ於テ動産物件ノ移転ヲ為スヲ得サルトキハ買主既ニ他ノ名義ヲ以テ之ヲ其権内ニ有シタリシ時ハ単ニ双方ノ承諾 第千六百七条 無形ノ権利ノ引渡ハ或ハ証券ノ交付ニ因リ或ハ獲得者カ売主ノ承諾ヲ得テ為シタル其使用ニ因リ之ヲ為スモノトス 第千六百八条 引渡ノ費用ハ売主ノ負担タル可ク運搬ノ費用ハ反対ノ要約ナキニ於テハ買主ノ負担タル可シ 第千六百九条 引渡ハ別段ノ約束ナキニ於テハ売買ノ時ニ其目的タル物件ノ在リタル場所ニ於テ之ヲ為ス可シ 第千六百十条 売主若シ双方ノ間ニ約束シタル時限ノ内ニ引渡ヲ為スコトヲ缺キ而シテ其遅延カ止タ売主ノ所為ヨリ来リタル時ハ獲得者ハ其撰択ヲ以テ或ハ売買ノ解除ヲ要求シ或ハ其占有ヲ得ンコトヲ要求スルヲ得 第千六百十一条 総テノ場合ニ於テ約束シタル時期ニ於テ引渡ノ欠缺ニ付キ獲得者ノ為メ損害ヲ生シタル時ハ売主ハ損害賠償ノ言渡ヲ受ク可シ 第千六百十二条 買主若シ物件ノ代価ヲ弁済セス且ツ其弁済ノ為メニ売主ヨリ買主ニ期限ヲ諾セサリシ時ハ売主ハ物件ヲ引渡スニ及ハス 第千六百十三条 又売主ヨリ弁済ノ為メニ期限ヲ諾シタル時ト雖トモ買主若シ売買後ニ商事分散ヲ為シ又ハ民事分散ノ状況ニ陥リ売主ニ於テ代価ヲ損失ス可キ急遽ノ危険アル時ハ売主ハ又引渡ヲ為スニ及ハス但シ買主カ期限ニ於テ弁済ヲ為ス可キ保証人ヲ立テタル時ハ此限ニ在ラス 第千六百十四条 物件ハ売買ノ時ノ状況ノ侭ニテ引渡ス可シ 其日以後ハ総テノ果実ハ獲得者ニ属ス 第千六百十五条 物件ヲ引渡スノ義務ハ其物件ノ附属物及ヒ其永久ノ使用ニ供スル総テノモノヲ含ム 第千六百十六条 売主ハ下条ニ記スル変更ニ従ヒ契約書ニ記シタル面積ヲ《コントナンス》引渡ス可シ 第千六百十七条 幾許ノ度量ニ付キ代価幾許ノ割合ニテ面積ヲ指示シテ不動産ノ売買ヲ為シタル時ハ売主ハ獲得者ヨリ其要求アルニ於テハ契約書ニ指示シタル分量ヲ引渡ス可シ 若シ売主ニ於テ其事能ハサルカ若クハ獲得者之ヲ要求セサル時ハ売主ハ比准シタル代価ノ減殺ヲ受ケサルヲ得ス 第千六百十八条 若シ之ニ反シ前条ノ場合ニ於テ契約書ニ記シタル面積ヨリ更ニ大ナル面積アリテ其過分ノ契約書ニ記シタルモノヨリ二十分一以上ナル時ハ獲得者ハ代価ノ追補ヲ給与スルカ若クハ契約ヲ取消スノ撰択権ヲ有ス 第千六百十九条 其他総テノ場合ニ於テハ 特定シテ限定シタル物ノ売買ヲ為シタルト 殊別ニシテ分離シタル不動産ヲ目的トシテ売買ヲ為シタルト 度量ヨリ始メテ売買ヲ為シ又ハ売買シタル物件ノ指定ヨリ度量ニ及ホシテ売買ヲ為シタルヲ問ハス 此度量ノ明示ハ契約書ニ明示シタル度量ト現実ノ度量トノ差違ガ売買シタル物件ノ全部ノ価額ニ照シテ二十分一ノ過不足アル時ニ非サレハ度量ノ過分ニ付キテハ売主ノ為メニ代価ノ追補ヲ生シ其不足ニ付キテハ獲得者ノ為メニ代価ノ減殺ヲ生スルコトナシ但シ反対ノ要約アル時ハ此限ニ在ラス 第千六百二十条 前条ニ循ヒ度量ノ過分ニ付キ代価ノ増加アル場合ニ於テハ獲得者ハ契約ヲ廃棄スルカ若クハ代価ヲ追補供給スルノ撰択権ヲ有ス若シ不動産ヲ保有スルニ於テハ代価ノ追補ト共ニ其利足ヲ払フ可シ 第千六百二十一条 獲得者カ契約ヲ廃棄スルノ権アル総テノ場合ニ於テ売主ハ若シ代価ヲ収受セシニ於テハ其代価ト外ニ契約ノ費用ヲ獲得者ニ還給ス可シ 第千六百二十二条 売主ノ代価追補ノ訴訟及ヒ獲得者ノ代価減殺又ハ契約廃棄ノ訴訟ハ契約ノ日ヨリ起算シテ一年内ニ之ヲ為ス可シ然ラサレハ失権ヲ来タス可シ 第千六百二十三条 一契約ニ依リ単一ノ代価ヲ以テ各箇ノ度量ヲ指示シテ二箇ノ不動産ヲ売買セシ時其一箇ノ面積少ク一箇ノ面積多キ時ハ適当ノ額ニ至ル迄相殺ヲ為シ而〆代価ノ追補又ハ減殺ノ訴訟ハ上ニ定メタル規則ニ循ヒ之ヲ為ス可シ 第千六百二十四条 引渡ノ前ニ於ケル売却シタル物件ノ滅失又ハ損敗カ売主又ハ獲得者ノ中孰レニ帰スルヤノ問題ハ契約即チ一般ノ約束上ノ義務ノ巻ニ定メタル規則ニ循テ裁断ス可シ 第三款 担保 第千六百二十五条 売主獲得者ニ対シテ為スヘキ担保ニ二箇ノ目的アリ第一売却シタル物件ノ安穏ノ占有第二其物件ノ隠有スル悪疵即チ売買《レヂビトワール》ヲ取消サシムルヲ得ル瑕瑾是ナリ 第一節 強却【トリアゲ】《エウイクシヨン》ノ場合ニ於ケル担保 第千六百二十六条 売主ハ売買ノ時ニ於テ何ノ要約ヲ為ササリシ時ト雖トモ売却シタル物件ノ全部若クハ一部ニ付キ獲得者ノ受ケタル強却又ハ其物件ニ関シテ主張セラレテ売買ノ時ニ陳述セサリシ負担ニ付キ当然獲得者ヲ担保スルノ義務アリ 第千六百二十七条 双方ハ別段ノ約束ニ因リ其当然ノ義務ヲ増加シ又ハ其効果ヲ減殺スルコトヲ得又売主カ何ノ担保ヲモ負ハサル旨ヲ契約スルコトヲ得 第千六百二十八条 仮令売主カ何ノ担保ヲモ負ハサル旨ヲ契約シタル時ト雖トモ売主ハ其一身上ノ所為ヨリ生シタル担保ヲ負担ス可シ凡テ反対ノ約束ハ効ナシトス 第千六百二十九条 又同シク担保ヲ為ササル旨ノ要約アル場合ニ於テ強却アル時ハ売主ハ代価ヲ還給ス可シ但シ獲得者カ売買ノ時ニ於テ強却ノ危険アランコトヲ知リタリシカ若クハ自己ノ損失ヲ冒シテ買入レタル時ハ此限ニ在ラス 第千六百三十条 担保ヲ約シ又ハ此事ニ付キ何ノ要約ヲモ為ササリシ時獲得者若シ強却セラルルニ於テハ獲得者ハ売主ニ対シ左ノ件々ヲ訟求スルノ権アリ 第一 代価ノ還給 第二 強却ヲ為シタル所有者ニ果実ヲ還給スヘキヲ要強セラルル時ハ其還給 第三 買主カ担保ノ訟求ニ付キ為シタル費用及ヒ原初ノ原告人ノ為シタル費用 第四 損害ノ賠償並ニ契約ノ費用及ヒ正当ノ入費 第千六百三十一条 強却ノ時ニ於テ売買シタル物件カ買主ノ懈怠又ハ天災ニ因リ価格ヲ減少セシカ若クハ著シク損敗セシ時ト雖トモ売主ハ猶其代価ノ全部ヲ還給ス可シ 第千六百三十二条 然レトモ獲得者若シ己レノ為シタル毀損ニ付キ利得ヲ得タル時ハ売主ハ其利得ニ等シキ金額ヲ代価中ヨリ控除スルノ権アリ 第千六百三十三条 若シ売買シタル物件カ強却ノ時ニ於テ代価ヲ増加シタル時ハ獲得者ノ所為ニ関セサルモ売主ハ売買ノ代価以上ノ価額ヲ獲得者ニ弁済ス可シ 第千六百三十四条 売主ハ獲得者カ不動産ニ為シタル有益ノ修理及ヒ改良ヲ獲得者ニ償還シ又ハ強却ヲ為シタル者ヨリ償還セシム可シ 第千六百三十五条 売主若シ悪意ヲ以テ他人ノ不動産ヲ売却シタル時ハ売主ハ獲得者カ不動産ニ為シタル総テノ費用ヲ贅沢又ハ娯楽ノモノト雖トモ獲得者ニ償還スヘキコトヲ要強セラル可シ 第千六百三十六条 若シ獲得者物件ノ一部ノミニ付キ強却ヲ受ケ而〆其全部ニ関シ強却セラレタル部分ナカリセハ買入ヲ為ササル可カリシ如キ結果アル時ハ獲得者ハ売買ヲ廃棄スルヲ得 第千六百三十七条 売買シタル不動産ノ一部ノ強却ノ場合ニ於テ若シ売買ヲ廃棄セサリシ時ハ仮令ヒ売買シタル物件ノ価額カ増加シ又ハ減少シタリト雖トモ之ヲ売買ノ全価ニ割合ハズシテ獲得者ノ強却セラレタル部分ノ価額ヲ之レニ償還ス可シ 第千六百三十八条 売買シタル不動産カ不外顕ノ地役ヲ負担シタルニ其旨ヲ陳述セス而〆獲得者若シ其地役アルコトヲ覚知シタリシナラハ其買入ヲ為ササル可カリシコトヲ推測ス可キカ如クニ地役ノ重要ナルニ於テハ獲得者ハ賠償ニテ満足スルコトヲ欲セサルトキハ契約ノ廃棄ヲ要求スルヲ得 第千六百三十九条 其他売買ノ不執行ヨリシテ獲得者ノ為メニ生スル損害賠償ニ付テ起ルヘキ其他ノ問題ハ契約即チ一般ノ約束上ノ義務ノ巻ニ定メタル一般ノ規則ニ循テ決定ス可シ 第千六百四十条 強却ノ為メノ担保ハ獲得者カ売主ヲ呼出スコトナクシテ終審ノ言渡又ハ最早控訴ノ受理セラレサル言渡ニ因テ敗訴セシ時売主カ訟求{強却者ノ}ヲ却下セシムルニ充分ナル廉アリシコトヲ証スルニ於テハ止了スルモノトス 第二節 売却シタル物件ノ悪疵ノ担保 第千六百四十一条 売却シタル物件ニ隠有ノ悪疵アリテ之ヲ供スル使用ニ不適当ナルカ若クハ買主カ其悪疵ヲ覚知シタリシナラハ其物件ヲ獲得セサル可カリシカ又ハ一層低キ代価ナラテハ与ヘサル可カリシ如クニ其使用ヲ減少スルニ於テハ売主ハ其悪疵ニ付キ担保ヲ負フ可シ 第千六百四十二条 売主ハ外顕ノ瑕瑾ニシテ買主自ラ覚知スルヲ得タルモノヲ負担セス 第千六百四十三条 売主ハ隠有ノ瑕瑾ヲ覚知セサリシ時ト雖トモ之ヲ負担ス可シ但シ此場合ニ於テ何ノ担保ヲモ負ハサルコトヲ要約セシ時ハ此限ニ在ラス 第千六百四十四条 第千六百四十一条及ヒ第千六百四十三条ノ場合ニ於テ買主ハ物件ヲ還付シテ其代価ヲ返還セシムルカ若クハ物件ヲ留有シテ鑑定人ノ裁定シタル通ノ代価ノ一部ヲ已レニ返還セシムルノ撰択権ヲ有ス 第千六百四十五条 売主若シ物件ノ瑕瑾ヲ知リシ時ハ其収受シタル代価ノ返還ノ外ニ買主ニ対シテ総テノ損害賠償ヲ負担ス可シ 第千六百四十六条 売主若シ物件ノ瑕瑾ヲ知ラサリシ時ハ代価ノ返還ト売買ニ因テ生シタル費用ノ償還トヲ獲得者ニ対シテ負担スルノミ 第千六百四十七条 瑕瑾アル物件若シ其不良質ノ為メ滅失シタル時ハ其滅失ハ売主ニ帰シ売主ハ買主ニ対シテ其代価ノ還給ト前二条ニ記シタル其他ノ損害賠償トヲ負担ス可シ 然レトモ意外ノ変ニ因リ生シタル滅失ハ買主ノ計算ナリトス 第千六百四十八条 売買ヲ取消サシムルヲ得ル瑕瑾ヨリ生スル訴訟ハ其瑕瑾ノ性質ト売買ヲ為シタル地ノ慣習トニ循ヒ短キ期限内ニ獲得者ヨリ為ス可シ 第千六百四十九条 其訴訟ハ裁判所ノ権威ニ因テ為シタル売却ニ付テハ之ヲ為スヲ得ス 第五章 買主ノ義務 第千六百五十条 買主ノ主タル義務ハ売買契約ニ依テ定メタル日及ヒ場所ニ於テ代価ヲ弁済スルニ在リ 第千六百五十一条 此事ニ付キ売買ノ時ニ於テ定ムル所ナカリシ時ハ買主ハ引渡ノアル可キ場所及ヒ時ニ於テ弁済ス可シ 第千六百五十二条 買主ハ左ノ三箇ノ場合ニ於テハ元金ノ弁済ニ至ル迄売買ノ代価ノ利息ヲ負担ス 売買ノ時ニ於テ其通リニ契約シタル時 売却シテ引渡シタル物件ガ果実又ハ其他ノ入額ヲ生スル時 買主ガ弁済ヲ要促セラレタル時 此末項ノ場合ニ於テハ利息ハ要促以後ニ非サレハ生セス 第千六百五十三条 買主若シ書入質ノ訴又ハ所有権取戻ノ訴ニ因リ擾害セラレ又ハ擾害セラレント恐ル正当ノ理由アル時ハ買主ハ擾害ヲ止メシムルニ至ル迄代価ノ弁済ヲ停止スルヲ得但シ売主保証人ヲ立テンコトヲ欲シ又ハ擾害ニ拘ハラス買主ヨリ弁済ヲ為スヘキ旨ヲ要約セシ時ハ此限ニ在ラス 第千六百五十四条 買主若シ代価ヲ弁済セサル時ハ売主ハ売買ノ解除ヲ要求スルヲ得 第千六百五十五条 不動産売買ノ解除ハ売主ニ於テ物件ト代価トヲ損失スルノ危険アル時ハ直チニ宣告セラル可シ 若シ其危険ナキ時ハ裁判官ハ事情ニ従ヒ獲得者ニ多少長キ猶予ヲ許与スルヲ得 獲得者カ弁済ヲ為シタルコトナクシテ此猶予ヲ経過シタル時ハ売買ノ解除ヲ宣告ス可シ 第千六百五十六条 契約シタル期限ニ於テ代価ノ弁済ナキ時ハ当然売買ヲ解除ス可キ旨ヲ不動産売買ノ時ニ於テ要約シタル時ト雖トモ獲得者ハ要促ニ依テ遅滞ニ置カレサリシ以上ハ期限尽了ノ後ニ弁済ヲ為スヲ得但シ裁判官ハ其要促ノ後買主ニ猶予ヲ許与スルヲ得ス 第千六百五十七条 日用物及ヒ動産物件ノ売買ニ関シテハ其廃止ニ付キ契約シタル期限尽了ノ後ハ当然又要促ナクシテ売買ヲ売主ノ利益ニ解除ス可シ 第六章 売買ノ無効及ヒ解除 第千六百五十八条 売買ノ契約ハ既ニ本巻ニ記シタル無効又ハ解除及ヒ総テノ約束ニ普通ナル無効及ヒ解除ノ原由ニ係ハラス買戻ノ権能ノ執行及ヒ代価ノ過廉ニ因テ解除スルヲ得 第一款 買戻ノ権能 第千六百五十九条 買戻即チ回買ノ権能トハ売主カ主タル代価ノ還給ト第千六百七十三条ニ記シタル償還トニ依リ売却シタル物件ヲ回収スルノ権ヲ貯存スル約束ヲ云フ 第千六百六十条 買戻ノ権能ハ五年ヲ超過スル期限ヲ以テ要約スルヲ得ス 若シ之ヨリ長キ期限ヲ以テ其権能ヲ要約シタル時ハ此期限ニ減縮ス 第千六百六十一条 約定シタル期限ハ厳重ノモノナリ裁判官ニテ伸長スルヲ得ス 第千六百六十二条 売主約定シタル期限内ニ買戻ノ訴権ヲ執行セサリシ時ハ獲得者ハ確定ノ所有者トナル可シ 第千六百六十三条 期限ハ幼者ニ至ル迄総テノ者ニ対シテ経過ス但シ幼者ハ理由アルニ於テハ其当然ノ者ニ対シテ要償権ヲ有ス 第千六百六十四条 買戻ノ約束アル売主ハ第二ノ契約中ニ回買ノ権能ノ陳述ナキ時ト雖トモ第二ノ獲得者ニ対シテ其訴権ヲ行フヲ得 第千六百六十五条 買戻ノ約束アル獲得者ハ売主ノ総テノ権利ヲ執行シ真ノ所有者ニ対シテモ売却シタル物件上ニ権利又ハ書入質権ヲ主張スル者ニ対シテモ時効ヲ得ルコトヲ得可シ 第千六百六十六条 其獲得者ハ「ヂスキユシヨン」ノ利益{「ヂスキユシヨン」ノ利益トハ義務者即チ本条ニテハ売主ノ債主ヲシテ獲得者カ有スル買戻ノ約束アル財産ヲ以テ弁済ヲ得ルノ前ニ先ツ其義務者ノ他ノ財産ヲ以テ弁済ヲ得シムルノ権能ヲイフ}ヲ以テ売主ノ権利者ニ対抗スルコトヲ得 第千六百六十七条 一不動産ノ未分ノ一部分ノ回買ノ約束アル獲得者若シ巳レニ対シテ要求セラレタル未分物競売ニ因テ全部ノ競買人トナリタル時ハ売主カ約束ヲ執行セント欲スルニ於テハ全部ヲ回買スルコトヲ之ニ要強スルヲ得 第千六百六十八条 数人若シ一契約書ニ因リ其間ニ共通ノ不動産ヲ共同シテ売却シタル時ハ其各人ハ其有スル得分ニ付テナラデハ回買ノ訴権ヲ行フヲ得ス 第千六百六十九条 一人ニテ一不動産ヲ売却シタル者相続人数人ヲ遺留シタル時モ同前ナリトス 其相続人ノ各人ハ遺物中ニテ収取スル得分ニ付テナラデハ買戻ノ権能ヲ執行スルヲ得ス 第千六百七十条 然レトモ前二条ノ場合ニ於テ獲得者ハ全不動産ノ取戻ニ付キ総テノ共同売主又ハ共同相続人ヲシテ互ニ協議セシムル為メ此者等ヲ訴訟ニ参加セシメンコトヲ要求スルヲ得此者等若シ協議セサル時ハ獲得者ハ買戻ノ訟求ヲ免カル可シ 第千六百七十一条 若シ数人ニ属スル一不動産ノ売却ヲ共同シテ又全部一括ニシテ為サス各人其有スル得分ノミヲ売却セシ時ハ其数人ハ其巳レニ属セシ部分ニ付キ別々ニ回買ノ訴権ヲ執行スルヲ得ス 而〆獲得者ハ此方法ニ因リ其訴権ヲ執行スル者ニ全部ヲ回収スルコトヲ要強スルヲ得ス 第千六百七十二条 獲得者若シ数人ノ相続人ヲ遺留シタル時ハ回買ノ訴権ハ各人ノ部分ノ尚ホ未分ナル場合及ヒ売却シタル物件ヲ各人ノ間ニ分派シタル場合ニ於テハ各人ノ得分ニ付キ各人ニ対シテナラデハ之ヲ執行スルヲ得ス 然レトモ遺物ノ分派アリテ売却シタル物件ガ相続人ノ一人ノ股分ニ帰属シタル時ハ其相続人ニ対シ全部ニ付テ回買ノ訴ヲ為スコトヲ得 第千六百七十三条 買戻ノ約束ヲ行フ売主ハ主タル代価ノミナラス売買ノ費用及ヒ正当ノ入費必要ノ修理費及ヒ不動産ノ価額ヲ増加シタル修理アルトキハ其増加ノ高ニ至ル迄ノ修理費ヲ弁済ス可シ売主ハ総テ此義務ヲ尽シタル後ニ非サレハ占有ヲ為スヲ得ス 売主買戻ノ約束ノ効果ニ依リ其不動産ヲ復スル時ハ獲得者ノ其不動産ニ負ハシメタル総テノ負担及ヒ書入質義務ヲ脱シテ之ヲ回収スルモノトス但シ売主ハ獲得者ノ詐欺ナク為シタル土地賃貸ハ之ヲ執行セサル可ラス 第二款 損失ノ為メノ売買ノ廃棄 第千六百七十四条 売主若シ不動産ノ代価ニ付キ十二分ノ七以上ノ損失ヲ受ケタル時ハ仮令契約ニ於テ売買廃棄ヲ訟求スル権能ヲ明カニ放棄シ且ツ剰余額ヲ贈与ス可シト陳述シタル時ト雖トモ売主ハ売買ノ廃棄ヲ訟求スルノ権ヲ有ス 第千六百七十五条 十二分ノ七以上ノ損失アルヤヲ知ランニハ売買ノ時ニ於ケル状況ト価格トニ従ヒ不動産ヲ評価スルヲ要ス 第千六百七十六条 訟求ハ売買ノ日ヨリ二年ノ尽了ノ後ニハ最早受理ス可カラストス 此期限ハ有夫ノ婦ニ対シ及ヒ失踪者被禁治産者及ヒ売却ヲ為シタル丁年者ノ権利ヲ受ケタル幼者ニ対シテ経過ス 此期限ハ買戻ノ約束ノ為メ要約シタル時間ト雖トモ亦経過シテ中止セラルルコトナシ 第千六百七十七条 損失ノ証ハ裁判ニ依テナラテハ、又具陳シタル事項カ損失ヲ推測スルニ信ヲ置ク可ク且ツ重大ナル場合ニ於テナラデハ准許セラルルコトヲ得ス 第千六百七十八条 其証ハ鑑定人三名ノ報告ニ因ルニ非サレハ為スヲ得ス鑑定人三名ハ一ノ共同調書ヲ作リ而シテ多数決ニ因リ単一ノ意見ヲ作成スヘキモノトス 第千六百七十九条 意見若シ相異ルトキハ調書ニ其理由ヲ記スヘシ鑑定人各個ノ意見ノ如何ナルヤヲ知ラシムルコトヲ許サス 第千六百八十条 三人ノ鑑定人ハ訴訟人合同シテ命スルニ付キ協議調ハサルニ於テハ職権ヲ以テ之ヲ命ス可シ 第千六百八十一条 廃棄ノ訴権ヲ認可スル場合ニ於テハ獲得者ハ弁済シタル代価ヲ回収シテ物件ヲ返還スルカ若クハ全価ノ十分一ノ控除ヲ以テ正当ノ代価ノ追補ヲ弁済シテ不動産ヲ保有スルノ撰択権ヲ有ス 占有外人モ同一ノ権アリ但シ已レノ売主ニ対シテ担保権ヲ有ス 第千六百八十二条 獲得者若シ前条ニ規定シタル追補金ヲ供給シテ物件ヲ保有スル時ハ廃棄ノ訟求ノ日ヨリノ追補金ノ利息ヲ払フ可シ 獲得者若シ物件ヲ還付シ代価ヲ収受スルコトヲ撰ム時ハ訟求ノ日ヨリノ果実ヲ返還ス可シ 獲得者ノ弁済シタル代価利息モ訟求ノ日ヨリ又ハ獲得者若シ少シモ果実ヲ収得セサリシ時ハ弁済ノ日ヨリ獲得者ニ計算ス可シ 第千六百八十三条 損失ノ為メノ廃棄ハ買主ノ利益ニ為スヲ得ス 第千六百八十四条 損失ノ為メノ廃棄ハ法律ニ循ヒ裁判所ノ権ヲ以テスルニ非サレハ為スヲ得サル総テノ売却ニ付テハ之ヲ為スヲ得ス 第千六百八十五条 数人合同シテ又ハ別々ニ売却ヲ為シタル場合及ヒ売主又ハ買主カ数人ノ相続人ヲ遺留シタル場合ニ付キ前款ニ記シタル規則ハ廃棄ノ訴権執行ニ付キ同シク循守ス可シ 第七章 未分物競売 第千六百八十六条 数人共通ノ一物件ノ好便ニ且ツ損失ナク分派スルコト能ハサル時 又ハ協議ニテ為シタル共通財産ノ分派ニ於テ共同分派人ノ誰モ収取スルヲ得ス又ハ欲セサル財産アル時ハ 其売却ハ公売ヲ以テ為シ其代価ハ共有者ノ間ニ分派ス 第千六百八十七条 共有者ノ各人ハ外人ヲ未分物競売ニ喚入レンコトヲ要求スルノ自由アリ若シ共有者ノ一人幼者ナル時ハ外人ヲ喚入ルルコトヲ必要ナリトス 第千六百八十八条 未分物競売ニ付キ循守ス可キ方法及ヒ法式ハ相続ノ巻及ヒ訴訟法ニ記ス 第八章 債主権及ヒ他ノ無形ノ権利ノ移転 第千六百八十九条 外人ニ封スル債主権、権利又ハ訴権ノ移転ニ付テハ引渡ハ譲渡人ト譲受人トノ間ニ証書ノ交付ニ依テ成ルモノトス 第千六百九十条 譲受人ハ外人ニ対シテハ義務者ニ為シタル移転ノ報知ニ依テナラデハ収握ヲ為ササルモノトス 然レトモ譲受人ハ又公正証書ヲ以テ義務者ノ為シタル移転ノ承諾ニ因テ同シク収握ヲ為スヲ得 第千六百九十一条 若シ譲渡人又ハ譲受人ヨリ義務者ニ移転ヲ報知スル前ニ義務者カ譲渡人ニ弁済シタリシ時ハ義務者ハ有効ニ其義務ヲ免カル可シ 第千六百九十二条 債主権ノ売却又ハ譲渡ハ保証人、先取権及ヒ書入質権ノ如キ債主権ノ附属件ヲ含ム 第千六百九十三条 債主権又ハ其他ノ無形ノ権利ヲ売却シタル者ハ担保ナク移転ヲ為シタル時ト雖トモ移転ノ時ニ其権利ノ成存ヲ担保ス可シ 第千六百九十四条 債主権又ハ其他ノ無形ノ権利ヲ売却シタル者ハ義務者ノ資力アルコトヲ担保シタル時ニ非レハ又債主権ヨリ収得シタル代価ノ高ニ至ル迄ノ外義務者ノ資力アルコトニ付キ責ニ任セサルモノトス 第千六百九十五条 債主権又ハ其他ノ無形ノ権利ヲ売却シタル者義務者ノ資力ノ担保ヲ約諾シタル時其約諾ハ現時ノ資力アルコトヲ意味スルノミニシテ将来ノ時ニ及ハサルモノトス但シ譲渡人カ之ヲ将来ノ時ニ及ホスヘキヲ明ニ要約セシトキハ此限ニ非ス 第千六百九十六条 詳密ニ物件ヲ指定スルコトナク相続権ヲ売却スル者ハ其相続人タル資格ナラテハ担保スルニ及ハス 第千六百九十七条 相続権ヲ売却スル者若シ既ニ相続ニ帰スル或ル不動産ノ果実ヲ収得シ又ハ或ル債主権ノ金額ヲ収受シ又ハ相続ノ或ル物件ヲ売却シタル時ハ売買ノ時ニ於テ特ニ是等ノ権ヲ貯存セサリシニ於テハ獲得者ニ之ヲ弁済ス可シ 第千六百九十八条 獲得者ハ売主ガ相続ノ負債及ヒ負担ニ付キ弁済シタルモノヲ自己ノ方ヨリ之ニ弁済シ又反対ノ要約ナキニ於テハ売主ガ権利者タリシ総テノモノニ付キ之ニ弁償ヲ為ス可シ 第千六百九十九条 巳レニ対スル係事ノ権利ヲ譲渡セラレタル者{即チ義務者}ハ譲渡ノ現実ノ代価費用及ヒ正当ノ入費ト譲受人ガ已レニ為サレタル譲渡ノ代価ヲ弁済シタル日以来ノ利息トヲ譲受人ニ償還シ之ニ対シテ其義務ヲ免カルルヲ得 第千七百条 権利ノ基本ニ付キ訴訟及ヒ紛争アル時ハ其事物ハ係争的ト看做ス可シ 第千七百一条 第千六百九十九条ニ記シタル規則ハ左ノ場合ニ於テ止了ス 第一 譲渡セラレタル権利ノ共同相続人又ハ共有者ニ譲渡ヲ為シタル場合 第二 権利者ニ対シ負担スルモノノ弁済トシテ之ニ譲渡ヲ為シタル時 第三 係争ノ権利ニ属スル不動産ノ占有者ニ譲渡ヲ為シタル時 第七巻 交換(千八百四年三月七日決定同月十七日頒布) 第千七百二条 交換トハ契約者カ相互ニ或ル物件ヲ他ノ物件ノ代リニ与フル契約ヲ云フ 第千七百三条 交換ハ売買ト同一ノ方法ニ従ヒ承諾ノミニ依テ成ルモノトス 第千七百四条 共同交換者ノ一人若シ交換トシテ己レニ与ヘラレタル物件ヲ既ニ収受シ其後他ノ契約者ハ其物件ノ所有者ニ非サルコトヲ証スル時ハ其対当交換トシテ約諾シタル物件ヲ引渡スコトヲ要強セラルルヲ得ス止タ其収受シタル物件ヲ返還スルコトヲ要強セラルルヲ得ルノミ 第千七百五条 交換トシテ収受シタル物件ニ付キ強却セラレタル共同交換者ハ損害賠償ヲ要求スルカ若クハ己レノ物件ヲ回収スルノ撰択権ヲ有ス 第千七百六条 損失ノ為メノ廃棄ハ交換契約ニハナキモノトス 第千七百七条 売買契約ニ付キ定メタル他ノ総テノ規則ハ又交換ニ適当ス 第八巻 賃貸契約(千八百四年三月七日決定同月十七日頒布) 第一章 総則 第千七百八条 賃貸契約ニ二種アリ左ノ如シ 物件ノ賃貸 工作ノ賃貸 第千七百九条 物件ノ賃貸トハ契約者ノ一方カ他ノ一方ニ或ル賃銀ヲ以テ或ル時間或ル物件ノ収益ヲ為サシムルノ義務ヲ負ヒ他ノ一方ハ其賃銀ヲ一方ニ弁済スルノ義務ヲ負フ契約ヲ云フ 第千七百十条 工作ノ賃貸トハ契約者ノ一方カ他ノ一方ノ為メニ双方ノ間ニ約束シタル賃銀ヲ以テ或ル事ヲ為スノ義務ヲ負フ契約ヲ云フ 第千七百十一条 此二種ノ賃貸ハ尚ホ之ヲ左ノ格段ノ数類ニ細別ス 家屋及ヒ動産ノ賃貸ヲ「バイユ、ア、ロワイエー」ト称シ 田野不動産ノ賃貸ヲ「バイユ、ア、フエルム」ト称シ 労動及ヒ使役ノ賃貸ヲ「ロソイニエー」ト称シ 所有者ト所有者ヨリ獣類ヲ交付シタル者ノ間ニ利得ヲ分派スル獣類ノ賃貸ヲ「バイユ、ア、シユテル」ト称シ 定マリタル賃銀ヲ以テ為ス工作ノ起業ノ為メノ「ドウイ」「マルシェー」「プリーフエー」{共ニ請負ノ契約}モ工作ヲ為サシムル者ヨリ材料ヲ供給スル時ハ亦賃貸ナリトス 此最終ノ三類ニ付テハ別段ノ規則アリ 第千七百十二条 国、邑及ヒ公舎ノ財産ノ賃貸ハ別段ノ規則ニ従フモノトス 第二章 物件ノ賃貸 第千七百十三条 諸種ノ動産又ハ不動産ヲ賃貸スルヲ得 第一款 家屋及ヒ田野財産ノ賃貸ニ通適スル規則 第千七百十四条 賃貸ハ書面ヲ以テ又ハ口頭ニテ之ヲ為スヲ得 第千七百十五条 書面ナク為シタル賃貸カ未タ何ノ執行ヲモ受ケスシテ契約者ノ一方カ之ヲ拒否スル時ハ其賃銀ノ如何ニ少額ナルモ又仮令手附金ノ授受アリタルコトヲ主張スルモ証人ニ因ル証拠ヲ許スヲ得ス 矢誓ハ止タ賃貸ヲ拒否スル者ニ対シテ要ムルコトヲ得 第千七百十六条 執行ヲ始メタル口頭ノ賃貸ノ賃銀ニ付キ争訟アリテ其領収書ナキ時ハ家屋賃借人ニ於テ鑑定人ノ評価ヲ要求スルヲ欲セサルニ於テハ所有者ノ矢誓ヲ信アリトス但シ評価ヲ欲シタル場合ニ於テ其評価額若シ賃借人ノ申述スル賃銀ヲ超過スル時ハ賃借人ハ鑑定ノ費用ヲ負担ス可シ 第千七百十七条 賃借人ハ転貸ヲ為シ又ハ其賃借権ヲ他人ニ譲与スルノ権アリ但シ其権能ヲ賃借人ニ禁シタル時ハ此限ニ非ス 其権能ハ全部又ハ一部ニ付キ之ヲ禁スルヲ得 此約款ハ常ニ厳重ナルモノトス 第千七百十八条 有夫ノ婦ノ財産ノ賃貸ニ関スル婚姻財産契約及ヒ夫婦相互ノ権利ノ巻ノ数条ハ幼者ノ財産ノ賃貸ニ適用ス 第千七百十九条 賃貸人ハ別段ノ要約ヲ為スコトヲ要セスシテ契約ノ性質ニ因リ左ノ件々ヲ為スノ義務アリ 第一 賃貸シタル物件ヲ賃借人ニ引渡スヘキコト 第二 賃貸シタル目的ノ使用ニ供用ス可キ状況ニ其物件ヲ保持スヘキコト 第三 賃貸ノ時間安穏ニ賃借人ニ収益ヲ為サシムヘキコト 第千七百二十条 賃貸人ハ諸種ノ修理ヲ為シテ良好ノ状況ニテ物件ヲ引渡スノ義務アリ 賃貸人ハ賃貸時間賃借人ノ為ス可キ修理ノ外必要ト為リ得ル総テノ修理ヲ為スノ義務アリ 第千七百二十一条 賃貸人ハ賃貸シタル物件ノ使用ヲ妨クル其物件ノ総テノ瑕瑾又ハ悪疵ヲ賃貸ノ時ニ当リテ知ラサリシ時ト雖トモ賃借人ニ対シテ之レニ付キ担保ヲ負担ス可シ 若シ此瑕瑾又ハ悪疵ヨリシテ賃借人ノ為メ損失ヲ生スル時ハ賃貸人ハ之ヲ賠償ス可シ 第千七百二十二条 若シ賃貸ノ時間ニ意外ノ変ニ因リ賃貸物件ノ全部滅壊シタル時ハ賃貸ハ当然解除シ若シ其一部ノ滅壊ニ止マル時ハ賃借人ハ事情ニ従ヒ或ハ賃銀ノ減殺ヲ要求シ或ハ賃貸ノ解除ヲ要求スルヲ得此二箇ノ孰レノ場合ニ於テモ何ノ賠償ヲモ為スコトナシトス 第千七百二十三条 賃貸人ハ賃貸ノ時間賃貸シタル物件ノ形状ヲ変更スルヲ得ス 第千七百二十四条 若シ賃貸中ニ其終期迄延引スルコトヲ得サル至急ノ修理ヲ要スル時ハ賃借人ハ其為メ如何ナル不便ヲ受ケ又修理中賃貸物件ノ一部ヲ缺クモ其修理ヲ耐受セサルヲ得ス 然レトモ若シ其修理ノ四十日以上継続スル時ハ時間ト其缺キタル賃貸物件ノ部分トノ割合ニ従ヒ賃銀ヲ減殺ス可シ 若シ其修理カ賃借人及ヒ其家族ノ住居ニ必要ナルモノヲ住居シ難ク為スガ如キノ性質タル時ハ賃借人ハ賃貸ヲ解除セシムルヲ得 第千七百二十五条 賃貸人ハ外人ガ賃貸物件ノ上ニ何ノ権利ヲモ主張スルコトナク暴行ニ依テ賃借人ノ収益ニ為シタル擾害ニ付キ賃借人ニ担保ヲ為ニ及ハス賃借人ニ於テ自己ノ名ヲ以テ其外人ヲ訴フルハ格別ナリトス 第千七百二十六条 若シ之ニ反シ家屋賃借人又ハ土地賃借人カ不動産ノ所有権ニ関スル訴訟ニ因リ其収益ヲ擾害セラレタル時ハ家屋賃借人又ハ土地賃借人ハ其擾害及ヒ妨碍ヲ所有者ニ告知シタルニ於テハ家屋又ハ土地ノ賃銀ニ割合ヒタル減額ヲ要求スルノ権アリ 第千七百二十七条 若シ暴行ヲ行ヒタル者賃貸物件ノ上ニ或ル権利アルコトヲ主張スルカ又ハ賃借人カ其物件ノ全部若クハ一部ノ放棄ヲ言渡サルル為メ又ハ或ル地役ノ執行ヲ受クル為メ自ラ裁判所ニ召喚セラルル時ハ賃借人ハ担保ノ為メ賃貸人ヲ呼出ス可シ若シ又賃借人カ要求スルニ於テハ之ニ占有ヲ為サシムル所ノ賃貸人ヲ指名シ賃借人ハ訴訟ノ外ニ置カル可シ 第千七百二十八条 賃借人ハ左ノ二箇ノ重要ナル義務ヲ負担ス 第一 賃借契約ニ因リ定メタル用方又ハ約束ノ欠缺ニ於テハ事情ニ依リ推測シタル用方ニ従ヒ良家父ノ如ク賃貸物件ヲ使用スヘキコト 第二 約束シタル期限ニ於テ賃銀ヲ払フヘキコト 第千七百二十九条 賃借人若シ賃貸物件ヲ其供セラレタル使用ニ非サル他ノ使用ニ供用シ之ニ由テ賃貸人ノ為メニ損害ヲ来ス時ハ賃貸人ハ事情ニ従ヒ賃貸ヲ解除セシムルヲ得 第千七百三十条 若シ賃貸人ト賃借人トノ間ニ場所ノ状況書ヲ作リタル時ハ賃借人ハ其状況書ニ従ヒ其物件ヲ借受ケタル時ノ通ニテ返還ス可シ但シ経久若クハ天災ニ因リ滅失損壊シタルモノハ例外ナリトス 第千七百三十一条 若シ場所ノ状況書ヲ作ラサリシ時ハ賃借人ハ賃借人ノ為ス可キ修理ヲ為シタル良好ノ状況ニテ之ヲ借受ケタルモノト看做サレ其通ニテ之ヲ返還ス可シ但シ反対ノ証アル時ハ此限ニ在ラス 第千七百三十二条 賃借人ハ其収益ノ間ニ生シタル損壊又ハ滅失ニ付テハ自己ノ過失ナクシテ其生シタルコトヲ証セサルニ於テハ其責ニ任ス可シ 第千七百三十三条 賃借人ハ左ノ件々ヲ証セサルニ於テハ火災ノ責ニ任ス可シ 意外ノ変天災又ハ造営ノ不良ニ因リ火災ノ生シタルコト 又ハ隣家ヨリ火ノ延及シタルコト 第千七百三十四条 家屋賃借人数多アル時ハ悉ク連帯シテ火災ノ責ニ任ス可シ但シ左ノ場合ハ此限ニ在ラス 火災ノ其中一人ノ住居ヨリ始マリシコトヲ証スル時此場合ニ於テハ其一人ノミ其責ニ任ス 又ハ賃借人中ノ数人カ己レ等ノ家屋ヨリ火災ノ始マルヲ得サリシコトヲ証スル時此場合ニ於テハ其数人ハ其責ニ任セス 第千七百三十五条 賃借人ハ其家屋ノ者又ハ転借人ノ所為ニ因リ生シタル損壊又ハ滅失ニ付キ其責ニ任ス可シ 第千七百三十六条 若シ書面ナクシテ賃貸ヲ為シタル時ハ契約者ノ一方ハ土地ノ慣習ニ因テ定メタル期限ニ従フニ非サレハ他ノ一方ニ解約ノ報告ヲ為スヲ得ス 第千七百三十七条 賃貸ハ書面ニ因テ為シタル時ハ約定期限ノ尽了ニ於テ解約ノ報告ヲ為スヲ要セスシテ当然止了ス可シ 第千七百三十八条 書面ニ依ル賃貸ノ尽了ニ於テ賃借人若シ占有ノ侭ニテ留マリ又其侭ニテ置カルルトキハ新更ノ賃貸成リテ其効果ハ書面ナク為シタル家屋賃貸ニ関スル条則ニ依テ規定ス 第千七百三十九条 若シ解約ノ報告書ヲ送達シタル時ハ賃借人ハ其収益ヲ継続シタル時ト雖モ暗諾ノ引続賃貸アルコトヲ申立ツルヲ得ス 第千七百四十条 前二条ノ場合ニ於テハ賃貸ノ為メ立テタル保証ハ延期ヨリ生シタル義務ニ拡充セス 第千七百四十一条 賃貸契約ハ賃貸物件ノ滅失ニ因テ及ヒ賃貸人及ヒ賃借人カ相互ニ其義務ヲ履行スルノ欠缺ニ因テ解除ス 第千七百四十二条 賃貸契約ハ賃貸人ノ死去ニ因テモ賃借人ノ死去ニ因テモ解除スルコトナシ 第千七百四十三条 賃貸人仮令賃貸物件ヲ売却スルモ獲得者ハ公正ノ賃貸証書又ハ日附ノ確実ナル賃貸証書ヲ有スル土地賃借人又ハ家屋賃借人ヲ退去セシムルヲ得ス但シ賃貸契約ニ因リ賃貸人カ其権利ヲ貯存シタル時ハ此限ニ在ラス 第千七百四十四条 賃貸ノ時ニ売却ノ場合ニ於テハ獲得者カ土地賃借人又ハ家屋賃借人ヲ退去セシムルヲ得可キ旨ヲ契約シテ損害賠償ニ付キ何ノ要約ヲモ為ササリシ時ハ賃貸人ハ下ノ方法ニ従ヒ土地賃借人又ハ家屋賃借人ニ其償ヲ為ス可シ 第千七百四十五条 家屋房室又ハ店舗ニ付テハ賃貸人ハ土地ノ慣習ニ従ヒ解約報告ト退去トノ間ニ許容シタル時間ノ賃銀ニ均シキ金額ヲ損害賠償ノ名義ニテ被却賃借人ニ払フ可シ 第千七百四十六条 田野財産ニ付テハ賃貸人ヨリ土地賃借人ニ払フ可キ賠償ハ経過シ残ル総テノ時間ノ賃銀ノ三分一ナリトス 第千七百四十七条 製造場工作場又ハ其他巨額ノ立替ヲ要スル屋舎ニ付テハ鑑定人ヲ以テ賠償ヲ定ム 第千七百四十八条 売却ノ場合ニ於テ土地賃借人又ハ家屋賃借人ヲ退去セシムル為メ賃貸契約ニ依リ貯存シタル権能ヲ行ハント欲スル獲得者ハ其他解約報告ノ為メ土地ニ慣用スル時期ニ於テ予メ家屋賃借人ニ告知ス可シ 獲得者ハ亦少クモ一年前ニ田野財産ノ賃借人ニ告知ス可シ 第千七百四十九条 土地賃借人又ハ家屋賃借人ハ賃貸人又其無キニ於テハ新獲得者ヨリ前ニ記シタル損害賠償ヲ払フニ非サレハ退去セシメラルルコトヲ得ス 第千七百五十条 賃貸若シ公正証書ニ因テ為サレサルカ又ハ確実ノ日附ヲ有セサル時ハ獲得者ハ何ノ損害賠償ヲモ負担スルニ及ハス 第千七百五十一条 買戻ノ約束アル獲得者ハ回買ノ為メ定メタル期限ノ尽了ニ因リ確定ノ所有者ト為ルニ至ル迄ハ賃借人ヲ退去セシムルノ権能ヲ行フヲ得ス 第二款 家屋ノ賃貸ニ特別ナル規則 第千七百五十二条 家屋ニ充分ナル動産ヲ備ヘサル家屋賃借人ハ賃銀ニ相当スル抵保ヲ供出セサルニ於テハ退去セシメラルルコトアルノ房室ニ備フルタメ供給シタル動産ノ賃貸ハ土地ノ慣習ニ従ヒ家屋、家屋ノ主要ナル部分店舗其他ノ房室ノ賃貸ノ通常ノ時間中為シタルモノト看做ス可シ可シ 第千七百五十三条 家屋転借人ハ差押ノ時ニ当テ負債主タルヲ得ル転借賃ノ高ニ至ル迄ノ外所有者ニ対シテ負担スルコトナシ而〆期ニ先チテ為シタル弁済ヲ以テ対抗スルヲ得ス 賃貸契約ニ記シタル要約ニ従ヒ又ハ土地ノ慣習ニ従ヒ家屋転借人ノ為シタル弁済ハ之ヲ期ニ先チテ為シタルモノト看做サス 第千七百五十四条 家屋賃借人ノ為ス可キ修理即チ反対ノ約款ナキニ於テハ家屋賃借人ノ負担ス可キ小修理ハ土地ノ慣習ニ因テ何々ト指示シタルモノ及ヒ就中左ノ物件ニ為スヘキ修理ナリトス 暖炉ノ火室、其背板、其周囲ノ装具及ヒ上面ノ板 房室及ヒ其他住居ノ場所ノ壁ノ下端ヨリ一「メートル」ノ高サニ至ル迄ノ塗飾 房室ノ敷石、敷磚、但シ其中二三ノ破壊シタル時ニ限ル 窓窓ノ玻璃板、但シ雹霰其他家屋賃借人ノ負担スルニ及ハサル非常ノ変災及ヒ天災ニ因リ破壊シタル時ハ格別ナリトス 門戸窓戸店舗ノ仕切板及ヒ戸締板、蝶鉸、閂鎖鑰 第千七百五十五条 家屋賃借人ノ為ス可キモノト看做シタル修理カ経久又ハ天災ニナラテハ起因セサル時ハ家屋賃借人ハ少シモ之ヲ負担セス 第千七百五十六条 井及ヒ糞坑ノ浚ハ反対ノ約款ナキニ於テハ賃貸人ノ負担ナリトス 第千七百五十七条 家屋ノ全部家屋ノ主要ナル部分ノ全部、店舗其他 第千七百五十八条 動産ヲ備ヘタル房室ノ賃貸ハ一年幾何ト定メテ之ヲ為シタル時ハ年貸ニ為シタリト看做シ 一月幾何ト定メテ之ヲ為シタル時ハ月貸ニ為シタリト看做シ 一日幾何ト定メテ之ヲ為シタル時ハ日貸ニ為シタリト看做ス可シ 若シ一年、一月又ハ一日幾何ト定メテ賃貸ヲ為シタル証ナキ時ハ賃貸ハ土地ノ慣習ニ従ヒ為シタリト看做ス可シ 第千七百五十九条 若シ家屋又ハ房室ノ賃借人カ書面ニ依ル賃貸ノ終了ノ後賃貸人ノ故障ナク其収益ヲ継続スル時ハ土地ノ慣習ニ因テ定マリタル期限間従前ノ約件ヲ以テ家屋又ハ房室ヲ領有セリト看做サレ土地ノ慣習ニ因リ定マリタル期限ニ従ヒ解約報告書ヲ送達シタル後ニ非サレハ其家屋又ハ房室ヲ退去スルヲ得ス又之ヨリ退去セシメラルルコトナシ 第千七百六十条 家屋賃借人ノ過失ニ因ル解除ノ場合ニ於テハ家屋賃借人ハ再賃貸【マタカシ】ノ為メニ必要ノ時間賃銀ヲ払フ可シ但シ濫用ヨリ生スルヲ得タル損害賠償ト抵触スルコト無ル可シ 第千七百六十一条 賃貸人ハ賃貸シタル家屋ヲ自ラ領有セント欲スル旨ヲ陳述スル時ト雖トモ反対ノ約束ナキニ於テハ家屋賃貸ヲ解除スルヲ得ス 第千七百六十二条 若シ賃貸契約書ニ賃貸人カ家屋ヲ領有シニ来ルコトヲ得ヘキ旨ヲ約束シタル時ハ賃貸人ハ土地ノ慣習ニ因リ定マリタル時期ニ於テ予メ解約報告書ヲ送達ス可シ 第三款 土地ノ賃貸ニ特別ナル規則 第千七百六十三条 賃貸人ト果実ヲ分派スルノ約件ヲ以テ耕作ヲ為ス者ハ賃貸契約ニ因テ明然其権能ヲ許与セラレタル時ニ非サレハ転貸シ又譲与スルヲ得ス 第千七百六十四条 違背ノ場合ニ於テハ処有者ハ収益ヲ復スルノ権ヲ有シ賃借人ハ賃貸契約ノ不執行ヨリ生シタル損害賠償ノ言渡ヲ受ク可シ 第千七百六十五条 若シ土地ノ賃貸証書ニ土地カ現実ニ有スル所ヨリ更ニ小又ハ更ニ大ナル面積ヲ記スル時ハ売買ノ巻ニ定メタル場合ト法式トニ従フニ非サレハ土地賃借人ノ為メニ賃銀ノ増減ヲ為サストス 第千七百六十六条 田野不動産ノ賃借人若シ其耕耘ニ必要ノ獣類及ヒ器具ヲ之レニ備ヘス若シクハ耕作ヲ放棄シ若クハ良家父ノ如ク耕作セス若クハ賃貸物件ヲ其供セラレタル使用ニ非サル他ノ使用ニ供用シ若クハ一般ニ賃貸ノ約款ヲ執行セスシテ賃貸人ノ為メニ損害ヲ来セシ時ハ賃貸人ハ事情ニ従ヒ賃貸ヲ解除セシムルヲ得 賃借人ノ処為ヨリ生シタル解除ノ場合ニ於テハ賃借人ハ第千七百六十四条ニ記スル如ク損害賠償ヲ負担ス可シ 第千七百六十七条 凡テ田野財産ノ賃借人ハ賃貸契約ニ従ヒ特ニ定メタル場処ニ果実ヲ貯存ス可シ 第千七百六十八条 田野財産ノ賃借人ハ其土地上ニ行ハルルコトアル侵奪ヲ処有者ニ報告ス可シ之ヲ為ササル時ハ総テノ費用及ヒ損害賠償ヲ負担セサルヲ得ス 其報告ハ土地ノ距離ニ従ヒ召喚状送達ノ場合ニ付キ規定スル所ト同一ノ期内ニ於テ之ヲ為ス可シ 第千七百六十九条 賃貸若シ数年ニ付テ為サレ其賃貸ノ時間ニ意外ノ変ニ因リ収穫物ノ全部若クハ少クモ半部ヲ損失シタル時ハ土地賃借人ハ其賃銀ノ免釈ヲ要求スルヲ得但シ以前ノ収穫物ヲ以テ補償ヲ得タル時ハ此限ニ非ス 若シ補償ヲ得サル時ハ免釈ノ評価ハ賃貸ノ終期ニ於テナラテハ為サス此時ニ於テ収益ヲ為シタル総テノ年間ノ相殺ヲ為ス可シ 然レトモ裁判官ハ賃借人ニ其受ケタル損失ニ准シ賃銀ノ一部ノ弁済ヲ仮ニ免釈スルコトヲ得 第千七百七十条 若シ賃貸一年ニ止マリ損失カ果実ノ全部若クハ少クモ半部ニアル時ハ賃借人ハ之ニ比準シテ賃銀ノ一部ヲ免釈セラル可シ 若シ損失半部以下タル時ハ賃借人ハ何ノ免釈ヲモ主張スルヲ得ス 第千七百七十一条 賃借人ハ果実ノ損失カ土地ヨリ之ヲ分離シタル後ニ生セシ時ハ賃貸契約ニ於テ所有者ニ収穫物ノ一部ヲ実物ニテ与ヘサルニ於テハ免釈ヲ得ル能ハス処有者ニ収穫物ノ一部ヲ実物ニテ与フル場合ニ於テハ処有者ハ賃借人カ其収穫物ノ部分ヲ已レニ引渡スコトヲ遅滞セサルニ於テハ已レノ損失ノ部分ヲ負担セサルヲ得ス 土地賃借人ハ賃貸契約ヲ為シタル時期ニ於テ損害ノ原因ノ存在シ且ツ覚知セラレテアリシ時ハ同シク免釈ヲ要求スルヲ得ス 第千七百七十二条 賃借人ハ明然ノ要約ニ因テ意外ノ変ヲ負担スルコトヲ得 第千七百七十三条 其要約ハ雹霰雷火凍冴又ハ凶歉ノ如キ通常ノ意外ノ変ナラテハ意味セサルモノトス 其要約ハ国カ通常受ケサル兵乱洪水ノ如キ非常ノ意外ノ変ヲ意味セス但シ賃借人カ予知シ又ハ予知セサル総テノ意外ノ変ヲ負担シタル時ハ此限ニ在ラス 第千七百七十四条 田野不動産ノ書面ナキ賃貸ハ賃借人カ其賃借シタル不動産ノ総テノ果実ヲ収穫スル為メ必要ノ時間之ヲ為シタリト看做ス可シ 仍テ牧地葡萄園其他一年内ニ於テ果実ヲ全ク収穫ス可キ不動産ノ賃貸ハ一年間之ヲ為シタリト看做ス可シ 耕作スヘキ土地ノ賃貸ハ其土地ヲ循環耕作又ハ四季耕作ニ区分スル時ハ其区数ニ准スル年数間之ヲ為シタリト看做ス可シ 第千七百七十五条 田野不動産ノ賃貸ハ書面ナク為シタル時ト雖トモ前条ニ従ヒ之ヲ為シタリト看做シタル時間ノ終期ニ於テ当然止了ス可シ 第千七百七十六条 書面アル田野ノ賃貸ノ終期ニ於テ賃借人若シ其占有ノ侭ニテ留マリ又其侭ニテ置カルル時ハ第千七百七十四条ニ因テ効果ヲ規定スル処ノ新賃貸ト成ルモノトス 第千七百七十七条 退去スル土地賃借人ハ次年ノ事業ノ為メ適当ノ住居ト其他ノ便益トヲ己レニ継代スル者ニ遺留ス可シ又之レニ対シテ新入ノ土地賃借人ハ牧草ノ消費ノ為メ及ヒ為シ残シタル収穫ノ為メ相当ノ住居ト其他ノ便益トヲ退去スル者ニ得シム可シ 右孰レノ場合ニ於テモ土地ノ慣習ニ従フ可シ 第千七百七十八条 退去スル土地賃借人ハ其収益ヲ始ムル時ニ藁及ヒ肥料ヲ収受シタルニ於テハ亦当一年ノ藁及ヒ肥料ヲ遺留ス可シ処有者ハ賃借人ノ之ヲ収受セサリシ時ト雖トモ評価ニ従ヒ之ヲ留置スルコトヲ得 第三章 工作《ウーブラージュ》及ヒ産業《アンヂュユストリー》ノ賃貸 第千七百七十九条 工作及ヒ産業ノ賃貸ノ重要ナル種類三アリ 第一 或ル人ノ使役ヲ負任スル労動者ノ賃貸 第二 人又ハ商品ノ運送ヲ担任スル水陸運送人ノ賃貸 第三 「ドウイー」及ヒ「マルシエー」ニ因ル工作ノ起業人ノ賃貸 第一款 傭人及ヒ職工ノ賃貸 第千七百八十条 限リタル時間又ハ定リタル起業《アントリブリーズ》ノ為メニ非サレハ使役ヲ約束スルヲ得ス 第千七百八十一条 (千八百六十八年八月二日廃止)傭主ハ左ノ件々ニ付キ其諾言ヲ信拠セラル可シ 傭賃ノ額 期限ノ至リタル一年ノ給料ノ弁済 当年分ノ為メニ附与シタル内金 第二款 水陸運送人 第千七百八十二条 水陸運送人ハ己レニ委託セラレタル物件ノ看守保存ニ付テハ附託及ヒ係争物附託ノ巻ニ記スル旅館主ノ義務ト同一ノ義務ニ従フ可シ 第千七百八十三条 水陸運送人ハ其船舶又ハ運車ノ内ニ既ニ収受シタルモノノミナラス船舶又ハ運車ノ内ニ積載センカ為メ湊港又ハ貨物貯処ニ於テ収受シタルモノニ付テモ其責ニ任ス 第千七百八十四条 水陸運送人ハ己レニ委託セラレタル物件ノ滅失又ハ損壊ニ付テハ意外ノ変又ハ天災ニ因テ其滅失又ハ損壊シタルコトヲ証セサルニ於テハ其責ニ任ス 第千七百八十五条 水陸ノ公同運車ノ起業人及ヒ公同運輸ノ運送人ハ己レノ担任シタル金銀物件及ヒ包荷ノ帳簿ヲ設ク可シ 第千七百八十六条 公同ノ運車及ヒ運輸ノ起業人及ヒ管理者、船舶ノ首長ハ其他己等ト他ノ人民トノ間ノ法律タル別段ノ規則ニ循フヘシ 第三款 「ドウイー」及ヒ「マルシエー」 第千七百八十七条 若シ或ル人ニ工作ヲ為スコトヲ任シタル時ハ其者カ己レノ労動又ハ産業ノミヲ供ス可キカ又ハ材料ヲモ供ス可キカヲ約束スルヲ得 第千七百八十八条 職工若シ材料ヲ供スル場合ニ於テ引渡ノ前ニ物件カ何ノ方法ニ於ルヲ問ハス滅失シタル時ハ其損失ハ傭主カ物件ヲ収受スルコトヲ遅滞セサリシニ於テハ職工ニ帰スルモノトス 第千七百八十九条 職工カ労動又ハ産業ノミヲ供スル場合ニ於テ若シ物件ノ滅失シタル時ハ職工ハ其過失ニ非サレハ負担セス 第千七百九十条 前条ノ場合ニ於テ若シ工作物ノ領収セラルル前ニ傭主ノ検査ヲ遅滞スルコトナク物件ノ滅失シタル時ハ仮令職工ノ方ニ何ノ過失ナキ時ト雖トモ職工ハ賃銀ヲ要求スルヲ得ス但シ物件カ材料ノ瑕瑾ニ因テ滅失シタル時ハ此限ニ在ラス 第千七百九十一条 数個ニ分チ又ハ度量ヲ以テスル工作ニ関シテハ一部ツツ検査ヲ為スヲ得傭主若シ成就シタル工作ノ割合ニ応シテ職工ニ弁済シタル時ハ弁済シタル総テノ部分ニ付キ検査ヲ為シタリト看做ス可シ 第千七百九十二条 請負ヲ以テ建築シタル建造物若シ建築ノ瑕瑾ニ因リ若クハ土地ノ瑕瑾ニ因ルモ其全部若クハ一部ノ滅失シタル時ハ建築者又ハ起業人ハ十年間其責ニ任ス 第千七百九十三条 建築者又ハ起業人若シ土地ノ処有者ト決定約束シタル計画ニ従ヒ建造物ノ請負建築ヲ担任シタル時ハ作料又ハ材料ノ増加ヲ口実トスルモ計画ニ付キ為シタル変更又ハ増加ヲ口実トスルモ代価ノ増加ヲ要求スルヲ得ス但シ書面ヲ以テ其変更増加ヲ許容シ且ツ所有者ト代価ヲ約束シタル時ハ格別ナリトス 第千七百九十四条 傭主ハ仮令工作ノ既ニ始マリタル時ト雖トモ総テノ費用総テノ労動及ヒ起業人ノ其起業ニ付キ利得スルヲ得可キ総テノモノヲ弁償シ己レ一個ノ意ニ因テ請負契約ヲ廃棄スルヲ得 第千七百九十五条 工作ノ賃貸契約ハ職工建築者又ハ起業人ノ死去ニ因テ解除ス 第千七百九十六条 然レトモ処有者ハ為サレタル工作及ヒ準備シタル材料ノ己レニ有益タルヲ得ル時ニ限リ其価額ヲ約束ニ因テ定メタル代価ノ割合ニ准シテ職工建築者又ハ起業人ノ遺物ニ弁済ス可シ 第千七百九十七条 起業人ハ其使用スル者ノ処為ニ付キ其責ニ任ス 第千七百九十八条 起業ニテ為シタル建造物其他ノ工作物ノ建築ニ使用シタル泥工匠工及ヒ其他ノ職工ハ訴訟ヲ為シタル時ニ当リ工作ヲ為サシメタル者カ起業人ニ対シテ負債主タル高ニ至ル迄ノ外工作ヲ為サシメタル者ニ対シテ訴権ヲ有セス 第千七百九十九条 直接ニ請負契約ヲ為ス泥工匠工錠工其他ノ職工ハ本款ニ記シタル規則ニ従フ可シ是等ノ工人ハ其約定スル部分ニ付テハ起業者ナリトス 第四章 獣借契約 第一款 総則 第千八百条 獣借契約トハ契約者双方間ニ約束シタル約件ニ従ヒ其一方ヨリ家畜ヲ看守畜養照管スル為メ他ノ一方ニ家畜ノ元資ヲ附与スル契約ヲ云フ 第千八百一条 獣借契約ニ数種アリ 単純即チ通常ノ獣借契約 分半ノ獣借契約 土地賃借人又ハ分果小作人ニ附与シタル獣借契約 尚ホ不当ニ獣借契約ト称スル契約ノ第四種ノモノアリ 第千八百二条 増殖スルヲ得ヘク又ハ農業商業ノ為メ利得トナル可キ諸種ノ獣畜ヲ賃貸ト為スコトヲ得 第千八百三条 別段ノ約束ナキニ於テハ是等ノ契約ハ下ノ原則ニ循テ規定ス 第二款 単純ノ獣借契約 第千八百四条 単純ノ獣借契約トハ賃借人ニ於テ増殖ノ一半ヲ利得シ又損失ノ一半ヲ負担スルノ約件ヲ以テ看守畜養照管スル為メ一方ヨリ他ノ一方ニ家畜ヲ附与スル契約ヲ云フ 第千八百五条 契約書ニ於テ賃貸ノ獣畜ニ附シタル評価ハ賃貸人ニ其処有権ヲ移転セス其評価ハ賃貸ノ終期ニ於テ有ルコトヲ得可キ損失又ハ利得ヲ定ムルノ外目的ナシトス 第千八百六条 賃借人ハ其家畜ノ保存ニ付キ良家父ノ注意ヲ為ス可シ 第千八百七条 賃借人ハ既ニ自己ノ方ニ或ル過失アリテ其過失無カリセハ損失ヲ生セサル可カリシ時ニ非サレハ意外ノ変ヲ負担セス 第千八百八条 争訟アル場合ニ於テハ賃借人ハ意外ノ変ヲ証シ賃貸人ハ賃借人ニ帰スル過失ヲ証ス可シ 第千八百九条 意外ノ変ニ依テ免釈セラレタル賃借人ハ常ニ獣畜ノ皮ヲ計算ス可シ 第千八百十条 賃借人ノ過失ナクシテ獣畜ノ全ク滅尽シタル時ハ其損失ハ賃貸人ニアリトス 若シ其一部ナラテハ滅尽セサル時ハ損失ハ其初時ノ評価ト獣借終了ノ時ノ評価トニ従ヒ之ヲ共同ニ負担ス可シ 第千八百十一条 左ノ件々ハ要約スルヲ得ス 賃借人ハ其過失ナク意外ノ変ニ依テ生シタル時ト雖トモ賃貸獣畜ノ全部ノ損失ヲ負担ス可キコト 賃借人ハ利得ニ付テヨリ更ニ大ナル部分ヲ損失ニ付テ負担スヘキコト 賃貸人ハ其供給シタル獣畜ヨリ幾何ノ多数ヲ賃貸ノ終リニ於テ先収スヘキコト 右ニ類似シタル契約ハ総テ効ナシトス 賃借人ハ賃貸ニ附セラレタル獣畜ノ乳汁肥糞及ヒ労動ヲ一人ニテ利得ス 羊毛及ヒ増殖獣ハ之ヲ分派ス 第千八百十二条 賃借人ハ賃貸人ノ承諾ナクシテ元資若クハ増殖ノ獣群中ノ一獣ヲモ処分スルヲ得ス賃貸人モ賃借人ノ承諾ナクシテ処分スルヲ得ス 第千八百十三条 他人ノ土地賃借人ニ獣畜ノ賃貸ヲ為シタル時ハ其賃借人カ借リタル土地ノ所有者ニ之ヲ報知ス可シ若シ之ヲ為ササル時ハ其所有者ハ其賃借人ノ己レニ対シテ負担スルモノノ為メ獣畜ヲ差押ヘ之ヲ売却セシ厶ルヲ得 第千八百十四条 賃借人ハ賃貸人ニ報知セスシテ剪毛スルヲ得ス 第千八百十五条 獣畜賃貸ノ継続時間ノ為メ約束ニ依テ定メタル時期ナキ時ハ三年間賃貸シタリト看做ス可シ 第千八百十六条 賃貸人ハ賃借人カ其義務ヲ履行セサルニ於テハ尚早ク其解除ヲ要求スルヲ、得 第千八百十七条 賃貸ノ終期又ハ其解除ノ時ニ於テハ更ニ獣畜ノ評価ヲ為ス可シ 賃貸人ハ初時ノ評価ノ高ニ至ル迄各種ノ獣畜ヲ先収スルヲ得其残余ハ之ヲ分派ス 初時ノ評価ニ充ツルニ足ル獣類ナキ時ハ賃貸人ハ残存スルモノヲ収取シ契約者双方ハ其損失ヲ分担ス 第三款 分半ノ獣借契約 第千八百十八条 分半ノ獣借契約トハ契約者各自カ家畜ノ一半ヲ供出シ利得又ハ損失ニ付キ其家畜ヲ共通スルノ会社ヲ云フ 第千八百十九条 賃借人ハ単純ノ獣借ニ於ケル如ク一人ニテ獣類ノ乳汁肥糞及ヒ労動ヲ利得ス 賃貸人ハ羊毛及ヒ増殖獣ノ一半ニ付テナラテハ権利ヲ有セス 総テ反対ノ約束ハ効ナシトス但シ賃貸人カ分果小作地ノ所有者ニシテ賃借人カ其土地賃借人又ハ分果小作人タル時ハ此限ニ在ラス 第千八百二十条 其他単純ノ獣借ノ規則ハ総テ分半ノ獣借ニ適用ス 第四款 所有者ヨリ其土地賃借人又ハ分果小作人ニ附シタル獣借契約 第一節 土地賃借人ニ附シタル獣借契約 第千八百二十一条 此獣借契約(亦之ヲ「シユテルドフエル」ト云フ)トハ賃貸ノ終期ニ於テ土地賃借人カ其収受シタルモノノ評定額ニ均シキ価額ノ家畜ヲ遺留スルノ負担ヲ以テ分果小作地ノ所有者ヨリ其土地ヲ賃貸スルモノヲ云フ 第千八百二十二条 土地賃借人ニ附与シタル獣類ノ評価ハ其者ニ其所有権ヲ移転セス然レトモ獣類ヲ其危険ニ帰セシム 第千八百二十三条 総テノ利得ハ反対ノ約束ナキニ於テハ賃貸契約ノ継続時間土地賃借人ニ帰属ス 第千八百二十四条 土地賃借人ニ附シタル獣借契約ニ於テ肥糞ハ土地賃借人一身ノ利得ニ帰セス然レトモ分果小作地ニ属シ其耕耘ニノミ之ヲ使用ス可シ 第千八百二十五条 滅尽ハ全部ニ係ハリ且ツ意外ノ変ニ因ルト雖トモ反対ノ約束ナキニ於テハ全ク土地賃借人ニ帰ス 第千八百二十六条 賃貸ノ終期ニ於テ土地賃借人ハ初時ノ評価ヲ払フテ獣畜ヲ留有スルヲ得ス其収受シタル獣畜ニ均シキ価額ノ獣畜ヲ遺留ス可シ 若シ不足ノ時ハ土地賃借人ハ之ヲ弁償ス可シ土地賃借人ニ属スルモノハ止タ残余ノミトス 第二節 分果小作人ニ附シタル獣借契約 第千八百二十七条 獣畜若シ小作人ノ過失ナクシテ全ク滅尽シタル時ハ損失ハ賃貸人ニ帰ス 第千八百二十八条 左ノ件々ハ要約スルコトヲ得○小作人カ通常ノ価額ヨリ低下ノ代価ヲ以テ其得分ノ羊毛ヲ賃貸人ニ委付ス可キコト 賃貸人ハ利得ニ付キ更ニ大ナル得分ヲ得可キコト 賃貸人ハ乳汁ノ一半ヲ得可キコト 然レトモ小作人カ総テノ損失ヲ負権ス可キコトヲ要約スルヲ得ス 第千八百二十九条 此獣借契約ハ分果小作地ノ賃貸ト同時ニ終了ス 第千八百三十条 此獣借契約ハ其他単純ノ獣畜賃貸ノ規則ニ循フモノトス 第五款 不当ニ獣借契約ト称スル契約 第千八百三十一条 若シ一頭又ハ数頭ノ牝牛ヲ舎宿シ又ハ畜養セシムル為メニ附与シタル時ハ賃貸人ハ其処有権ヲ保有ス然レトモ其産出シタル犢牛ナラテハ利得セス 第九巻 会社契約(千八百四年三月八日決定同月十八日頒布) 第一章 総則 第千八百三十二条 会社トハ二人若クハ数人カ或ル物件ヨリ生スルヲ得可キ利益ヲ分派スルノ目的ヲ以テ或ル物件ヲ共通ニ附スルコトヲ約スル契約ヲ云フ 第千八百三十三条 凡テ社会ハ適法ノ目的ヲ有ス可ク且ツ契約者ノ共同ノ利益ノ為メニ契約ス可シ 社員ハ或ハ金額或ハ其他ノ財産或ハ其産業ヲ会社ニ供出ス可シ 第千八百三十四条 総テ会社ハ其目的ノ百五十「フラン」以上ノ価額タル時ハ書面ヲ以テ記述ス可シ 人証ハ仮令百五十「フラン」以下ノ金額又ハ価額ニ関スル時ト雖トモ会社証書ニ記シタル所ニ反スル事及ヒ其記シタル所ノ外ノ事ニ付キ之ヲ許サス又其証書作成ノ前其時及ヒ其後ニ言述セラレタリト主張スル事ニ付テモ之ヲ許サス 第二章 会社ノ種々ノ種類 第千八百三十五条 会社ニハ総括的アリ特定的アリ 第一款 総括ノ会社 第千八百三十六条 総括ノ会社ヲ二種ニ区別ス現有ノ総財産ノ会社ト利得ノ総括ノ会社ナリ 第千八百三十七条 現有ノ総財産ノ会社トハ契約者カ現在占有スル動産不動産及ヒ之ヨリ収得スルヲ得可キ利得ヲ共通ニ付スルノ会社ヲ云フ 又契約者ハ他ノ諸種ノ利得ヲ会社ニ包含スルヲ得然レトモ相続贈遺又ハ遺嘱ニ因テ契約者ノ得有ス可キ財産ハ其収益ノ為メナラテハ此会社ニ入ラサルモノトス此財産ノ所有権ヲ此会社ニ加ヘントスル総テノ要約ハ之ヲ禁ス但シ夫婦ノ間ニ於テ且ツ夫婦ニ対シ規定スル所ニ従テ為スハ此限ニ在ラス 第千八百三十八条 利得総括ノ会社ハ其会社ノ存続ノ間名義ノ如何ヲ問ハス契約者カ己レノ産業ニ依テ獲得ス可キ総テノモノヲ包含ス契約ノ時ニ於テ各社員ノ占有スル動産モ亦之ヲ包含ス然レトモ其一身ニ属スル不動産ハ其収益ノ為メナラテハ此会社ニ入ラサルモノトス 第千八百三十九条 別段ノ説明ナク為シタル総括会社ノ単純ナル約束ハ利得総括ノ会社ナラテハ提起セス 第千八百四十条 如何ナル総括ノ会社ト雖トモ相互ニ贈遺シ又ハ収受スルノ能力アリ且ツ他人ノ損失ニ於テ自ラ利スルコトヲ禁セラレサル者ノ間ナラテハ成立スルヲ得ス 第二款 特定ノ会社 第千八百四十一条 特定ノ会社トハ或ル定マリタル物件其使用又ハ其物件ヨリ収取ス可キ果実ニナラテハ適当セサル会社ヲ云フ 第千八百四十二条 指定シタル起業ノ為メ又ハ或ル職業ノ執行ノ為メニ数人結社スル契約モ亦特定会社ナリトス 第三章 相互ノ間及ヒ外人ニ対スル社員ノ義務 第一款 社員相互ノ間ノ義務 第千八百四十三条 会社ハ契約ニ因テ他ノ時期ヲ指示セサルニ於テハ契約ノ時ニ開始ス 第千八百四十四条 若シ会社ノ存続時間ニ付キ約束ナキ時ハ第千八百六十九条ニ記シタル変更ニ従ヒ社員ノ生存中之ヲ契約シタリト看做シ又存続時間ノ限定シタル事業ニ係リテハ其事業ノ存続可スキ時間之ヲ契約シタリト看做ス可シ 第千八百四十五条 各社員ハ会社ニ対シ会社ニ供出スルコトヲ約諾シタル総テノモノニ付キ負債主ナリトス 若シ其供出スルモノ特定物ニアリテ会社カ之ヲ強却セラレタル時ハ社員ハ売主ノ買主ニ対シテ担保者タルト同一ノ方法ニ従ヒ会社ニ対シテ担保者ナリトス 第千八百四十六条 会社ニ金額ヲ供出ス可クシテ供出セサリシ社員ハ訟求ナキモ金額ヲ弁済ス可キ日ヨリ計算シテ当然其利息ノ負債主トナル可シ 社員ハ会社ノ金匣ヨリ取出シタル金額ニ付テモ其特私ノ利益ニ之ヲ金匣ヨリ取出シタル日ヨリ計算シテ当然其利息ノ負債主トナル可シ 右何レモ損害アルニ於テハ尚ホ多額ノ損害賠償ト抵触スルコトナカル可シ 第千八百四十七条 己レノ産業ヲ会社ニ供出スルコトヲ約諾シタル社員ハ其会社ノ目的タル産業ノ種類ニ依テ為シタル総テノ利得ヲ会社ニ計算ス可シ 第千八百四十八条 社員ノ一人其特私ノ計算ノ為メ或人ニ対シテ期限ニ至リタル金額ノ債主ニシテ其人会社ニ対シ亦同シク期限ニ至リタル金額ヲ負債シタル時ハ仮令其社員カ特私ノ貸金ノ上ニ全部ノ抵充ヲ為ス可キコトヲ領収書ニ依リ定メタル時ト雖トモ其負債主ヨリ収受シタルモノノ抵充ハ二箇ノ貸金ノ割合ニ従ヒ会社ノ貸金ト自己ノ貸金ノ上ニ之ヲ為ス可シ然レトモ抵充ハ会社ノ貸金ノ上ニ全ク之ヲ為ス可キ旨ヲ領収書ニ明記セシ時ハ其要約ヲ執行ス可シ 第千八百四十九条 社員ノ一人若シ共同ノ貸金中己レノ得分ノ全部ヲ収受シ而ル後負債主ノ無資力トナリシ時ハ其社員ハ己レノ得分ノ為メ特別ニ領収書ヲ付シタル時ト雖モ其収受シタルモノヲ共同ノ財産合部中ニ返還ス可シ 第千八百五十条 各社員ハ其過失ニ因テ会社ニ起シタル損害ヲ会社ニ対シテ負担ス可シ其損害ト己レノ産業カ他ノ事業ニ依テ会社ニ得シメタル利得ト相殺スルヲ得ス 第千八百五十一条 収益ノミヲ会社ニ供シタル物件若シ使用ニ因テ消耗セサル特定物タル時ハ其物件ハ所有者タル社員ノ危険ニ帰ス 若シ其物件消耗シ、保存シツツ損壊シ、売ルコトニ定メラレテアリ若クハ目録ニ記シタル評価ニ従ヒ会社ニ供セラレタル時ハ其物件ハ会社ノ危険ニ帰ス 若シ物件ヲ評価シタル時ハ社員ハ其評価ノ金額ナラテハ回収スルヲ得ス 第千八百五十二条 社員ハ会社ノ為メニ償弁シタル金額ニ付テノミナラス又会社ノ事業ノ為メ善意ヲ以テ契約シタル義務及ヒ其管理ヨリ分離ス可カラサル危険ニ付キ会社ニ対シテ訴権ヲ有ス 第千八百五十三条 若シ会社証書ニ利益又ハ損失ニ付キ各社員ノ分前ヲ定メサル時ハ各自ノ分前ハ会社ノ資本中ニ於ル其供出高ノ割合ニ准ス 産業ナラテハ供出セサル者ニ付テハ其利益又ハ損失ノ分前ハ其供出カ最モ少シク供出シタル社員ノ供出高ト同一ナリシ如クニ之ヲ定ム 第千八百五十四条 社員若シ其分前ノ規定ニ付キ其中ノ一人又ハ外人ノ裁定ニ任スヘキ旨ヲ約束セシ時ハ其規定ハ明然公平ニ反スル時ニ非サレハ之ヲ訟撃スルヲ得ス 損失ヲ被リタリト主張スル者カ規定ヲ知リタル時ヨリ三月以上ヲ経過セシカ若クハ其者ノ方ヨリシテ其規定ノ執行ヲ始メタル時ハ此件ニ付キ何ノ申立ヲモ為スコトヲ許サス 第千八百五十五条 社員ノ一人ニ利益ノ全部ヲ附与スル約束ハ効ナシトス 社員ノ一人若クハ数人ヨリ会社ノ資本中ニ供出シタル金額若クハ物件ヲシテ損失ノ分担ヲ免カレシムルノ要約モ同前ナリトス 第千八百五十六条 会社契約ノ別段ノ約款ニ因リ管理ヲ任セラレタル社員ハ詐欺ヲ以テ為ササル以上ハ其管理ニ関スル総テノ所為ヲ他ノ社員ノ故障ニ拘ハラス為スコトヲ得 此威権ハ会社ノ存続スル間ハ正当ノ原因ナクシテ廃却セラルルコトナシ然レトモ会社契約以後ノ証書ニ因テ其威権ヲ附与セシトキハ単純ノ代理ノ如ク之ヲ廃却スルコトヲ得可シ 第千八百五十七条 若シ数人ノ社員ニ管理ヲ委任シテ其職掌ヲ定メサルカ若クハ其一人カ他ノ者ナクシテ事ヲ行フヲ得サル旨ヲ明定セサル時ハ各自別々ニ其管理ノ総テノ所為ヲ行フヲ得 第千八百五十八条 管理人ノ一人若シ他ノ者ナクシテ何事ヲモ為スヲ得サルノ要約アリシ時ハ新更ノ約束ナキニ於テハ他ノ者カ現ニ管理ノ所為ヲ助成スルコト能ハサル時ト雖モ他ノ者ノ不在ニ於テ一人ニテ事ヲ行フヲ得ス 第千八百五十九条 管理ノ方法ニ付キ別段ノ要約ノ欠缺スルニ於テハ左ノ規則ニ従フ可シ 第一 社員ハ其一人カ他ノ一人ノ為メ管理スルノ権ヲ相互ニ附与シタリト看做ス可シ○各社員ノ為シタルモノハ他ノ社員ノ承諾ヲ得タルコトナキモ他ノ社員ノ分前ニ付キ有効ナリトス但シ行為ヲ決定スル前ニ他ノ社員又ハ其中ノ一人ハ其行為ニ付キ故障ヲ為スノ権アリトス 第二 各社員ハ慣習ニ依テ定メタル用法ニ従テ使用シ且ツ会社ノ利益ニ反シテ又ハ他ノ社員ノ其権利ヲ以テ使用ヲ為スヲ障クル方法ニ於テ使用セサルニ於テハ会社ニ属スル物件ヲ使用スルヲ得 第三 各社員ハ会社ノ物件ノ保存ニ必要ナル費用ヲ己レト共ニ為サンカ為メ其同社員ヲ要強スルノ権アリ 第四 社員ノ一人ハ会社ノ為メ有益ナリト主張スル時ト雖トモ他ノ社員ノ承諾ヲ為ササルニ於テハ会社ニ属スル不動産ノ上ニ新事ヲ為スコトヲ得ス 第千八百六十条 管理者ニアラサル社員ハ会社ニ属スル物件ヲ動産タリト雖モ譲与シ又ハ抵保ト為スヲ得ス 第千八百六十一条 各社員ハ会社ニ於テ己レノ有スル分前ニ関シテ其同社員ノ承諾ナクシテ外人ヲ己レト組合ハシムルコトヲ得然レトモ各社員ハ会社ノ管理権ヲ有スル時ト雖トモ其承諾ナクシテ外人ヲ会社ト組合ハシムルコトヲ得ス 第二款 外人ニ対スル社員ノ義務 第千八百六十二条 商業会社外ノ会社ニ於テハ社員ハ会社ノ負債ヲ連帯シテ負担スルコトナシ又社員ノ一人ハ他ノ社員ヨリ其威権ヲ附与セラレサリシニ於テハ他ノ社員ニ義務ヲ負ハシムルヲ得ス 第千八百六十三条 社員ハ其契約シタル権利者ニ対シテハ仮令ヒ其中ノ一人ノ会社ニ於ル分前カ更ニ少額ナル時ト雖トモ証書ニ於テ特ニ其少額ノ割合ニ従ヒ其者ノ義務ヲ制限セサリシニ於テハ各自平等ノ金額及ヒ分前ニ付キ負担ヲ為ス可シ 第千八百六十四条 会社ノ為メニ義務ヲ契約シタル旨ノ要約ハ契約シタル社員ノミヲ拘束シ他ノ社員ヲ拘束セス但シ他ノ社員カ契約シタル社員ニ其威権ヲ附与シ又ハ事物カ会社ノ利益ニ転還セシ時ハ此限ニ在ラス 第四章 会社ノ終了スル種々ノ方法 第千八百六十五条 会社ハ左ノ件々ニ因テ終了ス 第一 会社ヲ契約シタル時間ノ尽了 第二 物件ノ消滅又ハ事業ノ竣成 第三 社員中ノ者ノ実ノ死去 第四 社員ノ一人ノ准死禁治産又ハ民事分散 第五 一人又ハ数人カ明示スル所ノ最早会社中ニ在ラサルノ意思 第千八百六十六条 時期ヲ定限シタル会社ノ延期ハ会社契約ト同一ノ法式ヲ具備シタル書面ニ依ルニ非サレハ之ヲ証スルヲ得ス 第千八百六十七条 社員ノ一人カ物件ノ所有権ヲ共通ニ付スルコトヲ約諾シタル時其共通ヲ実施セサル前ニ生シタル滅失ハ総社員ニ関シテ会社ノ解散ヲ来タスモノトス 収益ノミヲ共通ニ付シ其所有権ノ社員ノ手ニ存スル時モ会社ハ同シク総テノ場合ニ於テ物件ノ滅失ニ因テ解散ス 然レトモ会社ハ既ニ所有権ヲ会社ニ供出シタル物件ノ滅失ニ因テ解散セス 第千八百六十八条 社員ノ一人ノ死去ノ場合ニ於テハ会社ハ其相続人ト共ニ存続シ又ハ唯遺存社員ノ間ニ存続ス可キヲ要約セシ時ハ此規約ニ従フ可シ此第二ノ場合ニ於テハ死者ノ相続人ハ死去ノ時ニ於ケル会社ノ状況ニ准シテ会社ノ分派ヲ受クルノ権ナラテハ有セス而シテ爾後ノ権利ニ関シテハ其権利カ相続セラレタル社員ノ死去ノ前ニ成リタルモノノ必須ノ結果タル時ニ非サレハ之ニ参関セス 第千八百六十九条 社員ノ一人ノ意思ニ因ル会社ノ解散ハ存続時間ノ定限セラレサル会社ニナラテハ適当セス而シテ其解散ハ総テノ社員ニ通知シタル放棄ニ依テ成レルモノトス但シ其放棄ハ善意ノモノニシテ且ツ時機ニ反シテ為サレサルコトヲ要ス 第千八百七十条 総テノ社員カ共同ニ収得セント期シタル利得ヲ一社員カ一人ニテ収得センカ為メニ放棄ヲ為ス時ハ放棄ハ善意ニ非ストス 事物ノ最早完全ナラスシテ会社ノ為メ其解散ヲ延スコトヲ要スル時ハ放棄ハ時機ニ反シテ為サレタリトス 第千八百七十一条 有期会社ノ解散ハ他ノ社員カ約束ヲ缺キ又ハ恒常ノ廃疾ニ因リ社務ニ堪ヘス又ハ其他之ニ類似スル場合ノ如ク正当ノ理由アル時ニ非サレハ約束シタル時期ノ前ニ社員ノ一人ヨリ之ヲ要求スルヲ得ス其場合ノ当否軽重ハ裁判官ノ判定ニ任ス 第千八百七十二条 遺物ノ分派其分派ノ法式及ヒ分派ヨリシテ共同相続人ノ間ニ生スル義務ニ関スル規則ハ社員間ノ分派ニ適用ス 商業会社ニ関スル規則 第千八百七十三条 本巻ノ規則ハ商業ノ法律及ヒ慣習ニ反セサル点ニ付テナラテハ商業会社ニ適用セス 第十巻 貸借(千八百四年三月九日決定同月十九日頒布) 第千八百七十四条 貸借ニ二種アリ左ノ如シ 消耗スルコトナクシテ使用スルヲ得ル物件ノ貸借 人ノ使用ヲ為スニ依リ消耗スル物件ノ貸借 第一種ヲ「プレータユザージュ」又ハ「コンモダー」{共ニ使用貸借ノ義}ト云フ 第二種ヲ消耗貸借又ハ単ニ貸借ト云フ 第一章 使用貸借 第一款 使用貸借ノ性質 第千八百七十五条 使用貸借トハ借主ヨリ或ル物件ヲ使用シタル後ニ返還スルノ負担ヲ以テ契約者ノ一方カ使用ノ為メ他ノ一方ニ其物件ヲ引渡スノ契約ヲ云フ 第千八百七十六条 此貸借ハ性質上ニ於テ無償ナリトス 第千八百七十七条 貸主ハ依然貸付シタル物件ノ所有者タリトス 第千八百七十八条 凡テ通易スルヲ得可ク且ツ使用ニ依テ消耗セサル物ハ此約束ノ目的タルヲ得 第千八百七十九条 使用貸借ニ依テ生スル約務ハ貸主ノ相続人及ヒ借主ノ相続人ニ移転ス 然レトモ若シ借主ヲ信任シ其一身ニノミ貸付シタル時ハ其相続人ハ貸付物件ノ収益ヲ継続スルヲ得ス 第二款 借主ノ義務 第千八百八十条 借主ハ良家父ノ如ク貸付物件ノ看守保存ニ注意ス可シ借主ハ性質又ハ約束ニ依リ定マリタル用法ニナラテハ其物件ヲ使用スルヲ得ス若シ之レニ反シテ損害アル時ハ其賠償ヲ為ス可シ 第千八百八十一条 借主若シ物件ヲ他ノ用法ニ使用シ又ハ其使用ス可キ時間ヨリ更ニ長キ時間使用シタル時ハ仮令意外ノ変ニ因リ生シタル滅失ト雖トモ之ヲ負担ス可シ 第千八百八十二条 借主カ自己ノ物件ヲ使用シテ貸付物件ヲ担保スルヲ得タルヘキ意外ノ変ニ依リ若シ貸付物件ノ滅失セシカ若クハ借主カ二箇中ノ一ナラテハ保存スルヲ得サルヲ以テ自己ノ物件ヲ撰ミ保存シタル時ハ借主ハ他ノ物件ノ滅失ヲ負担ス可シ 第千八百八十三条 貸借ニ当リテ若シ物件ヲ評価シタリシ時ハ意外ノ変ニ因テ生シタル滅失ト雖トモ反対ノ約束ナキニ於テハ借主ノ負担タル可シ 第千八百八十四条 物件若シ借主ノ方ニ於テ何ノ過失モナク只其目的タル使用ノ効果ニ依テ損壊シタル時ハ借主ハ其損壊ヲ負担セス 第千八百八十五条 借主ハ貸主カ自己ニ対シ負担スル物ノ相殺ニ依テ物件ヲ留置スルヲ得ス 第千八百八十六条 借主若シ物件ヲ使用スル為メ或ル費用ヲ為セシ時ハ之ヲ回収スルヲ得ス 第千八百八十七条 若シ数人共同シテ同一ノ物件ヲ借リタル時ハ数人ハ貸主ニ対シ連帯シテ其責ニ任ス可シ 第三款 使用ノ為メ貸付スル者ノ義務 第千八百八十八条 貸主ハ約束シタル期限ノ後カ又ハ約束ノ欠缺ニ於テハ物件カ其借入レノ目的タル使用ニ用立チタル後ニ非サレハ貸付物件ヲ回収スルヲ得ス 第千八百八十九条 然レトモ其期限間ニ若クハ借主需要ノ止了スル前ニ若シ貸主ノ為メ其物件ノ切迫ニシテ予知セサリシ需要ノ生シタル時ハ裁判官ハ事情ニ従ヒ其物件ヲ貸主ニ返還ス可キコトヲ借主ニ要強スルヲ得 第千八百九十条 若シ貸借ノ時間ニ借主カ物件保存ノ為メニ必要ニシテ且ツ貸主ニ報告スルヲ得サルカ如クニ切迫ナル或ル非常ノ費用ヲ為ササルヲ得サルニ至リシ時ハ貸主ハ之ヲ借主ニ償還ス可シ 第千八百九十一条 若シ貸付物件ニ之ヲ使用スル者ニ損害ヲ起スヲ得可キ如キノ瑕瑾アル時貸主若シ其瑕瑾ヲ知リテ之ヲ借主ニ告知セサシリシニ於テハ貸主ハ其責ニ任ス可シ 第二章 消耗貸借即チ単純ノ貸借 第一款 消耗貸借ノ性質 第千八百九十二条 消耗貸借トハ同種同質ノ物件ノ同分量ヲ返還スルノ負担ヲ以テ契約者ノ一方ヨリ他ノ一方ニ使用ニ依リ消耗スル物件ノ或ル分量ヲ引渡スノ契約ヲ云フ 第千八百九十三条 借主ハ此貸借ノ効ニ依テ貸付物件ノ所有者ト為リ其物件ノ滅失ノ生シタル方法ノ如何ヲ問ハス其滅失ハ借主ノ負担タル可シ 第千八百九十四条 同種ノモノタリト雖トモ獣畜ノ如キ各箇相異リタル物ヲ消耗貸借ノ名義ニテ附与スルヲ得ス若シ然ルトキハ之ヲ使用貸借ナリトス 第千八百九十五条 金額ノ貸借ヨリ生スル義務ハ常ニ契約ニ記示シタル算数ノ金額ノミノモノトス 若シ弁済ノ時期前ニ貨幣ノ価格ニ増減アリシ時ハ義務者ハ借入レタル算数ノ金額ヲ返還ス可ク而〆弁済ノ時ニ通用スル貨幣ヲ以テ其金額ナラテハ返還ス可ラス 第千八百九十六条 前条ニ記シタル規則ハ金銀塊ヲ以テ貸借ヲ為シタル時ニ適用セス 第千八百九十七条 若シ貸付シタル物カ金銀塊又ハ日用品ナル時ハ義務者ハ其代価ノ増減ニ拘ハラス常ニ同量同質ノ物ヲ返還ス可ク而シテ其モノナラテハ返還ス可ラス 第二款 貸主ノ義務 第千八百九十八条 消耗貸借ニ於テハ貸主ハ使用貸借ニ付キ第千八百九十一条ニ定メタル責ニ任ス可シ 第千八百九十九条 貸主ハ約束シタル期限前ニ貸付物件ヲ回収センコトヲ要ムルヲ得ス 第千九百条 回収ノ為メ期限ヲ定メサリシ時ハ裁判官ハ事情ニ従ヒ借主ニ猶予ヲ許与スルコトヲ得 第千九百一条 若シ借主ニ於テ弁済スルヲ得可キ時又ハ弁済スル方法アル時ニ弁済ス可キコトヲ約シタル時ハ裁判官ハ事情ニ従ヒ借主ニ弁済ノ期限ヲ定ム可シ 第三款 借主ノ義務 第千九百二条 借主ハ貸付物件ヲ同量同質ヲ以テ約束シタル期限ニ於テ返還ス可シ 第千九百三条 借主若シ之ヲ履行スルコトヲ為シ難キ時ハ約束ニ循ヒ物件ヲ返還ス可キ時ト場所トニ照准シテ其価額ヲ弁済ス可シ 若シ其時及ヒ場所ヲ定メサリシ時ハ弁済ハ借入ヲ為シタリシ時ト場所トノ代価ニ従ヒ之ヲ為ス可シ 第千九百四条 借主若シ約束シタル期限ニ於テ貸付物件又ハ其価額ヲ返還セサル時ハ訟求ノ日ヨリ其利息ヲ弁済ス可シ 第三章 利息ヲ以テノ貸借 第千九百五条 金額若クハ日用品若クハ他ノ動産物件ノ単純ノ貸借ニ付キ利息ヲ要約スルコトヲ許ス 第千九百六条 要約セラレサリシ利息ヲ弁済シタル借主ハ之ヲ回収シ又ハ之ヲ元金ニ抵充スルヲ得ス 第千九百七条 利息ニハ法律上ノモノアリ約束上ノモノアリ法律上ノ利息ハ法律ニ依リ之ヲ定ム約束上ノ利息ハ法律ニ於テ禁止セサル時ハ常ニ法律上ノ利息ヲ超過スルヲ得 約束上ノ利息ノ割合ハ書面ヲ以テ之ヲ定ム可シ 第千九百八条 利息ノ貯存ナク附与シタル元金ノ領収書ハ利息ノ弁済ヲ推測セシメ其免釈ヲ為スモノトス 第千九百九条 貸主自ラ要求スルコトヲ禁スル元金ヲ以テ利息ヲ要約スルヲ得 此場合ニ於テハ貸借ハ年金設定ノ名目ヲ取得ス 第千九百十条 此年金ハ無期又ハ終身ノ二方法ヲ以テ設定スルヲ得 第千九百十一条 無期ニ設定シタル年金ハ其性質ニ於テ買戻スコトヲ得可シトス 双方ノ者ハ唯十年ヲ超過スルヲ得サル期限ノ前ニ若クハ双方ノ者ノ定メタル予定期限ニ於テ権利者ニ告知スルコトナクシテ買戻ヲ為ササル可キコトヲ約束スルヲ得 第千九百十二条 無期ニ設定シタル年金ノ義務者ハ左ノ場合ニ於テ買戻ヲ要強セラルルヲ得 第一 二年間其義務ヲ竭クスコトヲ止メタル時 第二 契約ニ依リ約諾シタル抵保ヲ貸主ニ供給スルコトヲ缺キタル時 第千九百十三条 無期ニ設定シタル年金ノ元金ハ義務者ノ商事分散又ハ民事分散ノ場合ニ於テモ亦要求ス可キモノトナル可シ 第千九百十四条 畢生間ノ年金ニ関スル規則ハ委運契約ノ巻ニ之ヲ規定ス 第十一巻 附託及ヒ係争物附託(千八百四年三月十四日決定同月二十四日頒布) 第一章 一般ノ附託及ヒ其種類 第千九百十五条 一般ニ附託トハ他人ノ物件ヲ看守シ原品ニテ之ヲ返還スルノ負担ヲ以テ其物件ヲ収受スル所為ヲ云フ 第千九百十六条 附託ニ二種アリ通常附託及ヒ係争物附託 第二章 通常附託 第一款 附託契約ノ性質及ヒ本質 第千九百十七条 通常附託ハ其性質ニ於テ無償契約ナリ 第千九百十八条 通常附託ハ動産物件ニ非サレハ其目的トスルヲ得ス 第千九百十九条 通常附託ハ附託物件ノ現実又ハ仮想ノ引渡ニ依ルニ非サレハ完成セストス 仮想ノ引渡ハ人カ附託ノ名目ヲ以テ受託者ニ委付スルコトヲ承諾スル物件ヲ受託者既ニ成ル他ノ名目ニテ保持スル時ハ完全ナリトス 第千九百二十条 附託ニハ任意ノモノアリ必須ノモノアリ 第二款 任意ノ附託 第千九百二十一条 任意ノ附託ハ附託ヲ為ス者ト之ヲ受クル者トノ相互ノ承諾ニ依テ成ルモノトス 第千九百二十二条 任意ノ附託ハ附託物件ノ所有者ヨリナラテハ又ハ其明然若クハ黙然ノ承諾ヲ以テナラテハ整正ニ之ヲ為スヲ得ス 第千九百二十三条 任意ノ附託ハ書面ニ依テ証ス可シ人証ハ百五十「フラン」ヲ超過スル価額ニ附テハ之ヲ許サス 第千九百二十四条 百五十「フラン」以上ノ附託ノ書面ニ依テ証セラレサル時ハ受託者トシテ訟撃セラレタル者ハ附託ノ所為ニ付テモ其目的タル物件ニ付テモ又其返還ノ所為ニ付テモ自己ノ陳述ヲ信用セラル可シ 第千九百二十五条 任意ノ附託ハ契約スル能力アル者ノ間ニ非サレハ之ヲ為スヲ得ス 然レトモ契約スル能力アル者不能力者ノ為シタル附託ヲ受諾シタル時ハ真ノ受託者ノ総テノ義務ヲ負担ス可シ其者ハ附託ヲ為シタル者ノ後見人又ハ管理者ヨリ訴ヲ受クルコトアル可シ 第千九百二十六条 能力者ヨリ不能力者ニ附託ヲ為シタル時ハ附託ヲ為シタル者ハ附託物件ノ受託者ノ手ニ存スル間ハ其取戻ノ訴権ヲ有シ又ハ受託者ノ利得ニ転用シタルモノノ高ニ至ル迄還給ノ訴権ヲ有スルノミ 第三款 受託者ノ義務 第千九百二十七条 受託者ハ附託物件ノ看守ニ付テハ己レニ属スル物件ノ看守ニ付キ為ス所ト同一ノ注意ヲ為ス可シ 第千九百二十八条 前条ノ規則ハ第一受託者カ附託ヲ受クル為メ自ラ所望シタル時第二附託物ノ看守ニ付キ給料ヲ要約シタル時第三附託カ単ニ受託者ノ利益ノ為メ為サレタル時第四受託者カ諸種ノ過失ノ責ニ任スルコトヲ明約シタル時ハ更ニ厳重ニ之ヲ適用ス可シ 第千九百二十九条 受託者ハ附託物件ヲ返還スルニ付キ遅滞ニ付セラレサルニ於テハ何ノ場合ニ於テモ天災ヲ負担セス 第千九百三十条 受託者ハ附託者ノ明然又ハ推測ノ許可ナクシテ附託物件ヲ使用スルヲ得ス 第千九百三十一条 若シ物件カ函筐ニ蔵メ若クハ封包ニ閉チテ嘱任セラレタル時ハ受託者ハ附記セラレタル物件ノ何モノナルヤヲ穿鑿ス可カラス 第千九百三十二条 受託者ハ収受シタル物件ヲ原品ニテ返還ス可シ 故ニ貨幣ノ額数ノ附託ハ其価格ノ増加ニ付テモ減少ニ付テモ其附託セラレタル所ト同一ノ品類ヲ以テ返還ス可シ 第千九百三十三条 受託者ハ唯返還ノ時ノ状況ノ侭ニテ附託物件ヲ返還ス可シ受託者ノ所為ニ依テ生セサル損壊ハ附託者ノ負担タル可シ 第千九百三十四条 天災ニ依テ物件ヲ失ヒ之ニ代ヘテ其代価又ハ或ル物件ヲ収受シタル受託者ハ其交換トシテ収受シタルモノヲ返還ス可シ 第千九百三十五条 附託物タルコトヲ知ラスシテ其物件ヲ善意ニテ売却シタル受託者ノ相続人ハ其収受シタル代価ヲ返還シ又ハ若シ之ヲ収受セサリシニ於テハ買主ニ対スル其訴権ヲ譲渡スノ義務アルノミ 第千九百三十六条 附託物件若シ果実ヲ生シ受託者之ヲ収受セシ時ハ之ヲ返還スルノ義務アリ受託者ハ附託金額ニ付テハ其返還ヲ為スコトニ付キ遅滞ニ付セラレタル日ヨリナラテハ其利足ヲ負担セス 第千九百三十七条 受託者ハ附託物件ヲ巳レニ附託シタル者又ハ己レノ名ヲ以テ附託ヲ為サシメタル者又ハ附託物ヲ領収スル為メ指定セラレタル者ニナラテハ附託物件ヲ返還スルニ及ハス 第千九百三十八条 受託者ハ附託ヲ為シタル者ニ其附託物件ノ所有者タリシ証拠ヲ要ムルヲ得ス 然レトモ受託者若シ物件ノ盗品タルコトト其所有者ノ何人タルヲ発見シタル時ハ己レニ為サレタル附託ヲ定マリタル且ツ充分ナル期限内ニ要求ス可キノ要促ヲ以テ之ヲ所有者ニ報告ス可シ若シ其報告ヲ受ケタル者附託物ヲ要求スルコトヲ怠ル時ハ受託者ハ附託ヲ為セシ者ニ為シタル其附託ノ引渡ニ依リ有効ニ義務ヲ免カル可シ 第千九百三十九条 附託ヲ為シタル者ノ実ノ死去又ハ准死ノ場合ニ於テハ附託物件ハ其相続人ニナラテハ返還スルヲ得ス 若シ数人ノ相続人アル時ハ其得分及ヒ股分ヲ其各自ニ返還ス可シ 附託物件若シ不得分的ナル時ハ総テノ相続人ハ其収受ニ付テ協議ヲ為ス可シ 第千九百四十条 若シ附託ヲ為シタル者ノ身分ノ変シタル時例ヘハ附託ヲ為シタル時自由タリシ婦女ノ其後婚姻シテ夫権ニ従ヒ丁年ノ附託者カ治産禁ヲ受クル時ノ如キ総テ此等ノ場合及ヒ同性質ノ他ノ場合ニ於テハ附託ハ附託者ノ権利及ヒ財産ノ管理権ヲ有スル者ニナラテハ之ヲ返還スルヲ得ス 第千九百四十一条 若シ後見人、夫又ハ管理者ヨリ此資格ノ一ヲ以テ附託ヲ為シタル時其管理ノ終了シタルニ於テハ此後見人夫又ハ管理者ノ代理セシ者ニナラテハ附託ヲ返還スルヲ得ス 第千九百四十二条 若シ附託契約書ニ返還ヲ為ス可キ場所ヲ指示シタル時ハ受託者ハ附託物件ヲ其場所ニ運搬ス可シ若シ運搬ノ費用ヲ要スル時ハ其費用ハ附託者ノ負担タル可シ 第千九百四十三条 若シ契約書ニ返還ノ場所ヲ指示セサリシ時ハ附託ヲ為シタル場所ニ於テ返還ヲ為ス可シ 第千九百四十四条 附託ハ契約書ニ返還ノ為メ一定ノ期限ヲ立テタリシ時ト雖トモ附託者ヨリ要求アル時ハ直チニ之ヲ返還ス可シ但シ受託者ノ手中ニ於テ附託物件ノ返還及ヒ運搬ニ付キ留置差押又ハ故障アル時ハ此限ニ存ラス 第千九百四十五条 不誠実ナル受託者ニハ財産委棄ノ利益ヲ許サス 第千九百四十六条 総テ受託者ノ義務ハ受託者カ自ラ附託物件ノ所有者タルコトヲ発見シ且ツ証明スル時ハ止了スルモノトス 第四款 附託ヲ為シタル者ノ義務 第千九百四十七条 附託ヲ為シタル者ハ附託物件保存ノ為メ受託者ノ為シタル費用ヲ償還シ附託ノ為メ受託者ニ起シタル総テノ損失ヲ賠償ス可シ 第千九百四十八条 受託者ハ附託ノ為メ己レニ償還セラル可キモノノ全部ノ弁済ニ至ル迄附託物ヲ留置スルコトヲ得 第五款 必須ノ附託 第千九百四十九条 必須ノ附託トハ火災、崩潰、掠奪,難船其他不虞ノ事件ノ如キ或ル変災ニ依テ強制セラレタル附託ヲ云フ 第千九百五十条 証人ニ依ル証拠ハ必須ノ附託ニ付テハ附託カ百五十「フラン」以上ノ価額ニ関スル時ト雖トモ採用セラル可シ 第千九百五十一条 必須ノ附託ハ其他前ニ記示シタル総テノ規則ニ依テ之ヲ管理ス 第千九百五十二条 旅館主ハ其家ニ宿泊スル旅人ノ携帯シタル物件ニ付テハ受託者トシテ其責ニ任ス此種ノ物件ノ附託ハ必須ノ附託ト看做ス可シ 第千九百五十三条 旅館主ハ旅館ノ僕婢及ヒ雇人若クハ旅館ニ出入スル外人ノ窃盗ヲ為シ又ハ損害ヲ起シル時ト雖トモ旅人ノ物件ノ窃盗又ハ損害ニ付キ其責ニ任ス 第千九百五十四条 旅館主ハ兇器ヲ以テ又ハ抗拒ス可カラサル力ニ因テ為シタル窃盗ニ付キテハ其責ニ任セス 第三章 係争物附託 第一款 係争物附託ノ種類 第千九百五十五条 係争物附託ニハ約束上ノモノアリ裁判上ノモノアリ 第二款 約束上ノ係争物附託 第千九百五十六条 約束上ノ係争物附託ハ一人又ハ数人ヨリ外人ノ手中ニ係争ノ物件ヲ附託スルヲ云フ其外人ハ紛争ノ終リタル後其物件ヲ得可シト判定セラレタル者ニ之ヲ返還ス可シ 第千九百五十七条 係争物附託ハ無償タラサルコトヲ得 第千九百五十八条 係争物ノ附託若シ無償タル時ハ以下ニ記示スル差異ノ外通常ノ附託ノ規則ニ循フ可シ 第千九百五十九条 係争物附託ハ動産物件ノミナラス不動産ヲモ其目的ト為スコトヲ得 第千九百六十条 係争物附託ヲ任セラレタル受託者ハ紛争ノ終ラサル前ハ総テノ関係人ノ承諾アルカ又ハ正当ト裁判セラレタル理由アルニ非サレハ其義務ヲ免カルルヲ得ス 第三款 裁判上ノ係争物附託 第千九百六十一条 裁判所ハ左ノ物件ニ付キ係争物附託ヲ命スルヲ得 第一 義務者ニ対シテ差押ヘタル動産 第二 二人若クハ数人ノ間ニ所有又ハ占有ノ争アル不動産又ハ動産物件 第三 義務者カ自己ノ免釈ノ為メニ提供スル物件 第千九百六十二条 裁判上ノ看守人ノ設定ハ差押人ト看守人トノ間ニ相互ノ義務ヲ生ス看守人ハ差押物件ノ保存ニ付キ良家父ノ注意ヲ為ス可シ 看守人ハ売却ニ付キ差押人免釈ノ為メ又ハ差押除去ノ場合ニ於テ執行ヲ受ケタル一方ニ其物件ヲ呈出ス可シ 差押人ノ義務ハ法律ニ因テ定メタル給料ヲ看守人ニ弁済スルニ在リトス 第千九百六十三条 裁判上ノ係争物附託ハ関係人ノ間ニ約定シタル者又ハ裁判官ノ職権ヲ以テ任シタル者ニ之ヲ為ス可シ 前項何レノ場合ニ於テモ物件ヲ附託セラレタル者ハ約束上ノ係争物附託カ提起スル総テノ義務ニ従フ可シ 第十二巻 委運契約(千八百四年三月十日決定同月二十日領布) 第千九百六十四条 委運契約トハ総テノ契約者ノ為メ又ハ其一人若クハ数人ノ為メ利益及ヒ損失ニ付キ効果ノ未定ノ事件ニ関スル相互ノ約束ヲ云フ 即チ左ノ如シ 保険契約 冒険遠航ニ付テノ貸借 遊戯及ヒ賭博 畢生間ノ年金ノ契約 最初ノ二個ノ場合ハ海上法ニ依テ管理ス 第一章 遊戯及賭博 第千九百六十五条 法律ハ遊戯ノ負債又ハ賭博ノ弁済ニ付キ何ノ訴訟ヲモ許サス 第千九百六十六条 兵器ノ使方ニ馴熟セシムル遊戯、競走、競馬、競車、打毬其他身体ノ繰練連動ニ関スル同性質ノ遊戯ハ前条ノ規則ノ例外ナリトス 然レトモ裁判所ハ其金額ヲ過当ナリト視ル時ハ訟求ヲ却下スルヲ得 第千九百六十七条 何ノ場合ニ於テモ敗者ハ勝者ノ方ニ詐欺、詭計又ニ詐欺取財アラサルニ於テハ任意ニテ弁済シタルモノヲ回収スルヲ得ス 第二章 畢生間ノ年金ノ契約 第一款 契約ノ有効ニ必要ナル条件 第千九百六十八条 畢生間ノ年金ハ金額ヲ以テ或ハ量定スルヲ得可キ動産物件ヲ以テ或ハ不動産ヲ以テ有償ニテ設定スルヲ得 第千九百六十九条 畢生間ノ年金ハ亦生者間ノ贈遺又ハ遺嘱ニ依リ純然無償ニテ設定スルヲ得然ルトキハ法律ニ於テ必要トスル法式ヲ履行ス可シ 第千九百七十条 前条ノ場合ニ於テ畢生間ノ年金若シ処分スルコトヲ許サレタル額ヲ超過スル時ハ之ヲ減殺ス可シ畢生間ノ年金ハ収受スル能力ナキ者ノ利得ニ為シタル時ハ効ナシトス 第千九百七十一条 畢生間ノ年金ハ其代償ヲ供給シタル者ヲ標準トシテモ亦畢生間ノ年金ヲ得ルニ付キ何ノ権ヲモ有セサル外人ヲ標準トシテモ之ヲ設定スルヲ得 第千九百七十二条 畢生間ノ年金ハ一人又ハ数人ヲ標準トシテ之ヲ設定スルヲ得 第千九百七十三条 畢生間ノ年金ハ他人ヨリ代償ヲ供給シタル時ト雖トモ外人ノ利得ニ之ヲ設定スルヲ得 此終リノ場合ニ於テハ畢生間ノ年金カ仮令贈遺ノ性質ヲ有スルモ贈遺ニ付キ必要トスル法式ニ従ハス但シ第千九百七十条ニ記示シタル減殺及ヒ無効ノ場合ハ此限ニ在ラス 第千九百七十四条 契約ノ日ニ死去シタリシ人ヲ標準トシテ設定シタル畢生間ノ年金ノ契約ハ何ノ効ヲモ生セス 第千九百七十五条 疾病ニ罹リタル者ヲ標準トシテ畢生間ノ年金ヲ設定スルノ契約ヲ為シ其者其疾病ニ因リ契約ノ日附ノ日ヨリ二十日内ニ死去セシ時ハ其契約ニ付テモ同前ナリトス 第千九百七十六条 畢生間ノ年金ハ契約者双方ノ随意ニ定ムル所ノ割合ヲ以テ設定スルコトヲ得 第二款 契約者間ニ契約ノ効果 第千九百七十七条 代償ヲ以テ己レノ利得ニ畢生間ノ年金ヲ設定セラレタル者ハ若シ設定者カ其執行ノ為メ要約セラレタル抵保ヲ附与セサルニ於テハ契約ノ解除ヲ要求スルヲ得 第千九百七十八条 年金ノ賦額ノ弁済ノ欠缺ノミニテハ己レノ利益ニ年金ヲ設定セラレタル者ヨリ元金ノ還給ヲ要求シ又ハ己レヨリ譲与シタル不動産ヲ回収スルコトヲ許サス其者ハ負債主ノ財産ヲ差押ヘテ之ヲ売却セシメ売却ノ代価ヲ以テ賦額支払ノ為メニ充分ナル金額ノ再用ヲ命セシメ又ハ承諾セシムルノ権ナラテハ有セス 第千九百七十九条 設定者ハ元金ヲ償還セント供陳シ弁済シタル賦額ノ回収ヲ放棄シテ年金ノ弁済ヲ免カルルヲ得ス設定者ハ年金ヲ設定スルノ標準トナリタル一人又ハ数人ノ生存中ハ其人ノ生存ノ時間ニ係ハラス又年金支払ノ如何ニ重劇ナルニ至ルコトアルモ其年金ヲ支払ハサルヲ得ス 第千九百八十条 畢生間ノ年金ハ所有者ノ生存シタル日数ノ割合ヲ以テナラテハ所有者ニ於テ之ヲ獲得セス 然レトモ年金ノ前以テ弁済ス可キ旨ヲ約シタル時ハ弁済スヘキ期限ハ年金ノ弁済ヲ為ス可キニ至リタル日ヨリ獲得セラルルモノトス 第千九百八十一条 畢生間ノ年金ハ無価ニテ設定セラレタル時ニ非サレハ差押フ可カラサルモノト要約スルヲ得ス 第千九百八十二条 畢生間ノ年金ハ所有者ノ准死ニ因テ消滅セス其生存中ハ其弁済ヲ継続ス可シ 第千九百八十三条 畢生間ノ年金ノ所有者ハ自己ノ生存又ハ年金ヲ設定スルノ標準トナリタル人ノ生存ヲ証明スルニ非サレハ其賦額ヲ要求スルヲ得ス 第十三巻 委任(千八百四年三月十日決定同月二十日頒布) 第一章 委任ノ性質及ヒ法式 第千九百八十四条 委任或ハ名代権トハ一人ヨリ他ノ一人ニ委任者ノ為メ又其名ヲ以テ或ル事ヲ為スノ権力ヲ附与スル所為ヲ云フ 其契約ハ代理人ノ承諾ニ依テナラテハ成立セス 第千九百八十五条 委任ハ或ハ公証書ヲ以テ或ハ私印証書ヲ以テ或ハ書翰ヲ以テモ之ヲ任スルヲ得又口上ニテモ之ヲ任スルヲ得然レトモ人証ハ契約即チ一般ノ約束上ノ義務ノ巻ニ循フニ非レハ聴許セス 委任ノ承諾ハ黙然タルヲ得亦代理人ノ委任ニ付キ為シタル執行ヨリ生スルヲ得 第千九百八十六条 委任ハ反対ノ約束ナキニ於テハ無償ナリトス 第千九百八十七条 委任ニハ或ハ一事件又ハ或ル数件ニノミ関スル特別的アリ或ハ委任者ノ総テノ事件ニ関スル一般的アリ 第千九百八十八条 汎称ノ言辞ヲ以テ為シタル委任ハ管理ノ所為ニ非サレハ包含セス 譲与ヲ為スコト又ハ書入質ヲ為スコト又ハ其他所有権上ノ所為ニ関シテハ委任ハ明然ノモノタラサル可ラス 第千九百八十九条 代理人ハ委任状中ニ記スルモノノ外何事ヲモ為スヲ得ス即チ和解ヲ為スノ権力ハ仲裁人ヲ立ルノ権力ヲ含包セス 第千九百九十条 婦女及ヒ後見ヲ免カレタル幼者ハ代理人トシテ撰定セラルルヲ得然レトモ委任者ハ幼年ノ代理人ニ対シテハ幼者ノ義務ニ関スル一般ノ規則ニ循フニ非レハ訴権ヲ有セス又夫ノ許諾ナク委任ヲ承諾シタル有夫ノ婦ニ対シテハ婚姻財産契約及ヒ夫婦相互ノ権利ノ巻ニ定メタル規則ニ循フニ非レハ訴権ヲ有セス 第二章 代理人ノ義務 第千九百九十一条 代理人ハ委任ヲ受ケタル時間之ヲ執行ス可ク而〆又其不執行ヨリ生スルヲ得ヘキ損害賠償ヲ負担ス可シ 又代理人ハ遅滞スルニ付キ危険アルニ於テハ委任者ノ死去ノ時ニ着手シタル事件ヲ成就スルノ義務アリ 第千九百九十二条 代理人ハ詐欺ニ付テノミナラス管理ニ付キ為シタル過失ノ責ニ任ス可シ 然レトモ過失ニ関スル責任ハ給料ヲ受クル者ヨリモ無償ニテ委任ヲ為ス者ニハ較々軽ク適当ス 第千九百九十三条 凡テ代理人ハ其管理ニ付キ計算ヲ為シ其収受シタルモノノ委任者ニ帰属スヘキモノナラサル時ト雖トモ名代権ニ依テ収受シタル総テノモノヲ委任者ニ交付ス可シ 第千九百九十四条 代理人ハ第一或ル人ヲ自己ト交代セシムルノ権力ヲ得サリシ時第二此権力ヲ人ヲ指定セスシテ代理人ニ附与シ而〆代理人ノ撰任シタル者カ顕然無能力者又ハ無資力者ナリシ時ハ管理ニ付キ自己ト交代セシメタル者ノ責ニ任ス可シ 総テノ場合ニ於テ委任者ハ代理者カ自己ト交代セシメタル者ニ対シテ直接ニ訟求スルコトヲ得 第千九百九十五条 一通ノ証書ヲ以テ定立シタル名代人即チ代理人数名アル時ハ連帯タルコトヲ明記セサル以上ハ数名ノ間ニ連帯ナキモノトス 第千九百九十六条 代理人ハ巳レノ使用ニ供用シタル金額ノ利息ヲ其供用ノ日ヨリ負担シ其残計金額ノ利息ヲ遅滞ニ附セラレタル日ヨリ負担ス可シ 第千九百九十七条 代理人カ其資格ヲ以テ契約シタル対手人ニ己レノ権力ニ付キ充分ノ承知ヲ得シメタル時ハ其権力外ニ為シタルモノニ付キ何ノ担保ヲモ負担セス但シ代理人自ラ其担保ヲ負担シタリシ時ハ此限ニ在ラス 第三章 委任者ノ義務 第千九百九十八条 委任者ハ代理人ニ附与シタル権力ニ従ヒ代理人ノ契約シタル約務ヲ執行ス可シ 委任者ハ権力外ニ為{代理人ノ}シタルモノニ付テハ明然又ハ黙然ニ認諾シタル時ニ非サレハ之ヲ担任セス 第千九百九十九条 委任者ハ代理人カ委任執行ノ為メニ為シタル立替金及ヒ費用ヲ代理人ニ償還シ且ツ給料ヲ約セシ時ハ之ヲ弁済ス可シ 代理人ニ帰ス可キ何ノ過失モナキ時ハ委任者ハ仮令事務ノ成孰セサル時ト雖トモ其償還弁済ヲ免カルルコトヲ得ス亦費用及ヒ立替金ノ更ニ少額タルコトヲ得タル旨ヲ口実トシテ之ヲ減殺セシムルヲ得ス 第二千条 又委任者ハ代理人ニ帰ス可キ疎忽ナクシテ代理人カ其管理ニ際シテ受ケタル損失ヲ之ニ賠償ス可シ 第二千一条 代理人ノ為シタル立替金ノ利息ハ証明セラレタル其立替ノ日ヨリシテ委任者ヨリ代理人ニ弁済ス可シ 第二千二条 共同ノ事件ニ付キ数人ニテ一人ノ代理人ヲ定立シタル時ハ代理人ニ対シ各自連帯シテ委任ノ総テノ効ヲ負担ス可シ 第四章 委任ノ終了スル種々ノ方法 第二千三条 委任ハ左ノ件々ニ依テ終了ス 代理人ノ解任 代理人代理ヲ放棄スルコト 委任者又ハ代理人ノ実ノ死去、准死禁治産又ハ民事分散 第二千四条 委任者ハ其都合ニ従ヒ委任ヲ取消シ理由アルニ於テハ委任ヲ記スル私印証書又委任状ヲ細字正本ナクシテ渡シタル時ハ其本書又其細字正本ヲ保存シタル時ハ其謄本ヲ己レニ返付ス可キコトヲ代理人ニ要強スルヲ得 第二千五条 代理人ニノミ通知シタル取消{代理ノ}ヲ知ラスシテ約束シタル外人ニ其取消ヲ以テ対抗スルヲ得ス但シ委任者ハ代理人ニ対シテ要償権ヲ有ス 第二千六条 同一ノ事件ニ付キ新代理人ノ定立ハ之ヲ最初ノ代理人ニ通知シタル日ヨリシテ最初ノ代理人ノ解任ニ均シキ効アリトス 第二千七条 代理人ハ委任者ニ通知シテ名代権ヲ放棄スルヲ得 然レトモ若シ其放棄カ委任者ヲ害スル時ハ委任者ハ代理人ヨリ其賠償ヲ受クルヲ得但シ代理人自ラ著大ナル損害ヲ受クルコト無クシテ代理ヲ継続スルコトノ成リ難キ事情アル時ハ此限ニ在ラス 第二千八条 代理人委任者ノ死去ヲ知ラサルカ若クハ代理ヲ終了セシムル他ノ原因ノ一ヲ知ラサル時ハ其知ラサル間ニ為シタルモノハ有効ナリトス 第二千九条 前ノ場合ニ於テハ代理人ノ約務ハ善意ナル外人ニ対シテ之ヲ執行ス可シ 第二千十条 代理人ノ死去ノ場合ニ於テハ相続人ハ委任者ニ其通知ヲ為シ而シテ姑ク委任者ノ利益ノ為メ事情ニ於テ須要トスル所ノモノニ注意ス可シ 第十四巻 保証(千八百四年二月十四日決定同月二十四日領布) 第一章 保証ノ性質及ヒ区域 第二千十一条 義務ノ保証人ト為ル者ハ義務者自ラ義務ヲ尽ササル時ハ権利者ニ対シ其義務ヲ尽スコトヲ負担ス 第二千十二条 保証ハ有効ノ義務ニ付テナラテハ成立スルヲ得ス 然レトモ全ク義務者ノ一身ニ関スル排訴ニ依リ之ヲ取消スヲ得可キ時例ヘハ幼年ノ場合ニ於ケル時ト雖トモ義務ヲ保証スルコトヲ得 第二千十三条 保証ハ義務者ノ負担スル所ヲ超過スルヲ得ス亦更ニ重劇ナル条件ヲ以テ契約スルヲ得ス 保証ハ負債ノ一部ノミニ付キ契約シ又更ニ寛軽ナル条件ヲ以テ契約スルヲ得 義務ヲ超過スル保証又ハ更ニ重劇ナル条件ヲ以テ契約シタル保証ハ無効タラス唯之ヲ主タル義務ノ程度ニ減縮ス可キノミ 第二千十四条 義務者ノ命令ナク保証人トナリ又其知ラサルニ於テ保証人トナリ義務ヲ負担スルコトヲ得 又主タル義務者ノ保証人トナルコトヲ得ルノミナラス之ヲ保証シタル者ノ保証人トナルコトヲ得 第二千十五条 保証ハ推測セラレス明約アルヲ要ス又保証ハ契約シタル区域外ニ之ヲ推及スルヲ得ス 第二千十六条 主タル義務ノ無定限ノ保証ハ最初ノ訟求ノ費用及ヒ保証人ニ訟求ノ通知ヲ為シタル以後ノ費用ニ至ル迄義務ノ総テノ附属物ニ推及ス 第二千十七条 保証人ノ約務ハ其相続人ニ移ルモノトス但シ其約務若シ保証人ヲシテ拘禁ヲ受ケシム可キモノタルモ拘禁ハ相続人ニ及ハストス 第二千十八条 保証人ヲ立ツル義務アル義務者ハ契約スル能力ヲ有シ義務ノ目的ニ対応スル充分ノ財産ヲ有シ而シテ保証人ヲ定立ス可キ控訴院ノ管内ニ住所ヲ有スル保証人一人ヲ供出ス可シ 第二千十九条 保証人ノ資力ハ商事ニ関スルノ外又ハ義務ノ少額ナル時ノ外ハ其不動産所有権ニ准照シテノミ之ヲ量定ス 係争ノ不動産又ハ其所在地ノ遠隔ニシテ「ヂスキユシヨン」ノ困難ナル不動産ニハ准照セス 第二千二十条 任意ニテ又ハ裁判上ニテ権利者ノ領諾シタル保証人若シ其後ニ無資力トナリシ時ハ他ノ保証人ヲ定立ス可シ 此規則ハ権利者カ保証人トシテ誰某ヲ要求シタル約束ニ依リ保証人ヲ定立シタル場合ニ非サレハ例外ナシトス 第二章 保証ノ効果 第一款 権利者ト保証人トノ間ニ於ケル保証ノ効果 第二千二十一条 保証人ハ義務者ノ缺乏ノ時ニ非サレハ権利者ニ対シ弁済スルノ義務ヲ負ハス義務者ハ予メ己レノ財産ニ付キ「ヂスキユシヨン」ヲ受ク可シ 但シ保証人若シ「ヂスキユシヨン」ノ利益ヲ放棄シ又ハ義務者ト連帯シテ義務ヲ負ヒシ時ハ此限ニ在ラス此場合ニ於テハ其約務ノ効果ハ連帯義務ニ付キ定メタル原則ニ依テ之ヲ規定ス 第二千二十二条 権利者ハ保証人ニ対シテ起シタル最初ノ証求ニ付テ保証人ヨリ主タル義務者ニ「ヂスキユシヨン」ヲ為スコトヲ請求スルニ非サレハ之ヲ為スニ及ハス 第二千二十三条 「ヂスキユシヨン」ヲ請求スル保証人ハ主タル義務者ノ財産ヲ権利者ニ指示シ且ツ「ヂスキユシヨン」ヲ為スニ充分ナル金額ヲ立替フ可シ 其保証人ハ弁済ヲ為ス可キ地ノ控訴院ノ管外ニ在ル主タル義務者ノ財産ヲモ係争ノ財産ヲモ又義務ノ為メ書入質トナ〆最早義務者ノ占有セサル財産ヲモ指示ス可ラス 第二千二十四条 保証人前条ニ依テ許サレタル財産指示ヲ為シ且ツ「ヂスキユシヨン」ノ為メ充分ナル金額ヲ提供シタル其都度ニ権利者ハ保証人ニ対シ指示セラレタル財産ノ高ニ至ル迄訟求ノ欠缺ニ依リ生シタル主タル義務者ノ無資力ニ付キ責ニ任ス可キモノトス 第二千二十五条 数人若シ一個ノ義務ニ付キ一個ノ義務者ノ保証人ト為リタル時ハ各々義務ノ全部ニ付キ義務ヲ負フ者トス 第二千二十六条 然レトモ其各人ハ分割ノ利益ヲ放棄セサルニ於テハ権利者予メ其訴権ヲ分割シ之ヲ各保証人ノ部分ニ減少ス可キコトヲ要求スルヲ得 保証人ノ一人分割ヲ宣告セシメタル時間中既ニ無資力ト為リタル者アリシ時ハ此保証人ハ割合ニ従ヒ無資力ヲ負担ス可シ然レトモ此保証人ハ分割後ニ生シタル無資力ニ付テハ最早訟求ヲ受クルコトナシ 第二千二十七条 若シ権利者任意ニテ自ラ其訴権ヲ分割シタル時ハ仮令分割ヲ諾シタル時以前ニ無資力トナリタル保証人アル時ト雖トモ其分割ヲ取消スヲ得ス 第二款 義務者ト保証人トノ間ニ於ケル保証ノ効果 第二千二十八条 弁済ヲ為シタル保証人ハ主タル義務者ノ知リテ保証ヲ為シタルト知ラスシテ保証ヲ為シタルトヲ問ハス之ニ対シテ要償権ヲ有ス 其要償権ハ主タル義務ト利息及ヒ費用トニ付テ存ス然レトモ保証人ハ自己ニ対シ起サレタル訟求ヲ主タル義務者ニ通知シタル後ニ為シタル費用ニ付テナラテハ要償権ヲ有セス 又保証人ハ損害アルニ於テハ其賠償ニ付キ要償権ヲ有ス 第二千二十九条 負債ヲ弁済シタル保証人ハ義務者ニ対シ権利者ノ有セシ総テノ権利ヲ代襲ス可シ 第二千三十条 一義務ニ付キ主タル連帯義務者数人アリシ時其義務者ヲ総テ保証シタル保証人ハ自己ノ弁済シタルモノノ全部ノ回収ニ付キ義務者各人ニ対シテ要償権ヲ有ス 第二千三十一条 最初ニ弁済シタル保証人ハ自己ノ為シタル弁済ヲ主タル義務者ニ通知セサリシ時ハ第二ニ弁済シタル主タル義務者ニ対シテ要償権ヲ有セス但シ権利者ニ対シ回収ノ訴権ヲ行フハ此限ニ非ス 保証人訟求ヲ受クルコトナク且ツ主タル義務者ニ通知スルコトナクシテ弁済ヲ為シタル時其義務者カ弁済ノ時ニ於テ義務ノ消滅シタルコトヲ宣告セシムヘキ廉アル場合ニ於テハ之ニ対シテ要償権ヲ有セス但シ権利者ニ対シ回収ノ訴権ヲ行フハ此限ニ在ラス 第二千三十二条 保証人ハ下ノ場合ニ於テハ弁済ヲ為ス前ト雖トモ義務者ヨリ賠償ヲ得ル為メ之ニ対シテ訟求ヲ為スコトヲ得 第一 保証人弁済ノ為メ訟求ヲ受ケタル時 第二 義務者商事分散又ハ民事分散ヲ為シタル時 第三 義務者或ル時ニ於テ保証人ニ其義務ヲ免釈スヘキノ義務ヲ負ヒタル時 第四 義務ヲ約シタル期限ノ満期ニ依リ義務ノ弁済ス可キモノトナリタル時 第五 主タル義務カ満期トナル可キ定マリタル期限ヲ有セサル時ニ於テ十年ヲ経過シタル時但シ後見ノ如ク主タル義務カ定マリタル期限ノ前ニ消滅スルヲ得可キ性質ノモノタル時ハ此限ニ在ラス 第三款 共同保証人ノ間ニ於ケル保証ノ効果 第二千三十三条 数人ニテ一義務ノ為メ一義務者ヲ保証シタル時ハ義務ヲ弁済シタル保証人ハ他ノ保証人ニ対シテ各々其部分ニ付キ要償権ヲ有ス 然レトモ其要償権ハ前条ニ列記シタル場合ノ一ニ於テ保証人カ弁済シタル時ニ非サレハ成立セス 第三章 保証ノ消滅 第二千三十四条 保証ヨリ生スル義務ハ他ノ義務ト同一ノ原因ニ依リ消滅ス 第二千三十五条 主タル義務者及ヒ保証人ノ一方カ他ノ一方ノ相続人トナル時ニ於テ其双方ノ身上ニ成レル渾同ハ保証人ノ保証人トナリタル者ニ対シテ権利者ノ訴権ヲ消滅セス 第二千三十六条 保証人ハ主タル義務者ニ属シ且ツ義務ニ附着スル総テノ排訴法ヲ以テ権利者ニ対抗スルヲ得 然レトモ保証人ハ専ラ義務者ノ一身ニ属スル排訴法ヲ以テ対抗スルヲ得ス 第二千三十七条 権利者ノ所為ニ因リ保証人ノ利益ノ為メ権利者ノ権利、書入質権及ヒ先取権ニ付キ代襲ノ行ハレ得サル時ハ保証人ハ免釈セラルルモノトス 第二千三十八条 主タル義務弁済ノ為メ某不動産又ハ某物件ニ付キ権利者ノ為シタル任意ノ領諾ハ権利者其物件ヲ強却セラレタル時ト雖トモ保証人ヲ免釈ス 第二千三十九条 権利者ヨリ主タル義務者ニ許シタル期限ノ単純ノ猶預ハ保証人ヲ免釈セス此場合ニ於テハ保証人ハ弁済ヲ要強スル為メ義務者ニ対シ訟求スルコトヲ得 第四章 法律上ノ保証人及ヒ裁判上ノ保証人 第二千四十条 法律又ハ裁判言渡ニ依リ或ル人保証人ヲ供出スヘキノ義務ヲ負フ其都度ニ於テ供出セラレタル保証人ハ第二千十八条及ヒ第二千十九条ニ定メタル条件ヲ具備セサルヲ得ス 裁判上ノ保証ニ関シテハ保証人ハ右ノ外拘禁ヲ受ク可キモノトス 第二千四十一条 保証人ヲ見出ス能ハサル者ハ之ニ代ヘ充分ナル動産質ヲ供付スルコトヲ許サル可シ 第二千四十二条 裁判上ノ保証人ハ主タル義務者ノ「ヂスキユシヨン」ヲ要求スルヲ得ス 第二千四十三条 単純ニ裁判上ノ保証人ヲ保証シタル者ハ主タル義務者及ヒ保証人ノ「ヂスキユシヨン」ヲ要求スルヲ得ス 第十五巻 和解(千八百四年三月二十日決定同月三十日頒布) 第二千四十四条 和解トハ双方ノ者カ既ニ生シタル紛争ヲ終了シ又ハ生セントスル紛争ヲ予防スル契約ヲ云フ 其契約ハ書面ヲ以テ記述ス可シ 第二千四十五条 和解ヲ為サンニハ其和解中ニ包含スル物件ヲ処分スルノ能力アルヲ要ス 後見人ハ幼年後見及ヒ後見免除ノ巻第四百六十七条ニ循フニ非サレハ幼者又ハ被禁治産者ノ為メニ和解ヲ為スヲ得ス又後見ノ計算ニ付テハ同巻第四百七十二条ニ循フニ非サレハ丁年ト為リタル幼者ト和解ヲ為スヲ得ス 邑及ヒ公舎ハ国王ノ特許ヲ得ルニ非サレハ和解ヲ為スヲ得ス 第二千四十六条 犯罪ヨリ生スル民法上ノ利益ニ付キ和解ヲ為スヲ得 和解ハ検察官ノ起訴ヲ防止セス 第二千四十七条 和解ヲ執行スルコトヲ缺ク者ニ対シ罰款ヲ和解ニ附加スルヲ得 第二千四十八条 和解ハ其目的トスル所ニ限レルモノトス和解ニ於テ為シタル総テノ権利訴権及ヒ主張ノ放棄ハ和解ニ至リタル紛争ニ関スル所ノモノニナラデハ推及セス 第二千四十九条 和解ハ双方ノ者カ特殊又ハ汎称ノ語辞ヲ以テ其意思ヲ表発シタルト其明示シタルモノノ須要ノ結果ニ依テ其意思ヲ認定スルトヲ問ハス和解中ニ包含スル所ノ紛争ナラテハ規定セサルモノトス 第二千五十条 自己ノ方ニテ有セシ権利ニ付キ和解ヲ為シタル者後ニ他人ノ方ヨリシテ同種ノ権利ヲ獲得セシ時ハ新ニ獲得シタル権利ニ関シ前ノ和解ニ依テ拘束セラルルコトナシトス 第二千五十一条 関係人中一人ノ為シタル和解ハ他ノ関係人ヲ拘束セス又他ノ関係人ヨリ其和解ヲ以テ対抗スルヲ得ス 第二千五十二条 和解ハ双方ノ者ノ間ニハ終審ニ於ケル既判ノ権力アリトス 和解ハ法律上ノ錯誤ノ原由ニ依テモ損失ノ原由ニ依テモ訟撃セラルルコトヲ得ス 第二千五十三条 然レトモ和解ハ人ノ上又ハ紛争ノ目的ノ上ニ錯誤アリシ時ハ廃棄セラルルヲ得 和解ハ詐欺又ハ暴行アル総テノ場合ニ於テ廃棄セラルルヲ得 第二千五十四条 和解若シ無効ノ証書ノ執行ニ付キ為サレタル時ハ均シク和解ニ対シテ廃棄ノ訴訟ヲ為スヲ得但シ双方ノ者無効ニ付キ特ニ約定ヲ為セシ時ハ此限ニ在ラス 第二千五十五条 後ニ偽造ト認定セラレタル証書ニ付キ為シタル和解ハ全ク無効ナリトス 第二千五十六条 双方又ハ一方カ知ラサリシ既判効ヲ得タル裁判ニ依テ終了シタル訴訟ニ於ケル和解ハ無効ナリトス 双方ノ知ラサル裁判ニシテ控訴ニ付ス可キモノナリシ時ハ和解ハ有効ナリトス 第二千五十七条 双方ノ者カ相互ノ間ニ生スルコトアルヘキ総テノ紛争ニ付キ汎漠ニ和解ヲ為シタル時ハ双方ノ者当時知ラスシテ其後ニ発見シタル証書ハ廃棄ノ原由トナラス但シ一方ノ者ノ所為ニ依リ其証書ヲ留置セシ時ハ此限ニ在ラス 然レトモ若シ和解カ新ニ発見シタル証書ニ依リ双方ノ中一方ノ者カ何ノ権利ヲモ有セサル旨ヲ証明スルニアル所ノ一個ノ目的ナラテハ有セサリシ時ハ其和解ハ無効ナリトス 第二千五十八条 和解ニ於ケル計算ノ錯誤ハ釐正ス可シ 第十六巻 民事ニ於ケル拘禁(千八百四年二月十三日決定同月二十三日頒布) 第二千五十九条 拘禁ハ民事ニ於テハ偽典売ニ付キ之ヲ為ス 左ノ場合ニ於テハ偽典売アリトス 不動産ノ所有者ニ非サルコトヲ知テ其不動産ヲ売却シ又ハ書入質ト為シタル時 書入質ト為シタル財産ヲ自由的ト陳述シ又ハ書入質ヲ其財産ノ負担スル書入質ヨリ更ニ少額ナリト陳述シタル時 第二千六十条 拘禁ハ左ノ件々ニ付キ同シク之ヲ為ス 第一 須要ノ附託ノ為メ 第二 占有回復ノ場合ニ於テハ所有者カ暴行ニ依テ奪ハレタル不動産ノ裁判所ヨリ命セラレタル放棄ノ為メ不当ノ占有中ニ収取シタル果実ノ返還ノ為メ及ヒ所有者ニ裁准セラレタル損害賠償ノ弁済ノ為メ 第三 特ニ置カレタル公吏ノ手ニ附託シタル金額回収ノ為メ 第四 係争物受託者受任者及ヒ其他ノ看守人ニ附託シタル物件差出ノ為メ 第五 裁判上ノ保証人ニ対シ及ヒ拘禁ヲ受クヘキ者ノ保証人拘禁ヲ予諾シタル時ハ其保証人ニ対シテ 第六 細字正本ノ差出ヲ命セラレタル時ハ其差出ノ為メ総テノ公吏ニ対シテ 第七 職務上ニ於テ己レニ委託セラレタル証書返還ノ為メ及ヒ依頼人ノ為メニ収受シタル金額返還ノ為メ公証人代書人及ヒ使吏ニ対シテ 第二千六十一条 既判効ヲ得タル所有回復ノ裁判ニ依テ不動産ヲ放擲スルノ言渡ヲ受ケ之ニ服従スルコトヲ拒ミタル者ハ其最初ノ裁判書ヲ本人又ハ其住所ニ送達シタルヨリ十五日後ニ第二ノ裁判ニ依テ之ヲ拘禁スルコトヲ得 若シ其不動産言渡ヲ受ケタル者ノ住所ヨリ五「ミリアメートル」以上隔離スル時ハ十五日ノ猶予ニ五「ミリアメートル」毎ニ一日ヲ増加ス 第二千六十二条 拘禁ハ田野財産ノ借賃ノ弁済ノ為ニハ賃貸証書ニ明ニ之ヲ要約セシ時ニ非サレハ土地賃借人ニ対シテ之ヲ命スルヲ得ス 然レトモ土地賃借人及ヒ分果小作人ハ己レニ委付セラレタル獣畜、種子及ヒ農具ヲ賃貸ノ終リニ於テ差出ササル時ハ拘禁セラルルコトヲ得但シ上ノ物件ノ不足カ其所為ニ因テ生シタルニ非サルコトヲ証明スル時ハ此限ニ在ラス 第二千六十三条 前数条ニ定メタル場合又ハ後来明文ヲ以テ定ムルコトアル可キ場合ノ外ハ総テノ裁判官ニ拘禁ヲ宣告スルコトヲ禁シ総テノ公証人及ヒ裁判所書記ニ拘禁ヲ要約シタル証書ヲ作ルコトヲ禁シ総テノ仏蘭西人ニ外国ニ於テ証書ヲ記スル時ト雖トモ如此キ証書ヲ承諾スルコトヲ禁ス若シ之ニ違背スル時ハ無効費用及ヒ損害賠償ノ罰ヲ科ス可シ 第二千六十四条前ニ記シタル場合ニ於テモ拘禁ハ幼者ニ対シテ宣告スルヲ得ス 第二千六十五条 拘禁ハ三百「フラン」以下ノ金額ニ付キ宣告スルヲ得ス 第二千六十六条 拘禁ハ偽典売ノ場合ニ非サレハ七十歳ノ者及ヒ婦女ニ対シテ宣告スルヲ得ス 七十歳ノ者ニ許与シタル恩恵ヲ享クルニハ第七十年ニ達シタルヲ以テ足レリトス 婚姻中ニ偽典売ノ原由ノ為メノ拘禁ハ婦ニ対シテハ婦財産ヲ分割スルカ又ハ婦自由管理権ヲ貯存スル財産ヲ有スル時ニシテ此財産ニ関スル約務ノ為メニナラテハ之ヲ為サス 財産ヲ共通シ而〆夫ト合同シ又ハ連帯シテ義務ヲ負担シタル婦ハ其契約ノ為メ偽典売者ト看做スコトヲ得ス 第二千六十七条 拘禁ハ法律ニ依リ允許スル場合ト雖トモ裁判言渡ニ依ルニ非サレハ適施スルヲ得ス 第二千六十八条 控訴ハ保証人ヲ立テ仮ニ執行ス可キ裁判ニ依リ宣告シタル拘禁ヲ停止セス 第二千六十九条 拘禁ノ執行ハ財産ニ付テノ起訴及ヒ執行ヲ防止セス又之ヲ停止セス 第二千七十条 商事ニ於テ拘禁ヲ允許スル別段ノ法律懲治警察ノ法律及ヒ公金ノ管理ニ関スル法律ニ違背ス可ラス 第十七巻 質入(千八百四年三月十日決定同月二十六日頒布) 第二千七十一条 質入トハ義務者カ負債ノ抵保ノ為メ権利者ニ或ル物件ヲ交付スル契約ヲ云フ 第二千七十二条 動産物件ノ質入ハ之ヲ動産質ト称シ 不動産物件ノ質入ハ之ヲ不動産質ト称ス 第一章 動産質 第二千七十三条 動産質ハ先取権又ハ他ノ権利者ニ対スル撰択権ニ依リ其目的タル物件ヲ以テ己レニ弁済セシムルノ権利ヲ権利者ニ附与ス 第二千七十四条 其先取権ハ負債シタル金額質入シタル物件ノ種類及ヒ性質ノ陳述ヲ包含シ又ハ其品位度量ヲ記シテ添ヘタル状況書ヲ包含シ而シテ適法ニ登記シタル公正又ハ私印ノ証書アル時ニ非サレハ存立セス 然レトモ証書ノ作成及ヒ其登記ハ百五十「フラン」ノ価額ヲ超過シタル事項ニ非サレハ必要トセス 第二千七十五条 前条ニ記シタル先取権ハ動産債主権ノ如キ無形ノ動産ニ付テハ前ノ如ク登記シ且ツ質ト為シタル債主権ノ義務者ニ送達シタル公正又ハ私印ノ証書ニ依ルニ非サレハ設定セス 第二千七十六条 総テノ場合ニ於テ先取権ハ質物カ権利者又ハ契約者間ニ定メタル外人ノ占有ニ附セラレ且ツ其占有中ニ存スル時ニ非サレハ質物ニ付キ成立セス 第二千七十七条 質物ハ義務者ノ為メニ外人ヨリ附与スルヲ得 第二千七十八条 権利者ハ弁済欠缺ノ際ニ於テ質物ヲ処分スルヲ得ス但シ権利者ハ鑑定人ノ為シタル評価ニ従ヒ負債ノ額ニ至ル迄質物カ弁済ノ為メ己レニ属スルカ又ハ之ヲ公売ニ附ス可キ旨ヲ裁判所ニ命セシムルコトヲ得可キモノトス 前ニ記シタル法式ナクシテ権利者質物ヲ所有トシ又ハ之ヲ処分スルコトヲ許諾シタル約款ハ総テ効ナシトス 第二千七十九条 義務者ノ所有権ヲ取上ルコトアルトキハ其取上ケ迄ハ義務者ハ質物ノ所有者ニテ留マリ質物ハ権利者ノ手中ニ於テ其先取権ヲ確保スル附託物タルニ過キストス 第二千八十条 権利者ハ契約即チ一般ノ約束上ノ義務ノ巻ニ定メタル規則ニ従ヒ其懈怠ニ依テ生シタル質物ノ滅失又ハ損壊ノ責ニ任ス 義務者ノ方ニ於テハ質物保存ノ為メ権利者ノ為シメル有益ニシテ必要ノ費用ヲ権利者ニ計算ス可シ 第二千八十一条 質物ト為シタル債主権ニ関シテ而〆其債主権ノ利息ヲ生スル時ハ権利者ハ其利息ヲ巳レノ受ク可キ利息ニ抵充ス 抵保ノ為メ債主権ヲ質物トナシタル負債カ自ラ利息ヲ生セサル時ハ抵充ハ負債ノ元金ニ付キ之ヲ為ス 第二千八十二条 義務者ハ質物ノ領有者カ質物ヲ妄用セサルニ於テハ抵保ノ為メ質物ヲ附与シタル負債ノ元金利息及ヒ費用ヲ全ク弁済シタル後ニ非サレハ其返還ヲ要求スルヲ得ス 若シ同一ノ義務者ヨリ同一ノ権利者ニ対シ質入ヲ為シタル後ニ契約シタル他ノ負債アリテ第一ノ負債弁済ノ前ニ其期限ノ至リタル時ハ権利者ハ質物ヲ第二ノ負債弁済ニ充ツル為メ何ノ要約ナキ時ト雖トモ悉皆第一及ヒ第二ノ負債ノ弁済ヲ得ル前ニハ質物ヲ委付スルニ及ハス 第二千八十三条 質物ハ義務者ノ相続人又ハ権利者ノ相続人ノ間ニ負債ノ得分的タルニ拘ハラス不得分的ナリトス 負債ニ付キ己レノ部分ヲ弁済シタル義務者ノ相続人ハ負債ノ全ク弁済セラレザル限リハ質物ニ付キ己レノ部分ノ返還ヲ要求スルヲ得ス 右ノ裏面ニテ負債ニ付キ己レノ部分ヲ収受シタル権利者ノ相続人ハ未タ弁済ヲ得サル其共同相続人ヲ害シテ質物ヲ還付スルヲ得ス 第二千八十四条 上ノ規則ハ商業ノ事項及ヒ官許ヲ得タル質貸舗ニ適用セス是等ニ付テハ之ニ関スル法律規則ニ循フ可シ 第二章 不動産質 第二千八十五条 不動産質ハ書面ニ依ルニ非サレハ設定セサルモノトス 権利者ハ此契約ニ依リ利息ヲ受ク可キ時ハ年々不動産ノ果実ヲ貸金ノ利息ニ抵充シ然ル後其元金ニ抵充スルノ負担ヲ以テ其果実ヲ収取スルノ権能ナラテハ獲得セス 第二千八十六条 権利者ハ別段ニ約束ヲ為ササルニ於テハ其不動産質トシテ領有スル不動産ノ租税及ヒ年々ノ負担ヲ弁済ス可シ 又権利者ハ不動産ノ保存並ニ其有益ニシテ必要ノ修理ヲ為ササルヲ得ス若シ然ラサル時ハ損害賠償ヲ為ス可シ但シ此諸件ニ関スル総テノ費用ハ果実中ヨリ先収ス 第二千八十七条 義務者ハ不動産質トシテ供付シタル不動産ノ収益ヲ負債ノ全キ弁済前ニ要求スルヲ得ス 然レトモ前条ニ記シタル義務ヲ免カレント欲スル権利者ハ其権利ヲ放棄セサルニ於テハ不動産ノ収益権ヲ取戻ス可ク常ニ義務者ヲ要強スルヲ得 第二千八十八条 権利者ハ約束シタル期限ニ於テ弁済ナキノミヲ以テ不動産ノ所有者トナラス之ニ反スル約款ハ総テ効ナシトス此場合ニ於テハ権利者ハ法律上ノ方法ヲ以テ其義務者ノ所有権取上ヲ訴フルヲ得 第二千八十九条 若シ契約者カ或ハ全部或ハ一定ノ額ニ至ル迄果実ト利息ト相殺スヘキ旨ヲ要約セシ時ハ此約束ハ法律ニテ禁止セサル総テノ他ノ約束ノ如ク執行ス 第二千九十条 第二千七十七条及ヒ第二千八十三条ノ規則ハ動産質ニ於ル如ク不動産質ニ適用ス 第二千九十一条 凡テ本章ニ制定スル所ノモノハ不動産質ノ名義ヲ以テ供付シタル不動産ニ付キ外人ノ有シ得ヘキ権利ヲ障碍セス 右ノ名義ヲ備有スル権利者若シ其不動産ニ付キ他ニ適法ニ設定シ及ヒ保存シタル先取権及ヒ書入質権ヲ有スル時ハ自己ノ順序ニ於テ総テノ他ノ権利者ノ如ク是等ノ権利ヲ執行ス 第十八巻 先取権及ヒ書入質権(千八百四年三月十九日決定同月二十九日頒布) 第一章 総則 第二千九十二条 自身ニ義務ヲ負フ者ハ現有及ヒ未有ノ総テノ動産及ヒ不動産ヲ以テ其義務ヲ履行ス可シ 第二千九十三条 義務者ノ財産ハ其権利者ノ共同ノ抵保物ニシテ其代価ハ其権利者ノ間ニ撰択ノ正当ノ原由アラサルニ於テハ其間ニ割合{貸高ノ}ニ准シテ分配ス 第二千九十四条 撰択ノ正当ノ原由トハ先取権及ヒ書入質権ヲ云フ 第二章 先取権 第二千九十五条 先取権トハ債主権ノ性質ニ依リ仮令ヒ書入質権ヲ有スル権利者ニ対シテモ己レヲ撰択セラルルコトヲ一権利者ニ許ス所ノ権利ヲ云フ 第二千九十六条 先取権アル権利者ノ間ニハ撰択ハ先取権ノ種々ノ性質ニ依テ規定ス 第二千九十七条 同一ノ等位中ニアル先取権アル権利者ハ対等ニ弁済ヲ受ク可シ 第二千九十八条 国庫ノ権利ニ依ル先取権及ヒ之ヲ執行スル順序ハ之ニ関スル法律ヲ以テ規定ス 然レトモ国庫ハ外人ノ既得権ヲ害シテ先取権ヲ獲ルコトヲ得ス 第二千九十九条 先取権ハ動産又ハ不動産ニ付キ設定スルヲ得 第一款 動産ニ付テノ先取権 第二千百条 先取権ニハ一般ノモノアリ又或ル動産ニ特別ノモノアリ 第一節 動産ニ付テノ一般ノ先取権 第二千百一条 動産ノ一般ニ付キ先取権アル債主権ハ下ニ記スルモノニシテ下ノ順序ニ従ヒ之ヲ執行ス 第一 裁判ノ費用 第二 葬式ノ費用 第三 最後ノ疾病ノ某々ノ費用但シ其償還ヲ受ク可キ者ノ間ニハ対等ノ先取権アリトス 第四 雇人ノ給金但シ経過シタル年ノ分ト当年分ノ中弁済スヘキモノトナリタル分 第五 義務者及ヒ其家族ニ為シタル物料ノ供給即チ最後ノ六ヶ月間ニ麺包商屠者及ヒ其他ノ者ノ如キ零売商ノ為シタル供給及ヒ最後ノ一年間ニ学塾ノ首長及ヒ卸売商ノ為シタル供給 第二節 或ル動産ニ付テノ先取権 第二千百二条 或ル動産ニ付キ先取権アル債主権左ノ如シ 第一 家屋ノ貸賃及ヒ土地ノ貸賃ハ当年収穫ノ果実ニ付キ及ヒ賃貸家屋賃貸地ニ供備スルモノ及ヒ賃貸地ノ耕耘ニ用フルモノノ代価ニ付キ先取権ヲ有ス即チ賃貸証書ノ公正的ナル時又ハ私印的ニシテ確実ノ日附アル時ハ期限ニ至リタルモノ及ヒ期限ニ至ル可キモノノ上ニ先取権ヲ有ス此二個ノ場合ニ於テ他ノ権利者ハ賃貸ノ残期間家屋又ハ土地ヲ復賃貸ト為シ其賃銀ヲ己レニ利スルノ権アリ然レトモ尚ホ所有者ニ補償ス可キ総テノモノヲ之ニ弁済スルノ負担アリトス 公正ノ賃貸証書ノ欠缺スル時又ハ私印証書アルモ確実ノ日附ナキ時ハ当年ノ終了ノ時ヨリ一年間先取権ヲ有ス 此先取権ハ借人修理及ヒ賃借ノ執行ニ関スル総テノモノノ為メニモ存立ス 然レトモ種子ノ為メ又ハ当年ノ収穫ノ費用ノ為メニ補償ス可キ金額ハ其収穫物ノ代価ヲ以テ又農具ノ為メニ補償ス可キ金額ハ其農具ノ代価ヲ以テ孰レノ場合ニ於テモ所有者ニ対スル撰択ヲ以テ弁済セラル可シ 所有者ハ其家屋又ハ土地ニ供備シタル動産カ其承諾ナクシテ運移セラルル時ハ之ヲ差押フルコトヲ得而〆土地ニ供備シタル動産ニ付テハ四十日ノ期内ニ又家屋ニ供備シタル動産ニ付テハ十五日ノ期内ニ其取戻ヲ為シタルニ於テハ其動産ノ上ニ先取権ヲ有ス 第二 債主権ハ権利者ノ収握スル質物ニ付キ先取権ヲ有ス 第三 物件保存ノ為メニ為シタル費用 第四 未タ弁済セラレサル動産ヲ義務者猶ホ占有スル時ハ期限ヲ以テ買入レタルト期限ナク買入レタルヲ問ハス其代価 若シ期限ナク売却ヲ為シタル時ハ売主ハ買主ノ占有スル間ハ其動産ヲ取戻シ且ツ其転売ヲ妨止スルコトヲ得但シ之ヲ為スニハ引渡ノ日ヨリ八日内ニ取戻ノ訴ヲ為シ且ツ動産カ引渡ヲ為シタル時ト同一ノ状況ニテ存スルコトヲ要ス 然レトモ売主ノ先取権ハ売主ニ於テ家屋及ヒ土地ニ供備シタル動産及ヒ他ノ物件ノ賃借人ニ属セサルコトヲ其所有者カ知リタルコトヲ証セサルニ於テハ家屋又ハ土地ノ所有者ノ後ニ非サレハ之ヲ行フヲ得ス 取戻ニ付テハ商事ニ関スル法律及ヒ慣習ヲ更改スルコトナシ 第五 旅館主ノ供給ハ旅館ニ運送シタル旅人ノ物件ニ付キ先取権ヲ有ス 第六 運送費及ヒ其附属ノ費用ハ運送シタル物件ニ付キ先取権ヲ有ス 第七 公吏其職務ノ執行中ニ行フタル擅権及ヒ涜職ヨリ生シタル債主権ハ其保証金ノ元資及ヒ之ヨリ生シタル利息ニ付キ先取権ヲ有ス 第二款 不動産ニ付テノ先取権 第二千百三条 不動産ニ付キ先取権アル債主左ノ如シ 第一 売主ハ代価ノ弁済ノ為メ売却シタル不動産ニ付キ先取権ヲ有ス 引続テ数回売却アリテ其代価ノ全部又ハ一部ノ弁償ヲ得サル時ハ第一ノ売主ハ第二ノ売主ニ対シテ撰択セラレ第二ノ売主ハ第三ノ売主ニ対シテ撰択セラレ以下之ニ準ス 第二 不動産獲得ノ為メニ金額ヲ供給シタル者但シ借入証書ニ依リ其金額ヲ其使用ニ供シ及ヒ売主ノ領収書ニ依リ借入レタル金額ヲ以テ其弁済ヲ為レタルコトヲ公正ニ証明スルヲ要ス 第三 共同相続人ハ己等ノ間ニ為シタル分派及ヒ股分割戻ノ担保ノ為メ相続不動産ニ付キ先取権ヲ有ス 第四 建造物運河其他某々ノ工作物ヲ創造改造修理スル為メ用役シタル建築師起業人泥工及ヒ其他ノ職工但シ其建造物アル地ノ始審裁判所ヨリ職権ヲ以テ任シタル鑑定人ヲシテ所有者カ成スノ企アリト陳述シタル工事ニ関シテ場所ノ状況ヲ検証スル為メ予メ調書ヲ作ラシメ而〆工事竣功ヨリ多クモ六月内ニ上ニ同シク職権ヲ以テ任シタル鑑定人ヲシテ工事ヲ記述セシメタルコトヲ要ス 然レトモ先取権ノ金額ハ第二ノ調書ニ依リ証明シタル価額ヲ超過スルヲ得ス其金額ハ不動産譲与ノ時ニ存在スルモノニシテ不動産ニ為シタル事業ヨリ生出シタル増額ニ減殺スルモノトス 第五 職工ニ弁済シ又ハ償還スル為メニ金額ヲ貸付シタル者ハ同一ノ先取権ヲ得収ス可シ但シ不動産獲得ノ為メ金額ヲ貸付シタル者ニ付キ前ニ記シタル如ク借入証書及ヒ職工ノ領収書ニ依リ公正ニ其使用ヲ証明スルヲ要ス 第三款 動産及ヒ不動産ニ推及スル先取権 第二千百四条 動産ト不動産トニ推及スル先取権ハ第二千百一条ニ記シタルモノナリ 第二千百五条 若シ動産ノ欠缺ニ依リ前条ニ記シタル先取権者カ不動産ニ付キ先取権アル権利者ト対等ニ或ル動産ノ代価ヲ以テ弁済ヲ得ル為メ現出スル時ハ弁済ハ左ノ順序ニ従ヒ之ヲ為ス可シ 第一 第二千百一条ニ記シタル裁判ノ費用及ヒ其地ノモノ 第二 第二千百三条ニ示定シタル債主権 第四款 先取権ヲ保有スルコト如何 第二千百六条 権利者ノ間ニハ先取権ハ法律ヲ以テ定メタル方法ニ従ヒ書入質保管者ノ簿冊ニ記入シテ之ヲ公ケニ為シ且ツ其記入ノ日附ヨリナラテハ不動産ニ付キ効果ヲ生セス但シ下ノ例外ノミハ此限ニ在ラス 第二千百七条 第二千百二条ニ記シタル債主権ハ記入ノ法式ノ例外ナリトス 第二千百八条 先取権アル売主ハ獲得者ニ所有権ヲ移転シタル証書ニシテ其代価ノ全部又ハ一部ノ未タ弁済ヲ受ケサルコトヲ証明スル証書ノ登記ニ依リ其先取権ヲ保有ス之レカ為メニハ獲得者ノ為シタル契約ノ登記ハ売主ノ為メ及ヒ弁済シタル金額ヲ売主ニ供給シ而シテ同一ノ契約ニ依リ売主ノ権利ヲ代襲スル所ノ貸付者ノ為メ記入ニ均シキ効アリトス然レトモ書入質保管者ハ職権ヲ以テ其簿冊ニ売主及ヒ貸付者ノ利益ノ為メ所有権移転ノ証書ヨリ生スル債主権ノ記入ヲ為ス可シ若シ之ヲ為ササル時ハ外人ニ対シテ損害賠償ノ罰ヲ受ク可シ其売主及ヒ貸付者モ若シ売買契約ノ登記アラサリシ時ハ代価中ニテ未タ己等ノ弁済ヲ得サルモノノ記入ヲ得ル為メ売買契約ノ登記ヲ為サシムルコトヲ得 第二千百九条 共同相続人又ハ共同分派人ハ分派又ハ未分物競売ノ日ヨリ六十日内ニ己レノ要求ヲ以テ為シタル記入ニ依リ股分ノ割戻又ハ競売ノ代価ノ為メ各股分ノ財産又ハ競売財産ニ付キ先取権ヲ保有ス右ノ時間中ハ割戻ノ負担アル財産又ハ競売ニ依リ落札ト為リタル財産ニ付キ割戻又ハ代価ノ権利者ヲ害シテ何ノ書入質ヲモ為スコトヲ得ス 第二千百十条 建造物運河其他ノ工作物ヲ創造改造修理スル為メ用役シタル建築師起業人泥工其他ノ職工及ヒ是等ノ者ニ弁済シ又ハ償還スル為メ金額ヲ貸付シテ其使用ノ証明セラレタル者ハ第一場所ノ状況ヲ検証スル調書ト第二記述ノ調書トノ二記入ニ依リ第一ノ調書記入ノ日附ニ於テ其先取権ヲ保有ス 第二千百十一条 相続ノ巻第八百七十八条ニ従ヒ死者ノ財産ノ分割ヲ要求スル権利者及ヒ受嘱者ハ相続開始ヨリ六月内ニ相続ノ各不動産ニ付キ為シタル記入ニ依リ死者ノ相続人又ハ代襲相続人ノ権利者ニ対シ其不動産ニ付キ己等ノ先取権ヲ保有ス 此期限尽了前ハ権利者又ハ受嘱者ヲ害シテ相続人又ハ代襲相続人ヨリ此財産ニ付キ何ノ書入質ヲモ有効ニ為スコトヲ得ス 第二千百十二条 此先取権アル種々ノ債主権ノ譲受人ハ皆其譲渡人ニ代リ之ト同一ノ権利ヲ執行ス 第二千百十三条 記入ノ法式ニ従フタル先取権アル総テノ債主権ハ先取権ヲ保有スル為メ前ニ定メタル条件ヲ履行セサルモ猶ホ書入質権アルモノタルコトヲ止了セス然レトモ書入質権ハ下ニ詳記スル如ク為ササル可ラサル記入ノ時期ヨリナラテハ外人ニ対シテ日附ヲ有セストス 第三章 書入質権 第二千百十四条 書入質権トハ義務ノ弁済ニ抵供シタル不動産ニ付テノ物上権ヲ云フ 書入質権ハ其性質ニ於テ不得分的ニシテ抵供セラレタル総テノ不動産ニ付キ並ニ此不動産ノ各個及ヒ各部ニ付キ存立ス 書入質権ハ其不動産ノ何人ノ手裏ニ移ルヲ問ハス之ヲ追躡ス 第二千百十五条 書入質権ハ法律ニ依リ許シタル場合ト法式トニ従フニ非サレハ存立セス 第二千百十六条 書入質権ニハ法律上ノモノアリ裁判上ノモノアリ約束上ノモノアリ 第二千百十七条 法律上ノ書入質権トハ法律ニ因テ生スルモノヲ云フ 裁判上ノ書入質権トハ裁判言渡又ハ裁判上ノ所為ヨリ生スルモノヲ云フ 約束上ノ書入質権トハ約束ニ関シ並ニ証書及ヒ契約ノ外部ノ法式ニ関スルモノヲ云フ 第二千百十八条 書入質ト為スヲ得可キモノハ左ニ記スルモノノミナリトス 第一 通易スルコトヲ得ル不動産及ヒ不動産ト看做シタル其附属物 第二 収実権継続ノ時間上ト同一ノ財産及ヒ其附属物ノ収実権 第二千百十九条 動産ハ書入質権ニ依リ追躡セラレス 第二千百二十条 本法ニ依テ船舶ニ関スル海上法ノ成規ニ変更ヲ為スコトナシ 第一款 法律上ノ書入質権 第二千百二十一条 法律上ノ書入質権ノ附属スル権利及ヒ債主権ハ左ノ如シ 夫ノ財産ニ付キ有夫ノ婦ノ権利 後見人ノ財産ニ付キ幼者及ヒ被禁治産者ノ権利 収税官及ヒ会計管理者ノ財産ニ付キ政府邑及ヒ公舎ノ権利 第二千百二十二条 法律上ノ書入質権ヲ有スル権利者ハ下ニ定ムル変更ニ従ヒ其義務者ニ属スル総テノ不動産ニ付キ及ヒ後ニ義務者ニ属スルコトアルヘキ不動産ニ付キ其権利ヲ執行スルヲ得 第二款 裁判上ノ書入質権 第二千百二十三条 裁判上ノ書入質権ハ対審タルト缺席タルトヲ問ハス確定又ハ仮定ノ裁判ヲ得タル者ノ為メ其裁判ヨリ生ス又裁判上ノ書入質権ハ私印ノ義務証書ニ捺シタル手署ニ付キ裁判ヲ以テ為シタル認定又ハ験真ヨリ生ス 裁判上ノ書入質権ハ下ニ記スル変更ノ外ハ義務者ノ現有不動産及ヒ其獲得スルコトアル可キ不動産ニ付キ執行スルヲ得 仲裁人ノ判断ハ其執行ニ付キ裁判上ノ命令ヲ付シタル時ニ非サレハ書入質権ヲ提起セス又書入質権ハ外国ニ於テ為シタル裁判ノ執行ス可キモノタルコトヲ仏蘭西ノ裁判所ヨリ宣告シタル時ニ非サレハ外国ニ於テ為シタル裁判ヨリ生セス但シ国政上ノ法律又ハ国際条約ノ中ニ在ルコトアルヘキ反対ノ規則ト抵触スルコトナカル可シ 第三款 約束上ノ書入質権 第二千百二十四条 約束上ノ書入質権ハ書入質ト為ス不動産ヲ譲与スル能力アル者ニ非サレハ承諾スルヲ得ス 第二千百二十五条 或ハ条件ニ依リ停止シ或ハ或ル場合ニ於テ解除ス可ク或ハ廃棄ニ属ス可キ権利ナラテハ不動産ニ付テ有セサル者ハ同一ノ条件又ハ同一ノ廃棄ニ従フ所ノ書入質権ニ非サレハ承諾スルヲ得ス 第二千百二十六条 幼者被禁治産者ノ財産及ヒ失踪者ノ財産ハ仮ニナラテハ其占有ヲ委付セサル間ハ法律ニ定メタル原由ノ為メ及ヒ法式ニ循ヒ又ハ裁判ニ依ルニ非サレハ書入質ト為スヲ得ス 第二千百二十七条 約束上ノ書入質権ハ公証人二人ノ面前又ハ公証人一人ト証人二人ノ面前ニ於テ公正ノ法式ニ従ヒ記シタル証書ニ依ルニ非サレハ承諾スルヲ得ス 第二千百二十八条 外国ニ於テ為シタル契約ニ依リ仏蘭西ニ在ル財産ヲ書入質ト為スヲ得ス但シ国政上ノ法律又ハ国際条約ノ中ニ此規則ニ反対ノ箇条アル時ハ此限ニ在ラス 第二千百二十九条 債主権設定ノ公正証書若クハ其後ノ公正証書ニ於テ義務者カ債主権ノ書入質ヲ承諾スル現ニ義務者ニ属スル所ノ不動産ノ各個ノ性質及ヒ所在ヲ別々ニ陳述シタル書入質ニ非サレハ有効ナル約束上ノ書入質ニ非ストス○義務者ノ総テノ現有財産ノ各個ハ之ヲ指名シテ書入質ト為スコトヲ得 未有ノ財産ハ書入質ト為スヲ得ス 第二千百三十条 然レトモ義務者ノ現有ニシテ自由ノ財産若シ債主権ノ抵保ノ為メニ不充分ナル時ハ義務者ハ其不充分ナル旨ヲ陳言シ其後ニ獲得スルコトアルヘキ財産ノ各個ヲ其獲得ノ都度抵保ニ充ツ可キコトヲ承諾スルヲ得 第二千百三十一条 又書入質ニ付シタル現有ノ一個又ハ総テノ不動産ノ滅失シ又ハ損壊シテ権利者ノ抵保ノ為メニ不充分トナリタル時ハ権利者ハ或ハ直チニ其償還ヲ訴ヘ或ハ書入質ノ補充ヲ獲ルコトヲ得 第二千百三十二条 約束上ノ書入質ハ之ヲ承諾スル為メノ金額ノ確的ニシテ証書ニ依テ示定セラレタル時ニ非サレハ有効ナラストス若シ義務ヨリ生スル債主権其成立ノ為メ条件的ナルカ又ハ其価額上不定的ナル時ハ権利者ハ己レノ特ニ陳述シタル評定価額ノ高ニ至ル迄ノ外下ニ定ムル記入ヲ要求スルヲ得ス而シテ義務者ハ理由アルニ於テハ其評定価額ヲ減殺セシムルノ権アル可シ 第二千百三十三条 獲得シタル書入質権ハ書入質ト為シタル不動産ニ生シタル総テノ改良ニ推及ス 第四款 書入質権ノ間ニ於ケル等位 第二千百三十四条 権利者ノ間ニ於テハ書入質権ハ法律上タルト裁判上タルト約束上タルトヲ問ハス法律ニ記シタル法式及ヒ方法ニ従ヒ保管者ノ薄冊ニ権利者ノ為シタル記入ノ日ヨリナラテハ等位ヲ有セス但シ次条ニ記スル例外ハ此限ニ在ラス 第二千百三十五条 書入質権ハ全ク記入ニ関セス左ノ者ノ為メニ成立ス 第一 後見人ニ属スル不動産ニ付キ後見承諾ノ日ヨリ其管理ニ関シテ幼者及ヒ被禁治産者ノ為メ 第二 夫ノ不動産ニ付キ婦ノ嫁資及ヒ婚姻財産上ノ約束ニ関シテ婚姻ノ日ヨリ婦ノ為メ 婦ハ己レニ帰属シタル相続又ハ婚姻中己レニ為サレタル贈遺ヨリ生シタル嫁資額ニ付テハ相続ノ開始シ又ハ贈遺ノ効果ヲ生シタル日ヨリナラテハ書入質権ヲ有セス 婦ハ夫ト共ニ契約シタル負債ノ賠債ニ付キ及ヒ其移転シタル専有財産ノ再用ニ付テハ義務ノ日又ハ売買ノ日ヨリナラテハ書入質権ヲ有セス 如何ナル場合ニ於テモ本条ノ規則ハ本巻ノ公布前ニ外人ノ得タル権利ヲ害スルヲ得ス 第二千百三十六条 然レトモ夫及ヒ後見人ハ己等ノ財産ノ負担スル書入質ヲ公示セサルヲ得ス而〆之カ為メニハ己等ニ属スル不動産及ヒ後ニ己等ニ属スルコトアル可キ不動産ニ付キ特ニ設ケタル役所ニ少シモ猶予ナク躬ラ記入ヲ請求ス可シ 本条ヲ以テ命シタル記入ヲ請求スルコトヲ缺キ亦之ヲ為サシムルコトヲ缺キツツ己等ノ不動産ノ婦及ヒ幼者ノ法律上ノ書入質ニ抵供セラレタル旨ヲ特ニ陳述セスシテ之ニ付キ先取権又ハ書入質権ヲ得ルコトヲ承諾シ又ハ之ヲ得ルニ任セタル夫及ヒ後見人ハ偽典売者ト看做サレ偽典売者トシテ拘禁セラル可シ 第二千百三十七条 監察後見人ハ己レ一身上ノ責任ヲ以テ且ツ損害賠償ノ罰科ヲ以テ後見人ノ管理ニ対シ後見人ノ財産ニ付キ猶予ナク記入ノ行ハルルコトヲ監視シ且ツ其記入ヲ為サシメサル可カラス 第二千百三十八条 夫後見人監察後見人前条ヲ以テ命シタル記入ヲ為サシムルコトヲ缺キタル時ハ夫及ヒ後見人ノ住所若クハ財産所在地ノ始審裁判所検事ヨリ其記入ヲ要ム可シ 第二千百三十九条 夫若クハ婦ノ血属及ヒ幼者ノ血属又其欠缺ニ於テハ其朋友ハ右ノ記入ヲ要ムルヲ得亦記入ハ婦及ヒ幼者モ之ヲ要ムルヲ得 第二千百四十条 婚姻財産契約ニ依リ丁年ノ契約者夫ノ一個又ハ或ル不動産ニ付テノミ記入ヲ為ス可キ旨ヲ約束セシ時ハ記入ノ為メ指定セラレサル不動産ハ自由的トシテ存シ婦ノ嫁資ノ為メ並ニ其取戻権及ヒ婚姻財産上ノ約束ノ為メ書入質ヨリ免除セラル可シ○何ノ記入ヲモ為ササル旨ヲ約束スルヲ得ス 第二千百四十一条 後見人ノ不動産ニ対シテモ若シ親族会議ニ於テ血属カ其或ル不動産ニ付テノミ記入ヲ為ス可キノ意見ヲ有スル時ハ亦同前ナリトス 第二千百四十二条 前二条ノ場合ニ於テ夫後見人及ヒ監察後見人ハ指定セラレタル不動産ニ付テナラテハ記入ヲ為スニ及ハス 第二千百四十三条 書入質若シ後見人任命証書ニ依リ制限セラレサリシ時ハ後見人ハ其不動産ニ付テノ一般ノ書入質ノ其管理ニ対シ充分ナル抵保ヲ著ク超過スル場合ニ於テハ其書入質カ幼者ノ為メニ完全ナル担保ヲ行フニ充分ナル不動産ニ制限セラルルコトヲ要求スルヲ得 其要求ハ監察後見人ニ対シテ之ヲ為シ且ツ予メ親族ノ意見ヲ問フ可シ 第二千百四十四条 又夫ハ婦ノ承諾ヲ得且ツ親族会議ニ集会シタル婦ノ最近ノ血属四人ノ意見ヲ問フタル後嫁資取戻権及ヒ婚姻財産上ノ約束ノ為メ己レノ総テノ不動産ニ付テノ一般ノ書入質カ婦ノ権利ノ完全ナル保存ノ為メ充分ナル不動産ニ制限セラルルコトヲ要求スルヲ得 第二千百四十五条 夫及ヒ後見人ノ要求ニ関スル裁判ハ検事ノ竟見ヲ聴キタル後検事ト対審ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ為サス 裁判所カ書入質ヲ或ル不動産ニ減殺ス可キ旨ヲ宣告シタル場合ニ於テハ他ノ総テノ不動産ニ付キ為シタル記入ハ抹却セラル可シ 第四章 先取権及ヒ書入質権ノ記入ノ方法 第二千百四十六条 記入ハ先取権及ヒ書入質権ニ供シタル財産所在ノ郡ニ於ケル書入質保管局ニ於テ之ヲ為ス可シ若シ商事分散開始前ニ為シタル所為ヲ無効ト告示セラルル時間ニ於テ記入ヲ為シタル時ハ其記入ハ何ノ効ヲモ生セス 目録ノ利益ニ依テナラテハ相続ノ領承セラレサル場合ニ於テ遺物ノ権利者ノ一人相続開始後ニナラテハ記入ヲ為ササリシ時ハ其権利者ノ間ニ於テモ同前ナリトス 第二千百四十七条 同一日ニ記入シタル総テノ権利者ハ保管者カ朝ノ記入ト夕ノ記入トノ差異ヲ示シタル時ニ於テ其区別ナク同日附ノ書入質権ヲ対等ニ執行ス可シ 第二千百四十八条 記入ヲ為ス為メニ権利者ハ先取権又ハ書入質権ヲ生セシムル裁判書又ハ証書ノ原本又ハ其公正ノ謄本ヲ自ラ又ハ外人ヲシテ書入質保管者ニ差出ス可シ 権利者ハ証印紙ニ記シタル二通ノ明細書ヲ証書ニ添附ス可ク而〆其一通ハ証書ノ謄本ニ記スルコトヲ得其明細書ニハ左ノ諸件ヲ記載ス可シ 第一 権利者ノ氏名、住所、職業アルニ於テハ職業及ヒ保管局所轄ノ郡ノ某地ニ於テ其権利者ノ為メニ住所ノ撰定 第二 義務者ノ氏名、住所、職業ノ分明ナル時ハ職業、又ハ保管者カ総テノ場合ニ於テ書入質ヲ負担シタル者ヲ認識シ及ヒ差別シ得ル如キ各自特別ノ指定 第三 日附及ヒ証書ノ性質 第四 証書中ニ記シタル債主権ノ元金額、又ハ年金供給未必ノ権利条件上ノ権利不定ノ権利ノ見積ヲ命スル場合ニ於テハ記入者ノ見積リタル債主権ノ元金額並ニ其元金ノ附属額及ヒ弁済要求ノ時期 第五 記入者ノ先取権又ハ書入質権ヲ保存セント欲スル財産ノ種類及ヒ其所在地ノ指示 此最終ノ規則ハ法律上又ハ裁判上ノ書入質ノ場合ニ於テハ必要ナラス約束ノ欠缺ニ於テハ此等ノ書入質ノ為メ単一ノ記入カ保管局所轄ノ郡内ニ在ル総テノ不動産ヲ衝撃ス 第二千百四十九条 死去シタル者ノ財産ニ付キ為ス可キ記入ハ前条第二ニ記スル如ク死者ノ単一ナル指名ヲ以テ為スコトヲ得 第二千百五十条 保管者ハ明細書ニ載セタル諸件ヲ己レノ薄冊ニ記シ本書又ハ本書ノ謄本ト明細書一通トヲ請求者ニ交付ス而〆其明細書ノ末尾ニハ保管者カ記入ヲ為シタルコトヲ保証ス 第二千百五十一条 利息又ハ賦額ヲ生スル元金ノ為メニ記入セラレタル権利者ハ唯二年分ト当年分トニ付キ其元金ニ於ケルト同シキ書入質権ノ等位ニ順定セラルルノ権アリ但シ第一次ノ記入ニ依リ保存セラレタルモノニ非サル他ノ賦額ノ為メニ為ス可クシテ其日附ヨリ書入質権ヲ生スル所ノ特別ノ記入ト抵触スルコトナカルヘシ 第二千百五十二条 記入ヲ請求シタル者其代人又ハ公正証書ニ因ル譲受人ハ同郡内ニ他ノ住所ヲ撰定指示スルノ負担ヲ以テ己レノ撰定シタル住所ヲ書入質ノ簿冊ニ於テ変更スルコトヲ得 第二千百五十三条 会計役ノ財産ニ付キ政府邑及ヒ公舎ノ単ニ法律上ノ書入質後見人ニ付キ幼者又ハ被禁治産者ノ法律上ノ書入質権夫ニ付キ有夫ノ婦ノ法律上ノ書入質権ハ左ノ諸件ノミヲ記シタル明細書二通ヲ差出シタル上記入セラル可シ 第一 権利者ノ氏名職業現実ノ住所及ヒ郡内ニ於テ権利者ノ撰定シ又ハ権利者ノ為メニ撰定シタル住所 第二 義務者ノ氏名職業住所又ハ其明確ナル指名 第三 保存ス可キ権利ノ性質及ヒ特定ノ物件ニ付テハ其価額但シ条件アルモノ未必ノモノ又ハ不定ノモノニ付テハ其価額ヲ定ムルニ及ハス 第二千百五十四条 記入ハ其日附ノ日ヨリ十年間書入質権及ヒ先取権ヲ保存ス其効果ハ其期限尽了前ニ記入ヲ更新セサル時ハ止了スルモノトス 第二千百五十五条 記入ノ費用ハ反対ノ要約ナキニ於テハ義務者ノ負担タル可シ而〆法律上ノ書入質ニ関セザル時ハ記入者其立替ヲ為ス可シ法律上ノ書入質権ノ記入ニ付テハ保管者ハ義務者ニ対シテ要償権ヲ有ス○売主ノ請求ス可キ登記ノ費用ハ獲得者ノ負担タル可シ 第二千百五十六条 記入ニ付キ権利者ニ対シ生スルヲ得可キ訴訟ハ権利者本人又ハ薄冊ニ記シタル撰定ノ住所中最終ノ住所ニ送達シタル召喚状ニ依リ管轄裁判所ニ於テ之ヲ起ス可シ而〆此事ニ付テハ権利者ノ死去若クハ其住所ト撰定シタル家ノ者ノ死去ニ拘ハラサルモノトス 第五章 記入ノ抹却及ヒ減殺 第二千百五十七条 記入ハ抹却ヲ為ス能力アル関係人ノ承諾ヲ以テ又ハ終審ノ裁判若クハ既判効ヲ生シタル裁判ニ依テ之ヲ抹却ス 第二千百五十八条 右何レノ場合ニ於テモ抹却ヲ請求スル者ハ承諾ヲ記スル公正証書ノ謄本又ハ裁判書ノ謄本ヲ保管局ニ納ム可シ 第二千百五十九条 承諾ナキ抹却ハ記入ヲ為シタル裁判区ノ裁判所ニ訟求ス可シ但シ未必又ハ不定ノ裁判言渡ノ抵保ノ為メニ記入ヲ為シ其裁判言渡ノ執行又ハ清算ニ付キ義務者ト自称権利者トノ間ニ他ノ裁判所ニ於テ訴訟ヲ為シ又ハ裁判ヲ受ク可キ時ハ此限ニ在ラス此場合ニ於テハ抹却ノ訟求ハ其裁判所ニ之ヲ為シ又ハ其裁判所ニ送付セラル可シ 然レトモ若シ争訟アルニ於テハ権利者及ヒ義務者カ指定シタル裁判所ニ其訟求ヲ為ス可キノ約束ハ双方ノ間ニ執行セラルルモノトス 第二千百六十条 若シ法律ニモ証書ニモ基クコトナクシテ記入ヲ為シタル時又ハ不規則ナル或ハ消滅シ若クハ弁済シタル証書ニ依テ記入ヲ為シタル時又ハ先取又ハ書入質ノ権利カ法律上ノ方法ニ依テ抹殺セラレタル時ハ抹却ハ裁判所ヨリ命セラレサルヲ得ス 第二千百六十一条 約束シタル制限ナク義務者ノ現有又ハ未有ノ財産ニ付キ法律ニ循ヒ記入ヲ為スノ権アル権利者ノ為シタル記入カ債主権ノ抵保ニ必要ナル所ヨリ多キ種々ノ財産ニ及ホシタル其都度ニ於テ記入減殺ノ訴訟又ハ相当ノ割合ニ超過スル一部ノ抹却ノ訴訟ヲ義務者ニ允許ス此訴訟ニ付テハ第二千百五十九条ニ定ムル管轄ノ規則ニ従フ可シ 本条ノ規則ハ約束上ノ書入質権ニ適用セス 第二千百六十二条 数箇ノ財産中ノ一又ハ二三ノ価額カ元金及ヒ法律上ノ附属物ニ於ケル債主権ノ額ヲ自由不動産ノ上ニテ三分一以上超過スル時ハ其数箇ノ財産ニ及ホス所ノ記入ハ過当ノモノト看做ス可シ 第二千百六十三条 債主権ノ抵保ノ為メニ設定ス可キ書入質ニ関シ約束ヲ以テ其債主権ヲ規定セス且ツ其債主権ノ性質ニ於テ条件アルモノ若クハ未必ノモノ又ハ不定ノモノタル時権利者カ之ニ付キ為シタル見積ニ従ヒ為シタル記入モ亦過当トシテ減殺スルコトヲ得 第二千百六十四条 此場合ニ於テハ裁判官ハ事状ト任運思料ト事実推測トニ従ヒ権利者ノ実有ニ似タル権利ト義務者ニ保存ス可キ当然ノ信用ノ利益トヲ調和スル方法ニ其過当ヲ裁断ス可シ但シ事件ニ依リ不定ノ債主権ヲ更ニ多額ニ登ラシメタル時其日附ノ日ヨリ書入質権ヲ以テ為ス可キ新ナル記入ト抵触スルコトナカル可シ 第二千百六十五条 債主権ノ価額ニ其三分一ヲ加ヘタル高ト比較ス可キ不動産ノ価額ハ損敗ヲ受クルコトナカルヘキ不動産ニ付テハ其所在ノ各邑ニ於テ地租納税人名簿ノ台帳又ハ其人名簿ニ拠ル各自負担ノ税額ト不動産ノ入額トノ間ニ存スル割合ニ従ヒ上ノ台帳ニ依リ公示セラレタル入額又ハ各自負担ノ税額ニ依リ指示セラレタル入額ノ価額ノ十五倍ヲ以テ之ヲ定メ又損敗ヲ受クルコトアル可キ不動産ニ付テハ上ノ価額ノ十倍ヲ以テ之ヲ定ム然レトモ裁判官ハ其他ニ疑シカラサル賃借証書曽テ接近シタル時期ニ於テ作リシコトアリタル評価調書及ヒ之ニ類スル他ノ証書ヨリ生シ得ル所ノ明覈ニ依拠シ此種々ノ参照件ノ成果ノ間ノ平均高ニ右ノ入額ヲ見積ルコトヲ得 第六章 領有外人ニ対スル先取権及ヒ書入質権ノ効果 第二千百六十六条 不動産ニ付キ記入シタル先取権及ヒ書入質権ヲ有スル権利者ハ己レノ債主権又ハ記入ノ順序ニ従ヒ順定セラレ又弁済セラルル為メ不動産ノ何人ノ手裏ニ移ルヲ問ハス之ヲ追躡ス 第二千百六十七条 領有外人若シ其所有権ヲ滌除スル為メ下ニ定ムル法式ヲ履行セサル時ハ記入ノ効果ノミニ依リ領有者トシテ総テノ書入質上ノ負債ニ拘束セラレ而シテ原義務者ニ許与シタル期限及ヒ猶預ヲ利得ス可シ 第二千百六十八条 領有外人ハ右ノ場合ニ於テハ或ハ弁済期限ニ至リタル利息及ヒ元金カ如何ナル高ニ登リタルヲ問ハス総テ之ヲ弁済シ或ハ何ノ貯存モナク書入レラレタル不動産ヲ放棄ス可シ 第二千百六十九条 領有外人若シ右ノ義務中ノ一ヲ完全ニ履行セサル時ハ各書入質権利者ハ原義務者ニ為シタル要促ヨリ三十日ノ後又領有外人ニ弁済期限ニ至リタル負債ヲ弁済スルカ又ハ不動産ヲ放棄スルカヲ督促シタル後領有外人ニ対シ書入レラレタル不動産ヲ売却セシムルノ権アリ 第二千百七十条 然レトモ一身上ニ於テ負債ヲ負担セサル領有外人ハ同負債ノ為メ書入レラレタル他ノ不動産ニシテ主タル義務者一人又ハ数人ノ占有中ニ存スルモノアル時ハ己レニ移転セラレタル書入不動産ノ売却ニ対抗シ保証ノ巻ニ規定シタル法式ニ従ヒ予メ其「ヂスキユシヨン」ヲ要ムルコトヲ得但シ其「ヂスキユシヨン」中ハ書入不動産ノ売却ヲ中止ス 第二千百七十一条 先取権ヲ有シ又ハ不動産ニ付キ別段ノ書入質権ヲ有スル権利者ニハ「ヂスキユシヨン」ノ排訴法ヲ以テ対抗スルヲ得ス 第二千百七十二条 書入質ニ拠ル放棄ハ一身上ニ於テ負債ヲ負担セサル領有外人ニシテ譲与スルノ能力アル者総テ之ヲ為スコトヲ得 第二千百七十三条 領有外人カ義務ヲ認メ領有外人タルノ資格ノミヲ以テ裁判言渡ヲ受ケタル後ト雖モ放棄ヲ為スコトヲ得然レトモ放棄ハ競売ニ至ル迄ハ領有外人カ総テノ負債及ヒ費用ヲ弁済シテ不動産ヲ回収スルノ障トナルコトナシ 第二千百七十四条 書入質ニ依ル放棄ハ財産所在地ノ裁判所ノ書記局ニ於テ之ヲ為ス可シ而〆其裁判所ヨリ放棄ノ証書ヲ附与スルモノトス 関係人中最先ニ為ス者ノ請願ニ依リ放棄セラレタル不動産ノ為メ管財人ヲ任ス而シテ其不動産ノ売却ハ此管財人ニ対シ所有権取上ノ為メ定メタル法式ニ循ヒ之ヲ訟求ス可シ 第二千百七十五条 書入質権又ハ先取権アル権利者ノ害ニ於テ領有外人ノ所為又ハ懈怠ヨリ生シタル損壊ハ領有外人ニ対シ要償ノ訴権ヲ生ス然レトモ領有外人ハ改良ヨリ生シタル増価ノ高ニ至ル迄ノ外自己ノ費用及ヒ改良費ヲ回収スルヲ得ス 第二千百七十六条 書入不動産ノ果実ハ弁済スヘク又ハ放棄スヘキノ督促ノ日ヨリナラテハ領有外人ヨリ償還スルニ及ハス若シ既ニ始メタル訴ヲ三年間放擲シタル時ハ更ニ為スコトアル可キ督促ノ日ヨリナラテハ領有外人ヨリ償還スルニ及ハス 第二千百七十七条 領有外人カ其占有以前ニ不動産ニ付キ有セシ地権及ヒ物権ハ放棄又ハ其領有外人ニ対シテ為シタル競売ノ後ニ再生スルモノトス 領有外人ノ一身上ノ権利者ハ以前ノ所有者ニ対シテ記入セラレタル権利者ノ後ニ放棄シ又ハ競売シタル財産ニ付キ其等位ニ於テ自己ノ書入質権ヲ執行ス 第二千百七十八条 書入質上ノ負債ヲ弁済シ書入ラレタル不動産ヲ放棄シ又ハ其不動産ノ所有権取上ヲ受ケタル領有外人ハ主タル義務者ニ対シ担保ニ於ケル当然ノ要償権ヲ有ス 第二千百七十九条 代価ヲ弁済シテ所有権ヲ滌除セント欲スル領有外人ハ本巻第八章ニ定ムル法式ヲ循守ス可シ 第七章 先取権及ヒ書入質権ノ消滅 第二千百八十条 先取権及ヒ書入質権ハ左ノ事項ニ依テ消滅ス 第一 主タル義務ノ消滅 第二 権利者ノ書入質権ノ放棄 第三 領有外人ノ獲得シタル財産ヲ滌除スル為メ領有外人ニ対シ定メラレタル法式及ヒ条件ノ履行 第四 時効 時効ハ義務者ノ手裏ニ在ル財産ニ関シテハ先取権及ヒ書入質権ヲ附与スル訴権ノ時効ノ為メ定メラレタル時間ニ依テ義務者之ヲ獲得ス 時効ハ領有外人ノ手裏ニアル財産ニ関シテハ領有外人ノ利益ニ於ケル所有権ノ時効ノ為メ規定セラレタル時間ニ依テ領有外人之ヲ獲得ス若シ時効カ一ノ証書ニ拠ルモノト仮定スル場合ニ於テハ時効ハ保管者ノ簿冊ニ其証書ヲ登記シタリシ日ヨリナラテハ経過シ始メタルモノトス 権利者ノ為シタル記入ハ義務者又ハ領有外人ノ利益ニ於テ法律ニ依テ定メラレタル時効ノ経過ヲ中断セス 第八章 先取権及ヒ書入質権ヲ所有権ノ上ニ滌除スル方法 第二千百八十一条 領有外人カ先取権及ヒ書入質権ヲ滌除セント欲スル所ノ不動産所有権又ハ不動産物権ヲ移転スル契約ハ財産所在ノ郡ノ書入質保管者ニ於テ其全文ヲ登記ス可シ 其登記ハ之カ為メ設ケタル簿冊ニ之ヲ為シ而〆保管者ハ請求者ニ其確認書ヲ附与セサルヲ得ス 第二千百八十二条 保管者ノ簿冊ニ為ス所有権移転証書ノ単純ナル登記ハ不動産ノ上ニ設定シタル先取権及ヒ書入質権ヲ滌除セス 売主ハ売却シタル物件ノ上ニ己自ラ有シタリシ所ノ所有権及ヒ権利ナラテハ獲得者ニ移転セス又売主ハ己自ラ負担シタル所ト同シキ先取権及ヒ書入質権ヲ附着シタル侭其所有権及ヒ権利ヲ移転ス 第二千百八十三条 新所有者若シ本巻第六章ニ於テ允許スル訴ノ効果ニ対シ担保セシメント欲スル時ハ或ハ訴ノ前或ハ己レニ為サレタル第一次ノ督促ノ時ヨリ遅クモ一月内ニ各権利者ニ宛其記入ノ時ニ各権利者カ撰定シタル住所ニ左ノ件々ヲ送達ス可シ 第一 証書ノ日附及ヒ性質売主又ハ贈遺者ノ氏及ヒ明確ナル指名売却シ又ハ贈遺シタル物件ノ性質及ヒ所在ノミヲ記シ若シ又一団ヲ為ス財産ニ関スルトキハ其財産及ヒ其所在ノ各郡ノ総称其代価及ヒ売却ノ代価ノ部分タル負担又ハ物件ノ価額ヲ見積リタルトキハ其見積額ノミヲ記シタル新所有者ノ証書ノ撮要書 第二 売買証書ノ登記ノ撮要書 第三 三個ノ縦線ヲ画シタル表但シ其第一線ニハ書入質ノ日附及ヒ記入ノ日附ヲ記シ第二線ニハ各権利者ノ氏ヲ記シ第三線ニハ記入シタル債主権ノ額ヲ記ス可シ 第二千百八十四条 獲得者又ハ受贈者ハ弁済期限ニ至リタル負債ト弁済期限ニ至ラサルモノノ区別ナク書入質上ノ負債及ヒ負担ヲ代価ノ高ニ至ル迄直チニ弁償セント用意シタル旨ヲ同一ノ証書{送運書}ヲ以テ陳述ス可シ 第二千百八十五条 新所有者定期内ニ右ノ送達ヲ為シタル時ハ証書ヲ記入シタル総テノ権利者ハ左ノ負担ヲ以テ不動産ヲ公売ニ附スルコトヲ請求スルヲ得 第一 其請求書ハ新所有者ノ請求ニ依テ為サレタル送達ヨリ遅クモ四十日内ニ新所有者ニ送附スルコト但シ請求ヲ為ス各権利者ノ撰定ノ住所ト現実ノ住所トノ間距離五「ミリアメートル」毎ニ二日ヲ上ノ四十日ニ増加ス 第二 其請求書ニハ請求者カ契約書中ニ要約シ又ハ新所有者ノ陳述シタル代価ニ十分一ヲ加ヘタル高ニ代価ヲ増シ又ハ増サシムルノ約務ヲ記載スルコト 第三 右ニ同シキ送附ヲ同シキ期限内ニ主タル義務者タル以前ノ所有者ニ為スコト 第四 請求ヲ為ス権利者又ハ其特別ノ名代人ハ其送達書ノ本書及ヒ写書ニ手署スルコト其代人ハ此場合ニ於テ委任状ノ写書ヲ差出ス可シ 第五 請求ヲ為ス権利者ハ代価及ヒ負担ノ高ニ至ル迄保証人ヲ立テンコトヲ供陳スルコト 以上総テ無効ノ罰ヲ以テ之ヲ定ム 第二千百八十六条 権利者若シ定マリタル期限ト法式トニ従ヒ公売ニ附スルコトヲ請求セサル時ハ不動産ノ価額ハ契約書中ニ要約シ又ハ新所有者ノ陳述シタル代価ノ通リニ確定ス仍テ新所有者ハ領収ヲ為ス可キ順序ニ在ル権利者ニ代価ヲ弁済シ又ハ之ヲ附託シテ総テノ先取権及ヒ書入質権ヲ免サルルモノトス 第二千百八十七条 公売ヲ以テスル再売ノ場合ニ於テハ再売ヲ請求スル権利者又ハ新所有者ノ請求ニ従ヒ強要ノ所有権取上ノ為メ定メタル法式ニ従ヒ其再売ヲ為ス可シ 訟求者ハ契約書中ニ要約シ又ハ陳述セラレタル代価及ヒ権利者ノ増シ又ハ増サシムルコトヲ自ラ負担シタル附加ノ金額ヲ掲示書中ニ記ス可シ 第二千百八十八条 競売人ハ競売代価ノ外ニ占有権ヲ失ヒタル獲得者又ハ受贈者ニ其契約ノ費用及ヒ正当ノ入費保管者ノ簿冊ニ為シタル登記ノ費用送達ノ費用及ヒ再売ニ至ラシムル為メ其者等ノ為シタル費用ヲ償還ス可シ 第二千百八十九条 競売ニ附シタル不動産ヲ最後ノ競売人トナリテ貯存スル獲得者又ハ受贈者ハ競買ノ言渡ヲ登記セシムルニ及ハス 第二千百九十条 公売ニ附スルコトヲ請求スル権利者ノ放棄{競売ノ}ハ其権利者カ約務ノ金額ヲ弁済スル時ト雖トモ書入質権アル総テノ権利者ノ別段ノ承諾アルニ非サレハ公ケノ競売ヲ防止スルヲ得ス 第二千百九十一条 競売人ト為リタル獲得者ハ巳レノ証書ニ依リ要約シタル代価ヲ超過スルモノノ償還ノ為メ及ヒ各弁済ノ日ヨリ起算シテ其超過額ノ利息ニ付キ売主ニ対シ当然ノ要償権ヲ有ス 第二千百九十二条 新所有者ノ証書ニ不動産及ヒ動産ヲ包含シ又ハ或ルモノハ書入質トセラレ他ノモノハ書入質トセラレス同一若クハ異別ノ管轄郡ニ在リテ単一若クハ各別ノ代価ヲ以テ譲与セラレ同一ノ農工事業ニ属シ又ハ属セサル数多ノ不動産ヲ包含スルトキハ特殊ニシテ別々ノ記入ヲ受ケタル各不動産ノ代価ハ理由アルニ於テハ証書ニ明示シタル総代価ニ就キテノ価額見積ニ依テ之ヲ新所有者ノ送達書中ニ陳述ス可シ 競売ヲ為ス権利者ハ何ノ場合ニ於テモ已レノ債主権ニ書入質トナシ且ツ同郡内ニ在ル不動産ニ非サル他ノ不動産ニ付テモ動産ニ付テモ其約務ヲ拡張スルコトヲ要強セラルルコトナカル可シ但シ新所有者ハ其獲得シタル物件ノ分割又ハ農工事業ノ分割ヨリシテ受ク可キ損害ノ賠償トシテ其先所有者ニ対シ要償権ヲ有ス 第九章 夫及ヒ後見人ノ財産ニ付キ記入ナキ時書入質権ヲ滌除スル方法 第二千百九十三条 夫及ヒ後見人ニ属シタル財産ノ獲得者ハ後見管理ノ為メ又ハ婦ノ嫁資取戻及ヒ婚姻財産上ノ約束ノ為メ上ノ不動産ニ付キ記入ナカリシ時ハ巳レノ獲得シタル財産ニ付キ成存スル所ノ書入質権ヲ滌除スルコトヲ得 第二千百九十四条 此事ノ為メニハ獲得者ハ所有権移転契約書ノ適法ニ校合シタル謄本ヲ財産所在地ノ民事裁判所書記局ニ呈納シ婦又ハ監察後見人及ヒ始審裁判所検事ニ送達シタル証書ニ依リ其呈納ヲ為シタルコトヲ保証ス可シ○契約ノ日附契約者ノ氏名職業住所財産ノ性質及ヒ所在ノ指示売買ノ代価及ヒ其他ノ負担ヲ記載シタル其契約書ノ撮要書ヲ二ヶ月間裁判所ノ聴訟席ニ貼附シ置ク可シ此時間中ニ婦夫後見人監察後見人幼者被禁治産者血属又ハ朋友及ヒ検事ハ理由アルニ於テハ譲与セラレタル不動産ニ付テノ記入ヲ書入質保管者ノ役局ニ請求シ又ハ記入ヲ為サシムルコトヲ許サル可シ此記入ハ婚姻契約ノ日又ハ後見人ノ管理ヲ始メタル日ニ之ヲ為シタルト同シキ効果ヲ有ス但シ夫及ヒ後見人カ婚姻又ハ後見ニ関シテ其不動産ノ既ニ書入質ヲ負担セシ旨ヲ外人ニ陳述セスシテ其外人ノ利益ニ承諾シタル書入質ノ為メ前ニ記シタル如ク夫及ヒ後見人ニ対シテ起スヲ得ヘキ訴ト抵触スルコトナカル可シ 第二千百九十五条 売却シタル不動産ニ付キ契約書ノ展示ヨリ二月内ニ婦幼者又ハ被禁治産者ノ権利ヲ以テスル記入ヲ為ササリシ時ハ其不動産ハ嫁資取戻及ヒ婦ノ婚姻財産上ノ約束又ハ後見人ノ管理ニ関シ何ノ負担モナク獲得者ニ移転スルモノトス但シ理由アルニ於テハ夫及ヒ後見人ニ対スル要償権ハ格別ナリトス 上ノ婦幼者又ハ被禁治産者ノ権利ヲ以テスル記入ヲ為シ而〆其以前ノ権利者アリテ代価ノ全部又ハ一部ヲ攫収スル時ハ獲得者ハ有益ノ順序ニ置カレタル権利者ニ己レヨリ弁済シタル代価又ハ其一部ヲ免釈セラレ而〆婦幼者又ハ被禁治産者ノ権利ヲ以テ為シタル記入ハ其全部ニ於テ又ハ相当ノ高ニ至ル迄抹却セラル可シ 婦幼者又ハ被禁治産者ノ権利ヲ以テスル記入カ若シ最旧ノモノタル時ハ獲得者ハ前ニ記シタル如ク常ニ婚姻財産契約書ノ日附又ハ後見管理着手ノ日附ヲ有ス可キ其記入ノ害ニ於テ少シモ代価ノ弁済ヲ為スコトヲ得ス此場合ニ於テハ有益ノ順序ニ来ラサル他ノ権利者ノ記入ハ抹却セラル可シ 第十章 簿冊ノ公示及ヒ保管者ノ責任 第二千百九十六条 書入質保管者ハ其簿冊ニ登記シタル証書ノ謄本及ヒ現存スル記入ノ謄本又ハ何ノ記入モ存セサル旨ノ証状ヲ之ヲ請求スル総テノ者ニ交付ス可シ 第二千百九十七条 書入質保管者ハ左ノ件々ヨリ生スル損害ニ付キ其責ニ任ス 第一 其簿冊上ニ所有権移転証書ノ登記ノ漏脱及ヒ其役局ニ於テ請求セラレタル記入ノ漏脱 第二 現存スル記入ノ一個又ハ数箇ヲ其証状中ニ附記セサルコト但シ此最終ノ場合ニ於テ其錯誤カ保管者ニ帰スルヲ得サル所ノ不充分ノ指示ヨリ生シタル時ハ此限ニ在ラス 第二千百九十八条 保管者不動産ニ関シ記入シタル一個又ハ数個ノ負担ヲ其証状中ニ漏脱シタル時ハ其不動産ハ新占有者カ自己ノ証書ノ登記ノ後ニ証状ヲ請求シタルニ於テハ新占有者ノ手裏ニ於テ其負担ヲ免ルルモノトス但シ保管者ノ責任ハ別段ナリ然レトモ獲得者ヨリ其代金ヲ弁済セサル間又ハ権利者ノ間ニ立テタル順序ノ認裁セラレサル間ハ権利者ノ自己ニ属スル順序ニ従ヒ己レヲ順定セシムルノ権利ト抵触スルコトナカル可シ 第二千百九十九条 何ノ場合ニ於テモ保管者ハ所有権移転証書ノ登記書入質権ノ記入及ヒ請求セラレルノ証状ノ交付ヲ拒絶シ又ハ遅延スルコトヲ得ス若シ之ニ背ク時ハ関係人ニ対シ損害賠償ノ責ニ任ス可シ但シ此事ノ為メニハ或ハ治安裁判官或ハ裁判所ノ訟廷使吏或ハ其他ノ使吏若クハ証人二人ノ立会アル公証人ハ請求者ノ要求ニ従ヒ直チニ拒絶又ハ遅延ノ調書ヲ作ル可シ 第二千二百条 (千八百七十五年一月五日改定)然レトモ保管者ハ登記スル為メ呈出セラレタル所有権移転証書並ニ不動産差押証書及ヒ記入スル為メ呈出セラレタル明細書及ヒ附託スル為メ呈出セラレタル代権又ハ日附ノ先附ノ証書ノ謄本又ハ撮要書ト登記シタル証書ノ解除無効又ハ廃棄ヲ宣告スル裁判書トヲ毎日番号ノ順序ヲ以テ記入ス可キ簿冊ヲ設置ク可シ○保管者ハ登記シ記入シ附記スヘキ各証書又ハ各明細書毎ニ其呈出ヲ記入シタル簿冊ノ番号ヲ想起セシムル証印紙ニ記シタル確認証ヲ請求者ニ交付ス可シ而シテ保管者ハ自己ニ為サレタル呈出ノ日附又ハ順序ニ於テナラテハ所有権移転証書及ヒ不動産差押証書ヲ登記スルヲ得ス又明細書ヲ記入スルヲ得ス又代権又ハ日附ノ先附ノ証書ト特設ノ簿冊ニ登記シタル証書ノ解除無効又ハ廃棄ヲ宣告スル裁判書トヲ附記スルヲ得ス 本条ニ定メタル簿冊ハ二部ヲ設ケ其一部ハ其終結後三十日内ニ費用ナク保管者ノ居住スル郡ニ非サル他ノ郡ノ民事裁判所ノ書記局ニ納ム可シ 証書類呈出ノ簿冊ノ一部ヲ其書記局ニ納ムヘキ裁判所ハ保管局所有地ヲ管轄スル控訴院ノ長ノ命令ニ依リ之ヲ指定ス但シ其命令ハ控訴院検事長ノ請求ニ依リ之ヲ為ス可シ 第二千二百一条 保管者ノ総テノ簿冊ハ証印紙ニ記シ保管局ノ設置アル裁判区ノ裁判所ノ裁判官ノ一人初葉ヨリ末葉ニ至ル迄各葉ニ記号ヲ附シ且ツ手署ニ代用スル横線ヲ画ス可シ其簿冊ハ証書登記税ノ簿冊ノ如ク毎日終結ス可シ 第二千二百二条 保管者ハ其職務ノ執行付ニテハ本章ノ総テノ規則ニ循フ可シ若シ之ニ背ク時ハ初犯ニ於テハ二百「フラン」以上千「フラン」以下ノ罰金ニ処セラレ再犯ニ於テハ罷職ニ処セラル可シ但シ関係人ニ為ス可キ損害賠償ト抵触スルコトナカル可シ其賠償ハ罰金ノ前ニ弁済ス可シ 第二千二百三条 書類呈出ノ附記記入及ヒ登記ハ空白空行ナク連続シテ簿冊ニ為ス可シ若シ之ニ背ク時ハ保管者ニ対シ千「フラン」以上二千「フラン」以下ノ罰金ト関係人ニ為スヘキ損害賠償トヲ言渡ス可シ而〆其賠償ハ亦罰金ヨリ前ニ弁済スヘキモノトス 第十九巻 強要ノ所有権取上及ヒ権利者間ノ順序(千八百四年三月十九日決定同月二十九頒布) 第一章 強要ノ所有権取上 第二千二百四条 権利者ハ第一其義務者ノ所有ニ属スル不動産及ヒ不動産ト看做シタル其附属物第二同性質ノ財産ニ付キ義務者ニ属スル収実権ノ所有権取上ヲ訟求スルヲ得 第二千二百五条 然レトモ相続不動産中ニテ共同相続人ノ未分ノ部分ハ其一身上ノ権利者カ相当ト思惟スル時ニ於テ要ムルヲ得可キ分派又ハ未分物競売又ハ相続ノ巻第八百八十二条ニ従ヒ其権利者カ干渉スルノ権アル分派又ハ未分物競売ノ前ニハ其一身上ノ権利者ヨリ之ヲ売却ニ附スルコトヲ得ス 第二千二百六条 後見免除ヲ得タリト雖トモ幼者又ハ被禁治産者ノ不動産ハ動産ノ「ヂスキユシヨン」ノ前ニハ売却ニ附スルヲ得ス 第二千二百七条 動産ノ「ヂスキユシヨン」ハ丁年者ト幼者又ハ被禁治産者ノ間ニ負債ノ共通ナル時ハ其間ニ未分ニ占有スル不動産ノ所有権取上ノ前ニハ之ヲ請求スルヲ得ス又丁年者ニ対シ又ハ禁治産ノ以前ニ訟求ヲ始メタル場合ニ於テモ之ヲ請求スルヲ得ス 第二千二百八条 共通財産ノ一部タル不動産ノ所有権取上ハ仮令婦カ負債ヲ負担スル時ト雖トモ義務者タル夫ノミニ対シテ之ヲ訟求ス 共通財産中ニ入ラサル婦ノ不動産ノ所有権取上ハ夫及ヒ婦ニ対シテ之ヲ訟求ス婦ハ夫ノ己レト共ニ訴訟ヲ為スコトヲ拒ムカ又ハ夫ノ幼年ナル時ハ裁判所ノ允許ヲ受クルコトヲ得 夫婦共ニ幼年ノ場合又ハ婦ノミ幼年ノ場合ニ於テ丁年ノ夫カ婦ト共ニ訴訟ヲ為スコトヲ拒ム時ハ裁判所ハ婦ノ為メニ後見人ヲ任ス而シテ訟求ハ其後見人ニ対シテ執行セラルルモノトス 第二千二百九条 権利者ハ己レニ書入質ト為サレタル財産ノ不足ノ場合ニ於テナラテハ己レニ書入質ト為サレサル不動産ノ売却ヲ訟求スルヲ得ス 第二千二百十条 殊別ノ郡ニ在ル財産ノ強要ノ売却ハ其財産カ同一ノ農工事業ノ部分ヲ為ササルニ於テハ逐次ニナラテハ之ヲ請求スルヲ得ス 其強要ノ売却ハ農工事業ノ首地アル裁判区ノ裁判所ニ於テ之ヲ為ス可ク若シ首地アラサル時ハ納税人名簿ノ台帳ニ従ヒ最大ノ入額ヲ得ル財産ノ部分アル裁判区ノ裁判所ニ於テ之ヲ為ス可シ 第二千二百十一条 権利者ニ書入レタル財産及ヒ書入レサル財産又ハ殊別ノ郡ニ在ル財産カ同一ノ農工事業ノ部分ヲ為ス時ハ義務者ヨリ請求スルニ於テハ其等ノ売却ハ皆統合シテ為サンコトヲ訟求ス可シ而シテ理由アルニ於テハ競売ノ代価ニ就キテ価額見積ヲ為スモノトス 第二千二百十二条 義務者若シ公正ノ賃貸証書ニ依リ己レノ不動産ノ一年間ノ純粋ニシテ自由ナル入額カ負債ノ元金利息及ヒ費用ノ弁済ニ充足スルコトヲ証明シ而シテ権利者ニ代任ヲ供陳スル時ハ裁判官ハ訟求ヲ中止スルヲ得但シ弁済ニ付キ或ル故障又ハ障害ヲ来タス時ハ其訟求ヲ再起スルモノトス 第二千二百十三条 不動産ノ強要ノ売却ハ特定ニシテ清算シタル負債ニ付キ公正ニシテ執行力アル証書アルニ非サレハ請求スルヲ得ス若シ負債カ清算セラレサル品種ノモノタル時ハ訟求ハ有効ナリト雖トモ競売ハ清算ノ後ニ非サレハ之ヲ為スヲ得ス 第二千二百十四条 執行力アル証書ノ譲受人ハ其移転ノ通知ヲ義務者ニ為シタル後ニ非サレハ所有権取上ヲ訟求スルヲ得ス 第二千二百十五条 此訟求ハ仮定裁判ニ依リ又ハ控訴ニ拘ハラス仮ニ執行スルヲ得ル完結裁判ニ依リ之ヲ為スコトヲ得然レトモ競売ハ終審ノ完結裁判ノ後又ハ既判効ヲ生シタル裁判ノ後ニ非サレハ之ヲ為スヲ得ス 訟求ハ故障ノ期限間ハ缺席ニテ為シタル裁判ニ因リ之ヲ為スヲ得ス 第二千二百十六条 権利者カ弁済ヲ受ク可キ所ヨリ更ニ多額ニ付キ其訟求ヲ始メタルコトヲ口実トシテ之ヲ取消スヲ得ス 第二千二百十七条 凡テ不動産ノ所有権取上ノ訟求ニ付テハ権利者ノ請求ニ依リ使吏ノ紹介ヲ以テ義務者本人又ハ其住所ニ弁済ス可キノ要促ヲ予メ為ササル可カラス 其要促ノ法式及ヒ所有権取上ノ訟求ノ法式ハ訴訟法ニ規定ス 第二章 権利者間ノ順序及ヒ代価ノ分配 第二千二百十八条 順序及ヒ不動産ノ代価ノ分配並ニ之ヲ行フノ方法ハ訴訟法ニ規定ス 第二十巻 時効《プレスクリプシヨン》(千八百四年三月十五日決定同月二十五日頒布) 第一章 総則 第二千二百十九条 時効トハ或ル時間ニ依リ及ヒ法律ニ定ムル条件ニ従ヒ獲得シ又ハ免釈セラルルノ方法ヲ云フ 第二千二百二十条 予メ時効ヲ放棄スルヲ得ス獲得シタル時効ハ放棄スルヲ得 第二千二百二十一条 時効ノ放棄ハ明然ノモノ又ハ黙然ノモノトス黙然ノ時効ハ既得権ノ放棄ヲ推定スル所為ヨリ生ス 第二千二百二十二条 譲与スルヲ得サル者ハ獲得シタル時効ヲ放棄スルヲ得ス 第二千二百二十三条 裁判官ハ時効ヨリ生シタル抗弁ヲ職権上ニテ補足スルヲ得ス 第二千二百二十四条 時効ハ時効ノ抗弁ヲ以テ対抗セサリシ者カ事情ニ依リ之ヲ放棄シタリト推測セラレサルニ於テハ控訴院ニ於テスト雖トモ訴訟中何時タリトモ之ヲ以テ対抗スルコトヲ得 第二千二百二十五条 権利者又ハ其他時効ノ獲得ニ付キ利益ヲ有スル者ハ義務者又ハ所有者カ時効ヲ放棄スル時ト雖トモ其時効ヲ以テ対抗スルコトヲ得 第二千二百二十六条 通易中ニ在ラサル物件ノ所有権ハ時効ニ依リ獲得スルヲ得ス 第二千二百二十七条 政府公舎及ヒ邑ハ常人ト同シキ時効ヲ受ケ又常人ト同シク之ヲ以テ対抗スルコトヲ得 第二章 占有 第二千二百二十八条 占有トハ我等自ラ保有シ又ハ我等ノ名ヲ以テ他人ニ保有セシムル物件ノ領有又ハ我等自ラ執行シ又ハ我等ノ名ヲ以テ他人ニ執行セシムル権利ノ収益ヲ云フ 第二千二百二十九条 時効ヲ生センニハ継続、不間断、安穏、公明、不瞹昧ニシテ所有者ノ名義ニ於ケル占有アルヲ要ス 第二千二百三十条 他人ノ為メニ占有ヲ始メタル証ナキニ於テハ自己ノ為メ且ツ所有者ノ名義ニテ占有スルモノト看做ス可シ 第二千二百三十一条 他人ノ為メ占有ヲ始メタル時ハ反対ノ証ナキ於ニ於テハ常ニ同名義ニテ占有スルモノト看做ス可シ 第二千二百三十二条 純粋ノ権能ノ所為及ヒ単純ノ寛容ノ所為ハ占有ヲモ時効ヲモ創立セス 第二千二百三十三条 暴行ノ所為モ亦時効ヲ生スルニ足ル可キ占有ヲ創立セス 有益ノ占有ハ暴行ノ止了シタル時ニ非サレハ始マラサルモノトス 第二千二百三十四条 往時占有シタルコトヲ証スル現占有者ハ反対ノ証ナキニ於テハ其中間ノ時ニ於テ占有シタリト看做サル可シ 第二千二百三十五条 時効ヲ完成セン為メニハ人其先人ニ嗣継シタル方法ノ統括又ハ特定ノ名義ナルト無償又ハ有償ノ名義ナルトヲ問ハス己レノ占有ニ其先人ノ占有ヲ併合スルコトヲ得 第三章 時効ヲ妨止スル原由 第二千二百三十六条 他人ノ為メニ占有スル者ハ其時間ノ如何ナルヲ問ハス決シテ時効ニ因リ獲得スルヲ得ス 仍テ土地賃借人受託者収実者其他苟メニ《ブレケールマン》所有者ノ物件ヲ領有スル者ハ時効ニ因リ之ヲ獲得スルヲ得ス 第二千二百三十七条 前条ニ指示シタル名義中ノ或ルモノヲ以テ物件ヲ保有セシ者ノ相続人モ亦時効ニ因リ之ヲ獲得スルヲ得ス 第二千二百三十八条 然レトモ第二千二百三十六条及ヒ第二千二百三十七条ニ記示セラレタル者ハ其占有ノ名義カ外人ヨリ来リタル原由ニ依リ又ハ所有者ノ権利ニ対抗シタル排拒ニ依リ変易セシ時ハ時効ニ因リ獲得スルコトヲ得 第二千二百三十九条 土地賃借人受託者其他苟メノ領有者ヨリ所有権移転ノ名義ニテ物件ヲ移転セラレタル者ハ時効ニ因リ其物件ヲ獲得スルヲ得 第二千二百四十条 人ハ己自ラ占有ノ原由及ヒ主義ヲ変易スルヲ得サルノ意義ニ於テハ其名義ニ反シテ時効ニ因リ獲得スルヲ得ス 第二千二百四十一条 人ハ契約シタル義務ノ免釈ヲ時効ニ因テ獲得スルノ意義ニ於テハ其名義ニ反シテ時効ニ因リ獲得スルヲ得 第四章 時効ノ経過ヲ中断シ又ハ停止スル原由 第一款 時効ヲ中断スル原由 第二千二百四十二条 時効ハ或ハ自然ニ或ハ民法上ニテ中断スルコトヲ得 第二千二百四十三条 占有者一年以上ノ間旧所有者又ハ外人ヨリ物件ノ収益ヲ奪ハルル時ハ自然ノ中断アリトス 第二千二百四十四条 時効ヲ妨止セント欲スル者ヨリ人{時効ヲ得ントスル}ニ通知シタル治安裁判所エノ召喚、督促又ハ差押ハ民法上ノ中断ヲ為スモノトス 第二千二百四十五条 治安局ヘ勧解ノ召喚ハ其後法律上ノ期限内ニ始審裁判所ヘノ召喚ヲ為ス時ハ勧解ノ召喚ノ日附ノ日ヨリ時効ヲ中断ス 第二千二百四十六条 管轄ニ非サル裁判官ノ面前ニ為シタルモノト雖トモ治安裁判所エノ召喚ハ時効ヲ中断ス 第二千二百四十七条 召喚状カ法式ノ欠缺ニ因リ無効ナル時 原告人カ其訟求ヲ放棄シタル時 原告人カ訴訟ヲ消滅セシメタル時 又ハ其訟求ノ却下セラレタル時ハ 中断ハ成ラサルモノト看做ス可シ 第二千二百四十八条 時効ハ義務者又ハ占有者カ対シテ以テ時効ヲ獲得セントスル者ノ権利ニ付キ為シタル認諾ニ依リ中断ス 第二千二百四十九条 前数条ニ従ヒ連帯義務者ノ一人ニ為シタル認諾ノ要求又ハ其認諾ハ其他ノ連帯義務者ニ対シ又其相続人ニ対シテモ時効ヲ中断ス 連帯義務者ノ相続人ノ一人ニ為シタル認諾ノ要求又ハ其一人ノ認諾ハ其共同相続人ニ対シテハ義務ノ不得分的ニアラサル時ハ債主権ガ書入質的タル時ト雖トモ時効ヲ中断セス 其認諾ノ要求又ハ其認諾ハ共同義務者ニ対シテハ其相続人ノ負担スル部分ニ付テナラテハ時効ヲ中断セス 総テノ共同義務者ニ対シ全部ニ付キ時効ヲ中断スル為メニハ死去シタル義務者ノ総テノ相続人ニ為シタル認諾ノ要求又ハ此総テノ相続人ノ認諾アルヲ要ス 第二千二百五十条 主タル義務者ニ為シタル認諾ノ要求又ハ其認諾ハ保証人ニ対シテ時効ヲ中断ス 第二款 時効ノ経過ヲ中止スル原由 第二千二百五十一条 時効ハ法律ニ依リ定メタル或ル例外中ニ在ル者ノ外総テノ人ニ対シテ経過ス 第二千二百五十二条 時効ハ第二千二百七十八条ニ記スル所ノ外及ヒ法律ニ依リ定メタル其他ノ場合ヲ除キ幼者及ヒ被禁治産者ニ対シテ経過セス 第二千二百五十三条 時効ハ夫婦間ニハ経過セス 第二千二百五十四条 時効ハ婚姻財産契約ニ依リ又ハ裁判上ニテ分割ヲ為ササル時ト雖トモ夫カ管理権ヲ有スル財産ニ付テハ有夫ノ婦ニ対シテ経過ス但シ婦ハ夫ニ対シテ要償権ヲ有ス 第二千二百五十五条 然レトモ時効ハ婚姻財産契約及ヒ夫婦相互ノ巻第千五百六十一条ニ循ヒ嫁資法ニ従ヒ設定シタル不動産ノ譲与ニ付テハ婚姻中ハ経過セス 第二千二百五十六条 時効ハ左ノ場合ニ於テハ同シク婚姻中ハ停止ス 第一 婦ノ訴権カ財産共通ノ承諾又ハ放棄ニ付キ為ス可キ撰択ノ後ニ非サレハ執行セラレ得サル場合 第二 夫カ婦ノ承諾ナク婦ノ専有財産ヲ売却シ其売却ノ担保人ト為リタル場合及ヒ其他婦ノ訴権カ夫ニ反及スル総テノ場合 第二千二百五十七条 時効ハ条件ニ関スル債主権ニ関シテハ其条件ノ来ル迄担保ノ訴権ニ関シテハ強却アル迄又日ノ定メアル債主権ニ関シテハ其日ノ来ル迄経過セス 第二千二百五十八条 時効ハ目録相続人カ相続ニ対シテ有スル債主権ニ付テハ其相続人ニ対シテ経過セス 時効ハ管財人ノ設置ナキ時ト雖トモ款位相続ニ対シテ経過ス 第二千二百五十九条 時効ハ目録ヲ作成スル為メノ三個月間ト熟慮ノ為メノ四十日間トニ於テモ経過ス 第五章 時効ヲ得ルニ必要ナル時間 第一款 総則 第二千二百六十条 時効ハ日ヲ以テ算シ時ヲ以テ算セス 第二千二百六十一条 時効ハ期限ノ最終ノ日ノ完満シタル時ニ於テ獲得ス 第二款 三十年ノ時効 第二千二百六十二条 総テ訴権ハ物上的タルト対人的タルトヲ問ハス三十年ヲ以テ時効ヲ獲得シ其時効ヲ主張スル者ハ証書ヲ差出スコトヲ要強セラルルコトナク又悪意ヨリ演繹シタル排訴ヲ以テ対抗セラルルコトナシ 第二千二百六十三条 最終ノ証書日附ヨリ二十八年ノ後ニ年金ノ義務者ハ其権利者又ハ其承権人ニ己レノ費用ヲ以テ新証書ヲ呈供スヘキコトヲ要強セラルルコトアル可シ 第二千二百六十四条 本巻ニ記載シタル物件ニ非サル他ノ物件ニ関スル時効ノ規則ハ其関係ノ巻ニ記明ス 第三款 十年及ヒ二十年ノ時効 第二千二百六十五条 善意ト正因トニ依リ不動産ヲ獲得スル者ハ真ノ所有者カ其不動産所在ノ地ヲ管轄スル控訴院ノ管内ニ住スル時ハ十年ヲ以テ其所有権ヲ時効ニ因リ獲得シ若シ真ノ所有者カ其管外ニ住スル時ハ二十年ヲ以テ獲得ス 第二千二百六十六条 真ノ所有者若シ異別ノ時ニ於テ管轄内ト管轄外トニ住所ヲ有セシ時ハ時効ヲ完成スル為メ所在ノ十年ニ款ケタル年数ニ其所在ノ十年ヲ完成スル為メ其缺ケタル所ニ倍スル不在ノ年数ヲ加フルコトヲ要ス 第二千二百六十七条 法式ノ欠缺ニ因ル無効ノ証書ハ十年及ヒ二十年ノ時効ノ基本ニ用立ツコトヲ得ス 第二千二百六十八条 善意ハ常ニ推測セラル、悪意アリト陳言スル者ハ之ヲ証セサルヲ得ス 第二千二百六十九条 獲得ノ時ニ於テ善意アリシヲ以テ足レリトス 第二千二百七十条 建築師及ヒ起業人ハ十五年ノ後其為シ又ハ指揮シタル大工事ノ担保ヲ免釈セラル可シ 第四章 或ル別段ノ時効 第二千二百七十一条 学問及ヒ芸術ノ教師カ月々ニ為ス授業ニ付キ其教師ノ訴権 旅館主及ヒ飲食店主ノ供給シタル宿泊料及ヒ飲食料ニ付キ其旅館主及ヒ飲食店主ノ訴権 傭賃供給物及ヒ給料ノ弁済ニ付キ職工及ヒ労働者ノ訴権ハ 六ヶ月ヲ以テ時効ヲ生ス 第二千二百七十二条 出診、手術及ヒ薬料ニ付キ内外科医及ヒ製薬師ノ訴権 送達シタル証書及ヒ執行シタル代任ノ給銀ニ付キ使吏ノ訴権 商人ニ非サル平人ニ売却シタル商品ニ付キ商人ノ訴権 生徒ノ賄料ニ付キ学塾首長ノ訴権及ヒ工芸授業料ニ付キ其他ノ授業師ノ訴権 給料ノ弁済ニ付キ年傭ノ僕婢ノ訴権ハ 一年ヲ以テ時効ヲ生ス 第二千二百七十三条 代書人ノ其費用及ヒ給料ノ弁済ニ付テノ訴権ハ訴訟ノ裁判双方ノ和解又ハ右代書人解任ノ時ヨリ二年ヲ以テ時効ヲ生ス未タ終結セサル訴訟ニ付テハ代書人ハ五年以上ニ遡リタル費用及ヒ給料ニ付キ訟求ヲ為スヲ得ス 第二千二百七十四条 以上数箇ノ場合ニ於テハ時効ハ供給引渡役務及ヒ労働ノ継続アリシ時ト雖トモ生スルモノトス 時効ハ終結ノ計算書、私又ハ公ノ義務認諾書又ハ消滅セサル裁判所ヘノ召喚状アル時ナラテハ経過スルコトヲ止メサルモノトス 第二千二百七十五条 然レトモ右ノ時効ヲ以テ対抗セラレタル者ハ物ノ実ニ弁済セラレタルヤ否ヤヲ知ルノ問題ニ付キ時効ヲ以テ対抗スル者ニ矢誓ヲ要ムルヲ得 矢誓ハ寡婦及ヒ相続人若シ相続人ノ幼者ナル時ハ其後見人ヲシテ未タ物ヲ弁済セサルコトヲ知ラサルヤヲ陳述セシムル為メ之ヲ此者等ニ要ムルヲ得 第二千二百七十六条 裁判官及ヒ代書人ハ訴訟ノ裁判ヨリ五年後ニ証拠物ニ付キ其責ヲ免カル可シ 使吏ハ其任セラレタル委託ノ執行又ハ証書ノ送達ヨリ二年後ニ同シク証拠物ニ付キ其責ヲ免カル可シ 第二千二百七十七条 無期及ヒ畢生間ノ年金ノ賦額 養料ノ賦額 家屋ノ貸賃及ヒ田野財産ノ貸賃 貸金ノ利息及ヒ概シテ年毎ニ又ハ更ニ短キ定期ニ於テ弁済ス可キモノハ 五年ヲ以テ時効ヲ生ス 第二千二百七十八条 本款ノ各条ニ記スル時効ハ幼者及ヒ被禁治産者ニ対シテ経過ス但シ幼者及ヒ被禁治産者ハ後見人ニ対シテ要償権ヲ有ス 第二千二百七十九条 動産ニ付テハ占有ハ証書ノ効力アリトス 然レトモ物件ヲ紛失シ又ハ窃盗セラレタル者ハ其紛失又ハ窃盗ヨリ三年間ハ手裏ニ其物件ヲ有スル者ニ対シテ之ヲ取戻スコトヲ得但シ手裏ニ其物件ヲ有スル者ハ己レニ物件ヲ受得セシメタル者ニ対シテ要償権ヲ有ス 第二千二百八十条 窃盗セラレ又ハ紛失シタル物件ノ現占有者カ市会又ハ市場又ハ公売ニ於テ又ハ同種ノ物件ヲ売ル商人ヨリ之ヲ買入レタル時ハ原所有者ハ占有者ニ其物件ヲ買入レタル代価ヲ弁償スルニ非サレハ其物件ヲ已レニ返還セシムルヲ得ス 第二千二百八十一条 本巻公布ノ時期ニ於テ始マリタル時効ハ旧法ニ従ヒ之ヲ規定ス 然レトモ其時期ニ始マリタル時効ニシテ旧法ニ循ヘハ其時期ヨリ起算シテ尚ホ三十年以上ヲ要スルモノハ其三十年ノ時間ヲ以テ完成ス可シ